実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
<関連技術の説明>
本明細書でいう「関連技術」は、新規に発明者が見出した課題を有する技術であって、公知である従来技術ではないが、新規な技術的思想の前提技術(未公知技術)を意図して記載された技術である。
図1は、関連技術における測定装置を使用して、管の内径を測定する様子を模式的に示す図である。図1において、関連技術における測定装置10は、管20の内部に配置される。そして、管20の内部に配置された測定装置10は、管20の長手方向に移動可動な台車1を有し、この台車1上に測定器2が搭載されている。
この測定器2は、測定子3と、ロッド4と、伝達子5と、デジタルリニアゲージ6とを有している。このとき、測定子3とロッド4は、管20の内面に接触するように構成されているとともに、測定子3は、接触している管20の内面の表面形状(凹凸形状)に応じて、垂直方向に変位可能なように構成されている。そして、測定子3の垂直変位量は、伝達子5によって水平変位量に変換された後、この水平変位量は、デジタルリニアゲージ6によって測定される。さらに、デジタルリニアゲージ6は、例えば、ケーブルを介して、デジタル表示器(図示せず)と接続されており、デジタルリニアゲージ6で測定された水平変位量は、デジタル表示器に数値として表示される。
以上のようにして、関連技術における測定装置10によれば、台車1に搭載された測定器2によって管20の内径を測定することができる。特に、台車1を管20の長手方向に移動しながら、台車1に搭載された測定器2によって管20の内径を測定することにより、管20の全長にわたって内径を測定することができる。
具体的に、図2には、台車を管の長手方向に移動しながら、台車に搭載された測定器によって管の内径を所定の測定間隔で測定した結果の一例が示されている。つまり、図2には、管の一端部からの距離と内径測定値との関係を示すグラフが示されている。
ここで、図2に示すグラフには、内径測定値が大きくなっている箇所が存在し、この内径測定値が大きくなっているということは、管の内径が大きくなっていることを意味する。そして、管の内面に腐食や摩耗が存在する場合には、管の内径が大きく測定されることを考慮すると、図2に示すグラフにおいて、内径測定値が大きくなっている箇所は、摩耗や腐食が生じている箇所と推定することができる。このようにして、関連技術における測定装置によれば、管の内径を測定することによって、管の内面に摩耗や腐食などの内面状態の異常が生じていることを検出できる。
ところが、関連技術では、例えば、測定効率を向上する観点から、所定の測定間隔(ピッチ間隔)で管の内径を測定することが行なわれている。したがって、例えば、図3に示すように、測定点の間に内面状態の異常が存在する場合には、この内面状態の異常が見過ごされるおそれがある。なぜなら、測定点の中間点では、管の内径測定が実施されないことから、測定点の中間点に内面状態の異常が存在することを検出できないからである。つまり、管の内径だけを測定することにより、管の内面状態を推測する技術では、管の内面における内面状態の異常を正確に把握することが困難である。すなわち、管の内径だけを測定することにより、管の内面状態を把握する関連技術においては、管の内面における内面状態を正確に把握する観点から改善の余地が存在する。
そこで、本実施の形態では、関連技術に存在する改善の余地に対する工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想について説明する。
<実施の形態における基本思想>
本実施の形態における基本思想は、管の内径を測定するだけで管の内面状態の異常を検出するのではなく、管の内径を測定するとともに、管の内面状態を把握するための非接触測定も併用することにより、管の内面状態の異常を検出する精度を向上させる思想である。すなわち、本実施の形態における基本思想は、管の内径を測定する内径測定部とともに、管の内面状態を把握するための非接触測定部を測定装置に設けて、非接触測定部による測定結果と内径測定部による測定結果との両方に基づいて、管の内面状態の異常を検出する思想である。このような基本思想によれば、管の内径を測定するだけで管の内面状態の異常を検出するよりも、管の内面状態の異常を検出する精度を向上できる。なぜなら、測定装置に内径測定部だけでなく非接触測定部も設けることにより、管の内面状態の異常を判断するための情報を増やすことができる結果、管の内径を測定するだけでは検出することが困難であった管の内面状態の異常を見過ごす可能性を低くできるからである。
例えば、図4は、測定装置の基本構成を示す機能構成図である。
図4に示すように、測定装置30は、内径測定部31と非接触測定部32とを有している。ここで、内径測定部31は、管の内径を測定するように構成されている一方、非接触測定部32は、非接触測定によって、管の内面状態を把握できるように構成されている。具体的に、非接触測定部32は、例えば、超音波を使用して管の内面状態を測定する超音波測定部や、撮像装置によって管の内面状態を撮像する画像撮像部から構成することができる。このように構成されている非接触測定部32によれば、管の内面に接触することなく、管の内面状態に関する情報を取得できる。すなわち、非接触測定部32によれば、管の内面に損傷を与えることなく、管の内面状態を把握できる。
したがって、図4に示す機能構成を有する測定装置30によれば、内径測定部31によって管の内径を測定することができるとともに、非接触測定部32によって管の内面状態に関する情報を取得することができる。このことから、例えば、測定装置30によれば、所定の測定間隔で管の内径を測定するだけでなく、非接触測定部32によって取得された管の内面状態に関する情報に基づいて、管の内面状態の異常が存在する可能性が高い箇所を特定し、この特定した箇所において詳細に管の内径を測定することができる。この結果、測定装置30によれば、内径測定部31による管の内径の測定と、非接触測定部32による測定とを組み合わせることにより、管の内面状態の異常を判断するための情報を増やすことができる。このことから、例えば、所定の測定間隔で管の内径を測定する構成では見過ごされる可能性の高い管の内面状態の異常を確実に検出することができる。
以上のように、管の内径を測定するとともに、管の内面状態を把握するための非接触測定も併用するという本実施の形態における基本思想によれば、管の内径を測定するだけでは検出することが困難であった管の内面状態の異常を確実に検出することができる。
以下では、この基本思想を具現化した測定装置の具体例について説明する。
<実施の形態における測定装置の構成>
図5は、管の内部に配置された本実施の形態における測定装置の模式的な構成を示す図であって、管の長手方向で切断した部分断面図である。また、図6は、管の内部に配置された本実施の形態における測定装置の模式的な構成を示す図であって、管の長手方向と直交する方向で切断した部分断面図である。
図5および図6において、本実施の形態における測定装置30は、管20の内部に配置される。そして、管20の内部に配置された測定装置30は、管20の長手方向に移動可動な台車1を有し、この台車1上に測定器2が搭載されている。
この測定器2は、図5に示すように、測定子3と、ロッド4と、伝達子5と、デジタルリニアゲージ6とを有している。このとき、測定子3とロッド4は、管20の内面に接触するように構成されているとともに、測定子3は、接触している管20の内面の表面形状(凹凸形状)に応じて、垂直方向に変位可能なように構成されている。そして、測定子3の垂直変位量は、伝達子5によって水平変位量に変換された後、この水平変位量は、デジタルリニアゲージ6によって測定される。さらに、デジタルリニアゲージ6は、例えば、ケーブルを介して、デジタル表示器7と接続されており、デジタルリニアゲージ6で測定された水平変位量は、デジタル表示器7に数値として表示される。
このように、測定器2は、管20の内面と接触し、かつ、台車1に対して垂直方向に配置されたロッド4と、ロッド4と一直線上に配置され、かつ、管20の内面と接触し、かつ、垂直方向に変位可能に構成された測定子3と、測定子3の変位に基づいて、管20の内径を測定するデジタルリニアゲージ6とを含むように構成されている。
さらに、図5に示すように、本実施の形態における測定装置30は、撮像装置であるカメラ41を有し、このカメラ41は、ステー40によって台車1に取り付けられている。そして、カメラ41は、例えば、ケーブルを介して、モニタ42と接続されており、カメラ41で撮像した画像をモニタ42に表示できるようになっている。つまり、カメラ41は、管20の内面状態を撮像することができるように構成されている。このとき、カメラ41は、撮像領域を変更可能なように向きを変えることができるように構成されている。具体的に、カメラ41は、向きを変えることによって、測定子3と管20の内面との接触領域を含む領域を被撮像領域(第1被撮像領域)とすることができる一方、台車1の進行方向の前方領域に見える管20の内面を含む領域も被撮像領域(第2被撮像領域)とすることができるように構成されている。
そして、カメラ41には、例えば、LED照明からなる照明部43が取り付けられており、この照明部43によって、管20の内面を照らすことができるようになっている。ここで、照明部43は、例えば、ケーブルを介して、照度コントローラ44と接続されており、この照度コントローラ44によって、管20の内面における照度が変更できるように構成されている。つまり、照度コントローラ44によって、照明部43からの照射光の強度が調整されるようになっている。この結果、カメラ41で管20の内面状態を鮮明に撮像することができることになる。
<実施の形態における測定方法>
本実施の形態における測定装置は、上記のように構成されており、以下では、この測定装置を使用した測定方法の一例について説明する。
本実施の形態における測定方法は、例えば、管の内部に測定装置を配置して、この測定装置を管の一端部から管の他端部にわたって移動させながら、管の内径の測定とカメラによる管の内面状態の撮像を行なう往路工程と、測定装置を管の他端部から管の一端部にわたって移動させながら、管の内径の測定とカメラによる管の内面状態の撮像を行なう復路工程とから構成される。以下では、まず、往路工程について説明する。
<<往路工程>>
図7は、往路工程を模式的に示す図である。
図7に示すように、往路工程では、測定装置30を管20の内部に配置して、この測定装置30を管20の一端部から管20の他端部にわたって移動させる。つまり、測定装置30は、管20の内部を「-x方向」に沿って移動する。具体的に、測定装置30は、管20の長手方向(「-x方向」)に移動可能な台車1と、台車1に取り付けられた測定器2と、台車1に取り付けられたカメラ41とを有し、測定器2とカメラ41とが取り付けられた台車1を「-x方向」に移動させることにより、測定装置30を移動させる。
このとき、台車1に取り付けられた測定器2は、所定のピッチ間隔で管20の内径を測定するように構成されている。一方、台車1に取り付けられたカメラ41は、台車1の進行方向の前方領域に見える管20の内面を含む領域を撮像することができるように、カメラ41の向きが調整されている。なお、カメラ41には、管20の内面を照らす照明部43が設けられており、この照明部43と接続された照度コントローラ44によって、照明部43からの照射光の強度が調整されるようになっている。これにより、カメラ41は、管20の内面状態を鮮明に撮像することができるようになっている。
次に、図8は、往路工程において、測定器2での管20の内径を測定する動作を説明するフローチャートであり、図7と図8とを参照しながら、測定器2を使用した管20の内径の測定動作について説明する。
まず、測定器2が取り付けられた台車1を管20の長手方向である「-x方向」に移動させる(S101)。そして、台車1が所定距離を移動すると(S102)、測定器2は、管20の内径を測定する(S103)。その後、内径の測定を継続する場合には(S104)、台車1をさらに移動させて、再び台車1が所定距離を移動すると、測定器2は、管20の内径を測定する。このような動作を繰り返すことにより、測定部2は、所定のピッチ間隔で管20の内径を測定することができる。このようにして、往路工程では、測定器2が取り付けられた台車1を管20の一端部から管20の他端部まで移動させながら、測定器2によって、所定のピッチ間隔で管20の内径を測定することができる。そして、台車1が管20の他端部に到達すると、測定部2による内径の測定は、終了する(S105)。
続いて、図9は、往路工程において、カメラ41による撮像動作を説明するフローチャートであり、図7と図9とを参照しながら、カメラ41を使用した管20の内面状態の撮像動作について説明する。
まず、図7に示すように、台車1の進行方向の前方領域に見える管20の内面を含む領域を撮像することができるように、カメラ41の向きを調整する。つまり、カメラ41は、台車1の進行方向(前方方向)に向けられる(S201)。次に、カメラ41の向きを調整した状態で、カメラ41が取り付けられた台車1を管20の長手方向である「-x方向」に移動させる(S202)。このとき、カメラ41は、台車1の進行方向の前方領域に見える管20の内面を含む領域を撮像する(S203)。そして、カメラ41で撮像された撮像画像は、モニタ42に表示される。ここで、モニタ42に表示された撮像画像に、例えば、腐食や摩耗などが発生している異常領域が存在する場合には(S204)、カメラ41で撮像された撮像画像に基づいて、異常領域が存在する位置に関する情報を取得する(S205)。その後、往路工程における測定を継続する場合には(S206)、さらに、台車1を移動させながら、カメラ41による撮像を継続する。このようにして、往路工程では、カメラ41が取り付けられた台車1を管20の一端部から管20の他端部まで移動させながら、カメラ41によって、管20の内面状態を撮像することができる。そして、台車1が管20の他端部に到達すると、往路工程は、終了する(S207)。
以上のことから、往路工程では、測定器2とカメラ41とを取り付けた台車1を管20の一端部から管20の他端部まで移動させる。このとき、上述したように、測定器2においては、所定のピッチ間隔で管20の内径の測定が実施される。一方、カメラ41においては、台車1の進行方向の前方領域に見える管20の内面を含む領域を撮像され、カメラ41によって撮像された撮像画像に基づいて、異常領域の位置情報が取得される。
次に、復路工程について説明する。
<<復路工程>>
図10は、復路工程を模式的に示す図である。
図10に示すように、復路工程では、測定装置30を管20の内部に配置して、この測定装置30を管20の他端部から管20の一端部にわたって移動させる。つまり、測定装置30は、管20の内部を「+x方向」に沿って移動する。具体的に、測定装置30は、管20の長手方向(「+x方向」)に移動可能な台車1と、台車1に取り付けられた測定器2と、台車1に取り付けられたカメラ41とを有し、測定器2とカメラ41とが取り付けられた台車1を「+x方向」に移動させることにより、測定装置30を移動させる。
このとき、台車1に取り付けられた測定器2は、所定のピッチ間隔で管20の内径を測定するように構成されている。一方、台車1に取り付けられたカメラ41は、測定器2の一部を構成する測定子3と管20の内面との接触領域を含む領域を撮像することができるように、カメラ41の向きが調整されている。なお、カメラ41には、管20の内面を照らす照明部43が設けられており、この照明部43と接続された照度コントローラ44によって、照明部43からの照射光の強度が調整されるようになっている。これにより、カメラ41は、管20の内面状態を鮮明に撮像することができるようになっている。
次に、図11は、復路工程において、測定器2での管20の内径を測定する動作を説明するフローチャートであり、図10と図11とを参照しながら、測定器2を使用した管20の内径の測定動作について説明する。
まず、測定器2が取り付けられた台車1を管20の長手方向である「+x方向」に移動させる(S301)。そして、往路工程において撮像された撮像画像に異常領域が存在する場合には(S302)、この異常領域の位置情報に基づいて、台車1が所定距離を移動する前に異常領域に到達するかが判断される(S303)。ここで、台車1が所定距離を移動する前に異常領域に到達する場合には、後述する異常処理が実施される(S304)。その後、他の異常領域が存在する場合には(S305)、再び、この他の異常領域に関する位置情報に基づいて、台車1が所定距離を移動する前に異常領域に到達するかが判断されるとともに、台車1が所定距離を移動する前に他の異常領域に到達する場合には、異常処理が実施される。そして、台車1が所定距離を移動する前に異常領域が存在しなくなるまで同様の異常処理が実施され、台車1が所定距離を移動する前に異常領域が存在しなくなると、台車1は所定距離まで移動して(S306)、この位置において、台車1に取り付けられた測定器2によって、管20の内径の測定が行なわれる(S307)。そして、このような動作が復路工程において繰り返される(S308)。この結果、復路工程において、測定部2は、所定のピッチ間隔で管20の内径を測定するとともに、往路工程において撮像された撮像画像に基づいて検出された異常領域に対し、後述する異常処理が実施される。このようにして、復路工程では、測定器2が取り付けられた台車1を管20の他端部から管20の一端部まで移動させながら、測定器2によって、所定のピッチ間隔で管20の内径を測定することができるとともに、往路工程において撮像された撮像画像に基づいて検出された異常領域に対し、後述する異常処理を実施することができる。そして、台車1が管20の一端部に到達すると、復路工程は、終了する(S309)。
ここで、例えば、図11に示すフローチャートにおいて、台車1が所定距離を移動する前に異常領域に到達する場合に実施される異常処理について説明する。
図12は、異常処理の流れを示すフローチャートである。
図12において、異常処理が開始されると(S401)、まず、カメラ41による撮像画像で特定された異常領域の位置情報に基づいて、この異常領域が、測定器2による走査領域に存在するかが判断される(S402)。このとき、異常領域が、測定器2による走査領域に存在する場合には、異常領域まで台車1が移動した際(S403)、異常領域の存在する位置が所定のピッチ間隔に対応する位置でなくても、この異常領域が存在する位置において、測定器2は、管20の内径の測定を実施する(S404)。その後、異常処理は終了する(S405)。この結果、復路工程においては、測定部2によって、所定のピッチ間隔で管20の内径が測定されるとともに、往路工程において撮像された撮像画像に基づいて検出された異常領域に対し、異常領域の位置が所定のピッチ間隔に対応する位置に存在するか否かに関わらず、管20の内径の測定が実施される。このようにして、復路工程では、測定器2が取り付けられた台車1を管20の他端部から管20の一端部まで移動させながら、測定器2によって、所定のピッチ間隔で管20の内径を測定することができるとともに、往路工程において撮像された撮像画像に基づいて検出された異常領域に対し、管20の内径の測定を実施することができる。
続いて、図13は、復路工程において、カメラ41による撮像動作を説明するフローチャートであり、図10と図13とを参照しながら、カメラ41を使用した管20の内面状態の撮像動作について説明する。
まず、復路工程が開始されると、カメラ41による撮像処理が開始される(S501)。このとき、図10に示すように、測定器2の一部構成する測定子3と管20の内面との接触領域を含む領域を撮像することができるように、カメラ41の向きを調整する。つまり、カメラ41は、管20の内径を測定する測定点に向けられる(S502)。次に、カメラ41の向きを調整した状態で、カメラ41が取り付けられた台車1を管20の長手方向である「+x方向」に移動させる(S503)。このとき、カメラ41は、測定子3と管20の内面との接触領域を含む領域を撮像する(S504)。
ここで、往路工程において撮像された撮像画像に異常領域が存在する場合には(S505)、この異常領域の位置情報に基づいて、異常領域の近傍位置まで台車1を移動させた後(S506)、異常領域の位置にカメラ41を向ける(S507)。例えば、異常領域の位置が測定器2による走査領域に存在する場合には、カメラ41の位置は、測定子3と管20の内面との接触領域を含む領域を撮像することができる位置に維持される。一方、異常領域の位置が測定器2による走査領域に存在しない場合には、カメラ41の位置は、測定子3と管20の内面との接触領域を含む領域を撮像することができる位置から変更されて、異常領域の位置がカメラ41の撮像領域に含まれるようにカメラ41の向きが変更される。そして、異常領域の位置における撮像画像が取得される(S508)。その後、他の異常領域が存在する場合には(S509)、他の異常領域の位置情報に基づいて、他の異常領域の近傍位置まで台車1を移動させた後、異常領域の位置にカメラ41を向ける。そして、異常領域の位置における撮像画像が取得される。このようにして、異常領域が存在しなくなるまで、異常領域の位置における撮像画像の取得工程が実施され、異常領域が存在しなくなると、撮像処理は、終了する(S510)。
以上のことから、復路工程では、測定器2とカメラ41とを取り付けた台車1を管20の他端部から管20の一端部まで移動させる。このとき、上述したように、測定器2においては、所定のピッチ間隔で管20の内径の測定が実施されるとともに、往路工程において撮像された撮像画像に基づいて検出された異常領域に対し、異常領域の位置が所定のピッチ間隔に対応する位置に存在するか否かに関わらず、管20の内径の測定が実施される。詳細に、測定器2は、異常領域が測定器2による走査領域に存在する場合に、異常領域の位置が所定のピッチ間隔に対応する位置に存在するか否かに関わらず、管20の内径の測定を実施する。一方、カメラ41を使用することにより、往路工程において撮像された撮像画像に基づいて検出された異常領域の撮像画像が取得される。
このようにして実現される本実施の形態における測定方法をまとめると、以下のように言うことができる。すなわち、本実施の形態における測定方法は、管の一端部から管の他端部に向って、台車を移動させる際(往路工程)、台車に取り付けられた測定器は、管の内径を測定し、かつ、台車に取り付けられたカメラは、台車の進行方向の前方領域に見える管の内面を含む領域を撮像する。一方、本実施の形態における測定方法は、管の他端部から管の一端部に向って、台車を移動させる際(復路工程)、台車に取り付けられた測定器は、管の内径を測定し、かつ、台車に取り付けられたカメラは、測定子と管の内面との接触領域を含む領域を撮像する。
さらに詳細に説明すると、本実施の形態における測定方法は、管の一端部から管の他端部に向って、台車を移動させる際(往路工程)、台車に取り付けられた測定器は、所定のピッチ間隔で管の内径を測定する。また、本実施の形態における測定方法は、往路工程において、台車に取り付けられたカメラを使用した撮像工程を有する。このとき、この撮像工程は、台車の進行方向の前方領域に見える管の内面を含む領域を撮像する工程と、台車の進行方向の前方領域に見える管の内面を含む領域の撮像画像に基づいて、管の内面に異常領域が存在するかを判断する工程と、管の内面に異常領域が存在する場合には、異常領域に関する位置情報を取得する工程を含む。
一方、本実施の形態における測定方法は、管の他端部から管の一端部に向って、台車を移動させる際(復路工程)、台車に取り付けられた測定器は、所定のピッチ間隔で管の内径を測定するとともに、異常領域が存在すると判断され、かつ、異常領域が測定子の走査領域と重なる領域に存在する場合には、位置情報に基づいて、異常領域の存在する位置においても、管の内径を測定する。また、本実施の形態における測定方法は、復路工程において、台車に取り付けられたカメラを使用した撮像工程を有する。このとき、この撮像工程では、測定子と管の内面との接触領域を含む領域を撮像し、かつ、位置情報に基づいて、異常領域を含む領域も撮像する。
なお、本実施の形態における測定方法は、例えば、管の一端部から管の他端部に向って、台車を移動させる往路工程と、管の他端部から管の一端部に向って、台車を移動させる復路工程とを有するように構成されている。この場合、測定効率を向上できる。
ただし、本実施の形態における測定方法は、これに限らず、例えば、管の一端部から管の他端部に向って、台車を移動させる往路工程と、上述した復路工程に替えて、管の他端部から管の一端部に戻った後に、さらに前記管の前記一端部から前記管の他端部に向って、前記台車を移動させる際に復路工程と同様の測定を実施する再往路工程とから構成するようにしてもよい。この場合、同一の端部から他端部に向かって走査するため、台車の送り量の精度を向上できる結果、精度の高い管の内径測定を実現できる。
<実施の形態における特徴>
本実施の形態における特徴点は、例えば、管の内径を測定するだけで管の内面状態の異常を検出するのではなく、管の内径を測定するとともに、管の内面状態を把握するためにカメラによる撮像も併用している点にある。これにより、本実施の形態によれば、管の内面状態の異常を検出する精度を向上させることができる。すなわち、本実施の形態における特徴点は、管の内径を測定する内径測定部とともに、管の内面状態を把握するための撮像部を測定装置に設けて、撮像部による測定結果と内径測定部による測定結果との両方に基づいて、管の内面状態の異常を検出する点にある。これにより、本実施の形態における特徴点を採用すると、管の内径を測定するだけで管の内面状態の異常を検出するよりも、管の内面状態の異常を検出する精度を向上できる。なぜなら、測定装置に内径測定部だけでなく撮像部も設けることにより、管の内面状態の異常を判断するための情報を増やすことができる結果、管の内径を測定するだけでは検出することが困難であった管の内面状態の異常を見過ごす可能性を低くできるからである。
特に、本実施の形態では、管の内径を測定する内径測定部の他に設ける非接触測定部として、カメラによる撮像部を採用している点に大きな技術的意義がある。なぜなら、内径測定部は、管の内径を測定することによって、管の内面状態の異常を間接的に把握する構成であり、管の内面状態の異常を直接的に把握する構成ではない。このため、内径測定部によってもたらされる情報だけで管の内面状態を正確に把握することは困難である。これに対し、本実施の形態では、内径測定部の他に、カメラによる撮像部を有しており、この撮像部によって、管の内面状態を撮像した撮像画像が提供される。この結果、本実施の形態における測定方法によれば、撮像部によって撮像された撮像画像を見ることによって、直接的に管の内面状態を把握することができる。特に、撮像画像を見ることによって、管の内面状態に存在する異常を容易に把握することができるので、管の内面状態の異常を正確に把握する観点から、内径測定部を有する測定装置に対して、新たに撮像部を設けるという構成は非常に有用なのである。例えば、本実施の形態では、管の内径を測定するとともに、管の内面状態を把握するためにカメラによる撮像も併用しているため、管の内面状態の異常を視覚的に確認しながら、測定したい領域(例えば、カメラによる撮像画像を確認することによって異常領域の可能性が高い領域)を細かく選択して測定できる。
さらに、本実施の形態によれば、管の内面状態を撮像画像で容易に確認することができるため、内径測定部による管の内径測定だけでは検出困難な不均一で局所的な異常も見落とすことなく測定することができるという顕著な効果を得ることができる。
ここで、例えば、測定装置に撮像部を設ける構成が非常に有用であることから、内径測定部を設けずに、撮像部だけを設けた測定装置によっても、管の内面状態の異常を正確に把握することができるように思われる。ところが、内径測定部を設けずに、撮像部だけを設けた測定装置でも、管の内面状態を正確に把握する観点からは、不充分なのである。なぜなら、撮像画像は、平面画像であり、奥行きに関する情報は乏しいからである。つまり、管の内面における摩耗や腐食は、管の厚さ方向にも進行し、撮像画像だけを見る構成では、管の内面における摩耗や腐食が致命的な影響を与えるものであるかどうかまでは、実際に撮像画像を見ただけでは判断することが困難であるからである。
この点に関し、内径測定部によれば、腐食や摩耗に起因する管の厚さ方向に関する情報を定量的に測定することができることから、管の内面における摩耗や腐食が致命的な影響を与えるものであるかどうかを判断するためには、必要不可欠な構成要素なのである。すなわち、例えば、内径測定部による管の内径の測定は、腐食や摩耗に起因する管の厚さ方向に関する情報を提供するのに対し、撮像部による画像は、腐食や摩耗に起因する管の内面の視覚的な平面情報を提供する点で、提供する情報の種類が相違するのである。
したがって、内径測定部と撮像部とを組み合わせることによって、初めて、腐食や摩耗に起因する管の厚さ方向に関する情報と腐食や摩耗に起因する管の内面の視覚的な平面情報との組み合わせを得ることができる。この点において、管の内径を測定するとともに、管の内面状態を把握するためにカメラによる撮像も併用するという本実施の形態における特徴点は、管の内面状態の異常が致命的な異常であるかを正確に把握する観点から有用な構成であることがわかる。つまり、本実施の形態における特徴点は、管の内面状態の異常を判断するための視点の異なる情報の組み合わせを得ることによって、管の内面状態の異常を正確に把握することができる点で大きな技術的意義を有しているのである。
さらに、本実施の形態における測定方法における特徴点について説明する。
本実施の形態における測定方法は、上述したように、往路工程と復路工程とから構成されている。そして、往路工程と復路工程のいずれにおいても、管の内径の測定とカメラによる管の内面状態の撮像が行なわれる。したがって、まず、本実施の形態における測定方法では、往路工程と復路工程のいずれの工程においても、所定のピッチ間隔での管の内径の測定が実施される。つまり、本実施の形態における具体的な測定方法の第1特徴点は、往路工程と復路工程のいずれの工程においても、所定のピッチ間隔での管の内径の測定を実施している点にある。これにより、ある測定ポイントにおいては、往路工程と復路工程の両方の工程で、合わせて少なくとも2回は管の内径が測定される。このことから、本実施の形態における具体的な測定方法の第1特徴点によれば、信頼性の高い内径測定値を提供することができる。このため、本実施の形態における具体的な測定方法によれば、管の内面状態の異常に対して、信頼性の高い情報を提供することができる。
続いて、本実施の形態における具体的な測定方法の第2特徴点は、往路工程においては、台車の進行方向の前方領域に見える管の内面を含む領域を撮像する一方、復路工程においては、往路工程において撮像された撮像画像に基づいて検出された異常領域に焦点を当てて撮像する点にある。これにより、本実施の形態によれば、まず、往路工程において、管の内面に存在する異常領域を漏れなく特定することができるとともに、復路工程においては、特定された異常領域の詳細な撮像画像を取得することができる。このため、本実施の形態における具体的な測定方法の第2特徴点によれば、管の内面に存在する異常領域を漏れなく特定しながら、かつ、それぞれの異常領域の詳細を把握することができる。
<測定装置の自動化構成>
続いて、本実施の形態における測定装置は、自動化構成が可能である。そこで、以下では、本実施の形態における測定装置の自動化構成について説明する。
図14は、本実施の形態における測定装置の自動化構成を模式的に示す図である。
図14において、本実施の形態における測定装置30は、制御部50を有し、この制御部50によって、測定装置30の自動化が可能となる。具体的に、この制御部50は、デジタルリニアゲージ6と接続されているとともに、カメラ41とも接続されている。また、制御部50は、照明部43と接続されているとともに、台車1と接続されている。
<<ハードウェア構成>>
以下では、まず、制御部50のハードウェア構成について説明する。
図15は、本実施の形態における制御部50のハードウェア構成の一例を示す図である。なお、図15に示す構成は、あくまでも制御部50のハードウェア構成の一例を示すものであり、制御部50のハードウェア構成は、図15に記載されている構成に限らない。
図15において、本実施の形態における制御部50は、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)101を備えている。このCPU101は、バス113を介して、例えば、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、および、ハードディスク装置112と電気的に接続されており、これらのハードウェアデバイスを制御するように構成されている。
また、CPU101は、バス113を介して入力装置や出力装置とも接続されている。入力装置の一例としては、キーボード105、マウス106、通信ボード107、および、スキャナ111などを挙げることができる。一方、出力装置の一例としては、ディスプレイ104、通信ボード107、および、プリンタ110などを挙げることができる。さらに、CPU101は、例えば、リムーバルディスク装置108やCD/DVD-ROM装置109と接続されていてもよい。
制御部50は、例えば、ネットワークと接続されていてもよい。例えば、制御部50がネットワークを介して他の外部機器と接続されている場合、制御部50の一部を構成する通信ボード107は、LAN(ローカルエリアネットワーク)、WAN(ワイドエリアネットワーク)やインターネットに接続されている。
RAM103は、揮発性メモリの一例であり、ROM102、リムーバルディスク装置108、CD/DVD-ROM装置109、ハードディスク装置112の記録媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらの揮発性メモリや不揮発性メモリによって、制御部50の記憶装置が構成される。
ハードディスク装置112には、例えば、オペレーティングシステム(OS)201、プログラム群202、および、ファイル群203が記憶されている。プログラム群202に含まれるプログラムは、CPU101がオペレーティングシステム201を利用しながら実行する。また、RAM103には、CPU101に実行させるオペレーティングシステム201のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一次的に格納されるとともに、CPU101による処理に必要な各種データが格納される。
ROM102には、BIOS(Basic Input Output System)プログラムが記憶され、ハードディスク装置112には、ブートプログラムが記憶されている。制御部50の起動時には、ROM102に記憶されているBIOSプログラムおよびハードディスク装置112に記憶されているブートプログラムが実行され、BIOSプログラムおよびブートプログラムにより、オペレーティングシステム201が起動される。
プログラム群202には、制御部50の機能を実現するプログラムが記憶されており、このプログラムは、CPU101により読み出されて実行される。また、ファイル群203には、CPU101による処理の結果を示す情報、データ、信号値、変数値やパラメータがファイルの各項目として記憶されている。
ファイルは、ハードディスク装置112やメモリなどの記録媒体に記憶される。ハードディスク装置112やメモリなどの記録媒体に記憶された情報、データ、信号値、変数値やパラメータは、CPU101によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・処理・編集・出力・印刷・表示に代表されるCPU101の動作に使用される。例えば、上述したCPU101の動作の間、情報、データ、信号値、変数値やパラメータは、メインメモリ、レジスタ、キャッシュメモリ、バッファメモリなどに一次的に記憶される。
制御部50の機能は、ROM102に記憶されたファームウェアで実現されていてもよいし、あるいは、ソフトウェアのみ、素子・デバイス・基板・配線に代表されるハードウェアのみ、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実現されていてもよい。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、ハードディスク装置112、リムーバルディスク、CD-ROM、DVD-ROMなどに代表される記録媒体に記憶される。プログラムは、CPU101により読み出されて実行される。すなわち、プログラムは、コンピュータを制御部50として機能させる。
このように、本実施の形態における制御部50は、処理装置であるCPU101、記憶装置であるハードディスク装置112やメモリ、入力装置であるキーボード105、マウス106、通信ボード107、出力装置であるディスプレイ104、プリンタ110、通信ボード107を備えるコンピュータである。そして、制御部50の各機能は、上述した処理装置、記憶装置、入力装置、および、出力装置を利用して実現される。
<<機能ブロック構成>>
次に、制御部50の機能ブロック構成について説明する。
図16は、制御部50の機能ブロック構成を示す図である。
図16において、制御部50は、内径入力部301と、内径測定制御部302と、照度コントローラ303と、撮像制御部304と、画像認識部305と、台車制御部309と、出力部310と、データ記憶部311とを有している。
内径入力部301は、図14に示すデジタルリニアゲージ6と接続されており、デジタルリニアゲージ6から管20の内径測定値を入力するように構成されている。そして、内径測定制御部302は、図14に示す測定器2と接続されており、この測定器2による管の内径測定を制御するように構成されている。具体的に、内径測定制御部は、所定のピッチ間隔で管の内径を測定することができるように測定器2を制御するように構成されており、測定器2で測定された内径測定値は、制御部50の内径入力部301に入力されて、制御部50のデータ記憶部311に記憶されるようになっている。
次に、照度コントローラ303は、図14に示すカメラ41に取り付けられた照明部43と接続されており、照明部43から照射される照射光の強度を調整することができるように構成されている。この照度コントローラ303によって、カメラ41は、管20の内面状態を鮮明に撮像することができる。
続いて、撮像制御部304は、図14に示すカメラ41と接続されており、カメラ41による撮像を制御するように構成されている。具体的に、撮像制御部304は、カメラ41の向きを調整できるように構成されている。例えば、撮像制御部304でカメラ41の向きを変えることによって、測定子3と管20の内面との接触領域を含む領域を被撮像領域(第1被撮像領域)とすることができる一方、台車1の進行方向の前方領域に見える管20の内面を含む領域も被撮像領域(第2被撮像領域)とすることができる。
次に、画像認識部305は、カメラ41と接続されており、カメラ41で撮像された画像を入力して、この画像に異常領域が存在するか否かを判断することができるように構成されている。そして、この画像認識部305は、さらに、カメラ41で撮像された画像に異常領域が存在すると、この異常領域の位置情報を取得することができるようにも構成されている。このように構成されている画像認識部305は、画像入力部306と、判断部307と、位置情報取得部308を有している。
ここで、画像入力部306は、カメラ41で撮像された画像データを入力するように構成されており、画像入力部306に入力された画像データは、例えば、データ記憶部311に記憶される。一方、判断部307は、データ記憶部311に記憶されている画像データに基づいて、カメラ41で撮像された画像中に異常領域が存在するか否かを判断することができるように構成されている。そして、判断部307は、画像中に異常領域が存在するか否かの情報(データ)をデータ記憶部311に記憶するように構成されている。次に、位置情報取得部308は、判断部307によって、画像中に異常領域が存在すると判断された場合、この異常領域が管の内面のどの位置に存在するかを示す位置情報(位置データ)を算出して取得するように構成されている。このとき、位置情報取得部308によって取得された異常領域の位置情報は、データ記憶部311に記憶される。
続いて、台車制御部309は、図14に示す台車1と接続されており、台車1の移動を制御するように構成されている。この台車制御部309による台車1の移動の制御によって、台車1は、管20の一端部から管20の他端部まで移動した後、管20の他端部から管20の一端部まで移動することができる。
最後に、出力部は、例えば、データ記憶部311に記憶されている様々な種類のデータを出力するように構成されている。
以上のようにして、本実施の形態における制御部50が構成されている。
このように構成されている制御部50によれば、測定装置30による測定動作を自動化することができる。具体的に、例えば、往路工程における内径測定動作(図8)や往路工程における撮像動作(図9)と、復路工程における内径測定動作(図11および図12)や復路工程における撮像動作(図13)とを制御部50で実現することができる。
<押出機への適用>
本実施の形態における測定装置30は、様々な種類の管20の内径測定に幅広く適用することができるが、以下では、具体的な一例として、本実施の形態における測定装置30を押出機の構成要素であるシリンダの内径測定に適用する例について説明する。
<<薄膜の製造システム>>
図17は、本実施の形態における薄膜の製造システムの構成を示す模式図である。
図17において、本実施の形態における薄膜の製造システムは、単軸押出機EXと、ダイTと、原反冷却装置Cと、同時二軸延伸装置STと、巻取装置WIとを有している。
例えば、図17に示す単軸押出機EXの原料供給部Taに樹脂材料(ペレット)および添加剤などを供給する。そして、押出機EXにおいて樹脂材料を混合しながら輸送(搬送)して、混練物(溶融樹脂)をダイTのスリットから押し出す。その後、ダイTのスリットから押し出された混練物は、原反冷却装置Cにおいて冷却されて薄膜(シート、フィルム)となる。そして、この薄膜は、同時二軸延伸装置STによりMD(Machine Direction)方向およびTD(Transverse Direction)方向に延伸された後、引き延ばされた薄膜は巻取装置WIで巻き取られる。
このようにして、本実施の形態における薄膜の製造システムによれば、薄膜を製造することができる。なお、図17に示す薄膜の製造システムは一例であり、製造する薄膜の特性に応じて、抽出槽を設けることもできるし、薄膜中の可塑剤(例えば、パラフィンなど)を除去することができるようにも構成することができる。
<<押出機の構成>>
図18は、単軸押出機の模式的な構成を示す図である。
図18において、本実施の形態における単軸押出機EXは、原料樹脂粒子500が挿入される原料供給部Taと、モータ501と、減速機502と、シリンダ503と、スクリュ504と、ヒータ505と、フィルタ506と、ブレーカプレート507と、アダプタ508とを有している。このように構成されている単軸押出機EXにおいては、原料供給部Taに挿入された原料樹脂粒子500がシリンダ503に注入される。このとき、モータ501からの駆動力が減速機502を介して、シリンダ503の内部に配置されているスクリュ504に伝わって、スクリュ504が回転する。これにより、シリンダ503に注入された原料樹脂粒子500は、シリンダ503に取り付けられたヒータ505によって加熱されながら、回転するスクリュによって混練された後、フィルタ506およびブレーカプレート507を通って、アダプタ508に接続されているダイTに供給される。
<<押出機で発生する重要問題>>
次に、押出機EXで発生する最難関の問題について説明する。
押出機EXで発生する最難関の問題は、スクリュの摩耗である。具体的に、図18において、スクリュ504は、原料樹脂粒子500が通過できるわずかな隙間を介してシリンダ503の内部に配置される結果、スクリュ504の摩耗が発生する。
このようなスクリュ504の摩耗が発生すると、押出機EXにおいては、混練樹脂の押出量の低下が発生する。すなわち、スクリュ504の摩耗が発生すると、フライト(スクリュ504)とシリンダ503との間の隙間が大きくなり、溶融樹脂の漏洩流が増大することになる。つまり、フライト(スクリュ504)とシリンダ503との間の隙間が大きくなると、溶融樹脂の漏洩流が増大するが、溶融樹脂の漏洩流が増大は、押出機EXにおける送り量と溶融量と推進流の減少を招くことになり、これによって、押出量が低下する。
さらに、押出機EXにおいて、上述した要因によって押出量が減少した場合、同一の押出量を得るためには、スクリュ504の回転数の増加が必要となる。ところが、スクリュ504の回転数を増加させると、樹脂温度の上昇や製品(薄膜)の品質低下を招くことになる。さらには、フライト(スクリュ504)とシリンダ503との間の隙間が、適正な隙間範囲を超えると、ブレークアップにより、スクリュ504の摩耗が加速度的に進行する。この結果、スクリュ504の振れ回り現象(偏芯)が大きくなって、スクリュ504の摩耗を進行させるだけでなく、金属粉の発生も生じて、製品(薄膜)の品質低下を招く。
以上のことから、押出機EXにおいては、スクリュ504の摩耗を抑制することが必要であるが、スクリュ504の摩耗は、シリンダ503とスクリュ504との接触を意味することから、シリンダ503の摩耗も意味し、このシリンダ503の摩耗は、上述したスクリュ504の摩耗と同様に、フライト(スクリュ504)とシリンダ503との間の隙間が大きくなることを意味する。したがって、シリンダ503の摩耗も早期に検出して、シリンダ503の交換などの対策を講じることが重要である。
ここで、シリンダ503の摩耗は、「カジリ摩耗」と「土砂摩耗」と「腐食摩耗」の三種類に大別される。具体的に、「カジリ摩耗」は、スクリュ504とシリンダ503との金属接触による摩耗であり、「土砂摩耗」は、フィラーに起因する摩耗であり、「腐食摩耗」は、原料中の腐食成分による摩耗である。このことから、シリンダ503の摩耗も早期に検出して、シリンダ503の交換などの対策を講じるに際して、摩耗の種類も判別することができることが望ましい。つまり、押出機EXの構成要素であるシリンダ503の摩耗を測定する測定装置においては、シリンダ503の摩耗の種類も特定できることが望ましい。なぜなら、シリンダ503の摩耗の種類を特定することができれば、どのような対策を講じることが最も効果的であるかを容易に把握することができるからである。
<<実施の形態における測定装置の有用性>>
この点に関し、本実施の形態における測定装置30は、押出機EXのシリンダ503の摩耗を測定する観点から非常に優れているので、この点について説明する。
本実施の形態における測定装置30では、内径測定部の他に、カメラによる撮像部を有しており、この撮像部によって、管の内面状態を撮像した撮像画像が提供される。この結果、本実施の形態における測定方法によれば、撮像部によって撮像された撮像画像を見ることによって、直接的に管の内面状態を把握することができる。このことは、本実施の形態における測定装置30によれば、シリンダ503の摩耗が、「カジリ摩耗」と「土砂摩耗」と「腐食摩耗」の三種類のうちのいずれの摩耗であるかを判断しやすくなることを意味する。この結果、本実施の形態における測定装置30の測定結果に基づいて、どの工程に問題があるのかを特定しやすくなり、これによって、最も効果的な対策を講じることができる。このため、本実施の形態における測定装置30の測定結果を利用することにより、シリンダ503の摩耗の発生を最小限にするフィードバックも可能となり、これによって、シリンダ503の寿命を長くすることもできると考えられる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。