JP7251735B2 - トイレユニット設置方法及びトイレユニット設置構造 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 2018年8月29日に、佐藤奨悟、大塚雅之、若菜颯人、亘理咲綺、小柴貞弘、及び、土井章弘が、平成30年度空気調和・衛生工学会大会(名古屋)学術講演論文集の第117頁~第120頁、及び第121頁~第124頁にて、公開した。
本発明は、排水立て管と通気立て管とが複数階に亘って設けられた建物の設置対象階において、床上に敷設された床上排水管に複数の便器が接続されてなる床上排水式トイレユニットを設置するトイレユニット設置方法及びトイレユニット設置構造に関する。
近年、建物の改修工事の際、各階のトイレ設備については、床下排水式のものから床上排水式のトイレユニットに更新される傾向にある。かかる床上排水式トイレユニットは、床上に敷設された床上排水管に複数の便器が接続されて構成されている。
便器等の排水器具では、排水時の排水管内の圧力変動により排水トラップの封水が吸引されて空になる所謂誘導サイホン現象を防止する必要がある。このような誘導サイホン現象を防止するためには、排水器具から排水される排水経路を大気開放された通気立て管に接続する通気方式を採用する必要がある。例えば、このような通気方式としては、複数の排水器具が接続された床上側の排水管の最遠端に位置する排水器具の下流側直近と通気立て管とをループ通気管で接続するループ通気方式(例えば、特許文献1を参照。)や、排水立て管における排水管の接続部よりも上流側と通気立て管とを結合通気管で接続する結合通気方式(例えば、特許文献2を参照。)が知られている。
特開平11-013115号公報 特開2012-162906号公報
しかしながら、床上排水式トイレユニットを設置するにあたって上記ループ通気方式を採用する場合には、床上側においてループ通気管を敷設するための比較的大きなスペースが必要となる。例えば、ループ通気管は、一端側が床上側で排水管の最遠端に位置する排水器具の下流側直近に接続され、他端側がその反対側に位置するパイプシャフトに設けられた通気立て管に対して、その階における最高位の排水器具のあふれ縁より150mm以上上方で接続されることから、一般的には天井に沿って敷設されることになる。そして、このようなループ通気管の設置スペースが原因で、床上排水式トイレユニットの設置コストが嵩む上に、床上側のトイレ内空間のプランの自由度が悪化するという問題が生じる。
また、上記結合通気方式を採用する場合には、排水立て管における結合通気管の接続部位が一時的に排水で満たされた状態となって、結合通気管の通気性能が悪化することが懸念される。また、建物の改修を想定すると、既存の排水立て管に結合通気管を接続するための接続部を新たに設けることは、コストが嵩む上に、建物全体の排水を長時間停止させる必要があるなどの問題が生じる。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、建物の設置対象階において、床上に敷設された床上排水管に複数の便器が接続されてなる床上排水式トイレユニットを設置するにあたって、排水器具から排水される排水経路を大気開放された通気立て管に接続して誘導サイホン現象を適切に防止しながら、床上側での通気管の設置スペースを最小限にしてコスト削減及びトイレ内空間プランの自由度の向上を実現できる技術を提供する点にある。
本発明に係るトイレユニット設置方法の第1特徴構成は、排水立て管と通気立て管とが複数階に亘って設けられた建物の設置対象階において、床上に敷設された床上排水管に複数の便器が接続されてなる床上排水式トイレユニットを設置するトイレユニット設置方法であって、
前記排水立て管に接続されて当該排水立て管から床下側に延出する排水横枝管を、床を貫通する床貫通管を介して前記床上排水管に接続し、
前記通気立て管に接続された通気用枝管を、前記排水横枝管の上側部分に接続する点にある。
また、本発明に係るトイレユニット設置構造の特徴構成は、排水立て管と通気立て管とが複数階に亘って設けられた建物の設置対象階に設置され、
床上に敷設された床上排水管と、
当該床上排水管に複数の便器が接続されてなる床上排水式トイレユニットと、
を備えたトイレユニット設置構造であって、
前記排水立て管に接続されて当該排水立て管から床下側に延出する排水横枝管と、
床を貫通して、前記排水横枝管と前記床上排水管とを接続する床貫通管と、
前記排水横枝管の上側部分と前記通気立て管とを接続する通気用枝管と、を備えた点にある。
本構成によれば、床を貫通する床貫通管とそれに接続された床下側の排水横枝管とを通じて、複数の便器が接続された床上排水管を排水立て管に接続する形態で、排水経路を構築することができる。このように構築した排水経路では、排水立て管から床下側に延出する排水横枝管の上側部分では排水が満たされ難い状態となる。そして、このように排水が満たされ難い排水横枝管の上側部分に対して通気立て管に通じる通気用枝管を接続するので、排水経路における排水時の管内の圧力変動を良好に抑制して、誘導サイホン現象を適切に防止することができる。
更に、このような通気用枝管は、排水立て管から床下側に延出する排水横枝管とその排水立て管に隣接配置された通気立て管とを接続するものとなることから、比較的短い長さの配管を床下側に設ける形態で簡単に施工することができる。よって、このように施工した通気用枝管が床上側のトイレ内空間に悪影響を及ぼすことなく、設置コストを安価にできる。
従って、本発明により、建物の設置対象階において、床上に敷設された床上排水管に複数の便器が接続されてなる床上排水式トイレユニットを設置するにあたって、排水器具から排水される排水経路を大気開放された通気立て管に接続して誘導サイホン現象を適切に防止しながら、床上側での通気管の設置スペースを最小限にしてコスト削減及びトイレ内空間プランの自由度の向上を実現できる技術を提供することができる。
本発明に係るトイレユニット設置方法の第2特徴構成は、前記通気立て管が、改修前のトイレ設備のループ通気管が接続されていた既存接続部を有し、
前記通気用枝管を、前記通気立て管において前記既存接続部に接続する点にある。
本構成によれば、通気立て管の床上側において、改修前のトイレ設備のループ通気管が接続されていた既存接続部が存在する場合には、その既存接続部を通気用枝管の接続部として有効利用することができる。
本発明に係るトイレユニット設置方法の第3特徴構成は、前記通気用枝管を、前記排水立て管及び前記通気立て管が設けられたパイプシャフト内において、前記排水横枝管の上側部分及び前記通気立て管に接続する点にある。
本構成によれば、通気用枝管全体をパイプシャフト内若しくはパイプシャフト近傍に設けることができるので、当該通気用枝管の設置コストや設置スペースを一層軽減することができる。
本実施形態のトイレユニット設置構造の概略構成図 改修前のトイレ設備の構成を示す図 比較例(a)と実施例(b)とのの許容流量値を示す表図
本発明に係るトイレユニット設置方法及びトイレユニット設置構造の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示す本実施形態のトイレユニット設置構造100(以下「本実施構造100」と呼ぶ場合がある。)は、排水立て管10と通気立て管20とが複数階に亘って設けられた建物の設置対象階1に設置されたトイレ設備の構造であって、本実施形態のトイレユニット設置方法(以下「本実施方法」と呼ぶ場合がある。)を採用した改修工事により、改修前のトイレ設備70(図2参照)を撤去して新たな床上排水式トイレユニット50を設置した構造として構成されている。
この建物では、下端が下水管に接続された排水立て管10と、上端が大気開放された通気立て管20とが、建物の複数階に亘って設けられたパイプシャフト2内に配置されている。また、この設置対象階1では、床3の上方に室内空間が設けられており、その床3の下に床下空間1bが設けられており、室内空間の上に天井空間1aが設けられている。
図1に示すように、床上排水式トイレユニット50は、設置対象階1の床3の上に敷設された床上排水管52に対して複数の便器51の夫々が接続されたものとして構成されている。
更に、本実施構造100には、排水立て管10の接続部10aに接続されて当該接続部10aから床下空間1b側に延出する排水横枝管56と、床3に形成された貫通穴3aに挿通される状態で当該床3を貫通して、排水横枝管56と床上排水管52とを接続する床貫通管55と、が設けられている。即ち、本実施方法では、排水横枝管56が床貫通管55を介して床上排水管52に接続される。
このようにして、各便器51からの排水を、床上排水管52、床貫通管55、及び排水横枝管56を順に通流させて、排水立て管10へ排出する形態の排水経路が構築される。
上記のような排水経路は大気開放された通気立て管20に接続して誘導サイホン現象を適切に防止する必要がある。そこで、本実施形態では、床上排水式トイレユニット50を設置するにあたって、誘導サイホン現象を適切に防止しながら、通気立て管20に接続するための通気管の床3の上側での設置スペースを最小限にしてコスト削減及びトイレ内空間プランの自由度の向上を実現するものとされており、その詳細について以下に説明を加える。
本実施構造100には、排水横枝管56の上側部分に設けられた接続部56aとそれよりも上方にある通気立て管20の接続部20aとを接続する通気用枝管60が設けられている。即ち、本実施方法では、通気用枝管60が排水横枝管56の上側部分に設けられた接続部56aに接続される。
上記のように排水が満たされ難い排水横枝管56の上側部分の接続部56aに対して通気立て管20に通じる通気用枝管60が接続されているので、排水経路における排水時の管内の圧力変動が良好に抑制されて、誘導サイホン現象が適切に防止される。また、通気用枝管60は、排水立て管10から床下空間1bに延出する排水横枝管56とその排水立て管10に隣接配置された通気立て管20とを接続するものであることから、比較的短い長さの配管で構築することができ、床下空間1b側において簡単に施工することができる。
通気用枝管60の一端側が接続される排水横枝管56の接続部56aは、排水立て管10及び通気立て管20が設けられたパイプシャフト2内における床3の下側に位置する。一方、通気用枝管60の他端側が接続される通気立て管20の接続部20aは、同パイプシャフト2内における床3の上側に位置する。即ち、通気用枝管60は、パイプシャフト2内において、一端側が床3の下側で排水横枝管56の接続部56aに接続され、その接続部から立ち上げられて床3に形成された新設の貫通穴3bに挿通され、他端側が床3の上側で通気立て管20の接続部20aに接続されている。
よって、通気用枝管60全体がパイプシャフト2内若しくはその近傍に設けられることになって、当該通気用枝管60の設置コストや設置スペースが一層軽減される。
排水立て管10の接続部10aや通気立て管20の接続部20aは、改修前のトイレ設備70(図2参照)において既に設けられていた既存接続部である。
即ち、図2に示すように、改修前のトイレ設備70では、各便器71は床3を貫通して床下空間1bに設けられた床下排水管72に接続されている。そして、この床下排水管72は、床下空間1bからパイプシャフト2内に挿入されて、当該パイプシャフト2内の床3の下側において、排水立て管10の接続部10aに接続されている。
また、この改修前のトイレ設備70には、誘導サイホン現象を防止するための通気管として、ループ通気管80が設けられている。このループ通気管80は、床下空間1bに配置された床下排水管72において最上流に位置する便器71の接続部の下流側に一端側が接続され、その接続部から立ち上げられて床3を貫通して壁内空間1cを通り、天井空間1aからパイプシャフト2内に挿入されて、当該パイプシャフト2内の床3の上側において、通気立て管20の接続部20aに接続されている。
そして、図1に示す改修後の本実施構造100では、改修前のトイレ設備70(図2参照)で利用していた排水立て管10の接続部10aを、新たに施工した排水横枝管56の接続部として有効利用し、改修前のトイレ設備70(図2参照)で利用していた通気立て管20の接続部20aを、新たに施工した通気用枝管60の接続部として有効利用している。
これまで説明した本実施構造100で採用した通気方式による誘導サイホン現象の防止効果を検証するための実験結果を以下に説明する。
尚、本実験において、便器51は、1回の排水量が6Lと節水型でフラッシュバルブ及びタンク併用式(フラッシュタンク(登録商標)式)のTOTO社製のパブリックコンパクト便器を利用した。また、排水器具からの排水経路を大気開放された通気立て管に接続する通気方式として、本実施構造100のように通気立て管に接続された通気用枝管を排水横枝管の上側部分の接続部に接続する通気方式(以下「排水横枝管通気方式」と呼ぶ。)を採用した例を実施例とし、排水立て管から分岐して立ち上げた通気管を隣接する通気立て管に接続する通気方式(一般的に「結合通気方式」と呼ばれる。)を採用した例を比較例とする。
本実験では、複数階において排水器具から排水立て管への排水経路を設けたモデルを準備し、誘導サイホン現象を防止し得る最大の排水流量である許容流量値を実験により求め、その許容流領値が大きいほど誘導サイホン現象の防止効果が大きいとして評価した。
また、上記実施例及び上記比較例の夫々において、上記夫々の通気方式を採用した階の数を接続箇所数として4箇所、3箇所、1箇所と夫々変化させたときの許容流量値を図3に示す。
図3に示す実験結果からも判るように、本実施構造100と同じ排水横枝管通気方式を採用した実施例では、従来の結合通気方式を採用した比較例以上の許容流量値を達成していることから、充分な誘導サイホン現象の防止効果が期待できるといえる。
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)本実施形態では、既存の建物の改修工事において本発明に係るトイレユニット設置方法を採用する例を説明したが、本発明に係るトイレユニット設置方法は、当然新築の建物において床上排水式トイレユニットを設置する場合でも採用することができる。
(2)本実施形態では、改修前のトイレ設備70(図2参照)において既に設けられていた排水立て管10の接続部10aや通気立て管20の接続部20aを有効利用して、排水横枝管56や通気用枝管60を接続したが、これら排水横枝管56及び通気用枝管60用の接続部を新たに排水立て管10及び通気立て管20に設けても構わない。
(3)本実施形態では、排水横枝管56において通気用枝管60の接続部56aをパイプシャフト2内に設けることで、通気用枝管60全体をパイプシャフト2内に収めるように構成したが、床下空間1bで排水横枝管56に通気用枝管60を接続するように構成しても構わない。
1 設置対象階
1b 床下空間
2 パイプシャフト
3 床
10 排水立て管
10a 接続部(既存接続部)
20 通気立て管
20a 接続部(既存接続部)
50 床上排水式トイレユニット
51 便器
52 床上排水管
55 床貫通管
56 排水横枝管
60 通気用枝管
70 改修前のトイレ設備
80 ループ通気管
100 トイレユニット設置構造

Claims (4)

  1. 排水立て管と通気立て管とが複数階に亘って設けられた建物の設置対象階において、床上に敷設された床上排水管に複数の便器が接続されてなる床上排水式トイレユニットを設置するトイレユニット設置方法であって、
    前記排水立て管に接続されて当該排水立て管から床下側に延出する排水横枝管を、床を貫通する床貫通管を介して前記床上排水管に接続し、
    前記通気立て管に接続された通気用枝管を、前記排水横枝管の上側部分に接続するトイレユニット設置方法。
  2. 前記通気立て管が、改修前のトイレ設備のループ通気管が接続されていた既存接続部を有し、
    前記通気用枝管を、前記通気立て管において前記既存接続部に接続する請求項1に記載のトイレユニット設置方法。
  3. 前記通気用枝管を、前記排水立て管及び前記通気立て管が設けられたパイプシャフト内において、前記排水横枝管の上側部分及び前記通気立て管に接続する請求項1又は2に記載のトイレユニット設置方法。
  4. 排水立て管と通気立て管とが複数階に亘って設けられた建物の設置対象階に設置され、
    床上に敷設された床上排水管と、
    当該床上排水管に複数の便器が接続されてなる床上排水式トイレユニットと、
    を備えたトイレユニット設置構造であって、
    前記排水立て管に接続されて当該排水立て管から床下側に延出する排水横枝管と、
    床を貫通して、前記排水横枝管と前記床上排水管とを接続する床貫通管と、
    前記排水横枝管の上側部分と前記通気立て管とを接続する通気用枝管と、を備えたトイレユニット設置構造。
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