JP7250714B2 - ピストンリング及び皮膜 - Google Patents

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    • F16J9/26Piston-rings, e.g. non-metallic piston-rings, seats therefor; Ring sealings of similar construction characterised by the use of particular materials

Description

本開示は、ピストンリング及び皮膜に関する。
自動車等のエンジンにピストンリングが用いられている。ピストンリングは、ピストンの外周面に設けられた溝に装着される。ピストンリングは、例えば、耐摩耗性及び耐焼付性の特性によってエンジンの高性能化及び燃料消費量の低減に寄与することが求められる。従来、ピストンリングの耐摩耗性を向上させるための種々の取り組みがなされてきた。
例えば、特許文献1に記載の発明は、燃料直接噴射又は排ガス再循環(EGR)が適用されたエンジン内の過酷な条件下においても耐摩耗性に優れる摺動部材を提供すべくなされたものである。この摺動部材は、金属の窒化物又は金属の炭化物又は金属の炭窒化物よりなる結晶相及び非晶質相の混合組織よりなる皮膜が基材を被覆している。
特許文献2に記載の発明は、耐摩耗性及び耐クラック性・耐剥離性を兼ね備えた内燃機関用ピストンリングを提供すべくなされたものである。このピストンリングは、Cr、N及びSiを構成元素とし、CrNと同一の結晶構造を有し、かつ、その結晶格子中にSi原子比率で1%以上、9.5%以下の割合で固溶した結晶相から構成されている硬質皮膜が少なくとも外周摺動面に形成されている。
特開2002-266697号公報 特開2008-14228号公報
近年、エンジンの高出力化及び排気ガス規制に対応することを目的として、例えば、燃焼温度の高温化、低粘度潤滑油の採用、バイオエタノール等の燃料の多様化及び高圧燃料噴射の採用が進展している。これに伴ってピストンリングの使用環境は年々過酷かつ境界潤滑環境になってきている。従来からピストンリングに採用されている表面処理では、耐剥離性、耐摩耗性、耐クラック性の問題により、十分な性能を発揮できない状況が散見されるようになっている。
上記特許文献1,2は、いずれもイオンプレーティング法によって皮膜を形成することを開示している。イオンプレーティング法によるCrN系皮膜、TiN系皮膜又はこれらの積層皮膜は、ピストンリングの耐摩耗性及び耐剥離性を向上させる。しかし、今後、ピストンリングの使用環境がより過酷になることを想定すると、これらの皮膜も耐摩耗性及び耐剥離性について未だ改善の余地がある。
硬質窒化クロム(CrN)は、耐摩耗性に優れる材料である。しかし、上記のような過酷な環境下においては摺動抵抗に起因してクラックが生じ得る点において改善の余地がある。一方、硬質窒化チタン(TiN)は、ヤング率の値が大きいことから、耐剥離性に優れる材料である。しかし、上記のような過酷な環境下においては熱負荷に対する耐酸化性や、エンジン内で生成される酸に対する耐腐食性の点において改善の余地がある。
本開示は、金属元素と、Siと、Nとを含む皮膜が設けられたピストンリングであって耐剥離性、耐クラック性及び耐摩耗性の全てが十分に高水準であるピストンリングを提供する。また、本開示は、耐剥離性、耐クラック性及び耐摩耗性の全てが十分に高水準である皮膜を提供する。
従来のCr-Si-N系皮膜は、硬さが大きい反面、皮膜内にクラックが入りやすいという課題があった。皮膜内のクラックは剥離の原因となる。ピストンリングは連続した摺動及び繰返し荷重に晒されるため、従来のCr-Si-N系皮膜はピストンリングへの適用は困難であると考えられていた。しかし、本発明者らは、ピストンリングの試作と評価を繰り返した結果、耐剥離性、耐クラック性及び耐摩耗性の全てを十分に高水準に達成できる皮膜の構成を特定し、以下の発明を完成させるに至った。
本開示の一側面はピストンリングに関する。このピストンリングは、基材と、基材の表面の少なくとも一部を覆うように設けられており、金属元素と、Siと、Nとを含む皮膜とを備え、金属元素がCr及びAlを少なくとも含み、皮膜に含まれる金属元素の全量を基準として、皮膜のAl量が10~50at%であり、皮膜がNaCl型の結晶構造を有する。
皮膜の組成をMe-Si-N(Meは金属元素を示す。)で表した場合、Meは、少なくともCr及びAlである。Si添加によって皮膜の耐摩耗性をある程度向上させることは可能である。これは結晶粒を微細化して皮膜を緻密化するSiの作用によるものである。しかし、SiはベースとなるMeNへの固溶限が小さいため、その効果は限定的である。一方、AlはMeNへの固溶限が大きく、MeNの中でもCrNへの固溶限が特に大きいため、皮膜のAl量を10~50at%とすることができ、Al添加の効果を最大限享受することができる。
CrNにAlを添加することで以下の効果が奏される。すなわち、Alは酸化物を形成しやすく、Al単独でも保護膜としての耐摩耗効果もある。これに加え、本開示における皮膜は、AlとSiが共存していることから、Alの酸化物とSiの酸化物の化合物であるムライト(3Al・2SiO)も生成可能な状態である。ムライトは耐摩耗性に優れる物質である。皮膜は、摺動や繰返し応力などの断続的な高いエネルギーが付与されるとともに、燃焼ガスやエンジンオイルに晒される環境下で使用される。また、燃焼生成物である酸や煤などが発生消滅を繰り返す複雑な系の中で皮膜が用いられることで、AlとSiの複合酸化物が生成して優れた耐摩耗性が発現する。更に、CrNのヤング率は約400GPaであるのに対し、AlNのヤング率は約350GPaである。異なるヤング率を有する材料を複合化することで、高い耐クラック性及び高い耐剥離性を実現できる。
本開示の一側面は上記皮膜に関する。すなわち、本開示に係る皮膜は、金属元素と、Siと、Nとを含み、金属元素がCr及びAlを少なくとも含み、金属元素の全量を基準として、Al量が10~50at%であり、NaCl型の結晶構造を有する。この皮膜は、耐剥離性、耐クラック性及び耐摩耗性の全てが十分に高水準である。
本開示によれば、金属元素と、Siと、Nとを含む皮膜が設けられたピストンリングであって耐剥離性、耐クラック性及び耐摩耗性の全てが十分に高水準であるピストンリングが提供される。また、本開示によれば、耐剥離性、耐クラック性及び耐摩耗性の全てが十分に高水準である皮膜が提供される。
図1は、本開示のピストンリングの一実施形態を模式的に示す断面図である。 図2は、皮膜のSi量を横軸とし、結晶子サイズを縦軸として、実施例及び比較例の結果をプロットしたグラフである。 図3は、すべり疲労試験機の構成を示す模式図である。 図4は、皮膜のAl量とMe量の比(Al/Me)を横軸とし、被膜の摩耗量を縦軸として、実施例及び比較例の結果をプロットしたグラフである。
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(ピストンリング)
図1は本実施形態に係るピストンリングを模式的に示す断面図である。図1に示すピストンリング10は、内燃機関(例えば、自動車エンジン)用圧力リングである。圧力リングは、例えば、ピストンの側面に形成されたリング溝に装着される。圧力リングは、特にエンジンの熱負荷の高い環境に晒されるリングである。
ピストンリング10は環状であり、例えば、外径が40~300mmである。ここでいう「環状」とは、必ずしも閉じた円を意味するものではなく、ピストンリング10は合口部を有していてもよい。また、ピストンリング10は、平面視で真円状でもよいし、楕円状でもよい。ピストンリング10は図1に示す断面において略矩形であり、摺動面10Fは外側に膨らんだ丸みを帯びていてもよい。
ピストンリング10は、基材1と、基材1の外周面(摺動面10Fに対応する表面)に設けられた皮膜5とを備える。基材1は、耐熱性を有する合金からなる。合金の具体例として、ばね鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼などが挙げられる。基材1は、表面に窒化層が形成されたものであってもよい。
皮膜5は摺動面10Fを構成している。皮膜5は、Me-Si-N系材料(Meは金属元素を示す。)からなり、NaCl型の結晶構造を有する。結晶構造がNaCl型であるか否かはX線回折データに基づいて判断することができる。
皮膜5の厚さは、例えば、5~70μmであり、好ましくは10~50μmである。皮膜5の厚さが5μm以上であることで、ピストンリング10の耐久性を高くできる傾向にあり、他方、70μm以下であることで、皮膜5の高い生産性を確保できる。
金属元素Meは、少なくともCr及びAlである。Me-Si-N系材料におけるAl量は、10~50at%以上であり、好ましくは10~25at%であり、より好ましくは13~20at%である。Al量がこの範囲内であることで、皮膜5の耐摩耗性を十分に高くできる。Me-Si-N系材料におけるCr量は、好ましくは30~40at%であり、より好ましくは32~38at%であり、更に好ましくは33~37at%である。Cr量がこの範囲内であることで、皮膜5の硬さを十分に大きくできる。金属元素Meは、Cr及びAlの他に、例えば、Ti、Zr、Nb、B、Cを更に含んでもよい。皮膜5の組成は、皮膜5を物理蒸着法(PVD法)で形成する際に使用するターゲットの組成で調整することができる。
皮膜5のSi量は、好ましくは1~6at%であり、より好ましくは1.5~5.0at%であり、更に好ましくは1.5~4.0at%である。Si量が1at%以上の皮膜5は微細化した結晶粒で構成され、優れた硬さを有する。皮膜5のSi量が6at%以下であることで、皮膜5内に適度な量のアモルファス相が形成されやすい。このアモルファス相がクラックの抑制に寄与すると推察される。皮膜5のSi量は、皮膜5を物理蒸着法(PVD法)で形成する際に使用するターゲットのSi量で調整することができる。
皮膜5に含まれる金属元素の量(at%)に対するSi量(at%)の比(Si/Me)は、好ましくは0.01~0.06であり、より好ましくは0.02~0.04であり、更に好ましくは0.025~0.035である。比Si/Meの値が上記範囲内であることで、皮膜5の耐摩耗性を十分に高くできる。
皮膜5の結晶子サイズは、好ましくは10~30nmであり、より好ましくは15~25nmである。結晶子サイズが30nm以下であることで、皮膜5が摩耗しても一度に摩耗する単位が小さくなり耐摩耗性が向上する。
皮膜5の圧縮の残留応力は、好ましくは300~800MPaである。皮膜5の残留応力(圧縮)が上記範囲内であることで、基材1(合金又は窒化層)との応力差を小さくすることができ、これにより、基材1と皮膜5の界面における剥離を抑制できる。これに加え、Siの添加で生じやすい皮膜5内のクラックを抑制できる。
皮膜5の硬さは、好ましくは1200HV0.1~2000HV0.1であり、より好ましくは1200HV0.1~1900HV0.1であり、更に好ましくは1300HV0.1~1800HV0.1である。ナノインデンターによって得られる皮膜5の硬さH(GPa)と、皮膜5のヤング率E(GPa)の比H/Eは、好ましくは0.04~0.07であり、より好ましくは0.05~0.06である。比H/Eが上記範囲内であると、皮膜5が適度に弾性変形することができ、これにより、摺動により生じるヘルツ応力が低減され、優れた耐剥離性が達成される。なお、皮膜5の硬さHとヤング率Eは、超微小押し込み硬さ試験機(装置名:ENT-1100a、エリオニクス製)を使用して、ISO14577に規定された試験法に基づき、先端形状が正三角錐(バーコビッチ型)のダイヤモンド圧子用い、試験荷重0.4Nにて硬さ試験を実施し、試験時に圧子にかかる荷重と圧子の変位から得られる「荷重-変位曲線」から求めた。
(ピストンリングの製造方法)
次に、ピストンリング10の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、以下の工程を含む。
(a)基材1の表面を洗浄する工程。
(b)基材1の表面の少なくとも一部に、物理蒸着法によって皮膜5を形成する工程。
(a)工程は、皮膜5の形成に先立ち、基材1の表面を清浄な状態にするための工程である。例えば、脱脂やショットブラストによる洗浄処理を実施すればよい。これに加えて、チャンバー内においてボンバードクリーニングを実施してもよい。
(b)工程における皮膜5の形成は、物理蒸着法により実施することができる。皮膜5の形成は、チャンバー内を窒素雰囲気にしてから実施される。物理蒸着法としては、イオンプレーティング法、スパッタリング法などが挙げられる。これらの物理蒸着法はいずれも、真空チャンバー内で実施されるものであり、真空チャンバーの窒素圧力を、例えば、2~6Paの範囲に設定する。また、バイアス電圧を、例えば、-5~-18Vの範囲に設定する。
ターゲットの組成を変更することで、皮膜5の組成を調整できる。ターゲットとして、Cr-Al-Si合金を単独で使用してもよいし、Cr-Si合金とCr-Al合金を併用してもよい。チャンバー内にSi含有ガスを供給することによって皮膜5のSi量を調整してもよい。皮膜5のSi量によって、皮膜5の硬さを調整できるとともに、結晶配向性及び結晶子サイズを調整できる。皮膜5を形成する際の温度(成膜温度)によっても、これらの物性を調整できる。成膜温度は、例えば、550℃以下の範囲であればよい。チャンバー内の窒素圧力及びバイアス電圧を調整することで、皮膜5の残留応力及び硬さを調整してもよい。
この製造方法によれば、耐剥離性、耐クラック性及び耐摩耗性の全てが十分に高水準であるピストンリング10を製造することができる。
以下、本開示について実施例及び比較例に基づいてより詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
ピストンリングの基材として、以下の組成のリングを準備した。
・Fe:80.4質量%
・C:0.85質量%
・Cr:17.0質量%
・Si:0.5質量%
・Mn:0.5質量%
・その他の元素:残部
(実施例1,2及び比較例1~3)
実施例1,2及び比較例1~3に係るピストンリングを以下のようにしてそれぞれ作製した。すなわち、まず、基材を脱脂及び洗浄した後、チャンバー内に設置した。次いで、チャンバー内において基材をボンバードクリーニングした。その後、イオンプレーティング法によって以下の条件でCr-Al-Si-N皮膜(厚さ:約20μm)を基材の表面にそれぞれ形成した。
・ターゲット:Cr-Si-Al合金
・アーク電流:150A
・チャンバー内の窒素圧力:4.0Pa
・バイアス電圧(V):-10V
・成膜温度:500℃
(比較例4)
ターゲットとしてCrインゴットを単独で使用したことの他は、上記実施例と同様にしてCr-N皮膜(厚さ:約20μm)を基材の表面に形成した。
<皮膜特性>
表1に実施例及び比較例に係るピストンリングの皮膜の特性を示す。なお、各特性は以下の方法で測定した。
(皮膜の組成)
皮膜の組成は、EPMA(装置名:JXA-8100、日本電子製)を使用し、測定条件は、加速電圧15kV、照射電流5.0×10 -8 A、ビーム径10μmにて測定した。なお、X線回折データから、実施例及び比較例(比較例4を除く)の皮膜におけるSiは固溶していると判断した。また、X線回折データから、実施例に係る皮膜において、CrNとAlNが共存していることが確認された。
(結晶子サイズ)
皮膜の結晶子サイズは、X線回折装置(装置名:SmartLab、リガク製)を使用し、CrN(200)面にて、次のScherrerの式を用いて算出した。
結晶子サイズ=Kλ/βcosθ
式中、KはScherrerの定数で0.94、λはX線の波長(Cu:1.5406Å)、βは半値幅、θはBragg角である。
図2は、皮膜のSi量を横軸に、結晶子サイズを縦軸としてプロットしたグラフである。このグラフから、Si添加により、結晶子サイズを安定的に約20nmにできることが分かる。
(硬さ)
皮膜の硬さは、ビッカース硬さ試験機(装置名:HM-220、ミツトヨ製)を使用し、ISO6507に規定された方法に基づき、試験荷重0.98Nにて硬さ試験を行って得た。
(残留応力)
皮膜の残留応力は、X線応力装置(装置名:PSPC微小部X線応力測定装置、リガク製)を使用して測定した。下記式の関係が成り立つことから、回折角2θとsin2ψ(ψは試料面法線方向と回折面法線方向との角度)の直線の傾きを利用して残留応力を求めた。
σ(残留応力)=K・∂(2θ)/∂(sin2ψ)
式中、Kは応力定数(ヤング率、ポアソン比、無歪状態における反射角θから求められる)で、-762MPaを使用した。測定は、Cr管球、電圧35kV、電流40mA、コリメータ1mm、ψとして6点(0、18、27、33、39、45deg.)、測定時間90秒、回折角CrN(311)、2θ=132.86°の条件で、並傾法により測定した。なお、表1におけるマイナスの表記は圧縮の残留応力であることを意味する。
<すべり疲労試験>
摩耗加速試験として、図3に示す構成の試験機を使用してすべり疲労試験を行った。図3に示す試験機50は、回転するドラム51と、ドラム51の表面に対して試験片S(ピストンリング切断片)を当接させる機構と、試験片Sに対して繰り返し荷重を加える機構と、摺動部に潤滑油を供給する機構とを備える。これにより、比較的短時間で試験片を摩耗させることができる。試験条件は次のとおりとした。
・試験荷重:20~50N、サインカーブ(50Hz)
・相手材(ドラム):SUJ2熱処理材(直径80mm)
・動速度:正転逆転台形パターン運転
・潤滑油:ベースオイル(30秒に1回、0.1cc滴下)
・ドラム表面温度:80℃
・試験時間:1サイクル2分~3分を5サイクル
(摩耗量の測定)
実施例及び比較例に係るピストンリングを2個ずつ作製し、これらを評価対象として2回のすべり疲労試験を実施した。すべり疲労試験によって皮膜が摩耗した量を測定した。表1に摩耗量の平均値を示す。図4は、皮膜のAl量とMe量の比(Al/Me)を横軸とし、被膜の摩耗量を縦軸として、実施例及び比較例の結果をプロットしたグラフである。
(耐剥離性の評価)
すべり疲労試験後の皮膜を目視により観察して、皮膜の耐剥離性を評価した。評価結果は以下のとおりであった。
・実施例1…一方の試験片には小規模な剥離が認められたが、他方の試験片には剥離が認められなかった。
・実施例2…両方の試験片に小規模な剥離が認められた。
・比較例1…一方の試験片には小規模な剥離が認められたが、他方の試験片には剥離が認められなかった。
・比較例2…両方の試験片に大規模な剥離が認められた。
・比較例3…両方の試験片に剥離が認められなかった。
・比較例4…両方の試験片とも剥離が認められなかった。
(耐クラック性の評価)
すべり疲労試験後の皮膜を目視により観察して、皮膜の耐クラック性を評価した。評価結果は以下のとおりであった。
・実施例1,2及び比較例1~3…両方の試験片ともクラックは認められなかった。
・比較例4…両方の試験片とも亀甲状のクラックが認められた。
Figure 0007250714000001
1…基材、5…皮膜、10…ピストンリング、10F…摺動面

Claims (6)

  1. 基材と、
    前記基材の表面の少なくとも一部を覆うように設けられており、金属元素と、Siと、Nとを含む皮膜と、
    を備え、
    前記金属元素がCr及びAlを少なくとも含み、
    前記皮膜に含まれる金属元素の全量を基準として、前記皮膜のAl量が10~50at%であり、
    前記皮膜がNaCl型の結晶構造を有する、ピストンリング(ただし、前記皮膜が前記金属元素としてTiを含むピストンリングを除く。)
  2. 前記皮膜の結晶子サイズが10~30nmである、請求項1に記載のピストンリング。
  3. 前記皮膜の圧縮の残留応力が300~800MPaである、請求項1又は2に記載のピストンリング。
  4. 前記皮膜の硬さが1200HV0.1~2000HV0.1である、請求項1~3のいずれか一項に記載のピストンリング。
  5. ナノインデンターによって得られる前記皮膜の硬さH(GPa)と、前記皮膜のヤング率E(GPa)の比H/Eが0.04~0.07である、請求項1~4のいずれか一項に記載のピストンリング。
  6. 前記皮膜に含まれる金属元素の量(at%)に対するSi量(at%)の比が0.01~0.06である、請求項1~5のいずれか一項に記載のピストンリング。
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