(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態による燃料電池システム100の構成の概要を示す図である。
図示のように、燃料電池システム100は、主として、改質処理装置9と、燃料電池としての燃料電池スタック14と、燃焼器16と、燃焼器用熱交換器18と、コントローラ60と、を備える。
改質処理装置9及び燃料電池スタック14は、燃料を流す主燃料供給路50を介して燃料供給源である燃料タンク200に接続されている。また、燃焼器用熱交換器18の燃料入口18aは、主燃料供給路50から分岐した副燃料供給路52に接続されている。
主燃料供給路50には、改質器用蒸発器10に供給する燃料の量を調節する第1インジェクタ20が設けられている。副燃料供給路52には、燃焼器用熱交換器18に供給する燃料の量を調節する第2インジェクタ22が設けられている。
また、本実施形態の燃料電池システム100では、燃料電池スタック14から排出されるオフガスを燃焼器16に供給するオフガス配管54が設けられている。
オフガス配管54は、燃料電池スタック14のアノード極出口14cに接続されるアノードオフガス配管54a、及び燃料電池スタック14のカソード極出口14dに接続されるカソードオフガス配管54bを有する。アノードオフガス配管54aには、燃料電池スタック14のアノード極内からのオフガス(アノードオフガス)が排出される。一方、カソードオフガス配管54bには、燃料電池スタック14のカソード極内からのオフガス(カソードオフガス)が排出される。
そして、これらアノードオフガス配管54a及びカソードオフガス配管54bは、それぞれアノード極出口14c及びカソード極出口14dの直後において相互に合流し、一つのオフガス配管54として燃焼器16に接続される。
さらに、燃焼器用熱交換器18の燃料出口18bには、オフガス配管54に対して合流部J1で連結する燃料流路53が接続されている。
一方、本実施形態の燃料電池システム100には、燃焼器16で生成される燃焼ガスを燃焼器用熱交換器18に供給する燃焼ガス流路56と、後述する燃焼器用熱交換器18による熱交換後の燃焼ガスを改質処理装置9を介してシステム外部の排気系400に排出する排気燃焼ガス流路57が設けられている。なお、燃焼ガス流路56及び排気燃焼ガス流路57は、いずれも図上において点線で示している。
以下、燃料電池システム100の主要な構成についてより詳細に説明する。
改質処理装置9は、燃料タンク200からの原燃料を、燃料電池スタック14における発電に用いるために適切な状態とすべく改質処理する装置である。本実施形態の改質処理装置9は、改質器用蒸発器10及び改質器12により構成される。
改質器用蒸発器10は、燃料タンク200から主燃料供給路50を介して供給される液体の原燃料(例えば、エタノール水溶液)を、燃焼ガス流路56を介して供給される燃焼ガスとの熱交換によって加熱して気化させる熱交換器である。
より詳細には、改質器用蒸発器10は、燃料入口10aから燃料出口10bに向かって流れる燃料と、燃焼ガス入口10cから燃焼ガス出口10dに向かって流れる燃焼ガスと、の熱交換を可能とする内部構造を有する。
改質器12は、改質器用蒸発器10による気化後の燃料を燃料電池スタック14に供給するために適切な状態とすべく改質反応させて燃料ガスを生成する。例えば、改質器12は、図示しない改質用触媒を備え、当該改質用触媒によって改質器用蒸発器10からの気化燃料を水蒸気改質し、水素を主成分とする改質処理後の燃料ガス(以下では、「改質燃料」とも記載する)を生成する。
また、改質器12は、改質器用蒸発器10からの気化燃料を、燃焼ガスとの熱交換によって加熱する機能を有する。すなわち、本実施形態の改質器12は、気化燃料を改質反応に適した温度とすべく燃焼ガスの保有熱で当該気化燃料を加熱するための内部熱交換器機構を備える。
特に、改質器12は、燃料入口12aから燃料出口12bに向かって流れる気化燃料と、燃焼ガス入口12cから燃焼ガス出口12dに向かって流れる燃焼ガスと、の熱交換を可能とする内部構造を有する。
燃料電池スタック14は、改質燃料とエアブロア300からの空気の供給を受けて発電する。燃料電池スタック14は、複数の単位セルを積層して構成される。特に、燃料電池スタック14を構成する個々の単位セルは、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)によって構成されている。
また、燃料電池スタック14のアノード極入口14aは、主燃料供給路50を介して改質器12の燃料出口12bと接続されている。したがって、第1インジェクタ20に設定される開度に応じて、改質器12の燃料出口12bからの改質燃料がアノード極入口14aを介して燃料電池スタック14内に供給される。
さらに、燃料電池スタック14のカソード極入口14bは、空気流路58を介して酸化剤ガス供給源としてのエアブロア300と接続されている。したがって、エアブロア300に設定される出力に応じた流量の空気がカソード極入口14bを介して燃料電池スタック14内に供給される。
なお、以下ではエアブロア300の出力に応じて燃料電池スタック14に供給される空気の流量(空気流路58内を流れる空気の流量)を単に「空気流量」とも記載する。
また、エアブロア300の出力(すなわち、空気流量)は、各部の要求熱量及び燃焼器16の温度(以下、単に「燃焼器温度」とも記載する)などにより示される燃料電池システム100の運転状態に応じてコントローラ60によって適宜設定される。なお、本実施形態において、燃焼器温度とは、排気燃焼ガス流路57における燃焼器16の出口の温度を意味する。燃焼器温度は、燃焼器16の燃焼ガス出口付近の温度を直接検出して取得しても良いし、当該燃焼ガス出口付近の温度に相関する他の燃料電池システム100内の要素の温度検出値から推定して取得しても良い。また、燃焼器温度を、燃焼器16の燃焼ガス出口付近の温度に相関する温度以外の他の任意の物理量(各部の熱容量及び保有熱量など)に基づいて推定しても良い。
燃焼器16は、オフガス配管54を介して合流部J1で合流する燃料流路53からの燃料と燃料電池スタック14のオフガス(主に残留燃料成分及び空気)の混合ガスを受け、この混合ガスを燃焼させることにより燃焼ガスを生成する。
より詳細には、燃焼器16は、上記混合ガスを触媒燃焼させるための、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)等の触媒材料を担体に支持させてなる触媒部を備える。なお、燃焼器16には、必要に応じて、当該触媒部を加熱するための電気式ヒータが設けても良い。特に、ヒータを設けることで、燃料電池システム100の始動時などのシーンで触媒部を触媒反応に好適な温度まで昇温させる処理(すなわち、燃焼器16の暖機)を実行する場合には、当該ヒータにより触媒部の加熱を促進し、燃焼器16の速やかな暖機を図ることができる。
燃焼器用熱交換器18は、燃料タンク200から副燃料供給路52を介して供給される原燃料を、燃焼器16から燃焼ガス流路56を介して供給される燃焼ガスとの熱交換によって加熱する熱交換器である。
図2は、燃焼器用熱交換器18の構成を説明する図である。特に、図2(A)は燃焼器用熱交換器18の全体構成の概略斜視図である。また、図2(B)は、燃焼器用熱交換器18の熱交換機構を構成する熱交換プレート18eの構成を示す平面図である。
図示のように、燃焼器用熱交換器18は、燃料入口18aから燃料出口18bに向かって流れる燃料と、燃焼ガス入口18cから燃焼ガス出口18dに向かって流れる燃焼ガスと、の熱交換を行うための伝熱領域を構成する複数の熱交換プレート18eを重ね、一対のエンドプレート18fにより両端から挟持してなる構造をとっている。
各熱交換プレート18eは、燃焼ガスを通過させる一対の燃焼ガス通過孔18h,18iと、燃料を通過させる一対の燃料通過孔18j,18kと、燃料又は燃焼ガスを流す伝熱路18gと、を有している。なお、燃焼器用熱交換器18内において、燃料を流す伝熱路18gを有する熱交換プレート18e及び燃焼ガスを流す伝熱路18gを有する熱交換プレート18eは、交互に配置されている。
図1に戻り、燃料電池システム100は、さらに、制御装置としてのコントローラ60を有する。コントローラ60は、(CPU)等の各種演算・制御装置、ROM及びRAM等の各種記憶装置、並びに入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータからなる電子制御ユニットとして構成されている。
本実施形態のコントローラ60は、燃料電池システム100の運転状態に応じて、改質器12への燃料供給、燃焼器用熱交換器18への燃料供給、及び空気流量を制御するようにプログラムされている。
より詳細には、本実施形態のコントローラ60は、燃料電池システム100の運転状態に応じて設定される燃焼器温度の目標値(以下、「目標燃焼器温度」とも記載する)に応じた空気流量が実現されるように、エアブロア300の出力を操作する。さらに、コントローラ60は、設定された空気流量及び現在の運転状態(燃焼器16の定格運転が可能か否か)などに応じて、第1インジェクタ20及び第2インジェクタ22の開度を操作するようにプログラムされている。
特に、本実施形態のコントローラ60は、燃料電池システム100の始動時(以下、単に「システム始動時」とも記載する)に燃焼器16の状態に応じて燃料タンク200から燃焼器用熱交換器18への燃料供給を制御する。
ここで、システム始動時とは、燃料電池システム100の運転が停止している状態(燃料電池スタック14を含む燃料電池システム100内の各要素の動作が停止している状態)において、コントローラ60が外部からのシステム始動指令を検出したことをトリガとして、改質器12、燃料電池スタック14、及び燃焼器16等の燃料電池システム100内の要素をそれぞれの作動に適した所望温度に昇温させるプロセス(燃料電池システム100の起動のための暖機運転)が実行されている期間を指す。なお、システム始動時には、燃料電池スタック14の非発電状態(アイドルストップ状態)からの復帰の際の暖機運転の期間も含まれ得る。
特に、本実施形態では、コントローラ60は、システム始動時において少なくとも燃焼器温度が定格運転となるまでの間(燃焼器16に対する暖機が実行されている期間)は、燃料タンク200から副燃料供給路52を介して燃焼器用熱交換器18に原燃料が供給されるように第2インジェクタ22を操作する。
したがって、本実施形態の燃料電池システム100によれば、システム始動時において、燃焼器用熱交換器18によって原燃料が燃焼器16からの燃焼ガスとの熱交換で加熱されて、燃料流路53及びオフガス配管54を介して燃焼器16に供給されることとなる。
結果として、燃焼器16により生成される燃焼ガスの保有熱の一部は、燃焼器16に供給すべき原燃料の加熱に用いられることとなる。すなわち、本実施形態の燃料電池システム100の構成によれば、燃焼器16の生成熱の一部を再び燃焼器16に戻す熱ループを実現することができる。
以上説明した本実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、燃料供給源としての燃料タンク200からの燃料を改質処理装置9により改質処理し、改質処理後の燃料である改質燃料と酸化剤ガス供給源としての空気ブロア61からの酸化剤ガス(空気)を固体酸化物形の燃料電池である燃料電池スタック14に供給して発電させる燃料電池システム100が提供される。
そして、この燃料電池システム100は、燃料電池スタック14を暖機する燃焼ガスを生成する燃焼器16と、燃焼器16からの燃焼ガスと、燃料タンク200からの燃料と、の熱交換を行う燃焼器用熱交換器18と、熱交換後の燃料を燃焼器16の上流に供給する燃料流路53と、熱交換後の燃焼ガスを少なくとも改質処理装置9を介して排気系400に排出する排気燃焼ガス流路57と、燃料電池システム100の始動時に燃焼器16の状態に応じて燃料タンク200から燃焼器用熱交換器18への燃料供給を制御する制御装置としてのコントローラ60と、を備える。
これにより、システム始動時において、燃焼器用熱交換器18により原燃料が燃焼器16からの燃焼ガスとの熱交換により加熱され、加熱後の燃料が燃料流路53を介して燃焼器16に供給されることとなる。このため、燃焼器16の生成熱で加熱された燃料が燃焼器16における燃焼に用いられることとなるので、燃焼器16の生成熱の一部を再び燃焼器16に戻す熱ループが実現されることとなる。したがって、燃焼器16の暖機時において燃焼器16の生成熱が逃げてしまうことに起因する暖機速度の低下を抑制し、燃焼器16の暖機性能(着火性能)を向上させることができる。結果として、この燃焼器16の暖機を含む燃料電池システム100の始動時における処理の進行が促進され、燃料電池システム100の始動の遅れを抑制することができる。
なお、燃料電池システム100の始動時において、燃焼器16による定常的な触媒燃焼が可能となるまでは、燃料電池システム100内における熱を当該燃焼器16に対する暖機(触媒部に対する加熱)に優先的に用いることが要求される。これに対して、本実施形態の構成では、燃焼器16、燃焼器用熱交換器18、燃料流路53、及び燃焼器16の間において上述した熱ループが実現されることとなるため、燃料電池システム100全体に対して燃焼器16に熱を集中させて触媒部の加熱に用いることができる。特に、燃料電池スタック14などの他の要素が低温であることに起因してオフガス配管54を介して低温のガスが燃焼器16に流入する場合であっても、当該低温のガスによる燃焼器温度の低下を上記熱ループによって好適に抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池システム100の構成であれば、燃料タンク200から燃焼器用熱交換器18への燃料の供給量が大きいほど、燃料と燃焼ガスの熱交換によって燃焼器16に戻される熱量が大きくなる。このため、燃焼器16の暖機時において燃焼器用熱交換器18への燃料の供給量を大きくすることで、燃焼器16にループさせる生成熱の量をより増大させて、燃料電池システム100の始動性をさらに向上させることができる。
一方、燃焼器用熱交換器18において燃料と熱交換された後の燃焼ガスは、排気燃焼ガス流路57により改質処理装置9を通過させつつ排気系400に排出される。したがって、燃料との熱交換に用いられた後の燃焼ガスの余剰熱を改質処理装置9で有効利用することができる。
特に、本実施形態の燃料電池システム100では、改質処理装置9は、燃料タンク200からの燃料を気化させる改質器用蒸発器10と、気化後の燃料を改質反応させて改質燃料を生成する改質器12と、を含む。そして、排気燃焼ガス流路57は、燃焼器用熱交換器18の燃焼ガス出口18dから少なくとも改質器用蒸発器10を通過して排気系400に繋がるように構成される。
これにより、システム始動時において、燃焼器用熱交換器18における熱交換の燃焼ガスの余剰熱を改質器用蒸発器10で回収することができる。すなわち、燃料との熱交換に用いられた後の燃焼ガスの余剰熱を少なくとも改質器用蒸発器10の暖機に利用することができるところ、燃焼ガスの余剰熱を有効利用することができる。
特に、本実施形態の燃料電池システム100では、排気燃焼ガス流路57は、燃焼器用熱交換器18の燃焼ガス出口18dから改質器12及び改質器用蒸発器10をこの順で通過しつつ排気系400に繋がるように構成される。
これにより、燃料との熱交換に用いられた燃焼ガスの余剰熱を、相対的に要求される熱量が高い改質器12の暖機に用いた後に、相対的に要求される熱量が低い改質器用蒸発器10の暖機に用いることができる。すなわち、燃料との熱交換に用いられた後の燃焼ガスを、要求される熱量の大きさに応じた順番で回収することができるので、燃焼ガスの余剰熱をより好適に利用することができる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について図3を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は適宜省略する。
図3は、本実施形態による燃料電池システム100の構成の概要を示す図である。
図示のように、本実施形態の燃料電池システム100では、排気燃焼ガス流路57が燃焼器用熱交換器18の燃焼ガス出口18dから改質器用蒸発器10を通過して排気系400に繋がるように構成される。また、燃焼ガス流路56には、改質器12を通過して排気燃焼ガス流路57に合流するように分岐した第1ガス分流路56aが設けられる。
より詳細には、排気燃焼ガス流路57は、燃焼器用熱交換器18の燃焼ガス出口18dから、改質器12と改質器用蒸発器10の間の合流部J3において第1ガス分流路56aに合流しつつ、改質器用蒸発器10を通過して排気系400に繋がる配管として構成される。すなわち、本実施形態の排気燃焼ガス流路57は、改質器12を介していない。
一方、第1ガス分流路56aは、燃焼器16の出口と燃焼器用熱交換器18の燃焼ガス入口18cとを接続する燃焼ガス流路56に対して合流部J2において分岐し、改質器12を通過して合流部J3まで伸長する配管として構成される。
以上説明した本実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の燃料電池システム100では、排気燃焼ガス流路57は、燃焼器用熱交換器18の燃焼ガス出口18dから改質器用蒸発器10を通過して排気系400に繋がるように構成される。また、燃焼器16と燃焼器用熱交換器18の間の燃焼ガス流路56には、改質器12を通過して排気燃焼ガス流路57に合流するように分岐した第1ガス分流路56aが設けられる。
これにより、改質器12には、燃焼器16からの燃焼ガスが第1ガス分流路56aを介して燃焼器用熱交換器18を通過することなく直接供給されることとなる。また、排気燃焼ガス流路57が改質器12を介さずに改質器用蒸発器10に繋がるため、燃焼器用熱交換器18における燃料との熱交換後の燃焼ガスは、改質器12に供給されることなく改質器用蒸発器10に供給されることとなる。
したがって、改質器12に対しては燃料と熱交換されていない相対的に高い熱量の燃焼ガスを直接供給して当該改質器12の暖機を促進することができる。特に、燃料との熱交換後の燃焼ガスを改質器12に供給しないようにしたことで、当該改質器12に与える熱量を高く維持することができるので、改質器12の暖機をより促進することができる。一方、改質器用蒸発器10に対しても、熱交換後の相対的に低い熱量の燃焼ガスが供給されるので、当該改質器用蒸発器10の暖機も促進することができる。
特に、改質器12に対する暖機における目標温度は改質反応を好適に実行する観点から、原燃料を気化させることを目的とした改質器用蒸発器10の目標温度に比べ、例えば数百℃のオーダーで高く設定される。これに対して、本実施形態のように、改質器12に熱交換前の燃焼ガスを供給しつつ、改質器用蒸発器10に熱交換後の燃焼ガスを供給する構成であれば、熱交換後の燃焼ガスの余剰熱の有効利用を実現しつつ、改質器12及び改質器用蒸発器10に対してそれぞれの要求熱量の違いに応じてバランスのとれた好適な暖機プロセスを実現することができる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について図4を参照して説明する。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は適宜省略する。
図4は、本実施形態による燃料電池システム100の構成の概要を示す図である。
図示のように、本実施形態の燃料電池システム100では、図1に示す構成に対し、空気流路58に設けられ、燃料電池スタック14に供給する酸化剤ガスに対する熱交換を行う酸化剤ガス熱交換器としての空気熱交換器24をさらに備える点、及び燃焼ガス流路56に、空気熱交換器24を通過して排気燃焼ガス流路57に合流するように分岐した第2ガス分流路56bが設けられた点で異なる。
より詳細には、空気熱交換器24は、エアブロア300から空気流路58を介して供給される空気を、第2ガス分流路56b内を流れる燃焼ガスとの熱交換によって加熱する熱交換器である。
特に、空気熱交換器24は、空気入口24aから空気出口24bに向かって流れる空気と、燃焼ガス入口24cから燃焼ガス出口24dに向かって流れる燃焼ガスと、の熱交換を可能とする内部構造を有する。
一方、第2ガス分流路56bは、燃焼器16の出口と燃焼器用熱交換器18の燃焼ガス入口18cとを接続する燃焼ガス流路56に対して合流部J4において分岐し、空気熱交換器24を通過して合流部J5において排気燃焼ガス流路57と合流する。すなわち、空気熱交換器24において空気との熱交換に用いられた第2ガス分流路56b内の燃焼ガスは、燃焼器用熱交換器18における原燃料との熱交換に用いられ及び改質処理装置9を通過した排気燃焼ガス流路57内の燃焼ガスと合流して排気系400に排出される。
以上説明した本実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の燃料電池システム100では、エアブロア300から燃料電池スタック14に空気を供給する酸化剤ガス流路としての空気流路58に設けられ、燃料電池スタック14に供給する空気を加熱する酸化剤ガス熱交換器としての空気熱交換器24をさらに備える。そして、燃焼器16と燃焼器用熱交換器18の間の燃焼ガス流路56には、空気熱交換器24を通過して排気燃焼ガス流路57に合流するように分岐した第2ガス分流路56bが設けられる。
これにより、燃料電池スタック14には、燃焼器16からの燃焼ガスが第2ガス分流路56bを介して燃焼器用熱交換器18を通過することなく直接供給されることとなる。したがって、燃料電池スタック14に対して燃料と熱交換されていない比較的高い熱量の燃焼ガスを供給して当該燃料電池スタック14の暖機を促進することができる
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について図5を参照して説明する。なお、第1~3実施形態の何れかで説明した要素と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は適宜省略する。
図5は、本実施形態による燃料電池システム100の構成の概要を示す図である。
本実施形態の燃料電池システム100では、燃焼器16が、エアブロア300から燃料電池スタック14に空気を供給する空気流路58に配置される。また、空気熱交換器24が、空気流路58における燃焼器16の下流に設けられている。そして、第1~第3実施形態の燃焼器用熱交換器18による燃焼器16の生成熱をループさせる機能は、この空気熱交換器24により実現される。すなわち、本実施形態では、空気熱交換器24が、燃料タンク200からの原燃料を燃焼器16により生成される燃焼ガスと熱交換させて加熱する。
より詳細には、空気熱交換器24の燃料入口24eには副燃料供給路52が接続されており、燃料出口24fには燃料流路53が接続される。なお、本実施形態の燃料流路53は、空気熱交換器24の燃料出口24fから空気流路58における燃焼器16の上流位置の合流部J6に合流するように構成される。
また、本実施形態では、空気熱交換器24が空気流路58における燃焼器16の下流に設けられているので、当該空気熱交換器24の空気入口24aにはエアブロア300からの空気と燃焼器16で生成された燃焼ガスの混合気(以下ではこれも「燃焼ガス」と称する)が流入する。すなわち、本実施形態では、空気流路58における燃焼器16から空気熱交換器24までの経路が燃焼ガス流路56として機能する。
したがって、本実施形態では、空気熱交換器24によって、燃料タンク200からの原燃料を燃焼ガスと熱交換させて加熱することができる。
さらに、本実施形態では、オフガス配管54が燃料電池スタック14のオフガス出口(アノード極出口14c及びカソード極出口14d)から改質処理装置9を通過しつつ排気系400に繋がるように構成されている。したがって、原燃料との熱交換後の燃焼ガスは、空気熱交換器24の空気出口24bから燃料電池スタック14を介してオフガス配管54を流れ、改質処理装置9を通過しつつ排気系400に排出される。
すなわち、本実施形態では、空気流路58における空気熱交換器24から燃料電池スタック14までの経路、及びオフガス配管54によって排気燃焼ガス流路57の機能が実現されることとなる。
以上説明した本実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の燃料電池システム100では、燃焼器16は、エアブロア300から燃料電池スタック14に空気を供給する空気流路58に配置される。また、燃焼器用熱交換器18は、空気流路58における燃焼器16の下流に設けられるとともに、燃料電池スタック14に供給する空気を加熱する空気熱交換器24により構成される。さらに、燃焼器16と燃焼器用熱交換器18の間の燃焼ガス流路56は、空気流路58における燃焼器16から空気熱交換器24までの経路により構成される。また、排気燃焼ガス流路57は、空気流路58における空気熱交換器24から燃料電池スタック14までの経路、燃料電池スタック14内のガス通路(アノード極内通路及びカソード極内通路)、及び燃料電池スタック14のオフガス出口から改質処理装置9を通過しつつ排気系400に繋がるように構成されたオフガス排出路としてのオフガス配管54により構成される。
この構成によっても、燃焼器16の生成熱の一部を再び燃焼器16に戻す熱ループを実現することができるため、燃料電池システム100の始動の遅れを抑制することができる。
また、空気熱交換器24において燃料と熱交換された後の燃焼ガスは、空気流路58及びオフガス配管54を通って、改質処理装置9を通過しつつ排気系400に排出されることとなる。したがって、燃料との熱交換後の燃焼ガスの余剰熱を改質処理装置9における各要素の暖機に用いることができるところ、燃焼ガスの余剰熱の有効利用も図られる。
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について図6を参照して説明する。なお、第1~4実施形態の何れかで説明した要素と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は適宜省略する。
図6は、本実施形態による燃料電池システム100の構成の概要を示す図である。
図示のように、本実施形態の燃料電池システム100は、図4で説明した燃料電池システム100の構成をベースとしつつ、オフガス配管54における燃料流路53との合流部J1の下流で且つ燃焼器16の上流にミキサ26が設けられている。
ミキサ26は、燃焼器16に供給する燃料と空気を混合する静的ミキサにより構成される。具体的には、ミキサ26は、オフガス配管54の流路形状を燃料と空気の混合に適した形状とすることで構成される。
以上説明した本実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の燃料電池システム100は、燃料流路53と燃焼器16に設けられるミキサ26をさらに備える。
これにより、燃焼器用熱交換器18による熱交換で加熱された燃料を、ミキサ26によって空気と好適に混合させた状態で燃焼器16に供給することができる。このため、燃焼器16における燃焼効率を向上させることができ、燃焼器16の暖機の促進に寄与することができる。特に、このように燃焼器16における燃焼効率を高めることができることによって、既に説明した燃焼器16の生成熱をループさせる効果と相俟って、燃焼器16の暖機をより促進することができる。
なお、本実施形態では、図4の燃料電池システム100の構成をベースとしつつ、ミキサ26を燃料流路53の合流部J1と燃焼器16の間に設ける例を説明した。しかしながら、図1、図3、又は図5の燃料電池システム100において、燃料流路53と燃焼器16の間にミキサ26を設けても良い。
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について図7及び図8A~図8Dを参照して説明する。なお、第1~第5実施形態の何れかで説明した要素と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は適宜省略する。
特に、本実施形態では、図1で説明した燃料電池システム100におけるシステム始動時における制御を説明する。
図7は、本実施形態による燃料電池システム100のシステム始動時の制御を説明するフローチャートである。なお、本フローチャートの処理は、コントローラ60がシステム始動指令を検出したことをトリガとして開始される。
ステップS110において、コントローラ60は、エアブロア300による空気供給を開始する。具体的に、コントローラ60は、燃焼器温度に基づく所定の空気流量の目標値(以下、「目標空気流量」とも記載する)を設定し、設定された目標空気流量に応じてエアブロア300の出力を操作する。
ステップS120において、コントローラ60は、燃焼器用熱交換器18の暖機を開始する。具体的に、コントローラ60は、燃焼器用熱交換器18に設けられる図示しないヒータの出力を調節して燃焼器用熱交換器18の暖機を実行する。
ステップS130において、コントローラ60は、燃料熱交換器温度Texを取得する。具体的に、コントローラ60は、燃料電池システム100内において設置した温度センサ80の検出値を燃料熱交換器温度Texとして取得する。
図8A~図8Dには、燃料電池システム100内における温度センサ80の設置位置の例を示している。
具体的に、図8Aには、排気燃焼ガス流路57における改質器用蒸発器10の燃焼ガス出口10dの下流位置に温度センサ80が設置される例が示されている。また、図8Bには、排気燃焼ガス流路57における改質器12の上流位置に温度センサ80が設置される例が示されている。さらに、図8Cには、燃焼器用熱交換器18自体に温度センサ80が設置される例が示されている。また、図8Dには、燃料流路53に温度センサ80が設置される例が示されている。
本実施形態において、コントローラ60は、これら図8A~図8Dに示す各位置のいずれかに配置された温度センサ80の検出値、又は2以上の位置に配置された温度センサ80の検出値の平均値などの組み合わせを燃料熱交換器温度Texとして取得する。
そして、ステップS140において、コントローラ60は、燃料熱交換器温度Texが所定の熱交換可能温度Tex_h以上であるか否かを判定する。なお、熱交換可能温度Tex_hとは、燃焼器用熱交換器18における原燃料と燃焼ガスの熱交換を好適に実行する観点から定まる燃料熱交換器温度Texの下限値である。熱交換可能温度Tex_hは、燃料電池システム100の設計態様に応じて定める値であり、例えばコントローラ60の記憶領域に予め記憶される。
さらに、コントローラ60は燃料熱交換器温度Texが熱交換可能温度Tex_h以上となるまで当該燃料熱交換器温度Texを監視し、燃料熱交換器温度Texが熱交換可能温度Tex_h以上となったらステップS150の処理に移行する。
ステップS150において、コントローラ60は、燃焼器用熱交換器18への燃料供給を開始する。具体的に、コントローラ60は、第2インジェクタ22を開放する。これにより、燃料タンク200から副燃料供給路52を介して燃焼器用熱交換器18の燃料入口18aに原燃料が供給される。
ここで、システム始動時の初期段階で燃焼器16による燃焼がまだ開始されていないシーンにおいては、燃焼器16から燃焼ガス流路56を介して燃焼器用熱交換器18に流入するガスが比較的低温(例えば常温程度)となる。この場合、原燃料が燃焼器用熱交換器18の熱交換で十分に加熱されないことが想定される。特に、燃焼器16における燃焼効率を高める観点から原燃料を燃焼器用熱交換器18における加熱で気化させて燃焼器16に供給することが好ましいが、このようなシーンでは燃焼器用熱交換器18において原燃料を気化できる程度の熱量を確保できないことが想定される。
これに対して、熱交換可能温度Tex_hを燃焼器用熱交換器18において原燃料を気化できる程度に加熱することが可能となる温度に設定しておいて、上述のように燃料熱交換器温度Texが熱交換可能温度Tex_h以上となったら燃焼器用熱交換器18への燃料供給を開始するようにすれば、原燃料を燃焼器用熱交換器18における熱交換でより好適に気化させて燃焼器16に供給することができる。
このため、システム始動時において燃焼器用熱交換器18への原燃料の供給が開始された直後の段階であっても、燃焼器16に好適に気化燃料を供給することができるため、燃焼器16における定格運転の開始(すなわち、燃焼器16の着火)までの期間を短縮することができる。
さらに、ステップS160において、コントローラ60は、再び、燃料熱交換器温度Texが熱交換可能温度Tex_h以上であるか否かを判定する。
本判定を再び実行する意義について説明する。燃焼器用熱交換器18への燃料の供給を開始してから所定時間の間は、当該燃料を燃焼器16で燃焼させて生成される燃焼熱が未だ燃焼器用熱交換器18における熱交換に用いられてない状態であることが想定される。すなわち、燃焼器用熱交換器18への燃料の供給を開始してから高温の燃焼ガスで当該燃料を加熱できるようになるまでにタイムラグが生じる。そして、このタイムラグの間に、燃焼器用熱交換器18自身の熱が原燃料に奪われたり、燃料電池スタック14からオフガス配管54を介して低温のガスが燃焼器用熱交換器18に流入するなどして燃料熱交換器温度Texが低下することが想定される。
本実施形態では、このような要因による燃料熱交換器温度Texの低下を検知してそれに対処する観点から、燃焼器用熱交換器18への燃料供給の開始後に再び燃料熱交換器温度Texが熱交換可能温度Tex_h以上であるか否かの判定を実行し、その判定結果に応じて燃焼器用熱交換器18に対する原燃料の供給量を調節する。
具体的に、コントローラ60は、上記ステップS160において燃料熱交換器温度Texが熱交換可能温度Tex_h未満であると判断すると、ステップS170の処理に移行する。
ステップS170において、コントローラ60は、第2インジェクタ22の開度を減少させて燃焼器用熱交換器18への原燃料の供給量を減量する。すなわち、この場合、燃焼器用熱交換器18への原燃料の供給量を減らすことで燃焼器用熱交換器18が原燃料から奪われる熱量を低減させる。
そして、コントローラ60は、燃料熱交換器温度Texを監視し、当該燃料熱交換器温度Texが熱交換可能温度Tex_h以上となるまで、燃焼器用熱交換器18への原燃料の供給量の減量を継続する。
一方、コントローラ60は、上記ステップS160において燃料熱交換器温度Texが熱交換可能温度Tex_h以上であると判断すると、ステップS180の処理に移行する。
ステップS180において、コントローラ60は、第2インジェクタ22の開度を増加させて燃焼器用熱交換器18への原燃料の供給量を増量する。
さらに、ステップS190において、コントローラ60は、燃焼器用熱交換器18への原燃料の供給量が、燃焼器16に定められる定格燃料量に到達したか否かを判定する。なお、定格燃料量とは、燃焼器16が定格運転されている状態で設定される目標空気流量に応じた燃料量である。
コントローラ60は、燃焼器用熱交換器18への原燃料の供給量が定格燃料量に到達していないと判断した場合には、上記ステップS160の処理に戻る。
一方、コントローラ60は、燃焼器用熱交換器18への原燃料の供給量が定格燃料量に到達したと判断した場合には、燃焼器16の定格運転を開始する。
具体的に、コントローラ60は、燃焼器16の定格運転時の目標空気流量を設定し、当該目標空気流量に応じた量の原燃料を燃焼器用熱交換器18に供給するように第2インジェクタ22の開度を調節する。
以上説明した本実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の燃料電池システム100は、燃焼器用熱交換器18の温度である燃料熱交換器温度Texを取得する燃料熱交換器温度取得部としての温度センサ80をさらに備える(図8A~図8D参照)。そして、コントローラ60は、燃料熱交換器温度Texが熱交換可能温度Tex_h以上となると(図7のステップS140の「Y」)、燃料タンク200から燃焼器用熱交換器18への燃料供給を開始し(ステップS150)、燃料タンク200から燃焼器用熱交換器18への燃料供給の開始後において燃料熱交換器温度Texが熱交換可能温度Tex_h以上となる状態を維持するように燃料の供給量を調節する(ステップS160及びステップS170)。
これにより、システム始動時において燃焼器16の生成熱が、燃焼器用熱交換器18における燃料を加熱する観点から十分に確保できないシーンにおいても、熱交換可能温度Tex_h以上に調節された燃焼器用熱交換器18そのものの熱により原燃料を加熱することができる。したがって、燃焼器16の着火前(定格運転状態となる前)においても燃焼器用熱交換器18において燃料を好適に加熱して燃焼器16に供給することができる。結果として、燃焼器16の着火を促進することができる。
なお、本実施形態では、図1の燃料電池システム100の構成に基づいて図7に示すシステム始動時制御を実行する例について説明した。しかしながら、これに代えて、図3~図6の何れかの燃料電池システム100の構成に基づいて図7に示すシステム始動時制御を実行することもできる。
また、本実施形態では、図8A~図8Dにおいて燃料熱交換器温度Texを温度センサ80により取得する例を説明した。しかしながら、燃焼器用熱交換器18の温度が反映される場所であれば他の場所に設置した温度センサ80の検出値を燃料熱交換器温度Texとして取得しても良い。また、燃料熱交換器温度Texを、燃料電池システム100内で取得できる当該燃料熱交換器温度Texに相関する他の物理量(各部の熱量及び熱容量など)に基づいて推定しても良い。さらに、このように他の物理量から推定された推定値と図8A~図8Dで示される位置などに設置される温度センサ80の検出値を組み合わせて最終的な燃料熱交換器温度Texとして取得しても良い。
(第7実施形態)
以下、第7実施形態について図9、図10A、及び図10Bを参照して説明する。なお、第1~第6実施形態の何れかで説明した要素と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は適宜省略する。
特に、本実施形態では、図4で説明した燃料電池システム100におけるシステム始動時の制御の例を説明する。
図9は、本実施形態による燃料電池システム100のシステム始動時制御を説明するフローチャートである。
先ず、コントローラ60は、図7で説明したステップS110~ステップS190の処理を実行する。なお、図面簡略化のため、図9においてはステップS110~ステップS150の記載を省略している。
そして、本実施形態のコントローラ60は、ステップS190において燃焼器用熱交換器18への原燃料の供給量が定格燃料量に到達したと判断した場合に、ステップS210の処理に移行する。
ステップS210において、コントローラ60は、燃料電池スタック14及び改質器12の暖機を開始する。
ここで、本実施形態における燃料電池スタック14の暖機とは、当該燃料電池スタック14の温度(以下、「スタック温度Ts」とも記載する)を発電に好適な温度(以下、「スタック暖機目標温度Ts_t」とも記載する)まで昇温させる処理を意味する。
特に、本実施形態の燃料電池システム100によれば、燃焼器16により生成される燃焼ガスが第2ガス分流路56bを介して空気熱交換器24に供給され、燃料電池スタック14に供給される空気と熱交換される構成をとっている(図4参照)。したがって、燃焼ガスの熱で燃料電池スタック14が加熱されて、当該燃料電池スタック14の暖機が進行する。
また、改質器12の暖機とは、改質器12の温度(以下、「改質器温度Tr」とも記載する)を、改質器用蒸発器10からの気化燃料を改質させる観点から好適な改質可能温度Tr_tまで昇温させる処理を意味する。
特に、本実施形態の燃料電池システム100によれば、燃焼器16により生成される燃焼ガスが燃焼器用熱交換器18における原燃料との熱交換を経て改質器12に供給される構成をとっている(図4参照)。したがって、この燃料との熱交換後の燃焼ガスの余剰熱により改質器12が加熱されて、当該改質器12の暖機が進行する。
すなわち、本実施形態の燃料電池システム100の構成によれば、一つの燃焼器16を作動させることで、燃料電池スタック14及び改質器12の双方に対する暖機を並行して実行することができる。
本実施形態のコントローラ60は、この燃料電池スタック14及び改質器12の暖機中において、スタック温度Tsをスタック暖機目標温度Ts_tに近づけ、且つ改質器温度Trを改質可能温度Tr_tに近づける観点から設定される目標燃焼器温度に基づいて目標空気流量を設定し、当該目標空気流量に応じて燃焼器用熱交換器18への原燃料の供給量を満たすように第1インジェクタ20及び/又は第2インジェクタ22の開度を調節する。
そして、ステップS220において、コントローラ60は、改質器温度Trを取得する。具体的に、コントローラ60は、燃料電池システム100内において設置した温度センサ82の検出値を改質器温度Trとして取得する。
図10A及び図10Bには、燃料電池システム100内における温度センサ82の設置位置の例を示している。
具体的に、図10Aには、排気燃焼ガス流路57における改質器用蒸発器10の燃焼ガス出口10dの下流位置に温度センサ82が設置される例が示されている。また、図10Bには、主燃料供給路50における改質器12の燃料出口12bの下流位置に設置される例が示されている。
本実施形態において、コントローラ60は、これら図10A及び図10Bに示す各位置のいずれかに配置された温度センサ82の検出値、又はこれらの双方に配置された温度センサ82の検出値の平均値などの組み合わせを改質器温度Trとして取得する。
そして、ステップS230において、コントローラ60は、改質器温度Trが改質可能温度Tr_t以上であるか否かを判定する。すなわち、本判定は、改質器12に対する暖機が終了したか否かを判断するものである。なお、改質可能温度Tr_tは、燃料電池システム100の設計態様に応じて定める値であり、例えばコントローラ60の記憶領域に予め記憶される。
コントローラ60は、改質器温度Trが改質可能温度Tr_t未満であると判断すると、ステップS160の処理に戻る。一方、コントローラ60は、改質器温度Trが改質可能温度Tr_t以上であると判断すると、ステップS240の処理に移行する。
ステップS240において、コントローラ60は、改質処理装置9への燃料供給を開始する。具体的に、コントローラ60は、燃料電池スタック14の目標発電電力に応じて設定される目標空気流量に応じて改質処理装置9への原燃料の供給量を設定し、第1インジェクタ20を当該設定された供給量に応じた開度に調節する。
このように、改質器温度Trが改質可能温度Tr_t以上であると判断された場合に、改質処理装置9への燃料供給が開始されることで、改質器12が改質可能な状態となるタイミング以降に当該改質器12に燃料を供給し始めることができる。
そして、ステップS250において、コントローラ60は、燃焼器用熱交換器18への原燃料の供給量を減少させる。具体的に、コントローラ60は、第2インジェクタ22の開度を減少させる。特に、コントローラ60は、第2インジェクタ22の開度を0にして、原燃料の供給量を0に設定する。
ここで、改質器温度Trが改質可能温度Tr_tに到達して、改質器12による改質が可能となったシーンにおいては、基本的に燃焼器用熱交換器18への燃料の供給が不要となるところ、燃焼器用熱交換器18への原燃料の供給量を減少させる。これによって、燃焼器用熱交換器18における原燃料との熱交換によって奪われる燃焼ガスの熱量を低減することができる。
したがって、システム始動時において改質器12による改質が可能となった以降(改質器12の暖機の完了以降)は、燃焼器16の生成熱を燃焼器用熱交換器18で消費されることなく、改質器12及び空気熱交換器24に伝達させることができる。
なお、上記ステップS250において第2インジェクタ22の開度を減少させた場合であっても、燃焼器16には主燃料供給路50から燃料電池スタック14及びオフガス配管54を介して燃料を供給することができる。すなわち、燃料電池スタック14の目標発電電力に応じて設定される目標空気流量に応じた原燃料の供給量を超えて改質処理装置9に原燃料が供給されるように第1インジェクタ20の開度を調節することによって、発電で消費しきれない余剰燃料がオフガス配管54を介して燃焼器16に供給されるため、当該余剰燃料を燃焼器16における燃焼に用いることができる。
以上説明した本実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の燃料電池システム100は、改質器温度Trを取得する改質器温度取得部としての温度センサ82をさらに備える。また、本実施形態のコントローラ60は、燃料タンク200から改質処理装置9への燃料供給を制御する。特に、コントローラ60は、改質器温度Trが改質可能温度Tr_t以上となると(図9のステップS230の「Y」)、燃料タンク200から改質処理装置9への燃料供給を開始する(ステップS240)。
これにより、システム始動時において改質器温度Trが改質可能温度Tr_t以上であると判断された場合に改質処理装置9への燃料供給が開始されるので、改質器12が改質可能となるタイミング(改質器12の暖機が完了するタイミング)以降に当該改質器12に燃料を供給し始めることができる。すなわち、改質器12による改質反応が可能となった後に改質処理装置9への燃料供給を開始することができる。したがって、システム始動時において、十分に改質されていない状態の燃料が燃料電池スタック14に供給される事態の発生を抑制することができる。
また、コントローラ60は、改質器温度Trが改質可能温度Tr_t以上となると、燃料タンク200から燃焼器用熱交換器18への燃料の供給量を減少させる(ステップS250)。特に、コントローラ60は、改質器温度Trが改質可能温度Tr_t以上となると、燃料タンク200から燃焼器用熱交換器18への燃料の供給量を0にする。
これにより、システム始動時における改質器12の暖機が完了した移行のシーンにおいて、燃焼器用熱交換器18における原燃料との熱交換によって奪われる燃焼ガスの熱量を低減することができる。したがって、当該改質器12の暖機が完了した移行は、燃焼器16の生成熱を燃焼器用熱交換器18で消費することなく、改質器12及び空気熱交換器24に伝達させることができる。結果として、燃焼器16の生成熱を、改質器12及び空気熱交換器24の双方の動作温度の維持により効率的に用いることができる。
なお、本実施形態では、図4の燃料電池システム100(第3実施形態)の構成に基づいて図9に示すシステム始動時の制御を実行する例について説明した。しかしながら、これに代えて、他の実施形態の燃料電池システム100の構成に基づいて図9に示すシステム始動時の制御を実行することもできる。
特に、図5又は図6の燃料電池システム100は、図4の燃料電池システム100と同様に、燃料電池スタック14に供給される空気が空気熱交換器24において燃焼器16からの燃焼ガスにより加熱される構成をとっている。このため、図5又は図6の燃料電池システム100においても、改質処理装置9への燃料供給が開始されていない状態(第1インジェクタ20の開度が0にされている状態)であっても、燃焼器16が作動していれば、当該燃焼器16の生成熱で加熱された空気により燃料電池スタック14の暖機を実行することが可能である。すなわち、改質処理装置9への燃料供給が開始されていない状態でも、燃焼器16の生成熱によって改質器12の暖機と並行した燃料電池スタック14の暖機が可能である。
また、本実施形態では、図10A及び図10Bにおいて改質器温度Trを温度センサ82により取得する例を説明した。しかしながら、改質器12の温度が反映される場所であれば他の場所に設置した温度センサ82の検出値を改質器温度Trとして取得しても良い。また、改質器温度Trを、燃料電池システム100内で取得できる当該改質器温度Trに相関する他の物理量(各部の熱量及び熱容量など)に基づいて推定しても良い。さらに、このように他の物理量から推定された推定値と図10A又は図10Bで示される位置などに設置される温度センサ82の検出値を組み合わせて最終的な改質器温度Trとして取得しても良い。
(第8実施形態)
以下、第8実施形態について図11を参照して説明する。なお、第1~第7実施形態の何れかで説明した要素と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は適宜省略する。
図11は、第8実施形態による燃料電池システム100の構成の概要を示す図である。図示のように、本実施形態の燃料電池システム100では、図1に示す構成に対し、サブ熱回収部としての第1副熱交換器70が配置されている。第1副熱交換器70は、燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスの熱をさらに回収する熱交換器である。すなわち、本実施形態では燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスの熱の少なくとも一部を改質処理装置9における燃料との熱交換で回収するとともに、別途、当該燃焼ガスの熱の少なくとも一部を第1副熱交換器70によって回収する。
特に、本実施形態の第1副熱交換器70は、排気燃焼ガス流路57における改質処理装置9の下流位置であって、副燃料供給路52における燃焼器用熱交換器18の上流位置に設けられる。より詳細には、第1副熱交換器70は、その燃料入口70aから燃料出口70bに向かって内部に流れる燃料タンク200からの燃料と、燃焼ガス入口70cから燃焼ガス出口70dに向かって内部に流れる改質処理装置9(特に改質器用蒸発器10の燃焼ガス出口10d)からの燃焼ガスと、の熱交換を行う構造を有している。すなわち、第1副熱交換器70は、改質処理装置9において燃料との熱交換に用いられた後においても燃焼ガスが保有する熱(残余熱)を回収して、当該残余熱により燃焼器用熱交換器18に供給される燃料を加熱する。
この第1副熱交換器70を設けることによる技術的意義について説明する。
既に説明したように、上記図1及び図3~図7で説明した燃料電池システム100では、燃焼器用熱交換器18によって、燃焼器16の生成熱で加熱された燃料が燃焼器16における燃焼に用いられることとなるので、燃焼器16の生成熱の一部を再び燃焼器16に戻す熱ループが実現されている。
一方で、図1及び図3~図7で説明した燃料電池システム100では、燃焼器用熱交換器18における熱交換を経た燃焼ガスは、排気燃焼ガス流路57を通って改質処理装置9における熱交換を経て排気系400に排出される。すなわち、燃焼器用熱交換器18及び改質処理装置9を通過した燃焼ガスの残余熱がそのまま外部に排気されることとなるため、熱効率の観点からロスが生じ得る。
特に、図1及び図3~図7の燃料電池システム100の構成の場合、システム始動時における改質器12の暖機が、燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスを熱源として実行される。改質器12の暖機中は改質反応が適切に行われない状態であるため、コントローラ60は、改質器12への燃料供給が遮断されるように第1インジェクタ20を閉塞している。その結果、燃焼器用熱交換器18から改質処理装置9に供給される燃焼ガスは、改質器12又は改質器用蒸発器10において燃料との熱交換が行われることなく、排気系400に排気されることとなる。すなわち、少なくとも改質器12の暖機中は、燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスの保有熱が燃料に奪われることなく排気されることとなるため、燃料電池システム100における熱損失が大きくなることが想定される。
これに対して、本実施形態の燃料電池システム100では、第1副熱交換器70を設けている。したがって、燃焼器用熱交換器18及び改質処理装置9を通過した燃焼ガスの保有する残余熱を第1副熱交換器70において回収することができるので、燃料電池システム100における熱損失を低減することができる。
特に、改質処理装置9の熱交換において燃焼ガスが燃料に奪われる熱量が少ないことが想定される改質器12の暖機中において、第1副熱交換器70により燃焼ガスの残余熱を回収することで、排気系400に排気される熱をより効果的に低減することができる。
以上説明した本実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の燃料電池システム100は、燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスの熱の少なくとも一部を燃料電池システム100内で回収するサブ熱回収部としての第1副熱交換器70をさらに備える。
これにより、燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスが保有する熱量が、改質処理装置9(特に改質器12)において回収される熱量よりも高い場合においても、その熱量の差分(上記燃焼ガスの残余熱)をそのまま排気することなく、燃料電池システム100内で回収することができる。したがって、燃料電池システム100における熱損失を低減することができる。
特に、本実施形態では、サブ熱回収部は、排気燃焼ガス流路57における改質処理装置9から燃焼ガスが供給されるとともに、この改質処理装置9から燃焼ガスと燃料タンク200から燃焼器用熱交換器18に供給される燃料との間で熱交換を行う第1副熱交換器70として構成される。
これにより、第1副熱交換器70において燃料が燃焼器用熱交換器18及び改質処理装置9を通過した燃焼ガスによって加熱されて燃焼器用熱交換器18に供給されることとなる。すなわち、燃焼器用熱交換器18、改質処理装置9、及び第1副熱交換器70の間で熱ループが構成されることとなる。このため、燃焼器用熱交換器18に供給される燃料の保有熱量をより高くすることができるので、燃焼器用熱交換器18における熱交換で燃焼ガスが燃料から奪われる熱量が低下することとなる。結果として、燃焼器用熱交換器18から改質処理装置9に供給される燃焼ガスの保有熱量が高くなって改質処理装置9の加熱の効率を高めることができ、改質器12の暖機時間をより短くすることができる。
(第9実施形態)
以下、第9実施形態について図12を参照して説明する。なお、第1~第8実施形態の何れかで説明した要素と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は適宜省略する。
図12は、第9実施形態による燃料電池システム100の構成の概要を示す図である。
図示のように、本実施形態の燃料電池システム100では、図11に示す構成に対し、エアブロア300から燃料電池スタック14に空気を供給する空気流路58に設けられ、燃料電池スタック14に供給する空気を加熱する空気熱交換器24をさらに備えている。
また、燃焼器16と燃焼器用熱交換器18の間の燃焼ガス流路56には、空気熱交換器24に繋がるように合流部J4において分岐した第2ガス分流路56bが設けられている。さらに、本実施形態では、第2ガス分流路56bは、合流部J4から空気熱交換器24を通過して第1副熱交換器70の上流の合流部J5において排気燃焼ガス流路57に合流するように構成されている。すなわち、第2ガス分流路56bは、排気燃焼ガス流路57における改質処理装置9の下流位置且つ第1副熱交換器70の上流位置で排気燃焼ガス流路57に接続されている。
この構成により、燃焼器16からの燃焼ガス流路56に排出される燃焼ガスの少なくとも一部は、空気熱交換器24において空気流路58内の空気との熱交換に用いられた後に、改質処理装置9から排気燃焼ガス流路57に排出された燃焼ガスと合流しつつ、第1副熱交換器70の燃焼ガス入口70cに供給されることとなる。
以上説明した本実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の燃料電池システム100は、エアブロア300から燃料電池スタック14に空気を供給する空気流路58に設けられ、燃料電池スタック14に供給する空気を加熱する空気熱交換器24をさらに備える。そして、燃焼器16と燃焼器用熱交換器18の間の排気燃焼ガス流路57には、空気熱交換器24に接続されるように分岐した第2ガス分流路56bが設けられる。
これにより、燃焼器16からの燃焼ガス流路56に排出される燃焼ガスの少なくとも一部を、第2ガス分流路56bを介して空気熱交換器24に送ることができる。したがって、空気熱交換器24において、燃焼器16から排出された高温の燃焼ガスの保有熱により、燃料電池スタック14に供給する空気を加熱することができる。このため、燃料電池システム100の始動時において燃料電池スタック14の暖機をより促進することができる。
特に、本実施形態の第2ガス分流路56bは、燃焼器16と燃焼器用熱交換器18の間の燃焼ガス流路56から空気熱交換器24を通過して第1副熱交換器70の上流に合流するように構成されている。
これにより、空気熱交換器24における熱交換後の燃焼ガスの残余熱を副燃料供給路52における燃料の加熱に用いることができる。したがって、燃焼ガスの残余熱を燃焼器用熱交換器18に供給する燃料の加熱に好適に利用することができる。
さらに、本実施形態の第2ガス分流路56bは、排気燃焼ガス流路57における改質処理装置9の下流位置且つ第1副熱交換器70の上流位置である合流部J5に接続される。
これにより、空気熱交換器24における熱交換後の燃焼ガスは、改質処理装置9から排気燃焼ガス流路57に排出された燃焼ガスと合流しつつ、第1副熱交換器70の燃焼ガス入口70cに供給されることとなる。したがって、改質処理装置9からの燃焼ガスの残余熱又は空気熱交換器24からの燃焼ガスの残余熱の双方を、第1副熱交換器70における燃料との熱交換に用いることができる。このため、これら燃焼ガスの残余熱の何れか一方が低い場合においても、他方の残余熱で第1副熱交換器70において燃料を好適に加熱することができる。結果として、副燃料供給路52における燃料を加熱する熱量に関して、燃料電池システム100の運転状態の変化に対する依存性を低減し、当該熱量をより安定的に確保することができる。
(第10実施形態)
以下、第10実施形態について図13を参照して説明する。なお、第1~第9実施形態の何れかで説明した要素と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は適宜省略する。
図13は、第10実施形態による燃料電池システム100の構成の概要を示す図である。図示のように、本実施形態の燃料電池システム100では、第9実施形態における第2ガス分流路56bに代え、排気燃焼ガス流路57における燃焼器用熱交換器18と改質器12の間における合流部J6から空気熱交換器24に接続されるように分岐した排気燃焼ガス分流路57aが設けられている。この排気燃焼ガス分流路57aは、合流部J6から空気熱交換器24を通過して排気系400に接続されるように構成されている。
したがって、本実施形態では、改質処理装置9とは別に燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスの熱の少なくとも一部を燃料電池システム100内で回収するサブ熱回収部が、空気熱交換器24及び第1副熱交換器70の双方によって実現されている。
本実施形態の燃料電池システム100の構成によれば、上述した燃焼器16及び燃焼器用熱交換器18の間における熱ループ、並びに燃焼器用熱交換器18、改質処理装置9、及び第1副熱交換器70の間における熱ループを実現しつつも、燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスの熱を空気熱交換器24における空気の加熱に用いることができる。
なお、以下の説明において、本実施形態における燃料電池システム100内の各部の温度(図13においてT1~T7の符号で示す部分の流路内の流体の温度)を次のように定義する。
・「燃焼器出口温度T1」:燃焼器16の出口における燃焼ガス流路56内の燃焼ガスの温度、
・「熱交換器燃焼ガス出口温度T2」:燃焼器用熱交換器18の燃焼ガス出口18dにおける排気燃焼ガス流路57内の燃焼ガスの温度、
・「改質器燃焼ガス出口温度T3」:改質器12の燃焼ガス出口12dにおける排気燃焼ガス流路57内の燃焼ガスの温度、
・「蒸発器燃焼ガス出口温度T4」:改質器用蒸発器10の燃焼ガス出口10dにおける排気燃焼ガス流路57内の燃焼ガスの温度、
・「第1副熱交換器燃焼ガス出口温度T5」:第1副熱交換器70の燃焼ガス出口70dにおける排気燃焼ガス流路57内の燃焼ガスの温度、
・「第1副熱交換器燃料出口温度T6」:第1副熱交換器70の燃料出口70bにおける副燃料供給路52内の燃料の温度、
・「スタック出口温度T7」:燃料電池スタック14のカソード極出口14dにおけるカソードオフガス配管54b内のガスの温度。
さらに、以下では、第1インジェクタ20を操作して調節される主燃料供給路50の燃料(改質処理装置9に供給される燃料)の流量を「主燃料流量F1」と称する。また、第2インジェクタ22を操作して調節される副燃料供給路52の燃料(燃焼器用熱交換器18に供給される燃料)の流量を「副燃料流量F2」と称する。
ここで、第1副熱交換器70を備えない場合におけるシステムにおいて、システム始動時においてさらに改善すべき点について説明する。
図14A及び図14Bは、サブ熱回収部(特に第1副熱交換器70)を備えないシステムにおいて想定される改善点を説明するための図である。
特に、図14Aは、図13の燃料電池システム100をベースとして第1副熱交換器70が設けられていない場合のシステム構成を示している。また、図14Bは、図4の燃料電池システム100と同じシステム構成を示している。なお、以下では、説明の便宜上、図14Aに示すシステムを「燃料電池システム110」と称し、図14Bに示すシステムを「燃料電池システム120」と称する。一方で、改質器12及び燃料電池スタック14等の各システム構成については、同一の符号を用いる。
先ず、図14Aに示す燃料電池システム110では、排気燃焼ガス流路57が燃焼器用熱交換器18の下流の合流部J6において分岐し、分岐した排気燃焼ガス分流路57aが空気熱交換器24に接続されている。したがって、空気熱交換器24には、燃焼器用熱交換器18において燃料との熱交換によって温度が低下した燃焼ガスが供給される(熱交換器燃焼ガス出口温度T2<燃焼器出口温度T1)。このため、空気熱交換器24においては、燃料電池スタック14に供給すべき空気がこの温度が低下した燃焼ガスとの熱交換により加熱されることとなるので、燃料電池スタック14の暖機に時間がかかる。
次に、図14Bに示す燃料電池システム120では、燃焼ガス流路56から分岐した第2ガス分流路56bによって、燃焼器16から排出された燃焼ガスが燃焼器用熱交換器18を介さずに直接空気熱交換器24に供給される構成をとる。したがって、空気熱交換器24において高温の燃焼ガスにより燃料電池スタック14に供給される空気を加熱することができるので、燃料電池スタック14をより速やかに暖機することができる。
しかしながら、図14Bに示す燃料電池システム120は、燃焼器16から燃焼ガスを空気熱交換器24に分流する構成であるため、燃焼器16から燃焼器用熱交換器18に供給する燃料ガスの流量が低下することとなる。このため、燃焼器用熱交換器18に供給される燃料ガスの実質的な保有熱量が低下することとなり、当該燃焼器用熱交換器18を介して改質処理装置9に供給される燃焼ガスの保有熱量も低下することとなる。その結果、当該燃焼ガスから改質器12の暖機を適切な速度で行うための十分な熱量を確保できず、改質器12の暖機に時間がかかる。
これに対して、改質器12の暖機速度を高めるために、燃焼ガス流路56から燃焼器用熱交換器18に流れる燃焼ガスの流量を増加させることが考えられる。具体的には、空気熱交換器24への燃焼ガスの供給流量に対する燃焼器用熱交換器18への燃焼ガスの供給流量の比(分流比)を増大させる方法をとることができる。しかしながら、この場合、空気熱交換器24への燃焼ガスの供給流量(実質的な保有熱量)が減少することとなるので、燃料電池スタック14に供給する空気への加熱量が十分に確保できず、燃料電池スタック14の暖機の遅れをもたらすことが想定される。
このような状況に対して、図13に示す本実施形態の燃料電池システム100の構成であれば、改質器12及び燃料電池スタック14の双方の暖機速度の低下を抑制することができる。以下、その詳細な理由について説明する。
図15は、第10実施形態による燃料電池システム100のシステム始動時の各温度T1~T7及び供給燃料量の経時変化を示すタイミングチャートである。参考のため、熱交換器燃焼ガス出口温度T2、第1副熱交換器燃焼ガス出口温度T5、第1副熱交換器燃料出口温度T6、及びスタック出口温度T7については、図14A又は図14Bに示す燃料電池システム110又は燃料電池システム120を前提としたシステム始動時の各温度の経時変化を破線グラフで示す。
なお、燃料電池システム110,120では、第1副熱交換器70が設けられていない。そのため、第1副熱交換器燃焼ガス出口温度T5と対比する温度として、排気系400の直前の排気燃焼ガス流路57内の燃焼ガス温度を用いる。また、第1副熱交換器燃料出口温度T6と対比する温度として、燃焼器用熱交換器18の上流の副燃料供給路52内の燃料の温度を用いる。
時刻t1において、コントローラ60はシステム始動指令を検出すると、暖機運転(燃焼器16、改質器用蒸発器10、改質器12、及び燃料電池スタック14の暖機)を開始する。暖機の初期段階である時刻t1~時刻t2においては、コントローラ60は図示しないヒータを作動させ、エアブロア300を所定の目標出力に設定しつつ、エアブロア300によって空気流路58に供給される空気を加熱する。これにより、この加熱された空気が空気流路58、オフガス配管54、燃焼ガス流路56、及び排気燃焼ガス流路57を介して燃料電池スタック14、燃焼器16、改質器12、及び改質器用蒸発器10に供給されることで、これら各装置の暖機が進行する。このため、各部の温度T1~T7が緩やかに増加する(図15(a)~図15(g)参照)。
時刻t2において、燃焼器16の暖機が完了すると(燃焼器温度が、燃焼器16による燃焼が可能となる目標温度に到達すると)、コントローラ60は第2インジェクタ22を開放する。すなわち、副燃料供給路52を介した燃焼器用熱交換器18への燃料供給が開始される。そして、燃焼器用熱交換器18への燃料供給が開始されると、燃焼器16における燃焼が開始される。したがって、燃焼器16で生成された燃焼ガスが燃焼ガス流路56及び排気燃焼ガス流路57を介して各部に供給されるため、当該燃焼ガスの保有熱量によって燃料電池スタック14、改質器12、及び改質器用蒸発器10の暖機が進行する(図15(a)~図15(g)参照)。なお、本実施形態においては、目標とされる燃料供給流量(主燃料流量F1、副燃料流量F2、又はこれらの合計の目標値)は、燃焼器出口温度T1が図15(a)の破線で示す所定の上限温度(燃焼器16又はその他の各装置の耐熱を考慮して定まる上限)に近づくように定められる。
ここで、本実施形態の燃料電池システム100では、燃焼器16を用いた暖機を行う時刻t2以降において、第1副熱交換器70が設けられていない燃料電池システム110,120と比べ、熱交換器燃焼ガス出口温度T2がより速やかに増加している(図15(b)参照)。これは、燃焼器用熱交換器18、改質処理装置9、及び第1副熱交換器70の間に構成された熱ループによって、燃焼器用熱交換器18から改質処理装置9に供給される燃焼ガスの保有熱量が高くなったことに起因する。
さらに、本実施形態の燃料電池システム100では、燃焼器16を用いた暖機を行う時刻t2以降において、第1副熱交換器70が設けられていない燃料電池システム110,120と比べ、第1副熱交換器燃焼ガス出口温度T5が平均的に低くなっている(図15(e)参照)。これは、第1副熱交換器70により、改質処理装置9からの燃焼ガスの残余熱が回収されることに起因する。より詳細には、燃料電池システム110,120の構成であれば、改質処理装置9からの燃焼ガスが直接排気系400に排気されてしまうのに対して、本実施形態の燃料電池システム100では改質処理装置9からの燃焼ガスが排気系400に排気される前に、当該燃焼ガスの保有する残余熱の少なくとも一部を第1副熱交換器70において燃料との熱交換に用いることができるためである。
また、本実施形態の燃料電池システム100では、このように第1副熱交換器70において副燃料供給路52内の燃料が加熱されるので、燃料電池システム110,120の場合と比べ、第1副熱交換器燃料出口温度T6が平均的に高くなる(図15(f)参照)。これにより、第1副熱交換器70において燃料を一定程度加熱した後に、当該燃料を燃焼器用熱交換器18に供給することができる。したがって、燃焼器用熱交換器18における熱交換で燃料が燃焼ガスから奪う熱量を低下させることができる。結果として、燃焼器用熱交換器18から改質処理装置9及び空気熱交換器24へ供給される燃焼ガスの保有熱量をより高くすることができるので、改質器12及び燃料電池スタック14の暖機が促進される。
特に、本実施形態の燃料電池システム100では、時刻t2以降において、燃料電池システム110,120と比べ、スタック出口温度T7が図15(g)に破線で示す目標値により速やかに達している。これは、上述のように、燃焼器用熱交換器18から空気熱交換器24へ供給される燃焼ガスの保有熱量がより高くなったことで燃料電池スタック14の暖機が促進されていることを示すものである。
一方、時刻t3において改質器12の暖機が完了すると(改質器温度Trが改質可能温度Tr_tに達すると)、コントローラ60は第1インジェクタ20を開放する。すなわち、燃料タンク200から主燃料供給路50を介した改質処理装置9への燃料供給が開始される(図15(h)参照)。なお、改質処理装置9への燃料供給が開始されると、改質器用蒸発器10及び改質器12における燃料と燃焼ガスとの熱交換が開始されることとなる。このため、時刻t3以降においては、燃焼ガスの熱が当該熱交換によって燃料に奪われ始める、蒸発器燃焼ガス出口温度T4が経時的に低下する(図15(d)参照)。
さらに、時刻t4において燃料電池スタック14の暖機が完了すると(スタック温度Tsがスタック暖機目標温度Ts_tに達すると)、コントローラ60は第2インジェクタ22を閉塞する。すなわち、燃料タンク200から副燃料供給路52を介した燃焼器用熱交換器18への燃料供給が停止される(図15(h)参照)。すなわち、時刻t4以降において、燃料電池システム100は、燃料電池スタック14による通常の発電オペレーションに移行することとなる。
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システム100であれば、燃焼器16を用いた暖機中において、熱交換器燃焼ガス出口温度T2及び第1副熱交換器燃焼ガス出口温度T5は第1副熱交換器70が設けられていない燃料電池システム110,120と比べ高い状態に維持されることとなり、その結果、改質器12及び燃料電池スタック14の双方の暖機速度の低下が抑制されることとなる。
なお、本実施形態のように、燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスを分流させる空気熱交換器24に供給する構成に代えて、改質処理装置9を通過した燃焼ガスを空気熱交換器24に供給する構成を採用しても良い。
(第11実施形態)
以下、第11実施形態について図16を参照して説明する。なお、第1~第10実施形態の何れかで説明した要素と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は適宜省略する。
図16は、第11実施形態による燃料電池システム100の構成の概要を示す図である。図示のように、本実施形態の燃料電池システム100では、排気燃焼ガス流路57が改質処理装置9を通過して直接、排気系400に接続される構成をとっている。そして、本実施形態の燃料電池システム100は、図11等で説明した第1副熱交換器70に代えて、第2副熱交換器71を備えている。
第2副熱交換器71は、第2ガス分流路56bにおける空気熱交換器24の下流位置であって、副燃料供給路52における燃料タンク200と燃焼器用熱交換器18の間に設けられている。
より詳細には、第2副熱交換器71は、その燃料入口71aから燃料出口71bに向かって内部に流れる燃料タンク200からの燃料と、燃焼ガス入口71cから燃焼ガス出口71dに向かって内部に流れる空気熱交換器24からの燃焼ガスと、の熱交換を行う構造を有している。すなわち、第2副熱交換器71は、空気熱交換器24において空気との熱交換に用いられた後の燃焼ガスの残余熱を回収して、当該残余熱により燃焼器用熱交換器18に供給される燃料を加熱する。
これにより、空気熱交換器24において空気との熱交換に用いられた後の燃焼ガスの残余熱をそのまま排気系400に排気することなく、燃焼器用熱交換器18に供給する燃料の加熱に有効に利用することができる。
以上説明した本実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の燃料電池システム100では、エアブロア300から燃料電池スタック14に空気を供給する空気流路58に設けられ、燃料電池スタック14に供給する空気を加熱する空気熱交換器24をさらに備える。そして、サブ熱回収部は、燃料タンク200から燃焼器用熱交換器18に供給される燃料と空気熱交換器24からの燃焼ガスとの間で熱交換を行う第2副熱交換器71として構成される。
これにより、第2副熱交換器71において、空気熱交換器24において空気との熱交換を経た燃焼ガスの残余熱を、燃焼器用熱交換器18に供給される燃料の加熱に用いることができる。すなわち、空気熱交換器24、第2副熱交換器71、及び燃焼器用熱交換器18の間で熱ループが構成されることとなる。このため、副燃料供給路52を介して燃焼器用熱交換器18に供給される燃料の保有熱量をより高くすることができるので、燃焼器用熱交換器18における熱交換で燃焼ガスが燃料から奪われる熱量が低下することとなる。結果として、燃焼器用熱交換器18から改質処理装置9に供給される燃焼ガスの保有熱量が高くなって改質処理装置9の加熱の効率を高めることができ、改質器12の暖機時間をより短くすることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を、上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。上記実施形態に対し、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で様々な変更及び修正が可能である。
例えば、上記各実施形態に係る燃料電池システム100では、改質処理装置9が改質器用蒸発器10及び改質器12により構成されることを前提としている。しかしながら、改質器用蒸発器10を備えず改質器12のみで改質処理装置9が構成されるシステムにおいても、適宜修正を加えつつ上記各実施形態で説明した特徴的構成(特に燃料流路53及び排気燃焼ガス流路57)を採用することが可能である。
また、上記第8~第11実施形態では、燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスの熱を回収するサブ熱回収部としての第1副熱交換器70又は第2副熱交換器71を備えた燃料電池システム100の構成を説明した。しかしながら、燃料電池システム100にサブ熱回収部を備える態様は、上記第8~第11実施形態に限られない。
例えば、改質器12にサブ熱回収部の機能を統合させるための構成を採用しても良い。具体的には、改質器12において、主燃料供給路50内の燃料が流れる内部熱交換路及び燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスが流れる内部熱交換路に並列して、他の熱交換が要求される流体(エアブロア300からの空気、又は副燃料供給路52内の燃料など)が流れる内部熱交換路を構成することができる。これにより、燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスにより、主燃料供給路50内の燃料及び他の流体を加熱することができる。また、同様に、空気熱交換器24にサブ熱回収部の機能を統合させるための構成を採用しても良い。
また、燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスの熱の少なくとも一部を燃料電池システム100内で回収するサブ熱回収部は、上記第8~第11実施形態で説明した空気熱交換器24、第1副熱交換器70、及び第2副熱交換器71に限られない。例えば、サブ熱回収部を、改質処理装置9及び燃料電池スタック14などのシステム構成要素を収容する筐体の内部空間として構成しても良い。より詳細には、燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスを筐体の内部空間に供給するための配管等の構造を設けても良い。これにより、燃焼器用熱交換器18からの燃焼ガスの熱を改質処理装置9における熱交換に用いつつ、筐体内のシステム構成要素の加熱(暖機)のための熱源として回収することができる。結果として、システムの熱損失を抑制することができる。
また、上記各実施形態は、当業者が想定し得る範囲で適宜、組み合わせが可能である。
さらに、本明細書に開示された事項には、燃料供給源(燃料タンク200)からの燃料を改質処理し、改質処理後の燃料と酸化剤ガス供給源(エアブロア300)からの酸化剤ガス(空気)を固体酸化物形の燃料電池(燃料電池スタック14)に供給して発電させるとともに、燃料電池スタック14を暖機する燃焼ガスを生成する燃焼器16を備える燃料電池システム100において実行する燃料電池システム始動方法であって、燃料電池システム100の始動時に、燃焼器用熱交換器18によって燃料タンク200から燃焼器16に供給する燃料を該燃焼器16が生成する燃焼ガスと熱交換させる燃料電池システム始動方法が含まれる。
この燃料電池システム始動方法によれば、燃焼器16の生成熱で加熱された燃料を燃焼器16の燃焼に用いることができるため、燃焼器16の生成熱の一部を再び燃焼器16に戻す熱ループを実現することができる。結果として、この燃焼器16の暖機を含む燃料電池システム100の始動時における処理の進行が促進され、燃料電池システム100の始動の遅れを抑制することができる。