JP7248918B2 - 塩味増強剤 - Google Patents

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Description

本発明は、塩味増強剤に関する。
食塩(塩化ナトリウム)は、調味や長期保存等の目的で飲食品に幅広く使用されているが、過剰摂取により高血圧症等の間接的な原因となり得る。昨今の健康志向の傾向もあり、市場では、数多くの減塩商品が販売されている。しかしながら、飲食品中の塩分は、おいしさに直結する成分であることから、減塩商品は、嗜好性の低下という問題を常時抱えている。
減塩と嗜好性を両立させる方法として、減塩で失われる塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムなどの代替塩で補い、代替塩の異味を、更に別の添加物を加えることにより抑える方法(特許文献1、2)が公知となっている。
単独の使用で塩味の増強や呈味全体の増強を行い、塩化ナトリウム使用量を削減できる添加物としては、フタライド類やサンショウ抽出物(特許文献3、4)、ジヒドロアクチニジオリド(特許文献5)、動植物たんぱく加水分解物(特許文献6)、ポリグルタミン酸、酵母エキス、植物抽出物、海藻抽出物、糖アルコール、アセスルファムカリウム、グルタミン酸ナトリウム、トレハロース、粉末にがり、フラボノイド類、塩基性アミノ酸、塩基性ペプチド、魚介エキスなどが公知となっている。しかしながら、これらの添加物も、添加量によっては、飲食品の香味を損なう可能性がある。
一方、δ-ラクトン類やγ-ラクトン類は、香料として多用されているが、一般に炭素数が大きいものでは香気が弱くなるため、通常、香料として使用されるのは炭素数12以下のものがほとんどである。また、炭素数13以上のラクトンについては、乳風味や食感に関与すること(非特許文献1)、油脂感増強目的での使用(特許文献7)、乳製品のクリーム感増強目的での使用(特許文献8)、異味を低減する目的での使用(特許文献9)が公知となっているが、その他の効果については知られていない。
日本国特開昭63-287460号公報 日本国特開2010-004767号公報 日本国特許4606513号公報 日本国特開2011-254772号公報 日本国特開2014-193146号公報 日本国特開2011-062172号公報 日本国特開2011-083264号公報 英国特許出願公開2511766明細書 英国特許出願公開2511742明細書
Journal of Agricultural and Food Chemistry、2007年、第55号、P.9634-9645
本発明の課題は、飲食品の塩味を増強することで嗜好性を高めること、又は食塩の使用量を削減することができる塩味増強剤を提供することにある。
本発明は、下記式(1)(式中Rは、炭素数8~13のアルキル基)で表されるδ-ラクトン類及び下記式(2)(式中Rは、炭素数9~14のアルキル基)で表されるγ-ラクトン類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する塩味増強剤である。
Figure 0007248918000001

Figure 0007248918000002
本発明の特定のδ-ラクトン類及び/又はγ-ラクトン類を有効成分として含有する塩味増強剤は、飲食品の香味に悪影響を及ぼすことなく、塩味を増強することができる。これにより、飲食品の食塩の使用量を低減することができる。
図1は、本発明の塩味増強剤の塩味の増強の仕方を示した図である。
本発明は、塩味を有する飲食品の塩味を増強するための塩味増強剤であって、δ-ラクトン類及び/又はγ-ラクトン類を有効成分として含有するものである。
本発明は、下記式(1)(式中Rは、炭素数8~13のアルキル基)で表されるδ-ラクトン類及び下記式(2)(式中Rは、炭素数9~14のアルキル基)で表されるγ-ラクトン類から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する塩味増強剤である。なお、Rが炭素数7以下のアルキル基のδ-ラクトン類、及びRが炭素数8以下のアルキル基のγ-ラクトン類は、それ自体の香気が強いため、本発明の塩味増強剤としては利用範囲が限定されることから望ましくない。
Figure 0007248918000003

Figure 0007248918000004
塩味増強剤は、δ-ラクトン類及び/又はγ-ラクトン類を有効成分として含有する。
δ-ラクトン類として、δ-トリデカラクトン、δ-テトラデカラクトン、δ-ペンタデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-ヘプタデカラクトン、δ-オクタデカラクトンを例示することができる。なかでもδ-トリデカラクトン、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトンが好ましく、より好ましくは、δ-テトラデカラクトン、δ-オクタデカラクトンである。
γ-ラクトン類として、γ-トリデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ペンタデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトン、γ-ヘプタデカラクトン、γ-オクタデカラクトンを例示することができる。なかでもγ-トリデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトン、γ-オクタデカラクトンが好ましく、より好ましくは、γ-テトラデカラクトン、γ-オクタデカラクトンである。
本発明で用いられるδ-ラクトン類、γ-ラクトン類は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、塩味は、飲食品によって好ましい発現の仕方が異なるが、本発明の塩味増強剤は、総炭素数によって、トップ、ミドル、ラスト、いずれの塩味を増強できるかが異なる。具体的には、総炭素数の少ないものはトップからミドルの塩味を増強し、多いものはミドルからラストの塩味を増強することができる。また、δ-ラクトン類とγ-ラクトン類を比較すると、δ-ラクトン類は比較的厚みや持続性のある塩味の増強の仕方をし、γ-ラクトン類は比較的シャープで切れの良い塩味の増強の仕方をする。これらの特徴から、2種以上を組み合わせて使用することにより、塩味の増強の仕方を制御することができる。
ここで、2種以上のδ-ラクトン類を組み合わせて使用してもよく、2種以上のγ-ラクトン類を組み合わせて使用してもよく、δ-ラクトン類及びγ-ラクトン類を組み合わせて使用してもよい。2種以上のδ-ラクトン類の組み合わせとして、δ-オクタデカラクトン及びδ-テトラデカラクトンを好ましく挙げることができる。また、2種以上のγ-ラクトン類の組み合わせとして、γ-オクタデカラクトン及びγ-テトラデカラクトンを好ましく挙げることができる。更にδ-ラクトン類及びγ-ラクトン類の組み合わせとして、δ-オクタデカラクトン及びγ-オクタデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトンとγ-ヘキサデカラクトン等を好ましく挙げることができる。
本発明で用いられるδ-ラクトン類、γ-ラクトン類の入手方法としては、市販されているものを利用してもよく、公知の方法で合成することもできる。
本発明の塩味増強剤は、飲食品の香味に影響しない範囲であれば、代替塩や他の塩味増強剤と併用することができる。具体的には、塩化カリウム、塩化マグネシウム、ジヒドロアクチニジオリド、酵母エキス、ポリグルタミン酸、植物たんぱく加水分解物、植物抽出物、海藻抽出物、糖アルコール、アセスルファムカリウム、グルタミン酸ナトリウム、トレハロース、粉末にがり、フラボノイド類、塩基性アミノ酸、塩基性ペプチド、魚介エキス、動物たんぱく加水分解物などが挙げられる。なお、本発明の塩味増強剤は、塩化カリウムなどの代替塩と併用すると、塩味を増強すると共に、代替塩の異味を抑えることもできる。好適な代替塩は、前記式(1)で表されるδ-ラクトン類及び/又は前記式(2)で表されるγ-ラクトン類を有効成分として含有する塩味増強剤と、塩化カリウムを有効成分として含有するとよい。
また、ジヒドロアクチニジオリドは、トップの塩味を増強するため、本発明の塩味増強剤と組み合わせることにより、好ましい塩味増強効果をもたらす。具体的に、塩味増強剤は、前記式(1)で表されるδ-ラクトン類、前記式(2)で表されるγ-ラクトン類及びジヒドロアクチニジオリドからなる群より選択される2種以上を有効成分として含有することができる。
本発明の塩味増強剤は、他の食品添加物と配合することもできる。ここにいう他の食品添加物とは、飲食品に使用され得る添加物であって、例えば甘味料、酸味料、着色料、香料、ビタミン類、ミネラル類、その他の栄養強化成分、抗酸化剤などが挙げられる。
本発明の塩味増強剤は、塩味を有する飲食品に使用される。本発明の塩味増強剤が適用される飲食品としては、食用油脂、調理食品、調味料、食肉加工品、菓子、冷菓、飲料、乳製品、乳製品代替品などが挙げられる。具体的には、食用油脂として、バター、ショートニング、マーガリン、ファットスプレッド、調理食品として、インスタントカレー、レトルトカレー、缶詰カレー、インスタントシチュー、レトルトシチュー、インスタントハヤシ、レトルトハヤシ、ピザソース、パスタソース、ブラウン・ホワイトソース、トマトソース、グラタン関連セット食品、メニュー専用合せ調味食品、中華メニュー専用合せ調味食品、和風・洋風メニュー専用合せ調味食品、韓国メニュー専用合せ調味食品、チルドメニュー専用調理済食品、炒飯の素、お茶漬け、ふりかけ、すしの素、釜飯の素・炊き込みご飯の素、どんぶりの素、ぞうすいの素、調味料として、味噌、しょうゆ、塩(特殊製法塩)、つゆの素、白だし、うどんスープ(市販用)、風味調味料、液体風味調味料、ぽん酢、その他調味酢、みりん風調味料、発酵調味料、マヨネーズ類、マヨネーズタイプ調味料(市販用)、タルタルソース、ドレッシング、ノンオイルドレッシング、簡易型粉末調味料(市販用)、コンソメ・ブイヨン、焼肉のたれ、ステーキソース、ソース、お好み・焼きそばソース、トマトケチャップ、トマトピューレ・ペースト、ペッパーソース、浅漬けの素、オイスターソース、豆板醤、具入りラー油(市販用)、キムチのたれ、ガラスープ、ラーメンスープ(業務用)、しゃぶしゃぶのたれ、すき焼きのたれ、鍋つゆ、キムチ鍋の素、おでんの素、うまみ調味料、半練中華だし(市販用)、塩麹、食肉加工品として、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、加工成形肉、菓子として、スナック菓子、煎餅、おかき、あられ、冷菓として、アイスクリーム、飲料として、トマトジュース、野菜ジュース、乳製品として、プロセスチーズ、チーズ入り加工食品などが挙げられる。
本発明の塩味増強剤は、塩味を有する飲食品に添加することで、飲食品の塩味を増強する効果がある。飲食品への添加量は、添加する飲食品によるが、例えば、δ-オクタデカラクトンやγ-オクタデカラクトンは、飲食品に対して質量比で0.1pptの添加で十分な塩味増強効果がある。飲食品の塩分濃度により塩味増強効果は変わるが、そのままで喫食または飲用される飲食品に対しては、通常1ppb~10ppmの添加が好ましい。なお、本明細書において、ppt、ppb、ppmは、特に記載のない限り、質量比を意味する。
本発明の塩味増強剤の形態は、用途に応じて任意の形態を選択することができる。例えば、δ-ラクトン類、γ-ラクトン類をそのまま使用してもよく、エタノール、含水エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、水混和性の可食性溶剤などの適当な溶剤に添加して水性液剤とすることもでき、食用油脂に添加して油剤とすることもできる。また、乳化剤と共に水性溶剤に加えて水性液剤とすることもでき、賦形剤を加えて液剤とした後にスプレードライなど公知の方法によって粉末化することもできる。なお、塩味増強効果が得られるよう、いずれの形態でも、δ-ラクトン類及び/又はγ-ラクトン類が10ppt以上含有するよう調製するのが望ましい。好適な塩味増強剤は、δ-オクタデカラクトン及び/又はγ-オクタデカラクトンを10ppt以上含有するとよい。
飲食品の塩味増強方法は、飲食品へ上述した塩味増強剤を添加するだけでよく、塩味増強剤、好ましくはδ-オクタデカラクトン及び/又はγ-オクタデカラクトンを、飲食品に対し0.1ppt~10ppm添加するとよい。
本発明の塩味増強剤は、他の食品添加物類と個別に飲食品に添加することもできるが、予め配合製剤とすることもできる。より具体的には、例えば、香料製剤や調味料の製造にあたって、それらの処方に本発明の塩味増強剤を組み入れて製造することもできる。また、本発明の塩味増強剤の飲食品への添加は、飲食品中に均等に混合することが可能であれば、製造工程のどの時点で添加してもかまわない。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
0.7質量%食塩水に、δ-ドデカラクトン、δ-トリデカラクトン、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトンをそれぞれ添加して、官能試験により塩味の変化を確認した。また、それぞれにδ-オクタデカラクトンを追加添加して、δ-オクタデカラクトンとの組み合わせによる効果を確認した。なお、官能評価は5名の専門パネルにより行った(以下、特に記載のない限り同じ)。結果を表1に示す。
Figure 0007248918000005
官能試験の結果、表1に示した通り、δ-ドデカラクトン、δ-トリデカラクトン、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトンのいずれにも塩味増強効果がある事を確認した。なお、δ-ドデカラクトンについては、それ自体の香気が強いため、汎用性は低いものと考えられる。一方、δ-トリデカラクトン、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトンについては、香味への悪影響が認められなかった。
官能試験の結果、表1に示した通り、δ-ドデカラクトン、δ-トリデカラクトン、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトンそれぞれに対し、δ-オクタデカラクトンを組み合わせて使用することで塩味が上がる事を確認した。また、δ-オクタデカラクトンとδ-テトラデカラクトンを組み合わせて使用することで塩味が大きく上がる事を確認した。なお、δ-ドデカラクトンについては、それ自体の香気が強いため、δ-オクタデカラクトンと組み合わせて使用しても汎用性は低いものと考えられる。
(実施例2)
0.7質量%食塩水に、γ-ドデカラクトン、γ-トリデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトン、γ-オクタデカラクトンをそれぞれ添加して、官能試験により塩味の変化を確認した。なお、官能評価は3名の専門パネルにより行った。結果を表2に示す。
Figure 0007248918000006
官能試験の結果、表2に示した通り、γ-ドデカラクトン、γ-トリデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトン、γ-オクタデカラクトンのいずれにも塩味増強効果がある事を確認した。なお、γ-ドデカラクトンについては、それ自体の香気が強いため、汎用性は低いものと考えられる。一方、γ-トリデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトン、γ-オクタデカラクトンについては、香味への悪影響が認められなかった。
δ-ラクトン類とγ-ラクトン類を比較すると、δ-ラクトン類は比較的厚みや持続性のある塩味の増強の仕方をし、γ-ラクトン類は比較的シャープで切れの良い塩味の増強の仕方をする事が確認できた。
(実施例3)
市販のミートソース、粉末わかめスープ、ノンオイル青しそドレッシングに、含水エタノールで0.1質量%に希釈したδ-オクタデカラクトンを0.1質量%添加(各飲食品への当該塩味増強剤含有量1ppm)して、無添加品と比較した。官能試験の結果により、それぞれの飲食品で、δ-オクタデカラクトンを添加した方が、塩味が上がる事を確認した。
(実施例4)
市販のミートソース(塩分濃度1.7質量%)に、本発明のδ-ラクトン類及びジヒドロアクチニジオリドからなる群より選択される2種を0.5ppmずつ組み合わせて添加したものと、同群より選択される1種を単独で1ppm添加したものを比較し、組み合わせによる効果を確認した。結果を表3に示す。
Figure 0007248918000007
官能試験の結果、表3に示した通り、単独で使用した場合、塩味の発現の仕方がそれぞれ異なった。
それぞれの塩味増強剤につき、単独で使用した場合の塩味の増強の仕方を、図1に示した。具体的には、δ-トリデカラクトンは、トップからミドルの塩味を増強し、δ-テトラデカラクトンは、ミドルの塩味を大きく増強した。また、δ-ヘキサデカラクトンは、ミドルからラストの塩味を増強し、δ-オクタデカラクトンは、ミドルからラストの塩味を大きく増強した。なお、ジヒドロアクチニジオリドは、トップの塩味を増強した。
また、表3に示した通り、2種以上を組み合わせて使用することで、塩味の増強の仕方を制御することができると判断した。さらに、2種を組み合わせて使用した場合、単独で使用した場合よりも、塩味が強く感じられた。なお、実施例1のδ-ラクトン類単独の評価結果と実施例2の結果より、総炭素数の少ないものはトップからミドルの塩味を増強し、多いものはミドルからラストの塩味を増強することができるため、γ-ラクトン類も2種以上の組み合わせで表3の結果と同等の効果が得られるものと予測される。
(実施例5)
0.7質量%食塩水に、γ-テトラデカラクトンを0.1ppm添加したもの、γ-オクタデカラクトンを0.1ppm添加したもの、γ-テトラデカラクトンとγ-オクタデカラクトンをそれぞれ0.05ppmずつ添加したものを調製し、官能試験により塩味の変化を確認した。官能評価は3名の専門パネルにより行った。官能試験の結果、γ-テトラデカラクトンとγ-オクタデカラクトンを組み合わせて使用することで、それぞれを単独で使用した場合と比較し塩味が大きく上がる事を確認した。
(実施例6)
市販のミートソース(塩分濃度1.7質量%)に、δ-オクタデカラクトンとγ-オクタデカラクトンを3:1、1:1、1:3の質量比で合計1ppmとなるよう添加し、δ-オクタデカラクトン、γ-オクタデカラクトンを単独で1ppm添加したものと比較した官能試験により塩味の変化を確認した。また、δ-ヘキサデカラクトンとγ-ヘキサデカラクトンの組み合わせについても同様の試験を行った。官能評価は3名の専門パネルにより行った。官能試験の結果、δ-ラクトン類の比率が多いと比較的厚みや持続性のある塩味の増強の仕方をし、γ-ラクトン類の比率が多いと比較的シャープで切れの良い塩味の増強の仕方をする事が確認できた。また、δ-ラクトン類とγ-ラクトン類を同じ比率で添加すると、両方の特徴をバランスよく備えた塩味の増強の仕方をする事が確認できた。よって、δ-ラクトン類とγ-ラクトン類を組み合わせて使用すると、組み合わせの比率によりそれぞれの特徴を生かした塩味増強の仕方をすることを確認できた。
(実施例7)
ジヒドロアクチニジオリドを0.1ppm加えた0.7質量%食塩水を調製し、コントロールとした。これに、含水エタノールで0.1質量%に希釈したδ-オクタデカラクトンを0.01質量%添加(食塩水中のδ-オクタデカラクトン含有量0.1ppm)し、無添加のコントロールと比較した。官能試験の結果、ジヒドロアクチニジオリドとδ-オクタデカラクトンの組み合わせにより、食塩水の場合でもトップからラストまで塩味が上がる事を確認した。
(実施例8)
塩化カリウムを0.2質量%加えた0.7質量%食塩水を調製し、コントロールとした。これに、含水エタノールで0.1質量%に希釈したδ-オクタデカラクトンを0.01質量%添加(食塩水中のδ-オクタデカラクトン含有量0.1ppm)し、無添加のコントロールと比較した。官能試験の結果、δ-オクタデカラクトンの添加により塩味が上がり、さらに塩化カリウム特有のえぐみを抑えられる事を確認した。
(実施例9)
食塩水にδ-オクタデカラクトンを添加して、官能試験により塩味の変化を確認した。官能評価は、5名の専門パネルにより以下の基準によって行い、点数を平均した。結果を表4に示す。
(評価方法)
コントロールと比較して、塩味が強く感じる(5点)
塩味が変わらない(0点)
塩味が弱く感じる(-5点)
Figure 0007248918000008
官能試験の結果、表4に示した通り、δ-オクタデカラクトンは、0.1pptの添加で十分な塩味増強効果がある事を確認した。より好ましい添加量の範囲は、1ppb~10ppmと判断した。
(実施例10)
食塩水にγ-オクタデカラクトンを添加して、3名の専門パネルにより実施例9と同様の評価方法で官能試験を行い、塩味の変化を確認した。結果を表5に示す。
Figure 0007248918000009
官能試験の結果、表5に示した通り、γ-オクタデカラクトンは、0.1pptの添加で十分な塩味増強効果がある事を確認した。より好ましい添加量の範囲は、1ppb~10ppmと判断した。
(実施例11)
市販のポリグルタミン酸を0.01質量%加えた0.7質量%食塩水を調製し、コントロールとした。これに、含水エタノールで0.1質量%に希釈したδ-オクタデカラクトンを0.01質量%添加(食塩水中のδ-オクタデカラクトン含有量0.1ppm)し、無添加のコントロールと比較した。官能試験の結果、δ-オクタデカラクトンの添加により塩味が上がる事を確認した。
(実施例12)
市販の植物たんぱく加水分解物を0.01質量%加えた0.7質量%食塩水を調製し、コントロールとした。これに、含水エタノールで0.1質量%に希釈したδ-オクタデカラクトンを0.01質量%添加(食塩水中のδ-オクタデカラクトン含有量0.1ppm)し、無添加のコントロールと比較した。官能試験の結果、δ-オクタデカラクトンの添加により塩味が上がり、さらに植物たんぱく加水分解物特有の香気を抑えられる事を確認した。

Claims (8)

  1. 式(1)(式中Rは、炭素数8~13のアルキル基)で表される化合物及び式(2)(式中Rは、炭素数9~14のアルキル基)で表される化合物からなる群から選択される1種以上を有効成分として含有する塩味増強剤。
    Figure 0007248918000010

    Figure 0007248918000011
  2. δ-オクタデカラクトン及び/又はγ-オクタデカラクトンを有効成分として含有する塩味増強剤。
  3. 前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物及びジヒドロアクチニジオリドからなる群より選択される2種以上を有効成分として含有する請求項1に記載の塩味増強剤。
  4. δ-オクタデカラクトン及びδ-テトラデカラクトン、又は、γ-オクタデカラクトン及びγ-テトラデカラクトンを有効成分として含有する塩味増強剤。
  5. δ-オクタデカラクトン及び/又はγ-オクタデカラクトンを10ppt以上含有する塩味増強剤。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の塩味増強剤から選択される1種以上と塩化カリウムを有効成分として含有する代替塩。
  7. 請求項1~5のいずれかに記載の塩味増強剤を添加する飲食品の塩味増強方法。
  8. δ-オクタデカラクトン及び/又はγ-オクタデカラクトンを0.1ppt~10ppm添加する飲食品の塩味増強方法。
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