JP7247699B2 - 有機性排水の生物処理方法 - Google Patents
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Description
メタン回収をより効率的に行うためには槽容積負荷を高める必要があるが、その場合はメタン発酵槽の有機酸濃度が過度に高くなり有機酸によるメタン生成菌の失活(酸敗)が発生しやすい。酸敗が発生するとメタン生成菌による有機酸の分解速度が低下し、しかも活性回復まで長期間を要するため、ますます有機酸が蓄積するという悪循環が発生してしまう。
メタン生成菌が直接分解できる有機物(メタン生成菌の基質有機物)以外の有機物のうち、酸生成菌の基質となる易分解性有機物(炭水化物、タンパク質、脂質など)は、まず酸生成菌により有機物を有機酸まで低分子化し、次いでメタン生成菌により有機酸がメタンまで分解する。そのため原水中の、酸生成菌基質の易分解性有機物の濃度が高い場合は特に有機酸濃度が高くなりやすく、前述の通り酸敗が発生しやすい。
なお、酸生成菌基質の易分解性有機物の濃度が高い原水を処理する場合、有機酸の生成に伴って酸生成菌が大増殖し、酸生成菌はメタン生成菌により消費されないため余剰汚泥として排出され、汚泥発生量が増えてしまい、嫌気処理の利点が損なわれる。
そのため、適用できる排水種や有機物濃度に制限があり、酸生成が発生しやすい排水の場合、酸生成菌とメタン生成菌のバランスが崩れて酸敗による運転停止に至る可能性があるので設計負荷を下げて運転する必要がある。
本発明は、有機性排水の有機物濃度が高く、特にメタン生成菌の基質有機物(メタン生成菌が直接分解できる有機酸、アルコール)ではなく酸生成菌基質の易分解性有機物(炭水化物、タンパク質、脂質など)の濃度が高い場合でも相当量以上は分散菌を経由して有機酸をゆるやかに生成するため酸敗を防ぐことができる。そして従来技術では酸生成菌の大量発生が要因となり汚泥発生量が増加する問題が懸念されるが本発明では分散菌を経由するため酸生成菌の急激な発生を抑えられ汚泥発生量が過度に増加することが抑制される。
さらには第一生物処理において溶解性有機物をなるべく完全分解せず二酸化炭素として大気中に拡散しないよう大部分を分散菌として系内に保持することで第二生物処理におけるメタン回収率を高めることができる。また完全分解を要さないため通常の好気処理よりも酸素供給量が少なく供給動力を低減できる。
このように有機性排水のS.CODcrの相当量を分散菌に変換し、かつ完全分解を抑制するためには、第一生物処理を敢えて効率を下げて運転する必要がある。よって第一生物処理の負荷が高くなりすぎないように調整するか、または第一生物処理の細菌の生物活性が高くなり過ぎないよう調整することが望ましい。負荷調整のためには、必要に応じて有機性排水を第一生物処理をバイパスして第二生物処理に供するか、第二生物処理水を第一生物処理に返送することが望ましい。また、生物活性の調整のためには第一生物処理のDOを0.5mg/L以下に維持すべく酸素供給量を所定値以下に調整するか、水温を25℃以下に低下させるか、酸素供給を間欠とする。
ただし、第一生物処理槽1での全CODcr除去率が50重量%を上回ったときは分解速度が高すぎると判定し、酸素供給量を低減してDOを0.1mg/L以下に下げてもよい。
第一生物処理槽1ではHRT5日以下例えば1~5日とする。ただし、第一生物処理槽1での全CODcr除去率が50重量%を上回ったときは分解速度が高すぎると判定し、希釈水(系外からの低濃度水、水道水や第二生物処理水など)により原水希釈して、第一生物処理槽への流入流量を上げるか、または第一生物処理槽の水位を下げるなどしてHRTを下げてもよい。
容量が1.8Lの第一生物処理槽と16Lの第二生物処理槽を連結させた図1のフローの実験装置を用いて原水(合成排水)を処理した。第一生物処理槽には、ウレタンフォームよりなる担体(5mm角)を槽容積に対し5%となるように添加し、180NL/hにて曝気した。原水としては、SSは添加せず、メタン菌基質有機物としてメタノールを5900mg-CODcr/L添加し、酸生成菌基質として易分解性有機物である野菜と魚肉エキスを17000mg-CODcr/L添加し、その他有機物としてぶどう糖を7400mg-CODcr/L添加して調製した、CODcr:30000mg/L、BOD:17000mg/Lの合成排水を用いた。
実施例1において、第一生物処理槽を用いず第二生物処理槽のみを用いて下記条件で運転した。その結果、メタン生成量は4.8NL/dであった。第二生物処理水中の有機酸濃度が3000mg/L以上であり、酸敗の発生が懸念された。
<第二生物処理槽>
容量:18L
HRT=SRT:20d
pH:7.0
温度:35℃
通水量:0.9L/d
実施例1において、第一生物処理槽のS.CODcr容積負荷を10kg-CODcr/m3/d、DOを1mg/Lにそれぞれ変更して、その他は実施例1と同じ条件で運転した。その結果、メタン生成量が4.7NL/dであった。S.CODcr除去率vs原水が80重量%、生成菌比率vs除去CODcrが35重量%であり、第一生物処理においてS.CODcrが二酸化炭素として大気中に拡散したことが要因と推定された。
実施例1において、第一生物処理の処理状況が本発明で適性とされる条件から外れたときの改善対応の検証を行った。表1の通り第一生物処理が適性条件から逸脱する状況を発生させた後、運転条件を変更してリカバリを図った。その結果、表1の通り、酸素供給またはHRTの調整により改善されることが確認された。
実施例2は、生成菌比率が低下していたので、通気量を下げてDO濃度を下げた。その結果、生成菌比率が回復した。
実施例3は、実施例2と同様、生成菌比率が低下していたので、間欠曝気とすることで平均DO濃度を下げた。その結果、生成菌比率が回復した。
実施例4は、容積負荷が低下して生成菌比率が低下していたので、水位を下げて容積負荷を上げた。その結果、生成菌比率が回復した。
実施例5は、HRTが短くなって容積負荷が上昇してS.CODcr除去率が低下していたので、原水流量を低下させてHRTを長くした。その結果、容積負荷が低下してS.CODcr除去率が回復した。
2 第二生物処理槽
3 膜分離装置
4 担体
5 撹拌機
Claims (9)
- 有機性排水を分散菌の存在下に一過式で好気処理して排水中の溶解性有機物(S.CODcr)から菌体を発生させ、分散菌を含む第一生物処理水を得て、次いで該第一生物処理水を嫌気処理してメタンガスと第二生物処理水を得る有機性排水の生物処理方法において、
有機性排水のS.CODcrに対する第一生物処理での除去S.CODcrの比率(S.COD除去率)が40重量%以上となり、かつ、
第一生物処理での全CODcr除去率が10~50重量%となり、かつ除去S.CODcrに対する発生した菌体としてのCODcr(以下、生成菌体CODcrという。)の比率が40重量%以上となる
ように処理を行うこと、及び
前記第一生物処理での生成菌体CODcrが、前記第二生物処理において50重量%以上が分解すること
を特徴とする有機性排水の生物処理方法。 - 請求項1において、前記第一生物処理のHRTが5日以下、前記第二生物処理のSRTが10日以上である
ことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。 - 請求項1又は2において、前記有機性排水の一部を前記第二生物処理に直接に導入する
ことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。 - 請求項1~3のいずれか1項において、前記第一生物処理のDOを0.5mg/L以下とする
ことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。 - 請求項1~4のいずれか1項において、前記有機性排水のS.CODcrが前記有機性排水の全CODcrの0.5倍以上である
ことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。 - 請求項1~5のいずれか1項において、前記有機性排水の全CODcr濃度が5000mg/L以上である
ことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。 - 請求項1~6のいずれか1項において、前記有機性排水のS.CODcrのうちメタン菌の基質有機物が50重量%以下である
ことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。 - 請求項1~7のいずれか1項において、第一生物処理において酸素供給手段が、発泡しないものを含む
ことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。 - 請求項1~8のいずれか1項において、第二生物処理が1段の嫌気性反応槽で処理するものである
ことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
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