JP7247495B2 - 蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材の製造方法、および蓄電デバイス - Google Patents

蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材の製造方法、および蓄電デバイス Download PDF

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Description

本開示は、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材の製造方法、および蓄電デバイスに関する。
蓄電デバイスは、通常、電極、電解質等の蓄電デバイスと蓄電デバイスを封止する外装材とを有する。
外装材としては、例えば、樹脂フィルム、金属箔層および熱融着性樹脂層を有し、各フィルムの間に接着層が配置された積層体である蓄電デバイス用外装材が用いられる(例えば、特許文献1)。蓄電デバイス用外装材は、例えば、蓄電デバイス用外装材の間に蓄電デバイスを挟み込み、蓄電デバイス用外装材の外周部を熱融着させることで蓄電デバイスの外装材として用いられている。また、蓄電デバイス用外装材は必要に応じて蓄電デバイスの厚さ、形状等に合わせてプレス成形がされて用いられる。
特開2013-196947号公報
ところで、近年、蓄電デバイスはあらゆる機器に使用されており形状が多様化している。一例として、フレキシブル性を有する蓄電デバイスが求められている。
一方、例えば、特許文献1に示すような金属箔層を有する蓄電デバイス用外装材は、通常成形性は有するものの、フレキシブル性は低い。そのため、金属箔層を有する蓄電デバイス用外装材はフレキシブル性を有する蓄電デバイスへの適用が困難である。
また、蓄電デバイス用外装材には、耐電解液性も求められる。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、良好なフレキシブル性を有し、耐電解液性を備えた蓄電デバイス用外装材を提供することを主目的とする。
本開示は、フレキシブル性を有し、複数のフィルムが積層された蓄電デバイス用外装材であって、熱融着性樹脂層と、上記熱融着性樹脂層の一方の面側に積層されて配置された複数のガスバリアフィルム層と、複数の接着層とを有し、上記ガスバリアフィルム層は、樹脂基材層と、上記樹脂基材層の片方または両方の面側に配置されたガスバリア膜層とを有し、
前記ガスバリアフィルム層は、熱融着性樹脂層側から順に、少なくとも第一ガスバリアフィルム層と第二ガスバリアフィルム層を有し、前記第一ガスバリアフィルム層の第一ガスバリア膜層と、前記第二ガスバリアフィルム層の第二ガスバリア膜層とは、互いに向き合っており、前記蓄電デバイス用外装材が有する各層の押し込み弾性率(GPa)と厚み(μm)の積を、それぞれ、前記各層の押し込み弾性指数(GPa・μm)とした場合に、前記第一ガスバリアフィルム層の第一ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和P(GPa・μm)と、前記第二ガスバリアフィルム層の第二ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側とは反対側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和Q(GPa・μm)との差の絶対値が、50GPa・μm以下であり、
上記複数の接着層のうち、少なくとも上記熱融着性樹脂層と上記ガスバリアフィルム層との間に配置される接着層が、耐電解液性を有する、蓄電デバイス用外装材を提供する。
本開示によれば、良好なフレキシブル性と耐電解液性を有する蓄電デバイス用外装材とすることができる。
本開示の蓄電デバイス用外装材を例示する概略断面図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材を例示する概略断面図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材を例示する概略断面図である。
本開示の蓄電デバイス用外装材の実施形態について説明する。なお、以下の説明において「蓄電デバイス用外装材」を、単に「外装材」と称して説明する場合がある。
上述したように、近年、蓄電デバイスはあらゆる機器に使用されており、形状が多様化している。
例えば、近年、新しいタイプの電子機器として、使用者の身に着けたまま操作をするウェアラブル端末の開発が急速に進められている。ウェアラブル端末においては、使用者の体の動きに対する追従性が高いことが求められる。これに伴い、フレキシブル性を有する蓄電デバイスが求められている。
一方、例えば、特許文献1に示すような金属箔層を有する蓄電デバイス用外装材は、通常成形性は有するものの、フレキシブル性は低い。
金属箔層を有する蓄電デバイス用外装材のフレキシブル性が低い理由の一つとしては、例えば、40μm程度の比較的厚みの厚い金属箔層が用いられていることが挙げられる。外装材における金属箔層は、ガスバリア性を付与する構成であり、良好なガスバリア性を付与するためには金属箔層の厚みを比較的厚くする必要があるからである。また、外装材においては、例えば、プレス成形時において金属箔層にピンホールが発生することを抑制するため、金属箔層の厚みを厚くする必要があるからである。
本開示の発明者らは、金属箔層にかえて、複数のガスバリアフィルム層を用いることで、所望のガスバリア性およびフレキシブル性を発現できることを知見した。
さらに、本開示の発明者らは、複数のガスバリアフィルム層を用いる場合に、複数のガスバリアフィルム層のガスバリア膜層の配置と、外装材を構成している各層の押し込み弾性率と厚みの積とが、所定の条件を充足するように設定することにより、特に優れたフレキシブル性が発現されることを知見した。
一方、複数のガスバリアフィルム層を用いた外装材は、耐電解液性が低いことを知見した。この点について、本開示の発明者らは更なる研究を重ねた結果、外装材を構成するフィルムの間に配置される接着層の耐電解液性が、外装材の耐電解液性に大きく影響することを知見した。本開示は上記知見に基づきなされた発明である。
すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材は、複数のフィルムが積層された蓄電デバイス用外装材であって、熱融着性樹脂層と、上記熱融着性樹脂層の一方の面側に積層されて配置された複数のガスバリアフィルム層と、複数の接着層とを有し、上記ガスバリアフィルム層は、樹脂基材層と、上記樹脂基材層の片方または両方の面側に配置されたガスバリア膜層とを有し、前記ガスバリアフィルム層は、熱融着性樹脂層側から順に、少なくとも第一ガスバリアフィルム層と第二ガスバリアフィルム層を有し、前記第一ガスバリアフィルム層の第一ガスバリア膜層と、前記第二ガスバリアフィルム層の第二ガスバリア膜層とは、互いに向き合っており、前記蓄電デバイス用外装材が有する各層の押し込み弾性率(GPa)と厚み(μm)の積を、それぞれ、前記各層の押し込み弾性指数(GPa・μm)とした場合に、前記第一ガスバリアフィルム層の第一ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和P(GPa・μm)と、前記第二ガスバリアフィルム層の第二ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側とは反対側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和Q(GPa・μm)との差の絶対値が、50GPa・μm以下であり、上記複数の接着層のうち、少なくとも上記熱融着性樹脂層と上記ガスバリアフィルム層との間に配置される接着層が、耐電解液性を有する。
また、本開示において「ガスバリア性」、「ガスバリア性能」とは、特に断りが無い場合は、酸素等の気体および/または水蒸気の透過を阻止する機能を意味するものとする。
なお、本開示において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
(フレキシブル性)
本開示において「外装材がフレキシブル性を有する」とは、外装材を折り曲げた場合に、ガスバリア性を維持できる程度に、外装材を構成するフィルムおよび接着層に破損が生じないことをいう。具体的に、「外装材がフレキシブル性を有する」とは、例えば下記の特性1,2のうち少なくとも一方を充足することをいう。本開示の外装材は、特性1および特性2の両者を充足していることが特に好ましい。
特性1:3回屈曲処理後の試験片(外装材)について、水蒸気透過度が0.5g/(m2・24h)以下であり、かつ、酸素透過度が0.5cc/(m2・24h・atm)以下であること。
特性2:外装材は、引張弾性率(MPa)×(厚み(mm))3<2.5(MPa・mm3)の関係を充足していること。
フレキシブル蓄電デバイスにおいては、外装材がこのようなフレキシブル性を備えていることが重要である。例えば、使用者の体の動きに対する追従性が高いウェアラブル端末に使用されるフレキシブル蓄電デバイスには、このような折り曲げ性に対する耐性を有する外装材を用いることが求められる。
特性1に関し、3回屈曲処理は以下の条件で行うものとする。それぞれ幅210mm×長さ297mm(A4サイズ)の長方形のサンプルを切り出し、サンプルの幅方向の両端の一方をゲルボフレックステスター(例えば、テスター産業社製、機種名BE1006)の円盤状の固定ヘッドに固定し、他方を固定ヘッドから離れて平行に配置されている同径の円盤状の駆動ヘッドに固定し、固定ヘッドおよび駆動ヘッドの外周にサンプルを円筒状となるように取り付ける。ASTM F392に準拠して、440度の角度でひねりを加えながら固定ヘッドと駆動ヘッドの間隔を7インチから3.5インチに狭めて、さらにひねりを加えた状態を維持したままヘッドの間隔を1インチまで狭め、その後、ヘッドの間隔を3.5インチまで広げて、さらにひねりを戻しながらヘッドの間隔を7インチまで広げるという往復運動を40回/minの速さで、温度25℃で3回行う。また、水蒸気透過度および酸素透過度の測定方法は、それぞれ、後述の「2.外装材の特性」の項に記載の方法と同じである。フレキシブル性に特に優れる観点から、3回屈曲処理後の外装材の水蒸気透過度は0.3g/(m2・24h)以下であり、かつ、3回屈曲処理後の酸素透過度が0.3cc/(m2・24h・atm)以下であることが特に好ましい。なお、水蒸気透過度の下限については、例えば、0.0g/(m2・24h)、0.1g/(m2・24h)などが挙げられ、酸素透過度の下限については、例えば、0.0cc/(m2・24h・atm)、0.1cc/(m2・24h・atm)などが挙げられる。
また、特性2に関し、外装材の引張弾性率は、次のようにして行う。引張弾性率の測定方法は、JIS K7161-1:2014(プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則)に準拠し、外装材を幅15mmの長方形にカットしてサンプルを採取した後、引張試験機を用いて、チャック間距離100mm、引張速度100mm/min、予備力の使用有り、の条件で、引張弾性率を測定する方法を用いる。測定環境は温度23℃、相対湿度55%の環境とする。サンプルの長さは、試験機の軸にサンプルの長さが一致するようにつかみ具を取り付けられかつ測定中につかみ部分がずれない範囲で決定し、例えば120mm程度である。引張試験機は、インストロン5565(インストロン・ジャパン社製)が好ましい。予備力は、例えば、応力をσ0、弾性率をEtとして(予備力のための適切な弾性率や応力が不明なときは事前に試験をして弾性率や応力の予測値を求めておく)、(Et/10000)≦σ0≦(Et/3000)の範囲である。なお、引張弾性率の値は外装材の面内の方向によって異なる場合があるので、面内平均値の使用が好ましい。外装材の面内方向の条件を概ね22.5度ずつ変えて採取した8つの条件の値の平均を面内平均値とみなすことができる。なお、外装材が小さいなどの理由で、前記22.5度ずつ変えた8つの条件のサンプルが採取できない場合には、例えば、外装材の面内方向の条件が概ね均一(すなわち、180度が概ね均一に分割される角度)となるようにして、可能な数のサンプルを取得して外装材の引張弾性率を求める。
フレキシブル性に優れる観点から、外装材は、0.5≦引張弾性率(MPa)×(厚み(mm))3<2.5(MPa・mm3)の関係を充足していることが好ましく、0.5≦引張弾性率(MPa)×(厚み(mm))3≦2.0(MPa・mm3)の関係を充足していることがより好ましく、0.5≦引張弾性率(MPa)×(厚み(mm))3≦1.5(MPa・mm3)の関係を充足していることが特に好ましい。
また、外装材の引張弾性率としては、特に制限されないが、フレキシブル性に優れる観点から、好ましくは1.0GPa以上3.0GPa以下、より好ましくは1.1GPa以上2.9GPa以下、さらに好ましくは1.3GPa以上2.8GPa以下が挙げられる。なお、引張弾性率の測定方法は、前記の通りである。
本開示の外装材について図を用いて説明する。図1は本開示の外装材を例示する概略断面図である。外装材10は、フレキシブル性を有する。また、外装材10は、複数のフィルムが積層された部材である。外装材10は、熱融着性樹脂層1と、熱融着性樹脂層1の一方の面側に積層されて配置された複数のガスバリアフィルム層2と、複数の接着層3とを有する。複数の接着層3は、複数のフィルムの間に配置される。また、ガスバリアフィルム層2は、熱融着性樹脂層1側から順に、少なくとも第一ガスバリアフィルム層2aと第二ガスバリアフィルム層2bを有しており、第一ガスバリアフィルム層2aの第一ガスバリア膜層22aと、第二ガスバリアフィルム層2bの第二ガスバリア膜層22bとは、互いに向き合っている。図1および図2においては、それぞれ、複数のガスバリアフィルム層として、第一ガスバリアフィルム層2aおよび第二ガスバリアフィルム層2bの第一ガスバリア膜層22aと第二ガスバリア膜層22bとが互いに向き合うようにして、熱融着性樹脂層1の一方の面側に積層されて配置されている例を示している。図2においては、図1の外装材において、さらに、第二ガスバリアフィルム層2bの上に保護フィルム4が積層されている例を示している。また、図3においては、図1の外装材において、さらに、第三ガスバリアフィルム層2cが、第二ガスバリアフィルム層2bの上に積層されている例を示している。本開示の外装材においては、第一ガスバリアフィルム層2aおよび第二ガスバリアフィルム層2bの第一ガスバリア膜層22aと第二ガスバリア膜層22bとが互いに向き合うようにして配置されていることにより、第一ガスバリア膜層22aと第二ガスバリア膜層22bが外装材の厚み方向Xの中心側に配置される。これにより、外装材が折り曲げられた際に、第一ガスバリア膜層22a及び第二ガスバリア膜層22bに加わる応力が低減され、第一ガスバリア膜層22a及び第二ガスバリア膜層22bにクラックなどが生じることが抑制されて優れたフレキシブル性が発揮される。
本開示の外装材においては、熱融着性樹脂層1と第一ガスバリアフィルム層2aとの間や、第二ガスバリアフィルム層2bの熱融着性樹脂層1側とは反対側(x2方向側)に、他のガスバリアフィルム層を有していてもよい。前記の通り、図3には、第二ガスバリアフィルム層2bの熱融着性樹脂層1側とは反対側(x2方向側)に、第三ガスバリアフィルム層2cを有する積層構成を例示している。
接着層3は、通常、熱融着性樹脂層1、第一ガスバリアフィルム層2a、第二ガスバリアフィルム層2b、第三ガスバリアフィルム層2c、保護フィルム4などの各フィルムの間に配置される。本開示においては、少なくとも熱融着性樹脂層1と第一ガスバリアフィルム層2aの間に配置される接着層3aが耐電解液性を有することが好ましい。
なお、外装材10は、通常、蓄電デバイスに用いられる際、熱融着性樹脂層1が、蓄電デバイス側に配置される。
本開示によれば、複数のガスバリアフィルム層と、耐電解液性を有する接着層とを有し、第一ガスバリアフィルム層と第二ガスバリアフィルム層とが所定の位置に配置された(第一ガスバリア膜層22aと第二ガスバリア膜層22bが外装材の厚み方向Xの中心側に配置された)上で、後述の弾性指数の和P,Qの差の絶対値が、所定値以下であることにより、特に良好なフレキシブル性と耐電解液性を有する蓄電デバイス用外装材とすることができる。
また、本開示の外装材は、良好なフレキシブル性を有することから、例えば、ウェアラブル端末の動きに追従可能な蓄電デバイスの外装材への適用が可能である。
また、本開示の外装材は、良好なフレキシブル性を有することから、加工性を高くすることができる。よって、例えば、種々の形状の蓄電デバイス、小型の蓄電デバイス、薄膜の蓄電デバイスの外装材に適用することが可能である。
以下、本開示の外装材の詳細を説明する。
1.外装材の構成
本開示の外装材は、複数のフィルムが積層された構造を有する。外装材は、熱融着性樹脂層と、複数のガスバリアフィルム層と、接着層とを備える。
外装材の厚みとしては、特に制限されないが、フレキシブル性の観点から、上限については、好ましくは、150μm以下、140μm以下、130μm以下、100μm以下、90μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは、50μm以上、55μm以上、60μm以上が挙げられる。また、外装材の厚みの好ましい範囲としては、50μm以上150μm以下、55μm以上150μm以下、60μm以上150μm以下、50μm以上140μm以下、55μm以上140μm以下、60μm以上140μm以下、50μm以上130μm以下、55μm以上130μm以下、60μm以上130μm以下、50μm以上100μm以下、55μm以上100μm以下、60μm以上100μm以下、50μm以上90μm以下、55μm以上90μm以下、60μm以上90μm以下が挙げられる。
(1)接着層
本開示における接着層は、複数のフィルムの間に配置される層である。すなわち、接着層は外装材を構成する全てのフィルムの間に配置される。
本開示においては、上記複数の接着層のうち、少なくとも上記熱融着性樹脂層と上記ガスバリアフィルム層との間に配置される接着層が、耐電解液性を有する。
本開示においては、複数の接着層の全てが、耐電解液性を有することが好ましい。具体的には、図1および図2に示す外装材10においては接着層3aおよび3bの全てが、耐電解液性を有することが好ましく、図3に示す外装材10においては、接着層3a、3bおよび3cの全てが、耐電解液性を有することが好ましい。
「接着層が耐電解液性を有する」とは、通常、接着層が電解液によって劣化しにくいことをいう。接着層の劣化は、通常、剥離強度にて規定される。
接着層の耐電解液性は、例えば、下記の電解液耐性試験前における接着層の剥離強度(N/15mm)に対する、電解液耐性試験後の接着層の剥離強度(N/15mm)の比率(剥離強度の維持率)が、50%以上であることをいい、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
電解液耐性試験の条件は以下の通りである。
まず、外装材を60mm(縦方向、MD)×150mm(横方向、TD)に裁断する。次に、裁断した蓄電デバイス用外装材を横方向において熱融着性樹脂層同士が対向するようにして2つ折りにし、横方向の対向する1辺と縦方向の1辺を面圧1MPa、温度190℃、3秒間の条件で熱融着し、横方向の1辺が開口する袋状の外装材を作製する。次に、開口部から3gの電解液(1モル/リットルの6フッ化リン酸リチウム溶液、溶媒はエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(容積比))を注入し、開口部を7mm幅で、面圧1MPa、温度190℃、3秒間の条件で熱融着する。次に、外装材の開口部を熱融着した部分を上向きにして、85℃の恒温層内に24時間静置する。
接着層の剥離強度の測定条件は以下の通りである。
前記の<電解液耐性試験>を行った外装材の上側(外装材の開口部を熱融着した部分)の1辺と、その両側の2辺を切断して、電解液を排出する。次に、電解液をよく拭き取り、TDの方向が試験片の長さ方向になるようにして、幅15mmの短冊状に切りとって試験片を得る。なお、試験片は、熱融着されていない部分から3つ取得する。次に、試験片の長さ方向の端部から、熱融着性樹脂層とガスバリアフィルムとの間を長さ方向に部分的に剥離させる。この時の剥離は、手で行う。次に、熱融着性樹脂層が上側になるようにして、熱融着性樹脂層と、ガスバリアフィルム等(熱融着性樹脂層の上に積層されていた積層体全体)とを、それぞれ固定(チャック)し、引張試験機(例えば、エー・アンド・デイ製の商品名テンシロン万能材料試験機RTG-12180)を用いて、引張速度50mm/分、剥離角度180°、剥離距離25mmの条件で剥離試験を行い、剥離距離が10~20mmの間の剥離強度(N/15mm)の平均値を、接着層の剥離強度とする。なお、剥離強度は、それぞれ3つの試験片について測定した平均値である。
接着層は、本開示の外装材が用いられる蓄電デバイスの電解液に対し、上述した耐電解液性を有していればよいが、例えば、溶媒として、体積比で、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の割合で混合した混合溶媒と、電解質として6フッ化リン酸リチウムを用いた電解液に対する耐電解液性を有することが好ましい。
本開示に用いられる接着層としては、上述した耐電解液性を有していれば特に限定されず、外装材が用いられる蓄電デバイスにおける電解液の種類に応じて適宜選択することができる。
本開示の発明者らは、研究を重ねる中で、融解温度(融点)が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンを主剤とし、重量平均分子量が50以上2000以下のエポキシ樹脂を硬化剤とする接着剤を用いた接着層が、良好な耐電解液性を示すことを知見した。
すなわち、本開示においては、耐電解液性を有する接着層が、融解温度が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50以上2000以下のエポキシ樹脂との硬化物を含むことが好ましい。
なお、接着層に含まれる硬化物の構造、性質は、例えば、酸性ポリオレフィンの種類、エポキシ樹脂の種類、添加剤の有無、硬化条件等により変化するため、直接特定することは、通常、困難である。そこで、以下、接着層に含まれる硬化物について、硬化前の接着剤の成分を挙げて説明する。
酸変性ポリオレフィンとしては、不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性されたポリオレフィンを用いることが好ましい。さらに、酸変性ポリオレフィンは、(メタ)アクリル酸エステルでさらに変性されていてもよい。なお、(メタ)アクリル酸エステルでさらに変性された変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸またはその酸無水物と(メタ)アクリル酸エステルとを併用して、ポリオレフィンを酸変性することにより得られるものである。本開示において、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステル」または「メタアクリル酸エステル」を意味する。酸変性ポリオレフィンは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
酸変性されるポリオレフィンは、少なくともモノマー単位としてオレフィンを含む樹脂であれば特に限定されない。ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンの少なくとも一方により構成することができ、ポリプロピレンにより構成することが好ましい。ポリエチレンは、例えば、ホモポリエチレンおよびエチレンコポリマーの少なくとも一方により構成することができる。ポリプロピレンは、例えば、ホモポリプロピレンおよびプロピレンコポリマーの少なくとも一方により構成することができる。プロピレンコポリマーとしては、エチレン-プロピレンコポリマー、プロピレン-ブテンコポリマー、エチレン-プロピレン-ブテンコポリマーなどのプロピレンと他のオレフィンとのコポリマーなどが挙げられる。ポリプロピレンに含まれるプロピレン単位の割合は、外装材の絶縁性や耐久性をより高める観点から、50モル%以上100モル%以下とすることが好ましく、80モル%以上100モル%以下とすることがより好ましい。また、ポリエチレンに含まれるエチレン単位の割合は、外装材の絶縁性や耐久性をより高める観点から、50モル%以上100モル%以下とすることが好ましく、80モル%以上100モル%以下とすることがより好ましい。エチレンコポリマーおよびプロピレンコポリマーは、それぞれ、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれであってもよい。また、エチレンコポリマーおよびプロピレンコポリマーは、それぞれ、結晶性、非晶性のいずれであってもよく、これらの共重合物または混合物であってもよい。ポリオレフィンは、1種類のホモポリマーまたはコポリマーにより形成されていてもよいし、2種類以上のホモポリマーまたはコポリマーにより形成されていてもよい。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。また、酸無水物としては、上記例示した不飽和カルボン酸の酸無水物が好ましく、無水マレイン酸および無水イタコン酸がより好ましい。酸変性ポリオレフィンは、1種類の不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性されたものであってもよいし、2種類以上の不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性されたものであってもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数が1以上30以下のアルコールとのエステル化物、好ましくは(メタ)アクリル酸と炭素数が1以上20以下のアルコールとのエステル化物が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。ポリオレフィンの変性において、(メタ)アクリル酸エステルは1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
酸変性ポリオレフィン中における不飽和カルボン酸またはその酸無水物の割合は、それぞれ、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、外装材の絶縁性や耐久性をより高め得る。
また、酸変性ポリオレフィン中における(メタ)アクリル酸エステルの割合は、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、外装材の絶縁性や耐久性をより高め得る。
酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量は、それぞれ、6000以上200000以下であることが好ましく、8000以上150000以下であることがより好ましい。なお、本開示において、酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。具体的な測定条件は以下の通りである。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定として「Waters製、Alliance 2695」を用い、カラムは3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定する。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速1.0ml/min、サンプル注入量50μl、測定温度40℃、RI検出器を用いて実験を行う。また、検量線は東ソー社製「polystyrene標準試料TSK standard」から作製する。
また、酸変性ポリオレフィンの融解温度は、50℃以上120℃以下であることが好ましく、50℃以上100℃以下であることがより好ましい。なお、本開示において、酸変性ポリオレフィンの融解温度とは、示差走査熱量測定における融解ピーク温度をいう。また、本開示においては、接着層を構成する硬化物の融解温度が、上述した数値範囲であることが好ましい。本開示における硬化物の融解温度(溶融温度)は、JIS K 7121:2012の規定に準拠し、例えば、セイコーインスツルメンツ社製のEXSTAR6000を用いて測定することができる。
酸変性ポリオレフィンにおいて、ポリオレフィンの変性方法は、特に限定されず、例えば不飽和カルボン酸またはその酸無水物や、(メタ)アクリル酸エステルがポリオレフィンと共重合されていればよい。このような共重合としては、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられ、好ましくはグラフト共重合が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。本開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、50以上2000以下の範囲にあればよい。外装材の絶縁性や耐久性をより一層高める観点からは、エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは100以上1000以下、より好ましくは200以上800以下が挙げられる。なお、本開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。具体的な測定条件は、上述した酸変性ポリオレフィンにおける測定条件と同様であるため、ここでの記載は省略する。
また、耐電解液性を有する接着層は、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、およびエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物の硬化物であってもよい。
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、ガスバリアフィルムとの密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。また、アダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。
接着層における、イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着層を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、ガスバリアフィルムなどとの密着性を効果的に高めることができる。
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
接着層における、オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着層を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、ガスバリアフィルム層などとの密着性を効果的に高めることができる。
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、前記のエポキシ樹脂を用いることができる。
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層における、エポキシ樹脂の割合としては、接着層を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、ガスバリアフィルム層などとの密着性を効果的に高めることができる。
また、耐電解液性を有する接着層は、酸素原子、複素環、C=N結合、およびC-O-C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であってもよい。さらに、耐電解液性を有する接着層が、エステル樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むものであってもよい。
複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C-O-C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。接着層がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
なお、接着層が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物は、それぞれ、硬化剤として機能する。
また、接着層は、ポリエステル、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。ポリエステルとしては、例えばアミドエステル樹脂が好ましい。アミドエステル樹脂は、一般的にカルボキシル基とオキサゾリン基の反応で生成する。接着層は、これらの樹脂のうち少なくとも1種と前記酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。なお、接着層に、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
接着層の厚み(硬化後の厚み)は、良好なフレキシブル性と耐電解液性を有する蓄電デバイス用外装材とする観点から、1μm以上4μm以下の範囲であることが好ましい。
(2)ガスバリアフィルム層
本開示におけるガスバリアフィルム層は、樹脂基材層と、上記樹脂基材層の片面または両面に配置されたガスバリア膜層と、を有する。上記ガスバリアフィルム層は、熱融着性樹脂層の一方の面側に配置された外装材のガスバリア性に主に寄与する。
(i)ガスバリア膜層
上記ガスバリア膜層は、樹脂基材層の片面または両面に配置されたガスバリア性を有する膜である。上記ガスバリア膜層は、ガスバリアフィルム層のガスバリア性に主に寄与する。
ガスバリア膜層は、無機物であってもよいし、有機物であってもよく、ガスバリア性が高いことから無機物が好ましい。
有機物としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、プロピレン-ビニルアルコール共重合体(PVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等が挙げられる。
無機物としては、例えば、金属(合金を含む)、無機化合物等が挙げられる。また、無機物を含むガスバリア膜層としては、例えば、金属膜(例えば金属蒸着膜)、無機化合物を主成分とする膜(以下、無機化合物膜と称する場合がある。)、有機部分および無機部分の混合化合物を主成分とする膜(有機無機複合膜と称する場合がある。)等が挙げられる。
金属膜を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、鉄、銅等の金属またはこれらを含む合金を挙げることができる。フレキシブル性の観点から、金属膜は、アルミニウムであることが特に好ましい。
無機化合物膜を構成する無機化合物としては、例えば、珪素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、チタン、ホウ素、イットリウム、ジルコニウム、セリウム、亜鉛等の金属元素または非金属元素を含有する化合物が挙げられる。また、上記無機化合物としては、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、無機酸化炭化物、無機酸化炭化窒化物、酸化珪素亜鉛等が挙げられる。具体的には、SiO2等の珪素酸化物、Al23等のアルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、珪素亜鉛合金酸化物、インジウム合金酸化物、珪素窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物、酸化窒化珪素等を挙げることができる。無機化合物は、単独で用いてもよいし、上述の材料を任意の割合で混合して用いてもよい。
有機無機複合膜を構成する有機部分および無機部分の混合化合物としては、例えば、樹脂部分と無機部分との混合化合物が挙げられる。有機部分を構成する樹脂としては、例えば、後述する樹脂基材層の構成材料として例示した樹脂を用いることができる。無機部分を構成する無機物としては、例えば、無機化合物膜の材料として例示した無機化合物を用いることができる。また、オーバーコート層の材料として後述するもののうち、単独でガスバリア性を示すものを用いることができる。具体的には、株式会社クラレ製のクラリスタCFなどを用いることができる。
上記ガスバリア膜層は、コーティング等による塗布膜であってもよく、蒸着膜であってもよい。中でも樹脂基材層との密着性が高く、高ガスバリア性能を発揮することができる観点から蒸着膜であることが好ましい。上記ガスバリア膜層は、1回蒸着により形成された単膜であってもよく、複数回蒸着により形成された多層膜であってもよい。
ガスバリア膜層が多層膜である場合、同一組成の膜を組み合わせてもよく、異なる組成の膜を組み合わせてもよい。ガスバリア膜層が多層膜である場合、多層膜全体でガスバリア膜層1層分とする。
上記ガスバリア膜層の厚みは、所望のガスバリア性を発揮することが可能であれば特に限定されず、ガスバリア膜層の種類に応じて適宜設定することが出来る。ガスバリア膜層の厚みは、例えば5nm以上200nm以下の範囲内とすることができ、中でも10nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましい。なお、ガスバリア膜層が多層膜である場合は、上記厚みは1回あたりの厚みをいう。
上記ガスバリア膜層の厚みが上述の範囲に満たないと、製膜が不十分となり所望のガスバリア性を示すことができない場合がある。また、強度を確保できず経時劣化する場合がある。一方、上記ガスバリア膜層の厚みが上述の範囲を超えると、折り曲げ等の機械的な応力を受けたときに欠陥が発生しやすくなる場合や、フレキシブル性が低下する場合がある。
ガスバリア膜層の形成方法は、樹脂基材層の片面または両面に所望の厚みで成膜可能な方法であればよく、塗布法、蒸着法、圧着法等、ガスバリア膜層の種類に応じて従来公知の方法を用いることができる。
(ii)樹脂基材層
樹脂基材層としては、上記ガスバリア膜層を支持可能であれば特に限定されず、例えば、樹脂フィルム、樹脂シートが好適に用いられる。上記樹脂基材層が樹脂フィルムである場合、上記樹脂フィルムは未延伸であってもよく、一軸または二軸延伸されたものであってもよい。なお、本開示において「フィルム」と「シート」とは同義である。
樹脂基材層に用いられる樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂;環状ポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂;アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);ポリ(メタ)アクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂等のポリビニルアルコール系樹脂;各種のナイロン等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;アセタール樹脂;セルロース樹脂等の各種の樹脂を使用することができる。
外装材に複数のガスバリアフィルム層が用いられる場合、より熱融着性樹脂層に近い位置に配置されるガスバリアフィルム層の樹脂基材層には、親水基含有樹脂が用いられることが好ましい。親水基含有樹脂は高温においても、酸素に対して良好なバリア性を発揮するため、外装材としての酸素バリア性能を向上させることができるからである。なお、「親水基」とは、静電的相互作用や水素結合などによって水分子と弱い結合をつくり、水に対して親和性示す原子団をいうものであり、例えばヒドロキシ基(-OH)、カルボキシ基(-COOH)、アミノ基(-NH2)、カルボニル基(>CO)、スルホ基(-SO3H)などの極性基や解離基を含む原子団がその性質を示す。親水基含有樹脂としては、例えば、PVA樹脂、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂、多糖類などの天然高分子等が挙げられる。
上記樹脂基材層には、種々のプラスチック配合剤や添加剤等が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等が挙げられる。また、上記樹脂基材層は、表面処理が施されていてもよい。ガスバリア膜層との密着性を向上させることができるからである。
樹脂基材層の厚みは、特に限定されないが、例えば6μm以上200μm以下の範囲内とすることができ、好ましくは9μm以上100μm以下の範囲内である。
本開示における樹脂基材層の押込み弾性率は、外装材の押し込み弾性指数の和P,Qの差の絶対値が後述の範囲内となれば特に制限されないが、所定の範囲であることが好ましい。具体的には、樹脂基材層の押し込み弾性率は、下限については好ましくは0.5GPa以上、より好ましくは1.0GPa以上、さらに好ましくは1.5GPa以上、さらに好ましくは2.0GPa以上が挙げられ、上限については好ましくは5.0GPa以下、より好ましくは4.5GPa以下、さらに好ましくは3.5GPa以下が挙げられ、好ましい範囲としては、0.5GPa以上5.0GPa以下、0.5GPa以上4.5GPa以下、0.5GPa以上3.5GPa以下、1.0GPa以上5.0GPa以下、1.0GPa以上4.5GPa以下、1.0GPa以上3.5GPa以下、1.5GPa以上5.0GPa以下、1.5GPa以上4.5GPa以下、1.5GPa以上3.5GPa以下、2.0GPa以上5.0GPa以下、2.0GPa以上4.5GPa以下、2.0GPa以上3.5GPa以下が挙げられる。樹脂基材層の押込み弾性率は、樹脂基材層を構成する樹脂の種類や分子量、延伸度合などによって調整することができる。
樹脂基材層の押し込み弾性率の測定は、後述の方法により測定される。
(iii)オーバーコート層
ガスバリアフィルム層は、ガスバリア膜層の樹脂基材層とは反対の面側に、オーバーコート層を有していてもよい。オーバーコート層を有することで、ガスバリアフィルム層のガスバリア性をさらに向上させることができるからである。
オーバーコート層を構成する材料は、特に限定されず、一般にオーバーコート剤として用いられている材料を用いることができる。例えば、オーバーコート層の主成分として、有機部分および無機部分を含む混合化合物を用いることができる。
上記混合化合物は、種々のものがあるが、例えば、株式会社クラレ社製のクラリスタCF(登録商標)などのリン酸アルミナ系の混合化合物、凸版印刷株式会社製のベセーラ(登録商標)などのアクリル酸亜鉛系の混合化合物、樹脂および無機層状化合物とからなるガスバリア性樹脂組成物、または、一般式R1 nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1以上、8以下の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される1種以上のアルコキシドと、水溶性高分子とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られる原料液によるゾルゲル化合物などを用いることができる。上記水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、アクリル酸系樹脂、天然高分子系のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバー、多糖類などが挙げられる。本開示においては、ゾルゲル化合物をオーバーコート層に用いることが好ましい。上記ゾルゲル化合物は、界面における接着強度が高く、また、製膜時の処理を比較的低温において行なうことができるため、樹脂基材層等の熱劣化を抑制することができるからである。
オーバーコート層の厚みは、特に限定されないが、例えば、50nm以上500nm以下の範囲内とすることができる。
(iv)その他
本開示の外装材は、少なくとも2つ以上のガスバリアフィルム層を有する。ガスバリアフィルム層の数は、特に限定されないが、2つ以上、4つ以下の範囲内であることが好ましく、中でも2つ以上、3つ以下の範囲内であることが好ましく、特に3枚であることが好ましい。すなわち、本開示においては、図2に示すように、3つのガスバリアフィルム層2a、2bおよび2cを有することが好ましい。各ガスバリアフィルム層の構成は同じでもよく、異なっていてもよい。
本開示の外装材においては、熱融着性樹脂層の一方の面側に、複数のガスバリアフィルム層が積層されて配置される。外装材において、第一ガスバリアフィルム層および第二ガスバリアフィルム層以外のガスバリアフィルム層における樹脂基材層およびガスバリア膜層の順序は特に限定されるものではなく、外装材に共に用いられる、ガスバリアフィルム層以外の各層の層構成や、ガスバリアフィルム層の数などに応じて適宜設定することができる。また、蓄電デバイスに用いた際、最も外側に配置されるガスバリアフィルム層においては、樹脂基材層およびガスバリア膜層の順序は特に限定されない。例えば、図3に示すように、ガスバリアフィルム層2cの第三ガスバリア膜層22c側が熱融着性樹脂層1と向き合うように配置されていてもよいし、第三樹脂基材層21c側が熱融着性樹脂層1と向き合うように配置されていてもよい。また、図示を省略するが、熱融着性樹脂層1と第一ガスバリアフィルム層2aとの間に、他のガスバリアフィルム層を有する場合にも、当該他のガスバリアフィルム層のガスバリア膜層側が、熱融着性樹脂層と向き合うように配置されていてもよいし、樹脂基材層側が熱融着性樹脂層1と向き合うように配置されていてもよい。
(3)熱融着性樹脂層
本開示における熱融着性樹脂層は、熱融着が可能なものであり、外装材を用いて蓄電デバイスを形成する際に、蓄電デバイスと接する部位である。また、対向する外装材同士の端部を熱融着する熱融着面を形成する部位である。
熱融着性樹脂層の材料としては、加熱によって溶融し、融着することが可能であることから熱可塑性樹脂が好ましく、例えば直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンや未延伸ポリプロピレン(CPP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル、ポリウレタン、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコールが挙げられる。
本開示においては、上述した中でも、熱融着性樹脂層の材料が未延伸ポリプロピレン(CPP)であることが好ましい。未延伸ポリプロピレン(CPP)は、耐熱性が高いため、蓄電デバイスからの発熱に対し良好な耐久性を有する外装材とすることができるからである。また、ポリプロピレンフィルムの原料のポリプロピレンには、単一のモノマーを用いて生成されたホモポリマーと、2種類以上のモノマーを用いて生成されたコポリマーとがある。上記コポリマーは、モノマーの配列によりさらに分類することができ、モノマーの配列に秩序のないランダムコポリマーや、同種のモノマーが長く連続する配列を有するブロックコポリマーなどがある。本開示においてはホモポリマーからなる未延伸ポリプロピレンが好ましい。ホモポリマーからなる未延伸ポリプロピレンフィルムは押し込み弾性率が高く、外装材の耐ピンホール性が良好になるからである。
また、熱融着性樹脂層の材料として、酸変性ポリオレフィンを用いてもよい。酸変性ポリオレフィンとは、上記のポリオレフィンをカルボン酸等でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
熱融着性樹脂層の融解温度(融点)としては、例えば80℃以上、300℃以下の範囲内であることが好ましく、100℃以上、250℃以下の範囲内であることがより好ましい。熱融着性樹脂層の融解温度が低すぎると、本開示の外装材を用いて形成された蓄電デバイスの使用環境下において、外装材の封止面が剥離する可能性がある。また、熱融着性樹脂層の融解温度が高すぎると、外装材を高温で熱融着する必要があるため、外装材として共に用いられるガスバリアフィルム層等が熱により劣化される可能性がある。
熱融着性樹脂層の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、15μm以上、100μm以下の範囲内が好ましい。熱融着性樹脂層の厚さが上述の範囲よりも大きいと、外装材のガスバリア性が低下する場合等があり、厚さが上述の範囲よりも小さいと、所望の接着力が得られない場合がある。熱融着性樹脂層の厚さは、25μm以上、90μm以下の範囲内がより好ましく、30μm以上、80μm以下の範囲内がさらに好ましい。
本開示における熱融着性樹脂層は、外装材の押し込み弾性指数の和P,Qの差の絶対値が後述の範囲内となれば特に制限されないが、所定の範囲であることが好ましい。具体的には、熱融着性樹脂層の押し込み弾性率は、下限については、好ましくは0.5GPa以上、より好ましくは1.0GPa以上が挙げられ、上限については、好ましくは5.0GPa以下、より好ましくは4.5GPa以下、さらに好ましくは2.5GPaが挙げられ、好ましい範囲としては、0.5GPa以上5.0GPa以下、0.5GPa以上4.5GPa以下、0.5GPa以上2.5GPa以下、1.0GPa以上5.0GPa以下、1.0GPa以上4.5GPa以下、1.0GPa以上2.5GPa以下が挙げられる。熱融着性樹脂層の押込み弾性率は、熱融着性樹脂層を構成する樹脂の種類や分子量、添加剤などによって調整することができる。
熱融着性樹脂層の押し込み弾性率が低すぎると、外装材を曲げたときに、ガスバリアフィルム層へ応力集中が生じやすくガスバリアフィルム層が割れやすくなる可能性があるからである。一方、上記押し込み弾性率が高すぎると、外装材を曲げたときに、応力集中により熱融着性樹脂層が割れやすくなる可能性があるからである。また、外装材のフレキシブル性が低下する可能性があるからである。
本開示においては、熱融着性樹脂層の押し込み弾性率を上述した範囲とすることにより、耐ピンホール性が良好な外装材とすることができる。
特に、熱融着性樹脂層がポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルムなど)である場合、押し込み弾性率は、下限については好ましくは1.0GPa以上、より好ましくは1.5GPa以上、さらに好ましくは2.0GPa以上が挙げられ、上限については好ましくは5.0GPa以下、より好ましくは4.5GPa以下、さらに好ましくは4.0GPa以下、さらに好ましくは3.5GPa以下が挙げられ、好ましい範囲としては、1.0GPa以上5.0GPa以下、1.0GPa以上4.5GPa以下、1.0GPa以上4.0GPa以下、1.0GPa以上3.5GPa以下、1.5GPa以上5.0GPa以下、1.5GPa以上4.5GPa以下、1.5GPa以上4.0GPa以下、1.5GPa以上3.5GPa以下、2.0GPa以上5.0GPa以下、2.0GPa以上4.5GPa以下、2.0GPa以上4.0GPa以下、2.0GPa以上3.5GPa以下が挙げられる。また、熱融着性樹脂層がポリプロピレンフィルム(未延伸ポリプロピレンフィルムなど)である場合、押し込み弾性率は、下限については好ましくは0.8GPa以上、より好ましくは1.0GPa以上が挙げられ、上限については5.0GPa以下、好ましくは4.0GPa以下が挙げられ、好ましい範囲としては0.8GPa以上5.0GPa以下、0.8GPa以上4.0GPa以下、1.0GPa以上5.0GPa以下、1.0GPa以上4.0GPa以下が挙げられる。また、熱融着性樹脂層がポリエチレンフィルムである場合、押し込み弾性率は、下限については好ましくは0.2GPa以上、より好ましくは0.3GPa以上が挙げられ、上限については1.0GPa以下が挙げられ、好ましい範囲としては0.2GPa以上1.0GPa以下、0.3GPa以上1.0GPa以下が挙げられる。熱融着性樹脂層を構成する樹脂の種類によって、好ましい押し込み弾性率が異なる理由としては、例えば未延伸ポリプロピレンフィルムなどのポリプロピレンフィルムを使用する場合、熱融着層の押し込み弾性率を上記の値とすることで、外装材全体としての剛性が上がり、耐屈曲性が向上する。一方、ポリエチレンフィルムの場合、押し込み弾性率を上記の値とすることで外装材全体としての柔軟性が高まり、耐屈曲性が向上するからである。
熱融着性樹脂層の押し込み弾性率の測定は、後述の方法により測定される。
(4)保護フィルム
本開示の外装材は、上述した熱融着性樹脂層やガスバリアフィルム層の他に、保護フィルムを有していてもよい。外装材が保護フィルムを有することにより、熱融着性樹脂層やガスバリアフィルム層など、外装材として共に用いられる各フィルムを、損傷や劣化から保護することができるからである。保護フィルムは、そのいずれの面にもガスバリア性を有する層が配置されていない点で、上述した各フィルムと区別することが可能である。保護フィルムの外装材における配置位置は特に限定されるものではないが、ガスバリアフィルム層の熱融着性樹脂層とは反対の面側に配置されていることが好ましく、蓄電デバイスを形成する際に最外層(最表層)となる位置に、保護フィルムが配置されていることがより好ましい。
保護フィルムとしては、熱融着性樹脂層よりも高融点の樹脂を用いることが好ましく、シート状でもフィルム状でもよい。このような保護フィルムとして、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、アミノ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド(PI)等の熱硬化性樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、セルロースナノファイバー(CNF)等のシートまたはフィルム等が挙げられ、中でも延伸ナイロン(ONY)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等が好適に用いられる。
保護フィルムは、単層であってもよく、同一材料から成る層または異なる材料から成る層を積層させて多層としたものであってもよい。また保護フィルムは、他の層との密着性の向上が図れるという点から、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。また、保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、一般的に5μm以上、80μm以下の範囲内程度である。
保護フィルムは、アンチブロッキング剤、滑剤、難燃化剤、充填剤等の他の材料を含んでいてもよい。これらの材料は、無機化合物で構成され得る。あるいは、無機化合物を含むハードコート層などが形成されていてもよい。
本開示における保護フィルムの押込み弾性率は、外装材の押し込み弾性指数の和P,Qの差の絶対値が後述の範囲内となれば特に制限されないが、所定の範囲であることが好ましい。具体的には、保護フィルムの押し込み弾性率は、下限については好ましくは0.5GPa以上、より好ましくは1.0GPa以上が挙げられ、より好ましくは1.5GPa以上が挙げられ、さらに好ましくは1.8GPa以上が挙げられ、上限については好ましくは5.0GPa以下、より好ましくは4.5GPa以下、さらに好ましくは3.5GPa以下が挙げられ、好ましい範囲としては、0.5GPa以上5.0GPa以下、0.5GPa以上4.5GPa以下、0.5GPa以上3.5GPa以下、1.0GPa以上5.0GPa以下、1.0GPa以上4.5GPa以下、1.0GPa以上3.5GPa以下、1.5GPa以上5.0GPa以下、1.5GPa以上4.5GPa以下、1.5GPa以上3.5GPa以下、1.8GPa以上5.0GPa以下、1.8GPa以上4.5GPa以下、1.8GPa以上3.5GPa以下が挙げられる。保護フィルムの押込み弾性率は、保護フィルムを構成する樹脂の種類や分子量、延伸度合などによって調整することができる。
保護フィルムの押し込み弾性率の測定は、後述の方法により測定される。
2.外装材の特性
本開示の外装材は、外装材が有する各層の押し込み弾性率(GPa)と厚み(μm)の積を、それぞれ、各層の押し込み弾性指数(GPa・μm)とした場合に、前記第一ガスバリアフィルム層の第一ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和P(GPa・μm)と、前記第二ガスバリアフィルム層の第二ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側とは反対側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和Q(GPa・μm)との差の絶対値が、50GPa・μm以下である。
本開示の外装材は、第一ガスバリアフィルム層と第二ガスバリアフィルム層とが前記所定の位置に配置された(第一ガスバリア膜層22aと第二ガスバリア膜層22bが外装材の厚み方向Xの中心側に配置された)上で、さらに、前記押し込み弾性指数の和P,Qの差の絶対値が50GPa・μm以下に設定されていることにより、特に優れたフレキシブル性が発揮される。なお、弾性指数の和P,Qの測定対象とする層が、厚さ5μm以上の層に限定されている理由は、厚さ5μm未満の層については、外装材に外力が加えられて折り曲げられる際、外装材の形状変化に与える寄与が非常に小さいためである。
(押込み弾性率の測定)
押込み弾性率は、ISO 14577:2015に準拠し、サンプルの断面に対して、約23℃約60%RHの環境で、ビッカース圧子(対面角136°の正四角錐のダイヤモンド圧子)を装着させた超微小負荷硬さ試験機を用いて、押し込み弾性率を測定する方法を用いる。測定は、押し込み速度0.1μm/秒、押し込み深さ2μm、保持時間5秒間、引き抜き速度0.1μm/秒で行う。超微小負荷硬さ試験機は、ピコデンターHM500(フィッシャー・インストルメンツ社製)が好ましい。1つの条件では、少なくとも5つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件の押し込み弾性率の値とする。サンプルの断面は、サンプルの外周を硬化樹脂系接着剤で固めて固定し、固定したサンプルをダイヤモンドナイフで厚さ方向に切断し、サンプルの露出した断面である。
また、押し込み弾性指数を算出する際の各層の厚さは、切削断面の光学顕微鏡観察の計測により測定することができる。
(押し込み弾性指数の和P,Qの算出)
各層の押し込み弾性率の値(GPa)と厚みの値(μm)から、押し込み弾性指数(GPa・μm)を算出する。例えば、図2の模式図の外装材であれば、第一ガスバリアフィルム層2aの第一ガスバリア膜層22aよりも熱融着性樹脂層1側(x1方向側)に位置する厚みが5μm以上の層は、第一樹脂基材層21aと熱融着性樹脂層1であるから、押し込み弾性指数の和Pは、第一樹脂基材層21aの押し込み弾性率(GPa)と厚み(μm)の積と、熱融着性樹脂層1の押し込み弾性率(GPa)と厚み(μm)の積の和である。一方、第二ガスバリアフィルム層2bの第二ガスバリア膜層22bよりも熱融着性樹脂層1側とは反対側(x2方向側)に位置する厚みが5μm以上の層は、第二樹脂基材層21bと保護フィルム4であるから、押し込み弾性指数の和Qは、第二樹脂基材層21bの押し込み弾性率(GPa)と厚み(μm)の積と、保護フィルム4の押し込み弾性率(GPa)と厚み(μm)の積の和である。
フレキシブル性をより向上させる観点から、前記押し込み弾性指数の和P,Qの差の絶対値は、上限については、好ましくは50GPa・μm以下、より好ましくは20GPa・μm以下が挙げられ、下限については好ましくは0GPa・μmが挙げられ、好ましい範囲としては、0GPa・μm以上50GPa・μm以下、0GPa・μm以上20GPa・μm以下が挙げられる。
また、前記押し込み弾性指数の和Pについては、上限については、好ましくは120GPa・μm以下、より好ましくは100GPa・μm以下が挙げられ、下限については好ましくは30GPa・μm以上、より好ましくは50GPa・μm以上が挙げられ、好ましい範囲としては、30GPa・μm以上120GPa・μm以下、30GPa・μm以上100GPa・μm以下、50GPa・μm以上120GPa・μm以下、50GPa・μm以上100GPa・μm以下が挙げられる。
本開示の外装材は、空気による蓄電デバイスの劣化を抑制可能な程度のガスバリア性を有する。本開示の外装材は、酸素透過度が0.5cc/(m2・24h・atm)以下、中でも0.1cc/(m2・24h・atm)以下、特に0.05cc/(m2・24h・atm)以下であることが好ましい。また、本開示の外装材は、水蒸気透過度が0.5g/(m2・24h)以下、中でも0.1g/(m2・24h)以下であることが好ましく、特に0.05g/(m2・24h)以下であることが好ましい。外装材が上述の範囲内のガスバリア性を有することにより、蓄電デバイスを良好に封止することができるからである。
酸素透過度の測定は、JIS K7126-2:2006(プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法-第2部:等圧法、付属書A:電解センサ法による酸素ガス透過度の試験方法)に準拠して、温度23℃、湿度60%RHの条件下で酸素ガス透過度測定装置を使用して測定することができる。酸素ガス透過度測定装置としては、例えば米国MOCON社製OXTRANを用いることが出来る。測定は、外装材の表面のうち、上記外装材の厚み方向において熱融着性樹脂層に対してガスバリアフィルム層側に位置する上記表面が酸素ガスに接するようにして上記装置内に装着し、透過面積50cm2の条件で行う。上記測定は、以下の手順で行う。まず、上記装置内にキャリアガスを流量10cc/分で60分以上供給してパージする。上記キャリアガスは5%程度水素を含む窒素ガスを用いることができる。パージ後、上記装置内に試験ガスを流し、流し始めてから平衡状態に達するまでの時間として12時間を確保した後に、上記の温度および湿度の条件で測定を開始する。上記試験ガスは少なくとも99.5%(体積)の酸素を含んだ乾燥酸素を用いる。1つの条件では少なくとも3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件の酸素透過度の値とする。本明細書において説明する酸素透過度は、上述の方法と同様の方法を用いて測定することができる。
また、水蒸気透過度の測定は、JIS K7129-B:2008(プラスチック-フィルム及びシート-水蒸気透過度の求め方(機器測定法)、付属書B:赤外線センサ法)に準拠して、温度40℃、湿度90%RHの条件(条件3)で、水蒸気透過度測定装置を用いて、外装材の外側(熱融着性樹脂層のガスバリアフィルム層が配置された側)が高湿度側(水蒸気供給側)になるようにして、透過面積50cm2の条件で、測定する方法を用いる。水蒸気透過度測定装置は、パ-マトラン(PERMATRAN-W(登録商標)Model 3/33、米国企業のモコン(MOCON)社製)が好ましい。標準試験片としてNISTフィルム#3を用いる。1つの条件では少なくとも3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件の水蒸気透過度の値とする。本明細書において説明する水蒸気透過度は、上述の方法と同様の方法を用いて測定することができる。
本開示において、外装材の灰分は、1.0質量%以上、20.0質量%以下であってもよく、1.0質量%以上、16.0質量%以下であってもよく、また、1.0質量%以上、15.0質量%以下であってもよく、さらに、1.0質量%以上、5.0質量%以下の範囲内であってもよい。外装材の灰分は、外装材全体に占める無機化合物成分の含有率に近似する。一般に、無機化合物は、有機化合物よりも脆く、同じ応力がかかったときには有機化合物よりも欠陥が発生しやすい。外装材全体に占める無機化合物成分の含有率が大きいほど微小な欠陥の発生しやすい傾向にある。本開示においては、外装材の灰分が上記範囲にあることで、折り曲げられたときの微小な欠陥の発生を特に抑制することができる。
なお、無機化合物に起因する折り曲げられたときの微小な欠陥の発生のしやすさについて、例えば、無機化合物が使用されているそれぞれのフィルムや層の厚さをそれぞれ特定することも考えられる。外装材に含まれる無機化合物成分としては、例えば、ガスバリアフィルム層のガスバリア膜層を挙げることができる。しかし、ガスバリア膜層は、箔、蒸着、または塗布のように様々な方法で形成されたものが適宜用いられる。また、蒸着や塗布では、例えば、形成条件により得られる膜の密度は異なり、膜に有機化合物成分が含まれることもある。そのため、ガスバリア膜層の厚さだけで、折り曲げられたときの微小な欠陥の発生のしやすさを評価することは困難である。また、無機化合物成分の含有量を、ガスバリア膜層の厚さだけから決定することも困難である。さらに、樹脂基材層、熱融着性樹脂層、接着層などに、様々な目的で無機化合物成分を含有させる場合があり、その無機化合物成分の影響も考慮する必要がある。しかし、ガスバリア膜層と同様に、これらのフィルムや層の形成方法やその条件、あるいは原材料などは様々であるため、それらの厚さだけで、折り曲げられたときの微小な欠陥の発生のしやすさを評価することは困難である。外装材の灰分は、例えば、樹脂基材層、熱融着性樹脂層、保護フィルム、もしくは接着層のようにガスバリアフィルム層以外の構成で無機化合物が使用されているケースのように、無機化合物の使用態様が複雑な場合に、折り曲げられたときの微小な欠陥の発生についての総合的な指標としての利点が大きい。
灰分は、外装材全体の質量における、外装材が燃え尽きたあとに残る不燃性の無機化合物の割合を調べるものである。本開示においては、熱重量/示差熱同時分析装置(TG-DTA)を用いて、測定試料の質量を測定した後、アルミパン中、かつ、大気雰囲気下で、昇温速度10℃/分で室温から600℃まで昇温後、そのまま600℃で30分間加熱して測定試料を灰化し、加熱前の質量に対する加熱後の質量を百分率で表した値を灰分とする。この際の熱重量/示差熱同時分析装置としては、株式会社リガク製のTG8120を用いることができる。
3.その他
本開示の外装材の製造方法としては、例えば、予め成膜した各フィルムを、接着剤を使用して貼り合せるドライラミネーション工程や、熱溶融させたガスバリアフィルム層の各材料を、Tダイ等を用いて押出しして貼り合せ、得られた積層体に接着剤を介して熱融着性樹脂層を貼り合せる、貼り合わせ工程等を挙げることができる。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに具体的に説明する。
外装材の作製において用いた各フィルムの略称は以下の通りである。また、各フィルムの詳細を表1に示す。
・Al蒸着PET12:アルミニウム(Al)膜(厚み65nm)が片面に蒸着されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み12μm)
・Al23蒸着PET12:酸化アルミニウム(Al23)膜(厚み20nm)が片面に蒸着されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み12μm)
・CPP30:未延伸ポリプロピレンフィルム(厚み30μm)
・CPP50:未延伸ポリプロピレンフィルム(厚み50μm)
・PBT25:二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)
・ON25:二軸延伸ナイロンフィルム(厚み25μm)
・PET25:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)
・PET50:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み50μm)
Figure 0007247495000001
[実施例1]
(接着剤の準備)
主剤として固形分が20質量%であり、融解温度(融点)50℃の酸変性ポリプロピレンを準備した。また、硬化剤として固形分が10質量%であり、重量平均分子量500のエポキシ樹脂を準備した。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定として「Waters製、Alliance 2695」を用い、カラムとして「Shodex GPC LF-804(昭和電工製、8.0mmI.D.×300mm)」を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定した。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速1.0ml/min、サンプル注入量50μl、測定温度40℃、RI検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystyrene標準試料TSK standard」から作製した。
酸変性ポリプロピレンを10重量部、エポキシ樹脂を0.5重量部混合し、接着剤を得た。
(外装材の作製)
熱融着性樹脂層としてPBT25と、第一ガスバリアフィルム層としてAl23蒸着PET12と、第二ガスバリアフィルム層としてAl23蒸着PET12と、保護フィルムとしてPET25とをこの順に積層して外装材を得た。第一ガスバリアフィルム層と第二ガスバリアフィルム層とは、第一ガスバリアフィルム層のAl23蒸着膜側と、第二ガスバリアフィルム層のAl23蒸着膜側とが向かい合うように配置した。
上述した接着剤を用いて、各フィルム層の間に接着層を配置し、各フィルムを接着層で接合した。
具体的な各フィルムの接合方法は以下の通りである。外装材において隣接して配置される二つのフィルムのうち、一方のフィルムに上述した接着剤を塗布量1.5g/m2(硬化後の接着層の厚みが1.5μm)となるように塗布して接着層を形成した。次に、接着層が配置されたフィルムと、他方のフィルムとを接着層を間に挟んで加圧することにより、フィルムを接合した。
以上の手順により外装材を得た。
なお、実施例1~4の外装材は、いずれも図2の模式図に示される積層構成を備えている。一方、比較例1~2の外装材は、いずれも図2の模式図において、第二ガスバリアフィルム層2bの樹脂基材層21bとガスバリア膜層22bの積層順が逆向き(ガスバリア膜層22が樹脂基材層21よりもx2方向側に位置しており、第一ガスバリアフィルム層2aのガスバリア膜層22aと第2ガスバリアフィルム層2bのガスバリア膜層22bとが互いに向き合っていない)の積層構成を備えている。
[実施例2]
保護フィルムとしてPET25の代わりにON25を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外装材を得た。
[実施例3]
実施例2において、熱融着性樹脂層としてPBT25の代わりにCPP30を用いたこと以外は、実施例2と同様にして外装材を得た。
[実施例4]
実施例2において、熱融着性樹脂層としてPBT25の代わりにCPP50を用いたこと以外は、実施例2と同様にして外装材を得た。
[比較例1]
熱融着性樹脂層としてPBT25と、第一ガスバリアフィルム層としてAl23蒸着PET12と、第二ガスバリアフィルム層としてAl23蒸着PET12と、保護フィルムとしてPET50とをこの順に積層して外装材を得た。第一ガスバリアフィルム層と第二ガスバリアフィルム層とは、第一ガスバリアフィルム層のPETフィルム側と、第二ガスバリアフィルム層のAl23蒸着膜側とが向かい合うように配置した。
接着剤として、実施例1に記載の2液硬化型の接着剤を塗布量1.5g/m2(硬化後の接着層の厚みが1.5μm)となるように塗布して接着層を配置し、各フィルムを接合した。以上の手順により外装材を得た。
[比較例2]
(接着剤の準備)
ポリエステルポリオールを主成分とする主剤(ロックペイント社製 製品名:RU-77T)、脂肪族系ポリイソシアネートを含む硬化剤(ロックペイント社製 製品名:H-7)、および酢酸エチルの溶剤が、重量配合比が主剤:硬化剤:溶剤=10:1:14となるように混合された、2液硬化型の接着剤を準備した。
(外装材の作製)
熱融着性樹脂層としてCPP50を用い、第一ガスバリアフィルム層としてAl23蒸着PET12と、第二ガスバリアフィルム層としてAl23蒸着PET12、保護フィルムとしてON25とをこの順に積層して外装材を得た。第一ガスバリアフィルム層と第二ガスバリアフィルム層とは、第一ガスバリアフィルム層のAl23蒸着膜側と、第二ガスバリアフィルム層のAl23蒸着膜側とが向かい合うように配置した。接着剤として、準備した2液硬化型の接着剤を塗布量3.5g/m2(硬化後の接着層の厚みが3.5μm)となるように塗布して接着層を配置した。
実施例1~4および比較例1~2の外装材の積層構成を表2に示す。なお、表2中の「外装材の積層構成」は、各フィルムの重なり順を示しており、各フィルム間に配置される接着層の記載について省略している。
[評価]
(押し込み弾性率の測定と押し込み弾性指数の算出)
実施例1~4および比較例1~2で使用した各フィルムの押し込み弾性率の測定方法は、「2.外装材の特性」の項で説明した通りであり、測定結果を表1に併記した。なお、各蒸着膜及び各接着層については、それぞれ、厚みが5μm未満であり、押し込み弾性率の測定対象外とした。
次に、得られた押し込み弾性率の値(GPa)と、各フィルムの厚みの値(μm)から、押し込み弾性指数(GPa・μm)を算出した。
例えば、実施例1の外装材については、第一ガスバリアフィルム層(Al23蒸着PET12)の第一ガスバリア膜層よりも熱融着性樹脂層(PBT25)側に位置する厚みが5μm以上の層は、第一ガスバリアフィルム層のPETフィルム(厚み12μm、押し込み弾性率2.5GPa)と、熱融着性樹脂層であるPBT25(厚み25μm、押し込み弾性率2.1GPa)であるから、押し込み弾性指数の和Pは(2.5GPa×12μm)+(2.1GPa×25μm)=82.5GPa・μmと算出される。一方、第二ガスバリアフィルム層(Al23蒸着PET12)の第二ガスバリア膜層よりも、熱融着性樹脂層(PBT25)とは反対側に位置する厚みが5μm以上の層は、第二ガスバリアフィルム層のPETフィルム(厚み12μm、押し込み弾性率2.5GPa)と、保護フィルムであるPET25(厚み25μm、押し込み弾性率2.5GPa)であり、押し込み弾性指数の和Qは、(2.5GPa×12μm)+(2.5GPa×25μm)=92.5GPa・μmと算出される。従って、実施例1において、押し込み弾性指数の和Pと、押し込み弾性指数の和Qとの差は、92.5GPa・μm-82.5GPa・μm=10GPa・μmと算出される。
実施例2~4および比較例1~2についても、同様にして、押し込み弾性指数の和Pと、押し込み弾性指数の和Qとの差の絶対値を算出した。結果を表2に示す。
Figure 0007247495000002
(耐電解液性(剥離強度))
各外装材に対し、電解液耐性試験を実施し、試験前後の熱融着性樹脂層とバリアフィルムとの剥離強度を測定した。
袋状の外装材の作製時における、熱融着の条件は、温度190℃、面圧1.0MPa、加熱・加圧時間3秒とした。また、電解液は、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の容積比で混合した溶液に6フッ化リン酸リチウムを混合して得られたものとした。電解液耐性試験および剥離強度の測定条件については、上述した「1.外装材の構成 (1)接着層」の項で説明した通りである。耐電解液性の評価基準は、電解液耐性試験を行っていない各外装材について、同様に引張強度を測定して得られた剥離強度(初期剥離強度)を基準(100%)として、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
A:初期剥離強度の80%以上の剥離強度である。
B:初期剥離強度の70%以上80%未満の剥離強度である。
C:初期剥離強度の50%未満の剥離強度である。
Figure 0007247495000003
Al23蒸着PET12のようなガスバリア膜層と樹脂基材層との積層体をガスバリアフィルム層として用いると、ガスバリア膜層を構成しているAl23蒸着などが電解液に溶解しやすいため、外装材の耐電解液性を高めることの課題が顕著となる。しかしながら、実施例1~4および比較例1では、耐電解液性に優れた接着剤を用いて接着層が形成されているため、この課題が好適に解決されていることが分かる。
(水蒸気透過度)
実施例1~4および比較例1~2の外装材における40℃、90%RHの水蒸気透過度を測定した。測定方法の詳細は、「2.外装材の特性」の項で説明した通りである。結果を表4に示す。
(酸素透過度)
実施例1~4および比較例1~2の外装材における23℃、60%RHの酸素透過度を測定した。測定方法の詳細は、「2.外装材の特性」の項で説明した通りである。結果を表4に示す。
(フレキシブル性評価)
実施例1~4および比較例1~2の外装材のフレキシブル性を評価した。評価方法の詳細は、上述した「外装材がフレキシブル性を有する」の項で説明した通りである。結果を表4に示す。
(灰分評価)
実施例1~4および比較例1~2の外装材の灰分を評価した。評価方法の詳細は、「2.外装材の特性」の項で説明した通りである。結果を表4に示す。
(熱融着性樹脂層の押し込み弾性率)
実施例1~4、および比較例1~2の外装材の熱溶着可能なフィルムの押し込み弾性率を測定した。測定方法の詳細は、上述した「1.外装材の構成 (3)熱融着性樹脂層」の項で説明した通りである。結果を表4に示す。
Figure 0007247495000004
表4に示される結果から明らかな通り、前記押し込み弾性指数の差の絶対値が50GPa・μm以下を充足している実施例1~4の外装材は、3回屈曲処理後の試験片の水蒸気透過度が0.5g/(m2・24h)以下であり、かつ、3回屈曲処理後の試験片の酸素透過度が0.5cc/(m2・24h・atm)以下であり、さらに、引張弾性率×(厚さ)3<2.5の関係を充足している。実施例1~4の外装材は、優れたフレキシブル性を備えている。これに対して、前記押し込み弾性指数の差の絶対値が50GPa・μmを超えている比較例1の外装材は、3回屈曲処理後の試験片の水蒸気透過度が0.5g/(m2・24h)を超えており、かつ、3回屈曲処理後の酸素透過度が0.5cc/(m2・24h・atm)を超えている。比較例1の外装材は、実施例1~4と比較して、好適なフレキシブル性を備えていない。また、比較例1,2については、外包材が、引張弾性率×(厚さ)3<2.5の関係を充足していない。
以上の通り、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 複数のフィルムが積層された蓄電デバイス用外装材であって、
熱融着性樹脂層と、前記熱融着性樹脂層の一方の面側に積層されて配置された複数のガスバリアフィルム層と、複数の接着層とを有し、
前記ガスバリアフィルム層は、樹脂基材層と、前記樹脂基材層の片方または両方の面側に配置された、ガスバリア膜層とを有し、
前記ガスバリアフィルム層は、熱融着性樹脂層側から順に、少なくとも第一ガスバリアフィルム層と第二ガスバリアフィルム層を有し、
前記第一ガスバリアフィルム層の第一ガスバリア膜層と、前記第二ガスバリアフィルム層の第二ガスバリア膜層とは、互いに向き合っており、
前記蓄電デバイス用外装材が有する各層の押し込み弾性率(GPa)と厚み(μm)の積を、それぞれ、前記各層の押し込み弾性指数(GPa・μm)とした場合に、前記第一ガスバリアフィルム層の第一ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和P(GPa・μm)と、前記第二ガスバリアフィルム層の第二ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側とは反対側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和Q(GPa・μm)との差の絶対値が、50GPa・μm以下であり、
前記複数の接着層のうち、少なくとも前記熱融着性樹脂層と前記ガスバリアフィルム層との間に配置される接着層が、耐電解液性を有する、蓄電デバイス用外装材。
項2. 前記蓄電デバイス用外装材は、引張弾性率(MPa)×(厚み(mm))3<2.5(MPa・mm3)の関係を充足している、項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
項3. 前記複数の接着層の全てが、耐電解液性を有する、項1または項2に記載の蓄電デバイス用外装材。
項4. 耐電解液性を有する前記接着層が、オキサゾリン基を有する化合物、およびエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物の硬化物である、項1から項3までのいずれかの項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項5. 耐電解液性を有する前記接着層が、酸素原子、複素環、C=N結合、およびC-O-C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である、項1から項3までのいずれかの項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項6. 耐電解液性を有する前記接着層が、エステル樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1から項3までのいずれかの項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項7. 温度40℃、湿度90%RH雰囲気下における水蒸気透過度が0.1g/(m2・24h)以下である、項1から項6までのいずれかの項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項8. 前記熱融着性樹脂層における押し込み弾性率が0.5GPa以上である、項1から項7までのいずれかの項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項9. 以下の方法で測定される灰分が1.0質量%以上20.0質量%以下である、項1から項8までのいずれかの項に記載の蓄電デバイス用外装材。
(灰分の測定方法)
熱重量/示差熱同時分析装置を用いて、測定試料の質量を測定した後、アルミパン中、かつ、大気雰囲気下で、昇温速度10℃/分で室温から600℃まで昇温後、そのまま600℃で30分間加熱して測定試料を灰化し、加熱前の質量に対する加熱後の質量を百分率で表した値を灰分とする。
項10. 少なくとも正極、負極、および電解質を備えた蓄電デバイス素子が、項1から項9までのいずれかの項に記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
項11. 複数のフィルムが積層された蓄電デバイス用外装材の製造方法であって、
熱融着性樹脂層と、複数のガスバリアフィルム層と、複数の接着層とを積層する工程を含んでおり、
前記複数のガスバリアフィルム層は、前記熱融着性樹脂層の一方の面側に積層することで配置し、
前記ガスバリアフィルム層は、樹脂基材層と、前記樹脂基材層の片方または両方の面側に配置され、ガスバリア膜層とを有し、
前記ガスバリアフィルム層は、熱融着性樹脂層側から順に、少なくとも第一ガスバリアフィルム層と第二ガスバリアフィルム層を有し、
前記第一ガスバリアフィルム層の第一ガスバリア膜層と、前記第二ガスバリアフィルム層の第二ガスバリア膜層とは、互いに向き合っており、
前記蓄電デバイス用外装材が有する各層の押し込み弾性率(GPa)と厚み(μm)の積を、それぞれ、前記各層の押し込み弾性指数(GPa・μm)とした場合に、前記第一ガスバリアフィルム層の第一ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和P(GPa・μm)と、前記第二ガスバリアフィルム層の第二ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側とは反対側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和Q(GPa・μm)との差の絶対値が、50GPa・μm以下であり、
前記複数の接着層のうち、少なくとも前記熱融着性樹脂層と前記ガスバリアフィルム層との間に配置される接着層が、耐電解液性を有する、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
項12. 前記蓄電デバイス用外装材は、引張弾性率(MPa)×(厚み(mm))3<2.5(MPa・mm3)の関係を充足している、項11に記載の蓄電デバイス用外装材の製造方法。
1 … 熱融着性樹脂層
2、2a、2b、2c … ガスバリアフィルム層
3、3a、3b、3c … 接着層
4 … 保護フィルム
10 … 蓄電デバイス用外装材
21 … 樹脂基材層
22 … ガスバリア膜層

Claims (12)

  1. 複数のフィルムが積層された蓄電デバイス用外装材であって、
    熱融着性樹脂層と、前記熱融着性樹脂層の一方の面側に積層されて配置された複数のガスバリアフィルム層と、複数の接着層とを有し、
    前記ガスバリアフィルム層は、樹脂基材層と、前記樹脂基材層の片方または両方の面側に配置された、ガスバリア膜層とを有し、
    前記ガスバリアフィルム層は、熱融着性樹脂層側から順に、少なくとも第一ガスバリアフィルム層と第二ガスバリアフィルム層を有し、
    前記第一ガスバリアフィルム層の第一ガスバリア膜層と、前記第二ガスバリアフィルム層の第二ガスバリア膜層とは、互いに向き合っており、
    前記複数の接着層は、それぞれ、前記第一ガスバリアフィルム層と前記第二ガスバリアフィルム層との間、及び、前記熱融着性樹脂層と前記ガスバリアフィルムとの間に配置されており、
    前記蓄電デバイス用外装材が有する各層の押し込み弾性率(GPa)と厚み(μm)の積を、それぞれ、前記各層の押し込み弾性指数(GPa・μm)とした場合に、前記第一ガスバリアフィルム層の第一ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和P(GPa・μm)と、前記第二ガスバリアフィルム層の第二ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側とは反対側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和Q(GPa・μm)との差の絶対値が、50GPa・μm以下であり、
    前記複数の接着層のうち、少なくとも前記熱融着性樹脂層と前記ガスバリアフィルム層との間に配置される接着層が、電解液耐性試験前における前記接着層の剥離強度(N/15mm)に対する、下記の電解液耐性試験後の前記接着層の剥離強度(N/15mm)の比率(剥離強度の維持率)が、50%以上である耐電解液性を有する、蓄電デバイス用外装材。
    <電解液耐性試験>
    蓄電デバイス用外装材を60mm(縦方向、MD)×150mm(横方向、TD)に裁断する。次に、裁断した蓄電デバイス用外装材を横方向において熱融着性樹脂層同士が対向するようにして2つ折りにし、横方向の対向する1辺と縦方向の1辺を面圧1MPa、温度190℃、3秒間の条件で熱融着し、横方向の1辺が開口する袋状の外装材を作製する。次に、開口部から3gの電解液(1モル/リットルの6フッ化リン酸リチウム溶液、溶媒はエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(容積比))を注入し、開口部を7mm幅で、面圧1MPa、温度190℃、3秒間の条件で熱融着する。次に、蓄電デバイス用外装材の開口部を熱融着した部分を上向きにして、85℃の恒温層内に24時間静置する。
    前記の<電解液耐性試験>を行った蓄電デバイス用外装材の上側(開口部を熱融着した部分)の1辺と、その両側の2辺を切断して、電解液を排出する。次に、電解液をよく拭き取り、TDの方向が試験片の長さ方向になるようにして、幅15mmの短冊状に切りとって試験片を得る。なお、試験片は、熱融着されていない部分から3つ取得する。次に、試験片の長さ方向の端部から、熱融着性樹脂層とガスバリアフィルムとの間を長さ方向に部分的に剥離させる。この時の剥離は、手で行う。次に、熱融着性樹脂層が上側になるようにして、熱融着性樹脂層と、ガスバリアフィルム等(熱融着性樹脂層の上に積層されていた積層体全体)とを、それぞれ固定(チャック)し、引張試験機を用いて、引張速度50mm/分、剥離角度180°、剥離距離25mmの条件で剥離試験を行い、剥離距離が10~20mmの間の剥離強度(N/15mm)の平均値を、接着層の剥離強度とする。剥離強度は、それぞれ3つの試験片について測定した平均値である。
  2. 前記蓄電デバイス用外装材は、引張弾性率(MPa)×(厚み(mm))3<2.5(MPa・mm3)の関係を充足している、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
  3. 前記複数の接着層の全てが、前記耐電解液性を有する、請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイス用外装材。
  4. 前記耐電解液性を有する前記接着層が、オキサゾリン基を有する化合物、およびエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物の硬化物である、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の蓄電デバイス用外装材。
  5. 前記耐電解液性を有する前記接着層が、酸素原子、複素環、C=N結合、およびC-O-C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の蓄電デバイス用外装材。
  6. 前記耐電解液性を有する前記接着層が、エステル樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の蓄電デバイス用外装材。
  7. 温度40℃、湿度90%RH雰囲気下における水蒸気透過度が0.1g/(m2・24h)以下である、請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の蓄電デバイス用外装材。
  8. 前記熱融着性樹脂層における押し込み弾性率が0.5GPa以上である、請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の蓄電デバイス用外装材。
  9. 以下の方法で測定される灰分が1.0質量%以上20.0質量%以下である、請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載の蓄電デバイス用外装材。
    (灰分の測定方法)
    熱重量/示差熱同時分析装置を用いて、測定試料の質量を測定した後、アルミパン中、かつ、大気雰囲気下で、昇温速度10℃/分で室温から600℃まで昇温後、そのまま600℃で30分間加熱して測定試料を灰化し、加熱前の質量に対する加熱後の質量を百分率で表した値を灰分とする。
  10. 少なくとも正極、負極、および電解質を備えた蓄電デバイス素子が、請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
  11. 複数のフィルムが積層された蓄電デバイス用外装材の製造方法であって、
    熱融着性樹脂層と、複数のガスバリアフィルム層と、複数の接着層とを積層する工程を含んでおり、
    前記工程は、前記熱融着性樹脂層と、前記複数のガスバリアフィルムのうちの前記熱融着性樹脂層側の前記ガスバリアフィルムとを前記接着層を介して貼り合わせる工程と、前記第一ガスバリアフィルム層と第二ガスバリアフィルム層との間を前記接着層を介して貼り合わせる工程と、を含んでおり、
    前記複数のガスバリアフィルム層は、前記熱融着性樹脂層の一方の面側に積層することで配置し、
    前記ガスバリアフィルム層は、樹脂基材層と、前記樹脂基材層の片方または両方の面側に配置され、ガスバリア膜層とを有し、
    前記ガスバリアフィルム層は、熱融着性樹脂層側から順に、少なくとも第一ガスバリアフィルム層と第二ガスバリアフィルム層を有し、
    前記第一ガスバリアフィルム層の第一ガスバリア膜層と、前記第二ガスバリアフィルム層の第二ガスバリア膜層とは、互いに向き合っており、
    前記蓄電デバイス用外装材が有する各層の押し込み弾性率(GPa)と厚み(μm)の積を、それぞれ、前記各層の押し込み弾性指数(GPa・μm)とした場合に、前記第一ガスバリアフィルム層の第一ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和P(GPa・μm)と、前記第二ガスバリアフィルム層の第二ガスバリア膜層よりも前記熱融着性樹脂層側とは反対側に位置する厚みが5μm以上の層の押し込み弾性指数の和Q(GPa・μm)との差の絶対値が、50GPa・μm以下であり、
    前記複数の接着層のうち、少なくとも前記熱融着性樹脂層と前記ガスバリアフィルム層との間に配置される接着層が、電解液耐性試験前における前記接着層の剥離強度(N/15mm)に対する、下記の電解液耐性試験後の前記接着層の剥離強度(N/15mm)の比率(剥離強度の維持率)が、50%以上である耐電解液性を有する、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
    <電解液耐性試験>
    蓄電デバイス用外装材を60mm(縦方向、MD)×150mm(横方向、TD)に裁断する。次に、裁断した蓄電デバイス用外装材を横方向において熱融着性樹脂層同士が対向するようにして2つ折りにし、横方向の対向する1辺と縦方向の1辺を面圧1MPa、温度190℃、3秒間の条件で熱融着し、横方向の1辺が開口する袋状の外装材を作製する。次に、開口部から3gの電解液(1モル/リットルの6フッ化リン酸リチウム溶液、溶媒はエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(容積比))を注入し、開口部を7mm幅で、面圧1MPa、温度190℃、3秒間の条件で熱融着する。次に、蓄電デバイス用外装材の開口部を熱融着した部分を上向きにして、85℃の恒温層内に24時間静置する。
    前記の<電解液耐性試験>を行った蓄電デバイス用外装材の上側(開口部を熱融着した部分)の1辺と、その両側の2辺を切断して、電解液を排出する。次に、電解液をよく拭き取り、TDの方向が試験片の長さ方向になるようにして、幅15mmの短冊状に切りとって試験片を得る。なお、試験片は、熱融着されていない部分から3つ取得する。次に、試験片の長さ方向の端部から、熱融着性樹脂層とガスバリアフィルムとの間を長さ方向に部分的に剥離させる。この時の剥離は、手で行う。次に、熱融着性樹脂層が上側になるようにして、熱融着性樹脂層と、ガスバリアフィルム等(熱融着性樹脂層の上に積層されていた積層体全体)とを、それぞれ固定(チャック)し、引張試験機を用いて、引張速度50mm/分、剥離角度180°、剥離距離25mmの条件で剥離試験を行い、剥離距離が10~20mmの間の剥離強度(N/15mm)の平均値を、接着層の剥離強度とする。剥離強度は、それぞれ3つの試験片について測定した平均値である。
  12. 前記蓄電デバイス用外装材は、引張弾性率(MPa)×(厚み(mm))3<2.5(MPa・mm3)の関係を充足している、請求項11に記載の蓄電デバイス用外装材の製造方法。

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