JP7246665B1 - シューズ - Google Patents
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Abstract
Description
これは、競技での記録向上という特化した目的を達成するために、弾発力をもたらす部材についても、比較的シンプルな単板状の弾発部材を用い、シューズ全体の重量も抑えることができるような設計コンセプトが採られていることに因る。
他方、スポーツ分野において、サステナブルなシューズや中敷き(インソール)が求められており、性能だけでなく、環境に優しい素材へと切り替える動きが活発になっている。
積層配置された複数枚の湾曲断面を有する弾発プレートと、これら各弾発プレートの間に空間部とを具えて成るシューズ用緩衝構造が、ソールに組み込まれたシューズであって、
前記弾発プレートは、弾発プレート面に作用する荷重により生ずる弾発プレートの撓み変形方向の見掛け伸長方向において、一カ所または複数カ所において集束する集束部を形成しており、
且つ前記シューズ用緩衝構造は、ソールの前足部領域と後足部領域とにおいて不連続に直列状に設置されるものであり、
このうち前足部領域のシューズ用緩衝構造については、複数の弾発プレート間の空間部に緩衝体を設けず、
一方、後足部領域のシューズ用緩衝構造については、複数の弾発プレート間の空間部に、緩衝体を設けることを特徴として成るものである。
積層配置された複数枚の湾曲断面を有する弾発プレートと、これら各弾発プレートの間に空間部とを具えて成るシューズ用緩衝構造が、ソールに組み込まれたシューズであって、
前記弾発プレートは、弾発プレート面に作用する荷重により生ずる弾発プレートの撓み変形方向の見掛け伸長方向において、一カ所または複数カ所において集束する集束部を形成しており、
且つ前記シューズ用緩衝構造は、ソールの前足部領域と後足部領域とにおいて不連続に直列状に設置されて成り、
見掛け伸長方向における前後方向では、弾発プレートが下方に向かって凸状となる湾曲状に形成され、また下層に設置される弾発プレートは、上層に設置される弾発プレートより長く、なお且つ曲率を増加させるように形成され、
更に見掛け伸長方向における幅方向では、弾発プレートが上方に向かって凸状となる湾曲状に形成され、且つ下層に設置される弾発プレートは、上層に設置される弾発プレートより長く、なお且つ曲率を増加させるように形成されることを特徴として成るものである。
積層配置された複数枚の湾曲断面を有する弾発プレートと、これら各弾発プレートの間に空間部とを具えて成るシューズ用緩衝構造が、ソールに組み込まれたシューズであって、
前記弾発プレートは、弾発プレート面に作用する荷重により生ずる弾発プレートの撓み変形方向の見掛け伸長方向において、一カ所または複数カ所において集束する集束部を形成しており、
且つ前記シューズ用緩衝構造は、ソールの前足部領域と後足部領域とにおいて不連続に直列状に設置されて成り、
見掛け伸長方向における前後方向では、弾発プレートが下方に向かって凸状となる湾曲状に形成され、
また前足部領域においては、下層に設置される弾発プレートは、上層に設置される弾発プレートより長く、なお且つ曲率を増加させるように形成され、
一方、後足部領域においては、最上層の弾発プレートと最下層の弾発プレートとが、これらの間に設けられる弾発プレートより長く、なお且つ曲率を増加させるように形成され、
更に見掛け伸長方向における幅方向では、弾発プレートが上方に向かって凸状となる湾曲状に形成され、且つ下層に設置される弾発プレートは、上層に設置される弾発プレートより長く、なお且つ曲率を増加させるように形成されることを特徴として成るものである。
前記複数枚の弾発プレートのうち少なくとも一枚は、前記見掛け伸長方向の少なくとも一部において湾曲形状が異なる、または曲率半径が異なることを特徴として成るものである。
前記複数枚の弾発プレートのうち少なくとも二枚は、前記見掛け伸長方向の前後方向及び幅方向において、互いに少なくとも一部は湾曲形状が異なる、または曲率半径が異なることを特徴として成るものである。
前記集束部は、見掛け伸長方向における前後方向の少なくとも一方の端部に形成されていることを特徴として成るものである。
前記各弾発プレートの間の空間部には、少なくとも一部に緩衝体が配設されていることを特徴として成るものである。
前記弾発プレートは、炭素繊維強化プラスチック素材または木質系の天然生物系素材のいずれかで構成されていることを特徴として成るものである。
前記木質系の天然生物系素材としては、竹材が適用されることを特徴として成るものである。
そして、これら各請求項記載の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
また本発明によれば、緩衝構造の空間部について、前足部領域では緩衝体を設けず、後足部領域では緩衝体を設けるため、より一層、実際の使用状況に則したシューズを提供することができる。すなわち日本人に一般的とされているヒールストライク走法では、着地時には後足部領域である踵側から着地するため、後足部領域に設けた緩衝体で緩衝性を高めることができる。一方、蹴り出し時には、前足部領域である、つま先側で最終的に地面(接地面)を蹴ることになるため、前足部領域では緩衝体を設けないことにより、各弾発プレートの反発性を優位に作用させて、蹴り出し時の前方への推進力を向上させることができる。
また本発明によれば、緩衝構造の具体的構成及び具体的配置を明確化したシューズを現実に提供することができる。
また弾発プレートが、竹材などの天然生物系素材で構成された場合、弾発プレートはしなり易く、走行性にも優れ、サステナブル性も高いシューズを得ることができる。
なお、緩衝構造1をシューズSに設けるにあたっては、緩衝性能を強くアピールする目的や意匠性向上等の観点から緩衝構造1自体が極力外部から目視できるように設置されることが望まれており、このため上記図1~図3でもソールS1(シューズS)のほぼ全周囲から目視できるような形態を示している。もちろん、緩衝構造1をシューズSに設けるにあたっては、外部から目視され難いように設置することは何ら構わない。
因みに、ユーザはシューズSを購入する際、このような緩衝構造1を実際に手や指で触れてみて、自分の感触でクッショニング性を確かめることが多く、機能的には必要な部位にだけ緩衝構造1を設ければよい場合であっても、緩衝構造1がシューズSのほぼ全外周から目視できる商品の方が、ユーザの購買意欲をより刺激し易いものである。
また、本発明のシューズSは、緩衝構造1として前足部領域の緩衝構造1Fと、後足部領域の緩衝構造1Bとを不連続に直列状に設置して成るものである。この点、上記図2に示した構成例は、緩衝構造1として後足部領域の緩衝構造1Bのみで構成されているためシューズSとしては本発明に関連する参考例となる。ただし、緩衝構造1を構成する部材自体の構造、具体的には後述する弾発プレート2、空間部3、収束部4などの構造やこれらの組み合わせ方などは、本発明の実施例として適用することができる。
以下、緩衝構造1の構成について説明する。
ここで上記「見掛け伸長方向」について説明する。
シューズSを履いた使用者が、例えばランニング中に着地した際には、積層された弾発プレート2に荷重が加わる。このような加重時に、弾発プレート2は、当然ながら前後方向(長手方向)に伸長するが、幅方向(左右方向)にも伸長するため、これら前後方向と幅方向とを総じて「見掛け伸長方向」と称したものである。
まず図1に示す緩衝構造1は、シューズS(ソールS1)の前足部領域と後足部領域とに分かれて各々、緩衝構造1F・1Bを組み込むようにした緩衝構造1の構成例である。
また図2に示す緩衝構造1は、緩衝性能を実質的に発揮する構成部が、後足部領域に設けられた緩衝構造1Bであり、前足部領域は後足部領域の緩衝構造1Bから前方に弾発プレート2が延長形成されて成るものである。また、この緩衝構造1をシューズ後方から視た場合、つまり見掛け伸長方向における幅方向では、最下層の弾発プレート2は、単なる湾曲形状ではなく(一定の曲率半径ではなく)、中央部が上方に突出した波形(ウエーブ状)に形成されている。ただし、図2の構成例は、上述したようにシューズSそのものとしては本発明に関連する参考例となる。
更に図3に示す緩衝構造1も、図1に示す緩衝構造1と同様に、シューズS(ソールS1)の前足部領域と後足部領域とに分かれて緩衝構造1F・1Bとが設けられた構成例であるが、図1に示す緩衝構造1よりも、弾発プレート2の枚数が少なく、弾発プレート2の間隔である空間部3が大きい構造となっている。
まず、弾発プレート2は、複数枚で積層板を構成するものであり、複数枚のうち少なくとも一枚が、見掛け伸長方向の少なくとも一部において湾曲形状が異なる、または曲率半径が異なるように形成される。
具体的には、図1~図3に示すような構成例が挙げられる。すなわち複数枚の弾発プレート2は、少なくとも一枚が、見掛け伸長方向における前後方向及び/または幅方向において、湾曲形状または曲率半径が異なるように形成される。また各弾発プレート2が、シンプルな湾曲形状に形成されている場合には、少なくとも一枚の弾発プレート2の曲率半径が異なり、弾発プレート2が波形等に形成されている場合には、湾曲形状が異なるように形成される(例えば図2(b)参照)。この構成とすることによって、各弾発プレート2の異なる撓み変形性を組み合わせることになり、従って独特な変形・復元挙動や反発力を発現させることができる。またこのため種々の反発性能やクッショニング性能を具備した仕様に形成することができる。
また、複数枚の弾発プレート2のうち少なくとも二枚は、見掛け伸長方向の前後方向及び幅方向の両方向において、互いに各弾発プレート2の少なくとも一部の湾曲形状または曲率半径が異なる構成を採り得る(例えば図2(a)及び図2(b)参照)。このような構成とすることによって、各弾発プレート2の異なる撓み変形性の組み合わせを、より複雑に協働させることができ、より独特な変形・復元挙動や反発力を発現させることができる。またこのため種々の反発性能やクッショニング性能を具備した多様な仕様に形成することができる。
弾発プレート2の板厚を部分的に異ならせた形態としては、見掛け伸長方向における前後方向に異ならせて、走行時の反発推進力を調整してもよいし、見掛け伸長方向における幅方向に異ならせて、走行時のプロネーションをコントロールするように作用させてもよい。
また、複数枚の各弾発プレート2の板厚は、同じでもよいし、各弾発プレート2ごとに異ならせてもよい(図3参照)。
空間部3は、隣接する弾発プレート2同士の間隔(間隙)であり、例えば図2に示すように、この間隔も全て同じ距離に形成される必要はない。また、この空間部3には、積極的に緩衝体31を充填し、緩衝性能をより向上させることも可能であるが、何も充填しなくても構わない。ここで緩衝体31を積極的に充填した空間部3を緩衝体充填空間と称する一方、何も充填しない空間部3を未充填空間と称することがある。空間部3を未充填空間とした場合には、空間部3は、厚み方向に隣接する各弾発プレート端部の開口部を封止した閉鎖系としてもよく、この場合には、空間部3がエアクッション作用による緩衝機構として機能する。また、空間部3を緩衝体充填空間とした場合には、緩衝体31を空間部3全体に配置してもよいし、部分的に一カ所または複数カ所に不連続で配置してもよい。緩衝体31を不連続に配置する場合、緩衝体31の形状や物性、配置パターンを単独または組み合わせて適宜設定することができる。緩衝体31の形状は円柱形や線状などが選択でき、異なる形状の組み合わせや、同じ形状で大きさのみ異ならせる形態などが適用できる。また、変化させる物性としては、硬度や伸び率、複素弾性率、減衰係数などが選択できる。また、空間部3に充填され得る緩衝体31としては、例えば発泡体、ゴム弾性体、粘弾性体が可能であり、特に粘弾性体を充填する場合、その硬度はアスカーC硬度0~90(SRIS 0101規格)が好ましく、5~60がより好ましい。また、緩衝体31はサステナブル性の観点から、緩衝性を有する生分解性素材であることが好ましく、例えばポリカプロラクトン系共重合単位を有する生分解性熱可塑性ポリウレタンエラストマーや、糖鎖高分子化合物と架橋剤からなる生分解性エラストマーなどを適用することができる。
集束部4は、上述したように複数枚の弾発プレート2を集束させる部位であり、一カ所または複数カ所に設けられる。この集束部4では、隣接する上下の弾発プレート2同士が接触するが、この集束部4において、これら両弾発プレート2を固定接合してもよいし、加重時に弾発プレート2同士が撓み変形しながらズレ動くことができる緩接合状態に接合することも可能である。ただし緩衝構造1を構成する複数枚の弾発プレート2が、容易に分離してバラけないようにするためには、少なくとも一カ所の集束部4において、各弾性プレート2を固定接合することが好ましい。
まず図1における前足部領域の緩衝構造1Fでは、見掛け伸長方向における前後方向の前後両端に、固定接合された状態の集束部4が形成されている。また、後足部領域の緩衝構造1Bでは、見掛け伸長方向における前後方向の前方側端部のみに、固定接合された状態の集束部4が形成されており、後端部側の複数の弾発プレート2の端部は集束していない構成となっている(非集束状態に形成されている)。
また図2の緩衝構造1(後足部領域の緩衝構造1B)では、見掛け伸長方向における前後方向の前方側のみ、換言すればシューズS全体で視たときの足裏中央部の一カ所のみに固定接合された状態の集束部4が形成されており、後端部側の複数の弾発プレート2の端部は集束していない構成となっている。
更に図3における前足部領域の緩衝構造1Fでは、見掛け伸長方向における前後方向の前後両端に、緩接合された状態の集束部4が形成されており、集束部4はシューズS内に埋設されているため、緩接合状態の集束部4における加重時の過度のズレ変形が抑制されている。また、後足部領域の緩衝構造1Bでは、見掛け伸長方向における前後方向の前方側端部のみに固定接合された状態の集束部4が設けられており、後端部側の複数の弾発プレート2の端部は集束していない構成となっており、これは図1と同様である。ただし図1と図3とでは、集束部4の固定・非固定(緩接合状態)、弾発プレート2の厚み・曲率半径(湾曲状態)、空間部3の大きさ(間隔の大きさ)等が異なる。
図4は、前足部領域の緩衝構造1Fの一構成例を示す図であって、図4(b)は加重時の緩衝構造1(シューズS)の状態であり、図4(a)は荷重が除去され、緩衝構造1が復帰した状態(元の状態)を示したものである。この緩衝構造1Fでは、前後方向の両端部に集束部4が設けられており、このうち例えば後方側の集束部4に、各弾発プレート2の端部を係止保持する保持係止部41を設けるものであり(図4(a)の後方側集束部の拡大図参照)、この保持係止部41によって最上層以外の各弾発プレート2の後端部を係止する構成となっている。
そして、このような緩衝構造1Fに対し、緩衝構造1の厚み方向である弾発プレート2の積層方向から荷重が加わった際には、一例として図4(b)の前方側集束部の拡大図に示すように、各弾発プレート2が荷重によって前後方向に伸長するように変形し、この変形に伴い前記自由端部では、各弾発プレート2の先端部が、上側に突き出るようにズレ動き(前方への突き出し)、上側への剪断を伴う突き出し作用を奏するものである。
更にまた、例えば図5(b)に示すように、弾発プレート2の先端側を二股状の分岐部21としながら、且つ幅方向において弾発プレート2を当該分岐部21に向かって上向きに湾曲状に形成した場合には、剪断を伴う突き出し作用は、つま先方向に向かいながら、且つ足の中心(左右方向における中央)上方にも向かって作用するものである。
もちろん弾発プレート2を先割れ状に形成するにあたっては、必ずしも二股状の分岐部21として形成するだけでなく、三股以上の分岐部21として形成することも可能である。また、各弾発プレート2で先割れ状の分岐部21の形状を異ならせてもよく、これによって、より多様な反発性とクッショニング性を設定することができる。
この撓み誘導部は、加重時に、当該部位の変形をその周辺に比べて生じ易くする部位であり、例えば母指球の下面付近(母指球の真下、アウト側、イン側など)に撓み誘導部を具えた場合には、加重時の荷重分布と荷重移動のパターンに応じた好ましい弾発プレート2の変形・復元に伴う反発性能やクッショニング性能を設計することができるため、走行時の好適なプロネーションを実現することができ、走行性の向上や足の疲労を緩和させることができる。また、撓み誘導部は、複数の弾発プレート2や緩衝体31に設けてもよいし、特定の弾発プレート2や緩衝体31に設けてもよい。
より詳細に説明すると、弾発プレート2または緩衝体31に形成した開孔によって構成することが可能であるし、弾発プレート2または緩衝体31に形成したスリットによって構成することも可能である。更には、弾発プレート2または緩衝体31に形成した薄肉部によって構成することが可能である。また空間部3の大きさ、つまり隣接する弾発プレート2の間隔の差(大小差)によって撓み誘導部を構成することも可能であり、例えば空間部3に緩衝体31を組み込まない場合には、空間部3の大きい部位が、撓み易いものである。もちろん、これらの手法を適宜組み合わせて、撓み誘導部を構成しても構わない。
因みに、このような撓み誘導部は、上述したように母指球直下部とその周辺範囲に形成することが可能であるが、他の部位に形成することもできる。
また、先に述べた分岐部21が上記スリットと同様の作用を担う場合、より詳細には例えば二股状の分岐部21の間に形成される空間が上記スリットと実質的に同じ作用を担う場合には、この分岐部21を形成したことにより形成されるスリット(空間)が撓み誘導部として機能することもある。
緩衝構造1は、一例として上記図3に示すように、前後別々に設けられ、前足部領域の緩衝構造1Fと、後足部領域の緩衝構造1Bとを分離・独立して構成するものである。すなわち、前足部領域の緩衝構造1Fと、後足部領域の緩衝構造1Bとを不連続に直列状に設置するものである。このうち前足部領域の緩衝構造1Fについては、複数の弾発プレート2間(空間部3)に緩衝体31を設けない一方、後足部領域の緩衝構造1Bについては、複数の弾発プレート2間(空間部3)に、緩衝体31とりわけ粘弾性体を設けることができる。
一方、ヒールストライク走法では、蹴り出しは前足部領域で行われ、つま先側で最終的に地面(接地面)を蹴り出す。このため蹴り出しをサポートする反発性を優位に発現させる観点から、前足部領域の緩衝構造1F(空間部3)には、緩衝体31を設けないことによって、複数の弾発プレート2の反発力を最大限活かして、蹴り出し時の推進力向上を図るものである。また、曲率(曲率半径)が異なる複数の弾発プレート2に荷重が加わると、各弾発プレート2の異なる撓み変形が連動しながら進行するため、撓み変形による反発エネルギーの蓄積を伴いながら、つま先への重心移動をスムーズに行うことができる。なお、蹴り出しのサポート効果を損なわない範囲において、空間部3に緩衝体31を設けてもよく、この場合には、緩衝体31は反発性が高いものを適用することが好ましい。
この構成例では、各緩衝構造1F・1Bの複数の弾発プレート2は、いずれも見掛け伸長方向における前後方向では、例えば図1(a)に示すように、下方に向かって凸状を成す湾曲状に形成される。また、下層(下側)に設置される弾発プレート2が、上層(上側)に設置される弾発プレート2より長く、且つ大きな曲率を有するように形成され、これは特に後足部領域の緩衝構造1Bにおいて顕著である。このような構成によって、緩衝構造1Bは、踵で着地した際の各弾発プレート2が下に向かって凸状から平坦へと撓み変形するものであり、このため上記の緩衝体31の剪断変形による緩衝作用がより有効に発現され、また前足部領域の緩衝構造1Fでは、上記のつま先方向へのスムーズな重心移動と反発性の蓄積作用がより有効に発現される。また、つま先側の集束部4が緩接合状態な自由端部として形成されている場合には、前述の剪断を伴う突き出し作用によって走行性を向上させることができる。更に見掛け伸長方向における幅方向では、例えば図1(b)に示すように、各弾発プレート2が上方に向かって凸状を成す湾曲状に形成され、且つ下層(下側)に設置される弾発プレート2は、上層(上側)に設置される弾発プレート2より長く、なお且つ大きな曲率を有するように形成される。このような構成によって、緩衝構造1Bは、踵で着地した際に各弾発プレート2が上に向かって凸状から平坦へと撓み変形するものであり、このため上記の緩衝体31の剪断変形による緩衝作用を幅方向にも有効に発現させることができる。また前足部領域の緩衝構造1Fでは、上記のつま先方向へのスムーズな重心移動と反発性の蓄積作用とともに、幅方向への足裏の変形挙動に則して違和感なく追従できるため、より自然な走行性を実現することができる。
因みに、図1に示した緩衝構造1は、複数の弾発プレート2が比較的、密に設けられ、空間部3の寸法(隣接する弾発プレート2の間隔)が狭くなるように形成されている。また、各弾発プレート2の厚み寸法及び各空間部3の寸法もほぼ均一に形成されている。また、緩衝構造1Fには蹴り出し効果を著しく損なわない条件において、空間部3の所望位置に緩衝体31を配置してもよい。
この構成例では、各緩衝構造1F・1Bの各弾発プレート2は、いずれも見掛け伸長方向における前後方向では、例えば図3(a)に示すように、下方に向かって凸状を成す湾曲状に形成され、これは特に前足部領域の緩衝構造1Fにおいて顕著である。
また前足部領域の緩衝構造1Fにおいては、下層に設置される弾発プレート2は、上層に設置される弾発プレート2より長く、且つ大きな曲率を有するように形成される。
一方、後足部領域の緩衝構造1Bにおいては、最上層の弾発プレート2と、最下層の弾発プレート2とが、これらの間に設けられる弾発プレート2より長く、なお且つ大きな曲率を有するように形成される。
更に見掛け伸長方向における幅方向では、例えば図3(b)に示すように、各弾発プレート2が上方に向かって凸状を成す湾曲状に形成され、且つ下層に設置される弾発プレート2は、上層に設置される弾発プレート2より長く、なお且つ大きな曲率を有するように形成される。このような構成によって得られる作用効果は、前述の図1の緩衝構造1の配置構成の場合と同様である。
因みに、図3に示した緩衝構造1は、後足部領域の緩衝構造1Bでは、一部の弾発プレート2の厚み寸法が異なっているものである。より詳細には、最上層及び最下層の弾発プレート2の厚み寸法が、これらの間に設けられる弾発プレート2の厚み寸法よりも大きくなるように形成されている。また、緩衝構造1Fには蹴り出し効果を著しく損なわない条件において、空間部3の所望位置に緩衝体31を配置してもよい。
なお、説明にあたっては、日本人にとって一般的なヒールストライク走法を行った場合を想定して説明する。ヒールストライク走法は、上述したように、着地時、後足部領域から着地する走法であり、そのとき前足部領域は、まだ未着地状態(いわゆる宙に位置した状態)である。また蹴り出し時は、前足部領域が接地しており、この前足部領域で地面を蹴るように蹴り出しが行われ、その際、後足部領域は、既に地面から離反した状態となっている。また着地時から蹴り出しへの移行に伴い、シューズSに加わる使用者の重心位置も後足部領域→足中央部→前足部領域へと移動して行き、後足部領域から前足部領域への体重移動が行われる。
この際、例えば図4に示すように、複数の弾発プレート2の先端側を自由状態の集束部4として形成し、且つ当該部位を、上方にせり上がるように湾曲形成した場合には、各弾発プレート2の積層方向に荷重が加わった際、この自由前端部において、各弾発プレート2の端部位置が、上側に突き出すようにズレ動き、剪断を伴う突き出し作用を奏する。また、蹴り出しが進むにつれて、緩衝構造1に加えられていた荷重は徐々に除去され、元の状態に復帰する。そのため、このような剪断方向のズレ動きによって、つま先付近での重心移動がスムーズとなり、つま先への重心移動時に集束部4が緩接合状態から疑似固定状態になる。このため各弾発プレート2の撓み変形によって蓄積された反発エネルギーが足裏側から反発力としてつま先側に押し出すように作用する。そして蹴り出し後に集束部4への荷重が開放されることによって、各弾発プレート2の先端部のズレが復帰する。従ってシューズSを履いた使用者(着用者)は、あたかも足が前へ前へと出て行くような軽快な足運びを感じることができ、ランニングタイムの短縮化のみならず、ランニングに伴う疲労をも軽減することができ、走行性を向上させ得るものである。
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
本発明に係る緩衝構造1は、シューズS(ソールS1)に対し、種々の配設態様で組み込むことが可能であり、以下、種々の配設態様を図6に基づき説明する。
ここで本発明のシューズSは、上述したように緩衝構造1として前足部領域の緩衝構造1Fと、後足部領域の緩衝構造1Bとを不連続に直列状に設置して成るものである。従って、図6のうちシューズSとしては、図6(e)に示す構成例のみが本発明の実施例(シューズSの実施例)となり、他のシューズSの構成例は、本発明に関連する参考例となる。ただし上記図2の説明で述べたように、図6の(a)~(d)の構成例であっても緩衝構造1を構成する部材そのものの構造やこれらの組み合わせ方などは、本発明の実施例として適用することができる。
まず図6(a)の構成例は、緩衝構造1として踵部(後足部領域)のみに緩衝構造1Bを配設した構成例である。
また図6(b)の構成例は、緩衝構造1として前足部領域のみに緩衝構造1Fを配設した構成例である。
また図6(c)の構成例は、緩衝構造1として踵部(後足部領域)のみに緩衝構造1Bを配置しながら、つま先側に単枚の弾発プレート2を延長配置した構成例である。なお前記図2は、この配設態様の一例である。
また図6(d)の構成例は、緩衝構造1として前足部領域のみに緩衝構造1Fを配置しながら、踵側に単枚の弾発プレート2を延長配置した構成例である。
また図6(e)の構成例は、緩衝構造1として前足部領域の緩衝構造1Fと、踵部(後足部領域)の緩衝構造1Bとを分離・独立して不連続に配置した構成例であり、前記図1・図3は、この配設態様の一例である。
因みに、図6(b)・図6(d)は、後足部領域に緩衝構造1Bを設けないため、例えばソールS1によって着地時の衝撃を吸収するものである。
まず図7(a)は、複数の弾発プレート2を比較的、密になるように設けた構成例、つまり各空間部3の寸法を比較的、狭く設定した構成例である。この構成例では、各弾発プレート2の厚み寸法及び各空間部3の寸法もほぼ均一に形成しており、前記図1の構成例である。
また図7(b)は、複数の弾発プレート2の間隔(各空間部3の寸法)を非均一とした構成例であり、前記図2はこの構成の一例である。
また図7(c)は、複数の弾発プレート2の長さが異なる構成例であって、上方に配設する弾発プレート2ほど前後長が徐々に長寸となるように積層して行った緩衝構造1の構成例である。
まず図8(a-1)は、複数枚の弾発プレート2が全体的に上方に向かって凸状を成す湾曲状に形成された構成例である。この構成例では、各弾発プレート2の厚み寸法及び各空間部3の寸法がほぼ均一に形成されており、各弾発プレート2が比較的、密になるように設けられており、前記図1はこの構成の一例である。
また図8(a-2)は、上記図8(a-1)に対して逆の構成例、つまり複数枚の弾発プレート2が全体的に下方に向かって凸状を成す湾曲状に形成された構成例である。なお、ここでも各弾発プレート2は、比較的、密になるように設けられているが、各弾発プレート2は必ずしも密に配設される必要はないし、ほぼ均等に設けられる必要もない。
また図8(b)は、最下層の弾発プレート2が、シンプルな湾曲形状ではなく(一定の曲率半径ではなく)、プレート中央部が上方に突出した波形(ウエーブ状)に形成された構成例である。これは、換言すれば複数枚の弾発プレート2の間隔(各空間部3の寸法)が非均一となる構成例でもあり、前記図2はこの構成の一例である。
また図8(c-2)は、上記図8(c-1)に対して逆の構成例、つまり複数枚の弾発プレート2のうち下層に設置させる弾発プレート2(ここでは下側の三枚)が上方に向かって凸状を成す湾曲状に形成される一方、上層に設置させる弾発プレート2(ここでは上側の三枚)が下方に向かって凸状を成す湾曲状に形成された構成例である。この構成例でも、複数枚の弾発プレート2の間隔(各空間部3の寸法)は非均一となる。なお、この構成例では、上下方向中央に設けられた弾発プレート2をほぼ水平とし、これを対称線として上下の弾発プレート2が線対称を成すように形成したが、必ずしも上下対称に形成する必要はない(図8(c-1)参照)。
まず図9(a)は、上層に配設する弾発プレート2ほど、前後長寸法が徐々に長寸となるようにした緩衝構造1の構成例であり、上記図7(c)に示した構成はこの一例である。また図9(b)は、その反対に、上層に配設する弾発プレート2ほど、前後長寸法が徐々に短寸となるようにした緩衝構造1の構成例である。もちろん、積層状態に配設する各弾発プレート2の前後長寸法を異ならせるにあたっては、必ずしも積層方向(上下方向)において徐々に長さを異ならせる必要はなく、例えば上下方向中央部に配設する弾発プレート2の前後長寸法を長くするとともに、最上層及び最下層に配設する弾発プレート2の前後長寸法を短く形成することも可能である。
具体的には、竹材は主に「節」と「稈」から構成されるが、従来よりこの「節」によって、竹材の曲げ撓み性が変化することが知られており、節部の位置や数によって弾発プレート2の撓み特性や反発特性を調整することができる。このように弾発プレート2に節部を積極的に利用することによって、撓み特性や反発特性を異ならせた複数の弾発プレート2の積層構造と、見掛け伸長方向の前後方向及び幅方向において、互いに少なくとも一部の湾曲形状または曲率半径を異ならせる構造とが協働し、その結果、より多彩な反発性やクッショニング性を実現できる。具体例としては、弾発プレート2の伸長方向の両端に硬い節部を設けることで弾発プレート2の中央部分をしなり易くする構成や、上下の弾発プレート2で節部のある位置を重ならないように配置する構成、上下の弾発プレート2ごとに節部の数を異ならせる構成などが挙げられる。ここで、竹材からなる弾発プレート2において、節部は稈の繊維方向に沿って平坦に加工された形態としてもよいし、節部分が弾発プレート2の表面に突出した形態としてもよく、弾発プレート2の表面に突出した形態で適用する場合には、上側と下側の弾発プレート2で節部の突出方向をそれぞれ異ならせる構成としてもよい。更に、竹材の「稈」を構成する維管束鞘の組織が弾発プレート2の撓み特性や反発特性に大きく寄与するところ、竹材の維管束鞘の分布が表皮側で密、内空側で疎となっていることに着目して、各弾発プレート2中の維管束鞘の疎密分布を異ならせる構成とするなど、積層された弾発プレート2ごとに節部と稈部の構成や配置を異ならせた構造とすることによって、より一層の多彩な反発性やクッショニング性を実現することができる。
1F 緩衝構造(前足部領域の緩衝構造)
1B 緩衝構造(後足部領域の緩衝構造)
2 弾発プレート
3 空間部
4 集束部
21 分岐部
31 緩衝体
41 保持係止部
S シューズ
S1 ソール
S2 アッパー
Claims (9)
- 積層配置された複数枚の湾曲断面を有する弾発プレートと、これら各弾発プレートの間に空間部とを具えて成るシューズ用緩衝構造が、ソールに組み込まれたシューズであって、
前記弾発プレートは、弾発プレート面に作用する荷重により生ずる弾発プレートの撓み変形方向の見掛け伸長方向において、一カ所または複数カ所において集束する集束部を形成しており、
且つ前記シューズ用緩衝構造は、ソールの前足部領域と後足部領域とにおいて不連続に直列状に設置されるものであり、
このうち前足部領域のシューズ用緩衝構造については、複数の弾発プレート間の空間部に緩衝体を設けず、
一方、後足部領域のシューズ用緩衝構造については、複数の弾発プレート間の空間部に、緩衝体を設けることを特徴とするシューズ。
- 積層配置された複数枚の湾曲断面を有する弾発プレートと、これら各弾発プレートの間に空間部とを具えて成るシューズ用緩衝構造が、ソールに組み込まれたシューズであって、
前記弾発プレートは、弾発プレート面に作用する荷重により生ずる弾発プレートの撓み変形方向の見掛け伸長方向において、一カ所または複数カ所において集束する集束部を形成しており、
且つ前記シューズ用緩衝構造は、ソールの前足部領域と後足部領域とにおいて不連続に直列状に設置されて成り、
見掛け伸長方向における前後方向では、弾発プレートが下方に向かって凸状となる湾曲状に形成され、また下層に設置される弾発プレートは、上層に設置される弾発プレートより長く、なお且つ曲率を増加させるように形成され、
更に見掛け伸長方向における幅方向では、弾発プレートが上方に向かって凸状となる湾曲状に形成され、且つ下層に設置される弾発プレートは、上層に設置される弾発プレートより長く、なお且つ曲率を増加させるように形成されることを特徴とするシューズ。
- 積層配置された複数枚の湾曲断面を有する弾発プレートと、これら各弾発プレートの間に空間部とを具えて成るシューズ用緩衝構造が、ソールに組み込まれたシューズであって、
前記弾発プレートは、弾発プレート面に作用する荷重により生ずる弾発プレートの撓み変形方向の見掛け伸長方向において、一カ所または複数カ所において集束する集束部を形成しており、
且つ前記シューズ用緩衝構造は、ソールの前足部領域と後足部領域とにおいて不連続に直列状に設置されて成り、
見掛け伸長方向における前後方向では、弾発プレートが下方に向かって凸状となる湾曲状に形成され、
また前足部領域においては、下層に設置される弾発プレートは、上層に設置される弾発プレートより長く、なお且つ曲率を増加させるように形成され、
一方、後足部領域においては、最上層の弾発プレートと最下層の弾発プレートとが、これらの間に設けられる弾発プレートより長く、なお且つ曲率を増加させるように形成され、
更に見掛け伸長方向における幅方向では、弾発プレートが上方に向かって凸状となる湾曲状に形成され、且つ下層に設置される弾発プレートは、上層に設置される弾発プレートより長く、なお且つ曲率を増加させるように形成されることを特徴とするシューズ。
- 前記複数枚の弾発プレートのうち少なくとも一枚は、前記見掛け伸長方向の少なくとも一部において湾曲形状が異なる、または曲率半径が異なることを特徴とする請求項1記載のシューズ。
- 前記複数枚の弾発プレートのうち少なくとも二枚は、前記見掛け伸長方向の前後方向及び幅方向において、互いに少なくとも一部は湾曲形状が異なる、または曲率半径が異なることを特徴とする請求項4記載のシューズ。
- 前記集束部は、見掛け伸長方向における前後方向の少なくとも一方の端部に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のシューズ。
- 前記各弾発プレートの間の空間部には、少なくとも一部に緩衝体が配設されていることを特徴とする請求項2または3記載のシューズ。
- 前記弾発プレートは、炭素繊維強化プラスチック素材または木質系の天然生物系素材のいずれかで構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のシューズ。
- 前記木質系の天然生物系素材としては、竹材が適用されることを特徴とする請求項8記載のシューズ。
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