以下において、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(実施形態)
<運転支援装置>
本発明の実施形態に係る運転支援装置は、図1に示すように、例えば車両101に搭載される。本発明の実施形態では一例として、運転支援装置を搭載した車両101がタクシー会社等の事業者による配車システム(配車サービス)の配車車両として利用される場合を例示する。車両101は、配車管理サーバ102及び利用者端末103と、インターネット等の通信網104を介してデータや信号を送受信可能である。
利用者端末103は、例えばスマートフォン等のパーソナルコンピュータ(PC)で構成することができる。利用者100は、配車を依頼する旨、乗車を希望する出発地(乗車地点)、降車を希望する目的地(降車地点)等の依頼情報を利用者端末103に入力する。利用者端末103に入力された依頼情報は、配車管理サーバ102に送信される。
配車管理サーバ102は、車両101を含む複数の配車車両を管理する。配車管理サーバ102は、乗員の氏名、運転資格の有無等の識別情報を登録したデータベースを有していてもよい。配車管理サーバ102は、利用者端末103からの依頼情報を受信し、受信した依頼情報に基づき、複数の配車車両のうちから例えば車両101を選択する。配車管理サーバ102は、利用者100の識別情報、乗車地点、降車地点を含む乗員情報を車両101に送信する。配車管理サーバ102は、受信した依頼情報に基づき、車両101の走行経路を生成し、走行経路情報を車両101に送信してもよい。
本発明の実施形態に係る車両101に搭載された運転支援装置は、図2に示すように、コントローラ1、測位装置2、通信装置3、周囲センサ4、車両センサ5、乗員センサ6、操縦部7a,7b、ユーザインターフェース8、アクチュエータ9及び記憶装置21を備える。コントローラ1と、測位装置2、通信装置3、乗員センサ6、操縦部7a,7b、ユーザインターフェース8、アクチュエータ9及び記憶装置21とは、コントローラエリアネットワーク(CAN)バス等の有線又は無線でデータや信号を送受信可能である。
測位装置2は、地球測位システム(GPS)受信機等の全地球型測位システム(GNSS)受信機で構成することができる。測位装置2は、複数の航法衛星から電波を受信し、車両101の現在位置を取得する。測位装置2は、取得した車両101の現在位置をコントローラ1に出力する。
通信装置3は、配車管理サーバ102又は利用者端末103とデータや信号を送受信する。通信装置3は、他車両との車車間通信や、路側機との路車間通信等を行い、車両101の周囲状況等のデータを取得してもよい。
周囲センサ4は、車両101の周囲環境(周囲状況)を検出するセンサである。周囲センサ4は、例えば、車両101の周囲に存在する物体(障害物)と車両101との相対位置、距離、相対速度等を周囲状況のデータとして検出し、検出された周囲状況のデータをコントローラ1に出力する。物体には、例えば他車両、自転車、歩行者、白線、縁石、電柱、壁、ガードレール、建物等が含まれる。
周囲センサ4は、例えばカメラ、レーダ、通信機等で構成することができる。カメラとしては、CCDカメラ等が使用可能であり、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。レーダとしては、例えばミリ波レーダやレーザレーダ、レーザレンジファインダ(LRF)等が使用可能である。なお、周囲センサ4の種類や個数は特に限定されない。
車両センサ5は、車両101の走行状態を検出するセンサである。車両センサ5は、車速センサ、加速度センサ及び角速度センサ等で構成することができる。車速センサは、車両101の車輪速から車速を検出し、検出された車両101の速度(車速)をコントローラ1に出力する。加速度センサは、車両101の前後方向及び車幅方向の加速度を検出し、検出された加速度をコントローラ1に出力する。角速度センサは、車両101の角速度を検出し、検出された角速度をコントローラ1に出力する。車両センサ5は、操縦部7a,7bの操作量を検出し、検出された操作量をコントローラ1に出力してもよい。なお、車両センサ5の種類及び個数は特に限定されない。
乗員センサ6は、車両101の乗員の状態を検出するセンサである。例えば、乗員センサ6は、乗員の覚醒度合い、活動状態、飲酒(酒気帯び)の有無等を検出する。例えば、乗員センサ6をカメラで構成し、カメラにより撮像された撮像画像に基づき、乗員の状態を検出してもよい。或いは、乗員センサ6を生体情報センサで構成し、生体情報センサにより測定された脳波、脳血流、心拍数、呼吸数又は発汗量等の生体情報に基づき、乗員の状態を検出してもよい。乗員センサ6の個数及び配置位置は特に限定されない。
操縦部7a,7bは、乗員による車両101の操作を受け付ける。例えば、操縦部7aは右前方席に着座した乗員が操縦可能な位置に配置され、操縦部7bは左前方席に着座した乗員が操縦可能な位置に配置される。操縦部7a,7bは、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル等で構成してもよく、スマートフォン等で構成してもよい。操縦部7a,7bは、互いに異なる構成であってもよい。なお、図2では2つの操縦部7a,7bを例示するが、1つの操縦部のみを有していてもよく、3つ以上の操縦部を有していてもよい。
ユーザインターフェース8は、ディスプレイ81、スピーカ82、操作部83及びマイク84を含む。ディスプレイ81としては、例えばナビゲーションシステムの液晶ディスプレイ(LCD)、インストルメントパネルの表示部、ヘッドアップディスプレイ(HUD)等であってよい。操作部83は、ボタン、スイッチ、タッチパネル等で構成することができる。ユーザインターフェース8は、車両101の各座席に着座した乗員がそれぞれ利用可能なように、座席毎に配置されていてもよい。或いは、ユーザインターフェース8は、複数の乗員で共有して利用するように配置されていてもよい。ユーザインターフェース8は、例えばスマートフォン等で構成してもよく、必ずしも車両101に固定されていなくてよい。
アクチュエータ9は、コントローラ1からの制御指令に応じて車両101の走行を制御する。アクチュエータ9は、アクセルアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ又はステアリングアクチュエータにより構成することができる。アクセルアクチュエータは、例えばスロットルバルブからなり、車両101のアクセル開度を制御する。ブレーキアクチュエータは、例えば油圧回路からなり、車両101のブレーキの制動動作を制御する。ステアリングアクチュエータは、例えばステアリングシャフトにトルクを伝達可能なモータからなり、ステアリングシャフトの操舵量を制御する。アクチュエータ9の個数及び種類は限定されず、適宜使用可能である。
記憶装置21は、半導体メモリやディスクメディア等からなり、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM及びRAM等の記憶媒体を含んでいてもよい。記憶装置21は、コントローラ1に内蔵されていてもよい。記憶装置21は、本発明の実施形態に係る運転支援装置による一連の処理を実行するためのプログラムを予め記憶していてよい。記憶装置21は、地図情報記憶部22及び乗員情報記憶部23を備える。地図情報記憶部22は、自動運転で利用可能な高精度地図やナビゲーション地図等の地図データを記憶する。乗員情報記憶部23は、コントローラ1により取得された車両101の乗員に関する情報(乗員情報)を記憶する。
コントローラ1は、本発明の実施形態に係る運転支援装置が行う動作に必要な処理を行う電子制御ユニット(ECU)等の処理回路であり、例えば、プロセッサ、記憶装置及び入出力インターフェースを備えてもよい。プロセッサには、算術論理演算装置(ALU)、制御回路(制御装置)、各種レジスタ等を含む中央演算処理装置(CPU)等に等価なマイクロプロセッサ等を対応させることができる。
コントローラ1は、乗員情報取得部11、自車位置取得部12、経路設定部13、委譲判定部14、委譲先決定部15、提示制御部16、委譲実行部17及び運転制御部18等の論理ブロックを機能的若しくは物理的なハードウェア資源として備える。これらの論理ブロックを、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)等で物理的に構成してもよく、汎用の半導体集積回路中にソフトウェアによる処理で等価的に設定される機能的な論理回路等でも構わない。また、これらの論理ブロックは、単一のハードウェアで構成されてもよく、或いは複数のハードウェアで個別に構成されてもよい。例えば、コントローラ1は、車載インフォテイメント(IVI)システム等のカーナビゲーションシステムと、先進運転支援システム(ADAS)等の運転支援システムとで構成できる。また、これらの論理ブロックの少なくとも一部を配車管理サーバ102又は利用者端末103が有していてもよい。
乗員情報取得部11は、配車管理サーバ102又は利用者端末103から、車両101の乗員に関する情報(乗員情報)を取得する。乗員情報は、乗車地点、降車地点、運転資格(運転免許証)の有無、座席位置、車両101の操作権限を含む。乗員情報取得部11により取得した乗員情報は乗員情報記憶部23に記憶される。乗員情報記憶部23には、乗員情報として、例えば図3に示すように、乗員A,B,C,D,E毎に、乗車地点(乗車ポイント)までの距離、降車地点(降車ポイント)までの距離、運転資格(運転免許証)の有無、座席位置、委譲(付与)されている車両101の操作権限A,Bの有無が記憶されている。
ここで、車両101の操作権限は、車両101に関する操作を行う権限である。車両101の操作権限は、例えば、車両101の手動運転を行う権限、車両101の自動運転時の監視権限(監視義務)、ドアロックを施錠又は解錠する権限、目的地を変更する権限、走行経路を変更する権限、走行速度を変更する権限、自動運転と手動運転とを切り替える権限、自動運転レベルを変更する権限を含む。
操作権限の種類に応じて、操作権限を委譲可能な座席位置が変化する。例えば、車両101の手動運転を行う権限は、操縦部7a,7bを操作可能な座席の乗員にのみ委譲可能であってよい。また、車両101の自動運転時の監視権限は、前席の乗員にのみ委譲可能であってよい。
また、操作権限の種類に応じて、操作権限を同時に委譲可能な人数が変化する。例えば、車両101の手動運転を行う権限は単独の乗員に委譲可能であってよい。また、ドアロックを施錠又は解錠する権限は複数の乗員に同時に委譲可能であってよい。
また、操作権限の種類に応じて、操作権限を委譲可能な乗員の属性が変化する。乗員の属性は、例えば運転資格の有無、飲酒の有無、年齢を含む。例えば、車両101の手動運転を行う権限は、運転資格を有し、且つ飲酒していない乗員にのみ委譲可能であってよい。また、ドアロックを施錠又は解錠する権限は、大人にのみ委譲可能であってもよい。
また、操作権限の種類に応じて、乗員に権限委譲が行われていることが必ず必要か否かが変化する。例えば、車両101の手動運転時の運転操作を行う権限や、車両101の自動運転時の監視権限は、乗員に権限委譲が行われていることが必ず必要であってよい。また、目的地を変更する権限、走行経路を変更する権限、走行速度を変更する権限、自動運転と手動運転とを切り替える権限、自動運転レベルを変更する権限は、乗員に権限委譲が行われていることが必ずしも必要でなくてもよい。
乗員の座席位置の情報は、利用者端末103から取得してもよい。或いは、乗員の座席位置の情報は、乗員センサ6が検出することにより取得してもよい。なお、配車管理サーバ102又はコントローラ1が乗員の運転資格の有無等に基づき、乗員の座席位置を設定してもよい。この場合、配車管理サーバ102又はコントローラ1は、運転資格の無い乗員の座席位置を後席に設定してもよい。或いは、配車管理サーバ102又はコントローラ1は、前席が空かないように座席位置を優先的に前席に設定してもよい。
自車位置取得部12は、測位装置2により取得した車両101の現在位置を、記憶装置21に記憶された地図データと照合して、地図データ上の車両101の現在位置を取得する。
経路設定部13は、自車位置取得部12により取得された地図データ上の車両101の現在位置と、乗員情報記憶部23に記憶された乗員情報の乗車地点及び降車地点等に基づき、車両101の走行経路を設定する。なお、配車管理サーバ102が車両101の走行経路を設定し、設定した走行経路を車両101に送信してもよい。この場合、車両101は、配車管理サーバ102から受信した走行経路に沿って走行してもよい。
委譲判定部14は、自車位置取得部12により取得された地図データ上の車両101の現在位置と、乗員情報記憶部23に記憶された乗員情報に基づき、車両101の権限委譲が所定時間又は所定距離内の将来的に必要となるか否かを判定する。例えば、委譲判定部14は、自車位置取得部12により取得された地図データ上の車両101の現在位置と、乗員情報記憶部23に記憶された乗員情報の降車地点に基づき、車両101の現在位置から所定距離内、或いは現在時刻から所定時間内に、権限保有者が降車予定であるか否かを判定する。そして、委譲判定部14は、権限保有者が降車する予定である場合に、権限委譲が必要となると判定する。一方、委譲判定部14は、権限保有者が降車する予定でない場合には、権限委譲が必要とならないと判定する。
委譲先決定部15は、車両101の操作権限の委譲先を乗員のいずれかに決定する。委譲先決定部15は、委譲判定部14により権限委譲が必要となると判定された場合、権限委譲が必要となる前に、権限委譲が必要となる時点での乗車が予定されている乗員のうちいずれかを権限委譲先として決定する。例えば、委譲先決定部15は、権限委譲が必要となる時点での乗車が予定されている乗員を推定する。そして、委譲先決定部15は、推定された乗員のうち、運転資格を有し、且つ飲酒していない乗員を権限委譲先の候補として選択する。
権限委譲が必要となる時点での乗車が予定されている乗員のうち、運転資格を有し、且つ飲酒していない乗員が複数存在する場合、例えば、委譲先決定部15は、運転スキルが相対的に高い乗員を権限委譲先の候補として優先的に選択してもよい。運転スキルは、乗員情報記憶部23に予め登録していてもよい。また、委譲先決定部15は、権限委譲の頻度を低減するように、今後の乗車時間が相対的に長い乗員を権限委譲先の候補として優先的に選択してもよい。或いは、委譲先決定部15は、座席位置移動の頻度を低減するように、操作権限を実行可能な座席位置の乗員を、権限委譲先の候補として優先的に選択してもよい。
更に、委譲先決定部15は、乗員センサ6により検出された、権限委譲先の候補として選択した乗員の状態等に基づき、権限委譲方法を決定する。権限委譲方法には、例えば、権限委譲が必要となる前に権限委譲を行う方法と、権限委譲が必要となった時点で権限委譲を行う方法との、権限委譲のタイミングが異なる方法が含まれる。例えば、委譲先決定部15は、権限委譲先の候補として選択した乗員の覚醒度合いが所定の閾値より低い場合には、権限委譲先となる乗員の準備期間を確保するように、権限委譲が必要となる前には権限委譲を行わず、権限委譲が必要となった時点で権限委譲を行う方法を採用してもよい。また、権限委譲先の候補として選択した乗員が、仕事、読書、映画鑑賞、飲食等の活動中の場合には、乗員の活動時間を確保するように、権限委譲が必要となった時点で権限委譲を行う方法を採用してもよい。なお、委譲先決定部15は、権限委譲先の候補として選択した乗員の状態に基づく代わりに、権限委譲先となる乗員が決定した後に、権限委譲先となる乗員の状態等に基づき、権限委譲方法を決定してもよい。
提示制御部16は、権限委譲先の候補として選択された乗員に対して、権限委譲が行われることを依頼する旨と、承認するか否かの問い合わせをディスプレイ81やスピーカ82を介して提示する。例えば図4に示すように、権限委譲先の候補として選択された乗員から視認可能なディスプレイ81に、権限委譲を依頼する旨の文字情報を表示すると共に、ディスプレイ81を構成するタッチパネルに依頼を承認するか否かを操作するための操作部83を表示する。更に、提示制御部16は、権限委譲先の候補として選択された乗員が座席の変更も必要な場合には、座席の変更を依頼する情報も提示してもよい。権限委譲を依頼された乗員は、権限委譲を承認又は否認する旨を操作部83を介して入力する。委譲先決定部15は、乗員により権限委譲を承認する情報が入力された場合、権限委譲を承認した乗員を権限委譲先として決定する。
委譲実行部17は、委譲先決定部15により権限委譲先として決定した乗員に対して、権限委譲が必要となる前、又は権限委譲が必要となった時点で、操作権限を委譲する。例えば、委譲実行部17は、委譲先決定部15により決定された所定のタイミング等の権限委譲方法に基づき、権限保有者の操作権限を解除すると共に、委譲先決定部15により権限委譲先として決定した乗員に操作権限を委譲することにより、操作権限を引き継がせる。
運転制御部18は、周囲センサ4により検出された周囲環境のデータや、記憶装置21に記憶された地図データ等に基づき、アクチュエータ9を制御するための制御指令を出力することにより、車両101の走行制御を行う。運転制御部18は、運転制御部18が制駆動制御、操舵制御の全てを実行する自動運転を行ってもよい。運転制御部18が制駆動制御、操舵制御の少なくとも一部を実行する自動運転(運転支援)を行ってもよく、その場合には乗員が運転操作の一部を実行してもよい。運転制御部18は、先行車追従制御、車間距離制御、車線逸脱防止制御等を実行してもよい。運転制御部18は、経路設定部13により設定された走行経路に沿って車両101の走行制御を行ってもよい。また、乗員による手動運転時には、提示制御部16が、経路設定部13により設定された走行経路を、ディスプレイ81やスピーカ82を介して案内してもよい。
ここで、図5のタイミングチャートを参照して、比較例に係る運転支援方法を説明する。時刻t0において、乗員A,B,C,Dが乗車中であり、乗員Aが権限保有者である。図6Aに示すように、車両101において、乗員Aが右前方席、乗員Bが左前方席、乗員Cが右後方席、乗員Dが左後方席に着座している。なお、図6Aに示した車両101の座席配置は一例であり、座席数及び座席の配置位置は特に限定されない。時刻t1において、図6Bに示すように、権限保有者である乗員Aが降車するため、乗員B,C,Dのいずれかに権限委譲が必要となる。しかしながら、時刻t1において乗員Aが降車するときに、乗員B,C,Dのいずれかの乗員(例えば乗員B)を権限委譲先として決定しても、権限委譲先の乗員が委譲される権限の対応に手間取る可能性が有る。更には、時刻t1において操作権限先が乗員Bに決まった場合に、乗員Bが直ぐに操作権限に適応し難い状況である可能性がある。
これに対して、図7のタイミングチャートを参照して、本発明の実施形態に係る運転支援方法の一例を説明する。比較例と同様に、時刻t0において、乗員A,B,C,Dが乗車中であり、乗員Aが権限保有者である。比較例と同様に、図6Aに示すように、車両101において、乗員Aが右前方席、乗員Bが左前方席、乗員Cが右後方席、乗員Dが左後方席に着座している。時刻t1において、図6Bに示すように、権限保有者である乗員Aが降車予定である。
本発明の実施形態では、委譲判定部14は、時刻t1で権限保有者である乗員Aが降車予定のため、将来に権限委譲が必要となると判定する。委譲先決定部15は、時刻t2で乗員Bを権限委譲先の候補として選定すると共に乗員Bに権限委譲の依頼を提示して、乗員Bと権限委譲の合意を取り、乗員Bを権限委譲先として決定する。時刻t2~t1が、乗員Bに権限委譲が行われる予約期間となり、乗員Bは心身共に準備をすることができる。時刻t1において、権限保有者である乗員Aが降車するときに、委譲実行部17は、乗員Aの操作権限を解除すると共に、乗員Bに操作権限を委譲(付与)する。
また、図8のタイミングチャートを参照して、本発明の実施形態に係る運転支援方法の他の一例を説明する。時刻t0において、乗員A,B,C,Dが乗車中であり、乗員Aが権限保有者である。委譲判定部14は、時刻t1で権限保有者である乗員Aが降車予定のため、将来において権限委譲が必要となると判定する。委譲先決定部15は、乗員Bを権限委譲先の候補として選定すると共に乗員Bに権限委譲の依頼を提示して、乗員Bと権限委譲の合意を取り、乗員Bを権限委譲先として決定する。その後、権限保有者である乗員Aが降車予定の時刻t1よりも前の時刻t2において、委譲実行部17は、乗員Aの操作権限を解除すると共に、乗員Bに操作権限を委譲する。時刻t2~t1において、乗員Aは乗車中であるが、操作権限が無いため、降車の準備をすることができる。
また、図9のタイミングチャートを参照して、本発明の実施形態に係る運転支援方法の更に他の一例を説明する。ここでは、操作権限が複数の乗員で共有可能な場合を説明する。時刻t0において、乗員A,B,C,Dが乗車中であり、乗員Aが権限保有者である。委譲判定部14は、時刻t1で権限保有者である乗員Aが降車予定のため、将来において権限委譲が必要となると判定する。委譲先決定部15は、乗員Bを権限委譲先の候補として選定すると共に乗員Bに権限委譲の依頼を提示して、乗員Bと権限委譲の合意を取り、乗員Bを権限委譲先として決定する。その後、権限保有者である乗員Aが降車予定の時刻t1よりも前の時刻t2において、委譲実行部17は、乗員Aの操作権限を解除せずに、乗員Bにも操作権限を委譲する。時刻t2~t1において、乗員A,Bが操作権限を共有している。時刻t1において、権限保有者である乗員Aが降車するときに、委譲実行部17は、乗員Aの操作権限を解除する。
<運転支援方法>
次に、図10のフローチャートを参照して、本発明の実施形態に係る運転支援方法の一例を説明する。ステップS11において、委譲判定部14が、車両の現在位置から次の停車地点(すなわち現在位置に最も近い、乗員の乗降が発生する地点)までの距離が所定の閾値未満であるか否かを判定する。車両の現在位置から停車地点までの距離が所定の閾値以上と判定された場合、処理を完了する。一方、車両の現在位置から停車地点までの距離が所定の閾値未満であると判定された場合、ステップS12に移行する。
ステップS12において、委譲判定部14が、次の停車地点で乗車又は降車予定の乗員の運転資格の有無を含む乗員情報を取得する。ステップS13において、委譲判定部14が、車両101の操作権限と、権限保有者との対応関係を示す情報を取得する。ステップS14において、委譲判定部14が、次の停車地点で権限保有者が降車するか否かを判定することにより、権限委譲が必要となるか否かを判定する。次の停車地点で権限保有者が降車せず、権限委譲が必要とならないと判定された場合、処理を完了する。一方、次の停車地点で権限保有者が降車予定であり、権限委譲が必要となると判定された場合、ステップS15に移行する。
ステップS15において、委譲先決定部15が、権限委譲が必要となる時点で乗車中と予定される乗員を推定し、推定された乗員のうちから、権限委譲先の候補である乗員を選択する。ステップS16において、委譲先決定部15が、選択された乗員の状態を推定し、推定された状態に基づき、権限委譲方法を決定する。権限委譲方法は、例えば、図7に示したように権限委譲が必要となる時点で権限委譲を行う方法、図8に示したように権限委譲が必要となる前に権限委譲を行う方法、図9に示したように複数の乗員に操作権限を共有させる方法、操作権限を段階的に委譲する方法(詳細は後述)、権限委譲が必要となる前に操作権限のトレーニングを行う方法(詳細は後述)を含む。なお、ステップS16の権限委譲方法の選択処理は、ステップS18で権限委譲先を決定してから行ってもよい。
ステップS17において、提示制御部16が、権限委譲先の候補として選択された乗員に対して、権限委譲を依頼する(権限委譲先となる事を依頼する)旨を含む委譲依頼情報を提示する。提示制御部16は、ステップS16で決定された権限委譲方法も委譲依頼情報に含めて提示してもよい。或いは、提示制御部16が複数の権限委譲方法を提示して、乗員に権限委譲方法を決定させてもよい。乗員は、提示された委譲依頼情報を確認して、権限委譲の依頼を承認するか否かを操作部83又はマイク84等を介して入力する。
ステップS18において、委譲先決定部15が、権限委譲先の候補として選択された乗員による承認(合意)が得られたか否かを判定する。承認が得られないと判定された場合には、ステップS15に戻り、他の乗員を権限委譲先の候補として選択する。なお、権限委譲先の候補である乗員が他に存在しない場合には、承認が得られなかった乗員に再度、権限委譲を依頼してもよい。
一方、ステップS18において、権限委譲先の候補として選択された乗員による承認が得られたと判定された場合、委譲先決定部15が、承認が得られた乗員を権限委譲先として決定し、ステップS19に移行する。ステップS19において、委譲実行部17が、委譲先決定部15により決定された権限委譲方法にしたがって、権限委譲が必要となる前又は権限委譲が必要となった時点で、乗員Bに操作権限を委譲する。
本発明の実施形態によれば、委譲判定部14が、車両101の操作権限の委譲が将来的に必要となるか否かを判定する。将来において権限委譲が必要となると判定された場合、委譲先決定部15が、権限委譲が必要となる前に、権限委譲先の候補である乗員を選択し、選択された乗員に対して権限委譲先となることを依頼し、乗員により依頼に対する承認が得られた場合に、承認が得られた乗員を権限委譲先として決定する。
これにより、権限委譲が必要となる前に権限委譲先となる乗員が予め権限委譲されることを認識しているので、権限委譲が必要となる前又は権限委譲が必要となった時点においてスムーズに権限委譲を行うことができる。また、これにより、権限委譲の依頼に対する乗員の意思を確認したうえで、乗員を権限委譲先として決定することができる。なお、権限委譲が必要となった場合に権限委譲先となることを承認するか否かの承認情報を、乗員情報記憶部23に予め記憶しておいてもよい。この場合、委譲先決定部15は、委譲判定部14により権限委譲が必要となると判定された場合に、権限委譲先の候補である乗員を選択せずに、承認情報に基づき権限委譲先となる乗員を決定してもよい。
更に、委譲実行部17が、権限委譲が必要となった時点で、権限委譲先として決定された乗員に権限委譲を行う。これにより、権限委譲が必要となった時点において予め権限委譲先が決定されているため、スムーズに権限委譲を行うことができる。また、権限委譲先となる乗員は、権限委譲が行われる前に、心身共に操作権限に対する準備をすることができる。
更に、委譲判定部14が、車両101の現在位置から権限保有者の降車地点までの距離、又は現在時刻から権限保有者の降車地点到着までの時間の少なくともいずれかが所定の閾値未満の場合に、権限委譲が必要となると判定する。これにより、権限保有者が降車するために権限委譲が必要となる場合に、権限保有者の降車前又は降車時点において、スムーズに権限委譲を行うことができる。
更に、委譲実行部17が、権限委譲先となる乗員を決定した後、且つ権限委譲が必要となる前に、権限委譲先として決定された乗員に操作権限の少なくとも一部を委譲する。これにより、権限委譲が必要となった時点において、スムーズに権限委譲を行うことができる。また、権限保有者は、権限委譲が必要となる前に、操作権限が解除されるので、例えば降車するための準備をすることができる。
更に、委譲先決定部15が、権限委譲先として決定された乗員の状態を推定し、推定結果に基づき、権限委譲方法を決定する。これにより、権限委譲先として決定された乗員の状態に合わせた権限委譲方法で権限委譲を行うことができる。例えば、乗員の状態の推定結果に基づき、権限委譲のタイミングを決定することにより、乗員の状態に合わせた権限委譲のタイミングで権限委譲を行うことができる。なお、委譲先決定部15は、権限委譲先の候補として選択された乗員の状態を推定し、推定結果に基づき、権限委譲方法を選択してもよい。
(第1変形例)
本発明の実施形態では、権限委譲が必要となる時点の前後で、権限保有者以外に乗員が変化しない場合を例示した。これに対して、本発明の実施形態の第1変形例では、権限委譲が必要となる時点の前後で、権限保有者以外にも乗員が変化する場合を説明する。
図11のタイミングチャートを参照して、本発明の実施形態の第1変形例に係る運転支援方法の一例を説明する。時刻t0において、乗員A,B,Cが乗車中であり、乗員Aが権限保有者である。乗員A,Cは時刻t1で降車予定であり、乗員Dは時刻t1において乗車予定である。時刻t1において、図12Aに示すように、乗員Aは右前方席、乗員Bは左前方席、乗員Cは右後方席にそれぞれ着座している。時刻t2になると、図12Bに示すように、乗員Cは降車し、乗員Bの座席位置は変化せず、乗員Dは乗員Aと入れ替わり右前方席に着座予定である。
委譲判定部14は、図11に示すように、権限保有者である乗員Aが時刻t1で降車予定のため、権限委譲が必要となると判定する。委譲先決定部15は、権限委譲が必要となる時刻t1で乗車中の乗員B,Dを推定する。委譲先決定部15は、推定された乗員B,Dのうちから、権限委譲先の候補として乗員Dを選択する。提示制御部16は、権限委譲を依頼する旨を含む委譲依頼情報を乗員Dに提示する。この際、乗員Dが車両101に乗車前であるため、提示制御部16は、委譲依頼情報を通信装置3を介して乗員Dの利用者端末に送信する。乗員Dは、利用者端末で受信した委譲依頼情報を確認し、権限委譲の依頼を承認する旨を利用者端末に入力する。委譲先決定部15は、通信装置3を介して受信した乗員Dによる承認に基づき、乗員Dを権限委譲先として決定する。時刻t2~t1において、乗員Dは権限委譲先として予約されている。その後、時刻t1において乗員A,Cが降車すると共に、乗員Dが乗車する。委譲実行部17は、乗員Bに権限委譲を行う。
本発明の実施形態の第1変形例によれば、委譲先決定部15が、権限委譲が必要となる時点での乗車が予定されている乗員を推定し、推定された乗員のうちから権限委譲先となる乗員を決定する。これにより、委譲判定部14により権限委譲が必要となると判定された時点で乗車中の乗員のみならず、権限委譲が必要となると判定された後に乗車予定の乗員も含めて権限委譲先を選択することができ、権限委譲先の自由度を高めることができる。また、委譲判定部14により権限委譲が必要となると判定された時点で乗車中であるが、権限委譲が必要となる時点では降車している乗員を権限委譲先の選択肢から除外することができ、計算負荷を低減することができる。
(第2変形例)
本発明の実施形態では、権限委譲先として決定した乗員に対して権限委譲を行う際に、操作権限の全てを同時に一括して委譲する場合を例示した。これに対して、本発明の実施形態の第2変形例では、操作権限の機能を細分化し、操作権限を段階的に委譲する場合を例示する。
委譲実行部17は、権限委譲先として決定した乗員の操作権限の割合が徐々に増加するように、操作権限を段階的に委譲する。例えば、操作権限が、車両101の縦方向移動の操作権限及び横方向移動の操作権限を含む場合を考える。縦方向移動の操作権限は、制駆動(加減速)を制御するアクセルペダル操作及びブレーキペダル操作を行う権限である。横方向移動の操作権限は、操舵を制御するステアリング操作を行う権限である。委譲実行部17は、第1段階として、縦方向移動の操作権限を権限委譲先として決定した乗員に委譲する。更に、委譲実行部17は、縦方向移動の操作権限を委譲して所定時間経過後、第2段階として、横方向移動の操作権限を権限委譲先として決定した乗員に委譲する。なお、委譲実行部17は、操作権限の機能を3つ以上に細分化することが可能であれば、3段階以上の多段階で権限委譲を行ってもよい。
次に、図13のタイミングチャートを参照して、本発明の実施形態の第2変形例に係る運転支援方法の一例を説明する。時刻t0において乗員A,B,C,Dが乗車中である場合を考える。乗員Aは、車両101の縦方向移動の操作権限及び横方向移動の操作権限を保有しているが、時刻t1で降車予定である。委譲判定部14は、乗員Aが時刻t1で降車予定のため、権限委譲が必要となると判定する。委譲先決定部15は、乗員Bを権限委譲先として決定する。時刻t2において、委譲実行部17は、乗員Aが保有する縦方向移動の操作権限を解除して、横方向移動の操作権限のみを乗員Aに保有させる。一方、委譲実行部17は、縦方向移動の操作権限を、権限委譲先として決定した乗員Bに委譲する。時刻t3において、委譲実行部17は、乗員Aが保有する横方向移動の操作権限を解除することにより、乗員Aが保有していた操作権限の全てを解除する。一方、委譲実行部17は、横方向移動の操作権限を乗員Bに更に委譲することにより、操作権限の全てを乗員Bに委譲する。その後、時刻t1において、乗員Aが降車する。
次に、図14のフローチャートを参照して、本発明の実施形態の第2変形例に係る権限委譲処理の一例を説明する。本発明の実施形態の第2変形例に係る権限委譲処理は、図10のステップS19の権限委譲処理に対応する。ステップS21において、委譲実行部17は、委譲先決定部15により決定された権限委譲方法に含まれる権限委譲のタイミングか否かを判定する。権限委譲のタイミングであると判定されるまでステップS21の処理を繰り返し、権限委譲のタイミングであると判定された場合、ステップS21に移行する。ステップS21において、提示制御部16が、ユーザインターフェース8を用いて、第1段階として、縦方向移動の操作権限の委譲を開始する旨を、権限委譲先として決定した乗員に提示する。ステップS23において、委譲実行部17は、権限保有者の縦方向移動の操作権限を解除すると共に、縦方向移動の操作権限を、権限委譲先として決定した乗員に委譲する。
ステップS24において、委譲実行部17は、ステップS23の処理を実行後、所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過したと判定されるまでステップS24の処理を繰り返し、所定時間が経過したと判定された場合、ステップS25に移行する。ステップS25において、提示制御部16が、ユーザインターフェース8を用いて、第2段階として、横方向移動の操作権限の委譲を開始する旨を、権限委譲先として決定した乗員に提示する。ステップS26において、委譲実行部17は、権限保有者の横方向移動の操作権限を解除すると共に、横方向移動の操作権限を、権限委譲先として決定した乗員に委譲する。
次に、図15のタイミングチャートを参照して、本発明の実施形態の第2変形例に係る運転支援方法の他の一例を説明する。時刻t0において乗員A,B,C,Dが乗車中である場合を考える。乗員Aは、車両101の縦方向移動の操作権限及び横方向移動の操作権限を保有しているが、時刻t1で降車予定である。委譲判定部14は、乗員Aが時刻t1で降車予定のため、権限委譲が必要となると判定する。委譲先決定部15は、乗員Bを権限委譲先として決定する。時刻t2において、委譲実行部17は、乗員Aが保有する縦方向移動の操作権限を解除して、横方向移動の操作権限のみを乗員Aに保有させる。一方、委譲実行部17は、縦方向移動の操作権限を、権限委譲先として決定した乗員Bに委譲する。時刻t1において、乗員Aが降車するときに、委譲実行部17は、乗員Aが保有する横方向移動の操作権限を解除すると共に、横方向移動の操作権限を乗員Bに委譲する。
本発明の実施形態の第2変形例によれば、委譲実行部17が、権限委譲先として決定した乗員の操作権限の割合が徐々に増加するように、操作権限を段階的に委譲する。これにより、権限委譲先として決定した乗員は、操作権限に段階的に適応していけばよいため、操作権限を同時に一括で委譲する場合と比較して、操作権限に適応し易くなる。
更に、操作権限が、車両101の縦方向移動の操作権限及び横方向移動の操作権限を含む場合に、委譲実行部17が、縦方向移動の操作権限をまず委譲し、所定時間経過後に、横方向移動の操作権限を委譲する。これにより、乗員は、難易度が相対的に低い制駆動操作に適応してから、難易度が相対的に高い操舵操作に適応すればよいため、操作権限を同時に一括で委譲する場合と比較して、操作権限に適応し易くなる。
(第3変形例)
本発明の実施形態の第3変形例では、本発明の実施形態の第2変形例と同様に、権限委譲先として決定した乗員に操作権限を段階的に委譲する場合を例示する。本発明の実施形態の第3変形例では、自動運転制御に対する操作権限を委譲する際に、自動運転レベルを変更することにより、操作権限を段階的に委譲する点が、本発明の実施形態の第2変形例と異なる。
ここでは、自動運転レベルの一例として、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)により採用されている自動運転レベル0~6の区分を用いて説明する。自動運転レベル0では、運転者がすべてを操作する。自動運転レベル1では、システムが操舵又は制駆動(加減速)の一方を支援する。自動運転レベル2では、システムが操舵及び制駆動の両方を支援する。自動運転レベル3では、特定の場所でシステムが全てを操作し、緊急時は乗員が操作する。自動運転レベル4では、特定の場所でシステムが全てを操作する。自動運転レベル5は、場所を限定せず、システムが全てを操作する。
運転制御部18及び委譲実行部17は、権限委譲先として決定した乗員の操作権限の割合が徐々に増加するように、権限委譲先として決定した乗員に操作権限を段階的に委譲する。即ち、運転制御部18は、委譲実行部17により権限委譲を行う時点で、車両101の自動運転レベルを高くし、権限委譲してから所定時間経過後に、車両101の自動運転レベルを低くする。この場合、自動運転レベルを高くしてから戻すまでは、操作権限の一部が運転制御部18に移転しているとみなすことができる。例えば、運転制御部18は、権限委譲を行う前は自動運転レベル2で走行制御を行う。そして、運転制御部18は、権限委譲を行う時点で、自動運転レベル3に上げて走行制御を行い、所定時間経過後に、自動運転レベル2に戻して走行制御を行う。
次に、図16のタイミングチャートを参照して、本発明の実施形態の第3変形例に係る運転支援方法の一例を説明する。時刻t0において、乗員A,B,C,Dが乗車中であり、乗員Aが権限保有者である。時刻t0において、運転制御部18は、自動運転レベル2で車両101の走行制御を行っている。委譲判定部14は、乗員Aが時刻t1で降車予定のため、権限委譲が必要となると判定する。委譲先決定部15は、権限委譲が必要となる前に、乗員Bを権限委譲先として決定する。時刻t2において、委譲実行部17は、乗員Aの操作権限を解除し、乗員Bに権限委譲を行う。このとき、運転制御部18は、自動運転レベル2から自動運転レベル3に上げて、車両101の走行制御を行う。その後、時刻t1において、乗員Aが降車する。運転制御部18は、自動運転レベル3から自動運転レベル2に戻し、車両101の走行制御を行う。
次に、図17のタイミングチャートを参照して、本発明の実施形態の第3変形例に係る運転支援方法の他の一例を説明する。時刻t0において、乗員A,B,C,Dが乗車中であり、乗員Aが権限保有者である。時刻t0において、運転制御部18は、自動運転レベル2で車両101の走行制御を行っている。委譲判定部14は、乗員Aが時刻t1で降車予定のため、権限委譲が必要となると判定する。委譲先決定部15は、権限委譲が必要となる前に、乗員Bを権限委譲先として決定する。時刻t2~t1において、乗員Bは権限委譲先として予約されている。時刻t1において、乗員Aが降車する。委譲実行部17は、乗員Aの操作権限を解除し、乗員Bに権限委譲を行う。このとき、運転制御部18は、自動運転レベル2から自動運転レベル3に上げて、車両101の走行制御を行う。時刻t1から所定時間経過後の時刻t4において、運転制御部18は、自動運転レベル3から自動運転レベル2に戻し、車両101の走行制御を行う。
本発明の実施形態の第3変形例によれば、運転制御部18及び委譲実行部17が、権限委譲先として決定した乗員の操作権限の割合が徐々に増加するように、操作権限を段階的に委譲する。これにより、権限委譲先として決定した乗員は、操作権限に段階的に適応していけばよいため、操作権限を同時に一括で委譲する場合と比較して、操作権限に適応し易くなる。
更に、運転制御部18が、委譲実行部17により権限委譲を行う時点で、車両101の自動運転レベルを高くし、権限委譲してから所定時間経過後に、車両101の自動運転レベルを低くする。これにより、自動運転レベルが徐々に下がると共に、操作権限の難易度が徐々に上がるため、権限委譲が行われた乗員が操作権限に適応し易くなる。
(第4変形例)
本発明の実施形態では、権限委譲が行われる前に、権限委譲先として決定した乗員の準備期間がある場合を例示した。これに対して、本発明の実施形態の第4変形例として、権限委譲が行われる前の準備期間において、乗員に対して、操作権限の操作内容又は操作練習内容を提示する場合を説明する。
委譲先決定部15により権限委譲先となる乗員を決定した後、且つ委譲実行部17により権限委譲が行われる前に、提示制御部16は、権限委譲先として決定した乗員に対して、操作権限の操作内容の情報(インストラクション)や、操作練習内容の情報(トレーニング情報)を、ディスプレイ81やスピーカ82等を介して提示する。乗員は、権限委譲が行われる前に、提示された操作権限の操作内容を確認して操作内容を把握することができる。また、乗員は、権限委譲が行われる前に、提示された操作練習内容を確認して操作練習(トレーニング)を行うことができる。
次に、図18のタイミングチャートを参照して、本発明の実施形態の第4変形例に係る運転支援方法の一例を説明する。時刻t0において、乗員A,B,C,Dが乗車中であり、乗員Aが権限保有者である。乗員Aは、時刻t1において降車予定である。委譲判定部14は、乗員Aが時刻t1において降車予定のため、権限委譲が必要となると判定する。時刻t2において、委譲先決定部15は、乗員Bを権限委譲先として決定する。時刻t2において、提示制御部16は、操作内容又は操作練習の情報を、ディスプレイ81やスピーカ82等を介して提示する。時刻t2~t1において、乗員は提示された操作内容又は操作練習の情報を確認し、操作練習を行うことができる。その後、時刻t1において、提示制御部16は、操作内容又は操作練習の情報の提示を終了する。委譲実行部17は、乗員Aの操作権限を解除し、乗員Bに権限委譲を行う。
次に、図19のフローチャートを参照して、本発明の実施形態の第4変形例に係る権限委譲処理の一例を説明する。本発明の実施形態の第4変形例に係る権限委譲処理は、図10のステップS19の権限委譲処理に対応する。ステップS31において、提示制御部16が、権限委譲の開始情報を提示する。ステップS31において、提示制御部16が、提示制御部16が、操作内容又は操作練習内容の情報を、ディスプレイ81やスピーカ82等を介して提示する。乗員は提示された操作内容又は操作練習内容の情報を確認し、操作練習を行うことができる。ステップS33において、委譲実行部17が、権限保有者が降車したか否かを判定する。権限保有者が降車したと判定されるまでステップS33を繰り返し、権限保有者が降車したと判定された場合、ステップS34に移行する。ステップS34において、委譲実行部17が、乗員Aの操作権限を解除し、乗員Bに権限委譲を行う。委譲実行部17が、乗員により権限委譲が完了した旨の操作入力の有無を判定する。乗員により権限委譲が完了した旨の操作入力が得られたと判定されるまでステップS33を繰り返し、権限委譲が完了した旨の操作入力が得られたと判定された場合、処理を完了する。
次に、図20のタイミングチャートを参照して、本発明の実施形態の第4変形例に係る運転支援方法の一例を説明する。時刻t0において、乗員A,B,Cが乗車中であり、乗員Aが権限保有者である。乗員Aは、時刻t1において降車予定であり、乗員Dは、時刻t1で乗車予定である。委譲判定部14は、乗員Aが時刻t1において降車予定のため、権限委譲が必要となると判定する。時刻t2において、委譲先決定部15は、乗員Cを権限委譲先として決定する。時刻t2において、提示制御部16は、操作内容又は操作練習内容の情報を、乗員Dの利用者端末に送信して、利用者端末を介して乗員Dに提示する。時刻t2~t1において、乗員は提示された操作内容又は操作練習内容の情報を確認し、例えば利用者端末を用いて操作練習を行うことができる。その後、時刻t1において、乗員Aが降車すると共に、乗員Dが乗車する。提示制御部16は、操作内容又は操作練内容習の情報の提示を終了する。委譲実行部17は、乗員Aの操作権限を解除し、乗員Bに権限委譲を行う。
本発明の実施形態の第4変形例によれば、提示制御部16が、権限委譲が行われる前に、操作権限に操作内容の案内及び操作練習情報を提示する。これにより、権限委譲が行われる前に、乗員は操作権限の操作内容を確認することができ、更には操作練習を行うことができる。したがって、権限委譲が行われた時点で、乗員が操作権限に適応し易くなる。
(第5変形例)
本発明の実施形態では、権限保有者が降車予定のために権限委譲が必要となる場合を主に説明した。これに対して、本発明の実施形態の第5変形例では、権限保有者が降車予定でないものの、乗車中に操作権限の放棄を予め希望していた場合を例示する。例えば、権限保有者が降車せず、継続して乗車予定であるものの、所定の時刻に仕事のやり取りをする必要がある場合等、乗員が操作権限を放棄したい予定がある場合が想定される。例えば、乗員は、操作権限の保有を放棄したい所定の時間(放棄希望時間)及び所定の道路区間(放棄希望区間)を入力する。記憶装置21が、乗員毎の放棄希望時間及び放棄希望時間を乗員情報に含めるように予め記憶しておく。
委譲判定部14は、記憶装置21に記憶された放棄希望時間に基づき、放棄希望時間の開始時刻と現在時刻との時間差が所定の閾値未満か否かを判定することにより、権限委譲が必要となるか否かを判定する。即ち、委譲判定部14は、放棄希望時間の開始時刻と現在時刻との時間差が所定の閾値未満の場合、権限委譲が必要となると判定する。一方、委譲判定部14は、放棄希望時間の開始時刻と現在時刻との時間差が所定の閾値以上の場合、権限委譲が必要とならないと判定する。
或いは、委譲判定部14は、記憶装置21に記憶された放棄希望区間に基づき、放棄希望区間の開始位置と現在位置との距離が所定の閾値未満か否かを判定することにより、権限委譲が必要となるか否かを判定してもよい。即ち、委譲判定部14は、或いは、放棄希望区間の開始位置と現在位置との距離が所定の閾値未満の場合、権限委譲が必要となると判定する。一方、委譲判定部14は、放棄希望区間の開始位置と現在位置との距離が所定の閾値以上の場合、権限委譲が必要とならないと判定する。
次に、図21を参照して、本発明の実施形態の第5変形例に係る運転支援方法の一例を説明する。時刻t0において、乗員A,B,C,Dが乗車中であり、乗員Aが権限保有者である。乗員Aは、時刻t1以降も継続して乗車予定であるが、時刻t1以降は放棄希望時間である。委譲判定部14は、乗員Aの放棄希望時間の情報に基づき、乗員Aが操作権限を放棄を希望する予定であるため、権限委譲が必要となると判定する。委譲先決定部15は、時刻t2において、乗員Bを権限委譲先として決定する。委譲実行部17は、時刻t1において、乗員Aの操作権限を解除し、乗員Bに権限委譲を行う。
本発明の実施形態の第5変形例によれば、権限保有者が降車予定でないものの、乗車中に操作権限の放棄を希望する場合であっても、権限保有者が放棄を希望するタイミングとなる前に、権限委譲先となる乗員を決定することができる。したがって、権限保有者が操作権限の放棄を希望する際に、スムーズに権限委譲を行うことができる。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、本発明の実施形態に係る運転支援装置は、配車サービスの配車車両である車両101に適用される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、本発明の実施形態に係る運転支援装置を自家用車等の車両に搭載することができる。この場合も、上述した配車サービスの場合と同様の効果を奏することができる。
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。