以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書において、光学素子の「入射側」とは、使用に際して光の進入方向から光が光学素子に入射する側をいう。光学素子の「出射側」とは、光学素子の入射側から入射した光が、出射する側をいう。
本明細書において、特定の波長域における平均透過率は、該波長域の1nm毎の透過率の相加平均である。数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
[光学素子]
本発明の実施形態の光学素子について図面を参照して説明する。図1Aおよび図1Bは、それぞれ本実施形態の光学素子の一例を示す断面図である。
図1Aに示す光学素子10および図1Bに示す光学素子10Aは、それぞれ、第1の直線偏光で入射する可視域の光のうち第1の波長域の光を、第1の直線偏光と直交する振動方向を有する第2の直線偏光に変換して出射する波長板1Aと、第1の波長域とは異なる第2の波長域の光を吸収する吸収層2Aを備える。光学素子10および光学素子10Aは、図1Aおよび図1Bに示すとおり、入射側から、波長板、吸収層の順でこれらが配置された例である。なお、光利用効率を高めるため、光学素子の少なくとも1面に、反射防止層3を備えてもよい。ここで、第1の波長域と第2の波長域が異なるとは、2つの波長域に重なる波長域がないことをいう。
また、本発明の実施形態にかかる光学素子において、吸収層と波長板の配置順は、入射側から吸収層、波長板の順でもよい。光学素子が反射防止層を有する場合、反射防止層は、反射光損失が大きくなる、吸収層または波長板の空気との界面に備えるとよい。
(波長板)
波長板1Aは、第1の直線偏光で入射する可視域の光のうち第1の波長域の光を、第1の直線偏光と直交する振動方向を有する第2の直線偏光に変換して出射する。
波長板1Aは、板状体であって、波長板1Aの一方の主面に対し法線方向から入射した光は波長板1Aを透過して他方の主面から出射する。波長板1Aに、第1の直線偏光で可視域の光を入射させると、波長板1Aを透過する際に、可視域の光のうち第1の波長域の光が選択的に第1の直線偏光と直交する振動方向を有する第2の直線偏光に変換されて出射する。
可視域のうち波長板1Aにより位相が変換される第1の波長域として、具体的には、
(1)波長580~650nmを含む波長域(以下、「波長域(1)」ともいう。)
(2)波長500~650nmを含む波長域(以下、「波長域(2)」ともいう。)
(3)波長410~650nmを含む波長域(以下、「波長域(3)」ともいう。)が挙げられる。
例えば、波長域(1)における最短波長をλS1、最長波長をλL1とした場合、λS1は波長560~600nmの範囲が好ましく、λL1は波長630~670nmの範囲が好ましい。
また、例えば、波長域(2)における最短波長をλS2、最長波長をλL2とした場合、λS2は波長480~520nmの範囲が好ましく、λL2は波長630~670nmの範囲が好ましい。
例えば、波長域(3)における最短波長をλS3、最長波長をλL3とした場合、λS3は波長400~420nmの範囲が好ましく、λL3は波長630~670nmの範囲が好ましい。
本発明の実施形態にかかる光学素子において波長板は、上記機能を有するものであれば、構成は特に問わない。具体的には、複屈折性材料を含む層を有する波長板を使用できる。複屈折性材料としては、(低分子)液晶、高分子液晶や、水晶、LiNbO3等の単結晶材料、延伸ポリカーボネートフィルム等の成形加工により複屈折性を持たせた有機系高分子フィルム、基板上に異方性蒸着などの成膜方法で複屈折性を持たせて形成したTiO2等の無機材料、入射光の波長より小さな異方性微細構造を等方性材料表面に加工して得られる構造複屈折、等が挙げられる。これらの中でも、異常光屈折率neと常光屈折率noの差|ne-no|=Δnで規定される屈折率異方性Δnが相対的に大きくでき、薄厚で波長依存性および入射角依存性の少ない低次数の波長板が得られるとともに、入射光面内および光透過する厚さ方向の光学軸(進相軸と遅相軸)を空間的に調整できる設計自由度が高い観点から高分子液晶の使用が好ましい。
波長板は、より具体的には、厚さ方向に光学軸が揃った複屈折性材料層を少なくとも1層有することで、所定の波長で入射する第1の直線偏光の光を90°回転させた第2の直線偏光の光として出射できる。なお、ここでいう厚さ方向は、光軸方向でもある。波長板は、1層の複屈折性材料層で構成してもよいが、複数の複屈折性材料層が重なり、各層の光学軸の方向が互いに異なる構成でもよい。この場合、設計自由度が上がることで、所定の波長の光を中心に広範囲において、λ/2板としての機能を発揮しやすい。
また、この他に、複数の複屈折性材料層を有する場合、光学軸が波長板1Aの主面に略平行で、かつ、厚さ方向に連続的にツイストされて配向される構成でもよい。この場合でも、設計自由度が上がることで、所定の波長の光を中心に広範囲において、λ/2板としての機能を発揮しやすい。なお、以下では、波長板1Aが、それぞれ高分子液晶を用いた、2層の複屈折性材料層で構成される、図1Bに示す例に基づき説明する。
図1Bに示す波長板1Aは、それぞれに層内で厚さ方向に光学軸が揃っている2層の複屈折性材料層13a、13bを有する。複屈折性材料層13a、13bは、高分子液晶からなり、面内で液晶分子の長軸方向が同一配向した層が、厚さ方向に積層されている。複屈折性材料層13a、13bは、光軸方向、すなわち、波長板1Aの厚さ方向から見て、液晶分子の配向方向(光学軸)が互いに異なるように積層されている。
高分子液晶からなる複屈折性材料層13aは、次のように作製できる。まず、透明基板11a上に配向膜12aを形成し、さらに配向膜12a上に(低分子)液晶を塗布する。そして、不図示の配向膜付の透明基板を配向膜12aの配向方向と平行となるように重ね、その後、硬化させ高分子液晶を得る。そして、硬化後、不図示の配向膜付の透明基板を取り除く。また、その際、複屈折性材料層13aの端部を封止する不図示のシール材があってもよい。複屈折性材料層13bについても複屈折性材料層13aと同様に高分子液晶を得る。透明基板11a、11bの構成材料としては、可視光に対して透明な樹脂や無機材料、例えば、ガラスが挙げられる。
そして、複屈折性材料層13aと複屈折性材料層13bとは、接着層15により接着され波長板1Aが得られる。接着層15としては、粘着フィルム、光硬化型や熱硬化型の接着剤を使用できる。接着層15は、波長板1Aの波面収差の低減、温度特性や信頼性向上のため薄ければよく、接着層15の厚さは10μm以下が好ましい。
なお、波長域(1)において、例えば、波長580~650nmの第1の直線偏光の光を選択的に第2の直線偏光の光に変換させるには、複屈折性材料層13aと13bのリタデーションRdを中心波長(λc)613nm=2×580×650/(580+650)の略1/2(Rd≒307nm)に調整し、これらの光学軸(遅相軸または進相軸)のなす角度を略45°とした積層構成とする。ここで、複屈折性材料層13aおよび複屈折性材料層13bのリタデーションRdは、複屈折性材料層の屈折率異方性Δnと層厚dの積(Rd=Δn×d)に相当し、複屈折性材料層13aと13bは、波長λc=613nmに対する位相差Φ=360×Rd/λcが略180°のλ/2板になるように2層構成で積層している。なお、この場合、光軸から見た、光入射側から入射する光の第1の直線偏光方向と複屈折性材料層13aの光学軸とのなす角度は、略22°となるように調整すればよい。
同様に、波長域(2)において、例えば、波長500~650nmの第1の直線偏光の光を選択的に第2の直線偏光の光に変換させるには、複屈折性材料層13aと複屈折性材料層13bのリタデーションRdを中心波長(λc)565nm=2×500×650/(500+650)の略1/2(Rd≒283nm)に調整し、これらの光学軸(遅相軸または進相軸)のなす角度を略44°とした積層構成とする。ここで、複屈折性材料層13aと13bは、波長λc=565nmに対する位相差Φ=360×Rd/λcが略180°のλ/2板になるように2層構成で積層している。なお、この場合も、光軸から見た、光入射側から入射する光の第1の直線偏光方向と複屈折性材料層13aの光学軸とのなす角度は、略22°となるように調整すればよい。
さらに、波長域(3)において、例えば、波長410~650nmの第1の直線偏光の光を選択的に第2の直線偏光の光に変換させるには、複屈折性材料層13aと複屈折性材料層13bのリタデーションRdを中心波長(λc)503nm=2×410×650/(410+650)の略1/2(Rd≒252nm)に調整し、これらの光学軸(遅相軸または進相軸)のなす角度を略44°とした積層構成とする。ここで、複屈折性材料層13aと13bは、波長λc=503nmに対する位相差Φ=360×Rd/λcが略180°のλ/2板になるように2層構成で積層している。なお、この場合も、光軸から見た、光入射側から入射する光の第1の直線偏光方向と複屈折性材料層13aの光学軸とのなす角度は、略22°となるように調整すればよい。
前述の波長板は、特定の波長域(1)、(2)または(3)の第1の直線偏光の光を第2の直線偏光の光に変換させるλ/2板の構成例である。次に、波長板を、第1の直線偏光で入射する可視域の光のうち、特定の波長域以外の光を、第1の直線偏光状態を維持して出射する波長選択性のλ/2板とする場合を考える。このとき、第1の直線偏光状態を維持して透過する波長域の中心波長をλkとすると、波長板を、リタデーションRdがλkの略整数倍となる複数の複屈折性材料層を、各々の複屈折性材料層の光学軸(遅相軸または進相軸)のなす角度を調整して積層する構成としてもよい。
リタデーションRdをλkの略整数倍とすることにより、各々の複屈折性材料層の光学軸のなす角度に関わらず、波長λk近傍の入射光が波長板を透過後の偏光状態は不変となる。一方、特定の波長域の入射光の波長に対しては、リタデーションRdが非整数倍となるため波長板を透過後の偏光状態は変化する。したがって、特定の波長域の入射光では第1の直線偏光の光を第2の直線偏光の光に変換させるように、波長板を構成する複数の複屈折性材料層の光学軸のなす角度を調整すればよい。例えば、特許文献US5,953,083に、その構成例が記載されている。
複屈折性材料層13aおよび複屈折性材料層13bには、高分子液晶以外の材料を用いてもよい。例えば、波長550nmにおける屈折率異方性Δnが0.0092の水晶や、屈折率異方性Δnが0.001~0.005の一軸延伸フィルムを、所望のリタデーションRdとなる層厚dに加工または一軸延伸量によりΔnを調整して積層すればよい。
ここで、例えば、波長板1Aの精度が十分でない場合であっても、以下の吸収層2Aで補うため、可視域の光のうち所定の帯域を有する第1の波長域の第1の直線偏光の光を第2の直線偏光の光として精度よく取り出せる。
波長板1Aの機能は、第1の直線偏光で可視域の光を入射させ、所定の帯域を有する第1の波長域の透過光において、第1の直線偏光の光強度をI1、第2の直線偏光の光強度をI2とすると、I2/(I1+I2)が大きいほど好ましい。I2/(I1+I2)は、具体的には、0.8以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.9以上が特に好ましい。また、偏光消光比をI2/I1とすると、I2/I1は10以上が好ましく、20以上がより好ましく、50以上が特に好ましい。なお、波長板1Aの入射光の光強度をI0とすると、波長板1Aの透過率Tに相当する(I1+I2)/I0は大きいほど好ましい。(I1+I2)/I0は、具体的には、0.9以上が好ましく、0.95以上がより好ましく、0.98以上が特に好ましい。また、このような高透過率を実現するために、波長板1Aの空気との界面には反射防止層を備えるとよい。
(吸収層)
吸収層2Aは、可視域の光のうち、少なくとも、波長板1Aが変換する第1の波長域とは異なる第2の波長域の光を吸収する層である。第2の波長域としては、例えば、上記第1の波長域において例示した各波長域が挙げられる。
例えば、可視域を410~650nmとし、第1の波長域が波長域(1)である場合、第2の波長域は、410~λS1[nm]から適宜選択される。第1の波長域が波長域(2)である場合、第2の波長域は、410~λS2[nm]から適宜選択される。
吸収層において、第2の波長域における光の平均透過率は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
吸収層における分光スペクトルは第2の波長域内に最大吸収波長λmax[nm]を有する。第2の波長域は、第1の波長域より短波長側にあっても、長波長側にあってもよい。吸収層は、可視域において、透過率が10%となる波長をλ10%[nm]とし、透過率が80%となる波長をλ80%[nm]とするとき、|λ80%-λ10%|[nm]が、50nm以下であると、高コントラスト特性が得られるなどの点で好ましい。|λ80%-λ10%|[nm]は40nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。
すなわち、第2の波長域が、第1の波長域より短波長側にある場合、吸収層は、λmax[nm]より長波長側で透過率が10%となる波長λL10%[nm]と、λmax[nm]より長波長側で透過率が80%となる波長λL80%[nm]との差、λL80%-λL10%[nm]が、50nm以下であると、高コントラスト特性が得られるなどの点で好ましい。λL80%-λL10%[nm]は40nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。
第2の波長域が、第1の波長域より長波長側にある場合、吸収層は、λmax[nm]より短波長側で透過率が10%となる波長λS10%[nm]と、λmax[nm]より短波長側で透過率が80%となる波長λS80%[nm]との差、λS10%-λS80%[nm]が、50nm以下であると、高コントラスト特性が得られるなどの点で好ましい。λS10%-λS80%[nm]は40nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。
第2の波長域が410~λS1[nm](λS1:560~600nm)の場合、吸収層の最大吸収波長λmaxは、410~580nmの波長域内にあるのが好ましく、440~560nmがより好ましい。
吸収層の光の透過量を透過率Tで表示した場合、透過率Tと光学濃度OD値との関係は、OD=-Log10[T]となり、大きなOD値ほど吸収が高い吸収層に対応する。ここで、吸収層の分光スペクトルにおいて所定の波長域(波長域1)のOD値をOD1とし、所定の波長域とは異なる別の所定の波長域(波長域2)のOD値をOD2とした場合に、OD1とD2の比OD1/OD2が1より小さい場合、波長域1は波長域2より透過率が高い吸収層であることを意味し、OD1/OD2が小さいほど、波長域1の高透過率と波長域2の低透過率のコントラストが高い。
第2の波長域が410~λS1[nm]の場合、吸収層においては、波長600~700nmの光のOD値をOD600-700とし、波長410~480nmの光のOD値をOD410-480とすると、OD600-700/OD410-480は、0.1以下が高コントラストを得られる点で好ましい。OD600-700/OD410-480は0.07以下がより好ましく、0.05以下がさらに好ましい。
ここで、OD値は、対象物(ここでは吸収層)の内部透過率をTinとすると、-log10(Tin)で表される。なお、内部透過率Tin[%]は、対象物の(外部)透過率をT[%]、反射率をR[%]としたとき、Tin=(T/(100-R))×100で表される。
なお、波長600~700nmの光のOD値、波長410~480nmの光のOD値は、それぞれ、当該波長域の光の平均透過率から算出できる。上記OD値の比は、「透過する波長域のOD値/遮光する波長域のOD値」の関係を示す。
第2の波長域が410~λS1[nm](λS1:560~600nm)の場合、吸収層においては、波長410~550nmの平均透過率は10%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。このとき、λL10%[nm]は530~590nmの波長域内にあるのが好ましく、540~580nmがより好ましい。また、λL80%[nm]は560~620nmの波長域内にあるのが好ましく、570~600nmがより好ましい。さらに、λL80%-λL10%[nm]は50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。
第2の波長域が410~λS2[nm](λS2:480~520nm)の場合、吸収層の最大吸収波長λmax[nm]は、410~500nmの波長域内にあるのが好ましく、440~480nmがより好ましい。第2の波長域が410~λS2[nm]の場合、吸収層においては、波長600~700nmの光のOD値(OD600-700)と、波長410~480nmの光のOD値(OD410-480)との比(OD600-700/OD410-480)は0.1以下が高コントラストを得られる点で好ましい。OD600-700/OD410-480は0.07以下がより好ましく、0.05以下がさらに好ましい。
第2の波長域が410~λS2[nm](λS2:480~520nm)の場合、吸収層においては、波長410~450nmの平均透過率は10%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。このとき、λL10%[nm]は460~500nmの波長域内にあるのが好ましく、470~490nmがより好ましい。また、λL80%[nm]は480~560nmの波長域内にあるのが好ましく、490~520nmがより好ましい。さらに、λL80%-λL10%[nm]は50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。
吸収層は上記吸光特性を有する限り、構成は特に制限されない。例えば、透明性のバインダ成分と吸収剤を含む材料が層状となる構成が挙げられる。透明性のバインダ成分としては、可視光に対して透明な樹脂や無機材料が挙げられ、透明樹脂が好ましい。
吸収剤としては色素、顔料、無機微粒子等が挙げられるが、樹脂中に均一に溶解または分散できる点などから色素が好ましい。また、第2の波長域が広い場合、色素は、少なくとも2種類用いることが好ましい。さらに、色素を2種類以上用いる場合には、色素の分光スペクトルにおける最大吸収波長λDmax[nm]が異なる色素を組み合わせて用いることが好ましい。さらに、その場合、各色素の最大吸収波長の間隔は15~50nmが好ましい。
最大吸収波長が異なる2種類の色素を用いる場合、最大吸収波長が短波長側にある色素の最大吸収波長λDmax[nm]をλDmaxS[nm]、最大吸収波長が長波長側にある色素の最大吸収波長λDmax[nm]をλDmaxL[nm]とすれば、第2の波長域が410~λS1[nm](λS1:560~600nm)の場合には、λDmaxS[nm]は460~530nmの波長域内にあるのが好ましく、470~510nmがより好ましい。この場合、λDmaxL[nm]は490~550nmの波長域内にあるのが好ましく、500~540nmがより好ましい。さらに、λDmaxL-λDmaxS[nm]は15~50nmが好ましく、15~40nmがより好ましく、20~40nmがさらに好ましい。
また、上記において第2の波長域が410~λS2[nm](λS2:480~520nm)の場合には、λDmaxS[nm]は、430~480nmの波長域内にあるのが好ましく、440~480nmがより好ましく、440~460nmがさらに好ましい。λDmaxL[nm]は460~480nmの波長域内にあるのが好ましく、470~480nmがより好ましい。さらに、λDmaxL-λDmaxS[nm]は15~40nmが好ましく、15~30nmがより好ましく、20~30nmがさらに好ましい。
上記のように、最大吸収波長が異なる2種類の色素を用いるいずれの場合も、λDmaxL-λDmaxS[nm]の値が小さすぎると、広帯域の吸収領域を確保できないおそれがあり、また、λDmaxL-λDmaxS[nm]の値が小さすぎると、λDmaxL[nm]とλDmaxS[nm]の間の波長で十分な吸収が得られなくなるおそれがある。
色素としてはシアニン色素、ローダミン色素、ジケトピロロピロール色素、スクアリリウム色素、アゾ色素等が挙げられる。色素は、第2の波長域に合わせて適宜選択される。
透明樹脂は、具体的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、およびポリエステル樹脂が挙げられる。透明樹脂としては、これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
上記の中でも、透明性、色素の透明樹脂に対する溶解性および耐熱性の観点から、透明樹脂は、ガラス転移温度(Tg)の高い樹脂が好ましい。透明樹脂のTgは具体的には140℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。
Tgが高い樹脂として、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、およびエポキシ樹脂から選ばれる1種以上が好ましい。さらに、透明樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂から選ばれる1種以上がより好ましく、ポリイミド樹脂が特に好ましい。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等が好ましい。
吸収層には、上述の透明性のバインダ成分および吸収剤の他にさらに、本発明の効果を損なわない範囲で、この種の吸収層が通常含有する各種任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、色調補正色素、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤、1重項酸素クエンチャー等が挙げられる。
吸収層は、例えば、色素と、透明樹脂または透明樹脂の原料成分とを、溶媒に溶解または分散させて塗工液を調製し、これを基材に塗工し乾燥、硬化させて形成できる。透明樹脂100質量部に対する色素の量は、色素の合計量として、0.5~30質量部が好ましく、5~25質量部がより好ましい。なお、吸収層の厚さは、1~100μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
吸収層を形成させる基材は、吸収層を形成する際にのみ使用する、例えば剥離性の支持基材でもよい。剥離性の支持基材としては、ガラス板や、離型処理されたプラスチックフィルム、ステンレス鋼板等が使用できる。吸収層を形成させる基材は、光学素子が、図1B示す光学素子10Aのように複屈折性材料層13a、13bを挟持する透明基板11a、11bを備える波長板1Aを有する場合には、波長板1Aを構成する透明基板、この場合は透明基板11bであってもよい。
反射防止層3としては、誘電体多層膜や中間屈折率媒体、屈折率が漸次的に変化するモスアイ構造などが挙げられる。中でも光学的効率、生産性の観点から誘電体多層膜が好ましい。誘電体多層膜は、SiO2、SiOxNy等の低屈折率の誘電体膜と、Ta2O5、TiO2、Nb2O5等の高屈折率の誘電体膜とを交互に積層して作製できる。
図2は、実施形態の光学素子の別の一例を示す断面図である。図2に示す光学素子10Bは、波長板1Aと同様に、第1の直線偏光で入射する可視域の光のうち第1の波長域の光を、第2の直線偏光に変換して出射する波長板1Bと、前記第1の波長域とは異なる第2の波長域の光を吸収する吸収層2Bとを備える。
波長板1Bは、光学素子10Aにおける波長板1Aの接着層15を、吸収層2Bに置き換えた以外は同じ構成である。光学素子10Bにおける吸収層2Bは、光学素子10Aの波長板1Aにおける接着層15と同程度の接着性を有するとともに、吸収層2Aと同様の吸光性を有する層である。
吸収層2Bは、具体的には、接着層15を構成する光硬化型や熱硬化型の接着剤と上記色素等の吸収剤を含む層である。吸収層2Bに用いる接着剤としては光硬化型の接着剤が好ましく、光硬化型のアクリル樹脂、エン・チオール樹脂およびエポキシ樹脂から選ばれる1種以上がより好ましい。吸収層2Bにおける、接着剤100質量部に対する色素の合計量は、0.5~30質量部が好ましく、5~25質量部がより好ましい。また、吸収層2Bの厚さは、1~100μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
本発明の実施形態にかかる光学素子は、例えば、第1の波長域が、波長域(1)である場合、波長580~650nmの光の平均透過率は、光の利用効率を高める観点から、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
また、本発明の実施形態にかかる光学素子は、例えば、第1の波長域が、波長域(2)である場合、波長500~650nmの光の平均透過率は、上記同様の観点から80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
[導光素子]
本発明の実施形態にかかる導光素子は、上記の光学素子と、光学素子の両側に設けられ、第1の直線偏光で入射する可視域の光を直進透過し、第2の直線偏光の光を導光する複数の導光板と、を備える。本発明の実施形態の導光素子について図面を参照して説明する。なお、以下は、可視域の光のうち、青色の波長域を波長域(B)、緑色の波長域を波長域(G)、赤色の波長域を波長域(R)として該3つの領域の光を取り扱う場合の例である。しかし、本発明の実施形態にかかる導光素子は、異なる3領域の光を取り扱う場合に限らず、異なる2領域の光を取り扱うものでもよい。例えば、導光素子に可視域で入射する光が、後述する、波長域(G)と波長域(R)の2種類のみの場合、導光板を2枚とする、簡易な構成にすればよいだけである。
図3に、本発明の実施形態にかかる光学素子を用いた導光素子の一例の断面図を示す。図3に示す導光素子100としては、例えば、反射型液晶パネルから出射された可視域の光(映像)を、導光素子を介して人の目が認識するヘッドマウントディスプレイに用いる導光素子が挙げられる。図3において、まず、(不図示の)反射型液晶パネルから可視域の第1の直線偏光の光が出射して、図3に示した入射部から入射する。なお、第1の直線偏光をP偏光、第2の直線偏光をS偏光として以下に説明する。
導光素子100は、3枚の導光板4a、4b、4cがこの順に備えられ、導光板4aのうち、導光板4bの側と反対側の主面(第1の主面)の端部(図3でいう左側の端)に可視域の光が入射する入射部を有し、導光板4aの第1の主面の他方の端部(図3でいう右側の端)に出射部を有する。なお、導光板4aの主面のうち、導光板4bの側の主面を第2の主面とする。以下の説明において、導光板4bの主面のうち、導光板4a側の主面を第1の主面、導光板4c側の主面を第2の主面という。また、導光板4cの主面のうち、導光板4b側の主面を第1の主面、その反対側の主面を第2の主面という。
図3において、導光素子100の入射部より入射する光および出射部より出射する光の進行方向の光軸をZ軸とし、導光板4a、4b、4c内部を導光する方向をY軸とし、Y軸およびZ軸を含む紙面に垂直な方向をX軸とする。すなわち、第1の直線偏光(P偏光)の光は、Y軸方向に振動し、第2の直線偏光(S偏光)の光は、X軸方向に振動する。
導光素子100は、入射部からZ軸方向への直進光が入射する領域において、導光板4aの第1の主面上に、入射側から波長板1および結合素子611を有する。また、導光素子100は、入射部からZ軸方向への直進光が入射する領域において、導光板4aと導光板4bの間に、導光板4aの第2の主面側から光学素子10A1および結合素子621を有し、さらに、導光板4bと導光板4cの間に、導光板4bの第2の主面側から光学素子10A2および結合素子631を有する。上記の光学素子において、例えば、図1Bでは、光学素子10Aは入射側に波長板1Aを有し、出射側に吸収層2Aを有するように配置されているが、波長板1Aと吸収層1Aの配置はそれに限定されない。すなわち、光学素子10A1は、波長板1Aが導光板4a側、吸収層2Aが導光板4b側となるように配置されてもよく、光学素子10A1は、吸収層2Aが導光板4a側、波長板1Aが導光板4b側となる配置でもよく、それらが一体化されていても、分離されていてもよい。光学素子10A2についても同様である。
この場合、後述する結合素子の機能により、導光板4a、4b、4cは、いずれも、可視域において、主面に対して法線方向に相当するZ軸方向から入射する光のうちP偏光の光を直進透過させ、S偏光の光を該法線方向から斜め方向に偏向させて導光板の第1と第2の主面で全反射させて導光板内を導光させる機能を有する。波長板1については、上記波長板1Aと同様の構成とできる。波長板1は、反射型液晶パネルからの出射光である可視域のP偏光の光のうち、波長域(B)をS偏光の光に変換する。光学素子10A1は、詳細な図示はしないが、波長域(G)のP偏光の光をS偏光の光に変換する波長板と波長域(B)の光を吸収する吸収層を有する。光学素子10A2は、波長域(R)のP偏光の光をS偏光の光に変換する波長板と波長域(G)の光を吸収する吸収層を有する。
導光素子100は、出射部に対応する領域において、導光板4aの第1の主面上に結合素子612を有する。また、導光素子100は、出射部に対応する領域において、導光板4bの第1の主面上に結合素子622を、導光板4cの第1の主面上に結合素子632を有する。
図3には、導光素子100における各構成部材とともに、各波長域の光の光路を矢印で示す。以下、導光素子100に光が入射して、出射するまでの光路について説明する。
可視域のP偏光の光が、導光素子100への入射光路中にある波長板1をZ軸方向に直進透過すると、選択的に波長域(B)の光がS偏光の光に変換され、導光板4aの第1の主面の一方の端部(図3でいう左側の端)に備えられた結合素子611に入射する。S偏光に変換された波長域(B)の光は、結合素子611により所定の角度θBに回折偏向されて導光板4aに進入し、導光板4aの第1および第2の主面の空気との界面で全反射され、出射部に対応する領域に導光される。さらに、波長域(B)の光は、導光板4aの第1の主面の他方の端部(図3でいう右側の端)に備えられた結合素子612によりZ軸方向に回折偏向されて、導光板4aの第1の主面の他方の端部から出射する。
ここで、回折偏向とは、結合素子が入射光の可干渉性が維持される周期構造を有し、入射光の進行方向と異なる角度に回折光を発生することで光を偏向する機能である。なお、回折偏向は、周期構造に起因する光干渉を利用した反射による偏向作用も含む。
波長板1、結合素子611および導光板4aを直進透過する光は、波長域(B)のうち波長板1でS偏光に変換されなかったP偏光の光と、波長域(G)および波長域(R)のP偏光の光を含む。これらP偏光の光は、光学素子10A1に入射すると、波長域(B)の光が吸収されるとともに、波長域(G)の光は選択的にP偏光からS偏光の光に変換され、波長域(R)の光はP偏光の光のまま透過する。そして、波長域(G)および波長域(R)の光は導光板4bの第1の主面の一方の端部(図3でいう左側の端)に形成された結合素子621からZ軸方向に入射する。
光学素子10A1でS偏光に変換された波長域(G)の光は、結合素子621により所定の角度θGに回折偏向されて導光板4bに進入し、導光板4bの第1および第2の主面の空気との界面で全反射され、出射部に対応する領域に導光される。さらに、波長域(G)の光は、導光板4bの第1の主面の他方の端部(図3でいう右側の端)に備えられた結合素子622によりZ軸方向に回折偏向されて、導光板4bから導光板4aを経て導光板4aの第1の主面の他方の端部から出射する。
導光板4b、光学素子10A1および結合素子621をZ軸方向に直進透過する光は、波長域(G)のうち光学素子10A1でS偏光に変換されなかったP偏光の光と、波長域(R)のP偏光の光を含む。該透過光のP偏光は、光学素子10A2に到達する。光学素子10A2は、少なくとも波長域(G)の光を吸収するとともに、少なくとも波長域(R)の光をP偏光からS偏光の光に変換する。
光学素子10A2でS偏光に変換された波長域(R)の光は、結合素子631により所定の角度θRに回折偏向されて導光板4cに進入し、導光板4cの第1および第2の主面の空気との界面で全反射され、出射部に対応する領域に導光される。さらに、波長域(R)の光は、導光板4cの第1の主面の他方の端部(図3でいう右側の端)に備えられた結合素子632によりZ軸方向に回折偏向されて、導光板4cから導光板4bおよび導光板4aを経て導光板4aの第1の主面の他方の端部から出射する。なお、ヘッドマウントディスプレイのような装置では、外界の実像も鮮明に視認するため、導光素子100の出射部と対向する方向からの入射光7に対し、結合素子612、622および632を直進透過する効率が高いほど好ましい。
なお、導光板4a、4b、4cは、全反射面である第1の主面と第2の主面の平坦性と導光板内部の直進透過性が画像の解像度に影響する。そのため、導光板は、屈折率分布(脈理)や気泡・異物などによる光散乱の少ない透光性ガラス基板を鏡面研磨して用いるとよい。また、屈折率が大きいほど広い全反射角度幅が得られ、導光性能が向上する。
(結合素子)
図4を用いて、導光板4aと結合素子611および612の機能について説明する。導光板4aの入射部に備えられた結合素子611は、第1の主面に入射する光束の光軸の入射角θinが略0°(Z軸方向)であるS偏光の入射光を導光板4a内部で角度θtに回折偏向させる。そして、偏向させた光は、導光板4aの第1の主面と空気との界面、第2の主面の空気との界面で全反射させ、導光板4a内を伝搬させる。
ここで、導光板の屈折率をnGとすると、導光板内を全反射で伝搬する条件は式(1)で表され、nGが大きいほど小さな偏向角度θtで導光板内の伝搬が可能となる。なお、図4中、nairは空気の屈折率を示す。以下の図5~9において、nG、nair、θin、θtの符号の意味は図4で示すのと同じ意味である。
nG×sin(θt)>1 (1)
具体的な伝搬条件は、nG=1.50ではθt>41.8°だが、nG=1.75ではθt>34.9°となる。
導光素子は、可視光を効率よく導光させるために、光軸の入射角θin≒0°を中心に±Δθの発散光を導光する伝搬条件が好ましく、Δθが大きいほど表示素子の出射光の導光効率が向上する。また、結合素子に回折格子を用いる場合、大きな偏向角度θtを得るためには短い周期構造が必要となり、加工が難しくなる場合がある。そのため、導光板内を伝搬する条件θtの最小値を低減できる高屈折率nGの導光板が有効である。
結合素子611は、波長域(B)の入射光を、導光板内部を伝搬する角度θtに偏向させ、波長域(G)および波長域(R)の入射光を透過する波長選択性の偏向機能が必要となる。このような結合素子は、例えば、高屈折率誘電体膜(屈折率:nH)と低屈折率誘電体膜(屈折率:nL)を入射光の波長オーダーの光学膜厚(屈折率×膜厚)で交互に積層し、入射方向(Z軸)に対して角度αで傾斜させた構造で実現できる。
図5は、結合素子611のYZ断面の一例を示す。結合素子611は、太実線で示す高屈折率誘電体膜611Hと(それらの間に備わる)低屈折率誘電体膜611Lを交互に積層した構造である。結合素子611においては、各誘電体膜の光学膜厚を調整することで、入射光のうち波長域(B)を導光板4a内に伝搬する偏向角となるように反射し、波長域(G)および波長域(R)を直進透過する分光特性を得る。誘電体多層膜への入射角は(90°-α)のため、各誘電体膜611H、611Lの光学膜厚を反射波長帯中心波長λの略1/{4×cos(90°-α)}の多層膜構成とした場合、波長幅Δλは屈折率差(nH-nL)が大きいほど広くなる。図5において、Dは結合素子611の深さを示す。
また、入射角(90°-α)が35°以上では、反射波長帯幅がS偏光の光に対して拡大し、P偏光の光に対して縮小し、反射波長帯が短波長側にシフトするため、分光反射率の偏光依存性が顕著になる。したがって、導光板内を伝搬する偏向角で反射させる波長域(B)をS偏光の入射光とし、導光板を直進透過する波長域(G)および波長域(R)をP偏光の入射光とすることで、所期の波長域の入射光を導光板内に伝搬させる光と導光板を直進透過させる光と、に効率よく分離しやすい。
図5において、lin、loおよびltは、それぞれ、結合素子611側から入射する入射光、導光板4aの第2の主面側に出射する出射光、および結合素子611により偏向角度θtで回折偏向されて導光板4a内を導光する導光板伝搬光を示す。以下の図6~9において、lin、loおよびltの符号の意味は図5で示すのと同じ意味である。
また、結合素子611は、体積ホログラムを用いてもよい。例えば、紫外線照射強度に応じて重合後の屈折率が変化する感光性フォトポリマーを使用できる。該感光性フォトポリマーを、紫外線レーザ光の二光束干渉により生成される周期的な紫外線強度分布の定在波で露光することにより、周期的に高屈折率nHから低屈折率nLに屈折率が空間変調分布するポリマーからなる体積ホログラムが得られる。フォトポリマー材料からなる導光板4aを用いることで、図6に示すように導光板内部に結合素子611を形成できる。紫外線照射強度に応じて屈折率が変化する感光性材料であれば、フォトポリマーに限らず感光性ガラスを用いてもよい。感光性ガラスは有機材料に比べ、温度変化に対する特性安定性や全反射面に要求される平坦性の点で優れる。
さらに、図5に例示された誘電体多層膜からなる結合素子611と同様に、体積ホログラムからなる結合素子611を導光板4aの第1の主面の入射部に備えてもよい。この場合、導光板4aに透光性ガラス基板を用い、フォトポリマーフィルムからなる体積ホログラム素子を導光板4aの入射部に接合してもよい。
フォトポリマーを用いた体積ホログラムは、屈折率差(nH-nL)が0.05以下と、誘電体多層膜からなる結合素子に比べ小さい値であるため反射波長帯幅が狭い。そのため、導光板伝搬光の波長幅Δλおよび入射角幅Δθが狭い条件で有効となる。体積ホログラムの偏向作用は、屈折率の周期変調構造による回折作用からも説明できる。
図7に、0.5以上の大きな屈折率差(nH-nL)が得られる結合素子611の例を示す。図7に示す結合素子611は、導光板4aの第1の主面の入射部に、屈折率nHで幅wおよび傾斜角αの格子611Hが、Y軸方向に周期Pで形成された傾斜表面回折格子611からなる。格子611HはX軸方向に同じ断面形状が連続し、格子のない領域611Lは屈折率nL=1.0の空気である。したがって、格子611HをnH≧1.5の透明誘電体材料で構成することにより、屈折率差(nH-nL)≧0.5を実現できる。ここで、波長域(B)の入射光を導光板内に伝搬する偏向角θtの回折角となるように、格子611Hの傾斜角α、幅wおよび周期Pを設定する。さらに、波長域(B)で回折効率が最大となる格子611Hの深さDを設定する。
このような傾斜表面回折格子611からなる結合素子611は、体積ホログラムと比べ大きな屈折率差(nH-nL)が得られるため、結合素子の深さDを薄くでき、波長幅Δλおよび入射角幅Δθが広い入射光に対して高効率で導光板伝搬光を生成できる。傾斜表面回折格子611は、回折効率の偏光依存性があり、S偏光の光を回折してP偏光の光を直進透過させる偏光選択性を実現できる。
一般に、格子周期Pの回折格子に入射角θinで入射する波長λの入射光が、回折格子により回折され、屈折率nGの導光板を透過する時、回折次数m(mは整数)の回折角θmは式(2)で定義される。
sin(θm)=sin(θin)+mλ/P (2)
格子断面形状に関わらず、式(3)の条件を満たせば、m≧1の回折光は発生しない。
|sin(θin)+λ/P|>1 (3)
矩形格子断面m=-1の透過回折光が最大効率となる条件は、θm=-θinのリトロー配置として知られていて、式(4)に相当する。
-sin(θm)=sin(θin)=λ/(2×P) (4)
-1次回折光を発生させるためには、式(4)において、λ/(2×P)<1を満たすことが前提条件である。式(3)および式(4)より、均一屈折材料からなる断面形状が略線対称の矩形格子において、格子周期Pと波長λの比が0.5~1.5の範囲で、リトロー配置斜入射角θinの条件であれば、回折角θm=-θinの角度方向に-1次回折光が発生し、P偏光に比べS偏光が相対的に低い格子深さDにて高い回折効率が得られる。
また、断面が三角形の格子形状の中心軸を傾斜させた傾斜表面回折格子とすることにより、最大回折効率となる入射角を0°まで変化させた格子形状でも、回折効率は入射偏光に依存する。このとき、P偏光に比べS偏光の入射光の方が小さなP/λおよびD/Pの条件で最大回折効率が得られるため、導光板内伝搬に有利な回折角を格子作製に有利な低い格子深さで実現できる。
ここで、結合素子611の-1次回折光は導光板4a内部の回折角θtを用いて式(5)で規定される。
nG×sin(θt)=sin(θin)-λ/P (5)
したがって、θin≒0°では、nG×sin(θt)=-λ/Pとなる。導光板の主面で全反射される条件は、|nG×sin(θt)|=λ/P>1であるため、前述の0.5<P/λ<1.5と併せて、式(6)が傾斜表面回折格子からなる結合素子611を用いて導光板内を光が伝搬する条件となる。
0.5<P/λ<1.0 (6)
すなわち、可視域の入射光のうち、導光板の内部を伝搬する波長域のS偏光の入射光に対して高い回折効率が得られるように、式(6)を満たす周期Pからなる傾斜表面回折格子の傾斜角αおよび深さDに加工する。図8A、図8Bに傾斜表面回折格子の図7とは別の形状を例示する。
格子611Hの断面形状は、図7に例示した矩形格子を角度αで傾斜させた平行四辺形でもよい。格子611Hの断面形状は、2つの格子壁面の傾斜角αとβが異なる図8Aに例示した台形形状でもよい。また、格子表面に平坦部がわずかにあるか、またはない図8Bに例示した傾斜三角形状としてもよい。
このような格子611Hは、パターニング用マスクと紫外線露光機や電子ビーム露光機を用いて導光板4aの第1の主面に塗布されたレジストをパターニングした後、ドライエッチングにより導光板4aの入射部に格子を加工してもよい。格子形状の安定性や生産性の点で、格子611Hが加工された型を用いて、導光板4aの入射部に紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂に所期の格子形状を転写するインプリント製法が有効である。インプリント製法では硬化樹脂からなる格子611Hを変形させることなく型から安定して離形できるために、図8Aおよび図8Bに示す台形または三角形の格子断面形状が好ましい。
結合素子611は、その形状を傾斜表面回折格子とすることで、入射角が略0°のS偏光の入射光に対し、導光板内を伝搬する高い回折効率の回折光が得られる。しかし、傾斜表面回折格子の回折効率の波長依存性および偏光依存性は不完全な場合があるため、前述の波長選択の波長板と吸収層を併用するとよい。
傾斜表面回折格子の格子611Hの形状に依存せず偏光依存性を実現する構成例を以下に示す。図7および図8A、8Bの格子611Hとして、例えば異常光屈折率neおよび常光屈折率no(ne>no)の高分子液晶からなる複屈折材料を用い、格子間611Lに屈折率ns(ns≒no)の等方屈折率材料からなる充填剤を充填した構造とする。格子611Hの異常光屈折率の方向がX軸方向で入射光のS偏光に作用する屈折率とし、常光屈折率の方向がY軸方向で入射光のP偏光に作用する屈折率とする。その結果、入射光のS偏光に対しては、格子611Hと充填剤の屈折率がneとns(≒no)で異なるため、傾斜表面回折格子として機能する。
一方、P偏光に対しては、格子611Hと充填剤の屈折率がnoとns(≒no)で同一であるため、格子611Hの形状に関わらず回折素子として機能しない。その結果、S偏光の入射光は高効率で導光板内を伝搬する回折角度に偏向され、P偏光の入射光は回折損失なく導光板を直進透過する偏光回折格子が得られる。
例えば、格子611Hの型基板と導光板4aの間に重合前の液晶モノマーを充填した後、紫外線を照射して重合固化する。そうすると、格子611Hの長手(X軸)方向に液晶分子配向が揃い、屈折率がS偏光に対してneでP偏光に対してnoとなる高分子液晶複屈折格子611Hが得られる。なお、液晶モノマーの配向性を高めて重合後の屈折率差(nH-nL)を大きな値に維持するため、格子611Hの型基板の液晶モノマーに接する面に配向膜を備えてもよい。具体的には、ポリイミド膜を塗布してX軸方向にラビング処理を施す、あるいは、偏光方向の揃った紫外線を照射すると偏光方向に配向処理される光配向膜を格子611Hの型基板に塗布した後、X軸方向に偏光の揃った紫外線を照射してもよい。
複屈折材料からなる傾斜表面回折格子611Hとして、高分子液晶の代わりにネマティック液晶(低分子液晶)を用いてもよい。誘電率異方性を有するネマティック液晶層と均一屈折率高分子層が交互に周期構造をなすホログラフィックPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)とし、ネマティック液晶層へ電圧印加することにより回折効率を切替できる結合素子としてもよい。
主に、導光板4aの入射部に形成される結合素子611について説明したが、導光板4b、4cの入射部に形成される結合素子621、623も、各波長域の導光板伝搬光に対して同様の機能が得られる構成とすればよい。
また、導光板4a、4bおよび4cの出射部に形成される結合素子612、622および632は、ヘッドマウントディスプレイのような装置では外界の実像も鮮明に視認する場合がある。そのため、入射部に形成される結合素子に比べ、導光板4cから導光板4bを経て導光板4aを透過する可視域の高い直進透過率が得られるとよい。すなわち、各導光板の伝搬光を出射部側に取出す結合素子の効率は低い設定となるため、回折格子を結合素子に用いる場合は、-1次回折光の回折効率(I-1)と、0次透過光の回折効率(I0)と、の比I-1/I0が0.05~1となるように格子形状を設計すればよい。
図3の結合素子612、622および632は、導光板4a、4bおよび4cの第1の主面に形成され、導光板内の伝搬光を所期の効率で出射部に透過回折により偏向するが、これらの結合素子をそれぞれ導光板4a、4bおよび4cの第2の主面に形成し、導光板内の伝搬光を反射回折により偏向して出射部から取り出す構成でもよい。反射型回折位相格子では、格子凹凸部の光路長差が(格子屈折率)×(格子深さ)となり、透過型回折位相格子の格子凹凸部の光路長差{(格子屈折率)-1}×(格子深さ)に比べて大きな値となるため、相対的に浅い格子で同じ回折効率が得られる。その結果、導光素子100の出射部と対向する方向からの入射光7に対しては透過型回折格子として作用するため、回折効率が抑制されて直進透過率が向上する。
(導光板)
導光板は全反射によって光を導光するため、高屈折率の材料ほど小さい入射角の光まで全反射を実現できる。そのため、d線(587.56nm)での屈折率は、1.65以上が好ましく、1.70以上がより好ましく、1.75以上が特に好ましい。
図9に、導光板4aの第1の主面4a_S1の光入射部および光出射部に、結合素子611と612をそれぞれ備えた構成例を示す。なお、結合素子612は、第1の主面4a_S1に備えられる代わりに、第2の主面4a_S2に備わる構成でもよい。さらに、図9に示す構成ではなく、導光板4aの第2の主面4a_S2の光入射部および光出射部にそれぞれ結合素子611と612を形成した構成でもよい。その場合は、結合素子で反射偏向された波長域の入射光が導光板内を全反射して伝搬する。
導光板4aの第1の主面4a_S1と第2の主面4a_S2は、通常、光学研磨面である。両主面の表面粗さRaは、例えば、入射光の波長の1/100以下であり、1/1000以下が好ましい。また、平行度は30秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましい。さらに、導光板4aの基板厚の公差は、平均値に対して±3%以下が好ましく、±1%以下がより好ましい。なお、本明細書において、表面粗さRaと記載した場合、JIS B 0601~JIS B 0031による算術平均粗さ(中心線平均粗さ)を指すものとする。
導光板4aの第1の主面4a_S1と第2の主面4a_S2は、傷や汚れがあると散乱光が発生し全反射伝搬光が減少するため、光ファイバーの光伝搬コア部を覆うクラッド層のように、表面に導光板4aより低い屈折率の保護層を均一厚に形成してもよい。
また、結合素子611で偏向されて導光板4aを伝搬し、結合素子612で偏向されて出射部に取出される画像信号光以外の光が迷光となって重畳すると画質劣化を招く。迷光の重畳を抑制するために、導光板4aの第1の主面4a_S1と第2の主面4a_S2以外の面には光吸収剤を塗布するなどして、遮光機能を持たせるとよい。具体的には、導光板4aの端面を粗面としたり、可視光を吸収する黒樹脂81aおよび82aを塗布したりして、結合素子611および612で発生した迷光成分(図9にて、点線および一点鎖線で示す光線)を吸収してもよい。
以上、導光板について図3に示す導光素子100における導光板4aを例に説明した。導光素子100における導光板4bおよび導光板4cについても、導光板4aと同様にできる。
以下に、本発明の光学素子の実施例を説明する。具体的には、図1Bに示すのと同様の構成の光学素子を以下のとおり作製した。
(実施例1)第1の波長域を、波長域(1)とする光学素子
(1)1/2波長板1Aの製造
透明基板11a、11bの片面に均一に塗布されたポリイミド膜を加熱固化した後、一方向にラビング処理することで液晶配向膜12a、12bとする。透明基板上の配向膜側に重合前の液晶モノマーを均一膜厚に塗布する。そして、ネマティック液晶相状態の温度にて紫外線を照射することにより重合固化させて透明基板11a、11b上に、それぞれ、高分子液晶層13a、13bが形成される。ここで、ラビング方向にダイレクターが揃った高分子液晶層の屈折率異方性Δnは0.10で、リタデーションRdが308nmとなるように膜厚を略3.08μmとする。液晶モノマーは、重合固化時にネマティック液晶相を示し、重合後の高分子液晶状態で大きな屈折率異方性Δnを維持し、可視光に対して透明な材料を用いる。
次に、高分子液晶層13aの遅相軸と13bとの遅相軸(異常光屈折率をなす)方向が45°の角度を成すように調整し、紫外線硬化接着剤15を用いて、それぞれの高分子液晶層側を接合し、紫外線照射して接着固定する。なお、透明基板11aの空気との界面には、可視域の光に対する反射率が0.5%以下となる反射防止膜(図1Bには不図示)を設ける。
このようにして得られた波長板1Aの分光透過率を分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製:U4150)で測定すると、波長410~650nmの可視光において92%以上の平均透過率を確認できる。
次に、分光光度計の光源と波長板との間の光路中にP偏光の光のみを透過する偏光子を配置し、P偏光の光のみ出射する光源を作る。そして、波長板1Aと分光光度計の光検出器との間の光路中に透過直線偏光方向をP偏光とする検光子を配置し、波長板の偏光透過率を測定する。なお、入射光のP偏光方向が、高分子液晶層13aの遅相軸と22°の角度を成し、高分子液晶層13aの遅相軸と67°の角度を成すように波長板1Aを配置する。
ここで、波長板1Aを備えないときの(P偏光の光の)分光透過強度I0ーpを基準に、波長板1Aを配置したときのP偏光透過強度IPとI0ーpの比rPをIP/I0ーpとする。同様に、検光子の透過偏光方向をS偏光に設定し、波長板1Aを備えないときの(S偏光の光の)分光透過強度I0ーsを基準に、波長板1Aを配置したときのS偏光透過強度ISとI0ーsの比rSをIS/I0ーsとする。また、偏光消光比ExをIS/IPとすると、Ex=rS/rPで関係付けられるのでrSとrPの測定により、波長490~650nmの光に対する、偏光消光比Exが20以上となり、第1の波長域が波長域(1)の1/2波長板1Aとなっていることを確認できる。
(2)吸収層2Aおよび反射防止層3の形成
次に、1/2波長板1Aの透明基板11bの表面に第1の波長域が波長域(1)に対応する吸収層2Aを形成する。ポリイミド樹脂C3G30(商品名;三菱ガス化学製)の100質量部に対して色素としてSUDAN-II(山田化学工業社製、λmaxD;495nm)を8質量部およびFDG-002(山田化学工業社製、λmaxD;528nm)を5質量部、およびシクロヘキサンを加えて十分に撹拌し、均一に溶解させる。得られた溶液を透明基板11bの表面に塗布し、乾燥して膜厚6.7μmの吸収層2Aを得る。さらに、吸収層2A上にTiO2およびSiO2を交互に積層した誘電体多層膜からなる反射防止層3を形成して光学素子10Aを得る。
なお、吸収層2Aにおける、分光透過率を分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製:U4150)で測定すると、表1に示す特性が得られる。表1から分かるように、最大吸収波長λmaxは410~580nmの範囲内を確認できる。また、第2の波長域410~λS1[nm](λS1:560~600nm)における光の平均透過率は10%以下、λL80%-λL10%は50nm以下を確認できる。さらに、波長600~700nmの光のOD値(OD600-700)と、波長410~480nmの光のOD値(OD410-480)との比(OD600-700/OD410-480)が0.1以下を確認できる。
また、図10に上記で得られた吸収層2Aにおける波長と透過率および波長と偏光消光比の関係を示す。図10から、実施例1で得られた吸収層2Aは、第2の波長域の光の透過率を大きく低減できるとともに第1の波長域の光を高くし、かつ、第2の波長域と第1の波長域との間の透過率変化を急峻にできることが分かる。さらに、本例の場合、1/2波長板1Aにて、偏光消光比が十分に低下しきれていない波長域(例えば、560nm未満)については、P偏光の漏れ光成分が存在するが、吸収層2Aにより、漏れ光成分を十分に吸収できるので、この場合、第2の波長域のS偏光成分を高効率で選択的に取り出せる。
(実施例2)第1の波長域を、波長域(2)とする光学素子
(1)1/2波長板1Aの製造
1/2波長板1Aは、実施例1と同じ材料および方法で作製する。相違点は、高分子液晶層13a、13bのリタデーションRdが275nmとなるように膜厚を略2.75μmとし、高分子液晶層13aの遅相軸と13bとの遅相軸(異常光屈折率をなす)方向が44°の角度を成すように調整する。なお、入射光のP偏光方向が、高分子液晶層13aの遅相軸と22°の角度を成し、高分子液晶層13aの遅相軸と67°の角度を成すように波長板1Aを配置する。このようにして得られた波長板1Aの分光透過率は、波長410~650nmの可視光において92%以上の平均透過率を確認できる。また、偏光消光比ExをIS/IPとすると、Ex=rS/rPで関係付けられるのでrSとrPの測定により、波長440~650nmの光に対する、偏光消光比Exが20以上となり、第1の波長域が波長域(2)の1/2波長板1Aとなっていることを確認できる。
(2)吸収層2Aおよび反射防止層3の形成
次に、1/2波長板1Aの透明基板11bの表面に第1の波長域が波長域(2)に対応する吸収層2Aを形成する。ポリイミド樹脂C3G30(商品名;三菱ガス化学製)の100質量部に対して色素としてFDB-005(山田化学工業社製、λmaxD;453nm)を8質量部およびFDB-006(山田化学工業社製、λmaxD;477nm)を1質量部、およびシクロヘキサンを加えて十分に撹拌し、均一に溶解させる。得られた溶液を透明基板11bの表面に塗布し、乾燥して膜厚7.5μmの吸収層2Aを得る。さらに、吸収層2A上にTiO2およびSiO2を交互に積層した誘電体多層膜からなる反射防止層3を形成して光学素子10Aを得る。
なお、吸収層2Aにおける、分光透過率を分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製:U4150)で測定すると、表2に示す特性が得られる。表2から分かるように、最大吸収波長λmaxは410~500nmの範囲内を確認できる。第2の波長域410~λS2[nm](λS2:480~520nm)における光の平均透過率は10%以下、λL80%-λL10%は50nm以下を確認できる。さらに、波長600~700nmの光のOD値(OD600-700)と、波長410~480nmの光のOD値(OD410-480)との比(OD600-700/OD410-480)が0.1以下を確認できる。
また、図11に上記で得られた吸収層2Aにおける波長と透過率および波長と偏光消光比の関係を示す。図11から、実施例2で得られた吸収層2Aは、第2の波長域の光の透過率を大きく低減できるとともに第1の波長域の光を高くし、かつ、第2の波長域と第1の波長域との間の透過率変化を急峻にできる。さらに、本例の場合、1/2波長板1Aにて、偏光消光比が十分に低下しきれていない波長域(例えば、480nm未満)については、P偏光の漏れ光成分が存在するが、吸収層2Aにより、漏れ光成分を十分に吸収できるので、この場合、第2の波長域のS偏光成分を高効率で選択的に取り出せる。