以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。また、以下の説明では、タイヤ子午断面とは、タイヤ回転軸を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。実施形態に係る空気入りタイヤ1は、ORタイヤ(Off the Road Tire)と呼ばれる、建設車両用ラジアルタイヤになっている。本実施形態として図1に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ子午断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2は、ゴム組成物であるトレッドゴム2aによって構成されている。トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、接地面3として形成されている。
トレッド部2の接地面3には、タイヤ周方向に延びる周方向溝15やタイヤ幅方向に延びるラグ溝等の溝が複数形成されており、トレッド部2には、これらの溝によって複数の陸部10が区画形成されている。
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両端は、ショルダー部4として形成されており、ショルダー部4から、タイヤ径方向内側の所定の位置までは、サイドウォール部5が配設されている。つまり、サイドウォール部5は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されている。サイドウォール部5は、ゴム組成物であるサイドウォールゴム5aによって構成されている。また、タイヤ幅方向両側のそれぞれのサイドウォール部5におけるタイヤ径方向内側寄りの位置には、リムチェックライン9が形成されている。リムチェックライン9は、サイドウォール部5の表面から突出し、タイヤ周方向における一周に亘って形成されている。
さらに、それぞれのサイドウォール部5のタイヤ径方向内側には、ビード部20が位置しており、ビード部20は、サイドウォール部5と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されている。即ち、ビード部20は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に一対が配設されている。一対のビード部20のそれぞれにはビードコア21が設けられており、それぞれのビードコア21のタイヤ径方向外側にはビードフィラー50が設けられている。ビードコア21は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー50は、後述するカーカス6のタイヤ幅方向端部がビードコア21の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。また、ビードフィラー50は、ビードコア21の外周面に当接して配設されるローアーフィラー51と、ローアーフィラー51よりもタイヤ径方向外側寄りの位置に配設されるアッパーフィラー52とを有している。
ビード部20は、5°テーパーの規定リムRを有するリムホイールに装着することができるように構成されている。即ち、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、ビード部20と嵌合する部分がリムホイールの回転軸に対して5°±1°の傾斜角でタイヤ幅方向における内側から外側に向かうに従ってタイヤ径方向外側に向かう方向に傾斜する規定リムRに装着することが可能になっている。なお、規定リムRとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。
トレッド部2のタイヤ径方向内側には、ベルト層7が設けられている。ベルト層7は、3枚以上のベルトプライを積層する多層構造をなし、一般的なORタイヤでは、4枚~8枚のベルトプライが積層される。本実施形態では、ベルト層7は5層のベルトプライ7a,7b,7c,7d,7eが積層されている。このようにベルト層7を構成するベルトプライ7a,7b,7c,7d,7eは、スチール或いは有機繊維材からなる複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成される。また、ベルトプライ7a,7b,7c,7d,7eは、タイヤ周方向に対するベルトコードのタイヤ幅方向の傾斜角が互いに異なっており、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。これにより、ベルト層7は、構造強度が高められている。5層のベルトプライ7a,7b,7c,7d,7eは、例えば、高角度ベルト7aと、一対の交差ベルト7b,7cと、ベルトカバー7dと、周方向補強層7eとから構成される。
このベルト層7のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部5のタイヤ赤道面CL側には、補強層であるカーカス6が連続して設けられている。このカーカス6は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設されるビードコア21間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。詳しくは、カーカス6は、一対のビード部20間に架け渡されており、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部20のうち、一方のビード部20から他方のビード部20にかけて配設されている。また、カーカス6は、ビードコア21及びビードフィラー50を包み込むように、ビード部20でビードコア21のタイヤ径方向内側を通ってタイヤ幅方向に折り返されている。即ち、カーカス6は、ビードコア21のタイヤ幅方向内側からビードコア21のタイヤ径方向内側を通り、ビードコア21のタイヤ幅方向外側にかけて配設されるように、ビード部20でビードコア21周りに折り返されている。これによりカーカス6は、ビードコア21のタイヤ幅方向における内側と外側との間にかけて配設されている。
このように配設されるカーカス6のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成るコード部材である複数のカーカスコードをゴム部材であるコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。また、カーカス6は、タイヤ周方向に対するカーカスコードの傾斜角であるカーカス角度が、85°以上95°以下となっている。
また、カーカス6の内方側、或いは、当該カーカス6の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ8がカーカス6に沿って形成されている。
図2は、図1のA部詳細図である。カーカス6におけるビードコア21周りに折り返されている部分には、カーカス6を補強する補強層であるチェーファーが配設されている。チェーファーとしては、例えばコード部材としてスチールコードが用いられるスチールチェーファーや、有機繊維材からなるコード部材が用いられるナイロンチェーファーが適用される。ナイロンチェーファーは、例えば、複数の有機繊維コードを配列して圧延加工して成るシート状部材、複数の有機繊維コードを織り上げて成る織物、これらのシート状部材あるいは織物をゴム引きして成る複合材などから構成される。本実施形態では、チェーファーとして、スチールコードが用いられるスチールチェーファー55と、ナイロンチェーファーであるサブチェーファー56,57との3枚が用いられており、これらの3枚のチェーファーは、積層されて配設されている。
このうち、スチールチェーファー55は、カーカス6における折り返されている部分のカーカス6の外側でカーカス6に重ねられて配設され、カーカス6と同様にビードコア21周りにタイヤ幅方向における内側から外側に折り返されてタイヤ周方向に連続的に配設されている。つまり、スチールチェーファー55は、カーカス6がビードコア21よりもタイヤ幅方向内側に位置している部分ではカーカス6のタイヤ幅方向内側に位置し、カーカス6がビードコア21よりもタイヤ径方向内側に位置している部分では、カーカス6のタイヤ径方向内側に位置し、カーカス6がビードコア21よりもタイヤ幅方向外側に位置している部分ではカーカス6のタイヤ幅方向外側に位置している。
また、サブチェーファー56,57は、スチールチェーファー55の厚さ方向におけるカーカス6が位置する側の反対側に、2枚が重ねられて配設されている。つまり、サブチェーファー56,57は、スチールチェーファー55と同様に、ビードコア21周りにタイヤ幅方向における内側から外側に折り返されてタイヤ周方向に連続的に配設されている。3枚のチェーファーは、空気入りタイヤ1の子午断面であるタイヤ子午断面において、チェーファーの厚さ方向におけるビードコア21が位置する側を内側、ビードコア21が位置する側の反対側を外側とする場合に、これらのようにスチールチェーファー55が一番内側に配置され、その外側にサブチェーファー56が配置され、さらにその外側にサブチェーファー57が配置されている。スチールチェーファー55の外側に配置されるサブチェーファー56,57は、補助的な補強層になっている。
また、カーカス6と、スチールチェーファー55との間には、緩衝ゴム61が挟み込まれて配設されている。詳しくは、緩衝ゴム61は、カーカス6におけるビードコア21のタイヤ幅方向外側に位置する部分と、スチールチェーファー55におけるビードコア21のタイヤ幅方向外側に位置する部分との間に配設されている。また、緩衝ゴム61は、タイヤ子午断面において、スチールチェーファー55やサブチェーファー56,57よりも、タイヤ径方向外側の領域にも配設されている。つまり、緩衝ゴム61は、タイヤ径方向におけるスチールチェーファー55が配設されている範囲では、カーカス6とスチールチェーファー55との間に配設され、且つ、カーカス6におけるビードコア21のタイヤ幅方向外側に位置する部分に沿って、スチールチェーファー55やサブチェーファー56,57よりもタイヤ径方向外側の領域にかけて配設されている。
さらに、スチールチェーファー55やサブチェーファー56,57の外側には、リムクッションゴム60が配設されており、リムクッションゴム60は、サブチェーファー57の外側に配設されている。リムクッションゴム60は、スチールチェーファー55やサブチェーファー56,57と同様に、ビードコア21のタイヤ幅方向内側からタイヤ径方向内側、タイヤ幅方向外側に亘って配設されており、タイヤ周方向に連続的に設けられている。このように配設されるリムクッションゴム60は、規定リムRのフランジに対するビード部20の接触面を構成している。
また、ビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されているビードコア21は、タイヤ子午断面で見た場合における形状が、略六角形の形状で形成されている。具体的には、ビードコア21は、ビードコア21全体で見た場合におけるビードコア21の内周面であるビードコア底23とビードコア21の外周面22とが略平行に形成されており、タイヤ幅方向における両端側の位置に、タイヤ幅方向に突出する角部を有する、略六角形の形状で形成されている。
なお、この場合におけるビードコア21のビードコア底23とは、タイヤ子午断面において、ビードコア21のタイヤ径方向内側の位置で一列に並んでビードコア21の表面を構成する複数のビードワイヤにおける、ビードコア21の表面側に露出する部分に接する仮想の直線によって示される面をいう。同様に、ビードコア21の外周面22とは、空気入りタイヤ1をタイヤ子午断面で見た場合において、ビードコア21のタイヤ径方向外側の位置で一列に並んでビードコア21の表面を構成する複数のビードワイヤにおける、ビードコア21の表面側に露出する部分に接する仮想の直線によって示される面をいう。
また、ビード部20は、ビード部20の内周面20aに位置するビードベース部30と、ビードベース部30のタイヤ幅方向内側に位置するトウ部32と、ビードベース部30のタイヤ幅方向外側に位置するヒール部35と、ヒール部35のタイヤ径方向外側に位置してタイヤ幅方向外側に面する背面部40と、を有している。このうち、ビードベース部30は、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置すると共に、ビードコア底23のタイヤ幅方向における範囲の大部分の範囲に形成されている。また、ビードベース部30は、タイヤ子午断面において直線状に形成されると共に、タイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かうに従ってタイヤ径方向外側に広がる方向に、タイヤ回転軸に対して傾斜している。
なお、この場合における、ビードベース部30が直線状に形成される状態は、タイヤ子午断面においてビードベース部30のタイヤ幅方向における両端を仮想の直線で結んだ際に、ビードベース部30の、仮想の直線から離間している部分と、仮想の直線との最大距離が、2.5mm以下となる状態をいう。
タイヤ回転軸に対して傾斜するビードベース部30は、タイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かうに従ってタイヤ径方向外側に広がる方向に、タイヤ回転軸に対して9°以上12°以下の範囲内で傾斜している。即ち、ビードベース部30は、タイヤ回転軸と平行な線となす角度A2が、9°以上12°以下の範囲内となって形成されている。
なお、このビードベース部30の角度A2は、タイヤ赤道面CLに対してタイヤ幅方向両側に位置する一対のビード部20のタイヤ幅方向における間隔を、空気入りタイヤ1を規定リムR(図1参照)に装着した場合における間隔にした状態での角度になっている。つまり、空気入りタイヤ1は撓むため、ビードベース部30の角度も空気入りタイヤ1の撓みの状態に応じて変化するが、ビードベース部30は、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着しない状態において、タイヤ幅方向両側のビード部20のタイヤ幅方向における間隔を、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における間隔にした状態でのタイヤ回転軸に対する角度A2が、9°以上12°以下の範囲内になっている。
また、ビードベース部30のタイヤ幅方向内側に位置するトウ部32は、ビードベース部30よりもタイヤ径方向内側に突出して形成されている。詳しくは、トウ部32は、傾斜部33と内端部34とを有しており、傾斜部33は、ビードベース部30のタイヤ幅方向内側の端部に繋がり、タイヤ回転軸に対する傾斜角が、ビードベース部30のタイヤ回転軸に対する傾斜角よりも大きくなっている。これにより、傾斜部33は、タイヤ子午断面において、タイヤ幅方向内側に向かうに従ってタイヤ径方向内側に向かう度合いが、ビードベース部30における、タイヤ幅方向内側に向かうに従ってタイヤ径方向内側に向かう度合いよりも大きくなっている。
また、内端部34は、タイヤ子午断面において、傾斜部33のタイヤ幅方向内側の端部から、タイヤ回転軸に対する傾斜角が小さくなる方向に屈曲することにより形成されており、トウ部32における、最もタイヤ径方向内側に位置する部分になっている。トウ部32は、このように傾斜部33と内端部34とが形成されることにより、ビードベース部30よりもタイヤ径方向内側に突出して形成されている。このように形成されるトウ部32のタイヤ幅方向における内側端部、即ち、内端部34のタイヤ幅方向における内側端部は、タイヤ内面75に接続されている。
また、ビードベース部30とトウ部32とは、タイヤ径方向外側に凸となる屈曲部であるトウ側屈曲部45で接続されており、トウ側屈曲部45は、タイヤ幅方向における位置が、ビードコア底23のタイヤ幅方向における内側端部23iのタイヤ幅方向における位置よりも、タイヤ幅方向内側に位置している。なお、ビードベース部30とトウ部32とを接続するトウ側屈曲部45は、ビードコア21のタイヤ幅方向における内側端部であるビードコア内側端部26のタイヤ幅方向における位置よりも、タイヤ幅方向内側に位置するのが好ましい。
また、ビードベース部30のタイヤ幅方向外側に位置するヒール部35は、タイヤ子午断面において、ビードベース部30と背面部40と円弧状に接続する曲面状の形状で形成されている。この場合における背面部40は、ビード部20におけるタイヤ外面70になっており、ビードコア21のタイヤ幅方向外側に位置してタイヤ幅方向外側を向く面になっている。ヒール部35は、タイヤ子午断面において、タイヤ幅方向外側方向とタイヤ径方向内側方向とが合わさった方向に凸となる円弧状の形状で形成され、背面部40とビードベース部30とを接続している。
また、ビードコア21は、ビードコア底23が、タイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かうに従ってタイヤ径方向外側に広がる方向に、タイヤ回転軸に対して12°以上15°以下の範囲内で傾斜している。即ち、ビードコア底23は、タイヤ回転軸に平行な線とのなす角度A1が、12°以上15°以下の範囲内になっている。このビードコア底23の角度A1も、ビードベース部30の角度A2と同様に、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着しない状態において、タイヤ幅方向両側のビード部20のタイヤ幅方向における間隔を、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における間隔にした状態での角度になっている。
また、ビードコア21のビードコア底23とタイヤ回転軸に平行な線とのなす角度A1は、ビードベース部30とタイヤ回転軸と平行な線となす角度A2に対して、概ね大きくなっている。このため、ビードコア21のビードコア底23は、ビードベース部30に対して、タイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かうに従って、ビードベース部30との距離が大きくなる方向に傾斜している。具体的には、ビードコア21は、ビードコア底23が、ビードベース部30に対して、タイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かうに従ってビードベース部30との距離が大きくなる方向に3°以上5°以下の範囲内で傾斜している。
また、ビードコア21は、ビードコア底23の幅CW1が、ビード部20の内周面20aの幅BBWに対して、40%以上44%以下の範囲内になっている。即ち、ビードコア21は、ビードコア底23の幅CW1とビード部20の内周面20aの幅BBWとの関係が、0.40≦(CW1/BBW)≦0.44の範囲内になっている。この場合におけるビードコア底23の幅CW1は、タイヤ子午断面でのビードコア底23の延在方向におけるビードコア底23の幅になっている。また、ビード部20の内周面20aの幅BBWは、タイヤ子午断面におけるトウ部32の先端部32aとヒール部35のビードヒール仮想点35aとの距離になっている。ここでいうトウ部32の先端部32aは、トウ部32が有する内端部34のタイヤ幅方向における内側端部であり、内端部34とタイヤ内面75とが交差する部分になっている。また、ビードヒール仮想点35aは、ビードベース部30の延長線30aとタイヤ外面70の延長線70aとの交点になっている。即ち、ビード部20の内周面20aの幅BBWは、トウ部32とビードベース部30とヒール部35とを含んだ幅になっている。
図3は、図2に示すビードコア21の形状についての説明図である。断面形状が六角形の形状で形成されるビードコア21は、ビードコア底23の幅CW1が、ビードコア21の最大幅CWmaxに対して、71%以上78%以下の範囲内になっている。即ち、ビードコア21は、ビードコア底23の幅CW1とビードコア21の最大幅CWmaxとの関係が、0.71≦(CW1/CWmax)≦0.78の範囲内になっている。この場合におけるビードコア21の最大幅CWmaxは、タイヤ子午断面においてビードコア底23の延在方向に沿った方向における、ビードコア21の最大幅になっている。つまり、ビードコア21の最大幅CWmaxは、ビードコア21のタイヤ幅方向における内側端部であるビードコア内側端部26と、ビードコア21のタイヤ幅方向における外側端部であるビードコア外側端部27との、ビードコア底23の延在方向と平行な方向における距離になっている。
また、ビードコア21は、ビードコア底23の幅CW1が、ビードコア21の外周面22の幅CW2よりも広くなっている。このため、ビードコア21の最大幅CWmaxに対する外周面22の幅CW2の比率は、ビードコア21の最大幅CWmaxに対するビードコア底23の幅CW1の比率よりも小さくなっている。具体的には、ビードコア21の外周面22の幅CW2は、ビードコア21の最大幅CWmaxに対して、55%以上63%以下の範囲内になっている。
また、ビードコア21は、ビードコア内側端部26が、ビードコア底23に直交する方向においてビードコア21の重心位置CCよりビードコア底23側に位置している。この場合におけるビードコア21の重心位置CCは、タイヤ子午断面でのビードコア21の断面形状における、いわゆる幾何中心の位置になっている。ビードコア内側端部26は、タイヤ子午断面において、このように定められるビードコア21の重心位置CCとビードコア底23との距離よりも、ビードコア底23との距離が小さくなっており、重心位置CCよりもビードコア底23寄りに位置している。一方で、ビードコア21のビードコア外側端部27は、タイヤ子午断面におけるビードコア底23との距離が、ビードコア21の重心位置CCとビードコア底23との距離に近い距離になっている。
ビードコア21の形状について換言すると、ビードコア21は、ビードコア底23に直交する方向におけるビードコア底23からのビードコア内側端部26の高さCH1と、ビードコア底23に直交する方向におけるビードコア21の最大高さCHmaxとの関係が、0.23≦(CH1/CHmax)≦0.29の範囲内になっている。また、ビードコア21は、ビードコア底23に直交する方向におけるビードコア底23からのビードコア外側端部27の高さCH2と、ビードコア底23に直交する方向におけるビードコア21の最大高さCHmaxとの関係が、0.43≦(CH2/CHmax)≦0.57の範囲内になっている。
このように形成される形成されるビードコア21は、少なくとも1本のビードワイヤがタイヤ周方向に巻き回されることによりなり、ビードワイヤの複数の周回部分が、タイヤ幅方向、或いははビードコア底23に沿った方向に並ぶ1つの列と、タイヤ径方向、或いはビードコア21の高さ方向に重なる複数の層を形成している。なお、ビードコア21は、タイヤ子午断面においてビードワイヤの複数の周回部分が列と層を形成していれば、単一のビードワイヤを連続的に巻き回した、いわゆる一本巻き構造であってもよく、複数本のビードワイヤを引き揃えた状態で巻き回した、いわゆる層巻き構造であってもよい。
本実施形態では、ビードコア21は、タイヤ径方向最内側から順に17列の周回部分を含む層、18列の周回部分を含む層、19列の周回部分を含む層、20列の周回部分を含む層、21列の周回部分を含む層、21列の周回部分を含む層、21列の周回部分を含む層、21列の周回部分を含む層、20列の周回部分を含む層、19列の周回部分を含む層、18列の周回部分を含む層、17列の周回部分を含む層、16列の周回部分を含む層、15列の周回部分を含む層、14列の周回部分を含む層の計15層が積層された構造を有する。なお、以降の説明では、この構造を「17+18+19+20+21+21+21+21+20+19+18+17+16+15+14構造」という。同様に、以降の説明では、ビードワイヤの積層構造を、各層に含まれる列の数をタイヤ径方向最内側の層から順に「+」で繋いだ同様の形式で表現する。さらに、本実施形態では、ビードコア21は、タイヤ子午断面においてビードワイヤが俵積み状に積層されている。なお、「俵積み」とは、互いに接している3つの周回部分の中心が略正三角形を形成する積み方であり、六方充填配置と称されることもある充填率の高い積層構造である。
図4は、ビード部20におけるビードコア21の配置位置についての説明図である。ビードコア21は、ビード部20において、ビードコア底23の内側端部23iとビードヒール仮想点35aとのタイヤ幅方向における距離L1と、トウ部32とビードヒール仮想点35aとのタイヤ幅方向における距離L2との関係が、0.67≦(L1/L2)≦0.75の範囲内となる位置に配置されている。この場合におけるトウ部32とビードヒール仮想点35aとのタイヤ幅方向における距離L2は、詳しくは、トウ部32の先端部32aとビードヒール仮想点35aとのタイヤ幅方向における距離L2になっている。即ち、ビードコア21は、ビードコア底23の内側端部23iとビードヒール仮想点35aとのタイヤ幅方向における距離L1が、トウ部32の先端部32aとビードヒール仮想点35aとのタイヤ幅方向における距離L2に対して、67%以上75%以下の範囲内となる位置に配置されている。
図5は、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率についての説明図である。規定リムRへの空気入りタイヤ1の装着時は、ビード部20は、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するゴムが圧縮されることにより、規定リムRに対してタイヤ径方向における外側から内側への押圧力を付与することができ、規定リムRに対する嵌合力を発生することが可能になっている。このように、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率は、ビード部20のタイヤ幅方向における位置によって異なっている。例えば、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率は、タイヤ子午断面におけるビードコア底23のタイヤ幅方向における内側端部23iのタイヤ径方向内側の位置と、ビードコア底23のタイヤ幅方向における外側端部23oのタイヤ径方向内側の位置とで異なっている。
具体的には、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率は、タイヤ子午断面におけるビードコア底23の内側端部23iのタイヤ径方向内側の位置では39%以上50%以下の範囲内になっている。この場合におけるゴムの圧縮率は、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着する前のタイヤ子午断面におけるビードコア底23の内側端部23iとビードベース部30とのタイヤ径方向における距離Diからカーカス6やチェーファーのコード部材等のゴム部材以外の部材の厚さを引いた厚さGi1に対する、規定リムRへの空気入りタイヤ1の装着時にタイヤ径方向に圧縮されるゴム部材の厚さGi2になっている。つまり、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における、ビードコア底23の内側端部23iのタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率Ziは、下記の式(1)で算出する値になっている。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、下記の式(1)で算出する圧縮率Ziが、39%以上50%以下の範囲内になっている。
圧縮率Zi=(Gi2/Gi1)×100・・・(1)
なお、式(1)で用いる、規定リムRへの空気入りタイヤ1の装着時にタイヤ径方向に圧縮されるゴム部材の厚さGi2は、具体的には、ビードベース部30におけるビードコア底23の内側端部23iのタイヤ幅方向における同じ位置となる部分である内側基準位置31iの、規定リムRへの空気入りタイヤ1の装着前と装着後のタイヤ径方向の変位量になっている。ビード部20は、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するリムクッションゴム60の厚さのみでなく、カーカス6が有するコートゴムの厚さや、カーカス6やチェーファーのコード部材等のゴム部材以外の部材の厚さを考慮して、圧縮率Ziが39%以上50%以下の範囲内になるように形成されるのが好ましい。
また、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率のうち、タイヤ子午断面におけるビードコア底23の外側端部23oのタイヤ径方向内側の位置での圧縮率は13%以上22%以下の範囲内になっている。この場合におけるゴムの圧縮率は、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着する前のタイヤ子午断面におけるビードコア底23の外側端部23oとビードベース部30とのタイヤ径方向における距離Doからカーカス6やチェーファーのコード部材等のゴム部材以外の部材の厚さを引いた厚さGo1に対する、規定リムRへの空気入りタイヤ1の装着時にタイヤ径方向に圧縮されるゴム部材の厚さGo2になっている。つまり、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における、ビードコア底23の外側端部23oのタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率Zoは、下記の式(2)で算出する値になっている。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、下記の式(2)で算出する圧縮率Zoが、13%以上22%以下の範囲内になっている。
圧縮率Zo=(Go2/Go1)×100・・・(2)
なお、式(2)で用いる、規定リムRへの空気入りタイヤ1の装着時にタイヤ径方向に圧縮されるゴム部材の厚さGo2は、具体的には、ビードベース部30におけるビードコア底23の外側端部23oのタイヤ幅方向における同じ位置となる部分である外側基準位置31oの、規定リムRへの空気入りタイヤ1の装着前と装着後のタイヤ径方向の変位量になっている。ビード部20は、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するリムクッションゴム60の厚さのみでなく、カーカス6が有するコートゴムの厚さや、カーカス6やチェーファーのコード部材等のゴム部材以外の部材の厚さを考慮して、圧縮率Zoが13%以上22%以下の範囲内になるように形成されるのが好ましい。
これらのように構成される空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、まず、リムホイールが有する規定リムRに対して、ビードベース部30、トウ部32、ヒール部35を嵌合させることにより、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着し、空気入りタイヤ1をリムホイールに対してリム組みをする。空気入りタイヤ1をリム組みしたらインフレートし、車両には、リム組みしてインフレートした状態の空気入りタイヤ1を装着する。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、例えば、ホイールローダー等の建設車両に装着する建設車両用の空気入りタイヤ1として用いられる。
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、接地面3のうち下方に位置する接地面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。車両は、接地面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。例えば、駆動力を路面に伝達する際には、車両が有するエンジン等の原動機で発生した動力がリムホイールに伝達され、リムホイールから空気入りタイヤ1に伝達される。
ここで、リムホイールと空気入りタイヤ1とは、リムホイールの規定リムRに対する、空気入りタイヤ1のビード部20の嵌合力である締め付け力によって装着されており、即ち、ビード部20とリムホイールとの間に摩擦力によって装着されている。このビード部20による締め付け力は、ビードワイヤがリング状に巻かれることにより形成されたビードコア21によって確保される。
つまり、空気入りタイヤ1をリムホイールに装着する際には、ビード部20におけるビードコア21よりもタイヤ径方向内側に位置するリムクッションゴム60等のゴム部材が、ビードコア21と規定リムRに挟まれて圧縮されることにより、空気入りタイヤ1から規定リムRに対してタイヤ径方向内側への押圧力が発生する。この押圧力は、ビード部20による規定リムRへの締め付け力となり、空気入りタイヤ1は、この締め付け力によって規定リムRとの間に大きな摩擦力が発生することにより規定リムRに嵌合し、リムホイールに装着される。
空気入りタイヤ1は、このようにビード部20の締め付け力に伴う摩擦力によりリムホイールに装着されるため、空気入りタイヤ1とリムホイールとの間に、摩擦力と比較して大きな回転トルクが発生した場合には、空気入りタイヤ1とリムホイールとの間で滑りが発生することがある。例えば、ビード部20の締め付け力が弱く、且つ、リムホイールから空気入りタイヤ1に伝達される回転トルクが大きい場合は、ビード部20とリムホイールとの間に摩擦力による拘束力に回転トルクが打ち勝ち、ビード部20とリムホイールとの間で滑りが発生することがある。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、このようなビード部20とリムホイールとの間の滑りを抑制することができるように構成されている。
具体的には、ビードコア21のビードコア底23が、ビードベース部30に対して、タイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かうに従ってビードベース部30との距離が大きくなる方向に傾斜している。これにより、ビードコア21は、ビードコア底23の内側端部23i寄りの位置、即ち、ビード部20のタイヤ幅方向における内側寄りの位置において、規定リムRとビードコア21との間に位置するリムクッションゴム60等のゴム部材を適切に圧縮することができ、規定リムRに対して適切な締め付け力を発生させることができる。また、ビードコア底23の外側端部23o寄りの位置、即ち、ビード部20のタイヤ幅方向における外側寄りの位置では、規定リムRとビードコア21との間に位置するゴム部材の圧縮率を低下させ、規定リムRに対する締め付け力を低めにすることができるため、リム組み性を確保することができる。
また、ビードコア21は、ビードコア底23がビードベース部30に対して、タイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かうに従ってビードベース部30との距離が大きくなる方向に3°以上5°以下の範囲内で傾斜しているため、リム組み性を悪化させることなく、適切な締め付け力を確保することができる。
つまり、ビードベース部30に対するビードコア底23が3°未満である場合は、ビードコア底23における内側端部23i寄りの位置でのタイヤ径方向の径が大きくなることにより、ビード部20のタイヤ幅方向における内側寄りの位置での締め付け力が弱くなり易くなる。または、ビードベース部30に対するビードコア底23が3°未満である場合は、ビードコア底23における外側端部23o寄りの位置でのタイヤ径方向の径が小さくなることにより、ビード部20のタイヤ幅方向における外側寄りの位置での締め付け力が強くなり過ぎ、リム組み性を確保し難くなる虞がある。また、ビードベース部30に対するビードコア底23が5°より大きい場合は、ビードコア底23における内側端部23i寄りの位置でのタイヤ径方向の径が小さくなることにより、ビード部20のタイヤ幅方向における内側寄りの位置での締め付け力が強くなり過ぎ、リム組み性を確保し難くなる虞がある。または、ビードベース部30に対するビードコア底23が5°より大きい場合は、ビードコア底23における外側端部23o寄りの位置でのタイヤ径方向の径が大きくなることにより、ビード部20のタイヤ幅方向における外側寄りの位置での締め付け力が弱くなり易くなる。
これに対し、ビードベース部30に対するビードコア底23が、3°以上5°以下の範囲内で傾斜している場合には、ビード部20のタイヤ幅方向における内側寄りの位置での締め付け力や、外側寄りの位置での締め付け力を適度な大きさにすることができる。これにより、リム組み性を悪化させることなく、適切な締め付け力を確保することができ、ビード部20とリムホイールとの間の滑りを抑制することができる。
また、ビードコア21は、ビードコア内側端部26が、ビードコア底23に直交する方向においてビードコア21の重心位置CCよりビードコア底23側に位置するため、ビード部20のタイヤ幅方向における内側寄りの位置での規定リムRに対する締め付け力を、より確実に確保することができる。これにより、ビード部20とリムホイールとの間の滑りを、より確実に抑制することができる。
また、ビードコア底23の幅CW1が、ビード部20の内周面20aの幅BBWに対して40%以上44%以下の範囲内で、且つ、ビードコア21の最大幅CWmaxに対して71%以上78%以下の範囲内であるため、リム組み性を悪化させることなく、適切な締め付け力を確保することができる。つまり、ビードコア底23の幅CW1が、ビード部20の内周面20aの幅BBWに対して40%未満であったり、ビードコア21の最大幅CWmaxに対して71%未満であったりする場合は、ビードコア底23の幅CW1が狭過ぎるため、空気入りタイヤ1をリムホイールに対してリム組みした際に、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するビードベース部30の締め付け力が局所的に高くなる虞があり、即ち、ビードベース部30の、規定リムRへの接触圧が局所的に高くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1をリム組みする際における摩擦抵抗が部分的に大きくなるため、リム組み性を確保するのが困難になると共に、締め付け力が低い部分も発生し易くなるため、ビード部20とリムホイールとの間の滑りを効果的に抑制するのも困難になる虞がある。また、ビードコア底23の幅CW1が、ビード部20の内周面20aの幅BBWに対して44%より大きかったり、ビードコア21の最大幅CWmaxに対して78%より大きかったりする場合には、ビードコア底23の幅CW1が広過ぎるため、空気入りタイヤ1をリムホイールに対してリム組みした際における、規定リムRへのビードベース部30の接触圧が高くなる範囲が、広くなり過ぎる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1をリム組みする際における摩擦抵抗が大きくなる範囲が広くなるため、リム組み性を確保するのが困難になる虞がある。
これに対し、ビードコア底23の幅CW1が、ビード部20の内周面20aの幅BBWに対して40%以上44%以下の範囲内で、且つ、ビードコア21の最大幅CWmaxに対して71%以上78%以下の範囲内である場合には、ビードベース部30の締め付け力が局所的に高くなることを抑制すると共に、規定リムRへのビードベース部30の接触圧が高くなる範囲が広くなり過ぎることを抑制することができる。これにより、リム組み時の摩擦抵抗が部分的に大きくなることを抑制し、且つ、リム組み時の摩擦抵抗が大きくなる範囲が広くなり過ぎることを抑制することができるため、リム組み性を悪化させることなく、適切な締め付け力を確保することができ、ビード部20とリムホイールとの間の滑りを、より確実に抑制することができる。これらの結果、リム組み性を確保しつつ、リム滑りを抑制することができる。
また、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率は、ビードコア底23の内側端部23iのタイヤ径方向内側の位置での圧縮率Ziが39%以上50%以下の範囲内であるため、ビード部20とリムホイールとの間での摩擦抵抗の低減と、ビード部20での締め付け力の確保とを、より確実に両立することができる。つまり、ビードコア底23の内側端部23iのタイヤ径方向内側の位置での圧縮率Ziが39%未満である場合は、ビードコア底23の内側端部23iの位置での圧縮率Ziが低過ぎるため、ビード部20のタイヤ幅方向における内側寄りの位置での締め付け力を確保し難くなる虞がある。この場合、ビード部20とリムホイールとの間の滑りを、効果的に抑制するのが困難になる虞がある。また、ビードコア底23の内側端部23iのタイヤ径方向内側の位置での圧縮率Ziが50%を超える場合は、ビード部20のタイヤ幅方向における内側寄りの位置での締め付け力が大きくなり易くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1をリム組みする際における摩擦抵抗を効果的に低減するのが困難になり、リム組み性を確保し難くなる虞がある。
これに対し、ビードコア底23の内側端部23iのタイヤ径方向内側の位置での圧縮率Ziが、39%以上50%以下の範囲内である場合は、空気入りタイヤ1をリム組みする際における、ビード部20とリムホイールとの間での摩擦抵抗が大きくなることを抑制しつつ、ビード部20のタイヤ幅方向における内側寄りの位置での規定リムRに対するビード部20の締め付け力を、より確実に確保することができる。この結果、より確実にリム組み性を確保しつつ、リム滑りを抑制することができる。
また、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率は、ビードコア底23の外側端部23oのタイヤ径方向内側の位置での圧縮率Zoが13%以上22%以下の範囲内であるため、ビード部20とリムホイールとの間での摩擦抵抗の低減と、ビード部20での締め付け力の確保とを、より確実に両立することができる。つまり、ビードコア底23の外側端部23oのタイヤ径方向内側の位置での圧縮率Zoが13%未満である場合は、ビードコア底23の外側端部23oの位置での圧縮率Zoが低過ぎるため、ビード部20のタイヤ幅方向における外側寄りの位置での締め付け力が低くなり過ぎる虞がある。この場合、ビード部20とリムホイールとの間の滑りを、効果的に抑制するのが困難になる虞がある。また、ビードコア底23の外側端部23oのタイヤ径方向内側の位置での圧縮率Zoが22%を超える場合は、ビード部20のタイヤ幅方向における外側寄りの位置での締め付け力を低くし難くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1をリム組みする際における摩擦抵抗を効果的に低減するのが困難になり、リム組み性を確保し難くなる虞がある。
これに対し、ビードコア底23の外側端部23oのタイヤ径方向内側の位置での圧縮率Zoが、13%以上22%以下の範囲内である場合は、空気入りタイヤ1をリム組みする際における、ビード部20のタイヤ幅方向における外側寄りの位置での規定リムRに対するビード部20の締め付け力が低くなり過ぎることを抑制しつつ、ビード部20とリムホイールとの間での摩擦抵抗を、より確実に低減することができる。この結果、より確実にリム組み性を確保しつつ、リム滑りを抑制することができる。
また、ビードコア21は、ビードコア底23の内側端部23iとビードヒール仮想点35aとのタイヤ幅方向における距離L1と、トウ部32とビードヒール仮想点35aとのタイヤ幅方向における距離L2との関係が、0.67≦(L1/L2)≦0.75の範囲内となる位置に配置されるため、ビード部20とリムホイールとの間での摩擦抵抗の低減と、ビード部20での締め付け力の確保とを、より確実に両立することができる。つまり、ビードコア21が配置される位置が、距離L1と距離L2との関係が(L1/L2)<0.67となる位置である場合は、ビードコア21の位置がタイヤ幅方向外側に寄り過ぎているため、ビード部20のタイヤ幅方向における内側寄りの位置での締め付け力を確保し難くなる虞がある。この場合、ビード部20とリムホイールとの間の滑りを、効果的に抑制するのが困難になる虞がある。また、ビードコア21が配置される位置が、距離L1と距離L2との関係が(L1/L2)>0.75となる位置である場合は、ビードコア21の位置がタイヤ幅方向内側に寄り過ぎているため、ビード部20のタイヤ幅方向における外側寄りの位置での締め付け力を低くし難くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1をリム組みする際における摩擦抵抗を効果的に低減するのが困難になり、リム組み性を確保し難くなる虞がある。
これに対し、ビードコア21が、距離L1と距離L2との関係が、0.67≦(L1/L2)≦0.75の範囲内となる位置に配置される場合は、ビード部20のタイヤ幅方向における内側寄りの位置でのビード部20の締め付け力を、より確実に確保することができ、ビード部20のタイヤ幅方向における外側寄りの位置でのビード部20とリムホイールとの間での摩擦抵抗を、より確実に低減することができる。この結果、より確実にリム組み性を確保しつつ、リム滑りを抑制することができる。
また、ビードコア21は、ビードコア底23からのビードコア内側端部26の高さCH1と、ビードコア21の最大高さCHmaxとの関係が、0.23≦(CH1/CHmax)≦0.29の範囲内であるため、ビード部20とリムホイールとの間での摩擦抵抗の低減と、ビード部20での締め付け力の確保とを、より確実に両立することができる。つまり、ビードコア底23からのビードコア内側端部26の高さCH1と、ビードコア21の最大高さCHmaxとの関係が、(CH1/CHmax)<0.23である場合は、ビードコア底23からのビードコア内側端部26の高さCH1が低過ぎるため、ビード部20のタイヤ幅方向における内側寄りの位置での締め付け力が大きくなり易くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1をリム組みする際における摩擦抵抗を効果的に低減するのが困難になり、リム組み性を確保し難くなる虞がある。また、ビードコア底23からのビードコア内側端部26の高さCH1と、ビードコア21の最大高さCHmaxとの関係が、(CH1/CHmax)>0.29である場合は、ビードコア底23からのビードコア内側端部26の高さCH1が高過ぎるため、ビード部20のタイヤ幅方向における内側寄りの位置での締め付け力を確保し難くなる虞がある。この場合、ビード部20とリムホイールとの間の滑りを、効果的に抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、ビードコア底23からのビードコア内側端部26の高さCH1と、ビードコア21の最大高さCHmaxとの関係が、0.23≦(CH1/CHmax)≦0.29の範囲内である場合は、空気入りタイヤ1をリム組みする際における、ビード部20とリムホイールとの間での摩擦抵抗が大きくなることを抑制しつつ、ビード部20のタイヤ幅方向における内側寄りの位置での規定リムRに対するビード部20の締め付け力を、より確実に確保することができる。この結果、より確実にリム組み性を確保しつつ、リム滑りを抑制することができる。
また、ビードコア底23は、タイヤ回転軸に対して12°以上15°以下の範囲内で傾斜しており、ビードベース部30は、タイヤ回転軸に対して9°以上12°以下の範囲内で傾斜しているため、ビード部20とリムホイールとの間での摩擦抵抗の低減と、ビード部20での締め付け力の確保とを、より確実に両立することができる。つまり、タイヤ回転軸に対するビードコア底23の傾斜角度A1が12°未満であったり、タイヤ回転軸に対するビードベース部30の傾斜角度A2が9°未満であったりする場合は、ビードコア底23の角度A1やビードベース部30の角度A2が小さ過ぎるため、ビード部20のタイヤ幅方向における外側寄りの位置での締め付け力を低くし難くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1をリム組みする際における摩擦抵抗を効果的に低減するのが困難になり、リム組み性を確保し難くなる虞がある。また、タイヤ回転軸に対するビードコア底23の傾斜角度A1が15°より大きかったり、タイヤ回転軸に対するビードベース部30の傾斜角度A2が12°より大きかったりする場合は、ビードコア底23の角度A1やビードベース部30の角度A2が大き過ぎるため、ビード部20のタイヤ幅方向における外側寄りの位置での締め付け力が低くなり過ぎる虞がある。この場合、ビード部20とリムホイールとの間の滑りを、効果的に抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、タイヤ回転軸に対するビードコア底23の傾斜角度A1が12°以上15°以下の範囲内で、タイヤ回転軸に対するビードベース部30の傾斜角度A2が9°以上12°以下の範囲内である場合は、空気入りタイヤ1をリム組みする際における、ビード部20のタイヤ幅方向における外側寄りの位置での規定リムRに対するビード部20の締め付け力が低くなり過ぎることを抑制しつつ、ビード部20とリムホイールとの間での摩擦抵抗を、より確実に低減することができる。この結果、より確実にリム組み性を確保しつつ、リム滑りを抑制することができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、ビードコア21は、ビードワイヤの積層構造が俵積みの17+18+19+20+21+21+21+21+20+19+18+17+16+15+14構造になっているが、ビードワイヤの積層構造は、これ以外であってもよい。ビードワイヤの積層構造は、例えば、俵積みの17+18+19+20+21+21+21+21+21+20+19+18+17+16+15構造であってもよく、俵積みの18+19+20+21+21+21+21+20+19+18+17+16+15+14+13構造であったり、俵積みの18+19+20+21+21+21+21+21+20+19+18+17+16+15+14構造など中央部の最大幅が異なる層であったりしてもよい。ビードコア21は、ビードワイヤの積層構造に関わらず、ビードコア内側端部26が、ビードコア底23に直交する方向においてビードコア21の重心位置CCよりビードコア底23側に位置する形状で形成されていればよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、ビード部20には補強層として1枚のカーカス6と、スチールチェーファー55及びサブチェーファー56,57の3枚のチェーファーとが配設されているが、補強層はこれ以外の構成でもよい。例えば、カーカス6が2枚以上配設されていてもよく、または、チェーファーが2枚以下であったり、チェーファーが設けられなかったりしてもよい。
[実施例]
図6A、図6Bは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、リム組みのし易さであるリム組み性と、リム滑りに対する性能である耐リム滑り性との試験について行った。
性能評価試験は、タイヤの呼びが29.5R25サイズで、TRAコードがL-3の空気入りタイヤ1を試験タイヤとして使用し、この試験タイヤをTRA規格に準拠するリムホイールにリム組みし、空気圧をTRA規格で規定される空気圧に調整し、試験車両として用いられるホイールローダーに装着してTRA規格で規定される荷重を付与してテスト走行することにより行った。
各試験項目の評価方法は、耐リム滑り性については、試験車両で走行する前に、試験タイヤとリムホイールとに目印を付け、24時間走行後の試験タイヤとリムホイールとのタイヤ周方向のズレ量を計測することにより評価した。耐リム滑り性は、後述する従来例を100とする指数で表し、数値が大きいほど試験タイヤとリムホイールとがタイヤ周方向にずれ難く、耐リム滑り性が優れていることを示している。
また、リム組み性は、作業者が試験タイヤをTRA規格に準拠するリムホイールに対して偏心嵌合なく装着して、内圧を充填するまでの所要時間を計測し、計測した時間の逆数を、後述する従来例を100とした指数で表した。指数値が大きいほど所要時間が短く、リム組み性が優れていることを示している。なお、偏心嵌合は、リムチェックライン9にて目視確認によって偏心嵌合の有無の確認を行った。
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1~13と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例1~3との17種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例、比較例1の空気入りタイヤは、ビードコア21のビードコア底23がビードベース部30に対して、タイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かうに従ってビードベース部30との距離が小さくなる方向に傾斜している。また、比較例2、3の空気入りタイヤは、ビードコア21のビードコア底23がビードベース部30に対して、タイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かうに従ってビードベース部30との距離が大きくなる方向に傾斜しているものの、ビードコア底23の角度A1とビードベース部30の角度A2との差が、3°以上5°以下の範囲外になっている。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1~13は、全てビードコア21のビードコア底23がビードベース部30に対して、タイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かうに従ってビードベース部30との距離が大きくなる方向に3°以上5°以下の範囲内で傾斜しており、ビードコア底23の幅CW1が、ビード部20の内周面20aの幅BBWに対して40%以上44%以下の範囲内で、且つ、ビードコア21の最大幅CWmaxに対して71%以上78%以下の範囲内になっている。さらに、実施例1~13に係る空気入りタイヤ1は、ビードコア底23の内側端部23iのタイヤ径方向内側の位置でのゴムの圧縮率Ziや、ビードコア底23の外側端部23oのタイヤ径方向内側の位置でのゴムの圧縮率Zo、トウ部32とビードヒール仮想点35aとのタイヤ幅方向における距離L2に対する、ビードコア底23の内側端部23iとビードヒール仮想点35aとのタイヤ幅方向における距離L1、ビードコア21の最大高さCHmaxに対する、ビードコア底23からのビードコア内側端部26の高さCH1、タイヤ回転軸に対するビードコア底23の角度A1、タイヤ回転軸に対するビードベース部30の角度A2が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、図6A、図6Bに示すように、実施例1~13に係る空気入りタイヤ1は、従来例に対して、リム組み性と耐リム滑り性とのいずれの性能も向上させることができることが分かった。また、実施例1~13に係る空気入りタイヤ1は、いずれも比較例1~3に対して、リム組み性と耐リム滑り性とを合わせた総合的な性能を向上させることができることが分かった。つまり、実施例1~13に係る空気入りタイヤ1は、リム組み性を確保しつつ、リム滑りを抑制することができる。