JP7237388B2 - ナノポア構造体、ナノポア構造体を含む塩基配列解析装置 - Google Patents
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Description
本発明の一実施形態は、ナノスケールの貫通孔が金属の薄膜で形成されたナノポア構造体、及びナノポア構造体を含むDNA及びRNA等における塩基配列を解析する装置に関する。
ナノポアと呼ばれるナノスケールの細孔を用いて、DNA及びRNAの塩基配列を解析するための装置及び方法の開発が進められている。例えば、環状のタンパク質によりナノポアを形成し、当該ナノポアをDNA鎖が通過するときのイオン電流を計測して塩基配列を解読する塩基配列解析装置(DNAシーケンサ)が開示されている(特許文献1参照)。
特許文献1に開示されたナノポアは、タンパク質を用いているため機械的な耐久性、安定性、耐熱性に問題がある。また、タンパク質により形成されたナノポアは、一度解析に使用すると再利用できないという問題がある。これに対し、ナノポアを金属材料や半導体材料を用いて形成する試みもなされているが、最先端の微細加工技術によっても10nm以下の孔径を有するナノポアの製造は困難であり、実用化には至っていない。
このような課題に鑑み、本発明は、従来技術とは異なるアプローチによって作製される新たな構造を有するナノポア構造体を提供することを目的の一つとする。また、本発明は新たな構造を有するナノポア構造体を用いた塩基配列解析装置を提供することを目的の一つとする。
本発明は、フォトリソグラフィーやエッチングといった微細加工技術のみによらず、電気化学的方法を適用することで、10nm以下の孔径を有するナノポアおよびこれを用いた塩基配列解析装置を実現することを可能としている。
本発明の一実施形態に係るナノポア構造体は、薄膜状であり、貫通孔を有する第1金属部材と、貫通孔の孔径を狭窄するように設けられた第2金属部材と、を有し、第1金属部材と第2金属部材とによって、10nm以下の孔径を有するナノポアを含む。
本発明の一実施形態に係る塩基配列解析装置は、シスチャンバとトランスチャンバと、シスチャンバと前記トランスチャンバとの間のナノポア構造体と、シスチャンバに設けられた第1電極(作用電極)と、トランスチャンバに設けられた第2電極(対電極)、及び第3電極(参照電極2)と、を有する。ナノポア構造体は、薄膜状であり、シスチャンバとトランスチャンバとを連通させる貫通孔が設けられた第1金属部材と、貫通孔の孔径を狭窄するように設けられた第2金属部材と、を含み、第1金属部材と第2金属部材とによって、10nm以下の孔径を有するナノポアが形成されている。
本発明の一実施形態によれば、複数種の金属材料を組み合わせることによって、無機材料で形成されたナノポア構造体を提供することができる。具体的には、第1金属部材の貫通孔の開孔端部に無電解めっきの反応によって第2金属部材を設けることで、10nm以下の孔径を有するナノポアを有するナノポア構造体を提供することができる。また、これを用いた塩基配列解析装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にa、bなどを付した符号)を付して詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
1.ナノポア構造体
本発明の一実施形態に係るナノポア構造体は、貫通孔を有する第1金属部材と、当該貫通孔を狭窄するように設けられた第2金属部材とにより形成される。以下、このようなナノポア構造体の詳細を説明する。
本発明の一実施形態に係るナノポア構造体は、貫通孔を有する第1金属部材と、当該貫通孔を狭窄するように設けられた第2金属部材とにより形成される。以下、このようなナノポア構造体の詳細を説明する。
1-1.第1の実施形態
図1Aは、本発明の一実施形態に係るナノポア構造体100aの平面模式図を示す。ナノポア構造体100aは、第1金属部材110及び第2金属部材116を含み、第1金属部材110に貫通孔112が設けられた構造を有する。ナノポア構造体100aは、第2金属部材116が第1金属部材110の上に設けられ、貫通孔112を狭窄するように配置されることでナノポア102が形成されている。
図1Aは、本発明の一実施形態に係るナノポア構造体100aの平面模式図を示す。ナノポア構造体100aは、第1金属部材110及び第2金属部材116を含み、第1金属部材110に貫通孔112が設けられた構造を有する。ナノポア構造体100aは、第2金属部材116が第1金属部材110の上に設けられ、貫通孔112を狭窄するように配置されることでナノポア102が形成されている。
第1金属部材110は薄膜であり、所定の厚さを有している。貫通孔112は第1金属部材110が除去された空孔であり、貫通孔112の側壁面は第1金属部材110が露出している。貫通孔112の形状は任意であり、平面視で、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形など様々な形状で設けることができる。貫通孔112の孔径は8nm~40nmの大きさを有し、この大きさは、貫通孔112が円形であれば直径を指し、正方形であれば対角線長を指すものとする。貫通孔112を単体として見れば、DNA等の塩基配列を解析するためのナノポアとして機能させるのに適したサイズより比較的大きなサイズを有している。
第2金属部材116は、島状に孤立した構造、島状の構造が集合して連なった構造、膜状に連続する構造などいくつかの形状を有し得る。このような第2金属部材116として、図1Aは第2金属部材116が島状の状態で設けられた態様を示す。第2金属部材116は、少なくとも1つが貫通孔112の開孔端部と重なるように設けられる。図1Aに示すように、第2金属部材116は複数個が連接し、貫通孔112の開孔端部を囲むように設けられていてもよい。第2金属部材116は、貫通孔112の孔の部分にせり出すように設けられる。貫通孔112は、第2金属部材116により孔径が狭められることとなる。ナノポア102は、貫通孔112が第2金属部材116によって狭窄された部分に形成される。すなわち、ナノポア102は、第1金属部材110に設けられた貫通孔112と第2金属部材116とが複合することによって形成される。なお、第2金属部材116は、第1金属部材110の貫通孔112以外の表面の任意の箇所にも存在し得るがナノポア102と関係がないので図示しない。
このように、ナノポア構造体100aは、貫通孔112を有する第1金属部材110と、貫通孔112を狭窄するように設けられた第2金属部材116とによって形成されるナノポア102を有している。なお、本発明においてナノポアの孔径とは、第2金属部材によって形成される孔の直径を指す。ナノポアが、平面視で円形の場合にはその直径を指し、円形又は円形とみなせる形状以外の場合には、{2×(第2金属部材によって形成される開孔の平面視における面積/円周率)}1/2によって求められる、開孔の大きさを円に換算したときの直径をナノポアの孔径というものとする。ナノポア102の実質的な孔径は、10nm以下、好ましくは1nm~5nmの大きさを有する。
図1Aに示すA1-A2線に対応する断面構造を図1Bに示す。図1Bに示すナノポア構造体100aは、第1金属部材110が絶縁膜106の上に設けられ、絶縁膜106は支持部材104によって支持された構造を有する。第1金属部材110に設けられた貫通孔112に対し、絶縁膜106には貫通孔112と重なり、略同一の孔径を有する貫通孔113が設けられている。支持部材104は、貫通孔113と重ならない位置で絶縁膜106に接して設けられている。
図1Bに示すように、第1金属部材110と絶縁膜106との間には、下地金属膜108が設けられていてもよい。ナノポア構造体100aにおいて、下地金属膜108は必須の構成とはならないが、第1金属部材110が絶縁膜106上で安定して支持されるように(すなわち、密着性を高めるために)、必要に応じて設けられる。
図1Bは、ナノポア構造体100aを断面視したとき、貫通孔112の一端に第2金属部材116aが設けられ、一端に対向する他端に第2金属部材116bが設けられる形態を示す。第2金属部材116a、116bは、ナノスケールの島状構造を有し、外観形状が山型状であり球状表面を有している。このような形状を有している第2金属部材116a、116bは、第1金属部材110の上面から貫通孔112の側壁面(第1金属部材110の側面)に接するように設けられている。ここで、球状表面とは曲率半径が連続的に変化しつつ曲面が連続する曲面をいうものとし、真球表面のみに限定されるものではない。
ナノポア構造体100aは、第1金属部材110と第2金属部材116a、116bとが異なる金属材料で形成される。第1金属部材110を形成する好適な金属材料としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)等の遷移元素が例示される。また、第2金属部材116a、116bを形成する好適な金属材料としては、金(Au)が例示される。
ナノポア構造体100aの作製方法は後述されるが、少なくとも第2金属部材116a、116bは、無電解めっき法により作製される。無電解めっき法を採用することにより、ナノスケールの大きさを有する第2金属部材116a、116bを、第1金属部材110の表面に選択的に形成することができる。すなわち、無電解めっき法を採用することにより、第2金属部材116a、116bを、絶縁膜106及び下地金属膜108の表面に付着させることなく、第1金属部材110の表面に、かつ貫通孔112の孔径を狭窄するように設けることができる。
第1金属部材110及び第2金属部材116a、116bは、結晶構造を有していてもよい。図1Bは、第1金属部材110が多結晶構造を有し、結晶粒114a、114bを含み、第2金属部材116aが結晶領域118a、118bを含む態様を模式的に示している。ここで、結晶領域118aは結晶粒114aに対応し、結晶領域118bは結晶粒114bに対応するように設けられている。この場合において、第1金属部材110と第2金属部材116a、116bは異種金属であるが、結晶領域118a、118bは、それぞれ結晶粒114a、114bからヘテロエピタキシャル成長した領域として形成されていることが好ましい。
結晶領域118a、118bが、結晶粒114a、114bからヘテロエピタキシャル成長するためには格子が整合する必要がある。具体的には、第1金属部材110の格子定数と、第2金属部材116a、116bの格子定数との格子不整合の割合は35%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下であることが望まれる。
例えば、第1金属部材110として例示される白金(Pt)の格子定数は0.39242nm、パラジウム(Pd)の格子定数は0.38907nmであり、第2金属部材116として例示される金(Au)の格子定数は0.40782nmである。白金(Pt)、パラジウム(Pd)と金(Au)、格子不整合の割合(ミスフィット率)はそれぞれ3.9%、4.6%となるので、白金(Pt)、あるいはパラジウム(Pd)で形成される結晶粒114の表面に金(Au)で形成される第2金属部材116をヘテロエピタキシャル成長することが可能となる。
第1金属部材110からヘテロエピタキシャル成長した結晶領域を含む第2金属部材116a、116bは、ナノスケールの島状構造を有する。第2金属部材116a、116bは、断面視において球状の形状を有する。ナノスケールの島状構造を有する第2金属部材116a、116bの大きさは、平面視において(第1金属部材110を上面から見た場合において)、一端から他端までの幅が50nm以下、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下の大きさを有する。また、第2金属部材116a、116bは、第1金属部材110の表面から、40nm以下、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下の高さを有する。
なお、本発明において、ナノスケールの島状構造とは約50nm以下の大きさを有する個体を指すものとする。第2金属部材116a、116bは、濡れ性の高い状態でヘテロエピタキシャル成長することにより、球状の突起を形成している。無電解めっきは、下地金属膜108表面では進行しないため、ナノスケールの第1金属部材110と下地金属膜108の境界を、第2金属部材の球状突起は端部として有する。したがって、第1金属部材110と下地金属膜108の界面を孔内に延長した直線に対する、第2金属部材の球状突起の角度を定義できる。正の角度は、第2金属部材の球状突起が、下地金属膜108側にせり出していない状況で、負の角度は、下地金属膜108側にせり出している状況である。この角度は正であることが好ましいが、負となってもよい。
第2金属部材116a、116bは、異なる結晶方位を有する結晶領域を含み、断面視において円形となっている。これは、曲率半径の逆数に比例する表面張力が、曲率半径が15nm以下になると極めて大きくなり、第2金属部材116a、116bを構成する原子は、表面自己拡散し表面エネルギーを最小にするように断面が円形になるためである。第2金属部材116a、116bを断面視したとき、その円形状は、下地金属膜108と第1金属部材110の界面を円の一部が通過する構造となる。
第1金属部材110が白金(Pt)であり、第2金属部材116a、116bが金(Au)である場合、金(Au)の曲率半径が小さくなると、表面エネルギーを小さくするように金(Au)は球状になる。白金(Pt)は、金(Au)と比較すると、固く、表面自己拡散係数が桁違いに小さい。そのため、白金(Pt)上でヘテロエピタキシャル成長した金(Au)は、白金(Pt)と接している部分では、金(Au)原子が白金(Pt)原子によりピニングされて動きにくくなる。そのため、金(Au)の粒子は、白金(Pt)と接している部分で固定され、表面エネルギーを小さくするように曲率半径が小さな球状になる。
このような状態は、貫通孔112の孔径を狭窄するように設けられた第2金属部材116a、116bが安定的にナノポア102の形状を維持できることを意味している。例えば、図1Aに示すように、球状表面を有する第2金属部材116で貫通孔112の周囲を囲むことにより、孔の形状を円形状に保った状態でナノポア102の構造を維持することが可能となる。
さらに、第2金属部材116a、116bの曲率半径が小さくなると、ナノポア102において、試料に近接する最近接の金属原子が1つとなり、その大きさは例えばDNAの塩基間距離である0.36nmよりも小さいことにより、空間分解能を高くすることができ、後述するようにトンネル電流によってDNAからナノポア102に電流が流れる際に、1塩基毎に流れる電流を読み取ることが可能となる。
また、第2金属部材116a、116bの曲率半径がDNAの断面長と同等になると、ナノポアを介してトランスチャンバ-シスチャンバ間を流れるイオン電流が、塩基の影響を強く受けるようになり、塩基種の読み取り精度が向上する。
ところで、ナノポア構造体100aは、ナノポア102の孔径を精密に制御する必要がある。第2金属部材116a、116bは、前述のように、無電解めっきによる化学的な成膜法で作製される。上述のように、第2金属部材116a、第2金属部材116bの狭窄によってナノポア102を形成しようとする場合、無電解めっきの制御が問題になると考えらえる。
仮に、無電解めっきにより、第2金属部材116a、116bの成長が無限に続くのであれば、貫通孔112を塞いでしまうので、反応を時間で制御する必要がある。その場合、ナノポア102の孔径は、製造ごとのばらつきが大きくなってしまうことが懸念される。
しかしながら、本実施形態で詳述される無電解めっきによれば、第2金属部材116a、116bの成長は無限に続くのではなく、自動的に停止する。図1Bに示すような構造において、第2金属部材116aと第2金属部材116bの間隔が狭まるとヘルムホルツ層(電極表面に吸着した溶媒や溶質分子、溶質イオンの層)が形成される。ヘルムホルツ層が形成されると、無電解めっき液中の金属イオンが間隙の中に入っていけない状態となる。これにより、第2金属部材116aと第2金属部材116bの相対する領域のめっき成長が自動的に停止する。
無電解めっき法では、第2金属部材116a、116bは第1金属部材110の表面に選択的に成長し、他の分部(例えば、下地金属膜108)には成長しない。また、第1金属部材110に形成される貫通孔112の開孔端部は無電解めっき液の中で電界集中が起きて核生成確率が高くなるため、第2金属部材116a、116bが確実に成長する。この場合、第1金属部材110の厚さは、第2金属部材116a、116bの曲率半径に影響を与える。
例えば、図2Aに示すように、第1金属部材110の膜厚がt1であるとき、第2金属部材116aの曲率半径がr1となる場合、t1がr1と等しくなるとき、角度は0度となる。さらにめっきを進行させてt1<r1の状態をつくる際には、第2金属部材116の内部応力が大きくなるため、めっきの進行が、t1>r1の場合と比較して遅くなり、めっきの進行を抑制することができる。このため、第2金属部材116a、116bの曲率半径r1、r2は、第1金属部材110の厚さt1と同等の値に制御することが可能である。なお、めっき時間を長くすると、さらにめっきは進行するため、t1<r1の状態をつくることも可能である。
図2Bに示すように第1金属部材110の膜厚をt1より小さいt2とすると、めっき条件を選択することにより第2金属部材116aの曲率半径はr1からr2へと小さくなる。このように、本実施形態によれば、第1金属部材110の膜厚を調整することにより、第2金属部材116aの曲率半径を制御することができる。
このように、ナノポア102の孔径は、上記のめっきの自動停止と、第1金属部材110の膜厚がt1と初期孔径の組み合わせによる制御という、2つの方法で制御できる。
第1金属部材110の厚さは、20nm以下、好ましくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下、さらにこのましくは3nm以下とすることができる。ただし、第1金属部材110を薄くする場合には、無電解めっきによる孔径の低減幅が制限されるため、貫通孔112の孔径(正方形の1辺の長さ、あるいは円孔の直径)の径は、第1金属部材110の膜厚とほぼ等しいことが好ましい。
第1金属部材110の膜厚t1による曲率半径の制御は、めっき時間をさらに長くすると、めっきが再び進行し始め、r1がt1を超えることがある。この際にも、イオン半径に起因した自己停止機能は、有効である。
第2金属部材116が球状の断面形状を有しているのは、無電解めっきにより第1金属部材110の表面に成長したことに起因している。例えば、斜め蒸着法のような物理的堆積法では、影とならない部分は一様に蒸着されるため、堆積される薄膜の膜厚は一様となり、第1金属部材110と下地金属膜108の境界に関係なく蒸着されるため、曲率半径は有しない構造となる。また、斜め蒸着法では、第1金属部材110のみでなく、下地金属膜108、さらには絶縁膜106の部分にも薄膜が形成され得る。
本実施形態では、無電解めっきで発現される自己停止機能を利用することで、ナノポア102の孔径を精密に制御することができる。別言すれば、ナノポア102の孔径は、フォトリソグラフィー及びエッチング等の微細加工技術によって制御するのではなく、無電解めっきの2つの反応律速によって制御されるため、10nm以下の孔径を再現性良く精密に制御することができる。
なお、図1Bにおいて示す支持部材104、絶縁膜106、下地金属膜108の材料に限定はない。例えば、支持部材104としては、熱的に安定なシリコン基板(シリコンウェハ)を用いることができる。絶縁膜106としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜等の無機絶縁材料を用いることができ、下地金属膜108としては、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)等の金属材料を用いることができる。
このように、本実施形態に係るナノポア構造体100aは、第1金属部材110に形成された貫通孔112の孔径を狭窄するように、1つ以上のナノスケールの島状構造を有する第2金属部材116を設けることで、10nm以下の孔径を有するナノポア102を得ることができる。
1-2.第2の実施形態
第1の実施形態は、第2金属部材116がナノスケールの島状構造を有しているのに対し、第2の実施形態は、第1金属部材110の上で第2金属部材116が連続する構造を有する。
第1の実施形態は、第2金属部材116がナノスケールの島状構造を有しているのに対し、第2の実施形態は、第1金属部材110の上で第2金属部材116が連続する構造を有する。
図3Aは、ナノポア構造体100bの平面図を示す。ナノポア構造体100bは、第1金属部材110上で第2金属部材116が連続する構造を有している点で第1の実施形態と相違する。ナノポア構造体100bは、ナノポア102の孔径を含め、他の部材は第1の実施形態に係るナノポア構造体100aと同様である。
図3Aに示すA3-A4線に対応する断面構造を、図3Bに示す。第1金属部材110及び第2金属部材116を形成する金属材料は、第1の実施形態で示すものと同様である。第1金属部材110は多結晶構造を有し、複数の結晶粒114を含む。図3Bは、第1金属部材110に結晶粒114c、114d、114e、114fが含まれる形態を模式的に示す。
第2金属部材116は、結晶粒114c、114d、114e、114fに対応してヘテロエピタキシャル成長した結晶領域118c、118d、118e、118fを含む。このような結晶性を有する第2金属部材116は、無電解めっきにより作製される。
第1金属部材110は、また、アモルファス領域115が含まれていてもよい。無電解めっきでは、アモルファス領域115においても核生成が起こるため、第2金属部材116がその領域にも成長する。アモルファス領域115上に成長する第2金属部材116はアモルファス状態となる(アモルファス領域119)。また、第1金属部材110の上に第2金属部材116がヘテロエピタキシャル成長する場合、成長の途中で格子歪みなどが生じ、アモルファス領域が含まれる場合がある。このように、第2金属部材116は、ヘテロエピタキシャル成長した複数の結晶領域118c、118d、118e、118fを含み、さらにアモルファス領域115を含み得る。
第1金属部材110と第2金属部材116とは、ヘテロエピタキシャル成長した界面を含むため、異種金属間で結晶の連続性が保たれた状態にあり、構造の熱的安定性が高い状態にある。そのためナノポア構造体100bの形状を安定に保つことができる。
図3Bに示すように、第2金属部材116は、第1金属部材110の貫通孔112の開孔端部を連続的に囲むように設けられる。第2金属部材116は、第1金属部材110の上面から貫通孔112の側壁面にかけて連続し、貫通孔112の孔の部分にせり出すように設けられる。第1実施形態と同様に、第2金属部材116は、貫通孔112の孔の部分にせり出し、その孔径を狭窄するように設けられる。
第2金属部材116は、無電解めっきによって第1金属部材11の上に形成される。第2金属部材116は、第1の実施形態が球状の島状構造であるのに対して、第2の実施形態は連続する構造を有している。このような構造の違いは無電解めっきの条件及び/又は前処理条件によって制御することができる。例えば、前処理によって第1金属部材110の表面状態を変化させ、核生成密度を高めるようにすることで、無電解めっきによって膜状に連続する構造の第2金属部材116を形成することができる。
図3A及び図3Bに示す構造は、第1金属部材110からエピタキシャル成長した第2金属部材116が、結晶粒界を含みつつ繋がって貫通孔112の開孔端部を連続的に覆う構造を有している。ナノポア102は、所定の曲率半径を有する結晶粒が、連続する曲面で周を成すように繋がった表面を有している。表面張力は、半径の逆数に比例して大きくなるため、ナノポア102の内側表面は、球状の表面が繋がった周構造となる。
このように、第2の実施形態に係るナノポア構造体100bは、第1金属部材110に形成された貫通孔112の孔径を狭窄するように、連続する構造を有する第2金属部材116を設けることで、10nm以下、好ましくは1nm~5nmの大きさを有するナノポア102を得ることができる。第2の実施形態では、第2金属部材116が、第1金属部材110の貫通孔112の周りを連続的に囲むので、ナノポア102の形状を円形に近い形状にすることができる。また、貫通孔112の形状が平面視で四角形であっても、第2金属部材116が囲むことにより円形に近い形状にすることができる。これにより、ナノポア102の形状及び孔径に関して、個体間のばらつきを低減することができる。
ナノポア102を形成する第2金属部材116の形状は、無電解めっき及び/又は前処理条件によりいくつかの形状を有し得る。貫通孔112の開口端部領域において核生成密度が平坦な部分よりも高くなる場合には、貫通孔112を囲む部分において、第2金属部材116の円形状の部分の高さは、第2金属部材116の他の平坦な部分(第1金属部材110上の平坦な部分)よりも高くなる。また、第2金属部材116の円形状の部分は、第1の実施形態と同様に第1金属部材110のみを覆い、下地金属膜108表面には第2金属部材116は成長しない状態となる。
一方、図4に示すように、貫通孔112を囲む領域まで第2金属部材116が平坦部と同じ高さで成長し、先端部分の結晶領域118cが所定の曲率半径を有する球状表面を形成するようにすることもできる。このような形状違いは、無電解めっきのときに下地面となる第1金属部材110及び貫通孔112の開口端部の表面状態を制御することにより(すなわち、核生成密度を制御することにより)作り分けることができる。
1-3.第3の実施形態
第1の実施形態及び第2の実施形態として示したナノポア構造体において、第2金属部材116の表面に自己組織化単分子膜が設けられていてもよい。図5A及び図5Bは、第1の実施形態において、第2金属部材116a、116bの表面に自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembled Monolayer)が設けられたナノポア構造体100cの一例を示す。
第1の実施形態及び第2の実施形態として示したナノポア構造体において、第2金属部材116の表面に自己組織化単分子膜が設けられていてもよい。図5A及び図5Bは、第1の実施形態において、第2金属部材116a、116bの表面に自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembled Monolayer)が設けられたナノポア構造体100cの一例を示す。
自己組織化単分子膜126は、第2金属部材116a、116bに化学吸着する第1官能基と、第1官能基に結合する第2官能基を含む。第1官能基は、チオール基、ジチオカルバメート基、キサンテート基の何れかの基である。第2官能基は、アルカン、アルケン、アルカン又はアルケンの水素分子の一部又は全部をフッ素に置換したもの、アミノ基、ニトロ基、アミド基、さらに下記の蛍光色素を含む基の何れかの基である。
例えば、自己組織化単分子膜126は、アルカンチオールを自己組織化させた単分子膜で形成される。自己組織化単分子膜126は、撥水性があり、表面を安定に保つように作用する。自己組織化単分子膜126のアルカンチオールの中に,少数のアルカンジチオール(Alkane dithiol)が混在されている。アルカンジチオールは,アルカン鎖の両端に硫黄(S)を含む結合基チオールを配置したものであり、アルカンチオール単分子膜の所々に硫黄(S)が存在する形となる。アルカンチオールの中にアルカンジチオールを混入させるには、アルカンジチオールの溶液にアルカンチオール自己組織化単分子膜126で被覆された電極を浸漬し、アルカンチオールの一部をアルカンジチオールで置換することにより実現される。
自己組織化単分子膜126は、1nm~5nmの長さを有する。このような長さを有する自己組織化単分子膜126を第2金属部材116a、116bの表面に設けることにより、ナノポア102の径をさらに狭めることができる。自己組織化単分子膜126が形成される範囲は、作製方法を制御することにより、自己組織化単分子膜材料を含む溶液に浸漬した支持部材104側から覗くことのできるナノポア102の最も狭い部分を超えて、染み出た部分にも形成することもでき、さらには、ナノポア102の最も狭い部分までは形成しないように形成することもできる。
自己組織化単分子膜は、自己組織化単分子膜を形成する分子を含む溶液に、第2金属部材116a、116b及び第1金属部材110を浸漬した際に、それらの表面に形成する。したがって、第1金属部材110及び第2金属部材116a、116bが存在する側と、支持部材104側のいずれかのみに自己組織化単分子膜材料を含む溶液に浸漬すると、自己組織化単分子膜が形成される表面を制御することができる。すなわち、図5Aに示すように、第1金属部材110及び第2金属部材116a、116bが存在する側のみに浸漬すると、ナノポアを形成する第2金属部材116a、116b及び第1金属部材表面に自己組織化単分子膜が形成される。一方、図5Bに示すように、支持部材104側にのみ自己組織化単分子膜材料を含む溶液に浸漬すると、支持部材側から覗くことのできるナノポア部のみに自己組織化単分子膜を形成することができる。このように自己組織化単分子膜を片側のみに形成する際には、逆側は自己組織化単分子膜材料を含まない溶媒又は溶液とするか、逆側は、溶液に浸漬しない。
片側にのみ自己組織化単分子膜材料を含む溶液に浸漬することによりナノポア狭窄部上面を含む第2金属部材116a、116bの表面及び第1金属部材110表面に自己組織化単分子膜126が形成されている状況と、ナノポア狭窄部下面と狭窄部表面にのみ自己組織化単分子膜126が形成されている状況を作ることができる。
自己組織化単分子膜材料を含む溶液に、構造体全体を浸漬した際には、第2金属部材116表面全体及び第1金属部材110表面全体に自己組織化単分子膜126を形成することもできる。
自己組織化単分子膜126は、DNA及びRNAに含まれる特定の塩基を標識する蛍光体分子が含まれていてもよい。例えば、DNAに含まれる4種類の塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン)のそれぞれに異なる蛍光体を対応させるように、自己組織化単分子膜126のそれぞれに異なる蛍光体が含まれるようにすることができる。このような蛍光色素を有する自己組織化単分子膜126を設けることで、ナノポア102を用いて試料(DNA、RNAなど)の塩基配列を時系列的な光学シグナルとして解読する際に蛍光分析を行うことができる。
蛍光色素を含む自己組織化単分子膜を形成する際には、絶縁膜106の貫通孔113側のナノポア狭窄部下面と狭窄部表面にのみ自己組織化単分子膜126が形成されていることが好ましい。これにより、シスチャンバ側のナノポア部にのみ、蛍光色素を含む自己組織化単分子膜が形成される。
DNA、RNAにインターカレートする蛍光体としては、例えば、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、キサンテン系色素などを用いることができる。
蛍光分析を行う際には、励起光はトランスチャンバ側から照射することが好ましいが、シスチャンバから照射しても構わない。蛍光色素はナノポア102の部分のみに存在するように自己組織化単分子膜を作製すると、DNAの塩基との組み合わせで変化する蛍光を、SN比よく検出することができる。蛍光の検出は、励起光を照射する光学系とハーフミラーなどを利用して、入射側から受光することが好ましい。ナノポア102部は金(Au)を含み、金(Au)の表面は表面プラズモン増強により、励起光強度が増幅する。これにより、励起光のフォトンは、効率良く蛍光色素を励起することができる。励起光を検出する際に、色素近傍に金属が存在すると消光する場合がある。自己組織化単分子膜により、色素とナノポア部の距離を適度に制御すると、この消光を抑制することができる。
自己組織化単分子膜126は、0.3nm~5nmの長さを有するため、その長さの分だけナノポア102の有効な孔径が小さくなる。また、自己組織化単分子膜126とDNA塩基の親和力により、ナノポア102の表面が金属の場合と比較すると、第2金属部材116と蛍光色素間のクエンチを防ぐことができるので好ましい。
1-4.第4の実施形態
本実施形態に係るナノポアは、金属材料で形成される。そのため、複数の個別電極(電気的に分離された電極)の中にナノポアを作り込むことができる。
本実施形態に係るナノポアは、金属材料で形成される。そのため、複数の個別電極(電気的に分離された電極)の中にナノポアを作り込むことができる。
図6は、第4の実施形態に係るナノポア構造体100dの平面図を示す。ナノポア構造体100dは、ナノポア102を含む電極が絶縁表面に複数個配列された構造を有している。図6は、一例として6個のナノポア付き電極120a~120fが配列された態様を例示している。ナノポア付き電極120aは、ナノポア102が略中央部に設けられ、配線122によりナノポア構造体100dの周辺部に設けられた電極パッド124と接続されている。他のナノポア付き電極120b~120fも同様の構成を有している。
図6に示すA5-A6線に対応する断面構造を図7に示す。ナノポア付き電極120aは、絶縁膜106上に設けられた第1金属部材110及び第2金属部材116によって形成される。ナノポア102を形成する第1金属部材110、第2金属部材116は、第1乃至第3の実施形態で説明した構造を適宜用いることができる。なお、図7には示されないが、配線122及び電極パッド124は第1金属部材110と同じ金属材料で形成することができ、さらにその表面に第2金属部材116が形成されていてもよい。
第1金属部材110は金属の薄膜で形成されるため、絶縁膜106上で複数の領域にパターニングすることができ、それによりナノポア102が設けられたナノポア付き電極120を集積化することができる。ナノポア102が形成されたナノポア付き電極120が集積化されたナノポア構造体100cは、後述されるようにDNAシーケンサに用いることができる。ナノポア102が設けられたナノポア付き電極120は、DNAシーケンサの中で個々に独立して電位を制御し、DNA解読の用途に用いることができる。
絶縁膜106の貫通孔113を、マイクロ流路として、一本鎖DNAのからまりをほどく作用を利用する際には、図7の下部をシスチャンバ、上部をトランスチャンバとし、上下反転させて利用することができる。
1-5.ナノポア構造体の作製方法
本実施形態は、無電解金メッキ(Electro-less Au Plating:ELGP)と、電子線ビームリソグラフィ(Electron Beam Lithography:EBL)とを組み合わせた作製方法を示す。
本実施形態は、無電解金メッキ(Electro-less Au Plating:ELGP)と、電子線ビームリソグラフィ(Electron Beam Lithography:EBL)とを組み合わせた作製方法を示す。
基板として、表面に絶縁膜131、132が形成されたシリコン基板(シリコンウェハ)130を用いる。シリコン基板130は両面研摩されたものが好ましい。絶縁膜131、132は、例えば、シリコン基板130を熱酸化して形成された酸化シリコン膜である。シリコン基板130の厚さは300μm~600μm程度であり、絶縁膜131、132の厚さは100nm~500nm、例えば300nmである。
図8Aは、シリコン基板130の裏面側にフォトレジスト膜140を形成する段階を示す。ナノポアを有する電極は、シリコン基板130の表面側すなわち絶縁膜132の表面)に形成されるので、絶縁膜132の表面にもフォトレジスト膜140が形成されていてもよい。
図8Bは、フォトレジスト膜140を露光して現像し、レジストマスク141を形成し、裏面の絶縁膜131をエッチングする段階を示す。エッチングは、フッ酸などを用いたウェットエッチング、又は反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)で行われる。レジストマスク141の開口部のパターンの大きさは任意であるが、例えば、一辺の長さが100μmから500μmの大きさで形成される。
図8Cは、異方性エッチングによりシリコン基板130を裏面からエッチングして、表面側の絶縁膜132を露出させる段階を示す。シリコン基板130に対しては、例えば、CF4-O2系又はSF6-O2系のエッチングガスにより、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング(Inductive Coupled Plasma Reactive Ion Etching:ICP-RIE)により異方性エッチングが行われる。また、シリコン基板130は、ある程度の深さまで、KOH(水酸化カリウム)、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、EDP(エチレンジアミン・ピロかテール)などのアルカリ性水溶液でウェットエッチングをして、その後異方性エッチングを行ってもよい。このエッチングでは、シリコン基板130の裏面に残存する絶縁膜131をハードマスクとして用いている。
この異方性エッチングにより、シリコン基板130には、絶縁膜132が裏面側に露出する開口部134が形成される。開口部134を囲むシリコン基板130、絶縁膜131は支持部材104として用いられる。
次に、図9Aに示すように、絶縁膜132の上面にフォトレジスト膜142を形成する。そして、フォトレジスト膜を露光して、図9Bに示すようにレジストパターン143を形成する。例えば、フォトレジストとして電子ビーム露光用のポジレジストを用い、電子ビーム描画装置を用いて露光を行い、レジストパターン143を形成する。レジストパターン143の部分はナノポアが形成される部分となる。レジストパターン143の平面的な形状は円形であってよいし、正方形であってもよい。
図9Cに示すように、レジストパターン143が形成された絶縁膜132上に第1金属部材110となる金属膜を形成する。金属膜は、電子ビーム蒸着又はスパッタリングにより成膜する。金属膜は、2層構造を有していてもよい。例えば、チタン(Ti)膜と白金膜(Pt)の2層構造を有していてもよい。金属膜は3nm~20nmの膜厚で形成する。例えば、1nm~3nmのチタン(Ti)膜の上に、40nm以下、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、3nm以上の白金(Pt)膜を形成する。
その後、図10Aに示すように、リフトオフプロセスによりレジストを剥離すると、第1金属部材110に貫通孔112が形成され、絶縁膜132が露出する構造が形成される。なお、図10Aには示されないが、この段階で、金属膜をパターニングして、電極パッド及び配線を形成してもよい。
次いで、図10Bに示すように、絶縁膜132に貫通孔113を形成する。リフトオフによりパターニングされた第1金属部材110をマスクとして、反応性イオンエッチングにより、絶縁膜132をエッチングして貫通孔113を形成する。なお、図10Bに示す絶縁膜132及び貫通孔113は、図1B及び図3Bに示す絶縁膜106及び貫通孔113に対応する構成である。
図10Cに示すように、第1金属部材110の表面を覆うように第2金属部材116を形成する。第2金属部材116は無電解めっきにより形成する。第2金属部材116は、貫通孔113の開口端部を覆い孔径を狭めるように形成される。このような工程により、ナノポア102を有するナノポア構造体100が作製することができる。
なお、図8B及び図8Cに示す、絶縁膜131及びシリコン基板130を除去して開口部134を形成する工程は、ナノポア102を形成した後に行ってもよい。
また、図9Bに示すレジストパターン143を形成せずに、絶縁膜132の全面に第1金属部材110を形成する金属膜を形成し、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)を用いて金属膜及び絶縁膜132を部分的に除去する加工を行い、図10Bに示す構造を形成してもよい。
本実施形態において、ナノポア102の孔径は、フォトリソグラフィー及びエッチングによる第1金属部材110の加工のみによらず、無電解めっきにより第2金属部材116を形成することにより制御される。次に、この無電解めっきの詳細について示す。
1-6.無電解めっき
以下に、第2金属部を形成する無電解めっきについて説明する。
以下に、第2金属部を形成する無電解めっきについて説明する。
1-6-1.無電解めっき液
無電解金めっき液として、金イオン(Au+、Au3+)、酸化剤としてのハロゲン元素のイオン、還元剤を含む溶液が用いられる。無電解金めっきにより、白金(Pt)上に金(Au)をヘテロエピタキシャル成長させるためには、白金(Pt)表面に存在する白金酸化物(PtO)を還元する必要がある。無電解めっき液は、この還元作用を発現するためにハロゲン元素のイオンと還元剤の組み合わせとして、適切なものを選択している。さらに、還元剤を過剰に含ませることにより還元反応に律速されて金(Au)が析出するようにしている。さらに、このような無電解金めっき液を多量の純水で希釈して金(Au)の還元速度を制御し、無電解めっき液中で金(Au)粒子が析出しないように制御している。
無電解金めっき液として、金イオン(Au+、Au3+)、酸化剤としてのハロゲン元素のイオン、還元剤を含む溶液が用いられる。無電解金めっきにより、白金(Pt)上に金(Au)をヘテロエピタキシャル成長させるためには、白金(Pt)表面に存在する白金酸化物(PtO)を還元する必要がある。無電解めっき液は、この還元作用を発現するためにハロゲン元素のイオンと還元剤の組み合わせとして、適切なものを選択している。さらに、還元剤を過剰に含ませることにより還元反応に律速されて金(Au)が析出するようにしている。さらに、このような無電解金めっき液を多量の純水で希釈して金(Au)の還元速度を制御し、無電解めっき液中で金(Au)粒子が析出しないように制御している。
本実施形態で用いられる無電解めっき液は、金(Au)を溶解させたヨードチンキと、還元剤として用いられるL(+)-アスコルビン酸(C6H8O6)とを組み合わせた無電解金めっき液を用いている。このような無電解金めっき液により、白金(Pt)の結晶表面上への金(Au)のヘテロエピタキシャル成長を可能としている。無電解金めっき液は、ヨードチンキ由来のヨウ素イオン(I-、I3
-)とL(+)-アスコルビン酸(C6H8O6)とを含むことで、白金酸化物(PtO又はPtO2)の還元反応を生じさせていると考えられる。
1-6-2.無電解金めっきの方法
無電解めっきは、第1金属部材110としての白金(Pt)膜を無電解金めっき液に浸漬させることにより行われる。第1金属部材110としての白金(Pt)膜を無電解金めっき液に浸漬させると、白金(Pt)膜の結晶粒の表面に優先的に核生成され、金イオン(Au+、Au3+)から還元された金(Au)が成長する。無電解金めっき液は、前述のように純水で100倍、好ましくは500倍以上、さらに好ましくは1000倍以上に希釈されたものが用いられる。また、無電解めっき液は、還元剤が過剰に含まれている。
無電解めっきは、第1金属部材110としての白金(Pt)膜を無電解金めっき液に浸漬させることにより行われる。第1金属部材110としての白金(Pt)膜を無電解金めっき液に浸漬させると、白金(Pt)膜の結晶粒の表面に優先的に核生成され、金イオン(Au+、Au3+)から還元された金(Au)が成長する。無電解金めっき液は、前述のように純水で100倍、好ましくは500倍以上、さらに好ましくは1000倍以上に希釈されたものが用いられる。また、無電解めっき液は、還元剤が過剰に含まれている。
本実施形態に係る無電解金めっき液は、希釈前の溶液で還元剤を過剰にいれているため、金(Au)イオンは、3価の金イオン(Au3+)から1価の金イオン(Au+)に還元されている。
1価の金イオン(Au+)から金(Au)への、あるいは3価の金イオン(Au3+)から1価の金イオン(Au+)への還元電位(標準水素電極を基準、25℃、105Pa)は、
Au++e-→ Au:1.82V
Au3++2e-→ Au+:1.41V
Au3++3e-→ Au:1.52V
である。
Au++e-→ Au:1.82V
Au3++2e-→ Au+:1.41V
Au3++3e-→ Au:1.52V
である。
また、白金イオン(Pt)から白金(Pt)への還元電位は、
Pt2++2e-→ Pt:1.188V
である。
Pt2++2e-→ Pt:1.188V
である。
3価の金イオン(Au3+)から1価の金イオン(Au+)に還元されると、金(Au)への還元電位は高くなり、1価の金イオン(Au+)は、3価の金イオン(Au3+)と比較すると還元されにくくなっている。純水による希釈により、純水に溶けにくいヨウ素(I2)は、溶けやすいヨウ素イオン(I-、I3
-)に平衡が移り、ヨウ素に対するヨウ素イオンの割合が高くなる。ヨウ素イオンは、金(Au)をエッチングする作用があるため、過剰に入れた還元剤は、エッチングを抑える効果がある。白金イオン(Pt2+)の還元電位(1.188V)と比較して、3価の金イオン(Au3+)及び1価の金イオン(Au+)の還元電位はそれぞれ1.52V、1.82Vと高くなっており、還元されにくい。過剰な還元剤は、白金と金の電気化学的置換反応を、その還元作用により促進するために有効である。
また、本実施形態に係る無電解金めっき液は、純水で100倍以上、好ましくは500倍以上に希釈されることにより、金(Au)を白金(Pt)等の第1金属部材の上にヘテロエピタキシャル成長させることができる。希釈する割合が小さいと、無電解金めっきの成長速度が速くなり、ヘテロエピタキシャル成長ができなくなり、めっき浴中で核が生成して金ナノ粒子として成長し、その金ナノ粒子が、第1金属部材の表面に物理吸着する可能性が高くなってしまう。1000倍に希釈したときには、金(Au)をヘテロエピタキシャル成長させることを可能とする成長速度が得られる。したがって、金(Au)をヘテロエピタキシャル成長させるためには、上記のように希釈の倍率で、めっきの成長速度を制御するため、純水の希釈割合は重要である。
無電解めっき液に浸漬された第1金属部材110としての白金(Pt)膜やパラジウム(Pd)膜は、前述のように表面に金(Au)をヘテロエピタキシャル成長させつつ、無電解金めっき液中では金イオン(Au+、Au3+)が還元され析出しそれが第1金属部材110の表面に沈積する前に無電解めっき液から取り出される。このような処理を少なくとも1回、好ましく複数回繰り返すことで、第2金属部材116としての金(Au)の領域を形成する。浸漬時間は、無電解金めっき液の濃度、温度によって適宜設定される。例えば、第1金属部材110を無電解金めっき液に浸漬させる1回当たりの時間は、3秒~30秒、例えば10秒間となるように制御される。
具体的に、金(Au)を溶解させたヨードチンキと、還元剤として用いられるL(+)-アスコルビン酸(C6H8O6)とを組み合わせた無電解金めっき液は、白金(Pt)膜の表面に形成された白金酸化物(PtO)を、ヨードチンキ由来のI3
-イオンと還元剤(ここではアスコルビン酸を使用)の組み合わせにより発現される還元反応により白金を還元し、電気化学的置換反応(SLRR)により、金イオン(Au+、Au3+)が還元され、白金(Pt)が白金酸化物(PtO)に酸化されることにより、金(Au)を白金(Pt)表面でヘテロエピタキシャル成長することが可能な状態を生じさせている。
白金(Pt)の結晶粒の表面に付着した金(Au)原子は、ヘテロエピタキシャル成長していることから分かるように、金属-金属結合により動かない。一方、金(Au)表面で還元された金(Au)はレイリー不安定性により表面自己拡散し、エネルギーの安定な曲率半径の大きい球形になろうとする。また、2層目以降の金(Au)原子は堆積した表面でマイグレーションし、エネルギー的に安定な結晶状態を形成する。それにより、白金(Pt)の結晶粒の表面に、ナノスケールの島状構造を有する金(Au)の単結晶領域が形成される。
パラジウム(Pd)の結晶粒の表面に付着した金(Au)原子は、ヘテロエピタキシャル成長しつつ、金(AU)はパラジウム(Pd)膜中に、またパラジウム(Pd)は無電解めっきされた金(Au)の中に相互拡散する。また、金(Au)表面で還元された金(Au)はレイリー不安定性により表面自己拡散し、エネルギーの安定な曲率半径の大きい球形になろうとする。また、2層目以降の金(Au)原子は堆積した表面でマイグレーションし、エネルギー的に安定な結晶状態を形成する。それにより、パラジウム(Pd)の結晶粒中に金は拡散し、ナノスケールの島状構造を有する金(Au)にはPdが拡散した合金からなる結晶領域が形成される。
1-6-3.無電解めっきの前処理
無電解めっきを行う前に、酸化された状態にある第1金属部材110の表面を、還元する前処理が行われてもよい。前処理としては、酸化剤と還元剤を含む前処理液が用いられる。具体的には、酸化剤としてヨードチンキ由来のヨウ素イオン(I-、I3 -)を用い、還元剤としてL(+)-アスコルビン酸(C6H8O6)との組み合わせたものが用いられる。前処理は、このような前処理液の中に第1金属部材110を浸漬することで行われる。この前処理により、第1金属部材110の表面に形成された白金酸化物(PtO)が還元され、白金(Pt)の表面を形成することができ、無電解めっき処理において核生成密度を高めることが可能となる。
無電解めっきを行う前に、酸化された状態にある第1金属部材110の表面を、還元する前処理が行われてもよい。前処理としては、酸化剤と還元剤を含む前処理液が用いられる。具体的には、酸化剤としてヨードチンキ由来のヨウ素イオン(I-、I3 -)を用い、還元剤としてL(+)-アスコルビン酸(C6H8O6)との組み合わせたものが用いられる。前処理は、このような前処理液の中に第1金属部材110を浸漬することで行われる。この前処理により、第1金属部材110の表面に形成された白金酸化物(PtO)が還元され、白金(Pt)の表面を形成することができ、無電解めっき処理において核生成密度を高めることが可能となる。
2.塩基配列解析装置
本節では、ナノポア構造体を用いた装置の一例を示す。具体的には、DNAやRNAの塩基配列を解析する装置の一例を示す。ナノポア構造体100は導電性を有するため、このような解析装置において電極として用いることができる。
本節では、ナノポア構造体を用いた装置の一例を示す。具体的には、DNAやRNAの塩基配列を解析する装置の一例を示す。ナノポア構造体100は導電性を有するため、このような解析装置において電極として用いることができる。
2-1.第5の実施形態
図11は、塩基配列解析装置200aの断面構造を模式的に示す。塩基配列解析装置200aは、試料となる溶液が入れられるシスチャンバ202及びトランスチャンバ204を有する。シスチャンバ202及びトランスチャンバ204は、分析対象となる試料(DNA、RNAなど)を含む液体が充填される。図11には示されないが、シスチャンバ202には試料溶液を導入する導入管、トランスチャンバ204には試料溶液を流出させる流出管が設けられていてもよい。また、シスチャンバ202とトランスチャンバ204との間は、ナノポア構造体100を挟んで試料溶液が循環するように流路が設けられていてもよい。
図11は、塩基配列解析装置200aの断面構造を模式的に示す。塩基配列解析装置200aは、試料となる溶液が入れられるシスチャンバ202及びトランスチャンバ204を有する。シスチャンバ202及びトランスチャンバ204は、分析対象となる試料(DNA、RNAなど)を含む液体が充填される。図11には示されないが、シスチャンバ202には試料溶液を導入する導入管、トランスチャンバ204には試料溶液を流出させる流出管が設けられていてもよい。また、シスチャンバ202とトランスチャンバ204との間は、ナノポア構造体100を挟んで試料溶液が循環するように流路が設けられていてもよい。
ナノポア構造体100は、シスチャンバ202とトランスチャンバ204を区分するように両者の間に設けられる。ナノポア構造体100は、第1金属部材110及び第2金属部材116が形成された面が、シスチャンバ202の側に面するように配置される。シスチャンバ202とトランスチャンバ204とは、ナノポア102で連通されている。なお、ナノポア構造体100は、本実施形態に示す第1乃至第4の実施形態のいずれの実施形態も適用することができる。
試料溶液は、イオンを含む液体が用いられる。試料(DNA、RNAなど)はイオンを含む液体の中に含まれる。溶液としては、電離度の高い電解質を溶解した水溶液が好ましく、塩類溶液、例えば塩化カリウム水溶液などが使用される。例えば、1M KCl(又はNaCl、LiClその他等、均等な塩)及びpH緩衝系(例えば、使用されているタンパク質、例えば、タンパク質ナノポア、ヌクレアーゼその他が変性されないことを確実にする)を、本発明(ナノポアにわたる電位を変動させることにより移動スピードを制御するための)により用いることができる。一部の実施形態では、pH緩衝系を使用して、6.8~8.8の範囲内の値に実質的に一定にpHを維持することができる。
ナノポア構造体100の表面(第1金属部材110及び第2金属部材116の表面)は、試料溶液の濡れ性を高めるために表面処理がされていてもよい。表面処理は、酸素プラズマ処理、又はUVオゾン処理を適用することができる。DNA、RNAはリン酸と結合しているOH基が電離するためDNA、RNA全体としては負に帯電する。
シスチャンバ202には第1電極(作用電極)206が設けられる。トランスチャンバ204には第2電極(対電極)208、及び第4電極(参照電極2)212が設けられる。ナノポア構造体100は、第3電極(参照電極1)210として用いられる。
第1電極(作用電極)206と第2電極(対電極)208との間には、第1バイアス回路220、第1電流測定回路224が接続される。第3電極(参照電極1)210と第2電極(対電極)208との間には、第2バイアス回路222、第2電流測定回路226が接続される。また、第1電極(作用電極)206と第4電極(参照電極2:例えばAg/AgCl参照電極)212との間にはインピーダンスが極めて大きく第4電極212と第1電極206間には電流は流さない電圧測定回路228が接続される。塩基配列解析装置200aは、第1電極(作用電極)206、第2電極(対電極)208、第3電極(参照電極1)を所定の電位に制御して、溶液中の試料(DNA、RNAなど)をシスチャンバ202から、ナノポア102を通過させてトランスチャンバ204へ移動させる過程で塩基配列を解読する機能を有する。
一部の実施形態では、シスチャンバ202とトランスチャンバ204間の電圧測定回路228で測定される電圧差は、70mV~200mVの範囲内であってもよい。他の実施形態では、シスチャンバ202とトランスチャンバ204間の電圧差は、80mV~150mVの範囲内であってもよい。操作に適切な電圧は、従来の測定技法を使用して選択することができる。ナノポア102にわたる電流(又は電圧)は、市販の機器を使用して容易に測定することができる。
一本鎖DNA(ポリヌクレオチド)の移動スピードは、一部には、シスチャンバ202とトランスチャンバ204間の電圧差(又は電場強度)、及びポリヌクレオチドが導入されるシスチャンバ202の反応混合物(例えば、シスチャンバ202の1つの壁を構成する固相膜に配置される)又はpH緩衝系によるpHに依存する。ナノポア102によるポリヌクレオチド捕捉速度は、斯かるポリヌクレオチドの濃度に依存する。一部の実施形態では、塩基配列決定のための従来の反応混合物条件やポリヌクレオチドの移動スピードが所望の範囲内となるように、シスチャンバとトランスチャンバ間の電圧差を選択することができる。一部の実施形態では、移動スピードの範囲は、毎秒1000ヌクレオチド未満のスピードを含む。他の実施形態では、移動スピードの範囲は、毎秒10~800ヌクレオチドであり、他の実施形態では、移動スピードの範囲は、毎秒10~600ヌクレオチドであり、他の実施形態では、移動スピードの範囲は、毎秒200~800ヌクレオチドであり、他の実施形態では、移動スピードの範囲は、毎秒200~500ヌクレオチドである。同様に、移動スピードに影響を与える他の因子、例えば、温度、粘性、イオン濃度、その他は、上に引用されている範囲内の移動スピードを得るように選択することができる。
2-1-1.イオン電流の測定
第1電極(作用電極)206の電位をV1、第2電極(対電極)208の電位をV2、第3電極(参照電極1)210の電位をV3とする。まず、第1バイアス回路220によって、第1電極(作用電極)206に電圧V1、第2電極(対電極)208に電圧V2を印加し(V1<V2)V2-V1は、たとえば、70mV~200mVの範囲内、さらに好ましくは、80mV~150mVの範囲内、電圧測定回路228によって測定される第1電極(作用電極)206と第4電極(参照電極2)212との電位差は、イオン電流が安定して測定できるような値となるように制御する。また、イオン電流のみを測定する場合には、第4電極と第1電極の間の電圧測定回路を開放状態にすることもできる。さらに、試料(DNA、RNAなど)が負の電荷を持つ場合、第3電極(参照電極1)210の電圧V3が、V1≦V3、かつV3<V2となるように電位を制御する。
第1電極(作用電極)206の電位をV1、第2電極(対電極)208の電位をV2、第3電極(参照電極1)210の電位をV3とする。まず、第1バイアス回路220によって、第1電極(作用電極)206に電圧V1、第2電極(対電極)208に電圧V2を印加し(V1<V2)V2-V1は、たとえば、70mV~200mVの範囲内、さらに好ましくは、80mV~150mVの範囲内、電圧測定回路228によって測定される第1電極(作用電極)206と第4電極(参照電極2)212との電位差は、イオン電流が安定して測定できるような値となるように制御する。また、イオン電流のみを測定する場合には、第4電極と第1電極の間の電圧測定回路を開放状態にすることもできる。さらに、試料(DNA、RNAなど)が負の電荷を持つ場合、第3電極(参照電極1)210の電圧V3が、V1≦V3、かつV3<V2となるように電位を制御する。
上記のようなバイアスを印加すると、シスチャンバ202に入れられた試料溶液中の試料(DNA、RNAなど)は、第3電極(参照電極1)210のナノポア102近傍に引き寄せられて集められる。試料(DNA、RNAなど)は、貫通孔113を通過する際に、1本鎖の絡まりを減じ、さらにナノポア102を通過し、トランスチャンバ204の第2電極(対電極)208側に引き寄せられる。このとき、第1電極(作用電極)206と第2電極(対電極)208との間の電流を電流計で測定すると、試料(DNA、RNAなど)がナノポア102内に存在しない場合は、試料溶液として用いた溶液によるイオン電流のみが測定されることとなる。一方、図12Aに示すように、ナノポア102に試料(DNA、RNAなど)が存在する場合はその断面積によりナノポア102内を通過できるイオンが制限されるため、流れるイオン電流は減少する。この変化量を試料(DNA、RNAなど)による時系列的な封鎖電流として計測して塩基の検出等の分析を行うことができる。
また、試料(DNA、RNAなど)をナノポア102近傍に集める段階と、ナノポア102に通過させる段階を分離することもできる。試料(DNA、RNAなど)をナノポア102近傍に集める段階では、第1電極(作用電極)206と第3電極(参照電極1)210とにV1<V3となるように電位を制御する。このとき第2電極(対電極)208の電位V2はどのような電位でもよく、例えば、V3≧V2となるようにしてもよい。このようなバイアスを印加することで、試料溶液中の試料(DNA、RNAなど)が第3電極(参照電極1)210(すなわち、ナノポア102の近傍)に集められる。
次に、試料(DNA、RNAなど)をナノポア102に通過させる段階では、第3電極(参照電極1)210の電位V3と第2電極(対電極)208の電位V2を、V3<V2となるように制御する。このとき第1電極(作用電極)206の電位V1は、V3と同じ電位にしてもよい。このように試料(DNA、RNAなど)をナノポア102の近傍に集め、その後にナノポア102を通過させるようにすることで、多くの試料(DNA、RNAなど)を短時間で通過させることができる。この手法では、封鎖電流の検出開始のタイミングを制御できるので、試料がナノポア102を通過している時間のみ、塩基の検出をさせることができ、効率的なデータ収集が可能となる。
なお、試料(DNA、RNAなど)をできる限り速くナノポア102へ到達させるため、第1電極(作用電極)206の電位V1と第3電極(参照電極1)210の電位V3の電位差は大きい方が好ましいといえる。一方、イオン電流を計測する段階において、第3電極(参照電極1)の電位V3と第2電極(対電極)208の電位V2との電位差は、試料(DNA、RNAなど)がナノポア102を通過して電気信号を出力する速度に影響するので、第1電流測定回路224のサンプリング速度に応じた適切な値とすることが好ましい。なお、試料(DNA、RNAなど)が正の電荷を持つ場合は、負の電荷を持つ場合とは電位の大小関係を反転させる。例えば、各電位はV1≧V3>V2となるようにする。
2-1-2.トンネル電流の測定
試料であるDNA、RNAが導電性を有する場合、その特性を利用してナノポア102が設けられた第3電極(参照電極1)210でトンネル電流を測定することができる。
試料であるDNA、RNAが導電性を有する場合、その特性を利用してナノポア102が設けられた第3電極(参照電極1)210でトンネル電流を測定することができる。
第1電極(作用電極)206の電位V1、第2電極(対電極)208の電位V2をV1<V2となるように制御し、電圧測定回路228によって測定される第1電極(作用電極)206と第4電極(参照電極2)212との電位差は、第3電極(参照電極1)210において、トンネル電流が流れるような化学ポテンシャルを試料溶液に加えることで、試料(DNA、RNAなど)から第3電極(参照電極1)にトンネル電流が流れるようにする。
ナノポア102内に試料(DNA、RNAなど)が存在しないときに比べ、ナノポア102に試料(DNA、RNAなど)が存在するとき(通過するとき)の方が、試料に加わる化学ポテンシャルにより第3電極にトンネル電流が流れやすい場合には、試料(DNA、RNAなど)の塩基に対応したトンネル電流を第2電流測定回路226で測定することができる。この場合、第3電極(参照電極1)210は、第4電極(参照電極2)212との間でトンネル電流が流れる化学ポテンシャルに制御するための電位となるように制御される。
トンネル電流はトンネル距離に対して指数関数的に減衰するので、ナノポアを通過する塩基構造、一本鎖形状、及び配向に非常に敏感になる。この特性を用いて、図12Bに模式的に示すように、ナノポア102を形成する第2金属部材116の曲率半径を小さく形成すれば、試料(DNA、RNAなど)がナノポア102を通過する際に、第2金属部材116に最近接する塩基から流れるトンネル電流が支配的になり、隣接する塩基からのトンネル電流の影響を受けにくくなるので、時系列的なトンネル電流を解析することにより、塩基配列を正確に読み出すことができる。
2-2.第6の実施形態
DNAは、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の塩基を含み、A-T(水素結合が2個所)、G-C(水素結合が3個所)で形成される塩基対によって二重らせん構造が作られている。また、もう一種類の核酸であるRNA(リボ核酸)のペントースはリボースであり、塩基はTの代わりにウラシル(U)を含む。これらの塩基成分と結合した際に発光特性あるいは吸収特性が変化する基を含む分子を、ナノポア102を形成する第2金属部材116の表面に化学吸着させることで、発光分析又は吸光分析から塩基の配列を解読することができる。
DNAは、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の塩基を含み、A-T(水素結合が2個所)、G-C(水素結合が3個所)で形成される塩基対によって二重らせん構造が作られている。また、もう一種類の核酸であるRNA(リボ核酸)のペントースはリボースであり、塩基はTの代わりにウラシル(U)を含む。これらの塩基成分と結合した際に発光特性あるいは吸収特性が変化する基を含む分子を、ナノポア102を形成する第2金属部材116の表面に化学吸着させることで、発光分析又は吸光分析から塩基の配列を解読することができる。
図13は、発光分析に用いることのできる塩基配列解析装置200bの一例を示す。塩基配列解析装置200bは、シスチャンバ202とトランスチャンバ204との間に、第3の実施形態で示すナノポア構造体100cが設けられている。トランスチャンバ204側には、励起光源230と検出器232が設けられ、ビームスプリッタ234によりナノポア102部分への光照射と、励起光による発光を観察できるように構成されている。検出器232としては分光器が用いられ、励起光で発光した光を分光して検出する。なお、図13には示されないが、光路上には集光レンズ等の光学部材が設けられていてもよい。
ナノポア102の裏面側(トランスチャンバ204側)から励起光を当てると発光する基は、第2金属部材116a、116bの表面にのみ化学吸着するため、ナノポア102のみで発光の変化が観察できる。これにより、各塩基に対応する発光特性、又は吸収特性が変化する基を含む分子を、ナノポア102の部分に化学吸着させ、裏面から励起光を照射して、発光特性あるいは吸収特性を観察すると、DNAの1本鎖が、ナノポア102を通過する際に、一つずつ塩基を判別でき、DNAの塩基配列を読み出すことができる。この場合において、自己組織化単分子膜126は、シスチャンバ202側のみに設けておくことにより、精密に塩基の配列を解読することができる。
自己組織化単分子膜126は、DNA及びRNAに含まれる特定の塩基を標識する蛍光体分子がインターカレートされていてもよい。例えば、DNAに含まれる4種類の塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン)のそれぞれに異なる蛍光体を対応させるように、自己組織化単分子膜126のそれぞれに異なる蛍光体分子がインターカレートされるようにすることができる。このようなインターカレート蛍光体分子を有する自己組織化単分子膜126を設けることで、ナノポア102を用いて試料(DNA、RNAなど)の塩基配列を時系列的な光学シグナルとして解読する際に蛍光分析を行うことができる。
蛍光体分子を含む自己組織化単分子膜126を形成する際には、絶縁膜106の貫通孔113側のナノポア狭窄部下面と狭窄部表面にのみ自己組織化単分子膜126が形成されていることが好ましい。これにより、シスチャンバ側のナノポア部にのみ、蛍光体分子を含む自己組織化単分子膜126が形成される。
蛍光体としては、例えば、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、キサンテン系色素、シアニン系色素などを用いることができる。DNAのモノマー配列を決定するには、モノマーが蛍光標識で標識されるようにする。
蛍光分析を行う際には、励起光はトランスチャンバ204側から照射することが好ましいが、シスチャンバ202側から照射しても構わない。蛍光色素はナノポア102のみに存在するように自己組織化単分子膜を作製すると、DNAの塩基との組み合わせで変化する蛍光を、SN比よく検出することができる。蛍光の検出は、励起光を照射する光学系とハーフミラーなどを利用して、入射側から受光することが好ましい。ナノポア102は金(Au)を含み、金(Au)表面は表面プラズモン増強により、励起光強度が増幅する。これにより、励起光のフォトンは、効率良く蛍光色素を励起することができる。励起光を検出する際に、色素近傍に金属が存在すると消光する場合がある。自己組織化単分子膜126により、色素とナノポア部の距離を適度に制御すると、この消光を抑制することができる。
自己組織化単分子膜126は、0.3nm~5nmの長さを有するため、その長さの分だけナノポア102の有効な孔径が小さくなる。また、自己組織化単分子膜126とDNA塩基の親和力により、ナノポア102の表面が金属のみの場合と比較すると、第2金属部材116と蛍光色素間のクエンチを防ぐことができ好ましい。
本発明の一実施形態に係る塩基配列の解析方法は、ナノポア102を通してポリマーを移動させるステップであって、(a)ポリマーの異なる種類のモノマーが、鑑別可能な光学的シグナルを生成する異なる光学的標識で標識され、ナノポア102と接続する絶縁膜106の貫通孔113及びナノポア102が、一列で移動するようにモノマーを制約するステップと、(b)ポリマーがナノポア102を通過するときに、モノマーからの光学的シグナルの時系列的変化を検出するステップと、(c)異なる種類のモノマーからの光学的シグナルを分離するステップと、(d)光学的シグナルの時系列的変化からモノマーの配列を決定するステップと、によって実行することができる。
ここでは、光学的シグナルとして蛍光シグナルを用いる。遷移区間において生成された蛍光シグナルが、ナノポア102から出現した蛍光標識の1個又は複数の自由に回転可能な双極子の存在によるものであり、これにより、例えば、直接的励起後に、又は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を介した励起により、蛍光標識が、蛍光シグナルを生成できるようになると考えられる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、DNA又はRNA等、一本鎖ポリヌクレオチドであるが、特に、一本鎖DNAである。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドがナノポア102を通って移動するときに、ナノポアを一度に1個ずつ退出するにつれて蛍光標識によって生成されたシグナルを記録することにより、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定するための方法を含む。
第2金属部材116は、金(Au)などで構成されるため、表面プラズモン共鳴により励起頻度を高めることができる。特にナノポア102部は、一本鎖DNAの周囲を第2金属部材116が取り囲んでいることから、励起頻度が極めて高くなる。また、ナノポア102を形成する第2金属部材116の曲率半径は1nm~20nmであるため励起頻度を高める空間分解能を小さくすることができ、DNAがナノポア102を通過するときにナノポア102部で励起頻度が高くなることによる時系列的光学シグナルから、ナノポア102部を通過する一本鎖DNAの塩基配列を分離しやすい。
ナノポア102には、絶縁膜106の貫通孔112が接続している。異方性エッチングが可能な反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)を用いると、貫通孔112の孔径は、第1金属部材110及び下地金属膜108の孔径と等しくなる。したがって、貫通孔112の孔径の幅は50nm以下、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下の大きさを有する。絶縁膜106の貫通孔112を、DNAが始めに存在するシスチャンバとして、ナノポア102を通過させ、逆側のトランスチャンバに輸送する際、絶縁膜106の貫通孔112の幅が狭いため、絡まったDNAをほどき、1本鎖のDNAとしてナノポア102に導く、マイクロ流路として有効である。シスチャンバを上部とする際には、図1A及び図1B、又は図3A及び図3Bに示す構造を、上下を逆にして、絶縁膜106の貫通孔112を上側、ナノポア102を下側にして上部のシスチャンバから、トランスチャンバにDNAを通過させることが好ましい。
2-3.第7の実施形態
図13に示す塩基配列解析装置において、励起光源230としてレーザ光源を用い、検出器232としてラマン散乱光を検出する分光検出器を用いることができる。この場合、ナノポア構造体100cに設けられる自己組織化単分子膜126には、塩基と相互作用してラマンシフトが変化するものを担持させておく。
図13に示す塩基配列解析装置において、励起光源230としてレーザ光源を用い、検出器232としてラマン散乱光を検出する分光検出器を用いることができる。この場合、ナノポア構造体100cに設けられる自己組織化単分子膜126には、塩基と相互作用してラマンシフトが変化するものを担持させておく。
本発明の一実施形態に係る塩基配列の解析方法は、ナノポアを通してポリマーを移動させるステップであって、(a)ポリマーの異なる種類のモノマーが、第二電極材料によるナノポア部の表面プラズモン増強により鑑別可能なラマンスペクトルを生成することにより標識され、ナノポアと接続する絶縁膜106の貫通孔113及びナノポア102が、一列で移動するようにモノマーを制約する、ステップと、(b)ポリマーがナノポアを通過するときに、モノマーからの光学的シグナルとしてラマンスペクトルの時系列変化を検出するステップと、(c)異なる種類のモノマーからのラマンスペクトルを分離するステップと、(d)ラマンスペクトルの時系列変化からモノマーの配列を決定するステップとによって実行することができる。
ナノポア102の狭窄部は、金(Au)などの金属で構成されているため、ナノポア部を一本鎖DNAが通過する際に、表面プラズモン共鳴ラマン散乱光強度を桁違いに高めることができる。DNA及びRNAに含まれる特定の塩基は、それぞれの構造の違いに起因したラマンスペクトルを有する。特にナノポア102の部分は、一本鎖DNAの周囲を第2金属部材116が取り囲んでいることから、表面プラズモン増強の効果が極めて高くなる。また、ナノポア102の曲率半径は1nm~20nmであるため励起頻度を高める空間分解能を小さくすることができ、DNAナノポア102を通過するときにナノポア102の部分でラマン散乱光強度が高くなることにより時系列的光学シグナルを分光評価することが容易になり、ナノポア102を通過する一本鎖DNAの塩基配列を高分解能で評価することができる。
2-4.第8の実施形態
シスチャンバ202とトランスチャンバ204とを区分するナノポア構造体として、第4の実施形態に示すようにナノポアが設けられた電極を複数個配列させたナノポア構造体100dを用いることができる。以下、図11に示す塩基配列解析装置200aと相違する部分を中心に説明する。
シスチャンバ202とトランスチャンバ204とを区分するナノポア構造体として、第4の実施形態に示すようにナノポアが設けられた電極を複数個配列させたナノポア構造体100dを用いることができる。以下、図11に示す塩基配列解析装置200aと相違する部分を中心に説明する。
図14に示す塩基配列解析装置200cは、シスチャンバ202とトランスチャンバ204との間に複数のナノポア付き電極120が設けられたナノポア構造体100dが設けられている。複数のナノポア付き電極120は、それぞれが電気的に分離されており、図示されない個別配線によって選択回路236に接続されている。選択回路236は、第2バイアス回路222及び第3バイアス回路240と接続されている。選択回路236と第2バイアス回路222との間には、第3電極(参照電極1)210を用いて電流を測定する第2電流測定回路226が設けられていてもよい。
第2バイアス回路222に対し第3バイアス回路240は異なるレベルのバイアス電圧を印加する。選択回路236は、複数のナノポア付き電極120のそれぞれと、第2バイアス回路222及び第3バイアス回路240との接続を切り替える機能を有する。選択回路236は、例えば、アナログスイッチなどで構成されるスイッチ回路が含まれている。また、選択回路236の動作を制御する制御回路242、第2電流測定回路226で測定されたデータを記憶する記憶回路244が設けられていてもよい。
図15は、複数のナノポア付き電極120と、選択回路236との接続の一例を示す。図15は、模式的にナノポア構造体100dに4つのナノポア付き電極120a~120dが設けられる構造を例示する。選択回路236は、スイッチ238a~238dを含む。スイッチ238a~238dの動作は制御回路242により制御される。ナノポア付き電極120aはスイッチ238aと接続される。スイッチ238aは、第2バイアス回路222と第3バイアス回路240との接続を切り替える機能を有する。ナノポア付き電極120b~120dは、同様にスイッチ238b~238dと接続されている。
ここで、第2バイアス回路222はナノポア付き電極120a~120dに電位V3を与え、第3バイアス回路240は電位V4を与える機能を有するものとする。第2-2.節で説明されたように、第1電極(作用電極)206の電位V1、第2電極(対電極)208の電位V2、第3電極(参照電極1)210の電位V3において、V1<V3、かつV3<V2となるように電位を制御されたとき、電位V4はV1と同じ又はV4より低い電位に設定される。電位V4はイオン電流を流さないようにする電位であるため、抑止電位(又は抑止電圧)と呼ぶこともできる。
そして、図14に示す塩基配列解析装置200cにおいて、図15に示すように、ナノポア付き電極120aを第2バイアス回路222と接続し、他のナノポア付き電極120b~120dを第3バイアス回路240と接続すると、ナノポア付き電極120aにイオン電流が流れ、他のナノポア付き電極120b~120dにはイオン電流が流れないか、ほとんど無視できるレベルのイオン電流しか流れないこととなる。
2-4-1.イオン電流の測定
選択回路236により、ナノポア付き電極120a~120dの接続先を順次切り替え、そのタイミングに応じて第2電流測定回路226でイオン電流を測定することで、ナノポア構造体100dの中でどのナノポアに試料(DNA、RNAなど)が通過しているのか(又は通過し始めているのか)を知ることができる。
選択回路236により、ナノポア付き電極120a~120dの接続先を順次切り替え、そのタイミングに応じて第2電流測定回路226でイオン電流を測定することで、ナノポア構造体100dの中でどのナノポアに試料(DNA、RNAなど)が通過しているのか(又は通過し始めているのか)を知ることができる。
図16は、このような動作のタイミングチャートの一例を示す。第1電極(作用電極)206を電位V1、第2電極(対電極)208を電位V2に制御した後、ナノポア付き電極120aを電位V3とし、他のナノポア付き電極120b~120dを電位V4に制御する。一定時間を経過後、次のタイミングでは、ナノポア付き電極120aを電位V4とし、ナノポア付き電極120bを電位V3に制御する。以下、このような電位の制御を順次繰り返していくことで、ナノポア付き電極120a~120dに流れるイオン電流を順次測定することができる。図16に示すように、第2電流測定回路226からはイオン電流が順次(シリアルに)測定される。そして、イオン電流の大小から、封鎖電流が流れているか否かを評価することができる。第2電流測定回路226で測定されたデータは、記憶回路244に記憶させることもできる。
2-4-2.ナノポアアレイの評価
図14に示す装置において、イオン電流の流れ易さはナノポア102の孔径に依存する。その特性を利用して、作製されたナノポア102の評価を行うことができる。ナノポア102の孔径はナノポア構造体100dの中で均一であることが望ましいが、製造ばらつきにより孔径にばらつきが含まれる場合がある。このような場合、以下に示す手法によって、予めナノポア102の良否を判定し、又はナノポア102をクラス分けすることができる。
図14に示す装置において、イオン電流の流れ易さはナノポア102の孔径に依存する。その特性を利用して、作製されたナノポア102の評価を行うことができる。ナノポア102の孔径はナノポア構造体100dの中で均一であることが望ましいが、製造ばらつきにより孔径にばらつきが含まれる場合がある。このような場合、以下に示す手法によって、予めナノポア102の良否を判定し、又はナノポア102をクラス分けすることができる。
シスチャンバ202及びトランスチャンバ204には、試料(DNA、RNAなど)を含まない溶液だけを充填しておく。この状態で、図16で説明したように、ナノポア付き電極毎に順次イオン電流の測定を行う。イオン電流は第2電流測定回路226によって測定され、ナノポア付き電極120a~120dのアドレスに対応させて測定値を記憶回路244に記憶させておいてもよい。ある標準的なナノポアを基準とした場合(予め定められた基準値として)、イオン電流がその基準値より大きいとナノポア102の孔径が基準値より大きいことを示し、小さい場合には孔径が基準値より小さいことを意味する。このような評価は、製造ばらつきの他、ナノポア102に異物等が詰まっているような不良を発見することもできる。
上記の評価によって、1つのナノポア構造体100dの中でクラス分けされたナノポア102は、判定基準に応じて試料の計測に使用するか否かの使い分けをすることができる。例えば、不良と判定されたナノポアは試料の計測に使用しないように抑止電位V4のままにしておくことができる。
このように、本実施形態によれば、シスチャンバ202とトランスチャンバ204とを区画するナノポア構造体100dにナノポア付き電極120を複数個配列させることで、試料の塩基配列の解読を効率良く行うことができる。この場合において、個々のナノポア付き電極120の電位を個別に制御することで、シスチャンバ202とトランスチャンバ204と共通化しつつ、注目するナノポアにおける試料の解析を行うことができる。
2-5.第9の実施形態
第5乃至第7の実施形態において、第2バイアス回路222をパルス電源として、第3電極(参照電極1)210にパルス電圧を印加することで、パルス電圧を加えた際にナノポアを通過する試料に対し、1塩基ずつ通過させることができる。イオン電流、トンネル電流、発光・吸光分析、ラマンシフトを測定する際に、1塩基ずつ評価を行うことができる。このような方式により、読み取りエラーを低減し、精密に塩基配列を解読することができる。
第5乃至第7の実施形態において、第2バイアス回路222をパルス電源として、第3電極(参照電極1)210にパルス電圧を印加することで、パルス電圧を加えた際にナノポアを通過する試料に対し、1塩基ずつ通過させることができる。イオン電流、トンネル電流、発光・吸光分析、ラマンシフトを測定する際に、1塩基ずつ評価を行うことができる。このような方式により、読み取りエラーを低減し、精密に塩基配列を解読することができる。
イオン電流、トンネル電流、発光・吸光分析、ラマンシフトは、それぞれ独立に測定が可能であるため、これらを2~4種の範囲で複数組み合わせて測定を行うことにより、塩基配列の精度を高めることができる。
各種電極間の電圧測定、電圧印加、電流測定は、バッテリーで駆動が可能であるため、本ナノポア電極とバッテリーを組み合わせることにより、持ち運び可能なDNA、RNAの解析装置とすることができる。
[実施例1]
本実施例は、ナノポア構造体の作製例を示す。ナノポア構造体は、第1-5.節で説明する工程に従って作製を行った。作製条件の概略は以下の通りに行った。
本実施例は、ナノポア構造体の作製例を示す。ナノポア構造体は、第1-5.節で説明する工程に従って作製を行った。作製条件の概略は以下の通りに行った。
(1)両面に100nmの酸化膜(SiO2)が形成されたシリコンウェハ(厚さ300μm)の裏面にポジ型フォトレジスト(OFPR-800)を塗布する。
(2)シリコンウェハ裏面に100×100μm2のキャビティ作製するためのレジストパターンをフォトリソグラフィプロセスにより作製する。
(3)ICP-RIE(Inductive Coupled Plasma-Reactive Ion Etching)プロセスを
用いて裏面の酸化膜をエッチングし、その後フォトレジストを除去する。パターン化された裏面側の酸化膜は、次のエッチングプロセスのためのハードマスクとして使用する。
(4)シリコンウェハ(300μm)をICP-RIEプロセスで除去して、裏面にキャビティを形成する。
(5)シリコンウェハの表面にポジ型EBLレジスト(ZEP-520A)を塗布する。
(6)ナノポア構造と電極リードを作製するためのパターニングをEBLレジスト上に行う。ナノポア部分には、電子線が当たらないようにし、ナノポアが形成される領域の周囲に電子線を当ててレジストを感光する。また、電極リードと、ナノポア周囲部は接続するように電子線を当てる。ナノポア部分となる電子線を当てない領域は、正方形であっても、円形であってもよい。
(7)電子ビーム蒸着によりチタン(Ti)、白金(Pt)の順に金属膜を堆積する。
(8)リフトオフプロセスによりレジストを剥離し、ナノポアを作製する部分の酸化膜(SiO2)表面を露出させる。
(9)ナノポアに独立して電圧を印加するための電極パッド(100×100μm2)のパターンをフォトレジストでパターニングする。
(10)電子ビーム蒸着により電極パッドのためのチタン(Ti)、白金(Pt)積層膜を形成する。
(11)シリコンウェハの表面にポジ型EBLレジストを塗布し、ナノポアが存在する部分をパターニングする。
(12)表面の酸化膜(SiO2)が露出した部分をチタン(Ti)・白金(Pt)層マスクとして用いてICP-RIEプロセスで加工し、貫通したナノポアを形成する。
(13)ナノポア表面で穴の開いたチタン(Ti)・白金(Pt)電極上に無電解めっきプロセスにより金メッキを行い、孔サイズを2nm以下に狭める。
(14)EBLレジストを除去する。
(2)シリコンウェハ裏面に100×100μm2のキャビティ作製するためのレジストパターンをフォトリソグラフィプロセスにより作製する。
(3)ICP-RIE(Inductive Coupled Plasma-Reactive Ion Etching)プロセスを
用いて裏面の酸化膜をエッチングし、その後フォトレジストを除去する。パターン化された裏面側の酸化膜は、次のエッチングプロセスのためのハードマスクとして使用する。
(4)シリコンウェハ(300μm)をICP-RIEプロセスで除去して、裏面にキャビティを形成する。
(5)シリコンウェハの表面にポジ型EBLレジスト(ZEP-520A)を塗布する。
(6)ナノポア構造と電極リードを作製するためのパターニングをEBLレジスト上に行う。ナノポア部分には、電子線が当たらないようにし、ナノポアが形成される領域の周囲に電子線を当ててレジストを感光する。また、電極リードと、ナノポア周囲部は接続するように電子線を当てる。ナノポア部分となる電子線を当てない領域は、正方形であっても、円形であってもよい。
(7)電子ビーム蒸着によりチタン(Ti)、白金(Pt)の順に金属膜を堆積する。
(8)リフトオフプロセスによりレジストを剥離し、ナノポアを作製する部分の酸化膜(SiO2)表面を露出させる。
(9)ナノポアに独立して電圧を印加するための電極パッド(100×100μm2)のパターンをフォトレジストでパターニングする。
(10)電子ビーム蒸着により電極パッドのためのチタン(Ti)、白金(Pt)積層膜を形成する。
(11)シリコンウェハの表面にポジ型EBLレジストを塗布し、ナノポアが存在する部分をパターニングする。
(12)表面の酸化膜(SiO2)が露出した部分をチタン(Ti)・白金(Pt)層マスクとして用いてICP-RIEプロセスで加工し、貫通したナノポアを形成する。
(13)ナノポア表面で穴の開いたチタン(Ti)・白金(Pt)電極上に無電解めっきプロセスにより金メッキを行い、孔サイズを2nm以下に狭める。
(14)EBLレジストを除去する。
以上のような作製工程において、(6)の電子ビームの描画面積を異ならせた試料の評価を行った。具体的には、電子ビームを当てず、酸化膜(SiO2)を露出させる面積を変化させたパターンを同一基板上に作製し、ナノポアの孔径を走査型電子顕微鏡(SEM)で評価した。
図17の(a)、(b)、(c)に、電子ビームを当てず酸化膜(SiO2)を露出させる面積を異ならせた試料のSEM像を示す。(a)は正方形の形状で電子ビームを当てない面積を100×100nm2とした試料であり、(b)は60×60nm2、(c)は40×40nm2である。各試料においてナノポアのサイズは、(a)が40nmであり、(b)が17nm、(c)が10nmとなっている。このように、電子ビームの描画パターンが小さくなると、無電解めっき後のナノポアのサイズは小さくなることが示された。本めっき条件では、金(Au)の核生成密度が高いため、粒が相互に接続した構造となっている。また平面部は金で覆われている。さらに、酸化膜(SiO2)の露出部は、正方形であったものが、円形のナノポアとなっている。これは、ナノポアは、上部からみると円形となる方が、正方形よりもエネルギー的に安定であるため、円形になろうとする。また、基板面に対して垂直な断面は、ナノポア部では対の円形構造となっており、ドーナッツの内側の穴の部分のような構造となっている。貫通穴があると、平面部分と比較すると突起形状となるため、ナノポア部の円形断面部分は、めっきが進行しやすく、平面部分よりも盛り上がった構造となっている。しかしながら、平面部分よりも盛り上がった構造とならない場合もある。ナノポア部の円形構造は、少なくとも180度の範囲で同じ曲率半径を有しており、第1金属部材110と下地金属膜108の境界の初期ポア部を、その円形は貫いている。
[実施例2]
本実施例は、ナノポア構造体の耐熱性を評価した結果を示す。図18は、200℃と300℃でナノポアが形成された試料を熱処理した結果をSEM像で示す。図18において、(a)及び(d)は試料の熱処理前の状態を示し、(b)は200℃、5分の熱処理後、(c)は200℃、2時間の熱処理後、(e)は300℃、5分の熱処理後、(f)は300℃、2時間の熱処理後の状態を示す。熱処理後の試料を観察すると、金(Au)表面は平滑となっている。一方、中心のナノポアの部分は形状に変化が無いことが分かる。このことから、ナノポアは、300℃の熱処理にも耐えることが明らかとなった。また、酸素プラズマ処理を施しても、形状に変化が無いことが判明している。金(Au)で形成されたナノポアが、このような耐熱性を示すのは、白金(Pt)上でヘテロエピタキシャル成長していることに起因している。
本実施例は、ナノポア構造体の耐熱性を評価した結果を示す。図18は、200℃と300℃でナノポアが形成された試料を熱処理した結果をSEM像で示す。図18において、(a)及び(d)は試料の熱処理前の状態を示し、(b)は200℃、5分の熱処理後、(c)は200℃、2時間の熱処理後、(e)は300℃、5分の熱処理後、(f)は300℃、2時間の熱処理後の状態を示す。熱処理後の試料を観察すると、金(Au)表面は平滑となっている。一方、中心のナノポアの部分は形状に変化が無いことが分かる。このことから、ナノポアは、300℃の熱処理にも耐えることが明らかとなった。また、酸素プラズマ処理を施しても、形状に変化が無いことが判明している。金(Au)で形成されたナノポアが、このような耐熱性を示すのは、白金(Pt)上でヘテロエピタキシャル成長していることに起因している。
DNAの2重らせん構造を1本鎖にほどく際には、65℃程度で温める手法が用いられる。本実施例で作製されたナノポアは300℃に耐えることから、ナノポアを含む測定セルを暖めて、1本鎖にするプロセスを行うことができることが確認された。
本発明の一実施形態に係るナノポア構造体は、生体試料分析装置に用いることができる。本発明の一実施形態に係る生体試料分析装置は、ナノポア構造体を有し、DNA、RNAなどのシーケンシング(すなわち、DNAシーケンサ)として用いることができる。
[付記]
本明細書により開示された本発明の例示的な実施形態の全体又は一部に基づく塩基配列の解析方法を以下に付記する。
本明細書により開示された本発明の例示的な実施形態の全体又は一部に基づく塩基配列の解析方法を以下に付記する。
本発明の一実施形態に係る塩基配列の解析方法は、ナノポアを通してポリマーを移動させる方法であって、(a)ポリマーの異なる種類のモノマーが、鑑別可能な光学的シグナルを生成する異なる光学的標識で標識され、ナノポアと接続する絶縁膜の貫通孔及びナノポアが、一列で移動するようにモノマーを制約するステップと、(b)ポリマーがナノポアを通過するときに、モノマーからの光学的シグナルの時系列的変化を検出するステップと、(c)異なる種類のモノマーからの光学的シグナルを分離するステップと、(d)光学的シグナルの時系列的変化からモノマーの配列を決定するステップと、を含む。
本発明の一実施形態に係る塩基配列の解析方法は、ナノポア102を通してポリマーを移動させるステップであって、(a)ポリマーの異なる種類のモノマーが、ナノポアを形成する第2金属部材による表面プラズモン増強により鑑別可能なラマンスペクトルを生成することにより標識され、ナノポアと接続する絶縁膜の貫通孔及びナノポアが、一列で移動するようにモノマーを制約するステップと、(b)ポリマーがナノポアを通過するときに、モノマーからの光学的シグナルとしてラマンスペクトルの時系列変化を検出するステップと、(c)異なる種類のモノマーからのラマンスペクトルを分離するステップと、(d)ラマンスペクトルの時系列変化からモノマーの配列を決定するステップとを含む。
100・・・ナノポア構造体、102・・・ナノポア、104・・・支持部材、106・・・絶縁膜、108・・・下地金属膜、110・・・第1金属部材、112・・・貫通孔、113・・・貫通孔、114・・・結晶粒、115・・・アモルファス領域、116・・・第2金属部材、118・・・結晶領域、119・・・アモルファス領域、120・・・ナノポア付き電極、122・・・配線、124・・・電極パッド、126・・・自己組織化単分子膜、130・・・シリコン基板、131、132・・・絶縁膜、134・・・開口部、140・・・フォトレジスト膜、142・・・フォトレジスト膜、143・・・レジストパターン、144・・・フォトレジスト膜、145・・・レジストパターン、200・・・塩基配列解析装置、202・・・シスチャンバ、204・・・トランスチャンバ、206・・・第1電極(作用電極)、208・・・第2電極(対電極)、210・・・第3電極(参照電極1)、212・・・第4電極(参照電極2)、220・・・第1バイアス回路、222・・・第2バイアス回路、224・・・第1電流測定回路、226・・・第2電流測定回路、228・・・電圧測定回路、230・・・励起光源、232・・・検出器、234・・・ビームスプリッタ、236・・・選択回路、238・・・スイッチ、240・・・第3バイアス回路、242・・・制御回路、244・・・記憶回路
Claims (17)
- 薄膜状であり、貫通孔を有する第1金属部材と、
前記貫通孔の孔径を狭窄するように設けられた第2金属部材と、を有し、
前記第1金属部材と前記第2金属部材とによって、10nm以下の孔径を有するナノポアが形成されているナノポア構造体。 - 前記ナノポアが、5nm以下、1nm以上の孔径を有する、請求項1に記載のナノポア構造体。
- 前記第2金属部材が、前記第1金属部材の上面部及び前記貫通孔の側壁面の少なくとも一部を覆う、請求項1又は2に記載のナノポア構造体。
- 前記第2金属部材は、前記貫通孔の端部と重なる部位において球状又は円柱状の曲面を有する、請求項1に記載のナノポア構造体。
- 前記曲面の曲率半径は、前記第1金属部材の膜厚と同じ又は前記膜厚以下である、請求項4に記載のナノポア構造体。
- 前記第1金属部材は多結晶構造を含み、
前記第2金属部材は、前記第1金属部材に含まれる少なくとも一つの結晶粒からヘテロエピタキシャル成長した結晶領域を含む、請求項1に記載のナノポア構造体。 - 前記第2金属部材は島状構造体を複数含み、複数の前記島状構造体が前記貫通孔を囲む、請求項6に記載のナノポア構造体。
- 前記第2金属部材は前記第1金属部材上で連続する膜状構造体であり、
前記膜状構造体が前記貫通孔を囲み、
前記膜状構造体は、前記ナノポアの部分の厚さが、前記膜状構造体の他の部分の厚さよりも厚い、請求項1に記載のナノポア構造体。 - 前記第1金属部材は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)から選ばれた一種であり、
前記第2金属部材は、金(Au)である、請求項1に記載のナノポア構造体。 - 前記第2金属部材の表面に自己組織化単分子膜が設けられている、請求項1に記載のナノポア構造体。
- 前記自己組織化単分子膜は、DNAの各塩基又はRNAの各塩基に対応したインターカレート色素を含む、請求項10に記載のナノポア構造体。
- 前記ナノポアを形成する前記第1金属部材及び前記第2金属部材が設けられた絶縁膜を有し、
前記絶縁膜は、前記ナノポアと連通する第2の貫通孔を有する、請求項1に記載のナノポア構造体。 - 前記第2の貫通孔が20nm以下の孔径を有する、請求項12に記載のナノポア構造体。
- シスチャンバ及びトランスチャンバと、
前記シスチャンバと前記トランスチャンバを区画するナノポア構造体と、
前記シスチャンバに設けられた第1電極と、
前記トランスチャンバに設けられた第2電極、及び第3電極と、
を有し、
前記ナノポア構造体は、
薄膜状であり、前記シスチャンバと前記トランスチャンバとを連通させる貫通孔が少なくとも1個設けられ、
前記貫通孔を有する第1金属部材と、
前記貫通孔の孔径を狭窄するように設けられた第2金属部材と、を有し、
前記第1金属部材と前記第2金属部材とによって、10nm以下の孔径を有するナノポアが形成されている、
塩基配列解析装置。 - 前記トランスチャンバ側に顕微ラマン分光装置が設けられている
請求項14に記載の塩基配列解析装置。 - 前記ナノポア構造体は、前記第1金属部材及び前記第2金属部材によって形成された第4電極を少なくとも1個有する
請求項14に記載の塩基配列解析装置。 - 前記ナノポア構造体は着脱自在に設けられている
請求項16に記載の塩基配列解析装置。
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