JP7236065B1 - トリアジン誘導体を含有する医薬組成物 - Google Patents

トリアジン誘導体を含有する医薬組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、コロナウイルス増殖阻害活性を示す化合物を含有する医薬組成物を提供する。
Figure 0007236065000050

(式中、YはNであり;Rは、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;Rは、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;Rは、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;-X-は、-NH-であり;mは、0または1であり;R5aは、水素原子であり;R5bは、水素原子であり;nは、1であり;R4aは、水素原子であり;R4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を含有する医薬組成物。

Description

特許法第30条第2項適用 公開1 令和3年11月29日に、AIMECS2021オンラインシンポジウムにてスライドを用いて発表。 公開2 令和4年1月26日に、ウェブサイト https://www.biorxiv.org/にてプレプリントを公表。
本発明は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を示す化合物を含有する医薬組成物に関する。
ニドウイルス目コロナウイルス科オルトコロナウイルス亜科に属するコロナウイルスは、約30キロベースのゲノムサイズを有し、既知のRNAウイルスでは最大級の一本鎖+鎖RNAウイルスである。コロナウイルスはアルファコロナウイルス属、ベータコロナウイルス属、ガンマコロナウイルス属およびデルタコロナウイルス属の4つに分類され、ヒトに感染するコロナウイルスとして、アルファコロナウイルス属の2種類(HCoV-229E、HCoV-NL63)およびベータコロナウイルス属の5種類(HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、SARS-CoV-2)の計7種類が知られている。この内、4種類(HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、HCoV-OC43)は風邪の病原体であるが、残りの3種類は重症肺炎を引き起こす重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス(MERS-CoV)および新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)である。
2019年12月に中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は急速に国際社会に蔓延し、2020年3月11日にWHOよりパンデミックが表明された。2022年9月21日時点で確認された感染者数は6.1億人以上、死者数は650万人以上に達する(非特許文献1)。SARS-CoV-2の主な感染経路として飛沫感染、接触感染およびエアロゾル感染が報告されており、SARS-CoV-2は3時間程度エアロゾルと共に空気中を漂い続け、感染力を維持することが確認されている(非特許文献2)。潜伏期間は2~14日程度であり、発熱(87.9%)、空咳(67.7%)、倦怠感(38.1%)、痰(33.4%)等の風邪様症状が典型的である(非特許文献3)。重症例では、急性呼吸窮迫症候群や急性肺障害、間質性肺炎等による呼吸器不全が起こる。また、腎不全や肝不全などの多臓器不全も報告されている。
本邦においては、既存薬のドラッグリポジショニングから、抗ウイルス薬であるレムデシビル、抗炎症薬であるデキサメタゾン、リウマチ薬であるバリシチニブがCOVID-19に対する治療薬として承認され、2022年1月に抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブが追加承認されている。また、2021年7月に、抗体カクテル療法であるロナプリーブ(カシリビマブ/イムデビマブ)が特例承認され、2021年9月にソトロビマブが特例承認され、2021年12月にモルヌピラビルが特例承認された。これらの薬剤についての有効性や安全性については、十分なエビデンスが得られていない。したがって、COVID-19に対する治療薬、特に経口薬の創製は急務である。
コロナウイルスは、細胞に感染すると、自己複製に必要な様々なタンパク質を合成する。その中に2つのポリタンパク質があり、ウイルスゲノムを作る複製複合体、2つのプロテアーゼが含まれている。プロテアーゼは、ウイルスから合成されたポリタンパク質を切断し、それぞれのタンパク質を機能させるために不可欠な働きをする。2つのプロテアーゼのうち、ポリタンパク質の切断のほとんどを担うのが、3CLプロテアーゼ(メインプロテアーゼ)である(非特許文献4)。
3CLプロテアーゼを標的とした、COVID-19治療薬としては、2021年6月、Pfizer社によるPF-00835231のプロドラッグであるLufotrelvir(PF-07304814)のPhase1b試験の完了がClinicalTrials.govに掲載された(NCT04535167)。また、2021年3月、Pfizer社は新型コロナウイルス感染症に対する治療薬PF-07321332のPhase1試験を開始すると発表した。PF-00835231、LufotrelvirおよびPF-07321332の構造式は以下に示す通りで、本発明に係る化合物とは化学構造が異なる(非特許文献5、12および13ならびに特許文献5および6)。
PF-00835231:
Figure 0007236065000001

Lufotrelvir(PF-07304814):
Figure 0007236065000002

PF-07321332:
Figure 0007236065000003

さらに2021年7月、ハイリスク因子を持つCOVID-19患者を対象とした、PF-07321332およびリトナビル併用のPhase2/3試験が開始されることがClinicalTrials.govに掲載された(NCT04960202)。また、2021年11月、Pfizer社のホームページにおいて、PAXLOVID(TM)(PF-07321332;リトナビル)は、成人のハイリスク患者において、プラセボと比較して入院または死亡のリスクを89%減少させたことが報告された(非特許文献14)。さらに、2021年12月、PAXLOVID(TM)は米国で緊急使用許可が承認され、2022年2月10日、パキロビッド(登録商標)パックが日本で特例承認された。
3CLプロテアーゼ阻害活性を有する化合物が非特許文献5~8に開示されているが、いずれの文献においても本発明に係る化合物を含む医薬組成物は記載も示唆もされていない。
Ρ2Xおよび/またはΡ2X2/3受容体拮抗作用を有するトリアジン誘導体が特許文献1~4に開示されているが、いずれの文献においても、3CLプロテアーゼ阻害活性および抗ウイルス効果を有する化合物を含む医薬組成物については記載も示唆もされていない。
抗腫瘍効果を有するトリアジン誘導体が非特許文献9~11に開示されているが、いずれの文献においても、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性および抗ウイルス効果については記載されておらず、また、本発明に係る化合物を含む医薬組成物は記載も示唆もされていない。
国際公開第2012/020749号 国際公開第2013/089212号 国際公開第2010/092966号 国際公開第2014/200078号 国際公開第2021/205298号 国際公開第2021/250648号
"COVID-19 Dashboard by the Center for Systems Science and Engineering at Johns Hopkins University"、[online]、Johns Hopkins University、[2022年9月21日検索]、インターネット<URL:https://coronavirus.jhu.edu/map.html> The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE(2020年)、382巻、1564~1567頁 "Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)"、[online]、2020年2月28日、WHO、[2022年9月21日検索]、インターネット<URL:https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf> Science(2003年)、300巻、1763~1767頁 "A comparative analysis of SARS-CoV-2 antivirals characterizes 3CLpro inhibitor PF-00835231 as a potential new treatment for COVID-19"、Journal of Virology、[online]、2021年2月23日、[2022年9月21日検索]、インターネット<URL: https://jvi.asm.org/content/early/2021/02/19/JVI.01819-20><doi: 10.1128/JVI.01819-20> Cell Research(2020年)、30巻、678~692頁 Science(2020年)、368巻、409~412頁 ACS Central Science(2021年)、7巻、3号、467~475頁 Cancer Treatment Reviews(1984年)、11巻、Supplement 1、99~110頁 Contributions to Oncology(1984年)、18巻、221~234頁 Arzneimittel-Forschung(1984年)、11巻、6号、663~668頁 261st Am Chem Soc (ACS) Natl Meet ・ 2021-04-05 / 2021-04-16 ・ Virtual, N/A ・ Abst 243 Science(2021年)、374巻、1586~1593頁 "Pfizer’s Novel COVID-19 Oral Antiviral Treatment Candidate Reduced Risk Of Hospitalization Or Death By 89% In Interim Analysis Of Phase 2/3 EPIC-HR Study"、[online]、2021年11月5日、 Pfizer Press Release、[2022年9月21日検索]、インターネット<URL:https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizers-novel-covid-19-oral-antiviral-treatment-candidate>
本発明の目的は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を有する化合物を含有する医薬組成物を提供することにある。好ましくは、本発明は、抗ウイルス作用、特にコロナウイルスの増殖阻害作用を有する化合物を含有する医薬を提供する。
本発明は、以下に関する。
(1)
式(I):
Figure 0007236065000004

(式中、YはNであり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
-X-は、-NH-であり;
mは、0または1であり;
5aは、水素原子であり;
5bは、水素原子であり;
nは、1であり;
4aは、水素原子であり;
4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を含有する医薬組成物。
(2)Rが、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基である、上記項目(1)記載の医薬組成物。
(3)Rが、置換基群Gから選択される1、2または3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基であり;
ここで置換基群Gは、ハロゲン、シアノおよびアルキルからなる群である、上記項目(1)または(2)記載の医薬組成物。
(4)Rが置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基である、上記項目(1)~(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(5)式(I)で示される化合物が、化合物I-003、化合物I-005、化合物I-017および化合物I-023からなる群から選択される、上記項目(1)記載の化合物またはその製薬上許容される塩、を含有する医薬組成物。
(6)3CLプロテアーゼ阻害剤である、上記項目(1)~(5)のいずれかに記載の医薬組成物。
(7)SARS-CoV-2のウイルス増殖を阻害するために用いられる、上記項目(1)~(6)のいずれかに記載の医薬組成物。
(8)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療剤および/または予防剤である、上記項目(1)~(7)のいずれかに記載の医薬組成物。
(9)SARS-CoV-2による感染症の重症化抑制のために用いられる、上記項目(1)~(8)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、72時間以内に投与を開始するように用いられる、上記項目(1)~(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
(11)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、24時間以内に投与を開始するように用いられる、上記項目(1)~(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
(12)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、120時間以内に投与を開始するように用いられる、上記項目(1)~(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
(13)SARS-CoV-2による感染症の症状が、COVID-19の12症状のうちいずれか1項目以上を有し、当該症状が中等度以上の症状である、上記項目(1)~(12)のいずれかに記載の医薬組成物。
(14)SARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制するために用いられる、上記項目(1)~(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
(15)SARS-CoV-2のウイルス増殖阻害方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防を必要とする個体に、式(I):
Figure 0007236065000005

(式中、YはNであり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
-X-は、-NH-であり;
mは、0または1であり;
5aは、水素原子であり;
5bは、水素原子であり;
nは、1であり;
4aは、水素原子であり;
4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を投与することを含む、
SARS-CoV-2のウイルス増殖阻害方法。
(16)Rが、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基である、上記項目(15)記載のSARS-CoV-2のウイルス増殖阻害方法。
(17)Rが、置換基群Gから選択される1、2または3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基であり;
ここで置換基群Gは、ハロゲン、シアノおよび非置換アルキルからなる群である、上記項目(15)または(16)記載のSARS-CoV-2のウイルス増殖阻害方法。
(18)Rが、置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基である、上記項目(15)~(17)のいずれかに記載のSARS-CoV-2のウイルス増殖阻害方法。
(19)式(I)で示される化合物が、化合物I-003、化合物I-005、化合物I-017および化合物I-023からなる群から選択される、上記項目(15)記載のSARS-CoV-2のウイルス増殖阻害方法。
(20)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防を必要とする個体に、式(I):
Figure 0007236065000006

(式中、YはNであり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
-X-は、-NH-であり;
mは、0または1であり;
5aは、水素原子であり;
5bは、水素原子であり;
nは、1であり;
4aは、水素原子であり;
4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を投与することを含む、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防方法。
(21)Rが、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基である、上記項目(20)記載の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防方法。
(22)Rが、置換基群Gから選択される1、2または3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基であり;
ここで置換基群Gは、ハロゲン、シアノおよび非置換アルキルからなる群である、上記項目(20)または(21)記載の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防方法。
(23)Rが、置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基である、上記項目(20)~(22)のいずれかに記載の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防方法。
(24)式(I)で示される化合物が、化合物I-003、化合物I-005、化合物I-017および化合物I-023からなる群から選択される、上記項目(20)記載の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防方法。
(25)SARS-CoV-2による感染症の重症化抑制方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防を必要とする個体に、式(I):
Figure 0007236065000007

(式中、YはNであり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
-X-は、-NH-であり;
mは、0または1であり;
5aは、水素原子であり;
5bは、水素原子であり;
nは、1であり;
4aは、水素原子であり;
4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を投与することを含む、
SARS-CoV-2による感染症の重症化抑制方法。
(26)Rが、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基である、上記項目(25)記載のSARS-CoV-2による感染症の重症化抑制方法。
(27)Rが、置換基群Gから選択される1、2または3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基であり;
ここで置換基群Gは、ハロゲン、シアノおよび非置換アルキルからなる群である、上記項目(25)または(26)記載のSARS-CoV-2による感染症の重症化抑制方法。
(28)Rが、置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基である、上記項目(25)~(27)のいずれかに記載のSARS-CoV-2による感染症の重症化抑制方法。
(29)式(I)で示される化合物が、化合物I-003、化合物I-005、化合物I-017および化合物I-023からなる群から選択される、上記項目(25)記載のSARS-CoV-2による感染症の重症化抑制方法。
(30)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防を必要とする個体に、式(I):
Figure 0007236065000008

(式中、YはNであり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
-X-は、-NH-であり;
mは、0または1であり;
5aは、水素原子であり;
5bは、水素原子であり;
nは、1であり;
4aは、水素原子であり;
4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩、をSARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、72時間以内に投与することを含む、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(31)Rが、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基である、上記項目(30)記載の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(32)Rが、置換基群Gから選択される1、2または3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基であり;
ここで置換基群Gは、ハロゲン、シアノおよび非置換アルキルからなる群である、上記項目(30)または(31)記載の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(33)Rが、置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基である、上記項目(30)~(32)のいずれかに記載の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(34)式(I)で示される化合物が、化合物I-003、化合物I-005、化合物I-017および化合物I-023からなる群から選択される、上記項目(30)記載の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(35)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防を必要とする個体に、式(I):
Figure 0007236065000009

(式中、YはNであり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
-X-は、-NH-であり;
mは、0または1であり;
5aは、水素原子であり;
5bは、水素原子であり;
nは、1であり;
4aは、水素原子であり;
4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩、をSARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、24時間以内に投与することを含む、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(36)Rが、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基である、上記項目(35)記載の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(37)Rが、置換基群Gから選択される1、2または3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基であり;
ここで置換基群Gは、ハロゲン、シアノおよび非置換アルキルからなる群である、上記項目(35)または(36)記載の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(38)Rが、置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基である、上記項目(35)~(37)のいずれかに記載の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(39)式(I)で示される化合物が、化合物I-003、化合物I-005、化合物I-017および化合物I-023からなる群から選択される、上記項目(35)記載の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(40)SARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制する方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防を必要とする個体に、式(I):
Figure 0007236065000010

(式中、YはNであり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
-X-は、-NH-であり;
mは、0または1であり;
5aは、水素原子であり;
5bは、水素原子であり;
nは、1であり;
4aは、水素原子であり;
4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を投与することを含む、
SARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制する方法。
(41)Rが、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基である、上記項目(40)記載のSARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制する方法。
(42)Rが、置換基群Gから選択される1、2または3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基であり;
ここで置換基群Gは、ハロゲン、シアノおよび非置換アルキルからなる群である、上記項目(40)または(41)記載のSARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制する方法。
(43)Rが、置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基である、上記項目(40)~(42)のいずれかに記載のSARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制する方法。
(44)式(I)で示される化合物が、化合物I-003、化合物I-005、化合物I-017および化合物I-023からなる群から選択される、上記項目(40)記載のSARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制する方法。
(45)SARS-CoV-2のウイルス増殖阻害のための、式(I):
Figure 0007236065000011

(式中、YはNであり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
-X-は、-NH-であり;
mは、0または1であり;
5aは、水素原子であり;
5bは、水素原子であり;
nは、1であり;
4aは、水素原子であり;
4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(46)Rが、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基である、上記項目(45)記載の使用。
(47)Rが、置換基群Gから選択される1、2または3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基であり;
ここで置換基群Gは、ハロゲン、シアノおよび非置換アルキルからなる群である、上記項目(45)または(46)記載の使用。
(48)Rが、置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基である、上記項目(45)~(47)のいずれかに記載の使用。
(49)式(I)で示される化合物が、化合物I-003、化合物I-005、化合物I-017および化合物I-023からなる群から選択される、上記項目(45)記載の使用。
(50)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防用医薬を製造するための、式(I):
Figure 0007236065000012

(式中、YはNであり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
-X-は、-NH-であり;
mは、0または1であり;
5aは、水素原子であり;
5bは、水素原子であり;
nは、1であり;
4aは、水素原子であり;
4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(51)Rが、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基である、上記項目(50)記載の使用。
(52)Rが、置換基群Gから選択される1、2または3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基であり;
ここで置換基群Gは、ハロゲン、シアノおよび非置換アルキルからなる群である、上記項目(50)または(51)記載の使用。
(53)Rが、置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基である、上記項目(50)~(52)のいずれかに記載の使用。
(54)式(I)で示される化合物が、化合物I-003、化合物I-005、化合物I-017および化合物I-023からなる群から選択される、上記項目(50)記載の使用。
(55)SARS-CoV-2による感染症の重症化抑制のための、式(I):
Figure 0007236065000013

(式中、YはNであり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
-X-は、-NH-であり;
mは、0または1であり;
5aは、水素原子であり;
5bは、水素原子であり;
nは、1であり;
4aは、水素原子であり;
4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(56)Rが、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基である、上記項目(55)記載の使用。
(57)Rが、置換基群Gから選択される1、2または3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基であり;
ここで置換基群Gは、ハロゲン、シアノおよび非置換アルキルからなる群である、上記項目(55)または(56)記載の使用。
(58)Rが、置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基である、上記項目(55)~(57)のいずれかに記載の使用。
(59)式(I)で示される化合物が、化合物I-003、化合物I-005、化合物I-017および化合物I-023からなる群から選択される、上記項目(55)記載の使用。
(60)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、72時間以内に投与するための、式(I):
Figure 0007236065000014

(式中、YはNであり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
-X-は、-NH-であり;
mは、0または1であり;
5aは、水素原子であり;
5bは、水素原子であり;
nは、1であり;
4aは、水素原子であり;
4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(61)Rが、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基である、上記項目(60)記載の使用。
(62)Rが、置換基群Gから選択される1、2または3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基であり;
ここで置換基群Gは、ハロゲン、シアノおよび非置換アルキルからなる群である、上記項目(60)または(61)記載の使用。
(63)Rが、置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基である、上記項目(60)~(62)のいずれかに記載の使用。
(64)式(I)で示される化合物が、化合物I-003、化合物I-005、化合物I-017および化合物I-023からなる群から選択される、上記項目(60)記載の使用。
(65)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、24時間以内に投与するための、式(I):
Figure 0007236065000015

(式中、YはNであり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
-X-は、-NH-であり;
mは、0または1であり;
5aは、水素原子であり;
5bは、水素原子であり;
nは、1であり;
4aは、水素原子であり;
4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(66)Rが、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基である、上記項目(65)記載の使用。
(67)Rが、置換基群Gから選択される1、2または3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基であり;
ここで置換基群Gは、ハロゲン、シアノおよび非置換アルキルからなる群である、上記項目(65)または(66)記載の使用。
(68)Rが、置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基である、上記項目(65)~(67)のいずれかに記載の使用。
(69)式(I)で示される化合物が、化合物I-003、化合物I-005、化合物I-017および化合物I-023からなる群から選択される、上記項目(65)記載の使用。
(70)SARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制するための、式(I):
Figure 0007236065000016

(式中、YはNであり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基であり;
は、置換または非置換の芳香族複素環式基であり;
-X-は、-NH-であり;
mは、0または1であり;
5aは、水素原子であり;
5bは、水素原子であり;
nは、1であり;
4aは、水素原子であり;
4bは、水素原子である)で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(71)Rが、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基である、上記項目(70)記載の使用。
(72)Rが、置換基群Gから選択される1、2または3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基であり;
ここで置換基群Gは、ハロゲン、シアノおよび非置換アルキルからなる群である、上記項目(70)または(71)記載の使用。
(73)Rが、置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基である、上記項目(70)~(72)のいずれかに記載の使用。
(74)式(I)で示される化合物が、化合物I-003、化合物I-005、化合物I-017および化合物I-023からなる群から選択される、上記項目(70)記載の使用。
本発明に係る化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼに対する阻害活性を有し、本発明に係る化合物を含有する医薬組成物は、コロナウイルス感染症の治療剤および/または予防剤として有用である。
また、本発明に係る化合物のうち、化合物(I-003)または化合物(I-005)を含有する医薬組成物は、医薬原体として有用である。
さらに、化合物(I-003)のp-トルエンスルホン酸塩結晶または化合物(I-005)のフマル酸共結晶を含有する医薬組成物は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療剤として非常に有用である。
式(I-A)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩I形結晶(Form I)の粉末X線回折パターンを示す。横軸は2θ(°)で、縦軸は強度(Count)を表す。 式(I-A)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩I形結晶の非対称単位中の構造を示す。 式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の粉末X線回折パターンを示す。横軸は2θ(°)で、縦軸は強度(Count)を表す。 式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の非対称単位中の構造を示す。 hCoV-19/Japan/TY7-501/2021感染マウス(1.00×10 TCID50/マウスを経鼻接種)について、媒体を一日二回または(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を単回で感染直後から投与した際の、感染1日後の肺内ウイルス力価を示す。縦軸は肺内ウイルス力価、横軸は各投与群を示す。 hCoV-19/Japan/TY7-501/2021感染マウス(1.00×10 TCID50/マウスを経鼻接種)について、媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日二回で感染直後から投与した際の、感染1日後の肺内ウイルス力価を示す。縦軸は肺内ウイルス力価、横軸は各投与群を示す。 hCoV-19/Japan/TY7-501/2021感染マウス(1.00×10 TCID50/マウスを経鼻接種)について、媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日二回で感染1日後から2日間投与した際の、感染1-3日後の肺内ウイルス力価を示す。縦軸は肺内ウイルス力価、横軸は感染後からの日数を示す。 hCoV-19/Japan/TY7-501/2021感染マウス(1.00×10 TCID50/マウスを経鼻接種)について、媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日二回で感染3日後から2日間投与した際の、感染1-5日後の肺内ウイルス力価を示す。縦軸は肺内ウイルス力価、横軸は感染後からの日数を示す。 hCoV-19/Japan/TY7-501/2021感染マウス(1.00×10 TCID50/マウスを経鼻接種)について、媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日三回で感染1日後から2日間投与した際の、感染1-3日後の肺内ウイルス力価を示す。縦軸は肺内ウイルス力価、横軸は感染後からの日数を示す。 hCoV-19/Japan/TY7-501/2021感染マウス(1.00×10 TCID50/マウスを経鼻接種、高週齢35-45週齢リタイヤマウス)について、媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日二回で感染1日後から5日間投与した際の、感染7日後までの体重変動を示す。縦軸は感染当日の体重を100%とした場合の体重変動(%)、横軸は感染後からの日数を示す。 hCoV-19/Japan/TY7-501/2021感染マウス(1.00×10 TCID50/マウスを経鼻接種、高週齢35-45週齢リタイヤマウス)について、媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日二回で感染1日後から5日間投与した際の、感染7日後までの生存率を示す。縦軸は生存率(%)、横軸は感染後からの日数を示す。 hCoV19/Japan/TY/WK-521/2020株マウス馴化株MA-P10感染マウス(1.00×10 or 1.00×10 TCID50/マウスを経鼻接種、15週齢マウス)について、媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日二回で感染1日後から5日間投与した際の、感染7日後までの体重変動を示す。縦軸は感染当日の体重を100%とした場合の体重変動(%)、横軸は感染後からの日数を示す。 hCoV19/Japan/TY/WK-521/2020株マウス馴化株MA-P10感染マウス(1.00×10 or 1.00×10 TCID50/マウスを経鼻接種、15週齢マウス)について、媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日二回で感染1日後から5日間投与した際の、感染7日後までの生存率を示す。縦軸は生存率(%)、横軸は感染後からの日数を示す。 hCoV19/Japan/TY/WK-521/2020株マウス馴化株MA-P10感染マウス(1.00×10 TCID50/マウスを経鼻接種、高週齢35-45週齢リタイヤマウス)について、媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日二回で感染1日後から5日間投与した際の、感染7日後までの体重変動を示す。縦軸は感染当日の体重を100%とした場合の体重変動(%)、横軸は感染後からの日数を示す。 hCoV19/Japan/TY/WK-521/2020株マウス馴化株MA-P10感染マウス(1.00×10 TCID50/マウスを経鼻接種、高週齢35-45週齢リタイヤマウス)について、媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日二回で感染1日後から5日間投与した際の、感染7日後までの生存率を示す。縦軸は生存率(%)、横軸は感染後からの日数を示す。 hCoV19/Japan/TY11-927/2021感染ハムスター(5.00×103PFU/ハムスターを経鼻接種)とウイルスを接種しない投薬ハムスターを同居させたときの感染6日後の投薬ハムスターの肺内ウイルス力価を示す。投薬ハムスターは媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日二回で感染直後から投与した。縦軸は肺内ウイルス力価、横軸は各投与群を示す。 hCoV19/Japan/TY11-927/2021感染ハムスター(5.00×103PFU/ハムスターを経鼻接種)に化合物を投薬し、ウイルスを接種しない非感染ハムスターを感染直後から同居させたときの感染6日後の感染(Infected)及び非感染(Contact)ハムスターの肺内ウイルス力価を示す。投薬ハムスターは媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日二回で感染直後から投与した。縦軸は肺内ウイルス力価、横軸は各投与群を示す。 hCoV19/Japan/TY11-927/2021感染ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種)に化合物を投薬し、ウイルスを接種しない非感染ハムスターを感染2日後から同居させたときの感染5日後の感染(Infected)及び非感染(Contact)ハムスターの肺内ウイルス力価を示す。投薬ハムスターは媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日二回で感染1日後から投与した。縦軸は肺内ウイルス力価、横軸は各投与群を示す。 hCoV19/Japan/TY11-927/2021感染ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種)に化合物を投薬し、ウイルスを接種しない非感染ハムスターを感染2日後から同居させたときの感染5日後の感染(Infected)及び非感染(Contact)ハムスターの肺内ウイルス力価を示す。投薬ハムスターは媒体および(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を一日二回で感染1日後から投与した。縦軸は鼻甲介中ウイルス力価、横軸は各投与群を示す。 hCoV19/Japan/TY/WK-521/2020株マウス馴化株MA-P10感染マウス(3.00×10TCID50/マウスを経鼻接種、37-57週齢マウス)について、媒体および(I-B)で示される化合物を感染24時間前に皮下投与した際の、感染14日後までの体重変動を示す。縦軸は感染当日の体重を100%とした場合の体重変動(%)、横軸は感染後からの日数を示す。 hCoV19/Japan/TY/WK-521/2020株マウス馴化株MA-P10感染マウス(3.00×10TCID50/マウスを経鼻接種、37-57週齢マウス)について、媒体および(I-B)で示される化合物を感染24時間前に皮下投与した際の、感染14日後までの生存率を示す。縦軸は生存率(%)、横軸は感染後からの日数を示す。
以下に本明細書において用いられる各用語の意味を説明する。各用語は特に断りのない限り、単独で用いられる場合も、または他の用語と組み合わせて用いられる場合も、同一の意味で用いられる。
「からなる」という用語は、構成要件のみを有することを意味する。
「含む」という用語は、構成要件に限定されず、記載されていない要素を排除しないことを意味する。
以下、本発明について実施形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。
また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当上記分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
「ハロゲン」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子を包含する。特にフッ素原子および塩素原子が好ましい。
「アルキル」とは、炭素数1~15、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6、さらに好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分枝状の炭化水素基を包含する。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-へプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、n-ノニル、n-デシル等が挙げられる。
「アルキル」の好ましい態様として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルが挙げられる。さらに好ましい態様として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチルが挙げられる。
「アルケニル」とは、任意の位置に1以上の二重結合を有する、炭素数2~15、好ましくは炭素数2~10、より好ましくは炭素数2~6、さらに好ましくは炭素数2~4の直鎖又は分枝状の炭化水素基を包含する。例えば、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、プレニル、ブタジエニル、ペンテニル、イソペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、イソヘキセニル、ヘキサジエニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル等が挙げられる。
「アルケニル」の好ましい態様として、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニルが挙げられる。さらに好ましい態様として、エテニル、n-プロペニル、等が挙げられる。
「アルキニル」とは、任意の位置に1以上の三重結合を有する、炭素数2~10、好ましくは炭素数2~8、さらに好ましくは炭素数2~6、さらに好ましくは炭素数2~4の直鎖又は分枝状の炭化水素基を包含する。さらに任意の位置に二重結合を有していてもよい。例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等を包含する。
「アルキニル」の好ましい態様として、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルが挙げられる。さらに好ましい態様として、エチニル、プロピニル等が挙げられる。
「芳香族炭素環式基」とは、単環または2環以上の、環状芳香族炭化水素基を意味する。例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル等が挙げられる。
「芳香族炭素環式基」の好ましい態様として、フェニルが挙げられる。
「6員芳香族炭素環式基」とは、単環の環状芳香族炭化水素基を意味する。例えば、フェニルが挙げられる。
「非芳香族炭素環式基」とは、単環または2環以上の、環状飽和炭化水素基または環状非芳香族不飽和炭化水素基を意味する。2環以上の「非芳香族炭素環式基」は、単環または2環以上の非芳香族炭素環式基に、上記「芳香族炭素環式基」における環が縮合したものも包含する。
さらに、「非芳香族炭素環式基」は、以下のように架橋している基、またはスピロ環を形成する基も包含する。
Figure 0007236065000017

単環の非芳香族炭素環式基としては、炭素数3~16が好ましく、より好ましくは炭素数3~12、さらに好ましくは炭素数4~8である。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロヘキサジエニル等が挙げられる。
2環以上の非芳香族炭素環式基としては、炭素数8~20が好ましく、より好ましくは炭素数8~16である。例えば、インダニル、インデニル、アセナフチル、テトラヒドロナフチル、フルオレニル等が挙げられる。
「芳香族複素環式基」とは、O、SおよびNから任意に選択される同一または異なるヘテロ原子を環内に1以上有する、単環または2環以上の、芳香族環式基を意味する。
2環以上の芳香族複素環式基は、単環または2環以上の芳香族複素環式基に、上記「芳香族炭素環式基」における環が縮合したものも包含し、該結合手はいずれの環に有していても良い。
単環の芳香族複素環式基としては、5~8員が好ましく、より好ましくは5員または6員である。5員芳香族複素環式基としては、例えば、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル等が挙げられる。6員芳香族複素環式基としては、例えば、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル等が挙げられる。
2環の芳香族複素環式基としては、8~10員が好ましく、より好ましくは9員または10員である。例えば、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、プリニル、プテリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジル、トリアゾロピリジル、イミダゾチアゾリル、ピラジノピリダジニル、オキサゾロピリジル、チアゾロピリジル等が挙げられる。9員芳香族複素環式基としては、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、プリニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾフラニル、イミダゾピリジル、トリアゾロピリジル、オキサゾロピリジル、チアゾロピリジル等が挙げられる。10員芳香族複素環式基としては、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、プテリジニル、ピラジノピリダジニル等が挙げられる。
3環以上の芳香族複素環式基としては、13~15員が好ましい。例えば、カルバゾリル、アクリジニル、キサンテニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、ジベンゾフリル等が挙げられる。
「5~6員芳香族複素環式基」とは、上記「芳香族複素環式基」のうち、5員または6員の芳香族複素環式基を意味する。
「9~10員芳香族複素環式基」とは、上記「芳香族複素環式基」のうち、9員または10員の芳香族複素環式基を意味する。
「非芳香族複素環式基」とは、O、SおよびNから任意に選択される同一または異なるヘテロ原子を環内に1以上有する、単環または2環以上の、非芳香族環式基を意味する。2環以上の非芳香族複素環式基は、単環または2環以上の非芳香族複素環式基に、上記「芳香族炭素環式基」、「非芳香族炭素環式基」、および/または「芳香族複素環式基」におけるそれぞれの環が縮合したもの、さらに、単環または2環以上の非芳香族炭素環式基に、上記「芳香族複素環式基」における環が縮合したものも包含し、該結合手はいずれの環に有していても良い。
さらに、「非芳香族複素環式基」は、以下のように架橋している基、またはスピロ環を形成する基も包含する。
Figure 0007236065000018

単環の非芳香族複素環式基としては、3~8員が好ましく、より好ましくは5員または6員である。
3員非芳香族複素環式基としては、例えば、チイラニル、オキシラニル、アジリジニルが挙げられる。4員非芳香族複素環式基としては、例えば、オキセタニル、アゼチジニルが挙げられる。5員非芳香族複素環式基としては、例えば、オキサチオラニル、チアゾリジニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、テトラヒドロフリル、ジヒドロチアゾリル、テトラヒドロイソチアゾリル、ジオキソラニル、ジオキソリル、チオラニル等が挙げられる。6員非芳香族複素環式基としては、例えば、ジオキサニル、チアニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、モルホリノ、チオモルホリニル、チオモルホリノ、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロオキサジニル、テトラヒドロピリダジニル、ヘキサヒドロピリミジニル、ジオキサジニル、チイニル、チアジニル等が挙げられる。7員非芳香族複素環式基としては、例えば、ヘキサヒドロアゼピニル、テトラヒドロジアゼピニル、オキセパニルが挙げられる。
2環以上の非芳香族複素環式基としては、8~20員が好ましく、より好ましくは8~13員、さらに好ましくは8~10員である。例えば、インドリニル、イソインドリニル、クロマニル、イソクロマニル等が挙げられる。
本明細書中、「置換基群αで置換されていてもよい」とは、「置換基群αから選択される1以上の基で置換されていてもよい」ことを意味する。置換基群β、γおよびγ’についても同様である。
置換基群α:ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、スルファニル、およびシアノ。
置換基群β:ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、シアノ、置換基群αで置換されていてもよいアルキル、置換基群αで置換されていてもよいアルケニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキルカルボニル、置換基群αで置換されていてもよいアルケニルカルボニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキニルカルボニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキルスルファニル、置換基群αで置換されていてもよいアルケニルスルファニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキニルスルファニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキルスルフィニル、置換基群αで置換されていてもよいアルケニルスルフィニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキニルスルフィニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキルスルホニル、置換基群αで置換されていてもよいアルケニルスルホニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキニルスルホニル、
置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環式基、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環式基、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環式基、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環式基、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環アルキル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環アルキル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環アルキル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環アルキル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環カルボニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環カルボニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環カルボニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環カルボニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環オキシカルボニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環オキシカルボニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環オキシカルボニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環オキシカルボニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環スルファニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環スルファニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環スルファニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環スルファニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環スルフィニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環スルフィニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環スルフィニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環スルフィニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環スルホニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環スルホニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環スルホニルおよび置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環スルホニル。
置換基群γ:置換基群α、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、ハロアルキルカルボニル、アルケニルカルボニルおよびアルキニルカルボニル。
置換基群γ’:置換基群γおよびオキソ。
「置換芳香族炭素環式基」および「置換芳香族複素環式基」の「芳香族炭素環」および「芳香族複素環」の環上の置換基としては、次の置換基群Bが挙げられる。環上の任意の位置の原子が次の置換基群Bから選択される1以上の基と結合していてもよい。
置換基群B:ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ホルミル、ホルミルオキシ、スルファニル、スルフィノ、スルホ、チオホルミル、チオカルボキシ、ジチオカルボキシ、チオカルバモイル、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、ヒドラジノ、ウレイド、アミジノ、グアニジノ、ペンタフルオロチオ、トリアルキルシリル、
置換基群αで置換されていてもよいアルキル、置換基群αで置換されていてもよいアルケニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキルオキシ、置換基群αで置換されていてもよいアルケニルオキシ、置換基群αで置換されていてもよいアルキニルオキシ、置換基群αで置換されていてもよいアルキルカルボニルオキシ、置換基群αで置換されていてもよいアルケニルカルボニルオキシ、置換基群αで置換されていてもよいアルキニルカルボニルオキシ、置換基群αで置換されていてもよいアルキルカルボニル、置換基群αで置換されていてもよいアルケニルカルボニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキニルカルボニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキルオキシカルボニル、置換基群αで置換されていてもよいアルケニルオキシカルボニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキニルオキシカルボニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキルスルファニル、置換基群αで置換されていてもよいアルケニルスルファニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキニルスルファニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキルスルフィニル、置換基群αで置換されていてもよいアルケニルスルフィニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキニルスルフィニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキルスルホニル、置換基群αで置換されていてもよいアルケニルスルホニル、置換基群αで置換されていてもよいアルキニルスルホニル、
置換基群βで置換されていてもよいアミノ、置換基群βで置換されていてもよいイミノ、置換基群βで置換されていてもよいカルバモイル、置換基群βで置換されていてもよいスルファモイル、
置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環式基、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環式基、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環式基、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環式基、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環オキシ、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環オキシ、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環オキシ、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環オキシ、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環カルボニルオキシ、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環カルボニルオキシ、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環カルボニルオキシ、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環カルボニルオキシ、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環カルボニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環カルボニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環カルボニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環カルボニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環オキシカルボニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環オキシカルボニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環オキシカルボニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環オキシカルボニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環アルキル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環アルキル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環アルキル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環アルキル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環アルキルオキシ、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環アルキルオキシ、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環アルキルオキシ、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環アルキルオキシ、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環アルキルオキシカルボニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環アルキルオキシカルボニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環アルキルオキシカルボニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環アルキルオキシカルボニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環アルキルオキシアルキル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環アルキルオキシアルキル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環アルキルオキシアルキル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環アルキルオキシアルキル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環スルファニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環スルファニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環スルファニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環スルファニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環スルフィニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環スルフィニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環スルフィニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環スルフィニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族炭素環スルホニル、置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族炭素環スルホニル、置換基群γで置換されていてもよい芳香族複素環スルホニルおよび置換基群γ’で置換されていてもよい非芳香族複素環スルホニル。
「置換非芳香族炭素環式基」および「置換非芳香族複素環式基」の「非芳香族炭素環」および「非芳香族複素環」の環上の置換基としては、次の置換基群Cが挙げられる。環上の任意の位置の原子が次の置換基群Cから選択される1以上の基と結合していてもよい。
置換基群C:置換基群Bおよびオキソ。
「非芳香族炭素環」および「非芳香族複素環」が「オキソ」で置換されている場合、以下のように炭素原子上の2個の水素原子が置換されている環を意味する。
Figure 0007236065000019
における「置換もしくは非置換の芳香族複素環式基」または「置換もしくは非置換の5~6員芳香族複素環式基」の置換基としては、例えば、
ハロゲン;
置換もしくは非置換のアルキル;
が挙げられる。これらから選択される1以上の基で置換されていてもよい。
における「置換もしくは非置換の芳香族複素環式基」または「置換もしくは非置換の5~6員芳香族複素環式基」の置換基としては、例えば、
ハロゲン;
置換アルキル(置換基としては、ヒドロキシ);非置換アルキル;
が挙げられる。これらから選択される1以上の基で置換されていてもよい。
における「置換もしくは非置換の6員芳香族炭素環式基」の置換基としては、例えば、
ハロゲン;シアノ;
置換もしくは非置換のアルキル;
が挙げられる。これらから選択される1以上の基で置換されていてもよい。
における「置換もしくは非置換の6員芳香族炭素環式基」の置換基としては、例えば、
ハロゲン;シアノ;
置換アルキル(置換基としては、ハロゲン);非置換アルキル;
が挙げられる。これらから選択される1以上の基で置換されていてもよい。
における「置換もしくは非置換の芳香族複素環式基」または「置換もしくは非置換の9~10員芳香族複素環式基」の置換基としては、例えば、
ハロゲン;
置換もしくは非置換のアルキル;
置換もしくは非置換の非芳香族複素環式基;
が挙げられる。これらから選択される1以上の基で置換されていてもよい。
における「置換もしくは非置換の芳香族複素環式基」または「置換もしくは非置換の9~10員芳香族複素環式基」の置換基としては、例えば、
ハロゲン;
置換アルキル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキルカルボニルアミノ、非芳香族複素環式基);非置換アルキル;
置換非芳香族複素環式基(置換基としては、アルキルカルボニル);非置換非芳香族複素環式基;
が挙げられる。これらから選択される1以上の基で置換されていてもよい。
式(I):
Figure 0007236065000020

で示される化合物における、R、R、Rおよびmの好ましい態様を以下に示す。式(I)で示される化合物としては、以下に示される具体例のすべての組み合わせの態様が例示される。なお、Y、-X-、R5a、R5b、n、R4aおよびR4bは、上記項目(1)に示す通りである。
は、置換または非置換の芳香族複素環式基が挙げられる(以下、A-1とする)。
は、置換または非置換の5~6員芳香族複素環式基が挙げられる(以下、A-2とする)。
は、ハロゲン、置換アルキル(置換基:ヒドロキシ)もしくは非置換アルキルで置換された芳香族複素環式基または非置換芳香族複素環式基が挙げられる(以下、A-3とする)。
は、ハロゲン、置換アルキル(置換基:ヒドロキシ)もしくは非置換アルキルで置換された5~6員芳香族複素環式基または非置換5~6員芳香族複素環式基が挙げられる(以下、A-4とする)。
は、非置換アルキルもしくはハロゲンで置換された芳香族複素環式基または非置換芳香族複素環式基が挙げられる(以下、A-5とする)。
は、非置換アルキルもしくはハロゲンで置換された5~6員芳香族複素環式基または非置換5~6員芳香族複素環式基が挙げられる(以下、A-6とする)。
は、非置換アルキルまたはハロゲンで置換された芳香族複素環式基が挙げられる(以下、A-7とする)。
は、非置換アルキルまたはハロゲンで置換された5~6員芳香族複素環式基が挙げられる(以下、A-8とする)。
は、非置換アルキルで置換された芳香族複素環式基または非置換芳香族複素環式基が挙げられる(以下、A-9とする)。
は、非置換アルキルで置換された5~6員芳香族複素環式基または非置換5~6員芳香族複素環式基が挙げられる(以下、A-10とする)。
は、非置換アルキルで置換された芳香族複素環式基が挙げられる(以下、A-11とする)。
は、非置換アルキルで置換された5~6員芳香族複素環式基が挙げられる(以下、A-12とする)。
は、置換または非置換の6員芳香族炭素環式基が挙げられる(以下、B-1とする)。
は、ハロゲン、シアノ、置換アルキル(置換基:ハロゲン)または非置換アルキルで置換された6員芳香族炭素環式基が挙げられる(以下、B-2とする)。
は、ハロゲン、シアノ、または非置換アルキルで置換された6員芳香族炭素環式基が挙げられる(以下、B-3とする)。
は、置換基群G(置換基群G:ハロゲン、シアノおよび非置換アルキル)から選択される2~4個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基が挙げられる(以下、B-4とする)。
は、置換基群G(置換基群G:ハロゲン、シアノおよび非置換アルキル)から選択される2~3個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基が挙げられる(以下、B-5とする)。
は、置換基群G(置換基群G:ハロゲン、シアノおよび非置換アルキル)から選択される3~4個の置換基で置換された6員芳香族炭素環式基が挙げられる(以下、B-6とする)。
は、3個のハロゲンで置換された6員芳香族炭素環式基が挙げられる(以下、B-7とする)。
は、置換または非置換の芳香族複素環式基が挙げられる(以下、C-1とする)。
は、置換または非置換の9~10員芳香族複素環式基が挙げられる(以下、C-2とする)。
は、ハロゲンまたは置換もしくは非置換アルキルで置換された芳香族複素環式基が挙げられる(以下、C-3とする)。
は、ハロゲンまたは置換もしくは非置換アルキルで置換された9~10員芳香族複素環式基が挙げられる(以下、C-4とする)。
は、ハロゲンまたは非置換アルキルで置換された芳香族複素環式基が挙げられる(以下、C-5とする)。
は、ハロゲンまたは非置換アルキルで置換された9~10員芳香族複素環式基が挙げられる(以下、C-6とする)。
は、ハロゲンまたは非置換アルキルで置換されたインダゾリルが挙げられる(以下、C-7とする)。
は、ハロゲンおよび非置換アルキルで置換されたインダゾリルが挙げられる(以下、C-8とする)。
mは0または1が挙げられる(以下、D-1とする)。
mは0が挙げられる(以下、D-2とする)。
mは1が挙げられる(以下、D-3とする)。
式(I)で示される化合物としては、以下に示される態様が例示される。
(a-1)
は、(A-12)であり;
は、(B-7)であり;
は、(C-8)であり;
mは、(D-2)である。
(a-2)
は、(A-12)であり;
は、(B-7)であり;
は、(C-8)であり;
mは、(D-3)である。
(a-3)
は、(A-12)であり;
は、(B-7)であり;
は、(C-8)であり;
mは、(D-1)である。
(a-4)
は、(A-4)であり;
は、(B-4)であり;
は、(C-4)であり;
mは、(D-1)である。
式(I)で示される化合物としては、式(I-A)で示される化合物、式(I-B)で示される化合物が好ましい。
式(I)、式(I-A)および式(I-B)で示される化学構造式も、それぞれの式において統一して用いられる。
式(I)で示される化合物は、特定の異性体に限定するものではなく、全ての可能な異性体(例えば、ケト-エノール異性体、イミン-エナミン異性体、ジアステレオ異性体、光学異性体、回転異性体等)、ラセミ体またはそれらの混合物を含む。例えば、式(I)で示される化合物は、以下のような互変異性体を包含する。
Figure 0007236065000021

例えば、式(I-A)で示される化合物や化合物(I-003)は、以下のような互変異性体およびそれらの混合物を包含する。
Figure 0007236065000022

例えば、式(I-B)で示される化合物や化合物(I-005)は、以下のような互変異性体およびそれらの混合物を包含する。
Figure 0007236065000023
式(I)で示される化合物の一つ以上の水素、炭素および/または他の原子は、それぞれ水素、炭素および/または他の原子の同位体で置換され得る。そのような同位体の例としては、それぞれH、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、123Iおよび36Clのように、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素および塩素が包含される。式(I)で示される化合物は、そのような同位体で置換された化合物も包含する。該同位体で置換された化合物は、医薬品としても有用であり、式(I)で示される化合物のすべての放射性標識体を包含する。また該「放射性標識体」を製造するための「放射性標識化方法」も本発明に包含され、該「放射性標識体」は、代謝薬物動態研究、結合アッセイにおける研究および/または診断のツールとして有用である。
また、本発明の結晶は重水素変換体であってもよい。本発明の結晶は同位元素(例、H,14C,35S,125I等)で標識されていてもよい。
式(I)で示される化合物の放射性標識体は、当該技術分野で周知の方法で調製できる。例えば、式(I)で示されるトリチウム標識化合物は、トリチウムを用いた触媒的脱ハロゲン化反応によって、式(I)で示される特定の化合物にトリチウムを導入することで調製できる。この方法は、適切な触媒、例えばPd/Cの存在下、塩基の存在下または非存在下で、式(I)で示される化合物が適切にハロゲン置換された前駆体とトリチウムガスとを反応させることを包含する。トリチウム標識化合物を調製するための他の適切な方法は、“Isotopes in the Physical and Biomedical Sciences,Vol.1,Labeled Compounds (Part A),Chapter 6 (1987年)”を参照することができる。14C-標識化合物は、14C炭素を有する原料を用いることによって調製できる。
式(I)で示される化合物の製薬上許容される塩としては、例えば、式(I)で示される化合物と、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、バリウム等)、マグネシウム、遷移金属(例えば、亜鉛、鉄等)、アンモニア、有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メグルミン、エチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン等)およびアミノ酸との塩、または無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、臭化水素酸、リン酸、ヨウ化水素酸等)、および有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、マンデル酸、グルタル酸、リンゴ酸、安息香酸、フタル酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等)との塩が挙げられる。これらの塩は、通常行われる方法によって形成させることができる。
式(I-A)で示される化合物の製薬上許容される塩としては、例えば、式(I-A)で示される化合物とカウンター分子またはカウンターイオンからなり、任意の数のカウンター分子またはカウンターイオンを含んでいても良い。式(I-A)で示される化合物の製薬上許容される塩は、化合物とカウンター分子またはカウンター原子との間でプロトン移動することにより、イオン結合を介するものをいう。
式(I-A)で示される化合物の製薬上許容される塩としては、式(I-A)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩が好ましい。
本発明の製剤においては、式(I)で示される化合物またはその製薬上許容される塩の複合体を用いることができる。式(I)で示される化合物またはその製薬上許容される塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)、共結晶および/または包接化合物を形成する場合があり、本明細書中ではそれらを「複合体」と記載する。
本明細書中で用いる「溶媒和物」とは、例えば式(I)で示される化合物に対し、任意の数の溶媒分子(例えば、水分子等)と配位していてもよい。式(I)で示される化合物またはその製薬上許容される塩を、大気中に放置することにより、水分を吸収し、吸着水が付着する場合や、水和物を形成する場合がある。
溶媒分子としては、例えば、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2‐ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2‐ジメトキシエタン、N,N‐ジメチルアセトアミド、N,N‐ジメチルホルムアミド、1,4‐ジオキサン、2‐エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、ヘキサン、メタノール、2‐メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N‐メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、テトラリン、トルエン、1,1,2‐トリクロロエテン、キシレン、酢酸、アニソール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、酢酸n‐ブチル、t‐ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3‐メチル‐1‐ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2‐メチル‐1‐プロパノール、ペンタン、1‐ペンタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1‐ジメトキシメタン、2,2‐ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸、好ましくは、酢酸、アニソール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、酢酸n‐ブチル、t‐ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3‐メチル‐1‐ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2‐メチル‐1‐プロパノール、ペンタン、1‐ペンタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1‐ジメトキシメタン、2,2‐ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸、より好ましくは、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1‐ジメトキシメタン、2,2‐ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などが挙げられる。
本明細書中で用いる「共結晶」とは、カウンター分子が同一結晶格子内に規則的に配列することを意味し、任意の数のカウンター分子を含んでいても良い。また、共結晶とは、化合物とカウンター分子との分子間相互作用が、水素結合、ファンデルワールス力などの、非共有結合性かつ非イオン性の化学的相互作用を介するものをいう。
例えば、式(I-B)で示される化合物の共結晶としては、式(I-B)で示される化合物とカウンター分子からなり、任意の数のカウンター分子を含んでいても良い。好ましくは、式(I-B)で示される化合物とフマル酸からなり、任意の数のフマル酸を含んでいても良い。さらに好ましくは、式(I-B)で示される化合物およびフマル酸が1:1のモル比の共結晶である。
共結晶は、化合物が本質的に無電荷または中性のままであるという点で、塩と区別される。
共結晶は、カウンター分子が水もしくは溶媒ではないという点で水和物または溶媒和物と区別される。
本明細書中で用いる「結晶」とは、構成する原子、イオン、分子などが三次元的に規則正しく配列した固体を意味し、そのような規則正しい内部構造を持たない非晶質固体とは区別される。本発明の結晶は、単結晶、双晶、多結晶などであってもよい。
さらに、「結晶」には、組成が同一でありながら結晶中の配列が異なる「結晶多形」が存在することがあり、それらを含めて「結晶形態」という。
結晶形態および結晶化度は、例えば、粉末X線回折測定、ラマン分光法、赤外吸収スペクトル測定法、水分吸脱着測定、示差走査熱量測定、溶解特性を含めた多くの技術によって測定することができる。
また、式(I)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの複合体を、再結晶することで「結晶多形」を形成する場合がある。
本発明製剤においては、そのような各種の塩、複合体(水和物、溶媒和物、共結晶、包接化合物)、結晶多形を用いることができ、また、それらの二つ以上の混合物であっても用いることができる。
(粉末X線回折(XRPD))
粉末X線回折(XRPD)は、固体の結晶形態および結晶性を測定するための最も感度の良い分析法の1つである。X線が結晶に照射されると、結晶格子面で反射し、互いに干渉しあい、構造の周期に対応した秩序だった回折線を示す。一方、非晶質固体については、通常、その構造の中に秩序だった繰返し周期をもたないため、回折現象は起こらず、特徴のないブロードなXRPDパターン(ハローパターンとも呼ばれる)を示す。
式(I-A)および式(I-B)で示される化合物の結晶形態は、粉末X線回折パターンおよび特徴的な回折ピークにより識別可能である。式(I-A)および式(I-B)で示される化合物の結晶形態は、特徴的な回折ピークの存在によって他の結晶形態と区別することができる。
本明細書中で用いる特徴的な回折ピークは、観測された回折パターンから選択されるピークである。特徴的な回折ピークは、好ましくは回折パターンにおける約10本、より好ましくは約5本、さらに好ましくは約3本から選択される。
複数の結晶を区別する上では、ピークの強度よりも、当該結晶で確認され、他の結晶では確認されないピークが、その結晶を特定する上で好ましい特徴的なピークとなる。そういった特徴的なピークであれば、一つまたは二つのピークでも、当該結晶を特徴付けることができる。測定して得られたチャートを比較し、これらの特徴的なピークが一致すれば、粉末X線回折パターンが実質的に一致するといえる。
一般に、粉末X線回折における回折角度(2θ)は±0.2°の範囲内で誤差が生じ得るため、粉末X線回折の回折角度の値は±0.2°程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。したがって、粉末X線回折におけるピークの回折角度が完全に一致する結晶だけでなく、ピークの回折角度が±0.2°程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
以下の表および図において表示されるピークの強度は、一般に、多くの因子、例えばX線ビームに対する結晶の選択配向の効果、粗大粒子の影響、分析される物質の純度またはサンプルの結晶化度によって変動し得ることが知られている。また、ピーク位置についても、サンプル高の変動に基づいてシフトし得る。さらに、異なる波長を使用して測定するとブラッグ式(nλ=2dsinθ)に従って異なるシフトが得られるが、このような別の波長の使用により得られる別のXRPDパターンも、本発明の範囲に含まれる。
(単結晶構造解析)
結晶を特定する方法の一つで、当該結晶における結晶学的パラメーター、さらに、原子座標(各原子の空間的な位置関係を示す値)および3次元構造モデルを得ることができる。桜井敏雄著「X線構造解析の手引き」裳華房発行(1983年)、Stout & Jensen著 X-Ray Structure Determination: A Practical Guide, Macmillan Co., New York (1968)などを参照。本発明のような複合体、塩、光学異性体、互変異性体、幾何異性体の結晶の構造を同定する際には、単結晶構造解析が有用である。
本発明に係る化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を有するため、コロナウイルス3CLプロテアーゼが関与する疾患の治療および/または予防剤として有用である。本発明において「治療剤および/または予防剤」という場合、症状改善剤も包含する。コロナウイルス3CLプロテアーゼが関与する疾患としては、ウイルス感染症が挙げられ、好ましくはコロナウイルス感染症が挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、ヒトに感染するコロナウイルスが挙げられる。ヒトに感染するコロナウイルスとしては、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2が挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、アルファコロナウイルスおよび/またはベータコロナウイルス、より好ましくはベータコロナウイルス、さらに好ましくはサルベコウイルスが挙げられる。
一つの態様として、アルファコロナウイルスとしては、HCoV-229EおよびHCoV-NL63が挙げられる。特に好ましくは、HCoV-229Eが挙げられる。
一つの態様として、ベータコロナウイルスとしては、HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2が挙げられる。好ましくはHCoV-OC43またはSARS-CoV-2、特に好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。
一つの態様として、ベータコロナウイルスとしては、ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)、ベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)、およびベータコロナウイルスC系統(β-coronavirus lineage C)が挙げられる。より好ましくは、ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)、およびベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)、特に好ましくはベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)が挙げられる。
ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)としては、例えばHCoV-HKU1およびHCoV-OC43、好ましくは、HCoV-OC43が挙げられる。ベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)としては、例えばSARS-CoVおよびSARS-CoV-2、好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。ベータコロナウイルスC系統(β-coronavirus lineage C)としては、好ましくはMERS-CoVが挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、HCoV-229E、HCoV-OC43、および/またはSARS-CoV-2、特に好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。
なお、ウイルスは増殖や感染を繰り返す中で変異することが一般的に知られている。上記コロナウイルスには、本発明に係る化合物が、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を発揮することができる株である限り、当該分野で公知の変異株のみならず、今後出現する変異株も含まれる。SARS-CoV-2の公知の変異株としては、例えば、本明細書の実施例で使用した変異株が挙げられる。
コロナウイルス感染症としては、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-HKU1、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2による感染症が挙げられる。好ましくは、HCoV-229E、HCoV-OC43、および/またはSARS-CoV-2による感染症、特に好ましくは、SARS-CoV-2による感染症が挙げられる。
コロナウイルス感染症としては、特に好ましくは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が挙げられる。
新型コロナウイルス感染者の重症度分類は、例えば以下に例示される。(参考:新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き第5.2版(厚生労働省))
(軽症)
酸素飽和度が96%以上である。臨床状態は、呼吸器症状はない、または咳のみで呼吸困難はなく、いずれの場合であっても肺炎所見を認めない。
(中等症I)
酸素飽和度が96%未満~93%超である。呼吸困難があり、肺炎所見がある。
(中等症II)
酸素飽和度が93%未満である。呼吸不全があり、酸素投与が必要である。
(重症)
ICUに入室している、または、人工呼吸器が必要である。
上記の分類は日本における重症度分類の定義であり、例えば、中国や米国NIHの重症度分類を援用することが可能である。
また、無症候のSARS-CoV-2感染者とは、無症状病原体保有者を意味する。例えば、COVID-19症状の14症状が認められていない者が挙げられる。
(COVID-19の14症状:疲労感、筋肉又は体の痛み、頭痛、悪寒、熱っぽさ、味覚異常、嗅覚異常、鼻水又は鼻づまり、喉の痛み、咳、息切れ、吐き気、嘔吐、下痢)
本明細書中、COVID-19の12症状とは、疲労感、筋肉又は体の痛み、頭痛、悪寒、熱っぽさ、鼻水又は鼻づまり、喉の痛み、咳、息切れ、吐き気、嘔吐、下痢が挙げられる。
本明細書中、重症化抑制とは、無症候のSARS-CoV-2感染者が、軽症、中等症I、中等症IIまたは重症に分類される重症度に引き上げられることを抑制することである。
本明細書中、重症化抑制とは、無症候のSARS-CoV-2感染者または軽症のSARS-CoV-2感染者が、中等症I、中等症IIまたは重症に分類される重症度に引き上げられることを抑制することである。
本明細書中、重症化抑制とは、無症候のSARS-CoV-2感染者、軽症のSARS-CoV-2感染者または中等症IのSARS-CoV-2感染者が、中等症IIまたは重症に分類される重症度に引き上げられることを抑制することである。
本明細書中、重症化抑制とは、無症候のSARS-CoV-2感染者、軽症のSARS-CoV-2感染者、中等症IのSARS-CoV-2感染者または中等症IIのSARS-CoV-2感染者が、重症に分類される重症度に引き上げられることを抑制することである。
本明細書中、重症化抑制とは、本剤のウイルス増殖抑制効果を介して、SARS-CoV-2感染者の入院や死亡リスクが減少することを意味する。
本明細書中、重症化抑制とは、本剤のウイルス増殖抑制効果を介して、SARS-CoV-2感染者の肺での炎症を軽減することを意味する。
本明細書中、重症化抑制とは、本剤のウイルス増殖抑制効果を介して、SARS-CoV-2のウイルス感染によって引き起こされる肺炎を抑制することを意味する。
本明細書中、重症化抑制とは、本剤のウイルス増殖抑制効果を介して、SARS-CoV-2のウイルス感染によって引き起こされる宿主の過剰な免疫反応を抑制することを意味する。
一つの実施態様として、本発明の医薬組成物は、SARS-CoV-2感染者のうち、次に示す重症化リスク因子を少なくとも一つ有する感染者に投与することが挙げられる。
・50歳以上
・肥満(BMI 30kg/m以上)
・心血管疾患(高血圧、先天性心疾患を含む心血管系疾患を含む)
・慢性肺疾患(喘息、間質性肺疾患を含む)
・1型又は2型糖尿病
・慢性腎障害(透析患者を含む)
・慢性肝疾患
・免疫抑制状態(例:悪性腫瘍治療、骨髄又は臓器移植、免疫不全、コントロール不良の HIV、AIDS、鎌状赤血球貧血、サラセミア、免疫抑制剤の長期投与)
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・脂質異常症
・喫煙
・固形臓器移植後の免疫不全
・妊娠
・神経発達疾患や複雑な病態を抱える患者(例:脳性麻痺、先天性疾患)
・医療依存度の高い患者(例:気管切開、胃ろう、陽圧換気)
一つの実施態様として、本発明の医薬組成物は、重症化リスク因子を少なくとも一つ有する感染者に投与され、COVID-19症状の重症化を抑制するために用いられる。
一つの実施態様として、本発明の医薬組成物は、SARS-CoV-2による肺炎を有する患者に用いられる。
一つの実施態様として、本発明の医薬組成物は、SARS-CoV-2感染者のうち、次に示す重症化リスク因子を少なくとも一つ有する感染者に投与することが挙げられる。
・ECMO(体外式膜型人工肺)装着患者
・人工呼吸器装着患者
・ICU入室中の患者
・酸素飽和度(SpO)93%(室内気)以下または酸素吸入が必要な患者
一つの実施態様として、本発明の医薬組成物は、SARS-CoV-2感染者のうち、次に示す重症化リスク因子を少なくとも一つ有する感染者に投与することが挙げられる。
・酸素飽和度(SpO2)94%未満(室内気、海面位)
・PaO2/FiO2が300mmHg未満
・呼吸数が30以上/分
・肺浸潤が50%以上
(式(I)で示される化合物の製造法)
式(I)で示される化合物は、例えば、下記に示す一般的合成法によって製造することができる。抽出、精製等は、通常の有機化学の実験で行う処理を行えばよい。当該分野において公知の手法を参考にしながら合成することができる。抽出、精製等は、通常の有機化学の実験で行う処理を行えばよい。
式(I)で示される化合物は、当該分野において公知の手法を参考にしながら製造することができる。例えば、WO2010092966、WO2012020749、WO2013089212、WO2014200078、WO2012020742およびWO2013118855等を参考にして製造することができる。
(A法)
Figure 0007236065000024

(式中、AlkはC1-C3アルキルであり、Lgは脱離基であり、Rは水素原子であり、その他の記号は前記と同義である。)
(第1工程)
化合物(A-1)またはその塩酸塩もしくは臭素酸塩等を、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、THF等の溶媒中、DBU、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の塩基(好ましくは、DBU)の存在下、-20℃~50℃、好ましくは-10℃~氷冷下で、イソシアネート(A-2)または1-カルバモイルイミダゾール(A-2’)と反応させる。続けて、反応混合物を、1,1’-カルボニルジイミダゾール、ホスゲン、トリホスゲン等のカルボニル化剤、およびDBU、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の塩基(好ましくは、DBU)と、-20℃~50℃、好ましくは-10℃~氷冷下で、反応させることにより化合物(A-3)を製造することができる。
(第2工程)
化合物(A-3)をアセトニトリル、アセトン、DMF、DMSO等の溶媒中、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等の塩基の存在下、50℃~加熱還流下、好ましくは加熱還流下で、化合物(A-4)と反応させることで、化合物(A-5)を製造することができる。
脱離基としては、例えば、ハロゲンおよび-OSO(C2t+1)(式中、tは1~4の整数)等が挙げられる。ハロゲンとしては、塩素、ヨウ素および臭素が好ましく、-OSO(C2t+1)基としては、-OTf基(トリフルオロメタンスルホン酸エステル)が好ましい。
(第3工程)
化合物(A-5)をNMP、DMF、DMA、DMSO、tert-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール等の溶媒中、酢酸等の酸の存在下または非存在下、60℃~150℃、好ましくは80℃~120℃で、化合物(A-6)または化合物(A-6’)と反応させることにより、化合物(I)で示される化合物を製造することができる。
光学活性なイソシアネート(A-2)を用いることで、光学活性である化合物(I)で示される化合物を製造することができる。
(B法)
Figure 0007236065000025

(式中、AlkはC1-C3アルキルであり、ProはC1-C4アルキルまたはtert-ブトキシカルボニル、Lgは脱離基であり、Rは水素原子であり、その他の記号は前記と同義である。)
(第1工程)
上記A法の第2工程と同様にして、化合物(B-1)から化合物(B-2)を製造することができる。
(第2工程)
化合物(B-2)を有機溶媒の存在下または非存在下において、-20℃~室温、好ましくは室温で、TFA等の強酸で処理することにより、化合物(B-3)を製造することができる。
(第3工程)
上記A法の第3工程と同様にして、化合物(B-3)から化合物(B-4)を製造することができる。
(第4工程)
化合物(B-4)および化合物(B-5)を用いたゴールドバーグアミノ化反応により、化合物(I-X)を製造することができる。
脱離基としては、上記A法工程1に記載の脱離基が挙げられる。
触媒としては、例えば、ヨウ化銅、シアン化銅、臭化銅等、市販の銅触媒を用いることができる。
配位子としては、1,2-ジメチルエチレンジアミン、trans-N,N‘-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン等を用いることができる。
塩基としては、炭酸カリウム、リン酸カリウム等を用いることができる。
溶媒としては、NMP、ジオキサン、DMSO等を用いることができる。
反応温度は、室温から溶媒が還流する温度で反応を行えばよく、好ましくは、加熱還流下で反応すればよい。
(C法)
Figure 0007236065000026

(式中、AlkはC1-C3アルキルであり、Lgは脱離基であり、その他の記号は前記と同義である。)
(第1工程)
上記A法の第2工程と同様にして、化合物(C-2)を製造することができる。
脱離基としては、上記A法工程1に記載の脱離基が挙げられる。
(第2工程)
上記A法の第3工程と同様にして、化合物(I)で示される化合物を製造することができる。
本発明に係る化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を有するため、ウイルス感染症の治療および/または予防剤として有用である。
さらに本発明に係る化合物は、医薬としての有用性を備えており、好ましくは、下記のいずれか、または複数の優れた特徴を有している。
a)CYP酵素(例えば、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4等)に対する阻害作用が弱い。
b)高いバイオアベイラビリティー、適度なクリアランス等良好な薬物動態を示す。
c)代謝安定性が高い。
d)CYP酵素(例えば、CYP3A4)に対し、本明細書に記載する測定条件の濃度範囲内で不可逆的阻害作用を示さない。
e)変異原性を有さない。
f)心血管系のリスクが低い。
g)高い溶解性を示す。
h)タンパク質非結合率(fu値)が高い。
i)高いコロナウイルス3CLプロテアーゼ選択性を有している。
j)高いコロナウイルス増殖阻害活性を有している。例えば、ヒト血清(HS)またはヒト血清アルブミン(HSA)添加下において、高いコロナウイルス増殖阻害活性を有している。
コロナウイルス増殖阻害剤としては、例えば後述のCPE抑制効果確認試験(SARS-CoV-2)において、例えばEC50が10μM以下、好ましくは1μM以下、より好ましくは100nM以下である態様が挙げられる。
また、式(I)で示される化合物の塩・結晶・複合体(共結晶)は、医薬としての有用性を備えており、好ましくは、下記のいずれか、または複数の優れた特徴を有している。
A)高いバイオアベイラビリティー、適度なクリアランス、高いAUC、高い最高血中濃度等、良好な薬物動態を示す。
B)高い溶解性、高い化学安定性、低い吸湿性を示す。
本発明の医薬組成物は、経口的、非経口的のいずれの方法でも投与することができる。非経口投与の方法としては、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、経粘膜、吸入、経鼻、点眼、点耳、膣内投与等が挙げられる。
経口投与の場合は常法に従って、内用固形製剤(例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、フィルム剤等)、内用液剤(例えば、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、シロップ剤、リモナーデ剤、酒精剤、芳香水剤、エキス剤、煎剤、チンキ剤等)等の通常用いられるいずれの剤型に調製して投与すればよい。錠剤は、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶性コーティング錠、徐放錠、トローチ錠、舌下錠、バッカル錠、チュアブル錠または口腔内崩壊錠であってもよく、散剤および顆粒剤はドライシロップであってもよく、カプセル剤は、ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤または徐放性カプセル剤であってもよい。
非経口投与の場合は、注射剤、点滴剤、外用剤(例えば、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、エアゾール剤、吸入剤、ローション剤、注入剤、塗布剤、含嗽剤、浣腸剤、軟膏剤、硬膏剤、ゼリー剤、クリーム剤、貼付剤、パップ剤、外用散剤、坐剤等)等の通常用いられるいずれの剤型でも好適に投与することができる。注射剤は、O/W、W/O、O/W/O、W/O/W型等のエマルジョンであってもよい。
本発明に係る化合物の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合し、医薬組成物とすることができる。さらに、該医薬組成物は、本発明に係る化合物の有効量、剤型および/または各種医薬用添加剤を適宜変更することにより、小児用、高齢者用、重症患者用または手術用の医薬組成物とすることもできる。例えば、小児用医薬組成物は、新生児(出生後4週未満)、乳児(出生後4週~1歳未満)幼児(1歳以上7歳未満)、小児(7歳以上15歳未満)若しくは15歳~18歳の患者に投与されうる。例えば、高齢者用医薬組成物は、65歳以上の患者に投与されうる。
本発明の医薬組成物(例えば、式(I-A)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩I形結晶を含む医薬組成物、または、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形を含む医薬組成物)の投与量は、患者の年齢、体重、疾病の種類や程度、投与経路等を考慮した上で設定することが望ましいが、経口投与する場合、通常0.05~200mg/kg/日であり、好ましくは0.1~100mg/kg/日の範囲内である。非経口投与の場合には投与経路により大きく異なるが、通常0.005~200mg/kg/日であり、好ましくは0.01~100mg/kg/日の範囲内である。これを1日1回~数回に分けて投与すれば良い。
本発明に係る化合物は、該化合物の作用の増強または該化合物の投与量の低減等を目的として、例えば、他の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬(該治療薬としては、承認を受けた薬剤、および開発中または今後開発される薬剤を含む)(以下、併用薬剤と称する)と組み合わせて用いてもよい。この際、本発明に係る化合物と併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。さらに、本発明に係る化合物と併用薬剤とは、それぞれの活性成分を含む2種類以上の製剤として投与されてもよいし、それらの活性成分を含む単一の製剤として投与されてもよい。
併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明に係る化合物と併用薬剤の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせ等により適宜選択することができる。例えば、投与対象がヒトである場合、本発明に係る化合物1重量部に対し、併用薬剤を0.01~100重量部用いればよい。
以下に実施例および参考例、ならびに試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
また、本明細書中で用いる略語は以下の意味を表す。
Boc:tert-ブトキシカルボニル
CDI:カルボニルジイミダゾール
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン
DIEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMA:N,N-ジメチルアセトアミド
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
DTT:ジチオトレイトール
EDC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
EDT:1,2-エタンジチオール
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
FBS:ウシ胎児血清
HOBT:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
LHMDS:リチウムビス(トリメチルシリル)アミド
MEM:イーグル最小必須培地
NMP:N-メチルピロリドン
Pd(OAc):酢酸パラジウム
TFA:トリフルオロ酢酸
TMSCl:クロロトリメチルシラン
Xantphos:4,5’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9’-ジメチルキサンテン
mM:mmol/L
μM:μmol/L
nM:nmol/L
(化合物の同定方法)
各実施例で得られたNMR分析は400MHzで行い、DMSO-d、CDCl、MeOH-dを用いて測定した。また、NMRデータを示す場合は、測定した全てのピークを記載していない場合が存在する。
明細書中にRTとあるのは、LC/MS:液体クロマトグラフィー/質量分析でのリテンションタイムを表し、以下の条件で測定した。
(測定条件1)
カラム:ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 (1.7μm i.d.2.1x50mm) (Waters)
流速:0.8mL/分
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液
グラジエント:3.5分間で5%-100%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、0.5分間、100%溶媒[B]を維持した。
(測定条件2)
カラム:Shim-pack XR-ODS (2.2μm、i.d.3.0x50mm) (Shimadzu)
流速:1.6mL/分
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液
グラジエント:3分間で10%-100%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、0.5分間、100%溶媒[B]を維持した。
なお、明細書中、MS(m/z)との記載は、質量分析で観測された値を示す。
(粉末X線回折パターンの測定)
日本薬局方の一般試験法に記載された粉末X線回折測定法に従い、各実施例で得られた結晶の粉末X線回折測定を行った。測定条件を以下に示す。
(装置)
リガク社製SmartLab
(操作方法)
測定法:反射法
使用波長:CuKα線
管電流:200mA
管電圧:45kV
試料プレート:アルミニウム
X線の入射角:2.5°
サンプリング幅:0.02°
検出器:HyPix-3000(2次元検出モード)
(単結晶構造解析の測定と解析方法)
単結晶構造解析の測定条件および解析方法を以下に示す。
(装置)
リガク社製 XtaLAB P200 MM007
(測定条件)
測定温度:25℃
使用波長:CuKα線(λ=1.5418Å)
ソフト:CrysAlisPro 1.171.39.46e (Rigaku Oxford Diffraction, 2018)
(データ処理)
ソフト:CrysAlisPro 1.171.39.46e (Rigaku Oxford Diffraction, 2018)
データはローレンツおよび偏光補正、吸収補正を行った。
(結晶構造解析)
直接法プログラムShelXT(Sheldrick, G.M.,2015)を用いて位相決定を行い、精密化はShelXL(Sheldrick, G.M.,2015)を用いて、full-matrix最小二乗法を実施した。非水素原子の温度因子はすべて異方性で精密化を行った。水素原子はShelXLのデフォルトパラメータを用いて計算により導入し、riding atomとして取り扱った。全ての水素原子は、等方性パラメーターで精密化を行った。
図2および図4の作図にはPLATON(Spek,1991)/ORTEP(Johnson,1976)を使用した。
化合物(I-003)の合成
Figure 0007236065000027

工程1 化合物14の合成
3,4,5-トリフルオロベンジルアミン(3.34g、20.7mmol)をジクロロメタン(33.4mL)に溶解し、水浴で冷却した。反応溶液にイソチオシアン酸ベンゾイル(2.93mL、21.8mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。
溶媒を留去し、残渣をメタノールで希釈し、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(7.45mL、7.45mmol)を加えた。反応溶液を室温で30分間攪拌し、2mol/L塩酸水溶液を加えた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去して化合物14の粗生成物(8.3g)を得た。この粗生成物はこれ以上精製することなく収率100%として次の工程に用いた。
LC/MS(ESI):m/z=221、RT=1.45min、LC/MS測定条件2
工程2 化合物15の合成
化合物14の粗生成物(8.3g)、DMF(85mL)、ヨウ化メチル(4.84mL、77mmol)を混合し、反応溶液を50℃で40分間攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、水で洗浄した。水層に2mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、化合物15の粗生成物(3.86g、16.5mmol、収率80%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=235、RT=0.84min、LC/MS測定条件2
工程3 化合物16の合成
トリホスゲン(0.507g、1.71mmol)およびTHF(6mL)を混合し、反応溶液を氷浴で冷却した。3-アミノ-5-メチルピリジン(0.462g、4.27mmol)およびトリエチルアミン(1.48mL、10.7mmol)をTHF(6mL)中で混合し、得られた溶液を反応溶液に滴下した。反応溶液を室温で40分間攪拌した後、氷浴中で冷却した。化合物15(1g、4.27mmol)を反応溶液に加え、室温で55分間攪拌した。水を加え、水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、化合物16の粗生成物(1.57g、4.26mmol、収率:定量)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=369、RT=1.52min、LC/MS測定条件1
工程4 化合物17の合成
CDI(2.78g、17.2mmol)、化合物16(1.58g、4.29mmol)およびDMF(12.6mL)を混合した。反応溶液にジイソプロピルエチルアミン(3.00mL、17.2mmol)を加え、110℃で攪拌しながら30分間マイクロウェーブを照射した。反応溶液を氷に注ぎ、生成した沈殿物を濾別し、水で洗浄した。得られた残渣を減圧乾燥し、化合物17の粗生成物(649mg、1.51mmol、収率35%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=395、RT=1.74min、LC/MS測定条件1
工程5 化合物(I-003)の合成
6-クロロ-2-メチル-2H-インダゾール-5-アミン(55.3mg、0.304mmol)、化合物17(100mg、0.254mmol)およびTHF(1mL)を混合した。反応溶液を氷浴中で冷却し、LHMDS(0.761mL、0.761mmol)を加えた。反応溶液を氷浴中で40分間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。有機層を酢酸エチルで抽出し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)により精製し、化合物(I-003)(80mg、0.145mmol、収率57.4%)を得た。
1H-NMR (Methanol-d4) δ: 8.43 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 8.36 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.18 (s, 1H), 7.74 (s, 1H), 7.72 (br s, 1H), 7.48-7.35 (m, 3H), 5.32 (s, 2H), 4.20 (s, 3H), 2.42 (s, 3H).
LC/MS(ESI):m/z=528、RT=1.93min、LC/MS測定条件1
化合物(I-005)の合成
Figure 0007236065000028

工程1 化合物18の合成
化合物4(926mg、4.04mmol)(合成法はWO2012020749、WO2013089212およびWO2014200078参照)、アセトニトリル(7.41mL)、炭酸カリウム(726mg、5.25mmol)および2,4,5-トリフルオロベンジルブロミド(1000mg、4.44mmol)を混合した。反応溶液を80℃で40分間攪拌し、放冷後、酢酸エチルで希釈した。不溶物を濾別後、ろ液を濃縮し、化合物18の粗生成物(1.51g、4.04mmol、収率:定量)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=374、RT=2.54min、LC/MS測定条件1
工程2 化合物19の合成
化合物18(1.51g、4.04mmol)およびTFA(3.02mL)を混合した。反応溶液を室温で4時間攪拌し、一晩静置した。TFAを減圧留去し、残渣にトルエンを加え共沸した。残渣にイソプロピルエーテルを加え懸濁後、ろ取し、化合物19(1.22g、3.84mmol、収率95%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=318、RT=1.68min、LC/MS測定条件1
工程3 化合物20の合成
化合物19(200mg、0.63mmol)、DMF(1.8mL)、炭酸カリウム(261mg、1.89mmol)および3-(クロロメチル)-1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール 塩酸塩(159mg、0.946mmol)を混合した。反応溶液を60℃で2時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。残渣をイソプロピルエーテル、ヘキサン、酢酸エチルおよびクロロホルムの混合溶媒で懸濁し、ろ取した。残渣、DMF(1.8mL)、炭酸カリウム(261mg、1.89mmol)および3-(クロロメチル)-1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール 塩酸塩(159mg、0.946mmol)を混合した。反応溶液を60℃で6時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。残渣をイソプロピルエーテル、ヘキサン、酢酸エチルおよびクロロホルムの混合溶媒で懸濁してろ取し、化合物20(116mg、0.281mmol、収率45%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=413、RT=1.84min、LC/MS測定条件:1
工程4 化合物(I-005)の合成
化合物20(115mg、0.279mmol)、THF(2.30mL)および6-クロロ-2-メチル-2H-インダゾール-5-アミン(60.8mg、0.335mmol)を混合した。反応溶液に、LHMDS(558μL、0.558mmol)を0℃で滴下した。反応溶液を0℃で2時間半、室温で40分間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。クロロホルムで抽出し、有機層を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で精製し、化合物(I-005)(61.8mg、0.116mmol、収率42%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.96 (s, 1H), 7.82 (d, J = 2.5Hz, 2H), 7.48 (br s, 1H), 7.45-7.37 (m, 1H), 7.08 (s, 1H), 6.97-6.88 (m, 1H), 5.35 (s, 2H), 5.17 (s, 2H), 4.21 (s, 3H), 3.89 (s, 3H).
LC/MS(ESI):m/z=532、RT=1.70min、LC/MS測定条件1
上記一般的合成法および実施例1および2記載の方法に準じて、本発明に用いることができる化合物を合成した。実施例1および2で製造した化合物を含め、各化合物の構造および物性(LC/MSデータ)を以下の表に示す。表中にアミノ構造で記載した化合物はイミノ構造を取ることもあり、イミノ構造で示した化合物もアミノ構造を取ることがある。すなわち、同一の化合物でも、結晶化条件等により、イミノ構造を取る場合とアミノ構造を取る場合が存在し、塩や複合体を形成している場合においても、その塩や複合体のカウンター分子の種類により、イミノ構造を取る場合とアミノ構造を取る場合が存在し、同一カウンター分子であっても、結晶化条件等により、イミノ構造を取る場合とアミノ構造を取る場合が存在する。また、イミノ構造を取る化合物、その塩またはそれらの複合体とアミノ構造を取る化合物、その塩またはそれらの複合体の混合物であることもある。
Figure 0007236065000029
Figure 0007236065000030
Figure 0007236065000031
Figure 0007236065000032
Figure 0007236065000033
Figure 0007236065000034
Figure 0007236065000035
Figure 0007236065000036
Figure 0007236065000037
化合物(I-003)1400mgに、酢酸エチル7mLおよび5mol/Lのp-トルエンスルホン酸水溶液557μL(1.05eq)を加えた。60℃で15分間攪拌した後、25℃で2時間攪拌した。固体をろ取し、乾燥することで、式(I-A)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩I形結晶(1289.6mg、69%)を得た。
式(I-A)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩I形結晶の単結晶構造解析の結果を以下に示す。
R1 (I>2.00s(I))は0.0444であり、最終の差フーリエから電子密度の欠如も誤置もないことを確認した。
結晶学的データを表10に示す。
Figure 0007236065000038

ここで、Volumeは単位格子体積、Zは単位格子中の分子数を意味する。
式(I-A)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩I形結晶の、非対称単位中の構造を図2に示す。
非対称単位中には、式(I-A)で示される化合物、p-トルエンスルホン酸が、それぞれ1分子存在していた。p-トルエンスルホン酸のO3、O4およびO5で示される酸素原子には水素原子が結合しておらず、式(I-A)で示される化合物のN7の窒素原子に水素原子が結合していることから、塩を形成していることを確認した。
N3-C9の結合距離は約1.27Åであり、N4-C9の結合距離は約1.37Åであった。この結合距離より、p-トルエンスルホン酸塩I形結晶中の式(I-A)で示される化合物は、イミノ構造:
Figure 0007236065000039

であると同定した。
また、式(I-A)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩I形結晶の粉末X線回折の結果を示す。
粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ):9.1±0.2°、11.5±0.2°、14.6±0.2°、15.2±0.2°、18.8±0.2°、20.2±0.2°、23.6±0.2°、24.2±0.2°、24.9±0.2°および26.9±0.2°にピークが認められた。
上記粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ):9.1±0.2°、15.2±0.2°、18.8±0.2°、23.6±0.2°および24.9±0.2°のピークが式(I-A)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩I形結晶として特に特徴的である。
化合物(I-005)1170mgにフマル酸 278mg(1.1eq)および酢酸エチル 5.85mLを加え、室温下で45分間攪拌した。固体をろ取し、乾燥することで、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶(1369.4mg、94.6%)を得た。
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の単結晶構造解析の結果を以下に示す。
R1 (I>2.00s(I))は0.0470であり、最終の差フーリエから電子密度の欠如も誤置もないことを確認した。
結晶学的データを表11に示す。
Figure 0007236065000040

ここで、Volumeは単位格子体積、Zは単位格子中の分子数を意味する。
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の、非対称単位中の構造を図4に示す。
非対称単位中に、式(I-B)で示される化合物、フマル酸がそれぞれ1分子存在していた。イオン性の化学的相互作用は確認されず、1:1のモル比の共結晶であることを確認した。
N10-C9の結合距離は約1.26Åであり、N16-C9の結合距離は約1.37Åであった。この結合距離より、フマル酸共結晶I形の式(I-B)で示される化合物は、イミノ構造:
Figure 0007236065000041

であると同定した。
また、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶の粉末X線回折の結果を示す。
粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ):7.8±0.2°、9.5±0.2°、10.1±0.2°、10.9±0.2°、13.8±0.2°、14.7±0.2°、18.6±0.2°、22.6±0.2°、23.5±0.2°および24.6±0.2°にピークが認められた。
上記粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ):9.5±0.2°、10.9±0.2°、18.6±0.2°、23.5±0.2°および24.6±0.2°のピークが式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶として特に特徴的である。
以下に、本発明に係る化合物の生物試験例を記載する。本発明化合物は、本質的に下記試験例のとおり試験することができる。
本発明に係る式(I)で示される化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害作用を有し、コロナウイルス3CLプロテアーゼを阻害するものであればよい。
具体的には、以下に記載する評価方法において、IC50は50μM以下が好ましく、より好ましくは、1μM以下、さらにより好ましくは100nM以下である。
試験例1:human TMPRSS2発現Vero E6細胞(Vero E6/TMPRSS2細胞)を用いたCytopathic effect(CPE)抑制効果確認試験
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、2~5倍段階希釈系列を作製後、384ウェルプレートに分注する。
・細胞およびSARS-CoV-2の希釈、分注
VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、5×10cells/well)とSARS-CoV-2(100-300TCID50/well)を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で混合し、被験試料が入ったウェルに分注した後、COインキュベーターで3日間培養する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
3日間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
<各測定項目値の算出>
・50% SARS-CoV-2感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下の表に示す。
なお、EC50値は、1μM未満を「A」、1μM以上10μM未満を「B」とする。
化合物I-003:0.177μM
化合物I-005:0.328μM
化合物I-006:0.747μM
化合物I-010:0.306μM
化合物I-012:0.131μM
化合物I-017:0.0960μM
化合物I-023:1.03μM
化合物I-035:0.395μM
Figure 0007236065000042
試験例1-2:human TMPRSS2発現Vero E6細胞(Vero E6/TMPRSS2細胞)を用いたCytopathic effect(CPE)抑制効果確認試験
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、96ウェルプレートに分注する。
・細胞およびSARS-CoV-2の希釈、分注
VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)とSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY/WK-521/2020、hCoV-19/Japan/QK002/2020、hCoV-19/Japan/QHN001/2020、hCoV-19/Japan/QHN002/2020、hCoV-19/Japan/TY7-501/2021、hCoV-19/Japan/TY7-503/2021、hCoV-19/Japan/TY8-612/2021、hCoV-19/Japan/TY11-927-P1/2021、hCoV-19/Japan/TY33-456/2021、hCoV-19/Japan/TY28-444/2021、hCoV-19/Japan/TY26-717/2021(30-3000TCID50/well)を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で混合し、被験試料が入ったウェルに分注した後、COインキュベーターで3日間あるいは4日間培養する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
3日間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
<各測定項目値の算出>
・50% SARS-CoV-2感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
Figure 0007236065000043
試験例1-3:human TMPRSS2発現Vero E6細胞(Vero E6/TMPRSS2細胞)を用いたCytopathic effect(CPE)抑制効果確認試験
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、96ウェルプレートに分注する。
・細胞およびSARS-CoV-2の希釈、分注
VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)とSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY38-873/2021、hCoV-19/Japan/TY38-871/2021、hCoV-19/Japan/TY40-385/2022、hCoV-19/Japan/TY41-716/2022、hCoV-19/Japan/TY41-703/2022、hCoV-19/Japan/TY41-702/2022、hCoV-19/Japan/TY41-686/2022(300-3000TCID50/well)を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で混合し、被験試料が入ったウェルに分注した後、COインキュベーターで4日間培養する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
3日間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
<各測定項目値の算出>
・50% SARS-CoV-2感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
Figure 0007236065000044
試験例2:SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼに対する阻害活性試験
<材料>
・市販のRecombinant SARS-CoV-2 3CL Protease
・市販の基質ペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-Gln-Ser-Gly-Phe-Arg-Lys-Met-Glu(Edans)-NH2(配列番号:1)
・Internal Standardペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Gln(配列番号:2)
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Glnは、文献(Atherton, E.; Sheppard, R. C.、“In Solid Phase Peptide Synthesis, A Practical Approach”、IRL Press at Oxford University Pres、1989.およびBioorg. Med. Chem.、5巻、9号、1997年、1883-1891頁、等)を参考に合成できる。以下に一例を示す。
Rinkアミド樹脂を用いて、Fmoc固相合成によって、H-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Glu(resin)-OαOtBu(Lys側鎖はBoc保護、Thr側鎖はtert-ブチル基で保護、Ser側鎖はtert-ブチル基で保護、GluのC末端OHはtert-ブチル基で保護されており、Glu側鎖のカルボン酸を樹脂に縮合)を合成する。N末端Dabcyl基の修飾は4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4’-カルボン酸(Dabcyl-OH)をEDC/HOBTを用いて樹脂上で縮合する。最終脱保護、および樹脂からの切り出しはTFA/EDT=95:5で処理することで行う。その後、逆相HPLCによって精製する。
・RapidFire Cartridge C4 typeA
<操作手順>
・アッセイバッファーの調製
本試験では、20mM Tris-HCl、100mM 塩化ナトリウム、1mM EDTA、10mM DTT、0.01% BSAからなるアッセイバッファーを使用する。IC50値が10nM以下の化合物については、20mM Tris-HCl、1mM EDTA、10mM DTT、0.01% BSAからなるアッセイバッファーを使用する。
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、2~5倍段階希釈系列を作製後、384ウェルプレートに分注する。
・酵素と基質の添加、酵素反応
準備した化合物プレートに、8μMの基質、及び6または0.6nMの酵素溶液を添加し、室温で3~5時間インキュベーションを行う。その後、反応停止液(0.067μM Internal Standard、0.1% ギ酸、10または25% アセトニトリル)を加え酵素反応を停止させる。
・反応産物の測定
反応完了したプレートはRapidFire System 360及び質量分析器(Agilent、6550 iFunnel Q-TOF)、またはRapid Fire System 365及び質量分析器(Agilent、 6495C Triple Quadrupole)を用いて測定する。測定時の移動相としてA溶液(75% イソプロパノール、15% アセトニトリル、5mM ギ酸アンモニウム)とB溶液(0.01% トリフルオロ酢酸、0.09% ギ酸)を用いる。
質量分析器によって検出された反応産物は、RapidFire Integratorまたは同等の解析が可能なプログラムを用いて算出しProduct area値とする。また、同時に検出されたInternal Standardも算出しInternal Standard area値とする。
<各測定項目値の算出>
・P/ISの算出
前項目で得られたarea値を下記の式によって計算し、P/ISを算出する。
P/IS= Product area値/ Internal Standard area値
・50% SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼ阻害濃度(IC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Inhibitionとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をIC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Inhibition = {1-(Sample - Control(-)) / Control(+)-Control(-))} * 100

Control(-):the average of P/IS of enzyme inhibited condition wells
Control(+):the average of P/IS of DMSO control wells
min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下の表に示す。
なお、IC50値は、0.1μM未満を「A」、0.1μM以上1μM未満を「B」、1μM以上10μM未満を「C」とする。
化合物I-003:0.014μM
化合物I-005:0.010μM
化合物I-006:0.0058μM
化合物I-010:0.0054μM
化合物I-012:0.0091μM
化合物I-017:0.0034μM
化合物I-023:0.0063μM
化合物I-035:0.0098μM
Figure 0007236065000045
試験例2-2:SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼに対する阻害活性試験
<材料>
・市販のRecombinant SARS-CoV-2 3CL Protease
・SARS-CoV-2 3CL Protease 各変異(G15S,T21I,T24I,K88R,L89F,K90R,P108S,P132H,A193V,H246Y,A255V)
・市販の基質ペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-Gln-Ser-Gly-Phe-Arg-Lys-Met-Glu(Edans)-NH2(配列番号:1)
・Internal Standardペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Gln(配列番号:2)
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Glnは、文献(Atherton, E.; Sheppard, R. C.、“In Solid Phase Peptide Synthesis, A Practical Approach”、IRL Press at Oxford University Pres、1989.およびBioorg. Med. Chem.、5巻、9号、1997年、1883-1891頁、等)を参考に合成できる。以下に一例を示す。
Rinkアミド樹脂を用いて、Fmoc固相合成によって、H-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Glu(resin)-OαOtBu(Lys側鎖はBoc保護、Thr側鎖はtert-ブチル基で保護、Ser側鎖はtert-ブチル基で保護、GluのC末端OHはtert-ブチル基で保護されており、Glu側鎖のカルボン酸を樹脂に縮合)を合成する。N末端Dabcyl基の修飾は4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4’-カルボン酸(Dabcyl-OH)をEDC/HOBTを用いて樹脂上で縮合する。最終脱保護、および樹脂からの切り出しはTFA/EDT=95:5で処理することで行う。その後、逆相HPLCによって精製する。
・RapidFire Cartridge C4 typeA
<操作手順>
・アッセイバッファーの調製
本試験では、20mM Tris-HCl、1mM EDTA、10mM DTT、0.01% BSAからなるアッセイバッファーを使用する。
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、384ウェルプレートに分注する。
・酵素と基質の添加、酵素反応
準備した化合物プレートに、最終濃度2-4μMの基質、及び最終濃度2-6nMの酵素溶液を添加し、室温で2-3時間インキュベーションを行う。その後、反応停止液(0.072μM Internal Standard、0.1% ギ酸、10% アセトニトリル)を加え酵素反応を停止させる。
・反応産物の測定
反応完了したプレートはRapidFire System 360及び質量分析器(Agilent、6550 iFunnel Q-TOF)を用いて測定する。測定時の移動相としてA溶液(75% イソプロパノール、15% アセトニトリル、5mM ギ酸アンモニウム)とB溶液(0.01% トリフルオロ酢酸、0.09% ギ酸)を用いる。
質量分析器によって検出された反応産物は、RapidFire Integratorを用いて算出しProduct area値とする。また、同時に検出されたInternal Standardも算出しInternal Standard area値とする。
<各測定項目値の算出>
・P/ISの算出
前項目で得られたarea値を下記の式によって計算し、P/ISを算出する。
P/IS= Product area値/ Internal Standard area値
・50% SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼ阻害濃度(IC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Inhibitionとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をIC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Inhibition = {1-(Sample - Control(-)) / Control(+)-Control(-))} * 100

Control(-):the average of P/IS ratio in the wells without SARS-CoV-2 3CL protease and test substance
Control(+):the average of P/IS ratio in the wells with SARS-CoV-2 3CL protease and without test substance

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
Figure 0007236065000046
試験例3:式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶の投与によるSARS-CoV-2感染マウスの肺内ウイルス力価増殖抑制試験
<材料と方法>
・化合物
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶は、0.5%メチルセルロース(0.5%MC)溶液を用いて調製した。投与容量は、10mL/kgとした。投与量はフリー体で換算した量を示す。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV19/Japan/TY7-501/2021株を用いた。
・マウス肺感染、投薬、肺回収
特定病原体不在の5週齢の雌性BALB/cマウス(CLEA Japan,Inc.)を本研究において使用した。ウイルス接種の際、PBS中に0.03mg/mLの塩酸メデトミジン、0.4mg/mLのミダゾラム、0.5mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む100μLの麻酔液の筋内投与によってマウスを麻酔した。マウスに、麻酔下で、50μLのhCoV19/Japan/TY7-501/2021(1.00×10TCID50)を経鼻接種した。ウイルス感染直後を開始点として、マウス(n=5―10/群)に、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、16mg/kg、32mg/kg、64mg/kgで単回もしくは1mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、16mg/kg、32mg/kgの用量で1日2回経口投与した。対照マウスには、0.5%MCを1日2回経口投与した。ウイルス感染1日後にマウス肺を回収し、2mLのPBSを添加、ホモジナイズし、遠心後の上清を回収した。
・肺内ウイルス力価の測定
肺ホモジネート液を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)と混合し、96ウェルプレートに播種した。COインキュベーターで4日間培養後、Cytopathic effect(CPE)を観察し、肺ホモジネート液中に含まれるウイルス力価を算出した。
・統計解析
肺ホモジネート液中ウイルス力価の群間差を、ダネット検定によって分析した。統計解析は、統計解析ソフトウェアSASバージョン9.4Windows用(SAS Institute(Cary,NC))を使用して実施した。調整済み両側P値0.05未満は、統計的に有意であると見なした。
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶投与群は、単回もしくは1日2回いずれの投与においても用量依存的に感染1日後の肺内ウイルス力価を低下させ、2mg/kg以上の全ての投与量において0.5%MC投与群と比べて有意に低いウイルス力価を示した(図5Aおよび図5B)。単回投与では32、64mg/kg投与群、1日2回投与では16、32mg/kg投与群で肺内ウイルス力価がおよそ定量下限(1.80-log10TCID50/mL)に達した。
試験例4:式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶の遅延投与によるSARS-CoV-2感染マウスの肺内ウイルス力価増殖抑制試験
<材料と方法>
・化合物
本発明化合物(式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶)は、0.5%メチルセルロース(0.5%MC)溶液を用いて調製した。投与容量は、10mL/kgとした。投与量はフリー体で換算した量を示す。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV19/Japan/TY7-501/2021株を用いた。
・マウス肺感染、投薬、肺回収
特定病原体不在の5週齢の雌性BALB/cマウス(CLEA Japan,Inc.)を本研究において使用した。ウイルス接種の際、PBS中に0.03mg/mLの塩酸メデトミジン、0.4mg/mLのミダゾラム、0.5mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む100μLの麻酔液の筋内投与によってマウスを麻酔した。マウスに、麻酔下で、50μLのhCoV19/Japan/TY7-501/2021(1.00×10TCID50)を経鼻接種した。ウイルス感染1日後もしくは3日後を開始点として、マウス(n=5/群)に、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を30mg/kg、150mg/kgの用量で1日2回経口投与した。対照マウスには、0.5%MCを1日1回経口投与した。化合物投与は投与開始から2日間とした。投与開始から2日後にマウス肺を回収し、2mLのPBSを添加、ホモジナイズし、遠心後の上清を回収した。
・肺内ウイルス力価の測定
肺ホモジネート液を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)と混合し、96ウェルプレートに播種した。COインキュベーターで4日間培養後、Cytopathic effect(CPE)を観察し、肺ホモジネート液中に含まれるウイルス力価を算出した。
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
感染1日後から投与開始した群では、投与開始2日後の肺内ウイルス力価は0.5%MC投与群では6.47-log10TCID50/mLを示し、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶 30、150mg/kg投与群ではそれぞれ4.47-log10TCID50/mL、2.90-log10TCID50/mLを示した(図6A)。感染3日後から投与開始した群では、投与開始2日後の肺内ウイルス力価は0.5%MC投与群では4.83-log10TCID50/mLを示し、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶 30、150mg/kg投与群ではそれぞれ3.63-log10TCID50/mL、3.35-log10TCID50/mLを示した(図6B)。
投与開始が感染1日後、3日後のどちらの場合においても式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶投与群では肺内ウイルス力価が0.5%MC投与群に比べて低値を示したことから、感染から投与までの期間が空いても肺内ウイルス力価を低減する効果があることが示唆された。
試験例4-2:式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶の遅延投与によるSARS-CoV-2感染マウスの肺内ウイルス力価増殖抑制試験
<材料と方法>
・化合物
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶は、0.5%メチルセルロース(0.5%MC)溶液を用いて調製した。投与容量は、10mL/kgとした。投与量はフリー体で換算した量を示す。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV19/Japan/TY7-501/2021株を用いた。
・マウス肺感染、投薬、肺回収
特定病原体不在の5週齢の雌性BALB/cマウス(CLEA Japan,Inc.)を本研究において使用した。ウイルス接種の際、PBS中に0.03mg/mLの塩酸メデトミジン、0.4mg/mLのミダゾラム、0.5mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む100μLの麻酔液の筋内投与によってマウスを麻酔した。マウスに、麻酔下で、50μLのhCoV19/Japan/TY7-501/2021(1.00×10TCID50)を経鼻接種した。ウイルス感染1日後を開始点として、マウス(n=5/群)に、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を8、16、32、64mg/kgの用量で1日3回経口投与した。対照マウスには、0.5%MCを1日1回経口投与した。化合物投与は投与開始から2日間とした。投与開始から2日後にマウス肺を回収し、2mLのPBSを添加、ホモジナイズし、遠心後の上清を回収した。
・肺内ウイルス力価の測定
肺ホモジネート液を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)と混合し、96ウェルプレートに播種した。COインキュベーターで4日間培養後、Cytopathic effect(CPE)を観察し、肺ホモジネート液中に含まれるウイルス力価を算出した。
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
感染1日後から投与開始した群では、投与開始2日後の肺内ウイルス力価は0.5%MC投与群では6.57-log10TCID50/mLを示し、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶 8、16、32、64mg/kg投与群ではそれぞれ5.55、4.66、2.85、2.40-log10TCID50/mLを示した。式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶投与群では肺内ウイルス力価が0.5%MC投与群に比べて低値を示したことから、感染から投与までの期間が空いても肺内ウイルス力価を低減する効果があることが示唆された(図7)。
試験例5:式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶の投与によるSARS-CoV-2感染マウスの致死、体重減少抑制試験
<材料と方法>
・化合物
本発明化合物(式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶)は、0.5%メチルセルロース(0.5%MC)溶液を用いて調製した。投与容量は、10mL/kgとした。投与量はフリー体で換算した量を示す。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV19/Japan/TY7-501/2021株(TY7-501)および北海道大学で分離したSARS-CoV-2 hCoV19/Japan/TY/WK-521/2020株マウス馴化株MA-P10を用いた。
・マウス肺感染、投薬、体重測定
特定病原体不在の15週齢もしくは35-45週齢リタイヤの雌性BALB/cマウス(CLEA Japan,Inc.)を本研究において使用した。ウイルス接種の際、PBS中に0.03mg/mLの塩酸メデトミジン、0.4mg/mLのミダゾラム、0.5mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む100μLの麻酔液の筋内投与によってマウスを麻酔した。マウスに、麻酔下で、50μLのTY7-501(1.00×10TCID50)、MA-P10(1.00×10TCID50もしくは1.00×10TCID50)を経鼻接種した。TY7-501は35-45週齢リタイヤマウスのみ使用した。ウイルス感染1日後から、マウス(n=4/群)に、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を50mg/kgで1日2回経口投与した。対照マウスには、0.5%MCを1日2回経口投与した。体重を1日1回モニタリングし、生存率の評価においては、感染直前の体重を基準として80%未満となった場合には死亡と見做した。
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
高週齢35-45週齢リタイヤマウスにTY7-501 1.00×10TCID50を感染させた場合、感染3日後から体重が減少し、感染5日後に全例が死亡した。このとき式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶 50mg/kg投与群では観察した感染7日後まで全例が生存し、体重減少が抑制された(図8Aおよび図8B)。15週齢マウスにMA-P10 1.00×10TCID50を感染させた場合、感染3日後から体重減少を認めたものの、死亡例は認められなかった。一方で、15週齢マウスにMA-P10 1.00×10TCID50を感染させた場合、感染3日後から体重が減少し、感染4日後に一部の個体で死亡例が認められ、感染6日後に全例が死亡した。このとき式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶 50mg/kg投与群では観察した感染7日後まで全例が生存し、体重減少が認められなかった(図8Cおよび図8D)。
次に、高週齢35-45週齢リタイヤマウスにMA-P10 1.00×10TCID50を感染させた場合、感染3日後から体重が減少し、感染5日後に一部の個体で死亡例が認められ、感染6日後に全例が死亡したことから、高週齢である35-45週齢リタイヤマウスではより低感染量でも重症化しやすいと考えられる。このとき式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶 50mg/kg投与群では観察した感染7日後まで全例が生存し、体重減少が抑制された(図8Eおよび図8F)。
以上の結果から、15週齢マウスおよび高週齢35-45週齢リタイヤマウスのいずれにおいても、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶投与により致死および体重減少抑制効果があることが示唆された。
若齢マウスと比較すると、加齢マウスでは、ヒトと同様、SARS-CoV-2の受容体として知られているACE2受容体の発現量が増加することが知られており(参考文献:Scientific Reports (2020)10:22401およびMolecular Therapy Methods & Clinical Development, Vol. 18, P1-6, 2020)、また感染源から身体を防御し、それらを排除する正常な免疫応答が低下するため、ウイルス感染により致死に至ることが想定される。しかしながら、上記に示す通り、加齢マウスを用いたSARS-CoV-2感染マウスモデルにおいて、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶の投与により、感染7日後のマウスの生存率は100%を示した。加齢マウスを用いた非臨床試験は、基礎疾患を有するハイリスク患者が重症化に至る過程を模した非臨床評価系の一つとして位置づけられるため、重症化リスクの高い患者に対する治療オプションとして、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶の有用性を支持する。
また、上記試験結果は、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶投与群においてウイルス感染による重症化が抑制されたことを示唆しており、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス効果のみならず、SARS-CoV-2による感染症の重症化抑制用医薬としての有用性を支持する。
試験例6:SARS-CoVに対する抗ウイルス効果
<材料>
・維持培地(2% FBS in MEM)
1000mLのMinimum Essential Mediumに8.5% NaHCOを10mL、FBSを20mL、L-Glutamineを10mL加えて調製した。
・MTT液
3-(4,5-dimethyl-2-thiazol)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromideを5μg/mLになるようにPBSで溶解後、0.45μmあるいは0.22μmフィルターでろ過した。
・細胞溶解液(ウイルス不活化液)
500mLイソプロパノールに50mLのTriton X、4mLの塩酸(12mol/L)を入れて調製した。
・Dimethyl sulfoxide(DMSO)
・プレートリーダー(サーモフィッシャー社、パーキンエルマー社、等)

<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適当な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製した。さらに維持培地で希釈して50μL/wellとなるように96ウェルプレートに分注した。
・細胞およびウイルスの希釈、分注
ウイルス(SARS-CoV Hanoi strain(1000TCID50/well))をそれぞれ維持培地で希釈し、被験試料が入った96wellプレートに50μL/wellずつ分注した。
維持培地で調製したVeroE6/TMPRSS2細胞(1.5×104cells/well)を、被験試料およびウイルスが入った96 wellプレートに100μL/wellずつ分注した。プレートミキサーで混和し、COインキュベーターで3日間培養した。
・MTT液、細胞溶解液の分注
3日間培養した96 wellプレートを肉眼、顕微鏡下で観察し、細胞の形態・結晶の有無等を確認した。MTT液を各wellに30μLずつ分注し、COインキュベーターで4~6時間培養した。プレートから細胞を吸わないように上清を150μLずつ除いた。細胞溶解液(ウイルス不活化液)を各wellに150μLずつ分注した。乾燥しないようにプレートをラップで包み、室温で一晩放置した。
・吸光度の測定(96 wellプレート)
翌日プレートをプレートミキサーで混和した。96wellプレートは、プレートリーダーを用いて570nmと630nmの2波長の吸光度を測定した。
<各測定項目値の算出>
・50% ウイルス感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出した。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%

Sample:the average of ODs of Sample wells
cell control: the average of ODs of cell control wells
virus control: the average of ODs of virus control wells
OD:OD(570 nm)-OD(630 nm)

min;y軸下限値、max;y軸上限値、X50;変曲点のx座標、Hill;minとmaxの中間点でのカーブの傾き
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。EC50を以下に示す。
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶:SARS-CoV 0.209μM
試験例7:HCoV-OC43に対する抗ウイルス効果
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、96ウェルプレートに分注し維持培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で希釈する。
・細胞およびHCoV-OC43の希釈、分注
継代培地(DMEM、10%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)に懸濁させたMRC-5細胞(2×10cells/well)を感染前日に96wellプレートに播種し、翌日、維持培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)に懸濁させたHCoV-OC43(100TCID50/well)を1時間で感染させる。その後、維持培地で1回洗浄後、被験試薬が入った維持培地を添加し、COインキュベーターで42時間培養する。また被験試薬の細胞毒性を調べるために、ウイルス非存在下にて同様の操作を実施する。
・ウイルス量の定量
42時間培養したプレートの上清を回収し、Quick-RNA Viral Kit(ZYMO RESEARCH、#R1041)を用いてRNAを抽出する。抽出後のRNA溶液をリアルタイムPCR(Applied BioSystems QuantStudio3)にて定量する。プライマーは文献を参照する(Journal of Clinical Microbiology.、2005、Jun 43(11)、5452-5456)。
<各測定項目値の算出>
・90% HCoV-OC43ウイルス複製阻害濃度(EC90)算出
xを化合物濃度の対数値、yをウイルスのコピー数(Log copies/mL)とした濃度依存性曲線においてウイルスコントロールからの1 log reductionに相当する値をその前後の2濃度のコピー数から二点法で算出する。すなわち、
X = log10 (high conc.)
x = log10 (low conc.)
Y = log10 (low copies/mL) - log10 (control copies /mL)
y = log10 (high copies /mL) - log10 (control copies /mL)
EC90 value was calculated by the following formula.
EC90 = 10[x + (-1 - y) × (X - x)/(Y - y)]
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶:EC90 0.074μM
試験例8:HCoV-229Eに対する抗ウイルス効果
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、96ウェルプレートに分注し維持培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で希釈する。
・細胞およびHCoV-229Eの希釈、分注
継代培地(DMEM、10%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)に懸濁させたMRC-5細胞(2×10cells/well)を感染前日に96wellプレートに播種し、翌日、維持培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)に懸濁させたHCoV-229E(1000TCID50/well)を1時間で感染させる。その後、ウイルス液を除去し、被験試薬が入った維持培地を添加し、COインキュベーターで72時間培養する。また被験試薬の細胞毒性を調べるために、ウイルス非存在下にて同様の操作を実施する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
72時間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
<各測定項目値の算出>
・50% HCoV-229E感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き

・50%細胞毒性濃度の算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Cytotoxicityとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をCC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Cytotoxicity = {(Sample - medium control) / (cell control - medium control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
medium control: the average of Lum of medium control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶:EC50 5.53μM、CC50>200μM
試験例9:抗SARS-CoV-2活性に対するヒト血清及びマウス血清の影響
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、96ウェルプレートに分注する。
・血清添加培地の添加
0、6.25%、12.5、25、50%ヒト血清もしくは0、3.125、6.25、12.5、25%マウス血清となるよう培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で調整し、被験試料が入ったウェルに分注し、室温で1時間インキュベートする。
・細胞およびSARS-CoV-2の希釈、分注
VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)とSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY7-501/2021(ヒト血清では1000TCID50/well、マウス血清では10000TCID50/well)を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で混合し、被験試料およびヒト血清、マウス血清が入ったウェルに等量分注した後、COインキュベーターで3日間培養する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
3日間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
<各測定項目値の算出>
・50% SARS-CoV-2感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き

・Protein-Adjusted EC50(PA-EC50)の算出
各血清濃度でのEC50を算出後、線形回帰によって血清100%条件でのPA-EC50値を計算した。
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶:ヒト血清PA-EC50 3.02μM、マウス血清PA-EC50 3.93μM
試験例10-1:human ACE2、TMPRSS2発現HEK293T細胞(HEK293T/ACE2-TMPRSS2細胞)を用いたCytopathic effect(CPE)抑制効果確認試験
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、96ウェルプレートに分注する。
・細胞およびSARS-CoV-2の希釈、分注
HEK293T/ACE2-TMPRSS2細胞(SL222、1.5×10cells/well)とSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY/WK-521/2020、hCoV-19/Japan/QK002/2020、hCoV-19/Japan/TY7-501/2021、hCoV-19/Japan/TY8-612/2021、hCoV-19/Japan/TY11-927-P1/2021(3000-9000TCID50/well)を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で混合し、被験試料が入ったウェルに分注した後、COインキュベーターで3日間培養する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
3日間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
<各測定項目値の算出>
・50% SARS-CoV-2感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶:0.026-0.058μM
試験例10-2:human ACE2、TMPRSS2発現HEK293T細胞(HEK293T/ACE2-TMPRSS2細胞)を用いたCytopathic effect(CPE)抑制効果確認試験
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、96ウェルプレートに分注する。
・細胞およびSARS-CoV-2の希釈、分注
HEK293T/ACE2-TMPRSS2細胞 (SL222、1.5×10cells/well)とSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY38-873/2021(9000TCID50/well)を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で混合し、被験試料が入ったウェルに分注した後、COインキュベーターで3日間培養する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
3日間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
<各測定項目値の算出>
・50% SARS-CoV-2感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶:0.083μM
試験例11:式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶の予防投与によるSARS-CoV-2感染動物から非感染動物へのウイルス伝播抑制試験
<材料と方法>
・化合物
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶は、0.5%メチルセルロース(0.5%MC)溶液を用いて調製した。投与容量は、10mL/kgとした。投与量はフリー体で換算した量を示す。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV19/Japan/TY11-927/2021株を用いた。
・ハムスター肺感染、投薬、肺回収
特定病原体不在の5週齢の雄性シリアンハムスター(Japan SLC,Inc.)を本研究において使用した。ウイルスを接種する感染ハムスター1匹とウイルスを接種しない投薬ハムスター3匹を同一ケージ内で飼育し、感染ハムスターと同居する投薬ハムスターへのウイルス伝播を試験した。ウイルス接種の際、イソフルランの吸入投与によってハムスターを麻酔した。ハムスターに、麻酔下で、200μLのhCoV19/Japan/TY11-927/2021(5.00×103PFU)を経鼻接種した。ウイルス接種をしない投薬ハムスターには、感染ハムスターへのウイルス接種時を開始点として、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を30、200mg/kgの用量で1日2回経口投与した。対照ハムスターには、0.5%MCを1日2回経口投与した。化合物投与は投与開始から6日間とした。投与開始から6日後にハムスター肺を回収し、5mLのPBSを添加、ホモジナイズし、遠心後の上清を回収した。
・肺内ウイルス力価の測定
肺ホモジネート液を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、予め24ウェルプレートに培養したVeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、2.0×105cells/well)へ接種した。COインキュベーターで2日間培養後、ウイルスプラークを観察し、肺ホモジネート液中に含まれるウイルス力価を算出した。
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
感染ハムスターとの同居開始6日後、投薬ハムスターの肺内ウイルス力価は0.5%MC投与群では6.12-log10PFU/mLを示し、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶 30、200mg/kg投与群ではそれぞれ3.48-log10PFU50/mL、検出限界値以下を示した(図9)。式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶投与群では肺内ウイルス力価が0.5%MC投与群に比べて低値を示したことから、感染ハムスターからのウイルス伝播を低減する効果があることが示唆された。
試験例12:式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶の感染直後投与によるSARS-CoV-2感染動物から非感染動物へのウイルス伝播抑制試験
<材料と方法>
・化合物
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶は、0.5%メチルセルロース(0.5%MC)溶液を用いて調製した。投与容量は、10mL/kgとした。投与量はフリー体で換算した量を示す。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV19/Japan/TY11-927/2021株を用いた。
・ハムスター肺感染、投薬、肺回収
特定病原体不在の5週齢の雄性シリアンハムスター(Japan SLC,Inc.)を本研究において使用した。ウイルスを接種する感染ハムスター1匹とウイルスを接種しない非感染ハムスター2匹を同一ケージ内で飼育し、感染ハムスターと同居する非感染ハムスターへのウイルス伝播を試験した。ウイルス接種の際、イソフルランの吸入投与によってハムスターを麻酔し、200μLのhCoV-19/Japan/TY11-927/2021(5.00×103PFU)を経鼻接種した。感染ハムスターには、ウイルス接種時を開始点として、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を200mg/kgの用量で1日2回経口投与した。対照の感染ハムスターには、0.5%MCを1日2回経口投与した。化合物投与は投与開始から4日間とした。感染6日後に非感染ハムスター肺を回収し、5mLのPBSを添加、ホモジナイズし、遠心後の上清を回収した。
・肺内ウイルス力価の測定
肺ホモジネート液を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、予め24ウェルプレートに培養したVeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、2.0×105cells/well)へ接種した。COインキュベーターで2日間培養後、ウイルスプラークを観察し、肺ホモジネート液中に含まれるウイルス力価を算出した。
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
感染ハムスターとの同居開始6日後、非感染ハムスターの肺内ウイルス力価は0.5%MC投与群では6.36-log10PFU/mLを示し、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶 200mg/kg投与群では検出限界値以下を示した(図10)。式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶投与群では肺内ウイルス力価が0.5%MC投与群に比べて低値を示したことから、感染ハムスターからのウイルス伝播を低減する効果があることが示唆された。
試験例13:式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶の感染後遅延投与によるSARS-CoV-2感染動物から非感染動物へのウイルス伝播抑制試験
<材料と方法>
・化合物
式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶は、0.5%メチルセルロース(0.5%MC)溶液を用いて調製した。投与容量は、5mL/kgとした。投与量はフリー体で換算した量を示す。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV19/Japan/TY11-927/2021株を用いた。
・ハムスター肺感染、投薬、肺及び鼻甲介回収
特定病原体不在の6週齢の雄性シリアンハムスター(Japan SLC,Inc.)を本研究において使用した。ウイルスを接種する感染ハムスター1匹とウイルスを接種しない非感染ハムスター1匹を、感染2日後を開始点として同一ケージ内で飼育し、感染ハムスターと同居する非感染ハムスターへのウイルス伝播を試験した。各群n=3で実施した。ウイルス接種の際、0.07mg/mLの塩酸メデトミジン、6.98mg/mLのアルファキサロン、1.16mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む200μLの麻酔液の皮下投与によってハムスターを麻酔し、100μLのhCoV-19/Japan/TY11-927/2021(1.00×10TCID50)を経鼻接種した。感染ハムスターには、ウイルス接種1日後を開始点として、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を50mg/kgの用量で1日2回経口投与した。対照の感染ハムスターには、0.5%MCを1日2回経口投与した。化合物投与は投与開始から4日間とした。感染5日後に感染及び非感染ハムスター肺及び鼻甲介を回収し、それぞれ5mL若しくは1mLのPBSを添加、ホモジナイズし、遠心後の上清を回収した。
・肺内及び鼻甲介内ウイルス力価の測定
肺若しくは鼻甲介ホモジネート液を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、予め96ウェルプレートに培養したVeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)へ接種した。COインキュベーターで5日間培養後、Cytopathic effect(CPE)を観察し、肺若しくは鼻甲介ホモジネート液中に含まれるウイルス力価を算出した。
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
感染ハムスターとの同居開始3日後、非感染ハムスターの肺内ウイルス力価は0.5%MC投与群では5.30-log10TCID50/mLを示し、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶 50mg/kg投与群では2.97-log10TCID50/mLを示した(図11A)。また、感染ハムスターとの同居開始3日後、非感染ハムスターの鼻甲介内ウイルス力価は0.5%MC投与群では6.06-log10TCID50/mLを示し、式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶 50mg/kg投与群では2.89-log10TCID50/mLを示した(図11B)。式(I-B)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶投与群では肺内及び鼻甲介内のウイルス力価が0.5%MC投与群に比べて低値を示したことから、感染ハムスターからのウイルス伝播を低減する効果があることが示唆された。
試験例14:式(I-B)で示される化合物の予防投与によるSARS-CoV-2感染マウスの致死、体重減少抑制試験
<材料と方法>
・化合物
本発明化合物(式(I-B)で示される化合物)は、0.5%メチルセルロース(0.5%MC)溶液を用いて調製した。投与容量は、10mL/kg×2か所とした。
・ウイルス
北海道大学で分離したSARS-CoV-2 hCoV19/Japan/TY/WK-521/2020株マウス馴化株MA-P10を用いた。
・マウス肺感染、投薬、体重測定
特定病原体不在の37-57週齢リタイヤの雌性BALB/cマウス(CLEA Japan,Inc.)を本研究において使用した。ウイルス接種の際、PBS中に0.03mg/mLの塩酸メデトミジン、0.4mg/mLのミダゾラム、0.5mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む100μLの麻酔液の筋内投与によってマウスを麻酔した。マウスに、麻酔下で、50μLのMA-P10(3.00×10TCID50)を経鼻接種した。ウイルス感染1日前に、マウス(n=15/群)に、式(I-B)で示される化合物を32、64、96、128mg/kgで1回皮下投与した。対照マウスには、0.5%MCを1回皮下投与した。体重を1日1回モニタリングし、生存率の評価においては、感染直前の体重を基準として80%未満となった場合には死亡と見做した。
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
高週齢37-57週齢リタイヤマウスにMA-P10 3.00×10TCID50を感染させた場合、感染翌日から体重が減少し、感染4日後に一部の個体で死亡例が認められ、感染8日後に全例が死亡した。このとき式(I-B)で示される化合物 32、64、96、128mg/kg投与群では感染14日後までの生存率はそれぞれ6.7%、60%、80%、100%であり、32mg/kg以上の投与群では体重減少が抑制された(図12A、B)。なお、感染直前、つまりは投与1日後の血漿中濃度を測定したところ、それぞれ1740、2990、3110、3370μg/mLであった。
以上の結果から、高週齢37-57週齢リタイヤマウスにおいて、感染1日前に式(I-B)で示される化合物を64mg/kg以上を皮下投与し、ウイルス感染時の血漿中濃度が2990μg/mL以上で致死および体重減少抑制効果があることが示された。
上記試験結果は、式(I-B)で示される化合物の予防的な皮下投与においてウイルス感染による重症化が抑制されたことを示しており、式(I-B)で示される化合物のSARS-CoV-2による感染症の予防薬としての有用性を支持する。
試験例15:human airway epithelial cells細胞を用いたウイルス増殖抑制効果確認試験
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、MucilAirTM培養液で200倍希釈し、24ウェルプレートに分注した。
・SARS-CoV-2感染
Transwellに播種してあるMucilAirTM(Nasal cavity、約5.0×10cells/well)にSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY11-927-P1/2021、hCoV-19/Japan/TY38-873/2021(5000TCID50/well)を感染させ、COインキュベーターで2時間培養した。その後MucilAirTM培養液で洗浄し、transwellを被験試料が入ったウェルに乗せ、COインキュベーターで培養した。hCoV-19/Japan/TY11-927-P1/2021は感染2、3日後、hCoV-19/Japan/TY38-873/2021は感染1、2日後に、transwellにMucilAirTM培養液を添加し、その上清を回収した。
・上清中ウイルス力価の測定
回収した上清を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)と混合し、96ウェルプレートに播種した。COインキュベーターで4日間培養後、Cytopathic effect(CPE)を観察し、上清中に含まれるウイルス力価を算出した。
<各測定項目値の算出>
・90% SARS-CoV-2ウイルス産生阻害濃度(EC90)算出
xを化合物濃度の対数値、yをウイルス力価(Log10 TCID50/mL)とした濃度依存性曲線においてウイルスコントロールからの1 log10 reductionに相当する値をその前後の2濃度のウイルス力価から二点法で算出する。
Figure 0007236065000047
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
Figure 0007236065000048
以下に示す製剤例は例示にすぎないものであり、発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
本発明に係る化合物は、任意の従来の経路により、特に、経腸、例えば、経口で、例えば、錠剤またはカプセル剤の形態で、または非経口で、例えば注射液剤または懸濁剤の形態で、局所で、例えば、ローション剤、ゲル剤、軟膏剤またはクリーム剤の形態で、または経鼻形態または座剤形態で医薬組成物として投与することができる。少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と一緒にして、遊離形態または薬学的に許容される塩の形態の本発明の化合物を含む医薬組成物は、従来の方法で、混合、造粒またはコーティング法によって製造することができる。例えば、経口用組成物としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等および有効成分等を含有する錠剤、顆粒剤、カプセル剤とすることができる。また、注射用組成物としては、溶液剤または懸濁剤とすることができ、滅菌されていてもよく、また、保存剤、安定化剤、緩衝化剤等を含有してもよい。
本発明に係る化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼに対する阻害活性を有し、本発明に係る化合物を含有する医薬組成物は、コロナウイルス感染症の治療剤および/または予防剤として有用である。

Claims (9)

  1. 以下の式:
    Figure 0007236065000049

    示される化合物またはその製薬上許容される塩、を含有する医薬組成物。
  2. 3CLプロテアーゼ阻害剤である、請求項1記載の医薬組成物。
  3. SARS-CoV-2のウイルス増殖を阻害するために用いられる、請求項1または2記載の医薬組成物。
  4. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療剤および/または予防剤である、請求項1または2記載の医薬組成物。
  5. SARS-CoV-2による感染症の重症化抑制のために用いられる、請求項1または2記載の医薬組成物。
  6. SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、72時間以内に投与を開始するように用いられる、請求項1または2記載の医薬組成物。
  7. SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、24時間以内に投与を開始するように用いられる、請求項1または2記載の医薬組成物。
  8. SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、120時間以内に投与を開始するように用いられる、請求項1または2記載の医薬組成物。
  9. SARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制するために用いられる、請求項1または2記載の医薬組成物。
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