JP7234583B2 - 電磁波クローキング構造体 - Google Patents
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Description
例えば、下記特許文献1は、隠蔽するボリュームを構築する方法として、隠蔽可能なボリュームの周囲に、複数の隠蔽するボリューム要素を構築することを含んでいる。各隠蔽するボリューム要素は、隠蔽可能なボリュームの周囲に伝播波を導くように定めた物質パラメータを有している。隠蔽可能なボリューム空間を隠蔽するボリューム空間にマッピングする座標変換を識別し、前記隠蔽可能なボリューム空間での空間的に分布した物質パラメータ値に、対応する変換を適用する。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、電磁波クローキング構造体の小型化および広帯域化を図ることにある。
また、積層セラミックコンデンサを用いた単位セル構造は、電磁波クローキング構造体に適用可能な異方性物質パラメータを示す周波数帯が広いので、電磁波クローキング構造体の各点における異方性物質パラメータを設計するに際しての自由度を向上させる上で有利である。
また、単位セル構造の異方性物質パラメータは、積層セラミックコンデンサの内部構造(電極寸法等)の変更のみならず、積層セラミックコンデンサの配列間隔を変更することによっても変更可能なので、内部構造の異なる複数種類の積層セラミックコンデンサを用意する必要がなく、コスト面で有利である。
図1は、実施の形態にかかる電磁波クローキング構造体10の構成を示す図である。
以下、図1、図2、図9、図12、図13のように、電磁波クローキング構造体10の全体を示す図では、(r,θ,z)からなる円筒座標系でグローバル座標系を表記する。また、図3や図4のように、単位セル構造16の構成や積層セラミックコンデンサ14の構造を示す図では、(x,y,z)からなる直交座標系でローカル(局所)座標系を表記する。
電磁波クローキング構造体10は、電磁波から対象物20を隠蔽するために設けられており、電磁波クローキング構造体10内を通過する電磁波を所定の方向に導くように構成された積層セラミックコンデンサ(MLCC:multi-layer ceramic capacitor)14が対象物20の周囲に複数配置されている。
電磁波クローキング構造体10の各点における異方性物質パラメータは、それぞれの積層セラミックコンデンサ14の容量、内部電極寸法、電極間寸法および積層セラミックコンデンサ14の配列密度のうち少なくとも1つを変更することにより、傾斜的な分布となるよう構成されている。
より詳細には、対象物20は円形(より詳細には円筒形)であり、電磁波クローキング構造体10は、対象物20の中心Oに対して回転対称に配置された誘電体基板12と、誘電体基板12上に配列された複数の積層セラミックコンデンサ14と、を含んで構成されている。
詳細は後述するが、積層セラミックコンデンサ14の配置は、図1に示すような等間隔に限らず、例えば図9のように領域ごとに異なる配列密度であってもよい。
まず、積層セラミックコンデンサ14の構造について説明する。
図4に示すように、積層セラミックコンデンサ14は、内部電極1404と誘電体1406とが交互に積層された本体部1402と、外部電極1408とを備える。
積層セラミックコンデンサ14の外形寸法を長さLc、幅Wc、高さHcとすると、本実施の形態では、長さLc=1mm、幅Wc=0.5mm、高さHc=0.5mmとした。また、積層セラミックコンデンサ14の長さ方向をx軸方向、幅方向をy軸方向、高さ方向をz軸方向とする。
内部電極1404は、x軸方向に沿った長さ(長辺)lおよびy軸方向に沿った幅(短辺)wを有する矩形状を呈している。本実施の形態では、内部電極1404を2枚1組とし、高さ方向に間隔を置いて2組配置した。2枚1組の内部電極1404は、電極間隔gで配置され、平行平板コンデンサを形成している。
外部電極1408は、幅方向および高さ方向に沿った面(y-z平面)に沿って平面状に形成され、一方が正極、他方が負極となっている。正極側の外部電極1408は正極側の内部電極1404と接続し、負極側の外部電極1408は負極側の内部電極1404と接続している。
内部電極1404および外部電極1408は、それぞれ銅で形成した。
本体部1402を構成する誘電体1406の比誘電率εmとする。実施の形態では、誘電体1406の比誘電率εm=25とした。
積層セラミックコンデンサ14を用いるメリットとして、単位セルが小さいので狭小な対象にも装荷可能な点が挙げられる。また、汎用部品であることから、入手が容易かつ安価である点が挙げられる。
単位セル構造16は、誘電体基板12上に1つの積層セラミックコンデンサ14を配置したものである。より詳細には、複数の積層セラミックコンデンサ14を配置した誘電体基板12を、隣り合う積層セラミックコンデンサ14の位置の中点でx軸方向およびy軸方向にそれぞれ沿って分割したものである。
すなわち、単位セル構造16の長さaは、積層セラミックコンデンサ14の長さ方向(x軸方向)の配列間隔、幅bは積層セラミックコンデンサ14の幅方向(y軸方向)の配列間隔と等しい。
また、単位セル構造16の高さcは、誘電体基板12の厚さdと積層セラミックコンデンサ14の高さHcとの和以上となる。本実施の形態では、誘電体基板12の厚さdを0.585mm、単位セル構造16の高さcを5/3mm(≒1.67mm)とした。また、誘電体基板12の比誘電率εb=3.7とした。
また、y方向の偏波に対して動作するためには、図11に示すように積層された単位セル構造16を、z方向に平行に配置すれば良い。具体的には、図11に示す単位セル構造16を、図12または図13のように配置することで、y方向の偏波に対するクローキング構造として動作する。
図3に示す単位セル構造16において、入射電界をz成分とし、±x方向にポートを設定したときのSパラメータから、実効誘電率および実効透磁率を求めることができる。
より詳細には、図5は、単位セル構造16の長さaおよび幅b(すなわち積層セラミックコンデンサ14のx軸方向およびy軸方向の配列間隔(周期長))=1.5mm、積層セラミックコンデンサ14の内部電極1404の電極間隔g=0.05mmを固定し、内部電極1404の長さlを0.7mmから0.8mmまで0.05mm刻みで変化させた場合の実効透磁率特性を示す。
実効透磁率の共振周波数は、l=0.7mmで約9.1GHz、l=0.75mmで約8.3GHz、l=0.8mmで約7.7GHzとなっており、内部電極1404の長さlを長くすると、共振周波数が低域にシフトすることが分かる。
より詳細には、図6は、単位セル構造16の長さaおよび幅b=1.5mm、積層セラミックコンデンサ14の内部電極1404の長さl=0.8mmを固定し、内部電極1404の電極間隔gを0.03mmから0.05mmまで0.01mm刻みで変化させた場合の実効透磁率特性を示す。
実効透磁率の共振周波数は、g=0.05mmで約7.7GHz、g=0.04mmで約6.9GHz、g=0.03mmで約6.0GHzとなっており、電極間隔gを小さくすると、共振周波数が低域にシフトすることが分かる。
従来技術にかかる単位セル構造160は、回路ボード164上にスプリットリング共振器(SRR)162が配置されている。上記非特許文献1に示されているように、図14の構造では、パラメータrおよびsにより共振周波数を調整することができる。
図15に、従来技術にかかる単位セル構造160でパラメータrおよびsを変化させた場合の実効透磁率特性を示す。
なお、図14に示すように、単位セル構造160の長さ(x軸方向)は10/3mm、幅(y軸方向)は10/πmm、高さ(z軸方向)は10/3mmとした。
r=0.260、s=1.654の場合、実効透磁率の共振周波数は約7.8GHz、r=0.245、s=1.718の場合、実効透磁率の共振周波数は約7.6GHz、r=0.208、s=1.825の場合、実効透磁率の共振周波数は約7.5GHzとなっている。すなわち、共振周波数は7.5GHzから7.8GHz付近になることがわかる。
これは、図5および図6に示した本発明にかかる単位セル構造16の特性のうち、a,b=1.5mm、l=0.8mm、g=0.05mmの場合の共振周波数約7.7GHzを含んでいる。
よって、本発明にかかる単位セル構造16の体積は、従来技術にかかる単位セル構造160の体積の約11%に小型化されている。
図5および図6に示す本発明にかかる単位セル構造16の特性では、広範囲の周波数帯に渡って実効透磁率0以上1未満となっているのに対して、図17に示す従来技術にかかる単位セル構造160の特性では、実効透磁率0以上1未満となっているのはごく限られた周波数帯である。
このように、本発明にかかる単位セル構造16は、有効な実効透磁率(0以上1未満)を得られる周波数帯を広帯域化することができる。
図7は、単位セル構造16の長さaおよび幅bを変化させた場合の特性変化を示すグラフである。
より詳細には、図7は、積層セラミックコンデンサ14の内部電極1404の長さl=0.8mm、電極間隔g=0.05mmを固定し、単位セル構造16の長さaおよび幅bを、1.1mmから1.5mmまで0.2mm刻みで変化させた場合の実効透磁率特性を示す。
実効透磁率の共振周波数は、a,b=1.5mmで約7.7GHz、a,b=1.3mmで約7.6GHz、a,b=1.1mmで約7.5GHzとなっており、単位セル構造16の長さaおよび幅bを短くすると、共振周波数が低域にシフトすることが分かる。また、単位セル構造16の長さaおよび幅bを短くすることで、実効透磁率が負となる帯域が広帯域化できることが分かる。
ある周波数を基準とすると、単位セル構造16の長さaおよび幅bを変化させることにより、実効透磁率の値を細かく調整できることが分かる。
ここで、電磁波クローキング構造体10において、クローキングに必要な実効透磁率の値は、対象物に近い(内側)ほど0に近く、対象物から遠くなる(外側)になるにつれて大きな値(1に近い値)となる。
図5、図6で示したように、積層セラミックコンデンサ14の内部電極1404の長さlや電極間隔gを調整することで、所望の実効透磁率を得ることも可能である。しかし、この方法では、内部構造が異なる複数種類の積層セラミックコンデンサ14を用意する必要がある。
一方、図7および図8から、単位セル構造16の長さaおよび幅b、すなわち積層セラミックコンデンサ14の周期長(配列間隔)を調整することでも、所望の実効透磁率を得ることができる。よって、例えば図9に示すように、積層セラミックコンデンサ14の配置密度を内側ほど高密度にすれば、1種類の積層セラミックコンデンサ14でクローキングを実現することができる。
なお、本実施の形態では、異方性物質パラメータとして透磁率を例にして説明したが、誘電率および屈折率についても同様に、積層セラミックコンデンサ14の各部の寸法や配列間隔を変更することにより任意の分布を得ることができる。また、積層セラミックコンデンサ14の容量は、積層セラミックコンデンサ14の各部の寸法に基づいて決まるため、積層セラミックコンデンサ14の容量を基準として、電磁波クローキング構造体10の各点(単位セル構造16)における異方性物質パラメータを求めることもできる。
また、積層セラミックコンデンサ14は、汎用部品であることから、安価かつ容易に入手することができ、人的コストや金銭的コストを低減することができる。
また、積層セラミックコンデンサ14を用いた単位セル構造16は、電磁波クローキング構造体10に適用可能な異方性物質パラメータを示す周波数帯が広いので、電磁波クローキング構造体10の各点における異方性物質パラメータを設計するに際しての自由度を向上させる上で有利である。
また、単位セル構造16の異方性物質パラメータは、積層セラミックコンデンサ14の内部構造(電極寸法等)の変更のみならず、積層セラミックコンデンサ14の配列間隔を変更することによっても変更可能なので、内部構造の異なる複数種類の積層セラミックコンデンサ14を用意する必要がなく、コスト面で有利である。
12 誘電体基板
14 積層セラミックコンデンサ
1402 本体部
1404 内部電極
1406 誘電体
1408 外部電極
16 単位セル構造
18 ランドパターン
20 対象物
Claims (5)
- 電磁波から対象物を隠蔽するための電磁波クローキング構造体であって、
前記電磁波を所定の方向に導くように構成された積層セラミックコンデンサが前記対象物の周囲に複数配置されており、
前記積層セラミックコンデンサは、メタマテリアルとして機能し、
前記電磁波クローキング構造体の各点における異方性物質パラメータは、前記電磁波クローキング構造体内を通過する電磁波が前記対象物を迂回し、かつ前記電磁波クローキング構造体通過後の電磁波の軌道が前記電磁波クローキング構造体通過前の電磁波の軌道の延長線上となるように設定され、
前記対象物は円筒形であり、
前記電磁波クローキング構造体は、
前記対象物の中心に対して回転対称に配置された同形状を有する複数の誘電体基板と、
前記各誘電体基板上に配列された複数の前記積層セラミックコンデンサと、
を含み、
前記複数の誘電体基板上の複数の積層セラミックコンデンサが前記対象物の周方向および軸心方向に所定間隔で配置されている、
ことを特徴とする電磁波クローキング構造体。 - 前記異方性物質パラメータは、屈折率、誘電率および透磁率のうち少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1記載の電磁波クローキング構造体。 - 前記電磁波クローキング構造体の各点における異方性物質パラメータは、それぞれの前記積層セラミックコンデンサの容量、内部電極寸法、内部電極間寸法および前記積層セラミックコンデンサの配列間隔のうち少なくとも1つを変更することにより傾斜的に分布している、
ことを特徴とする請求項1または2記載の電磁波クローキング構造体。 - 前記各誘電体基板は前記対象物と同心円状の環状形状を有し、前記複数の誘電体基板が前記対象物の軸心方向に所定間隔で配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の電磁波クローキング構造体。
- 前記各誘電体基板は長方形状を有し、その短辺が前記対象物の軸心方向、長辺が半径方向に沿うように配置され、前記複数の誘電体基板が周方向に所定間隔で前記対象物の中心を起点として放射状に配置されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の電磁波クローキング構造体。
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グェン タインビン、道下 尚文、森下 久、宮崎 輝規、田所 眞人,積層セラミックコンデンサを用いた円筒クローキング ,電子情報通信学会2018年通信ソサイエティ大会講演論文集1 PROCEEDINGS OF THE 2018 IEICE COMMUNICATIONS SOCIETY CONFERENCE,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2018年09月12日,p.50 |
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