JP7232391B2 - 金属部材の肉盛り方法および金属部材 - Google Patents

金属部材の肉盛り方法および金属部材 Download PDF

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Description

本発明は、表層に硬化層を有する金属部材の肉盛り方法および金属部材に関する。
従来、急激な加熱と冷却とが繰り返される過酷な環境で使用される金型は、加熱・冷却による膨張と圧縮により、熱サイクルに起因した低サイクル疲労現象による損傷を受ける。特に、金型表面に亀甲状あるいは直線状の細かいひび割れといった、熱疲労によるき裂が生じる。き裂は一旦生じると、金型内部に伝播して大割れを招いたり、金型が摩耗し易くなるなどの問題に発展する。このため、き裂が生じやすい箇所やき裂が生じた箇所に、表面硬化処理による硬化層の形成や肉盛りを施す必要があった。
従来、表面硬化処理の一つに窒化層を形成する方法がある。特許文献1では、窒化層にレーザービームを照射し、窒化層を改質させることにより、窒化層の耐摩耗性や耐溶損性を向上させる表面改質方法が開示されている。また、特許文献2には、き裂が生じた金型を補修する方法として、き裂が生じた箇所にレーザービームを照射することで、き裂を溶着させ、同時に急冷により硬化する工程を経て、き裂を改質させる金型補修方法が開示されている。
特開平5-9558号公報 特開2016-74035号公報
しかしながら、硬化層を有する金型に肉盛り溶接を施す場合、肉盛り箇所の近傍にある硬化層は、肉盛り時の熱影響を受けるため、例えば、硬化層が窒化層であるとき、熱影響を受けた窒化層からガス成分が生じて、肉盛部内に空孔や巣などの欠陥を多く内包してしまう。このように多くの欠陥を内包した肉盛部は、所望の耐摩耗性や耐溶損性を発揮しにくいだけでなく、金型の強度不足や金型表面の平滑性をも損なう。特許文献1あるいは特許文献2は、専ら、既存の窒化層の改質や生じてしまったき裂の改質を目的とするものであり、肉盛り溶接する際に窒化層等に生じる欠陥について考慮されたものではなかった。
そこで本発明では、硬化層を有する、金型等の金属部材に肉盛り溶接を施す際に、硬化層から生じるガス成分に起因する空孔や巣を抑制できる金属部材の肉盛り方法を提供する。また、肉盛りにおける、空孔や巣などの欠陥が生じるのを抑制可能な金属部材を提供する。
本発明は、合金母材と、前記合金母材の表面に設けられた硬化層とを有する金属部材に対して肉盛部を形成する肉盛り方法であって、前記肉盛部を形成する前に、前記肉盛部を形成しようとする位置で、前記硬化層の一部を熱源によって溶融、凝固させる第1の工程と、前記第1の工程で溶融、凝固された領域の一部を除去する第2の工程と、前記第2の工程で除去された領域に肉盛りをする第3の工程と、を有することを特徴とする金属部材の肉盛り方法である。
また、前記肉盛り方法において前記熱源は、8.8J/mm以上のエネルギー密度を有していることが好ましい。
また、前記肉盛り方法において、前記第1の工程において、前記合金母材および前記硬化層が前記熱源により溶融、凝固された溶融凝固部と、前記合金母材が前記熱源により熱影響を受けた熱影響部と、前記硬化層が前記熱源により熱影響を受けた改質硬化層と、を有する改質組織を形成させることが好ましい。
また、前記肉盛り方法において、前記第2の工程で除去された領域および前記第3の工程で肉盛された領域は、前記溶融凝固部の外縁よりも内側に位置し、前記改質硬化層に干渉しないことが好ましい。
また、前記肉盛り方法において、前記第1の工程において、前記熱源を同位置に2回以上走査することが好ましい。
本発明の金属部材は、合金母材と、前記合金母材の表面に設けられた硬化層とを有する金属部材であって、前記合金母材の表面の一部に溶融凝固部と、前記溶融凝固部に隣接している部分に改質硬化層と、前記溶融凝固部と前記合金母材との間に熱影響部と、を有することを特徴とする金属部材である。
また、前記金属部材において、前記溶融凝固部と前記熱影響部と前記改質硬化層とに存在する内部欠陥の面積率が、0.38%以下であることが好ましい。
また、前記金属部材は、前記溶融凝固部の表面に、前記合金母材と同種または異種の合金からなる肉盛部と、を備えることが好ましい。
本発明によれば、硬化層を有する、金型等の金属部材に肉盛り溶接を施す際に、硬化層から生じるガス成分に起因する空孔や巣を抑制できる金属部材の肉盛り方法を提供できる。また、肉盛りにおける、空孔や巣などの欠陥が生じるのを抑制可能な金属部材を提供できる。
本発明の実施形態における、金属部材への肉盛り方法の工程を示す図である。 本発明の実施形態における、金属部材の断面を示す模式図である。 本発明の実施形態における、溶融・凝固後の金属部材の断面をエッチング処理した後に撮影した写真である。 実施例における、溶融・凝固後の金属部材の外観および断面の写真である。 比較例における、溶融・凝固後の金属部材の外観の写真である。 実施例における、複数回溶融・凝固した後の金属部材の外観および断面の写真である。 実施例における、複数回溶融・凝固した後の金属部材中の内部欠陥の面積率(内部内部欠陥面積率)の推移を示すグラフである。 実施例における、溶融・凝固させた金属部材に開先加工および肉盛りを施した後の任意の一断面の写真である。 実施例における、複数回溶融・凝固後させた金属部材に開先加工および肉盛りを施した後の任意の一断面の写真である。 溶融・凝固させなかった金属部材に開先加工および肉盛りを施した後の任意の一断面の写真である。
本発明に係る金属部材の肉盛り方法の実施形態は、合金母材と、合金母材の表面に設けられた硬化層とを有する金属部材に対して、硬化層の一部を熱源によって溶融、凝固させる第1の工程と、第1の工程で溶融、凝固された領域の一部を除去する第2の工程と、第2の工程で除去された領域に肉盛りをする第3の工程と、を有することを特徴の一つとする金属部材の肉盛り方法である。
このようにすることで、硬化層を有する金属部材に肉盛り溶接を施す際に、あらかじめ硬化層から生じるガス成分を除去することができ、ガス成分に起因する空孔や巣が生じることを抑制できる。
以下に、本発明に係る金属部材の肉盛り方法および金属部材の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。
まず、金属部材の肉盛り方法の実施形態について、図1および図3を用いて詳細に説明し、その次に、金属部材の実施形態について、図2および図3を用いて詳細に説明する。
図1は、金属部材1の肉盛り方法の工程の実施形態を示す図である。(a)は、金属部材1を示す模式図である。(b)は、金属部材1に熱源30を照射する工程を示す模式図である。(c)は、熱源30の照射によって、金属部材1の表層に改質硬化層40、溶融凝固部50を形成し、硬化層20中から欠陥70となるガス成分に起因する気泡を除去する工程を示す模式図である。(d)は、金属部材1の表層から気泡を除去し、凝固した後の模式図である。(e)は、溶融凝固部50の一部を除去する開先加工を行う工程を示す模式図である。図1(f)は、開先加工した領域(開先加工部80)に肉盛りする工程を示す模式図である。図3は、溶融・凝固後の金属部材の断面をエッチング後の写真である。(a)は、金属部材1について、熱源30を照射後、溶融凝固した後の、表面に垂直な方向に沿った任意の一断面をエッチング処理した後に撮影した写真である。(b)は、(a)写真中の左白色枠で示した部分を拡大して撮影した写真である。
[金属部材]
本実施形態の金属部材1は、図1(a)に示すように、合金母材10と、合金母材10の表面に設けられた硬化層20とを有している。
合金母材10としては、例えば、ダイカスト等に使用される熱間金型用合金工具鋼、プレス成形に使用される冷間金型用合金工具鋼、切削等に使用される高速度工具鋼、プラスチック成形に用いられるプラスチック金型用鋼などを用いることができる。具体的には、鋼種としてSKD61、SKH51、SCM440などが挙げられる。
硬化層20は合金母材10よりも高硬度の層であり、硬化層20としては、窒化処理による窒素拡散層および窒素化合物層、炭化物被覆処理による炭素拡散層および炭化物皮膜層などが挙げられる。例として、窒化処理としては、プラズマ窒化、ガス窒化、ガス軟窒化、浸硫窒化処理などがある。また炭化物被覆処理の一例としては、熔融塩法、化学蒸着法およびイオンプレーティング法などがある。
(第1の工程)
図1(b)および(c)に示すように、第1の工程は、肉盛部90を形成する前に、肉盛部90を形成しようとする位置で、硬化層20の一部を熱源30によって溶融、凝固させる工程である。
このとき、熱源30のエネルギー密度は、好ましくは8.8J/mm以上であり、より好ましくは10J/mm以上である。エネルギー密度を8.8J/mm以上とすることで、硬化層20を溶融した際、硬化層20内でガス成分により、欠陥70となるガス成分に起因する気泡が発生しても、溶融池(溶融箇所)が凝固する前に、硬化層20中からそれら気泡を除去できるため、溶融凝固後の金属部材1中に残留した気泡によって形成された空孔71や巣などの欠陥を内在(内包)しにくくできる。
また、第1の工程では、合金母材10および硬化層20が、熱源30により溶融、凝固された溶融凝固部50と、合金母材10が熱源30により熱影響を受けた熱影響部60と、硬化層20が熱源30により熱影響を受けて改質した改質硬化層40とを有する改質組織を形成する工程とを有していることが好ましい。改質硬化層40とは、第1の工程にて、上述した所定のエネルギー密度以上を有する熱源30により、溶融・凝固されて形成された溶融凝固部50の周囲に形成された硬化層20、すなわち、熱源30の照射によって熱影響を受けて改質した硬化層20である。本明細書でいう改質硬化層40とは、硬化層20に比べて、N、C、O、Sのいずれかの濃度が低く、硬さが低い領域のことをいう。
溶融させるための熱源30としては、レーザービームや電子ビーム、アーク溶接などがある。レーザービームとしては、CO,CO,YAG等のレーザーを用いることができる。
[エネルギー密度]
合金母材10の表層を溶融・凝固させるため必要なエネルギー密度は、ワーク、すなわち金属部材1の移動速度やレーザービームなどの熱源30の走査速度、熱源30の幅等に応じて変化するが、金属部材1表面を溶融、凝固でき、かつ割れが生じにくい範囲に設定することが好ましい。ここで、エネルギー密度は、熱源30の出力を、熱源30の照射面積とワークに対する熱源30の走査速度で割ったときの値をエネルギー密度とする。具体的には、例えば、熱源30をレーザービームとしたとき、エネルギー密度をE(J/mm)、レーザービーム出力を出力P(W)、レーザービームの口径(スポット径)面積を照射面積S(mm)、レーザービームの走査速度を走査速度V(mm/sec)とすれば、算出式は、E(J/mm)=P/S・Vとできる。
エネルギー密度の上限は特に限定せず、ワークの種類や硬化層20の厚み等を考慮して適宜定めれば良いが、高いエネルギー密度を有する熱源30を金属部材1表面に照射したとき、照射された箇所が局所的に高温になり、その個所とそれ以外の箇所(照射箇所の周囲)とで著しい温度差が生じた場合、熱膨張と熱収縮とによって、金属部材1表層に、き裂、例えば、終端割れが生じやすくなる可能性がある。したがって、著しい温度差が生じないように、エネルギー密度は、50J/mm以下が好ましく、より好ましくは30J/mm以下、またさらに好ましくは26J/mm以下である。
上述のエネルギー密度の範囲に加えて、熱源30の出力を1000~2400Wの範囲とし、走査速度を500~2000mm/minの範囲とし、かつ単一(一回)走査した場合の、設定した熱源30の口径に対する金属部材1に形成した溶融凝固部50の幅の割合、すなわち、設定した熱源30の口径に対する金属部材1の表層、または内部に形成した溶融凝固部50の幅の割合(以下、熱源口径比)が、好ましくは44%以上であり、より好ましくは52%以上であり、さらに好ましくは75%以上である。熱源口径比の上限は特に制限しないが、上述のエネルギー密度の範囲であればよく、120%以下であると好ましく、116%未満であるとより好ましい。
[溶融凝固部と熱影響部]
本実施形態でいう溶融凝固部50と熱影響部60は、所定のエネルギー密度を有する熱源30が照射された金属部材1の断面を観察することで判別できる。
具体的には、図3に示すように、例えば、その金属部材1の任意断面を、鏡面研磨した後、ナイタール(濃硝酸をアルコールで希釈したもの)によってエッチング(腐食処理)を施した断面を観察すればよく、その断面を観察したとき、もっとも明るい領域を溶融凝固部50、もっとも暗い領域を合金母材10、溶融凝固部50よりも暗く、合金母材10よりも明るい領域を熱影響部60と判別することができる。また、組織形態も相互に相違するため、これらの判別に用いることができる。これは、溶融凝固部50と熱影響部60とが、合金母材10に比べて腐食しにくいという特徴を有するためであり、図3に示すように判別できる。
断面の観察方法としては、例えば、光学顕微鏡を用いて、所定の倍率、例えば、200倍の視野で断面を観察すればよい。
凝固する冷却条件としては、溶融した合金母材10の表層を凝固するための冷却速度は、速すぎると、溶融箇所(溶融池)と、その溶融箇所の周辺とで、膨張収縮差が大きくなり、割れが生じやすくなる。そのため、徐冷や空冷などが好ましい。
(第2の工程)
図1(d)に示すように、第2の工程の実施形態としては、上述の第1の工程で溶融、凝固された領域(溶融凝固部50)の一部を除去する工程である。除去方法としては、例えば、フライス盤やエンドミルを用いた切削加工によって除去する方法が挙げられる。なお、除去する工程は、開先加工と言い換えることができ、溶融、凝固された領域の一部を除去するが、その除去する領域を、開先加工部80と言い換えることもできる。肉盛りを行う開先加工部80に隣接して溶融凝固部50が存在することで、肉盛部周辺における欠陥を抑制することができる。
また、第2の工程で除去された領域(開先加工部80)および第3の工程で肉盛された領域(肉盛部90)は、第1の工程で溶融、凝固された領域(溶融凝固部50)の外縁よりも内側に位置していること、すなわち第2の工程で除去された領域を囲むように、溶融、凝固された領域に存在することが好ましい。係る形態の溶融凝固部50の存在により、第2の工程で除去された領域および第3の工程で肉盛された領域が上述の改質硬化層40に干渉しないため、欠陥の発生をより効果的に抑制することができる。
(第3の工程)
図1(f)に示すように、第3の工程の実施形態としては、上述の第2の工程で除去された領域(開先加工箇所80)に肉盛りを行う工程である。肉盛り方法としては、例えば、指向性エネルギー堆積法を用いることができる。指向性エネルギー堆積法とは、粉末やフィラメントの金属をレーザー光,電子ビーム,プラズマアークなどの指向エネルギービームで溶融し、積層する方法であり、LMD(Laser Metal Deposition)方式、DED(Directed Energy Deposition)と呼ばれる。肉盛り材料としては、例えば、合金母材10と同種の金属あるいは合金母材10とは異なる金属を用いることができる。具体的には、SKD61、SKH51、SCM440、Ti基合金、Ni基合金などが挙げられる。
<金属部材>
図2および図3を用いて、金属部材の実施形態である、金属部材100について詳細に説明する。図2に示すように、金属部材100は、合金母材10と、合金母材10の表面に設けられた硬化層20とを有する金属部材であって、合金母材10の表面の一部に、溶融凝固部50と、溶融凝固部50に隣接している部分に、改質硬化層40と、前記溶融凝固部と前記合金母材との間に熱影響部と、を有することを特徴の一つとする金属部材である。
上記構成を有していることで、肉盛りにおける、硬化層20から生じるガス成分に起因する空孔や巣などの欠陥が生じるのを抑制可能な金属部材100を提供できる。
[肉盛部]
また、合金母材10の表面の一部に肉盛部90を有していても良い。肉盛部90は、溶融および凝固された溶融凝固部50と熱影響部60と、その溶融凝固部50の一部を除去し、その除去した箇所に、合金母材10と同種もしくは異種の合金を新たに肉盛りした箇所を指す。また、肉盛部90を肉盛りする場合には、改質硬化層40に囲まれた箇所に、肉盛部90を肉盛りすることが好ましい。このようにすることで、金属部材100をさらに肉盛りする場合でも、金属部材100の硬化層20に肉盛りする際の熱影響が及んでも、硬化層20中に気孔などの欠陥が発生することを抑制することができる。
[内部欠陥]
本実施形態の金属部材100は、金属部材100表層の欠陥数が少ない、もしくは欠陥が占める割合が低い。具体的には、例えば、表面に垂直な方向な断面において、溶融凝固部50中と熱影響部60中と改質硬化層40中とに形成されている欠陥70が占める総和面積(内部欠陥総和面積)を、溶融凝固部50と熱影響部60と改質硬化層40との総和の断面積(総和断面積)で割った値である内部欠陥の面積率(以下、内部欠陥面積率)を用いて評価できる。金属部材100における内部欠陥面積率としては、0.38%以下であることが好ましく、より好ましくは0.24%以下であり、さらに好ましくは0.23%以下である。
ここで、図3に、金属部材に熱源を照射した際に形成された、溶融凝固部50と熱影響部60との形態を示す。図3に示すように、溶融凝固部50と熱影響部60は、半楕円形状として観察することできる。例えば、図3にて内部欠陥率の算出をする場合には、溶融凝固部50と熱影響部60と改質硬化層40との総和の断面積を総和断面とし、金属部材の任意断面をマイクロスコープや光学顕微鏡などを用いて観察領域を複数に分けて撮影し、撮影したそれら観察領域を二値化処理し、欠陥を抽出し、その抽出された面積の総和を内部欠陥総和面積とすればよい。
本実施形態でいう、欠陥70は、金属部材100の表面もしくは内部に生じる、空孔71、粒界割れ72などを意味する。具体的には、空孔71とは、溶融凝固部50と溶融凝固部50近傍の熱影響部60中と改質硬化層40中とに形成される欠陥であり、直径1μm~50μm程度の球状の空間および細長い空間であり、その空間を形成する内壁部が、ディンプル状の凹凸を有しているものをいう。また、空孔71は、溶融凝固部50の表面に放出されたとき、穴となって固まった欠陥は開口欠陥となる。
次に、粒界割れ72は、熱影響部60近傍および改質硬化層40近傍の溶融凝固部50に形成される欠陥であり、幅1~5μm程度の結晶粒界状の空間として認識できる。
図示しないが、上述の内部欠陥に加えて、金属部材100の内部から外表面に掛けて生じる終端割れなどもある。終端割れは、硬化層20と熱影響部60との境界に形成される欠陥であり、溶融凝固部50が膨張や収縮することによって硬化層20に引張応力が加わることで発生する欠陥である。例えば、表面に垂直な方向に沿った縦状のき裂が、硬化層20を分断し、硬化層20表面まで進展しているものとして観察することができる。
[欠陥の検査方法]
欠陥の有無を検査する方法としては、放射線透過試験(JIS Z3104)や超音波探傷試験(JIS Z3060)による非破壊検査方法を用いることできる。また、金属部材1または金属部材100の積層方向に沿った断面を、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察することで確認できる。また、開口欠陥や終端割れは、表面に液剤を吹き付けて、表面の割れやヒビを観察しやすくする、カラーチェックなどを用いた外観検査で確認できる。
以下、本発明に関連して行った実施例について説明する。本実施例では、母材としてSKD61を用いて、プラズマ窒化処理にて、該母材の表層に厚み100μmの窒化層を形成したベースプレートを用意した。熱源には、DMG MORI社製加工機のLASERTEC65のレーザービームを用いた。レーザービームの口径(直径)は3.0mmとした。レーザービームの照射条件は、レーザービーム出力(W):1000~2400、走査速度(mm/min):500、1000、2000、照射回数(回):1~5、とした。レーザービームの走査距離は、いずれの照射条件においても20mmとなるよう設定した。
レーザー照射部分表面の外観観察には、キーエンス社製のデジタルマイクロスコープ(VHX-6000)を用いた。また、レーザー照射部分の断面観察には、オリンパス社製の測定顕微鏡(STM7-BSW)、およびキーエンス社製のデジタルマイクロスコープを用いた。ここで、レーザー照射部分の断面とは、レーザーの照射開始点から10mmだけレーザービームを走査した位置であり、その位置の断面、すなわちレーザーの走査方向に対して垂直に切り出した断面である。
表1に、レーザーの照射回数を1回とした場合の、各照射条件におけるエネルギー密度、熱源口径比、および内部欠陥の断面積率をそれぞれ示す。また、表2に、レーザーの照射回数を2~5回とした場合の、各照射条件における内部欠陥面積率をそれぞれ示す。
溶融凝固部および熱影響部については、図3のように、鏡面研磨後にナイタールによるエッチングを施したレーザー照射部分の断面において、合金母材に対して明るい領域を溶融凝固部および熱影響部とした。内部欠陥については、鏡面研磨されたレーザー照射部分の断面において、溶融凝固部中と熱影響部中と改質硬化層中に存在する黒い領域を内部欠陥とした。内部欠陥の断面積は、キーエンス社製のデジタルマイクロスコープを用い、1000倍の視野で内部欠陥を複数枚撮影し、撮影した写真中の内部欠陥を二値化処理して計測した。複数回照射した条件における熱源口径比および内部欠陥面積率についても、各照射条件で1回照射したときと同様にして測定した。1回照射したときの結果を表1、複数回照射したときの結果を表2に示す。
表1に示すように、エネルギー密度を高くした場合(実施例1~9)において、内部欠陥面積率を0.38%以下にすることができ、金属部材内部の欠陥を抑制できることを確認した。また、表2に示すように、複数回照射した条件(実施例10~15)では、内部欠陥面積率を0.24%以下にすることができ、金属部材内部の欠陥をより一層抑制できることを確認した。一方、エネルギー密度が低い条件(比較例1および2)では、金属部材を溶融凝固することができかった。また、例えば、実施例5の条件であれば内部欠陥面積率を0.11以下にでき、さらに実施例2の条件であれば内部欠陥面積率を0.08以下にできるなど、欠陥の発生が顕著に抑制されることも確認した。なお、内部欠陥面積は、小数点第3桁以下を四捨五入した値である。
Figure 0007232391000001
Figure 0007232391000002
図4に、実施例8の照射条件(エネルギー密度:20.4J/mm、レーザー出力:1200W、走査速度:500mm/min、照射回数:1回)で照射した後の金属部材の表面外観写真(図4(a))、および任意の一断面の断面写真(図4(b))を示す。図4(a)および(b)に示すように、金属部材から欠陥70(空孔71、粒界割れ72)を十分追い出すだけのエネルギー密度を有しているため、内部欠陥面積率を低減できたことに加えて、終端割れも抑制できた。
比較例1の照射条件(エネルギー密度:4.2J/mm、レーザー出力:1000W、走査速度:2000mm/min、照射回数:1)で照射した後の金属部材について、図5に表面外観写真を示す。図5に示すように、比較例1の場合では、エネルギー密度が低いために、金属部材の表層を溶融できなかった。
次に、実施例6、実施例12、実施例13の照射条件(エネルギー密度:17.0J/mm、レーザー出力:1000W、走査速度:500mm/min、照射回数:1回、2回、5回)で照射した後の金属部材について、図6(a)、(b)、(c)に表面外観写真、図6(d)、(e)、(f)に任意の一断面の断面写真を示す。また、図7に、それら照射条件(実施例6、12、13)について、内部欠陥面積率の推移を示す。図6および図7に示すように、走査を同位置に2回以上実施することで、内部欠陥面積率をより一層低減できた。また、任意の一断面を観察したが、空孔だけでなく、粒界割れも抑制できた。
一方、比較例2は、比較例1と同様に、1回当たりに照射するエネルギー密度が低いため、複数回照射しても金属部材の表層を溶融させることができなかった。
なお、エネルギー密度が、27.2J/mm(出力:1600W、走査速度:500mm/min、照射回数:1回)のレーザービームを金属部材に照射した場合や、40.8J/mm(出力:2400W、走査速度:500mm/min、照射回数:1回)のレーザービームを金属部材に照射した場合においては、照射後の金属部材の表層のうち、改質硬化層と硬化層との境界に、硬化層を分断し硬化層表面まで進展している線状空間、すなわち、終端割れのような割れが生じる傾向が見られたが、エネルギー密度が十分に高いことから、金属部材内部には、空孔などの欠陥はほとんど確認されなかった。
図8に、実施例8の照射条件(エネルギー密度:20.4J/mm、レーザー出力:1200W、走査速度:500mm/min、照射回数:1回)で照射後、溶融凝固部の領域内側に開先加工(工具:ラジアスエンドミルΦ6×R0.5)を施し、開先加工した箇所(表面)にYAG285(マルエージング鋼)を肉盛り(レーザー出力:1800W、走査速度:1000mm/min、ビード間隔:1.5 mm、積層ピッチ:0.96mm)した金属部材の任意の一断面写真(図8(a))、およびその一断面の拡大写真((図8(b))を示す。図8(a)および図8(b)の観察結果から、硬化層から生じるガス成分に起因する空孔や巣が抑制され、改質硬化層や熱影響部に欠陥が無いことを確認した。また、肉盛部もガス成分の抜けた溶融凝固部の上に形成されたために、ガス成分に起因する欠陥の影響を受けていないことが確認できた。
また、図9に、実施例13の照射条件(エネルギー密度:、レーザー出力:1000W、走査速度:500mm/min、照射回数:5回)で照射後、開先加工した箇所(表面)にYAG285(マルエージング鋼)を肉盛り(レーザー出力:1800W、走査速度:1000mm/min、ビード間隔:1.5mm、積層ピッチ:0.96mm)した金属部材の任意の一断面写真(図9(a))、およびその一断面の拡大写真(図9(b))を示す。図9(a)および図9(b)に示すように、硬化層から生じるガス成分に起因する空孔や巣が抑制され、改質硬化層や熱影響部に欠陥が無いことを確認した。また、肉盛部もガス成分の抜けた溶融凝固部の上に形成されたために、ガス成分に起因する欠陥の影響を受けていないことが確認できた。
また図10に、硬化層の領域内側に開先加工(工具:ラジアスエンドミルΦ6×R0.5)を施し、開先加工した箇所(表面)にYAG285(マルエージング鋼)を肉盛り(レーザー出力:1800W、走査速度:1000mm/min、ビード間隔:1.5 mm、積層ピッチ:0.96mm)した金属部材の任意の一断面写真(図10(a))、およびその一断面の拡大写真((図10(b))を示す。図10(a)および図10(b)の観察結果から、肉盛部形成時に硬化層から生じるガス成分に起因した空孔や巣が肉盛部と熱影響部と改質硬化層とに残存していることを確認した。
1:金属部材
10:合金母材
20:硬化層
30:熱源
40:改質硬化層
50:溶融凝固部
60:熱影響部
70:欠陥
71:空孔
72:粒界割れ
80:開先加工部
90:肉盛部
100:金属部材
800:金属部材
810:合金母材
820:硬化層
840:改質硬化層
850:溶融凝固部
860:熱影響部
890:肉盛部
900:金属部材
910:合金母材
920:硬化層
940:改質硬化層
950:溶融凝固部
960:熱影響部
990:肉盛部
1000:金属部材
1010:合金母材
1020:硬化層
1021:硬化層
1070:欠陥
1080:熱影響部
1090:肉盛部

Claims (8)

  1. 合金母材と、前記合金母材の表面に設けられた硬化層とを有する金属部材に対して肉盛部を形成する肉盛り方法であって、
    前記肉盛部を形成する前に、前記肉盛部を形成しようとする位置で、前記硬化層の一部を熱源によって溶融、凝固させる第1の工程と、
    前記第1の工程で溶融、凝固された領域の一部を除去する第2の工程と、
    前記第2の工程で除去された領域に肉盛りをする第3の工程と、を有する
    ことを特徴とする金属部材の肉盛り方法。
  2. 前記熱源は、8.8J/mm以上のエネルギー密度を有している
    ことを特徴とする請求項1に記載の金属部材の肉盛り方法。
  3. 前記第1の工程において、前記合金母材および前記硬化層が前記熱源により溶融、凝固された溶融凝固部と、前記合金母材が前記熱源により熱影響を受けた熱影響部と、前記硬化層が前記熱源により熱影響を受けた改質硬化層とを有する改質組織を形成させる
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の金属部材の肉盛り方法。
  4. 前記第2の工程で除去された領域および前記第3の工程で肉盛された領域は、前記溶融凝固部の外縁よりも内側に位置し、前記改質硬化層に干渉しない
    ことを特徴とする請求項3に記載の金属部材の肉盛り方法。
  5. 前記第1の工程において、前記熱源を同位置に2回以上走査する
    ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の金属部材の肉盛り方法。
  6. 合金母材と、前記合金母材の表面に設けられた硬化層とを有する金属部材であって、
    前記合金母材の表面の一部に溶融凝固部と、
    前記溶融凝固部に隣接している部分に改質硬化層と、
    前記溶融凝固部と前記合金母材との間に熱影響部と、を有する
    ことを特徴とする金属部材。
  7. 前記溶融凝固部と前記熱影響部と前記改質硬化層とに存在する内部欠陥の面積率が、0.38%以下である
    ことを特徴とする請求項6に記載の金属部材。
  8. 前記溶融凝固部の表面に、前記合金母材と同種または異種の合金からなる肉盛部と、を備える
    ことを特徴とする請求項6または7に記載の金属部材。

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