JP2010242610A - ガスタービン部品の補修方法、ガスタービン部品及びガスタービン - Google Patents
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Abstract
【課題】Ni基超合金からなるガスタービン部品の補修を簡易に行い、短時間で前記補修を行う。
【解決手段】ガスタービン部品の補修箇所に高エネルギービームを照射し、前記ガスタービン部品中のγ’相をγ相中に固溶させ、前記補修箇所のクラックを除去する。次いで、前記クラックを除去して形成された凹部内に肉盛を行い、次いで、前記ガスタービン部品に対して溶体化熱処理を行う。その後、前記ガスタービン部品に対して時効熱処理を施し、前記補修箇所にγ’相を晶出させてガスタービン部品を補修する。
【選択図】図1
【解決手段】ガスタービン部品の補修箇所に高エネルギービームを照射し、前記ガスタービン部品中のγ’相をγ相中に固溶させ、前記補修箇所のクラックを除去する。次いで、前記クラックを除去して形成された凹部内に肉盛を行い、次いで、前記ガスタービン部品に対して溶体化熱処理を行う。その後、前記ガスタービン部品に対して時効熱処理を施し、前記補修箇所にγ’相を晶出させてガスタービン部品を補修する。
【選択図】図1
Description
本発明は、ガスタービン部品の補修方法、ガスタービン部品及びガスタービンに関する。
ガスタービン部品は高温下で使用されるとともに、動静翼表面および燃焼器、トランジションピース等に使用した場合においては、起動停止などによる高/低サイクル疲労により疲労き裂が発生する。また高温にて高速流体にさらされるため、静翼表面、動翼プラットホーム部にはエロージョンが発生する。これら高温部品は高価であるため、一定間隔にて点検を行い、その結果、欠陥が発見された場合は補修することによって、繰り返し使用される。なお、上記ガスタービンは、一般にNi基超合金やCo基超合金から構成される。
上記ガスタービン部品に欠陥が発見された場合は、この欠陥を除去した後、形成された凹部内に肉盛を行って埋め戻す作業が行われる。前記ガスタービン部品がCo基超合金から構成されている場合は、前記肉盛作業を容易に行うことができる。一方、前記ガスタービン部品がNi基超合金から構成されている場合は、前記ガスタービン部品中には、γ相に加えてγ’相と呼ばれるNi3Al金属間化合物が存在し、結晶粒内を硬くして溶接割れが生じやすくなる。したがって、この場合においては、上述のような肉盛作業を簡易に行うことはできない。
このため、特許文献1、特許文献2及び非特許文献1では、上述のような肉盛作業を行う際に、ガスタービン部品に対して溶体化熱処理を行い、前記ガスタービン部品中に存在するγ’相をγ相に固溶させた後に前記肉盛作業を行う。
溶接・接合選書2 材料接合工学の基礎 産報出版 141ページ
しかしながら、上述した従来の方法における溶体化熱処理は、例えば昇温に3〜4時間程度かかるとともに、所定の温度に達した後に1〜2時間保持する必要がある。すなわち、1回の溶体化熱処理を行うに際して4〜6時間程度の作業時間を要することになり、結果としてガスタービン部品の補修に長時間を要するという難点があった。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、Ni基超合金からなるガスタービン部品の補修を簡易に行い、短時間で前記補修を行うことを目的とする。
上記目的を達成すべく、本発明の一態様は、Ni基超合金からなるガスタービン部品の補修方法であって、前記ガスタービン部品の補修箇所に高エネルギービームを照射し、前記ガスタービン部品中のγ’相をγ相中に固溶させる第1の工程と、前記補修箇所のクラックを除去する第2の工程と、前記クラックを除去して形成された凹部内に肉盛を行う第3の工程と、前記ガスタービン部品に対して溶体化熱処理を行う第4の工程と、前記ガスタービン部品に対して時効熱処理を施し、前記補修箇所にγ’相を晶出させる第5の工程と、を具えることを特徴とする、ガスタービン部品の補修方法に関する。
上記態様によれば、Ni基超合金からなるガスタービン部品の補修において、γ’相をγ相中に固溶させる際に、従来のように溶体化熱処理を使用する代わりに、補修箇所に対して局所的に高エネルギービームを照射するようにしている。したがって、前記高エネルギービームのエネルギー密度にもよるが、γ’相をγ相中に固溶させる際に要する時間のオーダは数十分のオーダとなり、従来の溶体化熱処理に比較して極めて短時間化することができる。
また、補修箇所のみに極在するγ’相をγ相中に固溶させれば良いので、効率的にも極めて優れる。
したがって、Ni基超合金からなるガスタービン部品の補修を簡易に行い、短時間で前記補修を行うことが可能となる。
なお、本発明の一例において、前記第1の工程の後であって前記第2の工程の前において、前記補修箇所に非加熱の不活性ガスを噴射して冷却することができる。上述のように、高エネルギービーム照射によって、補修箇所におけるγ’相をγ相中に固溶させた後、前記補修箇所の除去及び肉盛までの時間が長時間化すると、前記補修箇所が前記高エネルギービーム照射によって加熱された後に徐冷されることになる。すると、前記補修箇所において再びγ相からγ’相が晶出してしまう場合がある。
しかしながら、本例に示すように、前記補修箇所に対して前記高エネルギービームを照射してγ’相をγ相中に固溶させた後、好ましくは直ちに非加熱の不活性ガスを噴射して冷却することによって、γ’相を晶出させることなくγ相中に固溶させたままとしておくことができる。したがって、その後の肉盛の工程を良好に行うことができ、上記態様のタービン部品の補修を良好に行うことができるようになる。
なお、“非加熱の不活性ガス”とは、積極的に不活性ガスを加熱することなく、上述したように、補修箇所の冷却を行うことができるような温度に保持された状態の不活性ガスを意味するものである。
以上、本発明によれば、Ni基超合金からなるガスタービン部品の補修を簡易に行い、短時間で補修を行うことができる。
図1は、実施形態のガスタービン部品の補修方法を説明するためのフローチャートであり、図2〜図5は、図1に示すフローチャートに基づく、前記補修方法の工程図である。なお、図2〜図5では、本補修方法の特徴を明確にすべく、ガスタービン部品については、補修すべき箇所の周辺部分のみを拡大して示している。
最初に、動静翼表面および燃焼器等の、Ni基超合金からなるガスタービン部品11の受け入れ検査(S1)を行い、補修すべきクラック12A等の存在の有無をチェックする。次いで、ガスタービン部品11において補修すべきクラック12A等が存在する場合は、必要に応じてガスタービン部品11の表面に被覆された熱遮蔽膜(TBC:Thermal barrier coating)を溶剤等で除去する(S2)。なお、熱遮蔽膜が形成されていない場合においては、工程S2は省略することができる。
次いで、ガスタービン部品11の補修箇所12に対して高エネルギービーム15を照射する(S3及び図2参照)。図2から明らかなように、補修箇所12は、クラック12Aを含むような所定の大きさの領域とする。高エネルギービーム15は、レーザや電子線等とすることができるが、好ましくは装置構成が簡易で操作性に優れ、入手が容易であるという観点から、レーザを用いることが好ましい。レーザとしては例えばYAGレーザを用いることができるが、必要に応じて任意のレーザを用いることができる。
なお、S3及び図2に示す工程では、後に説明する肉盛工程を良好に行うべく、高エネルギービーム15の照射によりガスタービン部品11の補修箇所12に存在するγ’相をγ相中に固溶させる。したがって、高エネルギービーム15は、前述したγ’相のγ相中への固溶を促進させるようなエネルギー密度を有することが要求される。例えば、高エネルギービーム15としてレーザを用いる場合、500W/cm2以上のエネルギー密度を有することが好ましい。また、エネルギー密度の上限値については特に限定されるものではなく、現行使用されるレーザの強度範囲であれば特に問題なく使用することができる。
また、高エネルギービーム15は、補修箇所12に対して固定した状態で照射することもできるが、補修箇所12が大きいような場合はスキャンさせながら照射することもできる。
次いで、補修箇所12に対して非加熱の不活性ガス16を噴射し、高エネルギービーム15の照射によって高温に保持された補修箇所12を急速に冷却する(S4及び図3参照)。これによって、補修箇所12におけるγ’相をγ相中に固溶させた後、以下に示す補修箇所12の除去及び肉盛までの時間が長時間化することによるγ相からのγ’相の晶出を抑制することができる。したがって、その後の肉盛の工程を良好に行うことができ、上記態様のタービン部品の補修を良好に行うことができるようになる。
S4及び図3に示す工程は、補修箇所12におけるγ’相をγ相中に固溶させた後、補修箇所12の除去及び肉盛までの時間が比較的短時間で済み、γ相からのγ’相の晶出が生じないような場合は、省略することもできる。
なお、“非加熱の不活性ガス”とは、積極的に不活性ガスを加熱することなく、上述したように、補修箇所12の冷却を行うことができるような温度に保持された状態の不活性ガスを意味するものである。通常は室温に保持された例えばアルゴンガス等を用いることができる。アルゴンガスは不活性ガスの中でも安価であり入手も容易であるので、上述した目的の不活性ガスとして適している。
次いで、補修箇所12におけるクラック12Aを除去する(S5及び図4参照)。クラック12Aの除去は、例えば、グラインダーやエメリー紙などを用いた機械的研磨の他、塩酸、硝酸等の酸を用い、化学的に腐食させることによっても行うことができる。なお、クラック12Aを除去することによって、補修箇所12には凹部12Bが形成される。
次いで、補修箇所12の凹部12B内に肉盛を行い、凹部12Bを埋め戻して補修箇所12の表面、すなわちガスタービン部品11の表面を平らにする(S6及び図5参照)。前記肉盛は、例えば図6に示すような肉盛形成装置20を用いて行うことができる。肉盛形成装置20は、原料供給のためのノズル20Aと本体20Bとを有しており、原料となる金属又は金属粉末をノズル20Aから本体20Bに導入した後、本体20B内で前記原料をアークメルトしたりプラズマ加熱により溶融したりする。そして、本体20Bの先端から溶融した原料を凹部12Bに向けて噴射し、凹部12B内に肉盛17を形成する。
次いで、ガスタービン部品11の全体に対して溶体化熱処理を行い(S7)、上述した肉盛によってガスタービン部品11内に生じた歪みを除去する。その後、必要に応じて、ガスタービン部品11の表面に熱遮蔽膜を被覆形成した後(S8)、時効熱処理を行い(S9)、補修箇所12内に再びγ’相が晶出するようにする。
なお、工程S8は必要に応じて省略することもできる。また、時効熱処理(S9)は、補修箇所12にγ’相が晶出させることによる時効硬化を生ぜしめることによって、かかる部分の強度を予め増大せしめ、その後のガスタービン部品11を本来通り使用できるようにするためのものである。
次いで、上述のようにして補修したガスタービン部品11を再び検査して(S10)、補修すべき箇所が所定の要求に従って補修されていることを確認した後、本来的な用途に供されることになる。
図7は、従来のガスタービン部品の補修方法を説明するためのフローチャートである。図1及び図7に示すフローチャートを比較すると、図1における高エネルギービームの照射(S3)及び不活性ガスの噴射(S4)が、図3においては、溶体化熱処理(S3’)に置き換わっていることが分かる。しかしながら、溶体化熱処理(S3’)は数時間を要するのに対して、高エネルギービームの照射(S3)は数十分の時間で足り、特に必須の要件とされない不活性ガスの噴射(S4)も数十分の時間で足りる。
また、ガスタービン部品の補修においては溶体化熱処理が律速となるので、上述したように、肉盛工程後に1回した溶体化熱処理を実施しない本態様の補修方法に比較して、2回の溶体化熱処理を行う従来の補修方法では多大な時間を要することが分かる。
図8は、本実施形態におけるガスタービン部品の補修方法と、従来のガスタービン部品の補修方法との、工程と時間との関係を示すグラフである。図8から明らかなように、従来の方法では、γ’相をγ相中へ固溶させるに際して溶体化熱処理を用いているので、かかる工程(S3’)において多大な時間を要し、全体の補修の工程において、ほぼ前記工程の時間分が、本実施形態の方法におけるプロセスと従来の方法におけるプロセスとの時間差となっていることが分かる。
換言すれば、γ’相をγ相中へ固溶させるに際して溶体化熱処理(S3’)を用いず、高エネルギービーム照射(S3)を用いることによって、本実施形態では、ガスタービン部品の補修に対する時間を大幅に低減できることが分かる。
なお、本発明の作用効果は、上記実施形態で示したように、ガスタービン部品11がNi基超合金からなる場合に奏されるものであるが、特にはガスタービン部品11、すなわち前記Ni基超合金がγ’相を50体積%以上の割合で含む場合に顕著になる。
具体的には、IN738LC、IN939、GTD-222及びHastelloyX(商品名)等の実用されているNi基超合金に対して好ましく用いることができる。
また、上述した補修方法を適用するガスタービン部品としては、ガスタービン動翼、ガスタービン静翼、ガスタービン燃焼器部品、ガスタービントランジションピース等を例示することができる。さらに、上記補修方法によれば、上述したようなガスタービン部品を有するガスタービンを提供することができる。
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
11 ガスタービン部品
12 補修箇所
12A クラック
12B 凹部
15 高エネルギービーム
16 非加熱の不活性ガス
17 肉盛
12 補修箇所
12A クラック
12B 凹部
15 高エネルギービーム
16 非加熱の不活性ガス
17 肉盛
Claims (8)
- Ni基超合金からなるガスタービン部品の補修方法であって、
前記ガスタービン部品の補修箇所に高エネルギービームを照射し、前記ガスタービン部品中のγ’相をγ相中に固溶させる第1の工程と、
前記補修箇所のクラックを除去する第2の工程と、
前記クラックを除去して形成された凹部内に肉盛を行う第3の工程と、
前記ガスタービン部品に対して溶体化熱処理を行う第4の工程と、
前記ガスタービン部品に対して時効熱処理を施し、前記補修箇所にγ’相を晶出させる第5の工程と、
を備えることを特徴とする、ガスタービン部品の補修方法。 - 前記第1の工程において、前記高エネルギービームは、500W/cm2以上のエネルギー密度を有するレーザ光であることを特徴とする、請求項1に記載のガスタービン部品の補修方法。
- 前記第1の工程の後であって前記第2の工程の前に、前記補修箇所に非加熱の不活性ガスを噴射して冷却する第6の工程を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のガスタービン部品の補修方法。
- 前記不活性ガスはアルゴンガスであることを特徴とする、請求項3に記載のガスタービン部品の補修方法。
- 前記第3の工程における前記クラックの除去は、機械研磨によって行うことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載のガスタービン部品の補修方法。
- 前記第3の工程における前記クラックの除去は、化学的に腐食させることによって行うことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載のガスタービン部品の補修方法。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の方法で補修を行ったことを特徴とする、ガスタービン部品。
- 請求項7に記載のガスタービン部品を含むことを特徴とする、ガスタービン。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2009091575A JP2010242610A (ja) | 2009-04-03 | 2009-04-03 | ガスタービン部品の補修方法、ガスタービン部品及びガスタービン |
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---|---|---|---|---|
JP2012132445A (ja) * | 2010-12-20 | 2012-07-12 | General Electric Co <Ge> | ガスタービンエンジンのトランジションピースを補修する方法 |
CN110042334A (zh) * | 2019-04-03 | 2019-07-23 | 西北工业大学 | 基于热处理修复的镍基单晶合金叶片的延寿方法 |
JP2021159993A (ja) * | 2020-03-31 | 2021-10-11 | 日立金属株式会社 | 金属部材の肉盛り方法および金属部材 |
-
2009
- 2009-04-03 JP JP2009091575A patent/JP2010242610A/ja not_active Withdrawn
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