JP7232007B2 - 溶融金属用部材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
1)鉄系基材を金属拡散滲透法で処理することによって、鉄系基材の内部にアルミニウム、クロム、チタン等の非鉄金属を拡散滲透させる金属拡散滲透処理、
2)金属拡散滲透処理において内部に非鉄金属を拡散滲透させた鉄系材を、900℃~1200℃の酸化雰囲気中で加熱することによって、鉄系基材の周面に選択酸化物の被膜層を形成させる酸化物被覆層形成処理、
3)酸化物被覆層形成処理において鉄系基材の表面に形成された選択酸化物からなる被膜層の外周に、酸化物質材・窒化物質材・炭化物質材の内の一種もしくは二種以上からなる複合耐火物層を形成する複合耐火物層形成処理
この金属拡散滲透処理を鉄系基材に施すためには、たとえば、鋼製ケース内に、鉄系基材とともに、Fe-Al質の合金粉末、およびNH4Cl粉末等を埋め込み、密閉して炉内に入れて、900℃~1,200℃で加熱する方法等を採用することができる。かかる処理は、鉄系基材の内部で、以下のような化学反応を生じさせるものである。
(1)NH4Cl→NH3+HCl(2NH3←→N2+3H2)
(2)2Al+6HCl→2AlCl3+3H2
(3)2AlCl3+3Me→3MeCl2+2Al(置換反応)
上記した金属拡散滲透処理(カロライジング処理)により、アルミニウム等の非鉄金属を滲透せしめた鉄系基材を、酸化雰囲気中で900℃~1,200℃の範囲内で加熱処理するものである。そのような加熱処理を施すことによって、鉄系基材の表面にカロライジング処理により滲透した金属の酸化物(主に、アルミナ質材)からなる被膜層を形成することが可能になる。そして、そのような被膜層を鉄系基材の表面に形成することによって、鉄系基材の耐熱性をより高めることが可能になるととともに、後に鉄系基材に積層する耐火セラミックス材層との接着性を飛躍的に向上させることが可能となる。なお、この酸化物被覆層形成処理における加熱温度は、950℃~1,150℃であるとより好ましく、1,000℃~1,100℃であると特に好ましい。
上記の如く金属拡散滲透処理(カロライジング処理)および酸化物被覆層形成処理を施すことによって酸化物被膜材の形成された鉄系基材の表面に、酸化物質材、窒化物質材、炭化物質材の内の一種もしくは二種以上からなる複合耐火物層を形成することによって、最終的な溶融金属用部材を多層構造体とする処理である。複合耐火物層形成用の酸化物質材としては、アルミナ質材、ムライト質材、ジルコン質材、酸化クロム質材等を用いることができ、窒化物質材としては、窒化ケイ素質材等を用いることができ、炭化物質材としては、炭化ケイ素質材、炭化硼素質材等を用いることができる。なお、市販の酸化物質材、窒化物質材、炭化物質材に含まれる成分を表1に示す。
本発明に係る溶融金属用部材を坩堝とした場合の実施例および比較例を以下に示す。それらの実施例・比較例における物性、特性の評価方法は以下の通りである。
[溶解所要時間]
実施例1~4および比較例1,2で得られた坩堝に非鉄金属(アルミニウム)を収納し、その坩堝を坩堝炉内で加熱した際に、アルミニウムが完全に溶融し溶湯温度700℃となるまでの時間を計り、溶解所要時間(分)とした。
比較例1で得られた坩堝(基材:黒鉛質材)の溶解所要時間を100としたときの実施例1~4および比較例2の各溶解所要時間の比率を百分率で算出し、溶解所要時間比(%)とした。
[耐用日数]
実施例1~4および比較例1,2で得られた坩堝を用いて非鉄金属(アルミニウム 100kg)の溶融、排出を毎日4回ずつ繰り返して実施し、当該坩堝が損傷(亀裂等が発生)するまでの日数をカウントし、耐用日数とした。
比較例1で得られた坩堝(基材:黒鉛質材、金属拡散滲透処理なし、酸化物被覆層形成処理なし、複合耐火物層形成処理なし)の耐用日数を100としたときの実施例1~4および比較例2の各坩堝の耐用日数の比率を百分率で算出し、耐用寿命比(%)とした。
鉄系材(鋳物)によって図1の如き形状(上部の内径φ=362mm、下部の内径φ=336mm×内部の高さ615mmの湯飲み状)を有する坩堝の容器本体(鉄系基材)を形成した。しかる後、その容器本体に金属拡散滲透処理(カロライジング処理)を施すことによって容器本体の表層付近にアルミ拡散滲透層を形成した。すなわち、容器本体をFe-Al合金粉およびNH4Cl粉からなる調合剤とともに鋼製ケース内に埋め込み、その鋼製ケースを密閉し、その密閉された鋼製ケースを炉内にて1,100℃で10時間に亘って加熱した。
・窒化ケイ素質材:100重量部
・炭化硼素質材:2重量部
・コロイダルシリカ:3重量部
・トリエタノールアミン:0.3重量部
滲透材を選択酸化した容器本体の外周に被覆させる複合耐火物層形成用組成物を以下の組成を有するもの(窒化ケイ素質材・炭化ケイ素質材、および炭化硼素質材の複合材)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の坩堝を得た。そして、その実施例2の坩堝の溶解効率および耐用寿命を、上記した方法によって評価した。評価結果を坩堝の製造方法、性状ととともに表2に示す。
・窒化ケイ素質材:30重量部
・炭化ケイ素質材:70重量部
・炭化硼素質材:2重量部
・コロイダルシリカ:3重量部
・トリエタノールアミン:0.3重量部
滲透材を選択酸化した容器本体の外周に被覆させる複合耐火物層形成用組成物を以下の組成を有するもの(窒化ケイ素質材・炭化ケイ素質材・炭化硼素質材、ジルコン質材、ムライト質材、アルミナ質材の複合材)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の坩堝を得た。そして、その実施例3の坩堝の溶解効率および耐用寿命を、上記した方法によって評価した。評価結果を坩堝の製造方法、性状ととともに表2に示す。
・窒化ケイ素質材:30重量部
・炭化ケイ素質材:40重量部
・炭化硼素質材:2重量部
・ジルコン質材:10重量部
・ムライト質材:10重量部
・アルミナ質材:10重量部
・コロイダルシリカ:3重量部
・トリエタノールアミン:0.3重量部
実施例1と同様に拡散滲透処理(カロライジング処理)および酸化物被覆層形成処理を施した坩堝の容器本体に、以下の組成からなる下塗り層形成用組成物(液状体)を、塗布することによって被覆させた。
・ムライト質材:50重量部
・アルミナ質材:50重量部
・コロイダルシリカ:20重量部
・トリエタノールアミン:2重量部
黒鉛質材(カーボンボンド)によって実施例1の坩堝(容器基材)と同一の形状(上部の内径φ=362mm、下部の内径φ=336mm×内部の高さ615mmの湯飲み状)を有する比較例1の坩堝を形成した(容器基材)。そして、その比較例1の坩堝の溶解効率および耐用寿命を、上記した方法によって評価した。評価結果を坩堝の製造方法、性状とともに表2に示す。
鋳鉄材(FCD)によって実施例1の坩堝(容器基材)と同一の形状(上部の内径φ=362mm、下部の内径φ=336mm×内部の高さ615mmの湯飲み状)を有する比較例2の坩堝を形成した(容器基材)。そして、その比較例2の坩堝の溶解効率および耐用寿命を、上記した方法によって評価した。評価結果を坩堝の製造方法、性状とともに表2に示す。
次に、本発明に係る溶融金属用部材をストークとした場合の実施例および比較例を示す。それらの実施例・比較例における物性、特性の評価方法は以下の通りである。
[耐用日数]
実施例5および比較例3で得られたストークを、溶融させた非鉄金属(アルミニウム 100kg)の透過、排出の用途に毎日4回ずつ繰り返して使用し、当該ストークが損傷(亀裂等が発生)するまでの日数をカウントし、耐用日数とした。
比較例3で得られたストーク(基材:SiC-Si3N4)の耐用日数を100としたときの実施例5のストークの耐用日数の比率を百分率で算出し、耐用寿命比(%)とした。
鉄系材(STPA-12)によって図3の如き形状(外径φ=131mm、内径φ=101mm×高さ515mmの筒状)を有するストーク本体(鉄系基材)を形成した。しかる後、そのストーク本体に、実施例2と同様に、金属拡散滲透処理、酸化物被覆層形成処理を施した後に、実施例2と同様な方法で、ストーク本体の表面(内側および外側)に、最終的な厚みが3mmとなるように複合耐火物層を形成することによって、外径φ=137mm、内径φ=95mm×高さ515mmの大きさを有する筒状の実施例5のストークを得た。そして、その実施例5のストークの耐用寿命を、上記した方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
鉄系材(SiC-Si3N4)によって実施例5と同様なフランジ部を有する長尺な筒状のストーク本体を形成した。そして、その外周に、以下の組成からなる複合耐火物層を形成することによって多層構造体とした後、その多層構造体を1,000℃で6時間に亘って加熱することによって、実施例5と同様な形状(外径φ=137mm、内径φ=95mm×高さ515mmの筒状)を有する比較例3のストークを得た。なお、焼成工程においては、焼成後のストークにおける複合耐火物層の厚みが約5.0mmになるように調整した。そして、その比較例3のストークの耐用寿命を、上記した方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
・炭化ケイ素質材:75重量部
・窒化ケイ素質材:25重量部
・コロイダルシリカ:3重量部
・トリエタノールアミン:0.3重量部
B・・鉄系基材
S・・酸化物被覆層
C・・複合耐火物層
I・・基材中に滲透した金属
Claims (3)
- 非鉄金属を溶解および/または精錬し収納保持するための坩堝や鋳造機用の部品として用いる溶融金属用部材であって、
カロライジング処理により内部にアルミニウムを拡散滲透させ、その拡散滲透したアルミニウムを選択的に酸化させたアルミナ質材の被膜層を表面に形成してなる鉄系基材の外周に、酸化物質材、窒化物質材、炭化物質材の内の一種もしくは二種以上からなる耐火物層が形成されていることを特徴とする溶融金属用部材。 - 請求項1に記載された溶融金属用部材の製造方法であって、
鉄系基材を金属拡散滲透法で処理することによって、鉄系基材の内部にアルミニウムを拡散滲透させる金属拡散滲透処理工程、
金属拡散滲透工程において内部にアルミニウムを拡散滲透させた鉄系材を、900℃~1200℃の酸化雰囲気中で加熱することによって、鉄系基材の周面にアルミナ質材の被膜層を形成させる酸化物被覆層形成処理工程、
酸化物被覆層形成工程において鉄系基材の表面に形成されたアルミナ質材からなる被膜層の外周に、酸化物質材・窒化物質材・炭化物質材の内の一種もしくは二種以上からなる耐火物層を形成する耐火物層形成処理工程とを有することを特徴とする溶融金属用部材の製造方法。 - 耐火物層形成処理工程が、
酸化物質材・窒化物質材・炭化物質材の内の一種もしくは二種以上からなる耐火物層の原材料を溶射法により被膜層上に被覆する方法、あるいは、前記耐火物層の原材料にバインダーを加えた混合組成物をアルミナ質材からなる被膜層上に被覆させる方法によって、前記被膜層の外周に前記耐火物層を形成するものであることを特徴とする請求項2に記載の溶融金属用部材の製造方法。
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