JP7231284B2 - 有限型の流れパターンの語表現装置、語表現方法、プログラム、構造物形状の学習方法および構造物設計方法 - Google Patents

有限型の流れパターンの語表現装置、語表現方法、プログラム、構造物形状の学習方法および構造物設計方法 Download PDF

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Description

本発明は、流れパターンの語表現装置、語表現方法、プログラム、構造物形状の学習方法および構造物設計方法に関する。
曲面上の非圧縮性流体の流れパターンに対して、多対1の語表現(極大語表現)を与える技術、および語表現と正規表現を使った流体中の構造物の形状の設計方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、位相幾何学的な二次元流れ構造における構造安定な流線パターンから、位相幾何学的にとり得る別の構造安定な流線パターンへ至る遷移ルートに関する遷移情報を取得する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、曲面上の非圧縮性流体の流れ構造に対して、流れパターンに1対1に対応するグラフ表現から語表現(正規表現)を与える技術、およびこれを利用して流体中の構造物の形状を最適化する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
国際公開第2014/041917号 国際公開第2015/068784号 国際公開第2016/072515号
前述の先行技術は、曲面上の非圧縮性流体の流れパターンに語表現を与えることができるが、圧縮性流体を含む一般的な流れパターンに対しては語表現を与えることができない。
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、圧縮性流体を含む一般的な流体の流れパターンに対して語表現を与えることにある。また、本発明の別の目的は、このような圧縮性流体を含む一般的な流れの中に存在する構造物の周囲の流れパターンが所望のパターンとなるような構造物の形状を与える設計方法を与えることにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の語表現装置は、二次元領域における流れパターンの流線構造を語表現する語表現装置であって、記憶部と、語表現生成部と、を備える。記憶部は、流れパターンを構成する複数の流線構造に関し、各流線構造とその文字との対応関係を記憶し、語表現生成部は、ルート決定手段と、木表現構成手段と、COT表現生成手段と、を備える。ルート決定手段は、与えられた流れパターンのルートを決定し、木表現構成手段は、与えられた流れパターンの流線構造を抜き出し、記憶部に記憶された対応関係に基づいて当該抜き出した流線構造に文字を付与し、当該抜き出した流線構造を削除する処理を、流れパターンの最内部から順にルートに到達するまで繰り返して実行することにより、与えられた流れパターンの木表現を構成し、COT表現生成手段は、木表現構成手段によって構成された木表現をCOT表現に変換して、与えられた流れパターンの語表現を生成する。
この態様によれば、装置を用いて、圧縮性流体を含む一般的な流体の流れパターンに対して語表現を与えることができる。
流れパターンを構成する流線構造のうち、基本構造は、σφ±、σφ~±0、σφ~±±、σφ~±干、βφ±およびβφ2であってもよい。
流れパターンを構成する流線構造のうち、二次元構造は、b~±およびb±であってもよい。
流れパターンを構成する流線構造のうち、ゼロ次元点構造は、σ~±0、σ~±±、σ~±干であってもよい。
流れパターンを構成する流線構造のうち、一次元構造は、p~±、p±、a±、q±、b±±、b±干、β±、c±、c2±、a、γφ~±、γ~±±、a~±およびq~±であってもよい。
語表現生成部は、組合せ構造抽出手段をさらに備えてもよい。組合せ構造抽出手段は、与えられた流れパターンから組み合わせ構造を抽出することにより、与えられた流れパターンの一対一対応の語表現を生成してもよい。
本発明の別の態様は、語表現方法である。この方法は、記憶部と語表現生成部と、を備えたコンピュータによって実行される、二次元領域における流れパターンの流線構造を語表現する語表現方法であって、記憶部は、流れパターンを構成する複数の流線構造に関し、各流線構造とその文字との対応関係を記憶し、語表現生成部は、ルート決定ステップと、木表現構成ステップと、COT表現生成ステップと、を実行し、ルート決定ステップは、与えられた流れパターンのルートを決定し、木表現構成ステップは、与えられた流れパターンの流線構造を抜き出し、記憶部に記憶された対応関係に基づいて当該抜き出した流線構造に文字を付与し、当該抜き出した流線構造を削除する処理を、流れパターンの最内部から順にルートに到達するまで繰り返して実行することにより、与えられた流れパターンの木表現を構成し、COT表現生成ステップは、木表現構成ステップで構成された木表現をCOT表現に変換して、与えられた流れパターンの語表現を生成する。
この態様によれば、コンピュータを用いて、圧縮性流体を含む一般的な流体の流れパターンに対して語表現を与えることができる。
本発明のさらに別の態様は、プログラムである。このプログラムは、記憶部と語表現生成部と、を備えたコンピュータに処理を実行させる。記憶部は、流れパターンを構成する複数の流線構造に関し、各流線構造とその文字との対応関係を記憶する。このプログラムは、与えられた流れパターンのルートを決定するルート決定ステップと、与えられた流れパターンの流線構造を抜き出し、記憶部に記憶された対応関係に基づいて当該抜き出した流線構造に文字を付与し、当該抜き出した流線構造を削除する処理を、流れパターンの最内部から順にルートに到達するまで繰り返して実行することにより、与えられた流れパターンの木表現を構成する木表現構成ステップと、木表現構成ステップで構成された木表現をCOT表現に変換して、与えられた流れパターンの語表現を生成するCOT表現生成ステップと、を語表現生成部に実行させる。
この態様によれば、圧縮性流体を含む一般的な流体の流れパターンに対して語表現を与えるプログラムを記憶媒体等に実装することができる。
本発明のさらに別の態様は、方法である。この方法は、二次元領域における流体内の構造物の形状を学習する学習方法であって、請求項1に記載の語表現装置を用いて、流体中の構造物の周囲に発生する流れパターンの流線構造を語表現するステップと、当該構造物の三次元形状と前記語表現との関係をAIで学習するステップと、を備える。
本発明のさらに別の態様もまた、方法である。この方法は、二次元領域における流体内の構造物を設計する構造物設計方法であって、請求項1に記載の語表現装置を用いて、流体中の構造物の周囲に発生する流れパターンの流線構造を語表現するステップと、当該構造物の三次元形状と前記語表現との関係をAIで学習するステップと、請求項1に記載の語表現装置を用いて、目的とする流れパターンの流線構造を語表現するステップと、当該目的とする流れパターンの語表現をAIに入力するステップと、当該目的とする流れパターンを実現する構造物の三次元形状をAIで計算して出力するステップと、を備える。
この態様によれば、流体の流れを制御するために最適な構造物形状を得ることができる。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、曲面上の圧縮性流体を含む一般的な流体の流れパターンに対して語表現を与えることができ、所望の流れパターンをその周囲に発生させる構造物形状を計算することができる。
ゼロ次元の点構造を示す図である。(a)はcenter(渦心点)を示す。(b)はサドル点(saddle)を示す。(c)は境界サドル点(∂-saddle)を示す。(d)は湧き出し点(source)を示す。(e)は境界湧き出し点(∂-source)を示す。(f)は吸い込み点(sink)を示す。(g)は境界吸い込み点(∂-sink)を示す。 一次元構造としてのcircuitを示す図である。(a)はcycle(サイクル)を示す。(b)は周回軌道を示す。 一次元構造としてのsaddle separatrixを示す図である。(a)はself-connected saddle separatrixの軌道を示す。(b)はheteroclinic saddle separatrixの軌道を示す。 一次元構造としてのss-componentとそれらを結ぶss-separatrixを示す図である。 一次元構造としてのslidable saddleおよびslidable ∂-saddleを示す図である。(a)、(b)はslidable saddleを示す。(c)、(d)は、slidable ∂-saddleを示す。 二次元構造を示す図である。(a)はtrivial center diskを示す。(b)はtrivial source diskを示す。(c)はperiodic border annulusを示す。(d)はlimit annulusを示す。(e)はperiodic annulusを示す。(f)はrotating sphereを示す。 二次元構造としてのReeb domainとrotating annulusを示す図である。(a)、(b)はReeb domainを示す。(c)はrotating annulusを示す。 有限型の流れ(flow of finite type)の中に現れる4種類のnon-trivial limit circuitsを示す図である。 有限型の流れ(flow of finite type)vの境界軌道の集合Bd(v)の補集合に表れる領域内の軌道群の分類を示す図である。(a)は開矩形領域で軌道空間が開区間であるものを示す。(b)は開円環領域で軌道空間が円周であるものを示す。(c)は開円環領域で軌道空間が開区間であるものを示す。 構造安定なハミルトンベクトル場の基本流線構造を示す図である。(a)は非有界領域における一様流を示す。(b)は有界領域内の反時計回り流れを示す。(c)は有界領域内の時計回り流れを示す。 構造安定なハミルトンベクトル場に入る局所流線構造を示す図である。(a)はA系列の流線構造を示す。(b)はB系列の流線構造を示す。(c)はC系列の流線構造を示す。 文字化の対象とする流れパターンの例を示す図である。 (Bd(v))の軌道群を表す構造(二次元構造)を示す図である。(a)は構造b~±を示す。(b)は構造b±を示す。自明な構造である(c)には構造を付与しない。 球面S上の基本構造を示す図である。(a)は構造σφ±、σφ~±0、σφ~±±、σφ~±干を示す。(b)は構造βφ±を示す。(c)は構造βφ2を示す。 Bd(v)の流れのゼロ次元点構造と一次元構造の例を示す図である。(a)は一次元構造としての構造β±を示す。(b)はゼロ次元点構造としての構造σ±、σ~±0、σ~±±、σ~±干を示す。(c)は一次元構造としての構造p~±を示す。(d)は一次元構造としての構造p±を示す。 (S1)系列の一次元構造を示す図である。(a)は構造a±を示す。(b)は構造q±を示す。 (S2)系列の一次元構造を示す図である。(a)は構造b±±を示す。(b)は構造b±干を示す。 (S4)系列の一次元構造を示す図である。(a)は構造β±を示す。(b)は構造c±を示す。(c)は構造c2±を示す。 (S5)系列の一次元構造を示す図である。(a)は構造aを示す。(b)は構造γφ~±を示す。(c)は構造γ~±-を示す。(d)は構造γ~±+を示す。 (S3)系列の一次元構造を示す図である。(a)は構造a~±を示す。(d)は構造q~±を示す。 木表現の説明図である。 第1実施形態に係る語表現装置の機能ブロック図である。 第1実施形態における木表現を構成する処理のフロー図である。 曲面上の流れパターンの例を示す図である。 曲面上の流れパターンの別の例を示す図である。 第2実施形態に係る語表現装置の機能ブロック図である。 同じCOT表現を持つが、異なる流線トポロジーを持つ流れパターンの例を示す図である。 図27の流れパターンから組合せ構造を抽出する手続きを示す図である。 流れパターンから抽出すべき組合せ構造を示す図である。 第3実施形態に係る語表現方法のフロー図である。 河川の地形図からシミュレーションにより得られた流れパターンと、そのCOT表現とを示す図である。 第5実施形態に係る構造物形状の学習方法のフロー図である。 第6実施形態に係る構造物設計方法のフロー図である。 図31の地形図に対してユーザが描画した望ましい流れパターンと、そのCOT表現とを示す図である。
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部品には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部品の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない要素の一部は省略して表示する。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
[概要]
特許文献1に記載の構造安定なハミルトンベクトル場(非圧縮ベクトル場)の分類理論では、特徴的な5種類の一次元の流線構造によって分割される領域の隣接関係をグラフ化することにより文字情報化した。これを圧縮性流体に拡張するために、以下の実施形態では上記の5種類に14種類の一次元構造を新たに追加し、これらによって分割される二次元領域の内部を埋め尽くしている軌道群に対応した3種類の分類もあわせて文字化する。すなわち、これらの二次元領域を分割する特徴的な一次元流線構造が存在するか否かを確認し、存在すればそれに対応する文字を割り当てる。さらに内部に入る流線群の情報を反映した文字列を順次割り当てることにより、全体の流線構造を文字列として表現することができる。ここで用いるアルゴリズムでは、与えられた流線群における最も内側(細かい構造)から流線構造を抜き出して文字を付与し、順次外側(大きな構造)の流線構造を抜き出していくことにより、最終的な文字化を達成する。また、圧縮性流体に拡張したことにより、文字列だけでは構造を一意に表現できないため、流線構造のつながり具合を組み合わせ論的に指定するアルゴリズムを加えることで一意な表現を得る。
特許文献3に記載の構造安定なハミルトンベクトル場の正規表現においては、その内部の流線群の構造(一様流または周期軌道)は、これらの領域を分割する一次元構造から自動的に定まった。従ってこの内部の流線群の情報を正規表現するためには、単純に+、-、○ という記号表現を与えるだけで十分であった。また圧縮成分に相当する流れは、一様流(無限遠点での吸い込みと湧き出しのペア構造(1-source-sink point))以外に存在しなかったため、つながり具合を表現する必要もなかった。以下の実施形態で用いるアルゴリズムを構造安定なハミルトンベクトル場に適用した場合は、アルゴリズムによって得られた文字から内部の流線群を表す構造を削除することにより、自動的に正規表現へと変換することができる。従って本実施例は、特許文献3に記載の非圧縮流に対する技術を包含しているといえる。
[用語の定義]
以下、本明細書で用いる数学的用語について説明する。以下の実施形態において語表現の対象となる流れは「曲面S上の流れv」である。ここで「曲面S」とは、二次元構造、すなわち二次元のコンパクト多様体(ここでは特に境界の存在を許す球面)のことをいう。幾何学的には、球面は平面に無限遠点を付け加えたものと同一視できるので、本質的には境界を持つ二次元領域と考えてよい。「曲面S上の流れv」とは、v:R×S→Sなる曲面S上のR-作用とする。この流れvを用いて、t∈R に対してS上の写像v:=S→Sを、v:=v(t,・)のように定義する。ここでS上の点xに対して、O(x)={v(x)∈S|t∈R}を「xを通る軌道」と呼ぶ。本実施形態のアルゴリズムは、このS上のO(x)の集合の位相的構造を分類する。ここで定義した流れvは、完全に抽象的な対象である。しかしながら流体力学のアナロジーによれば、これらの軌道群は与えられた流れ場により粒子が流される軌道(流線)群に対応するので、特に混乱がない限り、以下では「軌道群」または「流線群」と呼ぶ。
数学の一般論 (トポロジーの一分野の葉層構造理論) によれば、曲面S上の流れvの軌道は、
(1)proper
(2)locally dense
(3)exceptional
の3種類に分類されることが知られている。これに対して本明細書では以下の仮定を置く。
(仮定)「軌道集合はproperな軌道のみからなる」
この仮定は本発明の実施形態が対象とする「境界の存在を許す球面上」で満たされているので、本質的な制限とはならない点に注意する。properな軌道集合は、さらに3種類の軌道群、すなわち、
(i)特異点(singular orbits)
(ii)周期軌道(periodic orbits)
(iii)非閉軌道(non-closed orbits)
に分類される。これらの数学的な定義は以下で与えられる。
(定義1)「曲面S上の流れvで定義されているproperな軌道に対して、
(i)特異点(singular orbit)
(ii)周期軌道(periodic orbits)
(iii)非閉軌道(non-closed orbits)
を以下で定義する。
(i)x∈Sが特異点(singular orbit)であるとは、すべてのt∈Rに対してx=v(x)が成り立つ、すなわち、O(x)={x}であることをいう。
(ii)軌道O(x)が周期的(periodic) とは、あるT>0が存在して、v(x)=xかつ0<t<Tに対してv(x)≠xであることをいう。
(iii)特異点でも周期軌道でもない軌道を非閉軌道(non-closed orbit) という。」
(iii)の非閉軌道という用語は、特異点と周期軌道とが軌道として閉集合 (closed)となっていることに由来する。今後の便宜のため、流れvの特異点の集合、周期軌道の集合、および非閉軌道の集合を、それぞれSing(v)、Per(v)およびP(v)と書く。
次に、流れの流線構造を説明するため、いくつかの数学的な定義を示す。ただし、Aの上にマクロン( ̄)を付した記号は集合Aの閉包を表す。
(定義2)曲面S上の流れvで定義されたx∈Sを通るproperな軌道に対して、ω極限集合(ω-limit set)ω(x)およびα極限集合(α-limit set)α(x)を以下で定義する。

Figure 0007231284000001

Figure 0007231284000002
・separatrix(セパラトリクス)γが連結(connecting)であるとは、ω(γ) および α(γ) が特異点であるときのことをいう。
separatrixの定義は後述する。なお、ω(x)やα(x)は軌道O(x)上の点xの取り方によらないので、記号としてω(O)やα(O)と書くこともある。
次に、圧縮流れの流線群の分類に必要な流れ構造を導入し、ゼロ次元点構造、一次元構造、二次元構造ごとに説明する。
[ゼロ次元点構造]
図1に、regularなゼロ次元の点構造のすべてを示す。図1(a)は「center(渦心点)」を示す。渦心点は、周囲に周期軌道を伴う特異点を表す。図1(b)は「サドル点(saddle)」を示す。サドル点は、この点から離れていく2つのseparatrixと、近づいていく2つのseparatrixと連結している。図1(c)は境界についている「境界サドル点(∂-saddle)」を示す。境界サドル点では、1本のseparatrixが境界からSの内部に伸びており、2つのseparatrixが境界に沿った軌道になっている。図1(d)は「湧き出し点(source)」を示す。湧き出し点では、1点から流体が湧き出す。図1(e)は「境界湧き出し点(∂-source)」を示す。境界湧き出し点では、境界に湧き出し点がある。図1(f)は「吸い込み点(sink)」を示す。吸い込み点は、湧き出し点の方向を逆にしたものである。図1(g)は「境界吸い込み点(∂-sink)」を示す。境界吸い込み点は、境界湧き出し点の方向を逆にしたものである。
図1(a)~(c)に示される点構造は非圧縮流れでも観察され、特許文献1に記載の語表現理論や特許文献3に記載の正規表現理論で扱われたものである。一方図1(d)~(g)に示される点構造は、本実施形態が圧縮性流れを扱うことに伴い、本発明者らによって今回新たに加えられたものである。
[一次元構造]
(circuit)
図2に、一次元構造としての「circuit(サーキット)」を示す。circuitは、一点集合か円周のS上へのはめ込み(immersion)を意味する。circuitが点のときは「trivial circuit」と呼び、円周のときは「non-trivial circuit」と呼ぶ。さらにnon-trivial circuitは、その上で定義されている流れによって2種類に分類される。1つは円周が周期軌道になるときであり、これを「cycle(サイクル)」と呼ぶ。cycleはPer(v)の元である。図2(a)は、cycleの例である。いま1つは、サドル点(Sing(v)の元)と、それをつなぐseparatrix(P(v)の元)から構成される「周回軌道」である。図2(b)は、周回軌道のいくつかの例である。
circuitに付随していくつかの概念が定義される。circuit γが「attracting」であるとは、circuit の片側近傍A(これをγのattracting basinと呼ぶ)が存在して、この一方の境界がγであり、かつA⊆W(γ)となっているときのことをいう。一方circuit γが「repelling」であるとは、circuit の片側近傍A(これをγのrepelling basinと呼ぶ)が存在して、この一方の境界がγであり、かつA⊆W(γ)となっているときのことをいう。ここで、W(γ)およびW(γ)は、それぞれγの安定多様体および不安定多様体を示す。この概念を用いると、湧き出し点や境界湧き出し点はrepelling trivial circuitであり、吸い込み点や境界吸い込み点はattracting trivial circuitであることが分かる。軌道γが「limit circuit」であるとは、ある点x(γに含まれていない)でα(x)=γあるいはω(x)= γとなるようなnon-trivial circuitであるときのことをいう。この定義からも分かるように、特異点が有限個しかない場合、limit circuitは、少なくとも1つのattracting/repelling basinを持つ。図2に、limit circuitsのいくつかの例を示す。
((ss)-saddle separatrix構造)
図3に「saddle separatrix(サドルセパラトリクス構造)」を示す。saddle separatrixとは、そのα極限集合とω極限集合がサドル点または境界サドル点であるような軌道をいう。saddle separatrixはP(v)の元である。
saddle separatrixが同じsaddleをつなぐとき、これを「self-connected saddle separatrix」と呼ぶ。また、saddle separatrixが同じ境界上にある2つの異なる∂-saddleをつなぐとき、これを「self-connected ∂-saddle separatrix」と呼ぶ。図3(a) に、self-connected saddle separatrixの軌道の例を示す。異なるサドル点や、異なる境界の上にある境界サドル点をつなぐsaddle separatrixを「heteroclinic saddle separatrix」と呼ぶ。図3(b)に、heteroclinic saddle separatrixの軌道の例を示す。
ハミルトンベクトル場に構造安定性を仮定したときに表れるsaddle separatrixはself-connectedなもののみであることが証明されている。「saddle connection diagram」とは、サドル点、境界サドル点およびsaddle separatrixの全体がなす集合であり、これは先行技術の語表現理論や正規表現理論で扱われたものである。
次に、圧縮性流れ構造に特有のsaddle separatrixを定義する。「ss-component」とは、(1)(境界)湧き出し点、(2)(境界)吸い込み点および(3)non-trivial limit circuitのいずれかを指す。サドル点あるいは境界サドル点とss-componentをつなぐseparatrixを「ss-separatrix」と呼ぶ。図4に、ss-componentとそれらを結ぶss-separatrixの例を示す。サドル点、境界サドル点、saddle separatrix、ss-componentおよびss-separatrixを集めた集合を「ss-saddle connection diagram」と呼ぶ。以下、曲面S上の流れvが生成するss-saddle connection diagramを、Dss(v)と書く。
(slidable (∂-)saddle構造)
図5に、一次元構造としての「slidable saddle」および「slidable ∂-saddle」を示す。
図5(a)、(b)は、slidable saddleの点xを示す。サドル点xは、その定義から、4つのseparatrixと連結している。これらをγ、γ、γ、γと書くと、α(γ)=α(γ)=ω(γ)=ω(γ)=xである。この「サドル点xがslidable」であるとは、「ω(γ)が吸い込み点であり、ω(γ)が吸い込み構造(図中では-を○で囲んだ記号で示される)である」場合(図5(a))、あるいは「α(γ)が湧き出し点であり、α(γ)が湧き出し構造である(図中では+を○で囲んだ記号で示される)」場合(図5(b))のいずれかを指す。
図5(c)、(d)に、slidable ∂-saddleの点xを示す。「境界サドル点xがslidableである(あるいはxがslidable ∂-saddleである)」とは、separatrix γ ⊂ intSと境界に沿ったseparatrix μと1つのxと同じ境界にあって吸い込み構造につながる境界サドル点y≠xがあって、ω(γ)=x、α(γ)が湧き出し点、α(μ)=x、ω(μ)=yとなる構造を持つときのことをいう(図5(c))。このベクトルの向きを反転させた構造もslidable ∂-saddleである(図5(d))。
ここで導入した湧き出し/吸い込み構造という用語は、(境界)サドル点から出るss-separatrixの連結先を表しており、湧き出し点/吸い込み点/limit cycle/limit circuitなどの様々な吸い込み/湧き出しの構造を許容することに注意する。一方slidable ∂-saddleの定義におけるもう1つのss-separatrixは、湧き出し/吸い込みの点構造しか許しておらず、slidable saddle構造と呼ぶ場合は、サドル点xとそれにつながるss-separatrixと湧き出し点(吸い込み点)の組を指す。また、slidable (∂-)saddle構造と呼ぶときは、xとyの2つの境界サドル点およびxとつながるss-separatrix γと湧き出し点/吸い込み点の組を指す。
[二次元構造]
図6にいくつかの二次元構造を示す。
「center disk」とは、1個の渦心点とその周りを埋め尽くす周期軌道とからなる構造をいう。このcenter diskの境界が、limit cycle;saddleとそれを結ぶself-connected saddle separatrix;同じ境界上にある2つの境界サドル点を結ぶ2つのseparatrixのいずれかになっているとき「trivial center disk」と呼ぶ。図6(a)に、trivial center diskの例を示す。
「sink(source)disk」とは、1つの吸い込み点(湧き出し点)とその周りを埋め尽くす非閉軌道からなる構造をいう。separatrixと共通部分を持たないsink/source diskを「trivial sink/source disk」という。図6(b)に、trivial source diskの例を示す。
「periodic border annulus」とは、境界とその周りを埋め尽くす周期軌道とからなる構造をいう。特に、periodic border annulusはperiodic annulusの一種である。図6(c)に、periodic border annulusの例を示す。
「limit annulus」とは、P(v)の非閉軌道で埋め尽くされた開円環領域で、その境界がlimit circuitとなっている構造をいう。図6(d)に、limit annulusの例を示す。
「periodic annulus」とは、Per(v)の周期軌道で埋め尽くされた開円環領域である。図6(e)に、periodic annulusの例を示す。periodic annulusの一方の境界がcycle (Per(v)のnon-trivial circuit)になっている場合、その反対側では、これはlimit cycleでなければならないことに注意する。なぜなら、もし反対側も周期軌道sで埋め尽くされていれば、このcycleは通常の周期軌道と区別できないからである。
「rotating sphere」とは、球面全体の流れで2つの渦心点とその間を埋め尽くす周期軌道とからなる構造をいう。これは、境界を持たない二次元球面の基本流れを表している。図6(f)に、rotating sphereの例を示す。
図7に、二次元構造としてのReeb domainとrotating annulusを示す。
(Reeb domain)
「Reeb domain」とは、非閉軌道で埋め尽くされた開円環領域Uで、その境界に2つのlimit circuit γとγが存在して、UがW(γ) ∩W(γ)の連結成分であり、γ±の回転方向が逆になっている同じ構造を指す。図7(a)、(b)に、Reeb domainの例を示す。図7(a)のReeb domainでは、円環領域は非閉軌道で埋め尽くされる円環領域であり、内側境界と外側境界での流れの向きが反転している。そして両側境界はlimit cycleとなっている。図7(b)のReeb domainでは、内側と外側境界がsaddleとそれを結ぶself-connected separatrix(limit circuits)になっている。
(rotating annulus)
一方、γ±の回転方向が同じになっている構造を「rotating annulus」と呼ぶ。このような構造が許されることから、開円環領域内を非閉軌道で埋め尽くす場合、その外側、内側境界上の軌道の方向を独立に決めることができる。図7(c)に、rotating annulusの例を示す。この例では、Reeb domainと同様、内部は非閉軌道で埋め尽くされているが、外側と内側の境界での流れの方向がそろっている。
以上で各次元の流れ構造の説明を終える。
[曲面S上の流れvの流線群の位相分類理論]
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示すような条件の下で球面S上の流れvが生成する軌道群の理論的分類を与えた。
(定義3)「曲面S上の流れvが以下の5つの条件を満たすとき、これを「有限型の流れ(flow of finite type)」であるという。
(1)vによって生成される軌道はすべてproperである。
(2)すべての特異点は非退化(non degenerate)である。
(3)limit cycleの数は有限個である。
(4)サドル点や境界サドル点を結ぶすべてのsaddle separatrixはself-connectedである。」
(1)の条件は既に仮定した。(2)の条件を課すと、特異点の数は有限で孤立していることが分かる。(3)の条件は、limit cycleのような構造が無限に集積しないことを意味する。(4)の条件を踏まえれば、サドル点をつなぐseparatrixによって構成されるnon-trivial limit circuitは、図8に示す4つのパターンしかないことも結論できる。既存研究のハミルトンベクトル場の分類理論では、流れに構造安定という数学的制限を加えることにより条件(1)、(2)、(4)が満たされることを示した。本実施形態では非圧縮性の条件を外すので、構造安定の条件を課すことはできない。しかし応用で得られる圧縮流れが作る流線においては、退化するような特異点や、無限に集積するようなlimit cycle、heteroclinic軌道を持つ構造は、観測ノイズやシミュレーションエラーなどのため、genericには観察されない。従って、本実施形態おける分類理論やこの理論に基づくアルゴリズムの適用範囲が強く制限されることはない。
有限型の流れ(flow of finite type)の分類理論は、Poincare-Bendixonの定理を大域的な接続状況を含む形で一般化したものとなっている。まず、ω-極限集合に関して以下が成立する。
(補題1)「曲面Sの流れvを有限型の流れ(flow of finite type)とする。このとき、vのproperな非閉軌道のω極限集合(α極限集合)は以下で構成される。
(1)サドル点
(2)境界サドル点
(3)吸い込み点
(4)湧き出し点
(5)境界吸い込み点
(6)境界沸きだし点
(7)渦心点
(8)attracting(repelling)limit cycle
(9)attracting(repelling) non-trivial limit circuit」
本発明の実施形態では、(5)と(6)は存在しないものと仮定する。実際、境界吸い込み点と境界湧き出し点は、観測ノイズやシミュレーションエラーなどのため、genericには観察されないため、これは強い制約ではない。また、この条件を外すことは可能ではあるが、結果的に局所構造が増えて表現が煩雑になる。
補題1によれば、有限型の流れ(flow of finite type)の軌道群は以下の3つのカテゴリに分類できることが分かる。
(i)limit setとそれらをつなぐnon-closed proper orbit
(ii)渦心点、Sの境界∂S上のcycle、またはcircuitとその周りの周期軌道
(iii)intP(v)に入っている非閉軌道群
次に、これに基づいて軌道群の分類を行う。有限型の流れ(flow of finite type) vのss-saddle connection diagram Dss(v)とSの境界∂Sを構成する一次元以下の構造の集合は「境界軌道(border orbits)」と呼ばれ、以下のように特徴付けられる。
(定義4)「曲面S上のflow of finite type vの境界軌道の集合Bd(v)は以下で与える。
Bd(v):=Sing(v)∪∂Per(v)∪∂P(v)∪Psep(v)∪∂Per(v)
ただし、各集合は以下で与えられる軌道集合である。
(1)Psep(v):P(v)の内点集合にあるsaddle separatrixとss-separatrixとからなる軌道集合
(2)∂Per(v):周期軌道集合の境界となる軌道の集合
(3)∂P(v):非閉軌道集合の境界となる軌道の集合
(4)∂Per(v):Sの境界∂Sに沿って回る周期軌道の集合(∂S∩intPer(v))」
なお、Psep(v)はsaddle separatrixやss-separatrixからなる集合でproperな軌道の内点にある構造なので、その構造の近傍もproperな軌道であり、極限集合にはなっていないものも指す。また、∂P(v)および∂Per(v)の軌道は、limit cycleやnon-trivial limit circuitのことを指すことに注意する。先行研究の構造安定なハミルトンベクトル場の流線位相構造の正規表現理論では、この境界軌道によって分割される領域(数学的には(Bd(v))=S-Bd(v)と書ける)の隣接関係をグラフとして表現し、これに文字列を割り当てた。このとき、分割された領域内部に含まれる軌道群は非圧縮性の条件から一意に決まるため、これ以上の情報は不要であった。これに対し圧縮性流れの場合は、分割した二次元領域の中に入っている軌道群にも種類があるため、その情報も含めて文字化しなければならない。この内部軌道の分類を与えるため、軌道群にある種の同値関係を導入して得られる「orbit space(軌道空間)」の概念を導入する。
(定義5)「曲面S上の流れvによって生成されるproperな軌道群で開部分集合T(⊂S)の内部を通るものとする。このときTのorbit space(軌道空間)T/~は次の同値関係「任意のx、y∈T、O(x)=O(y)ならばx~y」から導入される商集合である。」
定義5の商集合は、同じ軌道上にある点を1つの点につぶして同一視するという操作を意味する。図9は、有限型の流れ(flow of finite type) vの境界軌道の集合Bd(v)の補集合に表れる領域内の軌道群の分類を示す。図9(a)は、開矩形領域で軌道空間が開区間であるものである。すなわち図9(a)に示されるような矩形をした開集合Tの中に一様流のような流れが平行に入る場合、その軌道空間は開区間となる。図9(b)は、開円環領域で軌道空間が円周であるものである。図9(c)は、開円環領域で軌道空間が開区間であるものである。図9(b)、(c)に示されるように、開円環領域にある軌道群の軌道空間は、それぞれ円周と開区間とからなる。
以下の定理1は「Bd(v)によって分割される開領域を埋め尽くす軌道群は図9に示される3種類しかない」ことを主張する。この定理の証明は、本発明者によって与えられた。
(定理1)「曲面S⊆S上の任意の有限型の流れ(flow of finite type) vに対して、境界集合の補集合 (Bd(v)) に入る領域の軌道は以下の3種類のいずれかである。
(1)開矩形領域でP(v)の非閉軌道で埋め尽くされたもの。その軌道空間は開区間(図9(a))。これは、ss-separatrixの近傍領域の流れである。
(2)開円環領域で P(v)の非閉軌道で埋め尽くされたもの。その軌道空間は円周((図9(b))。これは、source(sink) disk/limit annulusの近傍領域の流れである。
(3)開円環領域でintPer(v)の周期軌道で埋め尽くされたもの。その軌道空間は開区間((図9(c))。これは、center disk/periodic annulus/rotating sphereの近傍領域の流れである。」
[COT表現]
後述する実施形態で用いるアルゴリズムは、この圧縮性流れの軌道群の位相構造を、「部分円順序根付き木表現」(以下、「COT表現」と呼ぶ。COT:partially Cyclically Ordered rooted Tree representation)に変換するものである。COT表現は、非圧縮性流れの流線位相構造の文字化を計算機プログラムに実装するためのデータ構造として、本発明者らが計算機科学的な見地から新たに考案したものである。先行研究である語表現理論(例えば、特許文献1参照)や正規表現理論(例えば、特許文献3参照)は、理論としては正しいが、プログラミングのためのデータ構造という観点で見たとき、後述のように若干曖昧なところがある。この曖昧さは、COT表現を採用することで完全に除去することができる。以下、図10、図11を参照して、構造安定なハミルトンベクトル場の流線構造を表現するCOT表現を解説する。なお、本明細書で説明する有限型の流れ(flow of finite type)のCOT表現は、図10、図11に示される表現を、圧縮流れに対応できるように自然な形で拡張したものである。
図10は、 構造安定なハミルトンベクトル場の基本流線構造を示す。図11は、 構造安定なハミルトンベクトル場に入る局所流線構造を示す。ここで、これらの図および後述の説明で用いる記号について説明する。□の中には、図11(a)で与えられるA系列の局所的流線構造が入ることを示す。□b+や□b-は中には、図11(b)で与えられるB系列の流線構造が入ることを示す。□c+や□c-には、図11(c)で与えられるC系列の流線構造が任意の個数入ってよいことを示す。□の右肩上に書いてある番号はCOT表現に並べる順序を示す。
非有界領域における最も単純な流れとして、図10(a)に示される左から右への一様流がある。それぞれ図中にある□と点線の部分は、この流れ場の中に図11(a)に示されるA系列(class-a)の流線構造が入ってもよいことを表す。この流れに対応するCOT表現をaφ(□as)と書く。ここで、□asの記法は□の構造がs個ついていることを意味している。具体的に書き下すと、
as:=□ ・・・□ (s>0)
as:=λ (s=0)
となる。なお、□の流線構造がないときは、「構造がない」ことを示す記号λを入れることに決めておく。A系列の並べ方については、一様流が左から右へ流れているときにその構造を下から順に番号付けを行う。逆に、一様流が右から左に流れている場合は、図の天地を入れ替えたものと同じになるので、上から順に番号付けを行う。
次に一様流が存在しないときは、有界領域内部における単純回転流がある。これには、反時計回りと時計回りの回転方向の違いに応じて、図10(b)、(c)の2種類がある。この流れのCOT表現は外側物理境界における流れの方向が反時計回りのときβφ-(□b+,{□c-s})と書き、時計回りのときはβφ+(□b-,{□c+s})のように書く。ここからも分かるように、本文字化理論では流れの向きも正確に分類することに注意する。COT表現に現れる□b+にはb++、b+-、βのいずれかが入り、□b-にはb--、b-+、βのいずれかが入る。□c±sは、境界についている図11(c)にあるC系列の構造が任意の個数入ってもよいことを示す。具体的には複合同順で次のように表される。
c±s:=□ C±・・・□ C± (s>0)
c±s:=λ± (s=0)
ここでも特に何も構造が入っていなければ、複合同順でλ±の記号を用いて表現する。また、このC系列の構造には反時計回りに番号を付与して並べるが、どれを1番目に選ぶかについては(cyclic に)任意性がある。これを表現するために、COT表現では{}で囲むことをルールとして決めておく。
図11は、構造安定なハミルトンベクトル場が生成するすべての局所的な流線位相構造と、それに付随した記号と、を示す。生成される流線構造の向き(反時計回りと時計回り)に応じて、それぞれ+や-の符号を付ける。
図11(a)は、A系列の流線構造を示す。構造aのCOT表現は、a(□b+)である。これは、□b+の内部にB系列の反時計回り(正)方向の流れ局所部分構造b++、b+-、βのいずれかがその中に含まれることを示す。構造aのCOT表現は、a(□b-)である。これは、□b-の内部にB系列の時計回り(負)方向の流れ局所部分構造b--、b-+、βのいずれかその中に含まれることを示す。構造aでは、物理境界の上下にC系列の構造が任意個つけられる。向きについては、上側には反時計回りの□c+が入り、下側には時計回りの□c-が入る。従って、そのCOT表現はa(□c+s、□c-s)となる。
図11(b)は、B系列の流線構造を示す。B系列の構造は、self-connectedなseparatrixを持つ構造である。そのCOT表現は、複合同順で、b±±{□b±,□b±},b±干(□b±,□b干),β±{□c±s}と書くことができる。円順序の構造は{}で、順序確定の構造は()で囲み、□c±sとしてつける構造がない場合に□c±s:=λ±の記号を用いる点は、前述と同様である。
図11(c)は、C系列の流線構造を示す。C系列は、∂-saddle separatrixによって囲まれた領域内の流線構造、すなわち物理境界に任意の個数の∂-saddle separatrixとそれらを囲む大きな∂-saddle separatrixを持つ構造を示す。∂-saddle separatrixの回転方向に応じて、そのCOT表現は複合同順で、c±(□b±、□c干s)となる。ここで、□b±には必ずB系列の構造が入る。□c±sには、さらにC系列の構造が、内部構造に任意の個数つけられる。つける構造が存在しない場合はλ±と書く。以上述べたように、基本的な構造から□の中に入りうる局所流線構造を再帰的に埋めこむことにより、任意の構造安定なハミルトニアンベクトル場が生成する流線構造を構成することができる。局所流線構造の下部構造は、より細かい流れの微細構造が表現することに注意する。
特許文献1に記載された流れパターンの極大語表現は、基本流れと局所流線構造に基づいて文字列を割り当てたものであるが、その表現力は必ずしも十分とはいえない。例えば図11(b)に示されるb++、b--、b+-、b-+の4つのB系列のパターンは、極大語表現ではすべてBと表現される。このことが、語表現が一対一対応にならないことの要因となった。また、特許文献3に記載の正規表現は、こうした構造を区別はするものの、内部に入りうる局所構造の情報までは表現されないため、β±やc±に対応する構造の表現を予め明示することができない。この欠点は、流線構造の文字化を実現するアルゴリズムを構成する上で、そのデータ構造としての表現を困難にしている。例えば、図10(b)にあるような構造では、□b+に対応する局所構造が(genus elementを入れることも含めて)必要だが、genus elementが入るとしたときにも、ここに渦心点が入るのか、あるいは物理境界が入るのかは区別できない。そこで、point genus elementが入る場合は 「点」 が入っている記号として□b±に「σ±」の文字を(符号はこの点周りの周期軌道の回転方向に対応している)付与し、何の構造も入らずgenus elementのみが入る場合は、□b±にはβ±の構造に全くC系列の構造がついていないことを意味するCOT表現β±{λ±}の文字を付与する。さらに□c-に対応する構造はあってもなくてもよいので、この「何も入っていない」という情報は正規表現では陽的に表現されない。
表1に、図10および図11に示された流線位相構造に対応する極大語表現、正規表現およびそのCOT表現の対応関係を示す。
Figure 0007231284000003
ここで□c+sおよび□c-sは、それぞれ非負整数(s≧0)個の□c+および□c-が入ることを表す。この記法では、各構造の下部構造に入りうるC系列の局所流線構造を□c±sによって表し、それ以上の構造を含まない終端記号としては□c±sにλ±を代入することとする。このようなCOT表現は、正規表現をさらに厳密化したものである。これは流れの向きや内部に入りうる局所流線構造の状況までを含めてすべて記号化することができるため、極めて有用である。なおb++、b--の下にある2つの局所内部構造□b±については、双方等価な構造を表現するため、どちらを左右に並べるかには任意性がある。また上記で注意したように、β±にあるC系列の局所構造の識別番号の決め方、すなわち並べ方にも任意性があるため、こうした任意性がある場合は、それぞれの構造を中括弧{}で囲む。一方、順序が自然に決まる局所構造は、丸括弧()で囲む。このCOT表現を採用することにより、曖昧さを排除した上で、流線位相構造をデータ構造として精密に表記することができる。なお、非圧縮ベクトル場の先行研究におけるself-connected separatrixはhomoclinic saddle connectionと読み替え、∂-saddle separatrixは∂-saddle connectionと読み替える。
一例として、このCOT表現を使って、図12の流線図で示される流れパターンに対して語表現を与えてみる。まずこの流れには、非有界領域内にある一様流の中aの局所下部構造がある。図11(a) に示されるように、a(□b+)の構造の中には、B系列の構造が必ず下部構造として含まなければならない。実際、図12を見ると、□b+にはb+-(□b+,□b-)の構造が入っていることが分かる。従って、ここまでの構造はCOT表現ではaφ(a(b+-(□b+,□b-)))と表現される。さらにb+-の内部構造を見ると、□b-には反時計回りの物理境界のgenus elementがあるため、そこには時計回りの周期軌道を周りに伴う物理境界を表す□b-:=β{λ}を入れる。□b+には β{□c+s}の構造が入っており、そこに2つのC系列cが付いているが、左側にあるcの内部に周期軌道を伴う物理境界が1つあって終端に到達しているため、その記号はc(β{λ},λ)となる。右側にあるcには、さらにcの構造が下部に入っている。そのため、cのCOT表現c(□b+,□c-s)における□b+の構造としては反時計回りの周期軌道を伴う点を意味するσが入り、□c-sにはc(β{λ},λ)が入る。従って、β{□c±s}の中は□c+s=c(β{λ},λ)・c(σ,c(β{λ},λ))とできる。
以上をまとめると、図12の流れパターンのCOT表現は、
φ(a(b+-(β{c(β{λ},λ)・c(σ,c(β{λ},λ))},β{λ})))
で与えられる。ここで「構造が入っていない」ことを示す記号λ±は、プログラム上は重要であるが、文字として表現する場合は冗長である。従って、このλ±は省略することができ、
φ(a(b+-(β{c(β)・c(σ,c(β))},β)))
と略記しても混乱なく表現が可能である。本発明者らは、このCOT表現から正規表現に変換するアルゴリズムが存在し、さらに正規表現は極大語表現に変換することができるので、COT表現からすべての表現が自動的に得られることを見出した。実際、図12の流れパターンのCOT表現から、正規表現○φ(○(+(+(+,+(+),-))))と、極大語表現IACC とが得られる。
前述の理論に基づいて、以下では位相幾何学的に取り得るすべての流線構造を分類し、そこに文字(COT表現)を割り当てる。
[二次元構造]
定理1には、ss-saddle connection diagram Dss(v)における境界軌道の集合Bd(v)によって分割された二次元領域には3種類の流れが入ることが示されている。ここではまずこの二次元領域構造を定義し、次にこれらに対応する文字(COT表現)を与える。図9(a)に示される開矩形領域は、湧き出し構造と吸い込み構造とを結ぶss-separatrixの近傍の非閉軌道群を含むものであるが、本変換アルゴリズムではこれには記号を与えない。すなわちデフォルトの構造とする。これ以外の2つの二次元構造に文字(COT表現)を割り当てる。これらは、表3に示されるようにclass-b±およびclass-b~±の要素をなす。図13に、定理1で与えられた(Bd(v))の軌道群を表す構造(二次元構造)を示す。
(二次元構造:b~±
図9(b)に示される開円環領域の構造は、外側から内側へ向かう非閉軌道で埋め尽くされている状況にある。これに対して、図13(a)のようにb~±と記号を割り当てる。記号についている符号~±については、軌道群が円環の外側境界から内側境界へ流れるときは、流れが中心に吸い込まれていることを表現するために~-とする。反対に内側境界から外側境界に軌道群が広がるような場合は、~+とする。その内側境界には吸い込み/湧き出し構造が必ず入るが、そのようなBd(v)の構造の集合を□~±と書いておく。また、領域を埋め尽くしている非閉軌道の1つ1つに対しては、□a~±で表されるBd(v)のclass-a~±の軌道構造を任意個数(s≧0個)入れることができるので、これを表す記号を□a~±sと書いておく。この□a~±sに対応する構造の並びは円順序で一意に決まらない。以上の考察に基き、COT表現はb~±(□~±,{□a~±s})(複合同順)のようになる。なお、□~±や□a~±sに入りうるclass-~±およびclass-a~±の構造群の定義については表3を参照されたい。また、□a~±sは、非圧縮流の□asの場合の記法と同様に、
a~±s:=□ a~±・・・ □ a~± (s>0)
a~±s:=λ (s=0)
としておき、「何も入っていない」ことを表現するのに構造安定なハミルトンベクトル場のときと同様にλの記号を用いる。
(二次元構造:b±
図9(c)は、開円板領域内部が周期軌道で埋め尽くされている状況を表す。これに対応する流線構造は、図13(b)に示される構造b±である。符号は、周期軌道が反時計回り(正方向回転)であるときに+を、時計回り(負方向回転)であるときに-を割り当てる。この内部に入る構造も同様にBd(v)の元であるが、そこに入るのはclass-αの軌道構造であるため、□α±と書いておき、その定義は表3で与える。非閉軌道と異なり周期軌道には□のような構造は入らないので、このCOT表現は複合同順で、b±(□α±)と与えられる。
以下、Bd(v)によって分割された領域に含まれうる軌道群の構造を、上の中から選ぶ。ここで、Bd(v)に対して定義されるCOT表現で用いるために、(Bd(v)) の構造から定義される集合□bφ、□b+、□b-、□b~+、□b~-を以下のように定める。
b+={b~±,b
b-={b~±,b
b~+={b~+
b~-={b~-
[基本構造]
トポロジカルには平面は、無限遠点を取り除いた球面Sと同一視できる。この球面S上に、以下のような基本的な流れが存在する。以下、これらの流体構造を「基本構造」または「ルート構造」と呼ぶ。図14に、球面S上の基本構造を示す。
(基本構造:σφ±、σφ~±0、σφ~±±、σφ~±干
平面内に物理境界が全く存在しないときの流れ場は、図14(a)に示されるような球面の流れと同一視できる。この球面上の有限型の流れ(flow of finite type)は、両極の2つのゼロ次元点構造を除く円環領域内の流れを与える。このときこの構造のCOT表現は、内部にどのような軌道構造が入るかで分類する必要がある。この円環領域が構造b±で与えられる周期軌道からなる軌道群構造b±で埋め尽くされるとき、σφ干(□bφ±) の表現を割り当てる。ただし□bφ±=b±(□α±)である。一方、円環領域が湧き出し点/吸い込み点のclass-~±の非閉な軌道群構造b~±で埋め尽くされているとき、そのCOT表現は、湧き出し点/吸い込み点の周辺の軌道の回転方向により、σφ~干0(□bφ~±)、σφ~干±(□bφ~±)、σφ~干干(□bφ~±)のいずれかとなる。すなわち、無限遠点の点である湧き出し点/吸い込み点の周りで,非閉な軌道群が回転していないときは複合同順でσφ~干0(□bφ~±)、反時計回りに回転しているときは複合同順でσφ~干+(□bφ~±)、時計回りに回転しているときは複合同順でσφ~干-(□bφ~±)である。ここで□bφ~±=b~±(□~±,{□as})である。なお、σφ~±0、σφ~干干、σφ~干±の記号についている符号と中に入る二次元軌道群構造のCOT表現の符号とが逆になっているのは、無限遠点に相当する点の周りの流れの構造に符号をつけていることによる。例えば、bの表現が内部に入って反時計回り(すなわち+の方向)の周期軌道を埋め込むためには、無限遠点の点の周りには時計回り(すなわち-の方向)の流れが生じなければならない。従って具体的なCOT表現は、
σφ-(□bφ+
bφ+=b(□α+
となる。
(基本構造:βφ±、βφ2
球面が物理境界をいくつか含んでいると仮定する。このとき、その中から1つを選んで特別な境界とし、北極がその境界内部に含まれるような球面極座標を導入することができる。このとき、この座標系に付随した立体射影(Stereographic projection)を通して、球面上の流れを二次元有界領域の内部流れと同一視することができる。図14(b)に、ルートの子で外側物理境界に湧き出し/吸い込み構造が全く存在しない流れを示す。このCOT表現は、外側境界の流れの方向が反時計回りのときは、βφ-(□b+,{□c-s})と与える。この流れは、図10(b)に示される構造安定なハミルトンベクトル場の基本構造と同じであることに注意する。この構造は、□b+のところに常にclass-b構造を含まなければならないが、外側境界には任意の個数class-c の軌道構造をつけることができる。外側境界の流れの方向が時計回りのときは、すべての符号を反転させてβφ+(□b-,{□c+s})なるCOT表現を持つ基本構造となる。なお、双方において、s≧0個のclass-c軌道構造を意味する□c±sは、具体的には複合同順で以下のように書ける。
Figure 0007231284000004
図14(c)に示される外側物理境界につながる湧き出し/吸い込み構造が少なくとも1つ存在する基本流れ構造を示す。基本構造βφ2は、この図14(c)に示される基本流れ構造である。この湧き出し/吸い込み構造から最も左側にあるペアを選んでclass-~±の特別な軌道構造とし、他の湧き出し/吸い込み構造にはclass-γφの軌道構造(表3)を割り当てる。他に境界に沿って、任意の個数のclass-c±の軌道構造を左右につけることができる。この状況をCOT表現では、特別な湧き出し点-吸い込み点のペアを□~±で、任意の個数のclass-γφs 軌道構造を□γφsで表す。具体的には以下のように書けばよい。
Figure 0007231284000005
特別な湧き出し点-吸い込み点のペアがあるため、それらを結ぶclass-aの軌道構造を任意の個数つけることができる。それらを、COT表現では□asと表す。なお、□asに入りうるclass-aの構造群の定義については表3を参照のこと。□as は、非圧縮流の場合の記法と同様に、
as:=□ a・・・□ a (s>0)
as:=λ (s=0)
と定める。まとめると、この基本構造のCOT表現は、外側境界についている各構造を反時計回りに円順序で並べて、
βφ2({□c+s,□~+,□c-s,□~-,□γφs},□as
のように与えられる。
[Bd(v)の流れのゼロ次元点構造および一次元構造]
次に、曲面S上の有限型の流れ(flow of finite type) vが定めるss-saddle connection diagram Dss(v)を構成するBd(v)のゼロ次元点構造および一次元構造の分類とそれに対応するCOT表現を与える。前述の理論によれば、Bd(v)=Sing(v)∪∂Per(v)∪∂P(v)∪Psep(v)∪∂per(v)と表現されているので、それぞれの集合に対応させて Bd(v)を実現するゼロ次元点構造および一次元構造を導入する。ここで、各一次元構造はその周辺の軌道群情報によって、どの集合に入るかが変わりうることに注意する。図15に、Bd(v)のゼロ次元点構造と一次元構造の例を示す。
[∂per(v)、Sing(v)の構造]
(一次元構造:β±
その定義から∂per(v)の流れは物理境界に沿って流れる周期軌道を指す。構造安定なハミルトンベクトル場において、物理境界には図11(b)に示されるように記号βが与えられていた。これとの整合性をとり、物理境界に∂-saddle separatrixで囲まれたclass-cの構造が全くついていないことを同じ記号で表す。すなわち、物理境界の流れが反時計回りのときβ{λ}、時計回りのときβ{λ}のようにCOT表現を与える(図15(a)参照)。これらの物理境界は、class-~±およびclass-α±の構造に入る。
(ゼロ次元点構造:σ±、σ~±0、σ~±±、σ~±干
Sing(v)\Dss(v)の元は、ゼロ次元の点構造(孤立構造)である。点構造は、その周りの軌道によって分類することができる。もし点が渦心点で、その周囲に反時計回りあるいは時計回りの周期軌道を伴うとき、そのCOT表現はそれぞれσ+ およびσ で与えられる。一方、点が湧き出し点または吸い込み点であるとき、COT表現は、その周囲の軌道の回転方向と合わせてそれぞれσ~±0、σ~±±、σ~±干で与える(表2および図15(b)参照)。これらの点構造はclass-~±の構造に入る。
Figure 0007231284000006
[∂P(v)、∂Per(v)に入る構造]
(一次元構造:p~±、p±
集合∂P(v)および∂Per(v)は、それぞれ非閉軌道および周期軌道の境界集合として定義される一次元構造である。また、limit cycleはその内側と外側のいずれかが非閉軌道の極限軌道となる周期軌道である。これはintP(v)の元ではないため、集合Psep(v)の元にはなり得ない構造である。このとき、limit cycleの外側と内側の構造によって場合分けが必要となる。すなわち、1つには図15(c)に示されるlimit cycleの外側領域では周期軌道となる構造、いま1つには図15(c)に示されるlimit cycleが外側領域にある非閉軌道のω(α)極限集合となる構造である。前者の構造をp~±と書く。このときこの周期軌道がlimit cycleとなるためには、これが内側からの非閉軌道の極限軌道(すなわち境界軌道)となっていなければならない。そのため、内部にはb~±の二次元構造を入れる。従って、そのCOT表現はp~±(□b~±)である。後者の構造を記号p±で表す。このとき外側からの極限周期軌道になっているため、内部の二次元極限軌道群の構造はどのようなものでもよい。従って、そのCOT表現は複合同順でp±(□b±)で表すことができる。
[∂P(v)、∂Per(v)、Psep(v)に入る構造]
∂P(v)、∂Per(v)、Psep(v)のいずれかの構造集合に入りうる一次元構造は、図8に示されるような、saddle separatrixやss-separatrixの構造を含む非閉軌道を持つ。その内部と外部に入る二次元構造は、一方が非閉軌道で、他方が周期軌道で埋め尽くされた領域である場合(このとき、∂P(v)か∂Per(v))と、両側が非閉軌道で埋め尽くされた領域である場合(このときPsep(v)の元とする)と、を考えなければならない。
まず、サドル点につながるseparatrixは4本存在するので、このseparatrixの局所的な流れの方向を考慮すれば、以下の3つの可能性がある。
(S1)1つが湧き出し構造、1つが吸い込み構造につながり、残り2つが self-connected saddle separatrixである。
(S2)2つのself-connected saddle connectionがある。
(S3)2つが湧き出し(吸い込み)構造につながっている。残り2つは、流れの方向からself-connected separatrixになりえないことに注意する。
このうち(S3)の場合は、図8に示される非閉軌道を持ち得ないので、ここでは(S1)と(S2)だけを考えればよい。一方、境界サドル点は3本のseparatrixが存在するが、そのうち2本は境界上を走る必要があるので自由度は1本しかない。従って、その連結する構造の可能性は以下の2つとなる。
(S4)同じ境界上にある別の境界サドル点とつながる∂-saddle separatrixを持つ。
(S5)領域内部にある湧き出し/吸い込み構造につながる。
(S4)の場合は明らかに非閉軌道を形成するので問題はないが、(S5)の場合は周囲の状況による。すなわち、この場合は単独で非閉軌道は生じない。しかしながらEuler数との関係で、1つの境界サドル点と、少なくとも1つの異なる境界サドル点との存在を認めなければならない。そのため、その境界サドル点が∂-saddle separatrixを持てば、構造全体が非閉軌道を含みうる。以上のことから、以下、(S1)(S2)(S4)(S5)に対応する4つの構造を考える。
(一次元構造:a±、q±
図16に、(S1)系列の一次元構造を示す。湧き出し構造と吸い込み構造、およびself-connected saddle separatrixの位置関係で、これらの構造を分類する。
まず、図16(a)に示される構造、すなわちself-connected saddle separatrixの囲む領域の外側に湧き出し/吸い込み構造が存在する構造をa±と書く。その符号は、左から右の流れに対して、下側にself-connected saddle separatrixがある場合をa、上側にある場合をaと決める。この構造では、self-connected saddle separatrixの内部には周期軌道か非閉軌道が入りうる。このうち周期軌道が入る場合は、その回転方向が自動的に決まることから、aには□b+で定義された構造集合が、aには□b-で定義された構造集合が入る。これは構造安定なハミルトンベクトル場に現れるA系列の軌道構造(図11(a))と同じ構造であるため、同じCOT表現を割り当てていることに注意する。
次に図16(b)に示される構造、すなわちself-connected saddle separatrixの囲む領域の内部に湧き出し/吸い込み構造が存在する構造をq±と書く。符号については、外側のself-connected saddle separatrixの向きが反時計回りのときq、時計回りのときqと書く。この構造の内部に、囲まれている湧き出し/吸い込み構造とそれらをつなぐ□asの構造集合の元が任意個(s≧0)存在しうるので、そのCOT表現はq±(□~+,□~-,□as)となる。
(一次元構造:b±±、b±干
図17に、(S2)系列の一次元構造を示す。これは、構造安定なハミルトンベクトル場の分類で用いられる構造、すなわち図11(b)に示される構造と同じ構造である。従って同じCOT表現を与える。すなわち、2つのself-connected saddle separatrixの位置関係で構造を分類する。
まず、図17(a)に示される構造、すなわち2つのself-connected saddle separatrixの囲む領域が互いの外側にある構造を、複合同順でb±±と書く。符号については、2つのself-connected saddle separatrixの回転方向が反時計回りのときb++、時計回りのときb--と書く。この2つのself-connected saddle separatrixで囲まれた内部領域には二次元構造が入りうる。周期軌道が入る場合はその回転方向が自動的に決まること、また2つの領域の並べる順番には自由度があることから、これらを{}で囲み、そのCOT表現をb++{□b+,□b+}およびb--{□b-,□b-}とする。
次に、図17(b)に示される構造、すなわち1つのself-connected saddle separatrixの囲む領域の内部にもう1つのself-connected saddle separatrixが含まれる構造を、複合同順でb±干と書く。符号については、外側にあるself-connected saddle separatrixの向きが反時計回りのときb+-、時計回りのときb-+と書く。この符号の決め方から、内部にある軌道群が周期軌道の場合は、その回転方向が互いに反対方向となることが自動的に決まる。従ってそのCOT表現は、b+-(□b+,□b-)およびb-+(□b-,□b+) となる。ここでは bの下についている符号と合うように内部の構造の並べ方の順序をつけると決める。
図18に、(S4)系列の一次元構造を示す。
(一次元構造:β±
図18(a)に示される構造は、∂-saddle separatrixが任意個数ついた物理境界に対応する。もし、∂-saddle separatrixがついていないときは、図15(a)に示される形となり、そのCOT表現は β±{λ±}であった。一方、境界に1個以上の∂-saddle separatrixがついているときは、構造安定なハミルトンベクトル場で与えた図11(b)β±と同じ構造となる。従ってこのときのCOT表現は、境界に沿って反時計回りの流れとなっている場合はβ{□c+s}、時計回りの流れとなっている場合はβ{□c-s}を与える(図18(a)参照)。すなわち□c±sには、各構造を円順序で反時計回りに並べた以下の記号が入る。
c±s:=□ c±・・・□ c± (s>0)
c±s:=λ±・・・ (s=0)
(一次元構造:c±、c2±
一次元構造c±、c2±は(S4)系列に対応する。これらは、図18(b)、(c)に示されるように、∂-saddle separatrixに囲まれた内部にどのような構造が入るかによって分類することができる。
まず、周期軌道や非閉軌道で埋め尽くされた二次元構造が入るとき、すなわち、境界サドル点とつながる湧き出し/吸い込み構造が入らないときは、図18(b)に示される構造となる。これをc±と書く。符号については、∂-saddle separatrixと境界に沿った軌道で回る方向が反時計回りのとき+、時計回りのとき-とする。このとき、内部の軌道群が周期軌道からなれば、その方向は自動的に決まる。この内部にさらにc±の構造を任意個含みうるが、その場合は内部の回転方向が逆になることに注意する。このことを踏まえてc±構造の集合を、
c+={c
c-={c
と定義する。これが任意個(s≧0)並ぶという意味で、□c±sなる構造集合を複合同順で定義しておけば、そのCOT表現は複合同順でc±(□b±,□c干s)となる。
次に内部に湧き出し/吸い込み構造が入る場合、これらの構造はEuler数との関係で、同じ境界にある境界サドル点につながっている必要がある。すなわち図18(c)に示される構造、すなわちslidable ∂-saddleが∂-saddle separatrixに囲まれた構造となる。これをc2±と書く。一般にslidable ∂-saddleはいくつでも境界につけることができるので、その最も右側にあるものを選出し、これに対応する湧き出し/吸い込み構造のペアを□~±と表す。また、この湧き出し/吸い込み構造をつなぐ構造集合□が任意個(s≧0)存在しうることを示す構造集合□asを含む。さらに境界の上には、c±構造がその向きに応じて任意個(s≧0)存在しうることに加えて、これ以外にも任意個(s≧0)のslidable ∂-saddle構造を表す集合□γ干sが存在しうる。なお、□γ±sの構造が常に向かって左側についているのは、全部でs+1個あるslidable ∂-saddle構造のうち最も右側にあるものを選出して□~±と表現しているためである。ここでこの構造のCOT表現を与えるために、内部構造の並べ方に1つのルールを決めておく。すなわち「内部にある円境界に∂-saddle separatrixに囲まれた構造が存在する場合、その内部構造を境界の内部から見て反時計回りに回る方向に並べる。一方、さきほど現れたβφ2の外部境界につく場合は境界の内部からみて時計回り(逆に流体のある部分から見れば反時計回り)に構造を並べる」というルールである。このルールに従えば、図18(b)に示される構造のCOT表現は、この構造が内部境界につくことを踏まえれば、一番右から構造を並べればよく、c2±(□c干s,□~±,□c±s,□~干,□γ干s,□c干s,□as)となる。なお、このようにルールを決めておくと、構造は内部・外部の境界によらず必ず時計回りについている構造が並ぶ形となる。
(一次元構造:a、γφ~±、γ~±±
図19に、(S5)系列の一次元構造を示す。この一次元構造は、基本的に、境界にある湧き出し/吸い込み構造のペアをつなぐslidable ∂-saddleに対応する。後のアルゴリズム構成の便宜のため、このような構造が複数存在する場合は、その1つを特別なものとして扱う。
図19(a)に示される構造は、湧き出し/吸い込み構造のペアをつなぐslidable saddleのうち特別な1つを表す構造であり、これをaと書く。物理境界には∂-saddle separatrixに囲まれた構造□c±がその境界上の流れの方向に応じて任意個(s≧0)つきうる。これを□c±sと表す。また、他のslidable ∂-saddle構造も任意個つきうるが、特に最も下側にあるslidable ∂-saddleを選べば、その上側にのみ他のslidable ∂-saddleの構造□γ-がs≧0個存在することになる。これを□γ-sと表現する。最終的にそのCOT表現は、内部円境界につく構造に対するCOT表現の構造の並べ方のルールに従い、構造を境界反時計回りに並べることにしてa(□c+s,□c-s,□γ-s)とできる。なお、□c-sの左側にしか□γ-sが入っていないのは、後で導入する構造γ~±±の定義によるものである。
特別な湧き出し/吸い込み構造をつなぐslidable ∂-saddleを選出した後は、他のslidable ∂-saddleはすべて同等に扱う必要がある。ここに追加する構造については、つける境界の構造で分類をしなければならない。まずβφ2 の外側円境界に任意個の構造をつけられるが、βφ2の定義では常に最も左側にある湧き出し点-吸い込み点のペア構造に□~±の記号を割り当てるため、他のものはすべて右側についていることになる。右側の境界に沿って流れは上から下へと進むのでslidable ∂-saddleも同じ方向にs≧0個追加することができる。このときEuler数との関係で、2つの∂-saddleが追加される。これによって、間に□c±sの構造を挟むことが可能になる。図14(d)を参照すると、右側境界は流れに沿って□c+sの構造が入る。従ってこの先にslidable ∂-saddleの構造を足すためには、図19(b)に示されるような構造である必要がある。この構造をγφ~±と書く。符号については、新たに足す構造が湧き出し構造である場合はγφ~+、吸い込み構造である場合はγφ~-とする。各構造のCOT表現は、外部境界につく構造の場合は、左側から右へ反時計回り(つまり外部内部からみれば時計回り)構造を読むので、γφ~+(□c+s,□~+,□c-s)およびγφ~-(□c+s,□c-s,□~-)となる。なお、追加された湧き出し(吸い込み) 構造につながる境界サドル点とは異なる境界サドル点には、既存の吸い込み(湧き出し) 構造がつながっていることに注意する。
最後に、aやcにある境界につくslidable ∂-saddleの構造は、境界に沿った流れの下流側から追加した構造(図19(c))と、上流側から追加する構造(図19(d))の2種類がある。これらをそれぞれγ~±-、γ~±+と書く。あとは新規に追加するものが湧き出し構造か吸い込み構造かにより、その符号が決まる。これに対応するCOT表現は、内部境界を反時計回りに構造を読むので、γ~+-(□c-s,□~+,□c+s),γ~--(□c-s,□c+s,□~-),γ~++(□c+s,□c-s,□~+)およびγ~-+(□c+s,□~-,□c-s)となる。なおここで導入される□γ+sにはγ~±+の構造がs≧0個あり、□γ-sにはγ~±-の構造がs≧0個あることを示す。
[Psep(v)に入る構造]
(一次元構造:a~±、q~±
図20に、(S3)系列の一次元構造を示す。これらはサドル点に2つの同じ湧き出し/吸い込み構造がつくので、slidable saddleとなる。このslidable saddleにつながるss-componentの位置関係により、構造を分類する。このとき近傍の軌道はすべて非閉軌道で埋め尽くされた二次元領域(開矩形領域)なので、常にPsep(v)の元となる。slidable saddleがつながるss-componentの外側に存在する図20(a)のslidable saddleに対応する構造をa~±と書く。slidable saddleがつながるss-componentの内側に存在する図20(b)の構造は、slidable saddleに対応する。これをq~±と書く。符号については、両側に湧き出し構造□~+がついている場合a~+、両側に吸い込み構造□~-がついている場合a~-と書く。これらの湧き出し/吸い込み構造の順序は自由に選べるので、そのCOT表現は複合同順でa~±{□~±、□~±}とq~±(□~±)である。
以上により、曲面Sの有限型の流れ(flow of finite type)が生成するすべての流線構造(すなわち、二次元領域における任意の流れパターンを構成する流線構造)とそれに対応する文字(COT表現)が与えられた。これらの流線構造に関し、各流線構造とその文字(COT表現)との対応関係を表2に示す。また、各COT表現に入る構造の集合のリストを表3に示す。
Figure 0007231284000007
Figure 0007231284000008
[木表現]
次に図21を参照して、本明細書で用いる「木表現」についての基本的な事項を説明する。図21は、一般的な木表現の一例を示す。図示されるように、木表現は頂点同士を線で結んだ構造を持つグラフである。木の頂点には大きく分けて、木の終端に位置するもの(○)と、そうでないもの(●)の2種類がある。前者(d、e、g、h、j)を終端頂点(「葉」または「leaf」)、後者(a、b、c、f、i)を非終端頂点と呼ぶ。最上部にある非終端頂点(a)を「ルート」と呼ぶ。線で直接結ばれている2つの頂点のうち、ルートに近い方(図では上の方)を「親」と呼び、葉に近い方を「子」と呼ぶ。ルートは、木構造の中で親を持たない唯一の頂点である。ルート以外の頂点は、必ず親を1個だけ持つ。例えば図21では、bはaの子でありcの親である、dはcの子である、といった具合である。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態は、二次元領域における流れパターンの流線構造を語表現する語表現装置である。
図22に、第1実施形態に係る語表現装置1の機能ブロック図を示す。語表現装置1は、記憶部10と、語表現生成部20と、を備える。語表現生成部20は、ルート決定手段21と、木表現構成手段22と、COT表現生成手段23と、を備える。
記憶部10は、有限型の流れ(以後単に「流れ」と書く)パターンを構成する複数の流線構造あるいはベクトル場(以後、これをあわせて「流線構造」と書く)に関し、各流線構造とその文字との対応関係を記憶する。
流れパターンを構成する流線構造のうち、基本構造は、σφ±、σφ~±0、σφ~±±、σφ~±干、βφ±およびβφ2であってよい。
流れパターンを構成する流線構造のうち、二次元構造は、b~±およびb±であってよい。
流れパターンを構成する流線構造のうち、ゼロ次元点構造は、σ±およびσ~±0、σ~±±、σ~±干であってよい。
流れパターンを構成する流線構造のうち、一次元構造は、p~±、p±、a±、q±、b±±、b±干、β±、c±、c2±、a、γφ~±、γ~±±、γ~±干、a~±およびq~±であってよい。
ルート決定手段21は、与えられた流れパターンのルートを決定する。このとき流れの回転の向きは、ルートとなる特異点または境界を中心と見たときの回転の向きとする。ある構造の「内部構造」とは、補集合の連結成分でルートを含まないもののことをいう。さらに、「最内部構造」とは、内部構造を持たない構造か、図9(a)のようなflow box(開区間の形をしている軌道からなる長方形)以外の内部構造を持たない構造のことをいう。
ルートに対応する流れの構造を無限遠点または無限遠境界とみなした場合で、かつルート以外の構造がある場合、ある構造が最内部であるとは、補集合の連結成分が空か図9(a)のようなflow boxのみであることをいう。なお「境界成分」とは、境界の連結成分のことをいう。
ルートは以下のいずれかである
1.無限遠点が「周りの軌道が反時計回り」の渦心点
2.無限遠点が「周りの軌道が時計回り」の渦心点
3.無限遠点が「周りの軌道が回転していない」吸い込み点
4.無限遠点が「周りの軌道が反時計回り」の吸い込み点
5.無限遠点が「周りの軌道が時計回り」の吸い込み点
6.無限遠点が「周りの軌道が回転していない」湧き出し点
7.無限遠点が「周りの軌道が反時計回り」の湧き出し点
8.無限遠点が「周りの軌道が時計回り」の湧き出し点
9.無限遠点から見て反時計回りの軌道と境界サドル点からなる境界成分(この場合、ルートの子に湧き出し構造とつながるseparatrixを持つ境界サドル点が存在しない。この場合、ルートとなる境界成分に無限遠点が含まれていると思うと、□bφ~-にある原点から見たとき、ルートとなる境界は時計回りに回っているように見える)。
10.無限遠点から見て時計回りの軌道と境界サドル点からなる境界成分(この場合、湧き出し点とつながるseparatrixを持つ境界サドル点が存在しない)。
11.吸い込み点とつながるseparatrixを持つ境界サドル点とその反時計回りして隣にある湧き出し点とつながるseparatrixを持つ境界サドル点と境界成分。
ただし、有限データから無限遠点にある吸い込み点/湧き出し点の回転方向を判断する場合は、データ領域の境界を一点に潰してその点を無限遠点と思い回転方向を判断してもよい。たとえば、閾値δと確率pを定めて、「角度の誤差δ以下で境界に(反)時計回りの方向に接するベクトル」の割合が確率p以上ある場合に(反)時計回りに回っていると判断し、それ以外は回転してないと判断する基準を作って、回転方向を判断してもよい。
ルートの記号は、1の場合はσφ+(□bφ-)、2の場合はσφ-(□bφ+)、3の場合はσφ~-0(□bφ~+)、4の場合はσφ~-+(□bφ~+)、5の場合はσφ~--(□bφ~+)、6の場合はσφ~+0(□bφ~-)、7の場合はσφ~++(□bφ~-)、8の場合はσφ~+-(□bφ~-)、9の場合はβφ+(□bφ~-,{□c+s})、10の場合はβφ-(□bφ~+,{□c-s})、11の場合はβ2φ({□c+s,□~+,□c-s,□~-,□γφs},□as)とする。
ルートが決まると、以下のように周期軌道などの流れの向きが定まり、流れの局所構造の符号が定まる。
1.ルートを無限遠点または無限遠境界とみなし、残りの構造が平面上にあるとみなす。
2.抜き出す流れの構造の向きを見て、反時計回りの場合は+、時計回りの場合は-と符号を定める。
さらに、向きや吸い込み湧き出しに関する符号~±±と~±干は以下のようにして定められる。
1.流れの構造を抜くとき、その親となる構造が吸い込み構造であり、その近傍で非閉軌道が反時計回りに回転している場合は~-+と符号を定める。
2.流れの構造を抜くとき、その親となる構造が吸い込み構造であり、その近傍で非閉軌道が時計回りに回転している場合は~--と符号を定める。
3.流れの構造を抜くとき、その親となる構造が吸い込み構造であり、その近傍で非閉軌道が回転していない場合は~-0と符号を定める。
4.流れの構造を抜くとき、その親となる構造が湧き出し構造であり、その近傍で非閉軌道が反時計回りに回転している場合は~++と符号を定める
5.流れの構造を抜くとき、その親となる構造が湧き出し構造であり、その近傍で非閉軌道が反時計回りに回転している場合は~+-と符号を定める。
6.流れの構造を抜くとき、その親となる構造が湧き出し構造であり、その近傍で非閉軌道が回転していない場合は~+0と符号を定める。
木表現構成手段22は、与えられた流れパターンの流線構造を抜き出し、記憶部10に記憶された対応関係に基づいて当該抜き出した流線構造に文字を付与し、当該抜き出した流線構造を削除する処理を、流れパターンの最内部から順にルートに到達するまで繰り返して実行することにより、与えられた流れパターンの木表現を構成する。木表現の構成は、以下の原則に基づいて実行される。
1.与えられた流れパターンから流線構造を抜き出す。
2.流線構造を抜き出すとき、当該流線構造に対応する文字(COT表現)を木の頂点として付与する。そして当該流線構造を削除する。以下、「流れパターンから流線構造を抜き出し、当該流線構造に文字を付与し、当該流線構造を削除する」処理をまとめて「構造を抜く」と表記する。
3.構造を抜くとき、最内部の構造を抜き出すことから始めて、すべての構造がなくなるまで順次抜いていく。
3.1.最内部の構造は葉に対応する。
3.2.最後に抜く構造はルートに対応する。すなわち、与えられた流れパターンのルートに到達するまで構造を抜く処理を繰り返す。
3.3.ある構造を抜くときに、その構造を□に置き換え、□とその構造をリンクさせて対応させる(これにより、この□を含む上の構造を抜くときに、この構造を上の構造の「子」構造とすることができる)。
以下、図23を参照して、木表現構成手段22が木表現を構成する処理を詳細に説明する。木表現構成手段22は、葉からルートに向けて順次頂点を付け加えることで木表現を構成する。具体的には、最内部の流れの構造から抜く過程で、葉に頂点を付け加えることで木表現を構成する。すなわち「新しく付け加える頂点の子が何であるか」と「その並び方」の2点を確認しながら新しい頂点を付け加えて、木表現を構成する。
具体的には、木表現構成手段22は、ステップS10~ステップS53の処理を実行することにより、木表現を構成する。図23はステップS10~ステップS53の処理を示すフロー図である。図23(a)は、ステップS10~ステップS20のフローを示す。図23(b)は、ステップS21~ステップS31のフローを示す。図23(c)は、ステップS32~ステップS43のフローを示す。図23(d)は、ステップS44~ステップS53のフローを示す。前述のように木表現の構成は、与えられた流れパターンにルートが決定された状態で開始する。
ステップS10で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に特異点が存在するか否かを判断する。ステップS10における判断が肯定的であった場合、処理はステップS11に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS18に移行する。
ステップS11で本方法は、最内部に存在する特定点がルートであるか否かを判断する。ステップS11における判断が肯定的であった場合、処理はステップS12に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS15に移行する。
ステップS12で本方法は、前述の特異点の子の構造が図13(b)に示される構造であるか否かを判断する。ステップS12における判断が肯定的であった場合、処理はステップS13に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS14に移行する。
ステップS13で本方法は、前述の特異点に文字σφ±を付与して、この特異点を流れパターンから抜く。すべての特異点を抜き切ると、処理は終了する。
ステップS14で本方法は、前述の特異点に、回転方向に合わせて、文字σφ~±0、σφ~±±、σφ~±干のいずれかを付与して、この特異点を流れパターンから抜く。すなわち、無限遠点の点である湧き出し点/吸い込み点の周りで,非閉な軌道群が回転していないときは複合同順でσφ~±0、反時計回りに回転しているときはσφ~干+、時計回りに回転しているときはσφ~干-を付与して、この特異点を流れパターンから抜く。同じ特異点が複数あった場合は、それぞれの特異点に文字σφ~±0、σφ~±±、σφ~±干を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての特異点を抜き切ると、処理は終了する。
ステップS15で本方法は、前述の特異点の親の構造が図13(b)に示される構造であるか否かを判断する。ステップS15における判断が肯定的であった場合、処理はステップS16に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS17に移行する。
ステップS16で本方法は、前述の特異点に文字σ±を付与して、この特異点を流れパターンから抜く。同じ特異点が複数あった場合は、それぞれの特異点に文字σ±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての特異点を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS17で本方法は、前述の特異点に、回転方向に合わせて、文字σ~±0、σ~±±、σ~±干のいずれかを付与して、この特異点を流れパターンから抜く。すなわち、湧き出し点/吸い込み点の周りで,非閉な軌道群が回転していないときは複合同順でσ~±0、反時計回りに回転しているときはσ~干+、時計回りに回転しているときはσ~干-を付与して、この特異点を流れパターンから抜く。同じ特異点が複数あった場合は、それぞれの特異点に文字σ~±0、σ~±±、σ~±干を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての特異点を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS18で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に境界が存在するか否かを判断する。ステップS18における判断が肯定的であった場合、処理はステップS19に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS22に移行する。
ステップS19で本方法は、最内部に存在する境界がルートであるか否かを判断する。ステップS19における判断が肯定的であった場合、処理はステップS20に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS21に移行する。
ステップS20で本方法は、前述の境界に文字βφ±を付与して、この境界を流れパターンから抜く。すべての境界を抜き切ると、処理は終了する。
ステップS21で本方法は、前述の境界に文字β±を付与して、この境界を流れパターンから抜く。同じ境界が複数あった場合は、それぞれの境界に文字β±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての境界を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS22で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に周期軌道が存在するか否かを判断する。ステップS22における判断が肯定的であった場合、処理はステップS23に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS26に移行する。
ステップS23で本方法は、前述の周期軌道の親の構造が図13(b)に示される構造であるか否かを判断する。ステップS23における判断が肯定的であった場合、処理はステップS24に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS25に移行する。
ステップS24で本方法は、前述の周期軌道に文字p~±を付与して、この周期軌道を流れパターンから抜く。同じ周期軌道が複数あった場合は、それぞれの周期軌道に文字p~±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての周期軌道を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS25で本方法は、前述の周期軌道に文字p±を付与して、この周期軌道を流れパターンから抜く。同じ周期軌道が複数あった場合は、それぞれの周期軌道に文字p±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての周期軌道を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS26で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に図17(a)に示される構造が存在するか否かを判断する。ステップS26における判断が肯定的であった場合、処理はステップS27に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS28に移行する。
ステップS27で本方法は、前述の図17(a)に示される構造に文字b±±を付与して、この構造を流れパターンから抜く。同じ構造が複数あった場合は、それぞれの構造に文字b±±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての図17(a)に示される構造を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS28で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に図17(b)に示される構造が存在するか否かを判断する。ステップS28における判断が肯定的であった場合、処理はステップS29に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS30に移行する。
ステップS29で本方法は、前述の図17(b)に示される構造に文字b±干を付与して、この構造を流れパターンから抜く。同じ構造が複数あった場合は、それぞれの構造に文字b±干を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての図17(b)に示される構造を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS30で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に図18(b)に示される構造が存在するか否かを判断する。ステップS30における判断が肯定的であった場合、処理はステップS31に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS32に移行する。
ステップS31で本方法は、前述の図18(b)に示される構造に文字c±を付与して、この構造を流れパターンから抜く。同じ構造が複数あった場合は、それぞれの構造に文字c±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての図18(b)に示される構造を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS32で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に図13(b)に示される構造が存在するか否かを判断する。ステップS32における判断が肯定的であった場合、処理はステップS33に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS34に移行する。
ステップS33で本方法は、前述の図13(b)に示される構造に文字b±を付与して、この構造を流れパターンから抜く。同じ構造が複数あった場合は、それぞれの構造に文字b±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての図13(b)に示される構造を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS34で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に図13(a)に示される構造が存在するか否かを判断する。ステップS34における判断が肯定的であった場合、処理はステップS35に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS36に移行する。
ステップS35で本方法は、前述の図13(a)に示される構造に文字b~±を付与して、この構造を流れパターンから抜く。同じ構造が複数あった場合は、それぞれの構造に文字b~±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての図13(a)に示される構造を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS36で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に図20(a)に示される構造が存在するか否かを判断する。ステップS36における判断が肯定的であった場合、処理はステップS37に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS38に移行する。
ステップS37で本方法は、前述の図20(a)に示される構造に文字a~±を付与して、この構造を流れパターンから抜く。同じ構造が複数あった場合は、それぞれの構造に文字a~±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての図20(a)に示される構造を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS38で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に図20(b)に示される構造が存在するか否かを判断する。ステップS38における判断が肯定的であった場合、処理はステップS39に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS40に移行する。
ステップS39で本方法は、前述の図20(b)に示される構造に文字q~±を付与して、この構造を流れパターンから抜く。同じ構造が複数あった場合は、それぞれの構造に文字q~±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての図20(b)に示される構造を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS40で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に図16(a)に示される構造が存在するか否かを判断する。ステップS40における判断が肯定的であった場合、処理はステップS41に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS42に移行する。
ステップS41で本方法は、前述の図16(a)に示される構造に文字a±を付与して、この構造を流れパターンから抜く。同じ構造が複数あった場合は、それぞれの構造に文字a±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての図16(a)に示される構造を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS42で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に図16(b)に示される構造が存在するか否かを判断する。ステップS42における判断が肯定的であった場合、処理はステップS43に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS44に移行する。
ステップS43で本方法は、前述の図16(b)に示される構造に文字q±を付与して、この構造を流れパターンから抜く。同じ構造が複数あった場合は、それぞれの構造に文字q±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての図16(b)に示される構造を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS44で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に図14(c)に示される構造が存在するか否かを判断する。ステップS44における判断が肯定的であった場合、処理はステップS45に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS46に移行する。
ステップS45で本方法は、前述の図14(c)に示される構造に文字βφ2を付与して、この構造を流れパターンから抜く。すべての境界を抜き切ると、処理は終了する。
ステップS46で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に図19(a)に示される構造が存在するか否かを判断する。ステップS46における判断が肯定的であった場合、処理はステップS47に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS48に移行する。
ステップS47で本方法は、前述の図19(a)に示される構造に文字aを付与して、この構造を流れパターンから抜く。同じ構造が複数あった場合は、それぞれの構造に文字aを付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての図19(a)に示される構造を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS48で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に図18(c)に示される構造が存在するか否かを判断する。ステップS48における判断が肯定的であった場合、処理はステップS49に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS50に移行する。
ステップS49で本方法は、前述の図18(c)に示される構造に文字c2±を付与して、この構造を流れパターンから抜く。同じ構造が複数あった場合は、それぞれの構造に文字c2±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての図18(c)に示される構造を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS50で本方法は、与えられた流れパターンの最内部に図19(b)、(c)、(d)に示される構造のいずれかが存在するか否かを判断する。ステップS50における判断が肯定的であった場合、処理はステップS51に移行する。一方否定的であった場合、構造に文字を付与することができないため、エラー処理を行った上で処理を終了する。
ステップS51で本方法は、前述の図19(b)、(c)、(d)に示される構造のいずれかの構造の親がルートであるか否かを判断する。ステップS51における判断が肯定的であった場合、処理はステップS52に移行する。一方否定的であった場合、処理はステップS53に移行する。
ステップS52で本方法は、前述の図19(b)に示される構造に文字γφ~±を付与して、この構造を流れパターンから抜く。同じ構造が複数あった場合は、それぞれの構造に文字γφ~±を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての図19(b)に示される構造を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
ステップS53で本方法は、前述の図19(c)、(d)に示される構造のいずれかの構造に文字γ~±±またはγ~±干を付与して、この構造を流れパターンから抜く。同じ構造が複数あった場合は、それぞれの構造に文字γ~±±またはγ~±干を付与して流れパターンから抜く処理を繰り返す。すべての図19(c)、(d)に示される構造を抜き切ると、処理はステップS10に戻る。
木表現構成手段22は、以上のステップS10-S53の処理を実行することにより、任意の曲面S上の流れパターンに文字を付与し、当該流れパターンの抽象木表現を得る。
以上によって得られた当該流れパターンの抽象木表現はss-saddle connection diagramの抽象グラフとしての構造を含んでいるが、COT表現に変換するためには、ss-saddle connection diagramの曲面グラフとしての組み合わせ構造が必要なため、ss-saddle connection diagramの曲面グラフとしての組み合わせ構造の必要な組み合わせ構造を抽出する。
例えば、このsaddle connection diagramの曲面グラフとしての組み合わせ構造を抽出する方法として、以下のようなものがある:
1.saddleを抽出する。
2.saddleとsaddleをつなぐseparatrixを抽出する。
3.これらの情報から得られる抽象グラフはsaddle connection diagramの抽象グラフであり、曲面上の配置に対応するように頂点と辺を配置して、曲面グラフとしてsaddle connection diagramを構成する。
以上の処理を実行することにより、任意の曲面S上の流れパターンに文字を付与し、当該流れパターンの木表現を得る。
COT表現生成手段23は、木表現構成手段22により構成された木表現をCOT表現に変換する。具体的には、木表現を括弧を用いた表現に変換することにより、COT表現を構成する。ただし、円順序で並んだ要素を持つ場合は中括弧{}を用い、全順序で並んだ要素を持つ場合は丸括弧()を用いることで変換が実現される。後述で、COT表現の生成を実例を用いて説明する。
本実施形態によれば、二次元領域における任意の有限型の流れパターンが与えられたときに、当該流れパターンのCOT表現を得る、すなわち当該流れパターンを文字化することができる。
以下、具体的な流れパターンに対して語表現を与える手順を説明する。
(第1実施形態の例1)
図24(a)に、流れパターンの一例を示す。第1実施形態に従い、以下に示す手順を実行することにより、この流れパターンのCOT表現が得られることを示す。
手順:
1.物理境界がないため、ルートは無限遠点である。無限遠点は湧き出し点であり、無限遠点の近傍では非閉軌道が反時計回りに回転しているため、ルートに対応する文字は、σφ~++(□bφ~-)となる。これによりルートが決定された。
2.最内部は湧き出し点であり、その近傍では非閉軌道が時計回りに回転しているため、対応する文字はσ~+-である。従って先ずこの構造を抜き、□~+に置き換える。このとき生成された語はb~+(σ~+-,λ~+)である。
3.最内部は湧き出し流れで開円環領域となるので、対応する文字はb~+(□~+,{□a~+s})である。この構造を抜き、□b+に置き換える。このとき生成された語はp(b~+(σ~+-,λ~+))である。
4.最内部は時計回りの周期軌道となるので、対応する文字はp(□b)である。この構造を抜き、□~-に置き換える。このとき生成された語はb~-(p(b~+(σ~+-,λ~+)),λ~-)である。
5.最内部は吸い込み流れで開円環領域となるので、対応する文字はb~-(□~-,{□a~-s})である。この構造を抜き、□bφ~-に置き換える。このとき生成された語はσφ~++(b~-(p(b~+(σ~+-,λ~+)),λ~-))である。
6.最内部はルートであり、対応する文字はσφ~+-(□bφ~-)である。生成された語はσφ~++(b~-(p(b~+(σ~+-,λ~+)),λ~-))である。
以上の手順を実行することにより、図24(a)の流れパターンに対するCOT表現
σφ~++(b~-(p(b~+(σ~+-,λ~+)),λ~-))
が与えられることが示された。
(第1実施形態の例2)
図24(b)に、流れパターンの別の例を示す。第1実施形態に従い、以下に示す手順を実行することにより、この流れパターンのCOT表現が得られることを示す。
手順:
1.物理境界がないため、ルートは無限遠点である。無限遠点は吸い込み点であり、無限遠点の近傍では非閉軌道が反時計回りに回転しているため、ルートに対応する文字は、σφ~-+(□bφ~+)となる。これによりルートが決定された。
2.最内部は吸い込み点であり、その近傍では非閉軌道が時計回りに回転しているため、対応する文字はσ~--である。この構造を抜き、□~-に置き換える。このとき生成された語はσ~--である。
3.最内部は吸い込み流れで開円環領域となるので、対応する文字はb~-(□~-,{□a~-s})である。この構造を抜き、□b-に置き換える。このとき生成された語はb~-(σ~--,λ~-)である。
4.最内部は時計回りの周期軌道となるので、対応する文字はp(□b-)である。この構造を抜き、□~-に置き換える。このとき生成された語はp(b~-(σ~--,λ~-))である。
5.最内部は湧き出し流れで開円環領域となるので、対応する文字はb~+(□~+,{□a~+s})である。この構造を抜き、□b+に置き換える。このとき生成された語はb~+(p(b~-(σ~--,λ~-)))である。
6.最内部は時計回りの周期軌道となるので、対応する文字はp(□b-)である。この構造を抜き、□~-に置き換える。このとき生成された語はp(b~+(p(b~-(σ~--,λ~-)),λ~-))である。
7.最内部は吸い込み流れで開円環領域となるので、対応する文字はb~-(□~-,{□a~-s})である。この構造を抜き、□b-に置き換える。このとき生成された語はb~-(p(b~+(p(b~-(σ~--,λ~-)),λ~-)),λ~-)である。
8.最内部は時計回りの周期軌道となるので、対応する文字はp(□b-)である。この構造を抜き、□~-に置き換える。このとき生成された語はp(b~-(p(b~+(p(b~-(σ~--,λ~-)),λ~-)),λ~-))である。
9.最内部は湧き出し流れで開円環領域となるので、対応する文字はb~+(□~+,{□a~+s})である。この構造を抜き、□b+に置き換える。このとき生成された語はb~+(p(b~-(p(b~+(p(b~-(σ~--,λ~-)),λ~-)),λ~-)),λ~-)である。
10.最内部はルートであり、対応する文字はσφ~-+(□bφ~+)である。生成された語はσφ~-+(b~+(p(b~-(p(b~+(p(b~-(σ~--,λ~-)),λ~-)),λ~-)),λ~-))である。
以上の手順を実行することにより、図24(b)の流れパターンに対するCOT表現
σφ~-+(b~+(p(b~-(p(b~+(p(b~-(σ~--,λ~-)),λ~-)),λ~-,λ~-))
が与えられることが示された。
(第1実施形態の例3)
図24(c)に、流れパターンの別の例を示す。第1実施形態に従い、以下に示す手順を実行することにより、この流れパターンのCOT表現が得られることを示す。
手順:
1.物理境界がないため、ルートは無限遠点である。無限遠点は吸い込み点であり、無限遠点の近傍では非閉軌道が時計回りに回転しているため、ルートに対応する文字は、σφ~--(□bφ~+)となる。これによりルートが決定された。
2.最内部は吸い込み点であり、その近傍では非閉軌道が反時計回りに回転しているため、対応する文字はσ~-+である。この構造を抜き、□~-に置き換える。このとき生成された語はσ~-+である。
3.最内部は吸い込み流れで開円環領域となるので、対応する文字はb~-(□~-,{□a~-s})である。この構造を抜き、□b-に置き換える。このとき生成された語はb~-(σ~-+,λ~-)である。
4.最内部は反時計回りの周期軌道となるので、対応する文字はp(□b+)である。この構造を抜き、□~+に置き換える。このとき生成された語はp(b~-(σ~-+))である。
5.最内部は湧き出し流れで開円環領域となるので、対応する文字はb~+(□~+,{□a~+s})である。この構造を抜き、□b+に置き換える。このとき生成された語はb~+(p(b~-(σ~-+)))である。
6.最内部は時計回りの周期軌道となるので、対応する文字はp(□b-)である。この構造を抜き、□~-に置き換える。このとき生成された語はp(b~+(p(b~-(σ~-+,λ~-)),λ~+))である。
7.最内部は吸い込み流れで開円環領域となるので、対応する文字はb~-(□~-,{□a~-s})である。この構造を抜き、□b-に置き換える。このとき生成された語はb~-(p(b~+(p(b~-(σ~-+,λ~-)),λ~+)),λ~-)である。
8.最内部は反時計回りの周期軌道となるので、対応する文字はp(□b+)である。この構造を抜き、□~+に置き換える。このとき生成された語はp(b~-(p(b~+(p(b~-(σ~-+,λ~+)),λ~-)),λ~-))である。
9.最内部は湧き出し流れで開円環領域なので、対応する文字はb~+(□~+,{□a~+s})である。この構造を抜き、□b+に置き換える。このとき生成された語はb~+(p(b~-(p(b~+(p(b~-(σ~-+,λ~+)),λ~+)),λ~-)),λ~-)である。
10.最内部はルートであり、対応する文字はσφ~-(□bφ~+)である。生成された語はσφ~--(b~+(p(b~-(p(b~+(p(b~-(σ~-+,λ~-)),λ~+)),λ~-)),λ~+))である。
以上の手順を実行することにより、図24(c)の流れパターンに対するCOT表現
σφ~--(b~+(p(b~-(p(b~+(p(b~-(σ~-+,λ~-)),λ~+)),λ~-)),λ~+))
が与えられることが示された。
(第1実施形態の例4)
図25(a)に、流れパターンの別の例を示す。第1実施形態に従い、以下に示す手順を実行することにより、この流れパターンのCOT表現が得られることを示す。
手順:
1.ルートは物理境界であり、ルートに対応する文字は、βφ-(□b+,{□c+s})となる。これによりルートが決定された。
2.最内部は渦心点なので、対応する文字はσ±である。この構造を抜き、□±に置き換える。このときv-vに対応して生成された語はσとσの計 7 つである。
3.最内部は周期軌道からなる開円環となるので、対応する文字はb±(□α±)である。さらに親が周期軌道ではないので、この構造を抜き、□b±に置き換える。このときv-vの周りの周期軌道からなる開円環に対応して生成された語は3つのb(σ)と4つのb(σ)の計7つである。
4. 最内部はb+-となるので、この構造を抜き、□α+に置き換える。このときvを含む構造に対応して生成された語はb+-(b(σ),b(σ))である。
5.最内部はc±となるので、この構造を抜き、□c±sに置き換える。このときv-v、vを含むに対応して生成された語は2つのc(b(σ),λ)と3つのc(b(σ),λ)の計5つである。
6.最内部はβとなるので、この構造を抜き、□c±sに置き換える。このとき、cに対応して生成された語はβ{c(b(σ),λ)}である。
7.最内部は周期軌道からなる開円環となるので、対応する文字はb(□α±)である。さらに親がb++であるので、この構造を抜き、□b+に置き換える。このときv-vを含む開円環に対応して生成された語はb(b+-(b(σ),b(σ)))とb(β{c(b(σ),λ)})である。
8.最内部はb++となるので、対応する文字はb++{□b+,□b+}である。この時生成された語は、以下である。
++{b(b+-(b(σ),b(σ))),b(β{c(b(σ),λ)})}
以上と同様の手順を繰り返すことにより、図25(a)の流れパターンに対するCOT表現
βφ-(b(β{c(b(σ),λ)・c(b(β{c(b(b++{b(b+-(b(σ),b(σ))),b(β{c(b(σ),λ)})}))}),c(b(σ)))}),{c(b(σ),λ)・c(b(σ),λ)})
が与えられることが示される。
(第1実施形態の例5)
図25(b)に、流れパターンの別の例を示す。第1実施形態に従い、以下に示す手順を実行することにより、この流れパターンのCOT表現が得られることを示す。
手順:
1.ルートは物理境界とSであり、ルートに対応する文字は、βφ2({□c+s,□~+,□c-s,□~-,□γφs},□as)となる。
2.最内部はS、Sとv-vなので、対応する文字はσ±とσ~±0である。この構造を抜き、□±と□~±に置き換える。
3.最内部は周期軌道からなる開円環となるので、対応する文字はb±(□α±)である。さらに親が周期軌道ではないので、この構造を抜き、□b±に置き換える。このときv-vの周りの周期軌道からなる開円環に対応して生成された語は3つのb(σ)と4つのb(σ)の計7つである。
4.最内部はb--となるので、この構造を抜き、□α-に置き換える。このときv、vを含む構造に対応して生成された語はb--{b(σ),b(σ)}である。
5.最内部は周期軌道からなる開円環となるので、対応する文字はb(□α-)である。さらに親が周期軌道ではないので、この構造を抜き、□b-に置き換える。このときv、vの周りの周期軌道からなる開円環に対応して生成された語はb(b--{b(σ),b(σ)})である。
6.最内部はc±となるので、対応する文字はc±(□b±,□c干s)である。この構造を抜き、□c±に置き換える。このときv、v、v、vを含む構造に対応して生成された語はc(b(σ),λ)とc(b(σ),λ)である。
7.最内部はa±となるので、対応する文字はa±(□b±)である。この構造を抜くが、class-aが残っているため□には置き換えない。このとき、vとv、vと対応して生成された語はa(b(σ))とa(b(b--{b(σ),b(σ)}))である。
8.最内部はaとなるので、対応する文字はa(□c+s,□c-s,□γ-s)である。この構造を抜き、□asに置き換える。このときc、c、cを含む構造に対応して生成された語はa(λ,λ)とa(c(b(σ),λ),c(b(σ),λ))である。
9.最内部はc2-となるので、対応する文字はc2-(□cーs,□~+,□c+s,□~ー,□γーs,□cーs,□as)である。この構造を抜き、□c-に置き換える。このとき、s、sを含む構造に対応して生成された語は
2-(λ,σ-0,λ,σ~+0,λ,λ,λ)である。
10.ここでルートが最内部になるので、以下の語を得る。
βφ2({c(b(σ),λ),σ~+0,c(b(σ),λ)・c2-(λ,σ-0,λ,σ~+0,λ,λ,λ),σ~-0,λ},a(λ,λ)・a(b(σ))・a(λ,λ)・a(b(b--{b(σ),b(σ)}))・a(c(b(σ),λ),c(b(σ),λ)))
以上の手順を実行することにより、図25(b)の流れパターンに対するCOT表現
βφ2({c(b(σ),λ),σ~+0,c(b(σ),λ)・c2-(λ,σ-0,λ,σ~+0,λ,λ,λ),σ~-0,λ},a(λ,λ)・a(b(σ))・a(λ,λ)・a(b(b--{b(σ),b(σ)}))・a(c(b(σ),λ),c(b(σ),λ)))
が与えられることが示された。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態は、二次元領域における流れパターンの流線構造を語表現する語表現装置である。
図26に、第2実施形態に係る語表現装置2の機能ブロック図を示す。語表現装置2の語表現生成部20は、図22の語表現装置1の構成に加えて、木表現構成手段22とCOT表現生成手段23との間に、組合せ構造抽出手段24を備える。その他の構成と動作は、語表現装置1と共通である。
組合せ構造抽出手段24は、与えられた流れパターンから組み合わせ構造を抽出する。第1実施形態の語表現装置1が生成するCOT表現は多対一対応であるが、本第2実施形態はCOT表現に組み合わせ構造を付与することにより、一対一対応を得ることができる。
COT表現は局所構造の配置を一意に表現することができる一方,一次元の大域的なつながりの情報を持たない。このため、COT表現は多対1の表現になっている。ここでゼロ次元および二次元の構造は、COT表現で一意に定まることに注意する。一次元の大域的なつながりの情報のことを、以下「組み合わせ構造」と呼ぶ。この構造の情報を十分持っているものとして、ss-saddle connection diagramがある。
COT表現は局所的な構造を完全に記述する。しかしながら、2つの構造があったとき、これらの局所構造が同じであっても、全体の構造が一致するとは限らない。そこでCOT表現に組合せ構造を付与することで,大域的な構造も決まる結果、構造が1対1に決まる。ただし前述のように、組合せ構造は大域的なつながりの構造の情報のみを持ち、ゼロ次元点構造や二次元構造については何の情報も持たない。従って、これら2つの情報を合わせることにより、局所構造と大域構造の両方が決まり、結果として1対1に構造が決まる。
組合せ構造抽出手段24は、saddleとつながっているss-separatrixがどのようなss-componentにつながっているかをグラフ構造として抜き出す。実際、頂点は、「ss-componentとつながるsaddle」と「saddleとつながるss-component」であり、辺はsaddleとつながっているss-separatrixである。ここで、「saddleとつながるss-component」は、sink、source、limit cycle/limit circuitのいずれかの構造であった。このグラフは、頂点と辺の数が有限であるような抽象グラフとなっている。limit cycle/limit circuitを含まない場合は、この抽象グラフは曲面グラフとして実現されている。一方、limit cycle/limit circuitを含む場合は、これらの頂点が周期軌道またはcircuitとして実現されているため、抽象グラフは曲面グラフとして実現されていない。そのため、limit cycle/limit circuitの補集合を考え、新しくできた境界上のlimit cycle/limit circuitをそれぞれ1点につぶした曲面を考えると、「saddleとつながるss-component」は、sink、sourceのみからなり、抽象グラフのlimit cycle/limit circuitに対応する頂点を2つに切って得られる新しい抽象グラフは、曲面グラフとして実現される。2つに切って得られた点の組にラベルを振って、切られたという情報を保持することで、新しく得られた曲面グラフはss-separatrixがどのようにss-componentに巻きつくかの情報を完全に持っている。従って、この曲面グラフとCOT表現の組は元のss-saddle connection diagramの情報を完全に持っている。そこで、この曲面グラフを抽出する。
例えば、limit cycle/limit circuitを含まない場合は、この曲面グラフを抽出する方法として、以下のようなものがある。
1.ss-componentとつながるsaddleを抽出する。
2.saddleとつながるss-componentを抽出する。
3.saddleとつながっているss-separatrixを抽出する。
4.これらの情報から得られる抽象グラフを、平面上の配置に対応するように頂点と辺を配置して、平面グラフを構成する。例えば、図27の(a)と(b)は、同じCOT表現を持つが、大域的な構造(組合せ構造)が異なるため、異なる流線トポロジーを持つ流れパターンの例である。
一方、一般のlimit cycle/limit circuitを含む場合は、この曲面グラフを抽出する方法として、以下のようなものがある。
1.ss-componentとつながるsaddleを抽出する。
2.saddleとつながるss-componentを抽出する。
3.saddleとつながっているss-separatrixを抽出する。
4.これらの情報から得られる抽象グラフを得る。
5.limit cycle/limit circuitを除いて、新しい境界上のlimit cycle/limit circuitをそれぞれ一点につぶした曲面を考える。
6.抽象グラフのlimit cycle/limit circuitに対応する点を切って二つの頂点にした抽象グラフを作る。
7.新しく得られた曲面上にはlimit cycle/limit circuitが含まれないので、上記の「limit cycle/limit circuitを含まない場合」の方法で曲面グラフを構成する。さらに、limit cycle/limit circuit由来の頂点には、どの点と元々同じ点だったかという情報をラベルとして付与する。
本実施形態によれば、曲面上の任意の流れパターンが与えられたときに、当該流れパターンの1対1表現を得ることができる。
(第2実施形態の例)
以下、図27を参照して、異なる流線トポロジーを持つ2つの流れパターンに対してCOT表現を与える手順を説明する。
手順:
1.物理境界がなく、ルートは無限遠点かつ吸い込みである。ルートに対応する文字は、σφ-となる。
2.はじめに、最内部は吸い込み点、湧き出し点であり、その近傍では非閉軌道が回転していないため、対応する文字はσ~±0である。そのため、この構造を抜き、□~±に置き換える。このとき生成された語はσ~+0とσ~-0の計3つである。
3.次に、最内部はa~+に対応するslidable saddleなので、対応する文字はa~+{□~+,□~+}である。このとき生成された語はa~+{σ~+0,σ~+0}である。
4.次に、最内部はq~-に対応するslidable saddleなので、対応する文字はq~-(□~-)である。このとき生成された語はq~-(σ~-0)である。
5.このとき、ルートが最内部になるので、以下の語(COT表現)を得る。
σφ-(b~+(a~+{σ~+,σ~+},q~-(σ~-0)))
次に、図27(a)、(b)に示される流れパターンから組合せ構造を抽出する手順を説明する。図28は、図27の流れパターンから組合せ構造を抽出する手続きを示す。
手順:
1.ss-componentとつながるsaddleであるv、vを抜き出す。
2.saddleとつながるss-componentである2つのsource v、vと2つのsink vとvを抽出する(vは無限遠点である)。
3.saddleとつながっているss-separatrixを抽出することにより、抽出すべき組合せ構造である曲面グラフが求まる。
この手続きを実行することにより、組合せ構造が抽出される。
このように、limit cycle/limit circuitを含まない場合には、saddleとsink、sourceとss-separatrixを抽出することにより得られた図28は、図27の流れパターンから抽出すべき組合せ構造を示す図である。
一般の場合には、limit cycle/limit circuitの補集合を考えて、新しい境界上のlimit cycle/limit circuitをそれぞれ一点に潰すことにより新しい曲面を構成し、その新しく潰されてできた頂点のラベルと曲面上の曲面グラフの組が、流れパターンから抽出すべき組合せ構造である。
次に、limit cycle/limit circuitが存在する場合について、図29の左側に示される流れパターンから右側に示される組合せ構造を抽出する手順を説明する。
手順:
1.ss-componentとつながるsaddleであるv、v、vを抜き出す。
2.saddleとつながるss-componentである3つsource v、v、vと2つのsink vとvとlimit cycle Oを抽出する。
3.limit cycle Oを取り除き中央図に示されるOの補集合を得る。
4. 新しい2つの境界をそれぞれ1点に潰して、右図に示される新しい曲面を得る。
5. saddleとつながっているss-separatrixを抽出することにより、抽出すべき組合せ構造である曲面グラフが求まる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態は、二次元領域における流れパターンの流線構造を語表現する語表現方法である。この方法は、記憶部と語表現生成部と、を備えたコンピュータによって実行される。
図30に、第3実施形態に係る語表現方法のフローを示す。本方法は、与えられた流れパターンのルートを決定するステップS1と、当該流れパターンの木表現を構成するステップS2と、当該流れパターンのCOT表現を生成するステップS3と、を備える。
ステップS1で本方法は、与えられた流れパターンのルートを決定する。ルート決定の具体的な処理は、第1実施形態で説明したものと共通であるので、詳細な説明は省略する。
ステップS2で本方法は、与えられた流れパターンの木表現を構成する。木表現構成の具体的な処理は、第1実施形態のステップS10~ステップS53と共通であるので、詳細な説明は省略する。
ステップS3で本方法は、ステップS2で構成された木表現をCOT表現に変換する。
本実施形態によれば、二次元領域における任意の流れパターンが与えられたときに、当該流れパターンのCOT表現を得る、すなわち当該流れパターンを文字化することができる。
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態は、記憶部と語表現生成部と、を備えたコンピュータに処理を実行させるプログラムである。このプログラムは、図30に示されるフローをコンピュータに実行させる。すなわち本プログラムは、与えられた流れパターンのルートを決定するステップS1と、当該流れパターンの木表現を構成するステップS2と、当該流れパターンのCOT表現を生成するステップS3と、をコンピュータに実行させる。
本実施形態によれば、二次元領域における任意の流れパターンが与えられたときに、当該流れパターンのCOT表現を得る、すなわち当該流れパターンを文字化するプログラムをソフトウェアに実装できるので、コンピュータを用いて精度の高い語表現を実現することができる。
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態は、構造物形状の学習方法である。以下、流体の例として河川を取り上げて説明する。
図31は、河川の地形図を基にシミュレーションにより得られた流れパターンと、そのCOT表現とを示す。図31に示される通り、河床の深さや形状が変化する場所では、川の表面の流れに吸い込みや湧き出しを伴う渦が発生する。このような渦は、例えば河川交通の障害となる場合がある。船の安全な航行や防災上の観点からは、こうした渦を除去し、できるだけ一様な流れに整流できることが望ましい。しかしながら、渦を消そうとして浚渫や土砂投入などを行っても、河川の形状の複雑さに起因して、予想外の場所に新たな吸い込みや湧き出しが発生してしまう場合がある。本実施形態は、構造物の周囲に発生する流れパターンを語表現化して、この語表現と構造物形状との関係を人工知能(以下、「AI」という)に学習させることにより、流れを制御するために最適な構造物形状を計算することを目的とする。
図32に、第5実施形態に係る構造物形状の学習方法のフローを示す。本方法は、流体中の構造物の周囲に発生する流れパターンの流線構造を語表現するステップS110と、当該語表現を入力とし、構造物の三次元形状が出力されるようAIで学習するステップS120と、を備える。
ステップS110で本方法は、流体中の構造物の周囲に発生する流れパターンの流線構造を語表現化する。流体は例えば河川等であり、構造物は例えば当該河川の河床、河岸、岩礁等である。語表現は、流れパターンを例えば図22の語表現装置1に入力することによって得られるCOT表現である。
ステップS120で本方法は、当該語表現を入力とし、構造物の三次元形状が出力されるようAIで学習する。AIの具体的な手法は特に限定されないが、例えば畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)、再帰形ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network:RNN)、LSTMネットワーク(Long Short Term Memory:LSTM)などのニューラルネットワークを用いてもよく、この場合入力層を共通にした上で計算モデルごとに異なるニューラルネットワークを混在させてもよい。本実施形態では、構造物の三次元形状と流れパターンの語表現との組を大量に用意し、これらを学習データとしてAIに学習させる。これによりAIは、流れパターンの語表現を入力したときに、当該流れパターンを実現する構造物の三次元形状を計算して出力することができる。
本実施形態に係る構造物形状の学習方法の作用および効果を説明する。例えばステップS120において、構造物の三次元形状と流れパターンを学習データとして直接AIに学習させようとしても、実際には学習は困難である。これは、流れパターンそのものはデータ構造として複雑すぎるためである。これに対して、本実施形態は、流れパターンの流線構造を一旦語表現した上で、この語表現と構造物の三次元形状とを学習データとするところに特徴を持つ。すなわち、複雑な流れパターンをCOT表現のような有限な文字列で表現することにより、データ構造がシンプルになるため、AIによる学習が可能となる。このように、本実施形態によれば、AIによる学習を利用して、流体の流れを制御するために最適な構造物形状を得ることができる。
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態は、構造物の形状設計方法である。図33に、第6実施形態に係る構造物設計方法のフローを示す。本方法は、第1実施形態に記載の語表現装置を用いて、目的とする流れパターンの流線構造を語表現するステップS130と、当該目的とする流れパターンの語表現を第5実施形態に記載の学習済みAIに入力するステップS140と、当該目的とする流れパターンを実現する構造物の三次元形状を学習済みAIで計算して出力するステップS150と、を備える。
ステップS130で本方法は、第1実施形態に記載の語表現装置を用いて、目的とする流れパターンの流線構造を語表現化する。このとき、例えばユーザが描画ソフトを用いて河川の地形図に所望の流れパターンを描画し、この流れパターンを例えば図22の語表現装置1に読み取らせることによってCOT表現を得てもよい。図34に、図31の地形図に対してユーザが描画した望ましい流れパターンと、そのCOT表現とを示す。
ステップS140で本方法は、ステップS130で作成された目的とする流れパターンの語表現(COT表現)を第5実施形態に記載の学習済みAIに入力する。
ステップS150で本方法は、ステップS140で入力された目的とする流れパターンの語表現から、ステップS120での学習結果に基づいて、当該語表現を実現するために最適な構造物の形状を学習済みAIから出力する。この出力結果に基づいて、例えば浚渫、土砂投入、消波ブロック等の設置などを行って目的とする構造物を形成することにより、現状の河川の三次元形状が修正され、望ましい流れパターンを得ることができる。
本実施形態によれば、目的とする流れパターンを入力することにより、この流れパターンを実現する構造物の具体的な三次元形状を得ることができる。
なお、AIからの出力結果に基づいて、例えば多数の魚礁を設置して目的とする構造物を形成したような場合は、この構造物の形状がAIの出力した理想的な形状に対して誤差を持つことがある。このような場合、形成した構造物によって実現される流れパターンをシミュレーションにより描画し、その流線構造を語表現してもよい。その上でこの語表現を、AIの出力した理想的な形状から得られる流れパターンの流線構造の語表現と比較してもよい。この比較の結果、所望の流れパターンの語表現が実現できていなかった場合は、その時点における形状図面に所望の流れパターンを描画し、再度ステップS130~ステップS150の処理を行ってもよい。このような確認・修正作業を必要に応じて繰り返し行うことにより、より精度の高い構造物設計をすることができる。
以上述べた手法は河川の流れの制御に限定されない。構造物の形状とその周囲の流体の流れのCOT表現との関係をAIに学習させておいた上で、目標とする流体の流れパターンのCOT表現をAIに入力すれば、望ましい構造物の形状を出力することができる。これは、例えば燃焼効率の高いエンジンの設計や、推力の高いスクリュー形状の設計などに応用することも可能である。
以上、本発明のいくつかの実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
[変形例1]
第1または第2実施形態の語表現装置は、与えられた流れパターンの画像を取得する画像取得部(例えば、カメラ等)を備えてもよい。画像取得部により取得された画像は語表現生成部に送信され、前述の処理によって語表現が与えられる。本変形例によれば、流れパターンの画像が与えられたときに、これを取り込んで語表現を得ることができる。
[変形例2]
第1または第2実施形態の語表現装置は、変形例1の画像取得部に加えて、画像認識部を備えてもよい。画像取得部により取得された画像は画像認識部に送信され、画像内の流体構造が認識される。認識された流体構造は、語表現部に送信され、前述の処理によって語表現が与えられる。本変形例によれば、流れパターンの画像が与えられたときに、画像内の流体構造を認識することにより、正確な語表現を得ることができる。
変形例は実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態および変形例それぞれの効果をあわせ持つ。
本発明は、医療画像の解析、建築物や工業製品の設計、気象予測、河川や海面の流体分析による災害対策や漁業に利用可能である。
1・・語表現装置
2・・語表現装置
10・・記憶部
21・・ルート決定手段
22・・木表現構成手段
23・・COT表現生成手段
24・・組合せ構造抽出手段
S1・・ルートを決定するステップ
S2・・木表現を構成するステップ
S3・・COT表現を生成するステップ
S110・・流体中の構造物の周囲に発生する流れパターンの流線構造を語表現するステップ
S120・・語表現を入力とし、構造物の三次元形状が出力されるようにAIで学習するステップ
S130・・第1実施形態に記載の装置を用いて、目的とする流れパターンの流線構造を語表現するステップ
S140・・目的とする流れパターンの語表現を第5実施形態に記載の学習済みAIに入力するステップ
S150・・目的とする流れパターンを実現する構造物の三次元形状をAIで計算して出力するステップ

Claims (10)

  1. 二次元領域における流れパターンの流線構造を語表現する語表現装置であって、記憶部と、語表現生成部と、を備え、
    前記記憶部は、流れパターンを構成する複数の流線構造に関し、各流線構造とその文字との対応関係を記憶し、
    前記語表現生成部は、ルート決定手段と、木表現構成手段と、COT表現生成手段と、を備え、
    前記ルート決定手段は、与えられた流れパターンのルートを決定し、
    前記木表現構成手段は、前記与えられた流れパターンの流線構造を抜き出し、前記記憶部に記憶された対応関係に基づいて当該抜き出した流線構造に文字を付与し、当該抜き出した流線構造を削除する処理を、前記流れパターンの最内部から順にルートに到達するまで繰り返して実行することにより、前記与えられた流れパターンの木表現を構成し、
    前記COT表現生成手段は、前記木表現構成手段によって構成された木表現をCOT表現に変換して、前記与えられた流れパターンの語表現を生成する語表現装置。
  2. 前記流れパターンを構成する流線構造のうち、基本構造は、σφ±、σφ~±0、σφ~±±、σφ~±干、βφ±およびβφ2である請求項1に記載の語表現装置。
  3. 前記流れパターンを構成する流線構造のうち、二次元構造は、b~±およびb±である請求項1または2に記載の語表現装置。
  4. 前記流れパターンを構成する流線構造のうち、ゼロ次元点構造は、σ~±0、σ~±±、σ~±干である請求項1乃至3のいずれかに記載の語表現装置。
  5. 前記流れパターンを構成する流線構造のうち、一次元構造は、p~±、p±、a±、q±、b±±、b±干、β±、c±、c2±、a、γφ~±、γ~±±、a~±およびq~±である請求項1乃至4のいずれかに記載の語表現装置。
  6. 前記語表現生成部は、組合せ構造抽出手段をさらに備え、
    前記組合せ構造抽出手段は、前記与えられた流れパターンから組み合わせ構造を抽出することにより、前記与えられた流れパターンの一対一対応の語表現を生成する請求項1乃至5のいずれかに記載の語表現装置。
  7. 記憶部と語表現生成部とを備えたコンピュータによって実行される、二次元領域における流れパターンの流線構造を語表現する語表現方法であって、
    前記記憶部は、流れパターンを構成する複数の流線構造に関し、各流線構造とその文字との対応関係を記憶し、
    前記語表現生成部は、ルート決定ステップと、木表現構成ステップと、COT表現生成ステップと、を実行し、
    前記ルート決定ステップは、与えられた流れパターンのルートを決定し、
    前記木表現構成ステップは、前記与えられた流れパターンの流線構造を抜き出し、前記記憶部に記憶された対応関係に基づいて当該抜き出した流線構造に文字を付与し、当該抜き出した流線構造を削除する処理を、前記流れパターンの最内部から順にルートに到達するまで繰り返して実行することにより、前記与えられた流れパターンの木表現を構成し、
    前記COT表現生成ステップは、前記木表現構成ステップで構成された木表現をCOT表現に変換して、前記与えられた流れパターンの語表現を生成する語表現方法。
  8. 記憶部と語表現生成部とを備えたコンピュータに処理を実行させるプログラムであって、
    前記記憶部は、流れパターンを構成する複数の流線構造に関し、各流線構造とその文字との対応関係を記憶し、
    与えられた流れパターンのルートを決定するルート決定ステップと、
    前記与えられた流れパターンの流線構造を抜き出し、前記記憶部に記憶された対応関係に基づいて当該抜き出した流線構造に文字を付与し、当該抜き出した流線構造を削除する処理を、前記流れパターンの最内部から順にルートに到達するまで繰り返して実行することにより、前記与えられた流れパターンの木表現を構成する木表現構成ステップと、
    前記木表現構成ステップで構成された木表現をCOT表現に変換して、前記与えられた流れパターンの語表現を生成するCOT表現生成ステップと、を前記語表現生成部に実行させるプログラム。
  9. 二次元領域における流体内の構造物の形状を学習する方法であって、
    請求項1に記載の語表現装置を用いて、流体中の構造物の周囲に発生する流れパターンの流線構造を語表現するステップと、
    前記語表現を入力とし、前記構造物の三次元形状が出力されるようAIで学習するステップと、を備える学習方法。
  10. 二次元領域における流体内の構造物を設計する構造物設計方法であって、
    請求項1に記載の語表現装置を用いて、目的とする流れパターンの流線構造を語表現するステップと、
    前記目的とする流れパターンの語表現を請求項9に記載の学習済みAIに入力するステップと、
    前記目的とする流れパターンを実現する構造物の三次元形状を前記学習済みAIで計算して出力するステップと、を備える構造物設計方法。
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