JP7230703B2 - 制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、1又は複数の制御対象を制御するための制御装置に関する。
様々な生産現場において、PLC(プログラマブルコントローラ)などの制御装置を用いたFA(Factory Automation)技術が広く普及している。このような制御装置は、直接的に制御対象を制御するだけではなく、他の装置に制御指令を与えることで、間接的に制御対象を制御する場合もある。また、これまで複数の専用装置を用いて実現されていた制御システムを、より少ない数の制御装置に統合したいというニーズも生じている。例えば、特許文献1に示す技術では、PLCのCPUユニットにおいて、モーション演算プログラムおよびユーザプログラムが同期して実行される。
また、特許文献2では、実行形式の異なる複数種類のプログラムに従う制御演算を単一の制御装置で実現する技術が開示されている。当該技術では、例えば、制御周期毎にプログラム全体が実行される形式のプログラムと、一部の解釈により生成される中間コードに従って逐次実行される形式のプログラムとに関して、それぞれの指令値演算を行い、制御周期毎に各指令値を併せて出力する構成が採用されている。
特開2012-194662号公報 特開2019-36043号公報
従来において、PLCのように制御周期毎にプログラム全体が実行される形式のプログラムが実行されることで制御対象の制御を行う制御装置と、プログラムの一部の解釈により生成される中間コードに従って逐次実行される形式のプログラムが実行されることで制御対象の制御を行う、別の制御装置とによって、共通の制御対象(ロボット等)が制御される場合がある。ただし、そのような場合、制御対象がいずれの制御装置によって制御されているのかを管理する必要があり、ユーザによる制御システムの構築が容易ではなかった。仮に管理が十分でなく制御対象が複数の制御装置により同時に制御されてしまうと、制御対象の挙動が想定通りとはならないおそれがある。
また、従来技術では、実行形式の異なる複数種類のプログラムに従う制御演算を行う単一の制御装置によって、異なるプログラムで共通の制御対象を制御する場合についても、十分な検討はされてはいない。そのため、制御システムの構築負荷や制御対象の安全な制御の観点から、改善の余地が残されている。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、制御対象の好適な制御を実現し得るシステムの構築を容易とする技術を提供することを目的とする。
本発明においては、上記課題を解決するために、実行形式の異なる複数種類のプログラムの実行を単一の制御装置で可能とした上で、異なる種類のプログラムの実行タイミングが重複したときに、1種類のプログラムのみが実行されるように各プログラムの実行の可否を判断する構成を採用した。当該構成の採用により、異なる種類のプログラムの実行状
況をリアルタイムに把握できるとともに、制御対象の好適な制御が実現され得る。
具体的に、本発明は、実行毎に全体が実行される第1の実行形式に従ったプログラムと、逐次実行される第2の実行形式に従ったプログラムと、を有する制御装置であって、予め定められた制御周期毎に前記第1の実行形式に従ったプログラムを実行して第1の制御対象を制御するための第1の指令値を演算可能に構成された第1処理部と、前記第2の実行形式に従ったプログラムを実行してインタプリタにより該プログラムの少なくとも一部が解釈されて生成される中間コードに従って前記制御周期毎に第2の制御対象を制御するための第2の指令値を演算可能であり、且つ、前記第1処理部による、前記第1の実行形式に従ったプログラムの実行を起点としても、該第2の制御対象を制御するための該第2の指令値を演算可能に構成された第2処理部と、前記第1の指令値および前記第2の指令値を前記制御周期毎に出力する出力部と、前記第2の制御対象を制御するために前記第1の実行形式に従ったプログラムの実行のタイミングと前記第2の実行形式に従ったプログラムの実行のタイミングとが重複したとき、前記第2処理部に対して早くアクセスした一方のプログラムの実行のみを許可する許可部と、を備える。
上記の制御装置は、実行形式の種類が異なるプログラムである、第1の実行形式に従ったプログラムと第2の実行形式に従ったプログラムを有している。前者の実行形式は、その実行毎にプログラム全体が実行される形式であり、後者の実行形式は逐次実行の形式である。このように異なる実行形式のプログラムが利用可能となることで、ユーザは、制御対象の制御に適したプログラムを適宜選択でき制御装置の利便性が高められる。そして、第1処理部が、制御周期毎に第1の実行形式に従ったプログラムを実行しそれに基づく第1の指令値を演算する。
また、第2処理部は、インタプリタの解釈を経て生成される中間コードに従って制御周期毎に第2の実行形式に従ったプログラムに基づく第2の指令値を演算するように構成される。更に、第2処理部は、第1の実行形式に従ったプログラムの実行を起点としても第2の指令値を演算可能に構成される。このような第2処理部の構成の利点としては、ユーザは第1の実行形式に従ったプログラムでも第2の実行形式に従ったプログラムのいずれでも同一の制御対象(第2の制御対象)の制御を実現できる点等が挙げられ、以て制御対象の制御プログラムの設計を弾力的に行い得、ユーザの利便性が高められる。そして、出力部により第1の指令値と第2の指令値とが出力されることで、異なる実行形式のプログラムに基づいた各指令値を同期して出力することができる。一方で、このように構成することで、同一の制御対象が、実質的に第1の実行形式に従ったプログラムと第2の実行形式に従ったプログラムの両者から制御され得るため、制御タイミングの重複が生じ得る。
そこで、上記制御装置では、上記のプログラム実行のタイミングが重複したときに、許可部が、第2処理部に対するアクセスの状況に基づいて、すなわち、制御対象の制御のために早くアクセスした一方のプログラムの実行のみを許可する構成を採用する。したがって、一方のプログラム実行が既に行われているときには、他方のプログラム実行の要求が重なったとしても、許可部は、その他方のプログラムの実行は許可しない。換言すれば、許可部は、同一の制御対象に対してプログラム実行のタイミングが重複したときには、第2処理部へのアクセスの状況に基づいて、プログラム実行が排他的に行われるように上記の許可処理を行う。
したがって、このように構成される制御装置では、制御対象の制御のための弾力的なプログラム設計が可能とされユーザの利便性が高められつつ、制御対象が異なる種類のプログラムによって同時に制御されてしまうことを好適に回避することができる。その結果、制御対象の好適な制御を実現でき、またそのシステム構築に際し、ユーザ自身が制御プログラムの重複を避けてプログラム作成を行う必要性が低くなるため、プログラム作成の負
荷を下げシステム構築が容易となる。
ここで、上記の制御装置において、前記第2処理部に対して早くアクセスした前記一方のプログラムによる前記第2の制御対象の制御が終了すると、前記許可部による許可を条件として前記第1の実行形式に従ったプログラムと前記第2の実行形式に従ったプログラムのいずれもが実行可能な状態が形成されてもよい。このように制御装置が構成されることで、同一の制御対象に対する排他的なプログラム実行を継続することができる。
また、上述までの制御装置において、前記許可部は、前記一方のプログラムの実行を許可した場合、プログラム実行を許可しなかった他方に関するエラー通知を行ってもよい。このような構成により、プログラム実行が許可されなかった側に関して、当該エラー通知に基づいて所定の代替処理を実行できる。
制御対象の好適な制御を実現し得るシステムの構築が容易となる。
統合コントローラを含む制御システムの概略構成を示す図である。 統合コントローラの機能をイメージ化した機能ブロック図である。 統合コントローラで制御周期に従って実行される処理の流れを示す図である。 統合コントローラで実行されるロボット制御に関する第1のフローチャートである。 統合コントローラで実行されるロボット制御に関する第2のフローチャートである。 統合コントローラで実行されるロボット制御に関する第3のフローチャートである。
<適用例>
実施形態に係る制御装置の適用例について、図1及び図2に基づいて説明する。図1は、当該制御装置100が適用される制御システム1の概略構成図であり、図2は、制御装置100に形成される機能部をイメージ化した図である。
制御装置100は、各種の設備や装置などの制御対象を制御する産業用コントローラに相当する。制御装置100は、後述するような制御演算を実行する一種のコンピュータである。制御装置100は、フィールドネットワーク2を介して各種のフィールド機器と接続されてもよい。フィールド機器は、製造装置や生産ラインなど(以下、「フィールド」とも総称する。)に対して何らかの物理的な作用を与えるアクチュエータ、および、フィールドとの間で情報を遣り取りする入出力装置などを含み、図1においては、フィールド機器として、ロボット210や、サーボドライバ220及びモータ222が例示されている。サーボドライバ220は、制御装置100からの出力データ(例えば、位置指令や速度指令など)に従って、モータ222を駆動する。また、ロボット210としては、パラレルロボット、スカラロボット、多関節ロボットが例示できる。このように制御装置100は、ロボット210やサーボドライバ220及びモータ222を統合的に制御し得るように構成された制御装置であり、その詳細については後述する。
制御装置100は、フィールドネットワーク2などを介して、1または複数のフィールド機器との間でデータを遣り取りする。一般的に「フィールドネットワーク」は、「フィールドバス」とも称されるが、説明の簡素化のため、本願においては、「フィールドネッ
トワーク」と総称する。制御装置100は、各種のフィールド機器において収集または生成されたデータ(以下、「入力データ」とも称す。)を収集する処理(入力処理)、フィールド機器に対する指令などのデータ(以下、「出力データ」とも称す。)を生成する処理(演算処理)、生成した出力データを対象のフィールド機器へ送信する処理(出力処理)等を行う。
ここで、フィールドネットワーク2は、データの到達時間が保証される、定周期通信を行うバスまたはネットワークを採用することが好ましい。このような定周期通信を行うバスまたはネットワークとしては、EtherCAT(登録商標)等が知られている。そして、フィールドネットワーク2を介して、制御装置100とフィールド機器との間で遣り取りされるデータは、数100μsecオーダ~数10msecオーダのごく短い周期で更新されることになる。なお、このような遣り取りされるデータの更新処理は、入出力リフレッシュ処理とも称される。
また、制御装置100は、上位ネットワーク6を介して、他の装置にも接続されている。上位ネットワーク6には、一般的なネットワークプロトコルであるイーサネット(登録商標)やEtherNet/IP(登録商標)が採用されてもよい。より具体的には、上位ネットワーク6には、1または複数のサーバ装置10が接続されてもよい。サーバ装置10としては、データベースシステム、製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)などが想定される。製造実行システムは、制御対象の製造装置や設備からの情報を取得して、生産全体を監視および管理するものであり、オーダ情報、品質情報、出荷情報などを扱うこともできる。これに限らず、情報系サービスを提供する装置を上位ネットワーク6に接続するようにしてもよい。
ここで、図2に基づいて、制御装置100の構成について説明する。制御装置100は、上記の通り所定の制御演算を実行する一種のコンピュータであり、当該制御演算に必要なプロセッサやメモリを備えている。当該プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などで構成される。プロセッサとしては、複数のコアを有する構成を採用してもよいし、当該プロセッサを複数配置してもよい。当該メモリとしては、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性記憶装置や、HD
D(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性記憶装置などで構成される。そして、プロセッサは、メモリに格納された各種プログラムを読出して実行することで、制御対象に応じた制御、および、後述するような各種処理を実現する。メモリには、基本的な機能を実現するためのシステムプログラムに加えて、制御対象の製造装置や設備に応じて作成されるユーザプログラム(IECプログラム51およびアプリケーションプログラム52)が格納される。
なお、本願におけるIECプログラム51とは、実行毎に全体がスキャンされて、実行毎に1または複数の指令値が演算されるプログラムであり、典型的には、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission:IEC)によって規定された国際規
格IEC61131-3に従って記述された1または複数の命令からなるプログラムを包含する。IECプログラム51には、シーケンス制御およびモーション制御の命令が含まれる。このようなIECプログラム51は、制御周期毎にすべてのプログラムが実行(スキャン)される実行形式に対応するものであり、即時性および高速性が要求される制御に好適である。一方で、本願におけるアプリケーションプログラム52は、ロボットを用いて特定の加工や動作を行うための制御プログラムであり、ロボットによる制御アプリケーションを実現するための1または複数の命令からなるプログラムを包含し、基本的には、IECプログラム51とは区別される。ロボット制御に関するアプリケーションプログラム52は、一例として、ロボット言語を用いて記述され、1行ずつ逐次実行されるインタ
プリタ方式が採用される。
そして、図2に示すように、制御装置100は、IECプログラム処理部40と、下位ネットワークインターフェイス60と、上位ネットワークインターフェイス20と、制御アプリケーション処理部30と、を有する。下位ネットワークインターフェイス60は、IECプログラム処理部40および制御アプリケーション処理部30と、フィールドネットワーク2を介して接続されているフィールド機器との間のデータの遣り取りを仲介する。上位ネットワークインターフェイス20は、IECプログラム処理部40および制御アプリケーション処理部30と、上位ネットワーク6を介して接続されているサーバ装置10との間のデータの遣り取りを仲介する。例えば、制御装置100は、上位ネットワーク6を介して接続されているサーバ装置10から、生産の開始/終了といった指示を受ける。サーバ装置10は、制御アプリケーションを動作させるためのアプリケーションプログラムおよびレシピ情報(生産に適したパラメータなどの情報)などを制御装置100に送信することもある。
IECプログラム処理部40は、予め定められた制御周期毎にIECプログラム51を実行(スキャン)して1または複数の指令値を演算する。すなわち、IECプログラム処理部40は、IECプログラム51に従って、制御周期毎に指令値を演算する。なお、本願では、モータ222を含んで構成される所定の装置を制御するためにIECプログラム51の実行が行われるものとする。そして、モーション処理部42は、IECプログラム51に含まれるモーション命令に従って、制御周期毎に指令値を演算する機能を提供する。すなわち、IECプログラム51に含まれるモーション命令は、複数の制御周期に亘る挙動を指示する命令(例えば、モータ222で構成される所定の装置の出力が何らかの軌道を描くための命令)を含む。このようなモーション命令が実行されると、実行されたモーション命令の指示内容に従って、モーション処理部42が制御周期毎に指令値を演算する。すなわち、モーション処理部42は、上記の所定の装置に対して制御周期毎に指令値を出力することで、モーション命令により指示された挙動を実現する。
次に、制御アプリケーション処理部30は、アプリケーションプログラム52およびレシピ情報などに基づいて、制御アプリケーションを制御するための指令値を演算する。なお、本願では、ロボット210を制御するためにアプリケーションプログラム52が制御アプリケーション処理部30によって実行されるものとする。制御アプリケーション処理部30は、IECプログラム処理部40による指令値の演算および出力と同期して、制御アプリケーション用の指令値を演算および出力する。すなわち、制御アプリケーション処理部30は、IECプログラム処理部40による演算処理と同期して、指令値の演算処理を実行する。なお、このIECプログラム処理部40と制御アプリケーション処理部30の同期処理については、後述する。IECプログラム処理部40による指令値の演算処理と同期した指令値の演算を実現するために、制御アプリケーション処理部30は、モーション処理部32と、バッファ33と、インタプリタ34とを含む。
インタプリタ34は、逐次アプリケーションプログラム52の少なくとも一部を解釈して中間コードを生成するとともに、生成した中間コードを格納するバッファ33を有する。本願における中間コードは、制御周期毎に指令値を演算するための命令を包含する概念であり、1または複数の命令、あるいは、1または複数の関数を含んでもよい。そして、モーション処理部32は、インタプリタ34が事前に生成しバッファ33に格納されている中間コードに従って、制御周期毎に指令値を演算する。一般的に、アプリケーションプログラム52に記述される命令(コード)は、逐次実行されるために、指令値の演算周期を保証できないが、本願開示では、このように中間コードを利用することで、モーション処理部32は、制御周期毎に指令値を演算できるようになる。中間コードにおいて記述される命令には、各制御アプリケーションに応じた座標系が用いられてもよい。
そして、IECプログラム処理部40と制御アプリケーション処理部30との間でデータを共有するために、共有メモリ31が設けられる。本願開示では、制御アプリケーション処理部30による処理結果の一部または全部が共有メモリ31に格納され、IECプログラム処理部40は、制御アプリケーション処理部30の共有メモリ31に格納されたデータを参照することができる。また、IECプログラム処理部40から制御アプリケーション処理部30の共有メモリ31へのデータ書込みも可能であってもよく、このようにIECプログラム処理部40から書込まれたデータは、インタプリタ34およびモーション処理部32から参照可能とされる。
ここで、上記の通り、ロボット210は、インタプリタ34により生成される中間コードを利用してモーション処理部32により制御されるが、更にロボット210の制御の別の態様として、モーション処理部32は、IECプログラム51の実行を起点としてロボット210を制御することも可能とする。この場合、IECプログラム51にロボット210の制御指令(モーション指令)が含まれており、先ずIECプログラム処理部40によってIECプログラム51が実行されると、そこに含まれるロボット210の制御指令がモーション処理部32に引き渡されて、その制御指令に基づいてロボット210を制御する。
このように制御装置100は、実行形式の異なるIECプログラム51とアプリケーションプログラム52の両者に従ってロボット210を制御可能に構成されているため、各プログラムの特性を踏まえて、ユーザ要求を実現するための制御システム1をフレキシブルに構築することができる。一方で、このような構成を採用することは、ロボット210が異なる種類のプログラムにより制御可能であることを意味するため、ロボット制御に関し両プログラムの実行タイミングが重複してしまうとロボット210を想定通り動作させることが難しなる。換言すれば、そのようなロボット210の好ましくない動作を回避するために、ユーザは、両プログラムの実行タイミングの相関を適切に管理する必要があり、そのユーザ負担は小さくはない。
そこで、制御装置100は、このようにロボット制御に関しIECプログラム51とアプリケーションプログラム52の実行タイミングが重複したときに、何れか一方のプログラムの実行を許可し、他方のプログラムの実行を許可しない処理、すなわち択一的な実行許可を出す処理を行う許可部35を有する。許可部35は、制御装置100において、ロボット210を制御するプログラムを、IECプログラム51とアプリケーションプログラム52の何れかに限定する。これにより、IECプログラム51とアプリケーションプログラム52の実行タイミングが重複したときにロボット210が不意な動作を取ることを回避することができる。
<プログラムの同期実行>
制御装置100においては、IECプログラム51とアプリケーションプログラム52の同期実行が実現される。制御アプリケーション処理部30のインタプリタ34は、制御周期より長い周期、例えば、制御周期の2倍分の周期毎にアプリケーションプログラム52を逐次実行する。ただし、IECプログラム処理部40のモーション処理部42および制御アプリケーション処理部30のモーション処理部32は、いずれも同一の制御周期毎に指令値を演算する。したがって、制御装置100からの指令値の出力は、いずれも予め定められた制御周期で同期して行われる。このように、IECプログラム処理部40および制御アプリケーション処理部30は、アクチュエータの動きを連続的に制御するためのモーション処理部をそれぞれ有しており、これらのモーション処理部が同期して指令値を演算することで、IECプログラム51に従う制御およびアプリケーションプログラム52に従う制御の両方を制御周期と同期させて実行することができ、これによって制御周期
単位での精密な制御が実現される。
次に、制御装置100におけるIECプログラム51およびアプリケーションプログラム52の実行タイミングの詳細について、図3に基づいて説明する。図3は、制御装置100におけるプログラムの実行タイミングの一例を示す図である。なお、制御装置100においては、プロセッサのリソースを考慮して、優先度が高い高優先度タスク(図3中の上段の処理)と優先度が低い低優先度タスク(図3中の下段の処理)が設定されている。具体的には、下位ネットワークインターフェイス60、IECプログラム処理部40とそのモーション処理部42の実行、および制御アプリケーション処理部30のモーション処理部32の実行は、高優先度タスクとして設定され、制御アプリケーション処理部30のインタプリタ34の実行は低優先度タスクとして設定されている。
すなわち、下位ネットワークインターフェイス60に関連する入出力リフレッシュ処理B60、IECプログラム51の実行処理B40、IECプログラム51に従ってモーション処理部42によって行われる指令値の演算処理B42、アプリケーションプログラム52に従ってモーション処理部32によって行われる指令値の演算処理B32、および、IECプログラム51を起点としてモーション処理部32によって行われる指令値の演算処理B32’は、高優先度タスクとして実行される。一方、アプリケーションプログラム52を逐次解釈する処理B34は、低優先度タスクとして実行される。なお、1つの制御周期T1での高優先度タスクにおいては、上述した許可部35の許可処理によって、演算処理B32と演算処理B32’については何れか一方のみが行われることになる。
ここで、高優先度タスクは、予め定められた制御周期T1毎に繰返し実行される。低優先度タスクは、各制御周期内で高優先度タスクが実行されていない期間に都度実行される。すなわち、制御周期毎に、高優先度タスクの実行時間が割当てられ、高優先度タスクの実行時間以外の時間において、低優先度タスクが実行される。
まず、高優先度タスクについて説明すると、各制御周期が到来すると、入出力リフレッシュ処理B60が実行された後、IECプログラム処理部40によりIECプログラム51の全体が実行(スキャン)されて、シーケンス制御についての1または複数の指令値が演算される(実行処理B40)。併せて、モーション処理部42によりIECプログラム51に含まれるモーション命令に関するモーション処理が実行されて、モーション命令についての1または複数の指令値が演算される(実行処理B42)。さらに、制御アプリケーション処理部30のモーション処理部32により、バッファ33に格納されている中間コードに従ってロボット210の制御用のモーション指令が準備され(実行処理B32)、又は、IECプログラム51からそこに含まれるロボット210の制御用のモーション指令が準備される(実行処理B32’)。実行処理B32が行われるか実行処理B32’が行われるかは、許可部35による許可処理に依る。その具体的な処理については後述する。以下、同様の処理が制御周期毎に繰返される。なお、モーション処理部32がバッファ33から中間コードを読み出すタイミングは、各制御周期でなくともよい。これは、読み出された中間コードは、複数の制御周期T1にわたって指令値を演算できるだけの命令を含む場合、その複数の制御周期T1においては中間コードの読み出しを一度で行える。
このように、ある制御周期における高優先度タスクの実行が完了すると、モータ222等に関するシーケンス制御についての指令値及びそのモーション制御についての指令値と、ロボット210に関する制御アプリケーションについての指令値のセットが用意される。これらの指令値は、基本的には、次の制御周期が到来すると、フィールド側に反映される。すなわち、IECプログラム処理部40および制御アプリケーション処理部30は、同一の制御周期で入力データに応じた指令値を演算するので、入力に同期した出力を実現できる。
一方、低優先度タスクについては、制御アプリケーション処理部30のインタプリタ34は、アプリケーションプログラム52を逐次実行する。すなわち、インタプリタ34は、アプリケーションプログラム52の読込みおよび解析を低優先度で実行する。インタプリタ34がアプリケーションプログラム52を解析処理して生成された中間コードは、バッファ33の容量を考慮しながら、逐次、バッファ33に格納される。バッファ33に格納された中間コードは、制御アプリケーション処理部30のモーション処理部32により順次参照されて、演算処理B32での指令値の生成に用いられる。このとき、インタプリタ34は、高優先度タスクの演算周期である制御周期の整数倍分の中間コードを事前に余分に生成しておくことで、モーション処理部32による処理に影響を与えることなく、制御アプリケーションに対する指令値を制御周期毎に演算できる。
また、インタプリタ34は、予め定められた制御アプリケーション同期周期(制御周期の整数倍)が到来する前に、アプリケーションプログラム52の解釈を一時停止する。その一時停止したタイミングで、IECプログラム処理部40と制御アプリケーション処理部30との間でデータ同期を行うことで、双方に整合性をもつデータを共有する。このように、インタプリタ34は、同期周期毎に、IECプログラム処理部40との間で共有するデータを更新する。共有データの更新に併せて、フィールド側から取得される入力データおよび出力データについても更新(データ同期)するようにしてもよい。これにより、制御アプリケーション処理部30側でも、IECプログラム処理部40で取得されたデータを利用してロボット210の制御が可能となる。制御アプリケーション同期周期は、制御周期の整数倍に設定されれば、どのような長さであってもよい。制御アプリケーションにおいて要求される制御の精度などに応じて、適宜設定される。
次に、図4~図6に基づいて、制御装置100によるフィールド機器(ロボット210及びモータ222)の処理の流れについて説明する。図4は、上述した高優先度タスクの処理に関するフローチャートであり、図5は、高優先度タスクで行われるロボット実行処理の詳細を示すフローチャートであり、図6は、上述した低優先度タスクの処理に関するフローチャートである。
先ず、高優先度タスクの処理の流れについて説明する。制御周期T1が到来すると、下位ネットワークインターフェイス60が入出力リフレッシュ処理を実行する(S101の処理)。これによって、直前の制御周期T1において演算された指令値(B40、B42、B32、B32’等による指令値)がフィールド機器のアクチュエータ等へ出力されるとともに、フィールド機器からの入力データが取得される。続いて、S102において、今回の制御周期がデータ同期のタイミングと一致するか否かが判定される。そこで肯定判定されると、IECプログラム処理部40と制御アプリケーション処理部30との間でデータ同期が実行される(S103の処理)。またS102で否定判定されると、処理はS104へ進む。
次に、S104では上記の実行処理B40が行われ、続いてS105では上記の実行処理B42が行われる。その後、S106で、ロボット210を制御するためのモーション指令の準備を行うロボット実行処理が行われる。
ここで、ロボット実行処理について、図5に基づいて説明する。先ず、S201では、ロボット210を制御する期間においてロボット210を占有するための要求である占有要求があるか否かが判定される。当該占有要求は、ロボット210に対して所定の一連の内容の制御を指示しようとするときに、その指示が開始される前に、ロボット210への制御指示を含むIECプログラム51及びアプリケーションプログラム52から制御アプリケーション処理部30に対して出されるものである。なお、出された占有要求が、後述
するS203又はS206での占有許可判定により許可されると、後述するS211での占有の解消処理が行われるまで、制御上、何れかのプログラムによりロボット210が占有された状態となる。S201で肯定判定されると処理はS202へ進み、否定判定されると処理はS220へ進む。
S202では、上記の占有要求を出してきたプログラムがアプリケーションプログラム52であるか、IECプログラム51であるかが判定される。前者である場合には処理はS203へ進み、後者である場合には処理はS206へ進む。そして、S203では、アプリケーションプログラム52から出された占有要求が許可されるか否かが判定される。当該判定が、許可部35によって行われる。当該判定においては、他方のプログラム、すなわちIECプログラム51によってロボット210の制御が占有状態となっていない場合には、アプリケーションプログラム52から出された占有要求は許可される(S203において肯定判定)。一方で、既にIECプログラム51によりロボット210の制御が占有されている場合には、当該占有要求は許可されない(S203において否定判定)。S203で肯定判定されると処理はS204へ進み、否定判定されると処理はS208へ進む。
なお、S204では、モーション処理部32によって、バッファ33から中間コードが読み出され、そして、続くS205で、モーション処理部32によって、読み出された中間コードに従って、今回の制御周期T1におけるロボット210の制御のためのモーション指令が演算され、同期制御のために準備される(演算処理B32に相当する処理)。
また、S206では、IECプログラム51から出された占有要求が許可されるか否かが判定される。当該判定も、許可部35によって行われる。当該判定においては、他方のプログラム、すなわちアプリケーションプログラム52によってロボット210の制御が占有状態となっていない場合には、IECプログラム51から出された占有要求は許可される(S206において肯定判定)。一方で、既にアプリケーションプログラム52によりロボット210の制御が占有されている場合には、当該占有要求は許可されない(S206において否定判定)。S206で肯定判定されると処理はS207へ進み、否定判定されると処理はS208へ進む。
なお、S207では、IECプログラム51に含まれている、ロボット210の制御のためのモーション指令が、同期制御のために準備される(演算処理B32’に相当する処理)。
ここで、上記S203、S206で否定判定された場合には、処理はS208へ進むが、S208では、許可部35によりエラー通知が行われる。当該エラー通知は、他方のプログラムがロボット210を制御のために占有している状態であるから、自己のプログラムから出された占有要求が許可されないことを意味する通知である。続いて、S209では、現時点で占有しているプログラムに従って、ロボット210の制御のためのモーション指令が、同期制御のために準備される。すなわち、ロボット210がアプリケーションプログラム52によって占有されている場合には、S204及びS205に相当する処理が行われ、ロボット210がIECプログラム51によって占有されている場合には、S207に相当する処理が行われることになる。
そして、S205、S207、S209の処理の後は、S210の処理が行われる。S210では、各プログラムによるロボット210の一連の制御が終了したか否かが判定される。制御の終了は、各プログラムから出される制御終了の指令等に基づいて判定することができる。S210で肯定判定されると、続くS211において、それまでのロボット210の占有状態が解かれ、その後はいずれのプログラムによっても制御上、ロボット2
10が占有されていない状態となる。S210で否定判定されると、それまでのロボット210の占有状態は維持される。
ここで、上記のS201において否定判定され、処理がS220に進んだ場合について言及する。S220では、占有要求が無かった場合(S201で否定判定された場合)において、ロボット210の制御を占有しているプログラムがあるか否かについて判定される。S220で肯定判定されると処理はS209へ進み、その時点で占有しているプログラムに従って、ロボット210の制御のためのモーション指令が、同期制御のために準備される。また、S220で否定判定されるとロボット実行処理は終了する。この場合、ロボット210の制御のためのモーション指令は準備されないことになる。
図4及び図5に示す高優先度タスクの一連の処理により演算、準備された指令値は、次の制御周期T1が到来したときにフィールドへ出力される。そして、当該一連の処理の終了後であって次の制御周期T1が到来するまでの期間において、図6に示す低優先度タスクが実行されることになる。
図6に基づいて、低優先度タスクの処理の流れについて説明する。低優先度タスクは、インタプリタ34によるアプリケーションプログラム52の解釈処理に関するものである。先ず、S301で、制御アプリケーション処理部30により、バッファ33に中間コードが残っているか否かが判定される。当該判定を行うのは、バッファ33の容量を超えた中間コードの生成を行わないようにするためである。S301で肯定判定されれば低優先度タスクは終了し、否定判定されれば処理はS302へ進む。S302では、インタプリタ34によって、アプリケーションプログラム52の一部が読み込まれる。例えば、アプリケーションプログラム52を構成するコードの一行分が読み込まれる。そして、S303では、インタプリタ34によって読込んだコードが解釈されて中間コードが生成される。生成された中間コードは、S304でバッファ33に格納される。なお、S302~S304の処理に関し、実行対象となるアプリケーションプログラムが存在しない場合にはこれらの処理は行われず、結果として、バッファ33には中間コードは格納されないことになる。このような一連の処理を有する低優先度タスクは、自身に対してプログラムの実行時間が割当てられている期間において繰返される。
図4~図6に示す一連の処理が行われることで、制御装置100において、図3に示す実行タイミングで、IECプログラム51およびアプリケーションプログラム52が実行される。特に、ロボット210のモーション制御に関して、許可部35による許可処理を介して、モーション処理部32は、IECプログラム51とアプリケーションプログラム52の何れか一方に基づいた、排他的なモーション制御を実現している。このような構成を採用することで、制御システム1を構築しようとするユーザは、ロボット210のモーション制御を許可部35の許可処理に委ねることができる。したがって、ユーザは、ロボット210を好適に制御可能な制御システム1を容易に構築することができる。
<付記1>
実行毎に全体が実行される第1の実行形式に従ったプログラム(51)と、逐次実行される第2の実行形式に従ったプログラム(52)と、を有する制御装置(100)であって、
予め定められた制御周期毎に前記第1の実行形式に従ったプログラム(51)を実行して第1の制御対象(222)を制御するための第1の指令値を演算可能に構成された第1処理部(40)と、
前記第2の実行形式に従ったプログラム(52)を実行してインタプリタ(34)により該プログラムの少なくとも一部が解釈されて生成される中間コードに従って前記制御周期毎に第2の制御対象(210)を制御するための第2の指令値を演算可能であり、且つ
、前記第1処理部(40)による、前記第1の実行形式に従ったプログラム(51)の実行を起点としても、該第2の制御対象(210)を制御するための該第2の指令値を演算可能に構成された第2処理部(30)と、
前記第1の指令値および前記第2の指令値を前記制御周期毎に出力する出力部(60)と、
前記第2の制御対象(210)を制御するために前記第1の実行形式に従ったプログラム(51)の実行のタイミングと前記第2の実行形式に従ったプログラム(52)の実行のタイミングとが重複したとき、前記第2処理部(30)に対して早くアクセスした一方のプログラムの実行のみを許可する許可部(35)と、を備える、
制御装置。
1: 制御システム
2: フィールドネットワーク
6: 上位ネットワーク
10: サーバ装置
30: 制御アプリケーション処理部
40: IECプログラム処理部
51: IECプログラム
52: アプリケーションプログラム
210: ロボット
220: サーボドライバ
222: モータ

Claims (3)

  1. 実行毎に全体が実行される第1の実行形式に従ったプログラムと、逐次実行される第2の実行形式に従ったプログラムと、を有する制御装置であって、
    予め定められた制御周期毎に前記第1の実行形式に従ったプログラムを実行して第1の制御対象を制御するための第1の指令値を演算可能に構成された第1処理部と、
    前記第2の実行形式に従ったプログラムを実行してインタプリタにより該プログラムの少なくとも一部が解釈されて生成される中間コードに従って前記制御周期毎に第2の制御対象を制御するための第2の指令値を演算可能であり、且つ、前記第1処理部による、前記第1の実行形式に従ったプログラムの実行により生成された制御指令が該第1処理部から引き渡されても、該第2の制御対象を制御するための該第2の指令値を演算可能に構成された第2処理部と、
    前記第1の指令値および前記第2の指令値を前記制御周期毎に出力する出力部と、
    前記第2の制御対象を制御するために前記第1の実行形式に従ったプログラムの実行のタイミングと前記第2の実行形式に従ったプログラムの実行のタイミングとが重複したとき、前記第2処理部に対して早くアクセスした一方のプログラムの実行のみを許可する許可部と、
    を備える、制御装置。
  2. 前記第2処理部に対して早くアクセスした前記一方のプログラムによる前記第2の制御対象の制御が終了すると、前記許可部による許可を条件として前記第1の実行形式に従ったプログラムと前記第2の実行形式に従ったプログラムのいずれもが実行可能な状態が形成される、
    請求項1に記載の制御装置。
  3. 前記許可部は、前記一方のプログラムの実行を許可した場合、プログラム実行を許可しなかった他方に関するエラー通知を行う、
    請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
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