JP7226570B2 - イオン分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、試料成分由来のプリカーサイオンにラジカルを照射することにより該プリカーサイオンを解離させて生成したプロダクトイオンを検出するイオン分析装置に関する。
高分子化合物を同定したりその構造を解析したりするために、試料成分由来のプリカーサイオンを1又は複数回解離させてフラグメントイオン(プロダクトイオンとも呼ばれる。)を生成し、質量電荷比に応じて分離し検出する質量分析法が広く利用されている。このような質量分析法を実行する装置として、例えばイオントラップ-飛行時間型質量分析装置や三連四重極型質量分析装置が用いられる。
プリカーサイオンを解離する手法としては、プリカーサイオンをアルゴンガスなどの不活性ガスに衝突させて解離を誘起する衝突誘起解離(CID: Collision Induced Dissociation)法が最も一般的である。イオントラップ-飛行時間型質量分析装置では、試料成分から生成されたイオンをイオントラップ内に捕捉し、その中から所定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別した後、これを振動させて不活性ガスに衝突させる。また、三連四重極型質量分析装置では、試料成分から生成されたイオンの中から、前段四重極マスフィルタによって所定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する。そして、前段四重極マスフィルタを通過したプリカーサイオンを加速してコリジョンセルに導入し、該コリジョンセルの不活性ガスに衝突させる。
しかし、CID法では衝突によりプリカーサイオンに付与されたエネルギーがイオン全体に分散することからプリカーサイオンが解離する位置の選択性が低い。そのため、タンパク質やペプチドを分析する際のように、特定の部位(アミノ酸の結合位置)でプリカーサイオンを解離させる必要がある場合には不向きなイオン解離法である。
本発明者は、特許文献1において、ペプチド由来のプリカーサイオンに対して水素ラジカルを照射することによって不対電子誘導型の解離を生じさせる水素付着解離(HAD: Hydrogen Attachment/Abstraction Dissociation)法を提案している。特許文献1では、外周にコイルを巻回した絶縁管の内部を真空引きして水素ガスを導入し、該コイルに高周波電力を供給することにより絶縁管の内部に真空放電を生じさせて水素ラジカルを生成し、その水素ラジカルをイオントラップ内に捕捉したプリカーサイオンに照射する。
特許文献1において、本発明者は、ヒドロキシラジカル、酸素ラジカル、あるいは窒素ラジカルを用いることによって、ペプチド由来のプリカーサイオンをアミノ酸の結合位置で特異的に解離させることも提案している。ペプチド由来のプリカーサイオンに対してこれらのラジカルを照射すると、a/x系列のプロダクトイオンやc/z系列のプロダクトイオンが生成される。
国際公開第2018/186286号 米国特許出願第2010/0171035号明細書
井本立也, 他2名, "酸化ニッケルの熱分解", 日本化学雑誌, 第86巻, 第7号, pp. 694-696 (1965) 原納淑郎, "金属酸化物の熱分解における原子状酸素の放出", 日本化学雑誌, 第82巻, 第2号, pp. 152-155 (1961)
特許文献1に記載の質量分析装置では、HAD法等を用いた試料成分の分析を繰り返すうちに、プロダクトイオンの検出感度や質量精度が低下していく。
本発明が解決しようとする課題は、試料成分由来のプリカーサイオンにラジカルを照射することにより該プリカーサイオンを解離させて生成したプロダクトイオンを検出するイオン分析装置において、プロダクトイオンの検出感度や質量精度の低下を抑制することである。
上記課題を解決するために成された本発明の第1の態様は、試料成分由来のプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成して分析するイオン分析装置であって、
前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
絶縁管と、該絶縁管の内部に放電を生じさせる放電部とを有するラジカル生成部と、
ラジカルの原料となるガスである第1ガスと、酸素ガス、オゾンガス、窒素ガス、酸素原子又は窒素原子を含む化合物のガス、及び希ガスのいずれかである第2ガスとを択一的に前記絶縁管の内部に供給可能であるガス供給部と、
前記絶縁管の内部を真空排気する真空排気部と、
前記絶縁管の内部で生成されたラジカルを前記反応室の内部に導入するラジカル導入部と、
前記ラジカル生成部、前記ガス供給部、前記真空排気部、及び前記ラジカル導入部の動作を制御する制御部であって、前記絶縁管の内部を真空排気した状態で前記第1ガスを前記絶縁管の内部に導入して放電を生じさせることによりラジカルを生成して前記反応室の内部に導入する第1動作と、前記第2ガスを前記絶縁管の内部に導入する第2動作とを実行する制御部と
を備える。
上記課題を解決するために成された本発明の第2の態様は、試料成分由来のプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成して分析するイオン分析装置であって、
前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
酸化能を有するガスである第1ガスと、還元能を有するガスである第2ガスとを供給可能であるガス供給部と、
前記第1ガスからラジカルを生成するラジカル生成部と、
前記ラジカル生成部で生成されたラジカルを前記反応室の内部に導入するラジカル導入部と、
前記ガス供給部、前記ラジカル生成部、及び前記ラジカル導入部の動作を制御する制御部であって、前記ラジカル生成部により前記第1ガスから生成したラジカルを前記反応室の内部に導入する第1動作と、前記第2ガスを前記反応室の内部に導入する第2動作とを実行する制御部と
を備える。
上記課題を解決するために成された本発明に係るイオン分析装置の第3の態様は、試料成分由来のプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成して分析するイオン分析装置であって、
前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
前記反応室の内部に酸化能を有するガス又はラジカルを導入する酸化反応物導入部と、
前記反応室及び/又は該反応室に連通する空間に配置され、酸化物の熱分解温度が500℃以下である金属によって表面が形成された電極と、
前記電極を前記熱分解温度に加熱する加熱部と
を備える。
上記第1の態様のイオン分析装置では、制御部による制御の下で、絶縁管の内部を真空排気した状態で第1ガスを絶縁管の内部に導入して放電を生じさせることによりラジカルを生成して反応室の内部に導入する第1動作と、第2ガスを絶縁管の内部に導入する第2動作とを実行する。この第1動作は試料成分由来のプリカーサイオンとラジカルを反応させてプロダクトイオンを生成するために行う測定動作である。
内部が真空排気された絶縁管の内部に真空放電を生じさせてラジカルを生成する場合には、一般に金属酸化物や金属窒化物からなる絶縁管が用いられる。従来のイオン分析装置において試料成分を分析する動作を繰り返すうちにプロダクトイオンの検出感度が低下するのは、絶縁管の内部で生じる放電によって内壁面の金属酸化物や金属窒化物から金属元素が析出し、その金属元素にラジカルが付着して消失するために、反応室に導入されるラジカル量が減少することによると考えられる。第1の態様のイオン分析装置では、第1動作に加え、非測定時に第2ガスを絶縁管の内部に導入する第2動作を行う。このとき、第2ガスとして、酸素ガス、オゾンガス、窒素ガス、及び酸素原子又は窒素原子を含む化合物のガスのいずれかを用いると、絶縁管の内壁面に析出した金属元素が第2ガスに含まれる酸素原子又は窒素原子と反応し、ラジカルを消失させる金属元素が金属酸化物や金属窒化物に変化するため、測定時に反応室に導入されるラジカル量の減少を抑えてプロダクトイオンの検出感度の低下を抑制することができる。また、第2ガスとして希ガスを用いると、絶縁管の内壁面に希ガスの原子を衝突させ、析出した金属元素を除去することにより上記同様の効果を得ることができる。
なお、第1の態様のイオン分析装置における第1ガスと第2ガスは同一種類のガスであってもよく、異なる種類のガスであってもよい。例えば、試料成分由来のプリカーサイオンに酸素ラジカルを照射する場合、第1ガス及び第2ガスとして酸素ガスを用いることができる。
また、第2ガスの導入時には、紫外光を絶縁管内壁に照射することが好ましい。これにより光電子が絶縁管表面から放出され、上記の効果を向上させることもできる。例えば、紫外光が透過しやすい石英管を絶縁管として選択すれば、石英管の外に設置した紫外ランプなどで絶縁管内部に紫外光を照射することができる。石英を構成する二酸化ケイ素の仕事関数は4eV以上であり波長では300nmに相当することから、紫外光の波長は300nm以下、好ましくは280nm以下、さらに好ましくは260nm以下であることが望ましい。このような紫外光源は殺菌灯として販売されたものがあるため入手が容易である。また、発光ダイオードを用いることも可能である。
第2の態様のイオン分析装置では、制御部による制御の下で、第1ガスからラジカルを生成して反応室の内部に導入する第1動作と、第2ガスからラジカルを生成してラジカル導入部により反応室の内部に導入する第2動作とを実行する。第1動作は試料成分由来のプリカーサイオンとラジカルを反応させてプロダクトイオンを生成するために行う測定動作である。
上記反応室は、例えばコリジョンセルやイオントラップである。イオン分析装置で用いられるコリジョンセルやイオントラップは、一般に金属製の電極を有しており、その電極に所定の高周波電圧や直流電圧を印加することでイオンを質量分離したり、捕捉したり、あるいは収束させたりする。従来のイオン分析装置において試料成分を分析する動作(酸化能を有するガスから生成したラジカルを反応室に導入する動作)を繰り返すうちにプロダクトイオンの検出感度や質量精度が低下するのは、反応室内の電極表面に絶縁性の金属酸化物が付着し、反応室内部に形成される電場に乱れが生じることによると考えられる。第2の態様のイオン分析装置では、非測定時に第2動作を行うことで、電極表面に形成された金属酸化物を第2ガスによって還元するため、第1動作による試料成分の分析を行う際のプロダクトイオンの検出感度や質量精度の低下を抑制することができる。
なお、第2の態様のイオン分析装置における第1ガスと第2ガスは同一種類のガスであってもよい。第1ガス及び第2ガスとして同一種類のガスを用いる場合には、第1動作を行う際の使用条件よりも還元性が強くなる使用条件(加熱温度、ラジカル化の有無等)で第2動作を行うとよい。例えば、二酸化炭素や水蒸気は、第1ガス及び第2ガスとして用いることができる。
第3の態様のイオン分析装置においても、上記第2の態様のイオン分析装置と同様に、酸化能を有するガス又はラジカルによって試料成分由来のプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成する。そのため、酸化能を有するガスやラジカルを反応室に導入してプリカーサイオンを生成する分析を繰り返し行ううちに、該反応室内に配置された電極や、反応室に連通する空間(例えば、イオン輸送光学系や質量分離部)に配置された電極の表面が酸化されていく。その結果、当該電極により形成される電場に乱れが生じてイオンの検出感度や質量精度が低下する。
電極の表面に形成された酸化物を除去するために、該電極を加熱することが考えられる。しかし、従来、電極材料として一般的に用いられているステンレスの主たる成分は鉄、ニッケル、クロムであり、例えば酸化ニッケルの分解温度は約700℃という高温である(非特許文献1参照)。ステンレスからなる電極の表面に形成された酸化物を除去するにはこのような高温に電極を加熱する必要があるが、こうした電極を500℃超の高温に加熱すると、膨張や歪みが生じてイオンの挙動を制御する電場に乱れが生じる可能性がある。第3の態様のイオン分析装置では、反応室及び/又は反応室に連通する空間において、酸化物の熱分解温度が500℃以下である金属によって表面が形成された電極を用いるため、電極に膨張や歪みを生じさせることなく酸化物を除去し、プロダクトイオンの検出感度や質量精度の低下を抑制することができる。酸化物の熱分解温度が500℃以下である金属としては、例えば、金、白金、イリジウム、パラジウム、又は銀が挙げられる(非特許文献2等を参照)。
本発明に係るイオン分析装置の第1実施例の質量分析装置の要部構成図。 第1実施例の質量分析装置におけるラジカル生成・照射部の要部構成図。 第1実施例の質量分析装置において、新品の絶縁管を用いてフラーレンイオンに酸素ラジカルを照射することにより得られたマススペクトル。 第1実施例の質量分析装置において、繰り返し放電を行った後にフラーレンイオンに酸素ラジカルを照射することにより得られたマススペクトル。 第1実施例の質量分析装置において、酸素ラジカルの照射による回復処理を行った後にフラーレンイオンに酸素ラジカルを照射することにより得られたマススペクトル。 本発明に係るイオン分析装置の第2実施例の質量分析装置の要部構成図。 第2実施例の質量分析装置におけるラジカル生成・照射部の要部構成図。 第2実施例の質量分析装置を用いてフラーレンイオンに酸素ラジカルを照射したときにイオンがコリジョンセルを通過する時間を求めた結果を示すグラフ。 本発明に係るイオン分析装置の第3実施例の質量分析装置の要部構成図。 第3実施例の質量分析装置におけるラジカル生成・照射部の要部構成図。 第3実施例の質量分析装置を用いてラジカルの照射と電極の加熱を繰り返し行い、コリジョンセルをイオンが通過する時間の変化を測定した結果を示すグラフ。
(第1実施例)
本発明に係るイオン分析装置の一実施例である、第1実施例の質量分析装置について、以下、図面を参照して説明する。第1実施例の質量分析装置は、イオントラップ-飛行時間型(IT-TOF型)質量分析装置である。
図1に第1実施例のイオントラップ-飛行時間型質量分析装置(以下、単に「質量分析装置」と呼ぶ。)の概略構成を示す。第1実施例の質量分析装置は、真空雰囲気に維持される図示しない真空チャンバの内部に、試料中の成分をイオン化するイオン化源1と、イオン化源1で生成されたイオンを高周波電場の作用により捕捉するイオントラップ2と、イオントラップ2から射出されたイオンを質量電荷比に応じて分離する飛行時間型質量分離部3と、分離されたイオンを検出するイオン検出器4とを備える。第1実施例のイオントラップ質量分析装置はさらに、イオントラップ2内に捕捉されているイオンを解離させるべく該イオントラップ2内に捕捉されたプリカーサイオンにラジカルを照射するためのラジカル生成・照射部5(本発明におけるラジカル生成部及びラジカル導入部に相当)と、不活性ガス供給部6と、トラップ電圧発生部71と、機器制御部72と、制御・処理部9とを備える。
第1実施例の質量分析装置のイオン化源1には、ESI源やMALDI源など、試料成分のイオン化に適した種類のイオン化源が用いられる。第1実施例のイオントラップ2は、円環状のリング電極21と、該リング電極21を挟んで対向配置された一対のエンドキャップ電極(入口側エンドキャップ電極22、出口側エンドキャップ電極24)とを含む三次元イオントラップである。リング電極21にはラジカル粒子導入口26とラジカル粒子排出口27が、入口側エンドキャップ電極22にはイオン導入孔23が、出口側エンドキャップ電極24にはイオン射出孔25が、それぞれ形成されている。トラップ電圧発生部71は、機器制御部72からの指示に応じてリング電極21、入口側エンドキャップ電極22、及び出口側エンドキャップ電極24のそれぞれに対して所定のタイミングで高周波電圧と直流電圧のいずれか一方又はそれらを合成した電圧を印加する。
ラジカル生成・照射部5は、内部にラジカル生成室51が形成されたノズル55と、ラジカル生成室51を真空排気する真空ポンプ(真空排気部)57と、ラジカル生成室51内で真空放電を生じさせるためのマイクロ波を供給する誘導結合型の高周波プラズマ源54とを備えている。マイクロ波の周波数は、例えば2.45GHzである。ノズル55の出口側には、スキマー56が設けられている。
ラジカル生成・照射部5は、さらに、ラジカルの原料となるガス(第1ガス)を供給する第1ガス供給源52と、ラジカル生成室51の内部をリフレッシュするためのガス(第2ガス)を供給する第2ガス供給源53とを備えている。第1ガス供給源52からラジカル生成室51に至る流路には、第1ガスの流量を調整するためのバルブ58が設けられている。また、第2ガス供給源53からラジカル生成室51に至る流路にも同様に、第2ガスの流量を調整するためのバルブ59が設けられている。
第1ガスには、試料成分由来のプリカーサイオンを解離させようとする位置に応じた種類のラジカルを生成するものが用いられる。そうしたラジカルは、例えば、ヒドロキシルラジカル、酸素ラジカル、窒素ラジカル、及び水素ラジカルのうちの少なくとも1つを含むものとすることができる。こうしたラジカルを生成可能である原料ガスとしては、例えば、酸素ガス、窒素ガス、水蒸気、及び空気が挙げられる。これらのガスは安価で、また取り扱いが安全であるという点からも原料ガスとして好ましい。ただし、使用可能である原料ガス及びラジカル種はこれらに限定されない。塩化物、硫黄化合物、フッ化物、水酸化物、酸化物、及び炭化物など、種々のガスからラジカルを生成し解離反応に用いることもできる。
第2ガスには酸素ガス、オゾンガス、窒素ガス、酸素原子又は窒素原子を含む化合物のガス、及び希ガスのいずれかが用いられる。
図2に示すように、ノズル55は、電気絶縁体からなる管状体551を有しており、その内部空間がラジカル生成室51となる。電気絶縁体としては、例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ホウ酸、酸化ナトリウム、酸化カリウム、二酸化ケイ素、窒化アルミニウムといった金属酸化物や金属窒化物を用いることができる。なお、本明細書における金属にはケイ素が含まれる。管状体551の外周にはスパイラルアンテナ552(図2の破線)が巻回されている。本実施例のスパイラルアンテナ552は、導電性のコイルを15回、周回させたものである。スパイラルアンテナ552には、例えばタングステンコイルを用いることができる。スパイラルアンテナ552の材質及び巻き数は一例であって、適宜に変更することができる。また、ノズル55には、マイクロ波供給源541とスリースタブチューナー542を有する高周波プラズマ源54が接続されており、高周波プラズマ源54からスパイラルアンテナ552に高周波電力が供給される。なお、第1実施例では誘導結合型の高周波放電によりプラズマを生成する高周波プラズマ源54を用いているが、容量結合型等、従来知られている種々の高周波放電によりプラズマを生成することができる。
不活性ガス供給部6は、バッファガスやクーリングガスなどとして使用される不活性ガス(例えばヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンなど)を供給する不活性ガス供給源61と、流量を調整可能であるバルブ62と、ガス導入管63とを含む。
制御・処理部9は、記憶部91のほかに、機能ブロックとして動作モード選択部92及び動作制御部93を備えている。動作制御部93には、測定動作を制御する第1動作制御部931、及びメンテナンス動作を制御する第2動作制御部932を有しており、予めインストールされた質量分析用プログラムを実行することによりこれらの機能ブロックが具現化される。制御・処理部9の実体は一般的なコンピュータであり、入力部98及び表示部99が接続されている。
機器制御部72は、制御・処理部9の動作制御部93からの制御信号を受けて、イオン化源1、トラップ電圧発生部71、ラジカル生成・照射部5、及び不活性ガス供給部6等の動作を制御する。
次に、第1実施例の質量分析装置における第1動作(測定動作)及び第2動作(メンテナンス動作)を説明する。使用者が質量分析用プログラムを実行すると、動作モード選択部92は、表示部99に第1動作モード(測定)と第2動作モード(メンテナンス)の選択画面を表示する。第1動作モードが選択されると、第1動作制御部931から機器制御部72に所定の制御信号が送信され、各部の動作が制御される。また、第2動作モードが選択されると、第2動作制御部932から機器制御部72に所定の制御信号が送信され各部の動作が制御される。
使用者が第1動作モードを選択すると、イオン化源1等を収容している真空チャンバ内が、図示しない真空ポンプにより所定の真空度まで排気される。また、ラジカル生成室51も真空ポンプ57により所定の真空度まで排気される。続いて、第1ガス供給源52から第1ガスがラジカル生成・照射部5のラジカル生成室51に供給される。そして、高周波プラズマ源54からスパイラルアンテナ552に高周波電力(マイクロ波)が供給されて、ラジカル生成室51の内部でラジカル生成される。
イオン化源1においてペプチド混合物などの試料から生成された各種イオン(主として1価のイオン)はパケット状にイオン化源1から射出され、入口側エンドキャップ電極22に形成されているイオン導入孔23を経てイオントラップ2の内部に導入される。イオントラップ2内に導入されたペプチド由来のイオンは、トラップ電圧発生部71からリング電極21に印加される電圧によってイオントラップ2内に形成される高周波電場で捕捉される。そのあと、トラップ電圧発生部71からリング電極21等に所定の電圧が印加され、それによって目的とする特定の質量電荷比を有するイオン以外の質量電荷比範囲に含まれるイオンは励振され、イオントラップ2から排除される。これにより、イオントラップ2内に、特定の質量電荷比を有するプリカーサイオンが選択的に捕捉される。
続いて、不活性ガス供給部6のバルブ62が開放され、不活性ガス供給源61からイオントラップ2内にヘリウムガスなどの不活性ガスが導入される。これによりプリカーサイオンがクーリングされ、イオントラップ2の中心付近に収束される。その後、ラジカル生成・照射部5のバルブ58が開放され、ラジカル生成室51に第1ガスが供給されラジカルが生成される。生成されたラジカルはノズル55の先端から噴出し、イオントラップ2内に捕捉されているプリカーサイオンに照射される。
バルブ58の開度等は一定の状態に維持されており、イオンには所定流量のラジカルが照射される。また、プリカーサイオンへのラジカルの照射時間も適宜に設定されている。この照射時間に応じてバルブ58を開閉し、あるいはマイクロ波の供給を開始・停止する。バルブ58の開度やラジカルの照射時間は、予備実験の結果等に基づき事前に決めておくことができる。ラジカルが照射されると、プリカーサイオンに不対電子誘導型の解離が生じてプロダクトイオンが生成される。生成された各種プロダクトイオンはイオントラップ2内に捕捉され、不活性ガス供給部6からのヘリウムガス等によってクーリングされる。そのあと、所定のタイミングでトラップ電圧発生部71から入口側エンドキャップ電極22と出口側エンドキャップ電極24に直流電圧が印加され、これにより生成される電位勾配によりイオントラップ2内に捕捉されていたイオンは加速されて、イオン射出孔25を通して一斉に射出される。ここで生成されるプロダクトイオンには、フラグメントイオンとアダクトイオンの両方が含まれ得る。
イオントラップ2から射出されたプロダクトイオンは飛行時間型質量分離部3の飛行空間に導入され、飛行空間を飛行する間に質量電荷比に応じて分離される。イオン検出器4は分離されたイオンを順次検出し、この検出信号を受けた制御・処理部9は、例えばイオントラップ2からのイオンの射出時点を時刻ゼロとする飛行時間スペクトルを作成する。そして、予め求めておいた質量校正情報を用いて飛行時間を質量電荷比に換算することにより、プロダクトイオンスペクトルを作成する。制御・処理部9ではこのマススペクトルから得られる情報(質量情報)等に基づく所定のデータ処理を行うことで、試料中の成分を同定する。
使用者が第2動作モードを選択すると、動作モード選択部92は、表示部99に、通常モードと短時間モードの選択画面を表示する。使用者が通常モードを選択すると、バルブ59が解放され、管状体551の内部に第2ガスが送給される。バルブ59は予め決められた時間、解放され、その間、管状体551の内部を第2ガスが流通し続ける。あるいは、管状体551の内部の空気を第2ガスに置換した状態で所定時間待機するようにしてもよい。
第1動作モードでは電気絶縁体からなる管状体551の内部で真空放電を生じさせ、第1ガスからラジカルを生成する。これが繰り返し行われると、その放電によって管状体551の内壁面に金属元素が析出する。管状体551の内壁面に金属元素が多く析出した状態で第1動作モードを実行すると、管状体551の内部で生成したラジカルが金属元素に付着して消失し、イオントラップ2に導入されるラジカル量が減少する。これは、試料成分由来のプリカーサイオンに照射されるラジカル量の減少を意味するため、該プリカーサイオンの解離効率が低下し、生成されるプロダクトイオンの量が減少する。
第2動作モードは、上記の問題を解決するために行うメンテナンスモードである。上記通常モードでは、管状体551の内部に第2ガスを流通させる。上記の通り、第2ガスは例えば酸素ガス、オゾンガス、窒素ガス、酸素原子又は窒素原子を含む化合物のガス、及び希ガスのいずれかである。管状体551の内部に希ガス以外の第2ガスを導入すると、管状体551の内壁面に析出した金属元素が酸素原子又は窒素原子と結合して金属酸化物又は金属窒化物に変化する。第2ガスとして希ガスを管状体551の内部に導入すると、絶縁管の内壁面に原子を衝突させて、析出した金属元素を除去することができる。従って、第1動作モードによる測定時に管状体551の内部でラジカルが消失するのを抑制することができる。通常モードの実行時間及びバルブ59の開度は、第1動作モードにおけるプロダクトイオンの検出感度の低下の程度(管状体551の内部でのラジカルの消失量)に応じて適宜に決めればよい。検出感度の低下の程度と通常モードの実行時間等の関係は、例えば予備実験を行うことにより導出することができる。
一方、使用者が短時間モードを選択すると、真空ポンプ57によりラジカル生成室51が所定の真空度まで排気される。続いて、第2ガス供給源53から第2ガスが管状体551の内部に供給される。そして、高周波プラズマ源54からスパイラルアンテナ552に高周波電力(マイクロ波)が供給されることにより、ラジカル生成室51の内部でラジカル生成される。希ガス以外の第2ガスから生成されるラジカルには、酸素ラジカル又は窒素ラジカルが含まれる。酸素ラジカルや窒素ラジカルは、第2ガスそのもの(非ラジカル種)よりも反応性が高いため、通常モードよりも短時間で管状体551の内壁面に析出した金属元素と結合し、該金属元素を金属酸化物又は金属窒化物に変化させることができる。第2ガスとして希ガスを用いた場合は、比較的質量値の大きい希ガスの単原子イオンが管状体551の内壁面に析出した金属元素に衝突し、該金属元素が除去される。
第1動作モードによるラジカル生成を行う前に第1ガスの分子が管状体551の内壁面に付着していると、第1動作モードを実行したときにそれらの分子からもラジカルが生成されてラジカル生成量が多くなる。その結果、試料成分由来のプリカーサイオンに照射されるラジカル量が増加し、プリカーサイオンの解離効率が増大して生成されるプロダクトイオンの量が増加する。この効果は、例えば第1ガスが水蒸気である場合に顕著に現れる。しかし、放電を繰り返すと管状体551の内壁面に付着している第1ガスの分子の量が減少してその効果が薄れ、生成されるプロダクトイオン量が減少する。そこで、管状体551の内壁面を粗面や多孔質な面としておくことが好ましい。これにより管状体551の内壁面に第1ガスの分子が付着しやすくなる。また管状体551の内壁面の表面積が大きくなり付着可能な分子の量が増大する。粗面や多孔質な面の形成は、例えば、表面はサンドペーパーなどを用いた表面処理により行うことができる。
ここで、第1実施例の質量分析装置において発明者が行った測定結果を説明する。
図3~図5は、水を原料ガスとして高周波放電して得られたラジカルを、イオントラップ2内に捕捉したフラーレン由来のプリカーサイオンに照射して得られたプロダクトイオン(酸素付加イオン)のマススペクトルである。図3は管状体551が新品の酸化アルミニウム管である場合の結果であり、多数の酸素ラジカルが付着していることが確認できる。図4は、放電を数百回繰り返した後の測定結果である。フラーレン由来のプリカーサイオンに酸素ラジカルが1個程度しか付着しておらず、ラジカルの生成効率が悪化していることが分かる。
図5は、管状体551内に酸素ガスを導入して数Wの微弱な電力で5分間放電した後の測定結果である。図4と比較すると、プリカーサイオンに付着した酸素ラジカル量が増加している。つまり、ラジカル生成・照射部5で生成されイオントラップ2内のフラーレン由来のプリカーサイオンに照射されたラジカル量が回復している。これは、上述のように、絶縁体(ここではアルミナ)からなる管状体551の内壁面に析出した金属元素(ここではアルミニウム)に酸素が結合したことにより、内壁面が酸化アルミニウム(Al2O3)に復元したことによるものと考えられる。この測定では酸素ガスの放電により酸素ラジカルを生成したが、水や酸化窒素など、酸素ラジカルが生成され得る原料ガスを放電することでも同様の結果が得られる。また、復元に要する時間は長時間となるが、放電をすることなく酸素ガスや水蒸気をアルミナ管に導入する、上記通常モードでも同様の効果を得ることが可能である。さらに、アルゴンガスやキセノンガスなどの希ガスを放電することによっても上記同様の結果が得られた。これは、希ガスの放電により生成されたイオンや電子が内壁面に衝突し、該内壁面に析出した金属元素が除去されたことによるものであると考えられる。
(第2実施例)
次に、本発明に係るイオン分析装置の別の一実施例である、第2実施例の質量分析装置について、以下、図面を参照して説明する。第2実施例の質量分析装置は、三連四重極型質量分析装置である。
図6は第2実施例の質量分析装置の概略構成図である。第2実施例の質量分析装置は、チャンバ8内に収容された、略大気圧であるイオン化室80と真空ポンプ(図示なし)により真空排気された高真空の分析室83との間に、段階的に真空度が高められた第1中間真空室81及び第2中間真空室82を備えた多段差動排気系の構成を有している。イオン化室80には、イオン化源801が配置される。イオン化源801には、例えばESIプローブが用いられる。イオンを収束させつつ後段へ輸送するために、第1中間真空室81にはイオンガイド811が、第2中間真空室82にはイオンガイド821が、それぞれ設置されている。分析室83には、イオンを質量電荷比に応じて分離する前段四重極マスフィルタ831、多重極イオンガイド833が内部に設置されたコリジョンセル832、イオンを質量電荷比に応じて分離する後段四重極マスフィルタ834、及びイオン検出器835が設置されている。
イオンガイド811、821、前段四重極マスフィルタ831、多重極イオンガイド833、及び後段四重極マスフィルタ834は、いずれも、所定の高周波電圧や直流電圧が印加されることによりイオンガイドやマスフィルタとして機能する。これらの電極には、通常、金属性のものが用いられる。多くの場合、ステンレス製のものが用いられる。また、好ましくは、金メッキや白金メッキされた金属製のものが用いられる。イオンガイド811、821、前段四重極マスフィルタ831、多重極イオンガイド833、及び後段四重極マスフィルタ834には、ヒータ73が接続されている。ここでは、ヒータ73をすべての金属電極に接続しているが、コリジョンセル832内の多重極イオンガイド833のみに接続してもよい。これらの電極を加熱するヒータ73として、例えばポリイミドヒータを用いることができる。
図6にはヒータ73によりイオンガイド811、821、前段四重極マスフィルタ831、多重極イオンガイド833、及び後段四重極マスフィルタ834を加熱する構成を示したが、コリジョンセル832等の内部に赤外線ランプを配置し、該コリジョンセル832内の多重極イオンガイド833等を輻射加熱する構成を採ることもできる。また、コリジョンセル832に赤外線を透過する窓部を設け、コリジョンセル832の外部からその窓部を通じて多重極イオンガイド833等を輻射加熱する構成を採ることもできる。もちろん、赤外線ランプに限らず、レーザ光源やLED光源を用いることも可能である。さらには、赤外線以外の波長帯域の光で各電極を輻射加熱することも可能である。電極を輻射加熱する構成を採ることにより、非接触で上記電極を加熱することができる。
ラジカル生成・照射部5は、第1実施例と同様の構成を有しているが、ノズル55の出口端に輸送管60が設けられている点において異なる。輸送管60の、ノズル55と反対側の先端部分は、コリジョンセル832の壁面に沿うように配設されている。輸送管60には、例えば絶縁体からなるものが用いられる。そうした絶縁体の例は、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ホウ酸、酸化ナトリウム、酸化カリウム、二酸化ケイ素、窒化アルミニウムといった金属酸化物や金属窒化物である。
また、ラジカル生成・照射部5は、第1実施例と同様に、第1ガス供給源52及び第2ガス供給源53(図6では図示略)を有する。但し、第2実施例における第1ガスは、酸化能を有するガスであり、例えば、酸素ガス、オゾンガス、又は酸素原子を含む化合物(例えば水)のガスを含んだガスである。また、第2実施例における第2ガスは、還元能を有するガスである。還元能を有するガスとしては、例えば、水素ガス、窒素ガス、あるいは一酸化炭素等の水素原子、窒素原子、又は酸素原子を含む化合物が挙げられる。図6及び図7では、第1ガスと第2ガスを同じラジカル生成室51に導入する構成としているが、ノズル55を2つ用いて第1ガスと第2ガスが導入されるラジカル生成室51を個別に設けてもよい。
図7に示すように、輸送管60のうち、コリジョンセル832の壁面に沿って配設された部分には、5つのヘッド部601が設けられている。各ヘッド部601には傾斜したコーン状の噴射口が設けられており、イオンの飛行方向(イオン光軸C)と交差する方向にラジカルが噴射される。これにより、イオン光軸Cに沿って飛行するイオンとラジカルの接触機会を増やし、より多くのラジカルをプリカーサイオンに付着させることができる。この例では、各ヘッド部601から同じ方向にラジカルを噴射するように噴射口を設けたが、各ヘッド部601から異なる方向にラジカルを噴射し、コリジョンセル832の内部空間の全体にラジカルを満遍なく噴射するように構成してもよい。ヘッド部601の数や形状は一例にすぎず、コリジョンセル832の長さ等に応じて適宜に変更可能である。
不活性ガス供給部6は、第1実施例と同様の構成を有している(図6には不活性ガス供給源61及びガス導入管63のみを図示)。以下に説明する測定例ではラジカルの照射によりプリカーサイオンに不対電子誘導型の解離を生じさせるため、不活性ガス供給部6は使用しない。不活性ガス供給部6は、試料成分由来のプリカーサイオンを衝突誘起解離(CID: Collision Induced Dissociation)法により解離する場合に用いられる。
制御・処理部9は、記憶部91のほかに、機能ブロックとして動作モード選択部94及び動作制御部95を備えている。動作制御部95には、測定動作を制御する第1動作制御部951、及びメンテナンス動作を制御する第2動作制御部952を有しており、予めインストールされた質量分析用プログラムを実行することによりこれらの機能ブロックが具現化される。制御・処理部9の実体は一般的なコンピュータであり、入力部98及び表示部99が接続されている。
機器制御部72は、制御・処理部9の動作制御部95からの制御信号を受けて各部の動作を制御する。
次に、第2実施例の質量分析装置における第1動作(測定動作)及び第2動作(メンテナンス動作)を説明する。使用者が質量分析用プログラムを実行すると、動作モード選択部94は、表示部99に第1動作モード(測定)と第2動作モード(メンテナンス)の選択画面を表示する。第1動作モードが選択されると、第1動作制御部951から機器制御部72に所定の制御信号が送信され、各部の動作が制御される。また、第2動作モードが選択されると、第2動作制御部952から機器制御部72に所定の制御信号が送信され各部の動作が制御される。
使用者が第1動作モードを選択すると、チャンバ8内の第1中間真空室81、第2中間真空室82、及び分析室83が図示しない真空ポンプにより所定の真空度まで排気される。また、ラジカル生成室51(ノズル55の内部)も真空ポンプ57により所定の真空度まで排気される。続いて、第1ガス供給源52から第1ガスがラジカル生成・照射部5のラジカル生成室51に供給される。そして、高周波プラズマ源54からスパイラルアンテナ552に高周波電力(マイクロ波)が供給され、ラジカル生成室51の内部でラジカル生成される。
イオン化源801において試料から生成された各種イオンは第1中間真空室81内のイオンガイド811及び第2中間真空室82内のイオンガイド821により収束されて分析室83に進入する。分析室83内では、前段四重極マスフィルタ831により所定の質量電荷比を有するイオンがプリカーサイオンとして選別される。
前段四重極マスフィルタ831を通過したプリカーサイオンがコリジョンセル832に進入するタイミングに合わせて(あるいはそれよりも前の時点で)、ラジカル生成・照射部5のバルブ58が開放され、ラジカル生成室51に第1ガスが供給されラジカルが生成される。生成されたラジカルは輸送管60及びヘッド部601を通じてラジカルがコリジョンセル832内に噴出し、コリジョンセル832を飛行するプリカーサイオンに照射される。
バルブ58の開度等は一定の状態に維持されており、イオンには所定流量のラジカルが照射される。バルブ58の開度は、プリカーサイオンがコリジョンセル832内を飛行する時間等に応じて、予備実験の結果等に基づき事前に決めておくことができる。ラジカルが照射されると、プリカーサイオンに不対電子誘導型の解離が生じてプロダクトイオンが生成される。生成された各種プロダクトイオンは後段四重極マスフィルタ834に進入し、質量分離された後、イオン検出器835で検出される。
使用者が第2動作モードを選択すると、動作モード選択部94は、表示部99に、通常モードと短時間モードの選択画面を表示する。使用者が通常モードを選択すると、第2動作制御部952によってバルブ59が解放され、コリジョンセル832の内部に第2ガスが送給される。コリジョンセル832に導入された第2ガスは、コリジョンセル832の入口及び出口からチャンバ8の内部に流出する。また、これと並行して、第2動作制御部952は、ヒータ73(あるいは赤外線ランプ等の輻射光源。以下では輻射光源の記載を省略。)を動作させて各電極を所定の温度に加熱する。
第1動作モードではコリジョンセル832の内部に第1ガスから生成されたラジカルが導入される。上述の通り、第1ガスは酸化能を有するガスであり、例えば、酸素ガス、オゾンガス、又は酸素原子を含む化合物(例えば水)のガスを含んだガスである。これらのガスからは酸素ラジカルやヒドロキシラジカルが生成され、コリジョンセル832内に導入される。酸素ラジカルやヒドロキシラジカルが繰り返しコリジョンセル832に導入されると、コリジョンセル832内の多重極イオンガイド833の表面が酸化される。また、コリジョンセル832の入口及び出口から流出するラジカルによって他の電極の表面も酸化されうる。
第1動作モードによる測定を繰り返し行うと、電極表面の酸化が進行していく。金属酸化物の多くは絶縁物であり、電極表面に絶縁膜が形成されると、電圧印加時に不所望のチャージアップが生じる。こうした状態で第1動作モードによる測定を行うと、それらに所定の高周波電圧や直流電圧を印加しても所期の電場が形成されなくなる。その結果、イオンガイドやマスフィルタの動作精度が悪くなり、プロダクトイオンの検出感度が低下したり質量精度が低下したりする。
第2動作モードは、上記の問題を解決するために行うメンテナンスモードである。上記通常モードでは、コリジョンセル832内に還元能を有するガスを導入する。上記の通り、第2ガスは、水素ガスや窒素ガスなどの還元能を有するガスを含んでいる。コリジョンセル832内に第2ガスを導入すると、酸化された金属電極の表面が還元される。これにより電極表面の絶縁物(金属酸化物)が除去され、再び電圧印加時に所期の電場が形成されるようになる。コリジョンセル832内の電極においてこの効果は特に顕著であるが、それ以外の場所に位置する電極についても同様の効果が得られる。
また、第2実施例では、金属酸化物の還元反応を促進するために、ヒータ73によって各電極を加熱する。この温度は、例えば50℃以上であり、好ましくは75℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは125℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。
コリジョンセル832に導入された試料分子が電極表面に付着し、その試料分子にラジカルが照射されて絶縁膜が形成されることもある。例えば、有機試料を測定するとポリビニルアルコールなどの有機絶縁物が形成されうる。ポリビニルアルコール等は約50℃で変性することから、ヒータ73により電極を50℃以上に加熱するとこうした絶縁物を除去することができる。また、生体由来の試料を測定するとタンパク質などに由来する絶縁物が形成されうる。一部のタンパク質等は約75℃で変性することから、ヒータ73により電極を75℃以上に加熱するとこうした絶縁物も除去することができる。さらに、電極の温度を100℃以上にすると電極表面が水の沸点以上に加熱されて絶縁膜を除去する反応の活性が高められ、125℃以上にすると飽和炭化水素であるオクタンの沸点以上に加熱されて絶縁膜を除去する反応の活性がさらに高められる。電極表面に金メッキが施されている場合、その酸化により電極表面に酸化金が形成される。酸化金は約160℃で分解されることから、ヒータ73により電極を160℃以上に加熱することがさらに好ましい。
一方、使用者が短時間モードを選択すると、真空ポンプ57によりラジカル生成室51が所定の真空度まで排気される。続いて、第2ガス供給源53から第2ガスがラジカル生成室51に供給される。そして、高周波プラズマ源54からスパイラルアンテナ552に高周波電力(マイクロ波)が供給されることにより、ラジカル生成室51の内部でラジカル生成される。第2ガスから生成されるラジカルには、還元能を有する水素ラジカルや窒素ラジカルが含まれる。水素ラジカルや窒素ラジカルは、第2ガスそのもの(非ラジカル種)よりも反応性が高いため、金属電極表面をより短時間で還元させることができる。また、通常モードと同様にヒータ73により各電極を加熱することによってもさらに金属酸化物の還元反応が促進される。
従来行われている、衝突誘起解離によりプリカーサイオンを解離させるMS/MS測定では、不活性ガス供給部6からコリジョンセル832にコリジョンガス(アルゴンなどの不活性ガス)が0.1Pa程度導入される。コリジョンセル832を通過するプリカーサイオンがコリジョンガスと衝突すると、プロダクトイオンが生成されると共に失速し、コリジョンセル832内をイオンが通過するのに要する時間が増加することが知られている。コリジョンセル832内でのイオンの通過時間の増加は、所謂“クロストーク”の増大につながり、三連四重極型質量分析装置の測定スループットの低下を招くことが知られている。
特許文献2には、コリジョンセル832内に、コリジョンガスとの衝突によって失速したイオンをコリジョンセル832の出口に向かって加速するような直流電場を形成してイオンの通過時間を短くすることが記載されている。しかし、測定を繰り返すうちに、試料成分由来のイオンがコリジョンセル832内の多重極イオンガイド833の表面に付着して絶縁膜が形成され、電極の表面がチャージアップする。その結果、本来であれば出口方向に勾配を有する電位構造に歪みが生じ、イオンの飛行速度が低下して測定のスループットが低下する。
上記実施例のようにコリジョンセル832内にラジカルを導入する場合にも同様に電極表面に絶縁膜が形成されうる。むしろ、絶縁膜が形成される速度は従来のMS/MS測定よりも早く、従来のMS/MS測定で想定されるよりも短時間で同様の性能の劣化をもたらすことが発明者らの実験で明らかになった。
ここで、本発明者が行った実験の結果を示す。図8は、三連四重極型質量分析装置のコリジョンセル832内のイオンの通過時間を、(1)コリジョンセル832内の電極表面から酸化膜を除去した後、(2)酸素ラジカル及びヒドロキシラジカルをコリジョンセル832内に1分間照射した後、(3)酸素ラジカル及びヒドロキシラジカルをコリジョンセル832内に1分間照射し、続いて水素ラジカルをコリジョンセル832内に照射した後のそれぞれについて求めたものである。
上記(1)と(2)の比較から、酸素ラジカル及びヒドロキシラジカルをコリジョンセル832に1分間照射した結果、コリジョンセル832内の多重極イオンガイド833の電極表面に酸化(絶縁)膜が形成され、それによりイオンの通過時間が4倍以上に延びていることが分かる。これは測定スループットが最大で4倍程度も低下することを意味する。
また、上記(1)~(3)の比較から、コリジョンセル832内に水素ラジカルを1分間導入することにより、酸素ラジカル及びヒドロキシラジカルの照射前と同じ状態にリフレッシュされていることが分かる。これは、電極表面に形成された酸化膜が水素ラジカルにより還元され、電極表面でのチャージアップが軽減したことによると考えられる。
図8の測定例では、コリジョンセル832内のイオンガイドにSUS304からなる四重極電極を用いたが、他のステンレス素材でも同様の効果が期待できる。また、本発明者が行った別の測定では、金、銀、銅、あるいは白金などの酸化されにくい貴金属により電極を構成する、あるいは表面をコーティングすることによって電極表面の酸化によるチャージアップを抑制する効果が見られた。また、白金やパラジウムは水素吸着能力が高いことが知られており、これらの金属には、その表面で水素分子を水素原子に解離する触媒効果があることが知られている。従って、これらの水素吸蔵能の高い金属からなる電極を用いる、あるいはこれらの金属により表面をコーティングすることで、水素分子を導入するだけでも短時間で金属表面の酸化膜を除去するリフレッシュ効果が得られる。また、上記のとおり、第2動作時にヒータ73により電極を加熱することでさらにリフレッシュ効果を高めることができる。
第2実施例において、第1ガス供給源52及び第2ガス供給源53からそれぞれ供給される第1ガスと第2ガスは同種のものであってもよい。例えば、二酸化炭素は、酸素原子を含む化合物であり酸化能を有する酸素ラジカルが生成されるという点において第1ガスとしての特性を有する一方、還元能を有する一酸化炭素(あるいはそのラジカル)を生成しうるという点において第2ガスとしての特性も有する。また、水蒸気は、酸素原子を含む化合物であり酸化能を有する酸素ラジカルやヒドロキシラジカルが生成されるという点において第1ガスとしての特性を有する一方、還元能を有する水素(あるいは水素ラジカル)を生成しうるという点において第2ガスとしての特性も有する。第1ガス及び第2ガスとして同一種類のガスを用いる場合には、第2ガスとして使用する場合に、第1ガスとして使用する際の条件よりも、還元性が強くなる条件(加熱温度、ラジカル化の有無等)で第2動作モードを実行するとよい。
(第3実施例)
次に、本発明に係るイオン分析装置の別の一実施例である、第3実施例の質量分析装置について、以下、図面を参照して説明する。第3実施例の質量分析装置は、三連四重極型質量分析装置である。
図9は第3実施例の質量分析装置の概略構成図である。第2実施例の質量分析装置と共通の構成要素については第2実施例の質量分析装置と同じ符号を付して適宜、説明を省略する。
第3実施例の質量分析装置の特徴の1つは、第2中間真空室82内に配置されているイオンガイド822、分析室83内に配置されている前段四重極マスフィルタ836、イオンガイド837、及び後段四重極マスフィルタ838を構成する各電極の表面に金がコーティングされている(ステンレスからなるロッド電極の表面に金をコーティングしている)という点にある。これらの電極には、第2実施例の質量分析装置と同様に、ヒータ73が接続されている。図9では、ヒータ73を上記の全ての電極に接続しているが、コリジョンセル832内の多重極イオンガイド837のみに接続してもよい。これらの電極を加熱するヒータ73として、例えばポリイミドヒータを用いることができる。
第3実施例の質量分析装置においても、第2実施例と同様に、コリジョンセル832等の内部に赤外線ランプを配置し、該コリジョンセル832内の多重極イオンガイド833等を輻射加熱する構成を採ることもできる。また、コリジョンセル832に赤外線を透過する窓部を設け、コリジョンセル832の外部からその窓部を通じて多重極イオンガイド833等を輻射加熱する構成を採ることもできる。もちろん、赤外線ランプに限らず、レーザ光源やLED光源を用いることも可能である。さらには、赤外線以外の波長帯域の光で各電極を輻射加熱することも可能である。電極を輻射加熱する構成を採ることにより、非接触で上記電極を加熱することができる。
後述するように、第3実施例では第2動作において電極の表面に形成される金属酸化物を熱分解させる。そこで、第3実施例では、電極の表面をコーティングする金属として、酸化膜の分解温度が低いものを用いる。こうした金属は、イオン化傾向が小さいものを好適に用いることができ、具体的には、金のほか、白金、イリジウム、パラジウム、銀を好適に用いることができる。これらの酸化物は、150℃程度で熱分解させることができる。
また、第3実施例の質量分析装置の別の特徴は、コリジョンセル832内に水素ガスを供給する水素ガス供給部10を備える点にある。水素ガス供給部10は、水素ガスを供給する水素ガス供給源101と、流量を調整可能であるバルブ102と、ガス導入管103とを含む。
第2実施例の質量分析装置は、ラジカル生成・照射部5に、ラジカルの原料となるガス(第1ガス)を供給する第1ガス供給源52と、ラジカル生成室51の内部をリフレッシュするためのガス(第2ガス)を供給する第2ガス供給源53とを備えていたが、第3実施例の質量分析装置は、図10に示すように、ラジカルの原料となるガス(第1ガス)を供給する第1ガス供給源52のみを備えている。第3実施例の質量分析装置では、第1ガス供給源から、酸化能を有するガスをラジカル生成室51内に供給し、高周波プラズマ源54から高周波プラズマを供給することによりラジカルを生成する。酸化能を有するガスとしては、例えば酸素ガス、水蒸気、オゾンガス、あるいは一酸化炭素ガスを用いることができる。また、高周波プラズマ源54を動作させずに、これらのガスをそのままコリジョンセル832の内部に導入することもできる。例えば、オゾンガスをそのままコリジョンセル832の内部に導入すると、不飽和の炭化水素鎖を有する化合物が二重結合の位置で開裂したフラグメントイオンが得られる。
制御・処理部9は、記憶部91のほかに、機能ブロックとして動作モード選択部96及び動作制御部97を備えている。動作制御部97には、測定動作を制御する第1動作制御部971、及びメンテナンス動作を制御する第2動作制御部972を有しており、予めインストールされた質量分析用プログラムを実行することによりこれらの機能ブロックが具現化される。制御・処理部9の実体は一般的なコンピュータであり、入力部98及び表示部99が接続されている。
機器制御部72は、制御・処理部9の動作制御部95からの制御信号を受けて各部の動作を制御する。
次に、第3実施例の質量分析装置における第1動作(測定動作)及び第2動作(メンテナンス動作)を説明する。使用者が質量分析用プログラムを実行すると、動作モード選択部96は、表示部99に第1動作モード(測定)と第2動作モード(メンテナンス)の選択画面を表示する。第1動作モードが選択されると、第1動作制御部971から機器制御部72に所定の制御信号が送信され、各部の動作が制御される。また、第2動作モードが選択されると、第2動作制御部972から機器制御部72に所定の制御信号が送信され各部の動作が制御される。
使用者が第1動作モードを選択すると、チャンバ8内の第1中間真空室81、第2中間真空室82、及び分析室83が図示しない真空ポンプにより所定の真空度まで排気される。また、ラジカル生成室51(ノズル55の内部)も真空ポンプ57により所定の真空度まで排気される。続いて、第1ガス供給源52から第1ガスがラジカル生成・照射部5のラジカル生成室51に供給される。そして、高周波プラズマ源54からスパイラルアンテナ552に高周波電力(マイクロ波)が供給され、ラジカル生成室51の内部でラジカル生成される。
イオン化源801において試料から生成された各種イオンは第1中間真空室81内のイオンガイド811及び第2中間真空室82内のイオンガイド821により収束されて分析室83に進入する。分析室83内では、前段四重極マスフィルタ836により所定の質量電荷比を有するイオンがプリカーサイオンとして選別される。
前段四重極マスフィルタ836を通過したプリカーサイオンがコリジョンセル832に進入するタイミングに合わせて(あるいはそれよりも前の時点で)、ラジカル生成・照射部5のバルブ58が開放され、ラジカル生成室51に第1ガスが供給されラジカルが生成される。生成されたラジカルは輸送管60及びヘッド部601を通じてラジカルがコリジョンセル832内に噴出し、コリジョンセル832を飛行するプリカーサイオンに照射される。
バルブ58の開度等は一定の状態に維持されており、イオンには所定流量のラジカルが照射される。バルブ58の開度は、プリカーサイオンがコリジョンセル832内を飛行する時間等に応じて、予備実験の結果等に基づき事前に決めておくことができる。ラジカルが照射されると、プリカーサイオンに不対電子誘導型の解離が生じてプロダクトイオンが生成される。生成された各種プロダクトイオンは後段四重極マスフィルタ838に進入し、質量分離された後、イオン検出器835で検出される。
使用者が第2動作モードを選択すると、動作モード選択部96は、表示部99に、通常モードと短時間モードの選択画面を表示する。使用者が通常モードを選択すると、第2動作制御部952は、ヒータ73(あるいは赤外線ランプ等の輻射光源。以下では輻射光源の記載を省略。)を動作させて各電極を所定の温度に加熱する。この所定の温度は、電極表面に形成される金属酸化物(例えば金酸化物)を熱分解させる温度である。所定の温度は、使用する電極の種類(電極表面の金属の種類)に応じてあらかじめ決めておけばよい。
第2実施例において説明したように、酸素ガス、オゾンガス、水蒸気等の酸化能を有するガス、あるいは該ガスから生成したラジカルが繰り返しコリジョンセル832に導入されると、コリジョンセル832内の多重極イオンガイド837の表面が酸化される。また、コリジョンセル832の入口及び出口から流出するラジカルによって、コリジョンセル832と連通する空間に配置されている他の電極(第2中間真空室82内に配置されているイオンガイド822、分析室83内に配置されている前段四重極マスフィルタ836及び後段四重極マスフィルタ838を構成する各電極)の表面も酸化されうる。
第1動作モードによる測定を繰り返し行うと、電極表面の酸化が進行していく。金属酸化物の多くは絶縁物であり、電極表面に絶縁膜が形成されると、電圧印加時に不所望のチャージアップが生じる。こうした状態で第1動作モードによる測定を行うと、それらに所定の高周波電圧や直流電圧を印加しても所期の電場が形成されなくなる。その結果、イオンガイドやマスフィルタの動作精度が悪くなり、プロダクトイオンの検出感度が低下したり質量精度が低下したりする。
第3実施例の第2動作モードも、第2実施例の第2動作モードと同様に上記の問題を解決するために行うメンテナンスモードである。通常モードでは、第2中間真空室82内に配置されているイオンガイド822、分析室83内に配置されている前段四重極マスフィルタ836、イオンガイド837、及び後段四重極マスフィルタ838を構成する各電極をヒータ73によって上記所定の温度に加熱する。これにより、これらの電極表面に形成された金属酸化物が分解され、再び電圧印加時に所期の電場が形成されるようになる。コリジョンセル832内の電極においてこの効果は特に顕著であるが、それ以外の場所に位置する電極についても同様の効果が得られる。
使用者が短時間モードを選択すると、通常モードにおける上記動作と並行して、水素ガス供給源101からコリジョンセル832の内部に水素ガスが供給される。短時間モードではコリジョンセル832の内部に水素ガスを供給することにより、金属酸化物の熱分解を促進し、短時間で金属酸化物を除去することができる。ここでは水素ガスを供給したが、水素ガスに限らず還元能を有するガスを用いることにより金属酸化物を短時間で熱分解させることができる。
次に、第3実施例の上記メンテナンスモードの効果を確認するために行った実験の結果を説明する。この実験では、第3実施例の質量分析装置において、コリジョンセル832内に金メッキしたイオンガイド837を配置した。そして、水蒸気から生成したヒドロキシラジカルと酸素ラジカルの混合ラジカルをコリジョンセル832の内部に導入(照射)する動作(測定動作に相当)と、コリジョンセル832を加熱する動作(メンテナンス動作)を繰り返し、各動作の終了後に、コリジョンセル832をイオンが通過するのに要する時間を測定した。
図11にイオンの通過時間の推移を示す。図11のグラフの縦軸はイオンのコリジョンセル内の通過時間、横軸は便宜的に割り振った試行番号(Trial Number)である。各試行番号における動作は以下の通りである。
試行番号1:イオンガイド837を洗浄した後、ヒドロキシラジカルと酸素ラジカルの混合ラジカルを2分間、コリジョンセル832の内部に照射(以下、「混合ラジカルを照射」と記載。)
試行番号2:イオンガイド837を80℃で22分間加熱。
試行番号3:混合ラジカルを40分間照射。
試行番号4+5:イオンガイド837を80℃で25分間加熱。
試行番号6:混合ラジカルを40分間照射。
試行番号7:イオンガイド837を100℃で10分間加熱。
試行番号8:イオンガイド837を110℃に加熱しつつ、混合ラジカルを40分間照射。
試行番号9+10:イオンガイド837を110℃に加熱しつつ、混合ラジカルを40分間照射。
図11に示すイオンの通過時間の推移から分かるように、イオンガイド837を加熱することなく混合ラジカルを照射し続けると、イオンの通過時間が長くなる。これはイオンガイド837の表面の酸化により電極表面に絶縁膜が形成され、この絶縁層が予期せずチャージアップすることでイオン輸送性能や質量選択性能が低下したことに起因するものであり、イオン通過時間の増大は電極の酸化に伴うものであり測定スループットの悪化を招く。
例えば、試行番号1から分かるように、イオンガイド837を加熱することなく混合ラジカルをコリジョンセル832に2分程度照射するだけでイオンの通過時間は、試行番号1の混合ラジカルの照射前に比べて2ms以上長くなる。一方、試行番号2から分かるように、80℃程度で22分加熱することでイオンの通過時間は回復する。また、試行番号8~10から分かるように、イオンガイド837を110℃程度に加熱すると、混合ラジカルを照射し続けてもイオンの通過時間がほとんど変化せず、むしろ電極表面の金属酸化物の熱分解が進んでイオンの通過時間が短くなる。従って、上述の第1動作モードにおいて、更に各電極を所定の温度に加熱するようにしてもよい。
図11に示す結果は電極を金メッキした場合のものであるが、一般的なステンレスからなる電極をイオンガイドとして用いた実験では、温度を80℃から150℃まで加熱してもイオンの通過時間が回復しなかった。また、図11に示す結果は、水蒸気放電により生成したヒドロキシラジカルと酸素ラジカルの混合ラジカルによる電極の酸化を示しているが、オゾン等の酸化能を有するガス又はラジカルをコリジョンセル832(あるいは電極が配置されているその他の空間)に導入する場合にも上記同様の効果が見込まれる。
上記実施例は一例であって、本発明の主旨に沿って適宜に変更することができる。
第1実施例では、イオントラップ-飛行時間型の質量分析装置としたが、三連四重極型等の他の構成の質量分析装置においても上記第1実施例と同様のラジカル生成・照射部5や制御・処理部9等を用いることができる。また、第1実施例及び第2実施例は質量分析装置としたが、これらはイオン移動度分析装置等のイオン分析装置にも適用することもできる。
第2実施例及び第3実施例では、三連四重極型の質量分析装置としたが、イオントラップ-飛行時間型等の他の構成の質量分析装置においても上記第2実施例又は第3実施例と同様のラジカル生成・照射部5、制御・処理部9、水素ガス供給部10等を用いることができる。また、第2実施例及び第3実施例においてラジカル生成・照射部として、原料ガスを熱解離させることによりラジカルを生成するものを用いることもできる。また、第2実施例及び第3実施例では、金属からなる電極表面の酸化及び絶縁膜の形成が、ラジカルを用いた試料成分由来のプリカーサイオンの解離を生じさせる測定により生じる場合を説明したが、衝突誘起解離等の他の解離法を用いた測定により、試料成分が金属からなる電極表面に付着して金属が酸化され絶縁膜が形成される場合にも上記第2実施例や第3実施例と同様の構成を適用することができる。
さらに、上記第1実施例~第3実施例の両方の構成を1つのイオン分析装置に備えたものとすることもできる。その場合には、例えば、制御部が、第1実施例に記載の第2ガスを用いて絶縁管の内壁面に析出した金属原子を酸化する処理と、第2実施例に記載の第2ガスや、第3実施例のヒータ73及び水素ガス供給部10を用いて電極表面に形成された金属酸化物を還元する処理を実行するように構成すればよい。
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)
本発明の一態様は、試料成分由来のプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成して分析するイオン分析装置であって、
前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
絶縁管と、該絶縁管の内部に放電を生じさせる放電部とを有するラジカル生成部と、
ラジカルの原料となるガスである第1ガスと、酸素ガス、オゾンガス、窒素ガス、酸素原子又は窒素原子を含む化合物のガス、及び希ガスのいずれかである第2ガスとを択一的に前記絶縁管の内部に供給可能であるガス供給部と、
前記絶縁管の内部を真空排気する真空排気部と、
前記絶縁管の内部で生成されたラジカルを前記反応室の内部に導入するラジカル導入部と、
前記ラジカル生成部、前記ガス供給部、前記真空排気部、及び前記ラジカル導入部の動作を制御する制御部であって、前記絶縁管の内部を真空排気した状態で前記第1ガスを前記絶縁管の内部に導入して放電を生じさせることによりラジカルを生成して前記反応室の内部に導入する第1動作と、前記第2ガスを前記絶縁管の内部に導入する第2動作とを実行する制御部と
を備える。
第1項のイオン分析装置では、制御部による制御の下で、絶縁管の内部を真空排気した状態でコイルに高周波電力を供給しつつ第1ガスを絶縁管の内部に導入することによりラジカルを生成して反応室の内部に導入する第1動作と、第2ガスを絶縁管の内部に導入する第2動作とを実行する。この第1動作は試料成分由来のプリカーサイオンとラジカルを反応させてプロダクトイオンを生成するために行う測定動作である。
第1項のイオン分析装置では、第1動作に加え、非測定時に第2ガスを絶縁管の内部に導入する第2動作を行う。このとき、第2ガスとして、酸素ガス、オゾンガス、窒素ガス、及び酸素原子又は窒素原子を含む化合物のガスのいずれかを用いると、絶縁管の内壁面に析出した金属元素が第2ガスに含まれる酸素原子又は窒素原子と反応し、ラジカルを消失させる金属元素が金属酸化物や金属窒化物に変化するため、測定時に反応室に導入されるラジカル量の減少を抑えてプロダクトイオンの検出感度の低下を抑制することができる。また、第2ガスとして希ガスを用いると、絶縁管の内壁面に希ガスの原子を衝突させて、析出した金属元素を除去し、上記同様の効果を得ることができる。
(第2項)
上記第1項に記載のイオン分析装置において、
前記第2ガスが水蒸気又は酸素ガスである。
第2項のイオン分析装置では、第2ガスとして水蒸気又は酸素ガスを用いるため、安価に効率よく金属原子を酸化させて、第2動作を短時間で完了することができる。
(第3項)
上記第1項又は第2項に記載のイオン分析装置において、
前記制御部が、前記第2動作時に、前記絶縁管の内部を真空排気した状態で前記放電部に設けられたコイルに高周波電力を供給しつつ前記第2ガスを前記絶縁管の内部に導入することによりラジカル及び/又はイオンを生成する。
第3項のイオン分析装置では、ラジカル及び/又はイオンを生成するため、非ラジカル種である第2ガスをそのまま用いるよりも金属元素の酸化反応効率、及び/又は除去効率が高くなり、第2動作を短時間で完了することができる。
(第4項)
上記第1項から第3項のいずれかに記載のイオン分析装置において、
前記絶縁管が酸化アルミニウム又は二酸化ケイ素からなるものである。
第4項のイオン分析装置では、入手が容易であり比較的安価な酸化アルミニウム又は二酸化ケイ素からなる絶縁管を用いるため、装置を簡便かつ安価に構成することができる。
(第5項)
本発明の別の一態様は、試料成分由来のプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成して分析するイオン分析装置であって、
前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
酸化能を有するガスである第1ガスと、還元能を有するガスである第2ガスと供給可能であるガス供給部と、
前記第1ガスからラジカルを生成するラジカル生成部と、
前記ラジカル生成部で生成されたラジカルを前記反応室の内部に導入するラジカル導入部と、
前記ガス供給部、前記ラジカル生成部、及び前記ラジカル導入部の動作を制御する制御部であって、前記ラジカル生成部により前記第1ガスから生成したラジカルを前記反応室の内部に導入する第1動作と、前記第2ガスを前記反応室の内部に導入する第2動作とを実行する制御部と
を備える。
第5項のイオン分析装置では、制御部による制御の下で、第1ガスからラジカルを生成して反応室の内部に導入する第1動作と、第2ガスからラジカルを生成してラジカル導入部により反応室の内部に導入する第2動作とを実行する。第1動作は試料成分由来のプリカーサイオンとラジカルを反応させてプロダクトイオンを生成するために行う測定動作である。
上記反応室は、例えばコリジョンセルやイオントラップである。イオン分析装置で用いられるコリジョンセルやイオントラップは、一般に金属製の電極を有しており、その電極に所定の高周波電圧や直流電圧を印加することでイオンを質量分離したり、捕捉したり、あるいは収束させたりする。第5項のイオン分析装置では、非測定時に第2動作を行うことで、酸素ラジカルの照射や試料成分由来のイオンの導入によって電極表面に形成された金属酸化物を第2ガスによって還元するため、第1動作による試料成分の分析を行う際のプロダクトイオンの検出感度や質量精度の低下を抑制することができる。
(第6項)
上記第5項に記載のイオン分析装置において、
前記第1ガスが、酸素ガス、水蒸気、又はオゾンガスである。
第6項のイオン分析装置では、酸素ガス、水蒸気、又はオゾンガスを第1ガスとしてラジカルを生成するイオン分析装置において電極表面に形成される金属酸化物を還元し、第1動作による試料成分の分析を行う際のプロダクトイオンの検出感度や質量精度の低下を抑制することができる。
(第7項)
上記第5項又は第6項に記載のイオン分析装置において、
前記第2ガスが、
水素ガス、窒素ガス、及び水素原子、窒素原子、又は酸素原子を含む化合物のガスのいずれかである。
第7項のイオン分析装置では、高い還元能を有する水素ガス、窒素ガス、及び水素原子又は窒素原子を含む化合物のガスを第2ガスとして用いるため、金属電極の表面における絶縁物の還元反応の効率が高く、第2動作を短時間で完了することができる。
(第8項)
上記第5項から第7項のいずれかに記載のイオン分析装置において、
前記制御部が、前記第2動作時に、前記ラジカル生成部により前記第2ガスからラジカル又はイオンを生成して前記反応室の内部に導入する。
第8項のイオン分析装置では、ガスよりも反応性が高いラジカル又はイオンを反応室の内部に導入するため、金属電極の表面における絶縁物の還元反応の効率が高くなり、第2動作を短時間で完了することができる。
(第9項)
上記第5項から第8項のいずれかに記載のイオン分析装置において、
さらに
前記反応室の内部に設けられた電極と、
前記電極を加熱する加熱部と
を備える。
第9項のイオン分析装置では、電極の表面が加熱されるため、金属電極の表面における絶縁物の還元反応の効率が高くなり、第2動作を短時間で完了することができる。
(第10項)
本発明のさらに別の一態様は、試料成分由来のプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成して分析するイオン分析装置であって、
前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
前記反応室の内部に酸化能を有するガス又はラジカルを導入する酸化反応物導入部と、
前記反応室及び/又は該反応室に連通する空間に配置され、酸化物の熱分解温度が500℃以下である金属によって表面が形成された電極と、
前記電極を前記熱分解温度に加熱する加熱部と
を備える。
第10項に記載のイオン分析装置は、酸化能を有するガス又はラジカルによって試料成分由来のプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成するものである。このイオン分析装置では、酸化能を有するガスやラジカルを反応室に導入してプリカーサイオンを生成する分析を繰り返し行ううちに、該反応室内に配置された電極や、反応室に連通する空間(例えば、イオン輸送光学系や質量分離部)に配置された電極の表面が酸化されていく。第10項のイオン分析装置では、反応室及び/又は反応室に連通する空間において、酸化物の熱分解温度が500℃以下である金属によって表面が形成された電極を用いるため、電極に膨張や歪みを生じさせることなく酸化物を除去して、プロダクトイオンの検出感度や質量精度の低下を抑制することができる。
(第11項)
第10項に記載のイオン分析装置において、さらに、
前記酸化反応物導入部、及び前記加熱部の動作を制御する制御部であって、前記反応室の内部に酸化能を有するガス又はラジカルを導入する第1動作と、前記電極を前記熱分解温度に加熱する第2動作とを実行する制御部
を備える。
第10項に記載のイオン分析装置において電極の加熱動作は使用者が自ら行うことも可能であるが、第11項に記載のイオン分析装置を用いることにより制御部による制御の下で使用者の手を煩わせることなくメンテナンスを実行することができる。
(第12項)
第10項又は第11項に記載のイオン分析装置において、
前記金属の酸化物の熱分解温度が200℃以下である。
(第13項)
第10項から第12項に記載のイオン分析装置において、
前記金属が、金、白金、イリジウム、パラジウム、又は銀である。
第12項に記載のイオン分析装置では、200℃以下で金属酸化物を除去するため、樹脂製の絶縁物が用いられている装置においても、絶縁物に変形や破損を生じさせることなく酸化物を除去して、プロダクトイオンの検出感度や質量精度の低下を抑制することができる。酸化物の熱分解温度が200℃以下である金属としては、例えば第13項のイオン分析装置における、金、白金、イリジウム、パラジウム、又は銀が挙げられる。
(第14項)
第10項から第13項のいずれかに記載のイオン分析装置において、さらに、
前記反応室の内部に水素ガスを導入する水素導入部
を備える。
第14項に記載のイオン分析装置では、電極を加熱する際に、還元性を有する水素ガスを反応室の内部に導入することにより金属酸化物の熱分解を促進することができる。
(第15項)
第10項から第14項のいずれかに記載のイオン分析装置において、
前記酸化能を有するガス又はラジカルが、酸素ガス、酸素ラジカル、ヒドロキシルラジカル、オゾンガス、一酸化炭素ガスのいずれかである。
第10項から第14項に記載のイオン分析装置は、例えば第15項に記載のイオン分析装置のように、酸素ガス、酸素ラジカル、ヒドロキシルラジカル、オゾンガス、一酸化炭素ガスのいずれかを用いてプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成するイオン分析装置において好適に用いることができる。
1…イオン化源
2…イオントラップ
21…リング電極
22…入口側エンドキャップ電極
23…イオン導入孔
24…出口側エンドキャップ電極
25…イオン射出孔
26…ラジカル粒子導入口
27…ラジカル粒子排出口
3…飛行時間型質量分離部
4…イオン検出器
5…ラジカル生成・照射部
51…ラジカル生成室
52…第1ガス供給源
53…第2ガス供給源
54…高周波プラズマ源
541…マイクロ波供給源
542…スリースタブチューナー
55…ノズル
551…管状体
552…スパイラルアンテナ
57…真空ポンプ
58、59…バルブ
60…輸送管
601…ヘッド部
6…不活性ガス供給部
71…トラップ電圧発生部
72…機器制御部
73…ヒータ
8…チャンバ
80…イオン化室
801…イオン化源
81…第1中間真空室
811…イオンガイド
82…第2中間真空室
821…イオンガイド(第2実施例)
822…イオンガイド(第3実施例)
83…分析室
831…前段四重極マスフィルタ(第2実施例)
832…コリジョンセル
833…イオンガイド(第2実施例)
833…多重極イオンガイド
834…後段四重極マスフィルタ(第2実施例)
835…イオン検出器
836…前段四重極マスフィルタ(第3実施例)
837…イオンガイド(第3実施例)
838…後段四重極マスフィルタ(第3実施例)
9…制御・処理部
91…記憶部
92…動作モード選択部
93…動作制御部(第1実施例)
931…第1動作制御部(第1実施例)
932…第2動作制御部(第1実施例)
94…動作モード選択部(第2実施例)
95…動作制御部(第2実施例)
951…第1動作制御部(第2実施例)
952…第2動作制御部(第2実施例)
96…動作モード選択部(第3実施例)
97…動作制御部(第3実施例)
971…第1動作制御部(第3実施例)
972…第2動作制御部(第3実施例)
98…入力部
99…表示部
10…水素ガス供給部
101…水素ガス供給源
102…バルブ
103…ガス導入管
C…イオン光軸

Claims (16)

  1. 試料成分由来のプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成して分析するイオン分析装置であって、
    前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
    絶縁管と、該絶縁管の内部に放電を生じさせる放電部とを有するラジカル生成部と、
    ラジカルの原料となるガスである第1ガスと、酸素ガス、オゾンガス、窒素ガス、酸素原子又は窒素原子を含む化合物のガス、及び希ガスのいずれかである第2ガスとを択一的に前記絶縁管の内部に供給可能であるガス供給部と、
    前記絶縁管の内部を真空排気する真空排気部と、
    前記絶縁管の内部で生成されたラジカルを前記反応室の内部に導入するラジカル導入部と、
    前記ラジカル生成部、前記ガス供給部、前記真空排気部、及び前記ラジカル導入部の動作を制御する制御部であって、前記絶縁管の内部を真空排気した状態で前記第1ガスを前記絶縁管の内部に導入して放電を生じさせることによりラジカルを生成して前記反応室の内部に導入する第1動作を、前記反応室に前記プリカーサイオンが導入される測定時間帯に実行し、前記第2ガスを前記絶縁管の内部に導入する第2動作を、前記反応室に前記プリカーサイオンが導入されない非測定時間帯に実行する制御部と
    を備えるイオン分析装置。
  2. 前記第2ガスが水蒸気又は酸素ガスである、請求項1に記載のイオン分析装置。
  3. 前記制御部が、前記第2動作時に、前記絶縁管の内部を真空排気した状態で前記放電部に設けられたコイルに高周波電力を供給しつつ前記第2ガスを前記絶縁管の内部に導入することによりラジカル及び/又はイオンを生成する、請求項1に記載のイオン分析装置。
  4. 前記絶縁管が酸化アルミニウム又は二酸化ケイ素からなるものである、請求項1に記載のイオン分析装置。
  5. 試料成分由来のプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成して分析するイオン分析装置であって、
    前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
    酸化能を有するガスである第1ガスと、還元能を有するガスである第2ガスとを供給可能であるガス供給部と、
    前記第1ガスからラジカルを生成するラジカル生成部と、
    前記ラジカル生成部で生成されたラジカルを前記反応室の内部に導入するラジカル導入部と、
    前記ガス供給部、前記ラジカル生成部、及び前記ラジカル導入部の動作を制御する制御部であって、前記ラジカル生成部により前記第1ガスから生成したラジカルを前記反応室の内部に導入する第1動作を、前記反応室に前記プリカーサイオンが導入される測定時間帯に実行し、前記第2ガスを前記反応室の内部に導入する第2動作を、前記反応室に前記プリカーサイオンが導入されない非測定時間帯に実行する制御部と
    を備えるイオン分析装置。
  6. 試料成分由来のプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成して分析するイオン分析装置であって、
    前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
    酸化能を有するガスである第1ガスと、還元能を有するガスである第2ガスとを供給可能であるガス供給部と、
    前記第1ガスからラジカルを生成するラジカル生成部と、
    前記ラジカル生成部で生成されたラジカルを前記反応室の内部に導入するラジカル導入部と、
    前記ガス供給部、前記ラジカル生成部、及び前記ラジカル導入部の動作を制御する制御部であって、前記ラジカル生成部により前記第1ガスから生成したラジカルを前記反応室の内部に導入し、試料成分由来のプリカーサイオンと前記第1ガスから生成したラジカルを反応させてプロダクトイオンを生成する第1動作と、前記第2ガスを前記反応室の内部に導入して前記反応室内の電極表面に形成された絶縁膜を還元する第2動作とを実行する制御部と
    を備えるイオン分析装置。
  7. 前記第1ガスが、酸素ガス、水蒸気、又はオゾンガスである、請求項5又は6に記載のイオン分析装置。
  8. 前記第2ガスが、水素ガス、窒素ガス、及び水素原子、窒素原子、又は酸素原子を含む化合物のガスのいずれかである、請求項5又は6に記載のイオン分析装置。
  9. 前記制御部が、前記第2動作時に、前記ラジカル生成部により前記第2ガスからラジカルを生成して前記反応室の内部に導入する、請求項5又は6に記載のイオン分析装置。
  10. さらに
    前記反応室の内部に設けられた電極と、
    前記電極を加熱する加熱部と
    を備える、請求項5又は6に記載のイオン分析装置。
  11. 試料成分由来のプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成して分析するイオン分析装置であって、
    前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
    前記反応室の内部に酸化能を有するガス又はラジカルを導入する酸化反応物導入部と、
    前記反応室及び/又は該反応室に連通する空間に配置され、酸化物の熱分解温度が500℃以下である金属によって表面が形成された電極と、
    前記電極を前記熱分解温度に加熱する加熱部と
    を備えるイオン分析装置。
  12. さらに、
    前記酸化反応物導入部、及び前記加熱部の動作を制御する制御部であって、前記反応室の内部に酸化能を有するガス又はラジカルを導入する第1動作と、前記電極を前記熱分解温度に加熱する第2動作とを実行する制御部
    を備える、請求項11に記載のイオン分析装置。
  13. 前記金属の酸化物の熱分解温度が200℃以下である、請求項11に記載のイオン分析装置。
  14. 前記金属が、金、白金、イリジウム、パラジウム、又は銀である、請求項11に記載のイオン分析装置。
  15. さらに、
    前記反応室の内部に水素ガスを導入する水素導入部
    を備える、請求項11に記載のイオン分析装置。
  16. 前記酸化能を有するガス又はラジカルが、酸素ガス、酸素ラジカル、ヒドロキシルラジカル、オゾンガス、一酸化炭素ガスのいずれかである、請求項11に記載のイオン分析装置。
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