JP7226377B2 - 複合体及び複合体の製造方法 - Google Patents

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本明細書では、複合体及び複合体の製造方法を開示する。
従来、複合体としては、酸化鉄の表面に白金原子を高分散に担持した触媒が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この複合体は、強酸に溶解した白金の溶液に酸化鉄材料を浸漬させ、回収、加熱することによって白金を単原子分散させることができるとしている。そして、この複合体は、一酸化炭素の酸化活性がより高いとしている。
Nat. Chem.3,634(2011)
しかしながら、非特許文献1の複合体では、白金を溶解した強酸を用いて作製するものであり、製造に難があった。また、非特許文献1では、単原子を高分散することはできるが、その単原子をより高密度に分散させようとしても、原子が凝集し、分散性を制御することは困難であった。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、自立構造体上に存在する機能性部位の分散性を制御した新規な複合体及び複合体の製造方法を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、基材としての不織布の表面に金属を形成することにより得られた自立構造体の上に機能性部位を形成すると、機能性部位の分散性を制御した新規な複合体が得られることを見出し、本開示の複合体及び複合体の製造方法を完成するに至った。
即ち、本開示の複合体は、
貴金属、典型金属及び遷移金属のうちいずれか1以上である第1金属元素により構成される繊維体が3次元的に連結している自立構造体と、
前記第1金属元素と異なる第2金属元素により構成され前記自立構造体上に形成された機能性部位と、を備えたものである。
本開示の複合体の製造方法は、
貴金属、典型金属及び遷移金属のうちいずれか1以上である第1金属元素により構成される繊維体が3次元的に連結している自立構造体上に機能性部位が形成された複合体の製造方法であって、
前記第1金属元素と異なる第2金属元素を蒸着させ該第2金属元素により構成される機能性部位を前記自立構造体上に形成する形成工程、
を含むものである。
本開示では、自立構造体上に存在する機能性部位の分散性を制御した新規な複合体及び複合体の製造方法を提供することができる。例えば、繊維状の基材表面に第1金属元素を蒸着すると、基材表面に多数のナノ粒子の核が生成し、粒成長する。その結果、基材表面に、ナノ粒子の凝集体からなる繊維体が形成される。このような構造を有する第1金属元素の繊維体の表面に、更に他の第2金属元素を蒸着すると、高密度に存在するナノ粒子のエッジ部分や不安定表面に存在する配位数の小さな第1金属元素に対して、第2金属元素が強く結びつくため、高密度に原子が単原子状態で安定化するものと推察される。また、例えば、強酸など機能性部位の溶液を用意する必要がなく、ナノ粒子を液相合成する場合のようなナノ粒子を安全に取り扱う設備が不要であるので、従来の方法に比べて機能性部位の分散性を制御した複合体を容易に作製することができる。
単原子粒子31を有する複合体10の構成の概略の一例を示す説明図。 ナノクラスタ32を有する複合体10Bの構成の概略の一例を示す説明図。 自立構造体(不織布構造)の製造方法の模式図。 IrO2ナノワイヤー不織布の作製手順を示す説明図。 実験例1、2の自立構造体のSEM観察結果。 基材の不織布及び不織布除去前の実験例3~9の自立構造体の写真。 水中での実験例3~9の不織布構造を有する自立構造体の写真。 実験例10の不織布構造を有する自立構造体の写真。 TiO2からなる自立構造体の写真。 Pt/TiO2複合体(実験例11)のTEM像。 実験例11~15のXPS測定結果。 実験例11、12、16、17のPtのX線吸収スペクトル。 実験例11、12、16、17のK3で重み付けたXAFSスペクトル。 図13のスペクトルをk=3-14Åの範囲でフーリエ変換した結果。
[複合体]
以下、本開示の一実施の形態について詳細に説明する。本開示の複合体は、自立構造体と、機能性部位と、を備えている。自立構造体は、例えば、貴金属、典型金属及び遷移金属のうちいずれか1以上である第1金属元素により構成される繊維体が3次元的に連結している構造を有する。また、機能性部位は、例えば、第1金属元素と異なる第2金属元素により構成され、自立構造体上に形成された部位である。この複合体において、自立構造体は、金属及び/又は無機材料からなるナノ粒子の凝集体からなるものとしてもよい。また、自立構造体は、金属及び/又は無機材料のナノ粒子の凝集体からなる不織布構造を有するものとしてもよい。ここで、「自立」とは、何らかの基材や支持体が存在せずとも崩壊せずに形状が維持され、ハンドリングが可能な程度の強度を持つ構造を意味する。「金属」には、貴金属、典型金属及び遷移金属などが含まれる。また、金属には、合金も含まれる。「無機材料」には、例えば炭素材料などが含まれる。また、金属としては、Ceなどのランタノイド元素を含むものとしてもよい。「ナノ粒子」とは、粒径が1nm以上10nm以下である粒子をいい、結晶質であってもよいし、非晶質であってもよい。
自立構造体は、第1金属元素のみから構成されてもよいし、第1金属元素を含んで構成されるものとしてもよい。自立構造体は、例えば、金属ナノ粒子、合金ナノ粒子、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属炭化物、金属リン化物、若しくは、金属ヨウ化物からなる金属化合物ナノ粒子のうち1以上を含むものとしてもよい。
貴金属としては、例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru及びOsのうち1以上が挙げられる。また、典型金属としては、例えば、Mg、Al、Si、Ga、Ge、As、Se、In、Sn、Sb、Teのうち1以上が挙げられる。このうち、Snが例えば導電性が高く好ましい。また、遷移金属としては、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Moのうち、1以上が挙げられる。このうち、Cuが例えば導電性が高く好ましい。この第1金属元素としては、例えば、Pt、Au、Ag、Ru、Ir、Cu、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、Cr、Zn、Ti、Zr、Mo、W、Ce、Al及びSiのうち1以上を含むことが好ましい。
金属を含む合金としては、例えば、Pt-Fe合金、Pt-Ni合金、Pt-Co合金、Ir-Fe合金、Ir-Co合金、Ir-Ni合金などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化イリジウム、酸化銅、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化コバルトなどが挙げられる。金属硫化物としては、例えば、硫化イリジウム、硫化銅、硫化鉄、硫化ニッケル、硫化コバルト、硫化モリブデンなどが挙げられる。金属窒化物としては、例えば、窒化銅、窒化鉄、窒化ニッケル、窒化マンガン、窒化コバルトなどが挙げられる。金属炭化物としては、例えば、炭化イリジウム、炭化ケイ素、炭化鉄、炭化銅、炭化コバルト、炭化マンガンなどが挙げられる。金属リン化物としては、例えば、リン化イリジウム、リン化鉄、リン化銅、リン化コバルト、リン化マンガンなどが挙げられる。金属ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化イリジウム、ヨウ化鉄、ヨウ化銅、ヨウ化コバルト、ヨウ化マンガンなどが挙げられる。自立構造体は、これらのいずれか1種のナノ粒子を含むものでもよく、あるいは、2種以上を含むものでもよい。無機材料としては、例えば、カーボンなど無機非金属から構成されている固体などが挙げられる。
繊維体は、例えば、繊維を基材としその表面に形成され、繊維に基づく形状を有しているものをいう。繊維体としては、例えば、チューブ型や半チューブ型のナノワイヤーなどが挙げられる。この繊維体は、例えば、その太さ(直径)が200nm以下であるものとしてもよい。また、この繊維体は、粒子の突起構造を実現する観点からは、その太さが1μm以下であるものとしてもよい。自立構造体は、ポリマーを含む基材表面に第1金属元素を形成することにより作製されるものとしてもよい。この自立構造体では、基材の表面形状に倣うように、繊維体が形成される。この繊維体では、例えば、物理蒸着時に元素の回り込みが起こるため、微視的又は巨視的に湾曲している部分を有する。
この自立構造体は、ポリマーからなる基材表面に第1金属元素を蒸着させることにより形成されるものとしてもよい。この蒸着処理は、物理蒸着であってもよいし、化学蒸着であってもよいが、物理蒸着であることが好ましい。基材がナノワイヤー不織布のように、複数の曲面の集合体からなる場合、自立構造体は、通常、曲面状の表面を持つ複数個の繊維体の集合体により構成される。この蒸着時に第1金属元素以外に酸素を存在させると、金属酸化物の自立構造体が得られる。また、自立構造体は、表面に直径が3nm以上10nm以下の第1金属元素を含む突起構造を備えているものとしてもよい。例えば、ポリマーの基材表面に第1金属元素を蒸着すると、基材表面に多数のナノ粒子の核が生成し、粒成長する。物理蒸着をさらに続行すると、繊維体の表面において、さらにナノ粒子の核生成及び粒成長が繰り返される。その結果、繊維体の表面にナノ粒子からなる突起構造が形成される。この「突起構造」とは、角錐、円錐等の錘状の外形を持つ突起物をいう。「突起構造の直径」とは、突起の最大直径(例えば、円錐の場合は、底面の直径)をいう。突起構造の直径及び数は、蒸着条件により制御することができる。一般に、直径の小さな突起構造の数が多くなるほど、自立構造体の比表面積が大きくなる。蒸着条件を最適化すると、繊維体やシェルの表面に、ナノ粒子からなり、かつ、直径が3nm以上10nm以下である突起構造を形成することができる。
この自立構造体は、第1金属元素による構造体を支持するポリマーにより構成された支持部を備えているものとしてもよい。自立構造体において、ポリマーからなる基材表面に第1金属元素による構造体を形成させたあと、基材を完全に除去してもよいし、一部を残してもよいし、全てを残してもよい。なお、第1金属元素による構造体の表面積の観点からは、ポリマー残存率は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。また、機械的強度の観点からは、ポリマー残存率は、50質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、85質量%以上が更に好ましい。ここで、「ポリマー残存率」とは、次の式(1)で表される値をいう。但し、W0は、物理蒸着直後の自立構造体の単位面積当たりの質量、Wは、ポリマーを溶解可能な溶媒を用いて鋳型に用いたポリマーを除去した後の自立構造体の単位面積当たりの質量、Wmは、自立構造体を構成する蒸着材料の単位面積当たりの質量である。なお、Wmは、物理蒸着量から見積もることができる。
ポリマー残存率=(W-Wm)×100/(W0-Wm) ・・・(1)
本開示の自立構造体は、使用する基材の構造に応じて、種々の形態をとる。例えば、基材としてナノワイヤー不織布を用い、かつ、不織布の片面から金属及び/又は無機材料を物理蒸着させた場合、自立構造として半チューブ型のナノワイヤーからなる繊維体が3次元的に連結している不織布構造(ナノ構造布)が得られる。一方、基材としてナノワイヤー不織布を用い、かつ、不織布の両面から金属又は無機材料を物理蒸着させた場合、自立構造としてチューブ型のナノワイヤーからなる繊維体が3次元的に連結している不織布構造が得られる。「不織布構造」とは、基材が不織布であり、この基材の不織布の構造に倣った形状を有する構造をいうものとする。
この自立構造体において、自立構造は、柔軟性を有するものとしてもよい。例えば、自立構造体が金属や合金で形成されるものとすれば、金属や合金のように、柔軟性を有するものとすることができ、取り扱いをより容易にできる。
本開示の複合体において、機能性部位は、第1金属元素と異なる第2金属元素により構成されている。第2金属元素は、第1金属元素と異なるものであればよく、上述した、貴金属、典型金属及び遷移金属のうちいずれかであるものとしてもよい。この機能性部位は、第2金属元素のみから構成されてもよいし、第2金属元素を含んで構成されるものとしてもよい。機能性部位は、例えば、第2金属元素を含有する、金属ナノ粒子、合金ナノ粒子、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属炭化物、金属リン化物、若しくは、金属ヨウ化物からなる金属化合物ナノ粒子のうち1以上を含むものとしてもよい。また、機能性部位は、複合体の機能を発現する主たる部位としてもよい。例えば、担持触媒を例にすると、自立構造体が担体であり、機能性部位が触媒である。この機能性部位は、第2金属元素として貴金属元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及び遷移金属元素のうち1以上を含むことがより好ましい。これらの元素は、様々な機能を有するため、機能性部位として好適である。第2金属元素としては、例えば、Pt、Rh、Pd、Ag、Au、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、Znなどが挙げられる。特に、貴金属は、溶液として用いるよりも蒸着処理が簡便であり、更に希少性から高分散化する意義が高く、好ましい。
この機能性部位は、第2金属元素の単原子粒子及び第2金属元素のナノクラスタのうち1以上を含むものとしてもよい。ナノクラスタは、例えば、金属原子が2個~100個集合した数ナノメータサイズの集合体としてもよい。第2金属元素が単原子粒子で存在する場合は、活性点が高分散であり好ましい。また、第2金属元素がナノクラスタで存在する場合は、機能性部位の安定性をより高めることができる。
この機能性部位は、単位面積あたりの第2金属元素の存在密度が0.1個/nm2以上で自立構造体上に存在していることが好ましい。存在密度がより高いと、機能的に好適である。機能性部位は、単位面積あたりの第2金属元素の存在密度が0.2個/nm2以上4.5個/nm2以下の範囲、あるいは、0.5個/nm2以上0.85個/nm2以下の範囲で自立構造体上に単原子粒子で存在しているものとしてもよい。特に、この機能性部位は、単原子粒子として上記存在密度の範囲で存在することがより好ましい。従来は、存在密度をより高めると、粒子が凝集して単原子粒子として分散することが困難であった。この複合体では、自立構造体の不飽和部位などに機能性部位が強固に固定されるため、第2金属元素を高密度で分散することができる。
ここで、本開示の複合体を図面を用いて説明する。図1は、単原子粒子31を有する複合体10の構成の概略の一例を示す説明図である。図2は、ナノクラスタ32を有する複合体10Bの構成の概略の一例を示す説明図である。複合体10は、繊維体21が3次元的に連結している自立構造体20と、自立構造体20上に形成された機能性部位30とを備えている。この繊維体21には、基材の繊維が除去されたあとの基材空間22が形成されている。また、繊維体21を拡大すると、その表面に直径が3nm以上10nm以下の突起構造23が形成されている。この繊維体21や突起構造23は、貴金属、典型金属及び遷移金属のうち少なくとも1以上を含むナノ粒子24の凝集体により構成されている。このような構造を有する自立構造体20では、柔軟性を有し、取り扱いしやすく、更に表面積が大きくナノ粒子24の利用率をより高めることができる。また、自立構造体20は、ナノ構造を有するため、機能性部位30を高密度で高分散に固着することができる。この複合体10では、図1、2に示すように、機能性部位30としての単原子粒子31やナノクラスタ32を高密度且つ高分散に保持することができる。
繊維体21の平均直径は、例えば、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、100nm以上であるものとしてもよい。この繊維体21の平均直径は、例えば、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であるものとしてもよい。このとき、基材空間22の直径、即ち、基材繊維の平均直径は、例えば、5nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがより好ましく、80nm以上であるものとしてもよい。この基材空間22の平均直径は、例えば、180nm以下であることが好ましく、120nm以下であることがより好ましく、80nm以下であるものとしてもよい。あるいは、繊維体21の平均直径は、例えば、200nm以上であることが好ましく、300nm以上であることがより好ましく、500nm以上であるものとしてもよい。この繊維体21の平均直径は、例えば、800nm以下であることが好ましく、600nm以下であることがより好ましく、500nm以下であるものとしてもよい。このとき、基材空間22の平均直径は、例えば、180nm以上であることが好ましく、280nm以上であることがより好ましく、480nm以上であるものとしてもよい。この基材空間22の平均直径は、例えば、780nm以下であることが好ましく、580nm以下であることがより好ましく、480nm以下であるものとしてもよい。基材繊維の平均直径は、繊維体21の平均直径を決定する主因子であり、より細ければ自立構造体20の表面積を増加することができる。基材繊維の平均直径や繊維体21の平均直径は、使用する用途に応じて適宜選択することができる。例えば、触媒として利用する場合はより質量を減らすべく、より薄くより細いものが好ましく、電池材料として利用する場合は、より厚くより太いものが好ましい。繊維体21を構成するナノ粒子24の大きさが3nm~4nmとすると、繊維体21は、基材繊維(基材空間22)に対して6nm以上を加えた平均直径とすることができる。なお、繊維体の断面が三日月形状など、一部欠けた形状である場合、繊維体の直径は、欠けた部分を含めて円形状にした疑似円の直径をいうものとする(図1の直径D参照)。この平均直径は、SEMで所定視野(例えば5視野)観察し、各繊維の直径を求め、その平均値から求めるものとする。
[複合体の製造方法]
本開示の複合体の製造方法は、上述した複合体の製造方法であって、機能性部位を自立構造体上に形成する形成工程、を含む。また、この製造方法は、形成工程の前に、自立構造体を作製する作製工程を含むものとしてもよい。なお、この製造方法において、自立構造体を別途用意してこの作製工程を省略してもよい。
[作製工程]
この工程では、ポリマーを含む不織布を基材として用い、この基材の表面に第1金属元素を形成し繊維体が3次元的に連結している自立構造体を作製する。この工程では、基材表面に第1金属元素を蒸着処理してもよい。この作製工程では、基材の表面に第1金属元素を形成したのち、基材の全部又は一部を除去する除去処理を行うものとしてもよい。
基材には、ポリマーが用いられる。基材としてポリマーを用いると、繊維体の形成時に基材表面において、ナノ粒子の核生成及び粒成長が比較的容易に進行する。基材に用いられるポリマーの組成は、特に限定されない。但し、基材の除去を容易化するためには、基材は、溶媒可溶性のポリマーが好ましい。溶媒可溶性のポリマーとしては、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリレート、ポリプロピレンオキシドなどが挙げられる。
基材の構造は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な構造を選択することができる。自立構造体は、基材の表面形状が転写された構造を持つ。そのため、ナノサイズの構造を有するポリマーを基材に用いると、ナノサイズの構造を有する自立構造体を作製することができる。基材としては、例えば、ポリマー製の不織布(基材不織布)などが挙げられる。基材不織布は、電界紡糸により作製することができる。この基材不織布の繊維径は、例えば、上述した基材空間の直径の範囲とすることができる。基材不織布の繊維径は、例えば、電界紡糸に用いる溶液のポリマー濃度、電場、溶液の供給速度などにより調節することができる。
この工程において、繊維体の形成方法は、特に限定されないが、蒸着処理として、物理蒸着でもよいし、化学蒸着でもよいが、物理蒸着が好ましい。物理蒸着法としては、例えば、スパッタリング法、パルスレーザーデポジション(PLD)法などがある。この工程では、減圧された不活性ガス中で繊維体を形成してもよい。また、この工程では、酸素を含む気相中で繊維体を形成するものとしてもよい。こうすれば、酸化物の自立構造体を得ることができる。基材表面に第1金属元素の物理蒸着を行う場合、物理蒸着は基材の片面から行ってもよく、あるいは、両面から行ってもよい。例えば、基材不織布を用いる場合において、基材不織布の片面のみから物理蒸着を行うと、半チューブ型のナノワイヤーからなる自立構造体が得られる。半チューブ型のナノワイヤーは、チューブ型のナノワイヤー又はロッド型のナノワイヤーに比べて比表面積が大きい。そのため、例えば、これを触媒反応デバイスに適用した場合には、機能性部位の利用率を高めることができる。物理蒸着の条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。一般に、蒸着時間が長くなるほど、繊維体の厚さを厚くすることができる。また、物理蒸着法は、蒸着量を原子レベルで制御可能である。そのため、蒸着条件を最適化すると、繊維体の表面に直径が3nm以上10nm以下である突起構造を形成することもできる。
この工程では、第1金属元素として、例えば、貴金属、典型金属、遷移金属及びそれらの合金のうち1以上を用いることができる。また、金属としては、Ceなどのランタノイド元素を含むものとしてもよい。また、無機材料として、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属炭化物、金属リン化物、若しくは、金属ヨウ化物のうち1以上を用いることができる。貴金属としては、例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru及びOsのうち1以上が挙げられる。また、典型金属としては、例えば、Mg、Al、Si、Ga、Ge、As、Se、In、Sn、Sb、Teのうち1以上が挙げられる。このうち、Snが例えば導電性が高く好ましい。また、遷移金属としては、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Moのうち、1以上が挙げられる。このうち、Cuが例えば導電性が高く好ましい。この第1金属元素としては、例えば、Pt、Au、Ag、Ru、Ir、Cu、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、Cr、Zn、Ti、Zr、Mo、W、Ce、Al及びSiのうち1以上を含むことが好ましい。
この工程では、基材表面に第1金属元素の構造を形成したのち、基材の全部又は一部を除去する処理を行うものとしてもよい。基材は、その全部を除去してもよく、あるいは、一部を除去してもよい。基材/ナノ粒子界面の量を低減するためには、基材の全部を除去するのが好ましい。基材の除去方法は、特に限定されるものではなく、基材の種類に応じて最適な方法を選択することができる。例えば、基材として溶媒可溶性のポリマーを用いた場合、溶媒を用いて基材を除去するのが好ましい。各種ポリマーを溶解可能な溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、NaBH4溶液(溶媒:水とエタノールの1対1混合液)、クロロホルム、アセトン、メタノール、エタノール等のアルコール類、水、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ニトロメタンなどが挙げられる。
図3は、自立構造体の製造方法の模式図であり、図3Aが直径100~200nmであるPVPナノワイヤーからなる不織布の模式図である。このような不織布を基材として用い、例えば、第1金属元素を基材表面に物理蒸着させると、図3Bに示すように、基材の表面に第1金属元素からなる構造体が形成された自立構造体が得られる。さらに、得られた自立構造体からPVPナノワイヤーを除去すると、図3Cに示すように、実質的に第1金属元素からなる繊維体が3次元的に連結している不織布構造が得られる。この時、物理蒸着の条件を最適化すると、数ナノサイズの突起が自立構造体の表面に形成される。
ポリマーからなる基材表面に第1金属元素を物理蒸着すると、基材表面に多数のナノ粒子の核が生成し、粒成長する。その結果、基材表面に、ナノ粒子の凝集体からなる繊維体が形成される。物理蒸着をさらに続行すると、繊維体の表面において、さらにナノ粒子の核生成及び粒成長が繰り返される。その結果、繊維体の表面に、直径が1~10nmであるナノ粒子からなる突起構造が形成される。得られた繊維体やシェルは、3次元的に連結しているため、基材を除去しても自立構造は維持される。この製造工程によれば、ナノ粒子の回収、洗浄、及び乾燥などの工程が不要であり、またナノ粒子を液相合成する場合のようなナノ粒子を安全に取り扱う設備が不要であるので、従来の方法に比べて容易に作製することができる。また、この製造工程によれば、大面積の自立構造体を容易に作製することができる。更に、直径が20~200nmのナノワイヤーを鋳型として使用することで、このような構造が転写された自立構造体を得ることができる。また、スパッタなどの物理成膜プロセスは、蒸着量を原子レベルで制御可能であることから、最表面に直径3~10nm程度の突起構造を形成することもできる。さらに、得られた自立構造体は均質性が高く、その製造プロセスもインクプロセスに比べて非常に簡便である。
自立している基材の表面にスパッタ法などの物理蒸着法を用いて、目的の第1金属元素を含む繊維体を作製することで、その下地の構造を模倣した自立構造体が得られる。基材を取り除くことで、反応を阻害するポリマーなどがなくなり、第1金属元素を含む構造体の表面が顕わになる。そのため、高い比表面積が得られ、単位質量当たりの触媒活性などを高めることができる。さらに、結晶性を有するポリマーからなり、かつナノスケールの曲面を有している基材の表面に第1金属元素を物理蒸着した場合、第1金属元素からなる直径が数ナノメートルの突起が基材表面に対して垂直に成長する。このような構造を備えた自立構造体は、高い比表面積、すなわち高い反応面積を有する表面を提供できる。
[形成工程]
この工程では、機能性部位を自立構造体上に形成する処理を行う。この工程では、第1金属元素と異なる第2金属元素を自立構造体上に蒸着させる。蒸着処理は、上述した作製工程と同様に、物理蒸着及び化学蒸着のいずれでもよいが、物理蒸着が好ましい。形成工程では、スパッタ処理により機能性部位を形成することが、処理の簡便さの観点からも好ましい。また、この工程では、単位面積あたりの第2金属元素の供給量が0.1個/nm2以上で機能性部位を形成するものとしてもよい。また、この工程では、単位面積あたりの第2金属元素の供給量が0.2個/nm2以上4.5個/nm2以下で機能性部位を形成するものとしてもよい。あるいは、単位面積あたりの第2金属元素の供給量が0.5個/nm2以上0.85個/nm2以下の範囲で機能性部位を形成するものとしてもよい。スパッタ処理では、蒸着量を制御することができるため、0.1個/nm2以上や0.2個/nm2以上、4.5個/nm2以下の範囲で第2金属元素の供給量を制御することができる。
この蒸着処理において、例えば、第2金属元素の単位時間あたりの供給量及び供給時間を適宜調整することによって、機能性部位としての第2金属元素を単原子粒子として形成するか、ナノクラスタとして形成するか、二次粒子サイズで形成するか、などを適宜調整することができる。蒸着処理は、例えば、第2金属元素のターゲットと自立構造体との距離を2~8cmとし、1Pa~20Paなどの減圧状態の不活性雰囲気下で、2秒~30秒などの所定時間、行うものとしてもよい。印加する電流は、例えば、1mA~10mAの範囲としてもよい。不活性雰囲気としては、Arなどの希ガスとしてもよい。この蒸着処理では、0.01~0.5mol/secの第2金属元素が自立構造体へ供給されるものとしてもよい。また、この工程では、酸素を含む気相中で機能性部位を形成するものとしてもよい。こうすれば、酸化物の機能性部位を自立構造体上に形成することができる。
形成工程では、第2金属元素として貴金属元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素のうち1以上を用いるものとしてもよい。用いる元素は、機能性部位の機能に応じて適宜選択すればよい。
以上詳述した本実施形態では、自立構造体上に存在する機能性部位の分散性を制御した新規な複合体及び複合体の製造方法を提供することができる。例えば、繊維状の基材表面に第1金属元素を蒸着すると、基材表面に多数のナノ粒子の核が生成し、粒成長する。その結果、基材表面に、ナノ粒子の凝集体からなる繊維体が形成される。このような構造を有する第1金属元素の繊維体の表面に、更に他の第2金属元素を蒸着すると、高密度に存在するナノ粒子のエッジ部分や不安定表面に存在する配位数の小さな第1金属元素に対して、第2金属元素が強く結びつくため、高密度に原子が単原子状態で安定化するものと推察される。また、例えば、強酸など機能性部位の溶液を用意する必要がなく、ナノ粒子を液相合成する場合のようなナノ粒子を安全に取り扱う設備が不要であるので、従来の方法に比べて機能性部位の分散性を制御した複合体を容易に作製することができる。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には自立構造体を有する複合体を具体的に作製した例を実験例として説明する。実験例1~10、16~17が参考例に相当し、実験例11~15が本開示の実施例に相当する。ここでは、まず、自立構造体の作製について検討した。
[自立構造体の作製;実験例1]
図4は、IrO2ナノワイヤー不織布の作製手順を示す説明図である。まず、PVPの8質量%メタノール溶液を1kV/cmで電界紡糸することで、直径が100~200nmのPVPポリマーナノワイヤーからなる不織布を作製した。図4Aは、作製したPVPナノワイヤー不織布の写真である。次に、このPVPナノワイヤー不織布の表面に、スパッタ法を用いてIrO2膜を形成した。IrO2膜は、酸素5%-アルゴン95%雰囲気下において、Irをスパッタすることにより形成した。図4Bは、IrO2をスパッタしたPVPナノワイヤー不織布の写真である。また、図4C及び図4Dは、それぞれ、IrO2膜を形成したPVPナノワイヤーのSEM写真及び模式図である。
次に、得られた不織布を0.5MのNaBH4溶液(溶媒:水とエタノールの1対1混合液)に入れ、80℃で30分間攪拌することでPVPを除去し、IrO2ナノワイヤー不織布を得た。図4Eは、脱PVP処理のための攪拌過程を撮影した写真である。図4Fは、脱PVP処理後のIrO2ナノワイヤー不織布を水溶液に浮かべた様子を撮影した写真である。図4Gは、脱PVP処理後のIrO2ナノワイヤーの模式図である。脱PVP処理後、Ti板を用いてIrO2ナノワイヤー不織布を水面からすくい上げた。図4Hは、このようにして得られたIrO2/Ti板の写真である。
[実験例2]
PVPの4質量%メタノール溶液を1kV/cmで電界紡糸することで、直径が10~20nmのPVPポリマーナノワイヤーからなる不織布を作製した。以下、このPVPナノワイヤー不織布を基材に用いた以外は実験例1と同様にして、IrO2ナノワイヤー不織布を得た。これを実験例2とした。
[評価]
作製した実験例1の複合体に対して、走査型電子顕微鏡(SEM,HITACHI社製FE5500)を用いて微細構造の観察を行った。図5は、実験例1(図5A~F)、実験例2(図5G)のSEM観察結果であり、図5Aが低倍率SEM像、図5Bが高倍率SEM像、図5Cがスパッタ面及のSEM像、図5Dがスパッタ面の裏面のSEM像である。また、図5Eが低倍率STEM像であり、図5Fが高倍率STEM像(拡大図)であり、図5Gが断面のSEM像を示す。図5に示すように、ポリマー製の不織布のナノ構造がそのまま転写され、柔軟性があるIrO2ナノワイヤー不織布が得られた。また、このIrO2ナノワイヤー不織布構造は、直径が3~10nmのIrO2ナノ粒子の凝集体であった。また、実験例1では、ポリマー不織布の一方の面からIrO2をスパッタしていることから、IrO2ナノワイヤーは、半チューブ状となっていた(図5C,5D,5G参照)。また、IrO2ナノワイヤーの表面には、直径が3~10nmのナノ粒子が連結した突起物が形成されていた(図5E,5F参照)。また、図5Gに示すように、直径10~20nm程度の極細のポリマーナノワイヤーを鋳型に用いた実験例2でも、不織布構造を有する自立構造体を得ることができた。
[実験例3~9]
小型電界紡糸装置を用いてポリマー製不織布を作製し、小型卓上スパッタ装置(HITACHI社製MC1000イオンスパッタ装置)を用いてこのポリマー製不織布の表面に金属の自立構造を形成したのち、ポリマー製不織布を除去し、複合体を得た。スパッタには、Pt、Au、Ag、Cu、Sn、Ru、Irの金属ターゲットを用い、得られた複合体をそれぞれを実験例3~9とした。スパッタは不活性雰囲気(Arガス)中で行った。
図6は、基材の不織布及び不織布除去前の実験例3~9の自立構造体の写真である。図7は、水中での実験例3~9の不織布構造を有する複合体の写真である。図7は、水中にて不織布を除去したのちの複合体を撮影したものであり、水中にて一部がめくれた状態になっている。図6、7に示すように、貴金属としてのPt、Au、Ag、Ru、Irや、遷移金属としてのCu、典型金属としてのSnなど、各金属を用いても、柔軟性があり、不織布の自立構造を有する複合体を作製することができることがわかった。特に、貴金属や遷移金属においては、その触媒性能を利用したデバイスに利用可能であり、導電性の高い金属(例えばCuやSnなど)においては、蓄電装置や駆動装置の電極部材、集電部材、導電部材のデバイスに利用可能である。特に、上記複合体は、厚さが極めて薄く、柔軟性を有しているため、各種デバイスに利用しやすいメリットがある。
[実験例10]
実験例3と同様に、直径100~200nmのPVPナノファイバー不織布の表面に、Niターゲットを用いてNi膜を100nm厚でスパッタ蒸着した。この蒸着体を、水溶液に浸漬することで、ナノワイヤー不織布状のNi構造体(Niナノ構造布)を得た。図8は、実験例10の不織布構造を有する自立構造体の写真であり、図8Aが10mm角のNiナノ構造布を純水に浮かべた写真であり、図8BがNiナノ構造布のSEM写真である。図8に示すように、Niを用いても、柔軟性があり、不織布構造の繊維体を有する自立構造体を得ることができた。
(複合体の作製)
次に、自立構造体上に機能性部位を配設した複合体を作製した。ここでは、自立構造体としてのTiO2不織布上に機能性部位としてのPt粒子を分散したPt/TiO2複合体を作製した。まず、8質量%のPVP水溶液を電解紡糸し、繊維径が271nmのポリマーナノファイバからなる不織布を得た。次に、酸素分圧が1.5×10-3(Pa)、Ar分圧が1.5(Pa)の雰囲気中でTiターゲットを用いてTiをこの不織布上にスパッタ蒸着し、TiO2不織布を得た。実験例1と同様に、PVPを除去し、TiO2ナノワイヤー不織布(自立構造体)を得た。図9は、TiO2からなる自立構造体の写真である。この自立構造体においても、柔軟性のあるナノ粒子が連結した自立構造体が得られた。次に、Ptターゲットを用い、TiO2からなる自立構造体の表面にPtを所定時間に亘ってスパッタ蒸着したのち、450℃で10分間、空気中で熱処理することでTiO2の自立構造体の表面にPt原子が高密度に分散した複合体が得られた。
(実験例11~15)
Ptスパッタ蒸着は、ターゲットと基材の間の距離を5cmとし、Ar雰囲気下10(Pa)の圧力のチャンバー内で スパッタ電流5mAの電流をそれぞれ、5秒、10秒、20秒、50秒、80秒印加したものをそれぞれ実験例11~15した。なお、上記条件では1秒当たり0.1ML(1.5×1014個/cm2)のPtが蒸着された。
(実験例16~17)
また、比較対象として、厚さ5μmのPt箔を実験例16とした。また、PtO2を直径7mm、高さ0.5mmの円板状に成形したペレットを実験例17とした。
(透過型電子顕微鏡像:TEM観察)
実験例11の電子顕微鏡(TEM)観察を行った。TEM観察は、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM-2100F)を用いた。
(XPS測定)
実験例11~15の複合体に対して、X線光電子分光(XPS)測定を行った。X線光電子分光測定は、XPS測定装置(アルバックファイ製Quantera SXM)を用い、X線源としてAlKαを用いて行った。
(XAFS測定)
実験例11、12、16、17のX線吸収微細構造測定を行った。この測定は、放射光施設のあいちSR-BL11S2にて行った。
(結果と考察)
図10は、実験例11のPt/TiO2複合体のTEM像(図10A)であり、図10Bは、リファレンスとしての非特許文献1に記載された酸化鉄表面のTEM写真である。図10では、Pt原子の存在に対して白丸を示した。図10Bに示すように、従来の手法では、Pt単原子粒子を高分散に担持することはできるが、その存在密度は、0.07個/nm2であった。一方、繊維体の自立構造体上にPt粒子を形成した実験例11では、Ptの単原子粒子が0.63個/nm2という従来の約10倍の存在密度で高分散に存在することがわかった。例えば、触媒性能などを考慮すると、活性点となる触媒元素は、単原子粒子で存在する方が触媒反応の効率がよい。また、その存在密度は、ある程度高い方が望ましい。したがって、実験例11では、より高い触媒性能が期待できると推察された。
図11は、実験例11~15のXPS測定結果である。図11に示すように、実験例11では、Ptが単原子粒子で存在することを示すPt2+に相当するピークが73eV近傍で得られた。実験例12においてもPtが単原子粒子で存在するピークが得られた一方、Pt-Pt結合に基づく71eV近傍のピークが確認された。これは、Ptの凝集によりPtがナノクラスタ化していることが示唆された。また、この71eVでのピークは、スパッタ時間がより長くなる実験例13~15に応じて大きくなった。即ち、スパッタ時間の長期化に応じて、Ptの単原子からナノクラスタが生じ、更にPtの粒子化が進むものと推察された。
図12は、実験例11、12、16、17のPtのL3吸収端付近のX線吸収スペクトルである。図13は、実験例11、12、16、17のK3で重み付けたXAFSスペクトルである。図14は、図13のスペクトルをk=3-14Åの範囲でフーリエ変換した結果である。図12に示すように、11570eVのピークにおいて、実験例11,12では、0価であるPt0の実験例16と、4価であるPt+4の実験例17との間の価数を示すことがわかった。また、図14に示すように、実験例11では、Pt-Pt結合のピークがみられていないことから、Ptが単原子粒子として存在することが明らかとなった。また、実験例12では、Pt-Pt結合のピークが現れていることから、Pt単原子粒子の凝集が現れており、Ptのナノクラスタが生成しているものと推察された。
実験例11や12では、Ptの単原子粒子がTiO2の自立構造体上に高密度で分散した構造が得られることがわかった。この理由は、例えば、TiO2の自立構造体は、所定の曲率を有する不織布ポリマーの繊維上にスパッタにより形成されているため、平面上に形成される場合に比して、エッジやコーナーなど配位数の小さな不飽和な部位が生じやすい。このような不飽和部位に機能性部位としてのPtが結合しやすいため、Ptが高密度で且つ高分散な状態で表面に安定化するものと推察された。また、本実施例では、TiO2の自立膜状にPtを形成したが、この手法は、ほぼ全ての元素が利用可能であるスパッタ処理によって複合体を作製することができるため、遷移金属、典型金属及び貴金属など、広範な元素に対しても同様に適用して効果を得ることができることが容易に推察された。
以上、本開示の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本開示の複合体及び複合体の製造方法は、各種デバイスの触媒層などとして用いることができる。
10,10B 複合体、20 自立構造体、21 繊維体、22 基材空間、23 突起構造、24 ナノ粒子、30 機能性部位、31 単原子粒子、32 ナノクラスタ。

Claims (18)

  1. 貴金属、典型金属及び遷移金属のうちいずれか1以上である第1金属元素の金属及び/又は酸化物により構成される繊維体が3次元的に連結している自立構造体と、
    前記第1金属元素と異なる第2金属元素により構成され前記自立構造体上に形成された機能性部位と、を備え
    前記自立構造体は、半チューブ型のナノワイヤーが3次元的に連結した柔軟性を有する不織布構造を有する、複合体。
  2. 前記機能性部位は、前記第2金属元素の単原子粒子及び前記第2金属元素のナノクラスタのうち1以上を含む、請求項1に記載の複合体。
  3. 前記機能性部位は、単位面積あたりの前記第2金属元素の存在密度が0.1個/nm2以上で前記自立構造体上に存在している、請求項1又は2に記載の複合体。
  4. 前記機能性部位は、単位面積あたりの前記第2金属元素の存在密度が0.2個/nm2以上4.5個/nm2以下の範囲で前記自立構造体上に単原子粒子で存在している、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合体。
  5. 前記機能性部位は、前記第2金属元素として貴金属元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素のうち1以上を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合体。
  6. 前記自立構造体は、前記第1金属元素による構造体を支持するポリマーにより構成された支持部を備えている、請求項1~のいずれか1項に記載の複合体。
  7. 前記自立構造体は、前記第1金属元素としてPt、Au、Ag、Ru、Ir、Cu、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、Cr、Zn、Ti、Zr、Mo、W、Ce、Al及びSiのうち1以上を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の複合体。
  8. 前記自立構造体は、前記第1金属元素の酸化物により構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の複合体。
  9. 貴金属、典型金属及び遷移金属のうちいずれか1以上である第1金属元素により構成される繊維体が3次元的に連結している自立構造体上に機能性部位が形成された複合体の製造方法であって、
    前記第1金属元素と異なる第2金属元素を蒸着させ該第2金属元素により構成される機能性部位を前記自立構造体上に形成する形成工程、をみ、
    前記自立構造体は、半チューブ型のナノワイヤーが3次元的に連結した柔軟性を有する不織布構造を有する、複合体の製造方法。
  10. 前記形成工程では、スパッタ処理により前記機能性部位を形成する、請求項に記載の複合体の製造方法。
  11. 前記形成工程では、単位面積あたりの前記第2金属元素の供給量が0.1個/nm2以上で前記機能性部位を形成する、請求項又は10に記載の複合体の製造方法。
  12. 前記形成工程では、単位面積あたりの前記第2金属元素の供給量が4.5個/nm2以下で前記機能性部位を形成する、請求項11のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
  13. 前記形成工程では、酸素を含む気相中で前記機能性部位を形成する、請求項12のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
  14. 前記形成工程では、前記第2金属元素として貴金属元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素のうち1以上を用いる、請求項13のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
  15. 請求項14のいずれか1項に記載の複合体の製造方法であって、
    ポリマーを含む不織布を基材として用い該基材の表面に前記第1金属元素を形成し繊維体が3次元的に連結している自立構造体を作製する作製工程、
    を含む複合体の製造方法。
  16. 前記作製工程では、前記第1金属元素を形成したのち前記基材の全部又は一部を除去する除去処理を実行する、請求項15に記載の複合体の製造方法。
  17. 前記作製工程では、前記第1金属元素としてPt、Au、Ag、Ru、Ir、Cu、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、Cr、Zn、Ti、Zr、Mo、W、Ce、Al及びSiのうち1以上を用いる、請求項15又は16に記載の複合体の製造方法。
  18. 前記作製工程では、スパッタ処理により前記自立構造体を作製する、請求項1517のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
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