JP7225799B2 - 透過型光学素子の製造方法 - Google Patents
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Description
なお、本発明において、「ガラス転移温度」は、JIS K7121に準拠して測定することができる。また、「熱膨張係数」は、JIS Z2285:2003に記載の光走査法を用いて測定することができる。
なお、本発明において、「吸水率」は、ASTM D570に準拠して測定することができる。
中でも、本発明の透過型光学素子の製造方法によれば、両凸レンズ、両凹レンズおよび凸凹レンズ(凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズ)等の両側が曲面(例えば、球面や非球面など)よりなるレンズを特に好適に製造することができる。
なお、熱プレス成形を用いた本発明の透過型光学素子の製造方法では、比較的小径の各種透過型光学素子を高い形状精度で製造することができる。従って、本発明の透過型光学素子の製造方法によれば、例えば、小型電子電気機器のカメラユニットのレンズとして好適に用いることができる光学レンズを効率的に製造することができる。
本発明の透過型光学素子の製造方法は、熱可塑性樹脂を用いて形成された熱可塑性樹脂フィルムの熱プレス成形により透過型光学素子を製造する方法である。そして、本発明の透過型光学素子の製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムを、少なくとも一対の平板金型により熱可塑性樹脂のガラス転移温度超の温度で熱プレスして熱プレスフィルムを得る工程(熱プレス工程)と、平板金型を熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下の温度まで冷却して、熱プレスフィルムを冷却する工程(金型冷却工程)と、金型冷却工程の後に、冷却された熱プレスフィルムを平板金型から離型して少なくとも1つの透過型光学素子を含む成形フィルムを得る工程(離型工程)とを含む。また、本発明の透過型光学素子の製造方法は、上述した平板金型として、熱膨張係数が6ppm/K以下の平板金型を使用することを特徴とする。熱膨張係数が6ppm/K以下の平板金型を使用すれば、得られる透過型光学素子の一方の成形面(一方の平板金型に当接していた面)と他方の成形面(他方の平板金型に当接していた面)との相対位置のズレを低減または無くすことができる。また、熱可塑性樹脂フィルムを熱プレス成形して透過型光学素子を形成すれば、射出成形により透過型光学素子を形成する場合と比較し、ウェルドラインの発生が無く、複屈折の発生を抑制して複屈折の小さい透過型光学素子を効率的に得ることができる。
なお、本発明の透過型光学素子の製造方法は、熱プレス工程の前に、熱可塑性樹脂フィルムを所定の搬送方向に沿って搬送する搬送工程を含んでいてもよい。また、本発明の透過型光学素子の製造方法は、離型工程の後に、成形フィルムから透過型光学素子を分離する透過型光学素子分離工程を含んでいてもよい。
搬送工程では、熱プレス工程に先立って、熱可塑性樹脂フィルムを、所定の搬送方向に沿って熱プレスを実施する位置まで搬送する。搬送方向は、熱可塑性フィルムの幅方向に対して直交する長手方向に沿う方向であることが好ましい。
熱プレス工程では、熱可塑性樹脂フィルムを、少なくとも一対の平板金型により熱プレスして熱プレスフィルムを得る。この際、熱プレスを行う温度は、通常、熱可塑性樹脂のガラス転移温度超の温度とする。また、平板金型としては、熱膨張係数が6ppm/K以下の平板金型を使用することを必要とする。
なお、熱プレス工程では、少なくとも一対の平板金型を用いる限りにおいて特に限定されることなく、一対の平板金型を用いて熱可塑性樹脂フィルムを熱プレスしてもよいし、複数対の平板金型を用いて1枚の熱可塑性樹脂フィルムの異なる部分を同時に又は時間差で熱プレスしてもよい。
熱可塑性樹脂フィルムとしては、熱可塑性を有する限りにおいて特に限定されることなく、既知のあらゆる熱可塑性樹脂を用いて形成されたフィルムを用いることができる。ここで、「フィルム」とは、表面および裏面(即ち、主面)が、厚み分の距離を隔てて対向してなる形状を有するものを指す。
なお、熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂以外の成分を含有するものであってもよい。
そして、熱可塑性樹脂フィルムを構成し得る熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、脂環式構造含有樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ウレタン樹脂およびチオウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、透明性に優れる透過型光学素子が得られることから、熱可塑性樹脂フィルムは脂環式構造含有樹脂を含むことが好ましい。
なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを指す。そして、上述した熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、及び1-ヘキセンなどの炭素数2~20のα-オレフィン並びにこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、及び3a,5,6,7a-テトラヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデンなどのシクロオレフィン並びにこれらの誘導体;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、及び1,7-オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。
また、これらのノルボルネン系重合体の水素化物は、公知の水素化触媒を用いた水素化反応により、得ることができる。
熱可塑性樹脂以外の成分としては、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、帯電防止剤等の添加剤が挙げられる。これらの成分の配合量は、特に限定されず適宜決定することができる。例えば、これらの添加剤の合計量は、熱可塑性樹脂フィルム中の熱可塑性樹脂成分の量を100質量%として、10質量%以下とし得る。
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、製造する透過型光学素子のサイズに応じて、適宜選択することができる。例えば、熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、通常、50~500μmであり、好ましくは70~400μmである。
なお、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法としては、特に限定されることなく、従来公知の適宜な方法を採用することができる。例えば、所定の成分を混合して得た熱可塑性樹脂フィルム製造用の成形材料を用いて、溶融押出成形法、溶融流延成形法、射出成形法、溶液キャスト法等により、熱可塑性樹脂フィルムを得ることができる。
本発明の透過型光学素子の製造方法で用いる平板金型は、熱膨張係数が6ppm/K以下であることを必要とし、平板金型の熱膨張係数は、3ppm/K以下であることが好ましく、2ppm/K以下であることがより好ましい。熱膨張係数が6ppm/K超の場合、得られる透過型光学素子の一方の成形面と他方の成形面との相対位置にズレが生じるのを十分に抑制することができない。
そして、平板金型としては、特に限定されることなく、インバーやスーパーインバーなどの低熱膨張材料よりなる金型、或いは、インバーやスーパーインバーなどの低熱膨張材料よりなる母材の表面にめっき層および/またはコーティング層を1層以上設けてなる金型を用いることができる。
なお、低熱膨張材料の熱膨張係数は、6ppm/K以下であることが好ましく、2ppm/K以下であることがより好ましく、1ppm/K以下であることが更に好ましい。
なお、母材の表面へのめっき層および/またはコーティング層の形成は、特に限定されることなく、例えば特開2015-24625号公報に記載されている方法などの既知の方法を用いて行うことができる。
本発明の透過型光学素子の製造方法で用いる平板金型は、透過型光学素子の光学面を形成する光学面形成領域を1個以上有している限りにおいて特に限定されることなく、あらゆる形状であり得る。平板金型が複数の光学面形成領域を有する場合、当該複数の光学面形成領域は、通常、平板金型の平面方向にて離散配置される。複数の光学面形成領域は、平板金型の平面方向にて、等間隔で離隔して配置されていることが好ましい。
なお、本発明の透過型光学素子の製造方法で用いる一対の平板金型は、通常、両方が、それぞれ光学面形成領域を有し得る。光学面形成領域をそれぞれ有する一対の平板金型を用いて成形することで、両面が賦形された透過型光学素子を効率的に製造することができる。そして、一対の平板金型の各形状は、当然、製造する透過型光学素子の形状に応じて、同一であっても、相異なっていても良い。
なお、「平板金型の外周部形成領域における最浅部の深さ」は、通常、成形時に一対の平板金型を対向させて相互に接触させた場合の、外周部形成領域における金型間の最短距離に相当する。
熱プレス工程における平板金型の温度Tは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tgr)よりも、30℃以上高いこと(T≧Tgr+30℃)が好ましく、40℃以上高いこと(T≧Tgr+40℃)がより好ましく、70℃以下の範囲内で高いこと(T≦Tgr+70℃)が好ましく、60℃以下の範囲内で高いこと(T≦Tgr+60℃)がより好ましい。熱プレス時の平板金型の温度が上記下限値以上であれば、得られる透過型光学素子における複屈折の発生を良好に抑制することができる。また、熱プレス時の平板金型の温度が上記上限値以下であれば、一層効率的に透過型光学素子を製造することができる。
なお、熱プレス工程は、熱可塑性樹脂フィルムを一対の平板金型で加熱しながらプレスするための動作過程において、所定のプレス圧を平板金型に対して印加して熱可塑性樹脂フィルムを熱プレスする期間を指す。ここで、かかる熱プレス工程と、上述した搬送工程との間に、熱可塑性樹脂フィルムを平板金型により挟んだ状態で加熱することを含む金型加熱工程を更に含むことが好ましい。金型加熱工程におけるプレス圧は、熱プレス工程におけるプレス圧よりも低いことが好ましい。より具体的には、例えば、熱プレス工程におけるプレス圧を1MPa以上10MPa以下とした場合には、金型加熱工程におけるプレス圧は1MPa未満でありうる。そして、金型加熱工程は、熱可塑性樹脂フィルムと一対の平板金型の何れか一方とが接触する時点を始点として、プレス圧を熱プレス工程におけるプレス圧に切り替える時点を終点とする。金型加熱工程の開始前または金型加熱工程中における所望のタイミングで平板金型への熱入力を開始して、上述した「熱プレス時の平板金型の温度」まで徐々に昇温させる。なお、金型加熱工程の終点より前のタイミング(例えば、金型加熱工程の終了時点の50秒前の時点)で、昇温が完了していても良い。
また、金型温度は、特に限定されることなく、既知の一般的な方法(例えば、既知のヒーターおよびクーラー等を用いた温度制御方法)に従って、適宜調節することができる。
金型冷却工程では、平板金型を熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下の温度まで冷却して、熱プレスフィルムを冷却する。かかる工程を実施することで、得られる透過型光学素子の形状精度を高めることができる。なお、金型冷却工程の始点は、例えば、熱プレス工程の開始時点から所定時間経過後に、平板金型について平板金型を冷却するための温度制御を開始する時点、或いは、熱プレス工程の開始時点から所定時間経過後に、平板金型に対する熱入力を停止した時点であり得る。金型冷却工程の終点は、後述する金型冷却温度まで金型温度が下がった時点、或いは、かかる時点から所定時間(例えば、50秒)経過した時点であり得る。
冷却後の平板金型温度T’は、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度以下である必要があり、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tgr)よりも、15℃以上低いこと(T’≦Tgr-15℃)が好ましく、30℃以上低いこと(T’≦Tgr-30℃)がより好ましく、80℃以下の範囲内で低いこと(T’≧Tgr-80℃)が好ましく、75℃以下の範囲内で低いこと(T’≧Tgr-75℃)がより好ましい。冷却後の平板金型温度が上記上限値以下であれば、後述する離型工程にて、離型し易く、得られる透過型光学素子の形状精度を効果的に高めることができる。また、冷却後の平板金型温度が上記下限値以上であれば、透過型光学素子の製造効率を一層高めることができる。
そして、熱プレス工程における平板金型の温度Tと、冷却後の平板金型温度T’との差(=T-T’)は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。TとT’との差が上記下限値以上であれば、得られる透過型光学素子の形状精度を効果的に高めることができる。また、TとT’との差が上記上限値以下であれば、得られる透過型光学素子の一方の成形面と他方の成形面との相対位置のズレを更に抑制することができる。
離型工程では、金型冷却工程の後に、熱プレスフィルムを平板金型から離型して、少なくとも1つ、好ましくは複数の透過型光学素子を含む成形フィルムを得る。なお、本発明の透過型光学素子の製造方法では、熱膨張係数が6ppm/K以下の平板金型を使用しているので、複数の透過型光学素子を含む成形フィルムを形成して透過型光学素子を効率的に製造する場合であっても、それぞれの透過型光学素子について、一方の成形面と他方の成形面との相対位置のズレを良好に低減することができる。
なお、張力は、離型工程のみならず、上述した熱プレス工程における金型加熱工程以降、離型工程を開始する時点までの各段階において、継続的または断続的にかけられていることが好ましい。得られる透過型光学素子の形状精度を一層高めることができるからである。そして、熱プレスフィルムに対して搬送方向に作用させる張力の大きさは、熱可塑性樹脂フィルムの幅1mあたり、1N以上であることが好ましく、10N以上であることがより好ましく、2000N以下であることが好ましく、1000N以下であることがより好ましい。なお、「熱可塑性樹脂フィルムの幅」とは、搬送方向に対して直交する方向である。張力の大きさが上記下限値以上であれば、得られる透過型光学素子の形状精度を一層高めることができる。また、張力の大きさが上記上限値以下であれば、熱プレスフィルムが破断することを抑制して、透過型光学素子の製造効率を一層高めることができる。
透過型光学素子分離工程では、離型工程を経て得られた成形フィルムから、透過型光学素子を分離する。成形フィルムから透過型光学素子を分離する透過型光学素子分離工程を実施することで、一層効率的に透過型光学素子を製造することができる。分離方法としては特に限定されることなく、抜き型による打ち抜き、レーザーによるカット等の既知のあらゆる方法で、成形フィルムから透過型光学素子を分離することができる。
上述した本発明の透過型光学素子の製造方法は、特に限定されることなく、例えば図1に概略構成を示す透過型光学素子製造装置100を用いて実施することができる。透過型光学素子製造装置100は、一対の平板金型を構成する上部金型1Aおよび下部金型1B、上部金型1Aを支持するとともにこれを加熱および冷却する上部温度調節装置2A、上部温度調節装置2Aを支持するとともにプレス方向(図1では上下方向)に移動可能に構成された移動テーブル3、下部金型1Bを支持するとともにこれを加熱および冷却する下部温度調節装置2B、並びに、下部温度調節装置2Bを支持する下部テーブル4を備える。さらに、透過型光学素子製造装置100は熱可塑性樹脂フィルム7を送出するための構成部である巻き出しロール5Aおよび成形フィルムを巻き取るための構成部である巻取りロール5Bを備え得る。さらにまた、透過型光学素子製造装置100は、熱可塑性樹脂フィルム7の送出態様を制御するための構成部として、送りロール6を備えていても良い。なお、これらの各種構成部は、図示の態様に限定されるものではなく、上記したような各機能を発揮し得る限りにおいて、既存のあらゆる具体的手段により代替することが可能である。なお、図1に示す透過型光学素子製造装置100は、所謂、「ロール・ツー・ロール」方式で樹脂フィルムから透過型光学素子を成形するための装置である。
なお、上述した<透過型光学素子分離工程>は、図示しない打ち抜きユニット等を設けることにより、実施することができる。
図2および図3を参照して、本発明の透過型光学素子の製造方法により透過型光学素子としての光学レンズ(両凸レンズ)を製造する場合について、説明する。図1と同じ参照符号を付した構成については、図1に関連して説明した通りである。図2および図3では、それぞれ、異なる形状の光学レンズを製造しているため、平板金型の形状は異なる。このため、一対の平板金型は、図2では、上部金型1A’および下部金型1B’と示し、図3では上部金型1A”および下部金型1B”として示す。また、得られる光学レンズの形状も異なるため、図2では得られる光学レンズを光学レンズ8’と示し、図3では得られる光学レンズを光学レンズ8”として示す。
なお、図2および図3は、搬送方向から見た断面図であり、熱可塑性樹脂フィルム7、上部金型1A’および下部金型1B’、上部金型1A”および下部金型1B”、並びに、光学レンズ8’および8”は、それぞれ一部のみを示す。
本発明の透過型光学素子の製造方法により得られる透過型光学素子としての光学レンズは、低複屈折性であるとともに、且つ、形状精度が高いものである。例えば、本発明の透過型光学素子の製造方法により得られる透過型光学素子としての光学レンズは、光学有効径内の位相差が、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。光学有効系内の位相差が100nmである光学レンズは、十分に低複屈折性である光学レンズである。なお、本発明において、位相差の値は、実施例に記載の方法に従って求めることができる。
実施例および比較例において、熱可塑性樹脂のガラス転移温度および吸水率、並びに、平板金型の熱膨張係数は、以下のようにして測定した。また、実施例および比較例において、光学レンズの位相差、並びに、初期および恒温恒湿試験後の成形面の相対位置のズレは、以下のようにして算出または評価した。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(SIIナノテクノロジー社製、「DSC6220」)を用いて、JIS K7121に基づき昇温速度10℃/分の条件で測定した。
<吸水率>
熱可塑性樹脂の吸水率は、ASTM D570に準拠して測定した。
具体的には、まず、熱可塑性樹脂のフィルムから、幅100mm、長さ100mmで試験片を切り出し、試験片の質量を測定した。その後、試験片を、23℃の水中に24時間浸漬して、浸漬後の試験片の質量を測定した。そして、浸漬前の試験片の質量に対する、浸漬によって増加した試験片の質量の割合を、吸水率(%)として算出した。
<熱膨張係数>
平板金型の熱膨張係数は、JIS Z2285:2003に記載の光走査法を用いて測定した。
具体的には、線膨張率測定装置(品川白煉瓦社製、「SL-2000M」)を使用し、以下の条件で熱膨張係数を測定した。なお、熱膨張係数は、以下の式より算出される。
熱膨張係数=試験片の伸びΔL/(25℃における試験片の長さL0×温度変化ΔT)
[測定条件]
・測定用試験片:平板金型を図4に示す形状に加工して測定用試験片とした
・長さ測定方法:望遠測微法(東京光電子工業製、レーザーマイクロゲージ)
・プローブレーザー:半導体レーザ(AlGaInP;波長670nm、出力0.2mW)
・測定雰囲気:アルゴン雰囲気(流量100cc/分)
・測定温度:25~100℃
・昇温・降温速度:10℃/分
・測定間隔:30秒
<位相差>
光学レンズの有効径内の位相差は、樹脂成形レンズ検査システム(フォトニックスラティス社製、「WPA-100」)を用いて測定した。位相差の値は、測定波長(543nm)で規格化した値として得られる。位相差の値は、複数の光学レンズについて測定して得た値の単純平均値とした。
得られた位相差の値を、以下の基準に従って評価した。位相差の値が小さいほど、複屈折が小さいことを示す。
A:20nm以下
B:20nm超50nm以下
C:50nm超
<相対位置のズレ(初期)>
作製した成形フィルム(A4サイズ)10枚について、平面視中央部と、一方の長辺側の中心部と、一方の短辺側の中心部との3箇所において、それぞれ光学レンズの両面の頂点の位置の座標を測定した。なお、測定は、3次元形状測定器(三鷹光機社製、「NH-3SP」)を用いて行い、長辺方向をX座標、短辺方向をY座標とした。
そして、一方の表面(成形面)の頂点の座標を(X1,Y1)とし、他方の表面(成形面)の頂点の座標を(X2,Y2)として、以下の式より、各位置(中央部、長辺側中心部、短辺側中心部)における光学レンズのズレの大きさDを求めた。そして、成形フィルム(A4サイズ)10枚について、各位置のズレの大きさDの標本標準偏差を求めた。標本標準偏差が小さいほど、成形面の相対位置のズレが小さいことを示す。
D={(X2-X1)2+(Y2-Y1)2}1/2
<相対位置のズレ(恒温恒湿試験後)>
上記<相対位置のズレ(初期)>を求めた成形フィルム(A4サイズ)10枚を、温度85℃、湿度85%RHに調節された恒温恒湿容器内に168時間保管した。
そして、保管後の成形フィルム(A4サイズ)10枚について、上記<相対位置のズレ(初期)>と同様にして各位置のズレの大きさDの標本標準偏差を求めた。標本標準偏差が小さいほど、成形面の相対位置のズレが小さく、耐湿性および耐熱性に優れていることを示す。
<熱可塑性樹脂フィルムの調製>
ノルボルネン系開環重合体水素化物を含む熱可塑性樹脂(ZEONEX K22R(日本ゼオン社製)、ガラス転移温度:143℃、吸水率:0.01質量%未満)を、フィルム押出成形機(単軸押出機、φ=20mm、GSIクレオス社製)に入れ、270℃で溶融し、溶融樹脂をTダイから押し出し、冷却して、最大厚みが201μm、最小厚みが197μm、厚みばらつきが4μmである、幅280mmの熱可塑性樹脂フィルムを得た。なお、熱可塑性フィルムな幅方向に垂直な方向が長手方向となっており、ロール・ツー・ロール成形法により成形するために充分な長さを有していた。
<平板金型の準備>
平板金型として、インバーよりなる母材(新報国製鉄社製、「IC-36」、熱膨張係数:1.5ppm/K)の表面に、無電解めっき法により厚さ70μmのニッケルリンめっき層(リン濃度:2質量%)を形成してなる平板金型を2つ準備した。なお、ニッケルリンめっき層の形成には、市販されている無電解ニッケルリンめっき液(奥野製薬工業社製、「トップニコロン」)を用いた。
なお、各平板金型には、直径が3.2mmの光学面(即ち、レンズ面)形成領域を396個(個数密度:0.63個/cm2)形成した。平板金型に含まれる光学面形成部の直径は3.2mmであり、光学面形成領域間の最小間隔は10mmであり、光学面形成領域および外周部形成領域における最浅部の深さは150μmであり、光学面形成領域における最深部の深さは550μmであった。また、光学面形成領域は、超精密立形加工機 UVM-450C(東芝機械製)を用いて、表面粗さRaが0.019μmとなるように鏡面加工を行った。
そして、熱膨張係数を測定した。結果を表1に示す。
<光学レンズの製造>
上記に従って得られた熱可塑性樹脂フィルムおよび平板金型を図1示した概略構成に従う製造装置にセットした。
そして、搬送工程を実施して、熱可塑性樹脂フィルムを所定位置までフィルムの長手方向に沿う搬送方向に搬送した。
次に、未加熱の状態(80℃以下)の一対の平板金型により熱可塑性樹脂フィルムを挟み込み(プレス圧:0.5MPa)、その状態を維持したまま、195℃(プレス温度、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度Tgr+52℃)まで平板金型を加熱した(金型加熱工程)。そして、一対の平板金型を用いてプレス圧6MPaで熱可塑性樹脂フィルムを熱プレスして、熱プレスフィルムを得た(熱プレス工程)。
更に、熱プレスフィルムをプレスしたままの状態で、一対の平板金型を80℃(熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度Tgr-63℃)まで、40秒間かけて冷却して、金型間に挟まれた状態の熱プレスフィルムを冷却した(金型冷却工程)。
その後、平板金型を開いて金型冷却工程を終了し、離型工程を開始した。そして、離型工程を経て得られた複数の光学レンズを含む成形フィルムについて、A4サイズに切り取り、初期および恒温恒湿試験後の成形面の相対位置のズレを測定した。結果を表1に示す。
また、得られた成形フィルムに対し、内径8mmの丸刃での打ち抜きによる分離工程を実施して、396枚の光学レンズを得た。得られた透過型光学素子としての光学レンズは、両凸レンズであった。そして、位相差を測定した。結果を表1に示す。
以下のようにして調製した熱可塑性樹脂フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、平板金型の準備および光学レンズの製造を行った。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
<熱可塑性樹脂フィルムの調製>
ノルボルネンとエチレンとをモノマーとするランダム共重合体を含む熱可塑性樹脂(TOPAS6013(Polyplastics社製)、ガラス転移温度:138℃、吸水率:0.01質量%未満)を、フィルム押出成形機(単軸押出機、φ=20mm、GSIクレオス社製)に入れ、260℃で溶融し、溶融樹脂をTダイから押し出し、冷却して、最大厚みが210μm、最小厚みが202μm、厚みばらつきが8μmである、幅275mmの熱可塑性樹脂フィルムを得た。なお、熱可塑性フィルムな幅方向に垂直な方向が長手方向となっており、ロール・ツー・ロール成形法により成形するために充分な長さを有していた。
以下のようにして調製した熱可塑性樹脂フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、平板金型の準備および光学レンズの製造を行った。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
<熱可塑性樹脂フィルムの調製>
ポリカーボネート樹脂(ワンダーライトPC-115(旭化成社製)、ガラス転移温度:145℃、吸水率:0.15質量%)を、フィルム押出成形機(単軸押出機、φ=20mm、GSIクレオス社製)に入れ、275℃で溶融し、溶融樹脂をTダイから押し出し、冷却して、最大厚みが205μm、最小厚みが197μm、厚みばらつきが8μmである、幅280mmの熱可塑性樹脂フィルムを得た。なお、熱可塑性フィルムな幅方向に垂直な方向が長手方向となっており、ロール・ツー・ロール成形法により成形するために充分な長さを有していた。
平板金型の準備の際に、インバーよりなる母材として、IC-36に替えてIC-36S(新報国製鉄社製、熱膨張係数:0.7ppm/K)を用いた以外はそれぞれ実施例1~3と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムの調製、平板金型の準備および光学レンズの製造を行った。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
平板金型の準備の際に、インバーよりなる母材として、IC-36に替えてSLE-2(新報国製鉄社製、熱膨張係数:5ppm/K)を用いた以外はそれぞれ実施例1~3と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムの調製、平板金型の準備および光学レンズの製造を行った。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
以下のようにして調製した熱可塑性樹脂フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、平板金型の準備および光学レンズの製造を行った。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
<熱可塑性樹脂フィルムの調製>
ポリメチルメタクリレート樹脂(デルペット80NH(旭化成ケミカルズ社製)、ガラス転移温度:100℃、吸水率:0.30質量%)を、フィルム押出成形機(単軸押出機、φ=20mm、GSIクレオス社製)に入れ、250℃で溶融し、溶融樹脂をTダイから押し出し、冷却して、最大厚みが206μm、最小厚みが199μm、厚みばらつきが7μmである、幅275mmの熱可塑性樹脂フィルムを得た。なお、熱可塑性フィルムな幅方向に垂直な方向が長手方向となっており、ロール・ツー・ロール成形法により成形するために充分な長さを有していた。
平板金型の準備の際に、インバーよりなる母材に替えてステンレス鋼(ウッデホルム社製、「STAVAX(登録商標)」、熱膨張係数:12ppm/K)よりなる母材を用いた以外はそれぞれ実施例1~3と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムの調製、平板金型の準備および光学レンズの製造を行った。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
平板金型の準備の際に、インバーよりなる母材に替えてステンレス鋼(ウッデホルム社製、「STAVAX(登録商標)」、熱膨張係数:12ppm/K)よりなる母材を用いた以外は実施例10と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムの調製、平板金型の準備および光学レンズの製造を行った。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
射出成形法により光学レンズを製造した。
ここで、射出成形材料としては、実施例1と同じノルボルネン系開環重合体水素化物を含む熱可塑性樹脂を用いた。また、射出成形装置としてはファナック社製の「ROBOSHOT S2000i100A」を用いた。射出成形金型としては、12個取り金型を用いた。
これらを用いて、射出速度100mm/秒、保圧80MPaとして、20回の製造工程を行って240個の光学レンズを製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
また、表1の実施例1~10および比較例5より、熱プレス成形を用いることで、射出成形を用いる場合よりも複屈折の発生を抑制し得ることが分かる。
更に、表1の実施例1~10より、吸水率の低い熱可塑性樹脂を用いることで、耐湿性に優れる光学レンズが得られることが分かる。
1B、1B’、1B” 下部金型
2A 上部温度調節装置
2B 下部温度調節装置
3 移動テーブル
4 下部テーブル
5A 巻き出しロール
5B 巻取りロール
6 送りロール
7 熱可塑性樹脂フィルム
8’、8” 光学レンズ
100 透過型光学素子製造装置
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂を用いて形成された熱可塑性樹脂フィルムを、少なくとも一対の平板金型により前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度超の温度で熱プレスして熱プレスフィルムを得る熱プレス工程と、
前記平板金型を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下の温度まで冷却して、前記熱プレスフィルムを冷却する金型冷却工程と、
前記金型冷却工程の後に、冷却された前記熱プレスフィルムを前記平板金型から離型して少なくとも1つの透過型光学素子を含む成形フィルムを得る離型工程と、
を含み、
前記平板金型の熱膨張係数が2ppm/K以下である、透過型光学素子の製造方法。 - 前記熱可塑性樹脂の吸水率が0.2質量%以下である、請求項1に記載の透過型光学素子の製造方法。
- 前記成形フィルムが透過型光学素子を複数含む、請求項1または2に記載の透過型光学素子の製造方法。
- 対をなす2つの平板金型間の熱膨張係数の差の絶対値が2ppm/K以下である、請求項1~3の何れかに記載の透過型光学素子の製造方法。
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