以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、記録用紙Pが載置されるプラテン2と、このプラテン2と平行な走査方向に往復移動可能なキャリッジ3と、キャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4(以下、ヘッド4とも記載する)と、記録用紙Pを走査方向と直交する搬送方向に搬送する搬送機構5と、走査方向においてプラテン2の右側(図1中右側)に配置されており、インクジェットヘッド4のインク吐出性能の回復・維持に関する各種メンテナンス動作を行うメンテナンスユニット6と、プリンタ全体の動作を司る制御部9などを有している。
プラテン2の上面には、図示しない給紙機構から供給された記録用紙Pが載置される。プラテン2の上方には、走査方向に平行に延びる2本のガイドレール11a、11bが設けられ、キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール11a、11bに沿って走査方向に往復移動可能に構成されている。2本のガイドレール11a、11bは、プラテン2から走査方向の右側に離れた位置まで延在しており、キャリッジ3は、プラテン2上の記録用紙Pと対向する画像記録領域から、プラテン2の右側に配置されたメンテナンスユニット6と対向するメンテナンス領域まで移動可能に構成されている。
キャリッジ3には、2つのプーリ12、13間に巻き掛けられた無端ベルト14が連結されている。そして、キャリッジ駆動モータ15によって無端ベルト14が走行駆動されたときに、キャリッジ3は、無端ベルト14の走行に伴って走査方向に移動する。
搬送機構5は、搬送方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ17a、17bを有し、これら2つの搬送ローラ17a、17bによって、プラテン2に載置された記録用紙Pを搬送方向下流側(図1の前方)に搬送する。
インクジェットヘッド4は、その下面がプラテン2の上面と平行となるようにキャリッジ3の下部に取り付けられている。インクジェットヘッド4の下面は、複数の吐出口16が開口する吐出面4a(図3参照)となっている。そして、この吐出面4aの複数の吐出口16から、プラテン2に載置された記録用紙Pに対してインクを吐出する。
ここで、図2、3を更に参照しつつ、インクジェットヘッド4の具体的な構成について説明する。図2、3に示すように、インクジェットヘッド4は、複数の吐出口16及び複数の吐出口16にそれぞれ連通する複数の圧力室34が形成された流路ユニット30と、流路ユニット30の上面に配置された圧電アクチュエータ31とを有している。
図3に示すように、流路ユニット30は4枚のプレートが積層された構造を有し、この流路ユニット30の下面(吐出面4a)には複数の吐出口16が設けられている。図2に示すように、これら複数の吐出口16は搬送方向に沿って配列され、走査方向に並ぶ4列の吐出口列33を構成している。
4列の吐出口列33(33bk、33y、33c、33m)にそれぞれ属する吐出口16(16bk、16y、16c、16m)からは、顔料インクであるブラックインクと、染料インクである3色のカラーインク(イエロー、シアン、マゼンタ)との、合計4色のインクがそれぞれ吐出される。
また、流路ユニット30の下面(吐出面4a)において、ブラックの吐出口列33bkと、カラー(イエロー)の吐出口列33yとの間には、空いた領域37が存在している。この領域37は、後述するキャップ20の第1キャップ部20aと第2キャップ部20bとを仕切る仕切部23b(図4参照)が当接する領域になっている。
また、流路ユニット30には、4列の吐出口列33に対応して、複数の圧力室34も4列に配列されている。更に、流路ユニット30には、それぞれ搬送方向に延在し、4列の圧力室列にブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のインクを供給する4本のマニホールド35と、複数の吐出口16が配置された領域よりも搬送方向上流側に配置され、流路ユニット30の上面(吐出面4aと反対側の面)に開口した4つのインク供給口36とが形成されている。4本のマニホールド35は、4つのインク供給口36にそれぞれ接続されている。
図3に示すように、圧電アクチュエータ31は、複数の圧力室34を覆う振動板40と、この振動板40の上面に配置された圧電層41と、圧電層41の上面に複数の圧力室34に対応して配置された複数の個別電極42とを有している。圧電層41の上面に位置する複数の個別電極42は、圧電アクチュエータ31を駆動するドライバIC47とそれぞれ接続されており、ドライバIC47から複数の個別電極42に対して所定の駆動電圧が独立して印加されるようになっている。また、圧電層41の下面に位置する振動板40は金属材料で形成されており、圧電層41を挟んで複数の個別電極42と対向する共通電極の役割を果たす。なお、この振動板40はドライバIC47のグランド配線に接続されて常にグランド電位に保持される。
圧電アクチュエータ31は、ドライバIC47から、ある個別電極42と、共通電極としての振動板40の間に所定の駆動電圧が印加されたときに、両者の間に挟まれた圧電層41の圧電変形(圧電歪)によって圧力室34の体積変化を生じさせ、圧力室34内のインクに圧力を付与する。このとき、この圧力室34に連通する吐出口16からインクが吐出される。
そして、インクジェットプリンタ1は、プラテン2上に載置された記録用紙Pに対して、キャリッジ3とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド4からインクを吐出させるとともに、2つの搬送ローラ17a、17bによって記録用紙Pを搬送方向下流側に搬送することにより、記録用紙Pに所望の画像や文字などを印刷する。
次に、メンテナンスユニット6について説明する。図1に示すように、メンテナンスユニット6は、プラテン2に対して走査方向の右側に離れた位置に配置されている。メンテナンスユニット6は、インクジェットヘッド4の吐出面4aと当接することで吐出面4aと対向する空間を外部空間から封止するキャップ20と、キャップ20に接続された吸引ポンプ19と、吐出面4aに付着したインクを拭き取るワイパ18などを有している。なお、キャップ20は、後述するキャップ移動機構8により、吐出面4aを封止する位置と、吐出面4aから完全に離間した位置との間を移動する。
キャップ20が吐出面4aを封止する位置にあるときに吸引ポンプ19を駆動することで、流路ユニット30内のインクを吐出口16から排出する吸引パージが行われる。また、吸引パージが行われた後、キャップ20が吐出面4aを封止する位置から移動した後に吸引ポンプ19を駆動することで、吸引パージによりキャップ20内に排出されたインクがキャップ20外に排出される。
また、キャップ20は、上記吸引パージを行う際以外にも、インクジェットヘッド4を使用しない状態(インクを吐出しない状態)においても用いられる。このように、インクジェットヘッド4が使用されないときには、キャップ20が吐出面4aを封止することで吐出口16を保護するとともに吐出口16内のインクの乾燥を抑制する。
ワイパ18は、キャップ20よりもプラテン2側の位置に立設されており、図示しない昇降機構によって昇降可能に構成されている。吸引パージ後に、このワイパ18の先端が吐出面4aに接触した状態でキャリッジ3が走査方向に移動することによって、ワイパ18は吐出面4aに対して相対的に移動し、吐出面4aに付着したインクを拭き取る。
ここで、図4、5を更に参照しつつ、キャップ20について説明する。図4、5においては、キャップ20により吐出面4aが封止されたインクジェットヘッド4を二点鎖線で示している。図4、5に示すように、キャップ20は、平面視で略四角形状を有しており、キャップ本体21とキャップチップ25、26とで構成されている。
キャップ本体21は、ゴムなどの弾性材料からなり、底壁部22と、この底壁部22に立設されており、底壁部22の外周部に位置する環状部23a及び環状部23aで囲まれた内側空間において搬送方向に延在する仕切部23bからなるリップ23と、搬送方向両端のリップ23の外側の側面から突出する凸部24a、24bとを有している。これら底壁部22、リップ23及び凸部24a、24bは一体成型されている。
キャップ20には、リップ23の環状部23aの一部(図4において仕切部23bの左側部分)と仕切部23bとからなる環状のリップ23を備える第1キャップ部20aと、リップ23の環状部23aの一部(図4において仕切部23bの右側部分)と仕切部23bとからなる環状のリップ23を備える第2キャップ部20bとが設けられている。
第1キャップ部20a及び第2キャップ部20bは、いずれも平面視で略四角形状を有する。第1キャップ部20aは、1列の吐出口列33bkを構成する複数のブラック吐出口16bkを覆う大きさを有する。第2キャップ部20bは、3列のカラーの吐出口列33y、33c、33mを構成する複数のカラー吐出口(16y、16c、16m)を覆う大きさを有する。キャップ20が吐出面4aを封止するとき、第1キャップ部20aは吐出面4aにおいてブラック吐出口16bkが形成された領域と対向する空間を封止し、第2キャップ部20bはカラー吐出口16clが形成された領域と対向する空間を封止する。
キャップ本体21の底壁部22における第1キャップ部20aに対応する部分と、第2キャップ部20bに対応する部分とには、吸引口28がそれぞれ1つずつ形成されている。2つの吸引口28は、いずれもキャップ20が吐出面4aを封止するときに搬送方向の最も上流側の吐出口16と対向する部分よりも搬送方向において上流側、すなわち、リップ23の搬送方向下流側の部分よりも搬送方向上流側の部分に近い位置に配置されている。これら2つの吸引口28は、それぞれチューブ50を介して吸引ポンプ19(図1参照)と接続されている。
キャップチップ25、26は、それぞれ平面視で第1キャップ部20aと第2キャップ部20bとの外形に合わせた略四角形状を有しており、第1キャップ部20a及び第2キャップ部20b内にそれぞれ収容されている。キャップチップ25、26は、合成樹脂などからなり、吸引パージ時にリップ23が減圧により内側に撓むのを抑制するためのものである。キャップチップ25、26の上面には、上方に突出した突起25a、26aが縁部の全周に亘って形成されており、下面には下方に突出した突起25b、26bが縁部の全周に亘って形成されている。
図5に示すように、下方に突出した突起25b、26bによって、キャップチップ25、26の下方に空間が形成されている。すなわち、キャップチップ25、26は、第1キャップ部20aと第2キャップ部20bとにおいて、リップ23で囲まれた領域をそれぞれ上下に仕切っている。このキャップチップ25、26の下方の空間は、キャップ本体21の底壁部22に形成された吸引口28に繋がっており、吸引ポンプ19によりキャップ20内に排出されたインクをキャップ20外に排出する際にインクが流れる吸引流路29として機能する。
図4に示すように、キャップチップ25、26の四隅、及びキャップチップ26の搬送方向下流側の端部の2か所には切欠27が形成されており、この切欠27に形成されたリップ23の内側面とキャップチップ25、26とのすき間により、キャップチップ25、26の上方の空間と下方の空間とはインクが流通可能となっている。よって、吸引パージによってキャップ20内に排出されたインクは、キャップチップ25、26の上方から下方に流れ、キャップチップ25、26の下方に形成された吸引流路29を通って吸引口28からキャップ20外に排出される。
キャップチップ26の上面には、このキャップチップ26が収容される第2キャップ部20bの環状のリップ23内において走査方向の全幅に亘って延在する壁26cが形成されている。図5(b)に示すように、壁26cの高さ位置は、リップ23の高さ位置よりも低い。
[第1実施形態に係るキャップ移動機構8]
次に、図6を参照しつつ、キャップ20を移動させるキャップ移動機構8の第1実施形態について説明する。
キャップ20は、移動可能となるように装置本体に設けられた、キャップ支持部材52に支持されている。また、図6には図示されていないが、ワイパ18(図1参照)もキャップ支持部材52に取付けられており、キャップ20、ワイパ18は、キャップ支持部材52と一体に移動する。キャップ20は、走査方向において間隔を空けてキャップ支持部材52に形成された、一対のガイド部56a、56bに支持されているとともに、第1コイルバネ70によって上向きに付勢されている。第1コイルバネ70は、キャップ支持部材52に取付けられている。キャップ支持部材52は、装置本体に固定配置されたベース部材50と、第2コイルバネ80を介して連結されている。ベース部材50は、装置本体の骨格を形成する樹脂製の部材である。なお、ベース部材50は、樹脂製でなく金属製であってもよい。
図6に示されるように、第2コイルバネ80は、走査方向における右側の端部が、キャップ支持部材52に形成された第1保持部51に取付けられており、走査方向における左側の端部が、ベース部材50に形成された第2保持部53に取付けられている。第2コイルバネ80は、キャップ支持部材52を左上向きに付勢している。
キャップ支持部材52には、上下方向においてキャリッジ3の移動領域内に突出する当接部54が設けられている。当接部54は、キャップ支持部材52の右側の端部から上方に向かって延在しており、当接部54には、キャリッジ3から右向きに突出する押圧部57と当接する当接面55が形成されている。
図6(a)に示されるように、キャリッジ3の押圧部57がキャップ支持部材52の当接面55と当接していない状態では、キャップ支持部材52は、第2コイルバネ80の付勢力と後述するガイドボス61及びガイド孔62によって、キャップ20がヘッド4の吐出面4aから下方に離間した離間位置に位置している。このとき、キャップ支持部材52に支持されるキャップ20のリップ23の上下方向の位置は、ヘッド4の吐出面4aよりも下方である。すなわち、キャップ20は吐出面4aから完全に離間した状態である。
キャリッジ3が右側に移動すると、キャリッジ3の押圧部57がキャップ支持部材52の当接面55と当接する。その状態から更にキャリッジ3が右側に移動を進めると、キャップ支持部材52は、キャリッジ3に押圧されることで第2コイルバネ80の付勢力に抗して図6(a)に示される離間位置から右上側に向かって移動する。そして、キャリッジ3がメンテナンス領域まで移動することに伴い、キャップ支持部材52は、図6(b)に示されるようにキャップ20のリップ23の先端の全てがヘッド4の吐出面4aに当接し、キャップ20が吐出面4aを封止する封止位置まで移動する。
キャップ支持部材52には、搬送方向に向かって突出するガイドボス61が形成されている。ガイドボス61は、ベース部材50の一部であるメンテナンスフレーム(不図示)に形成されたガイド孔62と係合している。ガイド孔62は、右上に向かって延びる長孔であり、ガイドボス61の移動を案内する。メンテンナンスフレームは、搬送方向においてキャップ支持部材52を挟んで2つ設けられており、2つのメンテナンスフレームそれぞれにガイド孔62が形成されている。また、ガイドボス61も、キャップ支持部材52から搬送方向において互いに反対向きに突出するように2つ設けられている。すなわち、ガイドボス61及びガイド孔62は、それぞれ搬送方向において間隔を空けて2つ設けられている。図6では、説明の便宜上、一対のガイドボス61及びガイド孔62の内、一方のみを示している。後述する図7~図9においても同様に、一対のガイドボス61及びガイド孔62の内、一方のみを示す。
一対のガイドボス61及びガイド孔62は、それぞれ走査方向において間隔を空けて2つ設けられている。なお、一対のガイドボス61及びガイド孔62は必ずしも2つ設けられている必要はなく、3つ以上設けられていてもよいし、1つだけ設けられる構成でもよい。また、一対のガイドボス61及びガイド孔62は走査方向ではなく上下方向に間隔を空けて複数設けられていてもよい。
図6(a)に示されるように、ガイド孔62は、上下方向においてガイドボス61を挟んで互いに対向する上面63と下面64を有する。上面63と下面64は互いに平行となるように走査方向に延びて形成されており、ガイドボス61は、上面63と下面64に案内されて走査方向に移動する。キャップ支持部材52は、ガイドボス61がガイド孔62に案内されながら移動することにより、離間位置と封止位置との間を移動する。すなわち、ガイドボス61及びガイド孔62は、キャップ支持部材52の離間位置と封止位置との間の移動を案内するための部材である。ガイド孔62は、上下方向における上面63と下面64との間の距離がガイドボス61の上下方向における長さよりも長くなるように構成されている。
次に、制御部9について説明する。制御部9は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含む。ROMは、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等を記憶している。RAMは、プログラム実行時に必要なデータ(記録データ等)を一時的に記憶する。ASICには、ドライバIC47(図3参照)を制御するヘッド制御回路、搬送ローラ17a、17bを駆動する図示しない駆動モータを制御する搬送制御回路、キャリッジ駆動モータ15を制御するヘッド移動制御回路、吸引ポンプ19を制御する吸引制御回路等を含んでいる。また、ASICは、入出力I/Fを介して、PC等の外部装置とデータ通信可能に接続されている。
制御部9は、キャリッジ駆動モータ15の駆動を制御して、ヘッド4を走査方向に移動させることにより押圧部57を当接面55に当接させ、キャップ支持部材52を離間位置から封止位置まで移動させる。
次に、メンテナンス動作が行われる際のキャップ移動機構8の動作について説明する。
まず、メンテナンス動作が行われる際には、制御部9の制御によってキャリッジ3が走査方向において右側に移動する。図6(a)に示されるように、キャリッジ3の押圧部57がキャップ支持部材52の当接面55と当接するまでは、キャップ支持部材52は、第2コイルバネ80の左上向きの付勢力によって、離間位置に位置している。キャップ支持部材52が離間位置にあるとき、ガイドボス61は、ガイド孔62の内周面における左端の側面である第1側面66と当接しており、これによってキャップ支持部材52が離間位置に保持されている。
ベース部材50に設けられた第2保持部53は、ガイド孔62よりも左側で、且つ、上方に位置している。また、キャップ支持部材52が離間位置にある状態において、第1保持部51と第2保持部53を結ぶ直線距離は、第2コイルバネ80の自然長よりも長い。これにより、キャップ支持部材52は、第2コイルバネ80の弾性付勢力によって、左上向きに付勢される。第2コイルバネ80による左上向きの付勢力は、キャップ支持部材52を上方に持ち上げる力の成分を含んでいるため、図6(a)に示されるように、キャップ支持部材52が離間位置にある際、ガイドボス61はガイド孔62の上面63と当接し、下面64から離間している。
キャリッジ3が右側に移動すると、押圧部57がキャップ支持部材52の当接面55と当接する。その状態から更にキャリッジ3が右側に移動すると、キャップ支持部材52は、キャリッジ3に押圧されることにより、右上向きに向かって移動し、図6(b)に示される封止位置まで移動する。
図6(b)に示されるように、ガイド孔62の上面63には、右上向きに傾斜する傾斜部65が形成されている。ガイドボス61は、第2コイルバネ80の左上向きの付勢力によって、キャップ支持部材52が離間位置から封止位置まで移動する間、常に上面63と当接して下面64から離間している。すなわち、ガイドボス61は、ガイド孔62の上面64に沿って移動する。ガイドボス61が傾斜部65に沿って右上側へ移動することにより、キャップ20とヘッド4との上下方向における距離が徐々に小さくなっていき、ガイドボス61が傾斜部65を通過すると、キャップ20は、ヘッド4の吐出面4aと当接する。その後、ガイドボス61は、ガイド孔62の内周面における右端の側面である第2側面67と当接するまで移動し、吐出面4aを封止する。ガイドボス61がガイド孔62の第2側面67と当接することにより、キャップ支持部材52が封止位置に保持される。
キャップ20によってヘッド4の吐出面4aが封止されると、制御部9は、メンテナンス処理として、吸引ポンプ19を駆動してヘッド4のノズルからインクを吸引する吸引パージを行う。吸引パージが行われるタイミングは、例えば、印刷指令が入力された後、一枚目の記録用紙Pへの印刷動作を開始する前や、インクジェットプリンタ1の電源がオフ状態からオン状態へと切替わったときである。メンテナンス処理は、吸引パージに限らず、ヘッド4の吐出口16からキャップ20内に向けてインクを吐出する、キャップ内フラッシングであってもよい。キャップ支持部材52が封止位置に位置付けられるのはメンテナンス処理が行われる場合に限らず、印刷指令がなされていない待機状態の間もキャップ支持部材52は常に封止位置に位置している。これにより、記録ヘッド4が使用されないときはキャップ20で常に吐出面4aを封止し、インクの乾燥や、吐出面4aへの塵埃の付着等を防いでいる。
次に、キャップ支持部材52が封止位置から離間位置へ移動する際のキャップ移動機構8の動作について説明する。
キャップ支持部材52が封止位置にある状態から、制御部9がキャリッジ3を左側に移動させると、キャリッジ3の押圧部57はキャップ支持部材52の当接面55から離間する。すると、キャリッジ3に押圧されて封止位置に保持されていたキャップ支持部材52は、第2コイルバネ80の付勢力によって左側に移動し始める。第2コイルバネ80がキャップ支持部材52を付勢する向きは、左上向きであるため、キャップ支持部材52のガイドボス61は、ガイド孔62の下面64から離間し、上面63と当接しながら上面63に沿って左側に移動する。上面63に沿って左側に移動するガイドボス61は、上面63に形成された傾斜部65に沿って左下側に移動し、キャップ20が吐出面4aよりも下方に離間する。その後、ガイドボス61は、傾斜部65を通過してガイド孔62の第1側面66と当接し、停止する。このように、キャップ支持部材52は、第2コイルバネ80の付勢力によって、ガイドボス61及びガイド孔62の上面63に案内されながら封止位置から離間位置まで移動する。
図6(b)に示されるように、第1保持部51及び第2保持部53を結ぶ直線と平行な直線Lとガイド孔62の傾斜部65とが成す角度αは、鈍角となっている。換言すると、第2コイルバネ80がキャップ支持部材52を付勢する向きと傾斜部65とが成す角度が鈍角となるように、第1保持部51及び第2保持部53の位置が設定されている。これにより、キャップ支持部材52が封止位置から離間位置へ移動する間、ガイドボス61が傾斜部65に沿って移動する際に第2コイルバネ80の付勢力によってガイドボス61が過度に傾斜部65に押し付けられることが抑制され、確実にキャップ支持部材52を離間位置まで移動させることが可能となる。
[第2実施形態に係るキャップ移動機構8]
次に、第2実施形態に係るキャップ移動機構8について、図7を参照して説明する。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態との相違点について主に説明し、第1実施形態と共通する部分においては、説明を省略する。
第1実施形態では、ガイドボス61がキャップ支持部材52に設けられ、ガイド孔62がベース部材50の一部であるメンテナンスフレームに設けられていた。第2実施形態に係るキャップ移動機構8では、ガイドボス61がメンテナンスフレームに形成されており、ガイドボス61と係合するガイド孔62がキャップ支持部材52に設けられている点において第1実施形態と相違している。ガイド孔62の形状は、第1実施形態と同様である。また、第2コイルバネ80がキャップ支持部材52を付勢する向きは、左下向きである。
図7(a)に示されるように、キャリッジ3の押圧部57がキャップ支持部材52の当接面55に当接していない状態では、キャップ支持部材52は、第2コイルバネ80によって左下に付勢され、離間位置に位置している。このとき、ガイドボス61は、ガイド孔62の上面63及び第2側面67と当接し、下面64から離間している。ガイドボス61が第2側面67と当接することにより、キャップ支持部材52が離間位置に保持される。
制御部9がキャリッジ3を右側に移動させると、キャリッジ3の押圧部57がキャップ支持部材52の当接面55に当接し、キャップ支持部材52が右側に移動する。キャップ支持部材52は、ガイド孔62の傾斜部65がガイドボス61と当接しながら移動することにより、右上向きに移動し、キャップ20がヘッド4の吐出面4aに当接する。その後、ガイド孔62の第1側面66がガイドボス61と当接するまでキャップ支持部材52は移動し、図7(b)に示される封止位置へと位置付けられる。
第2コイルバネ80がキャップ支持部材52を付勢する向きは左下向きであるため、キャップ支持部材52が離間位置から封止位置へと移動する間、ガイドボス61は、ガイド孔62の上面63と当接し、下面64から離間している。すなわち、キャップ支持部材52は、ガイドボス61及びガイド孔62の上面63に案内されることにより、離間位置から封止位置へと移動する。
キャップ支持部材52の封止位置から離間位置への移動は、第1実施形態と同様、第2コイルバネ80の付勢力によって行われる。第2コイルバネ80の付勢力は左下向きであるため、キャップ支持部材52が封止位置から離間位置へと移動する間、ガイドボス61は、ガイド孔62の上面63と当接し、下面64から離間している。すなわち、キャップ支持部材52は、第2コイルバネ80の付勢力によって、ガイドボス61及びガイド孔62の上面63に案内されながら離間位置から封止位置へと移動する。
[第3実施形態に係るキャップ移動機構8]
次に、第3実施形態に係るキャップ移動機構8について、図8を参照して説明する。
第3実施形態に係るキャップ移動機構8では、第2実施形態と同様、ガイドボス61がメンテナンスフレームに形成されており、ガイドボス61と係合するガイド孔62がキャップ支持部材52に設けられている。第2コイルバネ80は、キャップ支持部材52の下面91とベース部材50の間に設けられている。キャリッジ3には、ガイドボス61を押圧する押圧部90が設けられている。押圧部90は、キャリッジ3の左端から下方に向かって延在し、略L字型の形状を有している。
ガイドボス61は、走査方向に移動可能なようにベース部材50に設けられている。また、ベース部材50の一部であるフレーム(不図示)には、ガイドボス61の走査方向への移動を案内するためのガイド孔68が形成されている。ガイド孔68が形成されるフレームは、メンテンナンスフレームと搬送方向において間隔を空けて並んで設けられる。すなわち、ガイド孔68は、搬送方向においてガイド孔62と間隔を空けて並んで設けられる。ガイド孔68は、走査方向に延在する長孔であり、ガイドボス61と係合する。ガイド孔68の左端の位置と、ガイド孔62の第1側面66とは、走査方向において同じ位置にある。ガイド孔68の内部には、第3コイルバネ100が設けられており、左端がガイドボス61と当接しており、右端がガイド孔68の内周面の右端に固定されている。第3コイルバネ100は、ガイドボス61を左側に向けて付勢する。
図8(a)に示されるように、キャリッジ3の押圧部90がキャップ支持部材52と当接していない状態では、ガイドボス61は、第3コイルバネ100の付勢力によってガイド孔68の左端に位置している。また、キャップ支持部材52は、自重によって下方に付勢され、キャップ20がヘッド4の吐出面4aから下方に離間した離間位置に位置している。キャップ支持部材52は、ガイド孔62の上面63がガイドボス61と当接することにより下方への移動が規制され、離間位置に保持されている。キャップ支持部材52が離間位置に位置する状態において、ベース部材50とキャップ支持部材52の下面91との間の距離は、第2コイルバネ80の自然長よりも長い。すなわち、第2コイルバネ80は、キャップ支持部材52を離間位置に向けて付勢する。
制御部9がキャリッジ3を右側へ移動させると、キャリッジ3の押圧部90がガイドボス61と当接する。その状態から更にキャリッジ3が右側へ移動すると、ガイドボス61は第3コイルバネ100の付勢力に抗して、ガイド孔68に沿って右側へ移動する。
キャップ支持部材52は、ガイド孔62の上面63に設けられた、右下に向かって傾斜する傾斜部69がガイドボス61に押圧されることにより、ガイドボス61に対して相対的に上方に移動する。すなわち、ガイドボス61は、キャップ支持部材52を上方へ持ち上げながら、右側へ移動する。
ガイドボス61によってキャップ支持部材52が上方へ持ち上げられると、キャップ20がヘッド4の吐出面4aと当接する。その後、図8(b)に示されるように、ガイドボス61はガイド孔62の第2側面67と当接するまで移動し、キャップ支持部材52が封止位置へ保持される。このように、キャップ支持部材52は、ガイドボス61及びガイド孔62の上面63に案内されることにより、離間位置から封止位置へと移動する。
キャップ支持部材52が封止位置に位置する状態から、キャリッジ3が左側に移動すると、キャリッジ3の押圧部90はガイドボス61から離間する。すると、ガイドボス61は第3コイルバネ100の付勢力によって左側に移動すると同時に、キャップ支持部材52が、第2コイルバネ80の付勢力及び自重によって下方に移動する。そして、ガイド孔62の上面63がガイド孔68の左端に位置するガイドボス61と当接することでキャップ支持部材52の下方への移動が完了し、キャップ支持部材52が離間位置に保持される。
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、ガイドボス61及びガイド孔62によって、キャップ支持部材52の移動を案内し、確実にキャップ支持部材52を離間位置と封止位置との間で移動させることができる。
また、本実施形態によれば、キャップ支持部材52が離間位置と封止位置との間を移動する間、ガイドボス61は、ガイド孔62の下面64から離間し、上面63と当接している。よって、例えば、外部から装置本体内に侵入した塵埃などの異物がガイド孔62の下面64に堆積したとしても、異物によってガイドボス61の移動が妨げられることがなく、確実にキャップ支持部材52を離間位置と封止位置との間で移動させることができる。
また、第1実施形態に係るキャップ移動機構8では、第2コイルバネ80の左端を保持する第2保持部53がガイド孔62よりも左側に位置している。これにより、ガイドボス61をガイド孔62の第1側面66と当接する位置まで移動させることができ、キャップ支持部材52をより確実に離間位置に保持することができる。
また、第1実施形態に係るキャップ移動機構8では、第2コイルバネ80の左端を保持する第2保持部53がガイド孔62よりも上方に位置している。これにより、キャップ支持部材52が離間位置と封止位置の間を移動する間、常にガイドボス61を上方へ付勢することができ、ガイドボス61がガイド孔62の下面64から離間した状態でキャップ支持部材52を移動させることができる。
第2実施形態に係るキャップ移動機構8においても、キャップ支持部材52が離間位置と封止位置との間を移動する間、ガイドボス61は、ガイド孔62の下面64から離間し、上面63と当接している。よって、確実にキャップ支持部材52を離間位置と封止位置との間で移動させることができる。
また、第2実施形態に係るキャップ移動機構8では、キャップ支持部材52を付勢する第2コイルバネ80の付勢向きは左下であるため、確実にキャップ支持部材52を封止位置から離間位置へ移動させることができる。
第3実施形態に係るキャップ移動機構8においても、キャップ支持部材52が離間位置と封止位置との間を移動する間、ガイドボス61は、ガイド孔62の下面64から離間し、上面63と当接している。よって、確実にキャップ支持部材52を離間位置と封止位置との間で移動させることができる。
また、第3実施形態に係るキャップ移動機構8では、キャリッジ3の押圧部90が押圧するガイドボス61は走査方向に平行に移動し、ガイドボス61がキャップ支持部材52を持ち上げる。よって、キャリッジ3の移動方向とガイドボス61の移動方向が同じであるため、キャリッジ3による押圧力を、直接キャップ支持部材52を持ち上げる力として作用させることができ、より確実にキャップ支持部材52を離間位置から封止位置へと移動させることができる。更に、ガイド孔68の内部にはガイドボス61を左側に付勢する第3コイルバネ100が設けられているため、キャップ支持部材52を確実に封止位置から離間位置へと移動させることができる。
[変形例]
キャリッジ3の押圧部57と当接するキャップ支持部材52の当接面55は、上下方向に平行に延在していなくてもよく、図9に示されるように、右下側に傾いていてもよい。このように構成することにより、押圧部57が当接面55を押圧する押圧力は、当接面55と垂直な方向Aに向かう力の成分を発生させる。方向Aは、右上側にキャップ支持部材52を押圧する力であるため、キャップ支持部材52をより確実に離間位置から封止位置へ移動させることができる。
インクジェットプリンタ1が、本発明の画像記録装置の一例である。吐出口16が、本発明のノズルの一例である。インクジェットヘッド4が、本発明の記録ヘッドの一例である。走査方向が、本発明の主走査方向の一例である。吐出面4aが、本発明のノズル面の一例である。キャップ20が、本発明のキャップの一例である。走査方向における右向きが、本発明の第1向きの一例である。キャップ支持部材52が、本発明のキャップ支持部材の一例である。ベース部材50が、本発明のベース部材の一例である。搬送方向が、本発明の副走査方向の一例である。ガイドボス61が、本発明の突出部の一例である。ガイド孔62が、本発明のガイド部の一例である。第2コイルバネ80が、本発明の第1付勢部材の一例である。上面63が、本発明の第1ガイド面の一例である。下面64が、本発明の第2ガイド面の一例である。走査方向における左向きが、本発明の第2向きの一例である。第1保持部51が、本発明の第1保持部の一例である。第2保持部53が、本発明の第2保持部の一例である。傾斜部65が、本発明の第1傾斜部の一例である。当接面55が、本発明の当接面の一例である。傾斜部69が、本発明の第2傾斜部の一例である。押圧部90が、本発明の押圧部の一例である。第3コイルバネ100が、本発明の第2付勢部材の一例である。