以下において、光弾性樹脂が延びる方向を第1方向(長手方向)とし、2つの光弾性樹脂が並列配置される方向を第2方向(並列方向)とし、第1方向および第2方向に直交する方向を第3方向(上下方向)として、図1を参照して詳述する。
図1において、屈曲センサ1は、第1方向(長手方向)に沿って延びる複数の光弾性樹脂2と、複数の光弾性樹脂2を被覆するカバー部材3と、複数の光弾性樹脂2のそれぞれを通過した光を検知する光センサ4と、光弾性樹脂2に対する光の照射を制御するための制御部6と、光センサ4により検知された光信号に基づいて、光弾性樹脂2の屈曲方向を検知する処理部5とを備えている。なお、図1において、処理部5および制御部6は、一体的に形成されている。すなわち、1つのECU(後述)が、処理部5および制御部6を兼ね備えている。
光弾性樹脂2は、光弾性を有する樹脂からなる部材であり、第1方向(長手方向)に延びる棒形状に形成されている。より具体的には、光弾性樹脂2は、例えば、成形型に応じて棒形状に成形されているか、あるいは、脱型後の裁断などによって棒形状に外形加工されている。
光弾性樹脂2の形状としては、例えば、円柱状、楕円柱状、多角柱状などが挙げられ、好ましくは、円柱状が挙げられ、より具体的には、例えば、ロッド状、ファイバー状などが挙げられる。
また、屈曲センサ1において、光弾性樹脂2は複数備えられている。光弾性樹脂2の数は、2つ以上であり、好ましくは、3つ以上である。また、通常、20つ以下、好ましくは、10つ以下、より好ましくは、5つ以下である。複数の光弾性樹脂2は、光弾性樹脂2の第1方向(長手方向)と直交する第2方向において、並列配置されている。複数の光弾性樹脂2は、互いに所定間隔を隔てて配置されていてもよく、また、互いに密着するように配置されていてもよい。
なお、図1には、光弾性樹脂2が2つ備えられ、それら2つの光弾性樹脂2が互いに密着するように並列配置される形態を、示している。
また、以下において、2つの光弾性樹脂2を区別する場合には、第2方向一方側の光弾性樹脂2を、光弾性樹脂2Aと称し、また、第2方向他方側の光弾性樹脂2を、光弾性樹脂2Bと称する。
光弾性樹脂2は、透光性および光弾性を示す樹脂であれば、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。これら光弾性樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。光弾性樹脂2として、製造容易性の観点から、好ましくは、ポリウレタン樹脂(光弾性ポリウレタン樹脂)が挙げられる。
ポリウレタン樹脂(光弾性ポリウレタン樹脂)は、例えば、国際公開WO2016/125905パンフレットに記載の方法に準拠して、得ることができる。
より具体的には、ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを含有するポリウレタン樹脂組成物を、反応および硬化させることにより、反応生成物として得ることができる。
ポリイソシアネート成分は、好ましくは、芳香環含有ポリイソシアネートを含む。また、芳香環含有ポリイソシアネートは、好ましくは、1,4-フェニレン基(但し、1,4-フェニレン基における一部の水素原子が、メチル基および/またはメトキシ基で置換されていてもよい。)、および/または、1,5-ナフチレン基を含有している。
1,4-フェニレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′-MDI)、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートの重合物(カルボジイミド変性MDI、ウレトンイミン変性MDI、アシル尿素変性MDIなど)、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′-MDI)、3,3′-ジメチルビフェニル-4,4′-ジイソシアネート(TODI)、3,3′-ジメトキシビフェニル-4,4′-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、1,4-キシリレンジイソシアネート(1,4-XDI)などのベンゼン環含有ポリイソシアネート(具体的には、ベンゼン環含有ジイソシアネート)などが挙げられる。
また、1,5-ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートとしては、例えば、1,5-ナフタレンジイソシアネート(1,5-NDI)などのナフタレン環含有ポリイソシアネート(具体的には、ナフタレン環含有ジイソシアネート)などが挙げられる。
これら1,4-フェニレン基および/または1,5-ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
1,4-フェニレン基および/または1,5-ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートのうち、好ましくは、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′-MDI)、3,3′-ジメチルビフェニル-4,4′-ジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(1,5-NDI)が挙げられる。
また、ポリイソシアネート成分は、上記した芳香環含有ポリイソシアネート以外のポリイソシアネート(以下、その他のポリイソシアネート)を含有することもできる。
その他のポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート(上記した芳香環含有ポリイソシアネートを除く)、芳香脂肪族ポリイソシアネート、(上記した芳香環含有ポリイソシアネートを除く)、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,2′-MDI、2,6-TDI、m-フェニレンジイソシアネート、2,6-NDIなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネート(1,3-XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4′-、2,4′-または2,2′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(H12MDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート、H6XDI)、2,5-または2,6-ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンもしくはその混合物(NBDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-または1,3-シクロヘキサンジイソシアネートもしくはその混合物、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,2-、2,3-または1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
その他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリイソシアネート成分が、その他のポリイソシアネートと、1,4-フェニレン基および/または1,5-ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートとを含有する場合には、1,4-フェニレン基および/または1,5-ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートの割合が、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、30質量%以上、さらに好ましくは、50質量%以上、とりわけ好ましくは、90質量%以上である。
また、ポリイソシアネート成分は、好ましくは、その他のポリイソシアネートを含まず、1,4-フェニレン基および/または1,5-ナフチレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートからなる。
活性水素基含有成分は、活性水素基(例えば、水酸基、アミノ基など)を有する化合物であって、例えば、ポリオール、ポリアミンなどが挙げられ、好ましくは、ポリオールが挙げられる。
ポリオールは、好ましくは、高分子量ポリオールを含有している。
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有し、平均水酸基価(後述)が500mgKOH/g以下の化合物である。
高分子量ポリオールとして、好ましくは、平均水酸基価(後述)が20~500mgKOH/gの化合物が挙げられる。また、平均官能基数(後述)が2の場合には、数平均分子量が225以上の化合物が挙げられ、また、平均官能基数(後述)が3の場合には、数平均分子量337以上の化合物が挙げられる。
高分子量ポリオールの平均水酸基価は、20mgKOH/g以上、好ましくは、80mgKOH/g以上、より好ましくは、100mgKOH/g以上であり、500mgKOH/g以下、好ましくは、300mgKOH/g以下、より好ましくは、250mgKOH/g以下、さらに好ましくは、220mgKOH/g以下である。
高分子量ポリオールの水酸基価(単位:mgKOH/g)は、JIS K 1557-1のA法またはB法に準拠するアセチル化法またはフタル化法などから求めることができる。
そして、高分子量ポリオールの平均水酸基価(単位:mgKOH/g)は、高分子量ポリオールが単独使用される場合には、その高分子量ポリオールの水酸基価と同一である。一方、高分子量ポリオールの平均水酸基価は、高分子量ポリオールが併用される場合には、それらの平均値である。
高分子量ポリオールの平均水酸基価が上記した範囲を超過すると、ポリウレタン樹脂において、ヤング率が高くなり過ぎ、所望の光弾性定数(絶対値)を得ることができない場合がある。一方、平均水酸基価が上記した範囲未満であると、ガラス転移温度が過度に低くなり、加工性や耐傷付き性が低下する場合がある。
高分子量ポリオールの平均官能基数は、例えば、1.9以上、好ましくは、2.0以上であり、例えば、3以下、好ましくは、2.5以下、さらに好ましくは、2.2以下である。
高分子量ポリオールの官能基数は、高分子量ポリオールの水酸基数であって、具体的には、1分子当たりの活性な水酸基の数である。
そして、高分子量ポリオールの平均官能基数は、高分子量ポリオール1分子当たりの活性な水酸基の平均値である。つまり、異なる官能基数を有する高分子量ポリオールが混合(併用)される場合は、その高分子量ポリオールの混合物の分子数に対する混合物の活性な水酸基の数の割合を示した数値が、高分子量ポリオールの平均官能基数である。
なお、高分子量ポリオールの平均官能基数は、次式(B)から求めることもできる。
平均官能基数=(各高分子量ポリオールの官能基数×当量数)の総和/各高分子量ポリオールの当量数の総和 (B)
高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、225以上、好ましくは、500以上であり、例えば、20,000以下、好ましくは、15,000以下である。
数平均分子量は、次式(C)から求めることができる。
数平均分子量=56100×平均官能基数/平均水酸基価 (C)
高分子量ポリオールの平均官能基数が上記した範囲を超過すると、ポリウレタン樹脂において、所望の光弾性定数(絶対値)を得にくい場合がある。一方、平均官能基数が上記した範囲未満であると、ヤング率が低くなり過ぎ、加工性や耐傷付き性が低下する場合がある。
そのような高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ダイマーポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体ポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオールなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
高分子量ポリオールとして、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、とりわけ好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。
また、ポリオールは、上記した高分子量ポリオールに加え、低分子量ポリオールを含有することもできる。
ポリオールが低分子量ポリオールを含有することにより、ポリオールの平均水酸基価を増大させて、その分、イソシアネートインデックス(後述)を所望の値に調整すべく、上記したポリイソシアネート成分(好ましくは、芳香環含有ポリイソシアネート)をポリウレタン樹脂組成物に多く配合することができる。そのため、ポリウレタン樹脂の光弾性定数の絶対値を高めることができる。
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有し、平均水酸基価(後述)が500mgKOH/gを超過する化合物である。
低分子量ポリオールとして、好ましくは、平均水酸基価(後述)が500mgKOH/gを超過し、3000mgKOH/g以下の化合物が挙げられ、また、官能基数(後述)が2の場合には、分子量が40以上225未満のジオールが挙げられ、官能基数(後述)が3の場合には、分子量40以上337未満のトリオールが挙げられる。
そのような低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、トリメチレングリコール(1,3-プロパンジオール)、1,4-ブチレングリコール(1,4-ブタンジオール)、1,3-ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール)などの脂肪族ジオール(炭素数2~13)や、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール(炭素数6~13)、さらには、例えば、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコールなどの芳香族ジオール(芳香環を含有する炭素数6~13の芳香環含有ジオール)、さらにまた、ジエチレングリコール、トリオキシエチレングリコール、テトラオキシエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコールなどのオキシアルキレンアルコールなどのジオール(炭素数2~9)(2価アルコール)、例えば、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノールなどの炭素数3~6の脂肪族トリオール、および、その他の脂肪族トリオール(炭素数7~20)などのトリオール(3価アルコール)、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリン(ジグリセロール)などのテトラオール(4価アルコール)(炭素数5~27)などが挙げられる。
これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
低分子量ポリオールとして、好ましくは、2価アルコール、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、3価アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、炭素数3~6の脂肪族トリオールが挙げられ、とりわけ好ましくは、トリメチロールプロパンが挙げられる。
低分子量ポリオールの配合割合は、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下、さらに好ましくは、5質量部以下である。
低分子量ポリオールの配合割合が上記した範囲を超える場合は、ポリウレタン樹脂が不透明になり、光がポリウレタン樹脂を透過しない場合や、ポリウレタン樹脂のヤング率が高くなり過ぎる場合がある。
ポリウレタン樹脂組成物に配合される各成分の好適な組合せとして、例えば、1,4-フェニレン基を含有する芳香環含有ポリイソシアネートと、ポリエーテルポリオールと、トリオールとの組合せが挙げられ、具体的には、ベンゼン環含有ジイソシアネートと、ポリテトラメチレンエーテルポリオールと、脂肪族トリオールとの組合せが挙げられる。
そして、ポリウレタン樹脂は、このようにして得られるポリウレタン樹脂組成物から、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを反応させて、ポリウレタン樹脂組成物を硬化および成形することにより、得ることができる。
ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを反応させるには、例えば、ワンショット法やプレポリマー法などの公知の成形方法に準拠することができる。
ワンショット法では、例えば、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを、イソシアネートインデックス(水酸基濃度に対するイソシアネート基濃度の比に100を乗じた値、NCO濃度/水酸基濃度×100)が、例えば、70~400、好ましくは、80~150となるように処方(混合)して、それらを成形型に注入して、例えば、0℃~250℃、好ましくは、室温(20℃)~150℃で、例えば、1分間~7日間、好ましくは、10分間~2日間、硬化反応させる。
この硬化反応では、例えば、有機金属系触媒、アミン系触媒などの公知のウレタン化触媒を添加することができる。また、上記した硬化反応は、公知の溶媒の存在下で実施することもできる。
そして、成形型に注入して硬化反応させた後、脱型し、必要に応じて外形加工すれば、所定形状に成形されたポリウレタン樹脂(光弾性ポリウレタン樹脂)を得ることができる。
プレポリマー法は、例えば、まず、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分の一部(例えば、高分子量ポリオール)とを反応させて、分子末端にイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを合成する。次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基含有成分の残部(鎖伸長剤:例えば、低分子量ポリオール(および必要により高分子量ポリオール))とを反応(鎖伸長)させて、硬化反応させる。
そして、成形型に注入して硬化反応させた後、脱型し、必要に応じて外形加工すれば、所定形状に成形されたポリウレタン樹脂(光弾性ポリウレタン樹脂)を得ることができる。
なお、上記のポリウレタン樹脂組成物またはポリウレタン樹脂(光弾性樹脂2)には、必要に応じて、例えば、消泡剤、可塑剤、レベリング剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、脱水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤などの公知の添加剤を適宜配合することができる。
そして、上記のポリウレタン樹脂は、光弾性、つまり、屈曲などに基づく応力の発生により、光弾性樹脂2の内部を通過する光(例えば、レーザー光など)に複屈折を生じさせることができる。
そのため、屈曲センサ1の光弾性樹脂2として好適に用いることができる。
光弾性樹脂2の25℃における光弾性定数の絶対値は、20×10-12Pa-1以上、好ましくは、500×10-12Pa-1以上、より好ましくは、1000×10-12Pa-1以上、さらに好ましくは、2000×10-12Pa-1以上、とりわけ好ましくは、3000×10-12Pa-1以上であり、1×10-5Pa-1以下(=10000000×10-12Pa-1以下)、好ましくは、1×10-6Pa-1以下(=1000000×10-12Pa-1以下)、より好ましくは、1×10-7Pa-1以下(=100000×10-12Pa-1以下)、さらに好ましくは、1×10-8Pa-1以下(=10000×10-12Pa-1以下)、とりわけ好ましくは、8000×10-12Pa-1以下である。
光弾性定数の絶対値が上記範囲であれば、屈曲センサ1において必要とされる優れた光弾性を確保することができる。
光弾性樹脂2の光弾性定数は、「築地光雄、高和宏行、田實佳郎著“光学フィルム用・光弾性定数測定システムの開発”、精密学会誌73、253-258(2007)」の「光弾性定数測定方法」の記載に準拠して測定することができる。
また、光弾性定数の測定とともに、光弾性樹脂2の歪光学定数とヤング率とが求められる。
光弾性樹脂2の歪光学定数は、光弾性樹脂2の変形(屈曲)量に対する、かかる変形によって発生する複屈折の強さの割合を示す。
光弾性定数、歪光学定数およびヤング率は、下記式(1)を満足する。
光弾性定数=歪光学定数÷ヤング率 (1)
従って、光弾性樹脂2の光弾性定数を上記した所望の範囲に設定するには、歪光学定数およびヤング率を調整する。
具体的には、歪光学定数が高いほど、また、ヤング率が低いほど、光弾性定数が高くなるが、ヤング率が過度に低いと、成形性および屈曲性が低下する場合がある。
そのため、光弾性樹脂2の25℃におけるヤング率は、2.0MPa以上、好ましくは、3.0MPa以上、より好ましくは、4.0MPa以上であり、5.0MPa以下、好ましくは、4.9MPa以下、より好ましくは、4.8MPa以下である。
光弾性樹脂2のヤング率が上記した範囲未満である場合には、光弾性樹脂2が軟らか過ぎて傷付き易く、加工性が低下する。光弾性樹脂2のヤング率が上記した範囲を超過する場合には、光弾性樹脂2が硬すぎるため、光弾性が低下する。
好ましくは、上記した所望の光弾性定数を得るには、光弾性樹脂2の25℃のヤング率が2MPa以上3MPa以下の場合には、25℃の歪光学定数が、例えば、6000×10-6以上(通常、10000×10-6以下)であり、光弾性樹脂2の25℃のヤング率が3MPaを超過し5MPa以下の場合には、25℃の歪光学定数は、例えば、10000×10-6以上(通常、30000×10-6以下)である。
光弾性樹脂2のガラス転移温度は、例えば、-60℃以上、好ましくは、-50℃以上、より好ましくは、-40℃以上であり、例えば、25℃未満、好ましくは、0℃未満、より好ましくは、-25℃未満である。
光弾性樹脂2のガラス転移温度が上記した下限未満である場合には、光弾性樹脂2の加工性および耐傷付き性が低下する場合がある。また、光弾性樹脂2のガラス転移温度が、上記した上限以上である場合には、上記した所望の光弾性定数を得にくくなる場合がある。
なお、光弾性樹脂2のガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置を用いて、周波数10Hzで、温度分散モード(昇温速度5℃/min)の測定により、得ることができる。
また、上記したガラス転移温度の測定では、同時に、貯蔵伸長弾性率E’、損失伸長弾性率E’’および損失正接tanδが得られる。
光弾性樹脂2の25℃における貯蔵伸長弾性率E’は、例えば、1×106~1×108Paであり、25℃における損失伸長弾性率E’’は、例えば、1×104~1×108Paであり、25℃における損失正接tanδは、例えば、0.01~0.2である。
また、光弾性樹脂2の屈折率は、1.30以上、好ましくは、1.35以上、より好ましくは、1.40以上、さらに好ましくは、1.45以上、とりわけ好ましくは、1.50以上であり、1.80以下、好ましくは、1.70以下、より好ましくは、1.65以下、さらに好ましくは、1.60以下、とりわけ好ましくは、1.55以下である。
屈折率が上記の範囲であれば、光弾性樹脂2の屈曲に伴い、その屈曲の度合いに応じて複屈折を生じさせることができ、光量を減衰させることができる。
なお、光弾性樹脂2が屈曲すると、その内部を通過する光は、屈曲部分において光弾性樹脂2の側壁(光弾性樹脂2の内部と外部との境界面)に対して、屈曲の度合いに応じた角度で入射する。この場合、屈曲の度合いが臨界角未満であれば、光は光弾性樹脂2の内部で全反射することなく外部に漏出する。
そのため、以下において、光弾性樹脂2の屈曲に応じた複屈折と、外部への漏出とによって光が減衰する現象を、光弾性樹脂2の屈曲に起因する光の減衰として包括する。
そして、光弾性樹脂2は、図1に示されるように、屈曲センサ1に複数(図1では2つ)備えられている。各光弾性樹脂2は、互いに同一の光弾性樹脂(ポリウレタン樹脂など)から形成されていてもよく、また、互いに異なる光弾性樹脂(ポリウレタン樹脂など)から形成されていてもよい。好ましくは、各光弾性樹脂2は、互いに同一の光弾性樹脂から形成されている。
また、各光弾性樹脂2は、図1に示されるように、第1方向に沿って延びる棒形状に成形されている。なお、光弾性樹脂2の成形においては、上記の通り、所望形状の成形型を用いてもよく、また、光弾性樹脂2を脱型した後に裁断してもよい。また、例えば、成形型として、後述する樹脂材料(シリコーン樹脂など)からなる成形型(チューブ)を用いることにより、樹脂材料で被覆された光弾性樹脂2を得ることもでき、さらに、樹脂材料で被覆された光弾性樹脂2を、そのまま、屈曲センサ1に用いることもできる。
光弾性樹脂2のサイズは、特に制限されないが、長さ(第1方向長さ)が、例えば、10mm以上、好ましくは、30mm以上であり、例えば、2000mm以下、好ましくは、300mm以下である。また、太さ(第2方向長さ)が、例えば、0.1mm以上、好ましくは、0.5mm以上であり、例えば、10mm以下、好ましくは、10mm以下である。
図1において、カバー部材3は、光弾性樹脂2の屈曲を阻害せずに光弾性樹脂2を保護し、かつ、複数の光弾性樹脂2の相対位置を固定するために備えられている。
カバー部材3は、例えば、公知の樹脂材料からなり、複数の光弾性樹脂2は、樹脂材料によって、結束される。
カバー部材3を構成する樹脂材料としては、特に制限されないが、例えば、シリコーン樹脂、イソプレン樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
樹脂材料として、好ましくは、シリコーン樹脂が挙げられる。
カバー部材3が、シリコーン樹脂であれば、光弾性樹脂2の屈曲を阻害することなく、光弾性樹脂2を良好に保護することができ、また、複数の光弾性樹脂2の相対位置を良好に固定することができる。
また、カバー部材3の屈折率は、上記の光弾性樹脂2の屈折率以下、好ましくは、上記の光弾性樹脂2の屈折率未満である。より具体的には、カバー部材3の屈折率は、例えば、1.5以下、好ましくは、1.45以下であり、さらに好ましくは、1.43以下であり、通常、1.2以上である。
カバー部材3の屈折率が上記上限を上回ると、光が光弾性樹脂2とカバー部材3との界面において反射するため、検知感度が低下する場合がある。
光センサ4は、図1に示されるように、第1方向(光弾性樹脂2の長手方向)一方側に配置される発光部7と、第1方向(光弾性樹脂2の長手方向)他方側に配置される受光部8とを備えている。
発光部7は、キャップ部材と、キャップ部材の内側に配置される発光部材とを備えている。キャップ部材は、有底の略楕円筒状に形成される樹脂部材であり、第1方向(光弾性樹脂2の長手方向)一端部において、光弾性樹脂2およびカバー部材3を封止している。
発光部材は、例えば、光弾性樹脂2の数に応じて複数設けられており、キャップ部材の底部において、各光弾性樹脂2の第1方向(光弾性樹脂2の長手方向)の一方側端面と対向配置されている。これにより、各発光部材は、各光弾性樹脂2に対して、第1方向(光弾性樹脂2の長手方向)の一方側端面から、光を入射可能としている。発光部材としては、特に制限されないが、例えば、半導体レーザー(波長405nm~1064nm)、発光ダイオードや蛍光灯、ハロゲンランプ、ハングステンランプなどが挙げられる。
また、発光部7は、必要に応じて、光ファイバーなどの光導波路を備え、光導波路を介して、発光部材から光弾性樹脂2に光を入射可能としていてもよい。
また、発光部7は、図1において仮想線で示されるように、制御部6に電気的に接続されている。
制御部6は、発光部7を電気的に制御するECU(Electronic Control Unit)であり、演算領域としての演算部と、記憶領域としてのメモリ部とを備えている。このような制御部6から発せられる電気信号に応じて、発光部材の発光のON/OFFが、制御される。
受光部8は、キャップ部材と、キャップ部材の内側に配置される受光部材とを備えている。キャップ部材は、有底の略楕円筒状に形成される樹脂部材であり、光弾性樹脂2およびカバー部材3の長手方向他端部において、光弾性樹脂2およびカバー部材3を封止している。
受光部材は、例えば、光弾性樹脂2の数に応じて複数設けられており、キャップ部材の底部において、各光弾性樹脂2の第1方向(光弾性樹脂2の長手方向)の他方側端面と対向配置されている。これにより、各受光部材は、各光弾性樹脂2を長手方向一方側から他方側に通過した光を、受光可能としている。受光部材としては、受光した光の強度を電気信号(光信号)に変換可能な素子が挙げられ、例えば、フォトダイオードなどが挙げられる。
また、受光部8は、必要に応じて、反射板などの反射部材を備え、反射部材を介して、光弾性樹脂2から受光部材に光を導入可能としていてもよい。
また、図1において仮想線で示されるように、受光部8には、処理部5が電気的に接続されている。
処理部5は、受光部8により検知された光信号に基づいて、光弾性樹脂2の屈曲方向を検知するために設けられている。
処理部5は、受光部8において受光された光の強度を分析するための分析処理ユニットであり、演算領域としての演算部と、記憶領域としてのメモリ部とを備えている。
処理部5のメモリ部には、後述の方法で屈曲方向を検知するための屈曲検知プログラムが格納されている。これにより、処理部5は、下記の検知方法によって、受光部8において検知された光に基づく光信号(例えば、電圧値)に基づいて、光弾性樹脂2の屈曲方向を検知可能としている。
次に、この屈曲センサ1を用いて、光弾性樹脂2の屈曲方向を検知するための検知方法について、図1および図2を参照して説明する。なお、図2では、図1における光弾性樹脂2を抜粋して示している。
この検知方法では、まず、制御部6の制御により発光部7の発光部材(ダイオードなど)から各光弾性樹脂2(光弾性樹脂2Aおよび光弾性樹脂2B)に、光を入射する。
そして、各光弾性樹脂2(光弾性樹脂2Aおよび光弾性樹脂2B)を通過した光を、受光部8の受光部材(フォトダイオードなど)で受光して、その受光した光の強度を、光信号として処理部5に入力する。例えば、受光部材としてフォトダイオードを用いる場合、各光弾性樹脂2を通過した光の強度を、それぞれフォトダイオードによって電圧値に変換し、各電圧値を光信号(電気信号)として処理部5に入力する。
このとき、図2Aに示されるように、光弾性樹脂2が屈曲していなければ、発光部7から各光弾性樹脂2に対して入射された光は、光弾性樹脂2の屈曲に起因した減衰を生じることなく、各光弾性樹脂2を通過して、受光部8で受光される。
つまり、光弾性樹脂2Aが屈曲していなければ、受光部8で受光される光の強度(受光強度LR(A))は、光弾性樹脂2Aに入射した光の強度(発光強度LE(A))と同程度である(LR(A)≒LE(A))。
なお、同程度とは、発光部7において生じた光の一部が、例えば、光弾性樹脂2中に吸収されるなどして僅かに減衰した場合の強度を含む。
また、同様に、光弾性樹脂2Bが屈曲していなければ、受光部8で受光される光の強度(受光強度LR(B))も、光弾性樹脂2Bに入射した光の強度(発光強度LE(B))と同程度である(LR(B)≒LE(B))。
換言すれば、各光弾性樹脂2のそれぞれにおいて、各光弾性樹脂2に入射した光の強度(受光強度LR)と、各光弾性樹脂2を通過した光の強度(発光強度LE)とが同程度である場合、処理部5は、光弾性樹脂2の屈曲に起因した減衰が生じていないと判断でき、これにより、光弾性樹脂2が屈曲していないと判断することができる。
一方、例えば、図2Bに示されるように、光弾性樹脂2の第1方向における他方側端部(受光側端部)が第2方向の一方側へ向かうように、光弾性樹脂2Aおよび光弾性樹脂2Bが屈曲している場合、各光弾性樹脂2に対して入射された光は、光弾性樹脂2の屈曲に起因した減衰を生じる。すなわち、発光部7において生じた光は、複屈折および漏出により減衰しながら、各光弾性樹脂2を通過して、受光部8で受光される。
つまり、光弾性樹脂2Aが、図2Bに示すように屈曲していると、光弾性樹脂2A側で受光される光の強度(受光強度LR(A))は、光弾性樹脂2Aに入射した光の強度(発光強度LE(A))よりも小さくなる(LR(A)<LE(A))。これにより、光弾性樹脂2A側の受光部材(フォトダイオード)から生じる光信号(電圧値など)は、屈曲していない場合に比べて、低下する。
また、同様に、光弾性樹脂2Bが、図2Bに示すように屈曲していると、光弾性樹脂2B側で受光される光の強度(受光強度LR(B))も、光弾性樹脂2Bに入射した光の強度(発光強度LE(B))よりも小さくなる(LR(B)<LE(B))。これにより、光弾性樹脂2B側の受光部材(フォトダイオード)から生じる光信号(電圧値など)も、屈曲していない場合に比べて、低下する。
このように、各光弾性樹脂2おいて、各光弾性樹脂2に入射した光の強度(発光強度LE)よりも、各光弾性樹脂2を通過した光の強度(受光強度LR)が小さい場合、処理部5は、屈曲に起因した減衰が生じていると判断でき、屈曲センサ1が屈曲していると判断できる。また、屈曲角度が大きいほど、屈曲に起因した減衰が大きくなるため、光の減衰の度合いに基づいて、屈曲角度を推定することもできる。
さらに、上記の屈曲センサ1では、屈曲方向の内側に配置されている光弾性樹脂2Bの屈曲の度合いが、屈曲方向の外側に配置されている光弾性樹脂2Aの屈曲の度合いに比べて、大きくなる。
そのため、屈曲方向の内側に配置されている光弾性樹脂2Bで生じる光の減衰の度合いが、屈曲方向の外側に配置されている光弾性樹脂2Aで生じる光の減衰の度合いに比べて大きくなる。
その結果、図2Bに示すように光弾性樹脂2を屈曲させると、光弾性樹脂2Bを通過し、受光部8で受光される光の強度(受光強度LR(B))が、光弾性樹脂2Aを通過し、受光部8で受光される光の強度(受光強度LR(A))よりも、小さくなる(LR(B)<LR(A))。
換言すれば、光弾性樹脂2Bを通過した光の強度(受光強度LR(B))が、光弾性樹脂2Aを通過した光の強度(受光強度LR(A))よりも、小さい場合(LR(B)<LR(A))には、処理部5は、光弾性樹脂2Bが光弾性樹脂2Aに対して内側になるように屈曲センサ1が屈曲されていると、判断できる。
これに対して、例えば、図2Cに示されるように、光弾性樹脂2の第1方向における他方側端部(受光側端部)が第2方向の他方側へ向かうように、光弾性樹脂2Aおよび光弾性樹脂2Bが屈曲している場合にも、各光弾性樹脂2に対して入射された光は、光弾性樹脂2の屈曲に起因した減衰を生じる。すなわち、発光部7において生じた光は、複屈折および漏出により減衰しながら、各光弾性樹脂2を通過して、受光部8で受光される。
つまり、光弾性樹脂2Aが、図2Cに示すように屈曲していると、光弾性樹脂2A側で受光される光の強度(受光強度LR(A))は、光弾性樹脂2Aに入射した光の強度(発光強度LE(A))よりも小さくなる(LR(A)<LE(A))。これにより、光弾性樹脂2A側の受光部材(フォトダイオード)から生じる光信号(電圧値など)は、屈曲していない場合に比べて、低下する。
また、同様に、光弾性樹脂2Bが、図2Cに示すように屈曲していると、光弾性樹脂2B側で受光される光の強度(受光強度LR(B))も、光弾性樹脂2Bに入射した光の強度(発光強度LE(B))よりも小さくなる(LR(B)<LE(B))。これにより、光弾性樹脂2B側の受光部材(フォトダイオード)から生じる光信号(電圧値など)も、屈曲していない場合に比べて、低下する。
このように、各光弾性樹脂2おいて、各光弾性樹脂2に入射した光の強度(発光強度LE)よりも、各光弾性樹脂2を通過した光の強度(受光強度LR)が小さい場合、処理部5は、屈曲に起因した減衰が生じていると判断でき、屈曲センサ1が屈曲していると判断できる。また、屈曲角度が大きいほど、屈曲に起因した減衰が大きくなるため、光の減衰の度合いに基づいて、屈曲角度を推定することもできる。
さらに、上記の屈曲センサ1では、屈曲方向の内側に配置されている光弾性樹脂2Aの屈曲の度合いが、屈曲方向の外側に配置されている光弾性樹脂2Bの屈曲の度合いに比べて、大きくなる。
そのため、屈曲方向の内側に配置されている光弾性樹脂2Aで生じる光の減衰の度合いが、屈曲方向の外側に配置されている光弾性樹脂2Bで生じる光の減衰の度合いに比べて大きくなる。
その結果、図2Cに示すように光弾性樹脂2を屈曲させると、光弾性樹脂2Aを通過し、受光部8で受光される光の強度(受光強度LR(A))が、光弾性樹脂2Bを通過し、受光部8で受光される光の強度(受光強度LR(B))よりも、小さくなる(LR(B)>LR(A))。
換言すれば、光弾性樹脂2Aを通過した光の強度(受光強度LR(A))が、光弾性樹脂2Bを通過した光の強度(受光強度LR(B))よりも、小さい場合(LR(B)>LR(A))には、処理部5は、光弾性樹脂2Aが光弾性樹脂2Bに対して内側になるように屈曲センサ1が屈曲されていると、判断できる。
このように、上記の屈曲センサ1では、光弾性樹脂2Aにおける光の減衰の度合いと、光弾性樹脂2Bにおける光の減衰の度合いとを観測し、それらの差異を比較することによって、光弾性樹脂2の屈曲方向を検知できる。
上記の屈曲センサ1では、光弾性樹脂2のヤング率、光弾性定数の絶対値および屈折率が所定範囲である。そのため、光弾性樹脂2が屈曲している場合には、光弾性樹脂2の屈曲の度合い(曲率)に応じて、光弾性樹脂2を通過する光が複屈折により減衰するとともに、光弾性樹脂2を通過する光が光弾性樹脂の外部に漏出する。そして、上記の屈曲センサ1では、複数の光弾性樹脂2が並列配置され、各光弾性樹脂2のそれぞれを通過した光を光センサ4で検知する。そのため、それら各光弾性樹脂2における光の減衰の度合いの差異を比較することにより、光弾性樹脂2の屈曲方向を検知することができる。
一方、上記の屈曲センサ1では、屈曲センサ1が第2方向に沿って屈曲した場合には、屈曲方向を検知することができるが、屈曲センサ1が第3方向に沿って屈曲した場合には、光弾性樹脂2Aと光弾性樹脂2Bとで光の減衰の度合いが同程度(LR(B)<LR(A))になるため、屈曲方向を検知できない。
そのため、第2方向における屈曲方向に加えて、第3方向における屈曲方向も検知する場合には、以下に示すように、長手方向と直交する方向において、3つ以上の光弾性樹脂2を配置する。
より具体的には、例えば、第2実施形態として図3に示すように、屈曲センサ1は、第1方向に沿って延びる光弾性樹脂2を、3つ備えることができる。
以下、3つの光弾性樹脂2を、それぞれ、光弾性樹脂2A、光弾性樹脂2Bおよび光弾性樹脂2Cと称して区別する。
第2実施形態において、光弾性樹脂2Aおよび光弾性樹脂2Bは、上記した第1実施形態と同様に、第1方向と直交する第2方向に沿って並列するように配置されている。
さらに、第2実施形態では、光弾性樹脂2Cが、光弾性樹脂2Aおよび光弾性樹脂2Bに対して、第1方向と直交し、かつ、第2方向に対して交差する方向に沿って、並列するように配置されている。
つまり、各光弾性樹脂2は、第1方向と直交する平面方向(第2方向および第3方向を含む平面方向)に沿って、互いに並列するように配置されている。好ましくは、3つの光弾性樹脂2は、屈曲センサ1の径方向断面図(第1方向と直交する平面(第2方向および第3方向を含む平面)に沿う断面図)において、略正三角形の頂点となるように、配置されている。
このような屈曲センサ1でも、上記した第1実施形態と同様に、屈曲方向の最も内側に配置されている光弾性樹脂2の屈曲の度合いが、屈曲方向の外側に配置されている光弾性樹脂2の屈曲の度合いに比べて大きくなる。
そのため、屈曲方向の最も内側に配置されている光弾性樹脂2で生じる光の減衰の度合いが、屈曲方向の外側に配置されている光弾性樹脂2で生じる光の減衰の度合いに比べて大きくなる。
その結果、第2方向および第3方向のいずれの方向に沿って、光弾性樹脂2を屈曲させた場合でも、屈曲方向の最も内側に配置されている光弾性樹脂2を通過し、受光部8で受光される光の強度(受光強度LR)が、その他の光弾性樹脂2を通過し、受光部8で受光される光の強度(受光強度LR)よりも、小さくなる。
つまり、処理部5は、各光弾性樹脂2のそれぞれにおいて、受光部8で受光される光の強度(受光強度LR)を検知し、その光の強度(受光強度LR)が最も小さい光弾性樹脂2を特定することにより、屈曲方向において最も内側に配置されている光弾性樹脂2を特定することができる。そのため、上記の屈曲センサ1では、光弾性樹脂2Aにおける受光強度と、光弾性樹脂2Bにおける受光強度と、光弾性樹脂2Cにおける受光強度とを、互いに比較することによって、第2方向および第3方向を含む平面方向360°のいずれの方向へ屈曲しているかを検知することができる。
なお、上記した第2実施形態では、屈曲センサ1は、光弾性樹脂2を3つ備えているが、例えば、図4に第3実施形態として示すように、屈曲センサ1は、光弾性樹脂2を4つ以上備えることもできる。
より具体的には、例えば、第3実施形態として図4に示すように、屈曲センサ1は、第1方向に沿って延びる光弾性樹脂2を、4つ備えることができる。
以下、4つの光弾性樹脂2を、それぞれ、光弾性樹脂2A、光弾性樹脂2B、光弾性樹脂2C、および、光弾性樹脂2Dと称して区別する。
第3実施形態において、光弾性樹脂2Aおよび光弾性樹脂2Bは、上記した第1実施形態と同様に、第1方向と直交する第2方向に沿って並列するように配置されている。
さらに、第3実施形態では、光弾性樹脂2Cが、光弾性樹脂2Aに対して、第3方向(第1方向と直交し、かつ、第2方向に対して直交する方向)に沿って、並列するように配置されている。
加えて、第3実施形態では、光弾性樹脂2Dが、光弾性樹脂2Bに対して、第3方向(第1方向と直交し、かつ、第2方向に対して直交する方向)に沿って、並列するように配置されている。
つまり、各光弾性樹脂2は、第1方向と直交する平面方向(第2方向および第3方向を含む平面方向)に沿って、互いに並列するように配置されている。好ましくは、4つの光弾性樹脂2は、屈曲センサ1の径方向断面図(第1方向と直交する平面(第2方向および第3方向を含む平面)に沿う断面図)において、略正方形の頂点となるように、配置されている。
このような屈曲センサ1でも、上記した第1実施形態と同様に、屈曲方向の最も内側に配置されている光弾性樹脂2の屈曲の度合いが、屈曲方向の外側に配置されている光弾性樹脂2の屈曲の度合いに比べて大きくなる。そのため、上記の屈曲センサ1では、光弾性樹脂2Aにおける受光強度と、光弾性樹脂2Bにおける受光強度と、光弾性樹脂2Cにおける受光強度と、光弾性樹脂2Dにおける受光強度とを、互いに比較することによって、第2方向および第3方向を含む平面方向360°のいずれの方向へ屈曲しているかを、より精密に検知することができる。
なお、屈曲センサ1は、光弾性樹脂2を多く備えるほど、より精密に屈曲方向を検知することができる。そのため、屈曲センサ1における光弾性樹脂2の数は、3つ以上であることが好ましい。一方、光弾性樹脂2を多く備えるほど、生産効率およびコスト性が低下するため、屈曲センサ1における光弾性樹脂2の数は、通常、10つ以下、好ましくは、5つ以下、より好ましくは、4つ以下、とりわけ好ましくは、3つである。
また、上記の屈曲センサ1は、光弾性樹脂2の第1方向一方側から光が照射され、第1方向他方側から光が射出される透過型センサであるが、例えば、光弾性樹脂2の第1方向一方側から光が照射され、第1方向他方側において光が再帰性反射材により反射され、光弾性樹脂2の第1方向一方側から光が射出される反射型センサであってもよい。
そして、このような屈曲センサ1は、屈曲方向を検知できるため、各種産業分野において、ロボット、機器などの検知部材として、好適に用いることができる。
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
製造例1<光弾性樹脂>
ガラス製フラスコに、PTG-1000(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、水酸基価111.5mgKOH/g、保土谷化学社製)100質量部を仕込み、減圧下、120℃で2時間乾燥し、温度を80℃に下げ、窒素で常圧に戻した。次いで、撹拌しながら、TODI(3,3′-ジメチルビフェニル-4,4′-ジイソシアネート、日本曹達社製)9.2質量部(イソシアネートインデックス35)を投入した。次いで、撹拌しながら、TMP(トリメチロールプロパン)1.0質量部を加え、温度を70℃に調整した。次いで、70℃で溶解したMDI-PH(4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、三井化学社製)20.2質量部(イソシアネートインデックス105)を投入し、撹拌混合した。
その後、減圧下で30秒間脱泡し、窒素で常圧に戻した後、フラスコから取り出し、ポリウレタン組成物を得た。
次いで、得られたポリウレタン組成物を、シリコーン樹脂チューブ(成形型、内径2.5mm×長さ15cm、屈折率1.43、信越ポリマー製)に流し込み、70℃で18時間硬化させることにより、棒形状の光弾性樹脂(光弾性ポリウレタン樹脂)を得た。
<光弾性ポリウレタン樹脂の物性評価>
(1)光弾性定数およびヤング率
「築地光雄、高和宏行、田實佳郎著“光学フィルム用・光弾性定数測定システムの開発”、精密学会誌73、253-258(2007)」の「光弾性定数測定方法」の記載に準拠して測定し、光弾性樹脂の25℃における歪み光学定数およびヤング率を得るとともに、それらから25℃における光弾性定数を算出した。上記測定には、波長630nmのレーザー光を使用した。光弾性定数およびヤング率を表1に示す。
(2)動的粘弾性
光弾性樹脂を、動的粘弾性測定装置(VES-F-III、VISCO-ELASTICSPECTROMETER、岩本製作所社製)を用いて、昇温速度5℃/分、振動数10Hz、振幅±0.01mmの温度分散モードにて測定し、貯蔵伸長弾性率(E’)、損失伸長弾性率(E’’)および損失正接(tanδ)を求めるとともに、得られたデータの損失正接(tanδ)のピーク値の温度を、ガラス転移温度(Tg)とした。貯蔵伸長弾性率(E’)、損失伸長弾性率(E’’)、損失正接(tanδ)およびガラス転移温度(Tg)を表1に示す。
(3)屈折率
卓上屈折計(アタゴ社製)において、光源にナトリウムランプ(Fiber-Lite、MODEL3100、Dolan-Jenner Industries社製)を用いて、測定温度20℃で、光弾性樹脂の屈折率を測定した。
その結果を、表1に示す。
実施例1<屈曲センサ>
製造例1で得られた光弾性樹脂を2本用いて、図1に示すように、屈曲センサを作製した。
すなわち、光弾性樹脂Aと光弾性樹脂Bとを並列配置し、シリコーン樹脂(屈折率1.43)によって封止し、互いに結束した。
また、各光弾性樹脂の両端を裁断して平滑化して、それぞれの一方側端部に、光源および光ファイバーU-48(商品名、キーエンス製)を接着剤で固定した。これにより、各光弾性樹脂に光を入射可能とした。また、各光弾性樹脂の他方側端部には、光弾性樹脂を通過した光を検出するために、フォトダイオードを備えたアンプFS-N11MN(商品名、キーエンス製)を、反射板を介して接続した。そして、アンプから出力される電圧値を、データロガーNR-600(商品名、キーエンス製)にて記録した。
<<屈曲評価>>
屈曲センサにおいて、まず、2つの光弾性樹脂(光弾性樹脂Aおよび光弾性樹脂B)を、長手方向が水平になるように固定して、光源およびフォトダイオードをキャリブレーションした。このときの出力値を、屈曲0°(屈曲なし、図2A)における電圧値とした。
そして、屈曲センサを、鉛直方向に沿って屈曲させた場合(屈曲状態1)と、2つの光弾性樹脂の並列方向に沿って、光弾性樹脂Aが外側となるように屈曲させた場合(屈曲状態2)と、光弾性樹脂Aが内側となるように屈曲させた場合(屈曲状態3)とのそれぞれにおいて、光源から各光弾性樹脂に光を入射し、フォトダイオードを介して出力される電圧値を測定した。得られた電圧値グラフを、図5に示す。
図5が参照されるように、光弾性樹脂Aが外側となるように屈曲させた場合、光弾性樹脂Aを通過した光の電圧値は、光弾性樹脂Bを通過した光の電圧値よりも、大きくなった。一方、光弾性樹脂Aが内側となるように屈曲させた場合、光弾性樹脂Aを通過した光の電圧値は、光弾性樹脂Bを通過した光の電圧値よりも、小さくなった。