〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、第1実施形態に係る測距装置及びこれを用いた測距方法について一例を説明する。なお、測距装置は、例えば駅のプラットホームに設置されたホームドア付近の安全確認等において、人や物体等の測定対象までの距離を測定するために適用可能である。本実施形態では、特に、測距とともに測定に異常が無いかを診断するための機構、すなわち自己診断を行うための機構が設けられている。
図1に例示するように、本実施形態の測距装置1は、2次元走査ミラー(スキャナ)2と、レーザ投光部3と、レーザ受光部4と、射出させる電磁波であるレーザー光の投光及び受光をするための投光受光光学系5と、測距時においてレーザ光を透過させる投受光窓6とを備え、図示を省略する測定対象に向けたレーザ光(パルスレーザ)の投光と、測定対象からの反射光の受光とが、投受光窓6を介してなされる。
以上のように、測距装置1では、測定対象に向けて走査させる電磁波の一例として、光波であるレーザ光(パルスレーザ)を採用しており、測距装置1は、レーザ投光部3から測定対象へ向けたレーザ光の放射タイミングと、測定対象からの反射光をレーザ受光部4が受光した受光タイミングとの時間差及びレーザ光の伝播速度に基づいて、測定対象までの距離が算出される。つまり、測距装置1は、光パルス飛行時間計測法による測定装置である。さらに、本実施形態では、投受光窓6において、レーザ光の透過反射を切り替える切替機構としての液晶シャッター6aによって、上記のような測距を継続させつつ測距装置1自身による自己の故障の有無について診断を行うことを可能にしている。
以下、測距装置1の一構成例についてさらに詳細に説明する。測距装置1は、上記した2次元走査ミラー2等のほか、上記光パルス飛行時間計測法による測定を可能とするための各種動作制御や取得データの処理を行うべく、測距のための各種数値を計測する計測部9と、計測部9で計測された値について演算を行う演算部10と、各部への動作タイミングを送信するタイミング制御部11とを備える。また、演算部10において算出された結果等を外部へ送信するためのインターフェース部IFを有している。
測距装置1のうち、レーザ投光部3は、例えばレーザドライバ、レーザ素子(半導体レーザ)、レンズ等を含んで構成され、レーザ光(パルス光)を発光し、投光する。なお、レーザ素子から発光されたレーザ光は、当該レンズ等を介して放射され、さらに、投光受光光学系5により2次元走査ミラー2に向かい、2次元走査ミラー2で反射されることで、測定対象(図1参照)の表面を走査する。すなわち、レーザ投光部3は、電磁波として走査されるべきレーザ光を投光する投光部である。なお、レーザ投光部3から投光されるレーザ光の成分を投光成分PLとする。レーザ投光部3は、タイミング制御部11からの指令に従って、所定のタイミングで投光成分PLを射出する。
投光受光光学系5は、反射ミラー5aと、投光/受光分離器5bとを有する。反射ミラー5aは、レーザ投光部3からの投光成分PLを投光/受光分離器5bに向けて反射し、さらに、投光/受光分離器5bは、反射ミラー5aからの投光成分PLを透過させて2次元走査ミラー2に向かわせる。
2次元走査ミラー2は、例えば枠体状の可動部や、可動部に接続され回転させる回転軸となる梁(トーションバー)等を含んで構成され、ミラー21を2次元的に振動する。レーザ投光部3からの投光成分PLが、姿勢を変化させるミラー21で反射されることで、測定対象に対して、2次元走査がなされる。すなわち、2次元走査ミラー2は、測定対象に向けて電磁波を走査させる走査部である。
なお、投光成分PLのうち測定対象で反射された反射レーザ光のうち、投光成分PLと反対方向の経路を辿った反射成分RLは、再び、2次元走査ミラー2で反射され、このうち、投光/受光分離器5bで反射された成分が、レーザ受光部4に向かう。
レーザ受光部4は、測定対象に向けて射出したレーザ光の反射成分RLを受信する。すなわち、レーザ受光部4は、電磁波として走査された光に対する測定対象からの反射成分RLを受光する受光部である。レーザ受光部4は、受光部として、受光素子(フォトダイオード)のほか、受光光学系、プリアンプ、A/D変換器等を備え、投光/受光分離器5bで反射されたレーザ光の成分すなわち反射成分RLを、例えば検出可能なパルス波の状態にして、計測部9に出力する。
一方、レーザ投光部3には、上記のほか、例えば受光素子(フォトダイオード)を含んで構成される発光モニタ部を設けて、放射されるレーザ光(パルス光)の一部を受信することで、放射タイミングを計時してもよい。レーザ投光部3は、例示した発光モニタ部等により計時した放射タイミングの情報をスタートタイミングとして利用可能とすべく、計測部9に出力する。
投受光窓6は、例えば光透過性のガラス材等で構成され、2次元走査ミラー2に対して投光成分PLの射出側に、2次元走査ミラー2の走査範囲を包含するように配置されている。具体的には、図2(A)及びその一部(窓部分)拡大図である図2(B)において例示するように、投受光窓6による被覆領域D1が、2次元走査ミラー2の走査範囲SD1を包含している。特に、本実施形態は、被覆領域D1のうち走査範囲SD1と重複する一部に切替機構としての液晶シャッター6aを備える。より具体的には、図示の場合、液晶シャッター6aは、矩形を変形させた形状の走査範囲SD1のうち、隅領域に対応する箇所に設けられている。
液晶シャッター6aは、液晶層をガラスで挟持して形成される液晶素子に対して電圧を印加することで、液晶層を構成する液晶素子の配列を変化させることで、光を透過させる状態と光を遮蔽する状態との切替えを可能とする部材である。特に、ここでは、光を遮蔽した状態において、液晶シャッター6aは、反射の一態様としての散乱作用を示すものとなっていることで、液晶シャッター6aに向かってくる投光成分PLを散乱させる。これにより、散乱された投光成分PLの成分の一部が、投光成分PLと反対方向の経路を辿った反射成分RLとなって、2次元走査ミラー2に向かい、その一部がレーザ受光部4で受光される。上記のような作用を示す液晶シャッター6aの構成としては、例えば液晶層中に特殊な高分子によるネットワーク構造体を形成させておき液晶分子の配列が不規則な状態を誘起させて光を散乱させるようにすることが考えられる。なお、ここでは、光の散乱は、光の反射の一態様に含まれるものとする。
液晶シャッター6aは、タイミング制御部11からの指令に従ってオンオフされる。これにより、液晶シャッター6aは、レーザ投光部3から射出され2次元走査ミラー2を経た投光成分PLを、任意のタイミングで透過反射させる。以上のように、液晶シャッター6aは、2次元走査ミラー2の走査における電磁波としてのレーザ光の通過範囲のうち少なくとも一部に設けられてレーザ光に対する透過反射を切り替える切替機構として機能する。
また、本実施形態では、液晶シャッター6aにおいて投光成分PLを反射可能とすることで、自己診断を行っている。すなわち、液晶シャッター6aにおいて反射(散乱)されてレーザ受光部4で受光される反射成分RLは、通常の測距と比べて投光成分PLの射出時間から非常に短い時間で検出されることになる。したがって、このような特殊な検出を測距装置1において適正に行えることを確認することで、測距装置1の内部構造に異常が無いかを確認できる。
計測部9は、投光から受光までの時間差を計測する時間差計測部9aと、受光時における光量を検出する光量計測部9bとを備える。
まず、計測部9のうち、時間差計測部9aは、レーザ投光部3での投光成分PLの射出を検出した検出信号をスタートタイミングとして受け取ることで投光成分PLの射出時刻を計測する。また、時間差計測部9aは、レーザ受光部4で受光した上記投光成分PLに対応する反射成分RLの受信を検出した検出信号をストップタイミングとして受け取ることで反射成分RLの受光時刻を計測する。時間差計測部9aは、上記のようにして取得した射出時刻と受光時刻とから、投光から受光までの時間差を計測する。
次に、計測部9のうち、光量計測部9bは、レーザ受光部4で受光した反射成分RLの光量計測を行う。
計測部9は、上記のようにして計測した時間差や光量の計測結果を演算部10に出力する。
演算部10は、測定対象までの距離や光量値を算出する距離算出部10aと、距離算出部10aで算出された結果と、タイミング制御部11からの自己診断タイミング制御の情報とに基づいて故障の有無についての自己診断を行う自己診断部10bとを備える。
距離算出部10aは、時間差計測部9aで計測された時間差から測定対象までの距離を算出する。なお、詳しい説明を省略するが、距離算出部10aは、タイミング制御部11から各タイミングにおける2次元走査ミラー2の姿勢、すなわち投光成分PLの射出方向(角度)の情報を併せて取得することで、2次元走査される範囲における距離画像の作成を可能にするための距離情報が取得可能となっている。
自己診断部10bは、上記のようにして距離算出部10aにおいて取得された距離情報とタイミング制御部11からの自己診断タイミング制御の情報とに基づいて自己診断を行う。すなわち、自己診断部10bは、上記情報を利用して、まず、前提として、タイミング制御部11からの情報に基づいて自己診断を行うタイミングであるか否かを判断し、自己診断を行うタイミングである場合の距離情報を距離算出部10aでの結果から参照して、その妥当性を判断する。すなわち、液晶シャッター6aまでの距離は、非常に近距離でかつ既知の値であり、液晶シャッター6aにおいて反射(散乱)した成分光の受光比率もある程度予測される範囲内となるはずである。したがって、測距装置1の自己診断部10bにおいて、自己診断の際の液晶シャッター6aまでの距離や受光されるべき光量について予め閾値を定めておき、定めた閾値の範囲内にあるか否かによって、自己によるすなわち測距装置1の各部による走査動作が正常であるか否かを診断している。すなわち、自己診断部10bは、測距状態の変化に基づき故障の診断を行う診断部として機能する。
ここでは、液晶シャッター6aを2次元走査ミラー2の射出側、すなわち測距装置1の出口側に配置していることで、自己診断部10bは、投光部であるレーザ投光部3による投光から走査部である2次元走査ミラー2による走査を経て受光部であるレーザ受光部4による受光がなされるまでの間における異常の有無を診断するものとなっている。
特に、本実施形態の一例として図2(B)に示すように、液晶シャッター6aを2次元走査ミラー2による走査の走査範囲SD1のうち最も外側に位置する隅領域に配置している。この場合、例えば、走査のためのミラー21の振幅すなわち振れ角が十分でなければ、自己診断時に光が液晶シャッター6aまで届かず診断時に反射成分RLが検出されないことになり、装置の異常として検出される。
タイミング制御部11は、各種回路機構等で構成され、上記した各部における動作タイミングを統括的に制御する。このため、タイミング制御部11は、投光制御部11aと、スキャナ制御部11bと、反射制御部11cとを備える。
投光制御部11aは、レーザ投光部3から投光成分PLを射出させるタイミング信号(後述する投光タイミング信号SS4)を出力してレーザ投光部3における投光成分PLの投光タイミングを制御する。
スキャナ制御部11bは、2次元走査ミラー2による2次元駆動のスキャナ動作を制御するための信号(後述する反射制御タイミング信号SS5)を出力する。
反射制御部11cは、液晶シャッター6aによる投光成分PLの通過反射のタイミングを制御するための信号(後述するスキャナ駆動信号SS2)を出力する。
タイミング制御部11は、上記のような投光制御部11a、スキャナ制御部11b及び反射制御部11cを備えることで、走査部である2次元走査ミラー2の走査タイミングと、切替機構である液晶シャッター6aにおける切り替えタイミングとを同期させつつ制御する。
なお、タイミング制御部11は、上記のような指示に従った各種駆動を行うために、例えばスキャナドライバや、2次元走査ミラー2のスキャナ位置(姿勢)を捉えるためのフィルタ、さらには、スキャナドライバに対して駆動信号を送信するとともにフィルタからスキャナ位置についての信号を受け取るスキャナ制御部等を備えるものとしてもよい。
また、インターフェース部IFは、演算部10の距離算出部10aで算出された距離値や光量値についての情報や、自己診断部10bにおける診断結果、あるいは、タイミング制御部11で取得された2次元走査ミラー2のスキャナ位置についての情報(後述するスキャナ位置信号SS3についての情報)等を、外部に対してデータ送信可能としている。
ここで、本実施形態では、既述のように、2次元走査ミラー2においてミラー21を2次元的に振動することで2次元走査して、図3に例示するようなリサージュ(またはリサジュー)パターンを形成するリサージュ型の走査を行っている。つまり、図3において、曲線Q1は、走査光すなわち投光成分PLの軌跡の様子を示している。これに対して、図2等に例示した切替機構としての液晶シャッター6aは、図3において矢印A1の先端に示す隅領域CC1に対応する箇所を覆うように配置されている(図2等参照)。リサージュ型の走査において、矢印A1の先端に示すような隅領域CC1は、走査の折り返し位置となっている。このため、隅領域CC1は、ミラー21の振幅について言えば振り角最大となる箇所であり、また、振幅周期における終端になって、複数回通過する箇所でもある。また、折り返すことから走査の速度が遅くなる点でもあり、タイミング制御において、射出タイミングに対する位置ずれの誤差が少ない箇所でもある。したがって、見方を変えると、上記態様の場合、液晶シャッター6aは、例えば、2次元走査ミラー2における1回のリサージュ型の走査において、複数回通過する箇所に位置していることになり、かつ、2次元走査ミラー2におけるミラー21の振幅の最大となる箇所に位置している、といったことになる。このような箇所において透過反射の切替えを行う、すなわち自己診断を行うことで、受光から投光までの各部の動作のどこかに異常が存在する場合には、正常な検査がなされないことが検出でき、例えば既述のように、振幅が十分でないことによる異常の場合もこれを検知できる。また、上記のように、1回のリサージュ型の走査において、複数回通過する箇所とすることで、複数回同じ箇所を通過するうち、いずれかの回を自己診断用に使用し、他の回については自己診断用に使用せずに通常の測距に利用することで、通常の測距を継続しつつこれに並行して自己診断を行う態様とすることが可能になる。
図4は、タイミング制御部11における上記各動作タイミングの制御の様子を示すタイムチャートであり、各部の動作タイミングについて、同期させつつ制御するための一例を示している。図中、最上段のチャートαは、基準信号SS1について示しており、上から二段目のチャートβは、スキャナ制御部11bによるスキャナ駆動信号SS2について示しており、上から三段目のチャートγは、スキャナ駆動信号SS2に対応して2次元走査ミラー2から返信されるスキャナ位置信号SS3について示しており、上から四段目のチャートδは、投光制御部11aによるレーザ投光部3の投光タイミング信号SS4について示しており、最下段のチャートεは、反射制御部11cによる液晶シャッター6aの反射制御タイミング信号SS5について示している。なお、タイミング制御部11から演算部10の自己診断部10bへの自己診断タイミングを行うタイミングである旨の通知である自己診断タイミング信SS6も同じものとなる。
上記のうち、チャートαに示す基準信号SS1は、各種動作間での同期をとるための基準となる初期信号であり、例えば、スキャナ駆動信号SS2の位相は、基準信号SS1に対してスキャナ位置信号SS3が一定位相差になるように制御されている。
また、例えば投光タイミング信号SS4は、基準信号SS1に対して所定のタイミングで投光するように設定されている。なお、反射制御タイミング信号SS5は、上記のように設定される投光タイミング信号SS4のうち、通常の測距用ではなく自己診断を行うために使うものに合わせて設定されている。見方を変えると、測距装置1は、タイミング制御部11において、基準信号SS1に対して所定のタイミングで反射制御を行うと同時に、自己診断部10bによる自己診断を行う。
以下、図5等を参照して、上記のような動作の具体的一態様について説明する。図5は、走査軌跡の一部について示す概念図であり、図6は、図5における切替機構としての液晶シャッター6aによる透過反射の切替えタイミングについて説明するためのタイムチャートである。
図5において、曲線Q1は、走査光すなわち投光成分PLの軌跡の一部を示しており、ここでは、図5及び図6に示すように、早い時刻から順に、時刻t1,t2,t3が、それぞれ投光タイミングすなわちレーザ光である投光成分PLの放射タイミングとなっている。なお、図5に示すように、ここでの一例では、時刻t1から時刻t2にかけて矢印AR1に示すように破線で囲って示す隅領域CC1に向かい、図6のチャートに示すように、時刻t2での隅領域CC1における投光成分PLの放射に際して、液晶シャッター6aによる投光成分PLの反射(散乱)を行うための駆動制御がなされ、時刻t2から時刻t3にかけて矢印AR2に示すように隅領域CC1から曲線Q1に示す同じ軌道を折り返している。なお、図6に示すように、時刻t2以外の時刻t1,t3では、通常の測距のための動作がなされる。すなわち、測距装置1において、液晶シャッター6aは駆動しておらず、投受光窓6を投光成分PLが透過して、各時刻t1,t3に対応する位置で所定の角度(方向)に向けて通常の測距がなされる。以上のようにして、タイミング制御部11は、2次元走査ミラー2の走査タイミングと、液晶シャッター6aにおける切り替えタイミングとを同期させつつ制御している。
以下、図7のフローチャートを参照して、測距装置1の一連の動作について一例を説明する。なお、ここでは、自己診断を行うか否かについてのタイミング制御の概要についての一例を説明する。
まず、タイミング制御部11は、自己診断のタイミングであるか否かを判断し(ステップS101)、自己診断のタイミングである場合には(ステップS101:Yes)、反射制御タイミング信号SS5を出力して液晶シャッター6aによる遮断を行って液晶シャッター6aに向かう投光成分PLを反射(散乱)可能な状態とするとともに(ステップS102a)、投光タイミング信号SS4を出力して投光成分PLを放射させる(ステップS103a)。なお、以上に併せて、タイミング制御部11は、反射制御タイミング信号SS5とともに自己診断部10bに対して自己診断タイミングである旨の自己診断タイミング信号SS6(自己診断タイミング制御の情報)を出力しており、自己診断部10bは、レーザ受光部4における状況を含めた計測部9での計測及び距離算出部10aでの算出結果から、自己診断のための各種処理を行う(ステップS104a)。ステップS102a~S104aの動作を終了すると、タイミング制御部11は、再びステップS101の動作に戻る。
一方、ステップS101において、自己診断のタイミングでない場合には(ステップS101:No)、タイミング制御部11は、液晶シャッター6aによって光を遮断させることなく液晶シャッター6aを含む投受光窓6に向かう投光成分PLを透過可能な状態とするとともに(ステップS102b)、投光タイミング信号SS4を出力して投光成分PLを放射させる(ステップS103b)。この場合、自己診断部10bを含む演算部10は、自己診断部10bによる自己診断のための処理を行うことなく通常の距離計測の処理をする(ステップS104b)。ステップS102b~S104bの動作を終了すると、タイミング制御部11は、再びステップS101の動作に戻る。
タイミング制御部11は、上記動作を測距装置1の動作の終了処理がなされるまで、あるいは、自己診断の動作停止命令がなされるまで継続する。
図8は、一変形例の測距装置1における光の通過範囲と切替機構としての液晶シャッター6aによる切替え領域との関係を示す概念図であり、図2(B)に示す図2(A)の一部拡大図に対応する図である。図示のように、本変形例では、液晶シャッター6aが、走査範囲SD1の中心辺りに位置している点において、図2(B)に例示した場合と異なっている。
図8において、液晶シャッター6aに関して、一部拡大して示す領域K1は、液晶シャッター6aの設置位置に対応する図3に例示したリサージュパターンの一部を示している。すなわち、領域K1は、図3の一部を拡大した図に相当し、図中において、曲線Q1は、走査光すなわち投光成分PLの軌跡の一部を示している。また、図8において、領域K2及び領域K3は、領域K1と同一の領域を示している。ここでは、領域K2及び領域K3において例示するように、曲線Q1のうち、部分曲線Q1aと部分曲線Q1bとの交点を交点CS1とし、交点CS1を投光成分PLが通過するタイミングで、投光成分PLの射出を行うようにタイミング制御がなされているものとする。例えば、領域K2において曲線Q1のうち実線で示す部分曲線Q1aに沿って走査がなされる場合には、交点CS1を投光成分PLが通過するタイミングで液晶シャッター6aによる遮断を行い、投光成分PLを反射(散乱)させて、自己診断を行う。一方、領域K3において曲線Q1のうち実線で示す部分曲線Q1bに沿って走査がなされる場合には、交点CS1を投光成分PLが通過するタイミングで液晶シャッター6aによる遮断を行わず、通常の測距処理を行う。
以上のように、本変形例では、クロスする位置すなわち2回通過する交点CS1の位置において走査タイミングによって液晶シャッター6aでの通過反射を切り替えることで、同じ箇所において測距用の検出と自己診断用の検出とを可能にしている。
図9(A)は、他の一変形例の測距装置1における光の通過範囲と切替機構としての液晶シャッター6aによる切替え領域との関係を示す概念図であり、図2(B)や図8の一部に対応する図である。図示のように、本変形例では、液晶シャッター6aが、走査範囲SD1の四隅に設けられている点において、上記の例示と異なっている。この場合、液晶シャッター6aの切替えタイミングを適宜調整することで、四隅の全てで通常の測距処理を行いつつ自己診断を行うことができる。
例えば、4箇所に配置された全ての液晶シャッター6aにおいて正常であると診断された場合にのみ測距装置1が正常であると判断することで、より厳しい基準で動作の正常異常判断ができる。逆に、4箇所の液晶シャッター6aのうちいずれかの表面において汚れが付着していて正しい測距が不能となっているが、測距装置1の内部構造については異常が生じていないといった場合も考えられる。このような場合に対応すべく、通常は、4箇所の液晶シャッター6aのうちいずれかでのみ自己診断を行い、当該箇所において自己診断に異常がみられる場合に、残りの3箇所のいずれかを利用して自己診断を行うようにする、といった態様としてもよい。
図9(B)は、さらに他の一変形例の測距装置1における光の通過範囲と切替機構としての液晶シャッター6aによる切替え領域との関係を示す概念図である。図示のように、本変形例では、液晶シャッター6aが、走査範囲SD1を包含するように形成されている。なお、液晶シャッター6aを、投受光窓6の被覆領域D1の全体に亘って形成してもよい。この場合、液晶シャッター6aが、投受光窓6そのものとなっている態様としてもよい。また、図示の場合において、自己診断時において、液晶シャッター6aの全体で光を遮断する構成としてもよいが、液晶シャッター6aを、例えば領域ごとの画素マトリクス状の構成とし、走査タイミングに応じて走査位置に対応する箇所の画素のみにおいて遮断させる構成としてもよい。
以上のように、本実施形態では、走査部である2次元走査ミラー2での走査における電磁波としてのレーザ光の通過範囲のうち少なくとも一部に設けられた切替機構である液晶シャッター6aが、レーザ光に対する透過反射を切り替え、さらに、診断部である自己診断部10bが、液晶シャッター6aによる測距状態の変化に基づき故障の診断を行うことで、レーザ光の成分である投光成分PLを走査範囲外に照射させることなく自己診断を行える。
なお、以上では、射出させるレーザ光(投光成分PL)の透過反射を切り替える切替機構として液晶シャッター(液晶シャッター6a)を採用しているが、同様に調光ガラスで切替機構を構成できる。また、適切な透過反射の切替えが可能であれば、これに限らず、種々のものが採用できる。
また、上記では、切替機構による反射として散乱を含むのとしているが、上記のように、投光成分PLがきた方向に折り返すことができる種々の態様のものを液晶シャッター6aに代えて採用できる。
〔第2実施形態〕
以下、図10を参照しつつ、第2実施形態の測距装置及びこれを用いた測距方法について一例を説明する。液晶シャッター206aにおける光の遮断範囲の変更すなわち切替え領域の変更を除いて同様であるので、全体の構成について、共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図10は、本実施形態に係る測距装置における切替機構としての液晶シャッター206aによる切替え領域の変更について説明するための概念図であり、図2(B)等に対応する図である。ここでは、図9(B)に例示した液晶シャッター6aの場合と同様に、本実施形態では、液晶シャッター206aが、走査範囲SD1を包含するように形成されており、特に図示の場合では、被覆領域D1のほぼ全体に亘って形成されている。さらに、液晶シャッター206aは、領域ごとの画素マトリクス状の構成とし、遮断させる箇所を変更可能としている。
一方、本実施形態では、走査範囲も変更可能となっている。例えば図中左側に示す通常の状態X1の走査範囲SD1に比べて、図中右側に示す状態X2の走査範囲SD2のほうが小さくなっている。なお、このような変更については、例えば2次元走査ミラー2におけるミラー21の振幅の大きさを変更可能な態様としておくことで実現できる。つまり、ミラー21の走査角度を変更することで走査範囲を変更する。このような変更を行うものの利用態様としては、例えば、1回の走査におけるレーザ光(パルスレーザ)の射出回数を維持しつつ、走査範囲を小さくする(狭くする)ことで、より密度の高い測距を可能なものにする、といったことが考えられる。
上記のような場合において、図示のように、状態X1の液晶シャッター206a中において遮断を行う領域XD1を変更することが考えられる。具体的には、図示の例では、縮小する前の通常の状態X1においては、領域XD1を走査範囲SD1の四隅の1つに対応させており、縮小後の状態X2においても、遮断を行う領域を新たな領域XD2に変更する、すなわち駆動させる画素を変更することで、縮小後の新たな走査範囲SD2の四隅の1つに対応させた状態に維持している。以上を言い換えると、縮小後(状態X2)においても、液晶シャッター206aでの反射制御を行うタイミングは、縮小前(状態X1)と同一で、同じ走査軌跡だが、走査角度が異なる場合に、液晶シャッター206aとして使用する画素の位置を変更することで対応させている。
本実施形態の測距装置においても、走査部である2次元走査ミラー2での走査における電磁波としてのレーザ光の通過範囲のうち少なくとも一部に設けられた切替機構である液晶シャッター206aが、レーザ光に対する透過反射を切り替え、さらに、診断部である自己診断部10bが、液晶シャッター206aによる測距状態の変化に基づき故障の診断を行うことで、レーザ光の成分である投光成分PLを走査範囲外に照射させることなく自己診断を行える。
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
まず、上記では、切替機構である液晶シャッターの配置について四隅等の種々の場合を示したが、これらはいずれも例示であり、走査範囲に対応する範囲おいて、上記以外の範囲に設置することも考えられる。また、液晶シャッターの大きさについても種々変更可能である。たとえば、製造誤差等によって走査における軌跡の位置や、射出タイミング等について生じ得る誤差を加味して十分な程度の大きさとしておくことが考えられる。この際、併せてレーザ光の径等も考慮してもよい。
さらに、例えば、第2実施形態等で例示したように、液晶シャッターによる切替位置を変更可能とする場合、これを調整に使ってもよい。すなわち画素単位で液晶シャッターの動作位置をずらすことで、最適化する調整を可能なものとしてもよい。
また、上記では、切替機構である液晶シャッターを投受光窓に設置するものとしているが、これに限らず、2次元走査ミラー2の走査において射出されたレーザ光の通過範囲の内種々の箇所において、切替機構を設けることができる。
また、上記では、切替機構における遮断時に、切替機構が散乱作用を示すことで、レーザ光を折り返すように反射させるものとして、必要な反射成分を受光できるようにしているが、必要な反射成分の受光が可能であれば、例えば散乱作用を示すようにする場合に限らず、種々の態様とすることができる。
また、上記では、測距装置1は、駅のプラットホームに設置されたホームドア付近において、人や物体等の測定対象までの距離を測定する装置であるものとしているが、これに限らず、例えばドアの挟み込み検出、周辺検知、障害物検知等に用いられる装置であって、屋外での使用によるものとすることができる。
また、上記実施形態では、2次元走査ミラー2において、例えば光走査部として電磁駆動式の2次元ガルバノミラーを用いることが考えられるが、本発明はこれに限定されるものではなく、電磁駆動式、静電方式、圧電方式、熱方式などの各種の駆動方式で光反射面を有する可動部を揺動駆動する構成の光走査部にも適用することができる。