JP7223896B2 - 歯付ベルト及び歯付ベルト伝動装置 - Google Patents
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Description
前記背部に、ベルト長手方向に埋設された、スチール繊維を含む撚りコードからなる心線と、
前記背部の内周側に、前記ベルト長手方向に沿って形成された、複数のベルト歯と、
前記ベルト歯間に形成されるベルト歯底部と前記心線との間に設けられた、カバー層と、を備え、
前記カバー層は、厚みが0.2~1.0mmの範囲内であり、
前記背部、前記ベルト歯、及び、前記カバー層は、熱可塑性エラストマーで一体的に形成されていることを特徴とする、歯付ベルトである。
また、心線が全面的に熱可塑性エラストマーに埋設されていることから、心線がベルト歯底部の表面と接したり露出したりする部分がなく、心線(スチール繊維を含む撚りコード)と水分との接触を妨げられるので、水分に対する防錆性を確保することができる。
前記ベルト歯の先端部が、前記プーリ歯間に形成されるプーリ歯底部に接触し、
かつ、前記プーリ歯の先端部が、前記ベルト歯底部に接触するように巻き掛けられることを特徴としてもよい。
当該歯付ベルトの前記ベルト歯間に噛合するように、外周に複数のプーリ歯が形成された、複数の歯付プーリと、を備え、
前記ベルト歯の先端部が、前記プーリ歯間に形成されるプーリ歯底部に接触し、かつ、前記プーリ歯の先端部が、前記ベルト歯底部に接触するように、前記複数の歯付プーリ間に巻き掛けられ、噛み合い伝動を行う歯付ベルト伝動装置である。
本発明に係る歯付ベルト伝動装置1は、高い負荷(高トルク)環境に対応した高張力条件での動力伝達に好適に使用される。高い負荷環境の指標としては、歯付ベルト10にかかる張力が常時変動し、常態で0.30kN/mm以上であり、最大で0.80~1.10kN/mmの張力がかかる使用環境で使用される。別の指標では、歯付ベルト10にかかるトルクが常時変動し、最大で15kN・m~45kN・mとなる使用環境で使用される。
次に、本発明の実施形態に係る歯付ベルト10について図面を参照して説明する。
・ベルト幅W=20~300mm
・ベルト全厚H=9~16mm
・背部12の厚みH12=4mm以上
・カバー層121の厚みT=0.2~1.0mm
・各ベルト歯13の高さH13=5~12mm
・ベルト歯13のピッチP13(ピッチラインPL上の距離)=14~25mm
・ベルト幅1mmあたりのベルト強力=1kN以上(好ましくは2.0kN以上、5.0kN以下)
各心線11は、スチールコード(スチール繊維(素線)を撚り合せたコード)からなる。スチールコードは、スチール繊維のみで構成されるコードに限定されず、例えば、アラミド繊維やカーボン繊維などの他の繊維を組み合わせた撚りコードであってもよい。複数の心線11は、ベルト長手方向にそれぞれ延在し、ベルト幅方向に配列されている。なお、図2では、心線11のベルト厚み方向の中心位置をピッチラインPLとして記載している。このピッチラインPLとは、歯付ベルト10が歯付プーリ50の外周に沿って曲げられてもベルト長手方向に伸縮せずに同じ長さを保つ、歯付ベルト10のベルト長手方向の基準線である。
各心線11は、背部12に、ベルト長手方向に沿って、ベルト幅方向に所定の間隔dを空けて並列に埋設されている。即ち、心線11は、図3に示すように、背部12に、ベルト幅方向に所定の間隔dを空けて配列されている。より詳細には、ベルト幅方向に隣り合う心線11と心線11との間隔dの合計値の、ベルト幅Wに対する割合(%)が、13%以上50%以下の範囲になるように、心線11は背部12に埋設されているのが好ましい。なお、ベルト幅方向に隣り合う心線11と心線11との間隔dの合計値には、歯付ベルト10の端と心線11との間隔も含まれる(両端部分)。即ち、ベルト幅方向に隣り合う心線11と心線11との間隔dの合計値は、「ベルト幅W」の値から「心線径Dの合計(心線径D×心線の本数)」の値を減算した値である。従って、ベルト幅方向に隣り合う心線11と心線11との間隔d(心線11同士の間隔d)の合計値の、ベルト幅Wに対する割合(%)は、下記「数1」で算出した値である。
・各心線11の直径D=1.5mm以上(好ましくは2.3~7.0mm)
・各心線11の強力=2.0kN以上(好ましくは7.0~40kN)
・心線11のピッチP11=1.8mm以上(好ましくは2.8~8.5mm)
・心線11同士の間隔d=0.2~3.0mm(好ましくは0.3~1.7mm)
・心線11同士の間隔dの合計値の、ベルト幅Wに対する割合=13~50%(好ましくは13~31%)
・ベルト歯底部14からPLまでの距離PLD=1.35~4.50mm
背部12、複数のベルト歯13、および、カバー層121は、熱可塑性エラストマーで一体的に形成されている。背部12、複数のベルト歯13、および、カバー層121を構成する熱可塑性エラストマーは、例えば、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー等であってもよく、またこれらの2種以上を組み合わせたものであってもよい。特には、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好適に用いられる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを構成するポリウレタンの種類としては、ポリエーテル型ポリウレタン、ポリエステル型ポリウレタン、又は、ポリカーボネート型ポリウレタンであってもよい。熱可塑性エラストマーの硬度は30~70°(JIS K6253:2012に準拠,D型硬度計で測定)であってもよく、好ましくは40~70°、さらに好ましくは50~60°である。
歯付プーリ50は、図1及び図2に示すように、歯付ベルト10のベルト歯13に噛合するように外周に設けられた複数のプーリ歯53と、隣接する2つのプーリ歯53の間に形成される複数のプーリ歯底部54とを有する。
また、心線11が全面的に熱可塑性エラストマーに埋設されていることから、心線11がベルト歯底部14の表面と接したり露出したりする部分がなく、心線11(スチール繊維を含む撚りコード)と水分との接触を妨げられるので、水分に対する防錆性を確保することができる。
次いで、歯付ベルト10の製造方法の一例について説明する。
歯付ベルト10は、例えば、図5に示すような製造装置60により製造される。製造装置60は、成形ドラム61と、成形ドラム61の上下に近接して配置されたプーリ62,63と、成形ドラム61と水平方向に対向して配置されたプーリ64と、プーリ62~64に巻回された無端状の金属バンドである押圧バンド65と、熱可塑性エラストマーを押し出す押出ヘッド66と、心線供給装置(図示略)と、カバー層用シート供給装置(図示略)とを有する。
熱可塑性エラストマー1:ポリエステル型ポリウレタン系熱可塑性エラストマー[Covestro製Desmopan 3055DU]
熱可塑性エラストマー2:ポリエーテル型ポリウレタン系熱可塑性エラストマー[Covestro製Desmopan 9852DU]
熱可塑性エラストマー3:ポリアミド系熱可塑性エラストマー[(株)T&K TOKA製TPAE-617C]
心線1:スチールコード、素線84本、直径2.5mm、強力7.2kN
心線2:スチールコード、素線84本、直径3.3mm、強力11kN
心線3:スチールコード、素線133本、直径4.3mm、強力22kN
心線4:スチールコード、素線133本、直径6.4mm、強力36kN
心線5:スチールコード、素線49本、直径1.6mm、強力3.0kN
(歯付ベルトの強力)
実施例1~41、比較例1~14、及び、参考例1~6に係る各歯付ベルトから、試験片を採取し、各試験片について、アムスラー引張試験機を用いて引張試験(引張速度50mm/min)を行い、歯付ベルトが破断する強度(破断強度)を測定し、単位幅あたりの破断強度を算出してベルト強力(kN/mm)とした。試験片の寸法は、実施例1~13、40、41、比較例1~8、及び、参考例1、2、6では幅20mm、長さ500mm、実施例14~38、比較例9~14、及び、参考例3~5では幅25mm、長さ500mmとした。また、実施例39では幅35mm、長さ500mmとした。
実施例1~41、比較例1~14、及び、参考例1~6に係る各歯付ベルトの防錆性を確認するため、塩水噴霧試験を行った。なお、比較例1~4は歯付ベルトが同一物であるので、代表して比較例4の歯付ベルトを試験体とした。同様に、比較例5~8では代表して比較例8、比較例9~11では代表して比較例11、比較例12~14では代表して比較例14、の歯付ベルトを試験体とした。
また、表1~表11の「防錆性」の評価において、「◎」は錆の発生がないこと、「○」は実用的な耐久寿命に問題のない程度(強力低下率5%以下)の錆が生じたこと、「×」は実用不可能な程度(強力低下率5%超え)に顕著に錆が生じたことを意味する。
また、ベルト強度測定用の試験片の寸法は、実施例1~13、40、41、比較例1~8、及び、参考例1、2、6では幅20mm、長さ750mm、実施例14~38、比較例9~14、及び、参考例3~5では幅25mm、長さ750mmとした。また、実施例39では幅35mm、長さ750mmとした。
実施例1~41、比較例4、8、11、14、及び、参考例1~6に係る各歯付ベルトから試験片10xを採取し、図6に示すように、試験片10xの両端に錘71及び錘72をそれぞれ吊り下げて、走行試験機70の駆動プーリ73、従動プーリ74及び平プーリ75(直径=160mm)に巻回した。そして、所定の移動距離で、120万サイクル(図6に示す矢印の方向の1往復で1サイクル)で繰り返し走行を行い、走行試験後のベルト歯及びベルト歯底部の状態を評価した(表1~表11の「ベルト歯の状態」「ベルト歯底部の状態」の項目参照)。表1~表11の「ベルト歯の状態」および「ベルト歯底部の状態」の評価において、「◎」は摩耗がないこと、「○」は実用的な耐久寿命に問題のない程度の摩耗が生じたこと、「×」は実用不可能な程度に顕著に摩耗が生じたことを意味する。
〈表1における比較検証〉
表1では、特許文献4に記載の歯付ベルトと同等のスケール(ベルト歯のピッチ14mm、ベルト幅20mm:歯型G14M 図7参照)で、同等の心線1(直径D=2.5mm、強力7.2kN)を用いた歯付ベルトについて、(A)心線が歯底部の表面(または補強布)と接する位置にある歯付ベルトを用い、プーリ歯の先端とベルト歯底部との間の間隙Sを設ける歯付ベルト伝動装置(特許文献4の実施例1、3、6、20~22)と、(B)心線の内周側にカバー層を設けた歯付ベルトにおいて、間隙Sを設けずベルト歯底部がプーリ歯と接触する歯付ベルト伝動装置と、(C)上記(A)の歯付ベルトにおいて、間隙Sを設けずベルト歯底部がプーリ歯と接触する歯付ベルト伝動装置と、を比較するために、実施例1~3および比較例1~8の歯付ベルトの構成を記載している。
実施例1~3の歯付ベルト伝動装置は、上記(B)の心線の内周側にカバー層を設けた歯付ベルトにおいて、間隙Sを設けずベルト歯底部がプーリ歯と接触する態様であり、カバー層の厚みを0.2mm(実施例1)、0.5mm(実施例2)、0.8mm(実施例3)として変量している。いずれの歯付ベルトも、塩水噴霧試験では心線に錆が発生せず、ベルト強力の低下も小さく、防錆性に優れていた。走行性能については、実施例1および実施例3では、設定張力が低い(7.0kN、8.0kN)条件ではBランクであったが、高張力(11.2kN)条件ではCランクであった。それに対し、実施例2では、低張力(7.0kN)条件ではAランクであり、高張力(8.0kN、11.2kN)条件でもBランクであった。
比較例1~4の歯付ベルトは、心線(スチールコード)の内周側のカバー層が無く、ベルト歯底部を含む内周面が補強布で覆われた態様である。これらの歯付ベルトでは、心線がベルト歯底部表面(補強布)と接する位置にある。塩水噴霧試験では、心線に錆が発生し、ベルト強力の低下も見られ、防錆性が得られなかった。これらの歯付ベルトでは、補強布によって心線はベルト歯底部表面には露出していないが、水分を吸収した補強布と接するため、心線(スチールコード)に錆が生じた。この態様の歯付ベルトは、塩水(水分)に対する心線の防錆性に不利な態様である。
比較例5~8の歯付ベルトは、心線(スチールコード)の内周側にカバー層や補強布が無く、心線がベルト歯底部表面と接する位置にある態様である。塩水噴霧試験では、心線に錆が発生し、ベルト強力の低下も見られ、防錆性が得られなかった。これらの歯付ベルトでは、心線の一部がベルト歯底部表面と接しているため、ベルト歯底部表面に付着した水分により心線(スチールコード)に錆が生じた。この態様の歯付ベルトは、塩水(水分)に対する心線の防錆性に不利な態様である。
表2では、実施例2の歯付ベルト(心線のピッチ3.2mm、心線の本数6本、ベルト強力2.18kN/mm)において、心線のピッチを2.5mm(参考例1)、2.8mm(実施例5)、4.0mm(実施例4)として変量した場合の比較を行うため、実施例2、4、5および参考例1の歯付ベルトの構成を記載している。また、表2では、ベルト強力(心線の構成や配列密度)が実施例2と同等で、且つベルト歯のスケールが実施例2よりも大きい実施例6、7の歯付ベルトの構成も記載している。さらに、表2では、ベルト強力(心線の構成や配列密度)が実施例2と同等であるが、ベルト歯のスケールが実施例2よりも小さい参考例2の歯付ベルトの構成も記載している。
実施例2よりも心線ピッチを小さくして心線が7本に増加(心線配列の密度が増加)した実施例5ではベルト強力が増加した(ベルト強力2.53kN/mm)。
一方、実施例2よりも心線ピッチを大きくして心線が5本に減少(心線配列の密度が減少)した実施例4ではベルト強力が減少した(ベルト強力1.18kN/mm)。
実施例6、7は、実施例2の歯ピッチ14mm(歯型G14M)の歯付ベルトに対して、ベルト歯を歯ピッチ20mm(歯型G20M)、25mm(歯型G25M)のスケールに変更している。
参考例2は、実施例2の歯ピッチ14mm(歯型G14M)の歯付ベルトに対して、ベルト歯を歯ピッチ8mm(歯型S8M)のスケールに変更している。すなわち、実施例2と同等の心線を配列して同等のベルト強力を保持するが、ベルト歯のスケールが小さい例である。
表3では、実施例2の歯付ベルトにおいて、熱可塑性エラストマーをポリエステル型ポリウレタン系からポリエーテル型ポリウレタン系(実施例8)、ポリアミド系(実施例9)に変更した場合の比較を行うため、実施例2、8、9の歯付ベルトの構成を記載している。
また、表3では、実施例2の歯付ベルトにおいて、ポリエステル型ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの硬度を50°から30°(実施例10)、40°(実施例11)、60°(実施例12)、70°(実施例13)に変量した場合の比較を行うため、実施例2、10~13の歯付ベルトの構成を記載している。
実施例2の歯付ベルトにおけるポリエステル型ポリウレタン系熱可塑性エラストマーをポリエーテル型ポリウレタン系に変更した実施例8、ポリアミド系に変更した実施例9でも、ベルト強力は実施例2と同等であった。実施例8、9の歯付ベルトも、塩水噴霧試験では心線に錆が発生せず、ベルト強力の低下も小さく、防錆性に優れていた。走行性能についても、実施例2と同等に低張力(7.0kN)条件ではAランクであり、高張力(8.0kN、11.2kN)条件でもBランクであった。
実施例2よりも熱可塑性エラストマーの硬度を小さくした実施例10、11、および硬度を大きくした実施例12、13でも、ベルト強力は実施例2と同等であった。実施例10~13の歯付ベルトも、塩水噴霧試験では心線に錆が発生せず、ベルト強力の低下も小さく、防錆性に優れていた。
走行性能については、硬度を大きくした実施例12では、実施例2と同等に低張力(7.0kN)条件ではAランクであり、高張力(8.0kN、11.2kN)条件でもBランクであった。さらに硬度が大きい実施例13では、低張力(7.0kN)から高張力(11.2kN)の条件までBランクであった。一方、硬度を小さくした実施例11では、低張力(7.0kN)から高張力(11.2kN)の条件までBランクであった。さらに硬度が小さい実施例10では、低張力(7.0kN、8.0kN)条件でBランク、高張力(11.2kN)条件では100万サイクルで歯欠けが生じてCランクとなった。いずれの例も使用条件によっては実用可能な水準であった。
表4では、特許文献4に記載の歯付ベルトよりも高強力な仕様の歯付ベルトとして、ベルト歯のピッチ14mm、ベルト幅25mmで、心線2(直径D=3.3mm、強力11kN)を用いた歯付ベルト(歯型G14M 図7参照)について、上記の(A)~(C)の比較を行うため、実施例14~17および比較例9~11の歯付ベルトの構成を記載している。
実施例14~17の歯付ベルト伝動装置は、上記(B)の心線の内周側にカバー層を設けた歯付ベルトにおいて、間隙Sを設けずベルト歯底部がプーリ歯と接触する態様であり、カバー層の厚みを0.2mm(実施例14)、0.3mm(実施例15)、0.5mm(実施例16)、0.8mm(実施例17)として変量している。いずれの歯付ベルトも、塩水噴霧試験では心線に錆が発生せず、ベルト強力の低下も小さく、防錆性に優れていた。走行性能については、実施例14および実施例17では、低張力(7.0kN)から高張力(11.2kN)の条件までBランクであった。それに対し、実施例15および実施例16では、低張力(7.0kN、8.0kN)条件ではAランクであり、高張力(11.2kN)条件でもBランクであった。
比較例9~11の歯付ベルトは、心線(スチールコード)の内周側にカバー層や補強布が無く、心線がベルト歯底部表面と接する位置にある態様である。塩水噴霧試験では、心線に錆が発生し、ベルト強力の低下も見られ、防錆性が得られなかった。
表5では、実施例16の歯付ベルト(心線のピッチ3.9mm、心線の本数6本、ベルト強力2.65kN/mm)において、心線のピッチを4.8mm(実施例18)、3.3mm(参考例3)として変量した場合の比較を行うため、実施例16、18および参考例3の歯付ベルトの構成を記載している。また、表5では、ベルト強力(心線の構成や配列密度)が実施例16と同等で、且つベルト歯のスケールが実施例16よりも大きい実施例19、20の歯付ベルトの構成も記載している。さらに、表5では、ベルト強力(心線の構成や配列密度)が実施例16と同等であるが、ベルト歯のスケールが実施例16よりも小さい参考例4の歯付ベルトの構成も記載している。
実施例16よりも心線ピッチを大きくして心線が5本に減少(心線配列の密度が減少)した実施例18ではベルト強力が減少した(ベルト強力2.20kN/mm)。
実施例19、20は、実施例16の歯ピッチ14mm(歯型G14M)の歯付ベルトに対して、ベルト歯を歯ピッチ20mm(歯型G20M)、25mm(歯型G25M)のスケールに変更している。
参考例4は、実施例16の歯ピッチ14mm(歯型G14M)の歯付ベルトに対して、心線の構成や配列密度を同等にしたまま、ベルト歯のスケールを小さくした歯ピッチ8mm(歯型S8M)の歯付ベルトとしている。すなわち、実施例16とベルト強力が同等であるが、ベルト歯のスケールが小さい例である。
表6では、実施例16の歯付ベルトにおいて、熱可塑性エラストマーをポリエステル型ポリウレタン系からポリエーテル型ポリウレタン系(実施例21)、ポリアミド系(実施例22)に変更した場合の比較を行うため、実施例16、21、22の歯付ベルトの構成を記載している。
また、表6では、実施例16の歯付ベルトにおいて、ポリエステル型ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの硬度を50°から30°(実施例23)、40°(実施例24)、60°(実施例25)、70°(実施例26)に変量した場合の比較を行うため、実施例16、23~26の歯付ベルトの構成を記載している。
実施例16の歯付ベルトにおけるポリエステル型ポリウレタン系熱可塑性エラストマーをポリエーテル型ポリウレタン系に変更した実施例21、ポリアミド系に変更した実施例22でも、ベルト強力は実施例16と同等であった。実施例21、22の歯付ベルトも、塩水噴霧試験では心線に錆が発生せず、ベルト強力の低下も小さく、防錆性に優れていた。走行性能についても、実施例16と同等に低張力(7.0kN、8.0kN)条件ではAランクであり、高張力(11.2kN)条件でもBランクであった。
実施例16よりも熱可塑性エラストマーの硬度を小さくした実施例23、24、および硬度を大きくした実施例25、26でも、ベルト強力は実施例16と同等であった。実施例23~26の歯付ベルトも、塩水噴霧試験では心線に錆が発生せず、ベルト強力の低下も小さく、防錆性に優れていた。
走行性能については、硬度を大きくした実施例25では、実施例16と同等に低張力(7.0kN、8.0kN)条件ではAランクであり、高張力(11.2kN)条件でもBランクであった。さらに硬度が大きい実施例26では、低張力(7.0kN)条件ではAランクであり、高張力(8.0kN、11.2kN)条件でもBランクであった。一方、硬度を小さくした実施例24では、低張力(7.0kN)条件ではAランクであり、高張力(8.0kN、11.2kN)条件でもBランクであった。さらに硬度が小さい実施例23では、低張力(7.0kN、8.0kN)条件でBランク、高張力(11.2kN)条件では100万サイクルで歯欠けが生じてCランクとなった。いずれの例も使用条件によっては実用可能な水準であった。
表7では、さらに高スケールで高強力な仕様の歯付ベルトとして、ベルト歯のピッチ20mm、ベルト幅25mmで、心線3(直径D=4.3mm、強力22kN)を用いた歯付ベルト(歯型G20M 図7参照)について、上記の(A)~(C)の比較を行うため、実施例27~29および比較例12~14の歯付ベルトの構成を記載している。
実施例27~29の歯付ベルト伝動装置は、上記(B)の心線の内周側にカバー層を設けた歯付ベルトにおいて、間隙Sを設けずベルト歯底部がプーリ歯と接触する態様であり、カバー層の厚みを0.2mm(実施例27)、0.5mm(実施例28)、1.0mm(実施例29)として変量している。いずれの歯付ベルトも、塩水噴霧試験では心線に錆が発生せず、ベルト強力の低下も小さく、防錆性に優れていた。走行性能については、実施例27および実施例29では、低張力(7.0kN)から高張力(11.2kN)の条件までBランクであった。それに対し、実施例28では、低張力(7.0kN)から高張力(11.2kN)の条件までAランクであった。
比較例12~14の歯付ベルトは、心線(スチールコード)の内周側にカバー層や補強布が無く、心線がベルト歯底部表面と接する位置にある態様である。塩水噴霧試験では、心線に錆が発生し、ベルト強力の低下も見られ、防錆性が得られなかった。
表8では、実施例28の歯付ベルト(心線のピッチ6.0mm、心線の本数4本、ベルト強力3.67kN/mm)において、心線のピッチを7.3mm(実施例30)、4.9mm(実施例31)として変量した場合の比較を行うため、実施例28、30、31の歯付ベルトの構成を記載している。また、表8では、ベルト強力(心線の構成や配列密度)が実施例28と同等で、且つベルト歯のスケールが実施例28よりも大きい実施例32の歯付ベルトの構成も記載している。さらに、表8では、ベルト強力(心線の構成や配列密度)が実施例28と同等であるが、ベルト歯のスケールが実施例28よりも小さい参考例5の歯付ベルトの構成も記載している。
実施例28よりも心線ピッチを小さくして心線が5本に増加(心線配列の密度が増加)した実施例31ではベルト強力が増加した(ベルト強力4.48kN/mm)。
一方、実施例28よりも心線ピッチを大きくして心線が3本に減少(心線配列の密度が減少)した実施例30ではベルト強力が減少した(ベルト強力2.75kN/mm)。
実施例32は、実施例28の歯ピッチ20mm(歯型G20M)の歯付ベルトに対して、ベルト歯を歯ピッチ25mm(歯型G25M)のスケールに変更している。
参考例5は、実施例28の歯ピッチ20mm(歯型G20M)の歯付ベルトに対して、心線の構成や配列密度を同等にしたまま、ベルト歯のスケールを小さくした歯ピッチ8mm(歯型S8M)の歯付ベルトとしている。すなわち、実施例28とベルト強力が同等であるが、ベルト歯のスケールが小さい例である。
表9では、実施例28の歯付ベルトにおいて、熱可塑性エラストマーをポリエステル型ポリウレタン系からポリエーテル型ポリウレタン系(実施例33)、ポリアミド系(実施例34)に変更した場合の比較を行うため、実施例28、33、34の歯付ベルトの構成を記載している。
また、表9では、実施例28の歯付ベルトにおいて、ポリエステル型ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの硬度を50°から30°(実施例35)、40°(実施例36)、60°(実施例37)、70°(実施例38)に変量した場合の比較を行うため、実施例28、35~38の歯付ベルトの構成を記載している。
実施例28の歯付ベルトにおけるポリエステル型ポリウレタン系熱可塑性エラストマーをポリエーテル型ポリウレタン系に変更した実施例33、ポリアミド系に変更した実施例34でも、ベルト強力は実施例28と同等であった。実施例33、34の歯付ベルトも、塩水噴霧試験では心線に錆が発生せず、ベルト強力の低下も小さく、防錆性に優れていた。走行性能についても、実施例28と同等に低張力(7.0kN)から高張力(11.2kN)の条件までAランクであった。
実施例28よりも熱可塑性エラストマーの硬度を小さくした実施例35、36、および硬度を大きくした実施例37、38でも、ベルト強力は実施例28と同等であった。実施例35~38の歯付ベルトも、塩水噴霧試験では心線に錆が発生せず、ベルト強力の低下も小さく、防錆性に優れていた。
走行性能については、硬度を大きくした実施例37では、実施例28と同等に低張力(7.0kN)から高張力(11.2kN)の条件までAランクであった。さらに硬度が大きい実施例38では、低張力(7.0kN、8.0kN)条件ではAランクであり、高張力(11.2kN)条件でもBランクであった。一方、硬度を小さくした実施例36では、低張力(7.0kN、8.0kN)条件ではAランクであり、高張力(11.2kN)条件でもBランクであった。さらに硬度が小さい実施例35では、低張力(7.0kN、8.0kN)条件でBランク、高張力(11.2kN)条件では100万サイクルで歯欠けが生じてCランクとなった。いずれの例も使用条件によっては実用可能な水準であった。
表10では、さらに高強力な仕様の歯付ベルトとして、ベルト歯のピッチ20mm、ベルト幅35mmで、心線4(直径D=6.4mm、強力36kN)を用いた、実施例39の歯付ベルト(歯型G20M)の構成を記載している。
実施例39の歯付ベルト伝動装置は、カバー層の厚みを0.5mmとした実施例28に準じた態様であり、心線の構成と配列を変更している。
実施例39の歯付ベルトは心線ピッチ8.1mm(心線の本数4本、ベルト強力4.11kN/mm)としている。実施例39の歯付ベルトも、塩水噴霧試験では心線に錆が発生せず、ベルト強力の低下も小さく、防錆性に優れていた。走行性能については、低張力(7.0kN)から高張力(11.2kN)の条件までAランクであった。
表11では、特許文献4に記載の歯付ベルトとベルト歯のスケールは同等(歯ピッチ14mm、歯型G14M)であるが、低強力な仕様の歯付ベルトとして、心線5(直径D=1.6mm、強力3.0kN)を用いた歯付ベルトについて、実施例40、41および参考例6の歯付ベルトの構成を記載している。
実施例40、41、参考例6の歯付ベルト伝動装置は、カバー層の厚みを0.5mmとした実施例2に準じた態様であり、心線の構成と配列を変更している。
実施例40の歯付ベルトは心線ピッチ2.1mm(心線の本数9本、ベルト強力1.35kN/mm)、実施例41の歯付ベルトは心線ピッチ1.8mm(心線の本数10本、ベルト強力1.50kN/mm)としている。
・歯付ベルトは、オープンエンド、エンドレスのいずれであってもよい。
10 歯付ベルト
11 心線
12 背部
121 カバー層
13 ベルト歯
14 ベルト歯底部
50 歯付プーリ
53 プーリ歯
54 プーリ歯底部
Claims (8)
- 背部と、
前記背部に、ベルト長手方向に埋設された、スチール繊維を含む撚りコードからなる心線と、
前記背部の内周側に、前記ベルト長手方向に沿って形成された、複数のベルト歯と、
前記ベルト歯間に形成されるベルト歯底部と前記心線との間に設けられた、カバー層と、を備えた歯付ベルトであり、
前記心線の強力は、2.0kN以上であり、
前記心線は、ベルト幅方向に所定の間隔を空けて配列されており、前記ベルト幅方向に隣り合う前記心線同士の間隔及び当該歯付ベルトの端と前記心線との間隔の合計値の、ベルト幅に対する割合が、13~31%の範囲内にあり、
前記カバー層は、厚みが0.2~1.0mmの範囲内であり、
前記背部、前記ベルト歯、及び、前記カバー層は、熱可塑性エラストマーで一体的に形成されていることを特徴とする、歯付ベルト。 - 前記ベルト歯間のピッチが14mm以上であり、前記ベルト歯の高さが5mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の歯付ベルト。
- ベルト幅1mmあたりのベルト強力が1kN以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯付ベルト。
- 前記カバー層の厚みは、0.4~0.6mmの範囲内であることを特徴とする、請求項1~3の何れかにに記載の歯付ベルト。
- 前記ベルト歯間に噛合するように外周に複数のプーリ歯が形成された、複数の歯付プーリの間に、
前記ベルト歯の先端部が、前記プーリ歯間に形成されるプーリ歯底部に接触し、
かつ、前記プーリ歯の先端部が、前記ベルト歯底部に接触するように巻き掛けられることを特徴とする、請求項1~4の何れかに記載の歯付ベルト。 - 当該歯付ベルトにかかる張力が、外的要因により変動し、常態で0.30kN/mm以上であり、最大で0.80~1.10kN/mmとなる環境で使用される、請求項5に記載の歯付ベルト。
- 請求項1~4の何れかに記載の歯付ベルトと、
当該歯付ベルトの前記ベルト歯間に噛合するように、外周に複数のプーリ歯が形成された、複数の歯付プーリと、を備え、
前記ベルト歯の先端部が、前記プーリ歯間に形成されるプーリ歯底部に接触し、かつ、前記プーリ歯の先端部が、前記ベルト歯底部に接触するように、前記複数の歯付プーリ間に巻き掛けられ、噛み合い伝動を行うことを特徴とする、歯付ベルト伝動装置。 - 当該歯付ベルトにかかる張力が、外的要因により変動し、常態で0.30kN/mm以上であり、最大で0.80~1.10kN/mmとなる環境で使用される、請求項7に記載の歯付ベルト伝動装置。
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