JP7223384B1 - Lipomyces属酵母を利用した油脂の製造方法 - Google Patents

Lipomyces属酵母を利用した油脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、マスプロダクション化が可能であり、かつ、低コストな代替パーム油の製造方法の製造方法を提供することを目的とする。本発明の油脂の製造方法は、Lipomyces属酵母を培養する工程Aと;Lipomyces属酵母を破砕して乳化液を得る工程Bと;前記乳化液を、不織布又は織布に透過させることにより残渣と液体に分離する工程Cと;前記残渣中の前記油脂を溶媒中に溶解させる工程Dと;前記溶媒を揮発させて前記油脂を回収する工程Eとを有する。前記溶媒は、n-ヘキサン:エタノール=2:1~5:1の混合溶媒である。前記不織布又は織布は、平均孔径が0.5μm以上10μm以下であり、通気度が2 cm3/(cm2・s)以上45 cm3/(cm2・s)以下であることが好ましい。

Description

本発明は、Lipomyces属酵母を利用したパーム油類似油脂の製造方法に関する。
パーム油は、アブラヤシの果実から得られる常温で固体の植物油である。パーム油は、飽和脂肪酸を多く含有し、パルミチン酸及びオレイン酸が脂肪酸の約8割を占めることを特徴としている。パーム油の用途としては、食用油以外に、マーガリン、ショートニング又は石鹸の原料が知られている。また、パーム油は、即席フライ麺又はポテトチップスのようなスナック菓子の揚げ油としても利用されている。
パーム油は、世界で最も生産されている植物油であり、2015年には世界全体で6256万トンのパーム油が生産されている。アブラヤシは、高温多湿の熱帯地域で育つ植物で、原産国は西アフリカ及び中南米であるが、現在、パーム油生産の80%以上はマレーシアとインドネシアで行われている。アブラヤシは、1年を通して実をつけるので単位面積当たりの収穫量が他の植物油原料よりはるかに高く、大豆油又はなたね油と比べて8~10倍もの生産が可能である。そのため、パーム油の価格は、他の植物油脂より安く、安定供給が可能なため、多くの国々がパーム油を輸入している。
アブラヤシが育つのは赤道直下の高温多湿の熱帯地方のみであるが、生育条件が熱帯雨林の分布と重なっている。そのため、アブラヤシプランテーションを開発するためには、熱帯雨林を伐採する他なく、毎年多くの熱帯雨林が伐採によって消失している。また、プランテーション開発時には大規模な森林火災も発生している。このような熱帯雨林の消失によって、そこに住む希少な野生動物が絶滅の危機に瀕している。
さらに、急速なパーム油需要の拡大に伴い、労働者が劣悪な労働環境におかれたり、土地開発において地域住民と開発業者との衝突を生じたりするなど、パーム油は、地球規模の環境問題のみならず、労働問題及び人権問題を引き起こす原因にもなっている。
こうしたことから、近年、パーム油の代替油脂が模索されている。油脂産生酵母であるLipomyces属酵母は、図1に示されるように、パーム油に脂肪酸組成が近似する油脂を産生することが知られている。Lipomyces属酵母が産生する油脂は、物理的性質もパーム油に類似しており、環境リスク、気候変動リスク及び持続可能性の観点から、代替パーム油として期待されている。
Lipomyces属酵母が産生する油脂は、その大部分が菌体内に蓄積されることから、菌体から油脂を回収する方法として、乾燥菌体又は湿菌体をビーズ等を用いて破砕し、破砕物中に含まれる油脂を有機溶媒で抽出し、抽出液を濃縮して油脂を得る手法が主に用いられてきた(非特許文献1)。
一方、乳化油を水と油に分離する方法として、油水分離フィルター又は不織布が知られている。特許文献1及び2は、水と油とを含む混合液体が流入する一面と、この一面に対向する他面との間を貫通する多数の気孔が繊維間に形成された不織布を含む油水分離フィルターを開示している。
特許文献3は、表面が疎水性を有する不織布又は織布等の材料の表面を親油性の被膜で被覆した油水分離材を開示している。
特開2019-42707号公報 特開2020-138195号公報 特開2012-91168号公報
Kyle, V. Probst, et al., Evaluation of Green Solvents; Oil Extraction from Oleaginous Yeast Lipomyces starkeyi Using Cyclopentyl Methyl Ether (CPME). Biotechnology Progress. 2017; 33:1096-1103
Lipomyces属酵母を利用する代替パーム油(パーム油類似油脂)製造方法の工業化/実用化を目指す上で、マスプロダクション化が必要となる。しかし、従来の実験室レベルで行われてきた代替パーム油の製造方法は、湿菌体からの油脂の抽出にクロロホルム又はメタノールのような食用油脂の生産に使用できない有機溶媒を用いる方法がほとんどである。我が国では、食用油脂の生産に使用可能な有機溶媒としてn-ヘキサンがあるが、後述するように湿菌体からのn-ヘキサン抽出による油脂回収率は低い。そのため、n-ヘキサンにより抽出する場合は、菌体を分離し、乾燥酵母菌体を調製して、これを破砕してn-ヘキサンで油脂を抽出する手法(乾式油脂抽出法)を用いる必要があった。
しかし、Lipomyces属酵母は油脂を含有することから、工業的スケールの遠心分離機(最大10,000 x g程度)によっては酵母菌体が均一に沈降せず、酵母菌体の回収が困難である。大量の酵母含有液を処理し、酵母菌体を均一に沈降させ得る高速遠心分離機を専用に作製することは、高額な設備投資及びランニングコストが発生するため、経済的に実用性が認められない。
また、乾燥酵母菌体を調製するための菌体の乾燥には真空凍結乾燥が好ましいが、大型の真空凍結乾燥機の利用は高額な設備投資及びランニングコストが発生する。また、バッチ式となるため、時間当たりの処理量にも限界がある。さらに、その後の乾燥酵母菌体の破砕についても、ボールミル等の乾式破砕機は、バッチ式が多く、耐溶剤仕様が必要などの欠点がある。一方、ジェットミル等の連続式の破砕方式でも、粘度の高い油脂によって詰まりが高頻度で発生し、連続的なプロセスを組むことが困難である。このため、乾式油脂抽出法は、代替パーム油製造方法のマスプロダクション化には適さない。
一方、酵母培養液から酵母菌体を回収せずに液体中でそのまま破砕処理すると、産生された油脂が酵母菌体から漏出し、乳化が起こる。この乳化は、大量の水分、酵母由来のタンパク質又は多糖類等の影響で生じると考えられる。乳化液からの油脂の分離及び回収は、有機溶媒又は脱乳化剤を利用した湿式油脂抽出法によっても困難であり、油脂回収率は著しく低い。すなわち、酵母湿菌体を破砕して得られる乳化液からは、代替パーム油を実用的レベルで回収することが不可能であった。
このように、Lipomyces属酵母を利用する従来の代替パーム油の製造方法は、いずれも食用油脂の製造方法としてのマスプロダクション化が困難であった。そのため、マスプロダクション化が可能であり、かつ、低コストである代替パーム油の製造方法の開発が望まれている。
本発明者等は、上記課題を開発すべく鋭意検討を重ねた。その結果、Lipomyces属酵母を培養した後、液体中で酵母菌体を破砕処理して乳化液とした後、不織布又は織布を使用して乳化液を濾過し、不織布又は織布上に回収された残渣から特定の有機溶媒(2種類の有機溶媒を特定の容積比で混合した有機溶媒)を使用して油脂を回収することにより、従来技術ではほぼ不可能に近かった乳化液からの代替パーム油の実用的回収が可能となることを本発明者等は見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的に、本発明は、
油脂の製造方法であって、
前記製造方法は、
Lipomyces属酵母を培養して油脂を産生させる工程Aと、
Lipomyces属酵母を破砕して乳化液を得る工程Bと、
前記乳化液を、不織布又は織布に透過させることにより残渣と液体に分離する工程Cと、
前記残渣中の前記油脂をn-ヘキサン及びエタノール中に分配させ、n-ヘキサン層を回収する工程Dと、
n-ヘキサンを揮発させて前記油脂を回収する工程Eとを有し、
n-ヘキサン及びエタノールの容積比は、n-ヘキサン:エタノール=2:1~5:1である製造方法に関する。
Lipomyces属酵母を液体中で破砕処理することにより生じる乳化液からは、有機溶媒を使用する溶媒抽出法、又は脱乳化剤を使用する分離法によっても、代替パーム油を実用的な回収率で回収することは不可能だった。しかし、乳化液を不織布又は織布、好ましくは特定の平均孔径及び通気度(JIS L 1096に規定される通気性試験のA法(フラジール法)に基づいて測定される通気度))を有する不織布又は織布に通じることにより、酵母菌体の残渣を液体と分離し得る。そして、特定の有機溶媒(n-ヘキサンとエタノールとの混合溶媒)を使用することにより、Lipomyces属酵母が産生した代替パーム油がn-ヘキサン中に溶解し、乳化液中の代替パーム油を効率よく回収することが可能となる。
前記不織布又は織布は、平均孔径が0.5μm以上10μm以下であり、通気度が2 cm3/(cm2・s)以上45 cm3/(cm2・s)以下であることが好ましい。
Lipomyces属酵母としては、油脂を産生するものであればよいが、特にLipomyces starkeyiが好ましい。
工程Cにおいて、乳化液を5kPa以上200kPa以下、好ましくは10kPa以上100kPa以下の圧力で前記不織布又は織布に透過させることが好ましい。
本発明の油脂の製造方法によれば、食用又は化粧品原料等の用途に利用し得る代替パーム油を低コストで安定的に大量に製造し得る。
Lipomyces starkeyiが産生する油脂(代替パーム油)と、パーム油、なたね油及び大豆油の脂肪酸組成とを比較するグラフを示す。 Lipomyces starkeyiの顕微鏡写真と、ホモジナイザーによって酵母菌体を破砕した後の顕微鏡写真及び生じた乳化液の外観写真を示す。
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
本発明の油脂の製造方法は、
Lipomyces属酵母を培養して油脂を産生させる工程Aと、
Lipomyces属酵母を破砕して乳化液を得る工程Bと、
前記乳化液を、不織布又は織布に透過させることにより残渣と液体に分離する工程Cと、
前記残渣中の前記油脂をn-ヘキサン及びエタノール中に分配させ、n-ヘキサン層を回収する工程Dと、
n-ヘキサンを揮発させて前記油脂を回収する工程Eとを有する。
<工程A>
Lipomyces属酵母を培養し、代替パーム油(パーム油類似油脂)を産生させる。Lipomyces属酵母が産生する代替パーム油は、図1に示されるように、パーム油と脂肪酸組成が類似する。代替パーム油の脂肪酸組成は、培養条件による影響を受けにくい。Lipomyces属酵母の培養には、酵母に適した公知の培養方法を使用し得る。温度25~30℃、培養液1L当たり通気量1~3L/min、100~600 rpmで攪拌しながら培養を行うことが好ましい。工程Aにおいては、Lipomyces属酵母が4.0×108~4.0×109個/mLとなるまで培養を継続することが好ましい。
<工程B>
工程Aの後、Lipomyces属酵母を培養液のような液体中で破砕し、乳化液を調製する。Lipomyces属酵母の破砕は、工程Aにおいて使用された培養液中で行われてもよく、Lipomyces属酵母を培養液から回収し、別の液体へと移した後、当該液体中で行われてもよい。酵母菌体の破砕は、ジェットミル破砕機又は超音波ホモジナイザーのような公知の破砕装置を使用し得る。また、複数の破砕手段を併用してもよく、酵素処理と破砕装置を併用してもよい。工程Bにおいては、顕鏡を複数視野について行い、形を保った酵母菌体が確認されなくなるまで、酵母菌体の破砕を継続することが好ましい。
<工程C>
工程Bで調製された乳化液を、不織布又は織布に透過させることにより、酵母菌体を含む残渣と、水溶性液体に分離する。工程Cで使用される不織布又は織布は、平均孔径が0.5μm以上10μm以下であり、通気度(JIS L 1096に規定される通気性試験のA法(フラジール法)に基づいて測定される通気度))が2 cm3/(cm2・s)以上45 cm3/(cm2・s)以下であることが好ましい。通気度が2 cm3/(cm2・s)未満では透過速度が著しく低下し、除去したい水溶性成分が透過しにくくなる。一方、通気度が45 cm3/(cm2・s)超では、乳化液が素通りして菌体残渣を捕集しにくくなる。不織布又は織布は、平板状であってもよく、筒状であってもよい。また、不織布又は織布には、疎水性膜のような特別な被膜を形成する必要はなく、ポリプロピレン又はポリエステルのような材質から構成される市販品を使用し得る。さらに、コストの観点から、同程度の性能であれば織布よりも不織布を使用することがより好ましい。
乳化液は、5kPa以上200kPa以下、好ましくは10kPa以上100kPa以下の圧力で不織布又は織布に透過させることが好ましい。5kPa未満では乳化液の透過に時間がかかり、200kPa超では不織布又は織布へ物理的ダメージが生じ、生じた間隙から本来阻止する物質を透過させてしまうという問題を生じやすい。
乳化液を、不織布又は織布に透過させることにより、酵母菌体の残渣は不織布又は織布上に捕集され、液体中の水及び水溶性の成分は不織布又は織布を通過する。Lipomyces属酵母が産生した代替パーム油は、酵母菌体の残渣と共に不織布又は織布上に捕集される。酵母菌体を含有する液体をそのまま(菌体を破砕処理せずに)不織布又は織布に透過させると、菌体粒子径の粒度分布が幅広いため、不織布又は織布がすぐに目詰まりを起こす。しかし、乳化液であれば破砕によって粒度分布範囲が狭まるため、不織布又は織布の目詰まりの頻度が抑制される。本発明の代替パーム油の製造方法は、工程Cにおいて乳化液を、不織布又は織布に透過させることにより、菌体残渣と共に代替パーム油を不織布又は織布上に捕集することを第一の技術的特徴とする。
<工程D>
工程Cにおいて不織布又は織布上に捕集された残渣は、n-ヘキサン:エタノール=2:1~5:1(容積比)の混合溶媒と混合される。このとき、残渣中に含有されている代替パーム油は、溶媒層2層中のn-ヘキサン層に溶解する。代替パーム油の回収率を向上させるためには、撹拌等の混和を行い、残渣を混合溶媒中によく分散させることが好ましい。残渣と混合された混合溶媒を静置すると、残渣が沈殿し、n-ヘキサン(上層)とエタノールと水の混合層(下層)に分離するので、上層を回収することにより、代替パーム油が溶解したn-ヘキサンのみを回収可能である。
アブラヤシの果実を圧搾し、パーム油を抽出する際には、抽出溶媒としてn-ヘキサンを使用することが一般的である。本発明の代替パーム油の製造方法は、工程Dにおいてn-ヘキサン単独ではなく、n-ヘキサン:エタノール=2:1~5:1(容積比)の混合溶媒を抽出溶媒として使用することを、第二の技術的特徴としている。非親水性溶媒であるn-ヘキサンと、親水性溶媒であるエタノールとを特定割合で混合した混合溶媒を抽出溶媒として工程Dで使用することにより、n-ヘキサンの単独使用と比較して代替パーム油の回収率を大幅に向上させることが可能となる。
<工程E>
工程Dにおいて回収された上層液から、n-ヘキサンを揮発させて代替パーム油を回収する。n-ヘキサンを揮発させる方法としては、減圧蒸留のような公知の方法を利用し得る。
回収された代替パーム油は、必要に応じて脱酸処理、脱ガム処理、又は脱臭処理のような公知の精製処理を行うことも可能である。一方、使用された溶媒は、必要に応じて回収し、再利用が可能である。
実施形態1:工程Bにおいて酵母を精製水中で破砕する実施形態
[参考例]
<工程A>
窒素源として酵母エキスを5w/v%、炭素源としてD(+)-グルコースを10w/v%を成分とする培地1.5 Lを調製し、6N水酸化ナトリウム水溶液を使用してpHを6.0に調整した。pH調整後の培地にLipomyces starkeyiを添加し、微生物培養装置(エイブル株式会社、BMS-C(培養槽容積5L))を使用して30℃で7日間好気培養した(攪拌条件:600rpm、通気量:3L/min)。培地のD(+)-グルコース濃度を1日4回測定し、10w/v%を維持するようにD(+)-グルコースを添加した。
<工程B>
培養終了後、培養液を遠心分離(10,000 xg、60分)することにより、湿菌体を回収した。均一に沈降せず、浮遊している菌体については、薬匙で掬い取ることで回収した。回収された湿菌体を真空凍結乾燥することにより、乾燥菌体を得た。乾燥菌体重量として10w/v%となるように、乾燥菌体をチューブ内で精製水中に分散させ、Lipomyces starkeyiを含有する液体(模擬的な培養液)15mLを調製した。この液体は、工程Aにおける培養終了の目安となるLipomyces starkeyi菌体濃度を想定している。この液体をグルカナーゼ(天野エンザイム株式会社製ツニカーゼSD-FN)を0.5%(w/v)添加して、50℃で一晩酵素処理した後、超音波ホモジナイザー(ワケンビーテック株式会社製QSONICA Q500)を使用し、Lipomyces starkeyi菌体を湿式破砕処理した(40%出力、60分)。撹拌後の液体は、淡黄白色の均質な乳化液となった。
乳化液中の油脂回収率を計算するため、理論値の算出を行った。乳化液中の油脂を100%回収及び定量する手法がないため、乳化の有無に関わらず安定して存在しているトリグリセライドを指標に算出した。具体的には、トリグリセライドのガスクロマトグラフィー定量分析結果から油脂回収率を算出した。乳化液1mL中に含有されるトリグリセライド量を分析したところ、1.9%(w/v)であった。また、標品として乾燥酵母菌体からマルチビーズショッカー(安井器械株式会社)を用いて破砕及びn-ヘキサン抽出した油脂を上記と同様に分析したところ、油脂中のトリグリセライド含有率は82.7%(w/v)であった(その他、ジグリセリド、モノグリセリド、遊離脂肪酸が含まれ得る)。このことから、乳化液15 mLから得られる油脂重量(理論値)は、15×0.019/0.827=0.35(g)と算出される。
<工程C>
濾過部分直径47 mmの撹拌式セルに不織布を設置し、乳化液15 mLに対して、窒素ガスを利用した加圧濾過分離(圧力30kPa)を実施した。不織布としては、三井化学株式会社製SYNTEX(登録商標) nano 6(平均孔径5.6μm、フラジール通気度10 cm3/(cm2・s)/ポリプロピレン製メルトブローン不織布)を使用した。菌体残渣は不織布上に捕集され、液体は不織布を透過した。
<工程D>
不織布上に捕集された菌体残渣を薬匙を使って掻き集め、コニカルチューブに回収した。コニカルチューブ内にn-ヘキサン:エタノール=1:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加し、1分間撹拌を行い、その後15分間静置した。静置後、上層(n-ヘキサン層)をピペットを用いて回収した。
<工程E>
回収された上層をコニカルチューブに採取し、ドライサーモユニット(タイテック株式会社製DTU-1CN型)を用いて60分間90℃で加熱することにより、溶媒を揮発させた。容器内に残存した代替パーム油の重量を測定し、(測定値/理論値)×100=油脂回収率(%)を算出した。
[実施例1]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=2:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[実施例2]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=3:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[実施例3]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=5:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[比較例1]
工程Dにおいて、溶媒としてn-ヘキサン10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[比較例2]
工程Dにおいて、溶媒としてエタノール10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[比較例3]
工程Dにおいて、溶媒としてイソプロパノール10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[比較例4]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=10:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[比較例5]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=1:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[比較例6]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=2:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[比較例7]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=3:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[比較例8]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=5:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[比較例9]
工程Dにおいて、混合溶媒としてイソプロパノール:エタノール=1:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[比較例10]
工程Dにおいて、混合溶媒としてイソプロパノール:エタノール=2:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[比較例11]
工程Dにおいて、混合溶媒としてイソプロパノール:エタノール=3:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
[比較例12]
工程Dにおいて、混合溶媒としてイソプロパノール:エタノール=5:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作した。
<工程C及び工程Dを行わない比較例>
[比較例13]
参考例の工程Bの後、工程Cを行わず、乳化液に溶媒としてn-ヘキサン10mLを添加し、1分間撹拌した。その後15分間静置し、工程Dとして、溶媒層(上層)をピペットを用いて回収した。回収された溶媒層について、参考例の工程Eと同様に操作した。
[比較例14]
乳化液に溶媒としてエタノール10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例15]
乳化液に溶媒としてイソプロパノール10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例16]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=1:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例17]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=2:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例18]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=3:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例19]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=5:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例20]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=10:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例21]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=1:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例22]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=2:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例23]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=3:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例24]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=5:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例25]
乳化液に溶媒としてイソプロパノール:エタノール=1:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例26]
乳化液に溶媒としてイソプロパノール:エタノール=2:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例27]
乳化液に溶媒としてイソプロパノール:エタノール=3:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
[比較例28]
乳化液に溶媒としてイソプロパノール:エタノール=5:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例13と同様に操作した。
表1は、参考例、実施例1~3及び比較例1~28の油脂回収率(%)を示す。参考例及び実施例1~3は、油脂回収率が81.2%以上であり、特に実施例1及び2の油脂回収率は98%以上と非常に高い数値であった。また、油脂回収率は、n-ヘキサン:エタノール=1:1~5:1の範囲であれば80%以上となり、n-ヘキサン:エタノール=1.5:1~4:1の範囲であれば90%以上となることが確認された。
しかし、参考例及び実施例1~3と工程Dにおいて使用される溶媒が異なるだけの比較例1~12の油脂回収率(%)は、最高でも45.6%に過ぎなかった。このように、工程Dにおいて使用される溶媒の種類によって、油脂回収率が大きく変動することが確認された。
Figure 0007223384000001
一方、工程C及び工程Dを行わず、工程Bで得られた乳化液から溶媒を使用して代替パーム油の回収を試みた比較例13~28の油脂回収率は、最高でも17.1%であった。特に、実施例1~4と同じ混合溶媒を使用した比較例16~19の油脂回収率は、0~1.9%に過ぎなかった。
上述したように、アブラヤシの果実を圧搾し、パーム油を抽出する際には、抽出溶媒としてn-ヘキサンを使用することが一般的である。しかし、工程Bで得られた乳化液からn-ヘキサンを使用して代替パーム油を回収する場合(比較例13)には、油脂回収率は1.5%であった。また、工程Dにおいてn-ヘキサンを溶媒として使用する場合(比較例1)も、油脂回収率は43.5%であり、参考例及び実施例1~3の油脂回収率の半分程度の数値であった。
(不織布の種類による影響)
参考例及び実施例1~3では、工程Cにおいて平均孔径5.6μm、フラジール通気度10 cm3/(cm2・s)のポリプロピレン製メルトブローン不織布を使用したが、平均孔径が0.5μm以上10μm以下であり、通気度が2 cm3/(cm2・s)以上45 cm3/(cm2・s)以下であるポリプロピレン製メルトブローン不織布、例えば、三井化学株式会社製SYNTEX(登録商標) nano2(平均孔径2.2μm、フラジール通気度7.1 cm3/(cm2・s))、nano9(平均孔径7.0μm、フラジール通気度12 cm3/(cm2・s))を使用した場合にも、油脂回収率は参考例及び実施例1~3と同程度であった。また、上記範囲から外れる不織布を使用した場合、著しく透過速度が低下するか、油脂を含む菌体残渣が透過してしまい、回収率が0%となった。
(脱乳化剤の使用)
工程Bで得られた乳化液に対して、食品用脱乳化剤(三菱ケミカル株式会社製リョートーシュガーエステルP-1670(ショ糖脂肪酸エステル)/坂本薬品工業株式会社製SYグリスターMO-3S、SYグリスターMO-5S、SYグリスターMO-7S(いずれもオレイン酸ポリグリセリル))を0.1~1.0w/v%添加した。その後、乳化液を加熱又は遠心分離(6,000 xg)したが、液相が分離せず、溶媒層のみを採取することによって代替パーム油を回収することは不可能であった。
(ジェットミル破砕装置による破砕処理)
参考例1~3では、工程BにおいてLipomyces starkeyiを含有する液体を超音波ホモジナイザーによって撹拌し、Lipomyces starkeyi菌体を湿式破砕処理した。一方、Lipomyces starkeyiを含有する液体にジェットミル破砕機を使用して完全にLipomyces starkeyi菌体の破砕が確認できるまで破砕処理した実験例においても、油脂回収率(%)は参考例及び実施例1~3と同程度であった。
実施形態2:工程Bにおいて酵母を培養液中で破砕する実施形態
[実施例4]
<工程A>
参考例と同様にして、4.0×108~4.0×109個/mL となるまでLipomyces starkeyiを培養した。
<工程B>
培養終了後、高圧ホモジナイザー(株式会社常光製NAGS20)を使用し、培養液中のLipomyces starkeyi菌体を湿式破砕処理した(出力200MPa、10pass)。湿式破砕処理後の液体は、淡黄白色の均質な乳化液となった。なお、参考例と同様に、湿式破砕処理の前に、培養液にグルカナーゼ(天野エンザイム株式会社製ツニカーゼSD-FN)を0.5%(w/v)添加して、50℃で一晩酵素処理することにより、高圧ホモジナイザーによる湿式破砕処理に要する時間を短縮することが可能である。
<工程C~E>
その後、工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=2:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて参考例と同様に操作して代替パーム油を回収し、油脂回収率を算出した。
[実施例5]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=3:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
[実施例6]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=5:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
[比較例29]
工程Dにおいて、溶媒としてn-ヘキサン10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
[比較例30]
工程Dにおいて、溶媒としてエタノール10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
[比較例31]
工程Dにおいて、溶媒としてイソプロパノール10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
[比較例32]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=1:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
[比較例33]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=6:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
[比較例34]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=10:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
[比較例35]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=1:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
[比較例36]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=3:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
[比較例37]
工程Dにおいて、混合溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=10:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
[比較例38]
工程Dにおいて、混合溶媒としてイソプロパノール:エタノール=1:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
[比較例39]
工程Dにおいて、混合溶媒としてイソプロパノール:エタノール=3:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
[比較例40]
工程Dにおいて、混合溶媒としてイソプロパノール:エタノール=10:1(容積比)の混合溶媒10mLを使用する以外、すべて実施例4と同様に操作した。
<工程C及び工程Dを行わない比較例>
[比較例41]
参考例の工程Bの後、工程Cを行わず、乳化液に溶媒としてn-ヘキサン10mLを添加し、1分間撹拌した。その後15分間静置し、工程Dとして、溶媒層(上層)をピペットを用いて回収した。回収された溶媒層について、参考例の工程Eと同様に操作した。
[比較例42]
乳化液に溶媒としてエタノール10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
[比較例43]
乳化液に溶媒としてイソプロパノール10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
[比較例44]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=1:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
[比較例45]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=2:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
[比較例46]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=3:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
[比較例47]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=5:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
[比較例48]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=6:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
[比較例49]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:エタノール=10:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
[比較例50]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=1:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
[比較例51]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=3:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
[比較例52]
乳化液に溶媒としてn-ヘキサン:イソプロパノール=10:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
[比較例53]
乳化液に溶媒としてイソプロパノール:エタノール=1:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
[比較例54]
乳化液に溶媒としてイソプロパノール:エタノール=3:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
[比較例55]
乳化液に溶媒としてイソプロパノール:エタノール=10:1(容積比)の混合溶媒10mLを添加する以外、比較例41と同様に操作した。
表2は、実施例4~6及び比較例29~55の油脂回収率(%)を示す。実施例4~6は、油脂回収率が86.2%以上であり、特に実施例4及び5の油脂回収率は91.7%以上と非常に高い数値であった。また、油脂回収率は、n-ヘキサン:エタノール=2:1~5:1の範囲であれば86%以上となり、n-ヘキサン:エタノール=2:1~3:1の範囲であれば91%以上となることが確認された。なお、工程Bとして培養液中で酵母を破砕処理する比較例32の油脂回収率は、精製水中で酵母を破砕処理する参考例と比較して、同じ抽出溶媒(n-ヘキサン:エタノール=1:1)を使用したにも拘わらず低い値であった。
実施例4~6と工程Dにおいて使用される溶媒が異なるだけの比較例29~30、37の油脂回収率は43.9%以下であったが、比較例31、35~36、38~39の油脂回収率は70%以上であった。比較例35、38、39の油脂回数率は80%を超えており、特に、比較例38の油脂回収率は、実施例6の油脂回収率よりも高い値であった。
Figure 0007223384000002
しかし、工程Dにおいて、n-ヘキサンとイソプロパノール、又はイソプロパノールとエタノールを使用した場合、回収された代替パーム油は、黒色を呈する、異臭を発する、又は50℃以上に加熱した場合でも固体分を含有する等の欠点があり、代替パーム油としては適さない品質であった。この欠点は、培養液中の成分が代替パーム油に混入することに起因すると推察された。
また、エタノール又はイソプロパノールを単独で使用した比較例30又は31において回収された代替パーム油も、黒色を呈する、異臭を発する、又は50℃以上に加熱した場合でも固体分を含有する等の欠点があり、やはり食用油脂としては適さない品質であった。
このように、本発明の油脂の製造方法は、従来不可能であったLipomyces属酵母を含有する液体から、代替パーム油を効率よく回収することが可能であり、食用又は化粧品原料等の用途に利用し得る代替パーム油の工業的製造方法として有用である。

Claims (4)

  1. 油脂の製造方法であって、
    前記製造方法は、
    Lipomyces属酵母を培養して油脂を産生させる工程Aと、
    Lipomyces属酵母を破砕して乳化液を得る工程Bと、
    前記乳化液を、不織布又は織布に透過させることにより残渣と液体に分離する工程Cと、
    前記残渣中の前記油脂をn-ヘキサン及びエタノール中に分配させ、n-ヘキサン層を回収する工程Dと、
    n-ヘキサンを揮発させて前記油脂を回収する工程Eとを有し、
    n-ヘキサン及びエタノールの容積比は、n-ヘキサン:エタノール=2:1~5:1である、製造方法。
  2. 前記不織布又は前記織布は、平均孔径が0.5μm以上10μm以下であり、通気度が2 cm3/(cm2・s)以上45 cm3/(cm2・s)以下である、
    請求項1に記載の油脂の製造方法。
  3. 前記Lipomyces属酵母がLipomyces starkeyiである、
    請求項1に記載の油脂の製造方法。
  4. 前記工程Cにおいて、前記乳化液を5kPa以上200kPa以下の圧力で前記不織布又は前記織布に透過させる、
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の油脂の製造方法。
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