JP7222805B2 - 炭素質材料層を備えた複層薄板状成形品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば水素ガス・酸素ガスとの接触面積の大きい金属製の燃料電池用セパレータとするのに適した薄板の製造方法等に関するものである。
しかしながらステンレスの肉厚を薄くするには複数回以上の冷間圧延工程が必要であるが、冷間圧延工程で析出物が板貫通割れの起点となる可能性がある。更に、ステンレスは高強度であるためプレス成形時はスプリングバックやねじれ等、プレス不良が発生し易い等、指摘されている。
そのためプレス工程も複数回行う必要があるが、2回目以降のプレスの際は位置合わせが難しく、生産性の大幅な低下を招き、その改善が要求される。
しかしながら、チタンのヤング率は小さく、スプリングバックが起き易い等、ステンレスよりプレス加工しにくい。また、チタンは高価な材料である。
しかしながら、過冷却液相温度域は狭く、金属ガラスは限定された成分組成であるため高価であり、工業材料としては扱い難い欠点がある。
しかしながら、従来の技術では、そのような燃料電池用セパレータを低コストで能率的に製造することは極めて難しかった。
そこで、本発明は上記従来技術の欠点を解消するためになされたもので、導電性、耐積層強度、耐食性及び耐久性などに優れた高品質の、従来製造技術による急冷箔帯よりは遥かに厚肉板材が得られる超急冷遷移制御噴射法を用いた炭素質材料層を備えた複層薄板状成形品およびその製造方法を提供するものである。
前記基板の表端面に不動態層表層域が存在し、前記不動態層表層域を貫通して前記不動態層表層域下の前記非晶質金属と導通するよう凹凸を有する面の凸状部上の表層を含む凹凸を有する面の表層に存在し、且つ固溶することなく存在している導電A膜の一部分が表面に露出部を有し、
前記基板の表端面と対向する基板の裏面を覆うように、前記導電A膜とは異相の炭素質材料層、且つ付着積層の導電B膜を備えることを特徴とする炭素質材料層を備えた複層薄板状成形品である。
(記)
(1)目的とする3次元表面形状に対する反転表面形状を有する基材に、導電性材料Aを、前記基材の凹凸状部を有する面の表層の凹状部を含む前記基材の凹凸状部、又は前記基材の凹凸状部を有する面の表層の凹状部のみに積層して導電A膜を形成する。
(2)前記導電A膜が積層された3次元表面形状を有する基材を所望温度に昇温する。
(3)表層に不動態層を形成して耐食性を発揮する非晶質金属を構成する原料金属材料粉粒体を、火炎と共に噴射し、前記火炎の熱により溶融して形成された前記原料金属材料粉粒体の溶融物が、前記火炎内を飛行しつつ、前記火炎毎、冷媒により冷却されて基材表面に皮膜を形成する急冷溶射ガンを用い、前記原料金属材料粉粒体を溶解、且つ混合する。
(4)前記溶解、且つ混合した原料金属材料粉粒体が、基材(成形金型)に到達する以前から、原料金属材料粉粒体の周囲に向けて噴射された所望冷媒の噴流により原料金属材料粉粒体の冷却を開始する。
(5)所望の凝固状態又は半凝固状態に至った該原料金属材料粉粒体を、前記基材の微細な3次元表面形状の凹凸状部に凝着積層させ、その凹凸状部の凹部を充満させると共に、凹凸状部が埋設する積層厚さになるまで噴射吹付けを行い、凝着積層された非晶質金属の皮膜を形成する。
(6)所望の温度まで冷却する。
(7)冷却後、前記皮膜の表端面(凹凸状部)と対向する裏面に、炭素質材料層となる導電性材料Bと粘結剤の混合体又は導電性材料Bのみを、積層凝固させて導電B膜を形成する。
(8)前工程で混合体を用いて導電B膜を形成した場合には、前記導電B膜中の粘結剤を乾燥させて導電B膜を固化する。
(9)前記固化した導電B膜の背面を切削法、研削法、研磨法の面加工によって平滑化、又は、必要な形状を付与する。
(10)導電A膜、皮膜、導電B膜から成る積層体である炭素質材料層を形成した複層薄板状成形品を、基材から離型して回収する。
この本発明に係る炭素質材料層を備えた製品の薄板状成形品では、さらに凹凸状部を備えた微細な3次元表面形状の表面と、その反対側の裏面との間で接触抵抗がより低い薄板状成形品を、容易に製造することができ、さらに導電性材料にカーボンナノチューブなどの繊維材を含有し均一かつ強固に付着積層させることで柔軟性と強度を向上させる事が可能である。
この本発明に係る製造方法により、凹凸状部を備えた微細な3次元表面形状の表面とその反対側の裏面との間で接触抵抗がより低い薄板状成形品を、容易に製造することができる。
更には、加圧成形がいらない為、工程の簡素化を可能とし、工業上顕著な効果を奏するものである。
本実施態様に係る炭素質材料層を備えた製品である薄板状成形品は、その表面に凹凸状部を備える微細な3次元表面形状であることを特徴とし、図1に例示した超急冷遷移制御噴射装置(溶射ガン100)、或いは図2に例示した大型超急冷遷移制御噴射機用の溶射ガン110により製造することができる。図1中符号1は粉末供給管、2は冷却ガス供給管、4は冷却ガス噴射口、5は火炎噴射口、6は粉末噴射口、7は筐体、9は基材、Fは火炎、Gは冷却ガスである。
又、基材表面に、一旦溶融させた粉末材料の急冷皮膜を形成し、さらに基材から剥離させた急冷薄板の作製が可能で、非晶質になりやすい組成の粉末材料を使用する場合に非晶質の皮膜および薄板の作製に適しているが、非晶質になりにくい組成、或いは非晶質の形態を持たない組成の粉末材料を用いた場合には、微細な組織を有する結晶質の皮膜及び薄板が作製可能である。
具体的には、粉末材料は火炎に運ばれる飛行時に、その火炎中で完全に溶融し、基材への到達前から窒素ガスやミスト等の冷媒(冷却ガス)により急冷されていき、結果、基材の表面に皮膜として形成される。その皮膜は、原料の粉末材料の種類により非晶質になるもの、結晶質になるものの制御が可能である。
皮膜が形成される基材40の表面は、図3に示すような微細な3次元凹凸構造を有している。即ち、本実施態様における基材の皮膜形成面は、所望の皮膜表面を現出可能な形状に造形され、且つ、その凹部状幅P、及び凸部状幅Wの最小値が0.15mm、より微細には最小値が0.05mm(50μm)程度迄可能なパターンを有し、本実施態様では、このサイズに追随して皮膜表面が形成可能となっている。さらに、凸部の頂部と凹部の底部間の長さである凸部状高さDと、凸部状幅Wとの関係、D/Wが1.0を超える場合にも、皮膜の形状追随性は良好で、所望の表面形態を有した薄板の製造が可能である。
(1)目的とする3次元表面形状に対する反転表面形状を有する余熱された基材(成形金型)40に導電性材料A(41a)を、基材(成形金型)40の凹凸状部を有する面の表層にのみ噴射・積層して導電A膜41を形成する(図4、5の「導電性材料A噴射と導電A膜の形成参照)。その際に、導電A膜を形成する「導電性材料A(41a)」を噴射するガンは、設備面や噴射する材料特性などから、必ずしも金属母相となる皮膜42を形成するために使用される急冷溶射ガン110を用いる必要は無く、導電A膜及びB膜を形成する、別の噴射だけを行なうスプレーガン120で行なっても良い。
次工程として、導電性材料Bと粘結剤の混合体の膜形成(又は導電性材料Bのみによる膜形成)を行なうことから、その作業温度及び上記皮膜の凝固状態を加味して温度を設定する。
なお、基材40の凹凸の埋設には、複数回の金属溶射を実施して行なっても良い。更に、複数回の金属溶射を行なうような場合、溶射される金属種を変更して積層構造の皮膜とすることも可能である。
次に、上記(1)~(10)に示す工程により作製される本発明に係る炭素質材料層を備える薄板状成形品について説明する。
本発明に係る炭素質材料層を備える複層薄板状成形品45は、所望の高さ及び幅の凹凸状部を備えた微細な3次元表面性状を有し、不動態層表層域を持つ金属材料製基板の表面に該不動態層表層域を貫通して内部の金属母相と導通する導電A膜41(例えば、WC)の一部分を不動態層表層域から突出、露出させて備え、更に表端面と対向する裏面に導電A膜41とは異相の導電B膜43(炭素質材料層:カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブなど)が均一、且つ強固に積層した複層薄板状成形物45である。
ここで用いる粘結剤については使用する環境に応じて適宜選択して使用するが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの熱可塑性樹脂や、エラストマー系はスチレンブタジエンゴム(SBR)などのエラストマーを用いる。さらに温度環境下等により、熱硬化性樹脂系のフェノール樹脂系やエポキシ樹脂系などが利用可能である。
なお、使用する繊維の仕様は、短繊維、長繊維、長繊維織布のいずれかを用いることで、柔軟性を向上せしめ、併せて強度を保つことを可能とする。又、材質としては、カーボンナノチューブ、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、高分子繊維などが利用可能である。
a.黒鉛粉粒体と粘結剤
b.黒鉛粉粒体と繊維と粘結剤
b1:bの繊維が短繊維
b2:bの繊維が長繊維
c.短繊維含有黒鉛粉粒体と長繊維織布と粘結剤
さらに、金属母相は非晶質金属に限らず、用途により適宜材質を選択して粉末粉粒体を準備し、噴射により薄板を成形する。
120 スプレーガン(導電A膜、B膜形成装置)
D 凸部状高さ
F 火炎
G 冷却ガス
P 凹部状幅
W 凸部状幅
1 粉末供給管
2 冷却ガス供給管
4 冷却ガス噴射口
5 火炎噴射口
6 粉末噴射口
7 筐体
9、40 基材
11 原料粉末供給管
12 ミスト噴射ノズル
13 ミスト噴射口
14 冷却ガス噴射口
15 火炎噴射口
16 粉末噴射口
42 皮膜(金属母相)
41 導電A膜
41a 導電性材料A
42a 原料金属材料粉粒体
43 導電B膜(固化後)
43a 導電性材料B
43b 導電B膜(固化前)
44 混合体(導電性材料Bと粘結剤の混合体)
45 複層薄板状成形品(微細表面成形物)
46 切削装置又は研削装置
Claims (6)
- 所望の高さ及び幅の凹凸状部を両面に備えた微細な3次元表面形状を有する薄板状の非晶質金属を基板とし、
前記基板の表端面に不動態層表層域が存在し、前記不動態層表層域を貫通して前記不動態層表層域下の前記非晶質金属と導通するよう凹凸を有する面の凸状部上の表層を含む凹凸を有する面の表層に存在し、且つ固溶することなく存在している導電A膜の一部分が表面に露出部を有し、
前記基板の表端面と対向する基板の裏面を覆うように、前記導電A膜とは異相の炭素質材料層、且つ付着積層の導電B膜を備えることを特徴とする炭素質材料層を備えた複層薄板状成形品。 - 前記表端面における前記導電A膜が、凹凸を有する面の凸状部上の表層にのみ、導電A膜が固溶することなく存在していることを特徴とする請求項1に記載の炭素質材料層を備えた複層薄板状成形品。
- 前記導電A膜のある面の反対面に、存在する導電B膜が、接着、固着物質等での化学的に付着、又は圧下成形等の機械的に付着させた炭素質材料被膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素質材料層を備えた複層薄板状成形品。
- 前記導電A膜、及び導電B膜が、燃料電池使用環境下において、劣化が見られず、且つ前記非晶質金属の耐食性、熱安定性、及び導電性を有した炭素質材料であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の炭素質材料層を備えた複層薄板状成形品。
- 前記導電B膜が、炭素繊維を含有した炭素質材料であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の炭素質材料層を備えた複層薄板状成形品。
- 基板の表端面に、導電A膜の露出部を有する不動態層表層域を備え、前記基板の裏面に導電B膜を備える複層薄板状成形品の製造方法であって、
以下の(1)~(10)の工程を経て製造されることを特徴とする複層薄板状成形品の製造方法。
(記)
(1)目的とする3次元表面形状に対する反転表面形状を有する基材に、導電性材料Aを、前記基材の凹凸状部を有する面の表層の凹状部を含む前記基材の凹凸状部、又は前記基材の凹凸状部を有する面の表層の凹状部のみに積層して導電A膜を形成する。
(2)前記導電A膜が積層された3次元表面形状を有する基材を所望温度に昇温する。
(3)表層に不動態層を形成して耐食性を発揮する非晶質金属を構成する原料金属材料粉粒体を、火炎と共に噴射し、前記火炎の熱により溶融して形成された前記原料金属材料粉粒体の溶融物が、前記火炎内を飛行しつつ、前記火炎毎、冷媒により冷却されて基材表面に皮膜を形成する急冷溶射ガンを用い、前記原料金属材料粉粒体を溶解、且つ混合する。
(4)前記溶解、且つ混合した原料金属材料粉粒体が、基材(成形金型)に到達する以前から、原料金属材料粉粒体の周囲に向けて噴射された所望冷媒の噴流により原料金属材料粉粒体の冷却を開始する。
(5)所望の凝固状態又は半凝固状態に至った該原料金属材料粉粒体を、前記基材の微細な3次元表面形状の凹凸状部に凝着積層させ、その凹凸状部の凹部を充満させると共に、凹凸状部が埋設する積層厚さになるまで噴射吹付けを行い、凝着積層された非晶質金属の皮膜を形成する。
(6)所望の温度まで冷却する。
(7)冷却後、前記皮膜の表端面(凹凸状部)と対向する裏面に、炭素質材料層となる導電性材料Bと粘結剤の混合体又は導電性材料Bのみを、積層凝固させて導電B膜を形成する。
(8)前工程で混合体を用いて導電B膜を形成した場合には、前記導電B膜中の粘結剤を乾燥させて導電B膜を固化する。
(9)前記固化した導電B膜の背面を切削法、研削法、研磨法の面加工によって平滑化、又は、必要な形状を付与する。
(10)導電A膜、皮膜、導電B膜から成る積層体である炭素質材料層を形成した複層薄板状成形品を、基材から離型して回収する。
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