JP7220881B1 - 灌水制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】営農者が希望する栽培を行うことができる、灌水制御システムを提供する。【解決手段】複数の灌水量算出手段312と、実施灌水量決定手段314とを備える。複数の灌水量算出手段312は、それぞれ、互いに異なる計算式で処方灌水量を算出する。実施灌水量決定手段314は、複数の処方灌水量を加重平均した後、天気予報により得られる予測降水量に対応する灌水量を減算して、実施灌水量を決定する。灌水量算出手段は、例えば、気象観測データ及び土壌観測データを用いて計算した蒸発散量に基いて処方灌水量を算出する、1又は複数の第1の灌水量算出手段、及び、灌水実績と生育結果から機械学習により生成されたモデル式で処方灌水量を算出する、又は、既知の予測モデルに基づくモデル式で処方灌水量を算出する、1又は複数の第2の灌水量算出手段を備える。【選択図】図1

Description

この発明は、灌水制御システムに関する。
ある農業圃場を見た場合、営農者が最大の利益を得られるように農作物の選定と育成を行い、農業が営まれている。例えば、農作物の選定では、主に農作物の経済価値等を重視し、出荷時期の調整等を考慮して、品種選定を行う。一方で、農作物の育成には、圃場の環境が大きく影響している。例えば、太陽光等の日照時間、大気中の気温、湿度や二酸化炭素濃度、土中の温度、湿度や肥料濃度等がある。そのため、環境の状態によっては、育成が困難な栽培環境や農作物も存在する。
栽培環境の多くを制御することが出来るハウス栽培や植物工場では、選定した農作物に対する育成に効果的な環境に制御することで営農作業が軽減され容易になる。一方、広く行われている露地における農作物の栽培は、自然のものを利用する前提とし、栽培環境として意図的に制御出来るのは、主に施水や施肥、除草、消毒による、土中の湿度、肥料濃度、衛生状態の制御に留まる。
なお、過去には、穀類作物の施肥量決定方法についての提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
同じ農作物を育成する場合でも、圃場が変わるとその環境が大きく変わる。更に、土壌の特性や変動する天候への対応は営農者の経験則による判断によって行われており、農作物の客観的かつ標準的となる一般的な育成の指針がない状態である。あったとしても、特定の環境条件に基づいた手法である。
特開2000-300077
園学研.(Hort. Res. (Japan)) 6 (4) : 559-564.2007
従来の営農作業が、最適に行われているかは、多くの場合、客観的な評価はなされていない。結果として、現状の営農に関する改善も経験則に依存している。
経験則に基づく営農が、現在の環境で最適であった場合でも、客観的な解析が出来ないことで、経験則で得られる効果や意味の説明が出来ないことになる。このため、客観的な説明に基づく、経験則の継承にも支障が現れる。
また、営農者にとっての価値観は、一律ではない。例えば、大量に作ることで、大きな利益を得ようと考える営農者もいるし、少量でも品質を高くすることで、大きな利益を得ようとする営農者もいる。しかしながら、多くのシステムでは、一つの価値観で最適化を図ろうとすることが多い。そのため、従来のシステムでは、営農者の多様な価値観を尊重出来ない。
この発明の灌水制御システムは、上述の課題に鑑みてなされたものである。この発明の目的は、営農者が希望する栽培を行うことができる、灌水制御システムを提供することにある。
この発明の灌水制御システムは、複数の灌水量算出手段と、実施灌水量決定手段とを備える。
複数の灌水量算出手段は、それぞれ、互いに異なる計算式で処方灌水量を算出する。実施灌水量決定手段は、複数の灌水量算出手段で算出された処方灌水量を加重平均した後、天気予報により得られる予測降水量に対応する灌水量を減算して、実施灌水量を決定する。
この発明の灌水制御システムの実施に当たり、灌水量算出手段として、気象観測データ及び土壌観測データを用いて計算された蒸発散量に基いて処方灌水量を算出する、1又は複数の第1の灌水量算出手段、及び、灌水実績と生育結果から機械学習により生成されたモデル式で処方灌水量を算出する、又は、既知の予測モデルに基づくモデル式で処方灌水量を算出する、1又は複数の第2の灌水量算出手段を備える構成にすることができる。
また、灌水は、電磁弁の開閉により行われ、実施灌水量決定手段は、実施灌水量として、電磁弁を開く時刻と、開いている時間を決定する構成にすることができる。
また、電磁弁を開くことで流れる水量を計測する流量計を備え、計測した水量を灌水実績として記録する構成にしてもよい。
さらに、モデル式の生成は、灌水実績と、生育結果とを教師データとして用いた機械学習で行われる構成にしてもよい。
この発明の灌水制御システムによれば、営農者が希望する栽培を行うことができる。
灌水制御システムの模式図である。 観測DBに格納されているデータを説明するための模式図である。
図1及び図2を参照して、この発明の灌水制御システムを説明する。図1は、灌水制御システムの模式図である。図2は、観測DBに格納されているデータを説明するための模式図である。
この発明の灌水量自動制御システムは、制御装置200、測定装置100及び灌水制御装置900を備えて構成される。以下、説明する例では、1日1回決められた時刻に、すなわち、24時間ごとに、灌水が行われるものとする。灌水制御システムは、灌水量を決定し、その灌水量で灌水を行う。
制御装置200は、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)や、インターネットに接続されるサーバなど、任意好適な従来公知の電子計算機を用いて構成することができる。制御装置200と測定装置100及び灌水制御装置900とは、例えば、インターネットを介して接続される。測定装置100で取得された観測結果は、制御装置200に送られる。また、灌水制御装置900は、制御装置200からの指示を受けて動作し、灌水制御装置900での測定結果は、制御装置200に送られる。
制御装置200は、例えば、CPU(Central Proccesing Unit)、データ用メモリ、プログラム用メモリ、及び、送受信手段を有するサーバ装置300と、記憶装置400とを備えて構成される。ここでは、CPU、データ用メモリ、プログラム用メモリ、及び、送受信手段の図示を省略する。
データ用メモリ、プログラム用メモリは、任意好適な構成にすることができる。例えば、データ用メモリとしてRAM(Random Access Memory)を用いることができ、プログラム用メモリとしてROM(Read Only Memory)を用いることができる。
CPUがプログラム用メモリに格納されているプログラムを実行することにより、サーバ装置300において、後述する各機能手段が実現される。各機能手段の詳細については、後述する。各機能手段での処理の結果は、一時的にデータ用メモリに格納される。
記憶装置400は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などで構成され、いわゆる、データベース(DB)として利用される。記憶装置400には、観測DB410、FMT420、マスタDB430及び予測式ライブラリ440が、DBとして設けられている。
観測DB410は、測定装置100で観測される観測結果のDBである。観測DB410には、観測結果として、気象観測データ412、土壌観測データ414及び営農観測データ416が格納される。
気象観測データ412は、圃場現場で観測される、気象に関するデータである。気象観測データ412には、例えば、温度、湿度、風速(平均風速)、瞬間風速、雨量、紫外線量、照度、日射量などが含まれる。これら気象観測観測データは、例えば、5分ごとに観測される。なお、気象観測データを観測する測定装置100として、任意好適な従来公知のものを用いることがで切るので、ここでは、説明を省略する。
土壌観測データ414は、圃場土壌で観測される、土壌に関するデータである。土壌観測データ414には、例えば、温度、水分率、電気伝導率などが含まれる。これら、土壌観測データ414は、例えば、気象観測データ412と同様に5分ごとに観測される。なお、土壌観測データ414を観測する測定装置100として、任意好適な従来公知のものを用いることができるので、ここでは、説明を省略する。
気象観測データ412及び土壌観測データ414の観測周期などは、任意好適に設定することができるが、気象観測データ412及び土壌観測データ414が同時刻に取得されるのが好ましい。
営農観測データ416は、作業者が行った作業に関するデータである。営農観測データ416には、例えば、施肥量、防除量、画像、作業情報が含まれる。施肥量は、例えば、栄養素としてのN、P、K、Ca、Mgの投入量である。防除農薬量は、投入された農薬量を示す情報であり、例えば、農薬名、希釈倍率及び投入量で与えられる。画像は、作業者(営農者)によって撮影された画像である。また、作業情報は、作業者の個人識別番号(ID)、作業時間などである。営農観測データを取得する測定装置100として、スマートフォンやタブレット端末など、任意好適な従来公知の、入出力機能と撮像機能を有する通信端末装置を用いることができる。作業者は、通信端末装置を操作して、自己が行った作業の内容を営農観測データとして入力する。また、画像については、通信端末装置が有するカメラで取得することができる。なお、通信端末装置とは別に、撮像機能を有するカメラを別途用いてもよい。
ファーミングモードテーブル(FMT)420は、栽培する作物ごとの生育段階及び作物係数や、作物の播種から収穫までの栽培計画を、圃場ごとに定義するテーブルである、営農情報が格納されるDBである。FMT420には、圃場番号、灌水面積及び灌水能力などの圃場情報、灌水を実施する電磁弁の番号、選択される灌水モード、圃場の保水量を決める培地情報、圃場で栽培される栽培品目、栽培段階ごとの作物係数Kc、播種日からの日数で定まる栽培段階、播種や移植の日である播種日、収穫予定日、灌水を開始する時刻、灌水量を予測するための予測モデルを示す番号、アルベド数、風速計の設置高さ、及び、緯度などの圃場気象係数、並びに、保水量、不足水量、及び、補給水量などの圃場土壌変数が含まれる。
マスタDB430には、例えば、各機能手段が行う計算結果の記録、実施灌水量の導出結果の記録、実績灌水量、観測DB410内の、気象観測データ412、土壌観測データ414及び営農記録データ416のデータ異常を補正したデータなどが格納されている。
予測式ライブラリ440は、植物の状態を予測する予測モデルを表す予測式が格納されるライブラリである。
灌水量計算部310は、複数の灌水量算出手段312と、実施灌水量決定手段314とを備えて構成される。灌水量計算部310は、記憶装置400に格納されているデータに基づいて、実施灌水量を決定する。
灌水量算出手段312の1つ(ここでは、第1の灌水量算出手段と称する。)は、例えば、従来公知のペンマン法の推定式を用いて、蒸発散量ETcを計算する。蒸発散量ETcの計算に必要な、温度、湿度、平均風速及び日射量の情報として、観測DB410の気象観測データ412が用いられる。第1の灌水量算出手段は、土壌観測データ414から得られる土壌の保水量や、気象観測データ412から得られる、灌水時刻までの24時間の雨量を、蒸発散量ETcから減算する。これにより、土壌に灌水すべき第1の処方灌水量が算出される。
なお、ペンマン法で得られた蒸発散量ETcに、FMT420から読み出した、作物係数Kcを乗算して、基準蒸発散量ETを算出し、基準蒸発散量ETから保水量及び雨量を減算して処方灌水量を算出する構成にしても良い。
また、ペンマン法の推定式以外の式で、蒸発散量ETcを計算する灌水量算出手段312を、式の種類に応じて、1又は複数備える構成にしてもよい。
また、灌水量算出手段312の1つ(ここでは、第2の灌水量算出手段と称する。)は、予測される植物の健康状態に基づいて、処方灌水量を計算する。第2の灌水量算出手段は、観測DB410に格納されている観測データを用いて、予測式ライブラリ440に格納されている予測式を実行し、処方灌水量を算出する。この予測式は、ロジット・モデル(例えば、非特許文献1参照。)など、研究機関等が公開している既知のモデルに基づく予測式が格納される。また、予測式は、予測式生成部350が生成してもよい。
予測式生成部350は、実施灌水量、実績灌水量、気象観測データ、土壌観測データ及び営農記録データに基づいて予測式を生成する。これら、予測式の生成に用いるデータは、例えば、マスタDB430に格納されており、生成された予測式は、予測式ライブラリ440に格納される。予測式の生成は、回帰分析により行うことができる。なお、予測式の生成は、ニューラルネットワークを用いるなど、AI(人工知能)による機械学習で行ってもよい。
ここで、予測式は、例えば、気温、降水量などに基づく、収量や病気の予測をする式である。1つの圃場に異なる栽培品目が栽培されている場合もあるし、1つの栽培品目に対して、複数の予測式が存在する場合もある。また、乾燥気味の方がよく生育するなどの、実績や研究成果に基づき、作物係数が修正されることもある。さらに、灌水実績と、生育結果から、収穫時期を早めにしたり、遅めにしたりするためのモデル、量より質を求める場合のモデル、質より量を求める場合のモデルなど、複数のモデルが考えられる。
このため、予測式ライブラリ440には、複数の予測式を格納し、予測式に基いて処方灌水量を算出する第2灌水量算出手段を、予測式ライブラリ440に格納されている予測式の数の分だけ備えるのが良い。
第1の灌水量算出手段312及び第2の灌水量算出手段312における処方灌水量の計算は、例えば、1時間ごとに行われる。なお、処方灌水量の計算をリアルタイムで行ってもよい。
実施灌水量決定手段314は、複数の灌水量算出手段312で算出された処方灌水量から、実施灌水量と実施時刻を決定する。
実施灌水量の決定は、各灌水量算出手段312で算出された処方灌水量の加重平均として決定する構成にすることができる。加重平均の演算を行う際に用いられる重み係数は、マスタDB430に格納しておけばよい。この重み係数は、灌水実績と、生育結果等に基づく機械学習で決定してしてもよいし、利用者が任意好適な通信端末を操作することで行決定してもよい。
例えば、第1の灌水量算出手段の1つが計算する処方灌水量に対する重み係数を他の重み係数よりも大きく設定すれば、気象観測データ及び土壌観測データに基づいて算出される灌水量を、予測モデルで補正する態様になる。あるいは、1つの重み係数を1とし、他の重み係数を0とすれば、1つの灌水量算出手段312で算出された処方灌水量を選択する態様になる。
また、実施灌水量決定手段314は、実施灌水量と実施時刻の決定にあたり、インターネット等を経て取得した、天気予報のデータを用いて、処方灌水量の加重平均の結果に、予測される降水量に対応する灌水量を減算する構成にしてもよい。
実施灌水量計算部310は、決定した実施灌水量を、灌水制御装置900に応じて変換する。例えば、灌水制御装置900が、開閉により灌水を制御する電磁弁を利用するものであるとき、変換された実施灌水量は、灌水を実施する電磁弁の番号とその開閉時間である。実施灌水量計算部330で変換された実施灌水量は、灌水指令部340に送られる。灌水指令部340は、変換された実施灌水量の情報を、対応する灌水制御装置900に送り、対応する電磁弁の開閉を行わせる。この灌水指令部から対応する電磁弁に送られた指示の内容、実行時刻、及び、実施灌水量の決定過程の情報は、マスタDB430に格納される。
また、電磁弁の開閉により、実際に流れた水量は、流量計で測定され、実績灌水量として、灌水制御装置900から制御装置200に送られ、マスタDB430に格納される。
本来、実施灌水量と実績灌水量とは概ね一致するが、水源の状況などにより、実施灌水量と実績灌水量とは異なることもある。
この発明の灌水制御システムによれば、灌水実績と、生育結果を教師データとして用いた機械学習により、モデル式の生成や、実施灌水量の決定を行うことができる。この結果、経験則に基づく営農が客観的に解析され、客観的な説明に基づく、経験則の継承が容易になる。
また、作物の、質、量、収穫時期などと灌水実績に基く予測モデルで処方灌水量を計算できるので、作物の、質、量、収穫時期のいずれを重視するかなど、営農者にとっての価値観に応じた営農も容易になる。
100 測定装置
200 制御装置
300 サーバ装置
310 灌水量計算部
312 灌水量算出手段
314 実施灌水量決定手段
340 灌水指令部
350 予測式生成部
400 記憶装置
410 観測DB
412 気象観測データ
414 土壌観測データ
416 営農観測データ
420 FMT
430 マスタDB
440 予測式ライブラリ
900 灌水制御装置

Claims (4)

  1. それぞれ、互いに異なる計算式を用いて処方灌水量を算出する、複数の灌水量算出手段
    と、
    複数の灌水量算出手段で算出された処方灌水量を加重平均した後、天気予報により得ら
    れる予測降水量に対応する灌水量を減算して、実施灌水量を決定する実施灌水量決定手段

    を備え、
    灌水量算出手段として、
    気象観測データ及び土壌観測データを用いて計算された蒸発散量に基いて処方灌水量を算出する、1又は複数の第1の灌水量算出手段、及び、
    灌水実績と生育結果から機械学習により生成されたモデル式で処方灌水量を算出する、1又は複数の第2の灌水量算出手段
    を備える灌水制御システム。
  2. 灌水は、電磁弁の開閉により行われ、
    実施灌水量決定手段は、実施灌水量として、電磁弁を開く時刻と、開いている時間を決
    定する
    請求項に記載の灌水制御システム。
  3. 電磁弁を開くことで流れる水量を計測する流量計を備え、計測した水量を灌水実績とし
    て記録する
    請求項に記載の灌水制御システム。
  4. 前記モデル式の生成は、灌水実績と、生育結果とを教師データとして用いた機械学習で
    行われる
    請求項に記載の灌水制御システム。
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