以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る制御装置10は、ヒーター40を制御するための装置として構成されている。制御装置10の説明に先立ち、制御対象であるヒーター40の構成について先ず説明する。
ヒーター40は、不図示の車両に設けられるガスセンサのセンサ素子を加熱して、これを適温に保つための電気ヒーターである。当該ガスセンサは、車両の排気通路に設けられるものであり、内燃機関から排出される排ガスに含まれる特定の成分、具体的には窒素酸化物の濃度を測定するためのセンサである。ガスセンサは、例えばジルコニアからなる固体電解質を有しており、固体電解質を酸素イオンが通過する性質を利用して窒素酸化物の濃度を測定するものである。ヒーター40は、固体電解質のうちセンサ素子として機能する部分を加熱して活性温度に保つためのものであり、ガスセンサに内蔵されている。尚、このようなガスセンサの構成としては公知のものを採用することができるので、その具体的な説明については省略する。
尚、ヒーター40が設けられるセンサは、上記のようなガスセンサとは異なる種類のセンサであってもよい。例えば、排出ガスに含まれる微小粒子の濃度を検知するためのPMセンサに、ヒーター40が設けられてもよい。よく知られているように、PMセンサでは、検知部に堆積した微小粒子を定期的に除去する必要がある。ヒーター40によってPMセンサの検知部を加熱すれば、堆積した微小粒子を燃焼させ除去することが可能となる。
図2に示されるように、ヒーター40は、基板41の表面に発熱電極410等の電極パターンを印刷した構成となっている。基板41はアルミナからなる平板状の部材である。基板41は、ガスセンサのうち、上記の固体電解質の層と隣接する位置に配置されている。
基板41には、発熱電極410と、一対のリード電極420、430と、センス電極440と、が形成されている。これらの電極は、全体が一つの電極パターンとなっており、基板41の一方の表面に対して、例えばスクリーン印刷により形成されたものである。図1においては、発熱電極410及びリード電極420、430のそれぞれが、互いに直列に接続された電気抵抗として模式的に示されている。
発熱電極410は、基板41の長手方向に沿った一方側の端部近傍に形成されている。発熱電極410は、外部から供給される電力によりジュール熱を発生させる部分、すなわち「発熱部」として機能する部分である。発熱電極410が形成されている位置は、ガスセンサの固体電解質のうち、センサ素子として機能する部分に対応する位置となっている。
リード電極420は、電極パターンのうち発熱電極410の一端に接続された部分である。リード電極420は、後述のハイサイド配線211と発熱電極410との間を繋いでいる。また、リード電極430は、電極パターンのうち発熱電極410の他端に接続された部分である。リード電極430は、後述のローサイド配線231と発熱電極410との間を繋いでいる。リード電極430の形状は、リード電極420の形状に概ね等しい。従って、両者の抵抗値は互いに等しくなっている。
リード電極420、430における電極パターンの幅は、発熱電極410における電極パターンの幅に比べて太くなっている。このため、ヒーター40への通電が行われている状態において、リード電極420、430で生じるジュール熱は、発熱電極410で生じるジュール熱に比べると小さい。
センス電極440は、電極パターンのうち、発熱電極410とリード電極430との接続部近傍と、後述のセンス配線221との間を繋いでいる部分である。センス電極440における電極パターンの幅は、リード電極420、430における電極パターンの幅に比べて細くなっている。ヒーター40への通電が行われている状態であるか否かに拘らず、センス電極440には殆ど電流が流れない。センス電極440は、発熱電極410とリード電極430との接続部における電位、を測定するための電極パターンとして形成されている。センス配線221を「ヒーター40の発熱部に接続された配線」と定義すれば、センス電極440は、このようなセンス配線221の一部とみなすこともできる。
リード電極420とリード電極430との間に電圧が印加されると、発熱部である発熱電極410に電流が流れてジュール熱が発生する。すなわち、ヒーター40によるセンサ素子の加熱が行われる。本実施形態に係る制御装置10は、ヒーター40に供給される電力を調整することで、ヒーター40の発熱を制御する装置として構成されている。
図1を参照しながら、制御装置10の構成について説明する。制御装置10は、本体部20と、ハイサイド配線211と、センス配線221と、ローサイド配線231と、マイコン30と、を備えている。
本体部20は、制御装置10の主要な構成部品をその内側に収容する筐体である。後述のマイコン30やハイサイドスイッチ27等は、いずれも本体部20の内側に収容されている。
図1において符号「50」が付されているのは、ヒーター40に電力を供給するための電源である。以下では、当該電源のことを「電源50」とも称する。電源50は直流の電圧源である。電源50には、配線210の一端が接続されている。配線210の他端はハイサイドスイッチ27に接続されている。ハイサイドスイッチ27の開閉状態によらず、配線210の電位は電源50の電位に維持されている。
ハイサイド配線211は、上記の配線210と共に、ヒーター40と電源50との間を繋いでいる。ハイサイド配線211の一端は、ヒーター40のリード電極420に接続されている。ハイサイド配線211の他端はハイサイドスイッチ27に接続されている。つまり、ヒーター40と電源50との間は、配線210、ハイサイドスイッチ27、及びハイサイド配線211を介して接続されている。
ハイサイドスイッチ27は、外部から入力される駆動信号に応じてスイッチング動作を行うことで、配線210とハイサイド配線211との間の開閉を切り換えるスイッチである。ハイサイドスイッチ27は、電源50とハイサイド配線211との間となる位置に設けられている。
駆動信号がONのときにはハイサイドスイッチ27は閉状態、すなわちONとなり、駆動信号がOFFのときにはハイサイドスイッチ27は開状態、すなわちOFFとなる。ハイサイドスイッチ27は、例えばMOSトランジスタ等の半導体スイッチであるが、保護回路等を内蔵するインテリジェントパワーモジュールやインテリジェントパワーデバイスであってもよい。ハイサイドスイッチ27の動作はマイコン30によって制御される。
図1において符号「29」が付されているのは、制御装置10の接地部、すなわち電気的に接地されている部分を模式的に表したものである。以下では、当該部分のことを「接地部29」とも称する。接地部29には、配線230の一端が接続されている。配線230の他端はローサイドスイッチ28に接続されている。ローサイドスイッチ28の開閉状態によらず、配線230の電位は接地部29の電位に維持されている。
ローサイド配線231は、上記の配線230と共に、ヒーター40と接地部29との間を繋いでいる。ローサイド配線231の一端は、ヒーター40のリード電極430に接続されている。ローサイド配線231の他端はローサイドスイッチ28に接続されている。つまり、ヒーター40と接地部29との間は、配線230、ローサイドスイッチ28、及びローサイド配線231を介して接続されている。ローサイド配線231は、先に述べたハイサイド配線211と共に、ヒーター40に電力を供給するための一対の配線を構成している。
ローサイドスイッチ28は、外部から入力される駆動信号に応じて、配線230とローサイド配線231との間の開閉を切り換えるスイッチである。ローサイドスイッチ28は、ローサイド配線231と接地部29との間となる位置に設けられている。
駆動信号がONのときにはローサイドスイッチ28は閉状態、すなわちONとなり、駆動信号がOFFのときにはローサイドスイッチ28は開状態、すなわちOFFとなる。ローサイドスイッチ28は、例えばMOSトランジスタ等の半導体スイッチであるが、保護回路等を内蔵するインテリジェントパワーモジュールやインテリジェントパワーデバイスであってもよい。ローサイドスイッチ28の動作はマイコン30によって制御される。
センス配線221は、ヒーター40の発熱部、すなわち発熱電極410に接続された配線である。センス配線221の一端は、ヒーター40のセンス電極440に接続されている。センス配線221の他端は、後述のセンス電圧取得部23に接続されている。センス配線221は、先に述べたセンス電極440と共に、発熱電極410とリード電極430との接続部における電圧を測定するための配線として用いられる。
本体部20の内部には、各部の電流や電圧を計測し取得するための測定回路として、電源電圧取得部21と、ハイサイド電圧取得部22と、センス電圧取得部23と、ローサイド電圧取得部24と、ハイサイド電流取得部25と、ローサイド電流取得部26と、が設けられている。
電源電圧取得部21は、配線210における電圧、すなわち、配線210と接地部29との間の電位差を取得するための測定回路である。当該電圧は、電源50によって生じた電圧ということができる。電源電圧取得部21は、配線210における電圧に対応した信号をマイコン30へと入力する。マイコン30は、電源電圧取得部21から入力される信号をAD変換することにより、配線210における電圧を取得する。
ハイサイド電圧取得部22は、ハイサイド配線211における電圧、すなわち、ハイサイド配線211と接地部29との間の電位差を取得するための測定回路である。ハイサイド電圧取得部22は、ハイサイド配線211における電圧に対応した信号をマイコン30へと入力する。マイコン30は、ハイサイド電圧取得部22から入力される信号をAD変換することにより、ハイサイド配線211における電圧を取得する。当該電圧のことを、以下では「ハイサイド電圧」とも称する。
センス電圧取得部23は、センス配線221における電圧、すなわち、センス配線221と接地部29との間の電位差を取得するための測定回路である。センス電圧取得部23は、センス配線221における電圧に対応した信号をマイコン30へと入力する。マイコン30は、センス電圧取得部23から入力される信号をAD変換することにより、センス配線221における電圧を取得する。当該電圧のことを、以下では「センス電圧」とも称する。センス電圧取得部23によって取得されるセンス電圧は、発熱電極410とリード電極430との接続部分と、接地部29との間の電位差、ということもできる。
ローサイド電圧取得部24は、ローサイド配線231における電圧、すなわち、ローサイド配線231と接地部29との間の電位差を取得するための測定回路である。ローサイド電圧取得部24は、ローサイド配線231における電圧に対応した信号をマイコン30へと入力する。マイコン30は、ローサイド電圧取得部24から入力される信号をAD変換することにより、ローサイド配線231における電圧を取得する。当該電圧のことを、以下では「ローサイド電圧」とも称する。
ハイサイド電流取得部25は、電源50からハイサイド配線211へと流れる電流を取得する部分である。ハイサイド電流取得部25は、上記電流に対応した信号をマイコン30へと入力する。マイコン30は、ハイサイド電流取得部25から入力される信号をAD変換することにより、電源50からハイサイド配線211へと流れる電流を取得する。当該電流のことを、以下では「ハイサイド電流」とも称する。
ローサイド電流取得部26は、ローサイド配線231から接地部29へと流れる電流を取得する部分である。ローサイド電流取得部26は、上記電流に対応した信号をマイコン30へと入力する。マイコン30は、ローサイド電流取得部26から入力される信号をAD変換することにより、ローサイド配線231から接地部へと流れる電流を取得する。当該電流のことを、以下では「ローサイド電流」とも称する。
マイコン30は、制御装置10の全体の動作を統括制御する部分である。マイコン30は、CPU、ROM、RAM、AD変換回路、DA変換回路等を備えたコンピュータシステムとして構成されている。マイコン30は、機能的な制御ブロックとして、動作制御部31と、温度算出部32と、故障検出部33と、遮断部34と、を備えている。
動作制御部31は、ハイサイドスイッチ27及びローサイドスイッチ28のそれぞれに駆動信号を送信し、これらの動作を制御する部分である。動作制御部31によって、ヒーター40に供給される電力が調整され、これによりヒーター40における発熱量が調整される。動作制御部31によって行われる処理の具体的な内容については後述する。
温度算出部32は、ヒーター40が設けられたセンサのセンサ素子の温度を算出する部分である。尚、センサ素子の温度は、ヒーター40の発熱部の温度に概ね等しい。このため、本実施形態における温度算出部32は、ヒーター40の発熱部の温度を算出し、これをセンサ素子の温度として用いるように構成されている。
図3に示されるように、ヒーター40の発熱部の温度が高くなる程、ヒーター40の抵抗値は高くなる。このような温度と抵抗値との対応関係は、予めマップとしてマイコン30に記憶されている。温度算出部32は、ヒーター40の発熱部の抵抗値と、上記マップとを参照することにより、ヒーター40の発熱部の温度を算出する。
尚、ヒーター40の発熱部の抵抗値としては、ハイサイド配線211とローサイド配線231との間の抵抗値をそのまま用いてもよいのであるが、その場合、比較的低温であるリード電極420、430の抵抗値が誤差として含まれてしまうので、ヒーター40の発熱部の温度を精度よく算出することが難しくなる。
そこで、本実施形態では、発熱電極410の抵抗値を算出した後、当該抵抗値に基づいて発熱部の温度を算出することとしている。発熱電極410の抵抗値は、取得されたハイサイド電圧、ローサイド電圧、センス電圧、及びハイサイド電流のそれぞれの値に基づいて算出することができる。これにより、リード電極420、430の抵抗値の影響を排除し、ヒーター40の温度を精度よく算出することが可能となる。
故障検出部33は、ヒーター40に接続された各配線における故障を検出する処理を行う部分である。「ヒーター40に接続された各配線」とは、本実施形態ではハイサイド配線211、センス配線221、及びローサイド配線231のことである。故障検出部33によって検出される故障の態様や、その検出方法については後述する。
遮断部34は、故障検出部33によって故障が検出された場合に、ヒーター40への電力の供給を遮断する処理を行う部分である。遮断部34は、ハイサイドスイッチ27及びローサイドスイッチ28のうち少なくとも一方を開状態とすることで、ヒーター40への電力の供給を遮断する。遮断部34によって行われる処理の具体的な内容については後述する。
制御装置10によって行われる処理の概要について説明する。図4(A)に示されるのは、動作制御部31からハイサイドスイッチ27に送信される駆動信号の時間変化の例である。図4(B)に示されるのは、動作制御部31からローサイドスイッチ28に送信される駆動信号の時間変化の例である。図4(C)に示されるのはハイサイド電圧の時間変化の例であり、図4(D)に示されるのはセンス電圧の時間変化の例であり、図4(E)に示されるのはローサイド電圧の時間変化の例である。図4(F)に示されるのはハイサイド電流の時間変化の例であり、図4(G)に示されるのはローサイド電流の時間変化の例である。
本実施形態に係る制御装置10は、ローサイドスイッチ28を常にONとしながら、ハイサイドスイッチ27にスイッチング動作を行わせる、所謂「ハイサイド駆動型」の制御装置として構成されている。このため、本実施形態では、ハイサイドスイッチ27がONとなっている期間においてはヒーター40がONとなり、ハイサイドスイッチ27がOFFとなっている期間においてはヒーター40がOFFとなる。図4の例では、時刻t10から時刻t20までの期間、及び時刻t30から時刻t40までの期間において、ハイサイドスイッチ27への駆動信号はONとされ、それ以外の期間においては、ハイサイドスイッチ27への駆動信号はOFFとされている。一方、ローサイドスイッチ28への駆動信号は、常時ONとされている。
図4(C)に示されるように、ハイサイドスイッチ27がONとなっている期間では、ハイサイド電圧はV1となる。ハイサイドスイッチ27がOFFとなっている期間では、ハイサイド電圧は0となる。V1は、電源50から供給される電圧に概ね等しい。
図4(D)に示されるように、ハイサイドスイッチ27がONとなっている期間では、センス電圧はV2となる。ハイサイドスイッチ27がOFFとなっている期間では、センス電圧は0となる。V2は、上記のV1よりも低い電圧である。V2とV1との差は、発熱電極410及びリード電極420における電圧降下分に相当する。
図4(E)に示されるように、ハイサイドスイッチ27の状態によることなく、ローサイド電圧は常に0、すなわち接地部29と同じ電圧となっている。
図4(F)に示されるように、ハイサイドスイッチ27がONとなっている期間では、ハイサイド電流はI1となる。ハイサイドスイッチ27がOFFとなっている期間では、ハイサイド電流は0となる。
図4(G)に示されるように、ハイサイドスイッチ27がONとなっている期間では、ローサイド電流はI2となる。ハイサイドスイッチ27がOFFとなっている期間では、ローサイド電流は0となる。配線の故障が生じておらず、ヒーター40が正常に動作しているときには、I1とI2とは互いに等しい。
尚、ハイサイド電圧取得部22によるハイサイド電圧の取得等は、常時連続的に行われるのではなく、特定のタイミングで繰り返し行われる。本実施形態においては、ハイサイドスイッチ27がONとなっている期間、及びハイサイドスイッチ27がOFFとなっている期間、のそれぞれにおいて、ハイサイド電圧等の取得が1回ずつ行われる。
図4では、ハイサイドスイッチ27がONとなっている期間において、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流の各値が取得されるタイミングが、時刻t11、t31として示されている。これらはいずれも、ハイサイドスイッチ27がONとなってから所定の期間が経過した時刻として設定されている。
また、図4では、ハイサイドスイッチ27がOFFとなっている期間において、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流の各値が取得されるタイミングが、時刻t01、t21として示されている。これらはいずれも、ハイサイドスイッチ27がOFFとなってから所定の期間が経過した時刻として設定されている。
電流や電圧を取得するタイミングは、適宜変更してもよい。例えば、ハイサイドスイッチ27がONとなっている期間が比較的長い場合には、当該期間において複数回、ハイサイド電圧等が取得されることとしてもよい。
図4の例では、ハイサイドスイッチ27がONとなっている期間と、ハイサイドスイッチ27がOFFとなっている期間とが概ね等しくなっている。つまり、駆動信号のデューティが50%となっている。動作制御部31は、駆動信号のデューティを適宜変更することで、ヒーター40における発熱量を調整し、ヒーター40の発熱部の温度を所定の目標温度に一致させることができる。
動作制御部31によって行われる上記制御の一例について、図5を参照しながら説明する。図5(A)に示されるのは、ガスセンサの素子の温度の時間変化の例である。先に述べたように、当該温度は、ヒーター40の発熱部の温度、すなわち発熱電極410の温度に概ね等しい。
図5(B)に示されるのは、ハイサイドスイッチ27に入力される駆動信号のデューティの時間変化の例である。図5(C)に示されるのは、ハイサイドスイッチ27に入力される駆動信号の時間変化の例である。
時刻t50までの期間は、車両の内燃機関が停止しており、ヒーター40によるセンサ素子の加熱が行われていない期間である。車両のイグニッションスイッチがONとされ、時刻t50において内燃機関が始動されると、ヒーター40によるセンサ素子の加熱が開始される。
時刻t50から時刻t60までの期間は、水分の到達によってセンサ素子が損傷してしまうことや、当該水分に含まれる汚染物質でセンサ素子が汚染されてしまうことを防止するために、センサ素子の予備的な加熱を行うための期間である。当該期間においては、素子の温度が所定の目標温度であるT1に一致するように、駆動信号のデューティが調整される。図5の例では、当該期間におけるデューティがD1とされている。
時刻t60から時刻t70までの期間は、センサ素子の温度を最終的な目標温度に一致させ、センサ素子による測定を行うための期間である。当該期間においては、素子の温度が、最終的な目標温度であるT2に一致するように、駆動信号のデューティが調整される。図5の例では、当該期間におけるデューティが、D1よりも大きなD2とされている。T2はT1よりも高い温度であり、センサ素子の固体電解質が活性となる活性温度又はそれよりも高い温度として設定されている。
時刻t70以降は、ハイサイドスイッチ27に入力される駆動信号がOFFとされ、ヒーター40による加熱が停止した状態となる。この例では、ガスセンサによる窒素酸化物の濃度の測定は、時刻t60から時刻t70までの期間においてのみ行われる。このように、窒素酸化物の濃度の測定が不要な期間においては、ヒーター40による加熱が停止した状態とされる。
尚、ヒーター40が設けられるセンサがPMセンサである場合にも、以上と同様の制御を行うことができる。例えば、微小粒子が堆積する部分の水分を除去するための温度として、図5(A)のT1を設定することができる。また、堆積した微小粒子を燃焼させ除去するための温度として、図5(A)のT2を設定することができる。この場合、ヒーター40による加熱が停止している時刻t70以降の期間において、微小粒子の濃度の検知が行われることとなる。
以上のような制御を実現するために、マイコン30によって実行される処理の流れについて、図6を参照しながら説明する。図6に示される一連の処理は、所定の制御周期が経過する毎に、マイコン30によって繰り返し実行されるものである。
当該処理の最初のステップS01では、ヒーター40の制御を実施するか否かが判定される。ここでは、車両のイグニッションスイッチがONとなっているときには、ヒーター40の制御、すなわち加熱を行うべき状況であると判定され、ステップS02に移行する。イグニッションスイッチがOFFとなっているときには、加熱を行うべき状況ではないと判定され、ステップS09に移行する。
ステップS02では、発熱電極410の抵抗値を取得する処理が行われる。ここでは、ハイサイド電圧、ローサイド電圧、及びハイサイド電流の各値に基づいて、先ず、ハイサイド配線211とローサイド配線231との間の抵抗値が算出される。当該抵抗値は、ヒーター40の「全抵抗」に該当するものである。
続いて、センス電圧、ローサイド電圧、及びハイサイド電流の各値に基づいて、リード電極430の抵抗値が算出される。ここで算出された抵抗値は、リード電極420の抵抗値、ともいえるものである。
その後、上記の全抵抗から、リード電極420の抵抗値及びリード電極430の抵抗値を差し引くことにより、発熱電極410の抵抗値を算出し取得することができる。
ステップS02に続くステップS03では、発熱部である発熱電極410の温度を算出する処理が行われる。先に述べたように、ここでは、図3に示される対応関係のマップと、ステップS02で取得された抵抗値とを参照することで、発熱電極410の温度が算出される。ステップS02及びステップS03の処理は、温度算出部32によって行われる。
ステップS03に続くステップS04では、発熱電極410の温度が、現在設定されている目標温度よりも低いか否かが判定される。発熱電極410の温度が目標温度よりも低い場合には、ステップS05に移行する。ステップS05では、ハイサイドスイッチ27に入力される駆動信号のデューティを、現在の値よりも増加させる処理が行われる。
ステップS04において、発熱電極410の温度が目標温度以上であった場合には、ステップS06に移行する。ステップS06では、ハイサイドスイッチ27に入力される駆動信号のデューティを、現在の値よりも低下させる処理が行われる。
ステップS05及びステップS06に続くステップS07では、ヒーター40への通電を行う時間の長さが、上記のデューティに合わせて設定される。ステップS07に続くステップS08では、ハイサイドスイッチ27への駆動信号の送信が開始される。これにより、ヒーター40への通電が、ステップS07で設定された時間ずつ繰り返し行われる。つまり、ヒーター40への通電が、ステップS05で設定されたデューティに合わせて行われる。これにより、発熱電極410の温度が目標温度に近づけられることとなる。
ステップS01からステップS09に移行した場合には、ハイサイドスイッチ27に入力される駆動信号のデューティが0に設定される。つまり、ヒーター40への通電を行う時間の長さが0に設定される。
ステップS09に続くステップS10では、ハイサイドスイッチ27への駆動信号の送信が停止される。このとき、既に駆動信号の送信が停止されていた場合には、当該状態が維持される。
ところで、ヒーター40に繋がる3つの配線、すなわちハイサイド配線211、センス配線221、及びローサイド配線231においては、断線等の故障が生じてしまうことがある。これらの配線で生じ得る故障の種類について、図7を参照しながら説明する。
図7(A)には、ハイサイド配線211において断線が生じた場合の例が示されている。この例では、P1が付された箇所においてハイサイド配線211が損傷し断線している。このような状態においては、ヒーター40への電力供給が行えなくなってしまう。このように、配線が断線した状態となる故障のことを、以下では「断線故障」とも称する。断線故障は、ハイサイド配線211のみならず、センス配線221やローサイド配線231においても生じ得る。
図7(B)には、ハイサイド配線211において天絡が生じた場合の例が示されている。この例では、P2が付された箇所において、ハイサイド配線211と電源50との間が短絡している。このような状態においては、ハイサイド配線211の電位が、ハイサイドスイッチ27の状態によらず常に電源50の電位と同じになってしまうので、ヒーター40への電力供給を適切には行えなくなってしまう。このように、配線が電源50の電位へと短絡した状態となる故障のことを、以下では「天絡故障」とも称する。天絡故障は、ハイサイド配線211のみならず、センス配線221やローサイド配線231においても生じ得る。
図7(C)には、ハイサイド配線211において地絡が生じた場合の例が示されている。この例では、P3が付された箇所において、ハイサイド配線211と接地部29との間が短絡している。このような状態においては、ハイサイド配線211の電位が、ハイサイドスイッチ27の状態によらず常に接地部29の電位と同じになってしまうので、ヒーター40への電力供給を適切には行えなくなってしまう。このように、配線が接地部29の電位へと短絡した状態となる故障のことを、以下では「地絡故障」とも称する。地絡故障は、ハイサイド配線211のみならず、センス配線221やローサイド配線231においても生じ得る。
マイコン30が備える故障検出部33は、上記のような各故障がハイサイド配線211等に生じた場合において、生じた故障の態様及び箇所を特定する。「故障の態様」を特定するとは、本実施形態においては、天絡故障、地絡故障、及び断線故障のいずれが生じているのかを特定することである。また、「故障の箇所」を特定するとは、本実施形態においては、天絡故障等が、ハイサイド配線211、センス配線221、及びローサイド配線231のいずれで生じているのかを特定することである。
このように、故障検出部33によって特定される配線の故障の態様には、当該配線が、電源50の電位へと短絡した状態となる天絡故障と、当該配線が、接地部29の電位へと短絡した状態となる地絡故障と、当該配線が断線した状態となる断線故障と、が含まれている。
尚、例えばハイサイド配線211において地絡故障が生じている場合には、ハイサイドスイッチ27がONのときに、ハイサイドスイッチ27を過電流が流れることとなる。そこで、ハイサイドスイッチ27には、先に述べたように保護回路等を設けることとしてもよい。ハイサイドスイッチ27に保護回路等が設けられている場合の例について、図8を参照しながら説明する。
図8の例では、ハイサイドスイッチ27が、電流検出回路271及び保護回路272を備えたインテリジェントパワーモジュールとして構成されている。
電流検出回路271は、配線210から供給される電流の値を検知するための回路である。電流検出回路271によって検知された電流の値は、マイコン30及び保護回路272のそれぞれに入力される。
保護回路272は、電流検出回路271によって検知された電流の値が所定の上限値を超えた際に、ハイサイドスイッチ27をOFFへと切り換えるための回路である。上記の上限値としては、正常時においてヒーター40に供給される電流の値よりも高い値が予め設定される。ハイサイド配線211において地絡故障が生じているときに、ハイサイドスイッチ27がONに切り換えられると、配線210を過電流が流れる。このとき、電流検出回路271によって検知された電流の値が上限値を超えるので、保護回路272により、ハイサイドスイッチ27は直ちにOFFへと切り換えられる。これにより、ハイサイドスイッチ27を過電流が流れ続けてしまうことが防止される。
尚、電流検出回路271は、保護回路272に一体的に設けられることとしてもよい。また、電流検出回路271によって検知された電流の値が、マイコン30には送信されない構成としてもよい。
故障検出部33による故障の検出方法について説明する。図9には、ハイサイドスイッチ27がOFFとなっているとき、すなわちヒーター40への通電がOFFとなっているときに、ハイサイド電圧等のそれぞれがとり得る値の範囲が示されている。
図9(A)には、ハイサイド電圧のとり得る値の範囲が示されている。同図の最も左側に示されているのは、正常時、すなわちいずれの配線にも故障が生じていないときにおいて、測定され得るハイサイド電圧の値の範囲である。
また、図9(A)の左から2番目に示されているのは、ハイサイド配線211において断線故障が生じているときに、測定され得るハイサイド電圧の値の範囲である。図9(A)の左から3番目に示されているのは、ハイサイド配線211において天絡故障が生じているときに、測定され得るハイサイド電圧の値の範囲である。
図9(A)の左から4番目及び5番目に示されているのは、ハイサイド配線211において地絡故障が生じているときに、測定され得るハイサイド電圧の値の範囲である。このうち、左から4番目は、保護回路272をハイサイドスイッチ27及びローサイドスイッチ28が備えていない場合におけるハイサイド電圧の値の範囲であり、左から5番目は、保護回路272をハイサイドスイッチ27及びローサイドスイッチ28が備えている場合におけるハイサイド電圧の値の範囲である。
図9(A)の左から6番目に示されているのは、センス配線221において断線故障が生じているときに、測定され得るハイサイド電圧の値の範囲である。図9(A)の左から7番目に示されているのは、センス配線221において天絡故障が生じているときに、測定され得るハイサイド電圧の値の範囲である。図9(A)の左から8番目に示されているのは、センス配線221において地絡故障が生じているときに、測定され得るハイサイド電圧の値の範囲である。
図9(A)の左から9番目に示されているのは、ローサイド配線231において断線故障が生じているときに、測定され得るハイサイド電圧の値の範囲である。
図9(A)の左から10番目及び11番目に示されているのは、ローサイド配線231において天絡故障が生じているときに、測定され得るハイサイド電圧の値の範囲である。このうち、左から10番目は、保護回路272をハイサイドスイッチ27及びローサイドスイッチ28が備えていない場合におけるハイサイド電圧の値の範囲であり、左から11番目は、保護回路272をハイサイドスイッチ27及びローサイドスイッチ28が備えている場合におけるハイサイド電圧の値の範囲である。
図9(A)の左から12番目に示されているのは、ローサイド配線231において地絡故障が生じているときに、測定され得るハイサイド電圧の値の範囲である。
図9(B)には、それぞれの場合においてセンス電圧のとり得る値の範囲が、先に説明した図9(A)と同様の方法により示されている。同様に、図9(C)にはローサイド電圧のとり得る値の範囲が示されており、図9(D)にはハイサイド電流のとり得る値の範囲が示されており、図9(E)にはローサイド電流のとり得る値の範囲が示されており、図9(F)には電流偏差のとり得る値の範囲が示されている。「電流偏差」とは、ハイサイド電流の値からローサード電流の値を差し引いて得られる値のことである。
図9に示されるように、ヒーター40がOFFとなっており、且つ正常時においては、ハイサイド電圧、センス電圧、及びローサイド電圧のいずれもが0となっている。電流の流れる経路はハイサイドスイッチ27によって遮断されているので、ハイサイド電流、及びローサイド電流のいずれもが0となっている。
ヒーター40がOFFとなっており、ハイサイド配線211で断線故障が生じているときには、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のいずれもが0となっている。つまり、上記の正常時と同じ状態となっている。
尚、ハイサイド電圧取得部22は、所謂「分圧回路」として構成されているので、ハイサイド配線211は、当該分圧回路が有する不図示の抵抗を介して接地されている。このため、ヒーター40がOFFとなっており、ハイサイド配線211で断線故障が生じているときには、ハイサイド電圧は上記のように0となる。本実施形態では、電源電圧取得部21、センス電圧取得部23、及びローサイド電圧取得部24も、ハイサイド電圧取得部22と同様の分圧回路として構成されている。
ヒーター40がOFFとなっており、ハイサイド配線211で天絡故障が生じているときには、その影響により、ハイサイド電圧及びセンス電圧のそれぞれが正常時よりも高い値となっている。このとき、ハイサイド配線211のうち、天絡箇所よりも電源50側の部分では電流が流れないので、ハイサイド電流の値は0となる。一方、天絡箇所と接地部29との間には電流が流れるので、ローサイド電流の値は正常時よりも高い値となる。ローサイド配線231は接地部29に繋がっているので、ローサイド電圧は0のままである。
ヒーター40がOFFとなっており、ハイサイド配線211で地絡故障が生じているときには、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のいずれもが0となっている。つまり、正常時と同じ状態となっている。この点は、ハイサイドスイッチ27等が保護回路272を備えていても備えていなくても変わらない。
ヒーター40がOFFとなっており、センス配線221で断線故障が生じているときには、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のいずれもが0となっている。つまり、正常時と同じ状態となっている。
ヒーター40がOFFとなっており、センス配線221で天絡故障が生じているときには、その影響により、ハイサイド電圧及びセンス電圧のそれぞれが正常時よりも高い値となっている。このとき、天絡箇所からハイサイド配線211側には電流が流れないので、ハイサイド電流の値は0となる。一方、天絡箇所と接地部29との間には電流が流れるので、ローサイド電流の値は、正常時よりも高い値となる。ローサイド配線231は接地部29に繋がっているので、ローサイド電圧は0のままである。
ヒーター40がOFFとなっており、センス配線221で地絡故障が生じているときには、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のいずれもが0となっている。つまり、正常時と同じ状態となっている。
ヒーター40がOFFとなっており、ローサイド配線231で断線故障が生じているときには、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のいずれもが0となっている。つまり、正常時と同じ状態となっている。
ヒーター40がOFFとなっており、ローサイド配線231で天絡故障が生じているときには、その影響により、ハイサイド電圧、センス電圧、及びローサイド電圧のそれぞれが正常時よりも高い値となっている。このとき、天絡箇所からハイサイド配線211側には電流が流れないので、ハイサイド電流の値は0となる。一方、天絡箇所と接地部29との間が短絡されるので、ローサイドスイッチ28が保護回路272を備えていない場合には、両者間に過電流が流れる。このため、ローサイド電流の値は正常時よりも高い値となる。ローサイドスイッチ28が保護回路272を備えている場合には、過電流が直ちに遮断される。このため、ローサイド電流の値は0となる。
ヒーター40がOFFとなっており、ローサイド配線231で地絡故障が生じているときには、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のいずれもが0となっている。つまり、正常時と同じ状態となっている。
以上のように、ヒーター40がOFFとなっているときに、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のそれぞれがとり得る値の組み合わせは、各配線で生じた故障の種類や箇所に応じて、正常時における組み合わせとは異なるものとなる。従って、本実施形態に係る故障検出部33は、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のそれぞれに基づいて、各配線で生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所を特定することとしている。ここでいう「各配線」とは、本実施形態ではハイサイド配線211、センス配線221、及びローサイド配線231のことであるが、故障検知の対象となるのはこれらのうちの一部の配線のみであってもよい。また、故障の「態様」とは、本実施形態では断線故障、天絡故障、及び地絡故障のいずれかのことであるが、故障として特定されるのはこれらのうちの一部の態様のみであってもよい。
図9(A)に示される点線DL1は、ヒーター40がOFFとなっているときにおいて、ハイサイド電圧が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるハイサイド電圧よりも高く、且つ、ハイサイド配線211等のいずれかで天絡故障が生じたときにおけるハイサイド電圧よりも低い値として設定されている。後に説明するように、故障検出部33は、取得されたハイサイド電圧を上記の閾値と比較することで、ハイサイド電圧が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「HI異常」のことである。
図9(B)に示される点線DL2及び点線DL3は、ヒーター40がOFFとなっているときにおいて、センス電圧が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。本実施形態では、故障時においてセンス電圧のとり得る値が2つ存在するので、これらを区別するために2つの閾値が設定されている。点線DL2で示される閾値は、ハイサイド配線211で天絡故障が生じたときにおけるセンス電圧よりも高く、且つ、センス配線221やローサイド配線231で天絡故障が生じたときにおけるセンス電圧よりも低い値として設定されている。また、点線DL3で示される閾値は、正常時におけるセンス電圧よりも高く、且つハイサイド配線211で天絡故障が生じたときにおけるセンス電圧よりも低い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたセンス電圧をこれら2つの閾値と比較することで、センス電圧が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」には、後述の「HI異常1」及び「HI異常2」の2種類が含まれる。
図9(C)に示される点線DL4は、ヒーター40がOFFとなっているときにおいて、ローサイド電圧が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるローサイド電圧よりも高く、且つ、ローサイド配線231で天絡故障が生じたときにおけるローサイド電圧よりも低い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたローサイド電圧を上記の閾値と比較することで、ローサイド電圧が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「HI異常」のことである。
図9(D)に示されるように、ヒーター40がOFFとなっているときにおいては、故障が発生しているか否かに拘らず、ハイサイド電流の値は常に正常時と同じ値となる。このため、図9(D)では、判別の閾値を示す点線が示されていない。
図9(E)に示される点線DL6は、ヒーター40がOFFとなっているときにおいて、ローサイド電流が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるローサイド電流よりも高く、且つ、ハイサイド配線211及びセンス配線221のいずれかで天絡故障が生じたときにおけるローサイド電流、ローサイド配線231で天絡故障が生じておりローサイドスイッチ28が保護回路272を備えていないときにおけるローサイド電流、のそれぞれよりも低い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたローサイド電流を上記の閾値と比較することで、ローサイド電流が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「HI異常」のことである。
図9(F)に示される点線DL7は、ヒーター40がOFFとなっているときにおいて、電流偏差が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時における電流偏差よりも低く、且つ、ハイサイド配線211及びセンス配線221のいずれかで天絡故障が生じたときにおける電流偏差、ローサイド配線231で天絡故障が生じておりローサイドスイッチ28が保護回路272を備えていないときにおける電流偏差、のそれぞれよりも高い値として設定されている。故障検出部33は、算出された電流偏差を上記の閾値と比較することで、電流偏差が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「LO異常」のことである。
図10には、ハイサイドスイッチ27がONとなっているとき、すなわちヒーター40への通電がONとなっているときに、ハイサイド電圧等のそれぞれがとり得る値の範囲が、図9と同様の方法により示されている。
図10に示されるように、ヒーター40がONとなっており、且つ正常時においては、ハイサイド電圧は0よりも高く、電源50の電圧と概ね等しくなっている。また、センス電圧も0よりも高くなっているのであるが、ヒーター40を電流が流れて電圧降下が生じているので、センス電圧は電源50の電圧よりは低くなっている。ローサイド配線231は接地部29に繋がっているので、ローサイド電圧は0となっている。ヒーター40を電流が流れるので、ハイサイド電流及びローサイド電流はいずれも0よりも高く、両者は互いに等しい値となっている。
ヒーター40がONとなっており、ハイサイド配線211で断線故障が生じているときには、ハイサイド電圧は電源50の電圧と概ね等しい値、すなわち正常時と同じ値となっている。一方、断線箇所よりも接地部29側には電源50からの電圧が印加されず、接地部29に対して接地された状態となっているので、センス電圧及びローサイド電圧はいずれも0となっている。断線によって電流は遮断されるので、ハイサイド電流及びローサイド電流はいずれも0となっている。
ヒーター40がONとなっており、ハイサイド配線211で天絡故障が生じているときには、正常時と同様に、ハイサイド配線211には電源50の電圧が印加されることとなる。このため、ハイサイド電圧、センス電圧、及びローサイド電圧のそれぞれが、正常時と同じ値となっている。このとき、ヒーター40には電流が流れているのであるが、天絡箇所と電源50との間は同電位となるので、ハイサイド電流の値は0となる。一方、天絡箇所と接地部29との間には正常時と同様に電流が流れるので、ローサイド電流の値は正常時と同じ値となっている。
ヒーター40がONとなっており、ハイサイド配線211で地絡故障が生じているときには、その影響により、ハイサイド電圧、センス電圧、及びローサイド電圧のいずれもが0となっている。電源50と地絡箇所との間が短絡されるので、ハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えていない場合には、両者間に過電流が流れる。このため、ハイサイド電流の値は正常時よりも高い値となる。ハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えている場合には、過電流が直ちに遮断される。このため、ハイサイド電流の値は0となる。地絡箇所と接地部29との間は同電位となるので、ローサイド電流の値は0となっている。
ヒーター40がONとなっており、センス配線221で断線故障が生じているときには、ハイサイド電圧及びローサイド電圧のそれぞれが、正常時と同じ値となる。一方、断線箇所よりもセンス電圧取得部23側の部分は、分圧回路であるセンス電圧取得部23を介して接地された状態となるので、センス電圧の値は0となる。センス配線221の断線は、ヒーター40を流れる電流には影響を与えない。このため、ハイサイド電流の値及びローサイド電流の値は、いずれも正常時と同じ値となっている。
ヒーター40がONとなっており、センス配線221で天絡故障が生じているときには、その影響により、センス電圧の値が正常時よりも高い値となっている。ハイサイド電圧の値及びローサイド電圧の値は、いずれも正常時と同じ値となっている。このとき、天絡箇所と電源50との間は同電位となるので、両者の間に電流は流れず、ハイサイド電流の値は0となる。一方、天絡によってセンス電圧が高くなることで、ローサイド電流の値は正常時よりも高い値となっている。
ヒーター40がONとなっており、センス配線221で地絡故障が生じているときには、その影響によりセンス電圧が0となる。ハイサイド電圧の値及びローサイド電圧の値は、いずれも正常時と同じ値となっている。このとき、センス電圧が通常時よりも低くなるので、ハイサイド電流の値は正常時よりも僅かに高い値となる。また、地絡箇所と接地部29との間は同電位となるので、ローサイド電流の値は0となっている。
ヒーター40がONとなっており、ローサイド配線231で断線故障が生じているときには、断線箇所よりも電源50側の部分が、電源50の電位と同じになる。このため、ハイサイド電圧は通常時と同じ値になっており、センス電圧は通常時よりも高い値となっている。一方、ローサイド電圧の値は0となっている。また、断線によって電流は遮断されるので、ハイサイド電流及びローサイド電流の値はいずれも0となっている。
ヒーター40がONとなっており、ローサイド配線231で天絡故障が生じているときには、天絡箇所よりも電源50側の部分が、電源50の電位と同じになる。このため、ハイサイド電圧は通常時と同じ値になっており、センス電圧及びローサイド電圧は通常時よりも高い値となっている。このとき、天絡箇所と電源50との間は同電位となるので、両者の間に電流は流れず、ハイサイド電流の値は0となる。一方、天絡箇所と接地部29との間が短絡されるので、ローサイドスイッチ28が保護回路272を備えていない場合には、両者間に過電流が流れる。このため、ローサイド電流の値は正常時よりも高い値となる。ローサイドスイッチ28が保護回路272を備えている場合には、過電流が直ちに遮断される。このため、ローサイド電流の値は0となる。
ヒーター40がONとなっており、ローサイド配線231で地絡故障が生じているときには、正常時と同様に、ローサイド配線231は接地部29と同じ電位となる。このため、ハイサイド電圧、センス電圧、及びローサイド電圧のそれぞれが、正常時と同じ値となっている。このとき、ヒーター40には電流が流れているのであるが、地絡箇所と接地部29との間は同電位となるので、ローサイド電流の値は0となる。一方、電源50と地絡箇所との間には正常時と同様に電流が流れるので、ハイサイド電流の値は正常時と同じ値となっている。
以上のように、ヒーター40がONとなっているときに、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のそれぞれがとり得る値の組み合わせも、各配線で生じた故障の種類や箇所に応じて、正常時における組み合わせとは異なるものとなる。従って、本実施形態に係る故障検出部33は、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のそれぞれに基づいて、配線で生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所を特定することとしている。
図10(A)に示される点線DL11は、ヒーター40がONとなっているときにおいて、ハイサイド電圧が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるハイサイド電圧よりも低く、且つ、ハイサイド配線211で地絡故障が生じたときにおけるハイサイド電圧よりも高い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたハイサイド電圧を上記の閾値と比較することで、ハイサイド電圧が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「LO異常」のことである。
図10(B)に示される点線DL12及び点線DL13は、ヒーター40がONとなっているときにおいて、センス電圧が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。本実施形態では、故障時においてセンス電圧のとり得る値が2つ存在するので、これらを区別するために2つの閾値が設定されている。点線DL12で示される閾値は、センス配線221やローサイド配線231で天絡故障が生じたときにおけるセンス電圧、及びローサイド配線231で断線故障が生じたときにおけるセンス電圧よりも低く、且つ、正常時におけるセンス電圧よりも高い値として設定されている。
また、点線DL13で示される閾値は、正常時におけるセンス電圧よりも低く、且つ、ハイサイド配線211で断線故障や地絡故障が生じたときにおけるセンス電圧、及びセンス配線221で断線故障や地絡故障が生じたときにおけるセンス電圧、のそれぞれよりも高い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたセンス電圧をこれら2つの閾値と比較することで、センス電圧が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」には、後述の「LO異常」及び「HI異常」の2種類が含まれる。
図10(C)に示される点線DL14は、ヒーター40がONとなっているときにおいて、ローサイド電圧が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるローサイド電圧よりも高く、且つ、ローサイド配線231で天絡故障が生じたときにおけるローサイド電圧よりも低い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたローサイド電圧を上記の閾値と比較することで、ローサイド電圧が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「HI異常」のことである。
図10(D)に示される点線DL15は、ヒーター40がONとなっているときにおいて、ハイサイド電流が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるハイサイド電流よりも低く、且つ、ハイサイド配線211に断線故障又は天絡故障が生じているときにおけるハイサイド電流、ハイサイド配線211で地絡故障が生じておりハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えているときにおけるハイサイド電流、センス配線221で天絡故障が生じているときにおけるハイサイド電流、ローサイド配線231に断線故障又は天絡故障が生じているときにおけるハイサイド電流、のそれぞれよりも高い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたハイサイド電流を上記の閾値と比較することで、ハイサイド電流が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「LO異常」のことである。
図10(E)に示される点線DL16は、ヒーター40がONとなっているときにおいて、ローサイド電流が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるローサイド電流よりも低く、且つ、ハイサイド配線211に断線故障又は地絡故障が生じているときにおけるローサイド電流、センス配線221で地絡故障が生じているときにおけるローサイド電流、ローサイド配線231で天絡故障が生じておりハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えているときにおけるローサイド電流、及びローサイド配線231に断線故障又は地絡故障が生じているときにおけるローサイド電流、のそれぞれよりも高い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたローサイド電流を上記の閾値と比較することで、ローサイド電流が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「LO異常」のことである。
図10(F)に示される点線DL17は、ヒーター40がONとなっているときにおいて、電流偏差が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時における電流偏差よりも高く、且つ、ハイサイド配線211で地絡故障が生じておりハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えていないときにおける電流偏差、センス配線221又はローサイド配線231で地絡故障が生じているときにおける電流偏差、のそれぞれよりも低い値として設定されている。故障検出部33は、算出された電流偏差を上記の閾値と比較することで、電流偏差が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「HI異常」のことである。
故障検出部33によって行われる故障検出の具体的な方法について説明する。図11に示される一連の処理は、予め設定された特定のタイミングにおいて、故障検出部33によって実行されるものである。当該処理が実行されるタイミングは、先に説明した図4の例では、時刻t01、t11、t21、t31の各タイミングである。当該処理が実行されるタイミングや頻度は、車両の状態等に応じて適宜変更されてもよい。
当該処理の最初のステップS21では、ハイサイドスイッチ27に入力されている駆動信号がOFFであるか否かが判定される。駆動信号がOFFであるときにはステップS22に移行する。ステップS22では、ハイサイドスイッチ27がOFFのとき、すなわちヒーター40への通電がOFFとなっているときにおける、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のそれぞれの値が取得される。
ステップS22に続くステップS23では、ステップS22で取得されたそれぞれの値を、図9を参照しながら説明した閾値と比較し、当該値が正常値か異常値かを判別する処理が行われる。
図12に示されるフローチャートは、図11のステップS23において実行される処理の具体的な流れを示すものである。当該処理の最初のステップS31では、ハイサイド電圧が閾値よりも高いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図9の点線DL1で示される閾値のことである。ハイサイド電圧が閾値よりも高い場合には、ステップS32に移行する。ステップS32では、ハイサイド電圧が「HI異常」であると判定される。ここでいう「HI異常」とは、ハイサイド電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも高い値となっていることを示すものである。ステップS32の後はステップS34に移行する。
ステップS31において、ハイサイド電圧が閾値以下となっている場合には、ステップS33に移行する。ステップS33では、ハイサイド電圧が正常値であると判定される。ステップS33の後はステップS34に移行する。
ステップS34では、センス電圧が第1閾値よりも高いか否かが判定される。ここでいう「第1閾値」とは、図9の点線DL3で示される閾値のことである。センス電圧が第1閾値よりも高い場合にはステップS35に移行する。
ステップS35では、センス電圧が第2閾値よりも高いか否かが判定される。ここでいう「第2閾値」とは、図9の点線DL2で示される閾値のことである。センス電圧が第2閾値よりも高い場合にはステップS36に移行する。ステップS36では、センス電圧が「HI異常2」であると判定される。ここでいう「HI異常2」とは、センス電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値及び第2閾値よりも高くなっていることを示すものである。ステップS36の後はステップS39に移行する。
ステップS35において、センス電圧が第2閾値以下となっている場合には、ステップS37に移行する。ステップS37では、センス電圧が「HI異常1」であると判定される。ここでいう「HI異常1」とは、センス電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値及び第1閾値よりも高くなっており、且つ第2閾値以下となっていることを示すものである。ステップS37の後はステップS39に移行する。
ステップS34において、センス電圧が第1閾値以下となっている場合には、ステップS38に移行する。ステップS38では、センス電圧が正常値であると判定される。ステップS38の後はステップS39に移行する。
ステップS39では、ローサイド電圧が閾値よりも高いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図9の点線DL4で示される閾値のことである。ローサイド電圧が閾値よりも高い場合には、ステップS40に移行する。ステップS40では、ローサイド電圧が「HI異常」であると判定される。ここでいう「HI異常」とは、ローサイド電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも高い値となっていることを示すものである。ステップS40の後はステップS42に移行する。
ステップS39において、ローサイド電圧が閾値以下となっている場合には、ステップS41に移行する。ステップS41では、ローサイド電圧が正常値であると判定される。ステップS41の後はステップS42に移行する。
ステップS42では、ローサイド電流が閾値よりも高いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図9の点線DL6で示される閾値のことである。ローサイド電流が閾値よりも高い場合には、ステップS43に移行する。ステップS43では、ローサイド電流が「HI異常」であると判定される。ここでいう「HI異常」とは、ローサイド電流が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも高い値となっていることを示すものである。ステップS43の後はステップS45に移行する。
ステップS42において、ローサイド電流が閾値以下となっている場合には、ステップS44に移行する。ステップS44では、ローサイド電流が正常値であると判定される。ステップS44の後はステップS45に移行する。
ステップS45では、ハイサイド電流の値からローサード電流の値を差し引くことにより電流偏差が算出された後、当該電流偏差が閾値よりも低いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図9の点線DL7で示される閾値のことである。電流偏差が閾値よりも低い場合には、ステップS46に移行する。ステップS46では、電流偏差が「LO異常」であると判定される。ここでいう「LO異常」とは、電流偏差が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも低い値となっていることを示すものである。ステップS46の後は、図12に示される一連の処理を終了し、図11の処理に戻る。
ステップS45において、電流偏差が閾値以上となっている場合には、ステップS47に移行する。ステップS47では、電流偏差が正常値であると判定される。ステップS47の後は、図12に示される一連の処理を終了し、図11の処理に戻る。
以上に説明したように、図11のステップS23において、故障検出部33は、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、ローサイド電流、及び電流偏差からなるそれぞれのパラメータについて、個別に設定された閾値と比較することにより、各パラメータの値が正常値か異常値かを判別している。このため、ステップS23の処理が完了した時点においては、ハイサイド電圧等のそれぞれのパラメータについて、その値が正常値であるか異常値であるかの判別がなされた状態となっている。
ステップS23に続くステップS24では、上記それぞれの判別の結果に基づいて、ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおける各配線の故障が判定される。その判定方法について、図14を参照しながら説明する。
図14のうち上段部分、すなわち「ヒーターOFF時」と表記された部分においては、ヒーター40への通電がOFFとなっているときの、各パラメータについての判別結果と、そのとき生じている故障の態様との関係が示されている。
図14では、例えば、ハイサイド配線211において天絡故障が生じているときにおいては、ハイサイド電圧がHI異常となり、センス電圧がHI異常1となり、ローサイド電流がHI異常となり、電流偏差がLO異常となり、その他のパラメータが正常値となることが示されている。換言すれば、ハイサイド電圧がHI異常となっており、センス電圧がHI異常1となっており、ローサイド電流がHI異常となっており、電流偏差がLO異常となっており、その他のパラメータが正常値となっているときには、ハイサイド配線において天絡故障が生じていると判定できることが示されている。このように、各パラメータの判別結果の組み合わせに基づけば、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所の両方を特定することができる。
そこで、図11のステップS24では、ステップS23で得られた判別結果の組み合わせ、つまり、それぞれのパラメータについての、正常値か異常値かの判別結果の組み合わせに応じて、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所を特定することとしている。
ただし、図14に示されるように、いずれかの配線において断線故障又は地絡故障が生じた際には、各パラメータについての判別結果がいずれも正常値となってしまう。このため、ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおいては、断線故障や地絡故障が生じたことを判定することができない。
しかしながら、ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおいて断線故障や地絡故障が生じても、正常時と同様にヒーター40には通電が行われないのであるから、これらの故障を判定することができなくても特に問題は生じない。
一方、ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおいて、いずれかの配線で天絡故障が生じると、ヒーター40において予期せぬ発熱が生じたり、一部において過電流が生じたりする可能性がある。故障検出部33は、いずれかの配線で天絡故障が生じた場合には、その旨及び故障が生じた箇所を特定することができるので、例えば、安全のためにローサイドスイッチ28をOFFに切り換えるなどの対応を行うことが可能となる。
ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおいて、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、ローサイド電流、及び電流偏差からなるそれぞれのパラメータについての全ての判別結果と、図14とを照らし合わせれば、断線故障及び地絡故障を除き、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所の両方を特定することができる。しかしながら、全ての判別結果を図14と照らし合わせるのではなく、一部の判別結果のみを図14と照らし合わせて故障検出を行うことも可能である。このような故障検出の方法については後に説明する。
図11に戻って説明を続ける。ステップS21において、駆動信号がONであるときにはステップS25に移行する。ステップS25では、ハイサイドスイッチ27がONのとき、すなわちヒーター40への通電がONとなっているときにおける、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のそれぞれの値が取得される。
ステップS25に続くステップS26では、ステップS25で取得されたそれぞれの値を、図10を参照しながら説明した閾値と比較し、当該値が正常値か異常値かを判別する処理が行われる。
図13に示されるフローチャートは、図11のステップS26において実行される処理の具体的な流れを示すものである。当該処理の最初のステップS51では、ハイサイド電圧が閾値よりも低いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図10の点線DL11で示される閾値のことである。ハイサイド電圧が閾値よりも低い場合には、ステップS52に移行する。ステップS52では、ハイサイド電圧が「LO異常」であると判定される。ここでいう「LO異常」とは、ハイサイド電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも低い値となっていることを示すものである。ステップS52の後はステップS54に移行する。
ステップS51において、ハイサイド電圧が閾値以上となっている場合には、ステップS53に移行する。ステップS53では、ハイサイド電圧が正常値であると判定される。ステップS53の後はステップS54に移行する。
ステップS54では、センス電圧が第1閾値よりも低いか否かが判定される。ここでいう「第1閾値」とは、図10の点線DL13で示される閾値のことである。センス電圧が第1閾値よりも低い場合にはステップS55に移行する。ステップS55では、センス電圧が「LO異常」であると判定される。ここでいう「LO異常」とは、センス電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも低くなっていることを示すものである。ステップS55の後はステップS59に移行する。
ステップS54において、センス電圧が第1閾値以上であった場合には、ステップS56に移行する。ステップS56では、センス電圧が第2閾値よりも高いか否かが判定される。ここでいう「第2閾値」とは、図10の点線DL12で示される閾値のことである。センス電圧が第2閾値よりも高い場合にはステップS57に移行する。ステップS57では、センス電圧が「HI異常」であると判定される。ここでいう「HI異常」とは、センス電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも高くなっていることを示すものである。ステップS57の後はステップS59に移行する。
ステップS56において、センス電圧が第2閾値以下となっている場合には、ステップS58に移行する。ステップS58では、センス電圧が正常値であると判定される。ステップS58の後はステップS59に移行する。
ステップS59では、ローサイド電圧が閾値よりも高いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図10の点線DL14で示される閾値のことである。ローサイド電圧が閾値よりも高い場合には、ステップS60に移行する。ステップS60では、ローサイド電圧が「HI異常」であると判定される。ここでいう「HI異常」とは、ローサイド電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも高い値となっていることを示すものである。ステップS60の後はステップS62に移行する。
ステップS59において、ローサイド電圧が閾値以下となっている場合には、ステップS61に移行する。ステップS61では、ローサイド電圧が正常値であると判定される。ステップS61の後はステップS62に移行する。
ステップS62では、ハイサイド電流が閾値よりも低いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図10の点線DL15で示される閾値のことである。ハイサイド電流が閾値よりも低い場合には、ステップS63に移行する。ステップS63では、ハイサイド電流が「LO異常」であると判定される。ここでいう「LO異常」とは、ハイサイド電流が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも低い値となっていることを示すものである。ステップS63の後はステップS65に移行する。
ステップS62において、ハイサイド電流が閾値以上となっている場合には、ステップS64に移行する。ステップS64では、ハイサイド電流が正常値であると判定される。ステップS64の後はステップS65に移行する。
ステップS65では、ローサイド電流が閾値よりも低いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図10の点線DL16で示される閾値のことである。ローサイド電流が閾値よりも低い場合には、ステップS66に移行する。ステップS66では、ローサイド電流が「LO異常」であると判定される。ここでいう「LO異常」とは、ローサイド電流が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも低い値となっていることを示すものである。ステップS66の後はステップS68に移行する。
ステップS65において、ローサイド電流が閾値以上となっている場合には、ステップS67に移行する。ステップS67では、ローサイド電流が正常値であると判定される。ステップS67の後はステップS68に移行する。
ステップS68では、ハイサイド電流の値からローサード電流の値を差し引くことにより電流偏差が算出された後、当該電流偏差が閾値よりも高いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図10の点線DL17で示される閾値のことである。電流偏差が閾値よりも高い場合には、ステップS69に移行する。ステップS69では、電流偏差が「HI異常」であると判定される。ここでいう「HI異常」とは、電流偏差が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも高い値となっていることを示すものである。ステップS69の後は、図13に示される一連の処理を終了し、図11の処理に戻る。
ステップS68において、電流偏差が閾値以下となっている場合には、ステップS70に移行する。ステップS70では、電流偏差が正常値であると判定される。ステップS70の後は、図13に示される一連の処理を終了し、図11の処理に戻る。
以上に説明したように、図11のステップS26において、故障検出部33は、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、ローサイド電流、及び電流偏差からなるそれぞれのパラメータについて、個別に設定された閾値と比較することにより、各パラメータの値が正常値か異常値かを判別している。このため、ステップS26の処理が完了した時点においては、ハイサイド電圧等のそれぞれのパラメータについて、その値が正常値であるか異常値であるかの判別がなされた状態となっている。
ステップS26に続くステップS27では、上記それぞれの判別の結果に基づいて、ヒーター40への通電がONとなっているときにおける各配線の故障が判定される。その判定方法について、図14を再び参照しながら説明する。
図14のうち下段部分、すなわち「ヒーターON時」と表記された部分においては、ヒーター40への通電がONとなっているときの、各パラメータについての判別結果と、そのとき生じている故障の態様との関係が示されている。
図14では、例えば、ハイサイド配線211において断線故障が生じているときにおいては、センス電圧がLO異常となり、ハイサイド電流がLO異常となり、ローサイド電流がLO異常となり、その他のパラメータが正常値となることが示されている。換言すれば、センス電圧がLO異常となっており、ハイサイド電流がLO異常となっており、ローサイド電流がLO異常となっており、その他のパラメータが正常値となっているときには、ハイサイド配線において断線故障が生じていると判定できることが示されている。このように、各パラメータの判別結果の組み合わせに基づけば、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所の両方を特定することができる。
そこで、図11のステップS27では、ステップS26で得られた判別結果の組み合わせ、つまり、それぞれのパラメータについての、正常値か異常値かの判別結果の組み合わせに応じて、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所を特定することとしている。
図14に示されるように、ヒーター40への通電がONとなっているときにおいては、各パラメータの判別結果の組み合わせと、故障の態様及び箇所とは、1対1で対応している。従って、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、ローサイド電流、及び電流偏差からなるそれぞれのパラメータについての全ての判別結果と、図14とを照らし合わせれば、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所の両方を特定することができる。しかしながら、全ての判別結果を図14と照らし合わせるのではなく、一部の判別結果のみを図14と照らし合わせて故障検出を行うことも可能である。このような故障検出の方法については後に説明する。
ところで、仮に、制御装置10がセンス電圧取得部23を備えておらず、図11のステップS26の判定がハイサイド電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、ローサイド電流、及び電流偏差についてのみ行われるような場合には、ハイサイド配線211で断線故障が生じた場合における各判別結果の組み合わせと、ローサイド配線231で断線故障が生じた場合における各判別結果の組み合わせとが、完全に一致してしまうこととなる。従って、このような場合には、断線故障が生じたことは判定することができるが、ハイサイド配線211及びローサイド配線231のどちらで断線故障が生じたのかについては判定することができない。
しかしながら、本実施形態の制御装置10はセンス電圧取得部23を備えており、取得されたセンス電圧についての判別結果にも基づいて故障検出が行われる。これにより、ハイサイド配線211で断線故障が生じた場合と、ローサイド配線231で断線故障が生じた場合との間で、各判別結果の組み合わせが異なることとなるので、どちらの配線で断線故障が生じたのかについても判定することが可能となる。
ハイサイド電圧等の全ての判別結果ではなく、一部の判別結果のみを図14と照らし合わせて故障検出を行う方法の例について説明する。図15に示される一連の処理は、ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおいて、ハイサイド配線211で天絡故障が生じているか否かを判定するために行われる処理となっている。当該処理は、例えば、図11のステップS23の処理に続けて行われる。
当該処理の最初のステップS81では、ハイサイド電圧がHI異常であるか否かが判定される。ハイサイド電圧がHI異常である場合にはステップS82に移行する。ステップS82では、センス電圧がHI異常1であるか否かが判定される。センス電圧がHI異常1である場合にはステップS83に移行する。ステップS83では、ローサイド電圧が正常値であるか否かが判定される。ローサイド電圧が正常値であった場合にはステップS84に移行する。ステップS84では、ハイサイド配線211で天絡故障が生じていると判定される。
ステップS81においてハイサイド電圧がHI異常ではなかった場合、ステップS82においてセンス電圧がHI異常1ではなかった場合、及びステップS83においてローサイド電圧が正常値ではなかった場合には、いずれもステップS85に移行する。ステップS85では、ハイサイド配線211で天絡故障が生じていないと判定される。
このように、図15に示される処理によれば、ハイサイド電圧、センス電圧、及びローサイド電圧からなる3つのパラメータの判別結果に応じて、ハイサイド配線211で天絡故障が生じているか否かを判定することができる。ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、ローサイド電流、及び電流偏差、からなる全てパラメータの判別結果に基づく必要が無いので、例えば、故障検出のためのプログラムの処理を簡素化することが可能となる。
ここでは、ハイサイド配線211で天絡故障が生じているか否かを判定する方法について説明したが、その他の故障についても、一部のパラメータの判別結果に応じて判定することが可能である。判定に用いられるパラメータの種類や数は、判定すべき故障の種類に応じて適宜設定すればよい。図16には、各故障を判定する方法の例を論理回路図として示してある。
例えば、最も上段の「ハイサイド配線 断線」と記載された部分では、ヒーター40への通電がONとなっているときにおいて、ハイサイド電圧が正常値となり、センス電圧がLO異常となり、ローサイド電圧が正常値となり、ハイサイド電流がLO異常となり、ローサイド電流がLO異常となった場合には、ハイサイド配線211において断線故障が生じたと判定されることが示されている。このように、ハイサイド配線211において断線故障が生じたか否かの判定は、5つのパラメータについての各判別結果の組み合わせに応じて行うことができる。当該判定の結果が出力される部分には「R1」の符号が付されている。
同様に、ハイサイド配線211において天絡故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R2」の符号が付されており、ハイサイド配線211において地絡故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R3」の符号が付されている。
また、センス配線221において断線故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R4」の符号が付されており、センス配線221において天絡故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R5」の符号が付されており、センス配線221において地絡故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R6」の符号が付されている。
更に、ローサイド配線231において断線故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R7」の符号が付されており、ローサイド配線231において天絡故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R8」の符号が付されており、ローサイド配線231において地絡故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R9」の符号が付されている。
R1乃至R9によって、ハイサイド配線211の断線故障、ハイサイド配線211の天絡故障、ハイサイド配線211の地絡故障、センス配線221の断線故障、センス配線221の天絡故障、センス配線221の地絡故障、ローサイド配線231の断線故障、ローサイド配線231の天絡故障、及びローサイド配線231の地絡故障のうち、どの故障が発生しているのかを特定することが可能となる。図16において「R0」の符号が付されているのは、制御装置10の全体が正常であるか否かを示す判定結果が出力される部分である。R1乃至R9のいずれかにおいて、故障が生じたとの判定結果が出力されると、R0においては故障を示す判定結果が出力される。
故障検出のために用いられるパラメータの選び方は、図15や図16に示される例に限られない。図17に示される一連の処理は、ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおいて、ハイサイド配線211で天絡故障が生じているか否かを判定するために行われる処理の他の例となっている。当該処理は、図15に示される一連の処理に換えて実行することができる。
当該処理の最初のステップS91では、ハイサイド電圧がHI異常であるか否かが判定される。ハイサイド電圧がHI異常である場合にはステップS92に移行する。ステップS92では、センス電圧がHI異常2であるか否かが判定される。センス電圧がHI異常2でない場合にはステップS93に移行する。ステップS93では、ハイサイド配線211で天絡故障が生じていると判定される。
ステップS91においてハイサイド電圧がHI異常ではなかった場合、及びステップS92においてセンス電圧がHI異常2であった場合には、いずれもステップS94に移行する。ステップS94では、ハイサイド配線211で天絡故障が生じていないと判定される。
このように、図17に示される処理によれば、ハイサイド電圧及びセンス電圧からなる2つのパラメータの判別結果に応じて、ハイサイド配線211で天絡故障が生じているか否かを判定することができる。判定に用いられるパラメータの数が少なくなることで、故障検出のためのプログラムの処理を更に簡素化することが可能となる。
ここでは、ハイサイド配線211で天絡故障が生じているか否かを判定する方法の他の例について説明したが、その他の故障についても、図16に示される方法とは異なる方法で判定することができる。図18には、各故障を判定する方法の他の例を論理回路図として示してある。その表記方法は図16と同様であるから、詳細な説明については省略する。
尚、図16や図18に示した判定方法の例は、電流偏差についての判別結果を用いることなく故障検出が行われる例となっている。しかしながら、電流偏差についての判別結果を用いて故障検出を行ってもよいことはいうまでもない。
例えば、接地部29の接地電位が変動してしまった場合には、ハイサイド電流やローサイド電流のそれぞれの値も変動してしまい、それぞれについて設定された閾値との比較結果が変化してしまう可能性がある。しかしながら、電流偏差の値は、上記のような接地電位の変動による影響を受けないので、閾値との比較結果が変わらないという利点が得られる。
以上に説明したように、本実施形態に係る故障検出部33は、ハイサイド電圧、ローサイド電圧、センス電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のそれぞれに基づいて、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所を特定するように構成されている。具体的には、故障検出部33は、ハイサイド電圧、ローサイド電圧、センス電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流からなるそれぞれのパラメータについて、個別に設定された閾値と比較することにより、各パラメータの値が正常値か異常値かを判別する。その後、それぞれのパラメータについての、正常値か異常値かの判別結果の組み合わせに応じて、各配線において生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所を特定するように構成されている。尚、上記の「異常値」に「LO異常」や「HI異常」等が含まれるのは先に述べた通りである。上記における「各配線」とは、本実施形態ではハイサイド配線211、センス配線221、及びローサイド配線231のことである。また、故障の「態様」とは、本実施形態では断線故障、天絡故障、及び地絡故障のいずれかのことである。
以上のような判定方法によれば、正常値か異常値かの判別結果の組み合わせを図14と照らし合わせることで、故障の態様及び箇所を正確に且つ容易に判定することが可能となる。
制御装置10は、ヒーター40に電力が供給される経路の開閉を切り換えるためのスイッチとして、ハイサイドスイッチ27を備えている。故障検出部33が故障検出を行うにあたっては、ハイサイドスイッチ27がOFFのときに取得された各パラメータの判別結果、もしくは、ハイサイドスイッチ27がONのときに取得された各パラメータの判別結果、のいずれか一方のみに基づいて、ハイサイド配線211、センス配線221、及びローサイド配線231のいずれかにおいて生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所を特定することができる。上記における故障の「態様」とは、本実施形態では断線故障、天絡故障、地絡故障のいずれかのことである。
つまり、故障検出部33は、ハイサイドスイッチ27が、OFF又はONのうちの一方のままであるときに取得されたハイサイド電圧、ローサイド電圧、センス電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のそれぞれに基づいて、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所を特定するように構成されている。
ハイサイドスイッチ27のオンオフを繰り返すことなく故障検出を行うことができるので、ハイサイドスイッチ27がスイッチング動作を行っている期間のみならず、ハイサイドスイッチ27がOFF又はONのままで変化しない期間においても、故障の態様及び箇所を特定することができる。
ところで、電源50の電圧値が変動した場合には、正常時におけるハイサイド電圧等の値もそれに応じて変動する。同様に、故障時におけるハイサイド電圧等の値も、電源50の電圧値に応じて変動する。
図19の線L1は、電源50の電圧値、すなわち供給電圧の値と、ハイサイド電圧との関係を示すものである。尚、ここで示されるハイサイド電圧とは、ヒーター40への通電がOFFとなっているときに、ハイサイド配線211において天絡故障が生じた場合におけるハイサイド電圧のことである。つまり、図9(A)のうち左から3番目に示されるハイサイド電圧の範囲に対応するものである。
線L1によって示されるように、供給電圧が高くなると、それに応じてハイサイド電圧の値も高くなる。このため、図9の点線DL1で示される閾値を常に一定とした場合には、供給電圧の変動に伴って、ハイサイド電圧が正常値か異常値かの判別が正確には行えなくなってしまう可能性がある。
そこで、本実施形態に係る故障検出部33は、上記閾値を常に一定とするのではなく、供給電圧に応じて変更することとしている。図19に示される点線DL1は、このように変更される閾値を示すものである。本実施形態では、供給電圧が高くなる程、点線DL1の閾値も高くなるように変更することとしている。
このような閾値の変更は、他のパラメータ、すなわちセンス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、ローサイド電流、及び電流偏差のそれぞれについても、上記と同様に行うことができる。このように、本実施形態に係る故障検出部33は、電源50の電圧値に応じて、それぞれの上記パラメータについて設定された閾値を変更するように構成されている。これにより、各パラメータが正常値か異常値かの判別を正確に行うことが可能となる。
尚、図9(F)の点線DL7で示される閾値のように、閾値が負値である場合には、電源50の電圧値が高くなる程、閾値の値が低くなるように変更すればよい。つまり、電源50の電圧値が高くなる程、閾値の絶対値が高くなるように変更すればよい。
故障検出部33によって故障検出がなされた後の処理について、図20を参照しながら説明する。図20に示される一連の処理は、図11に示される処理が完了した後に、マイコン30によって実行されるものである。
図20に示される処理の最初のステップS101では、いずれかの配線で地絡故障が生じているか否かが判定される。当該判定は、先に行われた図11の処理の結果に基づいて行われる。いずれかの配線で地絡故障が生じている場合にはステップS102に移行する。いずれの配線でも地絡故障が生じていない場合には、ステップS102を経ることなく、後述のS103へと移行する。
ステップS102に移行した場合には、電源50と地絡箇所との間がハイサイドスイッチ27を介して接続されてしまい、両者の間で過電流が生じてしまう可能性がある。そこで、ステップS102では、ハイサイドスイッチ27をOFFに切り換える処理が行われる。当該処理は遮断部34によって行われる。これにより、上記のような過電流の経路を遮断することができる。
ステップS102に続くステップS103では、いずれかの配線で天絡故障が生じているか否かが判定される。当該判定は、先に行われた図11の処理の結果に基づいて行われる。いずれかの配線で天絡故障が生じている場合にはステップS104に移行する。いずれの配線でも天絡故障が生じていない場合には、ステップS104を経ることなく、図20に示される一連の処理を終了する。
ステップS104に移行した場合には、天絡箇所と接地部29との間がローサイドスイッチ28を介して接続されてしまい、両者の間で過電流が生じてしまう可能性がある。そこで、ステップS104では、ローサイドスイッチ28をOFFに切り換える処理が行われる。当該処理は遮断部34によって行われる。これにより、上記のような過電流の経路を遮断することができる。
このように、本実施形態に係る制御装置10では、ヒーター40に接続された各配線のいずれかが接地部の電位へと短絡した状態となる地絡故障、が生じたことが、故障検出部33によって検出された場合には、遮断部34が、ハイサイドスイッチ27を開状態に切り換える。また、ヒーター40に接続された各配線のいずれかが、電源50の電位へと短絡した状態となる天絡故障、が生じたことが、故障検出部33によって検出された場合には、遮断部34は、ローサイドスイッチ28を開状態に切り換える。遮断部34がこのような処理を行うことで、過電流が生じてしまうことを防止することができる。
以上においては、図2に示されるように、センス電極440が、発熱電極410とリード電極430との接続部近傍に接続されている場合の例について説明した。しかしながら、センス電極440が、発熱電極410とリード電極420との接続部近傍に接続されている構成であっても、これまでに説明したものと同様の方法で故障検出を行うことができる。
この場合、例えばヒーター40への通電がONとなっているときのセンス電圧やセンス電流等が、センス電極440の接続位置の変更に伴って、第1実施形態から変化することとなる。このため、図9(C)の点線DL6で示される閾値等、これまでに説明した各種の閾値を、センス電圧等の変化に合わせて適宜変更することが好ましい。
第2実施形態について説明する。本実施形態に係る制御装置10のハードウェア構成は、図1の第1実施形態における構成と同じである。一方、本実施形態では、ハイサイドスイッチ27やローサイドスイッチ28の駆動方法において第1実施形態と異なっている。
本実施形態に係る制御装置10は、ハイサイドスイッチ27を常にONとしながら、ローサイドスイッチ28にスイッチング動作を行わせる、所謂「ローサイド駆動型」の制御装置として構成されている。このため、本実施形態では、ローサイドスイッチ28がONとなっている期間においてはヒーター40がONとなり、ローサイドスイッチ28がOFFとなっている期間においてはヒーター40がOFFとなる。
図21には、駆動信号等の時間変化の例が、図4と同様の方法で示されている。図21の例では、時刻t10から時刻t20までの期間、及び時刻t30から時刻t40までの期間において、ローサイドスイッチ28への駆動信号はONとされ、それ以外の期間においては、ローサイドスイッチ28への駆動信号はOFFとされている。一方、ハイサイドスイッチ27への駆動信号は、常時ONとされている。
図21(C)に示されるように、ローサイドスイッチ28の状態によることなく、ハイサイド電圧は常にV1となる。V1は、電源50から供給される電圧に概ね等しい。
図21(D)に示されるように、ローサイドスイッチ28がONとなっている期間では、センス電圧はV2となる。ローサイドスイッチ28がOFFとなっている期間では、センス電圧はV1となる。V2は、上記のV1よりも低い電圧である。V2とV1との差は、発熱電極410及びリード電極420における電圧降下分に相当する。
図21(E)に示されるように、ローサイドスイッチ28がONとなっている期間では、ローサイド電圧は0となる。ローサイドスイッチ28がOFFとなっている期間では、ハイサイド電圧はV1となる。先に述べたように、V1は、電源50から供給される電圧に概ね等しい。
図21(F)に示されるように、ローサイドスイッチ28がONとなっている期間では、ハイサイド電流はI1となる。ローサイドスイッチ28がOFFとなっている期間では、ハイサイド電流は0となる。
図21(G)に示されるように、ローサイドスイッチ28がONとなっている期間では、ローサイド電流はI2となる。ローサイドスイッチ28がOFFとなっている期間では、ローサイド電流は0となる。配線の故障が生じておらず、ヒーター40が正常に動作しているときには、I1とI2とは互いに等しい。
尚、ハイサイド電圧取得部22によるハイサイド電圧の取得等は、常時連続的に行われるのではなく、特定のタイミングで繰り返し行われる。本実施形態においては、ローサイドスイッチ28がONとなっている期間、及びローサイドスイッチ28がOFFとなっている期間、のそれぞれにおいて、ハイサイド電圧等の取得が1回ずつ行われる。
図21では、ローサイドスイッチ28がONとなっている期間において、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流の各値が取得されるタイミングが、時刻t11、t31として示されている。これらはいずれも、ローサイドスイッチ28がONとなってから所定の期間が経過した時刻として設定されている。
また、図21では、ローサイドスイッチ28がOFFとなっている期間において、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流の各値が取得されるタイミングが、時刻t01、t21として示されている。これらはいずれも、ローサイドスイッチ28がOFFとなってから所定の期間が経過した時刻として設定されている。
電流や電圧を取得するタイミングは、適宜変更してもよい。例えば、ローサイドスイッチ28がONとなっている期間が比較的長い場合には、当該期間において複数回、ハイサイド電圧等が取得されることとしてもよい。
図21の例では、ローサイドスイッチ28がONとなっている期間と、ローサイドスイッチ28がOFFとなっている期間とが概ね等しくなっている。つまり、駆動信号のデューティが50%となっている。動作制御部31は、駆動信号のデューティを適宜変更することで、ヒーター40における発熱量を調整し、ヒーター40の発熱部の温度を所定の目標温度に一致させることができる。そのために行われる処理の内容は、図5や図6を参照しながら説明したものと同様であるから、具体的な説明については省略する。
本実施形態における、故障検出部33による故障の判定方法について説明する。図22には、ローサイドスイッチ28がOFFとなっているとき、すなわちヒーター40への通電がOFFとなっているときに、ハイサイド電圧等のそれぞれがとり得る値の範囲が、図9と同様の方法により示されている。
図22に示されるように、ヒーター40がOFFとなっており、且つ正常時においては、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のいずれもが、電源50の電圧と概ね等しい電圧となっている。電流の流れる経路はローサイドスイッチ28によって遮断されているので、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のいずれもが0となっている。
ヒーター40がOFFとなっており、ハイサイド配線211で断線故障が生じているときには、その影響により、センス電圧及びローサイド電圧のいずれもが0となっている。断線箇所よりも電源50側の部分には、電源50からの電圧が印加された状態となっているので、ハイサイド電圧は正常時と同じ値となっている。ローサイド電圧、ハイサイド電流及びローサイド電流は、正常時と同様にいずれも0のままとなっている。
ヒーター40がOFFとなっており、ハイサイド配線211で天絡故障が生じているときには、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のいずれもが、正常時と同じ値となっている。
ヒーター40がOFFとなっており、ハイサイド配線211で地絡故障が生じているときには、その影響により、ハイサイド電圧、センス電圧、及びローサイド電圧のいずれもが0となっている。このとき、地絡箇所と接地部29との間は同電位となるので、ローサイド電流の値は0となる。一方、電源50と地絡箇所との間が短絡されるので、ハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えていない場合には、両者間に過電流が流れる。このため、ハイサイド電流の値は正常時よりも高い値となる。ハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えている場合には、過電流が直ちに遮断される。このため、ハイサイド電流の値は0となる。
ヒーター40がOFFとなっており、センス配線221で断線故障が生じているときには、その影響により、センス電圧取得部23で取得されるセンス電圧が0となっている。ハイサイド電圧及びローサイド電圧は、いずれも正常時と同じ値となっている。また、ハイサイド電流及びローサイド電流も、正常時と同様に0となっている。
ヒーター40がOFFとなっており、センス配線221で天絡故障が生じているときには、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のいずれもが、正常時と同じ値となっている。
ヒーター40がOFFとなっており、センス配線221で地絡故障が生じているときには、その影響により、センス電圧及びローサイド電圧がいずれも0となっている。ハイサイド電圧は正常時と同じ値となっている。このとき、ハイサイド配線211とセンス配線221との間では電位差が生じることとなるので、当該電位差に起因してヒーター40には電流が流れてしまい、ハイサイド電流の値は正常時よりも高い値となる。一方、ローサイド電流の値は0のままとなっている。
ヒーター40がOFFとなっており、ローサイド配線231で断線故障が生じているときには、その影響により、ローサイド電圧が0となっている。ハイサイド電圧及びセンス電圧は、正常時と同じ値となっている。また、ハイサイド電流及びローサイド電流も、正常時と同様に0となっている。
ヒーター40がOFFとなっており、ローサイド配線231で天絡故障が生じているときには、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のいずれもが、正常時と同じ値となっている。この点は、ハイサイドスイッチ27等が保護回路272を備えていても備えていなくても変わらない。
ヒーター40がOFFとなっており、ローサイド配線231で地絡故障が生じているときには、その影響によりローサイド電圧が0となっている。また、電源50と地絡箇所との間では電流が流れており、ヒーター40では電圧降下が生じているので、センス電圧は、電源50の電圧よりは低く且つローサイド電圧よりは高い値となっている。上記のように、電源50と地絡箇所との間では電流が流れているので、ハイサイド電流は通常時よりも高い値となっている。一方、ローサイド電流は0のままとなっている。
以上のように、ヒーター40がOFFとなっているときに、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のそれぞれがとり得る値の組み合わせは、各配線で生じた故障の種類や箇所に応じて、正常時における組み合わせとは異なるものとなる。従って、本実施形態に係る故障検出部33は、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のそれぞれに基づいて、配線で生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所を特定することとしている。
図22(A)に示される点線DL1は、ヒーター40がOFFとなっているときにおいて、ハイサイド電圧が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるハイサイド電圧よりも低く、且つ、ハイサイド配線211で地絡故障が生じたときにおけるハイサイド電圧よりも高い値として設定されている。後に説明するように、故障検出部33は、取得されたハイサイド電圧を上記の閾値と比較することで、ハイサイド電圧が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「LO異常」のことである。
図22(B)に示される点線DL2及び点線DL3は、ヒーター40がOFFとなっているときにおいて、センス電圧が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。本実施形態では、異常時においてセンス電圧のとり得る値が2つ存在するので、これらを区別するために2つの閾値が設定されている。点線DL2で示される閾値は、ローサイド配線231で地絡故障が生じたときにおけるセンス電圧よりも高く、且つ、正常時におけるセンス電圧よりも低い値として設定されている。また、点線DL3で示される閾値は、ハイサイド配線211で断線故障や地絡故障が生じたときにおけるセンス電圧、センス配線221で断線故障や地絡故障が生じたときにおけるセンス電圧、のそれぞれよりも高く、且つ、ローサイド配線231で地絡故障が生じたときにおけるセンス電圧よりも低い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたセンス電圧をこれら2つの閾値と比較することで、センス電圧が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」には、後述の「LO異常1」及び「LO異常2」の2種類が含まれる。
図22(C)に示される点線DL4は、ヒーター40がOFFとなっているときにおいて、ローサイド電圧が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるローサイド電圧よりも低く、且つ、ハイサイド配線211で断線故障や地絡故障が生じたときにおけるローサイド電圧、センス配線221で地絡故障が生じたときにおけるローサイド電圧、及びローサイド配線231で断線故障や地絡故障が生じたときにおけるローサイド電圧、のそれぞれよりも高い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたローサイド電圧を上記の閾値と比較することで、ローサイド電圧が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「LO異常」のことである。
図22(D)に示される点線DL5は、ヒーター40がOFFとなっているときにおいて、ハイサイド電流が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるハイサイド電流の値よりも高く、且つ、ハイサイド配線211で地絡故障が生じておりハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えていないときにおけるハイサイド電流、センス配線221で地絡故障が生じたときにおけるハイサイド電流、及びローサイド配線231で地絡故障が生じたときにおけるハイサイド電流、のそれぞれよりも低い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたハイサイド電流を上記の閾値と比較することで、ハイサイド電流が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「HI異常」のことである。
故障が発生しているか否かに拘らず、ローサイド電流の値は常に正常時と同じ値となる。このため、図22(E)では、判別の閾値を示す点線が示されていない。
図22(F)に示される点線DL7は、ヒーター40がOFFとなっているときにおいて、電流偏差が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時における電流偏差よりも高く、且つ、ハイサイド配線211で地絡故障が生じておりハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えていないときにおける電流偏差、センス配線221で地絡故障が生じたときにおける電流偏差、及びローサイド配線231で地絡故障が生じたときにおける電流偏差、のそれぞれよりも低い値として設定されている。故障検出部33は、算出された電流偏差を上記の閾値と比較することで、電流偏差が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「HI異常」のことである。
図23には、ヒーター40がONとなっているとき、すなわちヒーター40への通電がONとなっているときに、ハイサイド電圧等のそれぞれがとり得る値の範囲が、図10と同様の方法により示されている。
図23に示されるように、ヒーター40がONとなっており、且つ正常時においては、ハイサイド電圧は0よりも高く、電源50の電圧と概ね等しくなっている。また、センス電圧も0よりも高くなっているのであるが、ヒーター40を電流が流れて電圧降下が生じているので、センス電圧は電源50の電圧よりは低くなっている。ローサイド配線231は接地部29に繋がっているので、ローサイド電圧は0となっている。ヒーター40を電流が流れるので、ハイサイド電流及びローサイド電流はいずれも0よりも高く、両者は互いに等しい値となっている。
ヒーター40がONとなっており、ハイサイド配線211で断線故障が生じているときには、その影響により、センス電圧及びローサイド電圧のいずれもが0となっている。断線箇所よりも電源50側の部分には、電源50からの電圧が印加された状態となっているので、ハイサイド電圧は正常時と同じ値となっている。電流の流れる経路は断線によって遮断されているので、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のいずれもが0となっている。
ヒーター40がONとなっており、ハイサイド配線211で天絡故障が生じているときには、正常時と同様に、ハイサイド配線211には電源50の電圧が印加されることとなる。このため、ハイサイド電圧、センス電圧、及びローサイド電圧のそれぞれが、正常時と同じ値となっている。このとき、ヒーター40には電流が流れているのであるが、天絡箇所と電源50との間は同電位となるので、ハイサイド電流の値は0となる。一方、天絡箇所と接地部29との間には正常時と同様に電流が流れるので、ローサイド電流の値は正常時と同じ値となっている。
ヒーター40がONとなっており、ハイサイド配線211で地絡故障が生じているときには、その影響により、ハイサイド電圧、センス電圧、及びローサイド電圧のいずれもが0となっている。電源50と地絡箇所との間が短絡されるので、ハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えていない場合には、両者間に過電流が流れる。このため、ハイサイド電流の値は正常時よりも高い値となる。ハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えている場合には、過電流が直ちに遮断される。このため、ハイサイド電流の値は0となる。地絡箇所と接地部29との間は同電位となるので、ローサイド電流の値は0となっている。
ヒーター40がONとなっており、センス配線221で断線故障が生じているときには、ハイサイド電圧及びローサイド電圧のそれぞれが、正常時と同じ値となる。一方、断線箇所よりもセンス電圧取得部23側の部分は、分圧回路であるセンス電圧取得部23を介して接地された状態となるので、センス電圧の値は0となる。センス配線221の断線は、ヒーター40を流れる電流には影響を与えない。このため、ハイサイド電流の値及びローサイド電流の値は、いずれも正常時と同じ値となっている。
ヒーター40がONとなっており、センス配線221で天絡故障が生じているときには、その影響により、センス電圧の値が正常時よりも高い値となっている。ハイサイド電圧の値及びローサイド電圧の値は、いずれも正常時と同じ値となっている。このとき、天絡箇所と電源50との間は同電位となるので、両者の間に電流は流れず、ハイサイド電流の値は0となる。一方、天絡によってセンス電圧が高くなることで、ローサイド電流の値は正常時よりも高い値となっている。
ヒーター40がONとなっており、センス配線221で地絡故障が生じているときには、その影響によりセンス電圧が0となる。ハイサイド電圧の値及びローサイド電圧の値は、いずれも正常時と同じ値となっている。このとき、センス電圧が通常時よりも低くなるので、ハイサイド電流の値は正常時よりも僅かに高い値となる。また、地絡箇所と接地部29との間は同電位となるので、ローサイド電流の値は0となっている。
ヒーター40がONとなっており、ローサイド配線231で断線故障が生じているときには、断線箇所よりも電源50側の部分が、電源50の電位と同じになる。このため、ハイサイド電圧は通常時と同じ値になっており、センス電圧は通常時よりも高い値となっている。一方、ローサイド電圧の値は0となる。また、断線によって電流は遮断されるので、ハイサイド電流及びローサイド電流の値はいずれも0となっている。
ヒーター40がONとなっており、ローサイド配線231で天絡故障が生じているときには、天絡箇所よりも電源50側の部分が、電源50の電位と同じになる。このため、ハイサイド電圧は通常時と同じ値になっており、センス電圧及びローサイド電圧は通常時よりも高い値となっている。このとき、天絡箇所と電源50との間は同電位となるので、両者の間に電流は流れず、ハイサイド電流の値は0となる。一方、天絡箇所と接地部29との間が短絡されるので、ローサイドスイッチ28が保護回路272を備えていない場合には、両者間に過電流が流れる。このため、ローサイド電流の値は正常時よりも高い値となる。ローサイドスイッチ28が保護回路272を備えている場合には、過電流が直ちに遮断される。このため、ローサイド電流の値は0となる。
ヒーター40がONとなっており、ローサイド配線231で地絡故障が生じているときには、正常時と同様に、ローサイド配線231は接地部29と同じ電位となる。このため、ハイサイド電圧、センス電圧、及びローサイド電圧のそれぞれが、正常時と同じ値となっている。このとき、ヒーター40には電流が流れているのであるが、地絡箇所と接地部29との間は同電位となるので、ローサイド電流の値は0となる。一方、電源50と地絡箇所との間には正常時と同様に電流が流れるので、ハイサイド電流の値は正常時と同じ値となっている。
以上のように、ヒーター40がONとなっているときに、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のそれぞれがとり得る値の組み合わせも、各配線で生じた故障の種類や箇所に応じて、正常時における組み合わせとは異なるものとなる。従って、本実施形態に係る故障検出部33は、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、及びローサイド電流のそれぞれに基づいて、配線で生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所を特定することとしている。
図23(A)に示される点線DL11は、ヒーター40がONとなっているときにおいて、ハイサイド電圧が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるハイサイド電圧よりも低く、且つ、ハイサイド配線211で地絡故障が生じたときにおけるハイサイド電圧よりも高い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたハイサイド電圧を上記の閾値と比較することで、ハイサイド電圧が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「LO異常」のことである。
図23(B)に示される点線DL12及び点線DL13は、ヒーター40がONとなっているときにおいて、センス電圧が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。本実施形態では、故障時においてセンス電圧のとり得る値が2つ存在するので、これらを区別するために2つの閾値が設定されている。点線DL12で示される閾値は、センス配線221やローサイド配線231で天絡故障が生じたときにおけるセンス電圧、及びローサイド配線231で断線故障が生じたときにおけるセンス電圧よりも低く、且つ、正常時におけるセンス電圧よりも高い値として設定されている。
また、点線DL13で示される閾値は、正常時におけるセンス電圧よりも低く、且つ、ハイサイド配線211で断線故障や地絡故障が生じたときにおけるセンス電圧、及びセンス配線221で断線故障や地絡故障が生じたときにおけるセンス電圧、のそれぞれよりも高い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたセンス電圧をこれら2つの閾値と比較することで、センス電圧が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」には、後述の「LO異常」及び「HI異常」の2種類が含まれる。
図23(C)に示される点線DL14は、ヒーター40がONとなっているときにおいて、ローサイド電圧が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるローサイド電圧よりも高く、且つ、ローサイド配線231で天絡故障が生じたときにおけるローサイド電圧よりも低い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたローサイド電圧を上記の閾値と比較することで、ローサイド電圧が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「HI異常」のことである。
図23(D)に示される点線DL15は、ヒーター40がONとなっているときにおいて、ハイサイド電流が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるハイサイド電流よりも低く、且つ、ハイサイド配線211に断線故障又は天絡故障が生じているときにおけるハイサイド電流、ハイサイド配線211で地絡故障が生じておりハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えているときにおけるハイサイド電流、センス配線221で天絡故障が生じているときにおけるハイサイド電流、ローサイド配線231に断線故障又は天絡故障が生じているときにおけるハイサイド電流、のそれぞれよりも高い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたハイサイド電流を上記の閾値と比較することで、ハイサイド電流が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「LO異常」のことである。
図23(E)に示される点線DL16は、ヒーター40がONとなっているときにおいて、ローサイド電流が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時におけるローサイド電流よりも低く、且つ、ハイサイド配線211に断線故障又は地絡故障が生じているときにおけるローサイド電流、センス配線221で地絡故障が生じているときにおけるローサイド電流、ローサイド配線231で天絡故障が生じておりハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えているときにおけるローサイド電流、及びローサイド配線231に断線故障又は地絡故障が生じているときにおけるローサイド電流、のそれぞれよりも高い値として設定されている。故障検出部33は、取得されたローサイド電流を上記の閾値と比較することで、ローサイド電流が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「LO異常」のことである。
図23(F)に示される点線DL17は、ヒーター40がONとなっているときにおいて、電流偏差が正常値か異常値かを判別するために設定された閾値である。当該閾値は、正常時における電流偏差よりも高く、且つ、ハイサイド配線211で地絡故障が生じておりハイサイドスイッチ27が保護回路272を備えていないときにおける電流偏差、センス配線221又はローサイド配線231で地絡故障が生じているときにおける電流偏差、のそれぞれよりも低い値として設定されている。故障検出部33は、算出された電流偏差を上記の閾値と比較することで、電流偏差が正常値か異常値かを判別する。この場合の「異常値」とは、後述の「HI異常」のことである。
故障検出部33によって行われる故障検出の具体的な方法について説明する。本実施形態でも、故障検出は、図11に示される一連の処理を故障検出部33が実行することにより行われる。ただし、本実施形態では、図11のステップS23、ステップS24、ステップS26、及びステップS27で実行される具体的な処理の内容において、第1実施形態と異なっている。
以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。図11のステップS22に続くステップS23では、ステップS22で取得されたそれぞれの値を、図22を参照しながら説明した閾値と比較し、当該値が正常値か異常値かを判別する処理が行われる。
図24に示されるフローチャートは、本実施形態において、図11のステップS23において実行される処理の具体的な流れを示すものである。当該処理の最初のステップS111では、ハイサイド電圧が閾値よりも低いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図22の点線DL1で示される閾値のことである。ハイサイド電圧が閾値よりも低い場合には、ステップS112に移行する。ステップS112では、ハイサイド電圧が「LO異常」であると判定される。ここでいう「LO異常」とは、ハイサイド電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも低い値となっていることを示すものである。ステップS112の後はステップS114に移行する。
ステップS111において、ハイサイド電圧が閾値以上となっている場合には、ステップS113に移行する。ステップS113では、ハイサイド電圧が正常値であると判定される。ステップS113の後はステップS114に移行する。
ステップS114では、センス電圧が第2閾値よりも低いか否かが判定される。ここでいう「第2閾値」とは、図22の点線DL2で示される閾値のことである。センス電圧が第2閾値よりも低い場合にはステップS115に移行する。
ステップS115では、センス電圧が第1閾値よりも低いか否かが判定される。ここでいう「第1閾値」とは、図22の点線DL3で示される閾値のことである。センス電圧が第1閾値よりも低い場合にはステップS116に移行する。ステップS116では、センス電圧が「LO異常1」であると判定される。ここでいう「LO異常1」とは、センス電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値や第1閾値よりも低くなっていることを示すものである。ステップS116の後はステップS119に移行する。
ステップS115において、センス電圧が第1閾値以上となっている場合には、ステップS117に移行する。ステップS117では、センス電圧が「LO異常2」であると判定される。ここでいう「LO異常2」とは、センス電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には第1閾値以上となっており、且つ正常値や第2閾値よりも低くなっていることを示すものである。ステップS117の後はステップS119に移行する。
ステップS114において、センス電圧が第2閾値以上となっている場合には、ステップS118に移行する。ステップS118では、センス電圧が正常値であると判定される。ステップS118の後はステップS119に移行する。
ステップS119では、ローサイド電圧が閾値よりも低いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図22の点線DL4で示される閾値のことである。ローサイド電圧が閾値よりも低い場合には、ステップS120に移行する。ステップS120では、ローサイド電圧が「LO異常」であると判定される。ここでいう「LO異常」とは、ローサイド電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも低い値となっていることを示すものである。ステップS120の後はステップS122に移行する。
ステップS119において、ローサイド電圧が閾値以上となっている場合には、ステップS121に移行する。ステップS121では、ローサイド電圧が正常値であると判定される。ステップS121の後はステップS122に移行する。
ステップS122では、ハイサイド電流が閾値よりも高いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図22の点線DL5で示される閾値のことである。ハイサイド電流が閾値よりも高い場合には、ステップS123に移行する。ステップS123では、ハイサイド電流が「HI異常」であると判定される。ここでいう「HI異常」とは、ハイサイド電流が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも高い値となっていることを示すものである。ステップS123の後はステップS125に移行する。
ステップS122において、ハイサイド電流が閾値以下となっている場合には、ステップS124に移行する。ステップS124では、ハイサイド電流が正常値であると判定される。ステップS124の後はステップS125に移行する。
ステップS125では、ハイサイド電流の値からローサード電流の値を差し引くことにより電流偏差が算出された後、当該電流偏差が閾値よりも高いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図22の点線DL7で示される閾値のことである。電流偏差が閾値よりも高い場合には、ステップS126に移行する。ステップS126では、電流偏差が「HI異常」であると判定される。ここでいう「HI異常」とは、電流偏差が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも高い値となっていることを示すものである。ステップS126の後は、図24に示される一連の処理を終了し、図11の処理に戻る。
ステップS125において、電流偏差が閾値以下となっている場合には、ステップS127に移行する。ステップS127では、電流偏差が正常値であると判定される。ステップS127の後は、図24に示される一連の処理を終了し、図11の処理に戻る。
以上に説明したように、図11のステップS23において、故障検出部33は、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、ローサイド電流、及び電流偏差からなるそれぞれのパラメータについて、個別に設定された閾値と比較することにより、各パラメータの値が正常値か異常値かを判別している。このため、ステップS23の処理が完了した時点においては、ハイサイド電圧等のそれぞれのパラメータについて、その値が正常値であるか異常値であるかの判別がなされた状態となっている。
ステップS23に続くステップS24では、上記それぞれの判別の結果に基づいて、ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおける各配線の故障が判定される。その判定方法について、図26を参照しながら説明する。
図26のうち上段部分、すなわち「ヒーターOFF時」と表記された部分においては、ヒーター40への通電がOFFとなっているときの、各パラメータについての判別結果と、そのとき生じている故障の態様との関係が示されている。
図26では、例えば、ハイサイド配線211において断線故障が生じているときにおいては、センス電圧がLO異常1となり、ローサイド電圧がLO異常となり、その他のパラメータが正常値となることが示されている。換言すれば、センス電圧がLO異常1となっており、ローサイド電圧がLO異常となっており、その他のパラメータが正常値となっているときには、ハイサイド配線211において断線故障が生じていると判定できることが示されている。このように、各パラメータの判別結果の組み合わせに基づけば、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所の両方を特定することができる。
そこで、図11のステップS24では、ステップS23で得られた判別結果の組み合わせ、つまり、それぞれのパラメータについての、正常値か異常値かの判別結果の組み合わせに応じて、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所を特定することとしている。
ただし、図26に示されるように、いずれかの配線において天絡故障が生じた際には、各パラメータについての判別結果がいずれも正常値となってしまう。このため、ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおいては、天絡故障が生じたことを判定することができない。
しかしながら、ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおいて天絡故障が生じても、正常時と同様にヒーター40には通電が行われず、過電流が生じることもないのであるから、天絡故障を判定することができなくても特に問題は生じない。
一方、ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおいて、いずれかの配線で地絡故障が生じると、ヒーター40において予期せぬ発熱が生じたり、一部において過電流が生じたりする可能性がある。故障検出部33は、いずれかの配線で地絡故障が生じた場合には、その旨及び故障が生じた箇所を特定することができるので、例えば、安全のためにハイサイドスイッチ27をOFFに切り換えるなどの対応を行うことが可能となる。
ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおいて、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、ローサイド電流、及び電流偏差からなるそれぞれのパラメータについての全ての判別結果と、図26とを照らし合わせれば、天絡故障を除き、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所の両方を特定することができる。しかしながら、全ての判別結果を図26と照らし合わせるのではなく、一部の判別結果のみを図14と照らし合わせて故障検出を行うことも可能である。このような故障検出の方法については後に説明する。
図11のステップS25に続くステップS26では、ステップS25で取得されたそれぞれの値を、図23を参照しながら説明した閾値と比較し、当該値が正常値か異常値かを判別する処理が行われる。
図25に示されるフローチャートは、本実施形態において、図11のステップS26において実行される処理の具体的な流れを示すものである。当該処理の最初のステップS131では、ハイサイド電圧が閾値よりも低いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図23の点線DL11で示される閾値のことである。ハイサイド電圧が閾値よりも低い場合には、ステップS132に移行する。ステップS132では、ハイサイド電圧が「LO異常」であると判定される。ここでいう「LO異常」とは、ハイサイド電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも低い値となっていることを示すものである。ステップS132の後はステップS134に移行する。
ステップS131において、ハイサイド電圧が閾値以上となっている場合には、ステップS133に移行する。ステップS133では、ハイサイド電圧が正常値であると判定される。ステップS133の後はステップS134に移行する。
ステップS134では、センス電圧が第1閾値よりも低いか否かが判定される。ここでいう「第1閾値」とは、図23の点線DL13で示される閾値のことである。センス電圧が第1閾値よりも低い場合にはステップS135に移行する。ステップS135では、センス電圧が「LO異常」であると判定される。ここでいう「LO異常」とは、センス電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも低くなっていることを示すものである。ステップS135の後はステップS139に移行する。
ステップS134において、センス電圧が第1閾値以上であった場合には、ステップS136に移行する。ステップS136では、センス電圧が第2閾値よりも高いか否かが判定される。ここでいう「第2閾値」とは、図23の点線DL12で示される閾値のことである。センス電圧が第2閾値よりも高い場合にはステップS137に移行する。ステップS137では、センス電圧が「HI異常」であると判定される。ここでいう「HI異常」とは、センス電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも高くなっていることを示すものである。ステップS137の後はステップS139に移行する。
ステップS136において、センス電圧が第2閾値以下となっている場合には、ステップS138に移行する。ステップS138では、センス電圧が正常値であると判定される。ステップS138の後はステップS139に移行する。
ステップS139では、ローサイド電圧が閾値よりも高いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図23の点線DL14で示される閾値のことである。ローサイド電圧が閾値よりも高い場合には、ステップS140に移行する。ステップS140では、ローサイド電圧が「HI異常」であると判定される。ここでいう「HI異常」とは、ローサイド電圧が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも高い値となっていることを示すものである。ステップS140の後はステップS142に移行する。
ステップS139において、ローサイド電圧が閾値以下となっている場合には、ステップS141に移行する。ステップS141では、ローサイド電圧が正常値であると判定される。ステップS141の後はステップS142に移行する。
ステップS142では、ハイサイド電流が閾値よりも低いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図23の点線DL15で示される閾値のことである。ハイサイド電流が閾値よりも低い場合には、ステップS143に移行する。ステップS143では、ハイサイド電流が「LO異常」であると判定される。ここでいう「LO異常」とは、ハイサイド電流が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも低い値となっていることを示すものである。ステップS143の後はステップS145に移行する。
ステップS142において、ハイサイド電流が閾値以上となっている場合には、ステップS144に移行する。ステップS144では、ハイサイド電流が正常値であると判定される。ステップS144の後はステップS145に移行する。
ステップS145では、ローサイド電流が閾値よりも低いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図23の点線DL16で示される閾値のことである。ローサイド電流が閾値よりも低い場合には、ステップS146に移行する。ステップS146では、ローサイド電流が「LO異常」であると判定される。ここでいう「LO異常」とは、ローサイド電流が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも低い値となっていることを示すものである。ステップS146の後はステップS148に移行する。
ステップS145において、ローサイド電流が閾値以上となっている場合には、ステップS147に移行する。ステップS147では、ローサイド電流が正常値であると判定される。ステップS147の後はステップS148に移行する。
ステップS148では、ハイサイド電流の値からローサード電流の値を差し引くことにより電流偏差が算出された後、当該電流偏差が閾値よりも高いか否かが判定される。ここでいう「閾値」とは、図23の点線DL17で示される閾値のことである。電流偏差が閾値よりも高い場合には、ステップS149に移行する。ステップS149では、電流偏差が「HI異常」であると判定される。ここでいう「HI異常」とは、電流偏差が異常値であることを示すものであり、具体的には正常値よりも高い値となっていることを示すものである。ステップS149の後は、図25に示される一連の処理を終了し、図11の処理に戻る。
ステップS148において、電流偏差が閾値以下となっている場合には、ステップS150に移行する。ステップS150では、電流偏差が正常値であると判定される。ステップS150の後は、図25に示される一連の処理を終了し、図11の処理に戻る。
以上に説明したように、図11のステップS26において、故障検出部33は、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、ローサイド電流、及び電流偏差からなるそれぞれのパラメータについて、個別に設定された閾値と比較することにより、各パラメータの値が正常値か異常値かを判別している。このため、ステップS26の処理が完了した時点においては、ハイサイド電圧等のそれぞれのパラメータについて、その値が正常値であるか異常値であるかの判別がなされた状態となっている。
ステップS26に続くステップS27では、上記それぞれの判別の結果に基づいて、ヒーター40への通電がONとなっているときにおける各配線の故障が判定される。その判定方法について、図26を再び参照しながら説明する。
図26のうち下段部分、すなわち「ヒーターON時」と表記された部分においては、ヒーター40への通電がONとなっているときの、各パラメータについての判別結果と、そのとき生じている故障の態様との関係が示されている。
図26では、例えば、ハイサイド配線211において断線故障が生じているときにおいては、センス電圧がLO異常となり、ハイサイド電流がLO異常となり、ローサイド電流がLO異常となり、その他のパラメータが正常値となることが示されている。換言すれば、センス電圧がLO異常となっており、ハイサイド電流がLO異常となっており、ローサイド電流がLO異常となっており、その他のパラメータが正常値となっているときには、ハイサイド配線211において断線故障が生じていると判定できることが示されている。このように、各パラメータの判別結果の組み合わせに基づけば、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所の両方を特定することができる。
そこで、図11のステップS27では、ステップS26で得られた判別結果の組み合わせ、つまり、それぞれのパラメータについての、正常値か異常値かの判別結果の組み合わせに応じて、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所を特定することとしている。
図26に示されるように、ヒーター40への通電がONとなっているときにおいては、各パラメータの判別結果の組み合わせと、故障の態様及び箇所とは、1対1で対応している。従って、ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、ローサイド電流、及び電流偏差からなるそれぞれのパラメータについての全ての判別結果と、図26とを照らし合わせれば、生じた故障の態様、及び当該故障が生じた箇所の両方を特定することができる。しかしながら、全ての判別結果を図26と照らし合わせるのではなく、一部の判別結果のみを図26と照らし合わせて故障検出を行うことも可能である。このような故障検出の方法については後に説明する。
ところで、仮に、制御装置10がセンス電圧取得部23を備えておらず、図11のステップS26の判定がハイサイド電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、ローサイド電流、及び電流偏差についてのみ行われるような場合には、ハイサイド配線211で断線故障が生じた場合における各判別結果の組み合わせと、ローサイド配線231で断線故障が生じた場合における各判別結果の組み合わせとが、完全に一致してしまうこととなる。従って、このような場合には、断線故障が生じたことは判定することができるが、ハイサイド配線211及びローサイド配線231のどちらで断線故障が生じたのかについては判定することができない。
しかしながら、本実施形態の制御装置10はセンス電圧取得部23を備えており、取得されたセンス電圧についての判別結果にも基づいて故障検出が行われる。これにより、ハイサイド配線211で断線故障が生じた場合と、ローサイド配線231で断線故障が生じた場合との間で、各判別結果の組み合わせが異なることとなるので、どちらの配線で断線故障が生じたのかについても判定することが可能となる。
ハイサイド電圧等の全ての判別結果ではなく、一部の判別結果のみを図26と照らし合わせて故障検出を行う方法の例について説明する。図27に示される一連の処理は、ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおいて、ハイサイド配線211で地絡故障が生じているか否かを判定するために行われる処理となっている。当該処理は、例えば、図11のステップS23の処理に続けて行われる。
当該処理の最初のステップS161では、ハイサイド電圧がLO異常であるか否かが判定される。ハイサイド電圧がLO異常である場合にはステップS162に移行する。ステップS162では、センス電圧がLO異常1であるか否かが判定される。センス電圧がLO異常1である場合にはステップS163に移行する。ステップS163では、ローサイド電圧がLO異常であるか否かが判定される。ローサイド電圧がLO異常であった場合にはステップS164に移行する。ステップS164では、ハイサイド配線211で地絡故障が生じていると判定される。
ステップS161においてハイサイド電圧がLO異常ではなかった場合、ステップS162においてセンス電圧がLO異常1ではなかった場合、及びステップS163においてローサイド電圧がLO異常ではなかった場合には、いずれもステップS165に移行する。ステップS165では、ハイサイド配線211で地絡故障が生じていないと判定される。
このように、図27に示される処理によれば、ハイサイド電圧、センス電圧、及びローサイド電圧からなる3つのパラメータの判別結果に応じて、ハイサイド配線211で地絡故障が生じているか否かを判定することができる。ハイサイド電圧、センス電圧、ローサイド電圧、ハイサイド電流、ローサイド電流、及び電流偏差、からなる全てパラメータの判別結果に基づく必要が無いので、例えば、故障検出のためのプログラムの処理を簡素化することが可能となる。
ここでは、ハイサイド配線211で地絡故障が生じているか否かを判定する方法について説明したが、その他の故障についても、一部のパラメータの判別結果に応じて判定することが可能である。判定に用いられるパラメータの種類や数は、判定すべき故障の種類に応じて適宜設定すればよい。図28には、各故障を判定する方法の例を論理回路図として示してある。
例えば、最も上段の「ハイサイド配線 断線」と記載された部分では、ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおいて、ハイサイド電圧が正常値となり、センス電圧がLO異常1となり、ローサイド電圧がLO異常となり、ハイサイド電流が正常値となった場合には、ハイサイド配線211において断線故障が生じたと判定されることが示されている。また、ヒーター40への通電がONとなっているときにおいて、ハイサイド電圧が正常値となり、センス電圧がLO異常となり、ローサイド電圧が正常値となり、ハイサイド電流がLO異常となり、ローサイド電流がLO異常となった場合にも、ハイサイド配線211において断線故障が生じたと判定されることが示されている。このように、ハイサイド配線211において断線故障が生じたか否かの判定は、4つ又は5つのパラメータについての各判別結果の組み合わせに応じて行うことができる。当該判定の結果が出力される部分には「R1」の符号が付されている。
同様に、ハイサイド配線211において天絡故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R2」の符号が付されており、ハイサイド配線211において地絡故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R3」の符号が付されている。
また、センス配線221において断線故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R4」の符号が付されており、センス配線221において天絡故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R5」の符号が付されており、センス配線221において地絡故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R6」の符号が付されている。
更に、ローサイド配線231において断線故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R7」の符号が付されており、ローサイド配線231において天絡故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R8」の符号が付されており、ローサイド配線231において地絡故障が生じたか否かの判定結果が出力される部分には「R9」の符号が付されている。
R1乃至R9によって、ハイサイド配線211の断線故障、ハイサイド配線211の天絡故障、ハイサイド配線211の地絡故障、センス配線221の断線故障、センス配線221の天絡故障、センス配線221の地絡故障、ローサイド配線231の断線故障、ローサイド配線231の天絡故障、及びローサイド配線231の地絡故障のうち、どの故障が発生しているのかを特定することが可能となる。図28において「R0」の符号が付されているのは、制御装置10の全体が正常であるか否かを示す判定結果が出力される部分である。R1乃至R9のいずれかにおいて、故障が生じたとの判定結果が出力されると、R0においては故障を示す判定結果が出力される。
故障検出のために用いられるパラメータの選び方は、図27や図28に示される例に限られない。図29に示される一連の処理は、ヒーター40への通電がOFFとなっているときにおいて、ハイサイド配線211で地絡故障が生じているか否かを判定するために行われる処理の他の例となっている。当該処理は、図27に示される一連の処理に換えて実行することができる。
当該処理の最初のステップS171では、ハイサイド電圧がLO異常であるか否かが判定される。ハイサイド電圧がLO異常である場合にはステップS172に移行する。ステップS172では、ハイサイド配線211で地絡故障が生じていると判定される。
ステップS171においてハイサイド電圧がLO異常ではなかった場合には、ステップS173に移行する。ステップS173では、ハイサイド配線211で地絡故障が生じていないと判定される。
このように、図29に示される処理によれば、ハイサイド電圧のみからなる1つのパラメータの判別結果に応じて、ハイサイド配線211で地絡故障が生じているか否かを判定することができる。判定に用いられるパラメータの数が少なくなることで、故障検出のためのプログラムの処理を更に簡素化することが可能となる。
ここでは、ハイサイド配線211で地絡故障が生じているか否かを判定する方法の他の例について説明したが、その他の故障についても、図28に示される方法とは異なる方法で判定することができる。図30には、各故障を判定する方法の他の例を論理回路図として示してある。その表記方法は図28と同様であるから、詳細な説明については省略する。
尚、図28や図30に示した判定方法の例は、電流偏差についての判別結果を用いることなく故障検出が行われる例となっている。しかしながら、電流偏差についての判別結果を用いて故障検出を行ってもよいことはいうまでもない。電流偏差についての判別結果を用いて故障検出を行う場合の利点は、第1実施形態において説明したものと同じである。
以上に説明したように、制御装置10がローサイド駆動型の制御装置として構成されている場合であっても、第1実施形態と同様の方法で故障検出を行うことができ、第1実施形態で説明したものと同様の効果を得ることができる。
尚、本実施形態でも、図19を参照しながら説明したものと同様に閾値を変更することができる。また、図20を参照しながら説明したものと同様に、故障時においてハイサイドスイッチ27又はローサイドスイッチ28をOFFに切り換えることができる。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
本開示に記載の制御装置及び制御方法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の制御装置及び制御方法は、1つ又は複数の専用ハードウェア論理回路を含むプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の制御装置及び制御方法は、1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ又は複数のハードウェア論理回路を含むプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。専用ハードウェア論理回路及びハードウェア論理回路は、複数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路により実現されてもよい。