JP7218242B2 - 導電性グリース組成物 - Google Patents
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Description
しかしながら、この技術では、時間の経過と共にカーボンブラックを含有する導電性グリースが接触面から排除されたり、及び/又はカーボンブラック粒子のチェーンストラクチャーが破壊されたりするため、導電性が経時的に低下して、電食が発生してしまう恐れがある。また、カーボンブラック粒子が粉塵の原因となることも考えられる。
〔2〕前記ホスホニウム系イオン液体のカチオン部分が、トリブチルラウリルホスホニウムカチオン及びトリヘキシルテトラデシルホスホニウムカチオンから選ばれる少なくとも1種である、〔1〕に記載の導電性グリース組成物。
〔3〕JIS C 2101に準拠して測定した場合の絶縁破壊電圧が、32kV以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の導電性グリース組成物。
〔4〕前記増ちょう剤が、ウレア系増ちょう剤及び/又は金属石けん系増ちょう剤である、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の導電性グリース組成物。
〔5〕〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の導電性グリース組成物を用いることを特徴とする、転がり軸受における電食の防止方法。
本発明の導電性グリース組成物は、潤滑油基油40~95質量%、増ちょう剤2~40質量%、ホスホニウム系イオン液体0.1~18質量%を含む。
本発明の潤滑油基油としては、通常のグリースで用いられている潤滑油基油を用いることができるが、40℃における動粘度が20~500mm2/sのものが好ましく、50~300mm2/sがより好ましい。40℃における動粘度を上記範囲とすることにより、所望のちょう度を有する導電性グリース組成物を簡便に調製することができる。
本発明の増ちょう剤としては、通常のグリースで用いられている増ちょう剤であれば、特に支障なく用いることができるが、金属石けん系増ちょう剤及び/又はウレア系増ちょう剤を用いることが好ましい。増ちょう剤は、一種類でも複数の種類を混合して用いてもよい。増ちょう剤の含有量は、所望のちょう度が得られれば良く、例えば、導電性グリース組成物の全量基準で、2~40質量%、より好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは10~20質量%である。
カルボン酸は、ステアリン酸、アゼライン酸などの脂肪族カルボン酸でも、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸でもよいが、1価または2価の脂肪族カルボン酸、特には炭素数6~20の脂肪族カルボン酸が用いられる。特には、炭素数12~20の1価脂肪族カルボン酸や炭素数6~14の2価脂肪族カルボン酸が好ましく用いられる。1個のヒドロキシル基を含む1価脂肪族カルボン酸が好ましい。
金属としては、リチウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムのような両性金属でもよいが、アルカリ金属、特にはリチウムが好ましく用いられる。
このようなカルボン酸金属塩は、一種類でも複数の種類を混合して用いてもよい。例えば、12‐ヒドロキシステアリン酸リチウムとアゼライン酸リチウムの混合物は特に好ましい。
ウレア系増ちょう剤としては、例えば、ジイソシアネートとモノアミンとの反応で得られるジウレア化合物やジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られるポリウレア化合物等を用いることができる。
R11-NHCONH-R12-NHCONH-R13 (2)
(式中、R11及びR13はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数4~20の炭化水素基を示し、R12は炭素数6~24の2価の含芳香族炭化水素基を示す。)
本発明の導電性グリース組成物は、イオン液体、詳細にはホスホニウム系イオン液体を含む。イオン液体とは、カチオン成分とアニオン成分とからなるイオン結合性化合物であるにもかかわらず、室温付近(例えば、25℃)で液体となる物質をいう。ホスホニウム系イオン液体の含有量は、グリース組成物の全量基準で、製造コスト及び耐腐食性を考慮して0.1~18質量%、好ましくは0.1~16質量%、より好ましくは0.1~15質量%さらに好ましくは0.1~12質量%であり、最も好ましくは0.5~12質量%である。
本発明の導電性グリース組成物においては、驚くべきことに、少量のイオン液体(例えば、1%、又は2.5%)を配合した場合でも十分な絶縁破壊電圧の低減効果が得られ、さらに良好な耐腐食性を実現できる。
他のイオン液体(例えば、イミダゾリウム系、ピリジン系等)は腐食性が問題となることも多かった。ホスホニウム系イオン液体を使用することで導電性及び耐腐食性の両方を併せ持つグリースを提供できたことは、驚くべきことである。
本発明のグリース組成物には、上記成分以外に、必要に応じて、一般に潤滑油やグリースに用いられている、清浄剤、分散剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、極圧剤、防錆剤、腐食防止剤などを適宜添加することができる。酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール等のフェノール系化合物、ジアルキルジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、p-アルキルフェニル-α-ナフチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。防錆剤としては、例えば、アミン類、中性又は過塩基性の石油系又は合成油系金属スルフォネート、金属石けん類、エステル類、リン酸、リン酸塩等が挙げられる。
絶縁破壊とは、絶縁体にかかる電圧がある限度以上になった時に、絶縁体が電気的に破壊し絶縁性を失って電流を流すようになる現象である。絶縁破壊電圧とは、対象物において絶縁破壊が生じる際の電圧である。絶縁破壊電圧が高ければ、大きな電流が突如流れることとなり、深刻な電食が生じる原因となり得る。本発明の導電性グリース組成物では、絶縁破壊電圧が低く、したがって、転がり軸受の電食を効果的に防止することができる。本発明の導電性グリース組成物において、絶縁破壊電圧は、JISC 2101に準拠して行った場合、好ましくは32kV以下である。
〔転がり軸受〕
転がり軸受とは、軌道輪、転動体、及び保持器から構成される、ベアリングの一種である。転がり軸受においては、軌道輪と転動体との間で放電が生じ、軌道面及び転動面に電食が発生する可能性がある。この様な原因で発生する電食は、軌道面及び転動面に摩耗を生じさせると共に潤滑油の劣化等を招き、振動の増大や騒音の原因になる。本発明の導電性グリース組成物を転がり軸受の潤滑のために使用することにより、転がり軸受の電食を効果的に防止することができる。また、本発明の導電性グリース組成物は、自動車等や精密機械の内部における電食の防止のために好適に用いることができる。
各成分を表1に示す配合量(質量%で示す)の通りに含有する、グリース組成物を調製した。なお、潤滑油基油の配合量は、潤滑油基油以外の成分をグリース組成物から除いた残部である。
1.潤滑油基油:ジアルキルジフェニルエーテル(40℃における動粘度;100mm2/s)
以下のイオン液体を用いた。
イミダゾリウム系A:IL-IM2(広栄化学社製)
イミダゾリウム系B:IL-IM9(広栄化学社製)
ピリジン系C:IL-P14(広栄化学社製)
ホスホニウム系D:トリブチルラウリルホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
ホスホニウム系E:トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
・絶縁破壊電圧試験をJISC 2101に準拠して行った。
電極間ギャップが調整された、相対する球電極を使い、毎秒約3kVの割合で電圧を上昇させ、試料油の商用周波数における絶縁破壊電圧を測定した。
ASTM D 1743に準拠した方法を用いて調製したグリースの耐腐食性を評価した。グリースを封入したベアリングを規定条件(塩水0.1%、25度、24時間)で静置し、錆発生の有無を確認した(N=3で試験)。錆がなかったものを-、錆が発生したが錆の発生点数が少ないものを+、錆が多数発生したものを++と評価した。
一方で、ホスホニウム系イオン液体を含む実施例1~5の各々では、絶縁電圧が19kV~31kVとなり、比較例1よりも低い値を示した。実施例1~3では、腐食が全く見られず、良好な耐腐食性を示した。また、実施例5の絶縁破壊電圧は19kVであり、最も良好な結果であったがわずかに腐食が見られた。
以上の結果から、ホスホニウム系イオン液体を含む実施例1~5の導電性グリース組成物では、転がり軸受における電食を効果的に防止できると考えられる。実施例5の導電性グリースの絶縁破壊電圧は19kVであり、特に良好な絶縁破壊電圧を示した。また、実施例1~5の導電性グリース組成物は良好な耐腐食性を有していた。
Claims (5)
- 潤滑油基油40~95質量%、増ちょう剤2~40質量%、ホスホニウム系イオン液体0.1~18質量%を含む、導電性グリース組成物であって、
前記増ちょう剤が、炭素数12~24のアルキレンジアリールジイソシアネートと脂環族アミン及び芳香族アミンとの反応で得られるウレア系増ちょう剤である導電性グリース組成物。 - 前記ホスホニウム系イオン液体のカチオン部分が、トリブチルラウリルホスホニウムカチオン及びトリヘキシルテトラデシルホスホニウムカチオンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の導電性グリース組成物。
- 前記ホスホニウム系イオン液体のカチオン部分が、トリブチルラウリルホスホニウムカチオンである、請求項1に記載の導電性グリース組成物。
- JISC2101に準拠して測定した場合の絶縁破壊電圧が、32kV以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性グリース組成物。
- 請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性グリース組成物を用いることを特徴とする、転がり軸受における電食の防止方法。
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