JP7217772B2 - 三次元構造に基づくヒト化方法 - Google Patents

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Description

本明細書には、構造に基づくアプローチを用いる非ヒト抗体のヒト化方法が記載される。本明細書に記載する方法では、選択されたヒトアクセプター配列またはヒト化アクセプター配列の所定の位置におけるアミノ酸残基の具体的な(復帰または前進)変異の(要件および)適性を決定することが可能である。それぞれの残基のトポロジー、三次元構造および相互作用、ならびにその変化が考慮される。これにより、抗原結合に対する具体的なアミノ酸残基変化の影響が検討される。
背景
抗体の、その抗原との相互作用は、その3次元構造に基づく。抗体パラトープは、抗原表面の相補的エピトープを認識する6つのCDR(相補性決定領域)ループによって形成される。小さな抗原(例えば低分子)に特異的な抗体の場合は、いくつかのCDRのうちの、全部ではなく数個のアミノ酸だけが、抗原認識に関与する。一般的には、VL(可変抗体軽鎖ドメイン)CDRと比べて、VH(可変抗体重鎖ドメイン)CDR(特にVH CDR3)の方が、抗原との接触の形成への寄与が高く、抗原-抗体接触の幾何中心はVH CDR3の近くにある。直接的な抗原接触に関与するCDRアミノ酸残基は特異性決定領域(specificity determining region)(SDR)と呼ばれる。抗原-抗体複合体の3次元構造の解析により、抗原と直接接触しているアミノ酸残基は、それらの距離に基づいて特定することができる。CDRの間に間隔をおいて配置されているFR(フレームワーク)残基も抗原認識に参加できるが、その程度はそれほど高くない(そのような領域の表面が抗原と抗体との接触表面に占めうる割合は最大15%でありうる)(例えばAltshuler,E.P.,Chemie 50(2010)203-258(非特許文献1)、Bujotzek,A.et al.,mAbs 8(2016)288-305(非特許文献2)参照)。
抗体の二次構造および三次構造は、例えばEP0239400(特許文献1)に開示されている。4つのフレームワーク領域は主としてβシートコンフォメーションをとり、CDRはループを形成して、そのβシート構造をつなぎ、また場合によっては、そのβシート構造の一部を形成する。CDRはフレームワーク領域によって互いに近接して保持され、他方の可変ドメインからのCDRと共に、抗原結合部位の形成に寄与する(例えばPoljak,R.J.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,70(1973)3305-3310(非特許文献3)、Segal,D.M.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,71(1974)4298-4302(非特許文献4)、Marquart,M.et al.,J.Mol.Biol.,141,(1980)369-391(非特許文献5)参照)。
可変ドメイン内のすべての残基が溶媒アクセス可能なわけではない(例えばAmit,A.G.et al.,Science,233(1986)747-753(非特許文献6)参照)。
ドメイン内では、ジスルフィド結合した2つのβシートの相互のパッキングと配向(そしてそれゆえにCDRループの端部)が、これらのβシートのパッキングと配向には小さなシフトが起こるものの、比較的保存されている(例えばLesk,A.M.and Chothia,C.,J.Mol.Biol.,160,325-342,1982(非特許文献7)、Chothia,C.et al.,J.Mol.Biol.,186(1985)651-653,1985(非特許文献8)参照)。
抗原結合部位の2つのパーツの可変領域は、鎖間の非共有結合相互作用によって正しい配向に保持されている。これらにはCDR内のアミノ酸残基が関与しうる。
したがって、ある可変ドメインの抗原結合能を別の可変ドメインに移すために、CDRのすべてをドナー可変領域由来の完全なCDRで置き換える必要はないだろう。フレームワーク残基に加えて、抗原結合部位からアクセス可能な残基-CDR残基を移すだけでよいだろう。鎖間の相互作用に必須の残基がアクセプター可変ドメイン内に保存されることを保証することも必要だろう。
免疫グロブリン分子の機能はその三次元構造に依存し、そして三次元構造はその一次アミノ酸配列に依存する。
抗体のFv領域のモデリングはBujotzek et al.(MAbs.7(2015)838-852(非特許文献9))によって開示されている。WO2005/061540(特許文献2)は、抗体のヒト化方法およびそれによって得られるヒト化抗体を開示している。CDR移植による抗体のヒト化はWilliams et al.(「Antibody Engineering」,Springer(Berlin)(2010) 319-339(非特許文献10))によって開示されている。WO2014/100542(特許文献3)はハイスループットな抗体ヒト化を開示している。抗体可変ドメインモデリングのためのVH-VLドメイン配向の予測はBujotzek et al.(Prot.Struct.Funct.Bioinf.83(2015)681-695(非特許文献11))によって開示されている。WO2016/062734(特許文献4)はVH-VLドメイン間角度に基づく抗体ヒト化を開示している。
EP0239400 WO2005/061540 WO2014/100542 WO2016/062734
Altshuler,E.P.,Chemie 50(2010)203-258 Bujotzek,A.et al.,mAbs 8(2016)288-305 Poljak,R.J.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,70(1973)3305-3310 Segal,D.M.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,71(1974)4298-4302 Marquart,M.et al.,J.Mol.Biol.,141(1980)369-391 Amit,A.G.et al.,Science,233(1986)747-753 Lesk,A.M.and Chothia,C.,J.Mol.Biol.,160 (1982) 325-342 Chothia,C.et al.,J.Mol.Biol.,186(1985)651-653 Bujotzek et al., MAbs.7(2015)838-852 Williams et al.,「Antibody Engineering」,Springer(Berlin)(2010) 319-339 Bujotzek et al.,Prot.Struct.Funct.Bioinf.83(2015)681-695
概要
本明細書には、構造に基づくアプローチを用いる非ヒト抗体のヒト化方法が記載される。本発明の方法では、非ヒト抗体のCDRまたはそれらの個々の残基のためのアクセプターとして選択されたヒトアクセプター配列またはヒト化アクセプター配列の所定の位置におけるアミノ酸残基の具体的(復帰)変異(の要件)を特定することが可能である。この一次選択は当技術分野で知られているように行われる。復帰変異させるべき残基の特定では、それぞれの残基のトポロジー、三次元構造および相互作用、ならびに変化の効果が考慮される。これにより、抗原結合に対する具体的アミノ酸残基変化の影響の予測を改良することができ、それを定量化することもできる。
本発明の方法で得られるヒト化抗体は、追加のトポロジー的特徴付けを使用しない従来のヒト化方法で得られるヒト化抗体と比較して、より多くのヒトらしさ(humaneness)(ヒト特性)を有することが見いだされた。
本発明の方法は、必須の工程として、非ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)を移すために選択されたアクセプター配列と、親非ヒト配列との間の各アミノ酸差異が、トポロジー、すなわち三次元構造および配向に及ぼす効果の定量化を含む。
一態様において、(トポロジー的)定量化は、各変化/差異に個別にスコアを与えるか、すべての変化/差異にまとめてスコアを与えることによって行われる。このスコアは、一方では、変化したアミノ酸残基間の構造的差異に基づき、他方では、該変化の位置のトポロジーに基づく。スコアは、一態様では、三次元相同性モデルに基づいて/三次元相同性モデルを用いて、割り当てられる。スコアは、フレームワークの安定性またはCDRコンフォメーションに対するアミノ酸差異の影響力を反映し、次のとおりである。0:影響なし、1:わずかな影響、2:中等度の影響、3:フレームワークの安定性に影響を及ぼしうる、4:フレームワークの安定性またはCDRコンフォメーションを破壊するであろう。
任意のヒト生殖細胞系配列中に存在するそれぞれの位置におけるそれぞれのアミノ酸残基差異に個々のスコアを割り当てることにより、考えうる変化の全行列を得ることができる。
本発明は、少なくとも一つには、抗体の三次元構造の、もっと正確にいえば親非ヒト抗体構造とヒト化候補構造との間の構造的差異の、定量的解析により、結果として生じるフレームワーク/CDRコンフォメーションに対する影響またはフレームワーク/CDRコンフォメーションの変形が異なる、好ましくはより小さい、さらにはない、そしてそれにより、なかんずく、その抗原に対するヒト化抗体の結合の増加をもたらす、適切な(そして必要な)アミノ酸変化を特定することができるという発見に基づいている。したがって本発明は改良されたヒト化方法を提供する。
本発明の一局面は、以下の工程を含む、(ヒト化)免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸配列を提供(または合成または特定または作製)するための方法である:
(a)非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を、該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの第1のヒト化変種と(最大レベルのアミノ酸配列同一性で)アライメントする工程であって、該第1のヒト化変種が、それぞれの非ヒト抗体重鎖または軽鎖可変ドメインのCDRまたは超可変領域または特異性決定残基を、
(i)該非ヒト可変ドメインに対して最も高い配列相同性を有するヒト生殖細胞系アミノ酸配列、または
(ii)アライメントした場合に完全な可変ドメインを形成し、単一のヒト生殖細胞系アミノ酸配列よりも高い相同性を有する、2つまたはそれ以上のヒト生殖細胞系アミノ酸配列フラグメント、または
(iii)VH/VL角度を維持することができるヒト生殖細胞系アミノ酸配列、または
(iv)ヒト化抗体可変ドメイン
に移植することによって得られたものである、工程;
(b)非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインと該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの第1のヒト化変種とが異なるアミノ酸残基を有する、(アライメントされた)フレームワーク位置であって、その差異ゆえに、(Fvとしてのそれぞれ他方の可変ドメインとの組合せで)可変ドメインの抗原結合および/または三次元構造に影響を及ぼす位置を特定する工程;
(c)工程(b)において特定された1つまたは複数のアミノ酸残基を、(Fvとしてのそれぞれ他方の可変ドメインとの組合せで)可変ドメインの抗原結合および/または三次元構造に及ぼす影響が、置換されるアミノ酸残基よりも少ないアミノ酸残基で置換されることによって、該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの第1のヒト化変種を改変する工程;
(d)改変された可変ドメインをコードする核酸配列を合成し、それによって免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸配列を提供(または合成または特定)する工程。
一態様において、工程(b)は、相同性モデリングを用いた非ヒト可変ドメインまたは非ヒト抗体の三次元モデルを生成する工程をさらに含む。
一態様において、工程(b)は、それぞれの位置にトポロジー分類子I、E、C、A、L、SまたはNのうちの1つを割り当てる工程をさらに含む。
一態様において、工程(b)は、各差異に0、1、2、3または4のスコアを割り当てる工程をさらに含む。
一態様において工程(b)は、各差異に0、1、2、3または4のスコアを割り当てる工程であって、
・トポロジーEを有するアミノ酸残基の、プロリンを除く任意のアミノ酸残基への変化には、0のスコアが割り当てられ、
・プロリンへの変化には、プロリンによる置換がこの残基の周りのファイ角およびプサイ角を変化させるのであれば、3または4のスコアが割り当てられ、プロリンへの変化がその残基の周りのアミノ酸ストレッチのコンフォメーションを変化させていないのであれば、0または1のスコアが割り当てられ、
・トポロジーIを有するアミノ酸残基の、より小さな側鎖を有するアミノ酸残基への変化には、0のスコアが割り当てられ、炭素原子が1つ多い側鎖を有するアミノ酸残基による置換には、1のスコアが割り当てられ、炭素原子が2つ多い側鎖を有するアミノ酸残基による置換には、2のスコアが割り当てられ、炭素原子が3つ多い側鎖を有するアミノ酸残基による置換には、3のスコアが割り当てられ、他のすべての変化には、4のスコアが割り当てられ、
・トポロジーAを有するアミノ酸残基の、任意のアミノ酸残基への変化には、4のスコアが割り当てられ、
・トポロジーCを有するアミノ酸残基の、非疎水性アミノ酸残基への変化には、3または4のスコアが割り当てられ、
・トポロジーSを有するアミノ酸残基の、反対に荷電したアミノ酸残基または非荷電アミノ酸残基への変化には、塩橋が溶媒露出しているのであれば3のスコアが割り当てられ、塩橋が内部にあるのであれば4のスコアが割り当てられる
工程を、さらに含む。
[本発明1001]
以下の工程を含む、ヒト化免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸配列を作製するための方法:
(a)非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を、該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの第1のヒト化変種と(最大レベルのアミノ酸配列同一性で)アライメントする工程であって、該第1のヒト化変種が、それぞれの非ヒト抗体重鎖または軽鎖可変ドメインのCDRまたは超可変領域または特異性決定残基を、
(i)該非ヒト可変ドメインに対して最も高い配列相同性を有するヒト生殖細胞系アミノ酸配列、または
(ii)アライメントした場合に単一のヒト生殖細胞系アミノ酸配列よりも高い相同性を有する、2つまたはそれ以上のヒト生殖細胞系アミノ酸配列フラグメント、または
(iii)VH/VL角度を維持することができるヒト生殖細胞系アミノ酸配列
に移植することによって得られたものである、工程;
(b)非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインと該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの第1のヒト化変種とが異なるアミノ酸残基を有する、アライメントされたフレームワーク位置であって、その差異ゆえに、(Fvとしてのそれぞれ他方の可変ドメインとの組合せで)可変ドメインの抗原結合および/または三次元構造に影響を及ぼす位置を特定する工程;
(c)工程(b)において特定された1つまたは複数のアミノ酸残基を、(Fvとしてのそれぞれ他方の可変ドメインとの組合せで)可変ドメインの直接的な抗原結合および/または三次元構造に及ぼす影響が、置換されるアミノ酸残基よりも少ないアミノ酸残基で置換することによって、該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの第1のヒト化変種を改変する工程;
(d)改変された可変ドメインをコードする核酸配列を作製し、それによってヒト化免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸配列を作製する工程。
[本発明1002]
工程(b)が、相同性モデリングを用いた非ヒト可変ドメインまたは非ヒト抗体の三次元モデルの生成をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
工程(b)が、すべてのアミノ酸残基に、トポロジー分類子I(内部側鎖)、E(外部側鎖)、C(接触重鎖-軽鎖)、A(抗原接触)、L(抗原へのリンカー)、S(塩橋に参加)、またはN(他のどれでもない=特別な相互作用なし)のうちの1つを割り当てる工程をさらに含む、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
工程(b)が0、1、2、3または4のスコアを各差異に割り当てる工程をさらに含む、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
・トポロジーEを有するアミノ酸残基の、プロリンを除く任意のアミノ酸残基への変化には、0のスコアが割り当てられ、プロリンへの変化には、3または4のスコアが割り当てられ、
・トポロジーIを有するアミノ酸残基の、より小さな側鎖を有するアミノ酸残基への変化には、0のスコアが割り当てられ、炭素原子が1つ多い側鎖を有するアミノ酸残基による置換には、1のスコアが割り当てられ、炭素原子が2つ多い側鎖を有するアミノ酸残基による置換には、2のスコアが割り当てられ、炭素原子が3つ多い側鎖を有するアミノ酸残基による置換には、3のスコアが割り当てられ、他のすべての変化には、4のスコアが割り当てられ、
・トポロジーAを有するアミノ酸残基の、任意のアミノ酸残基への変化には、4のスコアが割り当てられ、
・トポロジーCを有するアミノ酸残基の、非疎水性アミノ酸残基への変化には、3のスコアが割り当てられ、
・トポロジーSを有するアミノ酸残基の、反対に荷電したアミノ酸残基または非荷電アミノ酸残基への変化には、塩橋が溶媒露出しているのであれば3のスコアが割り当てられ、または塩橋が内部にあるのであれば4のスコアが割り当てられる、
本発明1004の方法。
詳細な説明
抗体の抗原結合部位は、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)とによって形成される。これらのドメインは5本鎖ベータシートを介して相互作用することで半径約8.4Åの9本鎖ベータバレルを形成し、ドメイン界面では鎖が互いに約50°傾いている。これにより、HVRは、すなわちHVRアミノ酸残基によって形成されるアミノ酸ループは、互いに近接することになる。これは、この構造を上から見るとわかる。また、HVRはVH/VL界面の25%以上を占めている。
CDR/HVRの決定について、当技術分野ではさまざまな方法が記載されている。最もよく使用される方法はKabatによる定義であり、これは抗体アミノ酸配列の可変性に基づいている(例えばSequences of Proteins of immunological Interest,US Department of Health and Human Services(1991)参照)。別の定義はChothiaによって記載されており(例えばChothia,C.,et al.J.Mol.Biol.227(1992)799-817、Tomlinson,I.M.,et al.,EMBO J.14(1995)4628-4638参照)、これは超可変ループを規定するために抗原結合部位を考慮する。修正ChothiaナンバリングアプローチはChothiaナンバリングスキームに基づき、位置補正されたFRインデルを持つフレームワーク残基も含む(例えばAbhinandan,K.R.and Martin,A.C.,Mol.Immunol.45(2008)3832-3839参照)。さらなる方法は、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアが使用するAbM定義である(例えば「Antibody Engineering Lab Manual」(Duebel,S.およびKontermann,R.編,Springer-Verlag,ハイデルベルク)の「Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains」参照)。別の方法は、拡張Chothiaナンバリング(Enhanced Chothia Numbering)と呼ばれる(Martin,A.C.R.によって提唱された)(例えばhttp://www.bioinfo.org.uk/index.html、特にhttp://www.bioinf.org.uk/abs/参照)。別の方法は、「接触(contact)」HVRを決定するための抗体-抗原複合体結晶構造の解析に基づいている(MacCallum,R.M.,et al.,J.Mol.Biol.262(1996)732-745)。新規なまたは拡張されたカノニカルアライメントがNorth,B.らによって提唱された(J.Mol.Biol.406(2011)228-256)。Chothiaの解析とは異なり、彼らは、CDRをCDRタイプ(L1、L2など)とループ長とにグループ分けすることが最も直観的であることを見いだした。これらを「CDR-鎖長組合せ(CDR-length combination)」または略して単に「CDR-鎖長(CDR-length)」と呼ぶ場合。彼らは、最もよく使用されるKabatスキームともChothiaスキームとも異なる定義を、CDRに与えた。本明細書に記載する方法は、これらの方法のいずれを使用しても実施することができる。
本明細書において使用する用語「超可変領域」または「HVR」は、抗体可変ドメインのうち、配列が超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」)かつ/または構造上明確なループ(「超可変ループ」)を形成しかつ/または抗原接触残基(「抗原接触(antigen contact)」)を含有するアミノ酸残基ストレッチを含む領域のそれぞれを指す。一般に、抗体は6つのHVRを含んでいて、3つはVHにあり(H1、H2、H3)、3つはVLにある(L1、L2、L3)。
HVRは、
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)および96~101(H3)に存在する超可変ループ(Chothia,C.and Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.196(1987)901-917)、
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)および95~102(H3)に存在するCDR(Kabat,E.A.et al,Sequence of Proteins of Immunological Interest,5th ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991),NIH Publication 91-3242)、
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)および93~101(H3)に存在する抗原接触(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996))、ならびに
(d)アミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)および94~102(H3)を含む(a)、(b)および/または(c)の組み合せ
を含む。
別段の表示がある場合を除き、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えばFR残基)は、本明細書では、前掲のKabatらに従ってナンバリングされる。
したがって、KabatのCDR/HVRの定義を用いて本明細書に記載される局面および態様は、同様に、他のCDR/HVR決定方法のうちの一つを用いて実施することができる。以下の表に、異なる方法で決定されたHVR残基の比較を示す。
Figure 0007217772000001
異なるCDR定義だけでなく、可変ドメインアミノ酸残基をナンバリングするための異なる方法も、利用できる。Kabatとその共著者ら(Wu,T.I.and Kabat,E.A.,J.Exp.Med.132(1970)211-250、Kabat,E.A.,et al.,Sequence of Proteins of Immunological Interest.Bethesda:National Institute of Health(1983))は、配列アライメントおよび相同性に基づくナンバリングを使用した。ChothiaとLesk(Chothia,C.and Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.196(1987)901-917、Chothia,C.,et al.,Nature,342(1989)877-883)は、構造アライメントに基づくナンバリングを使用した。Lefrancおよびその共同研究者ら(Giudicelli,V.et al.,Nucl.Acids Res.25(1997)206-211、Lefranc,M.P.,et al.,Dev.Comp.Immunol.27(2003)55-77)は、IMGTナンバリングスキームを開発した。AHoナンバリングスキーム(Honegger,A.and Plueckthun,A.,J.Mol.Biol.309(2001)657-670)は、空間的にアライメントされた3D構造に基づいている。
WolfGuyナンバリングはCDR領域をKabatおよびChothia定義の和集合(set union)として定義する。さらにまたこのナンバリングスキームは、あるCDR残基が上行ループの一部であるか下行ループの一部であるかをCDR位置のインデックスが示すように、CDR長(と一部は配列と)に基づいてCDRループの先端にアノテーションを付与する。確立されたナンバリングスキームとの比較を以下の表に示す。
(表)Chothia/Kabat(Ch-Kb)、HoneggerおよびWolfGuyナンバリングスキームを用いたCDR-L3およびCDR-H3のナンバリング。WolfGuyスキームでは、N末端の基準からCDRピークまでは数字が増加し、C末側のCDR端を出発点として数字が減少する。Kabatスキームでは最後2つのCDR残基を固定し、CDR長に適応するように文字を導入する。Kabat命名法とは対照的に、Honeggerナンバリングは文字を使用せず、VHとVLとで共通である。
Figure 0007217772000002
Figure 0007217772000003
(表)WolfGuy、KabatおよびChothiaでナンバリングされたVH配列(左)およびVL配列(右)
Figure 0007217772000004
Figure 0007217772000005
Figure 0007217772000006
Figure 0007217772000007
Figure 0007217772000008
WolfGuyは、構造的に等価な残基(すなわちFv構造における保存された空間的局在という点でよく似ている残基)が(可能な限り)同じインデックスでナンバリングされるように設計されている。
ヒト化方法
抗体ヒト化の一般的な方法は、例えば以下の参考文献に記述されている:
Figure 0007217772000009
本発明以前に当技術分野において使用されたいくつかのヒト化アプローチを、以下に、より詳しく概説する。
ヒトにおける治療的使用を意図した非ヒト抗体の免疫原性を低減するための当技術分野における最初のアプローチは「キメラ抗体」の生成であった。キメラ抗体は、非ヒト抗体の軽鎖および重鎖の可変ドメイン全体をヒト定常領域(重鎖可変ドメインの場合はCH1-ヒンジ-CH2-CH3、軽鎖可変ドメインの場合はCL)に移植することによって得られる。これらのキメラ抗体は、免疫原性が低減しているものの、それでもなお、レシピエントの免疫応答を誘発する(例えばWO86/01533、US4,816,567、Morrison,S.L.,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81(1984)6851-6855、Morrison,S.L.and Schlom,J.,Important Adv.Oncol.(1990)3-18、Morrison,L.,Science 229(1985)1202-1207、Oi,V.T.and Morrison,S.L.,BioTechniques 4(1986)214-221、Gillies,S.D.,et al.,J.Immunol.Methods 125(1989)191-202、US5,807,715、US4,816,397参照)。
US2003/0054407は、タンパク質がとりうるコンフォメーションは天文学的数字(100残基の小さなタンパク質の場合で約1016)になりうるが、すべての抗体は、包括的に、特有の「免疫グロブリンフォールド」をとることを開示した。さらに、テスター配列の、標的構造テンプレートとの構造的適合性を評価するために、熱力学的計算解析を使用できることも、開示されている。この構造評価はパラメータ化された実験的関数に基づき、引き続いて必要になるインビトロスクリーニングの数を低減しようとするものであった。この関数は3つのエネルギー項、すなわち非極性サルベーション(nonpolar salvation)、側鎖エントロピーおよび静電エネルギーからなる。
免疫原性を低減するための当技術分野における別のアプローチは「リシェーピング(reshaping)」であった。このアプローチでは、まず、非ヒト抗体(ドナー抗体)のHVR(Kabatに従って決定される)だけが、したがって非ヒト抗体の「抗原結合性」が、ヒト可変ドメイン(アクセプター抗体)に移された。これにより、対応するヒト領域が非ヒト領域で置き換えられた。「対応する」という用語は、それぞれの配列をアライメントした場合に、差し向かいに位置する単一のアミノ酸残基またはアミノ酸残基のストレッチを表す。ヒト定常領域との組合せで「ヒト化抗体」が得られた(例えばEP0239400、US5,225,539、US5,530,101、US5,585,089、WO91/09967、Jones,P.T.,et al.,Nature 321(1986)522-525、Verhoeyen,M.,et al.,Science 239(1988)1534-1536、Riechmann,L.,et al.,Nature 332(1988)323-327参照)。移植の成功は、非ヒトドナー抗体とヒトアクセプター抗体の三次元構造の類似性に依存する。類似する三次元構造を有することにより、HVRと特定フレームワーク残基との間の接触も保存されるだろうと考えられた。EP0578515は、比較モデル構築のプロセスを利用することによってヒト化モノクローナル抗体を作製する方法を開示した。EP0592106は、ヒト化された齧歯類抗体可変領域の重鎖および軽鎖を含む抗体またはそのフラグメントを作製する方法であって、抗体可変領域の重鎖および軽鎖のプールのx線結晶構造から得られる相対的アクセシビリティ分布から、フレームワーク位置だけで配列アライメントを生成することで、一組の重鎖および軽鎖の表面露出フレームワーク位置を得る工程を含む方法を開示した。
当技術分野において、移植には、最も高い「相同性」を有するヒト生殖細胞系抗体可変領域、成熟抗体可変領域またはコンセンサス抗体可変領域が、アクセプターとして選ばれる。「相同性」「相同体」または「相同的」という用語は、配列または構造または機能の同一性(等価性)を意味する。相同性は、例えばFASTA、BLAST(Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis 2nd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor,NY.ISBN 0-87969-608-7のMount,D.M.,(2004))、EMBOSS、MPsrchまたはScanpsなどといった、当業者に公知の方法を用いて決定することができる。
「配列アライメント」は、当業者に公知の任意の方法またはコンピュータプログラムで行うことができる。アライメントは配列相同性および/または構造相同性に基づくことができる(例えばWO2012/006490参照)。
2つの配列の最もマッチするローカル(フラグメント配列)アライメントまたはグローバル(全配列)アライメントを特定するために、ペアワイズアライメント法を使用することができる。ペアワイズアライメントは1回または複数回行うことができる。ペアワイズアライメントは、ドットマトリックス法、動的計画法、BLAST2SEQおよびワード法などといった、当業者に公知のさまざまな方法を用いて行うことができる。
多重配列アライメントは3つ以上の配列で同時に行われるペアワイズアライメントの拡張である。多重アライメントでは、保存された配列残基および/または領域を特定するために、すべてのクエリー配列が互いにアライメントされる。
ローカルアライメントは、例えばSmith-Watermanアルゴリズムを用いて行うことができる(Smith,T.F.and Waterman,M.S.,J.Mol.Biol.147(1981)195-197)。グローバルアライメントは、例えばNeedleman-Wunschアルゴリズムを用いて行うことができる(Needleman,S.B.and Wunsch,C.D.,J.Mol.Biol.48(1970)443-453)。
問題の2つの配列の「相同性」または「配列同一性」の計算は、次のように行うことができる。問題の配列を、最良のアライメントが得られるように、すなわちミスマッチとギャップの数が最も少なくなるように並べる(ギャップは一方の配列または両方の配列に導入することができる)。リファレンス配列のうち、比較のためにアライメントされる部分は、一般に、リファレンス配列の全長の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%である。その後、対応する位置にあるアミノ酸残基が比較される。第1の配列と第2の配列の対応する位置に同じアミノ酸残基が存在するのであれば、それらの配列はその位置において同一である(本明細書にいうアミノ酸または核酸の「同一性」はアミノ酸または核酸の「相同性」と等価である)。2つの配列間の配列同一性(通常は百分率値として与えられる)は、それら2つの配列に共通する同一位置の数に依存し、その際、2つの配列の最良のアライメントを得るために配列に付加されたギャップの数および各ギャップの長さが考慮される。
配列アライメントとは別に、例えばDALI法(Holm,L.and Sander,C.,Science 273(1996)595-603)、SSAP法(逐次構造アライメント(sequential structure alignment)プログラム、Taylor,W.R.,et al.,Prot.Sci.3(1994)1858-1870)、またはコンビナトリアルエクステンション(combinatorial extension)法を用いて、構造アライメントも行うことができる。
配列が同一であるストレッチが増加したアライメントを得るために、アライメントされる配列のうちの1つ、複数またはすべてにおいて、同じ位置または異なる位置にギャップを挿入しうることは、指摘しておく必要がある。
「ベストフィット(best-fit)」法では、問題の非ヒト可変ドメインが、ヒト可変ドメインとアライメントされる。非ヒト配列に最も似ているヒト配列がアクセプターとして選ばれる(Sims,M.J.,et al.,J.Immunol.151(1993)2296-2308、Chothia et al.,J.Mol.Biol.196(1987)901-917)。
「コンセンサス」法では、軽鎖または重鎖の特定サブグループに属するすべてのヒト抗体のコンセンサス配列から、特定フレームワーク配列が導き出される。例えばコンセンサス配列は、最も豊富に存在するヒトサブクラスであるVL6サブグループI(VL6I)およびVHサブグループIII(VHIII)から導き出すことができる(Carter,P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(1992)4285-4289、Presta,L.,et al.,J.Immunol.151(1993)2623-2632)。
当技術分野における別のアプローチでは、ヒト生殖細胞系遺伝子のセットから、ヒト化しようとするマウス抗体のCDRに対するヒトCDRの構造的類似性に基づいて、ヒトフレームワーク配列が選ばれる。構造類似性は、同じChothiaカノニカル構造を有するヒト候補に対して、マウスCDRの残基ごとの相同性(residue-to-residue homology)をスコア化することによって評価される。ヒトフレームワークの変異は全く導入されない(例えばHwang,W.Y.K.,et al.Methods 36(2005)35-42参照)。
選択されたヒトフレームワークへの非ヒトCDRの導入がCDRまたはフレームワークのどちらかに歪みをも導入することでヒト化抗体の抗原結合性の低減をもたらし、さらには完全な喪失さえもたらしてしまうリスクは、非ヒト抗体と比べたときのヒト化抗体の相同性が高いほど小さくなると、当技術分野では考えられた。
したがって当技術分野では、まず、しきい値を上回る配列同一性(CDRを除く)を有する可変ドメインが、アクセプター配列として選択された。このしきいは65%程度と低い場合もあったが、最大80%またはそれ以上の場合もあった。しかし、ほとんどの場合、単純なCDR移植によって非ヒト抗体の結合特徴をヒト化抗体に移すことは可能でないことが判明した。多くの場合、結合特徴を部分的にでも回復させるには、非ヒト抗体のCDR中またはフレームワーク中の追加残基の復帰変異が必要であった。これらの追加残基はCDRの三次元コンフォメーションを保存するために必要であった。追加して移される残基は選ばれたアクセプター抗体内の変異であることから、それらは「復帰変異(back mutation)」と呼ばれる(例えばKabat,E.A.and Wu,T.T.,J.Immunol.147(1991)1709-1719、Queen,C.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989)10029-10033、Co,M.S.and Queen,C.,Nature 351(1991)501-502、Tempest,P.R.,et al.,Biotech.9(1991)266-271、WO92/04381)。
「復帰変異」または「[非ヒト種]への復帰変異」という用語は、ヒト化抗体の性質を改良するために、ヒト残基から非ヒト種残基へと逆戻りさせるアミノ酸残基を表す。これは、対応する生殖細胞系残基で置換される、体細胞変異を起こしたアミノ酸であってもよい。復帰変異のための候補残基を特定するために、一次ヒト化抗体のアミノ酸配列が、例えばVBASEデータベースから得られたそれぞれの生殖細胞系配列とアライメントされる(VBASEはすべてのヒト生殖細胞系可変領域の包括的ディレクトリである)。復帰変異のための候補残基として特定された各アミノ酸残基は、抗原結合への直接的関与または間接的関与について調べる必要がある。ヒト化抗体の特徴を改変することができると(例えば変異後に)特定されたアミノ酸残基は、非ヒト残基に復帰させるべきである。
それでもなお、移植を用いる当技術分野の方法によってヒト化された抗体の結合アフィニティーは、非ヒト抗体と比較すると、通常は、著しく低減している。しかし、非ヒト抗体と類似する結合効率を有するヒト化抗体を得るためにどの非ヒト残基を導入すべきかの決定は、予測することが困難であり、ほとんどは経験的であり、教示されることはできない。
非ヒト抗体では稀であって抗原結合残基に近いフレームワーク残基、またはパッキング残基(packing residue)もしくはいわゆるバーニアゾーン(Vernier-Zone)中の残基であるフレームワーク残基が、抗原に近いフレームワーク残基と共に重要な残基であることは、当技術分野において概説されている(例えばMartin and Thornton,J.Mol.Biol.263(1996)800-815、Foote et al.,J.Mol.Biol.224(1992)487-499参照)。
WO90/07861は、ヒト化抗体を設計するための4つの規則、すなわち1)ヒトアクセプター配列と非ヒトドナー配列の間の相同性、2)アクセプターアミノ酸がその位置において稀である場所ではアクセプターアミノ酸ではなくドナーアミノ酸を使用すること、3)CDRに近接する位置ではドナーフレームワークアミノ酸を使用すること、4)3Dモデルにおいて側鎖原子がCDRから3オングストローム以内にあるフレームワーク位置ではドナーアミノ酸を使用することを開示した。
当技術分野における別のヒト化アプローチは、「SDR移植」である。このアプローチは、実際に抗原と接触していてそれゆえに抗体の結合特異性を決定づけているアミノ酸残基の数は、CDRを形成しているアミノ酸残基の数よりも少ないという発見に基づいている。これらの残基は「特異性決定残基(SDR)」と名付けられた。これらは全CDR残基の約3分の1を占める。移植プロセスではそれらの残基だけが移される(例えばPadlan et al.,FASEB J.9(1995)133-139、Kashmiri et al.,Methods 36(2005)25-34参照)。
非ヒト抗体のヒト化のための当技術分野におけるさらなるアプローチは「ベニアリング(veneering)」(「リサーフェイシング(resurfacing)」とも呼ばれる)である(例えばEP0592106、EP0519596、Studnicka,et al.,Prot.Eng.7(1994)805-814、Roguska,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91(1994)969-973、WO2004/016740参照)。ヒト抗体およびマウス抗体を解析することによって、具体的な表面/溶媒露出アミノ酸残基を決定することができた。表面残基は、一般に、30%以上の相対的溶媒アクセシビリティを有する(Pedersen,J.,et al.,Mol.Biol.235(1994)959-973参照)。特定の表面位置は特定の限られた数の残基を好むことが開示された(例えばPadlan, et al.,Mol.Immunol.28(1991)489-498、Pedersen,et al.,J.Mol.Biol.235(1994)959-973、Roguska et al.,Prot.Eng.9(1996)895-904参照)。免疫原性は表面特徴と相関すると思われるので、ヒト残基とは異なる非ヒト抗体中の露出残基を置換することにより、免疫原性が低減するかもしれない。このアプローチでは、マウス抗体にヒト化された表面を与えることによって、マウス抗体を遮蔽することが意図されている(例えばMark,et al.,Handbook of Experimental Pharmacology Vol.113,Springer,105-134(1994)参照)。
当技術分野におけるさらに別のアプローチは、「超ヒト化(superhumanization)」と呼ばれる。このアプローチには、非ヒト成熟抗体遺伝子によってコードされる対象可変領域のペプチド配列を入手し、非ヒト抗体可変領域内の少なくとも2つのCDRについて、第1のセットのカノニカルCDR構造タイプを特定する作業が含まれる。次に、ヒト抗体のヒト抗体可変領域に関するペプチド配列のライブラリーを入手する。次の工程では、ヒト可変領域配列のライブラリー内の各配列に関して、少なくとも2つのCDRについてカノニカルCDR構造タイプ(すなわち第2のセットのカノニカルCDR構造タイプ)が特定される。第1のセットのカノニカルCDR構造タイプを第2のセットのカノニカルCDR構造タイプと比較し(すなわち可変領域内の対応する場所でマウスカノニカルCDR構造タイプをヒトカノニカルCDR構造タイプと比較し)、それぞれ非ヒト可変領域内およびヒト可変領域内の対応する場所におけるCDR配列について第2のセットのカノニカルCDR構造が第1のセットのカノニカルCDR構造タイプと同じであるヒト配列を選択することにより、このライブラリーから候補配列のサブセットが選択される。この方法は、これらの候補ヒト可変領域配列を、候補ヒト可変領域配列からのフレームワーク領域と組み合わされた非ヒト可変領域からのCDR配列のうちの(例えばマウスCDRのうちの)少なくとも2つを含むキメラ分子を構築するための基礎として使用する。その結果、キメラ抗体は、キメラ抗体中のフレームワーク配列と候補ヒトフレームワーク配列との差異が10アミノ酸残基以下になるように、可変領域中の対応する場所でヒトCDR配列のそれぞれの代わりに使用された非ヒトCDR配列のそれぞれを含有することになる(WO2004/006955、Tan,P.,et al.,J.Immunol.169(2002)1119-1125参照)。
当技術分野での抗体ヒト化の別の方法は、ヒトストリングコンテント(Human string content)(HSC)と呼ばれる抗体のヒトらしさ(antibody humanness)の測定基準に基づく。この方法は、マウス配列をヒト生殖細胞系遺伝子のレパトアと比較し、差異がHSCとしてスコア化される。次に、グローバル同一性尺度(global identity measure)を用いるのではなく、そのHSCを最大化することによって標的配列をヒト化することで、複数の多様なヒト化変種を生成する(Lazar et al,Mol.Immunol.44(2007)1986-1998)。
当技術分野における別のアプローチは、「フレームワークシャフリング(framework shuffling)」である。このアプローチでは、すべての公知フレームワークからの個々のフレームワークをそれぞれの非ヒトCDRと組み合わせ、4つのフレームワークと3つのCDRの任意の組合せを発現させて、スクリーニングする(Dall’Acqua,W.F.,et al.,Methods 36(2005)43-60、Damschroder,M.M.,et al.,Mol.Immunol.44(2007)3049-3060)。
当技術分野における別のアプローチは、「ヒューマニアリング(humaneering)」である。ここでは、可変ドメインの個々の非ヒト領域の、ヒト対応物との逐次的交換と、それぞれの部分的にヒト化された抗体ライブラリーのメンバーの結合のスクリーニングとを用いて、最小特異性決定基(minimum specificity determinant)(MSD)が実験的に決定される。これは、Dセグメント、またはCDR3、またはCDR3-FR4、または最小必須結合特異性決定基を含む他の任意のCDR3-FR4フラグメントを移入するという状況で、最小必須結合特異性を移入することによって達成されうる。この方法では結合エピトープが保持され、ヒト生殖細胞系遺伝子抗体に対して91~96%相同な抗体を単離することができると考えられた(例えばWO2005/069970参照)。
このように上記から、当技術分野において使用される「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト抗体からのアミノ酸残基を最低限の数しか含まないが、非ヒト抗体と同等な抗原特異性およびアフィニティーを有する抗体を表すこと、そしてそれと同時に、ヒト化抗体は、ヒトに適用した場合に免疫原性を有しないか、極めてわずかな免疫原性しか有しないことがわかる。
当技術分野における別のアプローチは、抗原結合に関する残基のありえそうな役割を特定するための、非ヒト抗体およびさまざまなヒト化抗体変種の三次元モデルの解析および比較に基づく。これにより、非ヒト抗体の結合特徴に関係するドナー残基が特定されるかもしれない。
1990年頃、ヒト化抗体の低減したアフィニティーという課題に取り組むために、当技術分野では最初のモデリングアプローチが使用された。これは、アミノ酸配列相同性と、三次構造モデリングによる非ヒト抗体からの推定CDR接触残基のアライメントとに基づく、ヒトフレームワーク領域を選択するための二段階アプローチであった(例えばQueen,C.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989)10029-10033、Co,M.S.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88(1991)2869-2873、WO90/07861、US5,693,762、US5,693,761、US5,585,089、US5,530,101参照)。
可変ドメインの三次元構造と、それゆえにCDRの三次元コンフォメーションは、イオン相互作用、水素結合または疎水性相互作用などのアミノ酸-アミノ酸相互作用で構成されている。
異なるアミノ酸残基は、それぞれの構造ゆえに、異なる性質を有するので、あるアミノ酸残基から異なるアミノ酸残基への変化は、可変ドメインの三次元構造/安定性に、そしてそれゆえにヒト化抗体の特徴に、影響を及ぼしうる。
例えばアミノ酸残基アラニンによるアミノ酸残基グリシンの置換は新しいCH3基を導入し、それにより、空間的要求が増えるために、このアミノ酸残基の可能な配向を減らし、それにより、コンフォメーションの柔軟性を低減し、アンフォールディングのエントロピーを増加させて、可変ドメインのコンフォメーション安定性の改善をもたらす(Manning,M.C.,et al.,Pharm.Res.6(1989)903-917)。
タンパク質のフォールディングは、疎水性相互作用の形成によって開始される。
個々のアミノ酸残基、アミノ酸配列ストレッチまたはポリペプチド領域は、親水性または疎水性であると特徴付けることができる。BlackとMould(Anal.Biochem.193(1991)72-82)は、個々のアミノ酸残基について疎水性の順序を次のように定義した(最も疎水性から最も親水性に向かって):
Figure 0007217772000010
BlackとMouldが記載した、一定の基準で定められた疎水性の値を、以下の表に列挙する。
Figure 0007217772000011
アミノ酸残基の三次元配向は、低分子構造からの結合距離および結合角に基づく「標準的ジオメトリー」であると考えることができる(例えばWeiner,S.J.,et.al.,J.Amer.Chem.Soc.,106(1984)765-784参照)。
「相同性モデリング」アプローチでは、計算による抗体の三次元近似または三次元モデルを、リファレンス抗体の公知の三次元構造に基づいて生成する。リファレンス抗体と問題の抗体は関連する三次元構造を有するので、リファレンス抗体と問題の抗体の間のアライメントを生成することができる。これら2つの抗体のアミノ酸配列がアライメントされ、同一配列ストレッチの三次元座標はリファレンス抗体から問題の抗体へとそのまま移される。2つの抗体の非同一部分(すなわち、異なるアミノ酸残基、挿入または欠失から生じる部分)については、一般構造テンプレートに基づき、エネルギー精密化を行って、三次元座標が決定される。相同性モデリングは、CDRによって形成される結合部位の構造の支持に関与する可能性がある非ヒト抗体の残基を特定するために使用することができる(例えばKolinski et al.,Proteins.37(1999)592-610、Rost et al.,Protein Sci.5(1996)1704-1718、US7,212,924、US6,256,647、US6,125,331、Xiang,et al.,Curr.Prot.Pept.Sci.7(2006)217-227参照)。
異なる三次元構造のアライメントは、一方を他方の上に重ね合わせることによって行うことができる。したがって、例えば、両者が可能な限り互いに一致する(空間的な位置および配向が類似/近接する)ようにアルファ-ヘリックスおよびベータ-シートの二次構造要素を配向させるために、一方を三次元的に固定し、他方は空間を回転、並進させる。
アライメント後に、類似する第1の炭素原子(Cα)間の距離が各アミノ酸残基について算出される。これらの距離に基づいて、どのアミノ酸残基が同じ位置を有し、どれが異なる位置を有するかを評価することができる。一般に、あるアミノ酸残基のCα-Cα距離が1.0Å以下であれば、その位置は三次元的に類似しているか、さらには同一であると見なすことができ、あるアミノ酸残基のCα-Cα距離が1.0Å超であれば、その位置は三次元的に異なると見なすことができる。
アライメントをさらに改良するために、モデルをエネルギー最小化に供することが可能であり、ここでは、Cα座標が固定される(そうでなければアライメントが再び悪化するであろう)。これにより、アライメントの形成中に導入された「異常な」結合距離および結合角は、標準的(化学的に許容できる)ジオメトリーに戻ることができる。
特定されたフレームワークアミノ酸残基がヒト化抗体の結合特徴に影響を及ぼす可能性は空間距離に依存する。構造モデルに基づき、抗原結合と干渉する可能性があると特定された残基を、CDR中の残基からの空間距離に基づいてランク付けする。一般に、任意のCDR原子から4.5Å以内にある残基は、相互作用する可能性がある残基と見なされる。
今日、三次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者にはよく知られている。さまざまなクラスの免疫グロブリンの三次元コンフィギュレーションは公知である(例えばAbbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.,W.B.Saunders,Co.,(2000)参照)。指定されたコンピュータプログラムの助けを借りて、抗体可変ドメインの計算された三次元コンフォメーション構造をディスプレイすることが可能である(例えばUS5,821,337参照)。結晶構造データバンク(例えばProtein Data Bank,pdb)を構造の情報源として使用することができる(例えばBernstein,F.C.,et al.,J.Mol.Biol.,112(1977)535-542参照)。
WO2006/096653は、(a)アクセプター免疫グロブリン可変領域からの可変領域フレームワーク(FR)アミノ酸残基と(b)非ヒトドナー免疫グロブリン可変領域からの相補性決定領域(CDR)とを含む免疫グロブリン(Ig)可変領域をヒト化する方法であって、(i)少なくとも1つのCDRの3Dコンフォメーションの予測を可能にするデータを用意する工程、(ii)どのFRアミノ酸残基が前記少なくとも1つのCDRの3Dコンフォメーションに影響を及ぼすと予測されるかを特定する工程、(iii)CDRコンフォメーションに影響を及ぼすことなくドナー免疫グロブリン可変領域とアクセプター免疫グロブリン可変領域との間のFRアミノ酸残基の差異をコンフォメーション的に適応させる選出されたアミノ酸残基による置換のために、少なくとも1つの候補ドナーCDRアミノ酸残基を特定する工程、および(iv)前記少なくとも1つの候補ドナーCDRアミノ酸残基を、選出されたアミノ酸残基で置換することで、ヒト化免疫グロブリン可変領域を形成させる工程を含む方法を開示した。上記文献には、(a)アクセプター免疫グロブリン可変領域からの可変フレームワーク領域(FR)と(b)非ヒトドナー免疫グロブリン可変領域からの相補性決定領域(CDR)とを含むヒト化免疫グロブリン可変領域を設計する方法であって、(a)アクセプター免疫グロブリン可変領域とドナー免疫グロブリン可変領域との間で相違しているフレームワーク領域(FR)アミノ酸を特定する工程、(b)工程(a)において特定されたFRアミノ酸に近接するアミノ酸を特定する工程、(c)工程(b)において特定されたアミノ酸から、工程(a)において特定されたFRアミノ酸をコンフォメーション的に適応させる選出されたアミノ酸残基による置換のために、少なくとも1つの候補アミノ酸を特定する工程を含む方法も開示されている。
US2006/0258852は、構造に基づく計算による設計法を用いて、可変領域配列(例えばCDR配列および任意でFR配列)を再設計するための例示的なアプローチを開示した。計算中は、フレキシブルゾーン(flexible zone)における残基の実体をアクセプター残基に固定するが、それらの3次元位置は変化させる。変異ゾーン(mutation zone)における残基については、それらのアミノ酸の実体とコンフォメーションをどちらも変化させる。変異ゾーン外にあるCDR中の残基はすべてドナーであり、変異ゾーン外にあるFR中の残基はすべてアクセプターである。この方法では、(工程2において特定される)フレームワーク中の重要な残基差異のうちの1つまたは複数に幾何学的に近い(例えばそのような領域から約4~25Å以内、特に<5Åの距離)側鎖を有する候補残基(例えばCDR残基および任意でFR残基)を、同時に、20種の天然アミノ酸のいずれかの考えうるすべての3次元コンフォメーション(ロータマー(rotamer))へと計算的に変異させ、その結果生じる変異体を計算的に評価する。そのような方法の一つは、側鎖リパッキング(side chain repacking)法として公知である。側鎖リパッキング計算では、候補アミノ酸残基を計算的に修飾し、その結果生じるポリペプチド変異体の安定性を計算的に評価することができる。側鎖リパッキング計算は、安定性が変化した(すなわち分子内エネルギーが変化した)変種のランク付けされたリストを生成する。次に、低い自由エネルギーをもたらす変異体であって、3次元モデルの目視検査によってコンフォメーション的に適応していると確認される変異体を、実験的発現のために選択することができる。実験的に発現させる変種のリストを生成するために、計算的に生成した変異体のリストを、算出された変異体の安定性によって並べ替えることができる。これらの計算では、タンパク質主鎖には柔軟性がほとんどまたは全く許されず、そのことが、設計された変異体が所与のCDRコンフォメーションで安定であると予測されることを保証する。このように、この計算による解析は、可変領域内の所与のFRドメインと構造的に適合する配列、特にCDR配列の予測を可能にする。
WO2007/109742は、ヒト化免疫グロブリンを設計する方法であって、(a)親抗体可変ドメインまたはハプテンに結合した親抗体可変ドメインの三次元構造を決定する工程、(b)該親構造の特異性決定残基(SDR)を特定する工程、(c)該構造を、重鎖と軽鎖の両方を含む6つの相補性決定領域(CDR)ループとフレームワーク領域(FR)とを含むセクションに分割する工程、(d)該セクションの三次元構造を、ヒトアクセプター抗体の対応する三次元CDRループおよびフレームワーク構造の所定のデータベースに重ね合わせる工程、(e)該ヒト化免疫グロブリンのアミノ酸配列のモデルを決定するために、親SDRを、選択されたアクセプター構造に移植する工程、(f)アミノ酸残基置換に関するエネルギー値を計算する工程、(g)負のエネルギー値を有する残基を選ぶことによって該ヒト化免疫グロブリンのアミノ酸配列を最適化する工程、および(h)ヒト化免疫グロブリン可変領域セグメントのアミノ酸配列を設計する工程を含む方法を開示した。
一般に当技術分野では、ある具体的な類似性(例えば>70%の配列相同性)を有する可変ドメインが、データベースから選択され、相同性モデルの生成に使用される。
Worn,A.とPlueckthun,A.(J.Mol.Biol.305(2001)989-1010)は、抗体の安定性が、(1)各ドメインの固有の安定性に影響を及ぼす個々のドメインのコアパッキング(core packing)、(2)HCとLCのペアリングに影響力を有するタンパク質/タンパク質界面相互作用、(3)極性残基および荷電残基の埋没、(4)極性残基および荷電残基に関するH結合ネットワーク、ならびに(5)分子内力および分子間力の中でも特に表面電荷および極性残基分布を含む、いくつかの因子による影響を受けることを記載した(例えばUS2012/0064095参照)。
ヒト化を行う科学者の目的は、例えば低減した免疫原性、最適化された抗原結合、アフィニティー、アビディティおよび/または半減期を有するヒト化抗体を提供することである。
さまざまなヒト化変種が作製され、適切なスクリーニング方法によって評価される。抗体スクリーニングの方法、例えばインビトロアッセイ、インビボアッセイおよび細胞ベースのアッセイなどや、選択方法は、種々知られている。一般にそのようなアッセイは、抗体がその標的に結合し、結合が決定されるか、または結合によって開始される効果が決定される、結合アッセイである。
結合アッセイにおける結合の決定は、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)、BRET(生物発光共鳴エネルギー移動)に基づくアッセイ、Alpha Screen(登録商標)(化学増幅型ルミネセンス・プロキシミティ・ホモジニアス・アッセイ(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay))、シンチレーション・プロキシミティ・アッセイ(Scintillation Proximity Assay)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、SPR(表面プラズモン共鳴)、等温滴定熱量測定、示差走査熱量測定、ゲル電気泳動、およびゲル濾過を含むクロマトグラフィーなど、さまざまな方法を用いて行うことができる。
結合アフィニティーに基づく抗体のスクリーニングのための好ましい方法の一つは表面プラズモン共鳴(SPR)である。この方法では、とりわけ、結合事象の会合速度(ka、kon)および解離速度(kd、koff)の決定が可能である(例えばJonsson and Malmquist,Advances in Biosensors,2(1992)291-336、Wu et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95(1998)6037-6042参照)。
抗体のスクリーニングおよび選択のための方法は、例えばファージディスプレイ(Phage display of peptides and proteins:a laboratory manual,Kay et al.,Academic Press,San Diego,Calif.,(1996)、Lowman et al.,Biochemistry 30(1991)10832-10838、Smith,Science 228(1985)1315-1317)、選択的ファージ感染(selective phage infection)(Malmborg et al.,J.Mol.Biol.273(1997)544-551)、選択感染性ファージ(selectively infective phage)(Krebber et al.,J.Mol.Biol.268(1997)619-630)、遅延感染性パニング(delayed infectivity panning)(Benhar et al.,J.Mol.Biol.301(2000)893-904)、細胞表面ディスプレイ(Wittrup,Curr.Opin.Biotechnol.,12(2001)395-399)、細菌ディスプレイ(Georgiou et al.,Nat.Biotechnol.15(1997)29-34、Georgiou et al.,Trends Biotechnol.11(1993)6-10、Lee et al.,Nat.Biotechnol.18(2000)645-648、June et al.,Nat.Biotechnol.16(1998)576-580)、酵母ディスプレイ(Bader&Wittrup,Methods Enzymol.328(2000)430-444、Boder&Wittrup,Nat.Biotechnol.15(1997)553-557)および哺乳動物細胞(Whitehorn et al.,Biotechnol.13(1995)1215-1219)、インビトロディスプレイ(Amstutz et al.,Curr.Opin.Biotechnol.12(2001)400-405)、ポリソームディスプレイ(Mattheakis et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91(1994)9022-9026)、リボソームディスプレイ(Hanes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94(1997)4937-4942)、mRNAディスプレイ(Roberts&Szostak,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94(1997)12297-12302、Nemoto et al.,FEBS Lett.414(1997)405-408)、およびリボソーム不活化ディスプレイ系(Zhou et al.,J.Am.Chem.Soc.124(2002)538-543)、ペリプラズム発現とサイトメトリースクリーニング(periplasmic expression and cytometric screening)(Chen et al.,Nat.Biotechnol.19(2001)537-542)、タンパク質フラグメント補完アッセイ(protein fragment complementation assay)(Johnsson&Varshavsky,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91(1994)10340-10344、Pelletier et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95(1998)12141-12146)、酵母ツーハイブリッドスクリーニング(Fields&Song,Nature 340(1989)245-246、Visintin et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96(1999)11723-11728)など、種々知られている。
抗体の可溶性および総合的な構造健全性は、例えばゲル電気泳動、等電点電気泳動、キャピラリー電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよび逆相高速液体クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、ペプチドマッピング、オリゴ糖マッピング、質量分析、紫外吸光度分光法、蛍光分光法、円偏光二色性分光法、等温滴定熱量測定、示差走査熱量測定、分析用超遠心分離、動的光散乱、タンパク質分解、および架橋、濁度測定、フィルター・リタデーション・アッセイ(filter retardation assay)、免疫学的アッセイ、蛍光色素結合アッセイ、タンパク質染色アッセイ、顕微鏡法、およびELISAまたは他の結合アッセイによる凝集物の検出、X線結晶解析、およびNMR分光法などの方法によって、定性的または定量的に決定することができる。
ヒト化は一般に以下のように実行される。
1.ヒト抗体またはヒト化抗体またはコンセンサス抗体フレームワークの選択
・ヒト/ヒト化/コンセンサス可変ドメイン配列のライブラリー(例えばVBASEまたはNCBIから入手されるもの)に対する非ヒト可変ドメイン配列のアライメント。
・アミノ酸配列相同性に基づくアクセプターフレームワークの選択。
2.精密化
・利用可能な結晶構造情報または相同性モデリングに基づく、非ヒト抗体における、とりわけフレームワークにおける、結合部位の構造、VH-VLペアリングなどを支持する重要な残基の特定。
・特定された重要な残基の復帰変異。
したがって、上記からわかるように、非ヒト化抗体のヒト化では、抗原結合に影響を及ぼす残基を特定することと、ヒト化抗体において失われた性質を回復するためにそれらをどのように改変するかは、極めて重要である。
非ヒト抗体のヒト化のために多種多様なアプローチが開発されてきたが、ヒト化抗体を設計するために広く一般に応用可能な方法は未だ確立されていない。それゆえに、所望の性質を有するヒト化抗体を得るには、例えばいくつかの変種ヒト化抗体を生成してそれらを評価することで最良のヒト化変種を特定する必要があるなど、複数の試みが必要である。
発明の態様
本明細書には、構造に基づくアプローチを用いて非ヒト抗体をヒト化するための方法が記載される。本明細書に記載する方法では、例えばヒト生殖細胞系配列などの選択されたアクセプターの所定の位置におけるアミノ酸残基の具体的な(復帰または前進)変異の(要件および)適性を決定することが可能である。それぞれの残基のトポロジー、三次元構造および相互作用、ならびにその置換の性質が考慮される。これにより、抗原結合に対する具体的なアミノ酸残基変化の影響が反映される。これは、具体的アミノ酸残基の変化によるヒト化配列における抗原結合への干渉を低減し、さらには防止する。これにより、改良されたヒト化方法が提供される。
本方法は、以下の中枢的工程またはコア工程を含む:
ヒト化されるアミノ酸配列の、すべての潜在的アクセプター配列とのアライメントおよびランク付け;ランク付けは類似性に基づいて行うか、または最後に、スコア/アクセプター配列に関するスコア/最終配列に関するスコアに基づいて行うことができ、すなわち多数のヒト化(案)候補をランク付けすることができる;
任意で、より重要な構造影響残基(structural influencing residue)をさらに特定するために、カノニカルループ構造を割り当てる;
任意で、モデルを構築するための出発点を得るために、タンパク質データバンク(PDB)を検索する;
モデルを構築する;これは(最終)スコアを属性付けるために必要であり;これには、高精度のモデルをもたらす同じトポロジーを有する部分構造を特定するための検索が含まれ;したがって、三次元環境依存モデルを構築させるために、三次元検索が行われる;
アライメントを、挿入、欠失、そして存在するのであれば、相同性が低くなっている特定セグメントについてチェックする;
構築されたモデルにおけるHVRが、見いだされた構造中のHVRと相違する場合は、構造データベースにおいて、各HVRループについて別々に、またはさらには各HVRの上行ループ部分および下行ループ部分についてのみ、検索を行う;
VH/VL配向調節;VH/VL配向は、HVR-HとHVR-Lの間の距離が正しくなるようにHVR残基を配置するのに重要であることが実証されている;相対的配向は、主として、VHとVLの間の界面にある残基によってトリガーされる;これらはフレームワーク残基ならびにHVR残基でありうる;
モデルのエネルギー最小化;系を緩和させるために推奨されるが、必須ではない;
トポロジーに基づいて各変化/差異にスコアを割り当てる;
提案された配列を個々のスコアまたは総合的スコアに基づいて並べ替える;
選り抜きの生殖細胞系を選択する;総合的スコアが類似している場合は、使用される頻度の高い生殖細胞系が選択/優先されるべきである;
スコアリングに基づいてVおよびJの組合せを決める;
スコア4またはスコア4および3の大半またはすべてを排除するために、必要な復帰変異を決める;これは、スコア3がない変種やスコア3のすべてを有する変種ではなく、一部のスコア3を有するいくつかの変種をもたらしうる;スコアが1または2である変化を考慮し、同様にスコアが低い前進変異(forward mutation)を考慮する。
本明細書に記載する方法で得られるヒト化抗体は、本発明の方法によるトポロジー効果の考慮を使用していない従来の方法で得られるヒト化抗体と比べて、より多くのヒトらしさ(ヒト特性)を有することが見いだされた。この理論に拘泥するわけではないが、これは、当技術分野では、より長い中断のないストレッチがヒト生殖細胞系配列から採用されるという事実によるものと考えられる。本発明の方法で行われるように、より小さな部分構造を使用することにより、改良されたモデルを構築することができ、改良されたヒト化抗体を得ることができる。
本発明の方法は、非ヒト抗体の超可変領域の移入のために選択されたアクセプター配列(例えばヒト生殖細胞系配列)と非ヒト抗体そのものとの間の各/任意のアミノ酸差異を(そのスコアを得ることによって)定量化する工程を含み、これは、三次元構造、トポロジーおよびそれぞれの残基のその環境との相互作用に基づく。
トポロジーの差異およびその効果を定量化するために、三次元構造に基づくアミノ酸残基間の構造的差異およびそれぞれの位置のトポロジー、例えば三次元相同性モデルを用いて決定されるものが、考慮される。一定の位置について、2つまたはそれ以上のトポロジー識別子が割り当てられうることは、指摘しておく必要がある。一般的には最も重要なものだけが使用される。本発明によるトポロジー識別子は以下の等級(gradation)を有する:まずA、次にL、次にSまたはC(トポロジー的影響に依存する;例えば接触位置Cは、A残基から遠い塩橋よりも影響が大きい場合がある)、次にI、次にE。構造的差異はスコアに反映される。スコアの大小は、フレームワークの安定性またはHVRのコンフォメーションに対するアミノ酸差異の影響力に左右/決定され、0は影響なしを表し、1はわずかな影響を表し、2は中等度の影響を表し、3はフレームワークの安定性が影響を受ける可能性を表し、4はフレームワークの安定性またHVRのコンフォメーションが著しく乱され/影響を受けるであろうことを表す。
構造的差異は、20種の天然アミノ酸残基の各アミノ酸について、より正確には、それぞれの位置に存在すると仮定すれば、19種の異なるアミノ酸残基について、決定することができる。これは、ヒト生殖細胞系配列中の当該位置に存在する(より限られた数の異なる)アミノ酸残基に関連付けることもできる。これにより、結果として生じる(総合的な)構造的差異を反映する(スコアリング)行列が得られる。
本発明は、少なくとも部分的には、必要であれば、適切なアミノ酸変化を、特定された構造的差異に基づいて特定することができるという発見に基づいている。この差異/変化は、異なる、好ましくは低下した、構造歪み(例えばフレームワーク/HVRコンフォメーションに対する影響またはフレームワーク/HVRコンフォメーションの変形の低減)をもたらし、それによって、ヒト化抗体のその標的への結合を増加させる。これにより、本発明の方法を使用すれば、改良された性質を有するヒト化抗体を提供することができる。例えばヒト化抗体の結合アフィニティーの低減を最小限に抑えることができる。
本明細書に記載の一局面は、以下の工程を含む、抗体の作製方法である:
(a)非ヒト抗体の可変ドメイン(のアミノ酸配列または非ヒト抗体の可変ドメインをコードする核酸配列)を配列決定し、それによって、非ヒト抗体の可変ドメインのアミノ酸配列を入手する工程;
(b)任意で、該非ヒト抗体の三次元相同性モデルを生成する工程;
(c)各可変ドメインのための可変ドメインアクセプター配列として、
(i)それぞれの非ヒト抗体可変ドメインに対して最も高い配列相同性を有するヒト生殖細胞系配列、または
(ii)全体として完全な可変ドメインを形成する2つまたはそれ以上のヒト生殖細胞系配列フラグメントであって、アライメントした場合に、それぞれの非ヒト抗体可変ドメインに対して、単一のヒト生殖細胞系配列よりも高い相同性を有するフラグメント、または
(iii)非ヒト抗体の、軽鎖可変ドメインに対する重鎖可変ドメインの角度(VH/VL角度)を維持することができるヒト生殖細胞系アミノ酸配列、
(iv)ヒト抗体またはヒト化抗体のVH/VLペア
を、((i)および(ii)については互いに独立して、(iii)および(iv)については互いに依存して)特定し、選択する工程;
(d)工程(c)において選択されたアクセプター配列に非ヒト抗体のHVR/CDR残基を移植する工程;
(e)非ヒト抗体と工程(c)において選択された配列または工程(d)において得られた配列との間の構造的差異を(アミノ酸残基の差異をスコア化することによって)定量化する工程;
(f)選択された配列または移植された配列に、先の工程の定量化に基づいて、アミノ酸(復帰および前進)変異を導入する(工程(c)または工程(d)のアミノ酸配列を、先の工程の定量化/スコア化に基づいて変異させる)工程;
(g)(f)において得られたアミノ酸配列をコードする核酸配列を合成または生成する工程;
(h)(g)の核酸を含む細胞を培養し、それによって抗体を作製する工程。
一態様において、本方法はさらに、非ヒト抗体軽鎖可変ドメインまたは非ヒト抗体重鎖可変ドメインについてのみ、行われる。
本明細書に記載の一局面は、以下の工程を含む、免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸配列を合成または作製または提供するための方法である:
(a)非ヒト抗体重鎖または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を、該非ヒト抗体重鎖または軽鎖可変ドメインの第1のヒト化変種と(最大レベルのアミノ酸配列同一性が達成されるように)アライメントする工程であって、該第1のヒト化変種が、非ヒト抗体重鎖または軽鎖可変ドメインのCDRまたは超可変領域(HVR)または特異性決定残基(SDR)を、
(i)それぞれの非ヒト抗体重鎖または軽鎖可変ドメインに対して最も高い配列相同性を有するヒト生殖細胞系アミノ酸配列、または
(ii)完全な可変ドメインを形成する2つまたはそれ以上のヒト生殖細胞系アミノ酸配列フラグメントであって、アライメントした場合に、それぞれの非ヒト抗体可変ドメインに対して単一のヒト生殖細胞系アミノ酸配列よりも高い相同性を有するフラグメント、または
(iii)該非ヒト抗体可変ドメインのVH/VL角度を維持することができるヒト生殖細胞系アミノ酸配列、または
(iv)ヒト抗体またはヒト化抗体の重鎖または軽鎖
に移植することによって得られたものである、工程;
(b)非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインと該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの第1のヒト化変種とが異なるアミノ酸残基を有する、アライメントされたフレームワーク位置の(またはアライメントされたフレームワーク位置における)三次元的差異(その差異ゆえに抗原結合および/または三次元構造に影響を及ぼすもの)を定量化する工程;
(c)三次元的差異が低減した該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの新しいヒト化変種を得るために、工程(b)において決定された1つまたは複数のアミノ酸残基を、抗原結合および/または三次元構造に影響を及ぼす程度が、置換されるアミノ酸残基よりも低い(すなわち低いスコアを有する)アミノ酸残基で置換することによって、該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインアミノ酸配列の第1のヒト化変種を改変する(すなわち変異させる)工程;
(d)任意で、工程(c)で得られた新しいヒト化変種を第1のヒト化変種として、三次元的差異がもはや変化しなくなるまで/三次元的差異を低減することがもはやできなくなるまで/三次元的差異がRMSD解析による決定で10%未満になるまで、工程(b)および工程(c)を繰り返す工程;
(e)工程(c)または工程(d)で得られた改変可変ドメインをコードする核酸配列を合成または作製または提供する工程。
本明細書に記載の一局面は、以下の工程を含む、免疫グロブリンを作製するための方法である:
(a)重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインについて個別に、
・非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を、該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの第1のヒト化変種と(最大レベルのアミノ酸配列同一性が達成されるように)アライメントする工程であって、該第1のヒト化変種は、非ヒト抗体重鎖または軽鎖可変ドメインのCDRまたは超可変領域または特異性決定残基を、
(i)前記非ヒト可変ドメインに対して最も高い配列相同性を有するヒト生殖細胞系アミノ酸配列、または
(ii)アライメントした場合に単一のヒト生殖細胞系アミノ酸配列よりも高い相同性を有する2つまたはそれ以上のヒト生殖細胞系アミノ酸配列フラグメント、または
(iii)VH/VL角度を維持することができるヒト生殖細胞系アミノ酸配列、または
(iv)ヒト抗体またはヒト化抗体の重鎖または軽鎖可変ドメイン
に移植することによって得られたものである、工程、
・非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインと該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの第1のヒト化変種とが異なるアミノ酸残基を有する、アライメントされたフレームワーク位置の/における三次元的差異(その差異ゆえに抗原結合および/または三次元構造に影響を及ぼすもの)を定量化する工程、
・先の工程において決定された1つまたは複数のアミノ酸残基を(抗原結合および/または三次元構造に及ぼす影響が、置換されるアミノ酸残基よりも少ない(すなわち、より低いスコアを有する)アミノ酸残基で)置換することによって該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインアミノ酸配列の第1のヒト化変種を改変し/変異させて、三次元的差異が低減した改変可変ドメインを生成する工程、
・任意で、前記改変可変ドメインを第1のヒト化変種として、三次元的差異がもはや変化しなくなるまで/三次元的差異を低減することがもはやできなくなるまで/三次元的差異がRMSD解析による決定で10%未満になるまで、先の2つの工程を繰り返す工程、
・先の工程において得られた改変可変ドメインをコードする核酸配列を合成/作製/提供する工程;
(b)免疫グロブリンを発現させるために、工程(a)の改変重鎖可変ドメインをコードする核酸を含む免疫グロブリン重鎖をコードする核酸と工程(a)の改変軽鎖可変ドメインを含む免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸とを含む哺乳動物細胞を培養する工程;
(c)哺乳動物細胞または培養培地から免疫グロブリンを回収し、それによって免疫グロブリンを作製する工程。
非ヒト抗体とそのヒト化変種との間のアミノ酸差異が抗原結合および/または三次元構造に及ぼす影響は、本明細書に記載するスコアリングアプローチで定量化することができる。
三次元的差異を定量化するために、すなわちスコアリングのために、すべてのアミノ酸残基を、例えば相同性モデルから得られる三次元構造におけるそれぞれの位置に基づいて特徴付ける。
まず、アミノ酸残基は、それぞれのトポロジーに基づいて以下のとおり分類される:
I:内部側鎖、
E:外部側鎖、
C:接触H-L鎖、
A:抗原接触、
L:抗原へのリンカー
S:塩橋に参加、
N:特別な相互作用なし。
一定の残基には、上に示したトポロジー識別子が2つまたはそれ以上割り当てられる場合があることを、指摘しておく必要がある。一般的には、より重要なものが選ばれる。本発明によるトポロジー識別子は以下の等級を有する:まずA、次にL、次にSまたはC(トポロジー的影響に依存する;例えば接触位置Cは、A残基から遠い塩橋よりも影響が大きい場合がある)、次にI、次にE。
したがって、任意の本発明方法の一態様において、アライメントされたフレームワーク位置における異なるアミノ酸残基の効果の定量化は、VHおよび/またはVLの三次元構造を使用することによって行われる。一態様において、三次元構造はX線結晶解析または相同性モデリングによって得られる。一態様において、非ヒト可変ドメインまたは非ヒト抗体の三次元モデルの生成は相同性モデリングによる。一態様において、相同性モデリングは、配列全体の部分構造に基づいて生成したモデルを用いて行われる。一態様において、部分構造は、最大で、可変ドメインの完全な領域を含む。一態様において、部分構造は、最大で、20アミノ酸残基を含む。一態様において、部分構造は、最大で、15アミノ酸残基を含む。一態様において、部分構造は、最大で、10アミノ酸残基を含む。一態様において、部分構造は、10個以下のアミノ酸残基を含む。一態様において、任意の本発明方法は、定量化に先だって、それぞれの位置に、トポロジー分類子I(内部側鎖)、E(外部側鎖)、C(接触重鎖-軽鎖)、A(抗原接触)、L(抗原へのリンカー)、S(塩橋に参加)、またはN(他のどれでもない=特別な相互作用なし)のうちの1つを割り当てる工程を、さらに含む。本明細書に記載の方法において使用される相同性モデルは、一態様において、各フレームワーク領域、HVRおよびフレームワークとHVRの組合せについて、別々に構築される。
当技術分野では、例えばStrall(ストラクチャーオール(structure all))位置(=VH-VL界面から5オングストローム以内またはCDR残基に近いすべての残基)、Buried(=GXGにおける溶媒露出との対比でモデルにおいて20%未満の溶媒露出)およびStrltd(=CDRと、または界面において、疎水性相互作用、静電相互作用またはイオン相互作用をする特定残基)など、異なるトポロジー分類子が公知である。これらのトポロジー分類子は、CDR残基に加えて、界面にあるかCDR残基と接触している特定残基だけを定義している。
それらとは対照的に、本明細書に記載する分類は、結果として生じるスコアに、自動的に影響を及ぼす。これは追加情報を与え、例えばスコアが高い場合には、抗体の健全性を確保するために復帰変異を導入する必要が示される。本発明によるトポロジー識別子は以下の等級を有する:まずA、次にL、次にSまたはC(トポロジー的影響に依存する;例えば接触位置Cは、A残基から遠い塩橋よりも影響が大きい場合がある)、次にI、次にE。
さらに詳しく述べると、
・HVR中の残基がトポロジーAである場合、変化には4のスコアが割り当てられる。すなわち、これは構造に著しい影響があり、それゆえに、それを変化させることはリスクが高い:
・トポロジーLの残基がトポロジーSも有する場合、それはトポロジー的重要性を累積しているので、いくつかの変化については、3ではなく4のスコアが、変化に割り当てられる;
・残基がトポロジーC(VHとVLの間の接触)またはA(抗原と接触している可能性)またはL(「A」残基とフレームワーク残基との間のリンカー残基)である場合、VH-VL不安定化に対するまたはA残基の配向/コンフォメーションに対するそれらの潜在的効果ゆえに、変化には、より高いスコアが割り当てられる;言い換えると、これら3つのカテゴリーA、CおよびLについては、HVR中の前進変異は高いスコアを得ると共に、フレームワーク中の復帰変異は高いスコアを回避する;
・トポロジーCの残基が、隣接する可変ドメインと接触しない短い側鎖を有する場合、より小さなアミノ酸によるその置換は、1または2のスコアを得ることになり、一方、より大きなアミノ酸側鎖による他の置換には、側鎖のサイズおよび隣接する可変ドメインとの接触の性質に依存して、2または3のスコアを与えることができる;
・トポロジーCの残基が、隣接する可変ドメインと接触しない短い側鎖を有し、かつ置換が、側鎖が大きすぎて、VH-VL配向を変化させずには、そのような側鎖への適応が達成されえないほどの側鎖で行われる場合、この変化には4のスコアが与えられることになる;
・トポロジーCの残基がトポロジーSも有する場合、それはトポロジー的重要性を累積しているので、変化には3ではなく4のスコアが割り当てられる;
・トポロジーSの残基がトポロジーIも有する場合、変化には、反対電荷の側鎖および適当な電荷を欠くだけの中性のより小さな側鎖について、それぞれ4または3のスコアが割り当てられる;
・トポロジーSの残基がトポロジーIも有し、かつ置換が中性であるがより大きな側鎖で行われる場合、置換される側鎖とその正面の荷電残基との間で立体障害が起こるので、変化には4のスコアが割り当てられる;
・トポロジーSの残基がトポロジーEも有する場合、変化には、反対電荷の側鎖および適当な電荷を欠くだけの任意の側鎖について、それぞれ3または2のスコアが割り当てられる。
非ヒト可変ドメインのフレームワーク中のアミノ酸残基と、非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの(第1の)ヒト化変種のフレームワーク中のアミノ酸残基との間で差異がある場合、その差異を定量化すること、すなわちスコアを割り当てることによって定量化することができる。(物理的、嵩的に)類似するアミノ酸による置換は、通常は低いスコアをもたらし、すなわち通常は認容され、一方、側鎖特徴の完全な変化は高いスコアをもたらす。変化に関するスコアは、空間的制約が異なるので、その位置のトポグラフィーにも依存する(例えば内部(I)側鎖を変化させることの方が、外部(E)側鎖を変化させることよりも、全体構造にとっては、より劇的/有害である/ありうる)。
したがって、一態様において、任意の本発明方法は、非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインと該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの(第1の)ヒト化変種とが異なるアミノ酸残基を有する、アライメントされたフレームワーク位置の差異であって、その差異ゆえに、抗原結合および/または三次元構造に影響を及ぼすものを定量化する工程において、各差異に、0(コンフォメーションに対する影響なし)、1(わずかな局所的影響)、2(局所的コンフォメーションに影響)、3(局所的コンフォメーションおよび隣接する鎖またはループのコンフォメーションに強い影響)、または4(抗原認識が妨害されるほど激しく局所的コンフォメーションを破壊するだろう)のスコアを割り当てる工程をさらに含む。
0のスコアは、(ベータシートまたはループ中の)表面局在アミノ酸残基の変化に割り当てられる。19種のアミノ酸残基(プロリンを除くすべて)の側鎖は、存在する自由空間ゆえに、適応されうるからである。例外はプロリンであり、三次元構造が変化しない場合、その辺かには0のスコアが割り当てられ、そうでない場合は、抗原結合に対する影響に応じて、変化には3または4のスコアが割り当てられる。
したがって一態様において、トポロジーEを有するアミノ酸残基の、プロリン(これには環状残基としての制約がより重要である)を除く任意のアミノ酸残基への変化には、0のスコアが割り当てられる。プロリンの導入については、この残基の周りの適合するファイ角およびプサイ角に関して考慮する必要がある。例えば、CDR/HVR残基の近傍にある極性残基が、選ばれた生殖細胞系からのプロリンで置換されるとすると、この置換は、i)極性残基から疎水性残基への変化ゆえに1、ii)角度適合性に応じて2または3、およびiii)CDR/HVR残基について角度変化およびコンフォメーション変化が予想される場合は4と、スコア化することができる。
内部アミノ酸残基変化には、利用できる自由空間に応じたスコアが割り当てられる。より小さな側鎖による置換には、0などの低いスコアが与えられ、より大きな側鎖による置換には、三次元構造における利用可能な空間に応じて1~4のスコアが与えられることになる。
したがって一態様において、トポロジーIを有するアミノ酸残基の、より小さな側鎖を有するアミノ酸残基への変化には(すなわち保存的置換には)、0のスコアが割り当てられ、炭素原子が1つ多い側鎖を有するアミノ酸残基への変化には、1のスコアが割り当てられ、炭素原子が2つ多い側鎖を有するアミノ酸残基への変化には、2のスコアが割り当てられ、炭素原子が3つ多い側鎖を有するアミノ酸残基への変化には、3のスコアが割り当てられ、他のすべての変化には、4のスコアが割り当てられることになる。
抗原接触アミノ酸残基における変化は、置換された場合は常に、4のスコアが割り当てられることになる。
したがって一態様において、4のスコアは、トポロジーAのアミノ酸残基の、他の任意のアミノ酸残基への変化に割り当てられる。
抗原と直接的には接触していないがAと指定されたアミノ酸に極めて近いアミノ酸はLと指定される。その変化は、時にはコンフォメーション変化をもたらし、それには、3または4のスコアが割り当てられることになる。
π-π/疎水性相互作用の一部であるアミノ酸残基が非疎水性アミノ酸残基で置換されると、その疎水性相互作用は破壊される。そのような置換には、3のスコアが割り当てられることになる。
したがって一態様において、トポロジーCを有するアミノ酸残基の、非疎水性アミノ酸残基への変化には、それによって同じドメインまたは対応する可変ドメイン中のアミノ酸残基との相互作用が変化する(低減しまたは排除される)のであれば、3のスコアが割り当てられる。
塩橋の一部であるアミノ酸残基が反対に荷電したアミノ酸または非荷電アミノ酸で置換されると、塩橋は破壊される。そのような置換には、塩橋が溶媒露出している場合には3のスコアが割り当てられ、塩橋が内部にある場合は4のスコアが与えられる。
したがって一態様において、トポロジーSを有するアミノ酸残基の、反対に荷電したアミノ酸または非荷電アミノ酸への変化には、塩橋が溶媒露出している場合には3のスコアが割り当てられ、塩橋が内部である場合には4のスコアが割り当てられる。
いくつかの例示的変化とその結果生じるスコアを以下の表に示す。
Figure 0007217772000012
本明細書に記載の方法は、一定の態様において、以下のとおりである:
・V領域のHVR1および2をブレンドすることによって配列検索を行う(公知の構造を有する類似のフレームワークを特定する)
・HVR3に関して別個の配列検索を行う(選択されたフレームワークへの移植のためにHVR3を選ぶ)
・J要素の最後に(極めて)小さな差異を許す(通常はフレームワーク用に選ばれた構造からのJ要素をアクセプターテンプレートとして使用することができる)
・相同性モデルを確立する(再構築されたモデル構造において、元の抗体配列を反映させるために逸脱残基を変異させる)
・関連残基のトポロジーを決定する
・スコアリング行列を確立する(元の非ヒト抗体配列とヒト生殖細胞系とのアライメントから、元の抗体アミノ酸に関して、考えうるすべての置換をスコア化する)
・(総合的同一性パーセンテージではなく)低い累積スコアに基づいてアクセプター生殖細胞系を選択する
・加えるべき(復帰)変異をスコアリング行列に基づいて決定する。
本明細書に記載の方法は変化の効果の三次元評価を配列情報と組み合わせる。本方法では、非ヒト抗体が、適切なヒト生殖細胞系配列とアライメントされる。該アライメントを用いて、各残基について変化の種類と組み合わされたトポロジーに基づいて、差異/必要な変化を定量化する。結果は一つの行列に集められる。
本発明の方法は一般に以下の工程を含む。
人体が異物として認識しうる非ヒト配列ストレッチから生じる潜在的な免疫原性の問題を排除し、または少なくとも低減するために、非ヒト抗体の結合特異性を、ヒトまたはヒト化アクセプターフレームワークに移す。これは非ヒト(ドナー)抗体の超可変領域(HVR)をヒト/ヒト化(アクセプター)抗体フレームワークに移植することによって行われる。
適切なヒト(アクセプター)抗体フレームワークは、ある場合には、非ヒト可変ドメインアミノ酸配列をヒト生殖細胞系抗体V遺伝子(生殖細胞系)のコレクションにアライメントし、配列の同一性および相同性に従ってそれらを並べ替えることによって特定される。アクセプター配列は、高い総合的配列相同性と、任意で、アクセプター配列中に正しいカノニカル残基が既に存在することとに基づいて選択される(「Ingenierie des anticorps banques combinatores」Lefranc,M-P.and Lefranc,G.編,Les Editions INSERM,1997のPoul,M-A.and Lefranc,M-P.参照)。加えて、VH/VL角度の保存を考慮することができる。
生殖細胞系V遺伝子は、重鎖の場合はCDR3の冒頭まで、そして軽鎖のCDR3の真ん中までの領域しかコードしていない。それゆえに、生殖細胞系V遺伝子の遺伝子は、Vドメイン全体にわたってアライメントされない。ヒト化コンストラクトはヒトフレームワーク1~3と非ヒトHVRとを含む。ヒトフレームワーク4配列は、軽鎖および重鎖について、それぞれヒトJK要素またはヒトJH要素に由来する。
ある特定アクセプター配列を選択する前に、ドナー抗体のいわゆるカノニカルループ構造を決定することができる(例えばMorea,V.,et al.,Methods,20(2000)267-279参照)。これらのカノニカルループ構造は、いわゆるカノニカル位置に存在する残基のタイプによって決定される。これらの位置は(一部が)HVR外にあり、親(ドナー)抗体のHVRコンフォメーションを保持するために、最終コンストラクトにおいて機能的に等価に保たれるべきである。
以下では、下記の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む抗体を用いて、本発明を概説する。
VH(122アミノ酸残基)(SEQ ID NO:01):
Figure 0007217772000013
VL(107アミノ酸残基)(SEQ ID NO:05):
Figure 0007217772000014
非ヒト抗体のアミノ酸配列を用いてモデルが構築される。
重鎖について、相同体を求めてPDBを検索することで、フレームワーク領域とHVRとの両方について、非常に近い相同体が構造データベース中に存在するかどうかをチェックする。
適切なフレームワークを特定するために、V領域だけを使用し、HVRをブレンドして検索を行う(下線付き残基も加える場合、HVRは複合KabatおよびChothia CDR(combined Kabat and Chothia CDR)に対応する):
Figure 0007217772000015
結果は次のとおりである。
Figure 0007217772000016
アライメントをチェックして、何らかの挿入または欠失があるかどうか、相同性が特に低い特定フレームワークがあるかどうか(そのような場合は具体的フレームワーク1、2または3を別々に検索することが可能である)を特定する。
HVR内のアミノ酸含有量はHVRのコンフォメーションを左右することが見いだされている。
非ヒト抗体のモデルを検索することにより、X線構造に関してHVRをブレンドすることによって見いだされる構造に基づいて構築されたモデルでは、例えばHVR-H1は異なることがわかった。そこで次に検索をHVRループごとに別々に行う。この場合はギャップを許さず、短いセグメントが異なる長さを有する場合、それは異なるコンフォメーションを有する。
Figure 0007217772000017
重鎖のためのモデルの構築:以下の太字配列によって構造を構築した。この例では32C2-FR1、3B2U-HVR-H1、32C2-FR2/HVR-H2/FR3、1VGE-HVR-H3/J要素である。
Figure 0007217772000018
モデリングには、Fvのすべての位置にユニークなインデックスを割り当て、CDRループの先端を特定し、上行ループセグメントと下行ループセグメントとを区別するWolfGuy抗体ナンバリングスキームを使用することができる。インプット配列の初期WolfGuyナンバリングは、利用可能な抗体テンプレート構造との配列アライメントを行うことと等価で、テンプレート選択、VH-VL配向調節およびモデル精密化の基礎を形成する。他の公表された抗体モデリングプロトコールとは異なり、フレームワークテンプレートは、VHおよびVLごと、またはFvごとに選択されるのではなく、必要なアミノ酸交換の数を最小限に抑えるためにフレームワークセグメントごとに別々に選択される。フレームワーク領域およびCDR領域の異なるテンプレート構造から原モデル(raw model)を組み立てた後、各残基を、それに近接している一定タイプの側鎖によって形成されるその(改変された)化学的近傍(chemical neighborhood)に関して調べる。Fvにおける各位置についての保存された近傍定義(neighborhood definition)に基づいて、所与の残基の側鎖コンフォメーションを(ある程度は主鎖コンフォメーションも)、マッチする公知の化学的近傍配置(chemical neighborhood constellation)から採用する。最後に、まず、ドメイン界面における一定のキー残基のアミノ酸タイプからVH-VL配向の絶対パラメータを予測し、次に予測された配向パラメータをモデルに適用する座標変換を行うことに基づいて、VH-VL配向を調節する。
同じ手順を軽鎖可変ドメインについて行う。
アミノ酸ベースの任意の2つの構造を比較する場合、一般的には、等価な原子の二乗平均平方根偏差(root-mean-square deviation)(RMSD)などの、距離ベースの測定基準が使用される。
任意の2つの三次元物体間の配向を特徴付けるには、
・各物体上の基準系
・配向パラメータを測定するための軸、
・これらのパラメータを記述し定量化するための術語
を定義することが必要である。
ABangleのコンセプトは、5つの角度(HL、HC1、LC1、HC2およびLC2)と距離(dc)とを用いて、一貫性のある絶対的な意味で、VH-VL配向を十分に特徴付ける方法である。抗体の可変ドメインのペア、すなわちVHとVLは一まとめにして抗体Fvフラグメントと呼ばれる。
重鎖ドメインおよび軽鎖ドメインにおいて構造的に最も保存されている残基の位置が、ドメインの場所を定義するために使用される。これらの位置はVHコアセット(core-set)およびVLコアセットと呼ばれる。これらの位置は、主にフレームワークのβ鎖上に位置して、各ドメインのコアを形成している。コアセットの位置を以下の表に示す。
Figure 0007217772000019
コアセット位置を用いて抗体Fv領域ドメイン上の基準系を登録した。
2つの基準平面(reference frame plane)が任意のFv構造上にマッピングされる。したがってVH-VL配向の測定を、それら2つの平面の間の配向を測定することと等価にすることができる。これを十分に、かつ絶対的な意味で行うには、少なくとも6つのパラメータ、すなわち距離、ねじれ角および4つの屈曲角が必要である。これらのパラメータは、上記の平面をむすぶ一貫して定義されたベクトルの周りで測定されなければならない。以下、このベクトルをCという。Cを特定するために、基準平面を上記の非冗長セット内の構造のそれぞれに登録し、各平面上にメッシュを置いた。したがって各構造は等価なメッシュポイントを有し、それゆえに等価なVH-VLメッシュポイントペアを有した。各構造におけるメッシュポイントの各ペアについてユークリッド距離を測定する。分離距離の分散が最小であるポイントのペアを特定する。これらの点をつなぐベクトルをCと定義する。
座標系は、各平面内にあってCに対応する点を中心とするベクトルを用いて十分に定義される。H1はVH平面の第1の主成分と平行なベクトルであり、一方、H2は第2の主成分と平行である。L1およびL2はVLドメインで同様に定義される。HL角は、この2つのドメイン間のねじれ角度である。HC1およびLC1屈曲角は、一方のドメインの他方のドメインに対する傾斜様変分(tilting-like variation)と等価である。HC2およびLC2屈曲角は、一方のドメインの他方のドメインに対するねじれ様変分(twisting-like variation)を記述する。
「VH-VL配向」という用語は、当業者には理解されるであろうとおり、当技術分野における一般的な意味に従って使用される(例えばDunbar et al.,Prot.Eng.Des.Sel.26(2013)611-620およびBujotzek,A.,et al.,Proteins,Struct.Funct.Bioinf.,83(2015)681-695参照)。これは、VHドメインとVLドメインが互いに対してどのように配向しているかを表す。
したがってVH-VL配向は、
・Cの長さ、dc、
・Cの周りで測定されるH1からL1までのねじれ角HL、
・H1とCの間の屈曲角HC1、
・H2とCの間の屈曲角HC2、
・L1とCの間の屈曲角LC1、および
・L2とCの間の屈曲角LC2
によって定義され、
ここで基準平面は、(i)VHの8つの位置H36、H37、H38、H39、H89、H90、H91およびH92に対応するCα座標をアライメントして、平面をそれらにフィットさせる工程、ならびに(ii)VLの8つの位置L35、L36、L37、L38、L85、L86、L87およびL88に対応するCα座標をアライメントして、平面をそれらにフィットさせる工程、(iii)各平面にメッシュを置く工程(ここで各構造は等価なメッシュポイントおよび等価なVH-VLメッシュポイントペアを有する)、および(iv)各構造におけるメッシュポイントの各ペアについてユークリッド距離を測定する工程(ここでベクトルCは分離距離の分散が最小であるポイントのペアを結ぶ)によって登録され、
H1はVH平面の第1の主成分に平行なベクトルであり、H2はVH平面の第2の主成分に平行なベクトルであり、L1はVL平面の第1の主成分と平行なベクトルであり、L2はVL平面の第2の主成分と平行なベクトルであり、HL角はこれら2つのドメイン間のねじれ角であり、HC1およびLC1は一方のドメインの他方のドメインに対する傾斜様変分に等価な屈曲角であり、HC2およびLC2屈曲角は一方のドメインの他方のドメインに対するねじれ様変分と等価である。
次に、すべての側鎖およびそれらの環境を考慮して両方の鎖を合わせたエネルギー最小化を、適切なソフトウェア、例えばAccelrys製のソフトウェアINSIGHTを用いて行う。
両可変ドメインを使用し、VH/VL角度を考慮して、フレームワークをもたらした2つまたはそれ以上の構造を重ね合わせる。
次に、例えばInsightのモジュール「discover」を使うなどして、複合体VH-VLをエネルギー最小化する。最小化プロセスは、例えば、1kcal/Aのしきい導関数(threshold derivative)で600サイクルのVA09Aグラジエント(VA09A gradient)に従い、部分電荷を考慮する。
スコアリング行列の確立
非ヒト抗体モデル構造の各アミノ酸位置について、ヒト生殖細胞系配列のリストを考慮して考えうる置換ごとに、三次元構造に対する効果を、スコアの割り当てによって定量化した。
定量化は各位置および各置換について行われる。
以下のトポロジー的説明が構造に基づいて各位置に割り当てられる。
I:内部側鎖
E:外部側鎖
C:接触H-L鎖
A:抗原接触
L:抗原へのリンカー
S:塩橋
各置換には、以下のとおりスコアが割り当てられる。
0:コンフォメーションに対するこの置換の影響はない
1:小さな局所的影響(一部の側鎖の局所配置)
2:局所的コンフォメーションへの影響
3:局所的コンフォメーションおよび隣接する鎖またはループのコンフォメーションに対して強い影響
4:局所的コンフォメーションを激しく破壊するだろう(抗原結合に影響を及ぼしうる)。
スコアの割り当て方は、以下のように、位置のトポグラフィーおよび変化に依存する。
1.ベータシート上または露出ループ上に外部側鎖を有するアミノ酸:そのような位置における変化の場合、20種の天然アミノ酸残基の大半は、存在する自由空間ゆえに適応されうるので、割り当てられるスコアは通常は「0」であり、プロリンまたはトリプトファンのような大きな残基は個別的に割り当てられる必要がある。
2.内部側鎖を有するアミノ酸:割り当てられるスコアは利用できる自由空間に依存する;分岐アミノ酸による直鎖状アミノ酸の置換は、実際の置換(effective replacement)と最終的には最小化とによって、チェックされなければならない(大きな逸脱は高いスコアにつながる)。
3.抗原接触側鎖を有するアミノ酸:あるアミノ酸が抗原と直接的に相互作用すると考えられる場合、その置換はいずれも、「4」のスコアが割り当てられる。
4.リンカーアミノ酸:抗原と直接的には接触していないが「A」と指定されたアミノ酸に極めて近いアミノ酸;そのようなアミノ酸に関する大きな差異は、「3」または「4」のスコアをもたらすコンフォメーション変化につながる場合がある。
5.接触側鎖を有するアミノ酸:そのようなアミノ酸は軽鎖と重鎖との界面に位置し、複合体の安定性にとって重要である;塩橋が存在する場合は、いかなる置換も、置換後にこの閉じた相互作用が起こることを可能にすべきである;同様に水素結合は方向性のある相互作用である;側鎖の置換は通常はその方向性の破壊につながり、高いスコア(「3」または「4」)を付ける必要がある。
6.溶媒に(それほど)露出していない塩橋は正電荷と負電荷の間に多くの相互作用エネルギーを有している;塩橋の破壊はドメイン内または軽鎖と重鎖の界面における安定性の著しい喪失につながりうる。
Figure 0007217772000020
芳香族、直鎖状または分岐という用語はアミノ酸側鎖を記述している。極性、負または正という用語は、側鎖の末端の官能性を記述している。
Figure 0007217772000021
Figure 0007217772000022
Figure 0007217772000023
Figure 0007217772000024
利用可能なヒト生殖細胞系配列に基づき可変ドメインの各位置における想定上の各置換に割り当てられたスコアを、一つの行列に集めることができる。
アライメントされた配列セット(問題の抗体-生殖細胞系)の各位置について、置換を実際に検討することができる残基、すなわち他の/すべての生殖細胞系においてこの位置に存在している残基は、数残基しかない。スコアは、
・構造ドメインに基づいて相対的重要性を判定することによって、かつ/または
・モデル上で置換を実施し、その置換が誘発する影響の等級に関するスコアを定量化することによって、かつ/または
・置換および全体的構造の最小化によって
割り当てられ、「A」残基または複合体の安定性に影響を及ぼさない局所的コンフォメーションの変化は、低い等級でスコア化することができ、「A」側鎖の入れ替えには厳しい制裁が科される。
この例示的抗体の一部(VH/SEQ ID NO:01の24個のN末端残基)に関して、上に概説したアプローチによって得られるスコアリング行列を、以下の表に示す。
Figure 0007217772000025
Figure 0007217772000026
ヒト生殖細胞系の選択およびヒト化
想定上のアクセプター生殖細胞系(HVRなし;前進変異も考慮することができる)について、すべてのスコアを合計する。次に、総合スコアを用いてヒト生殖細胞系を並べ替える。同一のスコアを有する、ヒト化を支援するための生殖細胞系フレームワークの選択は、その特定フレームワークの使用頻度に基づき、ヒトに見いだされる頻度の高い生殖細胞系が優先されることになる。スコアリングはV領域とJ要素について別々に行われる(あるいは3つのフレームのすべてについて個別にスコアリングの合計を行い、それらを組み合わせることにしてもよい)。
保存的なヒト化の場合、2までのスコアを有するアミノ酸の置換は許容され、3または4のスコアを有するアミノ酸変化は許容されない(これらのアミノ酸残基は変化させず、元のままに保つ);HVR内では、4のスコアを有する2つの残基に挟まれたすべてのアミノ酸を元のまま保つ(ヒトに変化させない)。
HVRの定義がChothiaまたはKabatによって定義されるように固定されることはない;場合により、HVRは上記の定義より小さくてもよく、反対に、HVRは前後のフレームワークのアミノ酸をいくつか含むこともできる。
それほど保存的でないヒト化の場合は、フレームワーク領域において4のスコアを有するアミノ酸変化だけを却下して復帰変異させる;HVR内では、4のスコアを有する2つの残基に挟まれたすべてのアミノ酸を元のままに保つ(ヒトに変化させない)。
さらに保存的ではないヒト化の場合は、HVR内の2つの「A」残基の間にあって2以下のスコアを有するアミノ酸の置換を行うことができる。
実施例1-マウス抗IL-17抗体のヒト化
本明細書に記載の方法を使用し、相違する残基の三次元構造に対する影響を本明細書に記載のスコアリング表に従って定量化(スコアリング)することで、マウス抗IL17抗体のヒト化変種を生成した。
SEQ ID NO:09の重鎖について、上に概説した方法に従って相同性モデルを生成し、以下の表に示すとおり、各残基に表示のトポグラフィーを割り当てた(上段:Kabatによる残基ナンバリング;中段:アミノ酸配列;下段:トポグラフィー)。
Figure 0007217772000027
これにより、2つの極めて重要な位置/ストレッチが特定された(上記の表では灰色で囲まれている)。
重鎖可変ドメインについて、スコアリングアプローチを用いずに8つのヒト化案を生成した(HC-2a~h;マウス生殖細胞系フラグメント:SEQ ID NO:10;HC-2a~HC-2h:SEQ ID NO:11~18)。
Figure 0007217772000028
大文字:HVR中;小文字:FR中
Figure 0007217772000029
大文字:HVR中;小文字:FR中
重鎖可変ドメインについて、スコアリングアプローチを用いて、5つの追加ヒト化案を生成した(HC-2i~m:SEQ ID NO:19~23;それぞれの生殖細胞系フラグメントSEQ ID NO:32~36)。
Figure 0007217772000030
大文字:HVR中;小文字:FR中
Figure 0007217772000031
大文字:HVR中;小文字:FR中
また、本明細書に記載するアプローチを用いずに得られた8つの案を、本明細書に記載のアプローチで遡及的に分析した。組み合わせた結果を以下の表に示す(それぞれの生殖細胞系フラグメントSEQ ID NO:24~31)。
Figure 0007217772000032
大文字:HVR中;小文字:FR中
Figure 0007217772000033
大文字:HVR中;小文字:FR中
上記13のヒト化案のうち、3つは許容できる結合アフィニティーを示した。そのうちの2つは、本明細書に記載のアプローチを用いずに得られ(8つ中2つ=25%)、1つは本明細書に記載の方法で得られた(5つ中1つ=20%)。
軽鎖可変ドメインについて、スコアリングアプローチを使用せずに、4つのヒト化案を生成した(LC-2a~d;SEQ ID NO:37~40)。
Figure 0007217772000034
大文字:HVR中;小文字:FR中
Figure 0007217772000035
大文字:HVR中;小文字:FR中
SEQ ID NO:49の軽鎖について、上に概説した方法に従って相同性モデルを生成し、以下の表に示すとおり、各残基に表示のトポグラフィーを割り当てた(上段:Kabatによる残基ナンバリング;中段:アミノ酸配列;下段:トポグラフィー)。
Figure 0007217772000036
軽鎖可変ドメインについて、本アプローチを用いて、2つの追加ヒト化案を生成した(LC-2e~f:SEQ ID NO:41および42;それぞれの生殖細胞系フラグメントSEQ ID NO:47および48)。
Figure 0007217772000037
大文字:HVR中;小文字:FR中
Figure 0007217772000038
大文字:HVR中;小文字:FR中
また、本明細書に記載するアプローチを用いずに得られた4つの案を、本明細書に記載のアプローチで遡及的に分析した。組み合わせた結果を以下の表に示す(それぞれの生殖細胞系フラグメントSEQ ID NO:43~46)。
Figure 0007217772000039
大文字:HVR中;小文字:FR中
Figure 0007217772000040
大文字:HVR中;小文字:FR中
上記6つのヒト化案のうち、4つだけが許容できる結合アフィニティーを示した。そのうちの2つは、本明細書に記載のアプローチを用いずに得られ(4つ中2つ=50%)、2つは本明細書に記載の方法で得られた(2つ中2つ=100%)。
本明細書に記載のアプローチを用いて、軽鎖可変ドメインにおいて、2つの残基、すなわちH34およびF55は、抗原結合に強い影響を及ぼしていることが特定された。
それぞれのヒト化抗IL17抗体についての結果を以下の表に要約する。
Figure 0007217772000041
このように、本発明の方法を使用することによって、不活性変種の数を低減することができる。
実施例2-抗CCR5抗体
従来のヒト化方法を用いて、すなわち本明細書に記載のアプローチを使用せずに、マウス抗CCR5抗体重鎖可変ドメインのヒト化変種を17種類生成した。これらの変種についてCCR5への結合を決定した。本発明の方法を使用することにより、抗原に結合する可能性の低いヒト化変種を、総スコアおよび4のスコアが割り当てられるアミノ酸差異の数に基づいて特定することが可能であることがわかる。これにより、抗原結合不活性変種を特定し、選択から外すことができる。
Figure 0007217772000042
本発明の一定の方法および態様では、以下の工程を利用して、非ヒト抗体のアミノ酸配列とヒト生殖細胞系配列とを含むヒト化抗体が作製される:
(a)非ヒト抗体可変ドメインのアミノ酸配列と、(i)前記非ヒト可変ドメインに対して最も高い配列相同性を有するヒト生殖細胞系配列、または(ii)アライメントした場合に単一のヒト生殖細胞系配列よりも高い相同性を有する2つまたはそれ以上のヒト生殖細胞系配列フラグメント、または(iii)VH/VL角度に基づいて、のアミノ酸配列とを入手する工程;
(b)非ヒト抗体可変ドメイン中およびヒト生殖細胞系配列中の超可変領域アミノ酸配列を特定する工程;
(c)非ヒト抗体超可変領域アミノ酸配列で、対応するヒト生殖細胞系超可変領域アミノ酸配列を置換する工程;
(d)非ヒト抗体のフレームワーク領域(FR)とヒト生殖細胞系配列の対応するFRのアミノ酸配列をアライメントする工程;
(e)アライメントされたFR配列において、対応するヒト生殖細胞系残基とは同一でない非ヒト抗体FR残基を特定する工程;
(f)非同一非ヒト可変ドメインアミノ酸残基が、以下のトポロジー:
I:内部側鎖
E:外部側鎖
C:接触H-L鎖
A:抗原接触
L:抗原へのリンカー
S:塩橋
のうちの少なくとも1つを有すると合理的に予想されるかどうかを決定し、その差異が0ではないスコアをもたらすのであれば、選択されなかったヒト生殖細胞系配列において該位置に存在するそれぞれの位置の各アミノ酸残基について、それぞれのスコアを決定し、それによってスコアリング行列を生成する工程;
(g)これらのトポロジーのうちの少なくとも1つを有すると合理的に予想される任意の非同一非ヒト抗体アミノ酸残基について、当該残基で、最も低いスコアを有する前記行列からの対応するアミノ酸残基を置換する工程。
任意で、工程(e)で特定された任意の非同一残基が、ドメインの表面に露出しているか、またはその中に埋没しているかが決定され、その残基は露出しているが工程(f)で特定されるトポロジーのいずれをも有しない場合には、ヒト生殖細胞系残基を保持してもよい。
一態様において、本方法は、非ヒト抗体FR配列とヒト生殖細胞系FR配列とをアライメントする工程、アライメントされたヒト生殖細胞系FR配列と同一でない非ヒト抗体FR残基を特定する工程、およびそのような各非同一非ヒト抗体FR残基について、対応するヒト生殖系残基がその部位においてすべての種にわたって高度に保存されている残基に相当するかどうかを決定し、もしそれがそのように保存されているのであれば、その部位にそのヒト生殖細胞系アミノ酸残基を含むヒト化抗体を調製する工程をさらに含む。
一態様では、相同性モデルにおいて、非ヒト抗体配列とテンプレート配列の主鎖コンフォメーションの二乗平均平方根差(root mean square difference)(RMSD)が4Å未満、3Å未満、好ましくは2Å未満である。
本発明の一定の方法および態様では、少なくとも1つの軽鎖と1つの重鎖とを含むヒト化抗体の作製方法であって、
(a)少なくとも1つのHVRを有する非ヒト抗体を選択する工程;
(b)ヒト抗体重鎖または生殖細胞系配列を選択する工程;
(c)ヒト抗体軽鎖または生殖細胞系配列を選択する工程;
(d)非ヒト抗体重鎖からの少なくとも1つのHVRをヒト抗体重鎖に導入することで組換え重鎖を形成させる工程;および
(e)非ヒト抗体軽鎖からの少なくとも1つのHVRをヒト抗体軽鎖に導入することで組換え軽鎖を形成させる工程;
(f)本明細書に記載の方法に基づいて両可変ドメインアミノ酸配列中のアミノ酸残基を変化させる工程
を含み、ヒト抗体の重鎖および軽鎖のそれぞれの選択が、それぞれ非ヒト抗体の重鎖および軽鎖との配列相同性のみによって決定される方法。
本発明の一定の方法および態様では、以下の工程を含む、ヒト化抗体の作製方法が提供される:
非ヒト抗体の可変(V)領域フレームワーク(FR)配列をヒト抗体またはヒト抗体生殖細胞系配列の可変(V)領域フレームワーク(FR)配列と比較することで、非ヒト抗体FRとヒト抗体またはヒト生殖細胞系FRとの間の配列相同性の程度を決定する工程、および
非ヒト抗体中のFRを本明細書に記載の方法で決定されたヒト抗体またはヒト生殖細胞系FRで置換する工程。
一態様において、スコアの割り当ては、本明細書において概説したすべての変化を含む。
一態様において、スコアの割り当ては、各差異に0、1、2、3または4のスコアを割り当てる工程をさらに含み、ここで、
・トポロジーAのHVR中の残基の変化には、4のスコアが割り当てられ、
・トポロジーSも有するトポロジーLの残基の変化には、3または4のスコア(4が好ましい)が割り当てられ、
・短い側鎖を有するトポロジーCの残基の、(体積に基づいて)より小さなアミノ酸を有するアミノ酸残基への変化には、最大2のスコアが割り当てられ、
・短い側鎖を有するトポロジーCの残基の、より大きな(体積)側鎖への変化には、側鎖のサイズおよび隣接する可変ドメインとの接触の性質に応じて、2または3のスコアが割り当てられ、
・短い側鎖を有するトポロジーCの残基の、VH-VL配向の変化をもたらす側鎖を有するアミノ酸残基への変化には、4のスコアが割り当てられ、
・トポロジーSをも有するトポロジーCの残基の変化には、4のスコアが割り当てられ、
・トポロジーIをも有するトポロジーSの残基の変化には、反対電荷の側鎖および適当な電荷を欠くだけの中性のより小さな側鎖について、それぞれ4または3のスコアが割り当てられ、
・トポロジーIをも有するトポロジーSの残基の、中性であるがより大きな側鎖を有するアミノ酸残基への変化には、4のスコアが割り当てられ、
・トポロジーEをも有するトポロジーSの残基の変化には、反対電荷の側鎖および適当な電荷を欠くだけの任意の側鎖について、それぞれ3または2のスコアが割り当てられ、
・トポロジーSの残基の変化は、プロリンへの変化を除いて常に、0のスコアが割り当てられ、プロリンへの変化には、三次元構造が変化しない場合には0のスコアが割り当てられ、三次元構造が変化する場合には少なくとも3のスコアが割り当てられ、
・トポロジーEを有するアミノ酸残基の、プロリンを除く任意のアミノ酸残基への変化には、0のスコアが割り当てられ、
・トポロジーEを有するアミノ酸残基の、プロリンへの変化には、その変化が極性残基から疎水性残基への変化であるなら1のスコアが割り当てられ、VH/VL角度の変化に応じて2または3のスコアが割り当てられ、HVR残基の角度変化およびコンフォメーション変化が予想される場合には4のスコアが割り当てられ、
・トポロジーIを有するアミノ酸残基の、より小さな側鎖を有するアミノ酸残基への変化には、0のスコアが割り当てられ、炭素原子が1つ多い側鎖を有するアミノ酸残基への変化には、1のスコアが割り当てられ、炭素原子が2つ多い側鎖を有するアミノ酸残基への変化には、2のスコアが割り当てられ、炭素原子が3つ多い側鎖を有するアミノ酸残基への変化には、3のスコアが割り当てられ、他のすべての変化には、4のスコアが割り当てられ、
・トポロジーLを有するアミノ酸残基の変化には、その変化がコンフォメーション変化をもたらすのであれば、少なくとも3のスコアが割り当てられ、
・トポロジーCを有するアミノ酸残基の、非疎水性アミノ酸残基の変化には、それによって同じドメイン中または対応する可変ドメイン中のアミノ酸残基との相互作用が変化するのであれば、3のスコアが割り当てられ、
・トポロジーSのアミノ酸残基の変化には、残基が反対に荷電したアミノ酸残基または非荷電アミノ酸残基で置換されるか、塩橋が破壊される場合には、3または4のスコアが割り当てられ、ここで塩橋が溶媒露出している場合には3のスコアが割り当てられ、塩橋が内部にある場合には4のスコアが与えられ、
・プロリンへの変化には、プロリンへの置換がこの残基の周りのファイ角およびプサイ角を変化させるのであれば、3または4のスコアが割り当てられ、プロリンへの変化がその残基の周りのアミノ酸ストレッチのコンフォメーションを変化させていない場合には、0または1のスコアが割り当てられ、
・トポロジーAを有するアミノ酸残基の、任意のアミノ酸残基への変化には、4のスコアが割り当てられ、
・トポロジーCを有するアミノ酸残基の、非疎水性アミノ酸残基への変化には、3または4のスコアが割り当てられ、
ここで、0のスコアは、フレームワークの安定性またはHVRのコンフォメーションに影響がないことを表し、1のスコアはフレームワークの安定性またはHVRのコンフォメーションに対するわずかな影響を表し、2のスコアはフレームワークの安定性またはHVRのコンフォメーションに対する中等度の影響を表し、3のスコアはその変化がフレームワークの安定性に影響を及ぼすであろうことを表し、4のスコアはその変化がフレームワークの安定性またはHVRのコンフォメーションを破壊するであろうことを表す。
一態様において、4のスコアを有するアミノ酸残基はそれぞれ、より低いスコアをもたらすアミノ酸残基に、またはより低い総スコア(=すべてのスコア3およびスコア4の和、任意でスコア2を含める)をもたらすアミノ酸残基に、変化/変異させる。
一態様において、4および3のスコアを有するアミノ酸残基はそれぞれ、より低いスコアをもたらすアミノ酸残基に、またはより低い総スコア(=すべてのスコア3およびスコア4の和、任意でスコア2を含める)をもたらすアミノ酸残基に、変化/変異させる
以下の実施例は本発明の理解を助けるために提供されるものであり、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載される。記載した手順には、本発明の要旨から逸脱することなく、変更を加えることができると理解される。
実施例1
ELISAによって測定されるIL-17への結合
NUNC(登録商標)MaxiSorpプレート(96ウェル)を、PBS中、0.5μg/mlの濃度の組換えヒトIL-17(Peprotech#200-17,www.peprotech.com)でコーティングした(100ml/ウェル)。プレートをオービタルシェーカー上で撹拌しながら37℃で2時間インキュベートした。その後、コーティング溶液を除去し、100μl/ウェルのPBSTC(リン酸緩衝食塩水、0.05%Tween(登録商標)-20、2%ニワトリ血清)を加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした。ブロッキング溶液を除去し、試料(ブランク:PBSTC、試料(PBS中、10μg/ml))をプレートに加えた(100μl/ウェル)。プレートを撹拌しながら室温でインキュベートした。試料を除去し、プレートを200μl/ウェルのPBST(リン酸緩衝食塩水、0.05%Tween(登録商標)-20)で3回洗浄し、ヒト化抗体を検出するための二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG、Fcガンマ、HRPコンジュゲート(Chemicon AP113P))を加えた。この第2の抗体はPBSTCに1:10,000希釈し、プレートは撹拌しながら室温で1時間インキュベートした。第2の抗体を除去し、プレートを200μl/ウェルのPBST(リン酸緩衝食塩水、0.05%Tween(登録商標)-20)で3回洗浄し、100μl/ウェルのABTS(登録商標)(Roche Diagnostics GmbH、ドイツ、マンハイム)を加えた。光学密度を405/492nmで測定した。
実施例2
クラスIgG1の免疫グロブリンのための発現プラスミドの調製
プラスミドp6454は、真核細胞において抗IL-17-抗体(エクソン-イントロン構成を保持したゲノム構成の発現カセット)を発現させるための発現プラスミドであった。これは、以下の機能的要素を含む:
・ベクターpUC18由来の複製起点(pUC起点)、
・大腸菌(E.coli)におけるアンピシリン耐性を付与するβ(ベータ)-ラクタマーゼ遺伝子(Amp)、
・以下の要素を含む、ガンマ1-重鎖を発現させるための発現カセット:
・ヒトサイトメガロウイルス由来の主要前初期プロモーターおよびエンハンサー(hCMV IE1プロモーター)、
・コザック配列を含む合成5’UTR、
・シグナル配列イントロンを含むマウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列(L1_イントロン_L2)、
・3’端にスプライスドナー部位が配された重鎖可変領域(VH)のcDNA、
・マウス免疫グロブリンμ-エンハンサー領域、
・エクソンCH1、ヒンジ、CH2およびCH3、介在イントロンならびにポリアデニル化シグナル配列を有する3’UTRを含む、ヒト免疫グロブリン重鎖ガンマ1-遺伝子(IGHG1)
・以下の要素を含む、カッパ軽鎖を発現させるための発現カセット:
・ヒトサイトメガロウイルス由来の主要前初期プロモーターおよびエンハンサー(hCMV IE1プロモーター)、
・コザック配列を含む合成5’UTR、
・シグナル配列イントロンを含むマウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列(L1_イントロン_L2)、
・3’端にスプライスドナー部位が配された軽鎖可変領域(VL)のcDNA、
・イントロン性マウスIg-カッパエンハンサー領域、
・IGKCエクソンおよびポリアデニル化シグナル配列を有するIGK 3’UTRを含むヒト免疫グロブリンカッパ遺伝子(IGK)、
・以下の要素を含む、真核細胞における栄養要求性選択に適したマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)を発現させるための発現カセット:
・短縮版のSV40初期プロモーターおよび起点、
・マウスDHFRのコード配列、
・SV40初期ポリアデニル化シグナル。
p6454をCHO-K1細胞にトランスフェクトし、メトトレキサート(MTX)による選択後に安定な細胞株を単離し、ヒトIgG用のELISAによってヒト化抗体の産生についてスクリーニングした。
実施例3
インビトロでの初代正常ヒト真皮線維芽細胞のIL-17A媒介刺激の阻害
正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)はIL-17刺激に応答してhIL-6を産生する。インビトロで細胞を抗IL17抗体と共にプレインキュベートした後に、IL-17が刺激するNHDF細胞によるこのサイトカイン産生の阻害を測定するためのアッセイを行う。
NHDF細胞を、48ウェルプレート中、1ウェルあたり0.5mlの体積において、線維芽細胞成長培地2(Fibroblast Growth Medium-2)(Cambrex、#CC 3132)中、4×105細胞/mlの密度で培養した。NHDF細胞を37℃および5%CO2で一晩インキュベートすることで付着させた。終夜インキュベーション後に、培地を吸引除去し、300μlの新鮮培地で置き換え、次に細胞を、ある範囲の抗体濃度(3000、1000、300、100、30、10、3、1、0ng/ml)にわたって、抗体で30分間処理した。100μl/ウェルを用いて、培地で抗体希釈系列を作った(5倍濃縮)。30分間にわたって抗体と共にプレインキュベートした後、細胞を10ng/mlのhIL-17(100μlの50ng/ml 5倍濃度、R&D Systems#317-IL)で刺激し、37℃および5%CO2で一晩(18時間)インキュベートした。無刺激対照には100μlの培地を使用した(抗体の存在ありおよび抗体の存在なし)。このインキュベーション期間後に、上清を新鮮なチューブに移し、直ちにELISAによって分析するか、またはELISAによる分析まで-80℃で貯蔵した。
実施例4
ヒトIL6 ELISA
IL-17によるhIL-6の誘導を阻害する抗体の能力を評価するために、hIL-6 ELISA(BD Biosciences#555220)を製造者の説明書に従って使用することで、培養上清中のhIL-6レベルを測定した。
100μlの希釈捕捉抗体(コーティング緩衝液に1:250希釈)を96ウェルNunc MaxiSorpプレート(Nunc#456537)の各ウェルに加え、4℃で一晩インキュベートした。プレートを吸引し、洗浄緩衝液で3回洗浄し、室温で1時間、200μl/ウェルのアッセイ希釈液でブロッキングした。プレートを吸引し、洗浄緩衝液で3回洗浄してから、製造者の説明書に従って100μlの標準およびアッセイ試料を加え、室温で2時間インキュベートした。プレートを吸引し、洗浄緩衝液で少なくとも3回洗浄した。100μlのコンジュゲート(検出抗体+酵素、アッセイ希釈液に1:250希釈)を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを吸引し、洗浄緩衝液で少なくとも5回洗浄した。100μlのTMB基質を各ウェルに加え、読み取るのに十分な発色が起こるまでインキュベートした。反応を50μl/ウェルの1M H2SO4で停止し、プレートリーダーを用いて、30分以内に450nmの波長で読み取った。
実施例5
表面プラズモン共鳴に基づくアッセイ(SPRに基づくアッセイ)
測定はすべて、BIAcore 3000機器を用いて、25℃で行った。システムおよび試料緩衝液はHBS-EP(10mM HEPES、150mM NaCl、3.4mM EDTA、0.005%ポリソルベート20(v/v))とした。BIAcore CM5センサーチップをプレコンディショニング手順に供した。フローセル上に、0.1%SDS、50mM NaOH、10mM HClおよび100mM H3PO4を、逐次、30秒間注入した。
BIAcore 3000ウィザードv.4.1を使用し、アミンカップリング手順を製造者の説明書に従って行った。センサー表面のEDC/NHS活性化後に、ポリクローナルヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson)をすべてのセンサーフローセル(FC)上に固定化した。10mM NaAc pH5.0中、30μg/mlのポリクローナルヤギ抗ヒトIgG抗体を、7分にわたって10μl/分で使用することで、約10,000RUの抗体捕捉系を固定化した。その表面をエタノールアミンによる飽和によって失活させた。このヒト捕捉系センサーを、10μl/分で2分間のhuIgG分析物(Bayer)の結合と30μl/分で3分間の10mMグリシンpH1.7による再生とを5サイクル行うことによって、コンディショニングした。
第二に、抗体を注入することで捕捉系を形成させた。
第三に、抗原を所定の濃度範囲内で注入した。抗原の注入後に得られる結合応答(レゾナンスユニット、RU)は、抗体に結合した抗原の量と相関し、それを、使用した抗原濃度範囲に対してプロットした。結果として生じる線形プロットを、2パラメータラインのフィッティングを行うことによって生物学的活性の読出しとしてのy軸切片の決定を可能にする適当なコンピュータソフトウェア(例えばXLfit4、IDBSソフトウェア)で分析した。

Claims (1)

  1. 以下の工程を含む、免疫グロブリンを作製するための方法:
    (a)重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインについて個別に、
    ・非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を、該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの第1のヒト化変種と、最大レベルのアミノ酸配列同一性が達成されるようにアライメントする工程であって、該第1のヒト化変種が、非ヒト抗体重鎖または軽鎖可変ドメインのCDRまたは超可変領域または特異性決定残基を、
    (i)前記非ヒト可変ドメインに対して最も高い配列相同性を有するヒト生殖細胞系アミノ酸配列、または
    (ii)アライメントした場合に単一のヒト生殖細胞系アミノ酸配列よりも高い相同性を有する2つまたはそれ以上のヒト生殖細胞系アミノ酸配列フラグメント、または
    (iii)VH/VL角度を維持することができるヒト生殖細胞系アミノ酸配列、または
    (iv)ヒト抗体またはヒト化抗体の重鎖または軽鎖可変ドメイン
    に移植することによって得られたものである、工程、
    ・非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインと該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインの第1のヒト化変種とが異なるアミノ酸残基を有する、アライメントされたフレームワーク位置における三次元的差異であって、その差異ゆえに抗原結合および/または三次元構造に影響を及ぼす三次元的差異を定量化する工程であって、定量化に先だって、それぞれの位置に、トポロジー分類子I(内部側鎖)、E(外部側鎖)、C(接触重鎖-軽鎖)、A(抗原接触)、L(抗原へのリンカー)、S(塩橋に参加)、またはN(他のどれでもない=特別な相互作用なし)のうちの1つを割り当てる、工程
    ・先の工程において決定された1つまたは複数のアミノ酸残基を、抗原結合および/または三次元構造に及ぼす影響が置換されるアミノ酸残基よりも少ないアミノ酸残基で置換することによって、該非ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインアミノ酸配列の第1のヒト化変種を改変して、三次元的差異が低減した改変可変ドメインを生成する工程、
    ・前記改変可変ドメインを第1のヒト化変種として、三次元的差異がRMSD解析による決定で10%未満になるまで、先の2つの工程を繰り返す工程、
    ・先の工程において得られた改変可変ドメインをコードする核酸配列を提供する工程;
    (b)免疫グロブリンを発現させるために、工程(a)の改変重鎖可変ドメインをコードする核酸を含む免疫グロブリン重鎖をコードする核酸と工程(a)の改変軽鎖可変ドメインを含む免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸とを含む哺乳動物細胞を培養する工程;
    (c)哺乳動物細胞または培養培地から免疫グロブリンを回収し、それによって免疫グロブリンを作製する工程。
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