JP7217396B1 - ゴム支承体側壁用ゴム組成物およびそれを用いたゴム支承体 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、前記被覆ゴムには耐候性(耐オゾン性等)が要求されるため、そのポリマー成分には、耐候性に優れるエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(以下、「EPDM」と略す。)の使用が推奨されている。
そのため、EPDMによる耐候性を維持しつつ、前記の問題を解決することが求められている。
前記のような構成とすることにより、ゴム支承体に対して高い接着性を示すとともに、低温性、耐久性、耐候性に優れた性能を発揮することができる、ゴム支承体側壁用ゴム組成物およびそれを用いたゴム支承体を提供できる理由は、以下のように考えられる。すなわち、本発明では、EPDMのジエン含有量が通常よりも多くなるよう特定範囲内で調整し、さらに前記EPDMとともに、天然ゴムやイソプレンゴムを主成分とするジエン系ゴムを併用したことにより、接着反応の起点となるジエン量が増えたため、接着性を高めることができるようになったと考えられる。また、本発明では、EPDMのエチレン含有量が通常よりも少なくなるよう特定範囲内で調整したことにより、結晶性が低下し、前記低温性を改善することができるようになったと考えられる。なお、前記のようにEPDMのエチレン含有量を低下させると、通常であれば耐久性が低下するのだが、本発明では、特定の分子量を示す液状ゴムを併用することにより補強性が得られたことから、前記のようなエチレン含有量の低下に伴う耐久性の低下が抑えられたと考えられる。しかも、前記液状ゴムは、EPDMとの馴染みが良く、軟化剤としても機能し、一般的に使用される軟化剤(プロセスオイル)よりも分子量が高いことから、前記のように耐久性に寄与したものと考えられる。
[1] 下記の(A)~(C)をポリマー成分とする、ゴム支承体側壁用ゴム組成物。
(A)天然ゴムおよびイソプレンゴムの少なくとも一方を主成分とするジエン系ゴム(但し、EPDMおよび液状ゴムを含まない)。
(B)ジエン含有量が10質量%以上、エチレン含有量が55質量%以下の、EPDM。
(C)分子量が1000~60000の液状ゴム。
[2] 前記(A)と(B)が、質量比で、(A)/(B)=50/50~90/10の割合になっている、[1]に記載のゴム支承体側壁用ゴム組成物。
[3] 前記(C)が、前記(A)と(B)の合計量100質量部に対し、5~30質量部の割合になっている、[1]または[2]に記載のゴム支承体側壁用ゴム組成物。
[4] ゴムと硬質板とが交互に積層されたゴム支承体であって、前記ゴム支承体は、その外側面を囲うように被覆ゴムからなる側面材を有し、前記被覆ゴムは、[1]~[3]のいずれかに記載のゴム支承体側壁用ゴム組成物の架橋体からなる、ゴム支承体。
(A)天然ゴムおよびイソプレンゴムの少なくとも一方を主成分とするジエン系ゴム(但し、EPDMおよび液状ゴムを含まない)。
(B)ジエン含有量が10質量%以上、エチレン含有量が55質量%以下の、EPDM。
(C)分子量が1000~60000の液状ゴム。
なお、本明細書において「Xおよび/またはY(X,Yは任意の構成)」とは、XおよびYの少なくとも一方を意味するものであって、Xのみ、Yのみ、XおよびY、の3通りを意味するものである。
前記ジエン系ゴム(A)としては、天然ゴム(NR)およびイソプレンゴム(IR)の少なくとも一方(NRおよび/またはIR)を主成分とするジエン系ゴムが用いられる。なお、本発明において、「主成分」とは、通常は、ジエン系ゴム(A)の55質量%以上を意味するものであり、好ましくはジエン系ゴム(A)の60質量%以上、より好ましくはジエン系ゴム(A)の70質量%以上、さらに好ましくはジエン系ゴム(A)の100質量%を占めることを意味する。
なお、本発明において、「液状ゴム」とは、常温(23℃)で1500Pa・s以下の粘度を示すゴムを意味する。前記粘度は、例えば、B型粘度計を用いて測定することができる。
前記特定のEPDM(B)としては、所望の接着性等を得る観点から、ジエン含有量が10質量%以上のEPDMが用いられる。同様の観点から、前記ジエン含有量は、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上である。なお、前記ジエン含有量が少なすぎると、所望の接着性を得ることができず剥離につながるようになる。また、前記ジエン含有量の上限は、通常、20質量%であり、好ましくは18質量%、より好ましくは16質量%である。
また、前記特定のEPDM(B)としては、所望の低温性等を得る観点から、エチレン含有量が55質量%以下のEPDMが用いられる。同様の観点から、前記エチレ含有量は、好ましくは48質量%未満、より好ましくは45質量%未満、特に好ましくは43質量%未満である。なお、前記エチレン含有量が多すぎると、所望の低温性等を得ることができない。また、前記エチレン含有量の下限は、通常、30質量%であり、好ましくは35質量%、より好ましくは40質量%である。
前記特定のEPDM(B)を構成する第3成分として用いられるジエン系モノマーとしては、炭素数5~20のジエン系モノマーが好ましい。具体的には、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン(DCP)、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-ブチリデン-2-ノルボルネン、2-メタリル-5-ノルボルネン、2-イソプロペニル-5-ノルボルネン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらジエン系モノマー(第3成分)のなかでも、ジシクロペンタジエン(DCP)、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)が好ましい。
前記特定の液状ゴム(C)としては、所望の耐久性等を得る観点から、分子量が1000~60000の液状ゴムが用いられる。同様の観点から、前記液状ゴムの分子量は、10000~55000であることが好ましく、25000~50000であることがより好ましい。
なお、前記液状ゴム(C)の分子量は、その値が高いものは、重量平均分子量(Mw)の値を示したものである(後記の実施例で使用のものも同様)。ここで、前記重量平均分子量(Mw)は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本を直列にして用いることにより測定される。
なお、本ゴム組成物においては、前記特定の液状ゴム(C)が軟化剤としての機能を示すことから、軟化剤は不含とすることが好ましい。
前記カーボンブラックとしては、例えば、SAF級,ISAF級,HAF級,MAF級,FEF級,GPF級,SRF級,FT級,MT級等の種々のグレードのカーボンブラックが用いられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、機械的強度および破断伸び等の観点から、SAF級カーボンブラックが好ましく用いられる。
前記架橋剤としては、例えば、硫黄、塩化硫黄等の硫黄系加硫剤や、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジベンゾイルペルオキシヘキサン、n-ブチル-4,4'-ジ-t-ブチルペルオキシバレレート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルペルオキシ-ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキシン-3、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシ-イソプロピル)ベンゼン等の過酸化物加硫剤があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、硫黄、ジクミルパーオキサイドが好適に用いられる。
前記加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系,スルフェンアミド系,チウラム系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドアミン系,グアニジン系,チオウレア系等の加硫促進剤があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、架橋反応性に優れる点で、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
前記加硫助剤としては、例えば、ステアリン酸、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
前記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
前記軟化剤(プロセスオイル)としては、例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
なお、先にも述べたように、本ゴム組成物においては、前記特定の液状ゴム(C)が軟化剤としての機能を示すことから、軟化剤を不含としても、所望の性能を発揮することができる。
そして、前記ゴム組成物は、前記の各材料を配合したものを、ニーダー,バンバリーミキサー,オープンロール,2軸スクリュー式撹拌機等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。
そして、下部取付板4上に、前記ゴム層2用材料であるゴム組成物をシート状に成形して所定の寸法に打ち抜いた未加硫ゴムシートと硬質板1とを交互に重ね、最後に、上部取付板3を重ねることにより、積層体(ゴム支承体)を作製する。なお、前記硬質板1等の積層面には、予め、接着剤を塗布しておいてもよい。
つぎに、先に記載のようにして調製した本ゴム組成物をシート状に成形して、未加硫ゴムシートを作製する。前記未加硫ゴムシートは、完全に架橋しない程度(加硫接着性が得られる程度)に半架橋させた状態のものであり、その成形条件は、厚みによっても異なるが、通常、130~180℃で1~30分間加熱し、半架橋させたものである。そして、前記未加硫ゴムシートを、前記積層体(ゴム支承体)の外側面を囲うように被覆した後、このものを所定の金型内にセットし、前記未加硫ゴムシートを130~180℃で1~24時間加熱して架橋し、ゴム支承体に加硫接着させることにより、本ゴム組成物からなる側面材5を備えたゴム支承体(本ゴム支承体)を製造することができる。
なお、前記積層体(ゴム支承体)は、硬質板1、上部取付板3、および下部取付板4を、所定の配置となるよう成形金型内にセットし、この成形金型内の空隙に、ゴム層2用材料であるゴム組成物を射出成形等により注入して加熱加硫した後脱型することによっても、製造することができる。
前記架橋の際の加熱条件は、先の製造方法に準じる。但し、先の製造方法のように半架橋させる工程は必要ではなく、そのまま加熱して架橋させればよい。
天然ゴム
日本ゼオン社製、製品名:Nipol IR2200
三井化学社製、製品名:三井EPT 9090M(エチレン含有量:41質量%、ジエン含有量:14質量%)
JSR社製、製品名:EP331(エチレン含有量:47質量%、ジエン含有量:11.3質量%)
住友化学社製、製品名:エスプレン505(エチレン含有量:50質量%、ジエン含有量:10質量%)
三井化学社製、製品名:三井EPT 8030M(エチレン含有量:47質量%、ジエン含有量:9.5質量%)
LANXESS社製、製品名:Keltan K3960Q(エチレン含有量:56質量%、ジエン含有量:11.4質量%)
クラレ社製、製品名:LIR-30(重量平均分子量:28000)
クラレ社製、製品名:LIR-50(重量平均分子量:54000)
EVONIK社製、製品名:POLYVEST110(分子量:1100)
日本サン石油社製、製品名:Sunpar110
前記各ポリマー成分および軟化剤を後記の表1および表2に示す割合で配合し、さらに、ステアリン酸(日油社製、製品名:ビーズステアリン酸さくら)2質量部と、酸化亜鉛(堺化学工業社製、製品名:酸化亜鉛二種)5質量部と、アミン系老化防止剤(精工化学社製、製品名:オゾノン6C)3質量部と、ワックス(大内新興化学社製、製品名:サンノック)4質量部と、SAF級カーボンブラック(東海カーボン社製、製品名:シースト9M)35質量部と、スルフェンアミド系加硫促進剤(大内新興化学社製、製品名:ノクセラーCZ-G)1質量部と、硫黄(鶴見化学工業社製、製品名:金華印微粉硫黄)1質量部とを加えて配合し、バンバリーミキサーおよびオープンロールを用いて混練して、ゴム組成物(ゴム支承体側壁用ゴム組成物)を調製した。具体的には、加硫剤および加硫促進剤を除く成分を、バンバリーミキサーで5分間混練し、150℃に達したときに放出し、マスターバッチを得た後、そのマスターバッチに、加硫剤および加硫促進剤を同表に示す割合で配合し、これらをオープンロールで混練して、前記ゴム組成物を調製した。
得られた各ゴム組成物を用い、150℃×20分の条件でプレス成形(加硫)して、厚み2mmのゴムシートを作製した。そして、このゴムシートから、JIS5号ダンベルを打ち抜き、JIS K 6251に準拠して、25℃雰囲気下における引張強さ(引張強度)を測定した。
そして、前記引張強度が、20MPa以上のものを「◎(excellent)」、15MPa以上20MPa未満のものを「○(very good)」、10MPa以上15MPa未満のものを「△(good)」、10MPa未満のものを「×(poor)」と評価した。
得られた各ゴム組成物を用い、150℃×30分の加硫条件を採用して、JIS K 6394「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの動的性質試験法」に規定されている金具付円柱状の剪断方法用試験片を作製した。その後、得られた各試験片を用いて、JIS K 6394(1998)に規定される「6.大型試験装置による動的性質試験」に従って、試験温度:-30℃、20℃、試験振動数:0.5Hz、歪み振幅(剪断):250%の条件下において、それぞれ、荷重/撓み曲線を11回連続して測定した。
そして、得られた2回目から11回目までの計10回の荷重/撓み曲線から、各測定温度での等価剛性:Keq(-30℃)、Keq(20℃)を求めた。得られた等価剛性を用い、以下の式から、G(温度依存性)をそれぞれ算出した。そして、Gが1.5未満のものを「○(very good)」、Gが1.5以上1.6未満のものを「△(good)」、Gが1.6以上のものを「×(poor)」と評価した。
G(温度依存性)=Keq(-30℃)/Keq(20℃)
得られた各ゴム組成物を用い、鉄板上で150℃×30分加熱して加硫(加硫接着)させた。このようにして得られた試験片における、鉄板とゴムとの間の接着性について、JIS K 6256の「加硫ゴムの接着試験方法」における「5.金属片とゴムの90度はく離試験」に準拠して、鉄板に接着したゴムを90度の方向に剥離して、その剥離部分の状態を目視観察した。そして、ゴム部の破損割合が100%のものを「○(very good)」、ゴム部と鉄板との間に界面剥離している部分があるものを「×(poor)」と評価した。
得られた各ゴム組成物を用い、150℃×20分の条件でプレス成形(加硫)して、厚み2mmのゴムシートを作製した。このゴムシートから、JIS1号ダンベルを打ち抜き、試験片を作製した。そして、JIS K 6259に準拠して、オゾン濃度200±20pphm、温度40℃のオゾン槽内に、前記試験片を、引張ひずみ80±2%を与えた状態で投入した。前記投入から672時間後において、前記試験片における亀裂の発生の有無を目視観察し、亀裂がないものを「〇(very good)」、亀裂があるものを「×(poor)」と評価した。
そのため、実施例のゴム組成物は、図1に示すような、橋梁用途や建築物用途の免震支承体の側面材の材料として優れていると判断される。
2 ゴム層
5 側面材
Claims (4)
- 下記の(A)~(C)をポリマー成分とする、ゴム支承体側壁用ゴム組成物。
(A)天然ゴムおよびイソプレンゴムの少なくとも一方を主成分とするジエン系ゴム。但し、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体および液状ゴムを含まない。
(B)ジエン含有量が10質量%以上、エチレン含有量が55質量%以下の、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体。
(C)分子量が1000~60000の液状ゴム。 - 前記(A)と(B)が、質量比で、(A)/(B)=50/50~90/10の割合になっている、請求項1記載のゴム支承体側壁用ゴム組成物。
- 前記(C)が、前記(A)と(B)の合計量100質量部に対し、5~30質量部の割合になっている、請求項1または2記載のゴム支承体側壁用ゴム組成物。
- ゴムと硬質板とが交互に積層されたゴム支承体であって、
前記ゴム支承体は、その外側面を囲うように被覆ゴムからなる側面材を有し、
前記被覆ゴムは、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム支承体側壁用ゴム組成物の架橋体からなる、ゴム支承体。
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