JP7216075B2 - 酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者における骨状態異常の処置 - Google Patents

酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者における骨状態異常の処置 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月24日に出願された米国仮特許出願第62/549,732号、および2017年12月7日に出願された欧州特許出願第17306720.8号に基づく優先権を主張する。これら2つの優先権出願の開示内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、この配列表全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。2018年8月10日に作成された上記ASCIIコピーは、022548_WO047_SL.txtという名称であり、サイズは21,687バイトである。
本出願は、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)患者の骨状態異常の処置におけるヒト酸性スフィンゴミエリナーゼの使用に関する。
酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)は、命にかかわる希なリソソーム蓄積障害である。これは、リソソーム酵素である酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)をコードしているSMPD1遺伝子における突然変異に起因する常染色体劣性遺伝病である(非特許文献1)。ASMD患者は、スフィンゴミエリンを代謝することができず、その結果、複数の器官でスフィンゴミエリンがリソソーム中に蓄積し、重症例では内臓疾患および神経変性を引き起こす。ASMD患者は、脾臓、肝臓、肺、および骨髄中のコレステロールおよびその他の脂質の増加を示す。
最も深刻な疾患表現型である乳児の神経内臓型ASMD(ニーマン・ピック病A型またはNPD Aとして歴史的に知られている)は、早期発症および急性神経障害型として特徴づけられ、成長障害、肝脾腫、および急速進行性神経変性をもたらす。患者は、幼児期に死亡する(非特許文献2)。慢性内臓型ASMD(NPD B)および慢性神経内臓型ASMD(NPD A/B)の患者は、発症が乳児期から成人期までとさまざまである(非特許文献3;非特許文献4)。NPD B患者は、通常は小児期に、典型的には2歳を過ぎてから診断される。NPD B患者のほとんどは、成人期まで生存する。NPD A/B患者は、中間型として分類され、小児期に神経症状を発現するが、これは神経変性疾患として発症する場合もある。
肝臓、肺、および血液疾患による病的状態は、慢性ASMD患者すべてに発生し、これには、肝脾腫、肝機能障害、浸潤性肺疾患、および血小板減少症が含まれる(非特許文献5;非特許文献6)。小児期における発育不全、および低骨密度などの骨障害も、慢性ASMDに共通の特徴である(非特許文献7)。肺疾患および肝疾患は、これらの患者における主な死因となっている(非特許文献8;非特許文献9)。
Schuchmanら、Mol.Genet.Metab.120(1-2):27~33頁(2017) McGovernら、Neurology 66(2):228~232頁(2006) Wassersteinら、Pediatrics 114(6):e672~677頁(2004) Wassersteinら、J.Pediatr.149(4):554~559頁(2006) McGovernら、Genet.Med.15(8):618~623頁(2013) McGovernら、Orphanet J.Rare Dis.12(1):41頁(2017) Wassersteinら、J.Pediatr.142(4):424~428頁(2003) McGovernら、Pediatrics 122(2):e341~349頁(2008) Cassimanら、Mol.Genet.Metab.118(3):206~213頁(2016)
ASMDは罹患率および死亡率が高いことから、この遺伝性疾患の有効な処置は、依然として緊急に必要とされている。
本発明は、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)患者において骨状態異常を処置する方法であって、複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与する工程と、患者の骨指標を測定する工程と、患者の骨指標を投与工程前の患者のベースライン骨指標と比較する工程とを含み、患者の骨指標は、複数用量のrhASM投与後に改善する、または悪化しない、方法を提供する。一部の実施形態では、骨指標は、骨塩量(BMD)であり、BMDは、複数用量のrhASM投与後に改善する(例えば、増加する)、または悪化しない。一部の実施形態では、骨指標は、骨髄負荷(BMB)であり、BMBは、複数用量のrhASM投与後に減少する、または増加しない。一部の実施形態では、骨指標は、骨格発育(例えば、骨成熟度および/または長さの成長)であり、骨格発育は、複数用量のrhASM投与後に改善する。ある特定の実施形態では、骨状態異常は、骨減少症または骨粗しょう症である。
本発明はまた、骨髄負荷(BMB)の減少を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者においてBMBを減少させる方法であって、患者のBMBを判定する工程と、複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与し、それによって患者のBMBを減少させる工程とを含む方法も提供する。
本発明はまた、骨塩量(BMD)の改善を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者においてBMDを改善する方法であって、患者のBMDを判定する工程と、複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与し、それによって患者のBMDを改善する工程とを含む方法も提供する。
本発明はまた、骨髄負荷(BMB)の減少を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者においてBMBを減少させる方法であって、ビスホスホネート療法を受けていない酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者を選択する工程と、複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与し、それによって患者のBMBを減少させる工程とを含む方法も提供する。
本発明はまた、骨塩量(BMD)の改善(例えば、増加)を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者においてBMDを改善する方法であって、ビスホスホネート療法を受けていない酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者を選択する工程と、複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与し、それによって患者のBMDを改善する工程とを含む方法も提供する。
本発明はまた、骨格発育(例えば、骨成熟度および/または長さの成長)の改善を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)患者において骨格発育を改善する方法であって、骨格発育を改善するASMD患者を選択する工程と、複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与し、それによって患者の骨格発育を改善する工程とを含む方法も提供する。
本発明はまた、生活の質の改善または維持を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)患者において生活の質を改善または維持する方法であって、生活の質を改善するASMD患者を選択する工程と、複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与し、それによって患者の生活の質を改善または維持する工程とを含む方法も提供する。
本発明はまた、骨減少症の処置を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)患者において骨減少症を処置する方法であって、骨減少症を処置するASMD患者を選択する工程と、複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与する工程とを含む方法も提供する。
本発明はまた、骨粗しょう症の処置を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者において骨粗しょう症を処置する方法であって、骨粗しょう症を処置するASMD患者を選択する工程と、複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与する工程とを含む方法も提供する。
本明細書に記載のいずれの処置方法において、複数用量は、6か月~30か月の期間にわたり患者に投与することができる。したがって、列挙したrhASMの複数用量の効果は、上記の期間中に得られる。
本明細書に記載のいずれの処置方法において、患者は、例えば、慢性内臓型ASMD(ニーマン・ピック病B型)または慢性神経内臓型ASMD(NPD A/B)を有してもよい。患者は、成人患者であっても、または小児患者であってもよい。
本明細書に記載のいずれの処置方法において、rhASMの最初の2用量またはそれ以上の用量は、漸増用量であってもよく、逐次増加する量で投与することができる。一部の実施形態では、漸増用量後の用量は、維持用量(これは、例えば、最高維持用量から開始してもよい)であり、最後の漸増用量と同じ量またはそれより少ない量で投与してもよい。ある特定の実施形態では、最高維持用量は、患者が忍容する最高用量である。最初の用量は、成人患者または小児患者のいずれに対しても、例えば、0.1mg/kgであってもよい。最高維持用量は、例えば、0.3mg/kg~3mg/kg(例えば、1mg/kg~3mg/kg)、例えば、1mg/kg、2mg/kg、または3mg/kgの量であってもよい。維持用量は、例えば、0.1mg/kg~3mg/kgまたは0.3mg/kg~3mg/kg、例えば、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、または3mg/kgの量であってもよい。特定の実施形態では、漸増用量は、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.3mg/kg、0.6mg/kg、0.6mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、および3.0mg/kgの順に投与してもよい。
一部の実施形態では、本明細書に記載のいずれかの処置方法における複数用量は、2週間おきの間隔で投与される。複数用量の投与は、例えば、静脈内注射によって実施することができる。
本明細書に記載のいずれの処置方法において、rhASMは、オリプダーゼアルファ(配列番号2)であってもよい。
本発明はまた、本明細書に記載のいずれかの処置方法において使用する医薬を製造するための組換えヒトASM(例えば、オリプダーゼアルファ)の使用も提供し、また本明細書に記載のいずれかの処置方法において使用するための組換えヒトASM(例えば、オリプダーゼアルファ)も提供する。
本発明はまた、本明細書に記載のいずれかの処置方法において使用するための組換えヒトASM(例えば、オリプダーゼアルファ)を含む製品(例えば、キット)も提供する。
図1A~図Cは、30か月間のオリプダーゼアルファによる処置中のセラミド(A)、リゾスフィンゴミエリン(B)、およびキトトリオシダーゼ(C)の活性の変化を要約したグラフである。血漿セラミドの正常範囲は、1.8~6.5mg/Lとした。乾燥血液スポット中リゾスフィンゴミエリンの正常値上限は、<69μg/Lとし、血清キトトリオシダーゼの正常レベルは、≦181nmol/時/mLとした(注:活性は、キトトリオシダーゼ無発現変異についてヘテロ接合型の2名の患者に対して補正されていない)。 図2Aおよび図2Bは、肝臓および脾臓の体積(A)、ならびに肺疾患(B)に対するオリプダーゼアルファの効果を要約したグラフである。図2A:肝臓および脾臓の体積は、断面磁気共鳴画像を積分することにより計算し、正常値に対する倍数(MN)として示した。なお、正常脾臓体積(L)は体重の0.2%、正常肝臓臓体積(L)は体重の2.5%と仮定した。図2B:肺疾患。ベースラインおよび処置中の各患者のヘモグロビン(Hb)に対して補正した予測DLcoに対する百分率を、男性患者および女性患者の実測値を使用して計算した(Crapoら、Am.Rev.Respir.Dis.123(2):185~189頁(1981);Macintyreら、Eur.Respir.J.26(4):720~735頁(2005))。重症度:80%=正常値下限;>60%~79%=軽度の低下;40%~60%=中等度の低下;<40%=重度の低下。ベースライン時およびオリプダーゼアルファによる処置中の浸潤性肺疾患のHRCT評価には、4点法で採点したすりガラス様陰影(GGA)、間質性肺疾患(ILD)、および網状顆粒状陰影(RD)を含めた。なお、0=間質性肺疾患なし;1=軽度(肺体積の1~25%の病変);2=中等度(肺体積の26~50%の病変);3=重度(肺体積の51~100%の病変)とした。 図3Aおよび図3Bは、骨髄負荷に対するオリプダーゼアルファの効果を示す写真である。図3A(大腿骨):患者2(女性、ベースライン時32歳)の大腿骨冠状面における骨髄負荷変化。スクリーニング時のT1強調画像(A)およびT2強調画像(B)における近位骨端骨髄の低輝度が、30か月間の処置後の、量が減少し、わずかに低輝度の骨幹骨髄と比較されている(T1強調、C、およびT2強調、D)。全長縦スケールバー、20cm。図3B(脊椎):患者2の腰椎矢状面における骨髄負荷。スクリーニング時、骨髄のびまん性浸潤が認められ、T1強調で非疾患椎間板の等輝度(A)、T2強調で仙骨前方脂肪の高輝度信号輝度(B)を示した。30か月間の処置後、骨髄の浸潤は変化していないが(T1強調、C)、仙骨前方脂肪は、わずかに高輝度まで改善している(T2強調、D)。全長縦スケールバー、20cm。 図4A~図4Dは、ベースライン時およびオリプダーゼアルファでの処置(30か月間)中の空腹時脂質パラメータを示すグラフである。総コレステロール(A)、トリグリセリド(B)、HDLコレステロール(C)、およびLDLコレステロール(D)の平均(SD)注入前空腹時レベルが示されている。総コレステロール正常範囲:米国<5.18mmol/L;英国0~3.9mmol/L。HDL-C正常範囲:米国男性>0.777;米国女性>0.9065mmol/L;英国>1.2mmol/L。LDL-C正常範囲:米国<3.3411mmol/L;英国0~2mmol/L。トリグリセリド正常範囲:<1.7mmol/L。
本発明は、ASM酵素補充療法(ERT)が、骨密度を増加し、骨髄負荷の低下することを含め、ASMD患者の骨状態異常を緩和するという発見に基づいている。このような改善は、わずか6か月~30か月の治療で認められる。この発見は、ASM ERTが、低骨密度を含めたASMDのすべての症状を好転させるのかどうか、またもし好転させるとすれば、この療法が症状の好転を達成するのにどのくらいの時間がかかるのかが明らかでなかったため、予想外であった。他の脂質蓄積障害では、ERT単独では、骨塩量を改善するのに非常に時間がかかる。例えば、別の遺伝性脂質蓄積障害であるゴーシェ病では、ERTによる処置に対する患者の応答は、骨塩量(BMD)については、GDの血液および内臓に関する応答よりも遅れる。研究により、患者のBMDを正常レベルに回復するのに8年間のERT(イミグルセラーゼ)を要することが示されている(Wenstrupら、J Bone Miner Res.22(1):119~26頁(2007))。本発見はまた、ビスホスホネートがASM活性に干渉するため、ASMD患者は、ASM ERTを受けている間、低BMDの標準治療薬であるビスホスホネートを使用できないという理由からも有意義である。
したがって、本発明は、ASM ERTを使用することにより、ASMD患者における骨状態異常を処置する方法を提供する。ASMDは、骨髄細胞、特に単核マクロファージ系の前駆細胞中にスフィンゴミエリンの蓄積を引き起こす。これらの細胞は、貪食して骨髄内に閉じ込められ、骨髄浸潤および高骨髄負荷(BMB)を引き起こす。ASMD患者は、骨内を含め、慢性炎症も示すことが多い。ASMDにおける骨疾患は、骨代謝および骨構造に悪影響を及ぼす。患者は、成長遅延、成長遅滞、成熟遅延、骨痛、および骨折を含む、いくつかの症状を呈する。実際、ASMDは、腰椎骨塩量(BMD)のZスコアと逆相関し(Wassersteinら、J.Inherit.Metab.Dis.36(1):123~7頁(2013))、骨格系に影響を与えることが示されている。本明細書において使用するとき、骨状態異常または骨疾患とは、ASMDに関連するあらゆる骨の問題、およびその結果としての症状、例えば、高骨髄負荷、低骨塩量、骨減少症、骨粗しょう症、骨格発育の遅延(例えば、骨年齢(成熟)の遅延および長さの成長の遅延)、能力障害の増加、骨痛、可動性の低下、骨壊死、骨折リスクの上昇を指す。
一部の実施形態では、本発明の方法によりASMD患者において処置される骨状態異常は、骨減少症または骨粗しょう症である。一部の実施形態では、患者は、成人(例えば、65歳以上の高齢患者を含む18歳以上の患者)である。他の実施形態では、患者は、小児患者(18歳未満の患者、例えば、新生児~6歳、6~12歳、または12~18歳の患者)である。一部の実施形態では、患者は、ニーマン・ピック病A型、ニーマン・ピック病B型、またはニーマン・ピック病A/B型を有してもよい。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、慢性内臓型ASMD(NPD B)を有する成人患者を処置するために使用される。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、慢性内臓型ASMD(NPD B)を有する小児患者を処置するために使用される。他の実施形態では、本明細書に記載の方法は、ASMDの非神経症状を有する成人患者および小児患者を処置するために使用される。
骨状態の評価
対象の骨状態は、さまざまな方法を用いて、骨パラメータ(本明細書では、集合的に「骨指標」と称する)を分析することにより評価することができる。骨指標には、例えば、骨塩量(BMD)、骨髄負荷(BMB)、骨年齢、長さの成長、およびある特定の骨バイオマーカーの状態が含まれる。ある特定の実施形態では、骨状態異常は、骨イメージング、例えば、X線撮像および磁気共鳴画像法(MRI)によって評価することができる。例えば大腿骨および腰椎から、さまざまな時点で骨のスキャン画像を取得して、本発明の組成物での処置前、処置中、および処置後における患者の骨状態の指標として、骨塩量(BMD)および骨髄負荷(BMB)を評価することができる。ある特定の実施形態では、画像は、DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)またはMRIを用いて取得される。一部の実施形態では、骨スキャン画像をおよそ毎週、2週間おき、3週間おき、4週間おき、5週間おき、6週間おき、毎月、2か月おき、3か月おき、4か月おき、5か月おき、6か月おき、7か月おき、8か月おき、9か月おき、10か月おき、11か月おき、毎年、2年おき、3年おき、4年おき、または5年おきに取得して、本発明の処置前に取得したベースライン画像と比較することができる。ある特定の実施形態では、骨スキャン画像は、およそ6か月おき、または毎年取得してもよい。
BMDは、TスコアおよびZスコアを用いて、各患者について計算することができる。Tスコアは、患者の骨密度を同性の健常者の骨密度と比較して位置づける。Zスコアは、患者の骨密度を年齢、性別、体重、および民族性が同じ健常者の骨密度と比較して位置づける。
BMBは、連続MRIスキャンから、BMBスコアリングシステムを用いて評価することができるが、このスコアリングシステムは、合計スコア16点に対し、腰椎および大腿骨のそれぞれについて可能な8点の中からカテゴリースコアを付与する(大腿骨スコアは、左右の大腿骨の平均スコア)、骨髄信号輝度スコアリングシステムに基づくものである。骨髄信号輝度スコアリングシステムは、例えば、Hangartnerら、Skeletal Radiol.37(3):185~188頁(2008);Robertsonら、AJM Am J Roentgenol.188(6):1521~1528頁(2007);およびMaasら、Radiology 229(2):554~561頁(2003)に記載されている(これらすべての内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれる)。
他の実施形態では、骨バイオマーカーを分析して、対象の骨状態が評価される。「骨バイオマーカー」とは、本明細書において使用するとき、骨形成および骨吸収に関連するバイオマーカーを指す。例えば、患者から採取したサンプル中の血清骨型アルカリホスファターゼ(ALP)およびC-テロペプチドのような骨バイオマーカーを分析することができる。活発な骨形成のマーカーである骨型ALP、および骨吸収の指標であるC-テロペプチドは、骨状態の指標として使用することができる。例えば、別の脂質蓄積障害であるゴーシェ病では、C-テロペプチドの血清濃度が低下する。一部の実施形態では、骨バイオマーカーは、およそ1か月おき、2か月おき、3か月おき、4か月おき、5か月おき、6か月おき、7か月おき、8か月おき、9か月おき、10か月おき、もしくは11か月おき、または1年おき、2年おき、3年おき、4年おき、もしくは5年おきに分析し、本発明の処置前に取得したベースラインレベルと比較することができる。ある特定の実施形態では、骨バイオマーカーは、3か月おき、または6か月おきに分析してもよい。
ASMDを有する子供のほとんどは、成長遅延を示す。ASMD小児患者における身長および体重のZスコアは、ASMDを罹患していない子供よりも低いことが多い。ASMD小児患者では、骨年齢(例えば、手のX線により判断される)および長さの成長のような追加の骨指標を分析して、骨成長または骨格発育を分析することができる。例示的実施形態では、手のX線を実施して、患者の手、指、および手首の画像を収集してもよい。骨年齢(成熟)は、Greulich & Pyle Atlas(1959)を用いて、X線から計算することができる。身長のZスコアにより判定される長さの成長は、小児患者において成長を評価するための別の骨指標である。
ASMによる骨状態異常の処置
ASMD患者のような骨状態異常のある患者は、ASM ERTで処置することができる。本明細書において使用するとき、「処置する」、「処置すること」、および「処置」とは、生物学的障害もしくは状態、および/またはそれに伴う症状の少なくとも1つを緩和、抑制、もしくは予防し、またはそれらの発生または悪化(すなわち、進行)を遅延させる方法を指す。本明細書において使用するとき、疾患、障害、または状態を「緩和」するとは、その疾患、障害、または状態の症状の重症度および/または発生頻度を低下させることを意味する。
一部の実施形態では、ASM ERTで使用されるASMは、ヒトASM、例えば、組換えヒトASM(rhASM)であってもよい。組換えASMは、組換え技術を利用して、哺乳動物宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)のような原核または真核宿主細胞において産生することができる。ある特定の実施形態では、rhASMは、オリプダーゼアルファであり、これは、CHO細胞において産生されたヒトASM(EC-3.1.4.12)のグリコフォームアルファである。成熟オリプダーゼアルファは、天然ヒトタンパク質の酵素およびリソソーム標的化活性を保持する、570個のアミノ酸のポリペプチドである。そのリーダー配列(残基1~57)を含むオリプダーゼアルファのアミノ酸配列を下記に示すが、リーダー配列は、イタリック体の太字で記載する。成熟オリプダーゼアルファ配列(配列番号2であり、下記配列の残基58~627にわたる)は、リーダー配列を有さない。
Figure 0007216075000001
一部の実施形態では、ASMは、アミノ酸配列がオリプダーゼアルファと99%、98%、97%、96%、または95%同一である。例えば、本発明で有用なASMは、米国特許第6,541,218号(その開示内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれる)に示されるASM配列を有する。その配列を下記に示し、リーダー配列は、イタリック体の太字で記載するが、成熟タンパク質は、このリーダー配列を有さない。
Figure 0007216075000002
本発明で有用なASMはまた、UNIPROTデータベースに配列P17405-1として開示されているヒトASMまたはその多型変異体とアミノ酸配列が同一であってもよい。P17405-1配列を下記に示し、リーダー配列は、イタリック体の太字で記載するが、成熟タンパク質は、このリーダー配列を有さない。
Figure 0007216075000003
オリプダーゼアルファ療法の概念実証は、ASM欠損(ASMKO)マウスモデルで示されている(例えば、Mirandaら、FASEB 14(13):1988~95頁(2000);Dhamiら、Lab.Inves.81(7):987~99頁(2001)を参照)。これらの研究は、ASMKOマウスへのオリプダーゼの反復静脈内投与が、内臓器官のスフィンゴミエリンの用量依存的減少をもたらすことを示した。スフィンゴミエリンの減少は、肺でも認められた。これらのASMKO研究はまた、オリプダーゼアルファが、高用量で投与した場合に毒性をもたらす可能性があることも示した。しかしながら、オリプダーゼアルファは、ASMKOマウスに複数の低用量を投与してから高用量を投与した場合、単一高用量で認められた毒性をもたらさなかった。
オリプダーゼアルファは、臨床試験で、非神経ASMD症状の処置に使用されている。マウスでの所見は、オリプダーゼアルファ処置の安全性および薬物動態を評価するための第1相試験の開始につながり、第1相試験では、11名の患者において、単一の漸増用量のオリプダーゼアルファ(0.03、0.1、0.3、0.6、および1.0mg/kg)が評価された(McGovernら、Genet.Med.15(8):618~623頁(2013)およびWO2011/025996;これらの開示内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれる)。この試験の患者は、セラミド、ビリルビン、および高感度C反応性タンパク質(hsCRP)を含む急性期反応物質の用量関連増加を示した。また、初回投与毒性と一致する全身症状(疼痛、発熱、悪心、および嘔吐)を含む用量関連有害事象も報告された。
26週の処置期間においてオリプダーゼアルファの安全性および忍容性を評価するための第1b相試験が、5名の成人患者で実施された(この内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Wassersteinら、Mol.Genet.Metab.116(1-2):88~97頁(2015))。この試験の患者は、初期用量0.1mg/kgの後、標的用量の3.0mg/kgに達するまで、2週間ごとに段階的に増量する用量漸増法により、オリプダーゼアルファの投与を受けた。この試験では、この用量漸増レジメンが、重篤または重度の有害事象を生じることなく良好な忍容性を示し、かつスフィンゴミエリンおよびその分解産物を徐々に減量することが示された。減量するとは、ASMDにより患者の内臓器官に蓄積していたスフィンゴミエリンを除去することを指す。患者において認められた改善には、脾臓および肝臓の体積減少、間質性肺疾患スコアの低下、肺機能の向上、および血清中のキトトリオシダーゼ、CCL18、ACE、およびのその他の疾患バイオマーカーの減少が含まれる。本発明者らは、今回、これらの患者が、長期安全性および効能評価において処置およびモニタリングを30か月間継続したときに、持続的な安全性プロファイル、および脾臓および肝臓の体積、肺疾患スコア、脂質プロファイル、およびASMバイオマーカーを含めた臨床的に関連するパラメータの継続的な改善を示すということを発見した。発明者らはまた、患者らが、骨塩量(BMD)および骨髄負荷(BMB)の双方において顕著な改善を示すことを予想外に発見した。これらのデータは、ASM ERTが、骨減少症および骨粗しょう症のような患者の骨状態異常を緩和またはその悪化を予防することができることを示している。
ASM投与の投薬量および経路
本明細書に記載のASMを含む医薬組成物は、問題の状態(例えば、ASMDに関連する骨状態異常)の処置における治療有効量で、すなわち、所望の結果を達成するのに必要な投薬量および期間で投与される。治療有効量は、処置される特定の状態、患者の年齢、性別、および体重、ならびに酵素補充療法が独立した処置として投与されるのか、または1つまたはそれ以上の追加処置と併用して投与されるのかなどの要因によって異なり得る。「治療有効量」とは、処置される障害または状態の症状の1つまたはそれ以上をある程度軽減する、またはそれらの悪化を予防するような、投与される治療剤の量を指す。ASM組成物は、静脈内注射によって投与してもよい。
一部の実施形態では、効能は、骨塩量Tスコア(例えば、脊髄および/または大腿骨のTスコア)の改善として示される。ある特定の実施形態では、Tスコアは、少なくとも0.5点改善される。一部の実施形態では、効能は、骨塩量Zスコア(例えば、脊髄および/または大腿骨のZスコア)の改善として示される。ある特定の実施形態では、Zスコアは、少なくとも0.1点改善される。一部の実施形態では、効能は、骨減少症または骨粗しょう症のような骨疾患の改善、非悪化、または進行遅延として示される。一部の実施形態では、効能は、長さの成長または骨年齢(成熟)など、骨格発育の改善によって示される。ある特定の実施形態では、骨格発育の改善は、小児患者の研究から得られたデータと比較して判定される(Wassersteinら、J Pediatr 142(4):424~428頁(2003))。他の実施形態では、骨格発育の改善は、ASM療法前の各患者の成長曲線と比較して判定される。
一部の実施形態では、本発明の方法は、用量漸増プロトコルを含み、このプロトコルでは、増加する用量のASM(例えば、オリプダーゼアルファなどのrhASM)が、それまでに蓄積したスフィンゴミエリンを徐々に減量し、スフィンゴミエリン分解産物に起因する毒性副作用を最小限に抑えるように、適当な期間にわたり投与される。例えば、処置は、患者に蓄積されているスフィンゴミエリンの量を減少させるために、1つまたはそれ以上の初期非毒性低用量のASMを患者に投与するものであってもよい。各漸増用量は、前回の用量と、1週間、2週間、または3週間隔ててもよい。特定の実施形態では、漸増用量は、2週間隔てて投与される。本明細書において使用するとき、「非毒性用量」およびそれに類似する用語は:(i)通常の日常機能を妨げ、追加のモニタリング、介入、もしくは処置を要するような臨床症状、またはさらなるモニタリング、処置、もしくは介入を要するような臨床検査値もしくは処置結果の異常によって定義される、中等度または重度の関連有害事象(例えば、Clinical Data Interchange Standards Consortium Study Data Tabulation Model standard terminology v.3.1.1を参照);(ii)ある用量のrhASMの投与後1週間を超えて、2週間を超えて、または3週間を超えて持続する、1.5mg/dL超、2mg/dL超、3mg/dL超、または4mg/dL超の総ビリルビン値;(iii)その用量のASMの投与24時間後、36時間後、48時間後、または72時間後の8.2μg/dL超、9μg/dL超、10μg/dL超、15μg/dL超、20μg/dL超、30μg/dL超、40μg/dL超、50μg/dL超、60μg/dL超、70μg/dL超、もしくは80μg/dL超の血漿セラミド濃度;または(iv)急性期応答/反応のうちの1つ、2つ、3つ、またはすべてを引き起こすことなく、ASMD患者に投与されるASMの投薬量を指す。ASMの「非毒性用量」は、例えば、使用する酵素の安定性、使用する酵素の活性、および/またはその酵素の投与経路によって異なり得る。例えば、活性が向上した修飾ASM酵素の投薬量は、非修飾のASMの投薬量よりも少なくてもよい。当業者は、酵素の安定性、酵素の活性、および/または酵素の投与経路に基づき、投与する酵素の用量を調節することができる。
ある一定の期間後、ASMの用量は、患者が忍容する最高治療有効投与量に達するまで漸増してもよい。この投薬量が特定されれば、これを維持用量として使用して患者を処置することができる。あるいは、維持用量は、用量漸増レジメン後に患者のASMD状態が安定すれば、最高漸増用量から減らしてもよい。維持用量は、1週間おき、2週間おき、3週間おき、または4週間おきに患者に投与することができる。ある特定の実施形態では、維持用量は、2週間ごとに投与される。
本明細書において使用するとき、「維持用量」という用語は、所望の治療効果、例えば、1つまたはそれ以上の骨状態異常、例えば、本明細書に記載の骨状態異常の改善または非悪化を維持するためにASMD患者に投与される、本明細書に記載のASMの投薬量を指す。特定の実施形態では、維持用量は、所望の治療効果:(i)当該技術分野で公知の技法、例えば、MRIによって評価される脾臓体積の減少;(ii)当該技術分野で公知の技法、例えば、肝臓試料の生化学的分析および/または組織形態計測的分析によって評価される肝臓スフィンゴミエリンレベルの低下;(iii)当該技術分野で公知の技法、例えば、予測最大作業負荷に対する百分率、最大酸素消費量、および二酸化炭素産生量を含む自転車エルゴメトリーによる最大作業負荷によって評価される運動能力の向上;(iv)当該技術分野で公知の技法、例えば、American Thoracic Society、Am.Rev.Respir.Dis.144:1202~1218頁(1991)に記載の技法、例えば、拡散能(DLco)、例えばスパイロメトリー法により測定される、予測努力肺活量(FVC)に対する百分率、例えばスパイロメトリー法により判定される、努力呼気1秒量(FEV1)、および全肺気量によって評価される肺機能の向上;(v)気管支肺胞洗浄(BAL)スフィンゴミエリンの減少;(vi)当該技術分野で公知の技法、例えば、MRIによって評価される肝臓体積の減少;(vii)当該技術分野で公知の技法、例えば、高分解能コンピュータ断層撮影(CT)スキャンまたは胸部X線によって評価される肺の外観の改善;(viii)例えば、タンデム質量分析法によって判定される肝臓、皮膚、血漿、および乾燥血液スポット(DBS)中のスフィンゴミエリンまたはリゾスフィンゴミエリン濃度の低下;(ix)ASMDおよび/またはそれに関連する症状の重症度の低下または改善;(x)ASMDに関連する症状の持続期間の減少;(xi)ASMDに関連する症状の再発の防止;(xii)対象の入院の減少;(vi)入院期間の短縮;(xiii)対象の生存期間の増加;(xiv)死亡率の低下;(xv)入院率の低下;(xvi)ASMDに関連する症状の数の減少;(xvii)ASMD患者の無症状生存期間の増加;(xviii)神経機能(例えば、精神運動機能、社会的応答性など)の改善;(xix)例えば、BAL細胞数およびプロファイルによって測定される肺クリアランスの改善;(xx)キトトリオシダーゼの血清レベルの低下;(xxi)ケモカイン(c-c)モチーフリガンド18(CCL18)の血清レベルの低下;(xxii)脂質プロファイル(例えば、HDL、LDL、コレステロール、トリグリセリド、および総コレステロール:HDL比)の改善;(xxiii)骨状態異常の改善;ならびに(xxiv)例えば、質問票、例えば、簡易倦怠感尺度(Brief Fatigue Inventory:BFI)(Mendozaら、Cancer 85(5):1186~1196頁(1999))、簡易疼痛質問票(Brief Pain Inventory-Short Form:BPI-SF)(Cleeland C.、Acta Paediatr.Suppl.91(439):43~47頁(2002))、または小児生活の質(Pediatric Quality of Life:PedsQL)質問票(Varmiら、Medical Care 39(8):800~812頁(2001))、もしくはPedsQL多面的倦怠感尺度(PedsQL Multidimensional fatigue scale)(Varmiら、J Rheumatol 31(12):2494~2500頁(2004))によって評価される生活の質(QOL)の改善のうち1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上を維持する。ある特定の実施形態では、最高維持用量は、患者が忍容する最高または最大用量である。
一部の実施形態では、維持用量の投与を受けている患者は、1か月おき、2か月おき、3か月おき、4か月おき、5か月おき、6か月おき、7か月おき、8か月おき、9か月おき、10か月おき、もしくは11か月おき、毎年、もしくは2年おきに:(i)関連有害事象;(ii)総/直接/間接ビリルビン濃度;(iii)血漿セラミド濃度;または(iv)急性期応答のうちの1つまたはそれ以上についてモニタリングされる。一部の実施形態では、患者は、3か月おき、6か月おき、または毎年モニタリングされる。患者が中等度の強度の関連有害事象、ASMDを有さないヒト(例えば、健常者)の総ビリルビン値よりも高い総ビリルビン濃度、ASMDを有さないヒト(例えば、健常者)の血漿セラミド濃度よりも高い血漿セラミド濃度、または急性期応答を示した場合には、医師またはその他の医療専門家は、その患者に投与している用量を検討し、その用量を調節するべきかどうかを判断することができる。
ある特定の実施形態では、ASMDを有するヒト患者を処置する方法は:(a)用量漸増レジメン(例えば、ヒト患者において蓄積したスフィンゴミエリン基質を減量することを目的とする)であって:(i)初期用量(例えば、0.1mg/kgなどの非毒性低用量)の本明細書に記載のASM(例えば、オリプダーゼアルファ)をヒト患者に投与する工程と;(ii)逐次増加する用量のASMをヒト患者に投与する工程と;(iii)一連の用量それぞれの投与後に、例えば、総ビリルビン濃度の上昇、血漿セラミド濃度の上昇、リゾスフィンゴミエリン、キトトリオシダーゼ、急性期反応物質の産生、炎症メディエーターの産生、または有害事象(例えば、Clinical Data Interchange Standards Consortium Study Data Tabulation Model standard terminology v.3.1.1に定義される有害事象)によって示されるような、1つまたはそれ以上の有害副作用について患者をモニタリングする工程とを含む用量漸増レジメンと;(b)維持レジメンであって、患者が忍容する最高用量以下(例えば、3mg/kg以下)の用量を維持用量として患者に投与する工程を含む維持レジメンとを含む。
ある特定の実施形態では、ASMDを有するヒト患者を処置する方法は:(a)用量漸増レジメン(例えば、ヒト患者において蓄積したスフィンゴミエリン基質を減量することを目的とする)であって:(i)初期用量(例えば、0.1mg/kgなどの非毒性低用量)の本明細書に記載のASM(例えば、オリプダーゼアルファ)をヒト患者に投与する工程と;(ii)患者が、例えば、総ビリルビン濃度の上昇、血漿セラミド濃度の上昇、急性期反応物質の産生、リゾスフィンゴミエリン、キトトリオシダーゼ、炎症メディエーターの産生、または有害事象(例えば、Clinical Data Interchange Standards Consortium Study Data Tabulation Model standard terminology v.3.1.1に定義される有害事象)によって示されるような、1つまたはそれ以上の有害副作用を示さなかった場合、逐次増加する用量のASMをヒト患者に投与する工程とを含む用量漸増レジメンと;(b)維持レジメンであって、患者が忍容する最高用量以下(例えば、3mg/kg以下)の維持用量を反復投与する工程を含む維持レジメンとを含む。一部の実施形態では、患者は、1用量のASMの投与後ある期間にわたり(例えば、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、毎週、または次の用量まで)、1つまたはそれ以上の有害副作用についてモニタリングされる。ある特定の実施形態では、投与される維持用量は、患者の処置過程において調節することができる。一部の実施形態では、患者に投与される最高維持用量は、患者が忍容する最高用量である。
ある特定の実施形態では、初期用量は、ASM(例えば、オリプダーゼアルファ)0.025~0.275mg/kg、例えば、0.03mg/kg~0.5mg/kg、0.01~0.5mg/kg、または0.1mg/kg~1mg/kgである。特定の実施形態では、初期用量は、0.03mg/kgまたは0.1mg/kgである。例えば、小児患者の初期用量は、0.03mg/kgとしてもよく;成人患者の初期用量は、0.1mg/kgとしてもよい。一部の実施形態では、小児患者または成人患者の初期用量は、0.1mg/kgとしてもよい。
ある特定の実施形態では、患者に、同じ用量のオリプダーゼアルファを少なくとも2回投与してから、次に高い用量に漸増する。一部の実施形態では、逐次増加する用量は、前回の用量の1週間後、2週間後、3週間後、または4週間後に投与される。一部の特定の実施形態では、逐次増加する用量は、前回の用量の2週間後に投与される。特定の実施形態では、逐次増加する用量は、前回の用量より0.05~1.0mg/kg、0.1~3.0mg/kg、または0.5~2.0mg/kg多く、例えば、前回の用量よりもおよそ0.07mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、または1mg/kg多い。
一部の実施形態では、患者が忍容する最高治療有効量は、1mg/kg~2.5mg/kg、2mg/kg~3mg/kg、3mg/kg~5mg/kgである。一部の実施形態では、患者が忍容する最高治療有効量は、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、または5mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者が忍容する最高用量は、1mg/kg~3mg/kg、例えば、1mg/kg~2.5mg/kgである。一部の実施形態では、最高用量が最高維持用量としてヒト患者に投与される。ある特定の実施形態では、最高維持用量は、例えば、0.3mg/kg、0.6mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、または3mg/kgの量である。特定の実施形態では、最高維持用量は、3mg/kgである。その後の維持用量は、最高維持用量と同じ量またはそれ未満の量で投与してもよい。一部の実施形態では、維持用量は、0.3~3mg/kgである。
一部の実施形態では、用量漸増レジメンは、例えば、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.3mg/kg、0.6mg/kg、0.6mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、および3.0mg/kg(最高維持用量)の順に、複数用量のASMを投与する工程であって、次の用量がそれぞれ前回の用量の2週間後に投与される工程を含んでもよい。他の実施形態では、用量漸増レジメンは、例えば、0.03mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.3mg/kg、0.6mg/kg、0.6mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、および3.0mg/kg(最高維持用量)の順に、複数用量のASMを投与する工程であって、次の用量がそれぞれ前回の用量の2週間後に投与される工程を含んでもよい。
ある特定の実施形態では、ある用量の明細書に記載のASMは、毎週、2週間おき、3週間おき、または4週間おきに患者に投与される。特定の実施形態では、この用量は、例えば、静脈内注射により、2週間おきの間隔で投与される。
一部の実施形態では、本発明の方法は、標的とする骨状態が改善するように、6~30か月間にわたり、例えば、6か月以下、7か月以下、8か月以下、9か月以下、10か月以下、11か月以下、12か月以下、13か月以下、14か月以下、15か月以下、16か月以下、17か月以下、18か月以下、19か月以下、20か月以下、21か月以下、22か月以下、23か月以下、24か月以下、25か月以下、26か月以下、27か月以下、28か月以下、29か月以下、または30か月以下の期間にわたり、ASM用量を投与するものである。ある特定の実施形態では、ASM用量は、30か月以下の期間にわたり投与される。
さらなる実施形態では、本発明の方法は、例えば、WO2011/025996(その開示内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれる)に記載の投与プロトコルおよび/または投与経路を含む。
特定の実施形態では、成人または小児ASMD患者を処置するために使用される用量漸増レジメンは、例えば、下表に示すとおりであってもよい:
Figure 0007216075000004
さらなる特定の実施形態では、小児ASMD患者を処置するために使用される用量漸増レジメンは、例えば、下表に示すとおりであってもよい:
Figure 0007216075000005
一部の実施形態では、小児患者集団は、ASMD青年コホート(12歳から18歳未満まで)、ASMD小児コホート(6歳から12歳未満まで)、および乳児/幼児コホート(出生後6歳未満まで)を含む。
製品およびキット
本発明はまた、本明細書に記載のASMを含む製品およびキットを提供する。一部の実施形態では、製品およびキットは、本明細書に記載の患者、例えば、ASMD患者を処置するのに適している。例えば、製品およびキットは、ASMD患者において、本明細書に記載の骨状態異常を処置するのに適していてもよい。一部の実施形態では、製品およびキットに含まれる医薬活性成分は、本明細書に記載の用量での投与用に製造され、本明細書に記載の方法による投与用に製剤化される。
本明細書に別段に定めのない限り、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者一般に理解するのと同様の意味を有するものとする。例示的な方法および材料が本明細書に記載されているが、本明細書に記載するものと類似または同等の方法および材料も、本発明の実施および試験において使用することができる。矛盾がある場合には、定義を含め、本明細書が優先する。一般に、本明細書に記載されている、細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、有機合成化学、医薬品および製薬化学、ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法、ならびにこれらの技法は、当該技術分野で周知されかつ一般に使用されているものである。酵素反応および精製法は、製造者の仕様書に従って、当該技術分野で一般に遂行されるように、または本明細書に記載のように実施される。本明細書で言及するすべての刊行物およびその他の参考文献の内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書において多数の文書が引用されているが、これらの引用は、これらのどの文書が当該技術分野で共通の一般知識の一部を構成することも認めるものではない。さらに、文脈により別の解釈が必要な場合を除き、単数形の用語は、複数を含み、複数形の用語は単数を含むものとする。本明細書および実施形態全体を通して、「有する(have)」および「含む(comprise)」という用語、または「有する(has)」、「有すること(having)」、「含む(comprises)」、もしくは「含むこと(comprising)」などの変化形は、提示される整数または整数群を包含するが、他のいかなる整数または整数群も除外しないことを暗示していると理解されたい。
本発明の理解を助けるために、以下に実施例を記載する。これらの実施例は、例示のみを目的とし、いかなる形でも本発明を限定するものと解釈してはならない。
ASMD患者におけるオリプダーゼアルファの安全性および効能を評価するための長期試験
患者および試験デザイン
試験の目的は、長期投与後のASMD患者におけるオリプダーゼアルファの安全性および効能に関する情報を得ることである。この進行中の非盲検長期試験(LTS)(NCT02004704;EudraCT番号:2013-000051-40)は、第1b相試験(Wassersteinら、Mol Genet Metab 116(1-2):88~97頁(2015))にそれまでに参加していた慢性ASMDを有する成人患者5名を追跡調査するものである。30か月間の処置後、すべての患者についてデータを分析した。各施設の施設内審査委員会(Institutional Review Board)または倫理委員会(Ethics Committee)は、プロトコルを承認し、患者全員が、書面によるインフォームド・コンセントを提出した。試験は、優良臨床試験基準(Good Clinical Practice)に準拠し、ヘルシンキ宣言の原則に従って実施された。
第1b相試験の適格基準については、既に記載がある。同上。許容される安全性プロファイルで第1b相試験を完了した患者は、LTSで継続する資格があるものとし、第1b相試験の終了時に投与されていたのと同じオリプダーゼアルファ用量で継続した。
転帰の評価項目および分析
安全性評価には、標準的な一連の血液および化学検査、ならびにMcGovernら、Genet Med 18(1):34~40頁(2015)およびWassersteinら、Mol.Genet.Metab.116(1-2):88~97頁(2015)に既に記載されているような注入に伴う反応(IAR)を含めた、継続的AEモニタリングを含めた。スフィンゴミエリンおよび分解産物の血漿セラミドを液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC/MS/MS)により評価した。骨状態バイオマーカーには、LC/MS/MSによって判定されるキトトリオシダーゼ(血清)およびリゾスフィンゴミエリン[乾燥血液スポット(DBS)]も含めた。抗薬剤抗体の産生は、McGovernら、2015、上記参照、およびWassersteinら、Mol.Genet.Metab.116(1-2):88~97頁(2015)に既に記載されているとおりに評価した。
脾臓および肝臓体積の定量評価は、腹部MRIから判定し、器官体積は、正常値に対する倍数(MN)として示した。ヘモグロビンに対して補正した予測一酸化炭素肺拡散能(DLco)に対する百分率は、標準式(Crapoおよび Morris、Am Rev Respir Dis 123(2):185~189頁(1981)、Macintyreら、Eur Respir J 26(4):720~735頁(2005))を用いて計算した。高分解能コンピュータ断層撮影(HRCT)により、浸潤性肺疾患を評価した。肺野HRCT像のすりガラス様陰影(GG)、間質性肺疾患(ILD)、および網状顆粒状陰影(RND)を、McGovernら、2015、上記参照、およびWassersteinら、2015、上記参照に既に記載されているとおりに、0(疾患なし)~3(重度の疾患)で主観的に採点した。
総コレステロール(TC)、低密度リポタンパク質(LDL-C)、高密度リポタンパク質(HDL-C)、およびトリグリセリドの測定値を含む空腹時血漿脂質プロファイルは、試験を通して測定した。非HDLレベルは、総コレステロールレベルとHDL-コレステロールレベルの差として事後計算した(Jacobsonら、J.Clin.Lipidol.9(2):129~169頁(2015))。
骨髄負荷(BMB)は、腰椎および両大腿骨のMRIから判定したが、この際、画像定量化は、脂質負荷細胞による骨髄浸潤の程度を示した(Robertsonら、AJR.Am.J.Roentgenol.188(6):1521~1528頁(2007))。骨塩量(BMD)は、腰椎および両大腿骨の二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)骨スキャン画像、ならびにTスコアおよびZスコアの判定により決定した(WHO JAMA 285(6):785~795頁(2001))。BMDは、International Society for Clinical Densitometry(ISCD 2015)により提供されるガイダンスを用いて評価した。
0(不在)~10(最も悪い)の11点尺度を用いた患者報告転帰には、有効な簡易倦怠感尺度(BFI)(Mendozaら、Cancer 85(5):1186~1196頁(1999));および簡易疼痛質問票(BPI-SF)の質問票を含め、ベースライン時および処置期間中定期的に、日常活動における支障を評価した(Cleeland C.、Acta Paediatr.Suppl.91(439):43~47頁(2002))。
統計法
カテゴリー変数および連続変数の記述統計を示し、器官体積およびDLcoについてベースラインからの変化およびベースラインからの変化率(%)を計算し、対応のあるt検定およびウィルコクソン・マン・ホイットニー検定により差を求めた。
患者および曝露
第1b相試験を完了した成人患者5名(男性3名および女性2名の白人患者)全員は、LTSで処置を継続した。ベースライン時、すべての患者は、脾腫(7.4~16.1MNの範囲)、肝腫(1.2~2.2MNの範囲)、ガス交換障害(予測DLcoに対して43~80%の範囲)、およびアテローム生成促進的脂質プロファイルを有した。患者特性は、既に公開されているが(Wassersteinら、Mol.Genet.Metab.116(1-2):88~97頁(2015))、これを表3に要約する。患者の過半数(4/5)で、30か月の処置期間中、オリプダーゼアルファ標的用量3mg/kgを維持した。患者2については、後述するAEにより、用量を6か月間(12か月目~18か月目)は2mg/kgに、その後(18か月目~現在)は1mg/kgに減らした。
Figure 0007216075000006
安全性
30か月の処置期間中、死亡、重篤もしくは重度の事象、または中止は認められなかった。すべての患者は、少なくとも1つのAEを示し、そのほぼすべて(826/838、98.5%)は、強度が軽度であった。処置に関連する考えられるAE443件のうち、96件(21.7%)は、IAR(頭痛、悪心、腹痛、関節痛、筋骨格痛、および筋肉痛を含む)と考えられた。IARと考えられる中等度のAE6件が第1b相試験中(最初の6か月間)に発生し、既に報告されている(Wassersteinら、Mol.Genet.Metab.116(1-2):88~97頁(2015))。6か月目~30か月目のLTSでは、IARと考えられる中等度のAE5件は、患者2の腹痛、肝臓痛、悪心、筋けいれん、および感覚障害であった。過敏症反応、急性期反応、またはサイトカイン放出症候群は認められなかった。いずれの患者もオリプダーゼアルファに対するIgG抗体を産生しなかった。バイタルサイン、血液、または心臓の安全性パラメータには、臨床的に有意な有害変化は認められなかった。
第1b相試験の終了時に安定していた炎症マーカーIL-6、IL-8、およびhsCRPのレベル(Wassersteinら、Mol.Genet.Metab.116(1-2):88~97頁(2015))は、6か月目から30か月目にhsCRPに変動(1.10~33.3mg/mL;正常範囲0~5)が認められた患者2を除き、すべての患者において安定を維持した。すべての患者の血漿セラミドレベル(図1A)は、正常限度内にとどまった(1.8~6.5μg/mL)。
肝機能酵素レベルは、30か月目まではすべての患者で正常範囲にとどまり、30か月目に、患者4がALT(正常値の1.4倍)およびAST(正常値の2.9倍)の一過性の上昇を示したが、AEには対応しておらず、その後正常レベルに戻った。総ビリルビンおよびGGTレベルは、すべての患者において、ベースラインレベルと同様またはそれよりも低いレベルを維持した。鉄レベルは経時的に変動したが、正常範囲内またはその付近にとどまった。
第1b相の用量漸増中、患者2は、IARを示したことから、2mg/kg用量を繰り返した(Wassersteinら、Mol.Genet.Metab.116(1-2):88~97頁(2015))。この患者は、その後、第1b相試験中およびLTSの最初の6か月間は、標的用量3mg/kgの投与を受けた。その間、この患者は、ほとんどの注入の7~10日後に、悪心、頭痛、倦怠感、うずき、間欠的な腹痛、および時折の発熱(38.3~40.0℃)を含む軽度のAEを報告した。エピソードは、約3日間持続し、次回の注入までには完全に解消した。オリプダーゼアルファは、減量された(6か月間は2mg/kg、その後現在に至るまでは1mg/kgの用量)。用量を減らすことによって、報告される事象のタイミング、頻度、またはタイプに変化はなかった。
効能
脾臓および肝臓の体積
脾臓および肝臓の体積は、すべての患者において、ベースラインと比較して減少した(図2A)。平均脾臓体積は、正常値に対する倍数(MN)がベースライン時の12.8MNから30か月目の6.7MNまで減少し、これはベースラインから47.3%の減少であった(p<0.0001)。平均肝臓体積は、ベースライン時の1.7MNから30か月目の1.07MNまで減少し、これはベースラインからの35.6%の減少であった(p=0.006)。
浸潤性肺疾患
予測DLcoに対する百分率は、すべての患者において、ベースライン値と比較して増加し(図2B)、ベースライン時の平均53.2%(中等度)から30か月目の67.1%(軽度)に改善された。最も大きな変化は、ベースライン時に予測DLco値に対する%が最も低かった(<40%、重度範囲内)患者3名に認められた。また、図2Bは、ベースライン時、6か月後、18か月後、30か月後の要素ごとの平均スコアにより、浸潤性肺疾患の評価を示している。このデータは、すべてのパラメータで段階的減少を示しているが、特にGG陰影およびRNDでは、ほぼ完全に解消している。
空腹時脂質パラメータ
空腹時脂質プロファイルを図4A~4Dに示す。30か月目までに、トリグリセリドは42.99%(p=0.02)、総コレステロールは12.7%(p=0.04)、LDL-Cは22.8%(p=0.007)減少し、HDL-Cは137.6%(p=0.01)増加した。非HDLコレステロールレベル(総コレステロールからHDL-Cを減じた値)は、ベースライン時には患者5名中4名で3.37mmol/L(130mg/dL)を超え(平均3.91mmol/L)、30か月目にはすべての患者で3.37mmol/L未満(平均2.66mmol/L)であった。
バイオマーカー評価
DBS中の平均リゾスフィンゴミエリンレベルは、ベースライン時に正常値上限(ULN=69μg/L)の5倍の高さであったが、ほぼ正常レベルまで低下し、6か月目から30か月目までの間安定を保った(図1B)。
注入前血清キトトリオシダーゼレベルは、ベースライン時の735nmol/時/mLから30か月目の221nmol/時/mLまで、72.3%着実に低下し(p=0.0007)、正常キトトリオシダーゼ範囲(≦181nmol/時/mL)の上限に近づいた(図1C)。データは、血清キトトリオシダーゼ活性を低下させる共通の24bp重複についてヘテロ接合型の2名の患者を考慮して補正されていない。
血液学
ほとんどの患者の血小板数は、正常値よりやや低いか正常低値範囲内に維持された。患者1は、試験期間にわたり、正常低値(150×109/L)未満の値(57~102×109/L)を示した。ベースラインからの平均血小板数変化(増加)は、経時的に変動し[5.9%(27か月目)~25.7%(9か月目)]、30か月目には20.6%であった。ヘモグロビンレベルは、ベースラインと同様のレベルを維持し(ベースラインからの平均変化は、12週目の-6.1%から24か月目の6.9%の範囲であった)、すべての患者において正常範囲内であった(データ示さず)。
骨密度
ベースライン時、平均脊髄Tスコアは、-1.48±1.14で骨減少症の範囲(-1.0~-2.5)内であったが、Zスコアは、低BMDカットオフ値(-2.0)の-1標準偏差内の正常BMD(-1.36±1.26)を示した。TスコアおよびZスコアはどちらも、30か月目に改善を示した(それぞれ、-0.94±1.03および-0.78±1.11)。患者2(女性、ベースライン時32歳)は、ベースライン脊髄Tスコア(-3.06)が骨粗しょう症の範囲内であったが、18か月目(-2.48)および30か月目(-2.65)には、骨減少症/骨粗しょう症境界値に改善した。ベースライン時のTスコアが骨減少症の範囲内であった患者2名(患者1、男性、ベースライン時31歳、-1.31、および患者4、男性、ベースライン時28歳、-2.14)は、30か月目には正常範囲内のスコアを示した(それぞれ、-0.76および-0.82)。個々の経時的なZスコアの結果は、同様であった。
平均大腿骨TスコアおよびZスコアは、ベースライン時(それぞれ、-0.38±1.35および-0.27±1.46)、および30か月目(それぞれ、-0.28±1.27および-0.13±1.4)に正常範囲内であった。患者2のベースライン大腿骨Tスコアは骨減少症範囲内(-2.23)であり、Zスコアは、低BMD(-2.18)を示したが;30か月目にはどちらもやや改善した(それぞれ、-1.89および-1.82)。
骨髄負荷
BMBの平均カテゴリースコアは、ベースライン(6.2±2.5)と30か月目(5.6±1.1)で同様であった。患者2は、ベースライン時の総BMBスコアが最も高い10であったが、18か月目および30か月目に3点向上した(スコア7)。患者2のベースライン時と30か月間のオリプダーゼアルファ処置後の大腿骨および脊椎のT1強調およびT2強調画像を図3Aおよび3Bに示す。ベースライン時に認められた近位骨端骨髄の低輝度は、30か月間の処置後に減少した。脊椎では、ベースライン時に骨髄のびまん性浸潤および仙骨前方脂肪の高輝度信号輝度が認められたが30か月間の処置後、前者は変化せず、後者は改善した。
患者報告転帰
平均BFI±SD倦怠感スコアは、ベースライン時には3.04±2.29、30か月目には2.44±3.44であった。平均BPI±SD疼痛重症度スコアは、ベースライン時には3.45±2.77、30か月目には2.90±2.70であり、平均BPI±SD疼痛支障スコアは、ベースライン時には2.03±1.58、30か月目には3.29±3.51であった。個々のBFIスコアおよびBPI疼痛重症度スコアのほとんどは、すべての時点において、軽度(0~3)または中等度(4~6)の範疇であった。例外は、患者5であり、BPI疼痛は、ベースライン(6.8)および30か月目(7)のいずれの時点でも重度(7~10)であった。BPI疼痛支障スコアは、患者2(ベースライン時は2、30か月目は8.1)および患者3(ベースライン時は1.9、30か月目は5.3)において上昇した。患者2が報告した倦怠感は、ベースライン時には中等度(5.8)、30か月目には重度(8.3)であった。
本試験は、ASMDに向けて開発中のはじめての病因特異的処置である、オリプダーゼアルファによる30日間の処置が、良好な忍容性を示し、関連疾患臨床評価項目の人生を変えるような持続的改善に関連することを示した。30か月の安全性プロファイルは、第1b相試験プロファイル(Wassersteinら、Mol.Genet.Metab.116(1-2):88~97頁(2015))と同様であった。過敏症反応は発生せず、抗薬剤抗体は検出されなかった。オリプダーゼアルファに曝露された患者のいずれにおいて、これまでのところサイトカイン放出症候群は認められていない。IARは免疫反応ではないことから、サイトカイン放出、炎症、およびアポトーシスのシグナル伝達中間体である生物活性スフィンゴミエリン代謝産物、主にセラミドの放出に関連すると思われる(Spiegelら、Curr.Opin.Cell Biol.8(2):159~167頁(1996);Gulbinsら、J.Mol.Med.82(6):357~363頁(2004))。処置の最初の6か月間、オリプダーゼアルファ投与は、一般に注入後48時間でピークとなる血漿セラミドレベルの一過性の上昇を誘発した(Wassersteinら、Mol.Genet.Metab.116(1-2):88~97頁(2015))。注入前および注入後のセラミドレベルはいずれも、次のオリプダーゼアルファ注入する度に着実に低下し、処置3か月後に安定状態に達し、30か月後までずっと安定を維持した。
臨床的改善は、30か月間にわたって持続した。肝臓および脾臓の体積の統計的に有意な改善(平均減少率は、肝臓体積で31.2%、脾臓で39.3%)は、他のリソソーム蓄積障害のERTに対する応答に匹敵した。ゴーシェ病では、脾臓体積の治療目標は、処置の最初の1年で30%~50%の減少であり、肝臓体積については、処置の最初の2年以内で20%~30%の減少である(Pastoresら、Semin Hematol 41(Supple 5):4~14頁(2004))。
慢性内臓型または慢性神経内臓型ASMD患者は、年齢に伴い、浸潤性肺疾患の悪化を示す(Wassersteinら、Pediatrics 114(6):e672~677頁(2004))。30か月の処置の間に、肺拡散能のベースラインから35%の増加が認められ、ベースライン時のDLCOが最も低かった患者3名に顕著な変化がみられた。最初の6か月間の処置中に認められた肺疾患スコアの改善(Wassersteinら、Mol.Genet.Metab.116(1-2):88~97頁(2015))は、その後の2年間の処置中も継続し、一部のパラメータ(例えば、GG陰影およびRND)は正常化した。
アテローム生成促進的脂質プロファイルは、慢性ASMD患者において、典型的には年齢に伴って悪化し(Wassersteinら、Pediatrics 114(6):e672~677頁(2004))、脂質異常は、早期冠動脈疾患に関連する可能性がある(McGovernら、J.Pediatr.145(1):77~81頁(2004))。ベースライン時、患者らは、脂質プロファイルによると、心血管疾患リスクが軽度から中等度であったが(Wassersteinら、Mol.Genet.Metab.116(1-2):88~97頁(2015))、30か月間の処置の間に、プロファイルは改善した。非HDLコレステロールレベルは、多くの患者集団において心血管リスクの優れた予測因子と考えられており、望ましいレベルは、3.37mmol/L(130mg/dL)未満である(Jacobsonら、J.Clin.Lipidol.9(2):129~169頁(2015))。1名を除くすべての患者は、ERT前の非HDLレベルが3.37mmol/Lを超えていたが、30か月目には、すべての患者において総コレステロールレベルおよびHDLレベルが改善し、非HDLは、3.37mmol/Lのカットオフ値未満を示した。
骨格合併症も、慢性ASMDの顕著な特徴である。一部の患者で、特に脊椎におけるBMDの改善が認められ、オリプダーゼアルファがASMDを有する成人のBMDに対し有益な効果を有することが示された。ゴーシェ病など、低BMDを伴う他の脂質蓄積障害では、成人患者におけるERT単独に対する骨疾患の応答は遅いが(Wenstrupら、J.Bone Miner.Res.22(1):119~126頁(2007))、ERTの骨吸収抑制療法との併用は、骨減少症を改善する可能性がある(Wenstrupら、Blood 104(5):1253~1257頁(2004))。しかしながら、ビスホスホネートは、ASM活性を阻害するため、ASMD患者には適さない場合がある(Arenz Cell Physiol.Biochem.26(1):1~8頁(2010))。いずれの試験患者も、ビスホスホネート療法を受けていなかった。本試験の結果は、オリプダーゼアルファ単独で骨減少症が改善するであろうことを示している。
他の臨床評価項目は、ERT中に、改善または安定を示した。血小板数およびヘモグロビンレベルは、安定を保った。ベースライン時および30か月間のオリプダーゼアルファ処置後に中等度のレベルのBMBが測定され、一部の患者で改善が認められた。患者は、ベースライン時に軽度から中等度のレベルの疼痛および倦怠感を有したが、これは、ほとんどの患者において、30か月目にも安定状態を保っていた。患者3における患者報告転帰の悪化は、AEに関連するものではなかった。患者2は、1年間のERT後、倦怠感および疼痛の悪化と共に、インフルエンザ様症状を特徴とするAEを報告した。この患者は、非定型エリテマトーデスを有し、これが倦怠感および疼痛、AE、ならびに炎症性サイトカインの変動の一因であったかどうかは不明である。この患者では、オリプダーゼアルファを1mg/kg/週に減量することで、AE発生率、倦怠感、または疼痛に影響を与えなかった。この患者は、減量したオリプダーゼアルファ用量(12か月間の曝露)で、脾臓および肝臓の体積減少、ならびに予測DLcoに対する百分率の改善、浸潤性HRCTパラメータの持続的な解消、およびバイオマーカーの安定化を含めた臨床的利益が継続した。
ゴーシェ病におけるERT中の治療モニタリングのための周知のバイオマーカーであり(Guoら、J.Inherit.Metab.Dis.18(6):717~722頁(1995))、慢性炎症性疾患のマーカーであるキトトリオシダーゼは、オリプダーゼアルファ処置中に着実に減少した(Bootら、Clin Chim Acta 411(1-2):31~36頁(2010))。スフィンゴミエリンの脱アシル化形態であるリゾスフィンゴミエリンは、DBS中で減少したことで、患者のスフィンゴミエリンが減量し、その後長期処置中に安定状態となると着実な減少を示す、ERT転帰のモニタリング用バイオマーカーとしての有用性が示唆された。リゾスフィンゴミエリンは、慢性内臓型ASMD患者のDBS中では、およそ5倍の高さとなる(Chuang Mol.Genet.Metab.111(2):209~211頁(2014))。
このオリプダーゼアルファの非盲検延長試験は、30か月間のオリプダーゼアルファによる処置が、良好な忍容性を示し、かつ臨床的に有効であることを示した。

Claims (30)

  1. 酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)患者において骨状態異常を処置する方法で使用するための医薬を製造するための、組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)の使用であって、前記方法は:
    複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与する工程と、
    患者の骨指標を測定する工程と、
    患者の骨指標を該投与工程前の患者のベースライン骨指標と比較する工程と、を含み、患者の骨指標は、複数用量のrhASM投与後に改善する、または悪化しない、前記使用。
  2. 骨指標は、骨塩量(BMD)であ、請求項1に記載の使用。
  3. 骨指標は、骨髄負荷(BMB)であ、請求項1に記載の使用。
  4. 骨指標は骨成熟度であ、請求項1に記載の使用。
  5. 骨状態異常は、骨減少症または骨粗しょう症である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
  6. 骨髄負荷(BMB)の減少を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者においてBMBを減少させる方法で使用するための医薬を製造するための、組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)の使用であって、前記方法は:
    患者のBMBを判定する工程と、
    複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与し、それによって患者のBMBを減少させる工程と、を含む、前記使用。
  7. 骨塩量(BMD)の改善を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者においてBMDを改善する方法で使用するための医薬を製造するための、組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)の使用であって、前記方法は:
    患者のBMDを判定する工程と、
    複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与し、それによって患者のBMDを改善する工程と、を含む、前記使用。
  8. 骨髄負荷(BMB)の減少を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者においてBMBを減少させる方法で使用するための医薬を製造するための、組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)の使用であって、前記方法は:
    ビスホスホネート療法を受けていない酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者を選択する工程と、
    複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与し、それによって患者のBMBを減少させる工程と、を含む、前記使用。
  9. 骨塩量(BMD)の改善を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者においてBMDを改善する方法で使用するための医薬を製造するための、組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)の使用であって、前記方法は:
    ビスホスホネート療法を受けていない酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者を選択する工程と、
    複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与し、それによって患者のBMDを改善する工程と、を含む、前記使用。
  10. 骨成熟度の改善を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)患者において骨成熟度を改善する方法で使用するための医薬を製造するための、組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)の使用であって、前記方法は:
    骨成熟度を改善するASMD患者を選択する工程と、
    複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与し、それによって患者の骨成熟度を改善する工程と、を含む、前記使用。
  11. 骨減少症の処置を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)患者において骨減少症を処置する方法で使用するための医薬を製造するための、組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)の使用であって、前記方法は:
    骨減少症を処置するASMD患者を選択する工程と、
    複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与する工程と、を含む、前記使用。
  12. 骨粗しょう症の処置を必要とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症患者において骨粗しょう症を処置する方法で使用するための医薬を製造するための、組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)の使用であって、前記方法は:
    骨粗しょう症を処置するASMD患者を選択する工程と、
    複数用量の組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(rhASM)を患者に投与する工程と、を含む、前記使用。
  13. 複数用量は、6か月~30か月の期間にわたり患者に投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用。
  14. 患者は、ニーマン・ピック病B型を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用。
  15. 患者は、ニーマン・ピック病A/B型を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用。
  16. 患者は、成人患者である、請求項1~15のいずれか1項に記載の使用。
  17. 患者は、小児患者である、請求項1~15のいずれか1項に記載の使用。
  18. 最初の2用量またはそれ以上の用量は、漸増用量であり、逐次増加する量で投与される、請求項1~17のいずれか1項に記載の使用。
  19. 漸増用量後の用量は、維持用量であり、最後の漸増用量と同じ量またはそれより少ない量で投与される、請求項18に記載の使用。
  20. 最初の用量は、0.1mg/kgの量であり、患者は、小児患者である、請求項18または19に記載の使用。
  21. 最初の用量は、0.1mg/kgの量であり、患者は、成人患者である、請求項18または19に記載の使用。
  22. 最高維持用量は、0.3mg/kg~3mg/kgの量である、請求項1921のいずれか1項に記載の使用。
  23. 最高維持用量は、1mg/kgの量である、請求項1921のいずれか1項に記載の使用。
  24. 最高維持用量は、2mg/kgの量である、請求項1921のいずれか1項に記載の使用。
  25. 最高維持用量は、3mg/kgの量である、請求項1921のいずれか1項に記載の使用。
  26. 最高維持用量は、患者が忍容する最高用量である、請求項1921のいずれか1項に記載の使用。
  27. 漸増用量は、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.3mg/kg、0.6mg/kg、0.6mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、および3.0mg/kgの順に投与される、請求項1826のいずれか1項に記載の使用。
  28. 複数用量は、2週間おきの間隔で投与される、請求項1~27のいずれか1項に記載の使用。
  29. 複数用量は、静脈内注射によって投与される、請求項1~28のいずれか1項に記載の使用。
  30. rhASMは、オリプダーゼアルファである、請求項1~29のいずれか1項に記載の使用。
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