JP7215235B2 - インターフェログラムデータ補正方法、インターフェログラムデータ補正プログラム、分光測定装置、及び分光測定方法 - Google Patents

インターフェログラムデータ補正方法、インターフェログラムデータ補正プログラム、分光測定装置、及び分光測定方法 Download PDF

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Description

この出願の発明は、インターフェログラムデータを補正する技術に関するものである。
インターフェログラムとは、光路差を有する二つの光が干渉して得られる干渉信号のことであり、インターフェログラムデータとはそのような干渉信号を検出器で検出して得られたデータである。通常は、干渉信号をある程度広い波長域の光について形成して検出するので、インターフェログラムデータは、複数の波長についての干渉信号強度が合成されたものである。尚、二つの光とは、厳密に表現すれば二つの光波ということになるが、簡略化にして単に二つの光という。
代表的なインターフェログラムは、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)のように光路差を連続的に変化させて得られる干渉信号である。周知のように、ある光について光路差を連続的に変化させて得られたインターフェログラムデータは、その光のスペクトルをフーリエ変換したものに相当している。FTIRでは、この原理を利用して赤外域の分光測定を行い、対象物の吸収特性等を調べて対象物の分析を行っている。
連続的に変化する光路差の形成については、光路差を時間的に変化させる場合と空間的に変化させる場合とがある。前者の代表的な例はマイケルソン干渉計であり、多くのFTIRもこの方式を採用している。即ち、光路長が固定である第一の光路に対し、可動ミラーにより光路長を可変とした第二の光路を設定し、光を二つに分けて一方を第一の光路に沿って進ませ、他方を第二の光路に沿って進ませた後、両者を重ね合わせて干渉させる。そして、可動ミラーを連続的に移動(スキャン)することで光路差を時間的に連続して変化させながら干渉信号(インターフェログラム)を検出器で検出する。検出器からは、可動ミラーのスキャンに伴って強度が変化する信号が出力されるが、干渉信号の強度は二つの光の波長と光路差に応じて決まるから、出力される信号強度の時間的変化は光路差の変化によってもたされたものであり、干渉信号の強度変化を表している。これは、インターフェログラムデータそのものであり、フーリエ変換をすることで元の光のスペクトルが得られる。
尚、通常は、フーリエ変換はコンピュータによって行われるので、インターフェログラムデータはデジタル化される。そして、コンピュータが離散フーリエ変換を行うことで、スペクトルがデジタルデータとして算出される。
特開平02-268234号公報
このようなインターフェログラムデータの取得と、フーリエ変換によるスペクトルの算出において、ベースラインの補正が必要になる場合がある。この課題は、上記のような位相差を時間的に連続して形成するのではなく、空間的に連続して形成する場合に特に顕著となる。
インターフェログラムを得る際に、位相差を空間的に連続して変化させる典型的な例は、マルチチャンネル型のフーリエ変換分光計の場合である。マイケルソン干渉計を採用したフーリエ変換分光計は、モノチャンネル型の分光計といえる。即ち、検出器は、ある時刻では1個のデータ(以下、要素データという。)を出力する。可動ミラーのスキャンに伴って検出器からは順次要素データが出力され、多数の要素データから成るインターフェログラムデータとなる。干渉光のビームパターンは小さく、検出器はその小さいビームパターンをカバーする小さい受光面を有するものである。要素データの出力周期は、検出器の信号払い出し周期に依存したものとなる。
一方、マルチチャンネル型のフーリエ変換分光計では、レンズ等を含む光学系によってある広い領域に二つの光を照射して干渉させ、その強度を検出する。より具体的には、その広い領域において二つの光の光路差が順次異なる(空間的に異なる)ようにして干渉させてその強度を検出する。このため、検出器は、その広い領域をカバーするものであり、リニアイメージセンサのような多数のピクセルが配列されたアレイ検出器が採用される。ピクセルは光電変換を行う素子であり、セルとも呼ばれる。そして、アレイ検出器に入射する二つの光は、入射するピクセルごとに光路差が異なるものとされる。つまり、ピクセルが並んだ順序で空間的に連続して光路差が変化するものとされる。このため、要素データの数は、ピクセルの数と基本的に一致する。
このようなマルチチャンネル型のフーリエ変換分光計では、二つの光をレンズ等を含む光学系によって広い領域に照射して干渉させるので、どうしても光学系に依存した強度分布(照度分布)が現れてしまう。つまり、アレイ検出器の各ピクセルには、干渉の結果として出現する強弱とは別に光学系による照度分布としての強弱が出現する。このため、アレイ検出器から出力されるインターフェログラムデータは、干渉の結果として検出された強弱(いわゆる干渉縞)に加え、照度分布を示す強弱を含んだものとなってしまう。
このようなインターフェログラムデータをフーリエ変換してスペクトルを算出すると、本来の干渉の結果としての強弱以外の強弱も含んでフーリエ変換するため、スペクトルの算出精度が著しく低下してしまう。したがって、照度分布に起因する強弱をインターフェログラムデータから除去する補正をベースライン補正の一環として行うことが必要となっている。
この出願の発明は、上記のようなインターフェログラムデータにおける課題を解決するために為されたものであり、インターフェログラムデータにおけるベースライン補正を可能にする実用的な方法を提供するとともに、そのような方法を実施することで干渉を利用した分光測定の精度、信頼性をより高めることを目的としている。
上記課題を解決するため、この出願のインターフェログラムデータ補正方法及びインターフェログラムデータ補正方法は、光路差のある二つの光を検出器に入射させるとともにその光路差を空間的又は時間的に変化させることで得られたインターフェログラムデータを補正する方法及びプログラムである。インターフェログラムデータは、空間又は時間で区切られた多数の要素データの集まりである。
このインターフェログラムデータ補正方法は、検出器で検出された光に基づく信号の強弱のうち、光の干渉以外の要因による光の強弱のデータである非干渉強度データを取得する非干渉強度データ取得ステップと、非干渉強度データ取得ステップで取得された非干渉強度データをインターフェログラムデータから取り除くことでインターフェログラムデータを補正する補正ステップとを備えている。
また、インターフェログラムデータ補正プログラムは、検出器に入射する光の強弱のうち、光の干渉以外の要因による光の強弱のデータである非干渉強度データを取得する非干渉強度データ取得モジュールと、非干渉強度データ取得ステップで取得された非干渉強度データをインターフェログラムデータから取り除くことでインターフェログラムデータを補正する補正モジュールとを備えている。
また、上記方法及びプログラムにおいて、非干渉強度データの取得は、インターフェログラムデータを形成する1個の要素データに対して空間的又は時間的に連続する所定の個数の要素データを選択して平均値を算出して当該1個の要素データの値をその平均値で更新する処理を全要素データについて行う移動平均を含み得る。
また、上記方法及びプログラムにおいて、非干渉強度データの取得は、移動平均サブステップを複数回行うことで行われ得る。
また、複数回行われる移動平均サブステップは、選択される要素データの前記所定の個数は異なる個数であり得る。
また、複数回行われる移動平均サブステップは、選択される要素データの前記所定の個数が最も大きな個数Nである移動平均サブステップと、選択される要素データの前記所定の個数がN/2よりも大きい個数である移動平均サブステップとを含み得る。
また、前記所定の個数は、検出器に入射する光のうち検出器が感度を有する最も長い波長の光が形成する干渉縞の周期に対応した数よりも1少ない数以上であり得る。
また、移動平均は、連続する所定の個数の要素データについて重み付けをした上で平均値を算出するものであり得る。
また、選択される前記所定の個数の要素データにおいて、前記1個の要素データよりも前にある要素データの数に対する後にある要素データの数の差が±1以下であり得る。
また、前記複数回行われる移動平均サブステップのうちの偶数回の移動平均サブステップにおける前記所定の個数は偶数であり、ある偶数個の要素データを選択して行う移動平均では、前記1個の要素データよりも前にある要素データの数に対する後にある要素データの数との差は1であり、別の偶数個の要素データを選択して行う移動平均では、前記1個の要素データよりも前にある要素データの数に対する後にある要素データの数との差は-1であり得る。
上記課題を解決するため、この出願の分光測定装置は、対象物に照射される光を出射する光源と、光照射された対象物からの光を受光する位置に配置された検出器と、光照射された対象物からの光を二つの光に分け、それら光の光路差を空間的又は時間的に変化させながら検出器に入射させることで検出器の受光面にインターフェログラムを形成する干渉光学系と、検出器から出力されるインターフェログラムデータを処理する演算手段とを備えている。そして、演算手段は、上記インターフェログラムデータ補正プログラムを実行するとともに、インターフェログラムデータ補正プログラムが実行されたインターフェログラムデータをフーリエ変換してスペクトルを算出するプロセッサを備えている。
また、上記課題を解決するため、この出願の分光測定方法は、光源からの光を対象物に照射する照射ステップと、光照射された対象物からの光を検出器で受光する受光ステップと、光照射された対象物からの光を二つの光に分け、それら光の光路差を空間的又は時間的に変化させながら検出器に入射させることで検出器の受光面にインターフェログラムを形成する干渉ステップと、検出器から出力されるインターフェログラムデータを処理する演算ステップとを備えている。そして、演算ステップは、上記インターフェログラムデータ補正方法を実行するとともに、インターフェログラムデータ補正方法が実行されたインターフェログラムデータをフーリエ変換してスペクトルを算出するステップである。
以下に説明する通り、この出願のインターフェログラムデータ補正方法又はインターフェログラムデータ補正プログラムによれば、検出器からのインターフェログラムデータについて、干渉縞を潰すことで得た非干渉強度データをキャンセルするという手法で補正がされるので、補正の精度が高くなる。この際、特許文献1のように2回の測定をする必要がないので、測定の能率が低下することがない。
また、非干渉強度データを得る際、移動平均を複数回行うことによって干渉縞を潰すようにすると、得られる非干渉強度データの精度が高くなり、結果的にベースライン補正後のインターフェログラムデータの精度も高くなる。
また、異なる要素データの個数で移動平均処理を繰り返すようにすると、異なる周期の干渉縞をより多く潰せるようになる。このため、インターフェログラムがある程度広い帯域の光によるものであっても干渉縞を十分に潰せるようになり、補正後のインターフェログラムデータの精度が高くなる。この点で、より信頼性の高い分光測定装置及び分光測定方法となる。
異なる要素データの個数を選定する際、最大個数より小さい個数を、最大個数の半分より大きい個数とすると、より多くの異なる周期の干渉縞が潰せるようになる。このため、さらに信頼性の高い分光測定装置及び分光測定方法となる。
また、移動平均の際の要素データの個数が、検出器が感度を有する最も長い波長の光が形成する干渉縞の周期に対応した数よりも1少ない数以上であると、長波長の光について干渉縞の潰しが不十分になることがなく、この点で補正の精度が高くなる。
また、移動平均の際、重み付けをすることでより多くの異なる周期の干渉縞を潰すことができる。このため、補正の精度がさらに高くなる。
また、移動平均において平均値を算出するために参照する対象データを前後に均等な配分とすると、非干渉強度データの横ずれ歪みが発生しにくい。このため、補正の精度がさらに高められる。
また、この出願の分光測定装置又は分光測定方法によれば、このような効果を奏するインターフェログラムデータ補正を行った上でスペクトルを算出するので、スペクトルの精度が高くなる。このため、高速、高信頼性の分光測定装置、分光測定方法が提供される。
実施形態の分光測定装置の概略図である。 空間的に連続した位相差の変化について示した概略図である。 記憶部に記憶された主要なプログラムについて示した概略図である。 インターフェログラムの例とゼロ詰めについて示した概略図である。 照度分布データ取得モジュールの一例を示した概略図である。 第一の移動平均サブモジュールの概略構成を示したフローチャートである。 第一の移動平均サブモジュールの動作について模式的に示した図である。 図3に示すデータについて、ベースライン補正がされる様子を示した概略図である。 移動平均処理を繰り返す際の要素データの個数についての比較実験の結果を示す図である。 重み付け移動平均について示した概略図である。 移動平均処理を繰り返す際に生じる横ずれ歪みについて示した概略図である。 図11に示す横ずれ歪みが生じてしまう移動平均とそれを解消する移動平均について示した概略図である。 実施形態のインターフェログラムデータ補正方法及びインターフェログラムデータ補正プログラムの効果について確認した実験の結果を示す図である。 実施形態のインターフェログラムデータ補正方法及びインターフェログラムデータ補正プログラムの効果について確認した実験の結果を示す図である。
次に、この出願の発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
具体的なインターフェログラムデータ補正方法の説明の前に、ベースライン補正が適用されるインターフェログラムデータを取得する実施形態の分光測定装置について説明する。図1は、実施形態の分光測定装置の概略図である。
ベースライン補正が適用される実施形態の分光測定装置は、マルチチャンネル型のフーリエ変換分光測定装置となっている。具体的に説明すると、図1に示すように、この分光測定装置は、光源1と、干渉光学系2と、アレイ検出器3と、演算手段4とを備えて構成されている。干渉光学系2は、光源1からの光を二つに分離してそれらの光の光路差を空間的に連続して変化させる光学系となっている。
光源1は、分光測定に必要な波長域の光を出射するものであり、例えば近赤外域で分光測定を行うのであれば、近赤外域の光を出射するものが使用される。光源1としては、ハロゲンランプやLEDのようなインコヒーレント光源の場合もあるし、半導体レーザのようなある程度のコヒーレンスを持った光源の場合もある。
光源1からの光の照射位置に対象物Sを保持するため、この実施形態で受け板5が設けられている。この実施形態では、対象物Sの透過光を分光測定するので、受け板5は測定波長域において透明な材質となっている。
干渉光学系2は、光源1からの光が照射された対象物Sからの光を干渉させてアレイ検出器3の受光面においてインターフェログラムが形成されるようにする光学系である。この実施形態では、干渉光学系2は、シアリング干渉を行うものとなっており、対象物Sからの光を互いに平行な二つの光路に沿って進む二つの光に分離し、それらを干渉させる光学系となっている。したがって、干渉光学系2は、分離素子と、合波素子とを含んでいる。
分離素子には、この実施形態では、サバール板21が使用されている。サバール板21は、偏光プリズムの一種で、二枚の複屈折結晶板211で形成されている。各複屈折結晶板211は、板厚方向が光学軸に対して45度の傾きを持つように切断されており、両者の厚さは厳密に等しいものとなっている。そして、互いの光学軸が直交するよう重ね合わせて接合される。
サバール板21は、45度の角度の直線偏光光を二つの異なる角度の直線偏光光L1,L2に分離する性質を持っている。分離した直線偏光光L1,L2は、それぞれ0度(紙面と平行)、90度(紙面に垂直)の向きの偏光であり、互いに平行な光路に沿って進む。
図1に示すように、サバール板21の入射側には偏光子22が配置されており、サバール板21の出射側には検光子23が配置されている。偏光子22は、対象物Sから出た無偏光の光を直線偏光光に変換する偏光素子が使用される。例えば、方解石等の結晶系の偏光板、偏光フィルムや染料系偏光板のような有機系の偏光板、さらにはワイヤーグリッド偏光板のようなグリッド偏光板等が偏光子22として使用できる。
検光子23は、この実施形態では、分離された二つの直線偏光光の偏光の向きを揃える目的で配置されている。この実施形態では、検光子23も一種の偏光板であり、直線偏光光L1,L2に対して、±45度の方向の直線偏光光を透過させる姿勢で配置されている。このため、検光子23を透過すると、光L1,L2は、互い平行なずれた光路に沿って進みつつも偏光の方向が揃った直線偏光光となって進むようになっている。
合波素子としては、この実施形態では、投影レンズ24が使用されている。投影レンズ24は、分離素子により分離した二つの光がアレイ検出器3の受光面上に結ぶよう設けられたレンズである。二つの光は、対象物Sの一点から出た光であり、偏光子22、サバール板21、検光子23を経ることで同じ方向の直線偏光光となっているため、受光面上で干渉してインターフェログラムを形成する。尚、インターフェログラムを形成する投影レンズ24は、フーリエ変換を行うレンズであるともいえるので、フーリエレンズと呼び得る。
図2は、空間的に連続した位相差の変化について示した概略図である。前述したようにサバール板21からは互いに平行な光路に沿って進む二つの光が出射するが、いま、二つの光の組が三つあるとし、これらを光L11とL21,光L12とL22,光L13とL23とする。光L11とL21、光L12とL22、光L13とL23は、サバール板21からの出射角がそれぞれ等しい。但し、組と組との関係では出射角は異なっており、光軸Aから離れるほど出射角は大きい。
これらの光L11~L13,L21~L23において、各二つの光は光路差を持ってサバール板21を出射している。光路差Δdは、サバール板21を出射した際の出射角と、サバール板21を出射して平行に進む際の光路のずれ幅に比例する。光路のずれ幅は一定であり、出射角は光軸Aから離れるに従って大きくなるから、二つの光L11,L21の光路差をΔd1、光L12,L22の光路差をΔd2、光L13,L23の光路差をΔd3とすると、Δd1<Δd2<Δd3となる。尚、この例では、L11,L21は光軸A上の進んできた光が分離された光であるので、Δd1=0である。
これらの光11~L13,L21~L23は、合波素子としての投影レンズ24によりそれぞれアレイ検出器3上の受光面の一点に結ぶ。つまり、アレイ検出器3の各ピクセル31についてみると、光軸Aに近いピクセル31ほど光路差は小さく、光軸Aから離れるに従って順次大きくなる。これは、光路差を空間的に連続して変化させていることになり、その変化する光路差の各々において光を結ばせて各ピクセル31に入射させている。各ピクセル31において結ぶ光は対象物Sから出た一つの光を分離したものであり、したがって良好に干渉する。このため、各ピクセル31が並んでいる順に光電変換結果を出力させると、それはインターフェログラムデータということになる。
演算手段4としては、この実施形態では汎用PCが使用されている。アレイ検出器3と演算手段4の間にはAD変換器6が設けられており、アレイ検出器3から出力される信号はAD変換器6を介して演算手段4に入力される。この信号は、アレイ検出器3で検出された光に基づく信号である。
演算手段4は、プロセッサ41や記憶部(ハードディスク、メモリ等)42を備えている。図3は、記憶部42に記憶された主要なプログラムについて示した概略図である。記憶部42には、アレイ検出器3からのインターフェログラムデータを処理して測定結果を得る測定プログラム43が実装されている。測定プログラム43の他、記憶部42には、実施形態のインターフェログラムデータ補正プログラム44、補正されたインターフェログラムデータに対してフーリエ変換を含む演算処理を行ってスペクトルを算出するスペクトル算出プログラム45、吸収スペクトル算出プログラム46等が実装されている。インターフェログラムデータ補正プログラム44やスペクトル算出プログラム45、吸収スペクトル算出プログラム46は、測定プログラム43のサブルーチンであり、測定プログラム44からから呼び出されて実行される。
次に、実施形態のインターフェログラムデータ補正方法について説明する。以下の説明は、インターフェログラムデータ補正プログラムの実施形態の説明でもある。
まず、インターフェログラムデータの例とゼロ詰め(zero-padding)について、図4を使用して説明する。図4は、インターフェログラムの例とゼロ詰めについて示した概略図である。
図4(1)には、ある対象物Sについて上記のようなマルチチャンネル型のフーリエ変換分光装置により得られたインターフェログラムデータが示されている。図4(1)において、横軸は各要素データを特定する番号(要素データ番号)である。縦軸は、その要素データの値、即ち測定値である。例えば、アレイ検出器3の受光面を形成するピクセルがn個あるとすると、各ピクセルの番号は1番~n番ということになる。各要素データは各ピクセルにおける光電変換の結果であるから、要素データも1番~n番まであるということになる。つまり、図4(1)は、1番~n番までの各ピクセルの光電変換値をグラフ化したものといえる。
図4(1)に示すように、各ピクセルの光電変換値は、非常に細かい多数の強弱を含んでいる。強弱は干渉縞を表しており、このデータがインターフェログラムデータであることを示している。
このインターフェログラムデータに対してフーリエ変換を行うことでスペクトルが得られるのであるが、通常、まずゼロ詰め(zero-padding)処理が行われる。ゼロ詰めは、一連のデータ列の前後にゼロのデータ列を連結する処理であり、フーリエ変換を高速化したりフーリエ変換後のデータ表示間隔を細かくしたりするために行われる。この例では、1番~n番までのピクセルの前後にあらにピクセルがあるものとみなして値がゼロの要素データを必要個数付加する処理である。この例では、前後にm個のゼロの要素データを付加している。
この場合、図4(1)に示す生データに対してゼロ詰めを直接行ってしまうと、図4(2)に示すように、極端な凹凸のあるデータになってしまう。これは、生データにはバックグラウンドノイズ(バックグラウンド光がアレイ検出器3に入射することによる光電変換値)等が含まれているためである。これを取り除くため、いわゆるオフセット補正が通常は行われる。例えば、測定値全体の平均値を算出し、それをゼロにする値をオフセット値とする。そして、各要素データの値からオフセット値の分を一律に減算する。この結果、図4(3)に示すように、オフセットされたインターフェログラムデータが得られる。
オフセットを行うと、ゼロ詰めにおけるゼロとの差が小さくなるので、オフセットをしない場合に比べてフーリエ変換によるスペクトルの精度は高められる。しかしながら、図4(3)に破線の丸で示すように、本来の要素データとゼロ詰めした要素データとの境界部分で比較的大きな差異(段差)が生じてしまう。フーリエ変換の際には、横軸を波数に変換して行うが、この部分が高次成分のノイズとなって現れてしまう。
この問題は、インターフェログラムデータに照度分布の影響が含まれているからである。つまり、図4(3)において破線の丸で示す部分は、全体として光電変換値が増加しているが、これは、アレイ検出器3においてある照度分布をもって光は入射しており、この部分は照度が高くなっている部分となっている。この照度分布の影響は、オフセット補正では除去することができない。
照度分布による測定値の強弱は、アレイ検出器3の受光面全体で見た長周期の強弱であるといえる。このような長周期の強弱の上に干渉縞という非常に短い周期の強弱が重畳した状態となっている。このため、より精度の高いフーリエ変換を行ってスペクトルを正確に算出するには、照度分布という長周期の強弱を除去する必要がある。実施形態のインターフェログラムデータ補正方法は、これを実現する方法となっている。
次に、実施形態のインターフェログラムデータ補正方法を実現するインターフェログラムデータ補正プログラム44について詳しく説明する。前述したように、インターフェログラムデータ補正プログラム44は、演算手段4としての汎用PCに実装されている。
図3に示すように、インターフェログラムデータ補正プログラム44は、インターフェログラムデータ取得モジュール441と、照度分布データ取得モジュール442と、補正モジュール443とを含んでいる。
インターフェログラムデータは、前述したように個々の要素データの集まりであるので、インターフェログラムデータ補正プログラム44が実行されるインターフェログラムデータを、以下、対象データセットという。インターフェログラムデータ補正プログラム44は、対象データセットが引数として渡されて実行される。インターフェログラムデータ取得モジュール441は、引数として渡された対象データセットを変数(配列変数)に一時的に格納する。その上で、照度分布データ取得モジュール442、補正モジュール43が順次実行される。
照度分布データ取得モジュール442は、インターフェログラムデータから干渉縞のデータを削除することで照度分布データを取得する。つまり、ベースライン補正の目的は、インターフェログラムデータから照度分布に起因した強弱をキャンセルすることであるが、照度分布を直接的に除去するのは困難であるため、まず干渉縞のデータを除去し、残ったデータが照度分布のデータであるとする。そのようにして求めた照度分布のデータを元のインターフェログラムデータから減算することで、照度分布をキャンセルしている。つまり、不要なものを削除するために、本来必要なもの(干渉縞)を削除して不要なものだけにし、それを元のデータから削除する、という逆転の発想に立脚するものとなっている。
より具体的に説明すると、干渉縞のデータは干渉による光電変換値の強弱であるため、干渉縞の周期で平均すると強弱はゼロになる(干渉縞が潰せる)。干渉による強弱が無くなった値は、その箇所における照度分布を示しているから、この値を連ねていけば、全体の照度分布が取得できる。
そして、干渉縞の周期は、事前に予測が可能である。即ち、干渉縞の周期は、合波素子としての投影レンズ24の焦点距離と光の波長にそれぞれ比例し、分離素子で分離した二つの光の光路間の距離に反比例する。したがって、形成されるインターフェログラムにおける干渉縞の周期は、これらのパラメータにより予め計算により予測可能である。このため、予測される干渉縞の周期に応じて平均値を算出する空間領域の大きさを予め定め、その空間領域で移動平均を順次算出しておくことで、干渉縞の分のデータはすべてキャンセルすることができる。実施形態のインターフェログラムデータ補正プログラム44は、このような思想的前提に立っている。
尚、空間領域の大きさは、あまり大きくないようにすべきである。大きくすると、照度分布に起因した強弱も潰してしまうことになり、取得される照度分布の精度が低下する。この結果、ベースライン補正の精度も低下してしまう。つまり、空間領域を小さくし、移動平均の繰り返し回数を多くすることが、この技術思想を実施する上で重要になってくる。
これらを考慮し、実施形態のインターフェログラムデータ補正プログラム44において、照度分布データ取得モジュール442は、1個の要素データについて連続する所定個数の要素データを選択して移動平均を求め、その値をその1個の要素データの値として更新するとともに、このような処理を全要素データについて行う処理(以下、移動平均処理という。)を行うサブモジュールを備えている。以下、このサブモジュールを移動平均サブモジュールという。この実施形態では、照度分布データをより正確に算出するため、移動平均処理を複数回行うようになっており、複数の移動平均サブモジュールが設けられている。そして、各移動平均処理では所定個数は異なる個数となっており、異なる個数の要素データを選択して移動平均処理が行われる。
より具体的な一例について、図5を参照して説明する。図5は、照度分布データ取得モジュール442の一例を示した概略図である。図5に示すように、この実施形態では、移動平均サブモジュールが三つ設けられている。第一の移動平均サブモジュール442aは、4個の連続した要素データを選択して移動平均を順次行うモジュールであり、第二の移動平均サブモジュール442bは、5個の連続した要素データを選択して移動平均を順次行うモジュールであり、第三の移動平均サブモジュール442cは、6個の連続した要素データを選択して移動平均を順次行うモジュールである。尚、理解のため、三つのサブモジュールが存在するように説明しているが、実際には、一つのサブモジュールに対して異なる変数を与えて繰り返し実行させるため、サブモジュールとしては一つだけの場合もある。
移動平均処理の一例について、図6及び図7を参照して説明する。図6は、第一の移動平均サブモジュール442aの概略構成を示したフローチャートである。図7は、第一の移動平均サブモジュール442aの動作について模式的に示した図である。
第一の移動平均サブモジュール442aに対しては、インターフェログラムを構成する多数の要素データのセットが引数として渡される。図6及び図7に示すように、第一の移動平均サブモジュール442aは、まず、1番目と2番目の要素データを読み込み、平均値を算出してその値で1番目の要素データの値を更新(上書き)する。次に、1番目~3番目の要素データを読み込み、平均値を算出してその値で2番目の要素データの値を更新する。次に、1番目~4番目の要素データを読み込み、平均値を算出してその値で3番目の要素データの値を更新する。以後は、同様であり、k番目の要素データについて、k-2~k+1番目の要素データの平均値でk番目の要素データを更新する。最後の要素データがn番目であるとすると、n-1番目~n番目の要素データの平均値でn番目の要素データを更新する。図7には、具体的な数値の例とともに各データの更新の様子が示されている。
第二の移動平均サブモジュール442b、第三の移動平均サブモジュール442cも、平均を算出する要素データの個数が5個、6個と異なるのみであり、基本的には第一の移動平均サブモジュール442aと同様である。第二の移動平均サブモジュール442bは、k-2~k+2番目の要素データの平均値でk番目の要素データを更新する。第三の移動平均サブモジュール442cは、k-2番目~k+3番目の要素データの平均値でk番目の要素データを更新する。図7において、矢印は、要素データの更新の際に平均値を求める参照先を示している。
尚、第二の移動平均サブモジュール442bに対しては、第一の移動平均サブモジュール442aが実行された後の対象データセットが渡される。したがって、第二の移動平均サブモジュール442bは、4個ずつでの移動平均が行われた各要素データについて、さらに5個ずつでの移動平均をして値を更新する処理が行われる。また、第三の移動平均サブモジュール442cに対しては、第二の移動平均サブモジュール442bが実行された後の対象データセットが渡される。したがって、第三の移動平均サブモジュール442cは、4個ずつ及び5個ずつでの各移動平均が行われた各要素データについて、さらに6個ずつでの移動平均をして値を更新する処理が行われる。
第三の移動平均サブモジュール442cが終了すると、戻り値としての対象データセットが、算出された照度分布データということになる。したがって、照度分布取得モジュール442は、この対象データセットを戻り値としてインターフェログラムデータ補正プログラム44に出力する。図3に示すように、インターフェログラムデータ補正プログラム44は、次に、補正モジュール443を実行する。
補正モジュール443は、変数に格納しておいた元のインターフェログラムデータを呼び出し、各要素データについて照度分布データを減算する演算を行って各要素データを更新する処理を行う。即ち、要素番号1の要素データについて要素番号1の補正済データ(第三の移動平均サブモジュール442c実行後のデータ)を減算する演算を行い、新しい要素番号1の値とする。他の要素データについても同様である。この処理を全ての要素データについて行うと、補正モジュール43は終了である。補正モジュール443の戻り値は、補正されたインターフェログラムデータであり、インターフェログラムデータ補正プログラム44の実行結果である。
次に、上記のようなインターフェログラムデータ補正プログラム44によりインターフェログラムデータが補正される様子を図8を参照して説明する。図8は、図4に示すデータについて、ベースライン補正がされる様子を示した概略図である。
図8(1)は、図4(1)同様の補正前のインターフェログラムデータ(元データ)を示す。図8(2)は第一の移動平均サブモジュール442aの実行直後の対象データセットを示し、図8(3)は第三の移動平均サブモジュール442cの実行直後の対象データセットを示す。移動平均サブモジュールを重畳的に実行するにつれて干渉縞が潰されていくのが判る。図8(3)に示す第三の移動平均サブモジュール442c実行後の対象データセットは、照度分布データであり、このデータを図8(1)の元データから減算した結果が、図8(4)に示されている。この図8(4)が、ベースライン補正後のインターフェログラムデータである。図8(4)と図4(3)とを比べると判るように、オフセット補正ではキャンセルできなかった照度分布依存のノイズ分が、実施形態のベースライン補正ではキャンセルできている。
このようにしてベースライン補正が行われたインターフェログラムデータに対してゼロ詰めを行った場合、ゼロ詰めの境界部分における値の変動は実質的になくなるか又は非常に小さくなるので、横軸を波数に変換してフーリエ変換を行った際の高次成分ノイズは抑制される。
尚、図8から解る通り、実施形態のベースライン補正では、オフセット補正を予め行う必要はない。オフセット補正的な補正も併せて行われることになるからである。
バックグラウンドノイズを除去する方法として、特許文献1では、二つの検光子を用い、それら検光子における透過偏光光の方向を揃えた場合のデータと直交させた場合のデータの差分を取る方法が提案されている。このような方法も可能であるが、測定が2回必要になってしまい、能率が低下する。また、特許文献1の第4図(c)に示されたデータをよく見ると、ベースライン上に傾きが残っており、ベースライン補正としては十分ではないことが確認できる。実施形態のインターフェログラムデータ補正プログラム44によれば、測定は一回で済むので、能率が低下することはなく、また照度分布の影響によるベースラインの傾きを十分に除去することができる。このため、高速、高精度のフーリエ変換分光の技術が提供される。
前述した説明から解るように、実施形態のインターフェログラムデータ補正方法及びインターフェログラムデータ補正プログラム44において、干渉縞を十分に潰すことが照度分布データを精度良く得ることにつながり、精度の良い照度分布データを得ることが高品質のインターフェログラムデータを得ることにつながる。したがって、干渉縞を十分に潰すことが重要になるが、このためには、図8に示すように、対象データセット全体に対する移動平均を繰り返すことが好ましい。この際、要素データの個数が同じ状態で移動平均を繰り返すよりも、前述した例のように異なる要素データの個数で移動平均を繰り返すことが好ましい。この点を確認した実験の結果について、図9を参照して以下に説明する。図9は、移動平均処理を繰り返す際の要素データの個数についての比較実験の結果を示す図である。
この実験では、干渉縞のシミュレーションとして正弦波のデータを作成し、これに対して上記のように移動平均を順次行って干渉縞がどのように潰せるかを確認した。この結果を示したのが図9である。この実験では、アレイ検出器3のピクセルの単位で正弦波の周期を変えて実験を行った。ピクセルの単位とは、周期がピクセル2個分、3個分、・・・であるが、小数も含むので、2ピクセル分、2.1ピクセル分、2.2ピルセル分、・・・ということである。図7の横軸は、このようなピクセル単位の正弦波の周期となっている。
図9の縦軸は、振幅減衰率となっている。これは、元の振幅に対してどの程度減衰したかを示す比率であり、干渉縞がどの程度まで潰せるかに相当している。
図9において、◇プロットは上記実施形態のように4個、5個、6個の移動平均を順次行った際の振幅減衰率を示し、□プロットは6個の移動平均を3回行った際の振幅減衰率を示す。
図9から判るように、4個、5個、6個の移動平均を順次行った場合には、2ピクセル分、3ピクセル分、4ピクセル分、5ピクセル分、6ピクセル分で振幅減衰率がゼロになっており、この周期の干渉縞が完全に潰せることを示している。一方、6個の移動平均を3回行った場合、2ピクセル分、3ピクセル分、6ピクセル分では振幅減衰率がゼロになっているが、4ピクセル分、5ピクセル分ではゼロになっておらず、干渉縞は潰せないことが判る。
このような結果は、移動平均処理を繰り返す際には異なる要素データの個数で行うことが好ましいことを示している。図9は、要素データ個数の約数のピクセル数のところで干渉縞が潰せることを示しているから、より多くの箇所で干渉縞を潰すには、なるべく約数が共通しない要素データ個数で移動平均処理を繰り返すことが好ましいということになる。
上記説明では、移動平均処理を繰り返す際の要素データ個数は整数であるように説明したが、重み付けを導入することで、擬似的に非整数の要素データ個数の移動平均を行うことも可能である。以下、この点について図10を参照して説明する。図10は、重み付け移動平均について示した概略図である。
実施形態のインターフェログラムデータ補正方法及びインターフェログラムデータ補正プログラム44において、重み付け移動平均を行う場合、連続した所定個数の要素データについて適宜係数を設定する。係数の設定により、要素データの個数が実効的に小数点の個数とすることができる。この一例が、図10に概念的に示されている。
例えば、図10に示すように、5個の移動平均を行う場合、5個目の要素データについて0.1の係数を設定する。この場合、5個目の要素データについては0.1倍されて平均が算出される。このようにすると、4.1個分ずつ移動平均したのと等価となる。つまり、1個の要素データ=1個のピクセルからの出力であるから、1個の要素データに0.1を掛けるということは、ピクセルの大きさが1/10であるとして扱うのと等価である。即ち、4.1個分のピクセルずつ移動平均を行っていることになる。実際には、連続した5個の要素データについて1より大きい係数や1より小さい係数をきめ細かく設定し、実効的に要素データ個数が4.1個になるようにする。
前述したように干渉縞の周期は予測できるものの、波長と焦点距離にそれぞれ比例し、二つの光の光路のずれ幅に反比例する量であり、ピクセル幅の倍数にきっちり一致する量という訳ではない。このため、予測される干渉縞の周期に合わせて移動平均の際の要素データ個数を微調節できるようにしておくことが好ましい。重み付け移動平均は、予測される干渉縞の周期に応じてキメ細かく移動平均を行うことを可能にするものであり、干渉縞がより潰せるようになり、得られる照度分布データの精度がより高くなる。このため、より良質なベースライン補正となる。
このような移動平均の際の要素データの個数は、より大きい方が約数の数も多くなるので、好ましいといえる。しかしながら、前述したように、移動平均の際の要素データの個数を大きくしていくと、その分だけ大きな受光領域でデータを平均化していることになるので、照度分布のデータも平均化してしまっている度合いが高くなってしまう。つまり、照度分布の強弱も消していってしまうので、得ようとして照度分布のデータの正確性(忠実度)が低下してしまう。したがって、移動平均の際の要素データの個数はあまり大きくしないようにすることが好ましい。
また、干渉縞の周期は、入射する光の波長に比例するから、入射する最も長い波長の光が最も長い周期の干渉縞を形成する。したがって、移動平均処理の際の要素データの個数は、最も長い干渉縞の周期に対応した数以上とすべきである。この場合、発明者の研究によると、最も長い干渉縞の周期に対応した数よりも少し少ない要素データ個数の移動平均でも干渉縞は十分に潰せることが判明している。実用的には、1程度少ない数でも、干渉縞を十分に潰すことができる。言い換えると、移動平均処理を行う際の要素データの個数の最大値は、最も長い干渉縞の周期に対応した数よりも1少ない数以上とすることが好ましいということになる。
尚、干渉縞の周期は、前述したように投影レンズ24の焦点距離、光路ずれ幅、波長によって予め計算により予測可能である。計算により予測する構成以外でも、例えば、補正前のインターフェログラムデータを解析すれば、生じている干渉縞の周期が判るので、そのうち最も大きな周期に対応した数を移動平均の際の要素データの個数として設定すれば良い。「対応した数」とは、周期をピクセルのピッチで割った数であり、上記のように小数の場合もある。
また、「最も長い波長の光」とは、アレイ検出器3に入射し得る波長の光であってアレイ検出器3が感度を有する波長の光ということになる。「最も長い波長の光」は、光源1が発する光のうち最も長い波長の光ということになるし、アレイ検出器3がそれより短い波長において感度の上限を有する場合、その上限の波長の光が「最も長い波長の光」ということになる。また、長波長の光を予めフィルタでカットして対象物Sに照射する場合がある。例えば、長波長の光に対して吸収率の高い対象物Sの場合、吸収によって温度が限度以上に上昇してしまうので、フィルタでカットする。このような場合には、フィルタの遮断波長の光が「最も長い波長の光」ということになる。このような点を考慮して、移動平均の際の要素データ個数の最大値を選定する。
尚、移動平均処理の際の要素データ個数は、より大きい方が約数の数も多くなるので、好ましいといえる。しかしながら、移動平均処理の際の要素データの個数を大きくしていくと、その分だけ大きな受光領域でデータを平均化していることになるので、照度分布のデータも平均化してしまっている度合いが高くなってしまう。つまり、照度分布の強弱も消していってしまうので、得ようとして照度分布のデータの正確性(忠実度)が低下してしまう。したがって、前述したように実際には上限が存在しており、得ようとしている照度分布のデータの正確性を考慮して要素データ個数の最大値が選定される。
また、上記のようにして要素データ個数の最大値を選定した後、異なる要素データ個数を選定することになるが、この場合には、半分より大きい数を選定することが好ましい。例えば、要素データ個数の最大値として8を選定した場合、その半分の4と8との間の数を別の移動平均における要素データ個数として選定する。半分の4個分の周期の干渉縞は要素データ個数8の移動平均で潰せるからであり、それよりも大きな数の方が約数が多い可能性が高いからである。この場合、8個分に近い周期や4個分に近い周期の干渉縞は、8個での移動平均で潰せる場合が多いので、間で一つ選ぶとすればその中間の6を選定することが好ましいということになる。つまり、最大値を選定した後、その3/4に近い整数(前述したように小数でも良い)を次の要素データ個数として選定すると良いということである。
また、移動平均を行う際には、更新対象ピクセルが中心になるようにして行うことが好ましい。以下、この点について説明する。
移動平均を順次行って干渉縞を潰していく際、特に考慮せずにそのまま移動平均を行うと、更新対象の要素データに対して次に(後に)連続する所定個数の要素データを選択し、それらの平均値で更新することになる。これは、更新対象の要素データが、選択された要素データ群の端に位置している移動平均ということになるが、このようなやり方の移動平均処理を繰り返すと、取得される照度分布データが正しいものから横ずれしたように歪んでしまう現象が生じる。この点を確認した実験の結果が、図11に示されている。図11は、移動平均処理を繰り返す際に生じる横ずれ歪みについて示した概略図である。また、図12は、図11に示す横ずれ歪みが生じてしまう移動平均とそれを解消する移動平均について示した概略図である。
図11に結果を示す実験では、一定のパターンで強弱が生じている細かな波が長周期の湾曲した線上に沿って重畳されたデータを干渉縞のシミュレーションとしてソフトウェア的に生成し、これに対して移動平均処理による縞潰しを行った。移動平均処理において、要素データの個数は3とした。最初は、図12(A)に示すように、要素番号1の要素データについて要素番号1~3の要素データの平均値で更新し、要素番号2の要素データについては要素番号2~4の要素データの平均値で更新し、・・・というように、通常の移動平均のやり方で縞潰しを行った。このような移動平均は、自身がそれに続く他の2個の要素データとの平均値で更新されるので、更新対象ピクセルが端に位置しているといえる。このような移動平均を3回繰り返した際の結果が、図11に示されている。
図11に示すように、干渉縞に相当する細かな強弱は無くなっているが、全体に横にシフトしたように歪んでおり、正しいベースラインにはなっていない。この原因は、更新対象の要素データが中心に位置していないためである。つまり、各移動平均において、常に下側の二つの要素データと合算した平均値で更新されるためであり、言い換えれば、更新対象のピクセルがピクセル列の端に位置しているためである。要素データ全体に対して1回のみの移動平均であれば歪みは小さいが、移動平均処理を繰り返すと、歪みは顕著になる。
この問題を解消するには、更新対象の要素データ(ピクセル)が中心になるようにして前後の要素データと合算を行い、その平均値で更新を行うようにすれば良い。上記の例では、図12(B)に示すように、一つ上の要素データと一つ下の要素データとの平均値で更新すれば良い。この場合、端部の要素データについては、対応する要素データが一部ないので、ある要素データだけで平均値を算出して更新する。
このような更新対象要素データを中心にした移動平均により縞潰しの結果が、図11に合わせて示されている。図11に示すように、更新対象要素データが中心になるようにすると、歪みはなく縞潰しができることが判る。図7に示すように、実施形態の方法及びプログラムでは、この構成が採用されている。
尚、移動平均の際の要素データ数が偶数の場合、完全に中心にすることはできないが、移動平均処理を繰り返す際に要素データ個数が偶数である移動平均を偶数回行うことで、実質的に更新対象要素データを中心にした移動平均処理となる。即ち、図7に示す例のように、要素データ数が4,5,6の3回の移動平均を行う場合、要素データ数4の移動平均では、更新対象要素データは、前の二つの要素データと後の一つの要素データとの平均値が算出されて更新される。また、要素データ数6の移動平均では、前の二つの要素データと後の三つの要素データとの平均値が算出されて更新される。一般的に表現すれば、ある偶数個の要素データを選択して行う移動平均処理では更新対象要素データよりも前の要素データの数に対する後の要素データの数との差を1とし、別の偶数個の要素データを選択して行う移動平均処理では、更新対象要素データよりも前の要素データの数に対する後の要素データの数との差を-1とするということである。このようにすると、更新対象要素の中心からのずれが全体として補償されるので、歪みのない縞潰しができる。
次に、このようなベースライン補正を実際に行った上でフーリエ変換を行った例について説明する。図13及び図14は、実施形態のインターフェログラムデータ補正方法及びインターフェログラムデータ補正プログラム44の効果について確認した実験の結果を示す図である。
図13には、実験に用いたインターフェログラムデータが示されている。図13(A)は、あるマルチチャンネルフーリエ変換分光計において取得されたオフセット補正後のインターフェログラムデータを示す。オフセットは、全体の平均値を算出し、それをゼロにする値をオフセット値として各要素データに適用することで行った。同様に、図13(A)の横軸は要素データ番号であり、縦軸は測定値(任意単位)である。
図13(A)に示すように、このデータはベースラインが上側に突出した状態となっており、照度分布の影響が顕著に現れている。この状態は、オフセット補正をしても解消されない。
図13(B)には、オフセット補正される前のインターフェログラムデータに対して実施形態のベースライン補正を適用した結果が示されている。この例では、同様に、要素データ個数4の移動平均処理、要素データ個数5の移動平均処理、要素データ個数6の移動平均処理を順次行って照度分布データを取得し、それをキャンセルすることでベースライン補正を行った。図13(B)に示すように、補正後のベースラインはゼロの値のライン上にきれいに乗っており、精度良くベースライン補正ができたことが判る。
図14(A)には、図13(A)に示すオフセット補正のみのインターフェログラムデータをフーリエ変換して得たスペクトルが示されている。図14(B)には、図13(B)に示す実施形態のベースライン補正を適用したインターフェログラムデータをフーリエ変換して得たスペクトルが示されている。
図14(A)に示すように、オフセット補正のみのインターフェログラムデータでスペクトルを算出した場合、高次成分のノイズが顕著に現れており、測定精度が低いことを示している。一方、図14(B)に示すように、実施形態のベースライン補正を適用した場合、ノイズは全体的に低く抑えられている。
次に、上記のようなインターフェログラムデータ補正プログラム44を備えている実施形態の分光測定装置の全体の動作について説明する。以下の説明は、分光測定方法の実施形態の説明でもある。
実施形態の分光測定装置は、対象物Sの分光分析のために使用される装置であり、測定に先立って対象物Sが受け板5に載置される。光源1からの光が照射光学系により対象物Sに照射される。光の一部は対象物Sを透過し、干渉光学系2に達する。
干渉光学系2内の分離素子(サバール板21)は、光を二つの光に分離し、互いに平行な光路に沿って進ませる。これらの光は、合波素子としての投影レンズ24によりアレイ検出器3の受光面上で結ぶ。これらの光は、元は一つの光であるので、受光面上で良好に干渉し、インターフェログラムを形成する。
この結果、アレイ検出器3からはインターフェログラムデータが出力され、AD変換器6を介して演算手段4に入力される。演算手段4では、まずインターフェログラムデータ補正プログラム44が実行され、ベースライン補正がされたインターフェログラムデータが取得される。次に、スペクトル算出プログラム45が実行され、アレイ検出器3に入射した光のスペクトルが算出される。その後、吸収スペクトル算出プログラム46が実行される。吸収スペクトル算出プログラム46は、スペクトル算出プログラム45が算出したスペクトルを、記憶部42に記憶されている参照用スペクトルと比較し、吸収スペクトルを算出する。吸収スペクトルは、測定結果としてディスプレイへの表示等が行われる。
このような実施形態の分光測定装置及び分光測定方法によれば、アレイ検出器3からのインターフェログラムデータについて、干渉縞を潰すことで得た照度分布データをキャンセルするという手法でベースライン補正をし、そのように補正をしたインターフェログラムデータを使用してスペクトルを算出するので、スペクトルの精度が高くなる。また、特許文献1のように2回の測定をする必要がないので、測定の能率が低下することがない。このため、高速、高信頼性の分光測定装置及び分光測定方法となる。
また、照度分布データを得る際、移動平均を複数回行うことによって干渉縞を潰しているので、得られる照度分布データの精度が高くなり、結果的にベースライン補正後のインターフェログラムデータの精度も高くなる。このため、より信頼性の高い分光測定装置及び分光測定方法となる。
また、異なる要素データの個数で移動平均処理を繰り返すので、異なる周期の干渉縞をより多く潰せるようになる。このため、インターフェログラムがある程度広い帯域の光によるものであっても干渉縞を十分に潰せるようになり、補正後のインターフェログラムデータの精度が高くなる。この点で、より信頼性の高い分光測定装置及び分光測定方法となる。
異なる要素データの個数を選定する際、最大個数より小さい個数は、最大個数の半分より大きい個数であるので、より多くの異なる周期の干渉縞が潰せるようになる。このため、さらに信頼性の高い分光測定装置及び分光測定方法となる。
また、移動平均の際の要素データの個数が、アレイ検出器3に入射する光のうちアレイ検出器3が感度を有する最も長い波長を考慮して選定されているので、長波長の光について干渉縞の潰しが不十分になることがなく、この点で信頼性の高い分光測定装置及び分光測定方法となる。
また、移動平均の際の要素データの個数が、アレイ検出器3に入射する光のうちアレイ検出器3が感度を有する最も長い波長を考慮して選定されているので、長波長の光について干渉縞の潰しが不十分になることがなく、この点でさらに信頼性の高い分光測定装置及び分光測定方法となる。
さらに、移動平均の際、重み付けをすることで要素度データの個数を細かく調節することも可能なので、より多くの異なる周期の干渉縞を潰すことができる。この点でさらに信頼性の高い分光測定装置及び分光測定方法を提供することができる。
また、移動平均において平均値を算出するために参照する対象データを前後に均等な配分としているので、照度分布データの横ずれ歪みが発生しにくい。このため、ベースライン補正の精度がさらに高められ、より信頼性の高い分光測定装置及び分光測定方法が提供される。
尚、上記分光測定では最終的に吸収スペクトルを算出したが、これは一例であり、反射スペクトルを測定する場合もあり、散乱スペクトルを測定する場合もある。
また、分光測定の用途としては、各種材料分析の他、製造された製品の検査を用途とすることもあり得る。例えば、医薬品のような特に高い品質が要求される製品については、全数検査が好ましい場合が多い。実施形態の分光測定装置、分光測定方法によると、高速且つ高信頼性の吸収スペクトル測定が可能である。したがって、医薬品のような特に高い品質が要求される製品の全数検査に、実施形態の装置、方法を利用することが考えられる。具体的には、良品である製品の吸収スペクトルを予め測定しておき、それとの比較によって製品の良否を判断する検査を行う。
尚、上記分光測定装置では、干渉光学系2は分離素子としてサバール板21を使用した系であったが、三角光路コモンパス干渉光学系のような他の干渉光学系が使用されることもある。
また、マルチチャンネル型のフーリエ変換分光測定装置は、光路差を空間的に変化させることでインターフェログラムを得るものであるが、光路差を時間的に変化させることでインターフェログラムを得るフーリエ変換分光装置であっても、本願発明は実施可能である。この代表的な例は、マイケルソン干渉計を採用したフーリエ変換分光装置である。時間的に光路差を変化させる干渉計において、時間の経過とともに干渉の影響ではなく検出器(アレイ検出器である必要はない)上の照度が変化してしまう場合、本願発明におけるベースライン補正が特に有効である。例えば、ミラーをスキャンさせる際に光学系の要因又は機構的な要因によって検出器上の照度が変化してしまう場合が想定できる。
上記の場合には、インターフェログラムデータから除去すべき強弱データは照度分布データではなく、干渉以外の要因によって生じる光電変換強度の時間的変動(強弱)ということになる。また、前述した実施形態のように位相差を空間的に連続させて変化させる場合にも、照度分布以外の要因で生じる光強度の強弱を除去する必要が生じる場合がある。例えば、アレイ検出器3において、経時変化や製造上のバラツキ等から各ピクセルにおいて感度特性が一様でない場合がある。このような要因が存在する場合にも、干渉以外の要因で強弱が発生しているから、補正によって除去する必要がある。これらを包括すると、上述したインターフェログラムデータ補正は、干渉以外の要因による光の強弱のデータである非干渉強度データを取得し、それをインターフェログラムデータから除去する補正であるといえる。
1 光源
2 干渉光学系
21 サバール板
22 偏光子
23 検光子
24 投影レンズ
3 アレイ検出器
4 演算手段
44 インターフェログラムデータ補正プログラム

Claims (14)

  1. 光路差のある二つの光を検出器に入射させるとともにその光路差を空間的又は時間的に変化させることで得られたインターフェログラムデータを補正するインターフェログラムデータ補正方法であって、
    インターフェログラムデータは、空間又は時間で区切られた多数の要素データの集まりであり、
    検出器で検出された光に基づく信号の強弱のうち、光の干渉以外の要因による信号の強弱のデータである非干渉強度データを取得する非干渉強度データ取得ステップと、
    非干渉強度データ取得ステップで取得された非干渉強度データをインターフェログラムデータから取り除くことでインターフェログラムデータを補正する補正ステップと
    を備えており、
    前記非干渉強度データ取得ステップは、前記インターフェログラムデータを形成する1個の要素データに対して空間的又は時間的に連続する所定の個数の要素データを選択して平均値を算出して当該1個の要素データの値をその平均値で更新する処理を全要素データについて行う移動平均サブステップを含んでおり、
    前記非干渉強度データ取得ステップは、前記移動平均サブステップを複数回行うステップであり、
    前記複数回行われる移動平均サブステップにおいて、選択される要素データの前記所定の個数は異なる個数であることを特徴とするインターフェログラムデータ補正方法。
  2. 前記複数回行われる移動平均サブステップは、選択される要素データの前記所定の個数が最も大きな個数Nである移動平均サブステップと、選択される要素データの前記所定の個数がN/2よりも大きい個数である移動平均サブステップとを含むことを特徴とする請求項記載のインターフェログラムデータ補正方法。
  3. 前記所定の個数は、前記検出器に入射する光のうち前記検出器が感度を有する最も長い波長の光が形成する干渉縞の周期に対応した数よりも1少ない数以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインターフェログラムデータ補正方法。
  4. 前記移動平均サブステップは、前記連続する所定の個数の要素データについて重み付けをした上で平均値を算出するステップであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のインターフェログラムデータ補正方法。
  5. 選択される前記所定の個数の要素データにおいて、前記1個の要素データよりも前にある要素データの数に対する後にある要素データの数の差は±1以下であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のインターフェログラムデータ補正方法。
  6. 前記複数回行われる移動平均サブステップのうちの偶数回の移動平均サブステップにおける前記所定の個数は偶数であり、
    ある偶数個の前記要素データを選択して行う前記移動平均サブステップでは、前記1個の要素データよりも前にある要素データの数に対する後にある要素データの数との差は1であり、
    別の偶数個の前記要素データを選択して行う前記移動平均サブステップでは、前記1個の要素データよりも前にある要素データの数に対する後にある要素データの数との差は-
    1であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のインターフェログラムデータ補正方法。
  7. 光路差のある二つの光を検出器に入射させるとともにその光路差を空間的又は時間的に変化させることで得られたインターフェログラムデータを補正するインターフェログラムデータ補正プログラムであって、
    インターフェログラムデータは、空間又は時間で区切られた多数の要素データの集まりであり、
    検出器で検出された光に基づく信号の強弱のうち、光の干渉以外の要因による信号の強弱のデータである非干渉強度データを取得する非干渉強度データ取得モジュールと、
    非干渉強度データ取得ステップで取得された非干渉強度データをインターフェログラムデータから取り除くことでインターフェログラムデータを補正する補正モジュールと
    を備えており、
    前記非干渉強度データ取得モジュールは、前記インターフェログラムデータを形成する1個の要素データに対して空間的又は時間的に連続する所定の個数の要素データを選択して平均値を算出して当該1個の要素データの値をその平均値で更新する処理を全要素データについて行う移動平均サブモジュールを含んでおり、
    前記非干渉強度データ取得モジュールは、前記移動平均サブモジュールを複数回行うモジュールであり、
    前記複数回行われる移動平均サブモジュールにおいて、選択される要素データの前記所定の個数は異なる個数であることを特徴とするインターフェログラムデータ補正プログラム。
  8. 前記複数回行われる移動平均サブステップは、選択される要素データの前記所定の個数が最も大きな個数Nである移動平均サブステップと、選択される要素データの前記所定の個数がN/2よりも大きい個数である移動平均サブステップとを含むこととを特徴とする請求項記載のインターフェログラムデータ補正プログラム。
  9. 前記所定の個数は、前記検出器に入射する光のうち前記検出器が感度を有する最も長い波長の光が形成する干渉縞の周期に対応した数よりも1少ない数以上であることを特徴とする請求項7又は8記載のインターフェログラムデータ補正プログラム。
  10. 前記移動平均サブモジュールは、前記連続する所定の個数の要素データのうちの最初の要素データ又は最後の要素データについて重み付けをした上で平均値を算出するモジュールであることを特徴とする請求項7乃至9いずれかに記載のインターフェログラムデータ補正プログラム。
  11. 選択される前記所定の個数の要素データにおいて、前記1個の要素データよりも前の要素データの数に対する後の要素データの数の差は±1以下であることを特徴とする請求項7乃至10いずれかに記載のインターフェログラムデータ補正プログラム。
  12. 前記複数回行われる移動平均サブステップのうちの偶数回の移動平均サブステップにおける前記所定の個数は偶数であり、
    ある偶数個の前記要素データを選択して行う前記移動平均サブモジュールでは、前記1個の要素データよりも前の要素データの数に対する後の要素データの数との差は1であり、
    別の偶数個の前記要素データを選択して行う前記移動平均サブモジュールでは、前記1個の要素データよりも前の要素データの数に対する後の要素データの数との差は-1であることを特徴とする請求項7乃至11いずれかに記載のインターフェログラムデータ補正プログラム。
  13. 対象物に照射される光を出射する光源と、
    光照射された前記対象物からの光を受光する位置に配置された検出器と、
    前記対象物と前記検出器の間にあって光照射された前記対象物からの光を二つの光に分け、それら光の光路差を空間的又は時間的に変化させながら前記検出器に入射させることで前記検出器の受光面にインターフェログラムを形成する干渉光学系と、
    前記検出器から出力されるインターフェログラムデータを処理する演算手段と
    を備えた分光測定装置であって、
    前記演算手段は、請求項7乃至12いずれかに記載のインターフェログラムデータ補正プログラムを実行するとともに、インターフェログラムデータ補正プログラムが実行されたインターフェログラムデータをフーリエ変換してスペクトルを算出するプロセッサを備えていることを特徴とする分光測定装置。
  14. 光源からの光を対象物に照射する照射ステップと、
    光照射された対象物からの光を検出器で受光する受光ステップと、
    光照射された対象物からの光を二つの光に分け、それら光の光路差を空間的又は時間的に変化させながら検出器に入射させることで検出器の受光面にインターフェログラムを形成する干渉ステップと、
    検出器から出力されるインターフェログラムデータを処理する演算ステップとを備えた分光測定方法であって、
    演算ステップは、請求項1乃至6いずれかに記載のインターフェログラムデータ補正方法を実行するとともに、インターフェログラムデータ補正方法が実行されたインターフェログラムデータをフーリエ変換してスペクトルを算出するステップであることを特徴とする分光測定方法。
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