JP7214588B2 - 魚卵入りソースの製造方法 - Google Patents

魚卵入りソースの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7214588B2
JP7214588B2 JP2019136939A JP2019136939A JP7214588B2 JP 7214588 B2 JP7214588 B2 JP 7214588B2 JP 2019136939 A JP2019136939 A JP 2019136939A JP 2019136939 A JP2019136939 A JP 2019136939A JP 7214588 B2 JP7214588 B2 JP 7214588B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fish roe
sauce
roe
fish
aqueous liquid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019136939A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021019515A (ja
Inventor
真美 勝野
知之 藤井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nisshin Seifun Welna Inc
Original Assignee
Nisshin Seifun Welna Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nisshin Seifun Welna Inc filed Critical Nisshin Seifun Welna Inc
Priority to JP2019136939A priority Critical patent/JP7214588B2/ja
Publication of JP2021019515A publication Critical patent/JP2021019515A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7214588B2 publication Critical patent/JP7214588B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Seeds, Soups, And Other Foods (AREA)

Description

本発明は魚卵入りソースに関し、詳細には、保存性と魚卵に特有の風味及び粒状感とが高いレベルで両立した魚卵入りソースに関する。
魚卵入りソースは、喫食時の魚卵の粒状感と海鮮特有の濃厚な風味とが同時に楽しめる人気の食品であり、近年は、明太子やタラコなどの魚卵が入った各種ソース、例えばドレッシング、ディップソース、パスタソースなどが、和風ソースの一ジャンルとして普及している。
魚卵入りソースは、保存や流通のために加熱殺菌処理を施して保存性を高める必要があるところ、加熱殺菌処理における加熱温度を高温にすると、保存性は向上し得るものの、特に魚卵の風味が低下するという問題があった。そこで従来、魚卵入りソースの加熱温度をできるだけ低くする代わりに、加熱以外の他の微生物制御手段、例えば静菌剤の添加、ソースの水分活性の低下等の手段を組み合わせることで、魚卵入りソースの保存性を向上させる手法が用いられている。しかしながら、このような従来手法を用いても、魚卵の風味が低下してしまう場合が少なくない。
魚卵入りの保存食品において魚卵の風味や粒状感を高め得る技術が提案されている。例えば特許文献1には、喫食時に魚卵の粒状感が強く感じられる加熱殺菌済み魚卵入りソースの製造方法として、魚卵入りソースを冷蔵又は冷凍した後に加熱殺菌処理する方法が記載されている。特許文献2には、ソース原料と魚卵と寒天とを混合後に加熱殺菌処理する方法が記載されている。
またフィチン酸は、強いキレート作用を持ち、抗酸化剤や防腐剤として知られる物質である。このフィチン酸の食品に対する効果も検証されており、例えば特許文献3には、フィチン酸が乳製品の褐変を防止することが記載されている。また特許文献4には、食塩の代替物として食品に添加される塩化カリウム等の金属塩化物に起因する苦みやえぐみを抑制するために、金属塩化物を含有する食品にフィチン酸を配合することが記載されている。特許文献3及び4には、フィチン酸を魚卵に適用することは記載されておらず、自ずと、フィチン酸の魚卵に対する作用も記載されていない。
特開2011-254741号公報 特開2011-254742号公報 特開昭63-291533号公報 特開2019-41726号公報
従来公知の魚卵入りソースの製造方法では、保存性と魚卵の粒状感とを両立させることが難しく、一方を向上させると他方が低下してしまうのが実情である。また、本発明者らの検証では、魚卵入りソースの加熱殺菌処理における加熱温度を低くすると、魚卵の風味が高くなる一方で、魚卵の粒状感が低下してしまうという問題があることが確認された。保存性と魚卵に特有の粒状感及び風味とが高いレベルで両立した魚卵入りソースは未だ提供されていない。
本発明は、魚卵の風味と粒状感に優れ、加熱殺菌処理してもその優れた特性が維持され得る魚卵入りソースの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、魚卵入りソースの加熱殺菌処理を高温で行うことによる魚卵の風味の低下、該加熱殺菌処理を低温で行うことによる魚卵の粒状感の低下の問題について種々検討した結果、魚卵入りソースの原料である生魚卵を、フィチン酸を含む水性液で前処理した後、その前処理済み生魚卵を加熱処理することが、斯かる問題の解決に有効であるとの知見を得た。
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、魚卵入りソースの製造方法であって、(1)フィチン酸を含む水性液を調製する工程、(2)生魚卵に前記水性液を接触させる工程、及び(3)前記水性液を接触させた前記生魚卵を加熱処理して、熱処理魚卵を得る工程を備える、魚卵入りソースの製造方法である。
本発明の製造方法によれば、魚卵の風味がよく、また魚卵特有の粒状感が高い魚卵入りソースが得られる。また、本発明の製造方法によれば、静菌剤の添加などの、加熱以外の他の微生物制御手段を用いずとも、加熱殺菌処理するだけで経時的な風味の低下が少なく長期保存が可能な魚卵入りソースが得られる。つまり本発明の製造方法によれば、魚卵の風味及び粒状感並びに保存性に優れる高品質の魚卵入りソースを、格別特殊な加工工程を要せずに簡単に効率よく製造することができる。
本発明の魚卵入りソースの製造方法は、少なくとも下記工程(1)~(3)を備え、必要に応じて更に下記工程(4)を備える。以下、各工程について説明する。
[工程(1):フィチン酸を含む水性液を調製する工程]
フィチン酸は、別名イノシットヘキサリン酸と称されるリン酸化合物で、フィチン(フィチン酸のカルシウム、マグネシウム塩)を遊離の酸の形態としたものであり、メソイノシットのヘキサリン酸である。フィチンは植物中に広く存在する。本発明ではフィチン酸として、公知の方法により合成したものを用いてもよく、公知の方法により植物などから抽出したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
水性液におけるフィチン酸の含有量は、該水性液の全質量に対して、好ましくは0.075~1質量%、より好ましくは0.08~0.8質量%、更に好ましくは0.085~0.5質量%である。水性液においてフィチン酸の含有量が少なすぎると、フィチン酸による作用効果が得られにくくなるおそれがあり、逆にフィチン酸の含有量が多すぎると、最終的に得られる魚卵入りソースにおいて、酸味が強くなりすぎる、魚卵が変性し又は凝集する等のおそれがある。ここでいう「魚卵の凝集」とは、複数の魚卵の粒どうしが強く結合し、魚卵入りソースの喫食の際に容易に分離しなくなる状態をいう。
水性液は、少なくともフィチン酸及び水を含有する。水としては、清水等を用いることができる。水性液は、フィチン酸及び水以外の他の成分を含有してもよい。例えば水性液は、製造目的物である魚卵入りソースと同等の調味がなされたものでもよく、あるいは、例えば出汁のような、基本的な調味のみがなされたものでもよい。水性液がこのような調味液であると、次の工程(2)において生魚卵に調味液の風味を付与することが可能となるため、しっかりとした味付けされた魚卵を含む魚卵入りソースが得られる。水性液に含有可能なフィチン酸及び水以外の他の成分としては、例えば、植物油、動物油、硬化油等の各種油脂類;食塩、醤油、食酢等の各種調味料;各種香辛料;小麦粉、ゼラチン等の各種増粘剤、各種乳化剤、牛乳、卵液等が挙げられ、魚卵入りソースの種類等に応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[工程(2):生魚卵に水性液を接触させる工程]
工程(2)で使用する生魚卵は、製造目的物である魚卵入りソースの「魚卵」の原料であり、非加熱の魚卵である。生魚卵(非加熱の魚卵)をソースに用いることで、海鮮特有の濃厚な風味が得られるようになる。ここでいう「非加熱の魚卵」とは、加熱による変性が生じていない魚卵であり、「加熱されていない魚卵」の他、「加熱されていてもその加熱による変性が生じていない魚卵」が包含される。例えば、生魚卵がその取り扱い時や流通時などにおいて上限50℃程度の雰囲気温度の環境に一定時間置かれた場合や、生魚卵が上限50℃程度の品温の容器や設備等と接触した場合などは、通常、その生魚卵に加熱変性は生じないので、斯かる場合の生魚卵は非加熱と推定される。
本発明では生魚卵として、一般的にソース原料として用い得る生魚卵を特に制限なく用いることができ、例えば、タラ、サケ、マス、ニシン、ボラ、飛魚、シシャモ等の生魚卵、あるいはこれらの生魚卵を調味料等で味付け加工した加工生魚卵が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。加工生魚卵としては、例えば、タラコ、明太子、トビッコ、数の子、イクラ等が挙げられる。また、生魚卵としては、卵巣膜で包まれた塊状のものを用いることもできるが、魚卵の粒状感を得ると共に生臭さを低減する観点から、1粒1粒がバラバラのいわゆるバラ卵(バラコ)を用いることが好ましい。
魚卵入りソースを喫食したときの魚卵の粒状感を一層高いものとする観点から、生魚卵の平均粒子径は、好ましくは0.1~10mm、より好ましくは0.3~6mmである。ここでいう「生魚卵の平均粒子径」は、工程(1)で調製した水性液に接触させる前の生魚卵の平均粒子径を意味する。
工程(2)では、生魚卵を工程(1)で調製した水性液に接触させる。生魚卵を水性液に接触させる方法は特に限定されず、例えば、水性液中に生魚卵を浸漬する方法、生魚卵に水性液を噴霧するなどして振りかける方法が挙げられる。水性液中に生魚卵を浸漬する場合、必要に応じ、水性液中に生魚卵が浸漬された状態で該水性液を攪拌してもよい。作業中に生魚卵が破裂するなどして破損することを防止する観点から、水性液中に生魚卵を浸漬する方法が好ましい。水性液中に生魚卵を浸漬する場合、生魚卵の全体に水性液(フィチン酸)を接触させる観点から、水性液の量は、生魚卵の湿重量で100質量部に対して、100~1000質量部程度が好ましい。
本発明者らの検証によれば、工程(2)すなわち生魚卵のフィチン酸による前処理を行わずに、単に、生魚卵とフィチン酸とを含む混合物を、該混合物の品温が75℃以上となるような比較的高温の条件で加熱しただけでは、フィチン酸による魚卵に対する所定の作用効果が十分に得られない。この事実が意味するところは、斯かるフィチン酸による作用効果を十分に得るためには、生魚卵を高温で加熱する工程の前に、生魚卵にフィチン酸を付着させる工程が必要ということである。工程(2)は、この点を踏まえて採用されたものであり、フィチン酸の生魚卵への付着工程と言うことができる。
このような工程(2)の役割に鑑みると、生魚卵と工程(1)で調製した水性液(フィチン酸を含有する水性液)との接触時間は、数秒程度の短時間よりも長いことが好ましい。前記接触時間は、水性液中に生魚卵を浸漬する場合にはその浸漬時間であり、また、生魚卵に水性液を噴霧するなどして振りかける場合には、水性液を振りかけた状態で放置する時間である。前記接触時間は、生魚卵の種類や水性液におけるフィチン酸の含有量等によって適宜調整すればよく特に制限されないが、生魚卵として前述したものを使用し、且つ水性液におけるフィチン酸の含有量が前述した範囲にある場合には、好ましくは3分~3時間程度、より好ましくは10~50分程度である。
工程(2)において、生魚卵に接触させる水性液の温度は特に制限されず、例えば、室温程度(25℃程度)でもよく、室温よりも高温でもよいが、次の工程(3)における加熱処理の加熱温度(加熱処理対象物の品温)よりも低温とすることが好ましい。本発明者らの検証によれば、水性液として前述した調味液を用いる場合に、水性液(調味液)の温度を室温よりも高温、例えば40℃程度にすると、生魚卵に調味液の風味を一層確実に付与することが可能となる。生魚卵に接触させる水性液の温度は、好ましくは30~70℃程度、より好ましくは35~55℃程度である。
[工程(3):水性液を接触させた生魚卵を加熱処理して熱処理魚卵を得る工程]
前述したように工程(2)は、生魚卵にフィチン酸を付着させる工程であるところ、続く工程(3)で表面にフィチン酸が付着した生魚卵を加熱処理することで、フィチン酸による魚卵に対する所定の作用効果が十分に得られるようになる。これは、加熱処理前において表面にフィチン酸が付着していた生魚卵を加熱処理することで、生魚卵の表面を形成する卵膜が熱変性し、それによってフィチン酸の魚卵に対する付着がより強固になるためと推察される。
工程(3)における加熱処理対象物は、少なくとも工程(2)において水性液を接触させた生魚卵を含み、更には、工程(2)で用いた水性液を含み得る。例えば、工程(2)において水性液中に生魚卵を浸漬する方法を採用した場合には、斯かる方法により水性液を接触させた生魚卵の他に、該生魚卵が浸漬された水性液の一部又は全部を工程(3)における加熱処理対象物としてもよい。
工程(3)における加熱処理対象物は、生魚卵及び水性液以外の他の成分を含んでいてもよく、具体的には例えば、前述した水性液に含有可能な他の成分(各種油脂類、各種調味料等)の他、魚卵以外の他の具材(固形物)を含んでいてもよい。この他の具材としては、例えば、畜肉類、魚卵を除く魚介類、野菜類、キノコ類、麩などの生地類を例示できる。つまり、工程(3)の加熱処理は、前述したように、基本的にはフィチン酸と魚卵との一体化を促進させるための工程であるが、製造目的物である魚卵入りソースの調味等を兼ねてもよく、その場合には、工程(3)の終了をもって(その後の調味工程を必要とせずに)、調味も含めた魚卵入りソースの製造が完了する場合があり得る。
工程(3)の加熱処理は、加熱処理対象物の品温が該加熱処理対象物の常温(典型的には25℃)よりも高温となる処理であればよいが、工程(2)における生魚卵の品温、具体的には、工程(2)で生魚卵に接触させた水性液の温度よりも高温となる条件で実施することが好ましい。例えば、工程(2)で水温40℃の水性液中に生魚卵を浸漬させた場合、続く工程(3)では、加熱処理対象物(魚卵又は水性液)の品温が40℃超となる条件で、加熱処理対象物を加熱処理することが好ましい。また、水性液の存在下で魚卵を加熱処理する場合は、魚卵の加熱ムラを防止する観点から、該水性液を攪拌しながら加熱処理することが好ましい。なお、ここでいう「加熱処理対象物の品温」は、基本的には、加熱処理対象物の必須含有成分である「生魚卵ないし熱処理魚卵」(以下、「魚卵」ともいう。)の品温であるが、魚卵の他に前述した水性液などの液体を含む場合には、該液体の品温としてもよい。魚卵及び水性液等の液体を含む混合物を加熱処理すれば、該混合物の構成成分の品温は実質的に同じになるからである。
工程(3)の加熱処理に関し、本発明者らの検証では、加熱処理対象物の品温が低温であるほど、魚卵の生風味が強くなるが、該品温が75℃未満では、魚卵らしい粒状感が得られにくくなる傾向がある。一方で、加熱処理対象物の品温が高温であるほど、魚卵の粒状感は高まるが、生風味は弱くなる。以上を考慮すると、工程(3)の加熱処理は、加熱処理対象物(魚卵又は水性液)の品温が、好ましくは75℃以上、より好ましくは78~97℃、更に好ましくは80~95℃となる条件で実施することが好ましい。
工程(3)の加熱処理において、加熱処理対象物の品温が所定温度(好ましくは75℃以上)に達した後は、その所定温度を少なくとも3分以上維持することが好ましい。なお、斯かる加熱処理の後は、得られた熱処理魚卵を、該加熱処理における加熱処理対象物(魚卵)の品温に比べて低温又は高温の条件で調理を行うことは差し支えない。
工程(3)の終了後、必要に応じ、ソースの調味、魚卵以外の他の具材の投入等、フィチン酸の魚卵への固定に関わる作業以外の作業(魚卵入りソースを製造する場合に通常実施する作業)を実施することで、目的の魚卵入りソースが得られる。魚卵入りソースにおけるフィチン酸の含有量は、該ソースの全質量に対して、好ましくは0.005~0.07質量%、より好ましくは0.01~0.06質量%である。また、魚卵入りソースにおける魚卵(熱処理魚卵)の含有量は、該ソースの全質量に対して、好ましくは4~70質量%、より好ましくは7~50質量%、更に好ましくは10~30質量%である。また、魚卵入りソースに魚卵以外の他の具材を含有させる場合、該他の具材の含有量は、該ソースの全質量に対して、好ましくは30質量%以下程度である。
[工程(4):魚卵入りソースを加熱殺菌処理する工程]
工程(4)では、工程(3)を経て得られた魚卵入りソース、すなわち工程(3)の終了をもって完成した魚卵入りソース、又は工程(3)の終了後に更に調味等の作業を実施することで完成した魚卵入りソースを、所定温度で加熱することで殺菌処理する。本発明の魚卵入りソースの製造方法において、工程(4)は必須ではないが、工程(4)を実施することで魚卵入りソースの保存性が向上し、更には、魚卵(熱処理魚卵)の粒状感が一層高まるというメリットがある。従来技術では、魚卵入りソースを加熱殺菌処理する場合に、該ソースを比較的高温で加熱処理する方法、静菌剤を併用しつつ比較的低温で加熱処理する方法の何れでも、魚卵の風味が低下するという問題が生じていたが、本発明によれば前述したとおり、生魚卵を加熱する前にフィチン酸で前処理するため、加熱殺菌処理に起因して生じ得る魚卵の風味低下等の不都合を抑制しつつ、加熱殺菌処理による効果(保存性の向上効果、魚卵の粒状感の向上効果)を十分に得ることができ、静菌剤などを用いなくても長期保存可能な高品質の魚卵ソースが得られる。
工程(4)の加熱殺菌処理は、完成品の魚卵入りソースの品温が、好ましくは100~140℃、より好ましくは110~130℃となる条件で実施することが好ましい。加熱殺菌処理は常法により行うことができ、例えば、公知のオートクレーブ殺菌処理やレトルト殺菌処理を適用することができる。例えば、工程(4)の加熱殺菌処理を公知のレトルト殺菌処理によって実施する場合、その処理条件として、処理対象物である魚卵入りソースの品温110~130℃が5~40分間維持される条件を例示できる。
本発明の製造方法の製造目的物である魚卵入りソースにおける「ソース」の種類は特に制限されず、例えば、ミートソース、ホワイトソース、クリームソース、カルボナーラソース、オイルソース、トマトソース、バターソース、醤油ソース等の和風ソース等が挙げられる。これらの中では、魚卵の風味とよく調和するとの観点から、ホワイトソース、クリームソース、和風ソースが好ましい。本発明の製造方法によって製造された魚卵入りソースは、例えば、シチュー、ハンバーグ、パスタ料理、米飯類に適用でき、特にパスタソースとして好適である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1~8〕
以下の手順で魚卵入り和風ソースを製造した。まず、酒、塩、醤油及び味醂を用いて調味を行った水を鍋に入れ、更に、該水にフィチン酸を添加し溶解させて、フィチン酸含有量が下記表1~2に示す範囲にある水性の調味液を調製した(工程(1))。次に、調製した調味液200gを別の鍋に量りとり、該調味液の品温が40℃となるように加温して、バラタラコ(生魚卵:平均粒子径1.2mm)100gを鍋に加え、該調味液の品温40℃を維持しつつ攪拌しながら5分間混合した(工程(2):調味液と生魚卵との接触処理)。次に、鍋を強火で加熱し、調味液の品温が85℃に達したところで弱火にし、調味液(魚卵)の品温が75℃以上の状態を3分以上維持した(工程(3):前記接触処理における処理対象物の加熱処理)。その後、調味液に水、醤油を添加して味をととのえ、更に、溶き片栗粉を加えてとろみ付けを行って、魚卵入り和風ソースを製造した。
〔比較例1〕
前記工程(1)において、調味液にフィチン酸を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして魚卵入り和風ソースを製造した。
〔比較例2~7〕
前記工程(1)において、フィチン酸に代えて他の酸(酢酸、クエン酸又はアスコルビン酸)を用いた以外は、実施例3,7と同様にして魚卵入り和風ソースを製造した。
〔実施例9~16〕
前記工程(3)において、加熱温度を下記表3のように変更した以外は、実施例3と同様にして魚卵入り和風ソースを製造した。
〔実施例17~21〕
前記工程(3)の後、完成した魚卵入り和風ソースを耐熱性容器に封入し、該ソースの品温が下記表4に示す範囲となる条件で加熱殺菌処理を行った以外は、実施例4と同様にして魚卵入り和風ソースを製造した。
〔参考例1〕
フィチン酸を使用しない以外は前記工程(1)と同様にして、フィチン酸非含有の水性の調味液を調製した。次に、該調味液を加熱し、品温が85℃に達したところで、該調味液に溶き片栗粉を添加してとろみをつけた後、火を止めて品温が50℃まで低下した時点で、該調味液にバラたらこ(生魚卵:平均粒子径1.2mm)を加えて均一に攪拌し、魚卵入り和風ソースを製造した。
〔参考例2〕
参考例1と同様の方法で製造した魚卵入りソースを耐熱性容器に封入し、該ソースの品温120℃が30分間維持される条件で加熱殺菌処理して、魚卵入り和風ソースを製造した。
なお、参考例1及び2は、従来のたらこ入り和風ソースの製造方法の具体例である。参考例1によれば、たらこ(魚卵)の風味が良好な魚卵入り和風ソースが得られる。また参考例2は、参考例1と同様の方法で製造した魚卵入りソースを典型的な条件で加熱殺菌処理したものであり、参考例2によれば、たらこ(魚卵)の粒状感が良好な魚卵入り和風ソースが得られる。これを踏まえて、後述する試験例で使用する「魚卵の風味の評価基準」では、参考例1によって製造された魚卵入りソースの風味を、該評価基準において最高評価となる「5点」とした(下記表2参照)。また、後述する試験例で使用する「魚卵の粒状感の評価基準」では、参考例2によって製造された魚卵入りソースの粒状感を、該評価基準において高評価となる「4点」とした(下記表2参照)。
〔試験例1:魚卵入り和風ソースの試験〕
各実施例、比較例及び参考例の魚卵(たらこ)入り和風ソースを10名の専門パネラーに喫食してもらい、下記評価基準に従って魚卵の風味及び魚卵の粒状感を評価してもらった。その結果を10名の評価点の平均値として下記表1~4に示す。
<魚卵の風味の評価基準(和風ソース用)>
5点:魚卵の風味が非常に強く感じられる(参考例1と同等)。
4点:魚卵の風味が強く感じられる。
3点:魚卵の風味がやや感じられる。
2点:魚卵の風味があまり感じられない。
1点:魚卵の風味がほとんど感じられない。
<魚卵の粒状感の評価基準(和風ソース用)>
5点:魚卵1粒1粒の粒状感が非常にあり、舌触りが滑らかで極めて良好。
4点:魚卵1粒1粒の粒状感があり、舌触りが滑らかで良好(参考例2と同等)。
3点:魚卵1粒1粒の粒状感は感じられるが、舌触りにざらつきがありやや良好。
2点:魚卵1粒1粒の粒状感が少なく、舌触りにざらつきがあり不良。
1点:魚卵1粒1粒の粒状感がほとんど感じられず、ざらつきが強く、極めて不良。
Figure 0007214588000001
Figure 0007214588000002
Figure 0007214588000003
Figure 0007214588000004
表1によれば、各実施例のように、加熱処理に先立って生魚卵に接触させる調味液(水性液)にフィチン酸を含有させることで、魚卵の風味及び粒状感に優れる魚卵入りソースが得られることがわかる。一方、フィチン酸に代えて表2に示す他の酸を用いても(比較例2~7)、魚卵の風味及び粒状感について高評価が得られなかったことから、生魚卵に接触させるのは酸であればよいというわけではなく、フィチン酸が必須であることがわかる。表3は、調味液に接触させた生魚卵の加熱処理(工程(3))において、加熱温度と魚卵の風味及び粒状感との関係を示すものである。表4は、魚卵入りソースの加熱殺菌処理(工程(4))において、加熱温度と魚卵の風味及び粒状感との関係を示すものである。
〔実施例22~27〕
以下の手順で魚卵入りクリームソースを製造した。まず、市販のクリームソース(水性液)を金網で濾して固形物を除いた後、200gの該クリームソースを鍋に入れ、更に、フィチン酸を所定量加え、品温が40℃になるように加熱し、各成分が均一になるよう攪拌して、フィチン酸含有量が下記表5に示す範囲にある水性の調味液を調製した(工程(1))。次に、調製した調味液にバラいくら(生魚卵:平均粒子径4.1mm)70gを加えた(工程(2):調味液と生魚卵との接触処理)。次に、鍋を火にかけ、調味液の品温90℃が10分間維持する条件で鍋の内容物を加熱し、魚卵入りクリームソースを製造した(工程(3):前記接触処理における処理対象物の加熱処理)。
〔比較例8〕
前記工程(1)において、調味液にフィチン酸を添加しなかった以外は、実施例22と同様にして魚卵入りクリームソースを製造した。
〔比較例9〕
前記工程(3)を実施しなかった以外は、実施例25と同様にして魚卵入りクリームソースを製造した。つまり比較例9は、フィチン酸を含む水性の調味液(クリームソース)を生魚卵に接触させただけで、その後の加熱処理は行っていない。
〔試験例2:魚卵入りクリームソースの試験〕
各実施例及び比較例の魚卵(いくら)入りクリームソースを10名の専門パネラーに喫食してもらい、下記評価基準に従って魚卵の風味及び魚卵の粒状感を評価してもらった。その結果を10名の評価点の平均値として下記表5に示す。
<魚卵の風味の評価基準(クリームソース用)>
5点:魚卵の風味が非常に強く感じられる。
4点:魚卵の風味が強く感じられる。
3点:魚卵の風味がやや感じられる。
2点:魚卵の風味があまり感じられない。
1点:魚卵の風味がほとんど感じられない。
<魚卵の粒状感の評価基準(クリームソース用)>
5点:魚卵1粒1粒の粒状感が非常にあり、極めて良好。
4点:魚卵1粒1粒の粒状感があり、良好。
3点:魚卵1粒1粒の粒状感は感じられるが、変形しやすい。
2点:魚卵1粒1粒の粒状感が少なく、変形やつぶれがあり不良。
1点:魚卵1粒1粒の粒状感がほとんど感じられず、変形やつぶれが多く、極めて不良。
Figure 0007214588000005
表1~4に示す例は、魚卵入りソースにおける「ソース」の種類が和風ソースであったのに対し、表5に示す例はクリームソースである。表5から明らかなように、クリームソースにおいても和風ソースと同様に、加熱処理に先立って生魚卵に接触させる調味液(クリームソース)にフィチン酸を含有させることが、魚卵の風味及び粒状感に優れる魚卵入りソースが得る上で有効であることがわかる。比較例9は、フィチン酸を使用したものの、その後の加熱処理を行わなかったため総じて低評価となり、特に魚卵(いくら)の生臭みが強く感じられた。

Claims (3)

  1. 魚卵入りソースの製造方法であって、
    (1)フィチン酸を含む水性液を調製する工程、
    (2)生魚卵に前記水性液を接触させる工程、及び
    (3)前記水性液を接触させた前記生魚卵を加熱処理して熱処理魚卵を得る工程
    を備え
    前記工程(1)において、水性液におけるフィチン酸の含有量を、該水性液の全質量に対して0.02~1質量%に調整し、
    前記工程(3)において、加熱処理対象物の品温が75℃以上となる条件で加熱処理する、魚卵入りソースの製造方法。
  2. 前記工程(2)において、平均粒子径が0.1~10mmの生魚卵を水性液に接触させる、請求項に記載の魚卵入りソースの製造方法。
  3. 更に、前記工程(3)を経て得られた魚卵入りソースを、該ソースの品温が100~140℃となる条件で加熱殺菌処理する工程を備える、請求項1又は2に記載の魚卵入りソースの製造方法。
JP2019136939A 2019-07-25 2019-07-25 魚卵入りソースの製造方法 Active JP7214588B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019136939A JP7214588B2 (ja) 2019-07-25 2019-07-25 魚卵入りソースの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019136939A JP7214588B2 (ja) 2019-07-25 2019-07-25 魚卵入りソースの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021019515A JP2021019515A (ja) 2021-02-18
JP7214588B2 true JP7214588B2 (ja) 2023-01-30

Family

ID=74572914

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019136939A Active JP7214588B2 (ja) 2019-07-25 2019-07-25 魚卵入りソースの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7214588B2 (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000236854A (ja) 1999-02-19 2000-09-05 Nisshin Flour Milling Co Ltd 容器入り貝類含有ソース類の製造方法
JP2011254741A (ja) 2010-06-08 2011-12-22 Nisshin Foods Kk 加熱殺菌済み魚卵入りソースの製造方法
JP2011254742A (ja) 2010-06-08 2011-12-22 Nisshin Foods Kk 加熱殺菌済み魚卵入りソース及びその製造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5270048A (en) * 1975-12-03 1977-06-10 Hayashikane Sangyo Color forming method of spawn
JP3519217B2 (ja) * 1996-08-14 2004-04-12 日清フーズ株式会社 たらこ含有加工食品及びその製造方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000236854A (ja) 1999-02-19 2000-09-05 Nisshin Flour Milling Co Ltd 容器入り貝類含有ソース類の製造方法
JP2011254741A (ja) 2010-06-08 2011-12-22 Nisshin Foods Kk 加熱殺菌済み魚卵入りソースの製造方法
JP2011254742A (ja) 2010-06-08 2011-12-22 Nisshin Foods Kk 加熱殺菌済み魚卵入りソース及びその製造方法

Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
Milky Cod Roe Cream Spaghetti Sauce, ID#3211683,Mintel GNPD [online],2015年05月,https://portal.mintel.com
Non-Ordinary Pasta Sauce (Cod Roe & Cream), ID#1527431,Mintel GNPD [online],2011年04月,https://portal.mintel.com
木村午朗,フィチン酸について,有機合成化学,1967年,第25巻, 第2号,pp.167-179

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021019515A (ja) 2021-02-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6619561B2 (ja) 肉類及び魚介類の品質向上剤、並びに肉類及び魚介類の品質向上方法
JP7214588B2 (ja) 魚卵入りソースの製造方法
JP3742774B2 (ja) チーズ及びその製造方法
JP5591596B2 (ja) 加熱殺菌済み魚卵入りソースの製造方法
JP4657230B2 (ja) 麺皮用油脂組成物
JP6472985B2 (ja) キノコ含有乳化ソースの製造方法
TW200402269A (en) Meat improving agent and method for making processed meat food using the meat improving agent
JPH0712292B2 (ja) 調理済み冷凍豆腐類食品
JP7046799B2 (ja) 揚げ物衣用ミックス
JP2020202763A (ja) 加工挽肉及びその製造方法
CN111295099A (zh) 食用肉改良用组合物
JP2020115760A (ja) 魚介類入りクリームソースの製造方法
JP7274340B2 (ja) 食肉具材の揚げ物用バッター液及び該バッター液を使用した食肉具材の揚げ物の製造方法
KR102555774B1 (ko) 수비드 조리법을 이용한 양념 돼지고기 목살의 조리방법
JP2018130041A (ja) デンプン含有食品用添加剤
JP5680885B2 (ja) 加熱殺菌済み魚卵入りソース及びその製造方法
JP7085550B2 (ja) 冷凍魚卵入りソースの製造方法
JP2008005757A (ja) 卵料理用加工素材および卵料理の製造法。
JP2015173658A (ja) 食肉加工食品の製造方法
JPWO2019131820A1 (ja) たこ焼き用ミックス
WO2021079805A1 (ja) 米飯類の品質保持方法および米飯類の製造方法
JP2021159016A (ja) 油調時間短縮剤及び食感改善剤並びにこれらを利用したバッター組成物
JP6687429B2 (ja) 冷凍おにぎりの製造方法
WO2019111944A1 (ja) ルウの製造方法
JP6253232B2 (ja) 油ちょう食品用劣化臭防止剤及び油ちょう食品

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220111

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20221115

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20221122

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221213

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230110

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230118

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7214588

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150