図面を参照して、実施形態及びその変形例、実施形態又はその変形例を適用した具体的な実施例を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態に係わる電気自動車(受電要素の一例)の受電制御装置及びその周辺装置の構成を説明する。受電制御装置は、複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)を含む負荷群11へ、電力設備12(電力供給基点10の一例)を経由して電気エネルギーを供給する電力システムにおいて、負荷群11に含まれる電気自動車EV1が受電する電力である要素受電電力を、所定の処理サイクルを繰り返すことにより制御する。
受電制御装置は、外部から電気信号を受信する受信装置21と、電気自動車EV1の状態を示す情報を取得する車両状態取得装置22と、電気自動車EV1の要素受電電力を算出する計算装置23とを備える。電気自動車EV1は、外部から電力を受ける受電装置24と、受電装置24が受けた電力(要素受電電力)を蓄えるバッテリ25と、バッテリ25が蓄える電気エネルギー又は要素受電電力に基づいて駆動するモータ26とを備える。
「処理サイクル」には、(a)~(e)の処理ステップが含まれる。
(a)受信装置21は、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)から、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送っている総送電電力の現在値(Pall_now)を減じて得られる差分電力(ΔP)を示す情報を取得する。
(b)計算装置23は、他の電気自動車(EV2、EV3、・・・)の受電よりも自己(電気自動車EV1)の受電が優先される度合いを示す電気自動車EV1の優先度(β)を、電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値に基づいて算出する。
(c)計算装置23は、取得した情報が示す差分電力(ΔP)に優先度(β)を乗じることにより要素差分電力(βΔP)を算出する。
(d)計算装置23は、前回の処理サイクルにおける要素受電電力(Pt)に、要素差分電力(βΔP)を加算することにより、要素受電電力(Pt+1)を更新する。
(e)計算装置23は、更新後の要素受電電力(Pt+1)を受電するように電気自動車EV1を制御する。
ここで、実施形態、変形例、及び実施例において、「電気自動車」は、電力設備12を経由して伝送される電力を受電する「蓄電要素」又は「受電要素」の一例である。蓄電要素は、受電した電力をバッテリ(二次電池、蓄電池、充電式電池を含む)に蓄える。「蓄電要素」には、車両(電気自動車、ハイブリッド車、建設機械、農業機械を含む)、鉄道車両、遊具、工具、家庭製品、日用品など、バッテリを備える、あらゆる機器及び装置が含まれる。
「蓄電要素」は、電力設備12を経由して伝送される電力を受電する「受電要素」の一例である。「受電要素」には、「蓄電要素」の他に、受電した電力を蓄えずに消費する「電力消費要素」も含まれる。「電力消費要素」には、鉄道車両、遊具、工具、家庭製品、日用品など、が含まれる。「電力消費要素」は、電気自動車のように、バッテリを備えていても構わない。電気自動車が受電した電力をバッテリに蓄えずに、直接、モータへ電送し、モータの駆動力として消費する場合、電気自動車は「電力消費要素」の一例となる。このように、「電力消費要素」には、バッテリを備えるか否かに係わらず、受電した電力を蓄電せずに消費する、あらゆる機器及び装置が含まれる。
「蓄電要素」及び「受電要素」は、いずれも受電制御装置による受電制御の単位構成を示す。即ち、蓄電要素又は受電要素を単位として実施形態、実施例、及び変形例に係わる受電制御が行われる。例えば、複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)の各々について、互いに独立して並列に実施形態、実施例、及び変形例に係わる受電制御が行われる。
実施形態では、受電要素の一例として蓄電要素を挙げ、更に、蓄電要素の一例として、電気をエネルギー源とし、モータ26を動力源として走行する電気自動車(EV)を挙げる。しかし、本発明における受電要素及び蓄電要素をそれぞれ電気自動車(EV)に限定することは意図していない。
実施形態及び変形例において、「電力設備12」は、電力供給基点10の一例である。「電力設備12」には、例えば、以下の<1>~<6>が含まれる。
なお、具体的な適用事例は、第1~第7実施例において、後述する。
<1>電気自動車EV用の「充電スタンド」;
<2>住宅、オフィスビル、商業施設、工場、又は高速道路のパーキングエリア等の敷地内に設置された「変電装置」;
<3>水力、火力、原子力などの「発電所」、発電された電力を所定の電圧へ変換する「変電所」、
<4>変電所を経由して伝送された電力を分配するための様々な「配電設備」
<5>これらの装置又は設備の間を接続する「配線(ケーブル、フィーダーを含む)」、及び<6>近隣にある小規模な蓄電要素のエネルギーを束ね、1つの大規模な発電所のように機能させる「バーチャルパワープラント(仮想発電所:VPP)」。
実施形態、その変形例、及び実施例では、受電制御装置が、電気自動車EV1に搭載されている例を説明するが、勿論、受電制御装置は、短距離無線、無線LAN、無線WANなどの近距離無線通信技術、或いは、携帯電話通信網を利用して、電気自動車EV1の外部から電気自動車EV1の要素受電電力を制御してもよい。
また、負荷群11に含まれる複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)のうちの1台の電気自動車EV1の構成を例に取り説明するが、負荷群11に含まれる他の電気自動車(EV2、EV3、・・・)も電気自動車EV1と同じ構成を有している。
受電制御装置は、電力設備12を経由して電気自動車EV1が受電する電力を制御する。電気自動車EV1は、オンボードチャージャー(OBC)と呼ばれる受電装置24を備える。計算装置23は、受電装置24が電力設備12を経由して受電する電力を制御する。受電装置24が受電した電力は、バッテリ25に蓄えられる。又は、電気自動車EV1は、受電装置が受電した電力を、バッテリ25に蓄えず、駆動源としてのモータ26へ直接送電しても構わない。
電力設備12を経由して電気自動車EV1へ供給される電力は、電流計測装置13により計測される。電流計測装置13により計測された電力値は、差分情報送信装置14へ送信される。
1つの電力設備12を経由して、負荷群11に含まれる複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)に対して電気エネルギーが供給される。更に、1つの電力設備12を経由して、複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)のみならず、負荷群11に含まれる1又は2以上の他の電力消費要素15に対しても電気エネルギーが供給されてもよい。電力設備12を経由して電気エネルギーの供給を受ける複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)及び1又は2以上の他の電力消費要素15は、1つのグループ(負荷群11)を形成している。
電流計測装置13は、電力設備12を経由して1つの負荷群11に含まれる全ての電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)及び他の電力消費要素15へ送られている総送電電力の現在値(Pall_now)、換言すれば、負荷群11の全体の総送電電力を計測する。
ここで、負荷群11の全体の電力容量、即ち、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)が予め定められている。実施形態に係わる受電制御装置は、総送電電力の最大値(Pall_max)の制約に基づき、電気自動車EV1の要素受電電力を制御する。例えば、受電制御装置は、電流計測装置13が計測する総送電電力の現在値(Pall_now)が、電力の最大値(Pall_max)を超えないように、電気自動車EV1の受電電力を制御する。勿論、総送電電力の現在値(Pall_now)が電力の最大値(Pall_max)を一時的に超えることを許容するように、電気自動車EV1の受電電力を制御しても構わない。なお、総送電電力の最大値(Pall_max)は、様々な要因により定まるが、その詳細は後述する実施例において説明する。
図1に示すように、第1実施形態では、電力設備12、電流計測装置13及び電気自動車EV1の各々に対して、差分情報送信装置14が無線又は有線により通信可能に接続されている。電力設備12は、差分情報送信装置14へ総送電電力の最大値(Pall_max)を示す電気信号を送信する。電流計測装置13は、計測した総送電電力の現在値(Pall_now)を示す電気信号を差分情報送信装置14へ送信する。
差分情報送信装置14は、計算部31と送信部32とを備える。計算部31は、(1)式に示すように、総送電電力の最大値(Pall_max)から総送電電力の現在値(Pall_now)を減ずることにより差分電力(ΔP)を算出する。送信部32は、差分電力(ΔP)を示す電気信号を、負荷群11に含まれる全ての電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)に対して、移動体通信により送信(ブロードキャスト)する。差分電力(ΔP)を示す電気信号は受信装置21により受信され、計算装置23へ転送される。これにより、受電制御装置は、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)から、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送っている総送電電力の現在値(Pall_now)を減じて得られる差分電力(ΔP)を示す情報を取得することができる。
なお、差分情報送信装置14は、送信部32を用いて、負荷群11に含まれる全ての電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)の受信装置21に対して、無線通信により差分電力(ΔP)を示す情報を送信(ブロードキャスト)する。または、差分電力(ΔP)を示す情報の送信には有線による通信でもよい。
図1に示す例において、差分情報送信装置14は、各電気自動車から送信される、例えばバッテリ25の充電率(SOC)や受電を終了する時刻(Td)など、各電気自動車の状態を示す信号を受信する受信装置を備えていなくてもよい。即ち、差分情報送信装置14と各電気自動車との間は、差分情報送信装置14から各電気自動車への片方向のみに通信できればよい。なお、双方向の通信が必要な例は、図3を参照して後述する。
差分情報送信装置14は、例えば、コンピュータネットワークを介して、電力設備12、電流計測装置13、及び負荷群11に接続されたサーバであってもよい。或いは、差分情報送信装置14は、電力設備12の一部分として構成されていてもよい。
車両状態取得装置22は、電気自動車EV1の状態を表す情報を取得する。例えば、「電気自動車EV1の状態」とは、電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値である。電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値は、電気自動車EV1の受電を終了する時刻(受電の終了時刻Td)までの残り時間(T)である。残り時間(T)は、電気自動車EV1が受電を終了する時刻から算出可能である。残り時間(T)は、電気自動車EV1のバッテリ25を充電することができる残り時間である。
例えば、自宅に帰宅したユーザが、自宅の駐車場にて電気自動車EV1のバッテリ25の充電を開始し、翌日の午前7時に電気自動車EV1にて外出する予定がある場合、翌日の午前7時から所定時間(5分)前の時刻を、受電の終了時刻として設定することができる。このように、“翌日の午前7時に外出したい”という「ユーザの要求」は、受電の終了時刻(午前6時55分=Td)及び受電の終了時刻までの残り時間(T)を表している。「受電の終了時刻(Td)」とは、電気自動車EV1が受電を続けることが可能な期間が終了する時刻を意味し、受電制御フロー(図2)において、受電を継続しない(S03でNO)と判断する時刻から区別される。
受電の終了時刻(Td)は、ユーザがスマートフォンなどの情報通信端末又は電気自動車EV1に搭載されたユーザインターフェースを用いて実際に設定した時刻であってもよい。又は、ユーザからの具体的な指示又は設定が無い場合、ユーザの過去の行動履歴(過去の出発時刻の履歴など)を調査して得られる統計データから推定される時刻であっても構わない。
計算装置23は、電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値(電気自動車EV1の状態)に基づいて、他の電気自動車(EV2、2V3、・・・)の受電よりも自己EV1の受電が優先される度合いを示す電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。具体的に、計算装置23は、(2)式を用いて、現時刻(To)から受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)から優先度(β)を算出する。(2)式において、Nは、負荷群11内で受電を行う電気自動車の総数を示す。
(2)式に示すように、優先度(β)は残り時間(T)に反比例する。残り時間(T)が短くなるにつれて、優先度(β)は高くなる。(2)式は一例にすぎず、例えば、優先度(β)は、残り時間(T)を2以上のg回(gは正数)掛け算した「残り時間(T)のg乗」に反比例してもよい。
電気自動車の総数(N)は、負荷群11における過去の受電履歴を調査して得られる統計データ(数量データ)であってもよいし、電力の現在値(Pall_now)から、おおよその電気自動車の総数(N)を推定することも可能である。総数(N)は差分電力(ΔP)と同様に差分情報送信装置14もしくは差分情報送信装置14に付随する装置から同報送信される。または、充電システムの位置情報や識別信号などで、総数(N)を特定してもよい。
計算装置23は、(3)式に示すように、差分電力(ΔP)に優先度(β)を乗じることにより要素差分電力(βΔP)を算出し、前回の処理サイクルにおける要素受電電力(Pt)に、要素差分電力(βΔP)を加算することにより、要素受電電力(Pt+1)を更新する。なお、要素受電電力を示す記号「P」の添え字(右下付文字)「t」「t+1」は、「処理サイクル」の繰り返し回数を示す。tは、零を含む正の整数である。
計算装置23は、受電装置24が更新後の要素受電電力(Pt+1)を受電するように受電装置24に対して指示信号を送信し、指示信号を受信した受電装置24は、更新後の要素受電電力(Pt+1)を、電力設備12を経由して受電する。
受電制御装置は、(a)~(e)の処理ステップを含む「処理サイクル」を一定の周期で繰り返し実行することにより、電気自動車EV1の受電装置24が受電する電力(要素受電電力Pt)を制御する。
図2のフローチャートを参照して、図1の受電制御装置による受電制御方法の一例を説明する。なお、当業者であれば、図1の受電制御装置の具体的な構成及び機能の説明から、受電制御装置による受電処理方法の具体的な手順を、容易に理解できる。よって、ここでは、図1の受電制御装置による受電処理方法として、受電制御装置の主要な処理動作を説明し、詳細な処理動作の説明は、図1を参照した説明と重複するため割愛する。
まず、ステップS01で、受信装置21は、計算部31により算出された差分電力(ΔP)を示す情報を取得する。ステップS02に進み、車両状態取得装置22は、電気自動車EV1の状態を示す情報の例として、受電の終了時刻(Td)を示す情報を取得する。
ステップS03に進み、受電制御装置は、受電を継続するか否かを判断する。例えば、電気自動車EV1のユーザから受電終了の指示信号を受信した場合(S03でNO)、又は、現時刻が受電の終了時刻(Td)となった場合、受電の継続を終了する。或いは、充電ポートの未接続を検知した場合など(S03でNO)、それから数分の内に、電気自動車EV1が移動を開始する可能性が高まるため、受電の継続を終了する。更に、バッテリ25の充電率(SOC)が目標値に達した場合(S03でNO)、受電の継続を終了する。これらの状況が無ければ(S03でYES)、受電制御装置は、受電を継続するために、ステップS04へ進む。
ステップS04では、計算装置23は、(2)式を用いて、受電の終了時刻(Td)から、電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。ステップS05へ進み、計算装置23は、(3)式に、差分電力(ΔP)及び優先度(β)を代入することにより、要素受電電力(Pt+1)を更新する。
ステップS06へ進み、計算装置23は、受電装置24が更新後の要素受電電力(Pt+1)を受電するように受電装置24を制御する。受電制御装置は、ステップS01からステップS06までを単位とする処理サイクルを、ステップS03でNOと判定されるまで、繰り返し実行することにより、要素受電電力(P)を制御する。
(第1変形例)
第1実施形態では、図1に示したように、差分情報送信装置14から各電気自動車への片方向通信を行う場合を説明した。本発明はこれに限定されず、例えば、差分情報送信装置14と各電気自動車の間は、双方向に通信可能であってもよい。第1実施形態の第1変形例では、電気自動車EV1の受電装置24が送信部28を備え、送信部28から差分情報送信装置14へ、電気自動車EV1の要素受電電力(Pt)を示す電気信号を送信する例を説明する。なお、負荷群11に含まれる他の全ての電気自動車(EV2、EV3、・・・)は、電気自動車EV1と同じ構成を備えるため、説明を割愛する。第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する点については説明を割愛する。
受電装置24は、電気自動車EV1が受電した電力(要素受電電力)を測定する電流計測装置27と、要素受電電力(Pt)を示す電気信号を差分情報送信装置14へ無線通信により送信する送信部28とを備える。具体的に、電流計測装置27は、受電装置24へ流入する電流値を測定し、受電時の電圧から要素受電電力(Pt)を算出する。送信部28と差分情報送信装置14は、コンピュータネットワークを介して通信可能に接続されている。更に、送信部28と受信装置21とが一体を成し、送受信装置を構成していてもよい。送信部28として、例えば、4G、5Gなどの移動体通信規格に基づく通信を行う送信機を用いることができる。
これに伴い、電流計測装置13は、電力設備12を経由して送られる電力のうち、他の電力消費要素15へ伝送される電力を計測し、各電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)へ伝送される電力は計測しなくてもよい。電流計測装置13は、負荷群11に含まれる他の電力消費要素15へ供給される総送電電力を計測し、計測した総送電電力を示す電気信号を差分情報送信装置14へ送信する。
計算部31は、他の電力消費要素15へ供給される総送電電力と、全ての電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)の要素受電電力とを合算することにより、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送られている総送電電力の現在値(Pall_now)を算出する。
このように、受電装置24及び電流計測装置13の構成、及び総送電電力の現在値(Pall_now)の算出方法は、図1の場合と相違するが、その他の構成は、図1の場合と同じであり、説明を割愛する。
第1変形例における受電制御装置の動作、すなわち受電制御方法は、図2に示した手順と共通する。しかし、ステップS06の動作に違いがある。すなわち、ステップS06において、計算装置23は、受電装置24が更新後の要素受電電力(Pt+1)を受電するように受電装置24を制御する。そして、電流計測装置27は要素受電電力を測定し、送信部28は、測定した要素受電電力を示す電気信号を、差分情報送信装置14へ送信する。その他のステップは、第1実施形態と共通するため、再度の説明を割愛する。
(第2変形例)
第1実施形態及び第1変形例では、受信装置21が、受電制御装置の外部(差分情報送信装置14)で演算された差分電力(ΔP)を示す情報を受信する例を示した。しかし、本発明はこれに限定されず、受信装置21が自ら、(1)式に基づいて、差分電力(ΔP)を演算しても構わない。この場合、図4に示すように、受信装置21は、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)を示す電気信号を、電力設備12から受信し、総送電電力の現在値(Pall_now)を示す電気信号を、電流計測装置13から受信する。
受信装置21は、自らが演算した差分電力(ΔP)を示す電気信号を計算装置23へ転送する。その他の構成は、図1(第1実施形態)と同じであり説明を割愛する。
第2変形例における受電制御装置の動作、すなわち受電制御方法は、図2に示した手順と共通する。しかし、ステップS01の動作に違いがある。すなわち、ステップS01で、受信装置21は、総送電電力の最大値(Pall_max)を示す電気信号を、電力設備12から受信し、総送電電力の現在値(Pall_now)を示す電気信号を、電流計測装置13から受信する。受信装置21は、(1)式に基づいて、差分電力(ΔP)を演算し、差分電力(ΔP)を示す電気信号を計算装置23へ転送する。その他のステップは、第1実施形態と共通するため、再度の説明を割愛する。
(シミュレーション結果)
次に、第1の実施形態に係わる受電制御方法に従って受電制御を実行したシミュレーションの結果を説明する。
先ずは、第1実施形態のシミュレーションの条件を説明する。図5Aに示すように、3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)の各々が、第1実施形態に係わる受電制御方法により受電制御を実行する。各電気自動車が受電を開始する時刻(開始時刻)は同時刻(午前1時)であるが、各電気自動車が受電を終了する時刻(終了時刻)は、異なる。電気自動車EV1は午前7時であり、電気自動車EV2は午前9時であり、電気自動車EV3は午前11時である。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の受電装置24が受電することができる電力(要素受電電力)の最大値は同じ3kWであり、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)のバッテリ25の容量(蓄電池容量)も同じ24kWhである。更に、受電の開始時刻における各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率(SOC)も同じ40%である。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率の目標値(目標SOC)は、ユーザによる設定は無く、デフォルト値のまま、100%(満充電)である。
次に、シミュレーションの結果を説明する。図5Bは、第1実施形態のシミュレーションの結果を示す8つのグラフであり、左側の4つのグラフが参考例に係わり、右側の4つのグラフが第1実施形態に係わる。全てのグラフの横軸は、時間軸である。
先ず、最上段の2つのグラフの縦軸が、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送る総送電電力の現在値(Pall_now)と、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)と、最大値(Pall_max)から現在値(Pall_now)を減算した差分電力(ΔP)を示す。
上から2段目の2つのグラフの縦軸は、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)が電力設備12を経由して受電する電力(要素受電電力)を示す。下から2段目の2つのグラフの縦軸は、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の優先度(β)を示す。最下段の2つのグラフの縦軸は、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率(SOC)を示す。
参考例では、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の優先度(β)を固定値(1/3)とした。すなわち、電気自動車の総数(N)が3であり、且つ(2)式の右辺の分母から(Td-To)を取り除いた。これにより、差分電力(ΔP)は、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)に1/3ずつ均等に分配されるので、(3)式から算出される要素受電電力(Pt)も、3台ともに等しく変化する。よって、午前1時に同時に受電を開始した3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)は、同じ要素受電電力(Pt)を受けるため、3台の充電率(SOC)は、同じ傾きで増加する。
そして、午前7時に、最初の電気自動車EV1が受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。その時、電気自動車EV1の要素受電電力が差分電力(ΔP)へ変化し、2台の電気自動車(EV2、EV3)により再分配される。このため、午前7時以後、電気自動車(EV2、EV3)の要素受電電力が増加する。そして、受電の終了時刻(Td)を迎える前に、2台の電気自動車(EV2、EV3)の充電率が満充電(100%)となったため、電気自動車(EV2,EV3)が受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。受電の終了時刻(午前7時)における電気自動車EV1の充電率は82%であった。
これに対して、第1実施形態では、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の優先度(β)は、(2)式に従い、時間の経過と共に変化する。具体的には、受電の終了時刻までの残り時間(T=Td-To)が短くなるにつれて、優先度(β)は高くなる。より詳細には、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の優先度(β)は、受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T=Td-To)に反比例する。これにより、残り時間(T)が短いほど、要素受電電力(Pt)が高くなり、充電率を早期に高めることができる。3台の中で受電の終了時刻(Td)が最も早い電気自動車EV1の受電の終了時刻(Td)における要素受電電力は、参考例のそれ(82%)よりも高くなり、受電の終了時刻(午前7時)における電気自動車EV1の充電率を93%まで高めることができた。また、他の電気自動車(EV2、EV3)は、受電の終了時刻(午前9時、午前11時)を迎える前に、それぞれ満充電に到達することができた。このように、負荷群11に含まれる全ての電気自動車(EV1、EV2、EV3)の終了時刻(Td)における充電率の平均値を高め、充電率の分散を小さくすることができた。
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
各電気自動車のユーザの要求を表す数値に基づいて優先度(β)を算出することにより、差分電力(ΔP)を、各電気自動車の状態に応じて分け合うことができる。よって、受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)など、電気自動車毎に異なるユーザの要求を表す数値に応じた優先度(β)を設定することができる。よって、各電気自動車の充電率を平準化しつつ、ユーザの要望に応じて適切に差分電力(ΔP)を分配することができる。
ユーザの要求を表す数値は、受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)である。残り時間(T)に応じた優先度(β)を設定することができる。
(2)式に示すように、受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)が短くなるにつれて、優先度(β)は高くなる。これにより、電気自動車(EV1、EV2、EV3)の受電の終了時刻における充電率を高めることができる。
残り時間(T)が短い電気自動車に対して高い優先度(β)を設定することが出来るので、残り時間(T)が短い電気自動車に対して、多くの電力を割り当てることが出来る。よって、受電を終了する時刻における各電気自動車の充電率を平準化することができる。
(2)式に示すように、優先度(β)は、残り時間(T)に反比例する。これにより、残り時間(T)が短い電気自動車に対して、多くの電力を割り当てることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態では、電気自動車EV1の優先度(β)を、(2)式に示した終了時刻(Td)までの残り時間(T)の代わりに、電気自動車EV1が備えるバッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)から算出する例を説明する。
バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)は、電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値の他の例である。
例えば、近所のショッピングセンターに買い出しに来たユーザが、ショッピングセンターの駐車場にて電気自動車EV1のバッテリ25の充電を開始する。買い出しの後は自宅に帰宅するだけの短距離の走行を予定しているため、ユーザは、バッテリ25の充電率として60%まで充電できればよい、と考えた。この場合、バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)として、満充電(100%)ではなく、比較的に小さい60%を設定することができる。このように、“60%まで充電できればよい”という「ユーザの要求」は、そのまま、バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)を表している。
充電率の目標値(SOCgoal)は、ユーザがスマートフォンなどの情報通信端末又は電気自動車EV1に搭載されたユーザインターフェースを用いて実際に設定した値であってもよい。又は、ユーザからの具体的な指示又は設定が無い場合、ユーザの過去の行動履歴(過去の目標値(SOCgoal)の設定履歴など)を調査して得られる統計データから推定される値であっても構わない。或いは、ユーザからの具体的な指示又は設定が無い場合、目標値(SOCgoal)を100%(満充電)に設定してもよい。
車両状態取得装置22は、電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値として、充電率の目標値(SOCgoal)及びバッテリ25の充電率の現在値(SOCnow)とを取得する。バッテリ25の充電率の現在値(SOCnow)は、例えば、図2に示す処理サイクルのステップS02において、車両状態取得装置22が測定するバッテリ25の充電率の値である。
計算装置23は、(2)式の代わりに、(4)式を用いて、バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)から電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。
(4)式に示すように、計算装置23は、バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)と、バッテリ25の充電率の現在値(SOCnow)とを比較することにより、優先度(β)を算出する。
現在値(SOCnow)が目標値(SOCgoal)より小さい場合の優先度(β)は、現在値(SOCnow)が目標値(SOCgoal)以上である場合の優先度(β)よりも大きい。例えば、現在値(SOCnow)が目標値(SOCgoal)よりも小さい場合、優先度(β)は、受電を行う電気自動車の総数(N)の逆数となる。現在値(SOCnow)が目標値(SOCgoal)以上となる場合、優先度(β)は、受電を行う電気自動車の総数(N)の逆数を5で除算した値となる。なお、(4)式中の5は例示であり、1よりも大きい数値であれば、その他の数値であってもよい。
このように、第2実施形態の受電制御装置は、第1実施形態と比べて、優先度(β)を算出する際に用いる「電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値」が相違する。しかし、その他の構成は、第1実施形態(図1)と共通しているため、再度の説明を割愛する。
第2実施形態における受電制御装置の動作、すなわち受電制御方法は、図2に示した手順と共通する。しかし、ステップS02及びS04の動作に違いがある。すなわち、ステップS02で、車両状態取得装置22は、充電率の目標値(SOCgoal)及び現在値を示す情報を取得する。ステップS04で、計算装置23は、(2)式の代わりに、(4)式を用いて、バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)から電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。その他のステップは、第1実施形態と共通するため、再度の説明を割愛する。
さらに、第1実施形態に対して総送電電力の現在値(Pall_now)の算出方法を変更した第1変形例(図3)、及び、差分電力(ΔP)の算出方法を変更する第2変形例(図4)を、第2実施形態の受電制御装置及び受電制御方法に、適用できることは言うまでもない。
(シミュレーション結果)
次に、第2実施形態に係わる受電制御方法に従って受電制御を実行したシミュレーションの結果を説明する。
先ずは、第2実施形態のシミュレーションの条件を説明する。図6Aに示すように、3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)の各々が、第2実施形態に係わる受電制御方法により受電制御を実行する。各電気自動車が受電を開始する時刻(開始時刻)は同時刻(午前1時)であり、各電気自動車が受電を終了する時刻(終了時刻)は同時(午前11時)である。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の受電装置24が受電することができる電力(要素受電電力)の最大値は同じ3kWであり、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)のバッテリ25の容量(蓄電池容量)も同じ24kWhである。更に、受電の開始時刻における各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率(以後、「開始時SOC」と呼ぶ)は異なる。電気自動車EV1の開始時SOCは10%であり、電気自動車EV2の開始時SOCは40%であり、電気自動車EV3の開始時SOCは70%である。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率の目標値(以後、「目標SOC」と呼ぶ)は、同じ60%である。
次に、シミュレーションの結果を説明する。図6Bは、第2実施形態のシミュレーションの結果を示す8つのグラフであり、左側の4つのグラフが参考例に係わり、右側の4つのグラフが第2実施形態に係わる。各グラフの縦軸及び横軸が示す数値の種類は、図5Bの各グラフのそれらと同じであるため、再度の説明を割愛する。
参考例では、電気自動車の総数(N)が3であるため、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の優先度(β)を固定値(1/3)とした。すなわち、(4)式に示す、充電率の現在値(SOCnow)が充電率の目標値(SOCgoal)より小さい場合の優先度(β)と同じ値とした。これにより、差分電力(ΔP)は、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)に1/3ずつ均等に分配されるので、(3)式から算出される要素受電電力(Pt)も、3台ともに等しく変化する。よって、午前1時に同時に受電を開始した3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)は、同じ要素受電電力(Pt)を受ける。このため、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の開始時SOCは異なるが、3台の充電率(SOC)は、同じ傾きで増加する。
そして、午前5時過ぎに、開始時SOCが最も高い電気自動車EV3が満充電となったため、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。その時、電気自動車EV3の要素受電電力が差分電力(ΔP)へ変化し、2台の電気自動車(EV1、EV2)により再分配される。このため、午前5時過ぎ以後、電気自動車(EV1、EV2)の要素受電電力が増加する。
そして、午前8時過ぎに、開始時SOCが2番目に高い電気自動車EV2が満充電となったため、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。その時、電気自動車EV2の要素受電電力が差分電力(ΔP)へ変化し、1台の電気自動車(EV1)により再分配される。このため、午前8時過ぎ以後、電気自動車(EV1)の要素受電電力が増加するが、電気自動車(EV1)の要素受電電力が、電気自動車(EV1)の受電装置24の電力容量(3kW)を超えることはない。
最後に、午前10時過ぎに、開始時SOCが最も低い電気自動車EV1が満充電となったため、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。
これに対して、第2実施形態では、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の優先度(β)は、(4)式に従って算出される。具体的には、電気自動車EV3の開始時SOCは、既に電気自動車EV3の目標SOC以上であるため、多くの充電を必要としていない。よって、受電開始時から、電気自動車EV3の優先度(β)は、1/15となる。他の2台の電気自動車(EV1、EV2)の開始時SOCは、電気自動車EV3の目標SOCよりも低い。よって、電気自動車(EV1、EV2)の優先度(β)は、1/3となる。よって、差分電力(ΔP)は、電気自動車EV3よりも電気自動車(EV1、EV2)に多く分配されることになる。すなわち、電気自動車EV3の要素受電電力は、電気自動車(EV1、EV2)の要素受電電力よりも小さくなるため、電気自動車EV3の増加率は、電気自動車(EV1、EV2)の増加率よりも小さくなる。
そして、午前3時頃に、電気自動車EV2の充電率の現在値(SOCnow)は、電気自動車EV2の目標SOCに到達したため、(4)式に従い、電気自動車EV2の優先度(β)は、1/3から1/15へ減少する。しかし、この時、差分電力(ΔP)は零であるため、電気自動車EV2の要素受電電力は、変化していない。
そして、午前6時過ぎに、電気自動車EV1の充電率の現在値(SOCnow)は、電気自動車EV1の目標SOCに到達したため、(4)式に従い、電気自動車EV1の優先度(β)は、1/3から1/15へ減少する。しかし、この時、差分電力(△P)は零であるため、電気自動車EV1の要素受電電力は、変化していない。
そして、午前7時過ぎに、電気自動車EV2が満充電となったため、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。その時、電気自動車EV2の要素受電電力が差分電力(ΔP)へ変化し、2台の電気自動車(EV1、EV3)により再分配される。このため、午前7時過ぎ以後、各電気自動車(EV1、EV3)の要素受電電力が増加する。
そして、午前10時前に、2台の電気自動車(EV1、EV3)が満充電となったため、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。
このように、第2実施形態では、現在値(SOCnow)が目標SOC未満である電気自動車を、現在値(SOCnow)が目標SOC以上である電気自動車よりも優先的に受電する。これにより、参考例と比べて、各電気自動車の充電率が満充電となる時刻を揃えることができた。換言すれば、各電気自動車の受電を終了するタイミングの分散を小さくすることができた。各電気自動車の充電率を平準化しつつ、ユーザの要望に応じて適切に差分電力(ΔP)を分配することができた。
以上説明したように、第2実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
なお、第2実施形態において、優先度(β)が変化しても差分電力(ΔP)が零であることにより充電速度(要素受電電力)が変化しないことに対応する方式、例えば、一度に非常に大きな信号を意図的に送信して電気自動車EV1の受電を停止させた後に、差分電力(ΔP)を示す信号の送信を再開する方式などを併用することができる。これにより、現在値(SOCnow)が目標SOC以上である電気自動車の充電速度(要素受電電力)を低減させて、現在値(SOCnow)が目標SOC未満である電気自動車の充電速度(要素受電電力)を更に向上させることも可能である。
第2実施形態において、「ユーザの要求を表す数値」の例として、蓄電要素の充電率の目標値(SOCgoal)を採用した。これにより、各電気自動車の充電率を平準化しつつ、ユーザの要望(充電率の目標値)に応じて適切に差分電力(ΔP)を分配することができる。
計算装置23は、バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)と、バッテリ25の充電率の現在値(SOCnow)とを比較することにより、優先度(β)を算出する。これにより、ユーザの要望(充電率の目標値)に応じて適切に優先度(β)を算出することができる。
現在値(SOCnow)が目標値(SOCgoal)より小さい場合の優先度(β)は、現在値(SOCnow)が目標値(SOCgoal)以上である場合の優先度(β)よりも大きい。これにより、現在値(SOCnow)が目標SOC未満である電気自動車を、現在値(SOCnow)が目標SOC以上である電気自動車よりも優先的に充電することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態では、電気自動車EV1の優先度(β)を、現時刻(To)から受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)及びバッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)の双方に基づいて算出する例を説明する。
計算装置23は、(2)式及び(4)式の代わりに、(5)式を用いて、受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)及びバッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)から電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。
(5)式に示すように、優先度(β)は残り時間(T)に反比例する。「残り時間(T)」は、現時刻(To)から受電の終了時刻(Td)までの時間である。残り時間(T)が短くなるにつれて、優先度(β)は高くなる。(5)式は一例にすぎず、例えば、優先度(β)は、残り時間(T)を2以上のg回(gは正数)掛け算した「残り時間(T)のg乗」に反比例してもよい。
(5)式に示すように、計算装置23は、バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)からバッテリ25の充電率の現在値(SOCnow)を減算して未充電率(ΔSOC)を求める。優先度(β)は未充電率(ΔSOC)に比例する。或いは、優先度(β)は未充電率(ΔSOC)のg乗に比例していてもよい。バッテリ25の充電率の現在値(SOCnow)は、例えば、処理サイクル毎に、ステップS02において測定される充電率の値である。
優先度(β)は、充電率の目標値(SOCgoal)から電気自動車EV1の現在の充電率を測定した測定値(SOCnow)を減算した未充電率(ΔSOC)に基づいて算出される。未充電率(ΔSOC)が大きくなるにつれて、優先度(β)を高くする。これにより、未充電率(ΔSOC)が大きい電気自動車に対して、優先的に差分電力(ΔP)を分配することができる。各電気自動車の充電率を平準化しつつ、ユーザの要望(充電率の目標値)に応じて適切に差分電力(ΔP)を分配することができる。
なお、計算装置23は、(5)式の代わりに、(6)式を用いて、終了時刻(Td)までの残り時間(T)及びバッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)から電気自動車EV1の優先度(β)を算出してもよい。(6)式は、(2)式と(4)式を組み合わせた式に相当する。
現在値(SOCnow)が目標値(SOCgoal)より小さい場合の優先度(β)は、現在値(SOCnow)が目標値(SOCgoal)以上である場合の優先度(β)よりも大きい。例えば、現在値(SOCnow)が目標値(SOCgoal)よりも小さい場合、優先度(β)は、受電を行う電気自動車の総数(N)の逆数となる。現在値(SOCnow)が目標値(SOCgoal)以上となる場合、優先度(β)は、受電を行う電気自動車の総数(N)の逆数を5で除算した値となる。なお、(6)式中のβを算出する式の右辺の分母の「5」は例示であり、1よりも大きい数値であれば、その他の数値であってもよい。
このように、第3実施形態の受電制御装置は、第1実施形態及び第2実施形態と比べて、優先度(β)を算出する際に用いる「電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値」が相違する。しかし、その他の構成は、第1実施形態(図1)と共通しているため、再度の説明を割愛する。
第3実施形態における受電制御装置の動作、すなわち受電制御方法は、図2に示した手順と共通する。しかし、ステップS02及びS04の動作に違いがある。すなわち、車両状態取得装置22は、ステップS02において、受電の終了時刻(Td)を示す情報、及び充電率の目標値(SOCgoal)及び充電率の現在値(SOCnow)を示す情報を取得し、受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)を算出する。ステップS04で、計算装置23は、(2)式の代わりに、(5)式又は(6)式を用いて、終了時刻(Td)までの残り時間(T)及びバッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)から電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。その他のステップは、第1実施形態と共通するため、再度の説明を割愛する。
さらに、第1実施形態に対して総送電電力の現在値(Pall_now)の算出方法を変更した第1変形例(図3)、及び、差分電力(ΔP)の算出方法を変更する第2変形例(図4)を、第3実施形態の受電制御装置及び受電制御方法に、適用できることは言うまでもない。
(第1シミュレーション結果)
次に、第3実施形態に係わる受電制御方法に従って受電制御を実行した第1~第3シミュレーションの結果を説明する。第1~第3シミュレーションでは、(5)式を用いて、電気自動車EV1の優先度(β)を算出した。
先ずは、第1シミュレーションの条件を説明する。図7Aに示すように、3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)の各々が、第3実施形態に係わる受電制御方法により受電制御を実行する。各電気自動車が受電を開始する時刻(受電の開始時刻)は同時刻(午前1時)であり、各電気自動車が受電を終了する時刻(受電の終了時刻)は同時(午前11時)である。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の受電装置24が受電することができる電力(要素受電電力)の最大値は同じ3kWであり、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)のバッテリ25の容量(蓄電池容量)も同じ24kWhである。更に、受電の開始時刻における各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率(開始時SOC)は異なる。電気自動車EV1の開始時SOCは60%であり、電気自動車EV2の開始時SOCは40%であり、電気自動車EV3の開始時SOCは20%である。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率の目標値(目標SOC)は、ユーザによる設定が無く、デフォルト値のまま、100%(満充電)である。
次に、第1シミュレーションの結果を説明する。図7Bは、第1シミュレーションの結果を示す8つのグラフであり、左側の4つのグラフが参考例に係わり、右側の4つのグラフが第3実施形態に係わる。各グラフの縦軸及び横軸が示す数値の種類は、図5Bの各グラフのそれらと同じであるため、再度の説明を割愛する。
図7Bの参考例では、図6Bの参考例と比べて、各電気自動車の開始時SOCは異なるが、優先度の計算方法を含むその他の条件は、図6Bの参考例と共通しているため、同様なシミュレーション結果となった。
電気自動車の総数(N)が3であるため、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の優先度(β)を固定値(1/3)とした。これにより、差分電力(ΔP)は、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)に1/3ずつ均等に分配されるので、(3)式から算出される要素受電電力(Pt)も、3台ともに等しく変化する。よって、午前1時に同時に受電を開始した3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)は、同じ要素受電電力(Pt)を受ける。このため、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の開始時SOCは異なるが、3台の充電率(SOC)は、同じ傾きで増加する。
そして、午前6時過ぎに、開始時SOCが最も高い電気自動車EV1が満充電となったため、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。その時、電気自動車EV1の要素受電電力が差分電力(ΔP)へ変化し、2台の電気自動車(EV2、EV3)により再分配される。このため、午前6時過ぎ以後、電気自動車(EV2、EV3)の要素受電電力が増加する。
そして、午前8時過ぎに、開始時SOCが2番目に高い電気自動車EV2が満充電となったため、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。その時、電気自動車EV2の要素受電電力が差分電力(△P)へ変化し、1台の電気自動車(EV3)により再分配される。このため、午前8時過ぎ以後、電気自動車(EV3)の要素受電電力が増加するが、電気自動車(EV3)の要素受電電力が、電気自動車(EV3)の受電装置24の電力容量(3kW)を超えることはない。
最後に、午前10時過ぎに、開始時SOCが最も低い電気自動車EV3が満充電となったため、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。
これに対して、図7Bの第3実施形態では、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の優先度(β)は、(5)式に従い、時間の経過と共に変化する。具体的には、受電の終了時刻(午前11時)までの残り時間(T=Td-To)が短くなるにつれて、優先度(β)は高くなる。一方、充電率の現在値(SOCnow)が目標値(SOCgoal)に近づくにつれて、未充電率(ΔSOC)が小さくなるため、優先度(β)は低くなる。
午前11時よりも前に、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率の現在値(SOCnow)が、目標SOC(100%)に到達したため、(5)式において、分母(残り時間T)よりも分子(未充電率)が先に零になる。このため、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の優先度(β)は、目標SOCと開始時SOCの差に基づいて定まる。つまり、開始時SOCが低い電気自動車に対して優先的に差分電力(ΔP)を割り当てることができるので、開始時SOCが低い電気自動車の要素受電電力(Pt)を増やして、充電速度を早めることができる。結果的に、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)が充電を終了する時刻(SOCが100%に到達する時刻)の分散を小さくすることができる。
(第2シミュレーション結果)
次に、第2シミュレーションの条件を説明する。図8Aに示すように、3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)の各々のパラメータは、図5Aに示すシミュレーション条件と同じであるため、再度の説明を割愛する。
次に、第2シミュレーションの結果を説明する。図8Bは、第2シミュレーションの結果を示す8つのグラフであり、左側の4つのグラフが参考例に係わり、右側の4つのグラフが第3実施形態に係わる。各グラフの縦軸及び横軸が示す数値の種類は、図5Bの各グラフのそれらと同じであるため、再度の説明を割愛する。
図8Aの参考例のシミュレーション条件は、図5Aの参考例のシミュレーション条件と等しいため、図8Bの参考例のシミュレーション結果は、図5Bの参考例のシミュレーション結果であった。よって、再度の説明は割愛する。
これに対して、図8Bの第3実施形態では、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の受電の開始時刻は等しく、且つ受電の終了時刻が異なるため、残り時間(T=Td-To)に違いが生じる。受電開始時(午前1時)における未充電率(ΔSOC)は等しい。よって、(5)式によれば、受電開始時(午前1時)において、主に、残り時間(T)の差に応じた優先度(β)の差が各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の間に生じる。具体的には、残り時間(T)が最も短い電気自動車EV1の優先度が最も高く、残り時間(T)が最も長い電気自動車EV3の優先度が最も低くなる。優先度(β)の差に応じて、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の間に、要素受電電力(Pt)及び充電率(SOC)の増加率の差が生じている。よって、残り時間(T)が最も短い電気自動車EV1を、他の電気自動車(EV2,EV3)よりも優先的に、差分電力(ΔP)を割り当てて、充電することができる。
そして、午前7時に近づくと、電気自動車EV1の残り時間(T)が零に近づくため、電気自動車EV1の優先度(β)が急速に高まり、午前7時に、電気自動車EV1の充電の継続が終了する(図2のS03でNO)。
そして、午前8時過ぎに、電気自動車EV2が満充電となったため、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。そして、午前10時頃に、電気自動車EV3が満充電となったため、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。
このように、図8Bの参考例では、受電の終了時刻(午前7時)における電気自動車EV1の充電率は82%であった。図8Bの実施形態では、受電の終了時刻(午前7時)における電気自動車EV1の充電率を約90%まで高めることができた。
電気自動車EV3の受電の終了時刻を比べると、図8Bの参考例よりも図8Bの実施形態が遅くなっている。しかし、電気自動車EV3の出発時刻までには、満充電まで充電することが出来ている。電気自動車EV3のユーザの要求(出発時刻)を満たしつつ、負荷群11内での各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の最終的な充電率のバラツキを抑制して、充電率を平準化することができる。
(第3シミュレーション結果)
次に、第3シミュレーションの条件を説明する。図9Aに示すように、3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)の各々が、第3実施形態に係わる受電制御方法により受電制御を実行する。各電気自動車が受電を開始する時刻(受電の開始時刻)は同時刻(午前1時)であるが、各電気自動車が受電を終了する時刻(受電の終了時刻)は、異なる。電気自動車EV1は午前7時であり、電気自動車EV2は午前9時であり、電気自動車EV3は午前11時である。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の受電装置24が受電することができる電力(要素受電電力)の最大値は同じ3kWであり、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)のバッテリ25の容量(蓄電池容量)も同じ24kWhである。更に、受電の開始時刻における各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率(開始時SOC)は異なる。電気自動車EV1の開始時SOCは20%であり、電気自動車EV2の開始時SOCは40%であり、電気自動車EV3の開始時SOCは60%である。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率の目標値(目標SOC)は、ユーザによる設定は無く、デフォルト値のまま、100%(満充電)である。
次に、第3シミュレーションの結果を説明する。図9Bは、第3シミュレーションの結果を示す8つのグラフであり、左側の4つのグラフが参考例に係わり、右側の4つのグラフが第3実施形態に係わる。各グラフの縦軸及び横軸が示す数値の種類は、図5Bの各グラフのそれらと同じであるため、再度の説明を割愛する。
図9Bの参考例では、電気自動車の総数(N)が3であるため、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の優先度(β)を固定値(1/3)とした。これにより、差分電力(ΔP)は、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)に1/3ずつ均等に分配されるので、(3)式から算出される要素受電電力(Pt)も、3台ともに等しく変化する。よって、午前1時に同時に受電を開始した3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)は、同じ要素受電電力(Pt)を受ける。このため、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の開始時SOCは異なるが、3台の充電率(SOC)は、同じ傾きで増加する。
そして、午前6時過ぎに、開始時SOCが最も高い電気自動車EV3が満充電となったため、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。その時、電気自動車EV3の要素受電電力が差分電力(ΔP)へ変化し、2台の電気自動車(EV1、EV2)により再分配される。このため、午前6時過ぎ以後、電気自動車(EV1、EV2)の要素受電電力が増加する。
そして、午前7時に、開始時SOCが最も低い電気自動車EV1の出発時刻となるため、電気自動車EV1は、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。その時、電気自動車EV1の要素受電電力が差分電力(ΔP)へ変化し、1台の電気自動車EV2により再分配される。このため、午前7時以後、電気自動車EV2の要素受電電力が増加するが、電気自動車EV2の要素受電電力が、電気自動車EV2の受電装置24の電力容量(3kW)を超えることはない。
そして、午前8時過ぎに、電気自動車EV2が満充電となったため、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。なお、受電の継続を終了するときの電気自動車EV1の充電率は、約50%であった。
これに対して、図9Bの第3実施形態では、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の受電の開始時刻は等しく、且つ受電の終了時刻が異なるため、残り時間(T=Td-To)に違いが生じる。受電開始時(午前1時)における未充電率(ΔSOC)も異なる。具体的には、残り時間(T)は、EV1、EV2、EV3の順番で短く、未充電率(ΔSOC)も、EV1、EV2、EV3の順番で高い。
よって、(5)式における分母は、EV1、EV2、EV3の順番で小さく、分子は、EV1、EV2、EV3の順番で大きいため、(5)式から算出される優先度(β)も、EV1、EV2、EV3の順番で大きい。従って、図9Bの第3実施形態に示すように、要素受電電力(Pt)及び充電率(SOC)の増加率も、EV1、EV2、EV3の順番で大きい。
これにより、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の開始時SOCの差は、充電時間の経過と共に減少し、充電率のバラツキを抑制して、充電率を平準化することができた。結果的に、開始時SOCが最も小さかった電気自動車EV1の出発時刻における充電率を、約50%から90%近くまで高めることができた。すなわち、各電気自動車の充電率を平準化しつつ、ユーザの要望(出発時刻)に応じて適切に差分電力(ΔP)を分配することができた。
2台の電気自動車(EV2、EV3)の受電の終了時刻を比べると、図9Bの参考例よりも図9Bの実施形態が遅くなっている。しかし、各電気自動車(EV2、EV3)の出発時刻までには、満充電まで充電することが出来ている。電気自動車EV1のユーザの要求(出発時刻)を満たしつつ、負荷群11内での各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の最終的な充電率のバラツキを抑制して、充電率を平準化することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態では、電気自動車EV1の優先度(β)を、電気自動車EV1の受電に関してユーザが契約した形態に基づいて算出する例を説明する。
ユーザは、電気自動車EV1の受電に関して、様々な契約形態を締結することができる場合がある。例えば、優先度(β)の高さに関して、1等級、2等級、3等級、・・・などの複数の等級の中から、ユーザは希望する等級(契約形態)を選択して契約することができる。ユーザは、電力設備12を経由して供給される電力の利用に対する料金を支払う相手先との間で、電気自動車EV1の受電に関する契約を結ぶ。料金を支払う相手先は、例えば、電力供給に係わるインフラストラクチャーを管理・運営する組織、機構である。
勿論、「電気自動車EV1の受電に関してユーザが契約した形態(以後、「受電契約形態」と呼ぶ)」は、優先度(β)の高さに関する直接的な契約に限らない。この他にも、包括的な電力供給サービスの等級(グレード)についての契約形態であっても構わない。この場合、包括的な電力供給サービスの等級の違いに応じた優先度(β)の高さが予め設定されている。
計算装置23は、受電契約形態から定まる数値に基づいて、電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。受電契約形態から定まる数値は、例えば、受電契約形態に応じて予め定められた補正係数である。各受電契約形態(1等級、2等級、3等級、・・・)に、各調整係数(1、4/5、3/5、・・・)が対応付けられている。計算装置23は、優先度のデフォルト値(例えば、1/N)に対して、受電契約形態から定まる調整係数を乗じることにより、電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。Nは、負荷群11内で受電を行う電気自動車の総数を示す。受電契約形態及び受電契約形態から定まる調整係数を示す電子データは、計算装置23内のメモリ(CPU内のレジスタ、バッファメモリ、キャッシュメモリ、ROM、RAM等)に予め記憶されている。
このように、第4実施形態の受電制御装置は、第1実施形態乃至第3実施形態と比べて、優先度(β)を算出する際に用いる「電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値」が相違する。しかし、その他の構成は、第1実施形態(図1)と共通しているため、再度の説明を割愛する。
第4実施形態における受電制御装置の動作、すなわち受電制御方法は、図2に示した手順と共通する。しかし、ステップS02及びS04の動作に違いがある。すなわち、ステップS02で、車両状態取得装置22は、受電契約形態を示す情報を取得する。ステップS04で、計算装置23は、受電契約形態から定まる数値(例えば、補正係数)から電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。その他のステップは、第1実施形態と共通するため、再度の説明を割愛する。
さらに、第1実施形態に対して総送電電力の現在値(Pall_now)の算出方法を変更した第1変形例(図3)、及び、差分電力(ΔP)の算出方法を変更する第2変形例(図4)を、第4実施形態の受電制御装置及び受電制御方法に、適用できることは言うまでもない。
(シミュレーション結果)
次に、第4実施形態に係わる受電制御方法に従って受電制御を実行したシミュレーションの結果を説明する。
先ずは、第4実施形態のシミュレーションの条件を説明する。図10Aに示すように、3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)の各々が、第4実施形態に係わる受電制御方法により受電制御を実行する。各電気自動車が受電を開始する時刻(受電の開始時刻)は同時刻(午前1時)であり、各電気自動車が受電を終了する時刻(受電の終了時刻)は同時刻(午前11時)である。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の受電装置24が受電することができる電力(要素受電電力)の最大値は同じ3kWであり、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)のバッテリ25の容量(蓄電池容量)も同じ24kWhである。更に、受電の開始時刻における各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率(開始時SOC)も同じ40%である。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率の目標値(目標SOC)は、ユーザによる設定は無く、デフォルト値のまま、100%(満充電)である。
各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の優先度は、異なる。電気自動車EV1の補正係数は1/3であり、電気自動車EV2の補正係数は2/3であり、電気自動車EV3の補正係数は1である。優先度は、EV3、EV2、EV1の順番で高い。電気自動車の総数(N)が3であるため、電気自動車EV1の優先度は1/9であり、電気自動車EV2の優先度は2/9であり、電気自動車EV3の優先度は1/3である。
次に、シミュレーションの結果を説明する。図10Bは、第4実施形態のシミュレーションの結果を示す8つのグラフであり、左側の4つのグラフが参考例に係わり、右側の4つのグラフが第4実施形態に係わる。各グラフの縦軸及び横軸が示す数値の種類は、図5Bの各グラフのそれらと同じであるため、再度の説明を割愛する。
参考例では、電気自動車の総数(N)が3であるため、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の優先度(β)を固定値(1/3)とした。これにより、差分電力(ΔP)は、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)に1/3ずつ均等に分配されるので、(3)式から算出される要素受電電力(Pt)も、3台ともに等しく変化する。よって、午前1時に同時に受電を開始した3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)は、同じ要素受電電力(Pt)を受ける。このため、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の開始時SOCは等しいので、3台の充電率(SOC)は、同じ傾きで増加し、等しく変化する。
そして、午前10時前に、3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)が満充電となったため、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。
これに対して、第4実施形態では、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の優先度(β)が異なるため、差分電力(ΔP)は、等しくは分配されず、EV3、EV2、EV1の順番で多く分配される。よって、要素受電電力(Pt)も、電気自動車EV3が最も大きく、電気自動車EV1が最も小さくなる。このように、電気自動車(EV1、EV2、EV3)の開始時SOCは等しいが、優先度(β)は互いに相違する。このため、優先度(β)が最も高い電気自動車EV3が、最も早い時刻(午前6時過ぎ)に満充電となり、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。その時、電気自動車EV3の要素受電電力が差分電力(ΔP)へ変化し、2台の電気自動車(EV1、EV2)により再分配される。このため、午前6時過ぎ以後、2台の電気自動車(EV1、EV2)の要素受電電力が増加する。
その後、優先度(β)が次に高い電気自動車EV2が、次に早い時刻(午前8時過ぎ)に満充電となり、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。その時、電気自動車EV2の要素受電電力が差分電力(ΔP)へ変化し、1台の電気自動車(EV1)により再分配される。このため、午前8時過ぎ以後、1台の電気自動車(EV1)の要素受電電力が増加する。
最後に、優先度(β)が最も低い電気自動車EV1が、最も遅い時刻(午前10時過ぎ)に満充電となり、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。
このように、いずれの電気自動車(EV1、EV2、EV3)も、終了時刻(午前11時)前に、満充電に到達することができると同時に、電気自動車EV1の受電に関してユーザが契約した形態の違いに応じて、電気自動車(EV1、EV2、EV3)毎に異なる受電制御を行うことができる。よって、各電気自動車の充電率を平準化しつつ、ユーザの要求に応じて適切に差分電力(ΔP)を分配することができる。
ここで、第1実施形態及びその変形例、第2実施形態~第4実施形態において、電気自動車は、「蓄電要素」の一例である。第1実施形態及びその変形例、第2実施形態~第4実施形態に係わる受電制御装置及び受電制御方法は、電気自動車のみならず、住宅、ビル、施設などに設置された据置式バッテリ(据置蓄電池を含む)や、パソコン、スマートフォンなどの移動通信端末に搭載されたバッテリなど、他の蓄電要素に適用することができる。
(第5実施形態)
(3)式に示したように、計算装置23は、前回の処理サイクルにおける要素受電電力(Pt)に、要素差分電力(βΔP)を加算することにより、要素受電電力(Pt+1)を更新する。このため、処理サイクルを繰り返す度に各電気自動車の要素受電電力(Pt)は増加し、電流計測装置13で計測される総送電電力の現在値(Pall_now)は、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)に近づく。これにより(1)式に示す差分電力(ΔP)も零に近づくため、総送電電力の現在値(Pall_now)は、総送電電力の最大値(Pall_max)に収束する。
差分電力(ΔP)が零である時に、負荷群11内の他の電気自動車が、新たに受電を開始しようとした場合を考える。新たな電気自動車の要素受電電力の初期値(P0)は零であり、要素差分電力(βΔP)も零であるため、差分電力(ΔP)が零である限りにおいて、新たな電気自動車の要素受電電力(Pt)は増加せず、新たな電気自動車の受電は開始されない。
そこで、第5実施形態及びその変形例では、要素受電電力(Pt+1)を更新する際に、前回の要素受電電力(Pt)から、一定の電力補正値(αPt)を減算することにより、更新後の要素受電電力(Pt+1)を補正する。差分電力(ΔP)を零に成り難くすることができる。新たに受電を開始したい電気自動車は、早期に受電を開始することができる。
以下に、第5実施形態及びその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法の具体的な構成及び手順を説明する。
第5実施形態に係わる受電制御装置の構成を説明する。図1に示す第1実施形態に係わる受電制御装置と比べて、第5実施形態に係わる受電制御装置は、計算装置23による要素受電電力(Pt+1)の更新処理に違いが有る。その他の構成は、図1に示す受電制御装置と等しい。また、受電制御装置の周辺装置(電気自動車EV1、電力設備12、電流計測装置13、差分情報送信装置14、他の電力消費要素15)の構成は、第1実施形態のそれらと等しい。よって、相違する部分を中心に説明し、等しい部分については再度の説明を割愛する。
第5実施形態に係わる受電制御装置は、複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)を含む負荷群11へ電気エネルギーを供給する電力設備12を経由して、負荷群11に含まれる電気自動車EV1が受電する電力である要素受電電力(Pt)を、所定の処理サイクルを繰り返すことにより制御する。
「処理サイクル」には、(i)~(iv)の処理ステップが含まれる。
(i)受信装置21は、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)から、電力設備12を経由して負荷群11の全体に送っている総送電電力の現在値(Pall_now)を減じて得られる差分電力(ΔP)を示す情報を取得する。
(ii)計算装置23は、取得した情報が示す差分電力(ΔP)に、他の電気自動車(EV2、2V3、・・・)の受電よりも自己(電気自動車EV1)の受電が優先される度合いを示す電気自動車EV1の優先度(β)を乗じることにより要素差分電力(βΔP)を算出する。
(iii)計算装置23は、前回の処理サイクルにおける要素受電電力(Pt)に、要素差分電力(βΔP)を加算し、且つ、電力補正値(αPt)を減算することにより、要素受電電力(Pt+1)を更新する。なお、電力補正値(αPt)は、所定の補正率(α)及び要素受電電力(Pt)から算出される。
(iv)計算装置23は、更新後の要素受電電力(Pt+1)を受電するように電気自動車EV1を制御する。
ここで、第5実施形態及びその変形例において、電気自動車は、「受電要素」の一例である。第5実施形態及びその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法は、電気自動車のみならず、据置式バッテリなどの他の蓄電要素、及びバッテリを有さない他の電力消費要素を含む、あらゆる受電要素に適用することができる。
図1に示すように、受電制御装置は、外部から電気信号を受信する受信装置21と、電気自動車EV1の要素受電電力(Pt)を算出する計算装置23とを備える。第5実施形態に係わる受電制御装置は、優先度(β)を固定値とするため、車両状態取得装置22を備えていなくても構わない。
受信装置21は、送信部32から送信される差分電力(ΔP)を示す電気信号を受信する。差分電力(ΔP)を示す電気信号は、計算装置23へ転送される。
車両状態取得装置22は、電気自動車EV1の状態を表す情報を取得する。例えば、「電気自動車EV1の状態」とは、電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値である。電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値は、例えば、電気自動車EV1の受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)、電気自動車EV1の目標SOCである。電気自動車EV1のユーザの要求の他の例として、電気自動車EV1の受電に関してユーザが契約した形態(受電契約形態)が挙げられる。
計算装置23は、(7)式に示すように、差分電力(ΔP)に優先度(β)を乗じることにより要素差分電力(βΔP)を算出する。そして、計算装置23は、前回の処理サイクルにおける要素受電電力(Pt)に、要素差分電力(βΔP)を加算し、且つ、電力補正値(αPt)を減算することにより、要素受電電力(Pt+1)を更新する。なお、電力補正値(αPt)は、要素受電電力(Pt)に補正率αを積算することにより算出される。
なお、第5実施形態において、計算装置23は、優先度(β)として、固定値(1/N)を用いる。
(7)式中の補正率αは、補正の強さを示す。補正率αを小さくすると補正効果は小さくなり、補正率αを大きくすると電力設備12を経由して供給される総送電電力に余白、すなわち差分電力が生じ易くなる。補正率αは、負荷群11全体の適切な応答性が得られるように決定される。具体的には、統計的な契約者全体の受電時間(受電継続可能時間Tcharge)が長いほど、補正率αを小さくして、応答性を低くする。例えば、負荷群11全体で各電気自動車が平均11時間受電する(午後7時~午前6時)場合、受電継続可能時間は十分に長い。よって、補正率αを小さくしても、午前6時までに目標SOCまで充電することができる。
応答性の他の要因として、処理サイクルの繰り返し周期又は制御間隔がある。処理サイクルの繰り返し周期又は制御間隔が短いほど、応答性は高まるため、補正率αを小さくすることができる。想定される受電継続可能時間Tchargeと制御間隔を考慮すると、例えば、α=0.015を設定することができる。
計算装置23は、受電装置24が更新後の要素受電電力(Pt+1)を受電するように受電装置24に対して指示信号を送信し、指示信号を受信した受電装置24は、更新後の要素受電電力(Pt+1)を、電力設備12を経由して受電する。
受電制御装置は、(i)~(iv)の処理ステップを含む「処理サイクル」を一定の周期で繰り返し実行することにより、電気自動車EV1の受電装置24が受電する電力(要素受電電力Pt)を制御する。
図2のフローチャートを参照して、第5実施形態に係わる受電制御装置による受電制御方法の一例を説明する。なお、当業者であれば、図1の受電制御装置の具体的な構成及び機能の説明から、受電制御装置による受電処理方法の具体的な手順を、容易に理解できる。よって、ここでは、第5実施形態に係わる受電制御装置による受電処理方法として、受電制御装置の主要な処理動作を説明し、詳細な処理動作の説明は、受電制御装置の説明と重複するため割愛する。
まず、ステップS01で、受信装置21は、計算部31により算出された差分電力(ΔP)を示す情報を取得する。
その後、ステップS02を実施せずに、ステップS03に進み、受電制御装置は、受電を継続するか否かを判断する。例えば、電気自動車EV1のユーザから受電終了の指示信号を受信した場合(S03でNO)、又は、現時刻が受電の終了時刻(Td)となった場合、受電の継続を終了する。或いは、充電ポートの未接続を検知した場合など(S03でNO)、それから数分の内に、電気自動車EV1が移動を開始する可能性が高まるため、受電の継続を終了する。更に、バッテリ25の充電率(SOC)が目標値に達した場合(S03でNO)、受電の継続を終了する。これらの状況が無ければ(S03でYES)、受電制御装置は、受電を継続するために、ステップS04へ進む。
ステップS04では、計算装置23は、電気自動車EV1の優先度(β)として、固定値(1/N)を設定する。ステップS05へ進み、計算装置23は、(7)式に、差分電力(ΔP)、優先度(β)、及び補正率(α=0.015)を代入することにより、要素受電電力(Pt+1)を更新する。
ステップS06へ進み、計算装置23は、受電装置24が更新後の要素受電電力(Pt+1)を受電するように受電装置24を制御する。受電制御装置は、ステップS01からステップS06までを単位とする処理サイクルを、ステップS03でNOと判定されるまで、繰り返し実行することにより、要素受電電力(Pt)を制御する。
なお、第1実施形態に対して総送電電力の現在値(Pall_now)の算出方法を変更した第1変形例(図3)、及び、差分電力(ΔP)の算出方法を変更する第2変形例(図4)を、第5実施形態及びその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法に、適用できることは言うまでもない。
(シミュレーション結果)
次に、第5実施形態に係わる受電制御方法に従って受電制御を実行したシミュレーションの結果を説明する。
先ずは、第5実施形態のシミュレーションの条件を説明する。図11Aに示すように、3台の電気自動車(EV1、EV2、EV3)の各々が、第5実施形態に係わる受電制御方法により受電制御を実行する。各電気自動車が受電を開始する時刻(開始時刻)は、異なる。電気自動車EV1の開始時刻は、午前1時であり、電気自動車EV2の開始時刻は、午前2時であり、電気自動車EV3の開始時刻は、午前3時である。各電気自動車が受電を終了する時刻(受電の終了時刻)は、異なる。電気自動車EV1の受電の終了時刻は、午前11時であり、電気自動車EV2の受電の終了時刻は、午前10時であり、電気自動車EV3の受電の終了時刻は、午前9時である。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の受電装置24が受電することができる電力(要素受電電力)の最大値は同じ3kWであり、各電気自動車(EV1、EV2、EV3)のバッテリ25の容量(蓄電池容量)も同じ24kWhである。更に、受電の開始時刻における各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率(開始時SOC)は同じ40%である。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の充電率の目標値(目標SOC)は、ユーザによる設定が無く、デフォルト値のまま、100%(満充電)である。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の補正率αは0.015に設定され、優先度βは1/3(固定値)に設定されている。
次に、シミュレーションの結果を説明する。図11Bは、シミュレーションの結果を示す8つのグラフであり、左側の4つのグラフが参考例に係わり、右側の4つのグラフが第5実施形態に係わる。各グラフの縦軸及び横軸が示す数値の種類は、図5Bの各グラフのそれらと同じであるため、再度の説明を割愛する。
参考例では、計算装置23が、(3)式に従って、要素受電電力(Pt+1)を更新する。(3)式は、(7)式に比べて、右辺に電力補正値(αPt)の項を備えていない。よって、午前1時に受電を開始した電気自動車EV1の要素受電電力(Pt)は、自己の電力容量(3kW)まで増加する。午前2時に受電を開始した電気自動車EV2の要素受電電力(Pt)は、総送電電力の最大値(5kW)から電気自動車EV1の要素受電電力(3kW)を減算した差分電力(2kW)まで増加する。
この時点において、差分電力(ΔP)は零のまま変化しない。よって、午前3時に受電を開始した電気自動車EV3の要素受電電力(Pt)は、零のまま増加しない。つまり、電気自動車EV3は受電を開始できず、充電率SOCは開始時SOCのまま変化しない。
その後、電気自動車EV1は、午前6時頃に満充電となり、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。この時、電気自動車EV1の要素受電電力(3kW)が差分電力(ΔP)へ変化し、2台の電気自動車(EV2、EV3)により再分配される。これにより、電気自動車EV3の要素受電電力(Pt)は、2kWまで増加する。つまり、電気自動車EV3は受電を開始し、充電率SOCが増加し始める。
その後、電気自動車EV2は、午前8時頃に満充電となり、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。その時、電気自動車EV2の要素受電電力(3kW)が差分電力(ΔP)へ変化し、1台の電気自動車(EV3)により再分配される。
その後、午前9時に、電気自動車EV3の「受電の終了時刻(Td)」を迎えたため、電気自動車EV3は、受電の継続を終了する(図2のS03でNO)。この時の電気自動車EV3の充電率は、約60%であった。
このように、参考例において、差分電力(ΔP)が零である時に、新たな電気自動車EV3が受電を開始しようとしても、他の電気自動車EV1が受電の継続を終了する(図2のS03でNO)まで、電気自動車EV3は受電を開始することができない。よって、新たな電気自動車EV3の受電を早期に開始することが難しい。
これに対して、第5実施形態では、計算装置23が、右辺に電力補正値(αPt)の項を備える(7)式に従って、要素受電電力(Pt+1)を更新する。よって、午前2時に電気自動車EV2が受電を開始した後、電力設備12を経由して供給される総送電電力の現在値(Pall_now)に余白が生じる。つまり、差分電力(ΔP)が零になりにくくなる。総送電電力の現在値(Pall_now)の余白が、差分電力(ΔP)として、新たに受電を開始しようと試みた電気自動車EV3にも分配される。
よって、電気自動車EV3の要素受電電力は、受電を開始した時刻(午前3時)から増加している。これにより、電気自動車EV3の「受電の終了時刻(午前9時)」における充電率SOCを、約60%から約70%まで高めることができた。このように、電気自動車EV3は、他の電気自動車EV1の受電の終了を待たずに、早期に受電を開始することができるので、電気自動車EV3の受電終了時の充電率を高めることができた。
(7)式に示したように、電力補正値(αPt)は、要素受電電力(Pt)に比例している。これにより、要素受電電力(Pt)に応じて、総送電電力に生じる余白を、複数の電気自動車の間で負担し合うことができる。
(第3変形例)
第5実施形態における優先度(β)は、固定値(1/N)であった。これに対して、第3変形例では、バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)からバッテリ25の充電率の現在値(SOCnow)を減算して得られる未充電率(ΔSOC)に基づいて、優先度(β)を算出する例を説明する。
第3変形例に係わる受電制御装置は、車両状態取得装置22を備える。車両状態取得装置22は、バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)及びバッテリ25の充電率の現在値(SOCnow)を示す情報を取得する。具体的には、図2に示す処理サイクルのステップS02において、車両状態取得装置22は、バッテリ25の充電率を測定し、測定した値を、現在値(SOCnow)として取得する。
計算装置23は、図2のステップS04において、(8)式を用いて、バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)から電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。優先度(β)は未充電率(ΔSOC)に比例する。或いは、優先度(β)は未充電率(ΔSOC)のg乗(gは2以上の正数)に比例していてもよい。ユーザが目標値(SOCgoal)を設定していない場合は、目標値(SOCgoal)を100%即ち1.00に設定する。
なお、第3変形例において、現在値(SOCnow)が目標値(SOCgoal)に到達した時、図2のステップS03において、計算装置23は、受電の継続を終了すると判断してもよい。
(シミュレーション結果)
次に、第3変形例に係わる受電制御方法に従って受電制御を実行したシミュレーションの結果を説明する。
第3変形例のシミュレーションの条件は、図11A及び図12Aに示すように、第5実施形態のシミュレーションの条件と同じである。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の補正率αは0.015に設定され、優先度βは、参考例及び第3変形例の双方とも、(8)式に従って計算される。
次に、シミュレーションの結果を説明する。図12Bは、シミュレーションの結果を示す8つのグラフであり、左側の4つのグラフが参考例に係わり、右側の4つのグラフが第3変形例に係わる。各グラフの縦軸及び横軸が示す数値の種類は、図5Bの各グラフのそれらと同じであるため、再度の説明を割愛する。
参考例では、計算装置23が、(3)式に従って、要素受電電力(Pt+1)を更新する。(3)式は、(7)式に比べて、右辺に電力補正値(αPt)の項を備えていない。よって、電気自動車EV2が受電を開始した午前2時以降、差分電力(ΔP)は零のまま変化しない。よって、午前3時に受電を開始した電気自動車EV3の優先度が、他の電気自動車(EV1、EV2)よりも高いにも係わらず、電気自動車EV3は、他の電気自動車EV1の受電が終了する午前6時まで、受電を開始できず、充電率SOCは開始時SOCのまま変化しない。受電の終了時刻(午前9時)における電気自動車EV3の充電率は、約60%であった。
これに対して、第3変形例では、計算装置23が、右辺に電力補正値(αPt)の項を備える(7)式に従って、要素受電電力(Pt+1)を更新する。よって、午前2時に電気自動車EV2が受電を開始した後、電力設備12を経由して供給される総送電電力の現在値(Pall_now)に余白が生じる。つまり、差分電力(ΔP)が零に成りにくくなる。総送電電力の現在値(Pall_now)に余白が、差分電力(ΔP)として、新たに受電を開始しようと試みた電気自動車EV3にも分配される。
よって、電気自動車EV3の要素受電電力は、受電を開始した時刻(午前3時)から増加している。これにより、電気自動車EV3の「受電の終了時刻(午前9時)」における充電率SOCを、約60%から約80%まで高めることができた。このように、電気自動車EV3は、他の電気自動車EV1の受電の終了を待たずに、早期に受電を開始することができるので、電気自動車EV3の受電終了時の充電率を高めることができた。
(第4変形例)
第4変形例では、未充電率(ΔSOC)の代わりに、現時刻(To)から受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)に基づいて、優先度(β)を算出する例を説明する。
第4変形例に係わる受電制御装置は、車両状態取得装置22を備える。車両状態取得装置22は、現時刻(To)から電気自動車EV1の受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)を示す情報を取得する。具体的には、図2に示す処理サイクルのステップS02において、車両状態取得装置22は、残り時間(T)を示す情報を取得する。或いは、受電の終了時刻(Td)を示す情報を取得し、現時刻(To)から受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)を算出しても構わない。
計算装置23は、図2のステップS04において、(2)式を用いて、現時刻(To)から受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)から優先度(β)を算出する。優先度(β)は残り時間(T)に反比例する。残り時間(T)が短くなるにつれて、優先度(β)は高くなる。(2)式は一例にすぎず、例えば、優先度(β)は、残り時間(T)を2以上のg回(gは正数)掛け算した「残り時間(T)のg乗」に反比例してもよい。
(シミュレーション結果)
次に、第4変形例に係わる受電制御方法に従って受電制御を実行したシミュレーションの結果を説明する。
第4変形例のシミュレーションの条件は、図11A及び図13Aに示すように、第5実施形態のシミュレーションの条件と同じである。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の補正率αは0.015に設定され、優先度βは、参考例及び第4変形例の双方とも、(2)式に従って計算される。
次に、シミュレーションの結果を説明する。図13Bは、シミュレーションの結果を示す8つのグラフであり、左側の4つのグラフが参考例に係わり、右側の4つのグラフが第4変形例に係わる。各グラフの縦軸及び横軸が示す数値の種類は、図5Bの各グラフのそれらと同じであるため、再度の説明を割愛する。
参考例では、計算装置23が、(3)式に従って、要素受電電力(Pt+1)を更新する。(3)式は、(7)式に比べて、右辺に電力補正値(αPt)の項を備えていない。よって、電気自動車EV2の要素受電電力が安定した午前3時以降、差分電力(ΔP)は零のまま変化しない。よって、午前3時に受電を開始した電気自動車EV3の優先度が、他の電気自動車(EV1、EV2)よりも高いにも係わらず、電気自動車EV3の要素受電電力(Pt)は増加せず、ほぼ零のままを維持する。よって、他の電気自動車EV1の受電が終了する午前6時まで、電気自動車EV3は受電を開始できず、充電率SOCは開始時SOCのまま、ほとんど変化しない。受電の終了時刻(午前9時)における電気自動車EV3の充電率は、約60%であった。
これに対して、第4変形例では、計算装置23が、右辺に電力補正値(αPt)の項を備える(7)式に従って、要素受電電力(Pt+1)を更新する。よって、午前2時に電気自動車EV2が受電を開始した後、電気自動車EV1の要素受電電力が減少し始め、午前3時以降においても、差分電力(ΔP)が零にならず、総送電電力の現在値(Pall_now)に余白が残った。これにより、総送電電力の現在値(Pall_now)の余白が、差分電力(ΔP)として、午前3時に新たに受電を開始しようと試みた電気自動車EV3にも分配され、早期に、電気自動車EV3の要素受電電力が増加した。このように、総送電電力の現在値(Pall_now)に余白が残ることにより、新たに受電を開始しようとする電気自動車EV3に早期に受電を開始させることができた。
電気自動車EV3の要素受電電力は、受電を開始した時刻(午前3時)から増加している。これにより、電気自動車EV3の「受電の終了時刻(午前9時)」における充電率SOCを、約60%から約80%まで高めることができた。このように、電気自動車EV3は、他の電気自動車EV1の受電の終了を待たずに、早期に受電を開始することができるので、電気自動車EV3の受電終了時の充電率を高めることができた。
電気自動車EV1の満充電となる時刻は、参考例より遅くなったが、電気自動車EV1の受電の終了時刻(Td)までには満充電に到達したため、ユーザの要求は満たされている。また、受電の終了時刻(10時=Td)における電気自動車EV2の充電率は、満充電に到達しなかったが、95%以上の充電率まで到達しているため、ユーザの要求は十分に満たされていると判断できる。このように、負荷群11に含まれる全ての電気自動車(EV1~EV3)のユーザの要求を満たしつつ、各電気自動車の充電率を平準化することができた。換言すれば、各電気自動車の終了時刻(Td)における充電率の分散を小さくすることができた。
(第5変形例)
第5変形例では、未充電率(ΔSOC)及び受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)に基づいて、優先度(β)を算出する例を説明する。なお、第5変形例では、優先度(β)を算出する方法として、第3実施形態で説明した(5)式を用いた優先度(β)の算出方法を援用することができる。
第5変形例に係わる受電制御装置は、車両状態取得装置22を備える。車両状態取得装置22は、充電率の目標値(SOCgoal)及びバッテリ25の充電率の現在値(SOCnow)を示す情報、及び残り時間(T)を示す情報を取得する。具体的には、図2に示す処理サイクルのステップS02において、車両状態取得装置22は、バッテリ25の充電率を測定し、測定した値を、現在値(SOCnow)として取得する。更に、車両状態取得装置22は、残り時間(T)を示す情報を取得する。或いは、車両状態取得装置22は、受電の終了時刻(Td)を示す情報を取得し、受電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)を算出しても構わない。
ステップS04で、計算装置23は、(2)式の代わりに、(5)式を用いて、終了時刻(Td)までの残り時間(T)及びバッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)から電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。第5変形例では、(5)式を用いて優先度(β)を算出するが、(5)式の代わりに(6)式を用いても構わない。
(シミュレーション結果)
次に、第5変形例に係わる受電制御方法に従って受電制御を実行したシミュレーションの結果を説明する。
第5変形例のシミュレーションの条件は、図11A及び図14Aに示すように、第5実施形態のシミュレーションの条件と同じである。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の補正率αは0.015に設定され、優先度βは、参考例及び第5変形例の双方とも、(5)式に従って計算される。ただし、充電率の目標値(SOCgoal)は、デフォルト値である満充電(100%=1.00)に設定されている。
次に、シミュレーションの結果を説明する。図14Bは、シミュレーションの結果を示す8つのグラフであり、左側の4つのグラフが参考例に係わり、右側の4つのグラフが第5変形例に係わる。各グラフの縦軸及び横軸が示す数値の種類は、図5Bの各グラフのそれらと同じであるため、再度の説明を割愛する。
参考例では、計算装置23が、(3)式に従って、要素受電電力(Pt+1)を更新する。(3)式は、(7)式に比べて、右辺に電力補正値(αPt)の項を備えていない。よって、電気自動車EV2の要素受電電力が安定した午前4時以降、差分電力(ΔP)は零のまま変化しない。ただし、電気自動車EV3が受電を開始した午前3時の時点において、差分電力(ΔP)は僅かに残っていたため、電気自動車EV3の要素受電電力(Pt)は僅かに増加するが、差分電力(ΔP)が零になった午前4時以降、増加していない。よって、午前3時に受電を開始した電気自動車EV3の優先度が、他の電気自動車(EV1、EV2)よりも高いにも係わらず、電気自動車EV3の要素受電電力(Pt)は、他の電気自動車(EV1、EV2)の要素受電電力(Pt)よりも大きくなっていない。よって、他の電気自動車EV1の受電が終了する午前6時まで、電気自動車EV3は受電を開始できず、充電率SOCは開始時SOCのまま、ほとんど変化しない。受電の終了時刻(午前9時)における電気自動車EV3の充電率は、約60%であった。
これに対して、第5変形例では、計算装置23が、右辺に電力補正値(αPt)の項を備える(7)式に従って、要素受電電力(Pt+1)を更新する。よって、午前2時に電気自動車EV2が受電を開始した後、電気自動車EV1の要素受電電力が減少し始め、午前3時以降においても、差分電力(ΔP)が零にならず、総送電電力の現在値(Pall_now)に余白が残った。これにより、総送電電力の現在値(Pall_now)の余白が、差分電力(ΔP)として、午前3時に新たに受電を開始しようとした電気自動車EV3にも分配され、早期に、電気自動車EV3の要素受電電力が増加した。このように、総送電電力の現在値(Pall_now)に余白が残ることにより、新たに受電を開始しようとする電気自動車EV3に早期に受電を開始させることができた。
電気自動車EV3の要素受電電力は、受電を開始した時刻(午前3時)から増加している。これにより、電気自動車EV3の「受電の終了時刻(午前9時)」における充電率SOCを、約60%から約80%まで高めることができた。このように、電気自動車EV3は、他の電気自動車EV1の受電の終了を待たずに、早期に受電を開始することができるので、電気自動車EV3の受電終了時の充電率を高めることができた。
受電の終了時刻(11時=Td)における電気自動車EV1の充電率は、満充電に到達しなかったが、95%以上の充電率まで到達しているため、ユーザの要求は十分に満たされていると判断できる。同様に、受電の終了時刻(10時=Td)における電気自動車EV2の充電率は、満充電に到達しなかったが、約90%の充電率まで到達しているため、ユーザの要求は十分に満たされていると判断できる。このように、負荷群11に含まれる全ての電気自動車(EV1~VE3)のユーザの要求を満たしつつ、各電気自動車の充電率を平準化することができた。換言すれば、各電気自動車の終了時刻(Td)における充電率の分散を小さくすることができた。
(第6変形例)
第5実施形態の受電制御装置は、(7)式に示すように、要素受電電力(Pt)を更新する際に、前回の要素受電電力(Pt)から、電力補正値(αPt)を減算することにより、差分電力(ΔP)を零に成り難くしている。これにより、総送電電力の現在値(Pall_now)に余白が生じて、新たに受電を開始しようとする電気自動車に早期に受電を開始させることができる。
その一方で、電力補正値(αPt)を減算することにより、電力供給基点10を経由して負荷群11の全体に送っている総送電電力の現在値(Pall_now)は、総送電電力の最大値(Pall_max)に収束せずに、総送電電力の最大値(Pall_max)よりも小さくなる。これにより、総送電電力の利用効率、すなわち、総送電電力の最大値(Pall_max)に対する総送電電力の現在値(Pall_now)の割合は低くなる。
電力補正値(αPt)の減算が必要となるのは、差分電力(ΔP)が零となる場合であって、差分電力(ΔP)が零で無ければ、電力補正値(αPt)を減算する必要はない。
そこで、第6変形例の受電制御方法は、図2に示す処理サイクルに、差分電力(ΔP)が零であるか否かを判断する処理ステップを追加し、その判断結果に応じてステップS05の要素受電電力(Pt)の更新ステップにおいて使用する計算式を、(3)式と(7)式とで使い分ける。
計算装置23は、図2のステップS05において、更新後の要素受電電力(Pt+1)を算出する前に、ステップS01で取得した情報が示す差分電力(ΔP)が零であるか否かを判断する。
第6変形例において、「差分電力(△P)が零である」とは、差分電力(△P)が正確に零である場合のみならず、差分電力(△P)が零であると見なすことができる一定の範囲(以後、「零の範囲」と呼ぶ)内である場合も含まれる。零の範囲は、差分電力(△P)が0以上、しきい電力(△Pth)以下である範囲である。
零の範囲に応じて、受電制御システムの応答性が変化する。零の範囲を広げることにより、総送電電力の余白を早く発生させることができる、つまり、総送電電力の余白を作る応答性を高めることができる。これにより、新たな電気自動車に早期に受電を開始させることができる。一方、零の範囲を狭めることにより、差分電力の余白の発生を遅らせることができる。つまり、総送電電力の余白を作る応答性を低くすることができる。これにより、総送電電力の現在値(Pall_now)を総送電電力の最大値(Pall_max)により近づけることができるので、総送電電力の利用効率(Pall_now/Pall_max)を高めることができる。このように、零の範囲、つまり、しきい電圧(ΔPth)は、新たな電気自動車の早期受電開始と、総送電電力の利用効率の向上とを勘案して、定められるパラメータである。
差分電力(ΔP)が零であると判断した場合、計算装置23は、総送電電力の現在値(Pall_now)に余白を生成する必要があるため、(7)式に基づいて、要素受電電力(Pt+1)を更新する。即ち、計算装置23は、前回の処理サイクルにおける要素受電電力(Pt)に、要素差分電力(βΔP)を加算し、且つ、電力補正値(αPt)を減算することにより、要素受電電力(Pt+1)を更新する。
差分電力(ΔP)が零でないと判断した場合、総送電電力の現在値(Pall_now)に既に余白が生成されているため、新たな余白を作るための電力補正値(αPt)の項は不要である。よって、計算装置23は、(3)式に基づいて、要素受電電力(Pt+1)を更新する。即ち、計算装置23は、前回の処理サイクルにおける要素受電電力(Pt)に、要素差分電力(βΔP)を加算することにより、要素受電電力(Pt+1)を更新する。
上記した処理サイクルを繰り返すことにより、差分電力(ΔP)が零であるか否かの判断結果に応じて、ステップS05の要素受電電力(Pt)の更新ステップにおいて使用する計算式を、(3)式と(7)式とで切り替えることができる。
これにより、新たに受電を開始しようとする電気自動車に早期に受電を開始させることができると同時に、電力供給基点10を経由して供給される総送電電力の利用効率(Pall_now/Pall_max)を高めることができる。
(3)式と(7)式とで切り替える具体的な方法として、例えば、計算装置23は、差分電力(ΔP)が零でないと判断した場合、(7)式における補正率αを零に設定し、差分電力(ΔP)が零であると判断した場合、(7)式における補正率αを零ではない値(例えば、0.015)に設定する。これにより、計算装置23は、(7)式における電力補正値(αPt)の項の有無を切り替えて、要素受電電力(Pt+1)を更新することができる。
なお、第6変形例において、優先度(β)の算出方法は、特に問わない。優先度(β)は、第5実施形態のように固定値(1/N)であってもよいし、(8)式のように未充電率(ΔSOC)に基づいて算出してもよいし、(2)式のように残り時間(T)に基づいて優先度(β)を算出してもよし、或いは、(4)式又は(5)式のように未充電率(ΔSOC)と残り時間(T)とを組み合わせて算出してもよいし、その他の算出方法を用いて算出してもよい。
(シミュレーション結果)
次に、第6変形例に係わる受電制御方法に従って受電制御を実行したシミュレーションの結果を説明する。
第6変形例のシミュレーションの条件は、図14A及び図15Aに示すように、第5変形例のシミュレーションの条件と同じである。各電気自動車(EV1、EV2、EV3)の補正率αは0.015に設定され、優先度βは、第5変形例及び第6変形例の双方とも、(5)式に従って計算される。ただし、充電率の目標値(SOCgoal)は、デフォルト値である満充電(100%=1.00)に設定されている。第5変形例では、差分電力(ΔP)が零であるか否かに係わらず、常に、(7)式の補正率αを0.015に設定して要素受電電力(Pt+1)を更新した。これに対して、第6変形例では、差分電力(ΔP)が零である場合に限り、(7)式の補正率αを0.015に設定して、要素受電電力(Pt+1)を更新し、差分電力(ΔP)が零でない場合、(7)式の補正率αを零に設定して、すなわち(3)式用いて、要素受電電力(Pt+1)を更新した。
次に、シミュレーションの結果を説明する。図15Bは、シミュレーションの結果を示す8つのグラフであり、左側の4つのグラフが第5変形例に係わり、右側の4つのグラフが第6変形例に係わる。各グラフの縦軸及び横軸が示す数値の種類は、図5Bの各グラフのそれらと同じであるため、再度の説明を割愛する。
第5変形例(左側の4つのグラフ)と比べた第6変形例(右側の4つのグラフ)の相違点を説明する。午前1時に受電を開始した電気自動車EV1、及び午前2時に受電を開始した電気自動車EV2の双方の要素受電電力(Pt)が、受電開始直後から急速に増加している。更に、総送電電力の現在値(Pall_now)も急速に増加している。なぜなら、この時、差分電力(ΔP)が零でないと判断されるため、電力補正値(αPt)の項を用いずに、電気自動車(EV1、EV2)の要素受電電力(Pt)を更新しているからである。
午前3時に電気自動車EV3が受電を開始した後、差分電力(ΔP)が零にならず、総送電電力の現在値(Pall_now)に余白が残った。なぜなら、差分電力(ΔP)が零であると判断されるため、電力補正値(αPt)の項を用いて、電気自動車(EV1~EV3)の要素受電電力(Pt)を更新しているからである。
第6変形例によれば、第5変形例に比べて、総送電電力の現在値(Pall_now)と総送電電力の最大値(Pall_max)との差を小さくしつつ、総送電電力の現在値(Pall_now)に余白を残して差分電力(ΔP)を零になりにくくすることもできる。換言すれば、電力供給基点10を経由して負荷群11に供給される総送電電力の利用効率(Pall_now/Pall_max)を高め、且つ新たに受電を開始しようとする電気自動車に早期に受電を開始させることができる。
なお、電力補正値(αPt)は、要素受電電力(Pt)の代わりに、電気自動車EV1の受電することができる要素受電電力の最大値(Ptmax)に比例させてもよい。これにより、総送電電力の現在値(Pall_now)の余白の生成を、要素受電電力の最大値(電力容量)に応じて、複数の電気自動車の間で適切に負担し合うことができる。
(第1実施例)
上述した全ての実施形態及びその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法は、電気エネルギーの発生(発電)から輸送(送電・変電)、消費(需要)、及び供給(配電)に至る電力システムの全体における様々な段階、レベル、又はシーンに対して適用することができる。
ここでは、第1~第7実施例として、実施形態及びその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法を適用することができる主な段階、レベル、又はシーンの例を例示する。しかし、電制御装置及び受電制御方法の適用可能な範囲を限定する意図はない。実施形態及びその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法によれば、電力システム上において任意に設定された電力供給基点10に基づいて、様々な受電要素又は蓄電要素の受電制御を実施することができる。
なお、第1~第7実施例において、受電制御装置は電気自動車EVに搭載されているが、受電制御装置は、制御対象となる電気自動車(受電要素)の外部に配置されていても構わない。
第1実施例では、住宅、オフィスビル、商業施設、工場、又は高速道路のパーキングエリア等の敷地内に設置された電気自動車EV用の充電スタンドに適用した例を説明する。図16に示すように、1台のポール型の充電スタンド51に複数の充電ケーブルが接続され、各充電ケーブルの端部に充電コネクタが設けられている。このような充電スタンド51は、「マルチポート充電器」とも呼ばれる。各充電コネクタは、電気自動車(EV1~EV5)の充電ポートにそれぞれ接続されている。充電スタンド51の上流から供給される電気エネルギーは、充電スタンド51を経由して、電気自動車(EV1~EV5)へ供給される。
第1実施例において、充電スタンド51が「電力供給基点10」に相当し、負荷群11は電気自動車(EV1~EV5)により構成される。負荷群11に、その他の電力消費要素15に相当する構成は含まれていない。しかし、負荷群11に、実施形態又は変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法を適用した他の受電要素又は他の蓄電要素が含まれていても構わない。
充電スタンド51を経由して、全ての電気自動車(EV1~EV5)へ供給することができる総送電電力の最大値(Pall_max)は、予め定められ、例えば10kWである。充電スタンド51は、充電スタンド51を経由して全ての電気自動車(EV1~EV5)に送られている総送電電力の現在値(Pall_now)を計測する電流計測装置13と、総送電電力の最大値(Pall_max)から総送電電力の現在値(Pall_now)を減ずることにより差分電力(ΔP)を算出する計算部31とを備える。そして、充電スタンド51に隣接して送信部32が設置されている。送信部32は、差分電力(ΔP)を示す電気信号を、負荷群11に含まれる全ての電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)に対して、例えば、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等の無線通信技術を用いて送信(ブロードキャスト)する。送信部32の代わりに、充電ケーブルを介した有線通信により同報送信してもよい。
各電気自動車(EV1~EV5)が受電可能な最大電力を例えば3kWとすると、3台までは最大電力3kWで同時に充電することができる。4台又は5台同時に受電を行う場合、電気自動車(EV1~EV5)の間で電力の分け合う必要が生じる。よって、実施形態又はその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法を適用することにより、優先度(β)に応じて、電気自動車(EV1~EV5)の充電時間をずらす、又は要素受電電力(Pt)を制限することができる。よって、上記説明した技術的な効果及び意義を得ることができる。
例えば、車両での通勤を行う場合、職場に設置された充電設備での充電時間は、一般的に1台あたり約2~3時間であり、勤務時間(8時間)に対して短い。全ての電気自動車(EV1~EV5)が、出勤時にほぼ同時に、最大電力(3kW)で受電を開始するためには契約電力が膨大になり、充電スタンド51の数も増えてしまう。電気自動車(EV1~EV5)の充電時間をずらす、又は要素受電電力(Pt)を制限することにより、契約電力及び充電スタンド51の数を低く抑えることができる。
既存の設備(充電スタンド51)は、電流計測装置13及び計算部31を備えているので、送信部32のみをデバイスとして追加すれば、実現可能である。よって、既存の設備に対して低コストで導入することができる。また、優先度(β)を決めるために、電気自動車(EV1~EV5)から充電スタンド51への送信機能は不要であり、送信部32は片方向送信のみで良いので、増設する送信部32の機能も低く抑えることができる。
電気自動車(EV1~EV5)の各々が、個別に並列に、自己の優先度(β)を決定して、自己の要素受電電力(Pt)を制御する。充電スタンド51は、差分電力(ΔP)を算出し、電気自動車(EV1~EV5)へ同報送信すればよい。よって、既存の設備(充電スタンド51)に対して追加する機能を低く抑えることができる。
第1実施例は、およそ3台~10台程度の電気自動車を含む負荷群11に電力を送る充電スタンド51を「電力供給基点10」とした適用事例である。充電スタンド51の充電形式は特に問わず、普通充電(出力:単相100V/200V交流)及び急速充電(出力:最大500V直流)のいずれにも適用できる。
(第2実施例)
第2実施例では、住宅、オフィスビル、商業施設、工場、又は高速道路のパーキングエリア等の施設内に設置された変電装置を「電力供給基点10」とした例を説明する。施設内の変電装置は、充電スタンド51よりも上流側の電力設備12の一例である。図17Aに示すように、ケーブルが無いコンセント型の充電ポート(P1~P5)へ電力を送る変電設備52が従前から設置されていた。しかし、充電ポート(P6~P10)を増設する必要が生じた場合を考える。比較例では、図17Aに示すように、充電ポート(P6~P10)へ電力を送る第2の変電設備53を増設した。比較例では、第1の変電設備52及び第2の変電装置53の双方を経由する電力の分だけ、契約電力が必要であり、従前よりも電力コストが増加してしまう。
これに対して、第2実施例では、図17Bに示すように、充電ポート(P1~P5)へ電力を送る送電ケーブルを延長し、延長した送電ケーブルに充電ポート(P6~P10)を接続する。充電ポート(P1~P10)から受電を行う全ての電気自動車に対して、実施形態又はその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法を適用する。
従前から設置されていた変電設備52を経由する総送電電力の最大値(Pall_max、契約電力)及び送電ケーブルの電力容量を増量する必要はなく、送信部32のみをデバイスとして追加している。変電設備52は、電流計測装置13としての機能を備えていればよい。
なお、第2実施例では、図4に示した第2変形例をベースにしている。すなわち、充電ポート(P1~P10)に接続された各電気自動車に搭載された受信装置21が、変電設備52を経由して電気自動車の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max、契約電力)を示す電気信号と、総送電電力の現在値(Pall_now)を示す電気信号とを受信し、各電気自動車に搭載された計算装置23が差分電力(ΔP)を計算し、自己の要素受電電力(Pt)を制御する。勿論、電流計測装置13が差分電力(ΔP)を計算して、送信部32が、差分電力(ΔP)を示す電気信号を送信しても構わない。
第2実施例において、変電設備52が「電力供給基点10」に相当し、負荷群11は充電ポート(P1~P10)に接続された電気自動車により構成される。負荷群11に、その他の電力消費要素15に相当する構成は含まれていない。しかし、負荷群11に、実施形態又は変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法を適用した他の受電要素又は他の蓄電要素が含まれていても構わない。
その他の構成は、第1実施例と共通するため、再度の説明は割愛する。
(第3実施例)
第3実施例では、発電所で発電され、変電所を経由して伝送された電力を分配する配電設備を「電力供給基点10」とした例を説明する。
図18に示すように、配電設備53(電力供給基点10の一例)を経由する電力は、複数の柱上変圧器71へ分配され、各柱上変圧器71を経由した電力は、複数の住宅(H1~HM)及び複数の電気自動車(EV1~EVM)へ分配される。Mは、住宅及び電気自動車の数を示す。
複数の柱上変圧器71より上流側の配電設備53上に、電流計測装置13が設置されている。電流計測装置13は、配電設備53を経由して複数の住宅(H1~HM)及び複数の電気自動車(EV1~EVM)の全体に送られている総送電電力の現在値(Pall_now)を計測する。電流計測装置13により計測された総送電電力の現在値(Pall_now)を示す電気信号は送信部32に送信される。送信部32は、全ての住宅(H1~HM)及び電気自動車(EV1~EVM)に対して、例えば、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等の無線通信技術を用いて送信(ブロードキャスト)する。送信部32は、送電ケーブルを介した有線通信により同報送信してもよい。
配電設備53を経由して電力を受電する全ての住宅(H1~HM)及び全ての電気自動車(EV1~EVM)に対して、実施形態又はその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法を適用する。第3実施例において、配電設備53が「電力供給基点10」に相当し、負荷群11は、複数の住宅(H1~HM)及び複数の電気自動車(EV1~EVM)により構成される。複数の住宅(H1~HM)は、その他の電力消費要素15に相当する。
なお、複数の住宅(H1~HM)の中で、据置型バッテリが設置されている住宅がある場合、据置型バッテリを充電する時の受電制御に対して、実施形態又はその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法を適用することができる。この場合、据置型バッテリは、他の蓄電要素の一例となる。
なお、第3実施例も、第2実施例と同様に、図4に示した第2変形例をベースにしている。すなわち、電気自動車(EV1~EVM)が備える受信装置21が、総送電電力の最大値(Pall_max、契約電力)を示す電気信号と、総送電電力の現在値(Pall_now)を示す電気信号とを受信し、差分電力(ΔP)を計算する。勿論、電流計測装置13が差分電力(ΔP)を計算して、送信部32が差分電力(ΔP)を示す電気信号を送信しても構わない。
第3実施例における配電設備53には、配電線、開閉器、電圧調整器、フィーダーなど、柱上変圧器71よりも上流側の設備又は機器が含まれる。
第3実施例によれば、配電設備53を経由して電力が供給される地域又は区画内で、充電を行う電気自動車(EV1~EVM)が増加した場合であっても、配電設備53の送電電力の容量オーバーを防止することができる。
(第4実施例)
第1~第3実施例において、電力供給基点(51、52、53)を経由して負荷群11の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)は、変動しない固定値である場合を説明した。しかし、総送電電力の最大値(Pall_max)が時間で変動する場合であっても、実施形態又はその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法を適用することができる。
第4実施例では、総送電電力の最大値(Pall_max)が時間で変動する一例を説明する。図19Aに示すように、オフィスビル、商業施設、工場、高速道路のパーキングエリア等の施設内には、電気自動車EV用の充電スタンドのみならず、照明装置、空調装置、昇降装置など、電力を消費する施設内機器56が存在する。
施設内に設置された変電装置54は、充電スタンドに接続された電気自動車(EV1~EVM)に電力を伝送するのみならず、施設内機器56にも電力を伝送する。図19Bに示すように、施設内機器56が消費する電力(以後、「施設消費電力」と呼ぶ)は、時間帯に応じて大きく異なる。午前8時から午後9時までの施設消費電力は、午前0時から午前7時までの施設消費電力の3倍以上、大きい。
施設の管理者は、変電装置54を経由して施設内機器56及び充電スタンドに接続された電気自動車(EV1~EVM)の全体に送ることができる総送電電力の上限値(Pth)に基づいて、電力容量の契約を締結するのが一般的である。
よって、施設内機器56の消費電力が最も多くなる正午前後の時間帯において、電気自動車(EV1~EVM)へ送る電力を低く抑え、施設内機器56の消費電力が比較的に少ない時間帯において、電気自動車(EV1~EVM)へ送る電力を増やすことで、総送電電力の上限値(Pth)低く抑えることができる。
そこで、図19Bに示すように、施設消費電力の時間変化、及び予め定められた総送電電力の上限値(Pth)に基づいて、電気自動車(EV1~EVM)の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)を変化させる。つまり、総送電電力の最大値(Pall_max)を、総送電電力の上限値(Pth)から施設消費電力を減算した値とする。これにより、総送電電力の最大値(Pall_max)は、施設消費電力に連動して変化することになる。
なお、第4実施例において「負荷群11」に、全ての電気自動車(EV1~EVM)は含まれるが、施設内機器56は含まれない。変電装置54の下流側に変電設備52が設けられている。変電設備52は、電気自動車(EV1~EVM)の全体に電力を送る。変電設備52は、図17Bに示した変電設備52と同じ構成を備える。第4実施例において、変電設備52が「電力供給基点10」に相当する。
第4実施例において、施設消費電力の現在値を計測する施設電力計測器57を設置してもよい。施設電力計測器57が計測する施設消費電力の現在値を示す電気信号は、変電設備52に送信される。変電設備52内の計算部は、総送電電力の上限値(Pth)から施設消費電力の現在値を減算することにより、総送電電力の最大値(Pall_max)を算出する。
なお、施設電力計測器57を設置する代わりに、施設消費電力の時間変化の履歴を分析することにより得られる施設消費電力の統計データを予め用意してもよい。変電設備52内の計算部が、総送電電力の上限値(Pth)から施設消費電力の統計データを減算することにより、総送電電力の最大値(Pall_max)を算出する。
変電設備52に隣接して送信部32が設置されている。送信部32は、総送電電力の最大値(Pall_max)を示す電気信号と、総送電電力の現在値(Pall_now)を示す電気信号とを、全ての電気自動車(EV1~EVM)に対して送信する。電気自動車(EV1~EVM)が備える受信装置21が、総送電電力の最大値(Pall_max)及び総送電電力の現在値(Pall_now)から差分電力(ΔP)を計算する。勿論、変電設備52内の電流計測装置13が差分電力(ΔP)を計算して、送信部32が差分電力(ΔP)を示す電気信号を送信しても構わない。
或いは、変電設備52が差分電力(ΔP)を計算してもよい。この場合、送信部32は、差分電力(ΔP)を示す電気信号を送信する。
第4実施例では、時間の経過と共に変化する総送電電力の最大値(Pall_max)に基づいて差分電力(ΔP)を計算することにより、総送電電力の上限値(Pth)を下げて、電力コストを低く抑えることができる。
(第5実施例)
実施形態及びその変形例に係わる受電制御装置は、オフィスビル、商業施設、工場、高速道路のパーキングエリア等の電気を消費する施設が、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった再生可能エネルギーの発電設備を自ら備えている場合にも適用することができる。この場合、図19Cに示すように、総送電電力の上限値(Pth)の上に、自家発電電力が加算された第2の上限値(Pthb)に基づいて、総送電電力の最大値(Pall_max)を変化させることができる。つまり、第2の上限値(Pthb)から施設消費電力を減算した値を、総送電電力の最大値(Pall_max)として設定することができる。
太陽光や風力といった一部の再生可能エネルギーは、その発電電力が季節や天候に左右される。第5実施例において、図19Aの施設電力計測器57は、施設消費電力の現在値を計測し、且つ、自家発電電力の現在値を計測する。施設電力計測器57が計測する施設消費電力の現在値及び自家発電電力の現在値を示す電気信号は、変電設備52に送信される。変電設備52内の計算部は、総送電電力の上限値(Pth)から施設消費電力の現在値を減算し、更に、自家発電電力の現在値を加算することにより、総送電電力の最大値(Pall_max)を算出する。
なお、施設電力計測器57を設置する代わりに、自家発電電力の時間変化の履歴を分析することにより得られる自家発電電力の統計データを予め用意してもよい。変電設備52内の計算部が、総送電電力の上限値(Pth)から施設消費電力の統計データを減算し、更に、自家発電電力の統計データを加算することにより、総送電電力の最大値(Pall_max)を算出する。
第5実施例では、総送電電力の上限値(Pth)の上に、自家発電電力が加算された第2の上限値(Pthb)に基づいて差分電力(ΔP)を計算することにより、総送電電力の上限値(Pth)を下げて電力コストを低く抑えることができる。また同時に、再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、自家発電電力を有効に利用した受電制御を行うことができる。
(第6実施例)
図20Aに示すように、複数(ここでは、n個)の地域又は区画(以後、「区画」と略す)が1つの自治体を形成し、n個の区画(61、62、63)の全体へ、n個の区画(61、62、63)よりも上流側の電力設備(例えば、変電所55)を経由して電力が供給される送電シーンに対して、実施形態又はその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法を適用することができる。なお、区画(61、62、63)の各々は、図18の構成に対応している。
変電所55には、自治体の全体に供給することができる総送電電力の限界値(Pcity_max)が設定されている。総送電電力の限界値(Pcity_max)は、各区画(J)へ分配される。電力設備55は、(9)式に示すように、各区画(J)へ分配された最大電力(Pall_max_J)の合計が総送電電力の限界値(Pcity_max)に一致するように、各区画(J)の最大電力(Pall_max_J)を制御する。なお、総送電電力の限界値(Pcity_max)は、区画(J)毎に予め定めた分配率に従って、分配される。
図20Bに示すように、総送電電力の限界値(Pcity_max)は、発電所から電力設備55へ供給される電力の時間変化などに伴って変動する。よって、各区画(J)へ分配される電力(Pall_max_J)も、総送電電力の限界値(Pcity_max)の変動に伴って変化する。
第6実施例において、各区画(J)の最大電力(Pall_max_J)が、電力供給基点10から負荷群11の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)に相当する。第6実施例における電力供給基点10は、各区画内の変電設備52に相当し、負荷群11は、各区画(61、62、63)に相当する。
電力設備55を経由して電力が送られる全ての区画(61、62、63)に対して、実施形態又はその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法を適用する。詳細には、全ての区画(61、62、63)に含まれる全ての受電要素及び蓄電要素に対して、受電制御装置及び受電制御方法を適用する。これにより、区画(61、62、63)よりも上流側の電力設備55から、各区画(J)の最大電力(Pall_max_J)を指示することにより、全ての区画(61、62、63)内の全ての受電要素及び蓄電要素の受電を制御することができる。
(第7実施例)
第1~第6実施例において、負荷群11に含まれる複数の電気自動車EVは、電力系統における一定の現実的な領域内に位置していた。しかし、電力の自由化のもと、多様な電力ビジネスが存在し、且つ様々な電力サービスの提供者が存在する。一部の電力ビジネス又は電力サービスの提供者は、自己に割り当てられた総送電電力の最大値(Pall_max)の範囲内で、電力契約を結んだ複数の需要家に電力を供給するが、電力契約を結んだ需要家が、電力系統における一定の現実的な領域内に位置しているとは限らない。
例えば、図21に示すように、電力サービスの提供者と電力契約を結んだ複数の電気自動車EV(需要家の一例)が、複数の区画(61~63)に跨って位置し、且つ、複数の区画(61~63)内には、他の電力サービスの提供者と電力契約を結んだ他の電気自動車も含まれている。
この場合、負荷群11には、複数の電気自動車EVは含まれるが、他の電気自動車は含まれない。そして、負荷群11の全体に電力を送る電力供給基点10は、配電設備53よりも上流側の変電所55となる。ただし、変電所55を経由する電力の一部は、他の電気自動車にも送られる。
そこで、電力サービスの提供者は、電力契約を結んだ全ての電気自動車EVと双方向に通信が可能なサーバ14を配置する。そして、図3に示したように、各電気自動車EVの受電装置24は、電気自動車EV1が受電した電力(要素受電電力)を測定する電流計測装置27と、要素受電電力(Pt)を示す電気信号を差分情報送信装置14へ無線通信により送信する送信部28とを備える。送信部28として、例えば、4G、5Gなどの移動体通信規格に基づく通信を行う送信機を用いることができる。
サーバ14は、電力契約を結んだ全ての電気自動車EVの要素受電電力を合算することにより、変電所55から負荷群11の全体に送られている総送電電力の現在値(Pall_now)を算出する。サーバ14は、総送電電力の現在値(Pall_now)と、変電所55を経由する総送電電力のうち、電力サービスの提供者に割り当てられた総送電電力の最大値(Pall_max)とに基づいて、差分電力(ΔP)を算出する。そして、サーバ14は、差分電力(ΔP)を示す電気信号を、インターネットを介して電力契約を結んだ全ての電気自動車EVへ送信(ブロードキャスト)する。
全ての電気自動車EVが、実施形態又はその変形例に係わる受電制御装置を用いて、受電制御方法を実行することができる。これにより、負荷群11に含まれる複数の電気自動車EVが、電力系統における一定の現実的な領域内に位置していない場合であっても、実施形態又はその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法を適用することができる。
(その他の実施例)
実施形態及びその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法は、太陽光発電や風力発電、蓄電池、燃料電池など、各地域に分散している小規模の発電設備で発電される電気エネルギーを、IoT(Internet of Things)技術を活用して束ね(アグリゲーション)、束ねた電気エネルギーを制御・管理して使用する電力システムに適用可能である。近隣にある小規模な蓄電要素のエネルギーを束ね、1つの大規模な発電所のように機能させることから、電力システムは、バーチャルパワープラント(仮想発電所:VPP)と呼ばれる。
実施形態又はその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法を用いて、電気エネルギーを束ねるアグリゲータ(電力供給基点10の一例)を経由して、複数の受電要素を含む負荷群11へ電気エネルギーを供給するバーチャルパワープラントにおいて、負荷群11に含まれる受電要素が受電する要素受電電力を制御することができる。
アグリゲータは、自らを経由して負荷群11の全体に送ることができる総送電電力の最大値(Pall_max)を示す情報、及び自らを経由して負荷群の全体に送っている総送電電力の現在値(Pall_now)を示す情報を取得し、当該情報から算出される差分電力(ΔP)を示す電気信号を、負荷群11に含まれる複数の受電要素に対して同報送信する。差分電力(ΔP)を示す電気信号を受信した受電要素の各々は、実施形態又はその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法に従って、自己の要素受電電力(Pt)を、アグリゲータ及び他の受電要素から独立して並列に制御することができる。
実施形態及びその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法は、電力の流れを供給側及び需要側の両方から制御し、最適化できる次世代送電網(所謂、スマートグリッド)に対しても適用可能である。送電網の一部に組み込まれている専用の機器及びソフトウェアが、総送電電力の最大値(Pall_max、契約電力)、総送電電力の現在値(Pall_now)、又は差分電力(△P)を示す電気信号を、負荷群11に含まれる各受電要素又は各蓄電要素に対して送信(ブロードキャスト)することができる。当該電気信号を受信した各受電要素又は各蓄電要素が、実施形態及びその変形例に係わる受電制御装置を用いて、受電制御を実行することができる。
再生可能エネルギーの主力電源化において、再生可能エネルギーの電力源を、大規模電源と需要地を結ぶ従来の電力系統に対して接続することが喫緊の重要な課題である。これに対し、スマートグリッドなどを利用したバーチャルパワープラントの制御システムにおいて、アグリゲータが集中制御を行った場合、アグリゲータは、全ての受電要素又は蓄電要素の要素受電電力(Pt)、総送電電力の現在値(Pall_now)、差分電力(ΔP)などを含む、あらゆるデータを収集する必要がある。よって、双方向通信環境の整備、アグリゲータの情報処理能力の確保など様々な課題があり、導入障壁が高い。
これに対して、実施形態又はその変形例に係わる受電制御装置及び受電制御方法を用いることにより、バーチャルパワープラントの制御システムにおいて、分散制御を実現することができる。つまり、各受電要素又は各蓄電要素が、自らの要素受電電力(Pt)を、アグリゲータ及び他の受電要素又は蓄電要素から独立して並列に制御することにより、双方向通信環境の整備、アグリゲータの情報処理能力の確保など様々な課題を解決することができる。この場合、アグリゲータは、差分電力(ΔP)又は総送電電力の現在値(Pall_now)等のデータを送信(ブロードキャスト)し、各受電要素又は各蓄電要素は当該データを受信すればよい。つまり、アグリゲータから各受電要素又は各蓄電要素への片方向通信だけが必要とされる。
実施形態及びその変形例では、主に、電気自動車EVに搭載された駆動用のバッテリ25を充電するシーンにおける、電気自動車EVの受電制御例を示した。この場合、電気自動車EVは、「蓄電要素」の一例となる。しかし、バッテリ25を搭載する電気自動車EVが「電力消費要素」ひいては「受電要素」の一例となるシーンにおいても、実施形態及びその変形例に係わる受電制御装置又は受電制御方法を適用することができる。つまり、電気自動車EVが、受電した電力をバッテリ25に蓄えずに、そのまま消費するシーンに適用される実施例がある。
例えば、走行中の車両に対して非接触給電を行うことができる走行レーンを有する高速道路を、非接触受電装置を備える複数の車両が走行するシーンがある。この時、複数の車両が走行中に非接触給電を行い、受電した電力をそのまま駆動源としてのモータ26が消費することにより、車両は走行を継続することができる。このような走行中の非接触給電シーンにおいて、バッテリ25の充電が行われない場合がある。この場合、車両は、「蓄電要素」の一例ではなく、受電した電力を蓄電せずに消費する「電力消費要素」の一例となる。
走行レーンを走行する複数の車両は、走行レーンから非接触給電にて、同時に受電を行う。電気自動車EVは、走行中においても、4G、5G等の移動通信システムを用いて情報通信を行うことができる。よって、高速道路に設置された送信部32は、差分電力(ΔP)又は総送電電力の現在値(Pall_now)等のデータを送信(ブロードキャスト)し、複数の車両は当該データを受信することができる。複数の車両の各々は、実施形態又はその変形例に係わる受電制御装置を用いて、受電制御方法を実行することができる。
なお、上述の実施形態、その変形例、及び実施例は、本発明を実施する形態の例である。このため、本発明は、上述の実施形態、その変形例、及び実施例に限定されることはなく、これ以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは言うまでもない。
実施形態及びその変形例に係わる受電制御装置は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備えるマイクロコンピュータを用いて実現可能である。マイクロコンピュータを受電制御装置として機能させるためのコンピュータプログラム(受電制御プログラム)を、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、受電制御装置が備える複数の情報処理部として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって受電制御装置を実現する例を示すが、もちろん、各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、受電制御装置を構成することも可能である。専用のハードウェアには、実施形態、その変形例又は実施例に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。また、受電制御装置に含まれる複数の情報処理部を個別のハードウェアにより構成してもよい。受電制御装置は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。