JP7210268B2 - 工作機械の熱変位補正方法、熱変位補正プログラム、熱変位補正装置 - Google Patents

工作機械の熱変位補正方法、熱変位補正プログラム、熱変位補正装置 Download PDF

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本発明は、温度情報を元に熱変位を推定する熱変位補正機能を有する工作機械において、熱変位推定式のパラメータを変更することにより、熱変位補正の精度を向上させる熱変位補正方法と、当該方法を実行する熱変位補正プログラム及び熱変位補正装置とに関する。
工作機械を用いて加工を行う場合、主軸や送り軸動作などの機械発熱、及び工作機械の設置環境の温度変化や、クーラントの温度変化などの影響により、工作機械各部が熱変形を起こす。こうした熱変位は、工具とワークとの相対位置を変化させることになるため、加工中に工作機械に熱変位が生じると、ワークの加工精度が悪化してしまう。
工作機械の熱変位を抑制する方法としては、工作機械の構造体各部に取り付けた温度センサにより測定した温度、あるいは主軸や送り軸などの運転条件から、予めプログラムされた熱変位推定式に基づいて変位量を推定し、それに応じて軸移動量を変化させる熱変位補正が有効であり広く用いられている。しかし、熱変位補正では、加工内容や使用環境が変わると補正がうまく行かず、パラメータの調整が必要となるケースがある。しかし、どのように調整したら良いかを作業者が判断するのは難しい。
この問題への解決方法として、特許文献1では、熱変位量を、環境温度変化に依存する環境温度系熱変位量と、機械発熱に依存する駆動系熱変位量とに分け、環境温度系熱変位量に対して適切な倍率を掛けて熱変位量の調整を行うことで、使用環境の温度変化の違いに対応できるようにしている。熱変位補正に関するデータを記録し、補正の調整前と調整後の補正量変化をグラフで表示することで、視覚的に調整が行える。さらに、実績加工寸法と目標加工寸法、工具磨耗補正量を入力し、倍率を自動で算出することもできるようにしている。
特許文献2では、放電加工機の熱変位補正において、熱変位を実測した結果をもとに熱変位補正をチューニングする方法が示されている。一定時間毎に加工エリア外にある基準球の位置を計測して変位量を求め、その時の各部位の温度と共に記録する。さらに各温度と変位の間の係数を方程式を解いて求める。また、チューニング前後の補正結果をグラフに表示し、作業者に採用の可否を選択させるようにしている。さらに測定結果をデータベースに蓄積し、蓄積されたデータを元に統計分析を行い補正係数計算値が妥当かどうかを判定したり、類似の温度変化のデータを抽出したりできるようにしている。
特許文献3では、熱変位量の実測値を取得し、それを教師データとして学習することで、熱変位量予測計算式を決定する機械学習装置について記載されている。
特許第6001211号公報 特許第5490304号公報 特開2018-153901号公報
しかし、特許文献1の方法では、環境温度系熱変位量というただ1つの熱変位量に対する倍率の調整のみのため、効果的な調整ができないケースが考えられる。例えば、室温変化と切削液の温度変化の両方が大きい場合、室温変化と切削液温度変化それぞれに対応する補正量の倍率の調整が必要となる。
特許文献2では、複数の測定温度に対して係数の調整を行っている。最小二乗法による複数の入力に対する係数の決定(重回帰分析)では、多重共線性が問題となる。例えば、係数を決定する際に、非常に大きな係数が算出されてしまい、それを熱変位補正に適用した場合に、ごくわずかな温度変化で補正量が大きく変化することになる。このように、一種の過学習が起こり、測定した入力温度に対しては最適な補正となるが、それ以外の入力温度に対しては、熱変位推定結果が非常に不安定になってしまう恐れがある。しかし、特許文献2では、「方程式を解いて係数を求める」とあるが、具体的な計算方法や多重共線性への対処方法については言及されていない。
また、特許文献2には、安定性の高いパラメータを得る方法として、測定結果をネットワークを通じてデータベースに蓄積し、蓄積されたデータを元に統計分析を行い補正係数計算値が妥当かどうかを判定する方法が示されている。しかし、統計分析を行えるだけの充分な測定データが蓄積されるまでは、補正係数計算値が妥当かどうか判断できない問題がある。
また、重回帰分析において、大きな係数が算出されてしまい、未知の入力に対して不安定な推定結果になってしまう問題を防ぐ公知の技術としては、リッジ回帰などの正則化回帰分析(正則化最小二乗法とも呼ぶ)がある。この方法については、特許文献3にも記載されている。この方法では、誤差を最小にするという通常の回帰分析に対し、係数を小さくする制約条件を加えることで、大きな係数が算出されてしまい、未知の入力に対して不安定になる問題を防ぐことができる。
一般的に熱変位補正において使用可能な温度センサの数は限られているため、全ての条件で高精度を実現することは難しい。現実的には、あらゆる条件である程度の精度を実現するモデルとするか、特定の条件で高精度を実現するモデルとするかのトレードオフの関係となる。正則化回帰分析では、係数を小さくする制約条件のパラメータ(正則化パラメータ)を変化させることで、トレードオフの関係を表すことができる。
しかし、正則化パラメータをどの程度に設定すれば良いか使用者が判断することは難しい。正則化パラメータを小さくするほど、測定結果に対する補正結果は良くなるが、環境温度や加工内容が変化すると動作が不安定になる(過大な補正量が入り無補正よりも精度が悪化する)リスクがある。逆に正則化パラメータを大きくすると、補正の動作は安定するが、補正量そのものも小さくなりすぎて補正の効果が十分に得られない。正則化パラメータを適切に設定するには、測定時の運転条件・使用環境と、実加工時の運転条件・使用環境の両方を考慮する必要があり、知識が十分でない作業者が効果的なパラメータ調整を行うには、機械側で適切な設定を行う必要がある。
そこで、本発明は、以上の問題を考慮して、環境温度や加工内容が変化した場合に熱変位補正の動作が不安定になるリスクを抑えつつ、目的とする加工で精度を向上させるための熱変位補正パラメータをチューニングできる工作機械の熱変位補正方法と、当該方法を実行する熱変位補正プログラム及び熱変位補正装置とを提供することを目的としたものである。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、工作機械の各部に設置した温度センサより得られる温度情報又は前記工作機械の動作情報である機械動作情報と所定の係数とによって表される熱変位推定式に基づいて前記工作機械の熱変位を推定する熱変位推定ステップと、推定された熱変位をもとに軸指令値を補正する熱変位補正ステップと、を実行する工作機械の熱変位補正方法であって、
前記熱変位推定ステップは、前記工作機械の変位を測定して得られた変位情報を、前記温度情報又は前記機械動作情報とともに熱変位調整用データとして記録する熱変位調整用データ記録ステップと、前記熱変位調整用データに基づいて、所定の熱変位補正調整アルゴリズムにより前記熱変位推定式を変更する熱変位補正調整ステップと、を含むと共に、前記熱変位推定式を、前記温度情報又は前記機械動作情報に基づいてあらかじめ設定される基本分熱変位推定式と、前記熱変位調整用データに基づいて設定される調整分熱変位推定式の和とし、
前記熱変位補正調整アルゴリズムは、前記温度情報又は前記機械動作情報を入力として前記熱変位推定式により推定された推定熱変位情報と、前記変位情報とを用いて、前記熱変位推定式の誤差に係る熱変位推定誤差指標を求めると共に、
前記熱変位調整用データ記録ステップで記録された前記温度情報若しくは前記機械動作情報から算出される調整時変化指標と、前記工作機械を使用するときに想定される前記温度情報若しくは前記機械動作情報から算出される想定変化指標又は、前記工作機械を使用しているときに測定された前記温度情報若しくは前記機械動作情報から算出される加工時変化指標と、に基づいて、設定された値が大きいほど前記調整分熱変位推定式の係数の大きさを小さくするように作用する正則化パラメータを決定し、
前記変位情報と、前記温度情報又は前記機械動作情報と、前記正則化パラメータとに基づいて、前記熱変位推定誤差指標の大きさを最小とする前記調整分熱変位推定式の係数を決定するものであることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、前記正則化パラメータは、前記調整時変化指標と前記想定変化指標とから決定することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、前記正則化パラメータは、前記調整分熱変位推定式の係数が、前記調整時変化指標と前記想定変化指標とに基づき決定される最大許容値以下であり、かつ前記正則化パラメータの値が最小になるように決定されることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3の構成において、前記調整分熱変位推定式の係数の最大許容値は、前記調整時変化指標が前記想定変化指標に対して大きくなるほど、値が大きくなるように決定されることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1の構成において、前記熱変位補正調整ステップでは、前記調整時変化指標と、前記加工時変化指標とを比較し、前記加工時変化指標が前記調整時変化指標に対し値が大きくなった場合に、前記正則化パラメータの値を再決定して前記熱変位補正調整アルゴリズムを実行し、前記調整分熱変位推定式の係数を再決定することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1の構成において、前記熱変位補正調整ステップでは、前記調整分熱変位推定式の係数の現在の設定値と、前記調整時変化指標と前記加工時変化指標とに基づき決定される前記調整分熱変位推定式の係数の最大許容値とを比較し、前記係数の現在の設定値が前記最大許容値より大きい場合には、前記正則化パラメータの値が、前記調整分熱変位推定式の係数が前記最大許容値以下であり、かつ前記正則化パラメータの値が最小になるように再決定することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項6の構成において、前記調整分熱変位推定式の係数の前記最大許容値は、前記加工時変化指標が前記調整時変化指標に対して値が大きくなるほど、値が小さくなるように決定されることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れかに記載の構成において、前記熱変位推定誤差指標は、前記変位情報と前記推定熱変位情報とについて同一時系列毎に差の二乗を計算して総和を取ったものであり、前記熱変位補正調整アルゴリズムは、前記熱変位推定誤差指標に、前記正則化パラメータと前記調整分熱変位推定式の係数とによって表される正則化項を加えたものを最小にするように前記調整分熱変位推定式の係数を決定する正則化最小二乗法を用いることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至7の何れかの構成において、前記熱変位推定誤差指標は、前記変位情報と前記推定熱変位情報とに基づいて計算した指標であり、前記熱変位補正調整アルゴリズムは、前記熱変位推定誤差指標に、前記正則化パラメータと前記調整分熱変位推定式の係数とによって表される正則化項を加えたものを評価関数として設定し、前記評価関数を最小とする前記調整分熱変位推定式の係数を探索することによって前記調整分熱変位推定式の係数を決定することを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項10に記載の発明は、熱変位補正プログラムであって、コンピュータに、請求項1乃至9の何れかに記載の工作機械の熱変位補正方法を実行させることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項11に記載の発明は、工作機械の各部に設置した温度センサより得られる温度情報又は前記工作機械の動作情報である機械動作情報と所定の係数とによって表される熱変位推定式に基づいて前記工作機械の熱変位を推定する熱変位推定手段と、推定された熱変位をもとに軸指令値を補正する熱変位補正手段と、前記工作機械の変位を測定して得られた変位情報を、前記温度情報又は前記機械動作情報とともに熱変位調整用データとして記録する熱変位調整用データ記録手段と、
前記熱変位調整用データに基づいて、所定の熱変位補正調整アルゴリズムにより前記熱変位推定式を変更する熱変位補正調整手段と、を備えた工作機械の熱変位補正装置であって、
前記熱変位推定手段は、前記熱変位推定式を、前記温度情報又は前記機械動作情報に基づいてあらかじめ設定される基本分熱変位推定式と、前記熱変位調整用データに基づいて設定される調整分熱変位推定式の和とし、
前記熱変位補正調整手段における前記熱変位補正調整アルゴリズムは、前記温度情報又は前記機械動作情報を入力として前記熱変位推定式により推定された推定熱変位情報と、前記変位情報とを用いて、前記熱変位推定式の誤差に係る熱変位推定誤差指標を求めると共に、
前記熱変位調整用データ記録手段で記録された前記温度情報若しくは前記機械動作情報から算出される調整時変化指標と、前記工作機械を使用するときに想定される前記温度情報若しくは前記機械動作情報から算出される想定変化指標又は、前記工作機械を使用しているときに測定された前記温度情報若しくは前記機械動作情報から算出される加工時変化指標と、に基づいて、設定された値が大きいほど前記調整分熱変位推定式の係数の大きさを小さくするように作用する正則化パラメータを決定し、
前記変位情報と、前記温度情報又は前記機械動作情報と、前記正則化パラメータとに基づいて、前記熱変位推定誤差指標の大きさを最小とする前記調整分熱変位推定式の係数を決定することを特徴とする。
本発明において、あらかじめ設定される基本分熱変位推定式は、工作機械メーカーが試験結果や機械構造をもとに汎化性能が高くなる(あらゆる条件で安定した効果が得られる)よう設定されている。一方、調整分熱変位推定式は、工作機械のユーザーの特定の環境・使用条件に合わせて熱変位が最小になるよう設定される。正則化パラメータの値が小さい場合は、調整分熱変位推定式の係数が大きく決定されるようになり、よりユーザーの特定の環境・使用条件に特化した熱変位モデルとなる。一方、正則化パラメータの値が大きい場合は、調整分熱変位推定式の係数が0に近づき、基本分熱変位推定式とほぼ等しくなり、汎化性能が高い熱変位モデルとなる。
本発明によれば、熱変位推定式を基本分と調整分に分け、正則化パラメータを導入した熱変位補正調整アルゴリズムを導入することで、汎化性能が高いモデルと、特定の環境・使用条件に特化した熱変位モデルを容易に使い分けることができる。すなわち、熱変位補正パラメータ調整において、環境温度や加工内容が変化した場合に熱変位補正の動作が不安定になるリスクを抑えつつ、目的とする加工で精度を向上させることができる。
特に、工作機械の熱変位に影響を及ぼす温度変化を表す指標(例えば、主軸温度、室温、切削液温度などの変化量、温度変化速度、あるいはセンサ間の温度差、分散など)及び機械動作変化を表す指標(主軸回転速度、送り軸の平均送り速度など)といった変化指標を用いて適切な正則化パラメータを決定する。すなわち、熱変位調整時の変化指標の大きさと、使用中に想定される変化指標の大きさとの比較に基づいて、正則化パラメータを決定する。よって、使用中に想定される温度や機械動作の変化よりも調整時の変化が大きければ、安定した熱変位モデルが得られることが予想されるため、正則化パラメータを小さく設定して、測定結果にベストフィットした熱変位モデルを決定できる。使用中に想定される温度や機械動作の変化よりも調整時の変化が小さい場合は、使用時に未学習の変化が生じることになるため、正則化パラメータを大きく設定して、汎化性の高い熱変位モデルを決定することができる。
請求項3に記載の発明では、熱変位調整時の温度変化を表す指標及び機械動作変化を表す指標といった変化指標の大きさと、使用中に想定される変化指標の大きさとの比較に基づいて、許容される係数の最大値を決定する。よって、正則化パラメータではなく、係数の値そのものを制約とすることで、計算により得られる熱変位モデルを予測しやすくなる。正則化パラメータを変化させながら繰り返し計算を行い、係数が最大許容値以下であり、かつ正則化パラメータの値が最小になる条件を満たす正則化パラメータを決定することができる。
請求項4に記載の発明では、調整時変化指標が想定変化指標に対して大きくなるほど、調整分熱変位推定式の係数の最大許容値が大きくなるように決定することで、調整時の熱変位測定で十分な学習ができたかどうかに応じて、適切な最大許容値を決定できる。
請求項5に記載の発明では、熱変位調整時の変化指標の大きさと、実際の加工中の変化指標の大きさとを比較し診断する。調整時の変化指標よりも実際の加工中の変化指標が大きい場合、未学習の温度や機械動作の変化が生じているため、特定の条件に特化したチューニングを行っていた場合には、熱変位補正の精度が大きく悪化する可能性がある。よって、その場合に正則化パラメータを再決定して熱変位補正調整アルゴリズムを実行し、調整分熱変位推定式の係数を再決定することにより、汎化性能の高い熱変位モデルを設定でき、熱変位補正の動作が不安定になるリスクを抑えることができる。
請求項6に記載の発明では、正則化パラメータではなく、係数の値そのものを制約とすることで、計算により得られる熱変位モデルを予測しやすくなる効果がある。
請求項7に記載の発明では、加工時変化指標が調整時変化指標に対して大きくなるほど、調整分熱変位推定式の係数の最大許容値が小さくなるように決定することで、未学習の温度や機械動作の変化があるかどうかを診断し、適切な最大許容値を決定できる。
請求項8に記載の発明では、熱変位補正調整アルゴリズムに正則化最小二乗法を適用する。正則化最小二乗法としては、リッジ回帰やラッソ回帰などの方法が一般に知られている。よって、この方法では、比較的少ない計算量で、解となる係数を決定することができる。特にリッジ回帰では単純な行列計算で計算可能であるため、素早く調整分熱変位推定式の係数を求めることができる。
請求項9に記載の発明では、熱変位補正調整アルゴリズムにパラメータ探索手法(例えば遺伝的アルゴリズムなど)を適用する。この方法では、繰り返しの探索が必要であり計算時間が長くなるが、評価関数を様々に設定できるメリットがある。例えば最小二乗法では時系列毎の誤差の二乗和を最小にする条件に限られるが、誤差の最大変化幅を最小にする条件や、誤差の時間変化を最小にする条件など、目的にあった評価関数を設定し、より適切な調整分熱変位推定式の係数を求めることができる。
工作機械の熱変位補正装置の構成図である。 正則化パラメータの設定値と熱変位推定式の係数との計算結果の例である。 熱変位補正方法のフローチャートである。 熱変位補正方法の変更例のフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の熱変位補正方法を実行する工作機械の熱変位補正装置1の構成図である。
この熱変位補正装置1では、図示しない工作機械の複数個所に取り付けられた温度センサ2の情報から、熱変位推定手段としての熱変位推定部3で熱変位推定式に基づいて熱変位を推定する。推定した熱変位をもとに熱変位補正量4を、熱変位補正手段としての工作機械の位置制御装置5に出力し、熱変位補正量4に応じた軸移動を行うことで補正を実行する。通常熱変位推定式は軸毎に設定され、3軸のマシニングセンタであれば、X軸Y軸Z軸それぞれの熱変位推定式が設定される。以上は熱変位補正を成立させる最低限の構成と言える。
実際の構成においては、熱変位補正結果の見える化のため、熱変位補正結果シミュレーション部6で熱変位補正により熱変位がどのように減少するかをシミュレーションし、工作機械の表示装置7に出力する場合もある。さらに、変位データ8と有効な熱変位補正量9とを、温度センサ2で取得される温度データと共に熱変位調整用データ10として図示しない熱変位調整用データ記録手段としての記録部に取込み、そのデータを元に、熱変位補正調整手段としての熱変位補正調整部11により、あるアルゴリズムに従って熱変位推定式を調整する熱変位補正調整機能も従来技術として存在している。本発明はさらに効果的で安定性の高い熱変位の調整を行うため、以下の構成を追加したことが特徴である。
まず、熱変位推定部3は、基本分熱変位推定部12と調整分熱変位推定部13とで推定された熱変位推定量を足し合わせたものを出力する。つまり、熱変位推定式は基本分熱変位推定式f(θ)と、調整分熱変位推定式g(θ)との和で表される。また、ある時点iでの熱変位補正なしでの熱変位をd、熱変位推定誤差をeで表すと、以下の式(1)のような関係となる。
Figure 0007210268000001
式(1)での熱変位推定誤差eは、工作機械上でタッチプローブなどによる機内計測を実施したり、同一形状のワークを加工して寸法を測定したりして、実測により求められる量である。熱変位推定誤差eが0に近づくほど、熱変位推定式が優れていると言える。
また、熱変位補正調整部11は、調整分熱変位推定部13に対して働く。つまり調整分熱変位推定式g(θ)の係数の調整を行うように構成されている。一方、基本分熱変位推定式f(θ)は、出荷時にメーカーによって設定されており、原則として式の内容を変化させることはないものとする。変位情報である無補正での熱変位dに対し、基本分熱変位推定式f(θ)でのみ補正を行った場合の推定誤差を調整用熱変位e'として定義すると、式(1)は以下の式(2)のように書き換えられる。
Figure 0007210268000002
式(1)(2)のf(θ)とg(θ)とが本発明の推定熱変位情報に該当する。
熱変位補正調整部11は、調整用熱変位e'を調整分熱変位推定式g(θ)で補正した時の誤差eを小さくするように、調整分熱変位推定式g(θ)の係数の調整を行う。
さらに熱変位補正調整部11では、正則化パラメータ20も使用して熱変位補正の調整を行う。正則化パラメータ20は、正則化パラメータ決定部19にて温度変化指標(例えば、温度変化量、温度変化速度、センサ間の温度差、分散など)に基づいて決定される。工作機械の入力装置14からの入力に基づいて想定温度変化指標(想定変化指標)を設定する想定温度変化指標設定部15、温度変化指標算出部16にて現在の温度情報から算出された加工時温度変化指標(加工時変化指標)を設定する加工時温度変化指標設定部17、熱変位調整用データ10から算出された調整時温度変化指標(調整時変化指標)を設定する調整時温度変化指標設定部18の各設定値を用いて正則化パラメータ20を決定する。正則化パラメータ決定部19では、温度指標を比較して正則化パラメータ20を決定するほか、熱変位補正の再調整を行うかどうかの判断も行う。この仕組みにより、最適な正則化パラメータ20を決定し、熱変位補正の調整を行うことで、環境温度や加工内容が変化した場合に熱変位補正の動作が不安定になるリスクを抑えつつ、目的とする加工で精度を向上させることができる。
次に、熱変位補正調整部11で設定される熱変位補正調整アルゴリズム例を説明する。
ここでは、式(2)に示した調整用熱変位e'を小さくするように、調整分熱変位推定式g(θ)を決定する。調整分熱変位推定式g(θ)として考えられる単純なものは、以下の式(3)のように、Mヶ所の温度θの線形和で表される。
Figure 0007210268000003
式(3)の調整分熱変位推定式g(θ)を決定する最も簡単な方法は、変位と温度のデータを時系列でN回分取得し、重回帰分析で係数を求める方法である。N回分の熱変位推定誤差eの2乗和をE(θ)とすると、本発明の熱変位推定誤差指標に該当するE(θ)は、以下の式(4)で表される。これを行列とベクトルの式で表すと、以下の式(5)となる。
Figure 0007210268000004
Figure 0007210268000005
通常の重回帰分析では、式(5)で表される熱変位推定誤差指標を最小にするように係数cを決める問題である。式(5)をcで微分したものを0とおいて解くことにより、以下の式(6)のように求められる。
Figure 0007210268000006
しかし、この方法では、極端に大きい係数cが算出される場合がある。その場合、わずかな温度変化で大きく補正量が変化することになるため、調整時とは異なる温度変化をした場合に熱変位補正の動作が不安定になる恐れがある。それを防ぐため、式(5)に正則化項と呼ばれる項を追加する。例えば、リッジ回帰と呼ばれる方法では以下の式(7)のように正則化項を追加する。
Figure 0007210268000007
同様に式(7)を最小とする係数cを求めると、以下の式(8)のようになる。
Figure 0007210268000008
これは、熱変位推定誤差指標と係数の2乗和との両方を小さくするように係数cを決定する式となる。λは正則化パラメータであり、この値が0のときには式(6)の通常の重回帰分析の解と一致する。つまり、誤差を最小とする条件のみで係数cを決めたことになる。一方λの値が大きいほど、係数の2乗和が小さくなるように係数cが決定される。Iは単位行列である。
調整分熱変位推定式の係数cの決定において、正則化パラメータλの値が小さいほど、測定した熱変位について補正誤差が小さくなるが、大きな係数が決定され、他の条件で不安定になる問題、すなわち過学習のリスクが高まる。一方、正則化パラメータλの値が大きいと、測定した熱変位について補正誤差が大きくなる場合があるが、小さな係数が決定され、他の条件でも安定して動作する調整分熱変位推定式が求められる、すなわち汎化性が向上することが期待できる。以上の考えに基づき、本実施例では適切な正則化パラメータλの値を決定していく。
正則化パラメータλの効果の例を図2に示す。図2ではある工作機械においてセンサ1~5(それぞれ温度1,温度2・・と表示する)の5つのセンサから熱変位を11回測定したデータを元に熱変位の推定を行っている。
このグラフでは、λの値にセンサの数M=5をかけ、データの数N=11で割ることにより正規化している。上のグラフを見ると、正則化パラメータλを小さくしていくにつれて、熱変位推定誤差は小さくなっていることが分かる。一方、下のグラフに示すように、係数については正則化パラメータλを小さくしていくにつれて値が大きくなっていく傾向を示す。特に温度1,2,4,5の係数については、λがある値よりも小さくなると急激に係数が大きくなり、不安定な結果になることが分かる。通常、想定される係数の範囲は機械の寸法によって決まる。例えばある機械構造の長さが1000mmであれば係数は10μm/℃程度であると予想されるため、その値を極端に外れた係数を設定すると動作が不安定になると考えられる。そのため、基準となる係数の値から変化の許容値すなわち調整分熱変位推定式の係数の許容値を定義しておき、その条件を満たすλの値を採用することで、動作が不安定になることを防ぐことができる。
係数の許容値をいくつにするかについては、調整時の熱変位測定で学習した条件と、実加工で想定される条件の間にどのような関係があるかによって変わってくる。調整時の熱変位測定が実加工で使用されている条件を全て網羅している場合、係数の許容値を大きく設定しても問題はないと思われる。一方、調整時の熱変位測定で学習できなかった変化が実加工で想定される場合、熱変位補正の動作が不安定になることを防ぐため、係数の許容値を小さくしておく必要がある。調整時と、実加工時のそれぞれの変化を温度変化指標として表し、その比較に基づいて係数の許容値を決定することで、より安定性の高い熱変位補正の調整が行える。
以下、図3のフローチャートに基づき、熱変位補正の調整を行う熱変位補正方法の流れを説明する。この方法は図示しない記憶部に格納される熱変位補正プログラムによって実行される。
まず、S1で、温度、変位量、熱変位補正量のデータを熱変位調整用データとして取り込む(本発明の熱変位調整用データ記録ステップ)。
ここでは、温度センサで測定した温度と変位量、有効になっていた熱変位補正量のデータを同一時系列で並べたものを熱変位調整データとして取り込む。変位量の取得方法としては、タッチプローブなどの機内計測装置を使用して工作機械上の同一点を測定する方法や、同一形状のワークを繰り返し加工し、その加工寸法を入力する方法などが考えられる。また、式(2)で示したように、調整分熱変位推定式での補正量を加える処理を行い、基本分熱変位推定式による補正のみが有効であった時の変位量を求めることもできる。
次に、S2で、熱変位調整用データから調整時温度変化指標Aを求める。
ここでは、取り込んだ熱変位調整用データすなわち学習に使用するデータの温度情報から、調整時温度変化指標を求める。調整時温度変化指標は温度変化が工作機械の熱変位に与える影響度合いを表す指標である。例えば、ある温度の変化量、温度の変化速度、2つの温度の温度差、3つ以上の温度の分散など、機械の特性に合わせて任意に設定できる。また、調整時温度変化指標は1つだけでなく複数設定しても良い。例えば、室温変化、切削液温度-機体温度、主軸温度の変化速度の3つの調整時温度変化指標を設けた場合、様々な要因の熱変位を網羅できる。
次に、S3で、入力情報をもとに、想定温度変化指標Bを設定する。
ここでは、入力用画面を工作機械のNC装置にあらかじめ設けておき、実加工において、どの程度の温度変化が起きそうか、想定される値を使用者に入力してもらう。例えば1日の室温変化の大きさを入力してもらい、それを想定温度変化指標に設定する。あるいは、使用条件を入力してもらい、計算により想定温度変化指標を求めてもよい。例えば、使用する最高主軸回転数や単位時間当たりの最大切削量などの使用条件を入力してもらい、それをもとに計算式により主軸温度変化を求めて設定しても良い。
次に、S4で、2つの温度変化指標から許容される調整分熱変位推定式の係数の絶対値の最大値|C|maxを求める。
ここでは、調整時温度変化指標と想定温度変化指標とから、ある関数により許容される調整分熱変位推定式の係数の絶対値の最大値|C|maxを求める。式に書くと以下の式(9)のようになる。ここでは温度変化指標がN種類あるとして、全ての温度変化指標に対して、対応する関数係数の許容値を求めるfにてN個分の許容値を求め、その最小値を|C|maxとしている。
Figure 0007210268000009
式(9)の関数fは様々なものが考えられるが、この実施例では以下の式(10)のような関数を設定する。
Figure 0007210268000010
式(10)でkは定数である。この関数では、調整時温度変化指標が想定温度変化指標よりも小さいときは、調整時温度変化指標に比例して係数の許容値が大きくなっていく。調整時温度変化指標が小さかった場合、つまり十分な学習ができなかった場合には、それに応じて係数の許容値も小さくなり、熱変位補正が不安定になることを防ぐ。一方、調整時温度変化指標が想定温度変化指標よりも大きいときは、十分な学習ができているため、定数kまで係数を変化させることができる。
例えば室温変化が調整時温度変化指標であり、想定される最大の室温変化B=10℃に設定したとする。また定数k=5としたとする。このとき、調整時はあまり室温が変化せず、A=4℃であったとする。このとき、調整時の測定では十分な学習ができなかったと言える。式(10)に代入すると、|C|max=2となり、係数の許容値は小さくなる。
一方、調整時に室温を大きく変化させることができ、A=12℃であったとする。このとき式(10)に代入すると、|C|max=5となり、係数の許容値は大きく設定される。
次に、S5で、正則化パラメータである正則化係数λを変化させながら、調整分熱変位推定式の係数の大きさが許容最大値より小さくなり、かつλが最小となるように、λの値を決める。
ここでは、λを変化させながら、式(8)により係数cを求める。図2のグラフのように、正則化係数λと係数との関係を求めることができる。全ての係数が、式(9)で求めた|C|maxよりも小さくなり、かつλが最小になるλの値を決定する。
例えば図2では、係数の許容値|C|max=5という条件を与えたとすると、λの値は約1.0と決定される。このときの各係数を調整分熱変位推定式の係数として採用する。同様に|C|max=2という条件を与えたとすると、λの値は約10と決定される。
次に、S6で、決定したλを使って、調整分熱変位推定式の係数を決める。
ここでは、S5で決定したλの値に対応する調整分熱変位推定式の係数を採用する。この係数の大きさは、S4で求めた絶対値の最大値の条件を満たしている。ここまでのS2~S6が本発明の熱変位補正調整ステップで、これにS1を含めて本発明の熱変位推定ステップとなる。
次に、S7で、基本分+調整分を合わせた熱変位推定式により、熱変位補正を実行する(本発明の熱変位補正ステップ)。
ここでは、S6で決定した係数を調整分熱変位推定式に設定し、基本分熱変位推定式と合わせたものを熱変位推定式に設定して、熱変位補正を実行する。
こうして調整時に実加工で想定される条件での学習が行えたかどうかを考慮し、適切な正則化パラメータを設定することで、過学習のリスクが小さい熱変位推定式を決定できる。
このように、上記形態の熱変位補正方法及び熱変位補正プログラム、熱変位補正装置によれば、熱変位推定式を基本分f(θ)と調整分g(θ)とに分け、正則化パラメータλを導入した熱変位補正調整アルゴリズムを導入することで、汎化性能が高いモデルと、特定の環境・使用条件に特化した熱変位モデルを容易に使い分けることができる。すなわち、熱変位補正パラメータ調整において、環境温度や加工内容が変化した場合に熱変位補正の動作が不安定になるリスクを抑えつつ、目的とする加工で精度を向上させることができる。
特にここでは、S3では、S1で記録された温度情報からS2で算出される調整時温度変化指標Aと、熱変位補正を適用して工作機械を使用するときに想定される温度変化から算出される想定温度変化指標Bとをあらかじめ求めて設定し、S4~S5では、調整時温度変化指標Aと想定温度変化指標Bとから正則化パラメータλを決定するので、使用中に想定される温度変化よりも調整時の温度変化が大きければ、安定した熱変位モデルが得られることが予想されるため、正則化パラメータλを小さく設定して、測定結果にベストフィットした熱変位モデルを決定できる。一方、使用中に想定される温度変化よりも調整時の温度変化が小さい場合は、使用時に未学習の温度変化が生じることになるため、正則化パラメータλを大きく設定して、汎化性の高い熱変位モデルを決定することができる。
また、S5では、正則化パラメータλを、調整分熱変位推定式g(θ)の係数cが、調整時温度変化指標Aと想定温度変化指標Bとに基づき決定される最大許容値|C|max以下であり、かつ正則化パラメータλの値が最小になるように決定するので、正則化パラメータではなく、係数の値そのものを制約とすることで、計算により得られる熱変位モデルを予測しやすくなる。正則化パラメータを変化させながら繰り返し計算を行い、係数が最大許容値以下であり、かつ正則化パラメータの値が最小になる条件を満たす正則化パラメータを決定することができる。
さらに、調整分熱変位推定式g(θ)の係数cの最大許容値|C|maxは、調整時温度変化指標Aが想定温度変化指標Bに対して大きくなるほど、値が大きくなるように決定されるので、調整時の熱変位測定で十分な学習ができたかどうかに応じて、適切な最大許容値を決定できる。
そして、熱変位推定誤差指標E(θ)は、変位情報と推定熱変位情報g(θ)とについて同一時系列毎に差の二乗を計算して総和を取ったものであり、熱変位補正調整アルゴリズムは、熱変位推定誤差指標E(θ)に、正則化パラメータλと調整分熱変位推定式g(θ)の係数cとによって表される正則化項を加えたものを最小にするように調整分熱変位推定式g(θ)の係数cを決定する正則化最小二乗法を用いるので、比較的少ない計算量で、解となる係数を決定することができる。特にリッジ回帰では単純な行列計算で計算可能であるため、素早く調整分熱変位推定式g(θ)の係数cを求めることができる。
但し、図3の熱変位補正方法では、オペレータが想定温度変化に関する適切な値を入力しておく必要がある。この設定を誤った場合や、想定外の温度変化が生じた場合には、大きな熱変位補正誤差が生じるリスクがある。このリスクを防止するため、加工中も温度変化指標を算出して診断を行い、必要に応じて熱変位推定式の修正を行うのが望ましい。以下、その熱変位補正方法を図4のフローチャートで説明する。
まず、S11で、熱変位調整用データと共に加工中の温度のデータも取り込む(本発明の熱変位調整用データ記録ステップ)。
次に、S12で、取り込んだ温度データから加工時温度変化指標B'を求める。ここではS2と同じ方法で、加工時温度変化指標B'を求める。
次に、S13で、調整時温度変化指標Aと、加工時温度変化指標B'とから許容される調整分熱変位推定式g(θ)の係数の絶対値の最大値|C'|maxを求める。ここではS4と同じ方法で、加工時温度変化指標B'から許容される調整分熱変位推定式g(θ)の係数の絶対値の最大値|C'|maxを求める。
例えば、式(10)と同様の以下の式(11)の関数により求める。
Figure 0007210268000011
式(11)でkは定数である。この関数では、加工時温度変化指標が調整時温度変化指標よりも大きいときは、係数の許容値が小さくなっていく。実際に設定されている係数よりも係数の許容値が小さくなった場合、熱変位補正が不安定になるリスクが大きくなったと言える。
次に、S14で、S13で算出した係数の絶対値の最大値が、現在設定されている係数よりも大きいか判定する。
ここでは、S13で求めた|C'|maxと、現在設定されている調整分熱変位推定式の係数とを比較する。設定されている係数が全て|C'|maxに収まっていれば、熱変位補正が不安定になるリスクは小さいと判断し、そのままの調整分熱変位推定式で補正を実行する(S19,S20)。一方、設定されている係数が全て|C'|maxに収まっていない場合は、S15で、オペレータに調整分熱変位推定式の再設定を促す。
調整分熱変位推定式の係数に、|C'|maxよりも大きな値が設定されている場合、過学習により熱変位補正が不安定になるリスクがある。その場合、画面にアラームなどを表示し、オペレータに調整分熱変位推定式の再設定を促す。ここで再設定しない選択をした場合、調整分熱変位推定式の変更は実施しない(S19へ移行)が、再設定する選択をした場合には、以下のS16~S18の処理により調整分熱変位推定式を変更する。
S16で、新たに計算された係数の許容値|C'|maxをもとに、正則化係数λを再計算する。
ここでは、S5と同様の方法で、正則化係数λを変化させながら、調整分熱変位推定式の係数の大きさが許容値|C'|maxより小さくなり、かつλが最小となるように、λの値を決める。
次に、S17で、決定したλを使って、新たな調整分熱変位推定式の係数を決める。
次に、S18で、調整分熱変位推定式を変更する。ここまでS12~S18が本発明の熱変位補正ステップとなる。
そして、S20で、S7と同様に、基本分+調整分を合わせた熱変位推定式により、熱変位補正を実行する(本発明の熱変位補正ステップ)。
以上の方法により、想定外の温度変化が生じた場合においても、調整分熱変位推定式を適切に変更することで、大きな熱変位補正誤差が生じるリスクを防止することができる。
このように、図4の変更例による熱変位補正方法及び熱変位補正プログラム、熱変位補正装置においても、熱変位推定式を基本分f(θ)と調整分g(θ)とに分け、正則化パラメータλを導入した熱変位補正調整アルゴリズムを導入することで、汎化性能が高いモデルと、特定の環境・使用条件に特化した熱変位モデルを容易に使い分けることができる。すなわち、熱変位補正パラメータ調整において、環境温度や加工内容が変化した場合に熱変位補正の動作が不安定になるリスクを抑えつつ、目的とする加工で精度を向上させることができる。
特にここでは、S12で、S11で記録された温度情報から算出される調整時温度変化指標Aと、熱変位補正を適用して工作機械を使用しているときに測定された温度変化から算出される加工時温度変化指標B'とを求め、S13では、調整分熱変位推定式g(θ)の係数cの現在の設定値と、調整時温度変化指標Aと加工時温度変化指標B'とに基づき決定される調整分熱変位推定式g(θ)の係数cの最大許容値|C'|maxとを比較し、係数cの現在の設定値が最大許容値|C'|maxより大きい場合には、正則化パラメータλの値が、調整分熱変位推定式g(θ)の係数cが最大許容値|C'|max以下であり、かつ正則化パラメータλの値が最小になるように再決定するので、正則化パラメータではなく、係数の値そのものを制約とすることで、計算により得られる熱変位モデルを予測しやすくなる効果がある。
また、調整分熱変位推定式g(θ)の係数cの最大許容値|C'|maxを、加工時温度変化指標B'が調整時温度変化指標Aに対して値が大きくなるほど、値が小さくなるように決定しているので、未学習の温度変化があるかどうかを診断し、適切な最大許容値を決定できる。
なお、図4の熱変位補正方法では、調整分熱変位推定式の係数の絶対値の最大値を現在の係数と比較して現在の係数の方が大きい場合は調整分熱変位推定式の再設定を促すようにしているが、これに代えて、熱変位補正調整ステップでは、調整時温度変化指標と加工時温度変化指標とを比較し、加工時温度変化指標が調整時温度変化指標に対し値が大きくなった場合に、正則化パラメータの値を再決定して熱変位補正調整アルゴリズムを実行し、調整分熱変位推定式の係数を再決定するようにしてもよい。調整時温度変化指標よりも実際の加工時温度変化指標が大きい場合、未学習の温度変化が生じているため、特定の条件に特化したチューニングを行っていた場合には、熱変位補正の精度が大きく悪化する可能性があるが、その場合に正則化パラメータを再決定して熱変位補正調整アルゴリズムを実行し、調整分熱変位推定式の係数を再決定することにより、汎化性能の高い熱変位モデルを設定でき、熱変位補正の動作が不安定になるリスクを抑えることができる。
また、図4の熱変位補正方法では、オペレータに熱変位推定式の再設定を促したが、それ以外にも加工を中断する、機内計測を実施するなど他の熱変位対策を講じるようにしてもよい。
さらに、本実施例では、正則化の方法として式(5)のリッジ回帰を採用したが、ラッソ回帰など他の正則化回帰の式を用いても良い。また、設定された値が大きいほど調整分熱変位推定式の係数を小さくするように作用する正則化パラメータを使用した評価関数を設定して、遺伝的アルゴリズム(GA)などのパラメータ探索手法を回帰分析の替わりに用いても良い。この方法では、繰り返しの探索が必要であり計算時間が長くなるが、評価関数を様々に設定できるメリットがある。例えば最小二乗法では時系列毎の誤差の二乗和を最小にする条件に限られるが、熱変位推定誤差指標として、誤差の最大変化幅を最小にする条件や、誤差の時間変化を最小にする条件など、目的にあった評価関数を設定し、より適切な調整分熱変位推定式の係数を求めることができる。
また、本実施例では、温度センサで測定した温度をもとに熱変位を推定したが、温度情報に代えて、主軸回転速度や送り軸の平均送り速度といった工作機械の動作情報(機械動作情報)をもとに熱変位を推定する場合も本発明には含まれる。
1・・熱変位補正装置、2・・温度センサ、3・・熱変位推定部、4・・熱変位補正量、5・・位置制御装置、6・・熱変位補正結果シミュレーション部、7・・表示装置、8・・変位データ、9・・有効な熱変位補正量、10・・熱変位調整用データ、11・・熱変位補正調整部、12・・基本分熱変位推定部、13・・調整分熱変位推定部、14・・入力装置、15・・想定温度変化指標設定部、16・・温度変化指標算出部、17・・加工時温度変化指標設定部、18・・調整時温度変化指標設定部、19・・正則化パラメータ決定部、20・・正則化パラメータ。

Claims (11)

  1. 工作機械の各部に設置した温度センサより得られる温度情報又は前記工作機械の動作情報である機械動作情報と所定の係数とによって表される熱変位推定式に基づいて前記工作機械の熱変位を推定する熱変位推定ステップと、
    推定された熱変位をもとに軸指令値を補正する熱変位補正ステップと、を実行する工作機械の熱変位補正方法であって、
    前記熱変位推定ステップは、前記工作機械の変位を測定して得られた変位情報を、前記温度情報又は前記機械動作情報とともに熱変位調整用データとして記録する熱変位調整用データ記録ステップと、
    前記熱変位調整用データに基づいて、所定の熱変位補正調整アルゴリズムにより前記熱変位推定式を変更する熱変位補正調整ステップと、を含むと共に、前記熱変位推定式を、前記温度情報又は前記機械動作情報に基づいてあらかじめ設定される基本分熱変位推定式と、前記熱変位調整用データに基づいて設定される調整分熱変位推定式の和とし、
    前記熱変位補正調整アルゴリズムは、前記温度情報又は前記機械動作情報を入力として前記熱変位推定式により推定された推定熱変位情報と、前記変位情報とを用いて、前記熱変位推定式の誤差に係る熱変位推定誤差指標を求めると共に、
    前記熱変位調整用データ記録ステップで記録された前記温度情報若しくは前記機械動作情報から算出される調整時変化指標と、前記工作機械を使用するときに想定される前記温度情報若しくは前記機械動作情報から算出される想定変化指標又は、前記工作機械を使用しているときに測定された前記温度情報若しくは前記機械動作情報から算出される加工時変化指標と、に基づいて、設定された値が大きいほど前記調整分熱変位推定式の係数の大きさを小さくするように作用する正則化パラメータを決定し、
    前記変位情報と、前記温度情報又は前記機械動作情報と、前記正則化パラメータとに基づいて、前記熱変位推定誤差指標の大きさを最小とする前記調整分熱変位推定式の係数を決定するものである
    ことを特徴とする工作機械の熱変位補正方法。
  2. 前記正則化パラメータは、前記調整時変化指標と前記想定変化指標とから決定することを特徴とする請求項1に記載の工作機械の熱変位補正方法。
  3. 前記正則化パラメータは、前記調整分熱変位推定式の係数が、前記調整時変化指標と前記想定変化指標とに基づき決定される最大許容値以下であり、かつ前記正則化パラメータの値が最小になるように決定されることを特徴とする請求項2に記載の工作機械の熱変位補正方法。
  4. 前記調整分熱変位推定式の係数の最大許容値は、前記調整時変化指標が前記想定変化指標に対して大きくなるほど、値が大きくなるように決定されることを特徴とする請求項3に記載の工作機械の熱変位補正方法。
  5. 前記熱変位補正調整ステップでは、
    前記調整時変化指標と、前記加工時変化指標とを比較し、前記加工時変化指標が前記調整時変化指標に対し値が大きくなった場合に、前記正則化パラメータの値を再決定して前記熱変位補正調整アルゴリズムを実行し、前記調整分熱変位推定式の係数を再決定することを特徴とする請求項1に記載の工作機械の熱変位補正方法。
  6. 前記熱変位補正調整ステップでは、
    前記調整分熱変位推定式の係数の現在の設定値と、前記調整時変化指標と前記加工時変化指標とに基づき決定される前記調整分熱変位推定式の係数の最大許容値とを比較し、
    前記係数の現在の設定値が前記最大許容値より大きい場合には、
    前記正則化パラメータの値が、前記調整分熱変位推定式の係数が前記最大許容値以下であり、かつ前記正則化パラメータの値が最小になるように再決定することを特徴とする請求項1に記載の工作機械の熱変位補正方法。
  7. 前記調整分熱変位推定式の係数の前記最大許容値は、前記加工時変化指標が前記調整時変化指標に対して値が大きくなるほど、値が小さくなるように決定されることを特徴とする請求項6に記載の工作機械の熱変位補正方法。
  8. 前記熱変位推定誤差指標は、前記変位情報と前記推定熱変位情報とについて同一時系列毎に差の二乗を計算して総和を取ったものであり、
    前記熱変位補正調整アルゴリズムは、
    前記熱変位推定誤差指標に、前記正則化パラメータと前記調整分熱変位推定式の係数とによって表される正則化項を加えたものを最小にするように前記調整分熱変位推定式の係数を決定する正則化最小二乗法を用いることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の工作機械の熱変位補正方法。
  9. 前記熱変位推定誤差指標は、前記変位情報と前記推定熱変位情報とに基づいて計算した指標であり、
    前記熱変位補正調整アルゴリズムは、
    前記熱変位推定誤差指標に、前記正則化パラメータと前記調整分熱変位推定式の係数とによって表される正則化項を加えたものを評価関数として設定し、
    前記評価関数を最小とする前記調整分熱変位推定式の係数を探索することによって前記調整分熱変位推定式の係数を決定することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の工作機械の熱変位補正方法。
  10. コンピュータに、請求項1乃至9の何れかに記載の工作機械の熱変位補正方法を実行させるための熱変位補正プログラム。
  11. 工作機械の各部に設置した温度センサより得られる温度情報又は前記工作機械の動作情報である機械動作情報と所定の係数とによって表される熱変位推定式に基づいて前記工作機械の熱変位を推定する熱変位推定手段と、
    推定された熱変位をもとに軸指令値を補正する熱変位補正手段と、
    前記工作機械の変位を測定して得られた変位情報を、前記温度情報又は前記機械動作情報とともに熱変位調整用データとして記録する熱変位調整用データ記録手段と、
    前記熱変位調整用データに基づいて、所定の熱変位補正調整アルゴリズムにより前記熱変位推定式を変更する熱変位補正調整手段と、を備えた工作機械の熱変位補正装置であって、
    前記熱変位推定手段は、前記熱変位推定式を、前記温度情報又は前記機械動作情報に基づいてあらかじめ設定される基本分熱変位推定式と、前記熱変位調整用データに基づいて設定される調整分熱変位推定式の和とし、
    前記熱変位補正調整手段における前記熱変位補正調整アルゴリズムは、前記温度情報又は前記機械動作情報を入力として前記熱変位推定式により推定された推定熱変位情報と、前記変位情報とを用いて、前記熱変位推定式の誤差に係る熱変位推定誤差指標を求めると共に、
    前記熱変位調整用データ記録手段で記録された前記温度情報若しくは前記機械動作情報から算出される調整時変化指標と、前記工作機械を使用するときに想定される前記温度情報若しくは前記機械動作情報から算出される想定変化指標又は、前記工作機械を使用しているときに測定された前記温度情報若しくは前記機械動作情報から算出される加工時変化指標と、に基づいて、設定された値が大きいほど前記調整分熱変位推定式の係数の大きさを小さくするように作用する正則化パラメータを決定し、
    前記変位情報と、前記温度情報又は前記機械動作情報と、前記正則化パラメータとに基づいて、前記熱変位推定誤差指標の大きさを最小とする前記調整分熱変位推定式の係数を決定する
    ことを特徴とする工作機械の熱変位補正装置。
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