[0060] これより、図面に例が示されている例示的な実施形態について詳しく述べる。以下の記載は添付図面を参照するが、特に他の指示がない限り、様々な図において同一の番号は同一の又は同様の要素を表す。例示的な実施形態の以下の記載で述べられる実施は、本発明に従った全ての実施を表すわけではなく、単に、添付の特許請求の範囲で列挙される主題に関連する態様に従った装置、システム、及び方法の例に過ぎない。
[0061] 本出願の態様は、荷電粒子ビーム検出のためのシステム及び方法に関する。システム及び方法は、電子等の荷電粒子の計数を利用することができ、走査電子顕微鏡(SEM)等の検査ツールにおいて有用であり得る。検査ツールは、集積回路(IC)コンポーネントの製造プロセスで使用することができる。今日の電子デバイスの計算能力向上を実現するため、ICチップ上のトランジスタ、キャパシタ、ダイオードのような回路コンポーネントの実装密度を著しく増大させると共に、デバイスの物理的サイズを縮小することができる。例えばスマートフォンでは、ICチップ(親指の爪のサイズである)は、人毛の1000分の1未満の大きさであるトランジスタを20億超も含み得る。驚くことではないが、半導体IC製造は数百の個別ステップを含む複雑なプロセスである。1つのステップにおける誤差でさえ、最終製品の機能に対して劇的に影響を及ぼす可能性がある。1つの「キラー欠陥(killer defect)」でさえデバイス故障を引き起こす恐れがある。製造プロセスの目標は、プロセスの全体的な歩留まりを改善することである。例えば50のステップを有するプロセスが75%の歩留まりを達成するには、個別ステップの各々の歩留まりが99.4%を超えていなければならない。個別ステップの歩留まりが95%である場合、全体的なプロセス歩留まりは7%に低下する。
[0062] 高いスループット(例えば1時間当たりのウェーハプロセス数として定義される)を維持しながら、高い精度と高い分解能で欠陥を検出する能力を保証することは、ますます重要になっている。高いプロセス歩留まりと高いウェーハスループットは、特にオペレータの介入を伴う場合、欠陥の存在によって影響を受ける可能性がある。従って、高い歩留まりと低いコストを維持するためには、検査ツール(SEM等)によるマイクロサイズ及びナノサイズの欠陥の検出と識別が重要である。
[0063] いくつかの検査ツールでは、サンプル表面を高エネルギ電子ビームでスキャンすることによってサンプルを検査することができる。サンプル表面での相互作用により、サンプルから二次電子又は後方散乱電子が発生し、次いでこれを検出器で検出することができる。
[0064] 関連技術の検出器には、例えば上述したような低い信号対雑音比(SNR)又は低い耐久性のような限界がある場合がある。本開示の態様は、検出器要素のアレイを備えた検出器を提供することによって、そのような限界のいくつかに対処できる。検出器要素の各々は検知要素を含み、検知要素の各々は、検知要素の1サンプリング周期当たり特定の数以下の荷電粒子を受け取るような面積を有する。検出器は、各検知要素に結合された、荷電粒子計数を可能とする回路を含むことができる。荷電粒子計数によって、例えばアナログ信号検出に対して、より簡単かつ小型のコンポーネントをチップ上に実装することができるので、良好なSNRでロバストかつ信頼性の高い荷電粒子の検出が可能となる。本開示は電子に関連したいくつかの例示的な実施形態を検討するが、イオンのような他のタイプの荷電粒子に本開示を適用可能であることは理解されよう。
[0065] 正確な電子計数を保証するために、後続の電子到達イベント間の時間分離が重要なパラメータである可能性がある。電子到達イベントが相互に近すぎる場合、検出器はそれらを処理することができず(overwhelm)、各々の電子到達イベントの識別が妨げられることがある。同様に、検出器における電子到達イベントに応答して発生する信号のパルス幅に関連する信号パルス幅は、電子計数を制限する別の重要なパラメータである可能性がある。検出器が発生する信号が(シャープなブリップ(blip)とは対照的に)弱すぎるか又は広すぎる場合、後続の電子到達イベントからの信号が結合して1つになることがある。更に、検出器のサンプリングレートは、個々の電子到達イベントを捕捉できるよう充分に高くなければならない。すなわち、検出器は、電子到達イベントが未検出のままにならないよう充分に高速でなければならない。電子計数における別の検討事項は、ある程度以下のミスカウントレベルの精度を達成することである。ミスカウントは検出器要素の不感時間に基づき得る。従って、電子計数用に検出器を構成する際には多くの基準が関連し得る。
[0066] 検知要素の一例として、PINダイオードを提供することができる。PINダイオードは電子計数での使用に極めて適している可能性がある。PINダイオードは高い固有(natural)内部利得を有するので、単一の電子到達イベントの場合であっても、比較的低い背景ノイズレベルに対して容易に識別可能な強い測定可能信号を発生することができる。信号のブーストのためチップ上にアバランシェダイオード等の増幅器や複雑なシステムを提供する必要性は、低減又は排除され得る。代わりに、PINダイオードが単独で又は比較的低利得の増幅器と共に発生する信号は、電子到達イベントに応答して迅速に発生され、背景ノイズに対して目立つので、電子計数に極めて適している可能性がある。
[0067] しかしながら、1つの出力を用いるPINダイオードを含む単一の検出器要素は、ビーム電流の全ての範囲にわたる計数を処理できない可能性がある。例えば1nAの電子ビームでは、典型的な10nsのサンプリング周期中に約64の電子が検出器に入射し得ることが知られている。いくつかのSEMシステムにおいて、検出器は100MHzのサンプリングレートで動作し、これは10nsのサンプリング周期に対応し得る。10nsの1サンプリング周期中、64の電子到達イベントが発生する可能性があり、従って個々の電子到達イベントから発生した信号を容易に識別することはできない。800MHzのサンプリングレートで動作するような更に高速の検出器であっても、1サンプリング周期当たり約8の電子が入射し、検出器に過負荷を与える恐れがある。
[0068] 本開示のいくつかの実施形態において、アレイの検知要素は、個々の検知要素の面積で1サンプリング周期当たり特定の数以下の荷電粒子を受け取るようなサイズとすることができる。特定の数は1とすることができる。検知要素のサイズは、検出器に入射する荷電粒子の幾何学的分布(geometric spread)よりも小さくすることができる。従って、個々の検知要素は、検出器に入射する荷電粒子の総数よりも少ない荷電粒子を受け取るように構成できる。様々な基準に従って、検知要素のサイズ、サンプリングレート、及び他の特徴のような検出器の特性(aspect)は、荷電粒子計数を可能とするように設定できる。
[0069] 本開示の範囲を限定することなく、いくつかの実施形態は、電子ビームを利用したシステムにおける検出器及び検出方法を提供するという観点で記載できる。しかしながら、本開示はそのように限定されるわけではない。他のタイプの荷電粒子ビームも同様に適用できる。更に、検出のためのシステム及び方法は、例えば光学結像、光子検出、x線検出、イオン検出等、他の結像システムで使用することも可能である。
[0070] 本明細書において用いる場合、特に他の指示がない限り、「又は(or)」という用語は、実行不可能な場合を除いて、全ての可能な組み合わせを包含する。例えば、あるコンポーネントがA又はBを含むと記載されている場合、特に他の指示がない限り、又は実行不可能な場合を除いて、そのコンポーネントはAもしくはBを含むか、又はA及びBを含むことができる。第2の例として、あるコンポーネントがA、B、又はCを含むと記載されている場合、特に他の指示がない限り、又は実行不可能な場合を除いて、そのコンポーネントはAもしくはBもしくはCを含むか、又はA及びBを含むか、又はA及びCを含むか、又はB及びCを含むか、又はA及びB及びCを含むことができる。
[0071] 本開示全体を通して、「第1の数の検知要素」という表現が用いられる場合は、上位集合の検知要素のうち第1の量の検知要素の群を意味するものとする。例えば、複数の検知要素が提供され得る。第1の数の検知要素は、その複数のうち検知要素のサブセットを指すことができる。第1の数は、1から複数の検知要素の総数までとすることができる。同様に、「第2の数の検知要素」という表現は、上位集合の検知要素のうち第2の量の検知要素の群を意味するものとする。第2の数の検知要素は、その複数の検知要素のうち検知要素の別のサブセットを指すことができ、例えば、第1の数の検知要素の中のサブセットである。
[0072] 更に、「検出器要素」という用語は、「検知要素」、「センサ要素」、「検出セル」、又は「検出器セグメント」等を含むか又はこれらを包含することができる。検知要素は、空乏化領域を有するように構成されたダイオードとすることができ、本明細書で検討されるいくつかの実施形態では、「検知要素」という用語は、ガイガーモード(Geiger mode)で動作するアバランシェダイオードを除外することがある。検出器要素は、ダイオードと、相互接続と、例えばフロントエンド電子回路を含み得る回路と、を含むことができる。更に、「フレーム」という用語は、「サンプリング周期」、「SEM画像画素周期」、又は「画素周期」等を含むか又はこれらを包含することができる。SEM画像フレームは、フレームごとにリフレッシュされ得る画素のフレームを指し、データフレームは、指定された時間期間内に検出システムで取得されるデータ群を指すことができる。
[0073] 本開示の実施形態は検出方法を提供することができる。検出方法は荷電粒子計数を含み得る。例えばいくつかの実施形態では、電子顕微鏡検査のための荷電粒子検出方法を提供することができる。この方法はSEM検出システムに適用され得る。荷電粒子検出方法は電子計数に基づくことができる。予め規定された周期中に受け取った電子数を計数することにより、入来する電子ビームの強度を決定できる。「入来する電子」という用語は、検出器の表面に衝突する電子のような入射電子を含むか又はこれらを包含することができる。いくつかの実施形態に従って、荷電粒子検出プロセスからのノイズを低減できる。しかしながら、SNRの改善だけでは、様々なSEM用途の高まり続ける必要性を満たすことができない可能性がある。
[0074] いくつかの実施形態では、半導体電子検出器を提供して、入来する電子ビームの強度を検出するだけでなく、様々なエネルギを有する電子の特性を識別することができる。例えば、強度情報に加えて、入来する電子ビームのエネルギスペクトルを取得できる。
[0075] いくつかの実施形態は、検出方法と共に表示方法を提供することができる。例えばいくつかの実施形態では、エネルギスペクトル情報のような追加の次元の情報を提供できる。いくつかの適用例では、カラーSEM画像を発生するように方法を適用することができる。
[0076] 電子計数は、検出器で発生する個々の電子到達イベントを決定することを含み得る。例えば、電子は検出器に到達すると1つずつ検出され得る。いくつかの適用例では、検出器に入射した電子は電気信号を発生し、これは信号処理回路に送られ、次いでデジタルコントローラ等のインタフェースに読み出すことができる。検出器は、入射電子が発生した信号を分解し、個々の電子を別々の計数値で識別するように構成できる。
[0077] いくつかの実施形態では、ビーム電流が極めて小さい状況に電子計数を適用することができる。例えば、電子ビームは低いドーズでサンプルを照射するように設定されることがある。大電流による電子計数検出器の過飽和を防止するために低電流が使用され得る。例えば、大電流は検出結果に非線形性を生じる効果を有する場合がある。一方で、工業用の環境で使用され得る検出器では、検出器は大きいビーム電流の状況も処理できなければならない。
[0078] いくつかの実施形態は上記の問題に対処できる。例えばいくつかの実施形態は、電子ビームを検出するために使用され得る複数の比較的小さい検知要素を提供することができる。1つの入来電子が1つの検知要素から隣接する検知要素へ移動する確率を低下させるように、隣接した検知要素間の隔離を行うことができる。このようにして、隣接した検知要素間のクロストークを低減できる。
[0079] いくつかの実施形態では、第1のパラメータに基づいてデータフレームレートを設定することができる。データフレームレートは、結像に用いるために検知要素が電子ビームから入来電子を収集するデータフレームのレートとすることができる。データフレームレートは、検知要素のうち予め規定された割合(例えばA%)が少なくとも1つの入来電子を受け取るように設定できる。また、データフレームレートは、データフレームの周期(例えば持続期間)によって表現できる。更に、データフレームレートは第2のパラメータに基づいて設定することができる。例えば少なくとも1つの入来電子を受ける検知要素のうち、検知要素の第2の予め規定された割合(例えばB%)だけが2つ以上の電子を受け取ることができる。このように、予め規定された検出線形性を維持し、同時に、大きいビーム電流の電子ビームを処理することができる。データフレームレートは、特定のSEM設定に対して一定の値とするか、又は、同一のSEM設定下であっても検出対象の電子ビームの信号強度を適合するよう設定された変動値とすることができる。この結果、同一のSEM設定下で、時間ドメインにおいて隣接するデータフレーム周期は同一であるか又は異なることがある。
[0080] 適合フレームに加えて、各フレームは、フレームが開始する時及びフレームが終了する時に関する情報を含むことができる。フレーム開始及び終了時(例えば、フレーム開始時点及びフレーム終了時点)に関する情報は、SEM画像内の画素を発生させる場合に使用できる。例えばSEM画像内の各画素は、特定の時間期間中に取得されたフレームを用いて発生させることができる。SEM画像画素取得の周期(又はレート)は、特定の要件に従って設定される予め規定されたパラメータセットに基づくことができる。各SEM画像画素取得周期中に、1つ以上のフレームが取得され得る。隣接したSEM画像画素周期に取得されるフレーム数は、同一であるか又は異なることがある。
[0081] フレームレート調整に加えて、荷電粒子検出のためのシステム及び方法は、SEMシステムの構造又は設定に対する調整を使用することができる。例えば、検知要素群のうち予め規定されたA%の検知要素が各フレーム周期中に1つだけ電子を受け取ることを保証するため、各電子ビームスポット内の電子密度の分布がいっそう均一となるようにSEMシステムの調整を実行できる。1つのそのような調整は、マルチビーム検査(MBI:multi-beam inspection)システムにおいて、二次SEMコラムの投影システムをデフォーカスすることである。投影システムは、ビームをある程度デフォーカスするように構成できる。更に、SEMシステムの倍率を変更して、電子ビーム又は1もしくは複数のビームレットのスポットサイズを拡大することも可能である。各ビームレットスポットのサイズを拡大することができる。倍率設定は、ビームレットスポット間のクロストークを考慮して構成すればよい。
[0082] いくつかの実施形態では、各フレームにおいて統計的解析を実行することができる。例えば各フレームの後に、電子ビームごとに、フレーム中に受け取った電子の総数に加えて、受け取った電子エネルギをフレーム内の各エネルギレベルの電子数に対してプロットした統計的結果を取得することができる。従来のSEMにおけるグレースケール画像のようなSEM画像の1つの画素を発生させる際に、総数出力を使用できる。電子の総数は画素のグレーレベルに対応し得る。更に、カラーSEM画像の1つの画素も発生させることができる。カラーSEM画像では、上述のように発生した対応するフレームの統計的結果により、各画素の赤緑青(RGB)値のような色情報を決定できる。このように、SEM結像に追加の自由度を加えることができる。従って、例えば材料特性、微細構造、及び層間のアライメント等、調査中のサンプルの別の特性を明らかにすることにより、サンプルの解析を向上させることができる。
[0083] いくつかの実施形態では、検出方法をグレースケールSEM結像に適用することができる。この方法は、一連の閾値を決定することを含み得る。受け取った電子エネルギをフレーム内の各エネルギレベルの電子数に対してプロットした統計的結果を発生することの代わりに又はそれに加えて、閾値に関する情報を発生できる。例えば、電子エネルギが低いものから高いものへ増大するように3つの閾値を設定すればよい。最も低い電子エネルギの第1の閾値を用いて、検知要素が電子を受け取ったか、又はその出力が干渉もしくは暗電流によって生じたか等を識別することができる。中間の電子エネルギの第2の閾値を用いて、検知要素で受け取った電子がサンプルからの二次電子であるか又はサンプルからの散乱電子であるかを識別することができる。最も高い電子エネルギの第3の閾値を用いて、検知要素が特定のフレーム中に2つ以上の電子を受け取ったか否かを識別することができる。特定のフレーム中に受け取った二次電子の数、受け取った散乱電子の数、及び受け取った電子の総数を決定できる。上述の情報をSEM画像の画素ごとに蓄積することにより、受け取った全ての電子に基づくSEM画像、二次電子SEM画像、及び散乱電子SEM画像のうち1つ以上を取得できる。このような画像は、エネルギフィルタを用いることなく、向上した信号対雑音比で取得され得る。
[0084] いくつかの実施形態では、大量のアナログ回路を必要とする実施でなくデジタル回路を用いることによって検出器を形成できる。従って、設計及び製造のような検出器の様々な特性を改良することができる。
[0085] これより、本開示の実施形態に従った検出器を含むことができる例示的な電子ビーム検査(EBI)システム10を示す図1を参照する。EBIシステム10は結像のために使用され得る。図1に示されているように、EBIシステム10は、主チャンバ11と、ロード/ロックチャンバ20と、電子ビームツール100と、機器フロントエンドモジュール(EFEM:equipment front end module)30と、を含む。電子ビームツール100は主チャンバ11内に配置されている。EFEM30は、第1ローディングポート30a及び第2ローディングポート30bを含む。EFEM30は、1又は複数の追加のローディングポートを含むことも可能である。第1ローディングポート30a及び第2ローディングポート30bは、検査対象のウェーハ(例えば、半導体ウェーハ、又は1もしくは複数の他の材料で作製されたウェーハ)又はサンプルを収容したウェーハFOUP(front opening unified pod)を受容する(本明細書ではウェーハ及びサンプルをまとめて「ウェーハ」と呼ぶことがある)。
[0086] EFEM30内の1つ以上のロボットアーム(図示せず)が、ウェーハをロード/ロックチャンバ20へ移送することができる。ロード/ロックチャンバ20はロード/ロック真空ポンプシステム(図示せず)に接続されており、このロード/ロック真空ポンプシステムは、ロード/ロックチャンバ20内のガス分子を除去して大気圧未満の第1圧力を達成する。第1圧力に達した後、1つ以上のロボットアーム(図示せず)が、ウェーハをロード/ロックチャンバ20から主チャンバ11へ移送することができる。主チャンバ11は主チャンバ真空ポンプシステム(図示せず)に接続されており、この主チャンバ真空ポンプシステムは、主チャンバ11内のガス分子を除去して第1圧力未満の第2圧力を達成する。第2圧力に達した後、ウェーハは電子ビームツール100による検査を受ける。電子ビームツール100はシングルビームシステム又はマルチビームシステムとすることができる。コントローラ109は、電子ビームツール100に電子的に接続されており、他のコンポーネントにも電子的に接続できる。コントローラ109は、EBIシステム10の様々な制御を実行するように構成されたコンピュータとすればよい。コントローラ109は図1において、主チャンバ11、ロード/ロックチャンバ20、及びEFEM30を含む構造の外側に示されているが、コントローラ109がこの構造の一部である場合もあることは認められよう。
[0087] 図2Aは荷電粒子ビーム装置を示す。この荷電粒子ビーム装置において、検査システムは、複数の一次電子ビームレットを用いてサンプル上の複数の位置を同時にスキャンするマルチビーム検査ツールを含むことができる。
[0088] 図2Aに示されているように、電子ビームツール100A(本明細書では装置100Aとも呼ばれる)は、電子源202と、銃開口204と、コンデンサレンズ206と、電子源202から放出された一次電子ビーム210と、ソース変換ユニット212と、一次電子ビーム210の複数のビームレット214、216、及び218と、一次投影光学システム220と、ウェーハステージ(図2Aには示されていない)と、複数の二次電子ビーム236、238、及び240と、二次光学システム242と、電子検出デバイス244と、を備え得る。電子源202は、一次電子ビーム210の電子のような一次粒子を発生できる。電子検出デバイス244に、コントローラや画像処理システム等を結合することができる。一次投影光学システム220は、ビームセパレータ222と、偏向スキャンユニット226と、対物レンズ228と、を備え得る。電子検出デバイス244は検出サブ領域246、248、及び250を含み得る。
[0089] 電子源202、銃開口204、コンデンサレンズ206、ソース変換ユニット212、ビームセパレータ222、偏向スキャンユニット226、及び対物レンズ228は、装置100Aの一次光軸260と位置合わせすることができる。二次光学システム242及び電子検出デバイス244は、装置100Aの二次光軸252と位置合わせすることができる。
[0090] 電子源202は、カソード、抽出器、又はアノードを含み得る。一次電子はカソードから放出され、抽出又は加速されて、クロスオーバ(仮想(virtual)又は実)208と主に一次電子ビーム210を形成することができる。一次電子ビーム210は、クロスオーバ208から放出されているように可視化できる。銃開口204は、一次電子ビーム210の周辺電子を遮断してプローブスポット270、272、及び274のサイズを縮小することができる。
[0091] ソース変換ユニット212は、像形成要素アレイ(図2Aには示されていない)及びビーム制限開口アレイ(図2Aには示されていない)を含むことができる。ソース変換ユニット212の一例は、米国特許第9,691,586号、米国公開第2017/0025243号、及び国際出願第PCT/EP2017/084429号で見ることができる。これらは全て援用により全体が本願に含まれる。像形成要素アレイは、微小偏向器又は微小レンズのアレイを含み得る。像形成要素アレイは、一次電子ビーム210の複数のビームレット214、216、及び218によって、クロスオーバ208の複数の平行な像(虚(virtual)又は実)を形成することができる。ビーム制限開口のアレイは、複数のビームレット214、216、及び218を制限することができる。
[0092] コンデンサレンズ206は、一次電子ビーム210を集束することができる。コンデンサレンズ206の集束力(focusing power)を調整することによって、又は、ビーム制限開口アレイ内の対応するビーム制限開口の半径方向サイズを変更することによって、ソース変換ユニット212の下流のビームレット214、216、及び218の電流を変化させることができる。コンデンサレンズ206は、第1主面の位置が可動であるように構成できる可動コンデンサレンズとしてもよい。可動コンデンサレンズは、回転角を有する磁気型に構成することで、軸外ビームレット216及び218をビームレット制限開口に入射させることができる。回転角は、可動コンデンサレンズの集束力と第1主面の位置と共に変化する。いくつかの実施形態では、可動コンデンサレンズは、可動の第1主面を有する非回転レンズを含む、可動の非回転コンデンサレンズとすることができる。可動コンデンサレンズは、援用により全体が本願に含まれる米国公報第2017/0025241号に更に記載されている。
[0093] 対物レンズ228は、検査のためにビームレット214、216、及び218をウェーハ230上に集束させることができ、ウェーハ230の表面上に複数のプローブスポット270、272、及び274を形成できる。
[0094] ビームセパレータ222は、静電双極子場及び磁気双極子場を発生するウィーンフィルタ(Wien filter)タイプのビームセパレータとすればよい。いくつかの実施形態では、それらが適用された場合、ビームレット214、216、及び218の電子に対して静電双極子場によって加えられる力は、この電子に対して磁気双極子場によって加えられる力と、大きさは等しいが方向は反対であり得る。従って、ビームレット214、216、及び218は、ゼロの偏向角で真っすぐビームセパレータ222を通過できる。しかしながら、ビームセパレータ222によって発生するビームレット214、216、及び218の全分散も非ゼロである可能性がある。ビームセパレータ222は、ビームレット214、216、及び218から二次電子ビーム236、238、及び240を分離し、二次電子ビーム236、238、及び240を二次光学システム242の方へ誘導することができる。
[0095] 偏向スキャンユニット226は、ビームレット214、216、及び218を偏向させて、プローブスポット270、272、及び274をウェーハ230の表面エリアでスキャンすることができる。ビームレット214、216、及び218がプローブスポット270、272、及び274に入射することに応答して、ウェーハ230から二次電子ビーム236、238、及び240が放出され得る。二次電子ビーム236、238、及び240は、二次電子及び後方散乱電子を含むエネルギ分布を有する電子を含み得る。二次光学システム242は、二次電子ビーム236、238、及び240を電子検出デバイス244の検出サブ領域246、248、及び250上に集束させることができる。検出サブ領域246、248、及び250は、対応する二次電子ビーム236、238、及び240を検出し、ウェーハ230の表面エリアの像を再構築するために使用される対応する信号を発生するように構成できる。
[0096] 図2Aは、複数のビームレットを使用するマルチビームツールとして電子ビームツール100の一例を示すが、本開示の実施形態はそのように限定されない。例えば電子ビームツール100は、1つだけの一次電子ビームを用いて一度にウェーハ上の1つの位置をスキャンするシングルビームツールとしてもよい。
[0097] 図2Bに示されているように、電子ビームツール100B(本明細書では装置100Bとも呼ばれる)は、EBIシステム10で使用されるシングルビーム検査ツールとすることができる。装置100Bは、検査対象のウェーハ150を保持するため、電動式ステージ134によって支持されたウェーハホルダ136を含む。電子ビームツール100Bは、カソード103と、アノード121と、銃開口122と、を含み得る電子放出器を含む。電子ビームツール100Bは更に、ビーム制限開口125と、コンデンサレンズ126と、コラム開口135と、対物レンズアセンブリ132と、検出器144と、を含む。対物レンズアセンブリ132は、いくつかの実施形態では変更したSORILレンズとすることができ、これは、磁極片132aと、制御電極132bと、偏向器132cと、励起コイル132dと、を含む。結像プロセスにおいて、カソード103の先端から発した電子ビーム161はアノード121の電圧によって加速され、銃開口122、ビーム制限開口125、コンデンサレンズ126を通過し、変更したSORILレンズによってプローブスポット170に集束され、ウェーハ150の表面に衝突することができる。偏向器132c又はSORILレンズ内の他の偏向器のような偏向器によって、ウェーハ150の表面でプローブスポット170をスキャンすることができる。ウェーハ表面から発した二次電子又は散乱一次電子のような二次粒子又は散乱一次粒子は、検出器144によって収集されて、ビームの強度を決定することができると共に、ウェーハ150上の関心領域の像を再構築することが可能となる。
[0098] また、画像取得器120と、ストレージ130と、コントローラ109と、を含む画像処理システム199も提供することができる。画像取得器120は1つ以上のプロセッサを含み得る。例えば画像取得器120は、コンピュータ、サーバ、メインフレームホスト、端末、パーソナルコンピュータ、任意の種類のモバイルコンピューティングデバイス等、又はそれらの組み合わせを含み得る。画像取得器120は、導電体、光ファイバケーブル、携帯型記憶媒体、IR、ブルートゥース、インターネット、無線ネットワーク、無線機、又はそれらの組み合わせを介して、電子ビームツール100Bの検出器144に接続できる。画像取得器120は、検出器144から信号を受信し、画像を構築することができる。従って、画像取得器120はウェーハ150の画像を取得できる。また、画像取得器120は、輪郭発生や取得画像上へのインジケータの重畳といった様々な後処理機能も実行できる。画像取得器120は、取得画像の明るさやコントラスト等の調整を実行するように構成できる。ストレージ130は、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、クラウドストレージ、他のタイプのコンピュータ可読メモリ等の記憶媒体とすればよい。ストレージ130は、画像取得器120と結合することができ、原画像としてのスキャンした原画像データ及び後処理した画像をセーブするために使用できる。画像取得器120及びストレージ130はコントローラ109に接続することができる。いくつかの実施形態では、画像取得器120、ストレージ130、及びコントローラ109は、1つの電子制御ユニットとして一体化してもよい。
[0099] いくつかの実施形態において、画像取得器120は、検出器144から受信した結像信号に基づいてサンプルの1つ以上の画像を取得することができる。結像信号は、荷電粒子結像を行うためのスキャン動作に対応し得る。取得画像は、ウェーハ150の様々なフィーチャを含み得る複数の結像エリアを含む単一画像であり得る。単一画像はストレージ130に記憶することができる。結像は結像フレームに基づいて実行できる。
[00100] 電子ビームツールのコンデンサ及び照明光学系は、電磁四極電子レンズを含むか又はこれによって補足することができる。例えば図2Bに示されているように、電子ビームツール100Bは第1の四極レンズ148及び第2の四極レンズ158を含み得る。いくつかの実施形態において、これらの四極レンズは電子ビームを制御するために用いられる。例えば、第1の四極レンズ148を制御してビーム電流を調整し、第2の四極レンズ158を制御してビームスポットサイズ及びビーム形状を調整することができる。
[00101] 図2Bが示す荷電粒子ビーム装置において、検査システムは、ウェーハ150との相互作用によって二次電子を発生するように構成できる単一の一次ビームを使用することができる。図2Bに示された実施形態におけるように、検出器144は光軸105に沿って配置できる。一次電子ビームは光軸105に沿って進むように構成できる。従って検出器144は、一次電子ビームがこれを通過してウェーハ150に到達できるように、中央に孔を含み得る。図3Gは、中央に開口145を有する検出器144の一例を示す。しかしながら、いくつかの実施形態は、一次電子ビームが進む光軸に対して軸外に配置された検出器を使用できる。例えば図2Aに示された実施形態におけるように、ビームセパレータ222を設けて、軸外に配置された検出器の方へ二次電子ビームを誘導することができる。ビームセパレータ222は、二次電子ビームを角度αだけそらすように構成できる。
[00102] これより図2Cを参照して荷電粒子ビーム装置の別の例について検討する。電子ビームツール100C(本明細書では装置100Cとも呼ばれる)は、電子ビームツール100の一例であり、図2Aに示された電子ビームツール100Aと同様とすることができる。
[00103] 図2Cに示されているように、ビームセパレータ222は、静電双極子場及び磁気双極子場を発生するウィーンフィルタタイプのビームセパレータとすればよい。いくつかの実施形態では、それらが適用された場合、ビームレット214、216、及び218の電子に対して静電双極子場によって加えられる力は、この電子に対して磁気双極子場によって加えられる力と、大きさは等しいが方向は反対であり得る。従って、ビームレット214、216、及び218は、ゼロの偏向角で真っすぐビームセパレータ222を通過できる。しかしながら、ビームセパレータ222によって発生するビームレット214、216、及び218の全分散も非ゼロである可能性がある。ビームセパレータ222の分散面224について、図2Cは、公称エネルギV0及びエネルギ分布ΔVのビームレット214が、エネルギV0に対応するビームレット部分262、エネルギV0+ΔV/2に対応するビームレット264、及びエネルギV0-ΔV/2に対応するビームレット部分266に分散することを示す。二次電子ビーム236、238、及び240の電子に対してビームセパレータ222によって加えられる全体的な力は、非ゼロである可能性がある。ビームセパレータ222は、ビームレット214、216、及び218から二次電子ビーム236、238、及び240を分離し、二次電子ビーム236、238、及び240を二次光学システム242の方へ誘導することができる。
[00104] EBIシステム10の装置100において、半導体電子検出器(「PIN検出器」とも呼ばれることがある)を使用できる。EBIシステム10は、画像プロセッサを含む高速ウェーハ結像SEMとすることができる。EBIシステム10によって発生した電子ビームは、サンプルの表面を照射するか又はサンプルを貫通することができる。EBIシステム10を用いて、例えば層のアライメントを解析するため、サンプル表面又は表面下の構造を結像できる。いくつかの実施形態において、EBIシステム10は、例えばSEM画像をデバイスレイアウトパターンと比較するか、又は検査中のウェーハ上の他の位置における同一パターンのSEM画像と比較することによって、半導体ウェーハ製造に関連したプロセス欠陥を検出し報告することができる。PIN検出器は、負バイアスで動作できるシリコンPINダイオードを含み得る。PIN検出器は、入来電子が比較的大きい明確な検出信号を発生するように構成できる。いくつかの実施形態において、PIN検出器は、入来電子が多数の電子正孔対を発生できるように構成され得る。これに対して、光子は1つだけの電子正孔対を発生させ得る。電子計数に使用されるPIN検出器は、光子検出に使用されるフォトダイオードに対し、多くの相違点を有し得る。これについて以下で検討する。
[00105] これより、検出器300の例示的な構造の概略図を示す図3Aを参照する。検出器300は、図2A、図2B、及び図2Cを参照して、検出器144又は電子検出デバイス244として提供することができる。図3Aには1つのアレイが図示されているが、検出器300は、例えば各二次電子ビームに1つずつアレイを設ける等、複数のアレイを含み得ることは認められよう。
[00106] 検出器300は、検知要素311、312、及び313を含む検知要素のアレイを含み得る。検知要素は平面状の2次元アレイに配置することができ、アレイの面は入来する荷電粒子の入射方向に対して実質的に垂直である。いくつかの実施形態では、検出器300を入射方向に対して斜めに配置してもよい。
[00107] 検出器300は基板310を含むことができる。基板310は、検知要素を含み得る半導体基板とすればよい。検知要素はダイオードとすることができる。検知要素は、入射するエネルギを測定可能な信号に変換できるダイオードと同様の要素としてもよい。検知要素は例えば、PINダイオード、アバランシェダイオード、電子増倍管(EMT:electron multiplier tube)等、又はそれらの組み合わせを含み得る。隣接する検知要素の間にエリア325を設けることができる。エリア325は、隣接する検知要素の辺又はコーナを相互に隔離する隔離エリアとすればよい。エリア325は、検出器300の検出表面の他のエリアとは異なる材料である絶縁材料を含むことができる。エリア325は、図3Aの平面図に見られるような十字形エリアとして提供され得る。エリア325は方形として提供され得る。いくつかの実施形態では、検知要素の隣接した辺の間にエリア325が設けられない場合がある。例えばいくつかの実施形態では、検出器の検出表面上に隔離エリアが設けられないことがある。
[00108] 検知要素は、検知要素のアクティブエリアで受け取った荷電粒子に応じた電気信号を発生することができる。例えば検知要素は、受け取った電子のエネルギに応じた電流信号を発生できる。この発生された電流信号は、前処理回路によって、電子ビームスポット又はその一部の強度を表す電圧に変換することができる。前処理回路は、例えばプリアンプ回路を含み得る。プリアンプ回路は、例えば電荷移動増幅器(CTA:charge transfer amplifier)、トランスインピーダンス増幅器(TIA:transimpedance amplifier)、又はCTAもしくはTIAと結合されたインピーダンス変換回路を含み得る。いくつかの実施形態では、時系列で任意の単位の出力信号を与える信号処理回路を提供できる。ダイ等の1つ又は複数の基板を提供することができ、これは、検知要素の出力を処理するための回路層を形成し得る。ダイは、検出器の厚さ方向に積層することができる。また、他の機能のために他の回路を提供することも可能である。例えば、検知要素を相互に接続するためのスイッチング要素を制御するスイッチ作動回路を提供できる。
[00109] これより、PIN検出器に含まれる構造の一例である基板310の断面構造の概略図を示す図3Bを参照する。基板310は1つ以上の層を含み得る。例えば基板310は、厚さ方向に積層された複数の層を有するように構成することができ、厚さ方向は電子ビームの入射方向に対して実質的に平行である。いくつかの実施形態において、基板310は、電子ビームの入射方向に対して垂直な方向に積層された複数の層を有し得る。基板310は、入射する荷電粒子を受け取るためのセンサ表面301を備えることができる。基板310の検知層に、検知要素(例えば検知要素311、312、及び313)を提供できる。隣接した検知要素間にエリア325を提供できる。例えば基板310は、トレンチ、又は絶縁材料で作製されるかもしくは絶縁材料が充填された他の構造を含み得る。いくつかの実施形態では、エリア325は基板310内の全体に又は一部に延出し得る。
[00110] 図3Cに示されているように、いくつかの実施形態では、検知要素間にエリア325が提供されないことがある。例えば、断面図において隣接した検知要素の辺の間に絶縁材料が提供されない場合がある。複数の検知要素は断面図において連続的とすることができる。隣接した検知要素間の隔離は、例えば電界を制御すること等の他の手段によって達成され得る。例えば、各検知要素間で電界を制御すればよい。
[00111] 図面は検知要素311、312、及び313を別々のユニットとして示し得るが、このような分割は実際には存在しないことがある。例えば検出器の検知要素は、PINダイオードデバイスを構成する半導体デバイスによって形成され得る。PINダイオードデバイスは、p型領域、真性領域、及びn型領域を含む複数の層を備えた基板として製造できる。そのような層のうち1つ以上は断面図において連続的とすることができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、検知要素の間に物理的な分離を設けることができる。また、センサ層に加えて、例えば回路層及び読み出し層のような別の層を提供してもよい。
[00112] 別の層の一例として、検出器300は、センサ層に隣接した1つ以上の回路層を備えることができる。1つ以上の回路層は、ラインワイヤ、相互接続、及び様々な電子回路コンポーネントを含み得る。1つ以上の回路層は処理システムを含み得る。1つ以上の回路層は信号処理回路を含み得る。1つ以上の回路層は、センサ層の検知要素から検出された出力電流を受信するように構成できる。1つ以上の回路層及びセンサ層は、例えば同一のダイ又は別個のダイに提供することができる。
[00113] 図3D及び図3Eは、検知要素311、312、及び313のうち1つの例である個々の検知要素の概略図を示す。例えば、図3Dには検知要素311Aが示されている。検知要素311Aは、p型層321、真性層322、及びn型層323の半導体構造を含むことができる。検知要素311Aは、アノードとカソード等の2つの端子を含み得る。検知要素311Aに逆バイアスをかけることができ、空乏化領域330が形成されて、p型層321の長さの一部、真性層322のほぼ全長、及びn型層323の長さの一部に延出し得る。空乏化領域330において、電荷キャリアは消滅し、空乏化領域330で発生した新しい電荷キャリアは電荷に従って掃き出され得る。例えば、入来した荷電粒子がセンサ表面301に到達すると、電子正孔対が生成され、正孔351はp型層321の方へ引き付けられると共に電子352はn型層323の方へ引き付けられ得る。いくつかの実施形態では、センサ表面301上に保護層を設けてもよい。
[00114] 図3Eに示されているように、検知要素311Bは、向きが変更されていることを除いて検知要素311Aと同様に動作できる。例えば、p型層321はセンサ表面301を含むことができる。p型層321は入射する荷電粒子に暴露され得る。従って、入射する荷電粒子はp型層321及び空乏化領域330と相互作用し、電子正孔対を発生できる。いくつかの実施形態では、p型層321上に金属層を設けてもよい。
[00115] 動作中、検出要素の空乏化領域は捕捉領域として機能できる。入来する荷電粒子は空乏化領域において半導体材料と相互作用し、新しい電荷を発生することができる。例えば検出要素は、特定量以上のエネルギを有する荷電粒子が半導体材料の格子の電子を移動させる(dislodge)ことで、電子正孔対を生成するように構成できる。このように生じた電子及び正孔は、例えば空乏化領域内の電界によって反対方向に進み得る。検知要素の端子の方へ進むキャリアの発生は、検出要素における電流に対応し得る。
[00116] 比較例において、フォトダイオードは、光子を受け取ることに応答して電荷を発生させるように構成できる。光子は、波長又は周波数に対応するエネルギを有し得る。典型的に、可視光スペクトルの光子は約1eVのオーダーのエネルギを有し得る。しかしながら、半導体フォトダイオードでは、1つの電子正孔対を発生させるには約3.6eVが必要であることが通例である。従って、フォトダイオードは電流発生の検出において以下のような問題に直面する可能性がある。
[00117] 一般に、光子のエネルギレベルは、半導体フォトダイオードにおいて電子正孔対を発生させるために必要なものと同様であり得る。従って、電流を安定して信頼性高く発生させるためには、高エネルギの光子が半導体フォトダイオードに入射することが必要となり得る。光子の周波数が特定のレベル以上である場合、光子は1つの電子正孔対を発生させるのに充分なエネルギを有し得る。
[00118] 更に、光子到達イベントに応答して電子正孔対によって発生された電流は比較的小さい可能性がある。光子到達イベントに応答して発生された電流は、背景ノイズを克服するのに充分でない場合がある。アバランシェ又はガイガー計数モードに偏奇させたフォトダイオードのようないくつかのダイオードは、より大きいレベルの電流を発生させるため増幅を利用することで、有用な検出信号の発生を可能とする。いくつかの実施形態では、フォトダイオードをアバランシェ動作モードに偏奇させることができる。いくつかの実施形態では、フォトダイオードに取り付けた利得ブロックによって増幅を実行できる。バイアス電圧によって生じる強力な内部電界から、アバランシェ効果を発生することができる。アバランシェ効果を用いて、衝突電離(impact ionization)による増幅を達成できる。
[00119] 検出器の背景ノイズは、とりわけ、ダイオードにおける暗電流によって生じ得る。例えば、ダイオードとして作用する半導体デバイスの結晶構造の不完全性(imperfection)は電流変動を引き起こすことがある。検出器における暗電流は、検出器を形成する材料の欠陥に起因する可能性があり、入射する照射が存在しない場合であっても発生し得る。「暗」電流は、電流変動が入来荷電粒子とは関係ないという事実を示し得る。
[00120] ダイオードは、特定のエネルギレベル以上の粒子(例えば光子)がダイオードに入射した場合に電子正孔対を発生するように構成できる。例えばフォトダイオードは、特定のエネルギレベル以上の光子がフォトダイオードに入射した場合にのみ電子正孔対を発生することができる。これは、例えばフォトダイオードを形成する材料のバンドギャップに起因し得る。特定レベルに等しいエネルギを有する光子は1つだけの電子正孔対を発生することができ、光子が特定レベルを超えるエネルギを有する場合であっても、1つだけの電子正孔対を発生することができる。追加の電子正孔対は発生されない可能性がある。一方、電子検出器は、ダイオードを含むことができる検出器の検知要素の空乏化領域に電子が入射した場合はいつでも、この電子が例えば約3.6eVという特定量以上のエネルギを有する限り、電子正孔対の発生が開始され得るように構成できる。電子が特定量を超えるエネルギを有する場合は、入来電子の到達イベント中に、より多くの電子正孔対を発生させることができる。
[00121] 光子検出のために構成されたダイオードでは、ダイオードの欠陥によって、例えば半導体構造の結晶格子の不完全性に起因して、ダイオードで電子正孔対がランダムに発生することがある。暗電流は、アバランシェ増幅のような増幅効果によって増幅される可能性がある。暗電流から生じた信号は次いで計数回路に入力され、そこで到達イベントとして記録され得る。このようなイベントを「暗計数(dark count)」と呼ぶことができる。更に、増幅器自体がノイズの一因となる可能性がある。従って、暗電流、熱エネルギ、外部からの放射のような様々なノイズ源が、検出器の出力において意図しない電流変動を生じることがある。
[00122] 光子とは対照的に、電子は著しく高いエネルギを有することができ、これはダイオードにおいて信号を発生させる際に有用である。検出器の検知要素に入射する電子は、検知要素で電子正孔対を発生させるのに必要な閾値エネルギレベルよりも著しく高いエネルギを有し得る。従って、入射電子は検知要素において多くの電子正孔対を発生させることができる。
[00123] これより、検出器300で受け取った荷電粒子ビームスポット500の例示的な図を示す図3Fを参照する。ビームスポット500は、図示のように、軌跡オフセット(loci offset)の無い丸い形状を有し得る。いくつかの実施形態では、ビームスポットは丸以外の形状を有することができる。例えばシングルビームシステムにおいて、ビームスポットは、収差のために円形の形状からずれた形状を有し得る。更に、いくつかの実施形態では、マルチビームシステムにおけるように、検出器に複数のビームスポットが入射することがある。ビームスポットは、例えば位置、形状、及びグリッド空間(例えば、複数のビームスポットが形成される場合のビームスポット間のピッチ)について、丸い形状からずれる可能性がある。ずれの原因は例えば、収差、分散、電子光学システムにおけるドリフト、又はコンポーネントの不完全性である。
[00124] いくつかの実施形態において、検出システムは、荷電粒子が検出器に入射したことを判定するように構成できるコントローラを含み得る。コントローラは、1フレーム中に検出器の検知要素に入射した荷電粒子の数を決定するように構成できる。例えばコントローラは、電子計数のような荷電粒子計数を実行できる。荷電粒子計数はフレームごとに実行され得る。検出器は、個々の検知要素(図3Aの検知要素311、312、及び313等)が時系列で検出信号を出力するように構成できる。この検出信号をコントローラに送信することができる。検出信号は例えば、各検知要素で受け取った電子のエネルギに応じたアンペア、ボルト、又は任意の単位の信号とすればよい。コントローラは、検出信号に基づいて、別々の数の荷電粒子が検知要素に到達したことを判定できる。荷電粒子の数は整数として識別できる。
[00125] コントローラは、第1のグループ化基準に基づいて、検出器に設けられた複数の検知要素のうち第1のグループの検知要素を決定するように構成できる。第1のグループ化基準は例えば、検出器の第1の数の検知要素の各々に少なくとも1つの荷電粒子が入射するという条件を含み得る。第1の数は、検知要素の生の数値(raw number)又は検知要素の割合で表すことができる。コントローラは、1フレーム周期中に時系列で第1のグループの決定を行うように構成できる。この決定を複数のフレームにわたって繰り返し実行することができ、コントローラは、各フレーム内で荷電粒子計数決定を行うといった処理を実行するためのフレームレートを有する。また、コントローラは境界線を決定することも可能である。例えば、図3Fに示されているように境界線350を決定できる。境界線350は、少なくとも1つの荷電粒子を受け取る検知要素を取り囲むように設ければよい。境界線350内に含まれる検知要素は、少なくとも部分的に同一の荷電粒子スポットでカバーされ得る。
[00126] ビームスポット500は明確に画定された中心又は軌跡を有し得る。ビームスポット500の中心の近くでは、外周の近くよりも強度が高い可能性がある。この強度の差は、電子源202の先端サイズ、電子光学システムの収差、電子分散、及び装置100Aの他のパラメータ等を含む様々なファクタに起因し得る。更に、いくつかの実施形態では、強度のばらつきは、散乱電子のサンプルトポグラフィ、材料(例えば後方散乱電子の場合)、サンプル表面の帯電状態、入射エネルギ等によって生じ得る。従って、高い強度のエリアは必ずしもビームスポット500の中心にあるとは限らない場合がある。
[00127] 強度が高いビームスポット500のエリアでは、検出器の検知要素に2つ以上の電子が入射し得る。従ってコントローラは、第2のグループ化基準に基づいて第2のグループの検知要素を決定するように構成できる。第2のグループ化基準は、第2の数の検知要素の各々に2つ以上の荷電粒子が入射するという条件を含み得る。第2の数の検知要素を含む第2のグループは、第1の数の検知要素を含む第1のグループの中で決定できる。すなわち、第2のグループは第1のグループのサブセットとすることができる。第2のグループの決定は第1のグループの決定と同時に実行できる。従って、第1のグループ及び第2のグループの決定は同一のフレームで実行され得る。また、コントローラは、2つ以上の荷電粒子を受け取る検知要素を取り囲む第2の境界線360も決定できる。
[00128] コントローラは、処理を実行するフレームレート(又は周期)を決定又は調整するように構成できる。処理は、例えば検出器からの出力に基づいてSEM画像を発生するための画像処理に対応し得る。また、処理は、上記で検討したように第1のグループの検知要素及び第2のグループの検知要素を決定することも含み得る。第1のフレームの周期は、第1のパラメータに基づいて以下のように決定できる。周期は、第1のフレームにおいて第1の所定数の検知要素が少なくとも1つの入射荷電粒子を受け取るように設定できる。第1の所定数は、検出器の全ての検知要素のうちある割合、例えばA%の検知要素とすればよい。また、第1の所定数は、必ずしも全ての検知要素のうちでなく、検出器の特定領域内の検知要素のうち特定の割合の検知要素としてもよい。例えば第1の所定数は、検出器の第1象限内のある割合の検知要素とすればよい。また、第1の所定数は、X個の検知要素のように生の数値としてもよい。
[00129] 更に、周期は第2のパラメータに基づいて設定することができる。第2のパラメータは、第1のフレームにおいて第2の所定数の検知要素の各々が2つ以上の入射荷電粒子を受け取ることとすればよい。例えば第2のパラメータは、少なくとも1つの入射荷電粒子を受け取る検知要素のうち第2の割合、例えばB%の検知要素のみが2つ以上の荷電粒子を受け取ることとすればよい。また、第2の所定数は、Y個の検知要素のように生の数値としてもよい。第1のパラメータを満たした後に第2のパラメータを満たすようにパラメータを調整することができる。
[00130] 第1のパラメータ及び第2のパラメータは、第1のフレームの周期を決定するための境界条件を規定できる。第1のパラメータ又は第2のパラメータを使用することができる。第1のパラメータ及び第2のパラメータを一緒に用いることも可能である。第1のフレームの周期の決定に加えて、複数のフレームのフレームレートを決定することができる。フレームレートは、例えば特定のSEM設定に基づいて設定できる一定の値とすればよい。従って、フレームレートは第1のフレームの周期の逆数とすることができる。また、フレームレートを適合的とすること、すなわち変動値を有することも可能である。適合フレームレートは、検出されている荷電粒子ビームの信号強度を適合させるように設定できる。
[00131] いくつかの実施形態では、電子ビームツール100は、電子ビームスポット内の電子密度をいっそう均一に分布させるように構成できる。例えばコントローラ109は、電子ビーム又はビームレットがデフォーカスされるように電子光学系を制御できる。電子光学系は、焦点が検出器144又は電子検出デバイス244の表面と一致しないように電子ビーム(又はビームレット)を調整できる。更に、二次SEMコラムの投影システムは、二次ビーム(又はビームレット)をある程度デフォーカスするように構成できる。更に、二次SEMコラムの投影システムの倍率を変更して、電子ビーム又は1もしくは複数のビームレットのスポットサイズを拡大することも可能である。各ビームレットスポットのサイズを拡大することができる。倍率設定は、ビームレットスポット間のクロストークを考慮して構成すればよい。
[00132] 図3Gは、PIN検出器を含むことができる検出器144の表面の一例を示す。検出器144は、サンプルから発生した荷電粒子を受け取るように配置されたセンサ表面301を含み得る。開示のいくつかの実施形態において、PIN検出器は、EBIシステム10の遅延(retarding)対物レンズSEMコラムにおけるインレンズ検出器として使用できる。PIN検出器は、電子ビームを発生するためのカソードと対物レンズとの間に配置できる。カソードから放出された電子ビームは、-BEkeV(典型的に約-10kV)で電位を与える(potentialize)ことができる。電子ビームの電子はすぐに加速されてコラム内を進むことができる。コラムは接地電位とすればよい。従って、電子はBEkeVの運動エネルギで進みながら、検出器144の開口145を通過できる。ウェーハ表面電位は-(BE-LE)keVに設定され得るので、図2Bの対物レンズアセンブリ132の磁極片132aのような対物レンズの磁極片を通過した電子は、入射エネルギLEkeVまで急速に減速され得る。
[00133] 一次電子ビームの電子の衝突によってウェーハ表面から放出された二次電子は、加速フィールドにより加速され(例えば、ウェーハの近くの遅延電界が二次電子のための加速フィールドとして作用し得る)、PIN検出器表面の方へ逆に進むことができる。例えば図4Aに示されているように、プローブスポット170におけるウェーハ150との相互作用によって、検出器144の方へ逆に進む二次電子を発生させることができる。ウェーハ表面から放出されて光軸105に沿って進む二次電子は、分散した位置で検出器144の表面に到達できる。二次電子の入射位置は、例えば数ミリメートルの半径の概ね円形の領域内であり得る。二次電子の入射位置の幾何学的分布は、電子が例えば初期運動エネルギ及び放出角に依存した様々な軌道を有することに起因し得る。
[00134] 図4Bは、検出器表面上の二次電子入射点分布の一例を示す。電子300aは検出器144の表面上の様々なポイントに入射するが、概ね、ほとんどは検出器144の中央部を中心としてクラスタ化し得る。入射ポイント分布は、二次放出位置及びSEM偏向フィールド(例えばスキャンフィールド)に依存してシフトする可能性がある。従って、いくつかの用途では、SEM画像の特定の視野(FOV)が必要である場合、インレンズPIN検出器に必要なサイズは著しく大きいことがある。典型的に、検出器は直径が例えば10mm以上であり得る。いくつかの実施形態では、検出器は直径が約4~10mmであり得る。
[00135] PIN検出器の検出表面に入射する電子を電荷に変換することができる。電荷はPIN検出器の端子で収集され、入来電子率に比例する検出信号として使用できる。理想的なPIN検出器では、エネルギ(BE-LE)keVを有する入来電子の運動エネルギは、1対当たり約3.6eVで多くの電子正孔対を生成することによって充分に消費され得る。従って、10,000eVエネルギの入来電子では約2,700の電子正孔対を生成できる。単一の電子正孔対だけを発生する光子到達イベントとは対照的に、電子到達イベントは、はるかに多くの電子正孔対を発生させることができる。
[00136] 検知要素は、電子到達イベントに応答して多数の電子正孔対を発生させるように構成できる。いくつかの実施形態では、検知要素における電子到達イベントに応答して発生された電流は検出電流信号として使用可能であり得る。電子到達イベントに応答した検知要素の出力はそのまま使用できるか、比較的小さい増幅を行うことができる。増幅を行う必要性を低減するか又は省略することができる。増幅の省略又は増幅の低減は、ノイズ軽減のために有益であり得る。更に、増幅器は、ダイオードで発生された全ての信号に対して無差別に増幅を適用し得る。従って、いわゆる「暗計数」であっても増幅される可能性があり、誤った検出信号の一因となる恐れがある。
[00137] 開示に従ったいくつかの実施形態において、暗電流は、検知要素が検出するように構成されている荷電粒子に比べ、ごく小さい電流しか発生させ得ない。例えば暗電流は、ダイオードの半導体構造の結晶格子における転位によって電子が移動することから生じ得る。場合によっては、暗電流は検知要素において電子正孔対を1つだけ発生させる。しかしながら、上記で検討したように、二次電子等の荷電粒子の到達に応答して多数の電子正孔対を発生するように構成された検知要素では、約3,000の電子正孔対を発生させることができる。従って、信号対暗電流ノイズの比は約3,000:1となり得る。
[00138] PIN構造を有するダイオードのような半導体ダイオードは、様々なモードで動作させることができる。例えば第1のモードでは、ダイオードを通常の逆バイアスで動作させることができる。このモードでは、充分に高いエネルギを有する入来光子の各々が電子正孔対を1つだけ発生できる。外側の放射(例えば入来光子)がなくなると、ダイオード内の電流はすぐに停止し得る。
[00139] ダイオードを動作させる第2のモードでは、ダイオードを第1のモードよりも高い逆バイアスで動作させることができる。第2のモードは衝突電離を引き起こし得る。これをアバランシェフォトダイオードモードと呼ぶこともできる。このモードでは、充分に高いエネルギを有する入来光子の各々が1つの電子正孔対を発生できる。次いで、内部の衝突電離により、この1つの対はアバランシェ利得で増倍されるので、最終的にいくつかの電子正孔対を発生できる。このように、各入来光子によっていくつかの電子正孔対を発生させることができる。外側の放射がなくなると、ダイオード内の電流はすぐに停止し得る。第2のモードは線形領域と非線形領域を含み得る。
[00140] ダイオードを動作させる第3のモードでは、ダイオードを第2のモードよりも高い逆バイアスで動作させることができる。第3のモードは、より強い衝突電離を引き起こし得る。第3のモードは光子計数を可能とする。第3のモードはガイガー計数モードを含み得る。第3のモードでは、充分に高いエネルギを有する入来光子の各々が1つの電子正孔対を発生できる。次いで、内部の衝突電離により、この1つの対はアバランシェ利得で増倍されるので、最終的にいくつかの電子正孔を発生できる。このように、各入来光子によっていくつかの電子正孔対を発生させることができる。高い逆バイアス電圧からの強い内部電界に起因して、増倍プロセスは継続することができる。増倍は自立型(self-sustaining)であり得る。外側の放射がなくなった場合、ダイオード内の電流は必ずしも停止するわけではない。ダイオード内の電流は、ダイオードを電力供給から切断することで停止され得る。切断後、ダイオード内の電流は低減し得る。第3のモードで動作するダイオードの電流出力は、ロングテールを含む挙動を示すことがある。例えば出力は、初期ピーク後に徐々に低下し得る。第3のモードにおいて、ダイオードはクエンチング回路を備えることができる。クエンチング回路は受動又は能動クエンチング回路を含み得る。クエンチング回路を作動させると、各光子到達イベント後にダイオードを停止することができる。クエンチングを用いてダイオードをリセットできる。
[00141] ダイオードは、ある利得レベルで動作するように構成できる。例えばダイオードは、100未満の利得で動作するように構成できる。これは、電圧の印加によってダイオードが動作することにより与えられる利得を示し得る。利得は、元の強度に対して例えば100倍まで信号を増幅することができる。他の特定の利得レベルも使用できることは認められよう。
[00142] アバランシェモード又はガイガー計数モードに偏奇されたダイオードによって与えられるような利得効果の使用は、時間依存現象を伴うことがある。例えば、アバランシェモードに偏奇されたダイオードは、アバランシェ増倍によって利得を与えることができる。利得効果には有限の時間が関連付けられることがある。ダイオードは、利得効果の発生に要する時間に関連した速度を有し得る。ガイガー計数モードに偏奇されずにアバランシェモードに偏奇されたダイオードは、通常バイアス条件下のダイオードの速度に少なくとも等しい速度を有し得る。また、アバランシェモードに偏奇されたダイオードは、通常バイアス条件下のダイオードよりも速い速度を有し得る。状況によっては、ダイオードにおける荷電粒子の到達イベント後に回復時間が存在する。ガイガー計数モードで動作するダイオードには、回復時間が関連付けられることがある。回復時間は、ダイオードが離散的な信号を間断なく連続して検出する能力を制限する可能性がある。ガイガー計数モードで動作するダイオードは、次のイベントを正確に検出するため、荷電粒子到達イベント後にクエンチングを必要とし得る。
[00143] 例えば検出可能イベントが間断なく連続して発生した場合、最初のイベント後の後続イベントの信号を増幅するため利得効果を適用する際に問題が生じ得る。これは、初期アバランシェ及びそれに関連する効果がまだ進行中であるからである。アバランシェモードで動作する従来のダイオードとは対照的に、本開示のいくつかの実施形態に従った検出器は、回復時間に伴う問題に対処することができる。例えば、以下で更に詳しく検討するように、PIN検出器は、例えばアバランシェモード又はガイガー計数モードに逆バイアスをかける必要なく、高い利得で電子正孔対を発生するように構成できる。PINダイオードで与えられる利得は、電子のような入来荷電粒子の運動エネルギに関連し得る。検出器は、PIN構造及び回路を有する検知要素を含み得る。クエンチング回路を提供する必要性は省略することができる。検出器は、例えば約3~5ns又はそれより短時間だけ継続するパルスに対応して電子正孔対を発生するように構成できる。
[00144] 例示的なPIN検出器では、PIN検出器の真性領域の空乏化領域で正孔が励起され、PIN検出器において逆バイアスで生成された電界によってアノードの方へドリフトし得る。次いで正孔はアノードで収集され得る。空乏化領域で発生した電子は正孔と反対方向にドリフトし得る。従って電子は、接地されていることがあるカソードで収集され得る。空乏化領域で生成された正孔及び電子は、PIN検出器内で反対の電荷と再結合し得る。再結合率は、空乏化領域の外側で高いことがある。空乏化領域は、逆バイアスのため、アノードとして作用することができるP+領域の一部を包含し得る。入射電子が検出器に入射するP+領域の側での正孔又は電子の再結合は、エネルギ損失の一因になることがあり、アノード端子における検出器電流に寄与しない。従って、例えばエネルギ損失を低減するため、入射電子が検出器に入射する側の電極を薄く構成することが望ましい場合がある。例えばPIN検出器では、P+層の厚さをできる限り薄く構成することが望ましいことがある。
[00145] PIN検出器に適用される逆バイアスは、電圧印加を含むことがある。ダイオードは、特定の量以下の逆電圧で動作するように構成できる。いくつかの実施形態では、特定の量は100ボルトとすればよい。ダイオードは線形領域内で動作させることができる。
[00146] いくつかの実施形態では、二次電子と後方散乱電子の双方が検出器に到達し得る。例えば比較例では、PIN検出器に入来する電子の約20~30%が、一次ビームの電子のエネルギ(例えばBE)にほぼ等しいエネルギを有する後方散乱電子である可能性がある。後方散乱電子は、電子源によって発生した一次ビームに含まれるものと同じであるが、著しいエネルギ量を損失することなくサンプルで反射して戻ってきた電子である。
[00147] 更に、後方散乱していない一部の電子は、PIN検出器内の格子原子(例えばシリコン基板内のSi原子)に特徴的なX線光子を放出させることによって運動エネルギを失うことがある。また、フォノンのような他の励起も発生することがある。従って、固定の運動エネルギを有する単一の入来電子によって生成される電荷の数は様々に異なる可能性がある。すなわち、電子利得(例えば、1つの入来電子に対してダイオードの全ての端子で収集される電荷数)は、入来電子によって異なることがある。しかしながら、典型的なPIN検出器における電子利得は、様々に変動する場合であっても、上記で検討したような理想的なPIN検出器の電子利得を超えないはずである。典型的に、実際の電子利得の分布は利得0で明らかなピークを有し、Si結晶による電子散乱に起因した検出損失を表す。
[00148] PIN検出器の端子で収集された電荷は電流信号を形成することができる。電流信号は、電子ビームがウェーハ表面をスキャンする際の入来電子率の変調に追従することができる。
[00149] 図5は、電子到達イベント及びそれらのイベントと電流信号との関係を示す概略図である。図5の3つのグラフの各々において、t軸は時間を表す。図5の上のグラフでは、単独の電子501が特定の時点でPIN検出器の表面に入射できる。図5の中央のグラフに示されているように、電子到達イベントに応答してPIN検出器で複数の理論的な信号パルス502を発生させることができる。Y軸は信号強度を任意の単位で表し得る。信号パルスは時間と共に上昇及び下降し、例えばPIN検出器及びPIN検出器に接続された回路の特徴に基づいて決定されるパルス幅を有し得る。上記で検討したように、信号パルスの振幅は、電子到達イベントに応答して発生する電子正孔対の数に応じて変動し得る。信号パルス502は、例えば電子到達イベントに応答して電子正孔対が1対当たり3.61eVで発生することに対応した理想的な信号パルスを表すことができる。電子は間断なく連続して検出器表面に到達し得るので、信号パルスは相互に重複する可能性がある。図示されている信号パルスは概略に過ぎないことは理解されよう。
[00150] 1サンプリング周期τSにおいて、複数の電子が間断なく連続して検出器に入射し得るので、電流信号が読み取られた場合、個々の電子の信号パルスは実質的に重複している可能性がある。信号が読み取られた時点の出力信号は、複数の電子到達イベントに応答して発生された電流に対応し得る。図5の下のグラフに示されているように、時点T2における単一の出力信号は、その瞬間の電子到達率に対応し得る。電子ビームがウェーハ表面をスキャンし、例えば時点T1、T2、T3等の異なる時点で異なる到達率の電子を受け取ると、これらの各時点で信号出力が読み取られる。これに従って時間信号(timewise signal)を発生し、像を再構築するために使用することができる。
[00151] いくつかの実施形態では、検出器の原電流信号をプリアンプに供給することができる。プリアンプは、電流バッファ及びトランスインピーダンス増幅器(TIA)を含み得る。信号は次いで主増幅器によって更に増幅できる。充分に増幅された信号は、各画素周期でサンプリングされ、アナログデジタル変換器(ADC:analog-to-digital converter)によって変換され得る信号である。画素周期は、データがSEM画像の1つの画素に関連付けられる時間期間に相当し得る。デジタル信号(典型的には8ビット信号)を画像プロセッサに送信することができる。一次電子ビームが標本のある領域のラスタスキャンの1サイクルを完了すると、画像プロセッサはフレーム画像(例えば画素データの2Dアレイ)を発生することができる。画像プロセッサは、取得された像のSNRを改善するため、同一スキャンエリアから得られた複数のフレーム画像を使用する集約(又は蓄積)機能を有し得る。いくつかの適用例では、欠陥検出又はクリティカルディメンション(CD)測定を実行するため、特定レベルのSNRが望ましいことがある。
[00152] これより、検出器からのアナログ信号を扱うために構成できる検出システムアーキテクチャの図を示す図6を参照する。検出器144と、信号調節回路410と、アナログ信号処理経路420と、ADC430と、デジタルインタフェース440と、を含む検出システム400を提供できる。信号調節回路410は、PINダイオードのような検出器144の検出要素の出力を処理するように構成された回路を含み得る。信号調節回路410は、電流バッファ及びトランスインピーダンス増幅器を含み得る。アナログ信号処理経路420は主増幅器を含み得る。ADC430はアナログ信号を8ビットのデジタル信号に変換することができる。デジタルインタフェース440は、例えば送信器TX及び受信器RXを含むトランシーバを介して、偏向及び画像制御(DIC:deflection and image control)ユニットのようなEBIシステム10のコンポーネントと通信を行うことができる。また、デジタルインタフェース440は、デジタルスイッチ、デジタル制御ユニット、又は、とりわけ画像処理を実行するように構成されたコントローラも含み得る。例えば利得及びオフセット制御を行うように構成された信号処理経路のような別の回路をこのアーキテクチャに提供してもよい。
[00153] 4nAの二次電子ビームが検出器に入射する場合のように、高い電子ビーム電流では、検出器に到達する平均電子数は特定の数であることがわかっている。これは例えば、1画素の10nsサンプリング周期当たり約250の電子である。すなわち、10nsの1画素周期(100MHzのサンプリングレートに対応する)では、平均して約250の電子が検出器に到達し得る。上述のように、検出器は、検出表面で電子を受け取ることに応答して電流を発生できる。電流パルスの幅は、検出器、信号経路、又は検出器と信号調節回路の組み合わせの速度に関連し得る。また、検出器の速度は部分的に入来電子のエネルギによって決定され得る。単独の電子到達イベントによって誘起された個々の電流パルスは密接に重複することがあり、従って、検出器の端子で比較的平滑な電流信号が発生し得る。電流信号の変調は入来電子率に追従することができる。このようにして、出力信号を発生し、検出システム400のような検出システムに供給し、像の再構築のために使用することができる。
[00154] しかしながら、電子ビーム電流がより低い値に低減した場合、密接に重複した電子パルスの平滑な電流信号が発生する可能性は低くなる。例えば40pAでは、10nsのサンプリング周期当たり平均して約2.5の電子が到達し得る。PIN検出器で単一の電子到達イベントによって発生する電流パルスが例えば3~5nsのパルス幅を有する場合、電子パルスは実質的に重複しないことがある。その代わり、後続の電子パルス間は分離し、後続電子が到達する前に励起はほとんど弱まる可能性がある。従って、PIN検出器で発生し、サンプリング時に測定される電気信号は、サンプリング周期全体で受け取った電子数を正確に反映しないことがある。電子ビームのショットノイズは、検出器からの信号電流の変動の一因となり得る。二次電子及び後方散乱電子発生プロセスの性質における統計的分散のため、一貫した信号を発生できる可能性が低いことがある。更に、PIN検出器からの比例的に低減する信号電流に対して固定の電気ノイズレベルが存在することがあり、例えば約200pAのSNRの急激な低下を招く可能性がある。このように、電子ビーム電流値が低くなるとSNRが劣化することがある。また、SNRの低下は、ランダムな信号パルス到達時間に起因した検出器からの信号の変動によっても生じ得る。更に、検出システムの全体的な帯域幅を決定する検出器、信号経路、又は検出器と信号調節回路の組み合わせの速度も、SNRに影響を及ぼす可能性がある。
[00155] 図7は、電子ビーム電流が比較的低い場合の電子到達イベント及びそれらのイベントと電流信号との関係の概略図を示す。例えば上記で検討したように、40pAのビーム電流では、サンプリング周期中に2つ又は3つだけの電子がPIN検出器で受け取られることがある。サンプリング周期τSは10nsとすればよい。単一の電子到達イベントにより発生した信号パルスは、約5nsのパルス幅を有し得る。従って、時点T1又は時点T2で読み取られた信号は、各サンプリング周期中に到達した全ての電子を反映しない場合がある。更に、測定された信号の値はノイズ閾値ThNに近いことがある。
[00156] 電流信号の変動に対処するため、検出システムは、積分周期を延長して変動を平滑化するように構成できる。あるいは、検出システムの帯域幅を低減することも可能である。例えば10nsの1結像画素周期中、電流信号は特定の時点でのみ出現し得る。信号の周期全体の方が画素周期全体よりも短い可能性がある。従って、信号をカバーするように積分周期を延長すればよい。しかしながら、積分周期の延長は他の欠点を引き起こす場合がある。例えば、検出器検知要素とそれに関連付けられた回路からのノイズが画素周期全体に存在することがある。画素周期内で積分を行うと、ノイズエネルギも捕捉されるので、結果として全体的なSNRの低減につながる恐れがある。画素周期には、電子到達イベント信号パルス中に存在するノイズと共に、電子到達イベント信号と電子到達イベント信号との間のサブ周期中に存在するノイズが含まれ得る。粒子を計数する方法は、例えば、電子到達イベントが発生していると判定された場合にのみ信号を測定することによってこれに対処できる。
[00157] クリティカルディメンションSEM(CD-SEM)のように、より低い電子ビーム電流における精度が要求される適用例では、エバーハート-ソーンリー検出器(ETD)のような他のタイプの検出器が有用であり得る。ETDは、シンチレータと光電子増倍管(PMT)を組み合わせることができ、実質的な重複なしで発生する個々の電子到達イベントを検出する際に有効であり得る。ETDは、約8~100pAのプローブ電流範囲において良好なSNRを有することができる。しかしながら、シンチレータの光収率は電子ドーズの蓄積と共に経時的に劣化し得るので、寿命が限られている。従ってETDは、より高いプローブ電流を使用するか又は連続的に動作する器具と共に使用された場合、特に、半導体製造設備(例えば製造工場)のように高いスループットで継続して動作する検査ツールでは、耐用年数が短い可能性がある。更に、シンチレータと結合されたETDは、エネルギ変換ステップ及び検出信号経路に関連した信号損失のため、低い性能を示し得る。
[00158] ETDとは対照的に、PIN検出器は、放射損傷に対して高いロバスト性を示し得る。更に、いくつかの実施形態では、PIN検出器のような半導体検出器は、高性能信号経路によって高いSNRを達成できる。
[00159] 比較のための実施形態において、PIN検出器は、低い電子ビーム電流でSNRが低減することがある。例えば100pA未満のプローブ電流におけるSNR低減の主な原因は、ADCの前段の増幅器のフロントエンドにおける電気ノイズである可能性がある。例えば、様々な電気コンポーネントによって、大きいキャパシタンス、熱ノイズ、又は暗電流が発生し得る。また、いくつかの背景ノイズ源は検出器の検出表面の面積に比例し得る。更に、キャパシタンスに基づくノイズは周波数の3乗と共に増大し得るので、SNR低減により、高帯域幅の検出器の設計に対して多くの制限が加えられることがある。このような制限に対処するため、例えば、荷電粒子計数を使用する検出システムにPINダイオード等の検知要素を含む検出器を提供することができる。
[00160] 本開示のいくつかの実施形態が提供する検出器に含まれる検知要素のサイズは、この検知要素の面積が、1サンプル周期当たり所定の数以下の電子等の荷電粒子を受け取るように構成できる。検知要素の面積は、検出器に入射する荷電粒子の幾何学的分布に基づくことができる。検知要素の面積は、最も高い密度の荷電粒子が入射する検出器の領域を考慮して決定すればよい。
[00161] 本開示のいくつかの実施形態が提供する検出器に含まれる検知要素のサイズは、二次電子の分布よりも小さくすることができる。これより、検出器表面の二次電子入射ポイント分布に関連してサイズを設定した検知要素の一例を示す図8を参照する。
[00162] 図8に示されているように、二次電子の固有の幾何学的分布は、例えば電子の初期運動エネルギ及び放出角に基づいて決定できる。一次電子ビームはサンプル表面上の比較的小さいスポットサイズに集束され得るが、サンプルから放出された二次電子は、検出器上でサンプルスポットよりも大きいビームスポットを生成する可能性がある。検出器上のビームスポットのサイズは、サンプル表面から放出された電子のエネルギ及び角度に依存し得る。検出器上のビームスポットのサイズは、サンプルスポットよりも数倍大きいことがある。二次電子ビームを検出器に投影する二次光学系を提供することができる。例えば倍率のパラメータを含む二次光学システムの設計又は動作条件は、検出器上のビームスポットのサイズに影響を及ぼし得る。所与の結像条件セットに対して、検出器に入射する二次電子の幾何学的分布を決定できる。例えば、寸法X1及びY1は、検出器表面上の二次電子の予想幾何学的分布の境界を表すことができる。寸法X1及びY1は、電子のうち所定の割合が面積に入射する統計的信頼度に基づき得る。例えば、X1及びY1は99.5%信頼区間を表し得る。いくつかの実施形態では、95%信頼区間を使用してもよい。いくつかの実施形態では、90%信頼区間を使用してもよい。
[00163] 検知要素701は、二次電子の幾何学的分布よりも小さいようにサイズを設定することができる。検知要素701は、長さDx及びDyの辺を備えた矩形の形状を有し得る。DxはX1よりも小さく設定し、DyはY1よりも小さく設定できる。検知要素701は、検出器表面に入射する電子の総量よりも少ない数の電子が検知要素701の面積で受け取られるようなサイズに設定することができる。
[00164] いくつかの実施形態において、検出器表面上のビームスポットはサンプル表面上のビームスポットよりも大きい可能性がある。従って、検出器の検出表面の全体的なサイズは、広いビームスポットをカバーするのに充分な大きさであるよう構成できる。検出器表面上のビームスポットは直径が数ミリメートルのオーダーであり得る。しかしながら、検出器のサイズ拡大はノイズ効果の一因となることがある。例えば、検出器のキャパシタンスは検出器表面の面積に比例し得る。検出器に結合されているコンポーネント(例えば増幅器)に起因するもの等、いくつかのノイズ源はキャパシタンスに関連することがある。
[00165] いくつかの実施形態では、検出器の後段に極めて低い入力インピーダンスの信号調節回路を配置できる。電子到達イベントに応答して発生した電荷のほとんどを低損失で抽出することができる。しかしながら、他の実施形態では、キャパシタンスに関連したある程度の損失が生じる可能性がある。例えば検出器は、ダイオードと同様の挙動を示し、特定の電圧を発生するため対応するキャパシタンスを有し得る。検出器からの電圧は、増幅器のような検出システム内の別のコンポーネントに供給され得る。検出器は、このコンポーネントが有する背景ノイズよりも大きい電圧を発生する必要があり得る。一例として、コンポーネントは、熱ノイズに起因した特定量の背景ノイズレベルを有し得る。このコンポーネントが有する熱ノイズを克服するため、従って意味のある信号をコンポーネントに入力するためには、特定量よりも大きい電圧を入力しなければならない。従って、検知要素の面積と共に検知要素のキャパシタンスが増大する場合、特定量よりも大きい電圧を達成するために必要な電流も増大する。その結果として、検出器は、キャパシタンスの増大と共により大きい電流を発生して適切な電圧を送出する必要があり得る。
[00166] いくつかの実施形態では、検出器表面全体に入射する二次電子の幾何学的分布よりも小さく検知要素を構成することによって、検知要素の面積を縮小できる。検知要素が完全にビームスポットでカバーされる場合、検出器検知要素の信号及びキャパシタンスは検知要素の面積に比例し得る。いくつかの例では、検知要素は一部だけがビームスポットによってカバーされ得る。検知要素がビームスポットによって完全にはカバーされない場合、検知要素の面積を縮小することによって、キャパシタンスによるSNR低減を緩和できる。
[00167] 更に、暗電流もこの面積に関連することがある。検知要素の面積が大きくなればなるほど、暗電流ノイズが大きくなる。例えば、より大きい面積の検知要素では、半導体ダイオードデバイスの結晶構造に存在する不完全性の数が増える可能性が高く、従って暗計数が発生する確率が高くなり得る。二次電子のような荷電粒子の到達に応答して多くの電子正孔対を発生するように構成され、比較的小さい面積を有する検知要素は、暗電流イベントの影響を軽減するために有利であり得る。その理由は、荷電粒子到達イベントに応答して発生される信号によって、暗電流により発生する比較的小さいノイズ信号を小さくできるからである。いくつかの実施形態では、検知要素がビームスポットによって完全にはカバーされない場合、検知要素のサイズを縮小して、信号強度の低下よりも大きい率でノイズ効果が軽減されるようにすることで、SNRを改善できる。
[00168] 面積を縮小した検知要素の感度を向上させることができる。例えば、単独の電子到達イベントを検出するよう構成された検知要素は以下の利点を有し得る。2つの検知要素が異なる面積を有し、各検知要素が1サンプル周期当たり1つ以下の電子を受け取るように構成されている場合について考えると、面積が小さい検知要素の方がキャパシタンスが小さく、暗電流ノイズの影響も小さい可能性がある。従って、検出システム内の別のコンポーネントに供給される信号を発生するために、また、例えばそのコンポーネントの熱ノイズを克服するために必要な電流量も小さい可能性がある。更に、いくつかの例では、検出器表面上の二次電子ビームのビームスポットは検知要素の一部だけしかカバーしない。検出器の面積の一部は入射電子をアクティブに受け取らない可能性がある。しかしながら、検出表面下の検知要素の材料は全て、入射電子の受け取りに応答して衝突電離により電流信号を発生することに寄与し得る。検知要素がビームスポットで完全にカバーされるか否かにかかわらず、電子到達イベントに応答して発生される電子正孔対の数は同様であり得る。2つの異なるサイズの検知要素について考えると、面積が小さい検知要素の方が、個々の電子到達イベントに応答して特定の電圧を発生するために必要な電子数が少ないので、ノイズを克服する信号を発生する可能性が高いことがある。
[00169] いくつかの実施形態では、個々の検知要素の面積と検出器の表面全体の面積との比である面積比を変動させることができる。面積比は、SNRと対応関係を有し得る。例えばいくつかの実施形態では、検知要素のサイズを検出器の面積の1/1000に縮小することは、SNRの1000倍の増大に対応し得る。
[00170] いくつかの実施形態では、検出器は検知要素のアレイを含み得る。アレイは、それぞれが例えばDx及びDy又はそれ以下の寸法を有する検知要素を複数含み得る。検知要素は平面状の二次元アレイに配置することができ、アレイの面は入来する荷電粒子の入射方向に対して実質的に垂直である。いくつかの実施形態では、検出器を入射方向に対して斜めに配置してもよい。
[00171] 図9Aは、検知要素のアレイを含む検出器800の一例を示す。検出器800の検知要素801は、検出器800の表面に入射する電子の総量よりも少ない数の電子を検知要素801で受け取るようなサイズに設定できる。アレイ内の検知要素のサイズは均一とすることができる。検出器によって電子の全て又は実質的に全てを捕捉できるように、検出器全体のサイズは二次電子の幾何学的分布に基づき得る。従って、検出器800は所定のFOVに対応する総面積を有し得る。例えば検出器800は、4~10mmの直径を有する円形のプレートを含み得る。
[00172] 検出器800の検出面積は、より小さい面積のPINダイオード要素のアレイに分割できる。各PINダイオード要素は別々の検出セルに相当し得る。PINダイオードは、様々な形態で別個の検出セルに画素化(pixelate)できる。例えば、半導体検出セルは、内部構造により発生した内部フィールドによって分割できる。更に、いくつかの実施形態では、隣接した検知要素間に物理的な分離が存在し得る。すなわち、いくつかの実施形態における検出器は、相互に物理的に離間された検知要素を備えることができる。隣接した検知要素間に何らかの隔離エリアを提供できる。
[00173] 他の実施形態では、内部フィールドによって別個の検出セルが形成される場合、検出器の下部に、異なる伝導性を有する複数のドープ半導体構造(P+型及びN+型半導体領域等)を形成できる。一方、検出器の上面には、単一層のドープ半導体で形成された検出表面及びカソードを設けることができる。異なる伝導性を有する複数の半導体構造に延出する真性半導体領域は、実質的に連続することができる。このため、いくつかの実施形態では、隣接する検知要素間の不感領域を縮小できる。このような検出器は、各検出サブ領域に入射する電子によって発生したキャリアを対応する検出セルへ誘導するよう構成された内部電界を形成することができる構造を有し得る。
[00174] 容易に画素化されないことがあるETDとは対照的に、セグメント化検知要素のアレイを備えるPINダイオードを構成するために多種多様な形態が利用可能であり得る。また、PINダイオードは、ETDに比べて小さいキャパシタンスや小さい背景ノイズを含む他の利点も有し得る。
[00175] 図9Bは、検知要素のアレイを含む検出器850の別の例を示す。検出器850はプレート851を含み、この上に複数の検知要素861が形成されている。プレート851は、一次電子ビームがプレート851を通過することを可能とするための開口895を含み得る。
[00176] 検出器の個々の検知要素を検出器に入射する二次電子の幾何学的分布よりも小さくした場合、電子計数はいっそう扱いやすくなり得る。例えば各検知要素は、検知要素からの出力信号を測定するよう構成された回路を含む各自の計数ユニットを有し得る。検知要素を小さくした場合、各検知要素上の電子率は小さくなるので、各検知要素における電子計数が可能となり得る。電子計数について、以下の例示的な妥当性研究(validation study)を参照して検討する。
[00177] 図4Bを参照して上記で検討したように、検出器に入射する電子はあるエリアにわたって分布し得る。単一の検知要素を用いて検出器表面全体の出力電流を測定する場合、検出器は短い時間フレーム中に入射する多数の電子を処理できない可能性がある。例えば1nAのビーム電流の電子ビームでは、1秒間に例えば64億のような特定の数の二次電子が検出器に入射し得る。これは、100MHzの画素速度(pixel rate)で動作する検出システムの10nsのサンプリング周期当たり64の電子に相当する。単一の検知要素を有する検出器がこのような高レートの電子を扱うことは難しいので、妥当な回路の複雑さ、ミスカウント率、及び電力消費を維持しながら個々の電子を計数することは実際的でない場合がある。しかしながら、検出器を分割した場合、個々の検知要素は、サンプリング周期中に入射する電子が電子計数を続行できるほど少数であるようなサイズにすることができる。更に、複数の検知要素に分割された検出器は、ノイズ低減、キャパシタンス低減、及びSNR増大に関して、上記で検討したような多くの利点を有し得る。
[00178] 図4Bに示されている電子の分布は、10,000の電子の入射位置のシミュレーションを表すことができる。検出器144の中央に開口145が形成されると仮定すると、検出器に入射する電子の最も高い密度の分布は、開口145に隣接してこれを取り囲む環状の丸い領域であり得る。例えば図10は、開口145の周りの環帯720を示す。例えば内径が0.5mmで外径が1.0mmの環帯720において、合計10,000のシミュレーションされる電子のうち第1の数がこの領域に入射することがシミュレーションされ得る。第1の数は1,669であり得る。環帯720の総面積は0.589mm2であると求められる。従って、環帯720の領域内で検出器に入射する平均電子数は単位面積当たり2,834であり得る。更に、環帯720で受け取られる電子の割合は総数のうち16.69%であり得る。
[00179] いくつかの実施形態では、個々の検知要素は50μm×50μmの方形の形状を有し得る。例えば図10は、環帯720の領域の内部に方形の形状を有する検知要素731を示す。このような検知要素は0.0025mm2の面積を有する。環帯720内の単位面積当たりの電子数にこの面積を乗算すると、方形の形状の検知要素当たりの電子は7.084となる。
[00180] シミュレーションした10,000の電子は典型的な1nAのビーム中の電子数(例えば毎秒64億)よりも少ないが、上記の結果はそのようなレベルのビーム電流に拡張することができる。すなわち、1nAの電子ビームからの二次電子の分布は上記で検討したものと実質的に同様であるが、絶対数がより大きい。このため、1nAのビームの場合、上記で検討したように、図10の検出器144に入射する毎秒64億の電子総数のうち16.69%が環帯720に入射し得る。従って、毎秒約18億の電子が環帯720の領域に入射し得る。
[00181] 上記で検討したように検知要素が例えば検知要素731と同様にサイズ設定されている場合、1秒で検知要素の50μm×50μmの方形の面積に約450万の電子が入射し得る。これは、1つの電子検知要素に毎秒64億の電子が全て到達する単一の電子検知要素を用いた検出器よりも3けた小さい。検出器をセグメント化アレイに分割することにより、各検知要素における電子到達率を著しく低減させることができる。これは、電子計数を可能とすることに役立ち得る。例えば、1秒で1つの検知要素に450万の電子が入射する場合、後続の電子到達イベントの平均分離時間(後で詳しく検討する)は約200nsであり得る。これに対して、100MHzの検出器のサンプリング周期は10nsである。200nsの平均分離時間では、10nsの1サンプリング周期に2つの電子が到達する可能性は低い。このため、検出器は、サンプリング周期中に検知要素において所定の数以下の電子を受け取るように構成された面積を有し得る。所定の数は1とすればよい。
[00182] 更に、上記の例は中央に開口145を有する検出器144を参照して検討されているが、他の構造の検出器も同様に適用することができる。例えば軸外検出器の場合、中央領域における電子は全て検出器表面に入射し得る。この場合、検出器プレートの中央に孔が設けられないことがある。従って、電子到達率の最も高い密度の領域は中央であり得る。しかしながら、中央においても、電子到達率は中央の周りの環帯より著しく大きくはないことがある。例えば10,000の電子のシミュレーションでは、検出器の中央に配置された50μm×50μmの方形の面積を有する検知要素が第2の数の電子を受け取ることができる。第2の数は約8.9の電子であり得る。このため、1nAのビームの場合に拡張すると、1秒で検知要素の50μm×50μmの方形の面積に約570万の電子が入射し得る。この電子到達イベント率であっても、平均分離時間は約175nsとすることができ、これは依然として10nsのサンプリング周期よりも著しく高い。
[00183] 図11Aは、電子到達イベント及びそれらのイベントと検出器要素の出力との関係の概略図を示す。検出器は検出器要素のアレイを備えることができる。検出器要素のアレイは検知要素のアレイを含み、検知要素の各々は、各検出器要素に対応するサンプリング周期τS中に検知要素で1つ以下の電子を受け取るように構成されたサイズを有する。上記の例と同様、2つの隣接した電子到達イベント間の分離時間は例えば200nsであり得る。検出器は、単なる一例として20MHzのサンプリングレートを有し、これは50nsのサンプリング周期に対応する。このため、図11Aの下のグラフに示されているように、電子到達イベント間の分離時間がサンプリング周期よりも大きいので、サンプリング周期当たり1つ以下の電子が受け取られる。
[00184] 図11Aにおいて、グラフ(A)は時間軸を表すことができる。これは、時点T1において第1の電子が検出器に到達し、時点T2において第2の電子が検出器に到達することを示し得る。グラフ(B)は、検出器の検知要素に関連付けられた回路のイベント信号を表すことができる。イベント信号のパルス高さは入射電子のエネルギに対応し得る。イベント信号のパルス高さを、グラフ(B)に破線で示されているような閾値と比較することができる。パルス高さが閾値を超えている場合、グラフ(C)に示されているように検出パルスを登録する(register)ことができる。グラフ(D)に示されているように、次のサンプリング周期で計数値を出力できる。
[00185] 図11Bは、グラフ(A)の時間軸に従った電子到達イベントの概略図の別の例を示す。図11Bのグラフ(B)に示されているように、異なる電子到達イベントに対応するイベント信号のパルス高さは異なることがある。第1の閾値又は第2の閾値に基づいて検出パルスを登録できる。例えば図11Bのグラフ(D)に示されているように、イベント信号のパルス高さが第1の閾値を超えている場合、検出パルスを登録できる。図11Bのグラフ(C)に示されているように、イベント信号のパルス高さが第2の閾値を超えている場合、検出パルスを登録できる。図11Bのグラフ(E)又は(F)のように、登録された検出パルスに基づいて計数値を出力できる。
[00186] 検出器への電子の到達は確率過程であり得る。このため、電子到達イベントを記述するためにいくつかの決定論的特性が決定され得るが、検出器での電子到達イベントは本質的にある程度のランダム性を伴う可能性がある。例えば、隣接した電子到達イベント間の平均分離時間は特定の値であると決定され得るが、いくつかの電子到達イベントは、平均分離時間より短いか又は長い分離時間を有することがある。従って検知要素は、少なくともある信頼水準でサンプリング周期当たり所定の数以下の電子を受け取るように構成された面積を有し得る。信頼水準は統計的パラメータに基づくことができる。例えば信頼水準は、サンプリング周期当たり検知要素において所定の数以下の荷電粒子を受け取る統計的確率に対応し得る。いくつかの実施形態では、信頼水準は例えば90%とすればよい。検知要素は、少なくとも90%の信頼水準でサンプリング周期当たり所定の数(例えば1つ又は2つ)以下の電子を受け取るように構成された面積を有し得る。いくつかの実施形態では、電子到達イベントの少なくとも90%は、サンプリング周期当たり検知要素の面積で所定の数以下の電子を受け取るように発生し得る。
[00187] 電子到達イベントの分布を記述する統計的パラメータは、電子到達イベント間の分離時間の平均値又は中央値、電子到達イベント間の分離時間の標準偏差、分散、確率密度、累計分布関数、歪度、エントロピ等を含み得る。いくつかの実施形態では、電子到達イベントをポアソン分布でモデル化することができる。いくつかの実施形態では、他のタイプの分布を用いて電子到達イベントをモデル化できる。
[00188] いくつかの実施形態では、平均分離時間を、I
d,lで検出器要素lに入来する平均電流に関連付けることができる。ここで、I
d,lは検出器要素lに入射する平均入来電子電流である。ここでは、検出器に入射する全電流及びその空間分布がSEM画像フレーム全体で一定であると仮定するが、検出器に入射する全電流はSEM画像フレーム内の画素位置に応じて変調され得ることは認められよう。サンプリング周期τ
Sが所与である場合、検出器要素lに入射する平均電子数hは以下のように記述できる。ここでeは電子単位電荷である。
[00189] 各電子到達がランダムなイベントであり、他と相関がないと仮定すると、ポアソン分布を適用することができる。ポアソン分布に従って、サンプリング周期中に電子が到達しない確率が以下によって与えられる。
[00190] サンプリング周期中に1つの電子が到達する確率は以下によって与えられる。ここで、λはサンプリング周期における平均イベント数である。
[00191] サンプリング周期中に2つの電子が到達する確率は以下によって与えられる。
[00192] サンプリング周期中に3つの電子が到達する確率は以下によって与えられる。
[00193] サンプリング周期中にk個の電子が到達する確率は以下によって与えられる。
[00194] 電子到達イベントの全ての起こり得る独立した事例の確率を合計すると、以下のように1となる。
[00195] 積kP(k)の総和は、以下のようにhに等しくならなければならない。
[00196] 電気回路に実装されているカウンタは、その計数値バッファで発生した電子到達イベントの最大数を表す各自の最大計数値を有し得る。計数値バッファが1ビットだけで構築されている場合、イベントの最大計数値は1である。同一サンプル周期内で最初のイベントの後に1又は複数の追加イベントが発生した場合、計数値バッファの値は1のままであり、追加イベントはミスカウントされる可能性がある。計数値バッファが2ビットで構築されている場合、実施に応じてイベントの最大計数値は2又は3であり得る。図12は、カウンタの構成とサンプル周期内のイベント数に応じて、計数されるイベント数と計数されないイベント数との関係をまとめている。
[00197] 上述したことに基づいて、サンプリング周期中に所定の数(例えば1つか2つ)以下の電子が到達する信頼水準は以下のように表現できる。
[00198] 「サンプリング周期中に所定の数(例えば1つか2つ)以下の電子が到達する信頼水準」は、ここでは、サンプル周期中に計数される平均電子数と検知要素に入射する全電子の平均数との比として、例えば捕捉率として表現される。本明細書で検討される複数の例では、特定のカウンタ機能性、限界、又はサンプル周期中に計数できる最大イベント数(例えば1つ又は2つ)が異なる可能性がある。
[00199] 図13Aは、特定の計数値バッファにおける電子計数値の信頼水準を表すことができるグラフを示す。図13Aのx軸は、サンプリング周期当たりの検知要素に到達する平均電子数を表し得る。図13Aのy軸は、検出された電子計数値の信頼水準を表し得る。図13Aの実線は最大計数値1の信頼水準を表し得る。図13Aの破線は最大計数値2の信頼水準を表し得る。
[00200] 計数値バッファ限界L
h(n)に起因したイベント数え落とし率(Event counting loss rate)は、以下のように表現できる。ここで、nは計数値バッファの最大計数値である。
[00201] 図13Bは、特定の計数値バッファにおける最大計数値に起因した検出損失率を表すことができるグラフを示す。図13Bのx軸は、サンプリング周期当たりの検知要素に到達する平均電子数を表し得る。図13Bのy軸は、検出損失率を表し得る。図13Aと同様、図13Bの実線は最大計数値1の信頼水準を表し得る。図13Bの破線は最大計数値2の信頼水準を表し得る。
[00202] これより、本開示の実施形態に従った、電子到達イベント及びそれらのイベントと出力信号との関係の概略図を示す図14Aを参照する。図14Aの3つのグラフの各々において、t軸は時間を表す。図14Aの上のグラフでは、特定の時点で検出器の表面に単一の電子が入射し得る。例えば、電子は時点T1、時点T2、時点T3、及び時点T4でそれぞれ到達する。時点T1、時点T2、時点T3、及び時点T4における電子到達イベントは、検出器における1つの検出器要素で発生し得る。検出器要素は検知要素を含み得る。電子到達イベントには統計的変動があり得るので、電子は不均一な分離時間で検知要素の表面に到達する可能性がある。図14Aの中央のグラフに示されているように、電子到達イベントに応答して検出器要素で信号パルス1011が発生し得る。上記で検討したように、検出器要素ではPINダイオードを使用することができ、信号パルスは波形に類似することがある。波形の振幅は、電子到達イベントに応答して発生される電子正孔対の数に関連し得る。図14Aの中央及び下のグラフのY軸は信号強度を任意の単位で表し得る。
[00203] 後続の電子到達イベント間の時間はTi-Ti-1で与えられる。ここで、iは個々の電子の到達順序を表す指数である。場合によっては、後続の電子到達イベント間の時間は、信号が相互に干渉しないほど充分な大きさである。例えば、(Ti-Ti-1)1で与えられるT1とT2における電子到達イベント間の時間は、検知要素で発生した電気信号の立ち上がり及び立ち下がりが次の電子到達イベントの発生前に生じるほど充分な長さであり得る。場合によっては、後続の電子到達イベント間の時間は、信号が一体化するような短さである。例えば、(Ti-Ti-1)2で与えられるT3とT4における電子到達イベント間の時間は、検出器で発生した電気信号が相互に重複するような短さであり得る。一体化した信号は、図14Aの中央のグラフの斜線で示したエリアで例示することができる。
[00204] 図14Aの下のグラフは、計数値バッファリング動作に関連したプロセスを実証することができる。入来するアナログ信号の立ち上がりエッジが閾値Theを超えた場合、電子到達イベントに対応した計数値を記録することができる。機能ブロックは、入力の対応するチャネルが閾値The未満の値から閾値Theを超える値に遷移した場合、出力チャネルでインパルス(例えば検出パルス)(例えば1の値)を発生できる。このブロックは、入力の対応するチャネルが閾値The未満から閾値Theを超えるように遷移しない場合は値を0に保持することができる。所与の時間期間で検出パルスを計数し、次いでこの計数値を次のサンプリング周期で計数値バッファに置くことができる。これは図14Aの下のグラフに例示されている。検出器のサンプリング周期はτSで与えられる。いくつかの実施形態において、検出器は、2.5nsのサンプリング周期に対応する400MHzのサンプリングレートを使用することができる。上記のように、PINダイオードを用いる検出器では、例えばイベントパルスのような電子到達イベントに応答して発生される信号のパルス幅は約3~5nsであり得る。このような実施形態では、サンプリング周期τSよりも大きいイベント信号パルス幅に等しい時間期間内に、2つの検出パルスは発生されない可能性がある。いかなるサンプリング周期のイベント計数値も0又は1であり得る。従って、サンプリング周期内に検知要素に2つ以上の電子が到達し得る場合であっても、1ビットで計数値バッファを構成することは有効である可能性がある。
[00205] Ti-Ti-1が充分に長い場合、イベント信号波形は単独の電子到達イベントに対応して立ち上がり及び立ち下がりを生じ得る。判別器ブロックは、電子到達イベントの発生時にイベント信号パルスの立ち上がりエッジを検出するように構成できる。判別器ブロックは、基準レベルを含み得る基準値に基づいて判定を行うように構成できる。例えば、入来イベント信号を基準レベルと比較し、入来信号が基準レベルを超えた場合に検出信号を1に遷移させる回路を設ければよい。検出信号は、短い時間期間後に0に戻るか、又は値を保持し、サンプリング周期の終了時に0に戻ることができる。回路は例えば論理演算子を含み得る。図14Aの例では、二次電子の予想エネルギレベルに対応した閾値Theを設定できる。例えば、約9eVの運動エネルギを有する1つの電子がPINダイオードの検出セルに入った場合、このイベントは空乏化ゾーンにおいて約2,000の電子正孔対を励起し得る。これらの対の電子はダイオードのカソードで収集され得る。カソードで収集された電子は小さい電流のパルス信号を形成し、これはフロントエンド電子回路を含む回路に供給され、ここで電流パルス信号は電圧パルスに変換され、判別器入力に適した電圧レベルに増幅され得る。このような処理はイベント信号パルスを形成し得る。閾値Theは、予想イベント信号パルスを考慮して設定すればよい。例えば閾値Theは、検知要素に到達した所与のエネルギレベルの二次電子によって開始されるイベント信号パルスの予想ピーク値の所定の割合とすればよい。いくつかの実施形態では、閾値Theは、例えば9keVの二次電子によって開始されるイベント信号パルスの予想ピーク値の60%とすることができる。
[00206] しかしながら、Ti-Ti-1が短い場合は、フロントエンド電子回路の帯域幅及び特徴によって波形が元の電流パルス形状から著しく広げられて再整形されるとしても、イベント信号パルス波形は、複数の電子到達イベントから発生された電子正孔対からの電子を表すことがある。例えば図14Aの時点T4において、電子到達イベントが発生し、T3における直前の電子到達イベントからのイベント信号が低下する前に別のイベント信号パルスを開始させる可能性がある。従って、時点T4の後、信号読み取り値は直前の読み取り値に対して上昇し、その後も閾値The未満に低下するまで上昇を続け得る。このため、信号読み取り値と閾値Theとの比較に基づく判別動作は、2つの別個の電子到達イベントを正確に反映しないことがあり、信号重複ミスカウントが発生し得る。
[00207] いくつかの実施形態では、このようなミスカウントに対処するため、別の閾値との比較を行うことができる。例えば、異なる閾値と更に比較を行えばよい。別の閾値は、閾値Theとは異なるように設定することができ、いくつかの実施形態ではオーバーフロー状態を表し得る。オーバーフロー状態が検出された場合、短期間中に検知要素に2つ以上の電子が入射していることを判定できる。
[00208] いくつかの実施形態において、オーバーフロー状態は、検知要素が信号出力発生の限界に達した状態に相当し得る。オーバーフローは、2つの電子到達イベントが間断なく連続して発生した場合に生じ得る。いくつかの実施形態では、一体化したイベントパルスが特定の検出器要素のアナログ信号ダイナミックレンジよりも高いレベルまで増大した場合にオーバーフローが発生し得る。出力信号をオーバーフロー閾値Thoによって制限することができる。いくつかの実施形態では、オーバーフロー閾値Thoは理論上の限界であり得る。いくつかの実施形態では、オーバーフロー閾値Thoは検知要素の出力限界の所定の割合として設定できる。いくつかの実施形態では、閾値Thoは予想される限界の90%とすればよい。いくつかの実施形態において、検知要素は、短期間における2つ以上の電子到達イベント(例えば2、3、4の電子到達イベント等)に対応する出力信号を発生することができる。オーバーフロー閾値Thoは、所与のエネルギレベルの二次電子によって開始する予想イベント信号パルスの倍数に設定できる。いくつかの実施形態では、Theを超える信号の検出は単一の電子到達イベントに対応し、Thoを超える信号の検出は2つ(又はそれ以上)の電子到達イベントに対応し得る。
[00209] いくつかの実施形態において、検出器要素はイベントパルス重複状況を扱うように装備されていないので、その発生はイベントパルス重複ミスカウントを招く可能性がある。例えば検出器要素は、最大でも、2つの別々に発生する電子到達イベントのイベント信号の振幅の和よりも小さい振幅のイベント信号を発生させるように構成できる。2つ以上の電子を間断なく連続して受け取る検出器要素では、オーバーフローカットオフが生じ得る。
[00210] 図14Bは、本開示の実施形態に従った、電子到達イベント及びオーバーフローカットオフの概略図を示す。図14Bの上のグラフに示されているように、2つの電子到達イベントが間断なく連続して発生することがある。複数の検出器要素を有する検出器を提供することができ、検出器要素の各々は検知要素と回路を含む。検知要素に関連付けられた回路は、プリアンプのようなフロントエンド電子回路を含み得る。理論上の信号パルス1021及び1022はそれぞれ、検知要素及びそれに関連付けられた回路が充分に回復した状態で検知要素において電子到達イベントが発生した場合のイベント信号を表し得る。例えば検出器要素は、電子到達イベントに応答して信号パルス1021を発生し、次いで信号パルス1021が消散した後、信号パルス1022を発生し得る。検知要素又はその回路が回復する時間がない状況では、信号パルス1021及び1022は密接に重複し、相互に重畳して現れる可能性がある。図14Bの中央のグラフに示されているように、検知要素で発生された出力信号は、平坦な上部を有する信号パルス1031に類似し得る。信号パルス1031は、2つ以上の電子到達イベントに応答して検出器要素で発生されたエネルギが限界に達した場合に生じることがある。信号パルス1031は、検知要素に到達した入射電子から発生した電子正孔対からの電子を表し得る。
[00211] 図14Bにおいて、時点T1は第1の電子到達イベントの開始に対応し、時点T2は、検出器要素が第1の電子到達イベントに応答した信号の発生を終了する前に発生する第2の電子到達イベントの開始に対応し得る。信号は時点T1から上昇し、T2でも上昇し続けるように要求され得る。しかしながら時点T2では、検知要素の出力限界に達しているので、検出器要素の出力はこれ以上は上昇せずに一定のままとなり得る。図14Bの下のグラフに示されているように、時点T2以降に別の信号が読み取られた場合、この信号は閾値Thoに等しいカットオフ閾値を超えない。従って、信号読み取り値を閾値Theとだけ比較することに基づく判別動作は、2つの別個の電子到達イベントを正確に反映しないことがあり、信号重複ミスカウントが発生する可能性がある。
[00212] 検出器要素は、周期内で所定の数以下の荷電粒子を、少なくともある信頼水準で受け取るように構成できる。信頼水準はイベント捕捉率として表現できる。イベントの捕捉とは、電子到達イベントが検出器によって記録されることであり得る。いくつかの実施形態では、信頼水準はミスカウント率に依存し得る。ミスカウント率は、1マイナス捕捉率として定義できる。ミスカウント率は、上記で検討したようなイベント信号重複ミスカウントを含み得る。検出器アレイの検出器要素は、第1のミスカウント閾値に関連した条件を満たすミスカウント率を有するように構成できる。検出器要素は、検知要素とフロントエンド電気回路を含み得る。ミスカウント率が第1のミスカウント閾値以下である場合に条件を満たすことができる。第1のミスカウント閾値は、ミスカウントの許容可能レベルに対応する値とすればよい。例えばいくつかの実施形態において、検出器要素は、特定の時間期間中に検知要素の面積で所定の数以下の電子を受け取ることで、合計電子到達イベントの10%以下に相当する所定のミスカウント率以下となるように構成できる。このような例において、単独の電子到達イベントとして計数される合計電子到達イベントの10%以下は、実際には、検知要素の面積で2つ以上の電子を受け取る場合であり得る。
[00213] 間断なく連続して発生する電子到達イベントは、イベント信号重複ミスカウント等によるミスカウントを引き起こし得るが、ミスカウントのレベルは統計的に許容可能な量よりも小さい可能性がある。例えば、電子到達イベントは一般にポアソン分布に従い、ミスカウント率は、例えばP(k)のようなポアソン分布の項によって表現できる。
[00214] いくつかの実施形態において、2つの連続する電子は、例えばT
i-1及びT
iのような連続到達時点で検出器の検知要素に到達すると仮定できる。不感時間τ
Dは、以下の数式が満たされる場合にT
iで到達する電子が計数されない(例えば電子がミスカウントされる)ように規定できる。
[00215] 不感時間は、本明細書において更に詳しく検討されるように、主として検出器要素の特徴によって決定できる。検出器要素はフロントエンド回路を含み得る。不感時間は、イベント検出器の設計もしくは特徴、又は、到達イベントが発生したことを判定するため設定された閾値レベルのような他の特徴によって影響を受ける可能性がある。数式(13)の式に加えて、不感時間は、以下の式が満たされる場合にT
iで到達する電子が計数されるようにすることができる。
[00216] 回路のいくつかの実施において、イベントの検出はあまり明示的でない場合がある。回路ノイズ又は他のランダムなファクタによって検出が促進されるか又は抑制されることがある。例えば、数式(13)に表された条件よりもわずかに早く到達する電子は、検出されるいくらかの確率があり得る(例えば到達イベントが計数され得る)。同様に、数式(14)に表された条件よりもわずかに遅く到達する電子は、計数されないいくらかの確率があり得る。いくつかの実施形態では、検出の確率はTi-Ti-1=τDの場合に50%と解釈できる。
[00217] いくつかの実施形態では、時点Tiで到達する電子が計数される条件は、直前の時間期間[(Ti-τD),Ti]の間に検出器検知要素に到達する電子が存在しないことであり得る。
[00218] 更に、λは以下のように決定できる。ここで、I
d,lは検知要素lに入射する平均入来電子電流であり、eは電子単位電荷である。
[00219] ポアソン分布は、時間期間の関数であり、時間軸のどこに時間期間が位置しているかには依存しない。ポアソン分布は、時間期間τ
Dの電子到達イベントを表現するために使用できる。時間期間[(T
i-τ
D),T
i]の間に電子が到達しない確率は以下のように与えられる。
[00220] 電子が計数される確率はP(0)とすることができ、これは信頼水準に対応し得る。ミスカウント率は以下のように与えられる。その一例は、イベント信号重複又は不感時間によって誘起されるミスカウント率P
Miscountを含み得る。
[00221] 極めて小さい数のλでは、以下が成り立ち得る。
[00222] 図15は、ミスカウント率PMiscountをλの関数として表すことができるグラフを示す。PMiscountは、最初はλの増大と共に線形に増大し得る。例えばλの値=1の付近で飽和限界に近付くと、PMiscountは、より低い率で上昇し始める。図15のx軸は、不感時間τDに等しい時間期間内で検知要素に到達する平均電子数λを表し得る。図15のy軸はミスカウント率を表し得る。
[00223] 図15に見られるように、所与の不感時間及び検出器表面上での所与の電子到達位置分布について、例えば10%のミスカウント率内にとどめるため、検知要素は、任意の検知要素に対する入来電流をλの特定の値に限定するような面積を有するよう構成できる。例えば、不感時間に等しい時間期間にわたって検知要素に入来する平均電子数を、0.1電子/τD未満にとどまるように設定できる。
[00224] 本開示のいくつかの実施形態において、検出器は、それぞれが所定の面積を有する検知要素のアレイを備えることができる。例えば1つの実施形態では、個々の検知要素のサイズは100μm×100μmであり得る。しかしながら、検知要素の他のサイズも使用できる。検知要素をセグメント化することも可能である。複数の検知要素のアレイを設けることによって、上記で検討したように検出エリア全体が単一の要素から成るか、又は例えば8のセグメントのような限られた数の検出セグメントから成る比較例のPIN検出器に比べて、各検知要素に入射する電子率は著しく低減され得る。例えば、1nAの電流を有する電子のビームが、例えば最大で毎秒64億の電子で検出器に到達する場合であっても、アレイの100μm×100μmの検知要素に入射する電子の数は、高密度の電子到達領域においても毎秒約2000万であり得る。これに比べて、単一要素の検出器の場合は、1秒で1つの検知要素に64億の電子が全て入射する。ちなみに、100μm×100μmの検知要素の面積の1/4を有する検知要素(例えば50μm×50μmの検知要素)に入射する電子の数は4分の1であり、例えば毎秒約500万で、これは5ns当たり約0.025の電子に相当し得る。
[00225] 個々の検知要素の面積を決定するために多くの基準が存在し得る。例えば、第1の面積決定基準はミスカウントの回避に基づくことができる。いくつかの実施形態において、ミスカウントは、所与のサイズの検知要素における電子到達イベントの平均分離時間(Ti-Ti-1)に関連し得る。検知要素のサイズ(例えば電子を受け取るように構成された表面積)は、所与のサンプリング周期に検知要素で受け取られる電子の数に影響を及ぼし得る。検知要素に関連付けられたサンプリング周期は、検知要素を含む検出器要素のパラメータに基づいて決定できる(例えば、400MHzのサンプリングレートを用いる検出器を提供する)。検知要素のサイズは、サンプリング周期において検知要素で所定の数の電子を受け取ることが特定の統計的尤度以下で発生するように決定できる。サンプリング周期は、検知要素に関連付けることができる不感時間に関連し得る。例えば、サンプリング周期は不感時間よりも短く設定すればよい。不感時間は検知要素のサイズとは無関係とすることができる。
[00226] 状況によっては、平均電子分離時間が短いのでミスカウントの確率が高い可能性がある。平均電子分離時間が長くなればなるほど、ミスカウントの確率が低くなり得る。検知要素の面積は、平均分離時間が特定の値以下であるように設定できる。平均電子分離時間は、例えばτSのような検出器要素サンプリング周期の倍数等の値よりも大きく設定できる。このため、検出器のサンプリング周期は平均電子分離時間のある割合(factor)(例えば0と1との間の数)として設定できる。いくつかの実施形態では、平均電子分離時間はサンプリング周期τSの2倍よりも大きく設定できる。言い換えると、サンプリング周期τSは平均電子分離時間(Ti-Ti-1)の半分よりも短く設定できる。上記で検討したように、平均電子分離時間(Ti-Ti-1)は、電子ビーム電流を調整すること又は検知要素の面積もしくは位置を変化させることによって制御できる。更に、サンプリング周期τSは、検出器のサンプリング周波数(例えばサンプリングレート)によって規定することができる。所与の電子ビーム電流、サンプリングレート、及び、検出器の(最も高い電子到達密度の領域の)最大電子到達率に対して、単位面積の平均電子分離時間(Ti-Ti-1)を決定できる。
[00227] いくつかの実施形態において、検出システムは、荷電粒子到達イベントを計数するために使用できる検知要素及び回路を含み得る。図16Aは、検出システム1300における信号フローを示す。検出システム1300は、検出器要素1330と、第1の回路1340と、第2の回路1350と、を含み得る。検出器要素1330はトランスインピーダンス増幅器(TIA)を含み得る。いくつかの実施形態では、検出器要素1330は検知要素とフロントエンド回路から構成できる。フロントエンド回路は信号調節回路と呼ぶことができ、TIAを含み得る。第1の回路1340はイベント検出器を含み得る。第1の回路1340は、イベント検出の機能を実施するように構成できる。第1の回路1340は、パルス高さ解析器のような判別器を含み得る。第2の回路1350は計数値バッファを含み得る。第2の回路1350は、計数値バッファリングの機能を実施するように構成できる。第2の回路1350は計数器(scaler)を含み得る。
[00228] 検出システム1300は、電子1301が検出器要素1330に到達したことに応答して検出器要素がパルス信号を発生することを含む検出動作を実行するように構成できる。パルス信号は、第1の回路1340に出力することができるイベント信号1305を含み得る。検出動作によって、検出システム1300は電子到達イベントが発生したことを判定できる。検出動作は、電子1301が検出器要素1330に到達したことに応答して検出器要素1330がイベント信号1305を発生することから開始し得る。検出器要素1330から出力されたイベント信号1305は第1の回路1340に供給され、解析されて、検出器要素1330で電子を受け取ったことを判定できる。この判定は、イベント信号1305のパルス高さを所定の値と比較することを含み得る。イベントパルス信号の高さが所定の値を超えている場合、電子イベントを検出できる。電子イベントが検出されたことに応答して、カウンタを増分することができる。第1の回路1340はシングルビットカウンタを含み得る。第1の回路1340はイベントフラグ検出器を含み得る。第1の回路1340は、電子到達イベントが検出された場合にフラグを設定できる。第1の回路1340は検出パルス1309を出力できる。検出パルス1309は計数器1350に供給することができる。
[00229] 第1の回路1340からの出力はシングルビット情報を含み得る。例えば、入力イベント信号が所定の値を超えているとパルス高さ解析器が判定したことによる、電子到達イベントが発生したという判定に応答して、第1の回路1340は1の信号を出力できる。いくつかの実施形態では、第1の回路1340は複数ビットのデータを出力するように構成できる。例えば、第1の回路1340は2ビット又は3ビットのカウンタを含み得る。
[00230] いくつかの実施形態では、図16Bに示されているような検出システム1300Aを提供することができる。検出システム1300Aは、図16Aの検出システム1300と同様の第1の回路1340及び第2の回路1350を含み得る。検出システム1300Aは更に、検知要素1332及び第3の回路1334を含み得る。第3の回路1334はプリアンプのようなフロントエンド電子回路を含み得る。第3の回路1334はトランスインピーダンス増幅器を含み得る。検知要素1332から出力された信号1302は、第3の回路1334によって処理することができる。信号1302は電流パルス信号を含み得る。電流パルス信号は電圧パルス信号に変換され、増幅されて、イベント信号1305を形成することができる。イベント信号1305は第3の回路1334から出力され得る。
[00231] いくつかの実施形態において、不感時間はイベント信号1305に関連する可能性がある。イベント信号1305は、パルス高さが上昇して下降するまでの幅を有し得る。検知要素を形成するダイオードの特徴は、イベント信号1305の形状及び幅に影響を及ぼし得る。不感時間は、イベント信号1305と、検出システム1300又は1300Aを伴う他の処理に関連し得る。不感時間とは、後続の電子到達イベントの検出が妨げられる時間のことを指す。状況によっては、検知要素1332に電子1301が到達すると、信号1302の発生を引き起こすことができる。電子1301の到達により、第3の回路1334からイベント信号1305が出力され得る。イベント信号1305は第1の回路1340によって処理できる。検知要素1332において、例えば信号1302の後の信号のような第2の信号が発生した場合、2つの別個のイベント信号が信頼性高く発生されない状況が生じて、不感時間効果が発生する可能性がある。不感時間効果のため、間断なく連続して発生する電子到達イベントが信頼性高く計数されないことがある。このような効果は、イベント検出器不感時間のことを指す可能性がある。例えば、第1の回路1340に含まれるイベント検出器は、イベント信号1305のパルス高さが閾値よりも高く上昇した場合に電子到達イベントが発生したことを判定するように構成できる。イベント信号1305のパルス高さが閾値よりも低く低下したことが判定された後、別の電子到達イベントの検出を実行できる。しかしながら、後続の電子到達イベントによってイベント信号1305のパルス高さの下降が妨げられた場合、ミスカウントが発生し得る。イベント検出器不感時間は、イベント信号1305の幅と、電子到達イベントを判定するため使用される閾値に関連し得る。例えばイベント検出器不感時間は、閾値に等しいパルス高さでのイベント信号1305の左側と右側との間の距離に関連し得る。また、検出システムの他のファクタ及び特徴も不感時間に影響を及ぼすことがある。例えば、検知要素から回路までの相互接続の浮遊容量が不感時間の一因となる可能性がある。
[00232] 不感時間は特定の検知要素に関連付けられることがある。例えば、不感時間は検知要素1332に関連付けられる可能性がある。不感時間は、検知要素1332又はそれに関連した回路の特徴に関連し得る。不感時間は、イベント検出器を含む第1の回路1340に関連することがある。
[00233] 検出システム1300又は1300Aに含まれる回路は、様々な決定を行うように構成できる。第1の回路1340は、入力信号の特徴を決定するように構成できる。同様に、第2の回路1350及び第3の回路1334は、入力信号の特徴を決定するように構成できる。第3の回路1334は、電流パルスであり得る信号1302の第1の特徴を決定するように構成できる。第1の特徴は電流パルスの大きさとすることができる。決定された第1の特徴に基づいて他の決定を行えばよい。例えば、電流パルスの大きさに基づいて、検知要素に入射した電子が第1のタイプの電子であるか又は第2のタイプの電子であるかを判定できる。このような判定は、本明細書で更に詳しく検討されるように、閾値エネルギレベルとの比較を伴うことがある。このような判定はイベント信号1305に基づいてもよいことは理解されよう。
[00234] SEMシステムにおいて、発生されるサンプル画像は複数の画素を含み得る。画素の各々は、検出器から導出された情報に対応したグレーレベル等の情報を表示することができる。この情報は、サンプリング周期中に受け取った電子数の計数値を含み得る。電子数の計数値は複数の検知要素から合計することができる。いくつかの実施形態において、画素は検知要素の複数のサンプリング周期からのデータを使用できる。個々の検知要素の複数のサンプリング周期にわたって検出器から導出された情報を用いた画素周期を規定することができる。画素周期はオペレータによって決定され得る。例えば画素周期は、利用可能な値のリストから選択可能なユーザ定義の値とすればよい。いくつかの実施形態において、ユーザは、1、2、4、8等、利用可能な整数値のリストからサンプリング周期の数Dを選択できる。画素周期は、サンプリング周期のD倍に設定すればよい。各画素について、D個のサンプリング周期の連続的にサンプリングされたデータに基づいて、値(例えばグレーレベル)を決定できる。グレーレベルは例えば、D個のサンプリング周期のデータを合計又は平均することにより決定できる。いくつかの実施形態では、画素周期は検査システム器具のパラメータに基づいた所定のものとすればよい。例えば画素周期は、特定の機械に対して予め設定できる。
[00235] SEMシステムは、サンプルをラスタパターン等のパターンで一次電子ビームによりスキャンすることができる。画像において発生する画素は、スキャンされたサンプル表面の位置に関連し得る。画素は、特定のスキャン時間に相関付けることができる。検出器からのデータをスキャン時間に相関付けることができる。計数器を用いて、検出器から受信したデータを特定のスキャン時間に相関付ければよい。計数器は、遅延時間に基づいて、検出器データをスキャン時間(従って画素)と相関付けるように構成できる。例えば計数器は、電子到達イベントに関連付けられたデータが受信された時を記録し、トリガからの遅延に基づいて補正を適用することができる。トリガは、一次電子ビームの電子がサンプルに衝突することに対応し得る。遅延は、サンプルから検出器への電子(例えば二次電子)の移動時間、又は検知要素における信号パルスが発生されて出力される時間を考慮することができる。いくつかの実施形態において、検出器は検知要素のアレイを含み得る。計数器は複数のチャネルを含み、各検知要素からのデータをそれぞれのチャネルに割り当てることができる。
[00236] 図16A及び図16Bに示されるように、第1の回路1340の出力を第2の回路1350に供給することができる。第2の回路1350は計数器を含み得る。計数器はマルチチャネル計数器とすればよい。第2の回路1350は、画像の画素に相関付けられる電子到達イベントの計数値を決定するように構成できる。第2の回路1350は、画素周期とチャネルの数に基づく時間チャネル幅を考慮することができる。チャネルの数は、スキャンライン当たりの画素数に基づき得る。基準時間チャネル幅は、不感時間よりも短く設定することができる。
[00237] 電子到達イベントのような離散的イベントを記録する検出システムには不感時間が生じ得る。不感時間は、イベント後に検出システムが別のイベントを記録することができない時間を指す。電子到達イベントを検出するように構成される検出器内の検出器要素では、電子到達イベントの直後に、後続の電子到達イベントの正確な捕捉及び記録が行われない可能性のある時間期間が存在し得る。
[00238] 不感時間は、麻痺型(paralyzable)又は非麻痺型(non-paralyzable)不感時間を含み得る。非麻痺型不感時間は、不感時間中に発生するイベントが記録されない状況を指す。例えば、イベントは単に無視されることがある。麻痺型不感時間は、不感時間中に発生するイベントが記録されず、更に、後続のイベントによって不感時間期間が再開する状況を指す。また、麻痺型不感時間は拡張不感時間とも呼ぶことができる。
[00239] いくつかの実施形態において、検知要素は、入射電子(例えば二次電子)が検知要素に到達したことに応答して電子正孔対を発生するように構成され得る。入射電子のエネルギが検知要素で消費されることで、電子到達イベントは検知要素においてカスケード状の(cascade)電子正孔対発生を引き起こし得る。このカスケードの時間的な挙動はパルスに類似していることがある。1つの電子到達イベントによるカスケード状の電子正孔対発生の間、後続の電子到達イベントによってカスケードは継続するので、検知要素が通常状態に戻るために要する時間が長くなり得る。検出器アレイ内の検知要素は、麻痺型不感時間によって影響を受け得る。例えば、ガイガー計数モードに偏奇されたダイオードは、後続の電子到達イベントが正確に検出可能となる前に、回復時間の経過を必要とするか、又はクエンチングを必要とすることがある。本開示のいくつかの実施形態は、検知要素に関連付けられた麻痺型不感時間を回避できる。例えば検出器は、検知要素に関連付けられた不感時間が麻痺型不感時間を含まないように構成できる。検知要素が麻痺型不感時間によって影響を受ける領域に検知要素を偏奇する必要がないように、高い内部利得を有する検知要素を提供すればよい。検知要素は線形領域において逆バイアスで動作させることができる。入来電子の運動エネルギは、検出器要素の速度を維持しながら、高い利得を提供することができる。検出器要素は、通常バイアス条件下で動作する検出器要素と少なくとも同じ速度を有し得る。いくつかの実施形態において、検出器要素の速度は、アバランシェ効果のため、通常バイアス条件下で動作する検出器要素よりも高いことがある。検出器要素のロングテール挙動を回避することができる。
[00240] 不感時間の考察を用いて、後続の荷電粒子到達イベントが検出器によって検出可能であるか否かを判定できる。例えば電子到達イベントが間断なく連続して発生した場合、サンプリング周期中に2つ以上の電子が到達した可能性があるにもかかわらず、サンプリング周期に1つしか電子到達イベントが記録されないことがある。このように電子到達イベントはミスカウントされ得る。サンプリング周期が不感時間よりも短く設定されている場合、ミスカウントは不感時間到達イベントに基づき得る。ミスカウントのレベルが特定レベル未満である場合、検出器におけるミスカウントの発生は許容可能であり得る。いくつかの実施形態では、特定レベルは10%とすればよい。いくつかの実施形態では、特定レベルは5%とすればよい。いくつかの実施形態では、特定レベルは2.5%とすればよい。
[00241] いくつかの実施形態において、不感時間は、電子到達イベントによって開始したイベント信号のパルス幅に対応し得る。いくつかの実施形態において、不感時間は、電子到達イベントに応答して発生されたイベント信号の全パルス幅とは異なるものとすることができる。例えば不感時間は、電子到達イベントが記録された時点からイベント信号の出力レベルが検出閾値未満に低下するまで測定され得る。検出閾値は、背景ノイズ量よりも高い何らかのレベルに設定できる。イベント信号のレベルが検出閾値を超えた場合、電子到達イベントを記録することができる。
[00242] 図17は不感時間ミスカウントの例示的な図を示す。図17のグラフ(A)は、検出器要素1330(図16Aを参照して検討した)の例示的な出力を時系列で示し得る。イベント信号パルスは比較的分散していることがある。図17のグラフ(A)に示されている信号はパルス高さ解析器に供給され得る。イベント信号パルスは検出閾値1410と比較することができる。検出閾値1410未満の信号はノイズとして除去できる。図17のグラフ(B)は、図17のグラフ(A)からの入力信号に対応したパルス高さ解析器からの信号出力を示す。図17のグラフ(A)及び(B)において、ミスカウントは存在しない。
[00243] 図17のグラフ(C)に示されているように、イベント信号パルスが密接に重複している場合、ミスカウントが発生する可能性がある。例えば、信号レベルが閾値1410のような固定の閾値を超えると電子到達イベントが検出されるように構成されている場合、信号は閾値未満まで低下しないうちに再び増大するので、1つのパルスとして計数され得る。図17のグラフ(C)は2つのタイプの不感時間ミスカウント発生を示す。図17のグラフ(D)に示されているように、複数の到達イベントが単一のイベントとして計数され得る。
[00244] 上記で検討したように、ミスカウントは不感時間ミスカウントを含み得る。いくつかの実施形態では、不感時間ミスカウントは以下のように検討することができる。第1の不感時間ミスカウント解析では、時点tiでi番目の電子が検知要素に到達すると仮定できる。i番目の電子が計数可能であるか否かは、直前の不感時間期間に他の電子が到達していたか否かに依存し得る。例えば、(ti-τD)からtiまでの周期に電子が到達していた可能性がある。ここでτDはイベント検出器不感時間である。この周期は[(ti-τd),ti]と表現できる。
[00245] 第1の不感時間ミスカウント解析では、ポアソン分布を用いて検出器での電子到達イベントをモデル化することができる。時間期間Δtの間にk個のイベントが発生する確率Pは以下のように与えられる。ここで、λは時間期間Δt当たりの平均イベント数である。
[00246] 関連する時間期間[(t
i-τ
d),t
i]では、Δtはτ
Dに等しい可能性がある。数式(20)のkに値を代入すると以下が得られる。
[00247] P(0)は、周期[(ti-τd),ti]の間に電子が到達しない確率を表すことができ、i番目の電子の到達イベントは不感時間による影響を受けないので、i番目の電子は計数可能であるはずである。P(1)は、周期[(ti-τd),ti]の間に1つの電子が到達する確率を表し得る。この場合、i番目の電子は計数可能でない場合がある。P(2)は、周期[(ti-τd),ti]の間に2つの電子が到達する確率を表し得る。この場合、i番目の電子は計数可能でない場合がある。第1の不感時間ミスカウント解析では、周期[(ti-τd),ti]の間に、すなわちi番目の電子到達イベントの直前に他の電子が到達しない場合にのみ、i番目の電子が計数可能であると想定できる。第1の不感時間ミスカウント解析では、検知要素のサンプリング周期はイベント検出器不感時間τD未満であり得る。λが経時的に一定のままである限り、P(k)はポアソン仮定において電子の到達時間から独立し得る。
[00248] 所与の不感時間に対して電子が計数される確率はP(0)によって表現できる。ミスカウントの確率と計数成功の確率の和は1でなければならないので、電子のミスカウントの確率は1-P(0)でなければならない。第1の不感時間ミスカウント解析に従った不感時間によるP
miscountは、以下のように与えられる。
[00249] 上記の数式(24)からわかるように、第1の不感時間ミスカウント解析に従った不感時間によるミスカウントの確率Pmiscountは、λの小さい値ではλに等しいものとして近似できる。上記のように、λはある時間間隔における平均電子到達イベント数であり得る。関連する時間間隔はイベント検出器不感時間τDとすることができる。
[00250] 従って、第1の不感時間ミスカウント解析に従った不感時間によるミスカウントの確率P
miscountは、以下のように与えられる。
[00251] 例示として、以下の状況について検討する。一次電子ビームがサンプルを照射し、二次電子のビームが発生して検出器に誘導される。検出器に入射するビーム電流はIDetである。簡略化のため、IDetは検出器の検知エリアSDetにおいて均等に分布していると仮定できる。SDetは直径4mmの円形の面積を含み得るので、SDet=4πmm2である。検出器が、それぞれ100μm×100μmのサイズを有するセグメント化検知要素のアレイを含むと仮定すると、検知要素の面積はSSeg=0.01mm2として与えられる。
[00252] S
Det=4πmm
2、S
Seg=0.01mm
2、I
Det=1nA、及びτ
D=5nsの例示的な値を用いて、第1の不感時間ミスカウント解析に従った不感時間によるミスカウントP
miscountは以下のように与えられる。
[00253] 従って、2.5%以下のミスカウント率が達成可能であり得る。上記の例における1nAのように、検出器に入射するビーム電流が比較的高いレベルであっても、ミスカウント率を2.5%の比較的低いレベルに制限できる。数式(26)は、検出器に入射するビームのビーム密度が均一に分布しているという仮定に基づき得ることに留意するべきである。それにもかかわらず、このようなミスカウント率は多種多様な適用例で許容可能であり得る。更に、いくつかの実施形態では、ミスカウント率が10%未満である場合、電子計数の統計的補正を用いることができる。従って、ミスカウントが存在する場合であっても統計的補正によってこれを補正できる。検出器に入射するビーム電流レベルが1nAであるのに比べ、高スループットCD(クリティカルディメンション)測定等のいくつかの適用例は、250pA以下の一次ビーム電流を使用するので、ウェーハ表面上の印刷パターンのエッジラインにおいて最大で4倍の自発ピーク(spontaneous peak)二次収率(secondary yield)のマージンが残る可能性がある。いくつかの適用例において、システムの標準的なビーム電流は10pAのオーダーに設定され得る。このため、いくつかの適用例ではミスカウント率を更に低減することが可能である。一方、検出器は、金属パターンエッジ等において検出器に到達する電子電流を増大させる(例えばエッジ向上信号)高い二次電子局所収率の状況を扱うように構成できる。
[00254] いくつかの実施形態において、ビーム電流は、検出器の全ての検知要素に均一に分布するのではなく不均一に分布することがある。ビーム電流が不均一に分布する場合であっても、多くの電子到達が予想される領域における最大ビーム電流の状況を考慮することができる。例えば、高密度の電子到達イベントの領域は検出器の中央付近であり得る。検出器は、電子到達の多い領域の検知要素においてミスカウント率が所定のレベルを超えないように構成できる。
[00255] いくつかの実施形態では、全ての入射電子が直径6mmの検出器に到達する場合、個々の検知要素のサイズは、SDet/3,125が0.009mm2にほぼ等しい均一な方形に設定できる。これは約100×100μmの検知要素に相当し得る。従って、ビーム電流が大きい場合であっても、許容可能なミスカウント率を得るために100×100μmの検知要素サイズが適切であり得る。明らかであるように、許容可能なミスカウント率を達成する他のサイズの検知要素も使用できる。更に、サンプリング周期のような他のパラメータを調整することで許容可能なミスカウント率を達成してもよい。
[00256] サンプリング周期が検知要素不感時間よりも短い場合にミスカウント率は更に低くなり得るので、サンプリング周期を不感時間よりも短く設定することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、検知要素のサンプリング周期をは5ns未満に設定できる。サンプリング周期が不感時間よりも短い場合、カウンタは一度に1つだけの電子到達イベントを計数するように構成できる。
[00257] 検出器は、サンプリング周期中に検知要素で所定の数以下の荷電粒子を所定のミスカウント率以下で受け取るように構成できる。サンプリング周期は検知要素不感時間以下とすることができる。検知要素は、検出器を構成する検知要素アレイのうちの1つであり得る。所定の数は1とすればよい。いくつかの実施形態では、所定の数を例えば2、3、又はそれ以上としてもよい。所定のミスカウント率に基づいて、検出システムの様々なパラメータを設定することができる。例えば、最大ビーム電流を有する一次荷電粒子ビームと共に検出システムが使用されると仮定すると、検知要素のサイズ及び検知要素の数のパラメータを所定のミスカウント率に基づいて決定できる。一次荷電粒子ビームのビーム電流は、検出器に入射する二次荷電粒子ビームのビーム電流に関連し得る。例えば、収率係数(yield factor)は、二次ビームの荷電粒子の収集率を示し、一次ビームから二次ビームのビーム電流を決定するために使用できる。収率係数は、検査中のサンプルの材料、検出システムを含む荷電粒子ビームシステムの設定、及び荷電粒子ビームシステムの構造によって影響を受け得る。更に、検出器の検知要素アレイが固定サイズの検知要素を含むと仮定すると、サンプリングレート及びビーム電流を含む検出システムの動作条件を設定することができる。いくつかの実施形態では、特定の用途で要求されるレベルまでビーム電流を増大させた場合であっても、検出器のミスカウント率を所定レベルに維持することができる。一例として、高分解能SEMが必要である場合、ビーム電流は低減され得る。スループットが必要である場合、ビーム電流は増大され得る。電子ビームウェーハ検査システムは比較的高いビーム電流を使用し得る。いくつかの実施形態では、例えば検出器を、検出器全体よりも小さい検知要素のアレイに分割すると、ミスカウント率を低減できる。検知要素が小さくなればなるほどミスカウント率は低減し得る。
[00258] 不感時間は、検出器の検知要素及び他のコンポーネントの特徴であり、それらの構成によって決定され得る。例えば、本明細書のいくつかの実施形態で検討されているように検知要素として使用される半導体ダイオードは、電子正孔対発生機構に関連した現象によって不感時間に影響を及ぼし得る。回路及び検知要素アレイが設計され製造された場合、不感時間は固定されることがある。検出システムが一度構築されたら、不感時間は調整不可能なパラメータとなる可能性がある。むしろ、所与の検知要素アレイ及びそれに付随する回路に対して一定となる可能性がある。
[00259] 検知要素は回路に接続することができる。回路は、例えば図16A及び図16Bを参照して上記で検討したように、第1の回路、第2の回路、又は第3の回路を含み得る。回路は、サンプリング周期中に検知要素に入射する荷電粒子の数を決定するように構成できる。回路はイベントパルス検出器を含み得る。イベントパルス検出器は、判別器、比較器、又はパルス高さ解析器等を含み得る。回路は除去器(eliminator)を含み得る。除去器はノイズ信号を除去するように構成できる。回路は、入力信号を閾値と比較し、入力信号が閾値を超えている場合に出力を生成するように構成できる。出力は、サンプリング周期中に検知要素で荷電粒子を受け取ったことを示すビットを含み得る。いくつかの実施形態において、出力はマルチビット信号を含み得る。サンプリング周期は、マルチチャネル計数器の時間チャネル幅を含み得る。いくつかの実施形態において、出力はイベントフラグ及びオーバーフローフラグを含み得る。
[00260] 図18は、本開示の実施形態に従った、イベントフラグを含む出力によって荷電粒子到達イベントを検出するよう構成された検出システム1501を示す。検出システム1501は、検出器要素1530と、第1の回路1540と、第2の回路1550と、第3の回路1560と、を含み得る。検出器要素1530はダイオード及びプリアンプを含み得る。検出システム1501は、電子が検出器要素1530に到達したことに応答して検出器要素がパルス信号1511を発生することを含む検出動作を実行するように構成できる。パルス信号1511は、上記で検討したように、図16A又は図16Bに示されているイベント信号1305と同様のイベント信号を含み得る。いくつかの実施形態において、パルス信号1511は、図17のグラフ(C)に示されているもののように重複又は重畳したパルスを含むことがある。パルス信号1511は第1の回路1540に入力することができる。第1の回路1540はパルス高さ解析器を含み得る。第1の回路1540は、第2の回路1550に送信されるイベントフラグ1541を発生することができる。第2の回路1550はカウンタを増分できる。第2の回路1550はイベントフラグ検出器を含み得る。一方、第1の回路1540は、第3の回路1560に送信されるオーバーフローフラグ1542を発生することができる。オーバーフローフラグは、パルス信号のエネルギが閾値を超えていることに応答して発生され得る。第3の回路1560はオーバーフローフラグ検出器を含み得る。例えばイベントフラグ検出器として回路を構成することは、システムの簡略化の点で有利であり得る。
[00261] いくつかの実施形態において、検出システムは複数のタイミングスケールを含み得る。検出器要素サンプリング周期は、イベント検出器不感時間よりも短く設定できる。検出器要素サンプリング周期は、マルチチャネル計数器の時間チャネル幅に対応し得る。判別器、比較器、パルス高さ解析器等のイベント検出器を含む回路によって、電子到達イベントを検出できる。電子到達イベントの検出は、チャネル境界タイミングと非同期的に発生し得る。回路は、電子到達イベント検出の後、イベント時間が時間ウィンドウ内にある指定された時間チャネルの値を増分するように構成できる。全体的なシステムタイミングは、個々の検出器要素のタイミング(例えば検出器要素サンプリング周期)よりも高速に構成され得る。例えば、時間チャネルは1ビットカウンタとして構成され得る(例えばイベントフラグを用いて)が、別の回路は、イベントフラグが検出システムのコンポーネントから押し出されるよりも速い速度で時間チャネル周期中に設定されたイベントフラグ数を実現するように構成され得る。時間チャネル幅が不感時間よりも大きい場合、回路は、検出器要素に対応する個々のイベントフラグ検出器よりも高速で動作するように構成できる。いくつかの実施形態では、時間チャネル幅が不感時間よりも充分に大きい場合、回路は個々のイベントフラグ検出器よりも高速で動作するように構成できる。
[00262] いくつかの実施形態では、検出器要素と共に1ビットカウンタを提供し、検出器要素サンプリング周期をイベント検出器不感時間よりも短く設定できる。検出器要素サンプリング周期がイベント検出器不感時間よりも短く設定された場合、イベント検出器不感時間に起因したミスカウントが発生しない状況を達成できる。1つのサンプル周期中に複数のイベント信号がイベント検出器に入力されない可能性がある。電子到達イベントは間断なく連続して発生する可能性があり、場合によっては一体化したイベント信号を生じ得るが、検出器要素に対応するイベント検出器はサンプリング周期中に1つ以下の荷電粒子到達イベントを計数することができる。この構成はシステム簡略化を促進し、高帯域幅を可能とする。検出器は、容易に利用可能な技法を用いて製造することができ、400MHz以上の動作を達成できる。検出器要素は、一度に2つ以上の電子到達イベントを検出するよう構成する必要がないことがある。例えば、イベント検出器不感時間よりも短い時間期間内に複数の電子が検知要素に到達した場合、誤検出が発生し得る。しかしながら、このような誤検出は極めてまれであり得る。イベント検出器不感時間内に複数の電子到達イベントが発生する統計的確率は所定のレベルよりも低い可能性がある。例えば検出器は、イベント検出器不感時間内に2つ以上の電子の到達が発生しないことが少なくとも所定の信頼水準となるようなサイズを有するよう構成できる。
[00263] 検知要素に接続されている回路は、検知要素ごとに提供され得る。例えば、検知要素のアレイを含む検出器では、アレイの各検知要素を回路に接続することができる。回路は、サンプリング周期中に検知要素に入射する荷電粒子の数を計数するように構成できる。いくつかの実施形態では、この数は1又はゼロとすればよい。検出システムは、アレイ内の複数の検知要素の計数値を合計するように構成できるグローバル回路を含み得る。複数の検知要素で受け取った荷電粒子数を加算することによって、アレイで受け取った荷電粒子の総数を決定できる。
[00264] これより、検出システム901の例示的なアーキテクチャの概略図を示す図19Aを参照する。検出システムは、検知要素のアレイを含む検出器900を備えることができる。断面で見られるように、検出器900は裏面照射CMOSイメージセンサに似た構造を有し得る。電子は、検出器900の露出した前(入射)面側に入射することができる。前側に、検知要素アレイに含まれるダイオードのアノードとして機能するP+層が存在し得る。アノードは、ゼロのソースインピーダンス(sourcing impedance)の電圧源によって負に偏奇させることができる。例えば、約9keVの運動エネルギの電子が検出器900の検知要素内へ入射した場合、このイベントは検知要素の空乏化ゾーンにおいて約2,000の電子正孔対を励起し得る。これらの対の電子は検知要素のカソードで収集され、検出信号の発生に寄与し得る。例えば、入射電子の運動エネルギに実質的に比例した大きさで電流パルスを発生させることができる。
[00265] シャープな電流パルスの形態である検知要素からの原検出信号は、電子回路に供給され得る。例えば、フロントエンド電子回路910を提供することができる。フロントエンド電子回路910は、個別の回路911、912、913、914等を、例えばn番目の回路919まで含み得る。フロントエンド電子回路910の個別の回路の各々は、検出器900のアレイの検知要素の1つに対応し得る。フロントエンド電子回路910の個別の各回路は、電流バッファと、トランスインピーダンス増幅器、電荷増幅器、又は電荷移動増幅器のような増幅器と、を含み得る。
[00266] いくつかの実施形態では、検出器900とコンポーネントを一体化することができる。検出器900は、検知要素のアレイを含む半導体基板として提供できる。検知要素のアレイはダイオードを含み得る。PINダイオードを含む半導体基板の裏面側に、低利得増幅器を構築できる。増幅器は、線形モードで動作するよう構成することができ、増幅器が回復時間を示す領域を回避できる。半導体基板は複数のセグメント化ダイオードを含み得る。ダイオードの各々に各増幅器が取り付けられるように、複数の増幅器を構成することができる。
[00267] いくつかの実施形態では、低利得アバランシェダイオード(LGAD:Low Gain Avalanche diode)セグメントを用いて検知要素のアレイを構築できる。LGADは、例えば約10倍から約20倍の比較的小さい電流利得を提供し、線形モードにとどまりながら極めて高速に動作することができる。これに対し、従来のアバランシェダイオードは、トリガイベントの後にアバランシェ電流に移行し、次の検出トリガイベントの準備のために電流をリセットする機構を必要とすることがある。精密な検出タイミングのため、又はフロントエンド電子回路910を簡略化するため、LGADの追加の電流利得を供給することが役立ち得る。LGADはバイアス電流を必要としないことがある。更に、LGADは検出システムの電力消費を低減するために役立ち得る。
[00268] 増幅の後、フロントエンド電子回路910の個別の回路の各々からの信号出力はイベント検出器930に供給され得る。イベント検出器930は、個別の回路931、932、933、934等を、例えばn番目の回路939まで含み得る。イベント検出器930の個別の回路の各々は、検出器900のアレイのうち1つの検知要素に対応し得る。イベント検出器930の個別の回路の各々は、判別器、判別器ブロック、パルス高さ解析器等を含み得る。
[00269] 図19Aの検出システムが図6のものと(更に、例えばCMOSセンサと)異なる点は、とりわけ、ADCブロックの代わりにイベント検出器930が提供されることである。イベント検出器930は電子計数において有用であり得る。
[00270] 図19Aに戻ると、イベント検出器930は判別器ブロックを含み得る。判別器ブロックは、電子回路等のハードウェアを用いて実施することができる論理動作処理を含み得る。判別器ブロックは、例えばイベント信号のような入来信号を基準レベルと比較し、入来信号の立ち上がりエッジが基準レベルを超えた場合、検出パルス又はイベント検出フラグ等の信号を出力できる。例えば図14Aを参照して上記で検討したように、測定された電流信号を閾値Theと比較すればよい。Theは背景ノイズレベルよりも充分に高く設定され得る。いくつかの実施形態では、判別器ブロックはコントローラによって実施できる。また、イベント検出器930は、入来電圧、電流、又は他のタイプの信号を基準レベルと比較するように構成された比較器等、他のタイプの回路も含み得る。
[00271] また、図19Aの検出システムは画素計数値バッファ950も含み得る。画素計数値バッファ950は、個別の回路951、952、953、954等を、例えばn番目の回路959まで含み得る。画素計数値バッファ950の個別の回路の各々は、検出器900のアレイのうち1つの検知要素に対応し得る。イベント検出器930の回路の各々からの出力は画素計数値バッファ950の各回路に供給され得る。
[00272] また、図19Aの検出システムは計数値合計ユニット960も含み得る。画素計数値バッファ950の回路の各々からの出力は計数値合計ユニット960に供給され得る。検出器900の検知要素の各々から受け取った電子の計数値を組み合わせて、例えば画像処理に使用される画像のグレーレベルを得ることができる。受け取った電子の計数値を組み合わせることは、複数の検知要素、複数のサンプリング周期、又は複数のフレームにわたって計数値を合計することを含み得る。検知要素からのデータは、荷電粒子到達イベントの特性に基づいて組み合わせることができる。例えば検知要素からのデータは、荷電粒子到達イベントのタイムスタンプ、検知要素の位置、荷電粒子ビーム装置の一次ビームのスキャン動作、又は荷電粒子ビーム装置の特性に基づいて組み合わせればよい。組み合わせたデータは、サンプルの像を再構築するために使用することができる。例えば、画素計数値合計970を画像処理システム199に供給できる。計数値合計ユニット960は、電子回路等のハードウェアを用いて、又は例えばコントローラによって実施できる論理動作処理を含み得る。
[00273] 図19Aの検出システムに、様々な要素を接続する様々な信号線等を提供することができる。例えば、イベント検出器930の個別の回路の各々に画素クロック920を接続できる。更に、イベント検出器930の個別の回路の各々に検出制御925を接続できる。同様に、画素計数値バッファ950の個別の回路の各々に別の画素クロック940を接続できる。更に、画素計数値バッファ950の個別の回路の各々に検出制御945を接続できる。また、計数値合計ユニット960に遅延画素クロック965を接続できる。画素クロック920、940、及び965は、同一の又は異なる速度で動作することができる。
[00274] 図19Aの検出システムは、比較的簡略化した電子コンポーネントを使用し、良好な実装柔軟性を可能としながら高速を達成できる。例えば、半導体チップ上にコンポーネントを集積することができる。単一のモノリシック半導体チップ等の半導体パッケージに、フロントエンド電子回路910、イベント検出器930、画素計数値バッファ950、又は計数値合計ユニット960を提供できる。例えば、検出器800及び画像処理システム199に接続され得る半導体チップに、フロントエンド電子回路910、イベント検出器930、画素計数値バッファ950、及び計数値合計ユニット960を層として提供できる。図19Aで画像処理システム199と計数値合計ユニット960との間に示されている破線は、オンチップ構造とオフチップ構造との間の分割を表し得る。いくつかの実施形態では、フロントエンド電子回路910、イベント検出器930、画素計数値バッファ950、及び計数値合計ユニット960を、別々のモジュールとして提供することができる。
[00275] 電子計数は、アナログ信号の検出に比べて多くの利点を有し得る。例えば本明細書の実施形態で検討されているような検出器及び検出システムを含む半導体チップは、高速化を達成し、処理のボトルネックを回避することができる。上記で検討したように、隣接する電子到達イベントにおける信号パルスの重複は検出精度を妨げることがある。従って、検出器が高速であることが重要となり得る。いくつかのデバイスでは、フロントエンド電子回路が帯域幅に制限を加えることがある。しかしながら、本明細書で実施形態に関連して検討されるように、フロントエンド電子回路又は他のコンポーネントが半導体チップに集積されている場合、高速を達成できる。いくつかの実施形態では、イベントフラグの形態で出力を提供すること等によって荷電粒子数を計数するよう構成されたコンポーネントは、比較的単純であり、システムの簡略化と高速を可能とする。アナログ信号をサンプリングしてビーム強度を表現するのではなく、個別のイベントを検出し、ある時間期間中に発生する個別のイベントの数を計数することが有利であり得る。
[00276] CD SEM、高分解能かつ高スループットの検査、又は製造された半導体デバイスの計測のような、いくつかのタイプの適用例において、電子計数は特に有効であり得る。本明細書で検討されるいくつかの実施形態において、検出システムは、例えば100pA以上の電子ビームの電子計数を可能とする。
[00277] 比較例では、高エネルギ粒子物理解析器具においていくつかの検出器が提供され得る。例えば、粒子加速器は荷電粒子を高速かつ高エネルギで推進することができる。荷電粒子は材料又はその他の粒子と衝突し、衝突生成物が検出器によって検出され得る。検出器は粒子を受け取るように構成できる。しかしながら、高エネルギ物理解析器具における検出器は、粒子が検出器を通過するように構成され得る。例えば熱量計は、粒子が熱量計を通過する際に失うエネルギを測定できる。
[00278] 熱量計とは異なり、例えば荷電粒子の数を計数するように構成された検知要素は、荷電粒子を受け取り、荷電粒子が検知要素に到達したことに応答して、荷電粒子のエネルギが消費されるまで検知要素において電子正孔対を発生させることができる。更に、本明細書で検討されるように、検知要素に接続された回路は入射荷電粒子のエネルギレベルを判別するよう構成できる。また、検知要素に接続された回路は、アレイ内の複数の検知要素で発生した荷電粒子到達イベントの計数値を合計するように構成できる。検出器は、荷電粒子を受け取ったタイミング及びそのエネルギレベルを含む情報を検知要素から導出できる。
[00279] 走査電子顕微鏡(SEM)では、標本から二次電子(SE:secondary electron)及び後方散乱電子(BSE:back scattered electron)が放出され得る。SEMシステムがSEとBSEを区別し、2つの別個の画像すなわちSE画像とBSE画像を同時に発生することが有用であり得る。電子が標本に衝突したことに応答する標本でのSE及びBSE発生プロセスの2つの異なる機構があるので、これら2つの画像は2次元空間における標本の異なる特性を示すことができる。
[00280] いくつかの実施形態では、SE及びBSE画像を同時に取得するために複数の閾値を設定できる。イベント検出器に入射するイベント信号パルスは、対象のイベント信号パルスを発生させた入来電子のエネルギにかなり比例し得る。BSEの平均エネルギはSEの平均エネルギよりも高い。SEとBSEのエネルギ分布の間には明確な分離があり得る。このような場合、例えばSEによって生じるイベント信号パルスの平均高さの60%と同等の値に第1の閾値を設定すればよい。SEイベント信号パルス高さ平均とBSEイベント信号パルス高さ平均との間で第2の閾値を設定すればよい。2つの閾値に対応して、例えばフラグロー(flagLow)及びフラグハイ(flagHigh)のような2つのフラグを規定できる。イベント信号が立ち上がりエッジにおいて対応する閾値を超えたことが判定された場合、各フラグを設定できる。従って、BSEで発生したイベント信号パルスによって双方のフラグすなわちフラグローとフラグハイが設定され、SEで発生したイベント信号パルスによってフラグローのみが設定されると共にフラグハイはリセット状態のままとされ得る。単純な論理によって、イベント検出器はどのタイプの電子が検出されたかを判定できる。この論理は、例えばイベント検出器930又は計数値バッファ950のいずれかにおいて実施できる。いくつかの実施形態において、計数値バッファは、例えば計数値バッファ機能のタイミング重要度が低く、パイプラインアーキテクチャで多数のクロックサイクルにわたって合計を実行できる有利な位置にあり得る。合計のための一連のクロックサイクルの前に論理を実行するための1サイクルを追加しても、検出システムの性能全体は損なわれない可能性がある。検出器システム901等の検出器システムのこのような機能性設定のもとで、SE計数値及びBSE計数値で独立して合計を実行することができ、合計ユニット960はそれぞれ遅延した画素クロックサイクルで2つの合計を出力できる。SEとBSEの区別を精密にするため、追加の閾値を加えてもよい。
[00281] これより、本開示の実施形態に従った検出システムの別の例示的なアーキテクチャの概略図を示す図19Bを参照する。図19Bの検出システム902は図19Aの検出システム901と同様とすることができるが、とりわけ、検出システム902が、検知要素のアレイを含む検出器900に接続されたエネルギ貯蔵デバイス1310を提供する点が異なる。エネルギ貯蔵デバイス1310は、個別のエネルギ貯蔵ユニット1311、1312、1313、1314等を、例えばn番目のエネルギ貯蔵ユニット1319まで含み得る。個別のエネルギ貯蔵ユニットの各々は、検出器900のアレイのうち1つの検知要素に対応し得る。エネルギ貯蔵ユニット1311~1319は、検出器900の検知要素のアレイの各検知要素からの出力信号が供給されたことに応答してエネルギを蓄積するように構成できる。各エネルギ貯蔵ユニットは、例えば微小キャパシタを含み得る。
[00282] 検知要素からの原検出信号をエネルギ貯蔵ユニットに供給することができる。エネルギ貯蔵ユニットに蓄積されたエネルギは、エネルギ貯蔵ユニットがリセットされるまで貯蔵できる。例えばエネルギ貯蔵デバイス1310がキャパシタを含む場合、キャパシタが放電された場合にエネルギレベルはリセットされ得る。エネルギがエネルギ貯蔵デバイス1310に供給されている間、貯蔵されたエネルギレベルを読み取ることができる。エネルギレベルは、リセットされるまでの持続時間にわたって維持できる。
[00283] いくつかの実施形態では、検知要素出力に関連付けられたエネルギを能動リセット又は受動リセットによってリセットできる。能動リセットは、要素にエネルギレベルを積極的に(affirmatively)低下させることを含み得る。例えば、能動リセットはキャパシタを放電することを含み得る。受動リセットは、エネルギレベルを受動的に低下させることを含み得る。例えばいくつかのデバイスにおいて、エネルギレベルは経時的に低下し得る。検知要素自体において、電子到達イベントに応答して発生するエネルギは時間の経過と共に放散し得る。いくつかの実施形態では、上記で検討したように、PIN検出器での単一の電子到達イベントにより発生した電流パルスは、例えば3~5nsのパルス幅を有し得るので、検知要素は約3~5ns後に受動的にリセットされ得る。
[00284] いくつかの実施形態では、エネルギ貯蔵デバイス1310を省略してもよい。例えば、検知要素自体がエネルギ収集ユニットとして機能し、本質的に、電子到達イベントに応答して発生する電子正孔対の急増が徐々に消散していくにつれて周期的にリセットしてもよい。
[00285] また、検出システム902は検出回路アレイ1320も含むことができる。検出回路アレイ1320は、個別の回路1321、1322、1323、1324等を、n番目の回路1329まで含み得る。検出回路アレイ1320の個別の回路の各々は、検出器900のアレイのうち1つの検知要素に対応し得る。検出回路アレイ1320の個別の回路の各々はイベントパルス検出器を含み得る。イベントパルス検出器は、検知要素における荷電粒子の到達イベントを検出するように構成できる。例えばイベントパルス検出器は、検知要素におけるエネルギ量を検出することによって荷電粒子到達イベントを検出するように構成でき、また、カウンタを増分することによって荷電粒子が計数されたことを示すように構成できる。いくつかの実施形態では、検知要素からの出力信号を検出する他の手法を使用してもよい。例えば、所定の時点でサンプリングすることによって検知要素からの出力を読み取ることができる。検出回路アレイ1320はクロックを含み得る。いくつかの実施形態では、グローバルクロックを提供することができる。グローバルクロックを用いて、検知要素とそれに関連付けられた回路の動作を同期することができる。いくつかの実施形態では、個別の検知要素とそれに関連付けられた回路はそれら自体のクロックを有し得る。
[00286] イベントパルス検出器の回路は比較器を含むことができる。更に、電圧基準等の様々な他の回路コンポーネントを提供してもよい。いくつかの実施形態では、エネルギ貯蔵ユニットで捕捉されたエネルギがオーバーフロー限度を超えて、荷電粒子の計数が妨げられることがある。例えば、検知要素で2つ以上の荷電粒子を受け取った場合にミスカウントが発生し、受け取ったエネルギが受け取った荷電粒子の総数を示していないことがある。エネルギ貯蔵ユニットに蓄積されたエネルギは、後続の荷電粒子を受け取った後も同一のままである可能性がある。従って、検知要素のデータを時系列で処理するための回路を提供することが有益であり得る。検出回路アレイ1320は、タイムスタンプに関連付けることができる検知要素データを記憶するためのストレージを含み得る。
[00287] また、検出システム902は計数値合計ユニット960も含み得る。検出回路アレイ1320の回路の各々からの出力は計数値合計ユニット960に供給され得る。検出器900の各検知要素から受け取った荷電粒子の計数値を合計して、画像処理に使用される画像のグレーレベルを得ることができる。例えば、画素計数値合計970を画像処理システム199に供給できる。計数値合計ユニット960は、電子回路等のハードウェアを用いて、又は例えばコントローラによって実施できる論理動作処理を含み得る。
[00288] 検出システム902に、様々な要素を接続する様々な信号線等を提供することができる。検出システム902は、増幅器や信号処理回路等といった更に別のコンポーネントも含み得る。図19Aに示されるような様々な接続及び他の要素を検出システム902に追加してもよいことは理解されよう。
[00289] いくつかの実施形態では、検出器のサンプリング周期τSは不感時間τDよりも短く設定され得る。ここで、任意の連続した2つの検出パルスは1サンプリング周期か又はそれ以上で分離されるので、任意のサンプリング周期における電子計数値は0又は1でなければならない。従って、計数値バッファは例えばフラグとして1ビットを用いて構成できる。いくつかの実施形態では、SEMに適用される場合、検出器の最も速い画素速度は1/τSHzであるように構成できる。サンプリング周期は固定であるが、連続した各計数値の結果をグループ化して合計し、グループの全計数値の合計で1つの画素を表すことによって、例えば1/(NτS)(ここでN=2、3、...)のようなより遅い画素速度のSEM画像を画像プロセッサで構築することができる。1/τSを例えば400MHzに設定した場合、可変であるが別個の画素速度400/N MHz(N=1、2、3、...)のSEM画像をサポートできる。
[00290] いくつかの実施形態では、サンプリング周期τSを不感時間τDよりも長く設定することができ、イベント検出器は単一のサンプル周期内で複数の検出パルスを発生できる。従って、計数値バッファは複数ビットで構成され得る。計数値バッファが複数ビットで構成され得るので、追加のミスカウントを回避し、全体的なミスカウント率を許容可能レベルに維持することができる。上述のように検出器端を固定のサンプリング周期τSで動作させ続けながら、画像プロセッサ端においてSEM画像を遅い画素速度で形成することが有利であり得る。例えば、今日の半導体製造工場製チップは400MHzのクロック動作が可能であるので、τS>τDの事例はまれである。
[00291] これより、回路に結合された検知要素の出力信号の例示的な図を示す図20Aを参照する。ここでは、検知要素ごとに回路に検知要素を接続することができる。本明細書で用いる場合、「出力信号」、「検知要素出力」、又は「検知要素の出力」等という用語は、検知要素又はそれに関連付けられた回路の出力を示し得る。出力信号は検知要素によって発生することができ、検知要素の出力は対応する回路に結合することができる。そのため、中央電子制御ユニット等のコントローラは、検知要素から直接でなく回路から出力を受信することができる。コントローラは複数の回路から出力を受信できる。いくつかの実施形態において、検知要素はPINダイオードだけでなく、検知要素内部回路を形成し得る他のコンポーネントも含み得る。そのため、検知要素の出力は直接コントローラに接続することができる。コントローラは、検知要素の各々に結合された各回路を介して検知要素の出力を受信するように構成され得る。
[00292] 検知要素は、時間に基づいて信号を出力することができる。回路は、検知要素からの信号を処理して検出信号を生成することができる機能ブロックを含み得る。図20Aは、横軸の時間に対してプロットされた縦軸上の任意の単位の検出信号(強度)を表すことができるグラフである。検出器は、各検知要素における個々の荷電粒子到達イベントを区別できるような速度を有するよう構成できる。例えば図20Aに示されているように、信号の突然の増大は荷電粒子到達イベントに対応し得る。荷電粒子到達イベントは、E1、E2、E3、E4等の対応するエネルギレベルを有し得る。
[00293] 図20Aは、一定のデータフレームレートの複数のフレームF1、F2、及びF3を示す。フレームF1、F2、及びF3はデータフレームとすることができる。データフレームは、指定された時間期間内に検出システムによって取得されるデータ群を示し得る。1フレームは、検知要素の1つ以上のサンプリング周期を含み得る。フレームレートは、例えば荷電粒子計数決定の実行、第1のグループの決定、第2のグループの決定、画像処理のためのデータ処理等の処理を各フレーム内で実行するコントローラのものとすればよい。フレームレートは、例えばシステムクロックレートに関連し得る。フレームレートは、上記で検討したように第1のパラメータ及び第2のパラメータに従って設定できる。第1のパラメータ又は第2のパラメータは所定の基準に基づくことができ、以下で検討するように、第1の所定のフレーム基準又は第2の所定のフレーム基準を含むか又はこれらをカバーし得る。
[00294] 図20Bは、検知要素の例示的な出力信号のグラフ表示の別の図を示す。図20Aとは異なり、検知要素の出力信号はフレーム全体で一定であるものとして表現できる。従って、いくつかの実施形態では、1フレームにおいて検知要素が1つの値を有するように構成できる。1フレーム中に複数の荷電粒子到達イベントが発生した場合、荷電粒子到達イベントが1つだけ発生した場合よりも信号強度は高くなり得る。
[00295] フレームレートは可変とすることができる。フレームの周期は時間と共に変動し得る。例えば図20Cは、検知要素及び回路の出力信号を表すことができる別のグラフを示す。図20Cでは、F1、F2、F3、F4のような複数のフレームが存在する。これらのフレームは相互に異なる周期を有し得る。フレームの周期は、検出されている荷電粒子ビームの信号強度に適合するように設定できる。いくつかの実施形態において、適合は後続のフレームで実行できる。例えば、第1のフレームを決定し、次いで第1のフレームからの情報に基づいて第2のフレームを調整できる。いくつかの実施形態において、適合は同一フレーム内で実行できる。例えば、第1のフレームを決定し、同時に第1のフレームを調整できる。いくつかの実施形態では、フレームのリアルタイム調整を使用することができ、これは検出出力信号におけるエラー率の低減に役立ち得る。
[00296] 周期は、1周期に1つの荷電粒子が計数されるように設定できる。周期は最初、荷電粒子を収集するための時間期間に基づいて設定できる。また、周期は他の手法で初期化してもよい。その後、次のフレームの周期は同一であるか又は異なる可能性がある。いくつかの実施形態では、反復法を使用できる。例えば図20Cでは、荷電粒子を収集するための時間期間に基づいて第1のフレームF1を特定の周期に設定できる。次のフレームF2に同じ周期を使用することができる。フレームF2で荷電粒子が検出されない場合、次のフレームではフレーム周期をより長い周期に拡張できる。フレームF3では、1つの荷電粒子が検出される。その後フレームF4では、同じ周期を使用し、2つの荷電粒子が検出され得る。2つ以上の荷電粒子が検出されたので、次のフレームではフレーム周期をより短い期間に低減できる。フレームF5では荷電粒子が検出されないので、フレームF6ではより長い周期を使用する。
[00297] これより、第1の閾値T1に対して、回路に結合することができる検知要素の出力信号の図を示す図21Aを参照する。第1の閾値T1は、ノイズを除去するように設定され得る。例えば第1の閾値T1は、0よりも大きく、かつ荷電粒子到達イベントの所定のエネルギ量に対応する値以下の値に設定すればよい。第1の閾値T1を用いて、出力信号が干渉や暗電流等で生じるようなノイズでなく検出信号であることを判定できる。
[00298] これより、第1の閾値T1及び第2の閾値T2に対して、回路に結合することができる検知要素の出力信号の図を示す図21Bを参照する。第1の閾値T1は、上記と同様にノイズを除去するよう設定され得る。第2の閾値T2は、異なるエネルギ特徴を有する異なるタイプの荷電粒子を区別するように設定され得る。例えば第2の閾値T2は、散乱電子から二次電子を区別するように設定することができる。第2の閾値T2の値は事前に決定され得る。図21Bのグラフの縦軸は電子ボルトの単位であるので、第2の閾値T2は例えば、SEMシステムによって付与される加速度エネルギ(例えばE_acc)に50eVを加えた値に設定すればよい。このため、第2の閾値T2以下のエネルギを有する電子は二次電子であると判定され、第2の閾値T2を超えるエネルギを有する電子は散乱電子であると判定され、それに応じて計数され得る。
[00299] これより、第1の閾値T1、第2の閾値T2、及び第3の閾値T3に対して、回路に結合することができる検知要素の出力信号の図を示す図21Cを参照する。図21Cの図において、出力検出信号は1フレーム当たり1つの値を取ることができる。第1の閾値T1は、上記と同様にノイズを除去するよう設定され得る。第2の閾値T2は、異なるタイプの荷電粒子を区別するように設定され得る。第3の閾値T3は、検知要素が2つ以上の荷電粒子を受け取った否かを判定するように設定され得る。第3の閾値T3の値は第2の閾値T2の2倍とすればよい。
[00300] これより、フレームの統計的結果の例示的な図を示す図22を参照する。いくつかの実施形態において、検出システムのコントローラは各フレームで統計的解析を実行するように構成できる。例えば、検出器の検知要素はコントローラに出力することができる。検知要素は回路に接続することができる。コントローラは、各検知要素から出力を受信し、各検知要素の出力をフレームごとに整理するよう構成できる。1フレームの後、コントローラは、ビームスポットに関連付けられた複数の検知要素からの出力を収集することができる。例えばコントローラは、上記で図3Fを参照して検討したように、境界線350内に含まれる第1のグループの検知要素からの出力を収集できる。コントローラは、そのフレームにおける各検知要素の出力の情報に基づいて統計的解析を実行できる。一例として図22は、1フレームについて、縦軸に荷電粒子計数値を、横軸にエネルギレベルを示す。エネルギレベルは、1フレーム中に第1のグループの検知要素で受け取った荷電粒子の様々なエネルギレベルの全てに対応し得る。例えばエネルギレベルは、図20Aを参照して上記で検討したエネルギレベルE1、E2、E3、E4に対応し得る。図22は4つのそのようなエネルギレベルを示すが、異なる数の別々のエネルギレベルを提供し解析できることは認められよう。荷電粒子の計数値は、1フレーム中に第1のグループの検知要素で検出された荷電粒子の全てに対応し得る。
[00301] 他のタイプの統計データを決定することも可能である。例えば、受け取った全ての荷電粒子のある割合としての特定エネルギレベルの荷電粒子数や、第1のグループで受け取った全荷電粒子のある割合としての1つの検知要素で受け取った荷電粒子数等を決定できる。
[00302] 図22は例示的な統計的結果をヒストグラムとして示すが、様々な形態の表現を使用することができる。例えば、統計的解析は散布図を提供してもよい。
[00303] いくつかの実施形態において、コントローラは統計的解析を画素ごとに実行するよう構成できる。コントローラは、各検知要素の出力を受信し、各検知要素の出力をSEM画像の画素に対応して整理するように構成できる。例えば、荷電粒子ビームがサンプルをスキャンすると、異なる画素に対応した検知要素出力が発生され得る。スキャン動作中の割り当てられた時間期間内に取得したフレームを用いて、SEM画像の各画素を発生することができる。例えば、1つの画素に関連付けられた周期中に1つ以上のデータフレームが取得され得る。従って、1つの画素に対応した情報は1つ以上のフレームに含まれることがある。本明細書で用いられる場合、「画素」という用語は、結像されるサンプル表面上の単位領域のことを示し得る。このため、SEM画像は画素のマップを含むことができ、各画素はサンプル表面上の位置に対応する。結像解像度が高くなればなるほど(又は、例えばサンプル表面上の視野が大きくなればなるほど)、画素数が多くなる。
[00304] 図23は、一列になった複数の画素の図を示す。画素は、サンプル表面上の関心領域のラスタスキャンのようなスキャンパターンに従って配列することができる。各画素は、特定の時点の検知要素出力データに関連付けることができる。各画素は、1つ以上の検知要素のデータに関連付けることができる。上記で検討したように、1つの画素は、検知要素出力に関連した1つ以上のデータフレームのデータを含み得る。
[00305] SEM画像で複数の画素を用いるために、画素に関連した情報に基づいて画素ごとに統計的解析を実行することができる。例えばコントローラは、各検知要素に結合された各回路を介して検知要素の出力を受信するように構成できる。1つの画素に対して、コントローラは、その画素に関連付けられた時間期間内でビームスポットに関連付けられた検知要素からの出力を収集できる。例えば画素のタイムスタンプは、荷電粒子ビーム結像ツールの一次電子ビームがサンプル表面上の位置をスキャンする時点と一致し得る。コントローラは、例えば図3Fを参照して上記で検討したように、境界線内に含まれ得る第1のグループの検知要素からの出力を収集できる。コントローラは、画素に関連付けられた1つ以上のフレームにおける各検知要素の出力の情報に基づいて統計的解析を実行できる。一例として図23は、左側に、1つの画素X1に関連付けられた検知要素出力を示す。検知要素出力は、統計的解析に基づいてエネルギレベルに対してプロットされた荷電粒子計数値等の情報によって表現できる。エネルギレベルに対してプロットされた荷電粒子計数値の情報は、複数のフレームの情報に基づき得る。例えば図23では、2つの情報フレームが画素X1に関連付けられている。スキャン中の異なる時点で、別の画素に関連付けられた検知要素出力を提供できる。例えば図23は、右側に、別の画素X2に関連付けられた検知要素出力を示す。画素X2では、1つだけの情報フレームを画素に関連付けることができる。
[00306] エネルギレベルに対してプロットされた荷電粒子計数値を含む情報の図では、スキャン中に収集された複数の画素の全てのデータに基づいてスケールを決定できる。横軸のエネルギレベルは、スキャン中に収集された荷電粒子のエネルギレベルの全てを含み得る。画像内の各画素のスケールは一定に保持することができる。例えばスケールは、グレーレベル歪みを回避できるように決定すればよい。更に、荷電粒子検査ツールの同一の設定のもとで、取得された全ての画像は同一のスケールを有するように設定できる。従って、画像間でグレーレベル歪みを回避することができる。
[00307] 本開示のいくつかの実施形態に従って、入射荷電粒子のエネルギスペクトルを示す情報を発生させることができる。この情報は、SEM画像のような荷電粒子ビーム結像の画像の画素を発生する際に使用できる。
[00308] 例えば、(従来のSEMで使用できるタイプの)グレースケール画像のようなSEM画像の1つの画素を発生させる際、総数出力を使用できる。すなわち、入射荷電粒子の総計数は画素のグレーレベルに対応し得る。荷電粒子の総計数は強度に対応し得る。更に、色情報を追加してもよい。例えばカラー光は、人の目に見え、かつ約390~700nmの波長又は約1.63~3.26eVの光子エネルギに相当する電磁スペクトルの部分である。赤、オレンジ、黄、緑、青、及び紫のような目に見える色が特定のエネルギレベルに対応するのと同様に、色値をSEM画像の画素に割り当てることができる。例えば、画素ごとに解析された検知要素出力の統計的解析に基づいて、SEM画像の各画素のRGB値を決定できる。RGB値は、特定のエネルギレベルで受け取られた荷電粒子の数に基づくことができる。
[00309] いくつかの実施形態では、サンプルから受け取った放射のスペクトルを、離散的なエネルギ帯区間における入射荷電粒子の計数値によって表現することができる。エネルギレベルの区間は、例えば事前に又は統計的解析に基づいて決定できる。いくつかの実施形態において、区間は例えば閾値T1、T2、及びT3を含む閾値に基づくことができる。
[00310] いくつかの実施形態において、検知要素出力の統計的解析は、F(x)等の関数によって放射スペクトルの近似値を提供することを含み得る。ここで、xはエネルギレベルである。表色は、この関数から色域のRBG値のような色情報に直接変換できる。
[00311] 上記ではRGBカラーモデルについて検討したが、いくつかの実施形態では、HSL(色相、彩度、明度)又はHSV(色相、彩度、色値)のような他の表現を使用できる。
[00312] いくつかの実施形態では、情報収集及び表示において追加の自由度を得ることができる。SEM画像に色を加えて、とりわけ材料特性や微細構造のような追加の特性を表現できる。
[00313] 上述の記載に従ったコントローラの例は図1のコントローラ109を含む。コントローラ109は、画像取得器120及びストレージ130(図2Bを参照のこと)も含む画像処理システム199の一部であり得る。いくつかの実施形態では、コントローラ109は、画像取得機能を実行できるスタンドアロンの制御ユニットとすることができる。
[00314] これより、例示的な周期決定方法のフローチャートを示す図24を参照する。コントローラ(例えば図1のコントローラ109)は、図24のフローチャートの1つ以上のブロックを実施するようにプログラムすることができる。ステップS101では、荷電粒子の結像を開始できる。ステップS102では、処理の周期を初期値に設定する。処理は、荷電粒子計数決定の実行、第1のグループの検知要素の決定、第2のグループの検知要素の決定、及び画像処理の実行等のうち1つ以上を含み得る。
[00315] ステップS103において、コントローラは、検知要素出力に関連するデータのフレームを受信できる。フレームは検出器の複数の検知要素からの出力を含むことができ、複数の検知要素は検知要素ごとに回路に接続できる。従ってコントローラは、それぞれが個々の検知要素の出力に対応する複数の検出信号を1フレームで受信することができる。
[00316] ステップS104では、フレーム内で検出器に入射する荷電粒子の数を決定できる。ステップS104は、フレーム内で検出器の複数の検知要素の各検知要素に入射する荷電粒子の数を決定することを含み得る。荷電粒子の数は整数であり得る。
[00317] ステップS105では、少なくとも1つの荷電粒子を受け取る検知要素の数が第1の数以上であるか否かを判定できる。第1の数は第1の所定のフレーム基準に基づくことができる。例えば第1の数は、図1の装置100のような荷電粒子ビームツールのパラメータに基づく電子ビームスポットの標準的なサイズに対応する検知要素の数とすればよい。また、図24のステップS105の決定は割合の形態としてもよい。例えばステップS105は、少なくとも1つの荷電粒子を受け取るのが検知要素の少なくともA%であるか否かを判定することを含み得る。
[00318] ステップS105で否定的な判定が行われた場合、プロセスはステップS107に進むことができる。ステップS107では周期を調整することができる。例えば、1フレーム中に少なくとも1つの荷電粒子を受け取れる検知要素が多くなるように、周期を延長すればよい。周期は所定の量だけ増大することができる。その後、プロセスはステップS103に戻ることができる。
[00319] 一方、ステップS105で肯定的な判定が行われた場合、プロセスはステップS106に進むことができる。ステップS106においてプロセスは終了することができる。いくつかの実施形態では、別のプロセスを続けて実行できる。
[00320] 方法は、様々な変更を行うか又はそういった変更を行わずに図24のフローチャートの要素を含むことができる。例えばステップS104と並行して、少なくとも1つの荷電粒子を受け取る検知要素を包含しグループ化するよう提供される境界線を決定できる。少なくとも1つの荷電粒子を受け取る検知要素は、同一の荷電粒子ビームスポットに関連付けることができる。例えば、同一のビームスポットに関連付けられた検知要素は相互に隣接し得る。
[00321] いくつかの実施形態では、ステップS105で行われる判定は1フレーム当たり1度実行され得る。いくつかの実施形態では、この判定は複数のフレームに対して1度実行され得る。例えば、ステップS105の判定は、全てのフレームの後にフレーム周期を調整するか否かを判定するのではなく、所定の数のフレームの後に実行され得る。従って、フレームは所定の数のフレームにおいて同一の周期を有し、その後、周期を調整するか否かを判定することができる。
[00322] これより、例示的な周期決定方法のフローチャートを示す図25を参照する。コントローラ(例えば図1のコントローラ109)は、図25のフローチャートの1つ以上のブロックを実施するようにプログラムすることができる。図25のプロセスはステップS201で開始できる。プロセスは図24のステップS106から直接続けて実行できる。
[00323] ステップS202において、コントローラは、検知要素出力のフレームを受信することができる。フレームは、検出器の複数の検知要素からの出力を含み得る。従ってコントローラは、それぞれが個々の検知要素の出力に対応する複数の検出信号を1フレームで受信することができる。
[00324] ステップS203では、フレーム内で検出器に入射する荷電粒子の数を決定できる。ステップS203は、フレーム内で検出器の複数の検知要素の各検知要素に入射する荷電粒子の数を決定することを含み得る。
[00325] ステップS204では、2つ以上の荷電粒子を受け取る検知要素の数が第2の数以下であるか否かを判定できる。この数は割合の形態とすることができる。例えばステップS204は、2つ以上の荷電粒子を受け取るのが検知要素のB%以下であるか否かを判定することを含み得る。第2の数は第2の所定のフレーム基準に基づくことができる。例えば第2の数は、測定線形性のための所定の要件に基づき得る。いくつかの実施形態において、第2の数は、入射荷電粒子計数値に対応する出力画像信号の線形性に基づき得る。例えば、入来荷電粒子ビームが荷電粒子計数機能を達成できないほど強力である場合、検知要素出力は非線形の挙動を示し得る。1フレーム中に2つ以上の荷電粒子が検知要素に入射する場合、検知要素は非線形出力挙動を示し得る。2つ以上の荷電粒子を受け取る検知要素の数が限定されるように、所定の基準は所望の測定線形性レベルに基づくことができる。
[00326] ステップS204で否定的な判定が行われた場合、プロセスはステップS206に進むことができる。ステップS206では周期を調整することができる。例えば、1フレーム中に2つ以上の荷電粒子を受け取れる検知要素が少なくなるように、周期を短縮することができる。周期は所定の量だけ低減することができる。その後、プロセスはステップS202に戻ることができる。
[00327] 一方、ステップS204で肯定的な判定が行われた場合、プロセスはステップS205に進むことができる。ステップS205においてプロセスは終了することができる。いくつかの実施形態では、別のプロセスを続けて実行できる。
[00328] 方法は、様々な変更を行うか又はそういった変更を行わずに図25のフローチャートの要素を含むことができる。例えばステップS203と並行して、2つ以上の荷電粒子を受け取る検知要素を包含しグループ化するよう提供される境界線を決定できる。2つ以上の荷電粒子を受け取る検知要素は、荷電粒子ビームスポットの高強度の領域に関連付けることができる。
[00329] 図24及び図25のプロセスの双方を1つの制御ルーチンに組み込めることは認められよう。例えば図24のプロセスのフローは、図25のブロックS204及びS206がブロックS105及びS107と並行して動作できるように変更することができる。
[00330] 更に、制御ルーチンは、第1又は第2の所定の基準に関連した判定に基づいて荷電粒子ビーム装置の設定又は構造を調整する決定を行う等の追加処理を含み得る。これより、例示的な決定方法のフローチャートを示す図26を参照する。図26のプロセスはステップS301で開始できる。
[00331] ステップS302において、コントローラ(例えば図1のコントローラ109)は、検知要素出力に関連するデータのフレームを受信できる。フレームは検出器の複数の検知要素からの出力を含むことができ、複数の検知要素は検知要素ごとに回路に接続できる。従ってコントローラは、それぞれが個々の検知要素の出力に対応する検出信号を1フレームで受信することができる。
[00332] ステップS303では、フレーム内で検出器に入射する荷電粒子の数を決定できる。ステップS303は、フレーム内で検出器の複数の検知要素の各検知要素に入射する荷電粒子の数を決定することを含み得る。
[00333] ステップS304において、コントローラは、第1の基準が満たされたか否かを判定できる。例えば、2つ以上の荷電粒子を受け取る検知要素の数が第1の数以下であるか否かを判定できる。ステップS304は、2つ以上の荷電粒子を受け取るのが検知要素のB%以下であるか否かを判定することを含み得る。
[00334] ステップS304で肯定的な判定が行われた場合、プロセスはステップS305に進むことができる。ステップS305において、コントローラは、第2の基準が満たされたか否かを判定できる。例えば、少なくとも1つの荷電粒子を受け取る検知要素の数が第2の数以上であるか否かを判定できる。ステップS305は、少なくとも1つの荷電粒子を受け取るのが検知要素の少なくともA%であるか否かを判定することを含み得る。
[00335] ステップS304で否定的な判定が行われた場合、プロセスはステップS307に進むことができる。ステップS304における否定的な判定は、第1及び第2の基準を調整しなければならないことを意味し得る。例えば、ステップS304における否定的な判定は、B%の数字の設定が低すぎること又はA%の数字の設定が高すぎることを意味し得る。また、これは、ビームスポット内の荷電粒子分布が充分に均一でないことを意味し得る。ステップS307では調整を実行することができる。調整は、ビームスポット内の荷電粒子分布がより均一になるように実行され得る。調整は、荷電粒子ビーム装置において投影システムをデフォーカスすることを含み得る。例えば投影システムは、ビームをある程度デフォーカスするように構成できる。更に、荷電粒子ビーム装置の倍率を変更してビームスポットを拡大することも可能である。また、更に別の調整を実行してもよい。例えばフレーム周期を短縮することができる。その後、プロセスはステップS302に戻ることができる。
[00336] ステップS305で否定的な判定が行われた場合、プロセスはステップS308に進むことができる。ステップS308では、A%及びB%の数字を調整できる。また、更に別の調整を行ってもよい。例えばフレーム周期を延長することができる。その後、プロセスはステップS302に戻ることができる。
[00337] ステップS305で肯定的な判定が行われた場合、プロセスはステップS306に進むことができる。ステップS306において、プロセスは終了することができる。
[00338] 現フレーム周期が完了した後、フレーム適合を実行することができる。例えば、センサ出力が現フレームで基準を満たしていないと判定された状況に応答して、後続のフレームで調整を実行できる。例えば上記で検討した例のように、後続のフレームを短縮するか又は延長することができる。しかしながら、いくつかの実施形態ではフレーム調整をリアルタイムで実行できる。現フレーム周期について判定を実行することができる。現フレームを短くカットするか又は延長するための判定を実行できる。この判定は例えば、現フレームの周期のためセンサ出力が基準を満たすことができない場合に実行され得る。
[00339] これより、例示的な周期決定方法のフローチャートを示す図27を参照する。コントローラ(例えば図1のコントローラ109)は、図27のフローチャートの1つ以上のブロックを実施するようにプログラムすることができる。プロセスはステップS401で開始できる。ステップS401は、図24、図25、又は図26に示すような処理の後に続けて実行できる。ステップS401から、荷電粒子結像が開始されるか又はすでに進行中である可能性がある。フレームの周期は、例えば前のフレーム処理からの値に設定されるか、又は所定の初期値に初期化されている場合がある。
[00340] 図24又は図25の処理によって、現データフレーム後の次のデータフレームに調整が適用され得る。このような処理では、調整が行われる場合であっても、コントローラでデータを受信した後に現フレームは終了し得る。しかしながら図27の処理では、データの受信後に現フレームは必ずしも終了しないことがある。例えば基準を満たしていない場合、現フレームの調整を行い、次いで調整を反映する更新済みデータをコントローラに送信することができる。コントローラに送信されたデータが基準を満たす場合、現フレームは終了できる。
[00341] 図27のプロセスが進むと、ステップS402において、コントローラは現フレームの特性を決定できる。現フレームの特性はフレーム周期を含み得る。ステップS402は、ストレージから値を読み取ることを含み得る。また、ステップS402は、現フレーム中に動作しているSEMシステムの結像条件等、現フレームに関連した特性を決定することを含み得る。
[00342] ステップS403において、コントローラは、検知要素出力に関連するデータのフレームを受信できる。フレームは検出器の複数の検知要素からの出力を含むことができ、複数の検知要素は検知要素ごとに回路に接続できる。従ってコントローラは、それぞれが個々の検知要素の出力に対応する検出信号を1フレームで受信することができる。
[00343] ステップS404では、フレーム内で検出器に入射する荷電粒子の数を決定できる。ステップS404は、フレーム内で検出器の複数の検知要素の各検知要素に入射する荷電粒子の数を決定することを含み得る。
[00344] ステップS405では、受信した出力信号、現フレームの特性、又は以前決定された他の特性に基づいて、基準を満たせるか否かを判定できる。基準は、図24及び図25を参照して上記で検討したように、第1の所定のフレーム基準又は第2の所定のフレーム基準を含み得る。例えばステップS405は、検知要素の少なくともA%が少なくとも1つの荷電粒子を受け取るか否か、又は検知要素のB%以下が2つ以上の荷電粒子を受け取るか否かを判定することを含み得る。図27のステップS405では、現フレームの特性に基づいて、アレイの検知要素からの出力が基準を満たさないことが判定され得る。例えば、現フレームの周期が短いために、少なくとも1つの荷電粒子を受け取る検知要素の数が現フレーム内の第1の数よりも大きくないことを判定できる。特定のビーム電流レベルに対して決定された平均電子到達イベント数に基づいて、現フレームの周期が短すぎることを判定できる。例えば、4nAの電子ビームを用いた現在の結像条件下で、電子到達イベントが極めてまばらであるので、第1の数を超える数の検知要素が2つ以上の電子を受け取る可能性がないことを判定できる。ステップS405は、信頼水準に基づく判定を含み得る。いくつかの実施形態では、ステップS405における判定は、ステップS402、S403、又はS404で収集された情報に基づくことができる。ステップS405は、第1の所定のフレーム基準(例えば、検知要素の少なくともA%が少なくとも1つの荷電粒子を受け取る)及び第2の所定のフレーム基準(例えば、検知要素のB%以下が少なくとも2つ以上の荷電粒子を受け取る)の双方に基づく判定を含み得る。判定は、プロセスフローと並行して又は別個のプロセスフローで実行できる。例えば、第1及び第2の所定のフレーム基準を満たせるか否かを1つのステップで一緒に判定することができ、又は、第1の所定のフレーム基準を満たせるか否かを判定した後に第2の所定のフレーム基準を満たせるか否かを判定すること、もしくは逆の順序でこれらの判定を行うことを別個に実行できる。
[00345] ステップS405で否定的な判定が行われた場合、プロセスはステップS406に進むことができる。ステップS406では、現フレームの周期を調整するか、又はフレームに対する他の調整を実行できる。例えば、1フレーム中に少なくとも1つの荷電粒子を受け取れる検知要素が多くなるように、周期を延長すればよい。調整の量は、例えばステップS405で実行した判定の結果として予想される不足量に比例し得る。現フレームの調整後、プロセスはステップS403に戻ることができる。
[00346] ステップS405で肯定的な判定が行われた場合、プロセスは周期を調整することなくステップS410に進み、終了することができる。いくつかの実施形態では、他の処理を続けて実行できる。例えば、プロセスは現フレームに関して終了し、新しいフレームに対して繰り返すことができる。
[00347] 方法は、例えば図24、図25、及び図26に関して上記で検討したような、様々な変更を行うか又はそういった変更を行わずに図27のフローチャートの要素を含むことができる。更に、上記の例は現フレーム周期の短縮について検討しているが、現フレーム周期の延長も可能である。いくつかの実施形態では、図25に関して上記で検討したステップS204、又は図26に関して上記で検討したステップS305と同様に、2つ以上の荷電粒子を受け取る検知要素の数が第2の数以下であるか否かを判定するステップも存在し得る。いくつかの実施形態では、ステップS403からステップS406は繰り返し実行され得る。
[00348] いくつかの検出器において、検出プロセスは固定シーケンスの2つのステップを含み得る。2つのステップは、検出器に入射する二次電子ビームの強度を決定する際に使用できる。このようなステップは、上記で検討したような周期決定プロセスと共に又はその代わりに使用できる。例えば、検出器表面上のビームスポットの境界を識別する第1のステップが存在し得る。更に、ビームスポットに対応するグループ化された検知要素に基づいて電子ビームの強度を決定する第2のステップが存在し得る。決定されたビーム強度から、サンプル表面を示す情報を導出できる。
[00349] 電子ビームが固定の投影パターンで検出器に入射する場合、ビーム強度を決定する際に、上述した固定シーケンスの2つのステップが有用であり得る。しかしながら、検出器上の電子ビームの投影パターンにばらつき又は変動がある場合は、複雑な事態が生じ得る。例えば、検出器の検知要素アレイ上で複数の隣接していない検知要素にわたって電子ビームの電子が分布している場合、電子ビームの強度を決定することは困難になり得る。このような状況は、例えばビーム電流が小さく、比較的少数の電子が検知要素アレイの大きい面積にわたって入射する場合に発生し得る。電子到達率が低い状況では、検知要素上の個々の電子到達イベントはまばらであり、広いエリアにわたって分布する可能性がある。上記で検討したように、電子は例えば電子の初期運動エネルギ及び放出角に依存する異なる軌道を有するので、二次電子ビーム中の電子の入射位置の幾何学的分布が大きい場合がある。
[00350] これより、荷電粒子ビーム装置がサンプル表面上で荷電粒子の一次ビームをラスタパターンでスキャンできる状況を示す図28Aを参照する。ビームはサンプルの表面上を連続的にスキャンできる。ビームスキャン経路は、スキャン画像を構成するために使用することができる画素Xiに対応し得る。ここで、iは指数である。図28Bに示されているように、検出器の検知要素アレイ2100において、T1のスキャン時間Tで検知要素2101が入射荷電粒子を受け取ることができる。検出器は荷電粒子計数のために構成することができ、従って、特定の瞬間の荷電粒子到達率は比較的低い可能性がある。一次電荷粒子ビームがサンプルの表面をスキャンすると、検出器に入射する二次又は散乱荷電粒子が発生し得る。二次荷電粒子ビーム中の荷電粒子の入射位置の分布は比較的広いことがある。従って、時点T1で検知要素2101は入射荷電粒子を受け取ることができる。しかしながら、例えば図28Cに示されている時点T2のような次の検出フレームでは、荷電粒子は検知要素アレイ2100の異なる領域に入射し得る。図28Cに示されているように、T2のスキャン時間Tでは、検知要素2102及び検知要素2103の各々がサンプリング周期中に入射荷電粒子を受け取ることができる。次に、図28Dに示されているように、T3のサンプリング時点Tで、検知要素2104が次のフレーム中の入射荷電粒子を受け取ることができる。更に、図28Eに示されているように、T4のサンプリング時点Tで、検知要素2105及び検知要素2106の各々が別のフレーム中の入射荷電粒子を受け取ることができる。検知要素2101、2102、2103、2104、2105、及び2106は必ずしも相互に隣接していないが、全てが同一の二次荷電粒子ビームに関連付けられ得るので、検出器に入射する二次ビームの強度を決定するため、いくつかを一緒にグループ化する必要があり得る。
[00351] いくつかの検出システムでは、複数の検知要素を含む広い領域にわたって荷電粒子到達イベントが発生する場合、検知要素を1つの荷電粒子ビームスポットに関連付けることが難しい場合がある。更に、いくつかの検出システムでは、一次荷電粒子ビームの複数のビームレットが同時にサンプル上の複数の位置をスキャンし得るので、二次荷電粒子の複数のビームが検出器に入射する可能性がある。従って、異なるビームからの二次荷電粒子到達イベントを区別するために別の複雑な事態が生じることがあり、検知要素を別個にグループ化することが必要となり得る。更に、検知要素をグループ化する必要性のため、検出器の柔軟性が限定されることがある。例えば偏向防止(anti-deflection)ユニットが適正に機能しない場合のように、荷電粒子の二次ビームの投影パターンが検出器表面上で一定でない場合、結果として検出器表面上で投影パターンが高速で移動することがあり、ビームを追跡することが困難になり得る。検知要素のグループ化のような処理を含む必要性によって、投影パターンの移動に追い付く能力が妨げられ、検出誤差を招く恐れがある。
[00352] 本開示のいくつかの実施形態は、荷電粒子計数の前に検知要素をグループ化する必要がない検出プロセスを提供することができる。荷電粒子を計数し、特定の瞬間における検出器のステータスを表すデータを記憶した後に、グループ化を実行すればよい。いくつかの実施形態では、検知要素データにタイムスタンプを関連付けることができる。特定のタイムスタンプに対応する検知要素データをスキャン時間に相関付けることで、検知要素データをサンプル表面上のスキャン位置に関連付けることができる。例えば、特定のタイムスタンプを含む検知要素データをサンプル表面のSEM画像の画素に関連付けることができる。
[00353] 複数の検知要素を含む検出器は、多種多様な計数モードで動作させることができる。検知要素に回路を接続することができ、この回路は信号及びデータ処理を実行するように構成できる。回路は検知要素に内蔵することができる。計数方法は、検知要素に接続された回路から出力される信号に基づき得る。複数の回路を提供し、各回路をアレイの検知要素に1つずつ接続することができる。
[00354] 計数モードの一例として、第1のモードでは、検知要素は、入射荷電粒子エネルギを判別することなく、最大で1つだけの入射荷電粒子を計数した後にリセットすることができる。リセットは、検知要素又はそれに関連付けられた回路の双方をリセットすることを含み得る。本明細書で用いる場合、「検知要素をリセットする」という語句は、検知要素又はそれに関連付けられた回路をリセットすることを示し得る。第2のモードでは、検知要素は、入射荷電粒子エネルギを判別することなく、カウンタが一杯になるまで入射荷電粒子の数を計数した後にリセットすることができる。この数は予め規定された数を含み得る。予め規定された数は1とすることができる。カウンタが一杯になった後、検知要素は荷電粒子の計数を停止できる。カウンタが一杯になった後であるが次のリセットの前に別の荷電粒子が到達した場合、オーバーフローフラグを設定できる。第3のモードでは、検知要素は予め規定されたエネルギレベルに従って荷電粒子を計数することができる。エネルギ範囲は例えば、ゼロから第1の予め規定されたエネルギレベル、第1の予め規定されたエネルギレベルから別の予め規定されたエネルギレベル(等)、及び最も高い予め規定されたエネルギレベルを超えるレベルを含み得る。各範囲内で最大で1つだけの荷電粒子を計数した後、検知要素をリセットすることができる。第4のモードでは、検知要素は予め規定されたエネルギレベルに従って荷電粒子を計数し、エネルギ範囲内で所定の数を超える荷電粒子を受け取った場合、そのエネルギ範囲にオーバーフローフラグを設定できる。いくつかの実施形態では、対応するエネルギ範囲の所定の数はゼロ又は1とすることができる。上記のモード及びその他について以下で更に説明する。
[00355] 本開示の実施形態に従った、検出器又は検出システムを動作させるための第1の計数モードを例示する図29A及び図29Bを参照する。検知要素は、入射荷電粒子のエネルギを検出することができる。検知要素に接続された回路は、検知要素の出力を処理することができる。図29Aに示されているように、検知要素及び回路は時間に基づいて検出信号を出力できる。図29Aは、横軸の時間に対してプロットされた縦軸上の任意の単位の検出信号強度のグラフである。検知要素における荷電粒子到達イベントは、時点T1、T2、及びT3で発生し得る。検出器は、荷電粒子到達イベントを検出するように構成された検知要素及び回路を有し得る。例えば検知要素は、入射荷電粒子が検知要素に到達したことに応答して信号パルスを発生させるように構成できる。これは、検知要素における電子正孔対の発生に起因し得るものであり、回路に供給することができる。回路は、荷電粒子が検知要素に到達したことを判定すると荷電粒子到達イベントを記録することができる。図29Bは、時点T1、T2、及びT3の各々において、荷電粒子(電子等)到達イベントを記録できることを示す。例えば図29Bに示されているような、時点T1、T2、及びT3におけるイベントの各々は、「計数値」に対応し得る。荷電粒子の計数値は、検知要素において荷電粒子到達イベントが発生したことの指示を含み得る。計数値は、検知要素にある数の荷電粒子が到達したことを示し得る。この数は整数である。荷電粒子到達イベントに関連付けられたデータは、荷電粒子到達イベントが記録された時点を含み得る。この時点はシステム時間であり得る。いくつかの実施形態において、この時点は検出システムのグローバルクロックサイクルに基づき得る。いくつかの実施形態において、この時点は個別の検知要素で経過しているローカル時間に基づき得る。この時点は、電子ビームツールの一次電子ビームのスキャン時間に相関付けることができる。また、荷電粒子到達イベントに関連付けられたデータは、検知要素アレイのうちどの検知要素が荷電粒子を受け取ったかを示す識別子も含み得る。このため、検出器表面上の位置も記録することができる。
[00356] 第1の計数モードでは、いくつかの実施形態において、検出器は、検知要素における最大で1つだけの荷電粒子到達イベントを計数した後にリセットされるよう構成できる。検出器は、1つの荷電粒子到達イベントのエネルギを判別することなく1つの荷電粒子到達イベントを計数するように構成できる。検出器は、例えば検知要素におけるエネルギ量の検出に応答して荷電粒子到達イベントを計数できる。検知要素のリセットは、検出フレームの終了時に発生し得る。また、リセットは、検知要素に接続された回路をリセットすることも含み得る。
[00357] 第1の計数モードにおいて、いくつかの実施形態では、荷電粒子到達イベントが間断なく連続して発生する場合にミスカウントが生じ得る。例えば、検知要素又はそれに関連付けられた回路がリセットされる前に、前の粒子の直後に荷電粒子が検知要素に到達することがあるので、この後続の荷電粒子は計数されない可能性がある。すなわち、実際には2つの粒子が検知要素に到達した場合に、計数される荷電粒子の数は1であると判定され得る。このようなミスカウントは、例えば第2の計数モードを用いることによって対処できる。いくつかの実施形態では、このようなミスカウントの確率が低くなるように、意図される用途向けの隣接した荷電粒子の後続の到達時間が充分に長いように(例えば使用可能ビーム電流範囲)、検知要素のアレイを設計及びサイズ設定できることに留意するべきである。
[00358] 図30A及び図30Bは、本開示の実施形態に従った、検出器又は検出システムを動作させるための第2の計数モードを例示する。図30Aに示されているように、検知要素及び回路は時間に基づいて検出信号を出力することができ、検知要素における荷電粒子到達イベントは時点T1、T2、T3、及びT4で発生し得る。時点T2で、検知要素又はそれに関連付けられた回路がリセットされる前に荷電粒子が到達し得る。しかしながら検出器は、後続の荷電粒子到達イベントを無視するのではなくオーバーフローフラグを設定することができる。オーバーフローフラグは、検知要素に別の荷電粒子が到達したことを示し得る。オーバーフローフラグは、後続の荷電粒子到達イベントに起因して検知要素及び回路で発生する信号の増大によってトリガすることができる。
[00359] オーバーフローは第1のタイプのオーバーフローを含み得る。1つの荷電粒子が検知要素に到達した後、後続の荷電粒子到達イベントに対して検知要素及び回路が適正な応答を与えられない状態で後続の荷電粒子が到達した場合、第1のタイプのオーバーフローが発生し得る。これは、後続の荷電粒子が到達した時に第1の荷電粒子到達イベントの処理が回路によって進行中であることに起因し得る。回路は、第1の荷電粒子到達イベントの処理が終了するまで後続の荷電粒子到達イベントの出力を処理することができず、例えばオーバーフローフラグを設定することによって後続の荷電粒子到達イベントを単にオーバーフローイベントとして記録し得る。第1の荷電粒子及び後続の荷電粒子は、同一又は異なるエネルギレベル範囲内であり得る。荷電粒子到達イベントの出力の処理は、荷電粒子のエネルギレベルを判定することを含み得る。従って、後続の荷電粒子到達イベントがオーバーフローイベントとして判定された場合、後続の荷電粒子のエネルギレベルは無視される可能性がある。例えば、第1の荷電粒子到達イベントの処理が開始する前に後続の荷電粒子到達イベントが発生した場合、オーバーフローフラグは設定されず、極めて短い時間期間内に次々と到達する2つの入来荷電粒子を識別し計数することが可能である。例えば、単一の二次荷電粒子到達イベントに単一の後方散乱荷電粒子到達イベントを加えたものに対応する振幅を有するイベント信号を発生することができ、従って、二次粒子と後方散乱粒子が到達したことを判定できる。
[00360] また、オーバーフローは第2のタイプのオーバーフローを含み得る。第2のタイプのオーバーフローは、検知要素に接続された回路のカウンタが第2の計数モードにおけるようなオーバーフロー状態である場合に生じ得る。いくつかの実施形態では、第2のタイプのオーバーフローは、特定のエネルギ範囲内の荷電粒子を計数するため検知要素に接続された回路のカウンタが第4の計数モードにおけるようなオーバーフロー状態である場合に生じ得る。これについては以下で検討する。オーバーフローフラグは、例えば第2の計数モード又は第4の計数モードにおける第2のタイプのオーバーフローに基づき得る。検出器は、第2のタイプのオーバーフローに基づいて検知要素及びそれに関連付けられた回路をリセットするように構成できる。
[00361] 第2の計数モードでは、いくつかの実施形態において、検出器は、検出器内の検知要素アレイの検知要素に入射した荷電粒子の数を計数するように構成できる。検出器は、離散的な荷電粒子到達イベントとして荷電粒子の数を計数するように構成できる。検出器は、荷電粒子到達イベントのエネルギレベルを判別することなく荷電粒子の数を計数するように構成できる。検出器は、例えばある量のエネルギ量を検知要素で受け取ったことに応答して荷電粒子到達イベントを計数できる。検出器は、荷電粒子到達イベントの検出時に比べて検知要素で受け取るエネルギが増大したことに応答してオーバーフロー状態を検出できる。検知要素のリセットは検出フレームの終了時に発生し得る。検出器は、荷電粒子到達イベントがすでに検出されている検出フレームと同一の検出フレーム中に別の荷電粒子が到達したことを示し得るオーバーフローフラグを設定できる。
[00362] 第1の計数モード及び第2の計数モードにおいて、荷電粒子は入射荷電粒子エネルギに関係なく計数され得る。このため、荷電粒子が後方散乱電子であるか二次電子であるかにかかわらず、荷電粒子到達イベントを単に到達イベントとして記録することができる。
[00363] 図31A及び図31Bは、本開示の実施形態に従った、検出器又は検出システムを動作させるための第3の計数モードを例示する。図31Aに示されているように、検知要素及び回路は時間に基づいて検出信号を出力することができ、検知要素における荷電粒子到達イベントは時点T1、T2、T3、及びT4で発生し得る。荷電粒子は様々なエネルギレベルを有し得る。別個のエネルギレベル閾値を設定することができる。別個のエネルギレベル閾値のうち1つの閾値は、検出信号からノイズを区別するように設定できる。例えば検出器は、ゼロより大きいが第1のエネルギ閾値E1未満のエネルギを有する荷電粒子を計数しないように構成できる。検出器は、第1のエネルギ閾値E1以上であり第2のエネルギ閾値E2未満であるエネルギを有する荷電粒子を計数するように構成できる。検出器は更に、第2のエネルギ閾値E2以上であり第3のエネルギ閾値E3未満であるエネルギを有する荷電粒子を計数するように構成できる。検出器は更に、第3のエネルギ閾値E3以上のエネルギを有する荷電粒子を計数するように構成できる。エネルギ範囲の境界は、例えば、1つの範囲が第1のエネルギ閾値E1より大きく第2のエネルギ閾値E2以下であると規定され得るように変更できることは理解されよう。すなわち、いくつかの実施形態では、1つの範囲をE1<x≦E2と設定できる。いくつかの実施形態では、1つの範囲をE1<x<E2と設定できる。いくつかの実施形態では、1つの範囲をE1≦x≦E2等と設定できる。
[00364] 第3の計数モードでは、いくつかの実施形態において、検出器は、検知要素で特定のエネルギ範囲の荷電粒子到達イベントを最大で1つだけ計数した後にリセットされるよう構成できる。検出器は、検知要素においてあるエネルギ範囲に対応するエネルギレベルを検出したことに応答して、このエネルギ範囲の荷電粒子到達イベントを計数できる。検出器は、あるエネルギ範囲に対応する検知要素の出力信号を検出したことに応答して、このエネルギ範囲の荷電粒子到達イベントを計数できる。検知要素のリセットは検出フレームの終了時に発生し得る。
[00365] いくつかの実施形態において、検出器は、特定の1又は複数のエネルギ範囲の荷電粒子到達イベントだけを計数するように構成できる。例えば、検知要素に接続された回路は、E1<x≦E2のエネルギ範囲に対応する荷電粒子到達イベントだけを計数し、他のエネルギ範囲に対応するイベントを無視するように構成できる。
[00366] 図31Bは、時点T1、T2、T3、及びT4の各々で電子到達イベントが記録され得ることを示す。電子到達イベントに関連付けられたデータは、エネルギレベルと、電子到達イベントが記録された時点とを含み得る。異なるエネルギレベルのために複数の記録を実行することができる。例えば、検出器は第1の時点で第1の荷電粒子到達イベントを計数し、第1の荷電粒子は第1のエネルギを有し、更に検出器は第1の時点で又は第1の時点の近くで第2の荷電粒子到達イベントを計数し、第2の荷電粒子は第1の荷電粒子とは異なるエネルギ範囲内の第2のエネルギを有する。
[00367] 図32A及び図32Bは、本開示の実施形態に従った、検出器又は検出システムを動作させるための第4の計数モードを例示する。図32Aに示されているように、検知要素及び回路は時間に基づいて検出信号を出力することができ、検知要素における荷電粒子到達イベントは時点T1、T2、T3、T4、T5、及びT6で発生し得る。荷電粒子は様々なエネルギレベルを有し得る。
[00368] 図32Bは、時点T1、T3、及びT4の各々において電子到達イベントが記録され得ることを示す。電子到達イベントに関連付けられたデータは、エネルギレベルと、電子到達イベントが記録された時点とを含み得る。異なるエネルギレベルのために複数の記録を実行することができる。例えば、検出器は第1の時点で第1の荷電粒子到達イベントを計数し、第1の荷電粒子は第1のエネルギを有し、更に検出器は第1の時点で又は第1の時点の近くで第2の荷電粒子到達イベントを計数し、第2の荷電粒子は第1の荷電粒子とは異なるエネルギ範囲内の第2のエネルギを有する。
[00369] 時点T2において、検知要素又はそれに関連付けられた回路をリセットする前に、前の荷電粒子と同一エネルギ範囲内の荷電粒子が到達し得る。時点T2で荷電粒子到達イベントが発生したことに応答して、検知要素はオーバーフローフラグを設定できる。オーバーフローフラグは、検知要素に別の荷電粒子が到達したことを示し得る。オーバーフローフラグはエネルギ範囲に固有のものであり得る。検知要素又はそれに関連付けられた回路がリセットされる前に、すでに検出された前の荷電粒子と同一エネルギ範囲内の荷電粒子が検出された場合、オーバーフローフラグをトリガすることができる。
[00370] 同様に、時点T6において、検知要素又はそれに関連付けられた回路がリセットされる前に、検出フレーム内ですでに検知要素で受け取った荷電粒子と同一エネルギ範囲内の荷電粒子が到達し得る。しかしながら、時点T5で、検知要素又はそれに関連付けられた回路がリセットされる前に、直前の荷電粒子とは異なるエネルギ範囲内の荷電粒子が到達する可能性がある。この場合、検出器はオーバーフローフラグをトリガすることなく荷電粒子が到達したことを記録できる。図32Bに示されているように、時点T6で発生した荷電粒子到達イベントはオーバーフローフラグをトリガすることができる。前述のものは、検出器が、第1のエネルギ範囲の荷電粒子到達イベント数を計数すると共に、検知要素でオーバーフローが生じた場合にオーバーフローフラグを設定するよう構成されている例を含み得る。前述の例における荷電粒子の数は1とすればよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、この数はゼロ又は2以上としてもよい。更に検出器は、異なるエネルギ範囲において同じ数又は異なる数の荷電粒子を計数するように構成できる。
[00371] 異なるエネルギレベル閾値を用いることは、異なるタイプの荷電粒子を区別するために有用であり得る。例えばいくつかの実施形態では、これは後方散乱電子及び二次電子を相互に区別するために有用であり得る。
[00372] 入射荷電粒子エネルギの比較は基準値に基づくことができる。例えば、比較器を含む回路を提供することができる。比較器は、検知要素からの出力信号と回路に提供された基準とを比較できる。一例として、検知要素が、出力電流信号を入射荷電粒子のエネルギと同等の電圧に変換する要素に接続されている場合、比較器は、検出された電圧と電圧基準とを比較できる。比較器は、検出された電圧の値を記憶することなく、電圧信号が基準電圧よりも高いか又は低いかを判定できる。
[00373] いくつかの実施形態では、荷電粒子到達イベントに関連付けられたデータは、入射荷電粒子に対応する記録されたエネルギレベルを含み得る。例えば検知要素は、検知要素の出力信号を記憶できる値に変換するアナログデジタル変換器に接続することができる。入射荷電粒子のエネルギは、直接測定し記録することも可能である。
[00374] 第4の計数モードでは、いくつかの実施形態において、検出器は、検出器内の検知要素アレイの検知要素に入射した荷電粒子の数を計数するように構成できる。検出器は、離散的な荷電粒子到達イベントとして荷電粒子の数を計数するように構成できる。検出器は、特定のエネルギ範囲の荷電粒子の数を計数し、その後リセットされるように構成できる。検出器は、あるエネルギ範囲に対応するエネルギレベルを検知要素で受け取ったことに応答してそのエネルギ範囲の荷電粒子到達イベントを計数できる。検出器は、あるエネルギ範囲に対応する検知要素からの出力信号が検出されたことに応答してそのエネルギ範囲の荷電粒子到達イベントを検出できる。検出器は、特定のエネルギ範囲内の荷電粒子到達イベントの検出時に比べて検知要素で受け取るエネルギが増大したことに応答してオーバーフロー状態を検出できる。検知要素のリセットは検出フレームの終了時に発生し得る。検知要素のリセットは、関連付けられた回路のリセットと共に発生し得る。検出器は、特定のエネルギ範囲の荷電粒子到達イベントがすでに検出されている検出フレームと同一の検出フレーム中に別の荷電粒子が到達したことを示し得るオーバーフローフラグを設定できる。
[00375] 検出器は、検知要素のアレイ及び回路を含むことができ、上記で検討したモードに従って多種多様な手法で動作させることができる。回路は複数の回路を含むことができ、各回路をアレイの各検知要素に接続できる。アレイ内の全ての検知要素を同一のモードで動作させることができる。いくつかの実施形態では、アレイの検知要素を同時に異なるモードで動作させることができる。荷電粒子到達イベントに関連付けられたデータは、使用されている動作モードを示すインジケータを含み得る。
[00376] いくつかの実施形態では、検知要素によって各入射荷電粒子が計数された時にタイムスタンプを記録することができる。粒子のエネルギを判別することなく最大で1つだけの荷電粒子が計数された場合、タイムスタンプは、次のリセット前に第1の荷電粒子が到達した時点を示すことができる。所定エネルギ範囲の各範囲内で最大で1つだけの荷電粒子が計数された場合、タイムスタンプは、次のリセット前に関連付けられたエネルギ範囲内の第1の荷電粒子が到達した時点を示すことができる。また、対応するタイムスタンプと共にオーバーフローフラグを設定することも可能である。
[00377] 検知要素のリセットは多種多様な手法で実行することができる。例えば第1のリセットモードでは、アレイ内の全ての検知要素を固定又は変動周期で同時にリセットすることができる。第2のリセットモードでは、所定の領域に基づいて異なる時点で検知要素をリセットすることができる。第3のリセットモードでは、固定又は変動周期で異なる時点で検知要素を個別にリセットすることができる。第4のリセットモードでは、上述のモードのうち1つ以上を組み合わせることができる。これらのモードについて以下で更に詳しく検討する。
[00378] 第1のリセットモードは共通リセットに基づくことができる。検知要素アレイ内の検知要素のいくつか又は全てを一度にリセットすることができる。例えば、検知要素アレイ内の全ての検知要素を同時にリセットできる。リセットのレートは周期によって決定できる。周期は所定のものとすればよい。いくつかの実施形態において、周期は固定周期とすればよい。いくつかの実施形態において、周期は変動し得る。例えば図20Cを参照して上記で検討したように、フレームの長さは相互に異なってもよい。フレームの周期は、検出されている荷電粒子ビームの信号強度に適合するように設定できる。いくつかの実施形態において、周期は固定周期と変動周期の混合を含み得る。
[00379] 第1のリセットモードにおいて、いくつかの実施形態では、各リセットの前に各検知要素からのデータを記憶することができる。データはリセットの直前に記憶できる。このため、検知要素の表面のスナップショットを、間隔をあけて取得できる。この間隔は固定であるか又は変動してもよい。このようにして、検出器は、検出フレームレートで時系列にデータを出力することができる。検出フレームレートは、特定のSEM結像フレームレートに要求される条件に基づき得る。
[00380] 第1のリセットモードにおいて、いくつかの実施形態では、所定の条件に基づいてリセットを実行することができる。所定の条件は、例えば、検知要素アレイ内の検知要素の少なくともA%が少なくとも1つの荷電粒子を受け取るという条件等の基準を含み得る。所定の条件の別の例は、検知要素アレイ内の検知要素の少なくともA%がオーバーフローを発生するという条件を含み得る。リセットが発生するたびにタイムスタンプを記録することができる。タイムスタンプを用いて、対応する検出フレームにラベルを付けることができる。
[00381] 図33A及び図33Bは、本開示の実施形態に従った、第1のリセットモードによる検出信号を示す。図29Aに示されている例示的な実施形態と同様、図33Aでは、検知要素における荷電粒子到達イベントが時点T1、T2、及びT3で発生し得る。検知要素は、これらの時点で荷電粒子到達イベントを検出することができる。一方、図33Aは、一定のフレームレートの複数のフレームF1、F2、F3、及びF4も示す。これらのフレームは検知要素のリセットに対応し得る。いくつかの実施形態では、リセットはコントローラによって開始できる。各フレームの終了時に、検知要素及びそれらに関連付けられた回路をリセットすることができる。このため、リセットは時点TF1、TF2、TF3、及びTF4で発生し得る。検知要素データの記憶は、時点TF1、TF2、TF3、及びTF4において又はこれらの時点の直前に発生し得る。図33Aは1つの検知要素の出力だけを示すが、第1のリセットモードに従ったリセットはアレイの全ての検知要素について同時に発生し得ることは理解されよう。
[00382] ここで第2のリセットモードを参照すると、第2のリセットモードは、アレイの検知要素の一部に対する共通リセットに基づくことができる。アレイの異なる領域内の検知要素を異なる時点でリセットできる。従って、アレイの検知要素の全てが同時にリセットされるわけではない可能性がある。領域は事前に決定することができる。例えば、領域は検出器の象限に基づいて決定できる。いくつかの実施形態では、例えばマルチビーム装置が用いられる場合、領域は、二次荷電粒子のビームが入射すると予想される検出器の部分に対応し得る。いくつかの実施形態において、領域は、検出器244(図2Aを参照のこと)の246、248、及び250等の検出サブ領域に対応し得る。いくつかの実施形態において、領域はリアルタイムで決定することができる。また、領域は検出器の動作中に変更してもよい。
[00383] 第2のリセットモードでは、検知要素のアレイの1つの領域内の検知要素を一度にリセットすることができる。リセットのレートは周期によって決定できる。周期は固定周期とすればよく、又は、例えば上記で検討したように変動してもよい。異なる領域間で、リセットは異なる時点で実行され得る。
[00384] 第2のリセットモードにおいて、いくつかの実施形態では、各リセットの前に領域内の各検知要素からのデータを記憶することができる。データは、同一領域内の他の検知要素に関連付けることができる。データはリセットの直前に記憶できる。このため、検知要素アレイの特定領域の表面のスナップショットを、間隔をあけて取得できる。この間隔は固定であるか又は変動してもよい。このようにして、検出器は、異なる領域に基づいて検出フレームレートで時系列にデータを出力することができる。検出フレームレートは、特定のSEM結像フレームレートに要求される条件に基づき得る。
[00385] 第2のリセットモードにおいて、いくつかの実施形態では、所定の条件に基づいてリセットを実行することができる。所定の条件は、例えば、検知要素アレイの領域内の検知要素の少なくともA%が少なくとも1つの荷電粒子を受け取るという条件等の基準を含み得る。所定の条件の別の例は、検知要素アレイの領域内の検知要素の少なくともA%がオーバーフローを発生するという条件を含み得る。リセットが発生するたびにタイムスタンプを記録することができる。タイムスタンプを用いて、特定の領域からの対応する検出フレームにラベルを付けることができる。いくつかの実施形態では、検出器表面上の領域の数は、検出されるビームの数に関連し得る。いくつかの実施形態では、領域の数は検出されるビームの数に関連しないことがある。領域のサイズ及び形状は、相互に同一であるか又は異なる可能性がある。
[00386] 図33A及び図33Bは、第1のリセットモードに従った1つの検知要素の検出信号を示し得るが、第2のリセットモードに従って1つの領域に関連付けられた複数の検知要素を同様にリセットできることは認められよう。このため、図33A及び図33Bには1つだけの検知要素の出力を示し得るが、他の検知要素出力も同様に表すことができる。
[00387] これより第3のリセットモードを参照する。第3のリセットモードは、アレイの検知要素の個別のリセットに基づき得る。アレイ内の各検知要素を異なる時点でリセットすることができる。検知要素は、例えば上記で検討したように、固定又は変動周期でリセットできる。
[00388] 第3のリセットモードにおいて、いくつかの実施形態では、各リセットの前に各検知要素からのデータを記憶することができる。データはリセットの直前に記憶できる。このため、検知要素アレイの特定の検知要素の表面のスナップショットを、間隔をあけて取得できる。この間隔は固定であるか又は変動してもよい。
[00389] 第3のリセットモードにおける検知要素のリセットは、所定の条件に基づくことができる。所定の条件は、例えば、特定の検知要素が少なくとも1つの荷電粒子を受け取ることを含み得る。所定の条件の別の例は、特定の検知要素がオーバーフローを発生するという条件を含み得る。リセットが発生するたびにタイムスタンプを記録することができる。
[00390] 図34A及び図34Bは、荷電粒子到達イベントに応答して検知要素及びそれに関連付けられた回路がリセットされる例を示す。リセットは、荷電粒子到達イベント後の所定の時点で発生し得る。いくつかの実施形態において、リセットは、荷電粒子到達イベントの発生又は検出の直後に開始し得る。検知要素における荷電粒子到達イベントは、カウンタが増分されてリセット動作を開始させるフィードバックループを開始することができる。例えば図33A及び図33Bと比べ、図34A及び図34Bに従った検知要素及びそれに関連付けられた回路のリセットは、所定のフレームとは無関係に発生し得る。
[00391] 図35A及び図35Bは、リセットが受動的な方法によって発生し得る例を示す。図35Bに示されているように、検出信号は、能動的なリセット動作なしで荷電粒子到達イベントに応答して自然に減衰し得る。信号の漸進的な減衰はロングテール挙動を含み得る。
[00392] いくつかの実施形態では、検知要素又はそれに関連付けられた回路のリセットは受動的又は能動的とすることができる。計数検出器又は検知要素自体のリセットはクエンチングを含み得る。いくつかの実施形態では、クエンチング回路を提供することができる。クエンチング回路は、各検知要素のクエンチングを制御できる。検出器におけるリセットは、例えば計数回路のような、アレイ内の各検知要素に接続された別の回路をリセットすることを含み得る。計数回路は、フロントエンド電子回路のようなアナログ部分を含み得る。回路のアナログ部分のリセットは受動的又は能動的とすることができる。また、計数回路は、パルス高さ解析器及び計数器等のデジタル部分も含み得る。いくつかの実施形態では、回路のデジタル部分のリセットは能動的とすることができる。回路又は検知要素の能動的なリセットは、高速を達成するために有利であり得る。
[00393] いくつかの実施形態では、利得を達成するために検知要素のダイオードをアバランシェモード又はいわゆる「ガイガー計数」モードに偏奇させる必要がない電子計数を可能とすることができる。利得は、入来電子の運動エネルギによって達成され得る。電子の運動エネルギによって利得を提供することは、検出器の高速を維持するのに役立ち得る。更に、いくつかの実施形態では、ダイオードが高速を有し得るアバランシェモードにダイオードを偏奇させることができる。アバランシェモードでは、信号のロングテールを低減又は回避することができる。アバランシェ効果によって、通常バイアス条件下のダイオードよりも速度を高速化できる。結果として、検知要素を備えた検出器は、検知要素からの信号にロングテールが存在しないほど充分に高速となり得る。いくつかの実施形態では、検知要素及び関連する信号調節処理回路にリセット機構を提供して、各電子到達イベントの後に検出器を初期状態に戻すことを可能とする。
[00394] ここで第4のリセットモードを参照すると、第4のリセットモードは上記で検討したリセットモードの組み合わせを使用することができる。例えば第4のリセットモードは、第2のリセットモードと第3のリセットモードの組み合わせに従って検知要素をリセットすることを含み得る。
[00395] いくつかの実施形態において、検知要素のリセットは、アレイ内の検知要素の全てにおいて均一に発生し得る。単一の検知要素のリセット間隔は、フレームごとに異なる可能性がある。アレイの検知要素の全てが均一にリセットされる場合、検知要素の全てが同一のリセット間隔を使用できる。しかしながら、いくつかの実施形態では、リセット間隔は検知要素ごとに異なる可能性がある。
[00396] 第1から第4のリセットモードを、上記で検討した、検出器を動作させる第1から第4のモードのうち任意のものと共に使用できる。多種多様な組み合わせを採用することができる。
[00397] 検出器は、時間の経過と共に検知要素で計数される荷電粒子の数に関連したデータが生成され続けるように構成できる。いくつかの実施形態では、荷電粒子到達イベントの時点のタイムスタンプを用いて検知要素からデータを生成できる。更に、いくつかの実施形態では、検知要素リセットの時点のタイムスタンプを用いて検知要素からデータを生成できる。これらのイベントのタイムスタンプは相互に異なる可能性がある。各検知要素の位置に関する情報を含む、検知要素から導出した情報に基づいて、アレイ内の検知要素で受け取った入来荷電粒子の動画を発生することができる。荷電粒子到達イベントに関連する原データを、指定されたフレームレート及び画素解像度で所望のフォーマットに変換することができる。検出器で受け取った荷電粒子ビームの強度に関する情報を導出することができる。
[00398] これより、検出表面に対する荷電粒子到達イベントの効果を例示する図36を参照する。図36において、検出器は、検知要素36a、検知要素36b、検知要素36c、及び検知要素36dを含む複数の検知要素を含み得る。検知要素36aと検知要素36cとの境界付近の領域で検出器表面に荷電粒子がぶつかる(例えば衝突する)ことがある。電子が検出器に衝突すると、これは検出器のあるボリュームにおいて電荷を生成し得る。このボリュームは2つ以上の検知要素にまたがる可能性がある。例えば、複数の検知要素に延出する電離領域37が生じ得る。複数の検知要素において電荷が発生すると、電子は複数回計数されるか又は全く計数されないことがある。
[00399] いくつかの実施形態では、検出器の検出表面に到達する電子のミスカウントを更に低減することができる。いくつかのミスカウントは、検知要素間の境界付近で発生する電子到達イベントに基づく可能性がある。SEMの電子光学コラムからの電子が検出器の検知表面に到達する場合、電子が検出デバイスに入射する位置はランダムに分布し得る。各電子が検出器に入射した後の電離プロセスに起因して、検出器内の一時的な電離領域が生じることがある。一時的な電離領域は検知要素の空乏化領域の外側へ拡大し得る。電離領域の各々は、各入来電子のエネルギと検出器を形成する材料とに関連したボリュームを有し得る。各電子が検出デバイスに入射する位置のランダム性の結果として、各入来電子が誘起する一時的な電離領域は、隣接する検知要素の境界と交差する可能性がある。このため、検出器における複数の検知要素が、特定の入来電子に対応する出力信号を有することがある。検知要素ごとの電子計数デバイスでは、これがミスカウントを引き起こす恐れがある。
[00400] 上記の問題に対処するため、いくつかの実施形態は以下のことを利用できる。検知要素は、所定のサイズ及び形状を有するように構成できる。検知要素のアレイは、グリッド等のパターンに配列された検知要素を含み得る。検出器における各検知要素のサイズは、いずれの方向においても検知要素のサイズが入来電子の最大侵入深さ以上であるように選択できる。検知要素は、検知要素のどの寸法(例えば長さ、幅、高さ)も最大侵入深さ未満でないように構成できる。最大侵入深さは、検出器を形成するために使用される材料に基づき得る。例えば電子は、ある材料では他の材料よりも深く侵入し得る。このようにして、各入来電子が一度に衝突する検知要素を4つ以下とすることができる。これは、ミスカウント補正のための信号後処理を更に簡略化するのに役立ち得る。
[00401] 更に、各検知要素において、入来電子による信号の強度が、例えば閾値THAのような予め規定された基準値よりも高い場合、イベントのためのタイムスタンプを残すことができる。閾値THAは、平均イベントパルス信号の所定の割合である値、又は、電子到達イベントに応答したエネルギの測度のような他の何らかのパラメータに対応し得る。例えば閾値THAは、1つの入来二次電子が1つの検知要素に衝突する状況に対応したイベント信号パルスの平均振幅の20%に等しい値に設定できる。1つの入来二次電子が1つの検知要素に衝突する状況は、単一の検知要素のボリューム内で一時的な電離領域が形成されることに対応し得る。閾値THAは、比較的一貫したエネルギレベルを有する二次電子のパラメータに基づき得る。更に、固定されたSEM結像設定のもとでの二次電子のエネルギ変動は、例えば後方散乱電子のものより小さい可能性がある。
[00402] 閾値THAを超える信号強度を有するイベントは、検知要素が少なくとも部分的に入来電子によって衝突されたことを表し得る。次いで、任意の2つの隣接した検知要素からの情報を解析することができる。任意の2つの隣接した検知要素が同一のタイムスタンプの電子衝突イベントに遭遇した場合、2つの検知要素からの信号をアナログで加算し、その結果を2つの検知要素の一方に送信することができる。2つの検知要素の他方に記憶された信号は、クリアする(例えば削除する)ことができる。
[00403] 例えば、ぶつかった(例えば衝突した)各検知要素からの入来電子による信号は、キャパシタの両端における電圧の形態で提示することができる。各検知要素において、信号を発生し記憶するため用いられるキャパシタは同一のキャパシタンスを有し得る。次いで、例えばアナログ信号加算のようなアナログ信号処理の間、2つの隣接した検知要素の一方のキャパシタからの電荷を、2つの隣接した検知要素の他方のキャパシタに移動させることができる。このようにして信号加算を実行し、次いで、2つの隣接した検知要素のうち第1のものにおける信号を削除することができる。
[00404] いくつかの構成では、各検知要素に、タイムスタンプ記録のための1つだけのキャパシタと1つのメモリがある。一度に2つの隣接した検知要素に入来電子が同時に衝突した場合はいつでも、信号処理手順を開始することができる。プロセスはシステムクロックに対して非同期化する(asynchronize)ことができる。
[00405] 他の構成では、各検知要素に、信号発生及び記憶のための2つ以上のキャパシタがある。更に、キャパシタの各々は対応するタイムスタンプメモリを有し得る。これらのキャパシタ及び対応するタイムスタンプメモリは、それぞれ、電子が検知要素に衝突する単一イベントの信号を発生及び記憶するためだけに使用されるよう用いることができる。例えば、各イベント中、検知要素の回路が1つの時点(time point)として扱うほど充分に短い時間期間内に1つ以上の電子が検知要素に衝突することがある。言い換えると、回路の観点から、これらの電子は同時に検知要素にぶつかる。次いで、検知要素のキャパシタのうち予め規定された数M又は割合B%が用いられ、少なくとも2つの隣接した検知要素を伴う少なくとも1つのイベント量イベントが存在する場合、計数値補正のための信号処理手順を開始できる。この特定の検知要素における手順は、少なくとも2つの検知要素を伴う電子衝突イベントが全て処理されるまで停止され得る。信号処理手順の間、手順に関与する検知要素は、それらの検知要素のキャパシタ及びタイムスタンプメモリが全て使用されるまで、引き続き新しい入来電子イベントを計数できる。その後、新しい入射電子が同じ検知要素にぶつかった場合、オーバーフローを記録することができる。上述の信号処理手順が完了し、検知要素に記憶されたか又はそれに関連付けられたデータが送出された後、その検知要素のリセットを実行できる。
[00406] 上記と一致するもの等の信号処理手順において、境界衝突イベントが発生するたびに、1又は複数の同じ入来電子がぶつかる2つの隣接した検知要素のうち、発生する信号レベルが高い方の要素に、組み合わせ信号を記憶することができる。更に、2つの検知要素の他方における信号を削除することができる。すると、キャパシタ及び対応するタイムスタンプメモリは即座にその検知要素の次の電子衝突イベントのために利用可能となる。
[00407] 1つの入来電子が2つ以上の検知要素にぶつかることに起因したミスカウント率が低減される検出器を提供することができる。このようなイベントを境界衝突イベントと呼ぶことがある。境界衝突イベントは、例えば図36に示されているように、2つ以上の検知要素において電離領域37が生じた場合に発生し得る。
[00408] いくつかの実施形態では、各タイプの電子(例えば二次電子、後方散乱電子等)は、特徴的なエネルギ範囲を有し、検出器に衝突した場合に特徴的な電荷量を生成する。複数の隣接した検知要素が同時に電荷を検出した場合、その電荷をこれらの特徴的なエネルギと比較することで、それらが複数の電子衝突に対応しているか、又は複数の検知要素で電荷を発生する単一の衝突に対応しているのかを判定できる。電子計数検出器においてミスカウントを低減するための方法を提供することができる。この方法は、2つ以上の隣接した検知要素において実質的に同時に電荷を検出することと、隣接した検知要素の各々で検出された電荷を1つ以上の基準値と比較することと、この比較に基づいて、電荷が検知要素の1つに衝突した1つの電子から生じたか又は2つ以上の検知要素に衝突した複数の電子から生じたかを判定することと、を含み得る。
[00409] 荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビームを用いてサンプルを結像するように構成できる。検出器は、検出器に到達した荷電粒子の計数値を決定するように構成できる。荷電粒子の計数値は、アレイの個々の検知要素が受け取った荷電粒子の個々の計数値に基づき得る。この計数値に基づいてサンプルの像を再構築することができる。SEM画像のような画像の生成は、複数の検知要素の計数値を合計することと、この計数値を、スキャンされたサンプル表面上の位置に対応する特定の時点に相関付けることと、を含み得る。合計された計数値は、画素画像のグレーレベルを決定するために使用できる。いくつかの実施形態では、情報表示における別の自由度を使用することができる。例えば、計数値に含まれる情報は、タイムスタンプ、位置(例えば検知要素アレイ上の検知要素の位置)、及び、計数された荷電粒子の数を含み得る。検知要素の計数値は、スキャン時間と相関付けることによってサンプル表面に関連付けることができる。個々の検知要素の計数値は、例えばタイムスタンプに基づいてグループ化することができる。同一の値又は近い値のタイムスタンプを有する検知要素データをグループ化できる。グループ化した検知要素データは、検出器に入射する荷電粒子のビームに関連付けることができる。計数された荷電粒子の数は、タイムスタンプに基づいて1つの時間ウィンドウ内で荷電粒子を受け取った複数の検知要素からの合計と考えることができる。
[00410] いくつかの実施形態では、前処理を必要とすることなく検知要素をグループ化することができる。検知要素は後処理方法においてグループ化できる。タイムスタンプに基づいて特定の時点で荷電粒子を受け取ったと判定される検知要素をグループ化し、ビームスポットに関連付けることができる。このため、境界線350及び360(図3Fを参照のこと)等のビーム境界を決定する必要はないことがある。検知要素又は、必ずしも相互に隣接していない検知要素からの情報を、タイムスタンプ、位置、一次ビームのスキャン動作、又はSEMシステムの特性に基づいて、グループ化することができる。従って、例えば図28Aから図28Eを参照すると、検出器は、特定のスキャン時間で荷電粒子を受け取る全ての検知要素(例えばT=T2、検知要素2102及び2103)が、検出器上の特定のスポットに入射する同一の荷電粒子ビームに関連付けられると決定できる。
[00411] いくつかの実施形態に従って、リアルタイムの高線形性(高忠実度)、又は高ダイナミックレンジの荷電粒子ビーム検出を達成できる。荷電粒子ビーム検出システムは、検出器に入射する二次荷電粒子ビームの投影パターンの低速及び高速の移動を追跡することができる。いくつかの適用例では、SEMシステムをいっそうロバストに、かつ故障耐性を高くすることができる。この結果、システムのダウンタイムを短縮できる。
[00412] いくつかの実施形態では、投影システムにおける偏向防止システムを省略することができ、これはシステムの簡略化に役立ち得る。これは信頼性を更に改善し、システムのダウンタイムを短縮することができる。
[00413] 取得された同一の原データセットに基づいて、特定の適用要件に従って多種多様な結果が取得され得る。結果は、前処理でなく後処理で使用することができる。いくつかの実施形態では、前処理は検知要素のグループ化を含み得る。データは、特定の目的を最適化するため更に調整することができる。例えば、クロストークのような検出パラメータの最適化と二次荷電粒子収集効率との間にはトレードオフの関係が存在し得る。しかしながら、後処理を用いてデータを調整した場合、情報の損失なくトレードオフを調整することができる。これは、アプリケーション層にいっそう柔軟性を与えることができ、異なる検出パラメータ設定でのデータ取得だけを目的として特定の動作を再実行しなければならないリスクを低減することができる。
[00414] いくつかの実施形態において、検出システムは、アナログ回路、混合信号、及びデジタル回路を含み得る。比較のための実施形態では、アナログ回路部分の割合が比較的高いので、デバイス実施が難しくなる可能性があると共に、検出器の設計は最新の半導体プロセスノードとの適合性が低くなり得る。本開示のいくつかの実施形態は、混合信号及びデジタル回路を比較的高い割合で使用するか、又は混合信号とデジタル回路のみで構成された検出システムを提供することができるので、ASIC(特定用途向け集積回路)におけるアナログ回路の設計及び製造に伴う困難が軽減され得る。いくつかの実施形態は、最新の半導体ノードとの高い適合性の達成を促進することができる。これは全体的な電力消費の軽減に役立ち得る。
[00415] 実施形態は、以下の条項を用いて更に記載することができる。
1.複数のフレームの中の第1のフレーム内で検出器に入射する荷電粒子の数を決定することと、
検出器の第1の数の検知要素の各々に荷電粒子が入射するという条件を含む第1の基準に基づいて第1のフレームの周期を決定することと、
を含む方法。
2.第1の基準と、第1の数の検知要素の中の第2の数以下の検知要素に2つ以上の荷電粒子が入射するという条件を含む第2の基準とに基づいて、第1のフレームの周期を決定すること、
を更に含む、条項1に記載の方法。
3.第1の基準に基づいて複数のフレームのフレームレートを決定すること、
を更に含む、条項1又は2に記載の方法。
4.第1の基準及び第2の基準に基づいて複数のフレームのフレームレートを決定すること、
を更に含む、条項2に記載の方法。
5.第1のフレーム内の複数のエネルギレベルにおける入射荷電粒子の量の統計データを決定すること、
を更に含む、条項1から4のいずれかに記載の方法。
6.統計データは、第1の数の検知要素の各検知要素に入射する荷電粒子に対応する各エネルギレベルにおける第1の数の検知要素の入射荷電粒子の全量を含む、条項5に記載の方法。
7.第1の閾値以上かつ第2の閾値未満のエネルギレベルで検出器の検知要素に入射する荷電粒子の第3の数を決定すること、
を更に含む、条項1から6のいずれかに記載の方法。
8.第2の閾値以上かつ第3の閾値未満のエネルギレベルで検出器の検知要素に入射する荷電粒子の第4の数を決定すること、
を更に含む、条項7に記載の方法。
9.第3の閾値以上のエネルギレベルで検出器の検知要素に入射する荷電粒子の第5の数を決定すること、
を更に含む、条項8に記載の方法。
10.少なくとも1つのフレームに基づいてグレースケール画像の画素を発生させること、
を更に含む、条項1から9のいずれかに記載の方法。
11.少なくとも1つのフレームに基づいてカラー画像の画素を発生させること、
を更に含む、条項1から10のいずれかに記載の方法。
12.荷電粒子ビームを発生させることと、
荷電粒子ビームでサンプルをスキャンすることと、
を更に含み、検出器はサンプルから投影された荷電粒子を受け取るように構成されている、条項1から11のいずれかに記載の方法。
13.命令セットを含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、命令セットは、コントローラの1つ以上のプロセッサによって実行可能であり、
複数のフレームの中の第1のフレーム内で検出器に入射する荷電粒子の数を決定することと、
検出器の第1の数の検知要素の各々に荷電粒子が入射するという条件を含む第1の基準に基づいて第1のフレームの周期を決定することと、
を含む方法をコントローラに実行させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
14.コントローラの少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である命令セットは、
第1の基準と、第1の数の検知要素の中の第2の数以下の検知要素に2つ以上の荷電粒子が入射するという条件を含む第2の基準とに基づいて、第1のフレームの周期を決定すること、
をコントローラに更に実行させる、条項13に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
15.コントローラの少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である命令セットは、第1の基準に基づいて複数のフレームのフレームレートを決定することをコントローラに更に実行させる、条項13又は14に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
16.コントローラの少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である命令セットは、第1の基準及び第2の基準に基づいて複数のフレームのフレームレートを決定することをコントローラに更に実行させる、条項14に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
17.コントローラの少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である命令セットは、第1のフレーム内の複数のエネルギレベルにおける入射荷電粒子の量の統計データを決定することをコントローラに更に実行させる、条項13から16のいずれかに記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
18.統計データは、第1の数の検知要素の各検知要素に入射する荷電粒子に対応する各エネルギレベルにおける第1の数の検知要素の入射荷電粒子の全量を含む、条項17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
19.コントローラの少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である命令セットは、第1の閾値以上かつ第2の閾値未満のエネルギレベルで検出器の検知要素に入射する荷電粒子の第3の数を決定することをコントローラに更に実行させる、条項13から18のいずれかに記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
20.コントローラの少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である命令セットは、第2の閾値以上かつ第3の閾値未満のエネルギレベルで検出器の検知要素に入射する荷電粒子の第4の数を決定することをコントローラに更に実行させる、条項19に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
21.コントローラの少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である命令セットは、第3の閾値以上のエネルギレベルで検出器の検知要素に入射する荷電粒子の第5の数を決定することをコントローラに更に実行させる、条項20に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
22.コントローラの少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である命令セットは、少なくとも1つのフレームに基づいてグレースケール画像の画素を発生させることをコントローラに更に実行させる、条項13から21のいずれかに記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
23.コントローラの少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である命令セットは、少なくとも1つのフレームに基づいてカラー画像の画素を発生させることをコントローラに更に実行させる、条項13から22のいずれかに記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
24.コントローラの少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である命令セットは、
荷電粒子源に荷電粒子ビームを発生させることと、
偏向器に荷電粒子ビームでサンプルをスキャンさせることと、
をコントローラに更に実行させ、検出器はサンプルから投影された荷電粒子を受け取るように構成されている、条項13から23のいずれかに記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
25.検出器と、少なくとも1つのプロセッサを備えるコントローラと、命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体と、を備える荷電粒子ビーム装置であって、命令は、プロセッサによって実行された場合、
複数のフレームの中の第1のフレーム内で検出器に入射する荷電粒子の数を決定することと、
検出器の第1の数の検知要素の各々に荷電粒子が入射するという条件を含む第1の基準に基づいて第1のフレームの周期を決定することと、
を装置に実行させる、荷電粒子ビーム装置。
26.命令は更に、
第1の基準と、第1の数の検知要素の中の第2の数以下の検知要素に2つ以上の荷電粒子が入射するという条件を含む第2の基準とに基づいて、第1のフレームの周期を決定すること、
を装置に実行させる、条項25に記載の装置。
27.命令は更に、
第1の基準に基づいて複数のフレームのフレームレートを決定すること、
を装置に実行させる、条項25又は26に記載の装置。
28.命令は更に、
第1の基準及び第2の基準に基づいて複数のフレームのフレームレートを決定すること、
を装置に実行させる、条項26に記載の装置。
29.命令は更に、
第1のフレーム内の複数のエネルギレベルにおける入射荷電粒子の量の統計データを決定すること、
を装置に実行させる、条項25から28のいずれかに記載の装置。
30.統計データは、第1の数の検知要素の各検知要素に入射する荷電粒子に対応する各エネルギレベルにおける第1の数の検知要素の入射荷電粒子の全量を含む、条項29に記載の装置。
31.命令は更に、
第1の閾値以上かつ第2の閾値未満のエネルギレベルで検出器の検知要素に入射する荷電粒子の第3の数を決定すること、
を装置に実行させる、条項25から30のいずれかに記載の装置。
32.命令は更に、
第2の閾値以上かつ第3の閾値未満のエネルギレベルで検出器の検知要素に入射する荷電粒子の第4の数を決定すること、
を装置に実行させる、条項31に記載の装置。
33.命令は更に、
第3の閾値以上のエネルギレベルで検出器の検知要素に入射する荷電粒子の第5の数を決定すること、
を装置に実行させる、条項32に記載の装置。
34.命令は更に、
少なくとも1つのフレームに基づいてグレースケール画像の画素を発生させること、
を装置に実行させる、条項25から33のいずれかに記載の装置。
35.命令は更に、
少なくとも1つのフレームに基づいてカラー画像の画素を発生させること、
を装置に実行させる、条項25から34のいずれかに記載の装置。
36.命令は更に、
荷電粒子ビームを発生させることと、
荷電粒子ビームでサンプルをスキャンすることと、
を装置に実行させ、検出器はサンプルから投影された荷電粒子を受け取るように構成されている、条項25から35のいずれかに記載の装置。
37.荷電粒子ビーム装置のための検出器であって、
検出器要素のアレイを備え、
アレイの検出器要素の面積は、少なくともある信頼度で1サンプリング周期当たり所定の数以下の荷電粒子を受け取るように構成されている、検出器。
38.サンプリング周期は検出器要素の不感時間未満である、条項37に記載の検出器。
39.信頼度は、1サンプリング周期当たり検出器要素で所定の数以下の荷電粒子を受け取る統計的確率又はミスカウント率に対応し、検出器要素は、第1のミスカウント閾値に関連した条件を満たすミスカウント率で1サンプリング周期当たり所定の数以下の荷電粒子を受け取るように構成されている、条項37に記載の検出器。
40.ミスカウント率が第1のミスカウント閾値以下である場合に条件が満たされる、条項39に記載の検出器。
41.検出器要素の面積は、サンプリング周期が平均荷電粒子分離時間のある割合であるように構成されている、条項37から40のいずれか1項に記載の検出器。
42.サンプリング周期は平均荷電粒子分離時間の0.1倍である、条項41に記載の検出器。
43.平均荷電粒子分離時間は、検出器に入射する荷電粒子のビームのビーム電流と、検出器に入射する荷電粒子の幾何学的分布に対する検出器要素の位置とに基づく、条項41又は42に記載の検出器。
44.サンプリング周期は平均荷電粒子分離時間の0.01倍である、条項41に記載の検出器。
45.サンプリング周期は平均荷電粒子分離時間の0.05倍である、条項41に記載の検出器。
46.荷電粒子の所定の数は1又は2であり、
検出器はオーバーフロー状態を検出するように構成されている、条項37から45のいずれか1項に記載の検出器。
47.複数の検出器要素はセグメント化ダイオードを含む、条項37から46のいずれか1項に記載の検出器。
48.複数の回路を更に含み、複数の回路のうちの回路は、検出器要素からの出力を処理して検出器要素に入射する荷電粒子の数を計数するように構成されている、条項37から47のいずれか1項に記載の検出器。
49.複数の回路の各々は、信号調節回路と、イベント検出器と、画素計数値バッファと、を含む、条項48に記載の検出器。
50.複数の回路の各々は、入来信号を基準値と比較して、入来信号の立ち上がりエッジが基準値を超えた場合にフラグを設定するように構成された判別器を含む、条項48又は条項49に記載の検出器。
51.検出器に入射する計数された荷電粒子の合計を決定するように構成された画像プロセッサを更に備える、条項37から50のいずれかに記載の検出器。
52.検出器に入射する荷電粒子は一次粒子と標本との相互作用から生じる二次粒子であり、一次粒子は荷電粒子ビーム装置のソースから発生されて標本上に集束される、条項37から51のいずれかに記載の検出器。
53.検出器の検出器要素のアレイの中の検出器要素に入射する荷電粒子の数を計数することを含む方法であって、
アレイの検出器要素の面積は、1サンプリング周期当たり所定の数以下の荷電粒子を受け取るように構成されている、方法。
54.サンプリング周期は検出器要素の不感時間未満である、条項53に記載の方法。
55.面積は、サンプリング周期が平均荷電粒子分離時間のある割合であるように構成され、割合は0.1以下である、条項53又は条項54に記載の方法。
56.平均荷電粒子分離時間は、検出器に入射する荷電粒子のビームのビーム電流と、検出器に入射する荷電粒子の幾何学的分布に対する検出器要素の位置とに基づく、条項55に記載の方法。
57.所定の基準を満たすようにサンプリングレートを調整することを更に含む、条項53から56のいずれかに記載の方法。
58.所定の基準は、サンプリング周期が電子到達イベントに応答して発生された信号のパルス幅未満であることである、条項57に記載の方法。
59.検出器要素のアレイの各検出器要素に入射する計数された荷電粒子の複数の数を合計することと、
SEM画像のグレーレベルを決定することと、
を更に含む、条項53から58のいずれかに記載の方法。
60.荷電粒子ビーム装置のための検出器であって、
検知要素のアレイを含む半導体基板と、
検出器に入射する荷電粒子の数を計数するように構成された回路と、
を備える検出器。
61.回路は、複数の検知要素からの出力を処理し、アレイの検知要素上での荷電粒子到達イベントに応答してカウンタを増分するように構成されている、条項60に記載の検出器。
62.回路は荷電粒子到達イベントのタイムスタンプを決定するように構成されている、条項61に記載の検出器。
63.タイムスタンプは検出器のグローバルシステム時間に基づき、グローバルシステム時間はアレイ内の各検知要素に共通している、条項62に記載の検出器。
64.タイムスタンプは検知要素のローカル時間に基づき、ローカル時間はアレイ内の他の検知要素から独立している、条項62に記載の検出器。
65.タイムスタンプは、荷電粒子ビーム装置の一次荷電粒子ビームによってスキャンされるサンプルの表面上の位置に関連付けられている、条項62から64のいずれか1項に記載の検出器。
66.タイムスタンプはSEM画像の画素に関連付けられている、条項65に記載の検出器。
67.回路は、アレイの複数の検知要素の計数値を計数値のタイムスタンプに基づいて合計するように構成されている、条項60から66のいずれか1項に記載の検出器。
68.検出器は、検知要素における最大で1つだけの荷電粒子到達イベントを、1つの荷電粒子到達イベントのエネルギを判別することなく計数し、その後リセットするように構成されている、条項60から67のいずれか1項に記載の検出器。
69.検出器は、荷電粒子到達イベントの数を、荷電粒子到達イベントのエネルギを判別することなく計数し、検知要素においてオーバーフローが生じた場合にオーバーフローフラグを設定するように構成されている、条項60から67のいずれか1項に記載の検出器。
70.荷電粒子到達イベントの数は1を含む、条項69に記載の検出器。
71.検出器は、第1のエネルギ範囲の検知要素における最大で1つまでの荷電粒子到達イベントを計数し、その後リセットするように構成されている、条項60から67のいずれか1項に記載の検出器。
72.検出器は、第1のエネルギ範囲の荷電粒子到達イベントの数を計数し、検知要素においてオーバーフローが生じた場合にオーバーフローフラグを設定するように構成されている、条項60から67のいずれか1項に記載の検出器。
73.荷電粒子到達イベントの数はゼロ又は1を含む、条項72に記載の検出器。
74.回路は判別器を含み、判別器は、検知要素からの出力信号を基準値と比較し、出力信号が基準値よりも大きい場合にカウンタを増分するように構成されている、条項61又は62のいずれか1項に記載の検出器。
75.回路は、検知要素からの出力信号を、下限値及び上限値を含む基準範囲と比較するように構成された判別器を含み、カウンタは、基準範囲に対する出力信号に基づく判定に応答して増分される、条項61又は62のいずれか1項に記載の検出器。
76.回路は、出力信号が基準範囲に含まれる基準値よりも小さい場合にカウンタを増分するように構成されている、条項75に記載の検出器。
77.回路は、出力信号が基準範囲に含まれる基準値よりも大きい場合にカウンタを増分するように構成されている、条項75に記載の検出器。
78.回路は、出力信号が下限値よりも大きく、かつ上限値よりも小さい場合にカウンタを増分するように構成されている、条項75に記載の検出器。
79.回路は、検知要素が受け取ったエネルギの量を検出することによって検知要素上での荷電粒子の到達イベントを検出するように構成されたパルス検出器を含む、条項61又は62のいずれか1項に記載の検出器。
80.回路は比較器を含み、比較器は、検知要素が受け取ったエネルギの量を基準と比較し、基準に基づいて判定を行った後にカウンタを増分するように構成されている、条項61又は62のいずれか1項に記載の検出器。
81.回路は比較器を含み、比較器は、検知要素が受け取ったエネルギの量を基準値と比較し、エネルギの量が基準値よりも大きい場合にカウンタを増分するように構成されている、条項61又は62のいずれか1項に記載の検出器。
82.回路は比較器を含み、比較器は、検知要素が受け取ったエネルギの量を、上限及び下限を含む基準範囲と比較するように構成され、カウンタは、基準範囲に対するエネルギの量に基づく判定に応答して増分される、条項61又は62のいずれか1項に記載の検出器。
83.回路は、エネルギの量が基準範囲内に含まれる基準値よりも小さい場合にカウンタを増分するように構成されている、条項82に記載の検出器。
84.回路は、エネルギの量が基準範囲内に含まれる基準値よりも大きい場合にカウンタを増分するように構成されている、条項82に記載の検出器。
85.回路は、エネルギの量が下限よりも大きく、かつ上限よりも小さい場合にカウンタを増分するように構成されている、条項82に記載の検出器。
86.検出器は、検知要素のアレイの全ての検知要素を同時にリセットするように構成されている、条項60から85のいずれか1項に記載の検出器。
87.検出器は、検知要素のアレイのある領域の全ての検知要素を同時にリセットするように構成されている、条項60から85のいずれか1項に記載の検出器。
88.検出器は、検知要素のアレイの各検知要素を個別にリセットするように構成されている、条項60から85のいずれか1項に記載の検出器。
89.検出器は、検知要素のアレイのうちいくつかの検知要素を同時にリセットすると共に検知要素のアレイのうちいくつかの検知要素を個別にリセットするように構成されている、条項60から85のいずれか1項に記載の検出器。
90.各検知要素からのデータはリセット前に記憶される、条項86から89のいずれか1項に記載の検出器。
91.検出器は固定周期で検知要素をリセットするように構成されている、条項86から90のいずれか1項に記載の検出器。
92.検出器は変動周期で検知要素をリセットするように構成されている、条項86から90のいずれか1項に記載の検出器。
93.検出器は所定の条件に基づいて検知要素のアレイの全ての検知要素をリセットするように構成され、各検知要素からのデータはリセット前に記憶される、条項60から85のいずれか1項に記載の検出器。
94.所定の条件は、検知要素のアレイのうち少なくとも第1の割合の検知要素が少なくとも1つの荷電粒子を受け取るという条件を含む、条項93に記載の検出器。
95.所定の条件は、検知要素のアレイのうち少なくとも第1の割合の検知要素でオーバーフローが生じるという条件を含む、条項93又は条項94に記載の検出器。
96.検出器は、所定の条件に基づいて検知要素のアレイのある領域の全ての検知要素をリセットするように構成され、領域内の各検知要素からのデータはリセット前に記憶される、条項60から85のいずれか1項に記載の検出器。
97.所定の条件は、検知要素のアレイのうち少なくとも第1の割合の検知要素が少なくとも1つの荷電粒子を受け取るという条件を含む、条項96に記載の検出器。
98.所定の条件は、検知要素のアレイのうち少なくとも第1の割合の検知要素でオーバーフローが生じるという条件を含む、条項96又は条項97に記載の検出器。
99.検出器は、所定の条件に基づいて検知要素のアレイの各検知要素を個別にリセットするように構成され、各検知要素からのデータはリセット前に記憶される、条項60から85のいずれか1項に記載の検出器。
100.所定の条件は、検知要素のアレイのうち第1の検知要素が少なくとも1つの荷電粒子を受け取るという条件を含む、条項99に記載の検出器。
101.所定の条件は、検知要素のアレイのうち第1の検知要素でオーバーフローが生じるという条件を含む、条項99又は条項100に記載の検出器。
102.数は整数である、条項60から101のいずれかに記載の検出器。
103.半導体基板はPINダイオードを含む、条項60から102のいずれかに記載の検出器。
104.検知要素のアレイはセグメント化ダイオードを含み、セグメント化ダイオードはPIN又はNIPダイオードを含む、条項60から103のいずれか1項に記載の検出器。
105.検出器の検知要素のアレイのうち複数の検知要素からの出力を処理することと、
検出器に入射する荷電粒子の数を計数することであって、アレイの検知要素上での荷電粒子到達イベントに応答してカウンタを増分することを含む、計数することと、
荷電粒子到達イベントのタイムスタンプを決定することと、
を含む、方法。
106.タイムスタンプは検出器のグローバルシステム時間に基づき、グローバルシステム時間はアレイ内の各検知要素に共通している、条項105に記載の方法。
107.タイムスタンプは検知要素のローカル時間に基づき、ローカル時間はアレイ内の他の検知要素から独立している、条項106に記載の方法。
108.タイムスタンプは、荷電粒子ビーム装置の一次荷電粒子ビームによってスキャンされるサンプルの表面上の位置に関連付けられている、条項105から107のいずれか1項に記載の方法。
109.タイムスタンプはSEM画像の画素に関連付けられている、条項108に記載の方法。
110.アレイの複数の検知要素の計数値を計数値のタイムスタンプに基づいて組み合わせることを更に含む、条項105から109のいずれか1項に記載の方法。
111.計数することは、検知要素における最大で1つだけの荷電粒子到達イベントを、1つの荷電粒子到達イベントのエネルギを判別することなく計数し、その後リセットすることを含む、条項105から110のいずれか1項に記載の方法。
112.計数することは、荷電粒子到達イベントの数を、荷電粒子到達イベントのエネルギを判別することなく計数し、検知要素においてオーバーフローが生じた場合にオーバーフローフラグを設定することを含む、条項105から110のいずれか1項に記載の方法。
113.荷電粒子到達イベントの数は1を含む、条項112に記載の方法。
114.計数することは、第1のエネルギ範囲の検知要素における最大で1つまでの荷電粒子到達イベントを計数し、その後リセットすることを含む、条項105から110のいずれか1項に記載の方法。
115.計数することは、第1のエネルギ範囲の荷電粒子到達イベントの数を計数し、検知要素においてオーバーフローが生じた場合にオーバーフローフラグを設定することを含む、条項105からら111のいずれか1項に記載の方法。
116.荷電粒子到達イベントの数はゼロ又は1を含む、条項115に記載の方法。
117.検知要素からの出力信号を基準値と比較し、出力信号が基準値よりも大きい場合にカウンタを増分することを更に含む、条項105から116のいずれか1項に記載の方法。
118.検知要素からの出力信号を、下限値及び上限値を含む基準範囲と比較することと、
基準範囲に対する出力信号に基づく判定に応答してカウンタを増分することと、
を更に含む、条項105から116のいずれか1項に記載の方法。
119.出力信号が基準範囲に含まれる基準値よりも小さい場合にカウンタを増分することを更に含む、条項118に記載の方法。
120.出力信号が基準範囲に含まれる基準値よりも大きい場合にカウンタを増分することを更に含む、条項118に記載の方法。
121.出力信号が下限値よりも大きく、かつ上限値よりも小さい場合にカウンタを増分することを更に含む、条項118に記載の方法。
122.検知要素が受け取ったエネルギの量を検出することによって検知要素上での荷電粒子の到達イベントを検出することを更に含む、条項105から117のいずれか1項に記載の方法。
123.検知要素が受け取ったエネルギの量を基準と比較し、基準に基づいて判定を行った後にカウンタを増分することを更に含む、条項105から117のいずれか1項に記載の方法。
124.検知要素が受け取ったエネルギの量を基準と比較し、エネルギの量が基準値よりも大きい場合にカウンタを増分することを更に含む、条項105から117のいずれか1項に記載の方法。
125.検知要素が受け取ったエネルギの量を、上限及び下限を含む基準範囲と比較し、基準範囲に対するエネルギの量に基づく判定に応答してカウンタを増分することを更に含む、条項105から117のいずれか1項に記載の方法。
126.エネルギの量が基準範囲内に含まれる基準値よりも小さい場合にカウンタを増分することを更に含む、条項125に記載の方法。
127.エネルギの量が基準範囲内に含まれる基準値よりも大きい場合にカウンタを増分することを更に含む、条項125に記載の方法。
128.エネルギの量が下限よりも大きく、かつ上限よりも小さい場合にカウンタを増分することを更に含む、条項125に記載の方法。
129.検知要素のアレイの全ての検知要素を同時にリセットすることを更に含む、条項105から128のいずれか1項に記載の方法。
130.検知要素のアレイのある領域の全ての検知要素を同時にリセットすることを更に含む、条項105から128のいずれか1項に記載の方法。
131.検知要素のアレイの各検知要素を個別にリセットすることを更に含む、条項105から128のいずれか1項に記載の方法。
132.検知要素のアレイのうちいくつかの検知要素を同時にリセットすると共に検知要素のアレイのうちいくつかの検知要素を個別にリセットすることを更に含む、条項105から128のいずれか1項に記載の方法。
133.各検知要素からのデータをリセット前に記憶することを更に含む、条項129から132のいずれか1項に記載の方法。
134.固定周期で検知要素をリセットすることを更に含む、条項129から133のいずれか1項に記載の方法。
135.変動周期で検知要素をリセットすることを更に含む、条項129から133のいずれか1項に記載の方法。
136.所定の条件に基づいて検知要素のアレイの全ての検知要素をリセットし、各検知要素からのデータをリセット前に記憶することを更に含む、条項105から123のいずれか1項に記載の方法。
137.所定の条件は、検知要素のアレイのうち少なくとも第1の割合の検知要素が少なくとも1つの荷電粒子を受け取るという条件を含む、条項136に記載の方法。
138.所定の条件は、検知要素のアレイのうち少なくとも第1の割合の検知要素でオーバーフローが生じるという条件を含む、条項136又は条項137に記載の方法。
139.所定の条件に基づいて検知要素のアレイのある領域の全ての検知要素をリセットすることと、
領域内の各検知要素からのデータをリセット前に記憶することと、
を更に含む、条項105から123のいずれか1項に記載の方法。
140.所定の条件は、検知要素のアレイのうち少なくとも第1の割合の検知要素が少なくとも1つの荷電粒子を受け取るという条件を含む、条項139に記載の方法。
141.所定の条件は、検知要素のアレイのうち少なくとも第1の割合の検知要素でオーバーフローが生じるという条件を含む、条項139又は条項140に記載の方法。
142.所定の条件に基づいて検知要素のアレイの各検知要素を個別にリセットすることと、
各検知要素からのデータをリセット前に記憶することと、
を更に含む、条項105から123のいずれか1項に記載の方法。
143.所定の条件は、検知要素のアレイのうち第1の検知要素が少なくとも1つの荷電粒子を受け取るという条件を含む、条項142に記載の方法。
144.所定の条件は、検知要素のアレイのうち第1の検知要素でオーバーフローが生じるという条件を含む、条項142又は条項143に記載の方法。
145.数は整数である、条項105から144のいずれかに記載の方法。
146.検出器と、少なくとも1つのプロセッサを備えるコントローラと、命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体と、を備える荷電粒子ビーム装置であって、命令は、プロセッサによって実行された場合、
検出器の検知要素のアレイのうち複数の検知要素からの出力を処理することと、
検出器に入射する荷電粒子の数を計数することであって、アレイの検知要素上での荷電粒子到達イベントに応答してカウンタを増分することを含む、計数することと、
荷電粒子到達イベントのタイムスタンプを決定することと、
を装置に実行させる、荷電粒子ビーム装置。
147.荷電粒子ビーム装置のための検出器であって、
検知要素のアレイを備え、
検出器は、アレイの検知要素で1サンプリング周期に所定のミスカウント率以下で所定の数以下の荷電粒子を受け取るように構成されている、検出器。
148.所定の数は1である、条項147に記載の検出器。
149.所定の数は1よりも大きい、条項147に記載の検出器。
150.所定の数は1又は2である、条項147に記載の検出器。
151.サンプリング周期は検知要素に関連付けられた不感時間未満である、条項147から150のいずれか1項に記載の検出器。
152.アレイは複数の均一なサイズの検知要素を含む、条項147から151のいずれか1項に記載の検出器。
153.所定のミスカウント率は10%である、条項147から151のいずれか1項に記載の検出器。
154.サンプリング周期は、検知要素に接続されたマルチチャネル計数器の時間チャネル幅である、条項147から153のいずれか1項に記載の検出器。
155.検出器は、不感が検知要素に関連付けられた麻痺型不感時間を含まないように構成されている、条項151に記載の検出器。
156.荷電粒子ビーム装置のための検出器であって、
検知要素のアレイを含む半導体基板と、
検出器に入射する荷電粒子の数を計数するように構成された回路と、
を備える検出器。
157.回路は、サンプリング時間にアレイの検知要素で受け取った荷電粒子の数を決定するように構成されている、条項156に記載の検出器。
158.半導体基板は複数のセグメント化ダイオードを含む、条項156又は条項157に記載の検出器。
159.半導体基板は複数のセグメント化ダイオードの各々に接続された増幅器を含む、条項156に記載の検出器。
160.回路は複数の回路を含み、回路の各々はアレイの各検知要素に接続されている、条項156から159のいずれか1項に記載の検出器。
161.回路の各々は、増幅器と、イベントパルス検出器と、カウンタとを含む、条項160に記載の検出器。
162.回路の各々はシングルビットカウンタを含む、条項160に記載の検出器。
163.回路は、各サンプリング周期中に検出器に入射する荷電粒子の総数を決定するよう構成された合計ユニットを含む、条項156から162のいずれか1項に記載の検出器。
164.回路はイベントフラグ検出器及びオーバーフローフラグ検出器を含む、条項156から163のいずれか1項に記載の検出器。
165.回路はフロントエンドアナログ回路を含む、条項156から164のいずれか1項に記載の検出器。
166.フロントエンドアナログ回路は、電流バッファと、トランスインピーダンス増幅器、電荷増幅器、又は電荷移動増幅器のうち1つを含む増幅器と、を含む、条項165に記載の検出器。
167.荷電粒子装置のための検出器であって、
複数のセンサ要素であって、センサ要素の各々は、電子が対応するセンサ要素に衝突することに応答して対応するセンサ要素が発生する電流パルスに基づいて電子イベントを検出するように構成された対応する回路を有し、センサ要素の各々は、線形モードで動作するように構成されたダイオードを含む、複数のセンサ要素と、
所定の時間期間中に複数のセンサ要素によって検出される電子イベントの数を決定するように構成された第2の回路と、
を備える、検出器。
168.ダイオードは線形モードで動作するPINダイオード又はアバランシェダイオードである、条項167に記載の検出器。
169.線形モードで動作するアバランシェダイオードは低利得アバランシェダイオードである、条項168に記載の検出器。
170.線形モードで動作するように構成されたダイオードは、ガイガーモード又は光子計数モードでの動作を回避するように構成されたダイオードを含む、条項167に記載の検出器。
171.線形モードで動作するように構成されたダイオードは、衝突する電子がダイオードに入射した場合の衝突する電子の運動エネルギに実質的に比例する大きさ分布で電流パルスを発生するように構成されたダイオードを含む、条項167に記載の検出器。
172.対応する回路は、電流パルスの第1の特徴を決定すると共に第1の特徴に基づいて入来電子の第2の特徴を決定する回路を含む、条項171に記載の検出器。
173.第1の特徴は電流パルスの大きさであり、第2の特徴は、電子が、二次電子、後方散乱電子、又はノイズ源からの電子のうちいずれか1つであるという判定である、条項172に記載の検出器。
174.電子がノイズ源からのものであるという判定は電流パルスの大きさが第1の閾値よりも小さいことに基づき、電子が二次電子であるという判定は電流パルスの大きさが第1の閾値よりも大きく第2の閾値よりも小さいことに基づき、電子が後方散乱電子であるという判定は電流パルスの大きさが第2の閾値よりも大きいことに基づく、条項173に記載の検出器。
175.第2の特徴は、電子に対応する電子イベントが、所定の時間期間中に複数の電子が対応するセンサ要素に衝突することから生じる複数の電子イベントのうち1つであるという判定である、条項172に記載の検出器。
176.対応するセンサ要素によって発生される電流パルスは、複数の電子が対応するセンサ要素に衝突したことに応答したものである、条項175に記載の検出器。
177.電子計数検出器におけるミスカウントを低減する方法であって、
2つ以上の隣接した検知要素において実質的に同時に電荷を検出することと、
隣接した検知要素の各々で検出された電荷を1つ以上の基準値と比較することと、
比較に基づいて、電荷が、1つの電子が検知要素のうち1つに衝突したことから生じたものであるか、又は複数の電子が2つ以上の検知要素に衝突したことから生じたものであるかを判定することと、
を含む方法。
178.検知要素のアレイに含まれる検知要素は、入来する電子が同時に衝突する検知要素が4つ以下であるようなサイズを有する、条項177に記載の方法。
179.サイズは、検知要素のどの寸法も検知要素の材料における入来する電子の侵入深さ未満でないように構成されている、条項178に記載の方法。
[00416] いくつかの実施形態において、検出器は、荷電粒子ビームシステムを制御するコントローラと通信を行うことができる。コントローラは、荷電粒子源を制御して荷電粒子ビームを発生させることや偏向器を制御して荷電粒子ビームをスキャンさせること等、様々な機能を実行するよう荷電粒子ビームシステムのコンポーネントに命令できる。また、コントローラは、検出器のサンプリングレートの調整、検知要素のリセット、又は画像処理の実行等、様々な他の機能も実行できる。コントローラは、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、他のタイプのコンピュータ可読メモリ等の記憶媒体であるストレージを含み得る。ストレージは、元の画像としてのスキャンされた原画像データ、及び後処理後の画像をセーブするために使用できる。コントローラ109のプロセッサが、荷電粒子ビーム検出、サンプリング周期決定、画像処理、又は本開示に従った他の機能及び方法を実行するための命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体を提供することができる。非一時的媒体の一般的な形態は例えば、フロッピーディスク、可撓性ディスク、ハードディスク、固体ドライブ、磁気テープ、又は他の任意の磁気データ記憶媒体、CD-ROM、他のいずれかの光学データ記憶媒体、ホールのパターンを有する任意の物理媒体、ROM、PROM、及びEPROM、FLASH-EPROM、又は他の任意のフラッシュメモリ、NVRAM、キャッシュ、レジスタ、他の任意のメモリチップもしくはカートリッジ、及びこれらをネットワーク化したものを含む。
[00417] 図面におけるブロック図は、本開示の種々の例示的な実施形態に従ったシステム、方法、及びコンピュータハードウェア/ソフトウェア製品の可能な実施のアーキテクチャ、機能性、及び動作を例示することができる。この点で、概略図の各ブロックは、電子回路等のハードウェアを用いて実施され得る特定の数学的又は論理的な動作を表すことができる。また、ブロックは、指定された論理機能を実施するための1つ以上の実行可能命令を含むコードのモジュール、セグメント、又は部分を表すことができる。いくつかの代替的な実施形態において、ブロックに含まれる機能は図に示されたものとは異なる順序で発生し得ることは理解されよう。例えば、関連する機能性に応じて、連続して示されている2つのブロックが実質的に同時に実行もしくは実施されるか、又は、2つのブロックが逆の順序で実行されることもあり得る。また、いくつかのブロックは省略されることもある。更に、ブロック図の各ブロック、及びブロックの組み合わせは、指定された機能もしくは動作を実行する特殊用途ハードウェアベースのシステムによって、又は、特殊用途ハードウェアとコンピュータ命令の組み合わせによって実施され得ることは理解されよう。
[00418] 本発明は、上述し添付図面で示した構成に厳密に限定されず、その範囲から逸脱することなく様々な変形及び変更が可能であることは認められよう。例えば、特定の例示的な実施形態を参照してPINダイオードについて検討したが、NIPダイオードのような他のタイプのダイオードも同様に適用され得る。更に、入射エネルギを受け取ったことに応答して測定可能信号を発生できる他のタイプのデバイスも検出器において適用することができる。
[00419] 別々の図に示された要素を組み合わせてもよいことは理解されよう。例えば、図19Aの検出システム901は、図19Bの検出システム902のようにエネルギ貯蔵ユニットを更に含むことができる。また、検出システム902は、検出システム901の一部として示された要素を含むことができる。
[00420] 更に、いくつかの実施形態を参照して走査電子顕微鏡について検討したが、他のタイプのシステムも適用可能である。例えば、透過電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscopy)、走査透過電子顕微鏡(STEM:scanning transmission electron microscopy)、又は構造化照明顕微鏡(SIM:structured illumination microscopy)において、検出器を用いることができる。