以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るハイブリッドシステムを表すブロック図である。
本実施形態に係るハイブリッドシステム2Aは、例えば建設機械、農業機械、芝刈り機、発電機、コンプレッサ、ポンプなどの産業用機械に搭載される。図1に表したように、本実施形態に係るハイブリッドシステム2Aが搭載される産業用機械は、アクセルペダル65を有し、エンジン3の回転数がアクセルペダル65により可変とされた機械である。ハイブリッドシステム2Aは、エンジン3と、モータジェネレータ41と、バッテリパック42と、DC/DCコンバータ43と、制御部5と、アクセル開度センサ61と、を備える。
エンジン3は、内燃機関であって、例えば産業用ディーゼルエンジン、産業用ガソリンエンジン、産業用ガスエンジンなどの産業用エンジンである。エンジン3は、例えばターボチャージャ付きの過給式の高出力な3気筒エンジンや4気筒エンジン等の多気筒エンジンである。図1に表したように、エンジン3は、回転センサ31と、DOC(Diesel Oxidation Catalyst:ディーゼル酸化触媒)32と、DPF(Diesel Particulate Filter:ディーゼル微粒子捕集フィルタ)33と、を有する。但し、エンジン3は、図1に表した構成に限られず、DOCやDPFを備えないものであってもよい。また、エンジン3は、燃料噴射が電子制御化されたものであればよく、コモンレールに限られず、ガバナを電子制御化したものであってもよい。
回転センサ31は、エンジン3の回転数を検出し、エンジン3の回転数に関する電圧信号をCAN(Controller Area Network)通信ラインにより制御部5に送信する。制御部5は、受信したエンジン3の回転数に関する電圧信号を回転数に変換する。エンジン3で発生した動力は、産業用機械の油圧ポンプ、トランスミッション(T/M)などの動力取り出し部品71に伝達される。
モータジェネレータ41は、交流発電機であり、Vベルトなどの伝動部材34を介してエンジン3に接続されている。モータジェネレータ41は、エンジン3で発生した動力であって伝動部材34を介して伝達された動力により駆動し、電気を発生させる。また、モータジェネレータ41は、例えば、過負荷によりエンジンの回転数が低下する場面や、急加速応答性が求められる場面において、バッテリパック42から供給された電力により回転力を発生し、伝動部材34を介してエンジン3に回転力を伝達してエンジン3のトルクのアシストあるいはサポートを行う。この詳細については、後述する。
バッテリパック42は、例えばリチウムイオン蓄電池であり、モータジェネレータ41と電気的に接続されている。本実施形態のバッテリパック42は、本発明の「バッテリ」の一例である。バッテリパック42は、例えば48V系統ラインによりモータジェネレータ41と電気的に接続されており、モータジェネレータ41により発生した電気を蓄える。つまり、バッテリパック42は、モータジェネレータ41の発電によって充電を行う。また、バッテリパック42は、蓄えた電気をモータジェネレータ41に供給する。つまり、バッテリパック42は、モータジェネレータ41が電力を必要とする場面において放電を行い、モータジェネレータ41に電力を供給する。
DC/DCコンバータ43は、例えば48Vや24Vといった高電圧の系統ラインによりバッテリパック42と電気的に接続されており、バッテリパック42から放電された高電圧の直流を12Vといった低電圧の直流に変換する。また、DC/DCコンバータ43は、例えば低電圧の系統ラインにより鉛バッテリ72と電気的に接続されている。DC/DCコンバータ43により高電圧の直流から低電圧の直流に変換された電気は、鉛バッテリ72に蓄えられる。鉛バッテリ72に蓄えられた電気は、産業用機械のライト、電気ヒータ、ワイパーなどの電気負荷73に供給される。
前述したように、本実施形態に係るハイブリッドシステム2Aが搭載される産業用機械は、アクセルペダル65を有する。アクセル開度センサ61は、アクセルペダル65の入力すなわちアクセル開度を検出し、アクセル開度に関する信号をCAN通信ラインにより制御部5に送信する。
制御部5は、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニットあるいはEngine Control Unit:エンジン制御ユニット)と、HCU(Hybrid Control Unit:ハイブリッド制御ユニット)と、を含み、ハイブリッドシステム2Aを管理する。HCUは、ECUと一体として設けられていてもよく、ECUとは別体として設けられていてもよい。
制御部5は、各種情報を取得したり各種信号を受信したりして演算を行うとともに、エンジン3、モータジェネレータ41およびバッテリパック42などの部品の動作を制御する制御信号を生成し、CANを含む電気通信ラインにより各部品に送信する。例えば、制御部5は、エンジン3の燃料噴射量を算出したり、エンジン3の目標空気量を算出したり、ハイブリッドシステム2Aの動作モードを決定したり、エンジン3の制御パラメータを決定したりして、電気通信ラインにより各部品に制御信号を送信して各部品に対して駆動指示を行う。
ハイブリッドシステム2Aの動作モードとしては、例えば、トルクスプリット動作、トルクアシスト動作、および回生動作などが挙げられる。トルクスプリット動作は、エンジン3のトルクと、モータジェネレータ41のトルクと、の分配を行い、バッテリパック42の充電率を目標値に近づける動作である。トルクアシスト動作は、モータジェネレータ41がエンジン3のトルクのアシストあるいはサポートを行う動作である。回生動作は、エンジン3の燃料噴射を止め、モータジェネレータ41によりバッテリパック42の充電を行う動作である。ハイブリッドシステム2Aの動作モードの詳細については、後述する。
図2は、本発明の第2実施形態に係るハイブリッドシステムを表すブロック図である。
なお、第2実施形態に係るハイブリッドシステム2Bの構成要素が、図1に関して前述した第1実施形態に係るハイブリッドシステム2Aの構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
本実施形態に係るハイブリッドシステム2Bは、図1に関して前述したハイブリッドシステム2Aと同様に、例えば建設機械、農業機械、芝刈り機、発電機、コンプレッサ、ポンプなどの産業用機械に搭載される。図2に表したように、本実施形態に係るハイブリッドシステム2Bが搭載される産業用機械は、アクセルペダル65の代わりにハンドアクセル62を有し、エンジン3の回転数がハンドアクセル62により一定に設定される機械である。
ハイブリッドシステム2Bが搭載される産業用機械の操作者は、一定のエンジン回転数で作業を行うために、ハンドアクセル62により一定のエンジン回転数の指示を行う。ハンドアクセル62は、例えばダイヤルスイッチであり、ハンドアクセル62に対する操作者の操作に応じて操作者により入力されたエンジン3の一定の回転数を受信し、エンジン3の一定の回転数を指示する回転数信号をCAN通信ラインにより制御部5に送信する。本実施形態のハンドアクセル62は、本発明の「回転数指示部」の一例である。なお、本発明の「回転数指示部」は、ハンドアクセル62だけに限定されるわけではない。
その他の構成要素は、図1に関して前述した第1実施形態に係るハイブリッドシステム2Aの構成要素と同様である。
以下の説明では、説明の便宜上、第1実施形態に係るハイブリッドシステム2Aと、第2実施形態に係るハイブリッドシステム2Bと、の両方を含む概念として「ハイブリッドシステム2」と称することがある。図1および図2に関して説明したように、本実施形態に係るハイブリッドシステム2は、アクセルペダル65を備えた機種の産業用機械に搭載されることもあるし、アクセルペダル65を備えていない機種(言い換えればハンドアクセル62を備えた機種)の産業用機械に搭載されることもある。また、本実施形態に係るハイブリッドシステム2は、アクセルペダル65およびハンドアクセル62の両方を備えた機種の産業用機械に搭載されてもよい。
次に、本実施形態の制御部5を、図面を参照してさらに説明する。
図3は、本実施形態に係るハイブリッドシステムの要部構成を表すブロック図である。
本実施形態の制御部5は、演算部51と、記憶部52と、通信部53と、を有する。演算部51は、記憶部52に記憶されたプログラム521を読み出して種々の演算や処理を実行する。記憶部52は、演算部51によって実行されるプログラム521と、後述するシステム要求トルクおよびエンジン要求トルクを算出する際に使用されるマップデータ522と、を格納(記憶)する。マップデータ522の詳細については、後述する。なお、記憶部52に格納されるデータは、プログラム521およびマップデータ522に限定されるわけではない。記憶部52としては、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などが挙げられる。なお、プログラム521は、記憶部52に格納されていることには限定されず、演算部51が読み取り可能な記憶媒体に予め格納され頒布されてもよく、あるいはネットワークを介して制御部5にダウンロードされてもよい。また、記憶部52は、制御部5に接続された外部の記憶装置であってもよい。
演算部51は、燃料噴射量算出部511と、システム要求トルク算出部512と、エンジン要求トルク算出部513と、モータ要求トルク算出部514と、動作モード決定部515と、エンジン制御パラメータ決定部516と、を有する。なお、演算部51は、燃料噴射量算出部511の代わりに、あるいは燃料噴射量算出部511とともに、目標空気量算出部(図示せず)を有していてもよい。燃料噴射量算出部511、システム要求トルク算出部512、エンジン要求トルク算出部513、モータ要求トルク算出部514、動作モード決定部515、エンジン制御パラメータ決定部516、および目標空気量算出部は、記憶部52に格納されているプログラム521を演算部51が実行することにより実現される。なお、燃料噴射量算出部511、システム要求トルク算出部512、エンジン要求トルク算出部513、モータ要求トルク算出部514、動作モード決定部515、エンジン制御パラメータ決定部516、および目標空気量算出部は、ハードウェアによって実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
演算部51は、アクセル開度センサ61により検出されたアクセル開度と、ハンドアクセル62により送信された回転数信号と、の少なくともいずれかに基づいてハイブリッドシステム2としてのシステム要求トルクを決定するためのトルク決定因子を算出する。トルク決定因子は、エンジン3の燃料噴射量と、エンジン3の目標空気量と、を含む。言い換えれば、本実施形態の「燃料噴射量」および「目標空気量」は、本発明の「トルク決定因子」の例である。つまり、演算部51は、アクセル開度センサ61により検出されたアクセル開度と、ハンドアクセル62により送信された回転数信号と、の少なくともいずれかに基づいて、エンジン3の燃料噴射量を算出してもよいし、エンジン3の目標空気量を算出してもよい。以下の説明では、「トルク決定因子」が「燃料噴射量」である場合を例に挙げる。
燃料噴射量算出部511は、アクセル開度センサ61により検出されたアクセル開度と、ハンドアクセル62により送信された回転数信号と、の少なくともいずれかに基づいてエンジン3の燃料噴射量を算出する。つまり、燃料噴射量算出部511は、アクセル開度センサ61により検出されたアクセル開度に基づいてエンジン3の燃料噴射量を算出することもできるし、ハンドアクセル62により送信された回転数信号に基づいてエンジン3の燃料噴射量を算出することもできる。あるいは、燃料噴射量算出部511は、アクセル開度センサ61により検出されたアクセル開度と、ハンドアクセル62により送信された回転数信号と、の両方に基づいてエンジン3の燃料噴射量を算出することもできる。また、燃料噴射量算出部511は、動作モード決定部515により決定されたハイブリッドシステム2の動作モードに基づいてエンジン3の燃料噴射量を算出する。前述した通り、本実施形態のエンジン3の燃料噴射量は、本発明の「トルク決定因子」の一例である。
システム要求トルク算出部512は、ハイブリッドシステム2としてのシステム要求トルクを算出する。具体的には、システム要求トルク算出部512は、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量と、に基づいてシステム要求トルクを算出する。例えば、システム要求トルク算出部512は、エンジン3の回転数と、エンジン3の燃料噴射量と、エンジン3のトルクと、の関係を示すマップデータ522に基づいてシステム要求トルクを算出する。なお、システム要求トルク算出部512は、マップデータ522に基づいてシステム要求トルクを算出することには限定されず、例えば、エンジン3の回転数と、エンジン3の燃料噴射量と、エンジン3のトルクと、の関係を示す数式やグラフなどに基づいてシステム要求トルクを算出してもよい。
エンジン要求トルク算出部513は、エンジン3に対するエンジン要求トルクを算出する。具体的には、エンジン要求トルク算出部513は、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量と、に基づいてエンジン要求トルクを算出する。例えば、エンジン要求トルク算出部513は、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量を補正し、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、補正後の燃料噴射量と、に基づいてエンジン要求トルクを算出する。例えば、エンジン要求トルク算出部513は、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量を補正した後、エンジン3の回転数と、エンジン3の燃料噴射量と、エンジン3の回転数と、の関係を示すマップデータ522に基づいてエンジン要求トルクを算出する。なお、エンジン要求トルク算出部513は、マップデータ522に基づいてエンジン要求トルクを算出することには限定されず、例えば、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量を補正した後、エンジン3の回転数と、エンジン3の燃料噴射量と、エンジン3のトルクと、の関係を示す数式やグラフなどに基づいてエンジン要求トルクを算出してもよい。
モータ要求トルク算出部514は、モータジェネレータ41に対するモータ要求トルクを算出する。具体的には、モータ要求トルク算出部514は、動作モード決定部515により決定されたハイブリッドシステム2の動作モードに基づいてモータ要求トルクを算出する。より具体的には、モータ要求トルク算出部514は、システム要求トルク算出部512により算出されたシステム要求トルクと、エンジン要求トルク算出部513により算出されたエンジン要求トルクと、バッテリパック42の充電率(SOC:State Of Charge)と、に基づいてモータ要求トルクを算出する。
動作モード決定部515は、ハイブリッドシステム2の動作モードを決定する。すなわち、動作モード決定部515は、ハイブリッドシステム2の動作モードとして、回生動作、トルクアシスト動作、およびトルクスプリット動作のいずれの動作モードを実行するかを決定する。具体的には、動作モード決定部515は、システム要求トルク算出部512により算出されたシステム要求トルクと、エンジン要求トルク算出部513により算出されたエンジン要求トルクと、バッテリパック42の充電率と、に基づいてハイブリッドシステム2の動作モードを決定する。あるいは、動作モード決定部515は、システム要求トルク算出部512により算出されたシステム要求トルクと、エンジン要求トルク算出部513により算出されたエンジン要求トルクと、バッテリパック42の充電率と、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、に基づいてハイブリッドシステム2の動作モードを決定する。
エンジン制御パラメータ決定部516は、動作モード決定部515により決定されたハイブリッドシステム2の動作モードに基づいて算出されたエンジン3の燃料噴射量と、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、に基づいて、エンジン3の制御パラメータを決定する。言い換えれば、エンジン制御パラメータ決定部516は、動作モード決定部515により決定されたハイブリッドシステム2の動作モードに基づいて書き戻された(すなわち変換された)燃料噴射量と、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、に基づいて、エンジン3の制御パラメータを決定する。エンジン3の制御パラメータとしては、例えば、エンジン3の噴射パターン、エンジン3の噴射時期、およびEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気ガス再循環)バルブ開度などが挙げられる。
通信部53は、回転センサ31を含むエンジン3、アクセル開度センサ61およびハンドアクセル62の少なくともいずれか、モータジェネレータ41、バッテリパック42、およびDC/DCコンバータ43と電気通信ラインにより通信を行い、各種情報や各種信号の送受信を行う。
ここで、図1および図2に関して前述したように、建設機械、農業機械、および芝刈り機、発電機、コンプレッサ、ポンプなどのような産業用機械においては、アクセルの構成がアプリケーション毎に異なる。例えば、アクセルペダル65を備えていない機種の産業用機械が存在する。アクセルペダル65を備えていない機種の産業用機械では、操作者は、ハンドアクセル62により一定のエンジン回転数の指示を行う。また、産業用機械においては、エンジン3以外のコンポーネントがECUを有していることは比較的少なく、エンジン3以外のコンポーネントの要求トルクは不明であることが比較的多い。このように、産業用機械に搭載されるハイブリッドシステム2では、自動車に搭載されるハイブリッドシステムと比較して、ハイブリッドシステム2としてのシステム要求トルクを算出する際に用いることができる入力因子が限られている。
これに対して、本実施形態に係るハイブリッドシステム2の制御部5(具体的には燃料噴射量算出部511)は、アクセル開度センサ61により検出されたアクセル開度と、ハンドアクセル62により送信された回転数信号と、の少なくともいずれかに基づいてエンジン3の燃料噴射量を算出する。そして、制御部5(具体的にはシステム要求トルク算出部512)は、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、燃料噴射量算出部511により算出されたエンジン3の燃料噴射量と、に基づいてハイブリッドシステム2としてのシステム要求トルクを算出する。また、制御部5(具体的にはエンジン要求トルク算出部513)は、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量と、に基づいてエンジン要求トルクを算出する。例えば、エンジン要求トルク算出部513は、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量を補正し、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、補正後の燃料噴射量と、に基づいてエンジン要求トルクを算出する。
本実施形態に係るハイブリッドシステム2によれば、ハイブリッドシステム2が例えばアクセルペダル65を備えていない産業用機械に搭載される場合であっても、あるいは制御部5がエンジン3以外のコンポーネントに設置されていない場合であっても、本実施形態の制御部5は、より適正なシステム要求トルクおよびエンジン要求トルクを算出することができる。これにより、本実施形態に係るハイブリッドシステム2は、システム要求トルクを算出する際に用いることができる入力因子が限られている中で、より適正なシステム要求トルクおよびエンジン要求トルクを算出することができる。また、制御部5(具体的には動作モード決定部515)は、システム要求トルクとエンジン要求トルクとの関係に基づいて、より適正な動作モードを決定することができる。これにより、本実施形態に係るハイブリッドシステム2は、動作モードを決定する際に用いることができる入力因子が限られている中で、より適正な動作モードを決定することができる。
また、制御部5(具体的には動作モード決定部515)は、システム要求トルクとエンジン要求トルクとの関係だけではなく、モータジェネレータ41に接続されたバッテリパック42の充電率にさらに基づいて動作モードを決定する。そのため、ハイブリッドシステム2は、動作モードを決定する際に用いることができる入力因子が限られている中で、より適正な動作モードを決定することができる。
次に、本実施形態に係るハイブリッドシステムの動作を、図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係るハイブリッドシステムの動作の概要を表すフローチャートである。
まず、ステップS11において、燃料噴射量算出部511は、アクセル開度センサ61により検出されたアクセル開度と、ハンドアクセル62により送信された回転数信号と、の少なくともいずれかに基づいてエンジン3の燃料噴射量を算出する。ステップS11において算出された燃料噴射量は、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)の排出が過多になることを回避したり、エンジン3の出力が制限値を超えることを回避したりするための補正が行われる前の燃料噴射量である。そして、システム要求トルク算出部512は、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量(すなわち補正前の燃料噴射量)と、に基づいてシステム要求トルクを算出する。
続いて、ステップS12において、エンジン要求トルク算出部513は、排気ガスに含まれる粒子状物質の排出が過多になることを回避したり、エンジン3の出力が制限値を超えることを回避したりするために、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量を補正し、最大の燃料噴射量を最終的に決定する。そして、エンジン要求トルク算出部513は、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、補正後の燃料噴射量と、に基づいてエンジン要求トルクを算出する。
続いて、ステップS13において、動作モード決定部515は、システム要求トルク算出部512により算出されたシステム要求トルクと、エンジン要求トルク算出部513により算出されたエンジン要求トルクと、に基づいてハイブリッドシステム2の動作モード(回生動作、トルクアシスト動作、トルクスプリット動作)を決定する。あるいは、動作モード決定部515は、システム要求トルク算出部512により算出されたシステム要求トルクと、エンジン要求トルク算出部513により算出されたエンジン要求トルクと、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、に基づいてハイブリッドシステム2の動作モードを決定する。また、動作モード決定部515は、バッテリパック42の充電率(SOC)にさらに基づいてハイブリッドシステム2の動作モードを決定することにより、バッテリパック42の充電率を調整する。例えば、ステップS13における演算および処理は、HCUにより実行される。
続いて、ステップS14において、燃料噴射量算出部511は、動作モード決定部515により決定されたハイブリッドシステム2の動作モードに基づいてエンジン3の燃料噴射量を算出する。すなわち、燃料噴射量算出部511は、動作モード決定部515により決定されたハイブリッドシステム2の動作モードに基づいてエンジン3の燃料噴射量の書き戻し(すなわち変換)を実行する。
また、ステップS15において、モータ要求トルク算出部514は、動作モード決定部515により決定されたハイブリッドシステム2の動作モードに基づいてモータ要求トルクを算出する。そして、制御部5は、モータ要求トルク算出部514により算出されたモータ要求トルクに関する信号をモータジェネレータ41に送信し、モータジェネレータ41に対して指示を行う。
続いて、ステップS16において、エンジン制御パラメータ決定部516は、燃料噴射量算出部511により書き戻された燃料噴射量と、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、に基づいて、エンジン3の制御パラメータを決定する。
続いて、ステップS17において、制御部5は、エンジン制御パラメータ決定部516により決定された制御パラメータに関する信号を送信し、各デバイスへの駆動指示を行う。
本実施形態に係るハイブリッドシステム2によれば、制御部5は、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量を補正し、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、補正後の燃料噴射量と、に基づいてエンジン要求トルクを算出する。これにより、排気ガスに含まれる粒子状物質を低減しつつ、例えば、過負荷によりエンジン3の回転数が低下する場面や、急加速応答性が求められる場面において、トルクアシスト動作を実行することができる。
図5および図6は、本実施形態に係るハイブリッドシステムの動作の具体例を表すフローチャートである。
図7は、本実施形態のマップデータを例示する表である。
図5に表したように、まず、ステップS21において、制御部5は、エラー発生がハイブリッドシステム2にあるか否かを判断する。エラー発生がハイブリッドシステム2にある場合には(ステップS21:YES)、制御部5は、ハイブリッドシステム2の動作を終了する。
エラー発生がハイブリッドシステム2にない場合には(ステップS21:NO)、ステップS23において、燃料噴射量算出部511は、アクセル開度センサ61により検出されたアクセル開度と、ハンドアクセル62により送信された回転数信号と、の少なくともいずれかに基づいてエンジン3の燃料噴射量を算出する。そして、システム要求トルク算出部512は、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量(すなわち補正前の燃料噴射量)と、に基づいてシステム要求トルクを算出する。また、エンジン要求トルク算出部513は、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量を補正し、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、補正後の燃料噴射量と、に基づいてエンジン要求トルクを算出する。「補正前の燃料噴射量」および「補正後の燃料噴射量」は、図4に関して前述した通りである。本実施形態の制御部5は、記憶部52に予め記憶されたマップデータ522に基づいてシステム要求トルクおよびエンジン要求トルクを算出する。
すなわち、例えば図7に表したマップデータ522が、記憶部52に格納(記憶)されている。図7に例示したマップデータ522において、横軸はエンジン3の回転数を表し、縦軸はエンジン3の燃料噴射量を表している。また、図7に例示したマップデータ522において、横軸(エンジン回転数)と縦軸(燃料噴射量)とが互いに交差した部分は、エンジン3のトルクを表している。つまり、図7に例示したマップデータ522は、エンジン3の回転数と、エンジン3の燃料噴射量と、エンジン3のトルクと、の関係を示している。
横軸において、相対的に右側は、エンジン3の回転数が相対的に高い側であり、相対的に左側は、エンジン3の回転数が相対的に低い側である。また、縦軸において、相対的に下側は、エンジン3の燃料噴射量が相対的に多い側であり、相対的に上側は、エンジン3の燃料噴射量が相対的に少ない側である。
本実施形態の説明では、図7に表したように、燃料噴射量算出部511が、アクセル開度センサ61により検出されたアクセル開度と、ハンドアクセル62により送信された回転数信号と、の少なくともいずれかに基づいてエンジン3の燃料噴射量Q8を算出した場合を例に挙げる。燃料噴射量Q8は、「補正前の燃料噴射量」の一例である。また、本実施形態の説明では、図7に表したように、回転センサ31が、エンジン3の回転数R3を検出した場合を例に挙げる。
この場合において、システム要求トルク算出部512は、エンジン3の回転数R3と、補正前の燃料噴射量Q8と、に基づいてシステム要求トルクT38を算出する。続いて、エンジン要求トルク算出部513は、排気ガスに含まれる粒子状物質の排出が過多になることを回避したり、エンジン3の出力が制限値を超えることを回避したりするために、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量Q8を補正し、最大の燃料噴射量Q5を最終的に決定する。燃料噴射量Q5は、「補正後の燃料噴射量」の一例である。続いて、エンジン要求トルク算出部513は、エンジン3の回転数R3と、補正後の燃料噴射量Q5と、に基づいてエンジン要求トルクT35を算出する。このようにして、本実施形態の制御部5は、記憶部52に予め記憶されたマップデータ522に基づいてシステム要求トルクT38およびエンジン要求トルクT35を算出する。
図5に表したように、ステップS23に続くステップS24において、制御部5は、システム要求トルクT38が閾値Th1よりも小さく、かつ、バッテリパック42の充電率が閾値Th2よりも小さいか否かを判断する。本実施形態の閾値Th1は、本発明の「第1閾値」の一例である。本実施形態の閾値Th2は、本発明の「第2閾値」の一例である。
ステップS24において、「システム要求トルクT38<閾値Th1」および「バッテリパック42の充電率<閾値Th2」の全ての条件が満たされる場合には(ステップS24:YES)、ステップS25において、動作モード決定部515は、ハイブリッドシステム2の動作モードとして回生動作を決定し、回生動作を実行する。
例えば、ハイブリッドシステム2が搭載された産業用機械がアクセルオフの状態で坂道を下る場面など、「システム要求トルクT38<閾値Th1」および「バッテリパック42の充電率<閾値Th2」の全ての条件が満たされる場面では、ステップS25において、動作モード決定部515は、ハイブリッドシステム2の動作モードとして回生動作を決定する。
そして、ステップS25において、燃料噴射量算出部511は、動作モード決定部515により決定されたハイブリッドシステム2の動作モード(ステップS25では回生動作)に基づいてエンジン3の燃料噴射量を算出する。具体的には、燃料噴射量算出部511は、エンジン3の燃料噴射量を零に設定する。言い換えれば、エンジン要求トルク算出部513は、エンジン要求トルクを零に設定する。また、ステップS25において、モータ要求トルク算出部514は、動作モード決定部515により決定されたハイブリッドシステム2の動作モード(ステップS25では回生動作)に基づいてモータ要求トルクを算出する。具体的には、モータ要求トルク算出部514は、モータジェネレータ41によりバッテリパック42の充電を行うためのモータ要求トルクを算出する。すなわち、モータ要求トルク算出部514は、モータ要求トルクを零に設定する。
一方で、ステップS24において、「システム要求トルクT38<閾値Th1」および「バッテリパック42の充電率<閾値Th2」の少なくともいずれかの条件が満たされない場合には(ステップS24:NO)、ステップS31において、制御部5は、システム要求トルクT38がエンジン要求トルクT35よりも大きく、バッテリパック42の充電率が閾値Th2よりも大きいか否かを判断する。
ステップS31において、「システム要求トルクT38>エンジン要求トルクT35」および「バッテリパック42の充電率>閾値Th2」の全ての条件が満たされる場合には(ステップS31:YES)、ステップS32において、動作モード決定部515は、ハイブリッドシステム2の動作モードとしてトルクアシスト動作を決定し、トルクアシスト動作を実行する。
例えば、ハイブリッドシステム2が搭載された産業用機械が坂道を上り、過負荷によりエンジン3の回転数が低下する場面や、急加速応答性が求められる場面など、「システム要求トルクT38>エンジン要求トルクT35」および「バッテリパック42の充電率>閾値Th2」の全ての条件が満たされる場面では、ステップS32において、動作モード決定部515は、ハイブリッドシステム2の動作モードとしてトルクアシスト動作を決定する。
そして、ステップS32において、燃料噴射量算出部511は、動作モード決定部515により決定されたハイブリッドシステム2の動作モード(ステップS32ではトルクアシスト動作)に基づいてエンジン3の燃料噴射量を算出する。また、ステップS32において、モータ要求トルク算出部514は、動作モード決定部515により決定されたハイブリッドシステム2の動作モード(ステップS32ではトルクアシスト動作)に基づいてモータ要求トルクを算出する。具体的には、モータ要求トルク算出部514は、システム要求トルクT38とエンジン要求トルクT35との差分に基づいてモータ要求トルクを算出する。つまり、モータ要求トルク算出部514は、モータジェネレータ41がエンジン3のトルクのアシストを行うためのモータ要求トルクを算出する。これにより、ハイブリッドシステム2は、ハイブリッドシステム2が搭載された産業用機械による作業を向上させることができる。
一方で、ステップS31において、「システム要求トルクT38>エンジン要求トルクT35」および「バッテリパック42の充電率>閾値Th2」の少なくともいずれかの条件が満たされない場合、言い換えれば、「システム要求トルクT38≦エンジン要求トルクT35」および「バッテリパック42の充電率≦閾値Th2」の少なくともいずれかの条件が満たされる場合には(ステップS31:NO)、ステップS33において、動作モード決定部515は、ハイブリッドシステム2の動作モードとしてトルクスプリット動作を決定し、トルクスプリット動作を実行する。
例えば、ハイブリッドシステム2が搭載された産業用機械が平地を走行する場面など、「システム要求トルクT38>エンジン要求トルクT35」および「バッテリパック42の充電率>閾値Th2」の少なくともいずれかの条件が満たされない場面では、ステップS33において、動作モード決定部515は、ハイブリッドシステム2の動作モードとしてトルクスプリット動作を決定する。
そして、ステップS33において、燃料噴射量算出部511は、動作モード決定部515により決定されたハイブリッドシステム2の動作モード(ステップS33ではトルクスプリット動作)に基づいてエンジン3の燃料噴射量を算出する。また、ステップS33において、モータ要求トルク算出部514は、動作モード決定部515により決定されたハイブリッドシステム2の動作モード(ステップS33ではトルクスプリット動作)に基づいてモータ要求トルクを算出する。
具体的には、例えば、システム要求トルクが100N・mであり、エンジン3が150N・mのトルクを発生できる場合を例に挙げる。この場合には、例えば、燃料噴射量算出部511は、エンジン3に100N・mのトルクを発生させるための燃料噴射量を算出する。あるいは、燃料噴射量算出部511は、エンジン3の燃料噴射量を零に設定し、モータ要求トルク算出部514は、モータジェネレータ41がエンジン3に対して100N・mのトルクのアシストを行うためのモータ要求トルクを算出する。あるいは、例えば、燃料噴射量算出部511は、エンジン3に50N・mのトルクを発生させるための燃料噴射量を算出し、モータ要求トルク算出部514は、モータジェネレータ41がエンジン3に対して50N・mのトルクのアシストを行うためのモータ要求トルクを算出する。あるいは、例えば、燃料噴射量算出部511は、エンジン3に130N・mのトルクを発生させるための燃料噴射量を算出し、モータ要求トルク算出部514は、モータジェネレータ41によりバッテリパック42の充電を行うためのモータ要求トルクとして、エンジン3の余分な30N・mのトルクを算出する。
このように、「システム要求トルクT38>エンジン要求トルクT35」および「バッテリパック42の充電率>閾値Th2」の少なくともいずれかの条件が満たされない場合には(ステップS31:NO)、制御部5は、エンジン3のトルクと、モータジェネレータ41のトルクと、の分配を行ってバッテリパック42の充電率を目標値に近づけることができる。
ステップS25、ステップS32およびステップS33に続いて、制御部5は、ハイブリッドシステム2の動作を終了する。
図5~図7に関して説明した具体例によれば、制御部5は、燃料噴射量算出部511により算出された燃料噴射量Q8を補正し、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数R3と、補正後の燃料噴射量Q5と、に基づいてエンジン要求トルクT35を算出する。これにより、排気ガスに含まれる粒子状物質を低減しつつ、例えば、過負荷によりエンジン3の回転数が低下する場面や、急加速応答性が求められる場面において、トルクアシスト動作を実行することができる。
また、制御部5は、記憶部52に予め記憶されたマップデータ522に基づいてシステム要求トルクT38およびエンジン要求トルクT35を算出する。そのため、制御部5は、システム要求トルクT38およびエンジン要求トルクT35を算出するための処理時間の短縮化を図りつつ、より適正なシステム要求トルクT38およびエンジン要求トルクT35を算出することができる。
また、制御部5は、システム要求トルクT38とエンジン要求トルクT35との関係だけではなく、モータジェネレータ41に接続されたバッテリパック42の充電率にさらに基づいて動作モードを決定する。そのため、制御部5は、動作モードを決定する際に用いることができる入力因子が限られている中で、より適正な動作モードを決定することができる。
図8は、本実施形態に係るハイブリッドシステムのトルクカーブを表すグラフである。
図8に表したグラフの横軸は、エンジン3の回転数を表している。図8に表したグラフの縦軸は、エンジン3のトルクを表している。
図8に表したように、本実施形態の制御部5(具体的にはシステム要求トルク算出部512)は、エンジン3の回転数の全領域において、エンジン3のみが発生させるトルクよりも大きいシステム要求トルクを算出する。つまり、制御部5は、エンジン3の回転数の全領域において、エンジン3の単体では発生させることができない領域のトルクを発生させるために、モータジェネレータ41がエンジン3のトルクのアシストあるいはサポートを行う制御を実行する。言い換えれば、制御部5は、エンジン3の単体で発生させることができるトルク領域において、モータジェネレータ41がエンジン3のトルクのアシストあるいはサポートを行う制御を実行するわけではない。
そのため、制御部5は、エンジン3の回転数が比較的低い場面であっても、より適正な動作モードとしてトルクアシスト動作を実行し、エンジン3のみが発生させるトルクよりも大きいシステム要求トルクを発生させることができる。これにより、エンジン3の排気量を抑え、排気ガスに含まれる粒子状物質を低減しつつ、燃費の向上を図ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
図3に関して前述した通り、演算部51は、システム要求トルクを決定するためのトルク決定因子として目標空気量を算出してもよい。この場合には、演算部51は、アクセル開度センサ61により検出されたアクセル開度と、ハンドアクセル62により送信された回転数信号と、の少なくともいずれかに基づいてエンジン3の目標空気量を算出する。そして、演算部51は、回転センサ31により検出されたエンジン3の回転数と、算出されたエンジン3の目標空気量と、に基づいてハイブリッドシステム2としてのシステム要求トルクを算出する。これにより、本発明の実施形態に関して前述した効果と同様の効果が得られる。