[第1実施形態]
<細隙灯顕微鏡の構成>
図1は、テーブル9上に載置された細隙灯顕微鏡10の側面図である。この細隙灯顕微鏡10は、本発明の眼科装置に相当するものであり、被検眼Eの角膜観察、眼底観察、及び水晶体観察等の各種観察に用いられる。
図1に示すように、細隙灯顕微鏡10は、本体ベース11と、顎受け台12と、電動駆動部13と、移動ステージ14と、操作レバー15と、支持部16と、照明系18と、観察系19と、制御部20と、を備える。
本体ベース11は、テーブル9上に載置されている。この本体ベース11の被検者側の端部には顎受け台12が設けられている。また、本体ベース11の上面には、電動駆動部13及び移動ステージ14が設けられている。
顎受け台12は、図中上下方向に位置調整可能な顎受け12a及び額当て12bを有しており、細隙灯顕微鏡10による被検眼Eの観察時に被検者の顔を支持する。
電動駆動部13は、本体ベース11上において移動ステージ14を水平方向(前後方向及び左右方向)に移動自在に保持している。また、移動ステージ14の上面には、操作レバー15及び支持部16が設けられている。なお、前後方向は被検者に近づく前方向と被検者から遠ざかる後方向であり、左右方向は被検者の眼幅方向である。
電動駆動部13は、不図示のモータと、このモータの回転を水平方向の駆動力に変換する不図示の駆動伝達機構と、を備えている。この電動駆動部13は、後述の制御部20の制御の下、操作レバー15の操作に応じて移動ステージ14を水平方向に移動させる。これにより、被検眼Eに対する支持部16(照明系18及び観察系19)の位置調整が可能となり、照明系18等が被検眼Eに対して相対移動自在となる。なお、移動ステージ14、後述の支持部16及び支持アーム23と共に本発明の支持機構を構成する。
操作レバー15は、移動ステージ14の上面における検者側の端部に設けられている。この操作レバー15は、支持部16(照明系18及び観察系19)を前後方向及び左右方向に移動操作するための操作部材である。例えば、操作レバー15を前後方向又は左右方向に傾倒操作することで、後述の制御部20の制御の下、電動駆動部13が移動ステージ14を前後方向又は左右方向に移動させる。なお、図示は省略するが、操作レバー15の頂部には、被検眼Eの撮影等に用いるスイッチが設けられている。
支持部16は、照明系18及び観察系19をそれぞれ支持している。この支持部16には、観察系19を支持する支持アーム22が左右方向に回動自在(上下方向に平行な軸周りに回動自在)に取り付けられている。支持アーム22は、図中前後方向に延びた水平部と、この水平部の後方向側の基端部から上方向に延びた垂直部と、を有している。支持アーム22の水平部の上面には、照明系18を支持する支持アーム23が左右方向に回動自在に取り付けられている。また、支持アーム22の垂直部の上面には、観察系19の鏡筒本体24が取り付けられている。
支持アーム22及び支持アーム23は、それぞれ独立に同軸で回動可能とされている。これにより、検者が支持アーム22を手動で回動させることで観察系19が支持アーム22の回転軸を中心として左右方向に揺動されると共に、支持アーム23を手動で回動させることで照明系18が支持アーム23の回転軸を中心として左右方向に揺動される。なお、各支持アーム22,23を、モータ及び駆動伝達機構により構成される駆動部により回動させてもよい。
照明系18は、本発明の照射系に相当するものであり、細隙光L1(本発明の光に相当、図2参照)を含む各種の光を被検眼Eに対して照射する。この照明系18は、既述の通り支持アーム23の回転軸を中心して手動操作で左右方向に揺動させることにより、被検眼Eに対する細隙光L1の入射位置(照射位置)を任意に変更可能である。なお、被検眼Eに入射する細隙光L1の俯角及び仰角を調整するために照明系18を上下方向にも揺動可能な構成としてもよい。
照明系18の下方位置には、照明系18から出力される細隙光L1などを被検眼Eに向けて反射するミラー25が配置されている。なお、本実施形態の細隙灯顕微鏡10はZeiss式(Littman式)であるので、照明系18の下方にミラー25が配置されているが、細隙灯顕微鏡10がHaag式(Goldmann式)の場合には、照明系18の上方にミラー25が配置されていてもよい。
観察系19は、被検眼Eへの細隙光L1(図2参照)などの入射に応じて被検眼Eにて反射された反射光L2(図2参照)を、後述の接眼部24a内の接眼レンズ48(図2参照)まで導く左右一対の光学系を有する。なお、反射光L2には、例えば散乱光のように被検眼Eを経由した各種の光が含まれる。
観察系19は鏡筒本体24内に収納されている。鏡筒本体24の終端は双眼型の接眼部24aである。検者は、接眼部24aを通して被検眼Eの前眼部像27(図2参照)を両眼視する。この観察系19を、既述の通り支持アーム22の回転軸を中心して手動操作で左右方向に揺動させることにより、観察系19による被検眼Eの観察方向を変更できる。
鏡筒本体24の側面には、被検眼Eの観察倍率を変更操作するための観察倍率操作ノブ28が配置されている。また、鏡筒本体24には、観察系19を通して被検眼Eの前眼部を撮影する撮影系29が設けられている。
制御部20は、細隙灯顕微鏡10の各部に接続されたコンピュータ等の演算装置であり、細隙灯顕微鏡10の各部の動作を統括的に制御する。なお、図中では制御部20が細隙灯顕微鏡10の筐体外に設けられているが、この筐体内に設けられていてもよい。
図2は、照明系18、観察系19、及び撮影系29の各光学系の構成を示した概略図である。なお、符号Eoは検者の観察眼を示し、符号O1は照明系18における細隙光L1(照明光)の光軸を示し、符号O2は観察系19における反射光L2の光軸を示す。
<照明系の構成>
照明系18は、光源31、リレーレンズ32、照明絞り33、集光レンズ34、視野絞り35、細隙形成部36、及び集光レンズ37を有する。また、照明系18には、細隙形成部36と集光レンズ37との間に光学フィルタ38が挿脱自在に配置される。
光源31は、白色光である照明光をリレーレンズ32に向けて出射する。この光源31としては、ハロゲンランプ及びLED(light emitting diode)光源、及びレーザ光源等の白色光を出射する公知の白色光源が用いられる。なお、光源31として、フラッシュ光源、及び角膜観察用或いは眼底観察用の専用光源などを別途設けてもよい。
リレーレンズ32は、光源31から入射した照明光を照明絞り33に向けて出射する。
照明絞り33は、光源31から入射した照明光を透光する透光部を有し、この透光部のサイズ(絞り径)を変更可能に構成されている。この照明絞り33は、その絞り径を調整することで、照明系18から被検眼Eに照射される照明光(細隙光L1等)の光量、すなわち明るさを調整する光学部材である。また、照明絞り33には、被検眼Eの角膜及び水晶体による照明光の反射を低減させる機能、及び照明光の明るさを調整する機能等もある。照明絞り33を通過した照明光は集光レンズ34に入射する。
集光レンズ34は、照明絞り33から入射した照明光を視野絞り35に集光させる。
視野絞り35は、集光レンズ34から入射した照明光を透光する透光部を有し、この透光部のサイズ(絞り径)を変更可能に構成されている。この視野絞り35は、その絞り径を調整することで、光源31により出力された照明光(細隙光L1等)の被検眼Eに対する照射野を調整する。視野絞り35を通過した照明光は細隙形成部36に入射する。
細隙形成部36は、視野絞り35から入射した照明光から細隙光L1を生成し、この細隙光L1を集光レンズ37に向けて出射する。この細隙形成部36は、一対のスリット刃を有しており、これらスリット刃の間隔(スリット幅)を変更することにより細隙光L1の幅を調整する。なお、細隙形成部36は、後述の被検眼Eの蛍光観察時及びマイボーム腺の観察時などには、スリット刃の間隔を広げることにより光源31からの照明光をそのまま通過させる。
光学フィルタ38は、細隙形成部36と集光レンズ37との間において、照明系18の光路に挿脱自在に配置される。光学フィルタ38としては、例えばブルーフィルタ、無赤色フィルタ、ND(Neutral Density)フィルタ、色温度変化フィルタ、IR(Infrared)カットフィルタ、及びIR透過フィルタ等が例として挙げられる。なお、これら以外の光学フィルタ38を使用してもよい。また、照明系18の光路中には、照明光L0又は細隙光L1に含まれている紫外光をカットするUV(ultraviolet)カットフィルタが常時挿入されている。
ブルーフィルタは、蛍光造影剤(フルオレセイン)が投与された被検眼Eの蛍光観察に用いられるフィルタであり、青色の波長域の光を透過させる。無赤色フィルタは、視神経繊維の異常を検査する際等に使用するフィルタであり、赤色の波長域の光をカットする光学フィルタ(グリーンフィルタ等)である。NDフィルタは、照明光L0又は細隙光L1の透過率を変更(減少)するための光学フィルタである。
色温度変換フィルタは、照明光L0又は細隙光L1の色温度を低下させて暖色系の光に変換する光学フィルタである。この色温度変換フィルタを用いる場合には、上述の光源31として寒色系白色光源が用いられる。IRカットフィルタは照明光L0又は細隙光L1に含まれている赤外光をカットする。IR透過フィルタは赤外光を透過させる。このIR透過フィルタは、被検眼Eを赤外光(近赤外光を含む)で照明して被検眼Eのマイボーム腺を観察する際に用いられる。
各光学フィルタ38は、光軸O1に平行な軸を中心としてその軸周り方向に配列された状態でフィルタターレット39(図3参照)に嵌め込まれている。そして、制御部20の制御の下、フィルタターレット39を回転させることで、各光学フィルタ38が照明系18の光路中に選択的に挿入される。また、フィルタターレット39を複数設けることにより、複数種類の光学フィルタ38を同時に照明系18の光路中に挿入可能である。
集光レンズ37は、細隙形成部36から入射した細隙光L1、或いは光学フィルタ38から入射した照明光を集光レンズ37に集光させる。
ミラー25は、集光レンズ37から入射した細隙光L1又は照明光の一部を被検眼Eに向けて反射(偏向)する。なお、ミラー25の代わりに、プリズム或いはビームスプリッタ(ハーフミラー、ダイクロイックミラー、及び偏光ビームスプリッタを含む)等を用いてもよい。以下、説明の煩雑化を防止するため、特に言及する場合を除き、照明系18から被検眼Eに対しては細隙光L1が照射されるものとする。
<観察系及び撮影系の構成>
観察系19は、被検眼Eの両眼に対応したガリレオタイプ又はグリーノタイプ等の左右一対の光学系を備えている。左右の光学系はほぼ同様の構成を有する。検者は、この左右の光学系により被検眼Eの前眼部を双眼で観察する。なお、図2には、観察系19の左右の光学系の一方のみが示されている。
観察系19の光学系は、対物レンズ41、変倍光学系42、絞り43、バリアフィルタ44、ビームスプリッタ45、リレーレンズ46、プリズム47、及び接眼レンズ48を有する。
対物レンズ41は、被検眼Eからの反射光L2を変倍光学系42に向けて出射する。
変倍光学系42は、例えば公知のドラム式変倍機構が用いられる。この変倍光学系42は、変倍レンズ42a,42bを含む。各変倍レンズ42a,42bは、既述の観察倍率操作ノブ28の操作に応じて、光軸O2に沿って移動する。これにより、反射光L2によって形成される被検眼Eの前眼部の前眼部像27(観察像ともいう)の倍率(画角)を多段階で変更することができる。変倍光学系42を透過した反射光L2はバリアフィルタ44又はビームスプリッタ45に向けて出射される。
なお、変倍光学系42として、不図示のスイッチ等及びレンズ駆動部を用いて電動で各変倍レンズ42a,42bを光軸O2に沿って移動させることにより、前眼部像27の倍率を多段階で調整可能にしてもよい。
変倍レンズ42a,42bの間には絞り43が配置されている。絞り43は、変倍レンズ42aから入射した反射光L2を透光する透光部を有し、この透光部のサイズ(絞り径)を変更可能である。絞り43は、その絞り径を調整することで、観察眼Eo及び撮像素子53に入射する反射光L2の光量を調整する光学部材である。
バリアフィルタ44は、変倍光学系42とビームスプリッタ45との間において、観察系19の光路に対し挿脱自在に配置される。バリアフィルタ44は、被検眼Eの蛍光観察時に反射光L2の光路に挿入される光学フィルタであって、且つ被検眼Eに投与された蛍光剤が発する蛍光に相当する波長成分を透過させるバンドパスフィルタ等の光学フィルタである。このバリアフィルタ44は、後述のフィルタ駆動部67(図3参照)により保持されており、制御部20の制御の下、観察系19の光路に対して挿脱される。
ビームスプリッタ45は、観察系19の左右の光学系の一方又は双方に設けられる。このビームスプリッタ45は、変倍光学系42又はバリアフィルタ44から入射した反射光L2を2分割する。そして、ビームスプリッタ45は、2分割した反射光L2の一方をリレーレンズ46に向けて出射し、反射光L2の他方を撮影系29に向けて出射する。
リレーレンズ46は、ビームスプリッタ45から入射した反射光L2をプリズム47に向けて出射する。
プリズム47は、2つの光学素子47a,47bを含み、リレーレンズ46から入射した反射光L2の進行方向を上方に平行移動させると共に、この反射光L2を結像位置Pで結像させる。
接眼レンズ48は接眼部24a内に設けられている。これにより、観察眼Eoは、接眼レンズ48を通して、プリズム47により結像位置Pで結像された反射光L2により形成される被検眼Eの前眼部像27(その拡大像)を観察できる。
撮影系29は、リレーレンズ51とミラー52と撮像素子53とを有する。リレーレンズ51は、ビームスプリッタ45から入射した反射光L2をミラー52に向けて出射する。ミラー52は、リレーレンズ51から入射した反射光L2を撮像素子53に向けて反射する。ミラー52で反射された反射光L2は、不図示の結像レンズを介して撮像素子53の撮像面に結像される。
撮像素子53は、例えばCMOS(complementary metal oxide semiconductor)型又はCCD(Charge Coupled Device)型のイメージセンサが用いられる。撮像素子53は、撮像面に結像された反射光L2を撮像して前眼部像27の撮影画像データ27Dを制御部20へ出力する。この撮像素子53による反射光L2の撮像は所定のフレームレートで継続的に実行され、撮像素子53から制御部20に対して撮影画像データ27D(前眼部のライブ画像データ)が逐次入力される。なお、既述の操作レバー15の操作スイッチ(不図示)が押下操作されると、制御部20は、撮像素子53から入力された撮影画像データ27Dに各種画像処理を施して被検眼Eの前眼部の静止画像データを生成する。
<制御部の機能>
図3は、第1実施形態の制御部20の機能ブロック図である。図3に示すように、制御部20は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御部20の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
制御部20は、検者による操作部68の操作に応じて、細隙灯顕微鏡10の各部の動作、具体的には電動駆動部13、照明系18、観察系19、及び撮影系29等の動作制御を行う。また、制御部20は、詳しくは後述するが、被検眼Eを光ハザードから保護するために、被検眼Eに対する細隙光L1の照射光量を推定(測定)し、この照射光量が予め定めた上限値よりも大きくなる場合には後述の表示部62A及びスピーカ62Bを介して検者に対して警告情報94(図9参照)を報知する。
制御部20には、既述の電動駆動部13と光源31と撮像素子53との他に、記憶部61、表示部62A、スピーカ62B、照明絞り駆動部63、視野絞り駆動部64、スリット駆動部65、フィルタ駆動部66、フィルタ駆動部67、操作部68、及び検出部70等が接続されている。なお、図中では、顎受け12a及び額当て12bの位置を調整する位置調整部、及び観察系19内の絞り43の絞り径を調整する絞り駆動部については図示を省略している。
記憶部61は、電動駆動部13、照明系18、観察系19、及び撮影系29等の動作制御と、光ハザードの警告情報94(図9参照)の報知制御と、を制御部20に実行させるための制御プログラム(不図示)を記憶している。また、記憶部61には、既述の被検眼Eの前眼部の静止画像データなどの各種情報も記憶される。
表示部62Aは、例えば液晶ディスプレイ(タッチパネル式の液晶ディスプレイでも可)のなど公知のモニタであり、細隙灯顕微鏡10の筐体表面又は筐体外に設けられている。この表示部62Aは、制御部20の制御の下、各種の情報を表示する。例えば表示部62Aは、細隙灯顕微鏡10の各部の操作を行うための操作画面を表示したり、既述の撮影画像データ27D(ライブ画像、静止画像)に基づく画像表示を行ったりする。また、表示部62Aは、光ハザードの警告情報94(図9参照)の表示も行う。
スピーカ62Bは、細隙灯顕微鏡10の筐体表面又は筐体外に設けられている。このスピーカ62Bは、制御部20の制御の下、各種の情報を音声出力する。また、スピーカ62Bは、光ハザードの警告情報94(図9参照)を音声出力する。
照明絞り駆動部63、視野絞り駆動部64、スリット駆動部65、フィルタ駆動部66、及びフィルタ駆動部67等の各駆動部は、例えば、各種のアクチュエータ(不図示)と、このアクチュエータの駆動力を伝達する伝達機構(不図示)と、を備える。
照明絞り駆動部63は、照明絞り33を駆動してその絞り径を調整する。視野絞り駆動部64は、視野絞り35を駆動してその絞り径を調整する。スリット駆動部65は、細隙形成部36の一対のスリット刃の間隔、すなわち細隙光L1の幅を調整する。
フィルタ駆動部66は、既述のフィルタターレット39を回転駆動して、各光学フィルタ38を選択的に照明系18の光路内に挿入する。フィルタ駆動部67は、バリアフィルタ44を光軸O2に対して垂直方向に移動させることにより、観察系19の光路に対してバリアフィルタ44を挿脱させる。
操作部68は、細隙灯顕微鏡10の各部の操作に用いられる。この操作部68は、既述の操作レバー15及び観察倍率操作ノブ28の他に、手元操作部72を含む。なお、顎受け台12及び絞り43の操作を行う構成については図示を省略している。
操作レバー15には不図示の直動型ポテンショメータが設けられており、この直動型ポテンショメータは操作レバー15の前後方向及び左右方向の傾倒操作を検出する。制御部20は、直動型ポテンショメータの検出結果に基づき、電動駆動部13を駆動して、移動ステージ14を前後方向又は左右方向に移動させる。
観察倍率操作ノブ28は、前眼部像27の倍率を選択する倍率選択操作に用いられる。この倍率選択操作に応じて、変倍光学系42は前眼部像27の倍率を変更する。
手元操作部72は、スイッチ、レバー、ハンドル、及びキーなどの物理的な操作部材、又は表示部62Aに表示される操作画面中のアイコン等の仮想的な操作入力部である。この手元操作部72は、照明絞り33及び視野絞り35の各々の絞り径を選択する2つの絞り径選択操作と、細隙形成部36の一対のスリット刃の間隔(細隙光L1の幅)を調整する間隔調整操作と、照明系18の光路内に挿入する光学フィルタ38を選択するフィルタ選択操作と、バリアフィルタ44の挿脱を選択するフィルタ挿脱操作と、に用いられる。
制御部20は、手元操作部72での各絞り径選択操作に応じて、照明絞り駆動部63を駆動して照明絞り33の絞り径を調整したり、視野絞り駆動部64を駆動して視野絞り35の絞り径を調整したりする。また、制御部20は、手元操作部72での間隔調整操作に応じて、スリット駆動部65を駆動して一対のスリット刃の間隔を調整する。さらに、制御部20は、手元操作部72でのフィルタ選択操作に応じて、フィルタ駆動部66を駆動してフィルタターレット39を回転させる。さらにまた、制御部20は、手元操作部72でのフィルタ挿脱操作に応じて、フィルタ駆動部67を駆動して観察系19の光路に対するバリアフィルタ44の挿脱を実行する。
検出部70は、後述の照射時間測定部82による被検眼Eへの細隙光L1の積算照射時間の測定に用いられる。この検出部70としては以下の第1例から第3例が挙げられる。
図4は、検出部70の第1例を説明するための説明図である。図4に示すように、第1例の検出部70(本発明の動作検出部に相当)は、例えば光源31又はこの光源31の電源(図示は省略)からの信号に基づき、光源31のオンオフを検出する検出センサである。なお、第1例の検出部70は、光源31内に設けられていてもよい。この第1例の検出部70は、光源31のオンオフを継続的(連続的)に検出すると共に、この検出結果を照射時間測定部82へ継続的に出力する。なお、本明細書における継続的(連続的)には「一定間隔」の他に「不定間隔」も含まれる。
図5は、検出部70の第2例を説明するための説明図である。図5に示すように、第2例の検出部70(本発明の位置検出部に相当)は、電動駆動部13により移動ステージ14等を介して水平方向に移動される照明系18等の位置を検出する例えばリニアスケール等の公知の位置検出センサである。この第2例の検出部70の検出結果に基づき、例えば、被検眼Eと照明系18等との間の作動距離WD(ワークディスタンス)が細隙灯顕微鏡10による被検眼Eの観察時に想定される一定範囲内に収まっているか否かを確認することができる。そして、第2例の検出部70は、照明系18等の位置を継続的に検出すると共に、この検出結果を照射時間測定部82へ継続的に出力する。
図6は、検出部70の第3例を説明するための説明図である。図6に示すように、第3例の検出部70(本発明の顔検出部に相当)は、例えば顎受け12aに設けられた接触式或いは非接触式の検出センサであり、この顎受け12aによる被検者の顔の支持の有無を検出する。この第3例の検出部70は、顎受け12aによる被検者の顔の支持の有無を継続的に検出すると共に、この検出結果を照射時間測定部82へ継続的に出力する。
図3に戻って、制御部20は、記憶部61内の不図示の制御プログラムを実行することで、駆動条件取得部80、照射時間測定部82、照射光量推定部84、第1報知制御部86、及び第2報知制御部88として機能する。なお、図3中では、制御部20の各種機能の中で、特に光ハザードの警告情報94(図9参照)の報知に係る機能のみを図示し、他の機能については公知技術であるので図示は省略している。
なお、制御部20の駆動条件取得部80、照射時間測定部82、照射光量推定部84、第1報知制御部86、及び第2報知制御部88は、例えば、検者が操作部68に入力した所定の開始操作(細隙灯顕微鏡10の電源オン操作でも可)に応じて作動する。この場合には、検者は、被検者の左右の被検眼Eごとに操作部68に対して開始操作を入力する。
駆動条件取得部80は、光源31の駆動条件を取得する。この光源31の駆動条件とは、光源31から出射される照明光の強度に係る駆動条件、すなわち照明系18から被検眼Eへ照射される細隙光L1の強度に係る駆動条件である。ここでいう強度とは、既述の通り単位面積における単位時間当たりの光量(例えばJ・cm-2・s-1)であり、放射照度ともいう。
光源31の駆動条件は、例えば、光源31がハロゲンランプである場合には光源31の駆動電圧値であり、光源31がLED光源である場合には光源31の駆動電流値である。このため、駆動条件取得部80は、光源31の駆動電圧値又は駆動電流値を測定する不図示の検出回路を介して、光源31の駆動条件として駆動電圧値又は駆動電流値を取得する。そして、駆動条件取得部80は、光源31から出射される照明光の強度が固定である場合には、光源31の駆動条件の取得を所定のタイミング(例えば起動時等)で1回行い、駆動条件の取得結果を照射光量推定部84へ出力する。また、駆動条件取得部80は、光源31から出射される照明光の強度(すなわち、光源31の駆動条件)が可変可能である場合には、少なくとも光源31の駆動条件が変更されるごとにこの駆動条件の取得を繰り返し行うと共に、駆動条件の取得結果を照射光量推定部84へ逐次出力する。なお、この場合には、駆動条件取得部80は、前述の継続的(定期間隔、不定期間隔)な駆動条件の取得を行ってもよい。
照射時間測定部82は、既述の図4から図6に示した各例のいずれかの検出部70の検出結果に基づき、被検眼Eに対する細隙光L1の積算照射時間を継続的に測定する。
既述の図4に示したように照射時間測定部82は、第1例の検出部70の検出結果を継続的に取得する場合には、この検出結果に基づき光源31がオンされている時間を、細隙光L1の積算照射時間として継続的に測定(カウント)する。これにより、光源31がオフされている時間、すなわち実際には被検眼Eに対して細隙光L1が照射されていない時間を積算照射時間にカウントすることが防止される。
既述の図5に示したように照射時間測定部82は、第2例の検出部70の検出結果を継続的に取得する場合には、この位置検出結果に基づき、照明系18の位置が予め定められた照射位置範囲内にセットされているか否かを継続的に判定する。この照射位置範囲は、例えば、水平方向の前後方向においては既述の作動距離WDの想定範囲に基づき定められ、水平方向の左右方向においては顎受け台12の位置範囲に基づき定められている。すなわち、照射位置範囲は、水平方向において照明系18が被検眼Eに対して粗アライメントされるような照明系18の位置範囲である。
そして、照射時間測定部82は、照明系18の位置が既述の照射位置範囲内にセットされている時間を、細隙光L1の積算照射時間として継続的に測定する。これにより、光源31のオンオフに関係なく照明系18と被検眼Eとが水平方向において大きく位置ずれしている時間、すなわち実際には被検眼Eに対して細隙光L1が照射されていない時間を積算照射時間にカウントすることが防止される。
既述の図6に示したように照射時間測定部82は、第3例の検出部70の検出結果を継続的に取得する場合には、この検出結果に基づき顎受け12aが被検者の顔を支持している時間を、細隙光L1の積算照射時間として継続的に測定する。これにより、光源31がオンオフに関係なく顎受け12aに被検者の顔が支持されていない時間、すなわち実際には被検眼Eに対して細隙光L1が照射されていない時間を積算照射時間にカウントすることが防止される。
図3に戻って、照射時間測定部82は、被検眼Eに対する細隙光L1の積算照射時間を継続的に測定すると共に、この測定結果を照射光量推定部84に対して逐次出力する。なお、照射時間測定部82は、各例の検出部70の検出結果を2以上組み合わせた結果に基づき、細隙光L1の積算照射時間を継続的に測定してもよい。これにより、各例の検出部70の単独の検出結果に基づき積算照射時間を測定する場合よりも高精度に積算照射時間を測定することができる。
図7は、照射光量推定部84による細隙光L1の照射光量の推定を説明するための説明図である。図7及び既述の図3に示すように、照射光量推定部84は、駆動条件取得部80から1回又は繰り返し入力される光源31の駆動条件(駆動電圧値又は駆動電流値)と、照射時間測定部82から継続的に入力される積算照射時間と、に基づき、被検眼Eに照射される細隙光L1の照射光量を継続的に推定する。なお、ここでいう照射光量とは、既述の通り光の強度を時間積分することで得られる物理量であり、換言すると単位面積当たりの照射光量(例えばJ・cm-2)である。
最初に、照射光量推定部84は、駆動条件取得部80から入力される光源31の駆動条件(駆動電圧値又は駆動電流値)に基づき、被検眼Eへ照射される細隙光L1の強度を推定(測定)する。この推定には記憶部61内の対応情報90が用いられる。対応情報90は、光源31の種類に対応した駆動条件と、被検眼Eに照射される細隙光L1との対応関係を記憶したものであり、実験又はシミュレーション等により求められる。これにより、照射光量推定部84は、駆動条件取得部80から入力される光源31の駆動条件に基づき、記憶部61内の対応情報90を参照することで、細隙光L1の強度を推定することができる。
なお、照射光量推定部84は、駆動条件取得部80から駆動条件が繰り返し入力される場合には、新たな駆動条件が入力されるごとに細隙光L1の強度の推定を繰り返し実行する。
次いで、照射光量推定部84は、駆動条件から推定した細隙光L1の強度を、照射時間測定部82から入力された積算照射時間に基づき時間積分することにより、被検眼Eへの細隙光L1の照射光量を推定する。そして、照射光量推定部84は、駆動条件取得部80から1回又は繰り返し入力される光源31の駆動条件と、照射時間測定部82から継続的に入力される積算照射時間と、に基づき、被検眼Eに照射される細隙光L1の照射光量を継続的に推定し、新たな推定結果を第1報知制御部86及び第2報知制御部88の双方に逐次出力する。
図8は、細隙光L1の照射光量の報知を説明するための説明図である。図8に示すように、第1報知制御部86は、既述の表示部62A及びスピーカ62Bと共に本発明の照射光量報知部を構成する。この第1報知制御部86は、照射光量推定部84から入力された照射光量の推定結果に基づき、この照射光量を示す照射光量情報92を表示部62Aに表示させると共にスピーカ62Bから音声出力させる。そして、第1報知制御部86は、照射光量推定部84から新たな細隙光L1の照射光量の推定結果が入力されるごとに、最新の照射光量情報92を表示部62Aに表示させると共にスピーカ62Bから音声出力させる。これにより、検者は、被検眼Eに対する細隙光L1の最新の照射光量を認識することができる。
図9は、光ハザードの警告情報94の報知を説明するための説明図である。図9に示すように、第2報知制御部88は、既述の表示部62A及びスピーカ62Bと共に本発明の警告情報報知部を構成する。この第2報知制御部88は、照射光量推定部84から新たな照射光量の推定結果が継続的に入力されるごとに、この照射光量が予め定められた上限値よりも大きくなるか否かを判定する。なお、この上限値は、被検眼Eを光ハザードから保護するために既述のISO規格等に基づいて予め定められており、例えば照射光量の最大許容量よりも所定のマージン分だけ小さい値である。
そして、第2報知制御部88は、細隙光L1の照射光量が上限値よりも大きくなった場合には、光ハザードの警告情報94(注意情報)を表示部62Aに表示させると共にスピーカ62Bから音声出力させる。これにより、表示部62A及びスピーカ62Bを用いて、警告情報94を検者に報知することができる。なお、スピーカ62Bから警告情報94を音声出力することで、検者の観察眼Eoが接眼部24aを通して前眼部像27を観察している状態でも、検者に対して警告情報94を確実に報知することができる。
[細隙灯顕微鏡の作用]
図10は、上記構成の細隙灯顕微鏡10による細隙光L1の照射光量の推定及び光ハザードの警告情報94の報知の流れを示すフローチャートである(本発明の眼科装置の作動方法に相当)。
図10に示すように、検者が細隙灯顕微鏡10を用いた被検眼Eの観察を行う際に操作部68に対して所定の開始操作を入力すると(ステップS1)、制御部20が、駆動条件取得部80、照射時間測定部82、照射光量推定部84、第1報知制御部86、及び第2報知制御部88として機能する。
次いで、駆動条件取得部80が、光源31の種類に対応した光源31の駆動条件(駆動電圧値又は駆動電流値)を取得して、この駆動条件を照射光量推定部84へ出力する(ステップS2、本発明の駆動条件取得ステップに相当)。
一方、駆動条件取得部80による駆動条件の取得と同時或いは前後して、照射時間測定部82が、既述の図4から図6に示した各例のいずれかの検出部70から検出結果を取得し(ステップS3)、この検出結果に基づき被検眼Eに対する細隙光L1の積算照射時間を測定する(ステップS4、本発明の積算照射時間測定ステップに相当)。これにより、光源31がオンされている時間、照明系18の位置が既述の照射位置範囲内にセットされている時間、又は顎受け12aに被検者の顔が支持されている時間が、積算照射時間となる。その結果、被検眼Eに対して細隙光L1が照射されていない時間を積算照射時間にカウントすることが防止されるので、積算照射時間を正確に測定することができる。そして、照射時間測定部82は、積算照射時間の測定結果を照射光量推定部84へ出力する。
駆動条件及び積算照射時間の測定結果の入力を受けた照射光量推定部84は、被検眼Eに照射された細隙光L1の照射光量の推定を開始する。最初に、照射光量推定部84は、既述の図7に示したように、駆動条件取得部80から入力された光源31の駆動条件(駆動電圧値又は駆動電流値)に基づき、記憶部61内の対応情報90を参照して、被検眼Eへ照射される細隙光L1の強度を推定する。
次いで、照射光量推定部84は、駆動条件から推定した細隙光L1の強度と、照射時間測定部82から入力された積算照射時間と、に基づき被検眼Eへの細隙光L1の照射光量を推定し、この照射光量の推定結果を第1報知制御部86及び第2報知制御部88へそれぞれ出力する(ステップS5、本発明の照射光量推定ステップに相当)。
細隙光L1の照射光量の推定結果の入力を受けた第1報知制御部86は、この照射光量を示す照射光量情報92を表示部62Aに表示させると共にスピーカ62Bから音声出力させる(ステップS6)。これにより、表示部62A及びスピーカ62Bから検者に対して照射光量情報92が報知される。
また、細隙光L1の照射光量の推定結果の入力を受けた第2報知制御部88は、この照射光量が既述の上限値よりも大きくなるか否かを判定する(ステップS7)。そして、第2報知制御部88は、照射光量が上限値以下である場合には待機状態となる(ステップS7でNO)。
一方、第2報知制御部88は、照射光量が上限値よりも大きい場合には、光ハザードの警告情報94を表示部62Aに表示させると共にスピーカ62Bから音声出力させる(ステップS7でYES、ステップS8、本発明の警告情報報知ステップに相当)。これにより、表示部62A及びスピーカ62Bから検者に対して警告情報94が報知される。
以下、細隙灯顕微鏡10を用いた被検眼Eの観察が完了するまで、既述のステップS1からステップS8までの処理が繰り返し実行される(ステップS9)。これにより、駆動条件の取得と積算照射時間の測定と照射光量の推定及び報知とが継続的に実行されると共に、照射光量が上限値よりも大きくなる場合には検者に対する警告情報94の報知が実行される。なお、2回目以降のステップS2の駆動条件の取得は光源31の駆動条件の変更に応じて実行してもよい。また、光源31から出射される照明光の強度が固定されている場合には、ステップS2の駆動条件の取得は1回でもよい。
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態では、被検眼Eに照射される細隙光L1(照明光)の強度の他に被検眼Eに照射される細隙光L1の積算照射時間を考慮して、被検眼Eに対する細隙光L1の照射光量を推定しているので、この照射光量を従来よりも正確に求めることができる。その結果、被検眼Eを光ハザードからより確実に保護することができる。
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態の細隙灯顕微鏡10の制御部20の機能ブロック図である。なお、図11以降では、光ハザードの保護と直接関係のない構成については適宜図示を省略している。上記第1実施形態の照射時間測定部82は、各例の検出部70の検出結果に基づき細隙光L1の積算照射時間を測定しているが、第2実施形態の照射時間測定部82は、撮影系29の撮像素子53から継続的に入力される撮影画像データ27Dの解析結果に基づき細隙光L1の積算照射時間を測定する。
図11に示すように、第2実施形態の細隙灯顕微鏡10は、制御部20が第1実施形態の各部の他に光照射検出部100として機能し且つ照射時間測定部82による細隙光L1の積算照射時間の測定方法が異なる点を除けば上記第1実施形態と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
図12は、光照射検出部100の機能を説明するための説明図である。図12の符号XIIA及び既述の図11に示すように、光照射検出部100は、撮像素子53から連続的に入力される撮影画像データ27Dごとに画像解析を行って、被検眼Eの前眼部に対して細隙光L1が照射されているか否かを検出する。具体的には、光照射検出部100は、撮影画像データ27Dごとに、被検眼Eの前眼部に照射された細隙光L1を示す光画像102が撮影画像データ27Dに基づく前眼部像27内に含まれているか否かを検出する。
ここで、撮影画像データ27D内から前眼部像27を検出(抽出)する方法は公知技術である。また、光画像102を構成する画素の画素値は撮影画像データ27Dの他の画素の画素値よりも高くなる。このため、撮影画像データ27Dの前眼部像27を構成する各画素の中で画素値が所定の閾値以上となる画素を光画像102の画素として識別することができる。従って、光照射検出部100は、撮像素子53から新たな撮影画像データ27Dが入力されるごとに、この撮影画像データ27Dを画像解析することで、光画像102が前眼部像27内に含まれている否か、すなわち被検眼Eの前眼部に対して細隙光L1が照射されているか否かを検出することができる。
なお、上述の光画像102の検出方法によれば、図12の符号XIIBに示すように、被検眼Eに照射される光の形状に関係なく、前眼部像27内に光画像102が含まれている否かを検出することができる。すなわち、被検眼Eの前眼部に対して細隙光L1以外の各種照明光が照射されているか否かを検出することができる。
このように光照射検出部100は、撮像素子53から新たな撮影画像データ27Dが入力されるごとに、撮影画像データ27Dに基づく前眼部像27内の光画像102の有無(被検眼Eの前眼部に対する細隙光L1の照射の有無)を検出し、その検出結果を照射時間測定部82へ逐次出力する。
図13は、第2実施形態の照射時間測定部82による細隙光L1の積算照射時間の測定を説明するための説明図である。図13及び既述の図11に示すように、第2実施形態の照射時間測定部82は、光照射検出部100から逐次入力される撮影画像データ27Dごとの検出結果に基づき、細隙光L1の積算照射時間を継続的に測定する。
例えば照射時間測定部82は、光画像102が含まれている撮影画像データ27D(細隙光L1が照射されている前眼部の撮影画像データ27D)の数と、撮像素子53の既知のフレームレートとに基づき、細隙光L1の積算照射時間を演算する。また、例えば撮影画像データ27Dにその撮影時間に関する情報が含まれている場合には、照射時間測定部82は、光画像102が含まれている撮影画像データ27Dの撮影時間に基づき、細隙光L1の積算照射時間を演算する。
以下、照射時間測定部82は、光照射検出部100からの検出結果が入力されるごとに、細隙光L1の積算照射時間の演算を繰り返し実行する。これにより、上記第1実施形態と同様に照射時間測定部82による積算照射時間の測定が継続的に行われる。そして、照射時間測定部82は、細隙光L1の積算照射時間を演算するごとに、新たな演算結果を、積算照射時間の測定結果として照射光量推定部84へ出力する。
なお、他の処理(駆動条件の取得、細隙光L1の照射光量の推定、照射光量情報92の報知、及び警告情報94の報知)は、上記第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。
以上のように第2実施形態では、撮影系29の撮像素子53から継続的に入力される撮影画像データ27Dの解析結果に基づき細隙光L1の積算照射時間を測定するので、被検眼Eに対して細隙光L1が照射されていない時間を積算照射時間にカウントすることを上記第1実施形態よりも確実に防止することができる。その結果、上記第1実施形態よりも高精度に積算照射時間を測定することができる。
[第3実施形態]
図14は、第3実施形態の細隙灯顕微鏡10の制御部20の機能ブロック図である。図15は、第3実施形態の制御部20により生成される積算マップ画像106の一例を示した説明図である。上記第2実施形態では、各撮影画像データ27Dの解析結果に基づき細隙光L1の積算照射時間を測定しているが、第3実施形態では、各撮影画像データ27Dの解析結果に基づき、前眼部像27の複数の領域27Rごとの細隙光L1の照射光量を示す積算マップ画像106を生成する。
図14及び図15に示すように、第3実施形態の細隙灯顕微鏡10は、制御部20が第2実施形態の各部の他に照射位置検出部104として機能し且つ積算マップ画像106を生成する点を除けば上記第2実施形態と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
第3実施形態の光照射検出部100は、撮影画像データ27Dごとの光画像102の有無の検出結果を照射位置検出部104へ逐次出力する。
照射位置検出部104は、光照射検出部100の検出結果に基づき、細隙光L1が照射されている被検眼Eの前眼部の撮影画像データ27Dごとに、撮影画像データ27Dに基づく前眼部像27内での細隙光L1の照射位置を検出する。
具体的には、照射位置検出部104は、光照射検出部100から逐次入力される撮影画像データ27Dごとの光画像102の有無の検出結果に基づき、光画像102を前眼部像27内に含む撮影画像データ27D(以下、特定の撮影画像データ27Dという)ごとに、前眼部像27内での光画像102の位置を逐次検出する。ここで、前眼部像27内での光画像102の位置とは、例えば、光画像102を構成する各画素の撮影画像データ27D内における位置座標であり、前眼部像27内での細隙光L1の照射位置に相当する。そして、照射位置検出部104は、特定の撮影画像データ27Dのごとの光画像102の位置検出結果を照射時間測定部82へ逐次出力する。
第3実施形態の照射時間測定部82は、照射位置検出部104から逐次入力される特定の撮影画像データ27Dのごとの位置検出結果に基づき、前眼部像27を複数に分割した複数の領域27Rごとに細隙光L1の積算照射時間を経時的に測定(演算)する。なお、個々の領域27Rの大きさは特に限定されず、個々の領域27Rが1画素で構成されていてもよいし或いは複数画素で構成されていてもよい。
領域27Rごとの細隙光L1の積算照射時間は、上記第2実施形態で説明した細隙光L1の積算照射時間の演算を領域27Rごとに個別に実行することで求められる。以下、照射時間測定部82は、照射位置検出部104から新たな位置検出結果が入力されるごとに、領域27Rごとの細隙光L1の積算照射時間の演算を繰り返し実行する。これにより、照射時間測定部82による領域27Rごとの積算照射時間の測定が継続的に行われる。そして、照射時間測定部82は、領域27Rごとの細隙光L1の積算照射時間を演算するごとに、新たな演算結果を、領域27Rごとの積算照射時間の測定結果として照射光量推定部84へ逐次出力する。
第3実施形態の照射光量推定部84は、照射時間測定部82から逐次入力される領域27Rごとの細隙光L1の積算照射時間の測定結果と、駆動条件取得部80から入力される光源31の駆動条件と、記憶部61内の対応情報90とに基づき、領域27Rごとの細隙光L1の照射光量を継続的に推定する。なお、領域27Rごとの細隙光L1の照射光量は、上記第1実施形態で説明した細隙光L1の照射光量の演算を領域27Rごとに実行することで求められる。そして、照射光量推定部84は、領域27Rごとの細隙光L1の照射光量を推定するごとに、新たな推定結果を第1報知制御部86及び第2報知制御部88へ逐次出力する。
第3実施形態の第1報知制御部86は、照射光量推定部84から領域27Rごとの細隙光L1の照射光量の推定結果が入力されるごとに、領域27Rごとの最新の細隙光L1の照射光量を表わした積算マップ画像106を生成し、この積算マップ画像106を表示部62Aに表示されている前眼部像27に重畳表示させる。これにより、表示部62Aに表示される積算マップ画像106が逐次更新される。その結果、検者は、被検眼Eの前眼部の領域27Rごとの照射光量をリアルタイムで把握することができる。
なお、図15に示した積算マップ画像106では、領域27Rごとの細隙光L1の照射光量の大小を画像の濃淡(色分布)で表現しているが、領域27Rごとの細隙光L1の照射光量の大小を判別可能であれば積算マップ画像106の表示態様は特に限定されるものではない。
第3実施形態の第2報知制御部88は、照射光量推定部84から逐次入力される領域27Rごとの細隙光L1の照射光量の推定結果に基づき、領域27Rごとに細隙光L1の照射光量が予め定められた上限値よりも大きくなるか否かを判定する。そして、第2報知制御部88は、各領域27Rのいずれかにおいて細隙光L1の照射光量が上限値よりも大きくなった場合には、上記各実施形態と同様に、光ハザードの警告情報94を表示部62Aに表示させると共にスピーカ62Bから音声出力させる。
以上のように第3実施形態では、被検眼Eの前眼部の領域27Rごとに細隙光L1の照射光量を推定することができるので、検者が領域27Rごとの照射光量(すなわち照射光量分布)を容易に把握することができる。その結果、被検眼Eの前眼部の全ての領域27Rを光ハザードからより確実に保護することができる。
[第4実施形態]
図16は、第4実施形態の細隙灯顕微鏡10の制御部20の機能ブロック図である。上記各実施形態では照明系18から被検眼Eに対して細隙光L1(白色光)を照射しているが、照明系18は、既述の通り、フィルタターレット39を回転させて各光学フィルタ38を照明系18の光路中に選択的に挿入することで各種の光を被検眼Eに照射することができる。
例えば、照明系18は、被検眼Eの蛍光観察時にはブルーフィルタを照明光の光路中に挿入することで被検眼Eに対して青色光(励起光)を照射し、被検眼Eのマイボーム腺観察時にはIR透過フィルタを照明光の光路中に挿入することで被検眼Eに対して赤外光を照射する。従って、照明系18は、互いに異なる複数の波長域の光を選択的に被検眼Eに照射する。
この際に、低波長域側の青色光のエネルギーは長波長域側の赤外光のエネルギーよりも高いので、被検眼Eに対して青色光及び赤外光をそれぞれ同じ照射光量分だけ照射したとしても被検眼Eに対する影響は青色光の方が赤外光よりも大きい。このため、被検眼Eを光ハザードから保護するためには、照明系18から被検眼Eに照射される光の波長域を考慮して照射光量の推定及び警告情報94の報知等を行うことが好ましい。
そこで、図16に示すように第4実施形態では、照明系18から被検眼Eに照射される光の波長域を考慮して照射光量の推定及び警告情報94の報知等を行う。なお、第4実施形態の細隙灯顕微鏡10は、制御部20が既述の各部の他に波長域検出部110及び乗算部112として機能し、且つ記憶部61内に係数情報114が記憶されている点を除けば、上記各実施形態と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
波長域検出部110は、照明系18から被検眼Eに対して照射される光の波長域を検出する。例えば、波長域検出部110は、フィルタターレット39からその設定情報、すなわち照明系18の光路中に挿入されている光学フィルタ38の種類に関する情報を取得することで、被検眼Eに対して照射される光の波長域を検出する。
また、被検眼Eに対して照射される光の波長域に応じて既述の撮影画像データ27Dに基づく前眼部像27及びその背景画像の色が変化する。例えば、蛍光観察時には前眼部像27及びその背景画像が緑色画像となり、赤外光観察時には前眼部像27及びその背景画像がモノクロ画像となる。このため、波長域検出部110は、撮像素子53から逐次出力される撮影画像データ27Dを画像解析(色解析)することで、照明系18から被検眼Eに照射される光の波長域を検出することができる。
そして、波長域検出部110は、照明系18から被検眼Eに照射される光の波長域を継続的に検出すると共に、その検出結果を乗算部112に対して逐次出力する。
第4実施形態の駆動条件取得部80及び照射時間測定部82は、上記各実施形態と基本的に同じである。なお、上記第2実施形態及び第3実施形態で説明した方法で積算照射時間の測定を行う場合には、既述の光照射検出部100が、撮影画像データ27Dごとに、撮影画像データ27Dの画像解析(色解析等)を行って被検眼Eの前眼部に対する光の照射の有無を検出する。これにより、照射時間測定部82は上記第2実施形態及び第3実施形態と同様に積算照射時間を求めることができる。
第4実施形態の照射光量推定部84は、上記各実施形態と同様の方法で被検眼Eに照射される各種光の照射光量を継続的に推定すると共に、この照射光量の推定結果を乗算部112に逐次出力する。
乗算部112は、照射光量推定部84から被検眼Eに対する新たな光の照射光量の推定結果が入力されるごとに、この光の照射光量に対して、その光の波長域に対応した係数(重み付け関数ともいう)を乗算する所謂重み付けを行う。
最初に乗算部112は、被検眼Eに照射されている光の波長域に対応した係数を決定する。この決定には記憶部61内の係数情報114が用いられる。係数情報114は、被検眼Eに照射される光の波長域と、照射光量推定部84により推定された光の照射光量に乗ずる係数との対応関係を記憶したものであり、例えば既述のISO規格等に基づいて予め定められている。これにより、乗算部112は、波長域検出部110から新たに光の波長域の検出結果が入力されるごとに、記憶部61内の係数情報114を参照することで、被検眼Eに照射されている光の波長域に対応した係数を決定することができる。
次いで、乗算部112は、決定した係数を、照射光量推定部84から新たに入力された光の照射光量に乗算し、乗算後の照射光量を第1報知制御部86及び第2報知制御部88の双方に出力する。以下、乗算部112は、波長域検出部110から逐次入力される光の波長域の検出結果と、照射光量推定部84から逐次入力される光の照射光量と、係数情報114とに基づいて、係数の決定と、照射光量への係数の乗算と、乗算後の照射光量の出力とを継続的に実行する。
第4実施形態の第1報知制御部86は、乗算部112から新たな乗算後の照射光量が入力されるごとに、最新の照射光量情報92を表示部62Aに表示させると共にスピーカ62Bから音声出力させる。また、第4実施形態の第2報知制御部88は、乗算部112から新たな乗算後の照射光量が入力されるごとに、最新の乗算後の照射光量が予め定められた上限値よりも大きくなるか否かを判定して、この照射光量が上限値よりも大きくなる場合には警告情報94を表示部62Aに表示させると共にスピーカ62Bから音声出力させる。
以上のように第4実施形態では、照明系18から被検眼Eに照射される光の波長域を考慮して照射光量の推定及び警告情報94の報知等を行うので、被検眼Eに照射される光の波長域に関係なく被検眼Eを光ハザードから確実に保護することができる。
[その他]
図17は、表示部62Aの一例を説明するための説明図である。上記各実施形態では、警告情報94を表示する表示部62Aとして液晶ディスプレイ等の外部モニタを例に挙げて説明したが、この表示部62Aとして例えば鏡筒本体24内に設けられたマイクロディスプレイ(マイクロディスプレイプロジェクタともいう)を用いてもよい。
図17に示すようにマイクロディスプレイ型の表示部62Aは、接眼レンズ48を通して前眼部像27を観察する観察眼Eoの焦点位置(焦点位置の近傍を含む)であって、且つ結像位置Pに結像される前眼部像27に隣接する位置(観察眼Eoによる前眼部像27の観察を妨げない位置)に設けられている。このような表示部62Aとしては、例えば反射型液晶パネル(Liquid crystal on silicon)、DMD(Digital Micro mirror Device)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、ELディスプレイ(electroluminescence display)、透過型液晶ディスプレイ、及び画像生成用のマイクロスキャナなどが用いられる。
マイクロディスプレイ型の表示部62Aは、制御部20(第1報知制御部86及び第2報知制御部88)の制御の下、既述の照射光量情報92及び警告情報94を表示する。これにより、検者は接眼部24aから観察眼Eoを離すことなく、前眼部像27を観察しながら照射光量情報92及び警告情報94を確認することができる。
上記各実施形態では、表示部62A及びスピーカ62Bの双方を用いて検者に対して照射光量情報92及び警告情報94を報知しているが、表示部62A及びスピーカ62Bの一方のみで報知を行ってもよい。
上記各実施形態では、表示部62Aとして外部モニタ及びマイクロディスプレイを例に挙げて説明したが、例えば、メータパネル及び複数色のランプ(照射光量の増加に応じて発光色が変わり、光ハザードの警告の場合には赤色発光)などのように照射光量情報92及び警告情報94を報知可能な各種の報知部材(本発明の警告情報報知部及び照射光量報知部に相当)を用いてよい。
図18は、細隙灯顕微鏡10とは異なる本発明の眼科装置の装置本体200の概略図である。上記各実施形態では本発明の眼科装置として細隙灯顕微鏡10を例に挙げて説明したが、本発明は細隙灯顕微鏡10に限定されるものではない。例えば、図18に示すような装置本体200を有する各種眼科装置にも本発明を適用することができる。
装置本体200は、照射系202と、ビームスプリッタ204と、光学素子206と、撮影系208(受光系)と、を備える。照射系202は、各種光を出射する光源202aを備える。ビームスプリッタ204は、例えば、ハーフミラー、ダイクロイックミラー、又は偏光ビームスプリッタであり、照射系202から入射する光を光学素子206に向けて出射すると共に、光学素子206から入射した光を撮影系208に向けて反射する。光学素子206は、例えば対物レンズを備えており、ビームスプリッタ204から入射した光を被検眼Eへ照射すると共に、被検眼Eにて反射された光をビームスプリッタ204に入射させる。撮影系208は、ビームスプリッタ204にて反射された被検眼Eからの光を撮像(受光)する撮像素子208a(受光素子)を備える。
このような装置本体200を有する各種眼科装置にも本発明を適用することで、上記各実施形態と同様に、被検眼Eを光ハザードから保護することができる。なお、このような眼科装置としては、被検眼Eに対して照明光(観察光)又は検査光などの各種の光を照射するOCT装置、眼底カメラ、及びSLOなどが例として挙げられる。