以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。本明細書において、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。
図1は、一実施形態に係る薄化システムを示す平面図である。薄化システム1は、下地基板100を薄化する。下地基板100は、円板状の処理体である。また、薄化システム1は、下地基板100を薄化する前に、下地基板100のベベル104を除去する。ベベル104とは、面取り加工が施された部分である。ベベル104は、図2ではR面取り加工が施された部分であるが、C面取り加工が施された部分であってもよい。
下地基板100は、例えばシリコンウェハまたは化合物半導体ウェハなどの半導体基板である。下地基板100の片面には、図2に示すようにデバイス層110が予め形成される。デバイス層110は、電子回路である。以下、下地基板100のデバイス層110が形成される主表面を、第1主表面101とも呼ぶ。また、第1主表面101とは反対向きの主表面を、第2主表面102とも呼ぶ。第2主表面102は、下地基板100の薄化によって第1主表面101に近づく。
図2は、一実施形態に係る下地基板、デバイス層、および支持基板を示す側面図である。デバイス層110の、下地基板100とは反対側の表面には、酸化層120が形成される。酸化層120は、下地基板100のベベル104を円滑に除去すべく、下地基板100の直径よりも小さく形成される。酸化層120は、例えば酸化シリコン層である。酸化シリコン層は、例えばオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)で形成される。
支持基板130は、下地基板100と同様に、シリコンウェハまたは化合物半導体ウェハなどの半導体基板である。支持基板130は、デバイス層110を介して下地基板100と貼合される。
支持基板130の、デバイス層110に対向する表面には、酸化層140が形成される。酸化層140は、酸化層120と同様に形成される。なお、酸化層140と支持基板130との間には、不図示のデバイス層が形成されてもよい。
重合基板150は、下地基板100と、デバイス層110と、2つの酸化層120、140と、支持基板130とを有する。2つの酸化層120、140は、加熱処理によって結合される。なお、重合基板150は、2つの酸化層120、140のうちの1つのみを有してもよい。
薄化システム1は、下地基板100を薄化する。また、薄化システム1は、下地基板100を薄化する前に、下地基板100のベベル104を除去する。薄化システム1は、図1に示すように、搬入出ステーション2と、処理ステーション3と、制御装置9とを備える。搬入出ステーション2と、処理ステーション3とは、この順で、X軸方向負側からX軸方向正側に配置される。
搬入出ステーション2は、複数の載置部21を備える。複数の載置部21は、Y軸方向に一列に配置される。複数の載置部21には、複数のカセットCS1~CS3が載置される。カセットCS1は、処理前の重合基板150を鉛直方向に間隔をおいて複数収容する。カセットCS2は、処理後の重合基板150を鉛直方向に間隔をおいて複数収容する。カセットCS3は処理の途中で異常の生じた重合基板150を鉛直方向に間隔をおいて複数収容する。なお、載置部21の数は特に限定されない。同様に、カセットCS1~CS3の数も特に限定されない。
また、搬入出ステーション2は、搬送部23を備える。搬送部23は、複数の載置部21の隣に配置され、例えばこれらのX軸方向正側に配置される。また、搬送部23は、受渡部26の隣に配置され、例えば受渡部26のX軸方向負側に配置される。搬送部23は、搬送装置24を内部に備える。
搬送装置24は、重合基板150を保持する保持機構を備える。保持機構は、水平方向(X軸方向およびY軸方向の両方向)および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能である。搬送装置24は、複数の載置部21に載置された複数のカセットCS1~CS3と、受渡部26との間で、重合基板150を搬送する。
また、搬入出ステーション2は、受渡部26を備える。受渡部26は、搬送部23の隣に配置され、例えば搬送部23のX軸方向正側に配置される。また、受渡部26は、処理ステーション3の隣に配置され、例えば、処理ステーション3のX軸方向負側に配置される。受渡部26は、トランジション装置27を有する。トランジション装置27は、重合基板150を一時的に収容する。複数のトランジション装置27が鉛直方向に積み重ねられてもよい。トランジション装置27の配置や個数は、特に限定されない。
処理ステーション3は、第1処理ブロック4と、第2処理ブロック5と、搬送ブロック6とを備える。第1処理ブロック4は、搬送ブロック6の隣に配置され、例えば、搬送ブロック6のY軸方向正側に配置される。第2処理ブロック5は、搬送ブロック6の隣に配置され、例えば、搬送ブロック6のY軸方向負側に配置される。
第1処理ブロック4は、例えば、レーザー加工装置41と、ベベル除去装置42と、薄化装置43とを有する。レーザー加工装置41は、図4に示すように下地基板100の内部にレーザー光線LBの集光点Pを形成し、その集光点Pに第1改質層M1および第2改質層M2を形成する。ベベル除去装置42は、下地基板100に外力を加え、第1改質層M1を起点に形成される第1クラックC1と、第2改質層M2を起点に形成される第2クラックC2とを伸展し、下地基板100のベベル104を除去する。レーザー加工装置41は、図6に示すように下地基板100の内部にレーザー光線LBの集光点Pを形成し、その集光点Pに第3改質層M3を形成する。薄化装置43は、図9に示すように下地基板100に外力を加え、第3改質層M3を起点に形成される第3クラックC3を面状に広げ、下地基板100を厚さ方向に分割し、下地基板100を薄化する。
第2処理ブロック5は、例えば、洗浄装置51と、エッチング装置52とを有する。洗浄装置51は、下地基板100の第2主表面102を洗浄する。エッチング装置52は、下地基板100の第2主表面102をエッチングする。薄化で生じたダメージ層を除去できる。
搬送ブロック6は、トランジション装置27の隣に配置され、例えばトランジション装置27のX軸方向正側に配置される。搬送ブロック6は、搬送装置61を内部に備える。搬送装置61は、重合基板150を保持する保持機構を備える。保持機構は、水平方向(X軸方向およびY軸方向の両方向)および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能である。搬送装置61は、重合基板150を、トランジション装置27、レーザー加工装置41、ベベル除去装置42、薄化装置43、洗浄装置51およびエッチング装置52に対して、予め設定された順番で搬送する。
なお、レーザー加工装置41、ベベル除去装置42、薄化装置43、洗浄装置51およびエッチング装置52の配置および個数は、図1に示す配置および個数に限定されない。これらの装置のうちの、複数の装置が鉛直方向に積み重ねられてもよい。一の装置の内部に、他の一の装置が組み込まれてもよい。
制御装置9は、例えばコンピュータであり、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)91と、メモリなどの記憶媒体92とを備える。記憶媒体92には、薄化システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御装置9は、記憶媒体92に記憶されたプログラムをCPU91に実行させることにより、薄化システム1の動作を制御する。また、制御装置9は、入力インターフェース93と、出力インターフェース94とを備える。制御装置9は、入力インターフェース93で外部からの信号を受信し、出力インターフェース94で外部に信号を送信する。
上記プログラムは、例えばコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶され、その記憶媒体から制御装置9の記憶媒体92にインストールされる。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどが挙げられる。なお、プログラムは、インターネットを介してサーバからダウンロードされ、制御装置9の記憶媒体92にインストールされてもよい。
図3は、一実施形態に係る薄化方法を示すフローチャートである。薄化方法は、図3の工程S101~S106を含む。これらの工程S101~S106は、制御装置9による制御下で実施される。
先ず、搬送装置24が、載置部21に載置されたカセットCS1から重合基板150を取り出し、トランジション装置27に搬送する。続いて、搬送装置61が、トランジション装置27から重合基板150を受け取り、レーザー加工装置41に搬送する。
図4は、一実施形態に係る第1改質層および第2改質層の形成時のレーザー加工装置を示す断面図である。図5は、一実施形態に係る第1分割面および第2分割面の位置を示す平面図である。
レーザー加工装置41は、保持部210と、集光照射部220と、変位部230とを有する。保持部210は、下地基板100の第2主表面102を上に向けて、下地基板100を下方から水平に保持する。例えば、保持部210は、支持基板130およびデバイス層110を介して下地基板100を保持する。保持部210は、真空チャックまたは静電チャックなどである。
集光照射部220は、集光レンズ221を有する。集光レンズ221は、保持部210で下地基板100を保持した状態で、下地基板100を基準としてデバイス層110とは反対側(例えば上側)から、下地基板100の内部にレーザー光線LBの集光点Pを形成し、その集光点Pに改質層を形成する。レーザー光線LBは、パルス発振される。
下地基板100が単結晶シリコンである場合、レーザー光線LBとして赤外線が用いられる。赤外線は単結晶シリコンに対して高い透過性を有し、赤外線の集光点Pに、改質層としてアモルファスシリコン層が形成される。改質層は、下地基板100の分割の起点になる。下地基板100の分割は、応力の印加によって行われる。
集光照射部220は、空間光変調器222を有する。空間光変調器222は、レーザー光線LBの空間分布を制御する。空間分布は、例えば位相、偏波面、振幅、強度および伝播方向を含む。空間光変調器222は、例えばLCOS(Liquid Crystal on Silicon)を含む。空間光変調器222は、下地基板100の第2主表面102から集光点Pまでの深さを調節できる。また、空間光変調器222は、下地基板100に照射されるレーザー光線LBの形状および数のうちの少なくとも1つを調節できる。空間光変調器222は、複数の点に同時にレーザー光線LBを照射できる。
変位部230は、保持部210と集光照射部220とを相対的に変位させ、下地基板100における集光点Pを変位させる。変位部230は、例えば、第1駆動部231と、第2駆動部232と、第3駆動部233とを有する。第1駆動部231は、保持部210を、鉛直な回転軸211を中心に回転させる。第2駆動部232は、保持部210を、水平なガイドレール212に沿って移動させる。第3駆動部233は、集光照射部220を、鉛直方向に移動させる。
第1駆動部231と第2駆動部232とは、レーザー光線LBの集光点Pを、下地基板100の周方向と下地基板100の径方向とに変位させる。第2駆動部232は、本実施形態では保持部210を水平方向に移動させるが、集光照射部220を水平方向に移動させてもよい。
また、第3駆動部233は、レーザー光線LBの集光点Pを、下地基板100の厚さ方向に変位させる。第3駆動部233は、本実施形態では集光照射部220を鉛直方向に移動させるが、保持部210を鉛直方向に移動させてもよい。
レーザー加工装置41は、下地基板100を径方向に分割する第1分割面D1に、第1改質層M1を形成する(図1のS101)。第1分割面D1は、下地基板100の外周面103と同心円状の円周面である。第1改質層M1は、下地基板100の周方向と下地基板100の厚さ方向に間隔をおいて複数形成される。第1改質層M1の形成時に、第1改質層M1同士をつなぐ第1クラックC1が生じる。
第1分割面D1は、下地基板100のベベル104よりも径方向内側に配置される。第1分割面D1よりも径方向外側の部分105を除去することにより、ベベル104を除去できる。ベベル104を除去したうえで下地基板100の薄化を行うことができ、いわゆるナイフエッジ106の発生を防止できる。
また、レーザー加工装置41は、第1分割面D1から下地基板100の外周面103まで放射状に延びる複数の第2分割面D2に、第2改質層M2を形成する(図1のS101)。第2改質層M2は、下地基板100の径方向および厚さ方向に間隔をおいて複数形成される。第2改質層M2の形成時に、第2改質層M2同士をつなぐ第2クラックC2が生じる。
第2分割面D2の数は、図5では8つであるが、2つ以上であればよい。第2分割面D2の数が2つ以上であれば、リング形状の周縁部105を、周方向に分割して除去できる。
第1改質層M1と第2改質層M2とは、どちらが先に形成されてもよい。第1改質層M1と第2改質層M2の形成(図1のS101)の後、搬送装置61が、レーザー加工装置41から重合基板150を受け取り、ベベル除去装置42に搬送する。
次いで、ベベル除去装置42が、下地基板100に外力を加え、第1改質層M1を起点に形成される第1クラックC1と、第2改質層M2を起点に形成される第2クラックC2とを伸展し、下地基板100のベベル104を除去する(図1のS102)。ベベル104の除去によって、下地基板100は径方向に縮小する。径方向に縮小した下地基板100の外周面103は、第1分割面D1と一致する。その後、搬送装置61が、ベベル除去装置42から重合基板150を受け取り、レーザー加工装置41に搬送する。
図6は、一実施形態に係る第3改質層の形成時のレーザー加工装置を示す断面図である。図7は、下地基板の回転時に形成される第3改質層の位置の一例を示す平面図である。図8は、図7に続いて、下地基板の回転時に形成される第3改質層の位置の一例を示す平面図である。図8に示す第3改質層M3の位置と、図7に示す第3改質層M3の位置とは、下地基板100の径方向にずれている。
図6に示すように、レーザー加工装置41は、下地基板100を厚さ方向に分割する第3分割面D3に、第3改質層M3を形成する(図1のS103)。第3分割面D3は、下地基板100の第1主表面101および第2主表面102に対して平行な平坦面である。レーザー加工装置41は、第3分割面D3における集光点Pを、第3分割面D3の周方向と径方向とに変位させ、複数の第3改質層M3を分散して形成する。
第3分割面D3の周方向に集光点Pを変位することと、第3分割面D3の径方向に集光点Pを変位することとが交互に行われ、第3改質層M3が図8に示すように同心円状に配列される。なお、第3分割面D3の周方向に集光点Pを変位することと、第3分割面D3の径方向に集光点Pを変位することとが同時に行われ、第3改質層M3が螺旋状に配列されてもよい。
第3改質層M3は、第3分割面D3の面内に分散して複数形成される。第3改質層M3の形成時に、第3改質層M3同士をつなぐ第3クラックC3が生じる。その後、搬送装置61が、レーザー加工装置41から重合基板150を受け取り、薄化装置43に搬送する。
図9は、一実施形態に係る薄化装置を示す断面図である。薄化装置43は、下地基板100に外力を加え、第3改質層M3を起点に形成される第3クラックC3を面状に広げ、下地基板100を厚さ方向に分割し、下地基板100を薄化する(図1のS104)。
薄化装置43は、例えば、第1保持部310と、第2保持部320と、外力印加部330とを有する。第1保持部310と、第2保持部320とは、下地基板100を挟んで配置され、下地基板100を上下両側から水平に保持する。外力印加部330は、第1保持部310と第2保持部320とを相対的に変位させ、下地基板100に外力を印加する。
外力印加部330は、例えば、第1駆動部331と、第2駆動部332とを有する。第1駆動部331は、第1保持部310と第2保持部320とを鉛直方向に相対的に移動させ、第3分割面D3に引張応力を生じさせる。第2駆動部332は、鉛直な回転中心線を中心に、第1保持部310と第2保持部320とを相対的に回転させ、第3分割面D3に対してねじり応力を印加する。
薄化装置43は、上記の通り、下地基板100を薄化する。薄化した下地基板100は、デバイス層110が形成済みの第1主表面101と、第1主表面101とは反対向きの第2主表面102とを有する。第2主表面102は、第3分割面D3と一致する。その後、搬送装置61が、薄化装置43から重合基板150を受け取り、洗浄装置51に搬送する。
次いで、洗浄装置51が、下地基板100の第2主表面102を洗浄する(図1のS105)。洗浄方法は、例えばスクラブ洗浄である。第2主表面102を洗浄することにより、薄化(図1のS104)で生じたパーティクルなどを除去できる。その後、搬送装置61が、洗浄装置51から重合基板150を受け取り、エッチング装置52に搬送する。
次いで、エッチング装置52が、下地基板100の第2主表面102をエッチングする(図1のS106)。エッチング方法は、例えばウェットエッチングである。第2主表面102をエッチングすることにより、第3改質層M3などのダメージ層を除去できる。
その後、搬送装置61が、エッチング装置52から重合基板150を受け取り、トランジション装置27に搬送する。続いて、搬送装置24が、トランジション装置27から重合基板150を受け取り、載置部21に載置されたカセットCS2に搬送する。その後、今回の処理が終了する。
なお、工程S101~S106の順番は、図3に示す順番には限定されない。例えば、第3改質層M3の形成(S103)の後に、第1改質層M1および第2改質層M2の形成(S101)が行われてもよい。また、第1改質層M1および第2改質層M2の形成(S101)とベベル104の除去(S102)とは行われなくてもよい。また、薄化(S104)の後、エッチング(S106)の前に、第2主表面102の研削が行われてもよい。
図10は、薄化装置で薄化した直後の下地基板の第2主表面の参考例を示す写真である。図10に示す下地基板100は単結晶シリコンウェハであり、その第2主表面102の面指数は(001)であった。第2主表面102の方位指数のうち、<110>、<100>を図10に示す。図10には、方位指数を表す方位角を併記する。<110>は方位角0°であり、<100>は方位角45°である。
本明細書の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示す。結晶学上の指数が負であることは、通常、数字の上にバーを付すことによって表現されるが、本明細書では数字の前に負の符号を付すことによって結晶学上の負の指数を表現する。
円形の第2主表面102は、その周方向に、第1領域A1と第2領域A2とを交互に4つずつ有する。4つの第1領域A1および4つの第2領域A2は、それぞれ、中心角が45°の扇形である。第1領域A1は、その周方向中心の方位角が0°、90°、180°、270°である。一方、第2領域A2は、その周方向中心の方位角が45°、135°、225°、315°である。
図10から明らかなように、第1領域A1に比べて、第2領域A2では、画像の輝度ムラが大きいことから、表面粗さが大きいことが分かる。これは、第3クラックC3の伸びやすさが、単結晶シリコンウェハの方位角に応じて変化するからである。第1領域A1に比べて、第2領域A2では、第3改質層M3の形成時に第3クラックC3が伸び難く、第3クラックC3同士のつながりが不十分である。その結果、第1領域A1に比べて、第2領域A2では、その後の薄化(図1のS104)で第3クラックC3を面状に広げる時に第3クラックC3同士のずれが生じやすく、表面粗さが大きくなると推定される。なお、第2領域A2の表面粗さを小さくするには第3改質層M3のピッチを小さくすることも考えられるが、その場合、スループットが悪くなってしまう。
そこで、本実施形態の制御装置9は、第3分割面D3での集光点Pの位置に応じて、第3分割面D3でのレーザー光線LBの形状を変更する。その形状は、第2主表面102でのレーザー光線LBの形状を相似縮小した形状であるので、第2主表面102でも確認できる。以下、第3分割面D3でのレーザー光線LBの形状をスポット形状とも呼ぶ。スポット形状の変更によって、熱応力分布を変更できるので、第3クラックC3の伸びやすさを改善でき、第2領域A2の表面粗さを低減できる。
例えば、制御装置9は、第3分割面D3の周方向における集光点Pの位置に応じて、スポット形状を変更する。具体的には、制御装置9は、第3分割面D3の周方向に交互に並ぶ第1領域A1と第2領域A2とで、スポット形状を変更する。スポット形状の変更は、例えば空間光変調器222によって行う。空間光変調器222は、上記の通り、レーザー光線LBの空間分布を制御できるので、スポット形状を変更できる。
スポット形状は、第1領域A1では第1形状であり、第2領域A2では第1形状とは異なる第2形状である。第1形状は例えば円形であり、第2形状は例えば楕円形である。スポット形状は、円形、または楕円形には限定されず、例えば、長方形またはひし形などであってもよい。なお、図10に示す従来例では、第1領域A1と第2領域A2との両方で、スポット形状が円形であった。
図11は、下地基板の1回転中に第1領域のみに第3改質層を形成する処理の一例を示す平面図である。図12は、下地基板の1回転中に第2領域のみに第3改質層を形成する処理の一例を示す平面図である。図11および図12に示すように、円形の第3分割面D3は、その周方向に、第1領域A1と第2領域A2とを交互に繰り返し有する。第1領域A1および第2領域A2は、それぞれ、扇形である。
例えば、制御装置9は、図11に示すように、下地基板100を1回転させる間に、複数の第1領域A1のそれぞれに第3改質層M3を形成する。下地基板100を1回転させるのは、第3分割面D3における集光点Pの位置を、第3分割面D3の周方向に1回転させるためである。制御装置9は、下地基板100を1回転させる間に、複数の第1領域A1のみに第3改質層M3を形成する。その間、空間光変調器222がスポット形状を切換えないので、切換えにかかる時間を省略できる。
続いて、制御装置9は、図12に示すように、下地基板100を1回転させる間に、複数の第2領域A2のそれぞれに第3改質層M3を形成する。制御装置9は、下地基板100を1回転させる間に、複数の第2領域A2のみに第3改質層M3を形成する。その間、空間光変調器222がスポット形状を切換えないので、切換えにかかる時間を省略できる。
次いで、制御装置9は、下地基板100をX軸方向に移動させる。下地基板100をX軸方向に移動させるのは、第3分割面D3における集光点Pを、第3分割面D3の径方向に変位させるためである。その後、制御装置9は、下地基板100の1回転中に第1領域A1のみに第3改質層M3を形成することと、下地基板100の1回転中に第2領域A2のみに第3改質層M3を形成することとを実施する。
上記の通り、制御装置9は、下地基板100の1回転中に第1領域A1のみに第3改質層M3を形成することと、下地基板100の1回転中に第2領域A2のみに第3改質層M3を形成すること、下地基板100をX軸方向に移動させることとを繰り返し実施する。これにより、第3分割面D3の全体に、第3改質層M3を形成できる。第3改質層M3は、径方向外側から径方向内側に順次形成されるが、径方向内側から径方向外側に順次形成されてもよい。つまり、制御装置9は、第3分割面Dにおける集光点Pを、第3分割面D3の径方向外側から径方向内側に変位させる代わりに、径方向内側から径方向外側に変位させてもよい。
なお、制御装置9は、上記の通り、空間光変調器222によるスポット形状の切換えにかかる時間を省略すべく、下地基板100の1回転中に第1領域A1と第2領域A2のうちのいずれか1つのみに第3改質層M3を形成するが、本開示の技術はこれには限定されない。
例えば、制御装置9は、下地基板100の1回転中に、一の集光照射部220によって第1領域A1のみに第3改質層M3を形成し、且つ、他の一の集光照射部220によって第2領域A2のみに第3改質層M3を形成してもよい。つまり、制御装置9は、第1領域A1と第2領域A2とで、スポット形状を切換えるべく、集光照射部220を切換えてもよい。この場合も、空間光変調器222がスポット形状を切換えないので、切換えにかかる時間を省略できる。また、下地基板100の1回転中に第1領域A1と第2領域A2の両方に第3改質層M3を形成するので、下地基板100の回転回数を半分に低減でき、所要時間を短縮できる。
図13は、変形例に係る第1領域と第2領域とを示す平面図である。図11および図12に示す例では、制御装置9は、第3分割面D3の周方向における集光点Pの位置に応じて、レーザー光線LBのスポット形状を変更する。これに対し、図13に示す例では、制御装置9は、第3分割面D3の径方向における集光点Pの位置に応じて、レーザー光線LBのスポット形状を変更する。
図13に示すように、円形の第3分割面D3は、その径方向に、第1領域B1と第2領域B2とを交互に繰り返し有する。第1領域B1および第2領域B2は、それぞれ、リング形状である。制御装置9は、下地基板100の径方向に交互に並ぶ第1領域B1と第2領域B2とで、レーザー光線LBのスポット形状を切換える。
スポット形状は、第1領域B1では第1形状であり、第2領域B2では第1形状とは異なる第2形状である。第1形状は、図10に示す第1領域A1で第3クラックC3同士をつなげるのに適した形状、例えば円形である。一方、第2形状は、図10に示す第2領域A2で第3クラックC3同士をつなげるのに適した形状、例えば楕円形である。その結果、第3クラックC3同士が、第3分割面D3の全体的に均等につながる。
例えば、制御装置9は、(1)下地基板100を1回転させる間に、第1領域B1に第3改質層M3を形成する。続いて、制御装置9は、(2)下地基板100をX軸方向に移動させる。次いで、制御装置9は、(3)下地基板100を1回転させる間に、第2領域B2に第3改質層M3を形成する。次いで、制御装置9は、(4)下地基板100をX軸方向に移動させる。
その後、制御装置9は、上記(1)、(2)、(3)および(4)を繰り返し実施する。これにより、第3分割面D3の全体に、第3改質層M3を形成できる。第3改質層M3は、径方向外側から径方向内側に順次形成されるが、径方向内側から径方向外側に順次形成されてもよい。
制御装置9は、上記の通り、下地基板100の1回転中に第1領域B1と第2領域B2のうちのいずれか1つのみに第3改質層M3を形成する。その間、空間光変調器222がスポット形状を切換えないので、切換えにかかる時間を省略できる。また、下地基板100の1回転中に、1つの集光点Pのみで、第3分割面D3の周方向全体に第3改質層M3を形成できる。
なお、制御装置9は、上記の通り、下地基板100の1回転中に第1領域B1と第2領域B2のうちのいずれか1つのみに第3改質層M3を形成するが、本開示の技術はこれには限定されない。空間光変調器222は、上記の通り、複数の点に同時にレーザー光線LBを照射できるので、下地基板100の1回転中に第1領域B1と第2領域B2との両方に同時に第3改質層M3を形成できる。
また、制御装置9は、下地基板100の1回転中に、一の集光照射部220によって第1領域B1のみに第3改質層M3を形成し、且つ、他の一の集光照射部220によって第2領域B2のみに第3改質層M3を形成してもよい。つまり、制御装置9は、第1領域B1と第2領域B2とで、スポット形状を切換えるべく、集光照射部220を切換えてもよい。
図14は、変形例に係る薄化方法を示すフローチャートである。図14に示す薄化方法は、第3改質層M3の形成(S103)の後、薄化(S104)の前に、曲げ変形(S111)を含む。以下、図3に示す薄化方法との相違点について主に説明する。
図15は、曲げ変形を実施する前の、曲げ変形装置の第1例を示す断面図である。図16は、曲げ変形を実施した後の、曲げ変形装置の第1例を示す断面図である。曲げ変形装置45は、下地基板100を曲げ変形し、下地基板100の外周で第3クラックC3を開く。第3クラックC3を開くことで、くさび形の空間が形成される。下地基板100の外周に薄化の起点を形成できるので、薄化を容易に実施できる。
曲げ変形装置45は保持部410を有し、保持部410はリング411と蓋416とを含む。リング411は、下地基板100を支持する支持面412を有する。支持面412は、第3クラックC3を開く部分を、片側(例えば下側)から平坦に支持する。リング411は、例えば、支持基板130およびデバイス層110を介して下地基板100を支持する。蓋416は、リング411の内側の空間415を、下地基板100とは反対側から塞ぐ。リング411が下地基板100を支持すると、リング411と下地基板100と蓋416とが空間415を密閉する。
曲げ変形装置45は排気部420を有し、排気部420はリング411の支持面412と、密閉された空間415とに負圧を発生させる。排気部420は、例えば真空ポンプなどの排気源と、負圧の大きさを制御する圧力制御器とを含む。排気部420の数は、1つでもよいが、図15に示すように複数であってよい。リング411の支持面412と、密閉された空間415とに独立に負圧を発生できる。
リング411は、支持面412に、吸引溝413を有する。吸引溝413は、例えばリング形状に形成される。吸引溝413の本数は、1本であるが、複数本であってもよい。複数本の吸引溝413は、同心円状に配置される。排気部420は、吸引溝413のガスを排気し、支持面412に負圧を発生させ、支持面412に下地基板100を吸着させる。
排気部420は、密閉された空間415のガスを排気し、空間415に負圧を発生させ、空間415に下地基板100を引き込み、下地基板100を曲げ変形させる。曲げ応力によって、下地基板100の外周で第3クラックC3が開き、くさび形の空間が形成される。その結果、第3クラックC3を開く部分の、リング411とは反対側の表面が変位する。
曲げ変形装置45は、第3クラックC3を開く部分の、リング411とは反対側の表面の変位を計測する変位計430を有する。変位計430として、例えば非接触式のレーザー変位計が用いられる。なお、変位計430として、接触式のものが用いられてもよい。変位計430は、その計測結果を制御装置9に送信する。制御装置9は、変位計430の計測結果に基づき、第3クラックC3の開きの大きさが基準の大きさ以上か否かを判断できる。基準の大きさは、薄化(S104)を容易に実施できるように、例えば薄化でチッピングが生じないように、予め実験等で決められる。
制御装置9は、変位計430の計測結果に基づき、空間415の負圧の大きさを制御してもよい。空間415の負圧の大きさが大きいほど、下地基板100の曲げ変形が大きく、曲げ応力の大きさが大きいので、第3クラックC3の開きの大きさが大きい。制御装置9は、第3クラックC3の開きの大きさが基準の大きさよりも小さいと判断した場合、空間415の負圧の大きさを大きくする。その結果、第3クラックC3を大きく開くことができる。
曲げ変形装置45は、例えば図1に示す第1処理ブロック4に備えられる。曲げ変形装置45は、レーザー加工装置41、ベベル除去装置42および薄化装置43から選ばれる少なくとも1つと、水平に並べて配置されてもよいし、鉛直に並べて配置されてもよい。また、曲げ変形装置45はレーザー加工装置41に組込まれてもよく、曲げ変形装置45の保持部410はレーザー加工装置41の保持部210を兼ねてもよい。また、曲げ変形装置45は、レーザー加工装置41ではなく、ベベル除去装置42または薄化装置43に組込まれてもよい。
図17は、曲げ変形装置の第2例を示す断面図である。図18は、曲げ変形装置の第2例を示す平面図である。以下、図15および図16に示す曲げ変形装置45との相違点について主に説明する。
図17および図18に示すように、保持部410は、リング411の内側に、下地基板100を支持する支持ピン417を有する。支持ピン417は、リング411の周方向に間隔をおいて複数設けられる。複数の支持ピン417に沿って下地基板100を波状に変形でき、曲げ応力の大きさを下地基板100の周方向に周期的に変更できる。その結果、曲げ応力の大きさの大きい部分で、第3クラックC3の開きの大きさを大きくできる。
図19は、曲げ変形装置の第3例を示す断面図である。以下、図15~図18に示す曲げ変形装置45との相違点について主に説明する。
図19に示すように、曲げ変形装置45は保持部510を有し、保持部510は下地基板100を支持基板130とは反対側から保持する。保持部510は下地基板100の第2主表面102の全体を平坦に保持する。保持部510は、例えば真空チャックまたは静電チャックなどである。
曲げ変形装置45は押圧部520を有し、押圧部520は支持基板130の下地基板100に対向する面131の、下地基板100よりも径方向外側の部分を押す。支持基板130に追従するように下地基板100を曲げ変形でき、下地基板100の外周で第3クラックC3を開くことができる。
押圧部520は接触子521を有し、接触子521は支持基板130と接触する。接触子521は、例えば支持基板130と接触する回転体522と、回転体522を回転自在に保持するホルダ523とを有する。回転体522は、図19では車輪であるが、ボールでもよく、その形状は特に限定されない。回転体522は、下地基板100の径方向に延びる回転中心線524を中心に回転する。
押圧部520は移動駆動部525を有し、移動駆動部525は下地基板100の第2主表面102に対して垂直な方向に接触子521を移動させる。移動駆動部525は、ホルダ523を介して回転体522を支持基板130に押し付ける。移動駆動部525は、例えばエアシリンダを含む。なお、移動駆動部525は、回転モータと、回転モータの回転運動を接触子521の直線運動に変換するボールねじとを含んでもよい。
曲げ変形装置45は回転駆動部530を有し、回転駆動部530は保持部510を回転させ、支持基板130の接触子521と接触する位置を下地基板100の周方向に変位させる。その結果、下地基板100の外周全周に亘って、下地基板100の外周で第3クラックC3を開くことができる。その結果、第3クラックC3を開く部分の、保持部510とは反対側の表面が変位する。
曲げ変形装置45は、第3クラックC3を開く部分の、保持部510とは反対側の表面の変位を計測する変位計540を有する。変位計540として、例えば非接触式のレーザー変位計が用いられる。なお、変位計540として、接触式のものが用いられてもよい。変位計540は、その計測結果を制御装置9に送信する。制御装置9は、変位計540の計測結果に基づき、第3クラックC3の開きの大きさが基準の大きさ以上か否かを判断できる。
制御装置9は、変位計540の計測結果に基づき、押圧部520の押す力を制御してもよい。押圧部520の押す力が大きいほど、支持基板130の曲げ変形が大きく、曲げ応力の大きさが大きいので、第3クラックC3の開きの大きさが大きい。制御装置9は、第3クラックC3の開きの大きさが基準の大きさよりも小さいと判断した場合、押圧部520の押す力を大きくする。その結果、第3クラックC3を大きく開くことができる。
曲げ変形装置45は、図19に示す構造とは上下反転した構造を有してもよい。この場合、曲げ変形装置45はレーザー加工装置41に組込まれてもよく、曲げ変形装置45の保持部410はレーザー加工装置41の保持部210を兼ねてもよい。また、曲げ変形装置45は、レーザー加工装置41ではなく、ベベル除去装置42または薄化装置43に組込まれてもよい。
以上、本開示に係るレーザー加工装置、薄化システム、レーザー加工方法、および薄化方法について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
下地基板100は、単結晶基板であればよく、シリコンウェハには限定されない。下地基板100は、例えば、炭化珪素ウェハ、窒化ガリウムウェハ、酸化ガリウムウェハなどであってもよい。単結晶基板は、クラックの伸びやすさが結晶方位に応じて変化するからである。
一方、支持基板130は、単結晶基板でもよいし、単結晶基板ではなく、例えばガラス基板でもよい。支持基板130が単結晶基板である場合、薄化システム1は支持基板130も薄化できる。また、薄化システム1は、他の基板と貼合されない、一枚の基板を薄化してもよい。
薄化システム1で処理する処理体は、円板状のものには限定されず、円柱状のものであってもよい。円柱状の処理体として、インゴットが挙げられる。つまり、薄化システム1は、インゴットから複数枚の基板を作製するのに利用されてもよい。第3分割面D3で分割された2つの分割片がそれぞれ基板となる。
第3分割面D3で分割された2つの分割片がそれぞれ製品となる場合、2つの分割片の直径は同じであってよい。この場合、薄化システム1はベベル除去装置42を有しなくてよく、レーザー加工装置41は第3改質層M3のみを形成してよい。
薄化システム1で処理する処理体は、板状または柱状であればよく、例えば四角板状または四角柱状であってもよい。