(本開示の基礎となった知見)
マイクロ波加熱装置において、加熱対象物を加熱する加熱領域を制御することが求められている。具体的には、加熱する加熱対象物に応じて、加熱室内の所望の領域を狙って加熱すること、又は加熱室内全体を均一に加熱することが求められている。
例えば、加熱室内に異なる2つの加熱対象物を収容して加熱する場合、一方の加熱対象物を加熱し、他方の加熱対象物を加熱しないように、加熱領域を制御することが求められている。
しかしながら、例えば、特許文献1に示すようなマイクロ波加熱装置においては、マグネトロンを用いているため、加熱領域を制御することが困難である。
マグネトロンを用いたマイクロ波加熱装置では、多くの場合、ターンテーブル方式又は回転アンテナ方式が採用されている。ターンテーブル方式では、被加熱部が移動するため、選択加熱は難しい。また、回転アンテナ方式であっても、アンテナの形状・特に直径などにより選択加熱できる範囲が狭く限定されてしまい、また範囲内であっても十分な選択加熱性能を実現することは難しい。また、選択加熱性能と電子レンジの本質機能である均一加熱性能を両立することは現行の給電方式では実現できていない。
本発明者らは、半導体素子を用いて構成されたマイクロ波発生部と、周期構造体とを利用し、マイクロ波発生部から発振される1つ又は複数のマイクロ波の周波数及び/又は位相差を制御することによって加熱領域を容易に制御できることを見出し、以下の発明に至った。
本発明の第1態様のマイクロ波加熱装置は、
加熱対象物を収容する加熱室と、
半導体素子を用いて構成され、且つ1つ又は複数のマイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、
前記1つ又は複数のマイクロ波を前記加熱室に導く導波管と、
前記導波管内に第1方向に周期的に配列された複数の凸部を有し、前記1つ又は複数のマイクロ波を表面波モードで伝播させる周期構造体と、
前記マイクロ波発生部と接続され、且つ前記1つ又は複数のマイクロ波を前記導波管に供給する1つ又は複数の給電部と、
前記1つ又は複数のマイクロ波の周波数を制御することによって、前記加熱対象物を加熱する加熱領域を制御する制御部と、
を備える。
本発明の第2態様のマイクロ波加熱装置においては、前記1つ又は複数の給電部は、前記周期構造体に配置されてもよい。
本発明の第3態様のマイクロ波加熱装置においては、前記マイクロ波発生部は、同じ周波数を有する複数のマイクロ波を発生させ、
前記複数の給電部のうち少なくとも2つの給電部は、互いに間隔を有して前記第1方向に配置されてもよい。
本発明の第4態様のマイクロ波加熱装置においては、
加熱対象物を収容する加熱室と、
半導体素子を用いて構成され、且つ複数のマイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、
前記複数のマイクロ波を前記加熱室に導く導波管と、
前記導波管内に第1方向に周期的に配列された複数の凸部を有し、前記複数のマイクロ波を表面波モードで伝播させる周期構造体と、
前記マイクロ波発生部と接続され、且つ前記複数のマイクロ波を前記導波管に供給する複数の給電部と、
前記複数のマイクロ波間の位相差を制御することによって、前記加熱対象物を加熱する加熱領域を制御する制御部と、
を備え
前記複数の給電部のうち少なくとも2つの給電部は、互いに間隔を有して前記第1方向に配置される。
本発明の第5態様のマイクロ波加熱装置においては、前記制御部は、前記複数のマイクロ波の周波数を制御し、
前記複数のマイクロ波の周波数は、同じであってもよい。
本発明の第6態様のマイクロ波加熱装置においては、前記複数の給電部は、前記周期構造体に配置されてもよい。
本発明の第7態様のマイクロ波加熱装置においては、前記周期構造体の前記複数の凸部は、前記第1方向、及び前記第1方向と異なる第2方向に周期的に配列されてもよい。
本発明の第8態様のマイクロ波加熱装置においては、前記第1方向に配置される前記複数の凸部間の第1沿面距離と、前記第2方向に配置される前記複数の凸部間の第2沿面距離とは異なっており、
前記第1沿面距離は、前記第1方向に配置される隣り合う前記複数の凸部間において前記周期構造体の表面に沿った最小距離であり、
前記第2沿面距離は、前記第2方向に配置される隣り合う前記複数の凸部間において前記周期構造体の表面に沿った最小距離であってもよい。
本発明の第9態様のマイクロ波加熱装置においては、前記周期構造体は、前記加熱室の底部、上部及び側部のうち少なくとも1つに配置されてもよい。
以下、本開示の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。また、各図においては、説明を容易なものとするため、各要素を誇張して示している。
(実施の形態1)
[全体構成]
本発明の実施の形態1に係るマイクロ波加熱装置の一例について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るマイクロ波加熱装置1Aの一例の概略断面構成図である。図1中のX,Y,Z方向は、それぞれ、マイクロ波加熱装置1Aの幅方向、奥行き方向、高さ方向を示す。
図1に示すように、マイクロ波加熱装置1Aは、加熱室10、導波管11、周期構造体20、マイクロ波発生部30、給電部40、及び制御部50を備える。実施の形態1では、マイクロ波加熱装置1Aは、1つの給電部40を備える。また、マイクロ波加熱装置1Aは、制御部50によってマイクロ波発生部30から発生する1つのマイクロ波の周波数を制御する。
<加熱室>
加熱室10は、加熱対象物12を収容する略直方体構造を有する。加熱室10は、金属材料からなる複数の壁面、及び加熱対象物12を収容するために開閉する開閉扉を備える。加熱室10の内部には、加熱対象物12を載置する載置台13が配置されている。載置台13は、加熱室10の底部に配置されている。
<導波管>
導波管11は、マイクロ波を加熱室10内に導くマイクロ波伝送路である。導波管11は、加熱室10の底部に配置されている。導波管11の内部には、周期構造体20が配置されている。なお、実施の形態1では、導波管11で周期構造体20にマイクロ波を給電している構成について記載しているが、これに限定したものではなく、複数の凸部間に電界が生じるようなアンテナを用いて給電する構成であってもよい。
<周期構造体>
周期構造体20は、導波管11内において第1方向(X方向)に周期的に配列される複数の凸部21を有し、マイクロ波を表面波モードで伝播させる。具体的には、周期構造体20に供給されたマイクロ波は、遅波(Slow wave)となり、表面波モード(Surface wave mode)で伝播する。そして、周期構造体20を表面波モードで伝播してきたマイクロ波は、加熱室10内に供給される。
実施の形態1では、複数の凸部21は、マイクロ波の伝播方向に垂直に配列された複数の金属製の板状構造体で構成されている。複数の凸部21は、互いに間隔を有して第1方向に配列されている。また、複数の凸部21は、同一の板状構造体で構成されている。
具体的には、周期構造体20は、導波管11から加熱室10に向かって延びる複数の金属製の板材(複数の凸部21)を配列して構成されている。周期構造体20は、導波管11内部全体に形成されている。
周期構造体20の複数の凸部21間の沿面距離は、マイクロ波発生部30から発生するマイクロ波の波長の1/4の整数倍であることが好ましい。なお、沿面距離とは、複数の凸部21間において周期構造体20の表面に沿った最小距離である。
マイクロ波は、波長の1/4ごとに腹(電界最大値)と節(電界最小値・電界ゼロ)とを繰り返している。複数の凸部21間の沿面距離をマイクロ波の波長の1/4の整数倍にすることで、どの凹凸内の電界分布を比較しても、同じ分布にすることができる。これは、位相ズレを生じさせることなく、隣接する凸部へマイクロ波が伝送されるからである。よって、加熱対象物である1つの食品を均一に加熱することが可能となる。特に、周期構造体20の複数の凸部21間の沿面距離を波長の1/4の奇数倍とした場合、凹部の底面は金属であり、電界の節となるため、凸部21の上面は電界の腹となり、均一加熱に加えて高効率な加熱が可能となる。
図2は、周期構造体20の複数の凸部21間の沿面距離L1を示す図である。図2において、沿面距離L1は、理解し易いようにハッチングで強調して示している。図2に示すように、沿面距離L1は、隣り合う第1凸部21aと第2凸部21bとの間において、周期構造体20の表面に沿った最小距離である。具体的には、沿面距離は、第1凸部21aの頂部を始点として、第1凸部21aと第2凸部21bとの間に形成される凹部を通って、第2凸部21bの頂部を終点とする最小距離である。
<マイクロ波発生部>
マイクロ波発生部30は、半導体素子を用いて構成され、且つマイクロ波を発生させる半導体発振器である。マイクロ波発生部30は、給電部40と接続されている。具体的には、マイクロ波発生部30から出力されたマイクロ波は、給電部40から導波管11内部の周期構造体20に供給される。そして、マイクロ波は、表面波モードで周期構造体20を伝播して加熱室10内に供給される。また、マイクロ波発生部30は、制御部50によって制御される。
図3は、マイクロ波加熱装置1Aの一例の制御ブロック図を示す。図3に示すように、マイクロ波発生部30は、周波数制御部31及び増幅部32を有する。
周波数制御部31は、電源51から供給された電力から、マイクロ波を発振すると共にその発振周波数を制御する。周波数制御部31は、例えば、コンデンサ、インダクタ、抵抗器などの電子部品とトランジスタとを含む帰還回路を有する半導体発振回路である。半導体発振回路は、帰還回路に含まれる共振回路の共振周波数を変更することによって、その発振周波数を容易に変更することができる。
増幅部32は、周波数制御部31から出力されたマイクロ波を増幅する。増幅部32は、例えば、トランジスタなどを含む増幅回路である。
周波数制御部31、増幅部32及び電源51は、制御部50によって制御される。
<給電部>
給電部40は、マイクロ波発生部30と接続され、且つマイクロ波発生部30から出力されたマイクロ波を導波管11に供給する。給電部40は、加熱室10の底部に配置された導波管11に配置されている。実施の形態1では、給電部40は、導波管11の底部に設けられた給電ポート(開口)である。また、給電部40は、周期構造体20に配置されている。具体的には、給電部40は、周期構造体20の隣り合う2つの凸部21の間に配置されている。
給電部40は、例えば、上側から見て矩形状の給電ポートで形成されている。
<制御部>
制御部50は、マイクロ波の周波数を制御することによって、加熱対象物12を加熱する加熱領域を制御する。具体的には、制御部50は、マイクロ波発生部30の周波数制御部31を制御することによって、マイクロ波の周波数を制御する。
制御部50は、マイクロ波の周波数を制御することによって、周期構造体20を伝播するマイクロ波の遅延量を制御することができる。これにより、導波管11から加熱室10内に供給されるマイクロ波の指向性を制御することができる。
制御部50を構成する要素は、例えば、これらの要素を機能させるプログラムを記憶したメモリ(図示せず)と、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサに対応する処理回路(図示せず)を備え、プロセッサがプログラムを実行することでこれらの要素として機能してもよい。
[実施の形態1における加熱制御の解析結果の一例]
マイクロ波加熱装置1Aの加熱制御の解析結果の一例について説明する。加熱制御の解析として、マイクロ波加熱装置1Aの解析モデルを用いて、電界分布解析を行った。なお、電界分布解析は、COMSOL Multiphysics(COMSOL AB社製)を用いて行った。
図4A及び図4Bは、それぞれ、電界分布解析に用いた解析モデル60Aを示す。図4Aは、解析モデル60Aを上から見た図を示す。図4Bは、解析モデル60Aを正面から見た図を示す。なお、図4A及び図4Bにおいて、加熱室10の左側の領域を第1領域R1と称し、加熱室10の右側の領域を第2領域R2と称する。
図4A及び図4Bに示すように、解析モデル60Aは、マイクロ波加熱装置1Aの構成要素を備えると共に、加熱室10内の載置第12の上に2つの加熱対象物61を載置している。解析モデル60Aにおいて、給電部40は加熱室10の左側の第1領域R1に配置されている。
2つの加熱対象物61は、互いに間隔を有して加熱室10内の左右の領域にそれぞれ配置されている。具体的には、解析モデル60Aを上から見て、加熱室10の中心よりも左側の第1領域R1に一方の加熱対象物61を配置し、加熱室10の中心よりも右側の第2領域R2に他方の加熱対象物61を配置する。
解析モデル60Aにおいて、加熱室10は金属導体であり、載置台13はガラスプレートである。また、加熱対象物(負荷)61は、水及び氷を用いた。
解析モデル60Aを用いた電界分布解析においては、マイクロ波の発振周波数をパラメータとして、加熱室10を上から見た場合の電界分布を調べている。
解析モデル60Aを用いた電界分布解析の条件は、表1に示す通りである。
なお、表1中のPort1は第1給電部40を示す。
図5は、解析モデル60Aを用いてマイクロ波の発振周波数を変更した場合の電界分布解析の結果の一例であって、解析モデル60Aの負荷61直下の平面断面図を示す。なお、図5は、加熱対象物61が水の場合の解析結果を示す。図5に示すように、マイクロ波の発振周波数を変更することによって、加熱室10内において電界分布を変化させることができる。
発振周波数が2400MHzである場合、加熱室10の中央領域に電界が集中して形成されている。また、加熱室10の側壁近傍においては、電界が形成されていない。即ち、マイクロ波が加熱室10の中央領域に集中して供給されている。よって、発振周波数を2400MHzに設定すると、加熱室10の中央に加熱領域を集中して形成することができる。
発振周波数が2420MHzである場合、加熱室10の中央左寄りの領域に電界が集中して形成されている。また、加熱室10の中央より右側の領域(第2領域R2)には電界が形成されていない。即ち、マイクロ波が加熱室10の中央左寄りの領域に集中して供給されている。よって、発振周波数を2420MHzに設定すると、加熱室10の中央左寄りの領域に加熱領域を集中して形成することができる。
発振周波数が2440MHzである場合、加熱室10の中央左寄りの領域に電界が集中して形成されている。また、加熱室10の右側領域(第2領域R2)の全体に電界が形成されている。即ち、マイクロ波が加熱室10の中央左寄りの領域に集中して供給されると共に、加熱室10の右側領域の全体に供給されている。よって、発振周波数を2440MHzに設定すると、加熱室10の中央左寄りの領域に集中させて加熱領域を形成すると共に、加熱室10の右側領域の全体に加熱領域を形成することができる。また、加熱室10の中央左寄りの領域の加熱を、他の領域の加熱よりも強くすることができる。
発振周波数が2460MHzである場合、加熱室10の全体に電界が形成されている。即ち、マイクロ波が加熱室10の全体に供給されている。よって、発振周波数を2440MHzに設定すると、加熱室10の全体に加熱領域を形成することができる。
発振周波数が2480MHzである場合、加熱室10の全体に電界が形成されている。また、加熱室10の右側領域の電界分布が左側領域(第1領域R1)の電界分布よりも広くなっている。即ち、マイクロ波が加熱室10の全体に供給されると共に、左側領域よりも右側領域の方に集中させて供給されている。よって、発振周波数を2480MHzに設定すると、加熱室10の全体に加熱領域を形成しつつ、加熱室10の左側領域よりも右側領域において広く加熱領域を形成することができる。
発振周波数が2500MHzである場合、加熱室10の全体に電界が形成されている。また、加熱室10の右側領域よりも左側領域に電界が集中して形成されている。即ち、マイクロ波が加熱室10の全体に供給されていると共に、加熱室10の右側領域よりも左側領域に集中して供給されている。このことから、発振周波数を2500MHzに設定すると、加熱室10の全体に加熱領域を形成しつつ、加熱室10の右側領域の加熱よりも左側領域の加熱を強くすることができる。
このように、加熱室10内に供給されるマイクロ波の発振周波数を調節することによって、加熱室10内に形成される加熱領域を変化させることができる。また、加熱領域における火力、即ち加熱の強弱を調節することができる。なお、図5に示す解析結果は、加熱対象物61が水である例について示しているが、加熱対象物61が氷の例についても同様の解析結果が得られる。
なお、上記したマイクロ波加熱装置1Aの加熱制御の解析結果は一例であって、周波数帯は、2400MHz以上2500MHz以下に限定されない。マイクロ波加熱装置1Aの加熱制御は、異なる周波数帯でも応用可能である。例えば、周波数帯は、10MHz以上10GHz以下の範囲で設定されてもよい。このような周波数帯に設定された場合であっても、マイクロ波加熱装置1Aは、加熱領域を制御することができる。
[効果]
実施の形態1のマイクロ波加熱装置1Aによれば、以下の効果を奏することができる。
マイクロ波加熱装置1Aは、マイクロ波発生部30から発生する1つのマイクロ波を1つの給電部40から導波管11内の周期構造体20に供給している。マイクロ波発生部30は、半導体素子を用いて構成されているため、制御部50によってマイクロ波の周波数を容易に制御することができる。このような構成により、導波管11から加熱室10内に供給されるマイクロ波の指向性を制御することができる。これにより、加熱対象物12を加熱する加熱領域を容易に制御することができる。
マイクロ波加熱装置1Aによれば、マイクロ波の周波数を制御することによって、所望の領域を狙って加熱することができる。例えば、加熱室10の左側領域を狙って加熱したり、中央領域を狙って加熱したりすることができる。また、マイクロ波加熱装置1Aは、マイクロ波の周波数を制御することによって、加熱室10全体を均一に加熱することもできる。更に、マイクロ波加熱装置1Aは、マイクロ波の周波数を制御することによって、加熱領域において、加熱の強弱(火力)を制御することもできる。
マイクロ波加熱装置1Aによれば、加熱対象物12の状態に応じて、加熱対象物12に対する加熱を調節することができる。例えば、マイクロ波加熱装置1Aが加熱対象物12の温度を検出する温度検出部を備えている場合、制御部50は、温度検出部で検出された温度に基づいて、マイクロ波発生部30から発振されるマイクロ波の周波数を制御する。これにより、加熱対象物12の温度に応じて、加熱領域及び/又は加熱領域における加熱の強弱を制御することができる。その結果、加熱対象物12に対する加熱を調節することができる。
また、マイクロ波加熱装置1Aによれば、画像センサによって、加熱対象物12を認識し、認識した加熱対象物12に応じてマイクロ波の周波数を制御することもできる。
マイクロ波加熱装置1Aによれば、給電部40は、周期構造体20に配置されている。このような構成により、給電部40から供給されるマイクロ波が周期構造体20を伝播しやすくなり、加熱領域の制御をより容易に行うことができる。言い換えると、マイクロ波の向きを容易に制御しやすくなる。
なお、実施の形態1では、周期構造体20を構成する複数の凸部21は、第1方向(X方向)に配列される例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の凸部21は、Y方向に配列されていてもよい。
あるいは、複数の凸部21は、第1方向(X方向)と、第1方向と異なる第2方向(Y方向)とに配列されていてもよい。この場合、複数の凸部21は、例えば、複数の円柱部材、又は複数の角部材、又はこれらの組み合わせで形成されていてもよい。
また、周期構造体20は、複数の金属製の板状構造体(複数の凸部21)を配列する構成である例について説明したが、これに限定されない。図6A及び図6Bは、変形例の周期構造体20a、20bをそれぞれ示す。図6Aに示すように、周期構造体20aは、例えば、一枚の板を加工した波板で構成されていてもよい。即ち、一枚の板を波状に加工して、複数の凸部21を形成してもよい。あるいは、図6Bに示すように、周期構造体20bは、例えば、凹凸板(プレス板)で構成されていてもよい。即ち、1枚の板をプレスして、複数の凸部21を形成してもよい。このような構成により、周期構造体の製造コスト化の低減、材料の削減、組立性の向上が期待できる。
このように、周期構造体20の形状を変更することによって、マイクロ波の向きを詳細に制御することができる。これにより、マイクロ波の指向性を向上させることができる。その結果、加熱領域の制御が更に容易になり、加熱パターンを増やすことができる。
実施の形態1では、周期構造体20は、加熱室10の底部に配置される例について説明したが、これに限定されない。例えば、周期構造体20は、加熱室10の底部、上部及び側部のうち少なくとも1つに配置されていればよい。この場合、導波管11についても加熱室10の底部、上部及び側部のうち少なくとも1つに配置される。
実施の形態1では、マイクロ波加熱装置1Aは、1つのマイクロ波を発生させるマイクロ波発生部30、及び1つの給電部40を備える例について説明したが、これに限定されない。例えば、マイクロ波発生部30は、複数のマイクロ波を発生させる構成を有していてもよい。また、複数の給電部40によって、導波管11内部に複数のマイクロ波を供給してもよい。
この場合、マイクロ波発生部30から発生する複数のマイクロ波の周波数は同じであってもよい。例えば、マイクロ波発生部30は、周波数制御部31からの出力を分配する分配部を有していてもよい。これにより、マイクロ波発生部30において、周波数制御部31から出力されたマイクロ波を分配することによって、複数のマイクロ波を発生させることができる。その結果、部品点数を減らすことができ、コストを削減すると共に省スペース化が実現できる。
また、複数の給電部40のうち少なくとも2つの給電部は、周期構造体20の複数の凸部21が配列される第1方向(X方向)に互いに間隔を有して並べて配置されてもよい。このような構成により、給電部40から供給されるマイクロ波は、複数の凸部21が配列する方向に対して交差する方向に周期構造体20を伝播する。これにより、給電部40から出力されたマイクロ波が表面波モードで周期構造体20を伝播しやすくなる。
実施の形態1では、給電部40は、周期構造体20に配置される例について説明したが、これに限定されない。給電部40は、周期構造体20に配置されていなくてもよい。給電部40は、給電部40から出力されたマイクロ波が周期構造体20を伝播できる位置に配置されていればよい。
実施の形態1では、給電部40は、例えば、上側から見て矩形状の給電ポートで形成されている例について説明したが、これに限定されない。給電部40の形状は、例えば、円形、楕円形、又は多角形などであってもよい。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るマイクロ波加熱装置について説明する。なお、実施の形態2では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
図7は、本発明の実施の形態2に係るマイクロ波加熱装置1Bの一例の概略断面構成図を示す。図8は、マイクロ波加熱装置1Bの一例の制御ブロック図を示す。図7及び図8に示すように、実施の形態2では、2つの給電部40a、40bを有する点、マイクロ波発生部30aが2つのマイクロ波を発生させる点、及び制御部50によって2つのマイクロ波の位相差を制御する点が、実施の形態1と異なる。
<給電部>
マイクロ波加熱装置1Bは、複数の給電部として、2つの給電部40a、40bを有する。2つの給電部40a、40bは、周期構造体20の複数の凸部21が配列される方向に互いに間隔を有して配置される。実施の形態2では、加熱室10の中央領域を間に挟んで互いに間隔を有して、第1方向(X方向)に配置されている。
本明細書では、マイクロ波加熱装置1Bを奥行き方向(Y方向)から見て、加熱室10の中心よりも左側の領域に配置される給電部40aを第1給電部40aと称し、右側の領域に配置される給電部40bを第2給電部40bと称する。
第1給電部40aと第2給電部40bとは、導波管11の底部に配置されている。具体的には、第1給電部40a及び第2給電部40bは、導波管11の内部に配置された周期構造体20に配置されている。また、第1給電部40a及び第2給電部40bは、マイクロ波発生部30aと接続されている。実施の形態2では、第1給電部40a及び第2給電部40bは、実施の形態1の給電部40と同じ形状を有する。
<マイクロ波発生部>
マイクロ波発生部30aは、半導体素子を用いて構成され、且つ2つのマイクロ波を発生させる半導体発振器である。マイクロ波発生部30aは、第1給電部40aと第2給電部40bとのそれぞれにマイクロ波を供給する。
本明細書では、第1給電部40aに供給されるマイクロ波を第1マイクロ波と称し、第2給電部40bに供給されるマイクロ波を第2マイクロ波と称する。
図8に示すように、マイクロ波発生部30aは、周波数制御部31、分配部33、第1位相制御部34a、第1増幅部32a、第2位相制御部34b、及び第2増幅部32bを備える。実施の形態2では、第1増幅部32a及び第2増幅部32bは、実施の形態1の増幅部32と同じ構成を有する。また、マイクロ波発生部30aを構成するこれらの要素は、制御部50によって制御される。
周波数制御部31で発生したマイクロ波は、分配部33によって第1マイクロ波と第2マイクロ波とに分配される。第1マイクロ波は第1位相制御部34aに供給され、第2マイクロ波は第2位相制御部34bに供給される。なお、周波数制御部31で発生したマイクロ波を分配部33によって第1マイクロ波と第2マイクロ波とに分配しているため、第1マイクロ波の周波数と第2マイクロ波の周波数とは、同じである。即ち、マイクロ波発生部30aは、同じ周波数の複数のマイクロ波を発生させている。
第1位相制御部34aは、第1マイクロ波の位相を制御する。第2位相制御部34bは、第2マイクロ波の位相を制御する。具体的には、第1位相制御部34a及び第2位相制御部34bは、制御部50によって制御される。制御部50は、第1位相制御部34a及び第2位相制御部34bを制御し、第1マイクロ波と第2マイクロ波との間の位相差を設定する。
第1位相制御部34aによって位相を設定された第1マイクロ波は、第1増幅部32aに供給される。第1マイクロ波は、第1増幅部32aによって増幅された後、第1給電部40aから導波管11内部の周期構造体20へ供給される。
第2位相制御部34bによって位相を設定された第2マイクロ波は、第2増幅部32bに供給される。第2マイクロ波は、第2増幅部32bによって増幅された後、第2給電部40bから導波管11内部の周期構造体20へ供給される。
このように、実施の形態2では、制御部50は、マイクロ波発生部30aにおいて、2つのマイクロ波を発生させ、且つ2つのマイクロ波の周波数に加えて、位相差を制御している。
[実施の形態2における加熱制御の解析結果の一例]
マイクロ波加熱装置1Bの加熱制御の解析結果の一例について説明する。加熱制御の解析として、マイクロ波加熱装置1Bの解析モデルを用いて、電界分布解析を行った。なお、電界分布解析は、COMSOL Multiphysics(COMSOL AB社製)を用いて行った。
図9A及び図9Bは、それぞれ、電界分布解析に用いた解析モデル60Bを示す。図9Aは、解析モデル60Bを上から見た図を示す。図9Bは、解析モデル60Bを正面から見た図を示す。なお、図9A及び図9Bにおいて、加熱室10の左側領域を第1領域R1と称し、加熱室10の右側領域を第2領域R2と称する。
図9A及び図9Bに示すように、解析モデル60Bは、マイクロ波加熱装置1Bの構成要素を備えると共に、加熱室10内の載置第12の上に2つの加熱対象物61を載置している。解析モデル60Bは、実施の形態1の解析モデル60A(図4A及び図4B参照)と比べて、2つの給電部40a、40bを備える点が異なる。具体的には、解析モデル60Bにおいて、第1給電部40aは加熱室10の左側の第1領域R1に配置されており、第2給電部40bは加熱室10の右側の第2領域R2に配置されている。なお、実施の形態2では、第1給電部40aと第2給電部40bとは、解析モデル60Bを上から見た場合、加熱室10の左右方向の中心に対して互いに対称の位置に配置されている。
解析モデル60Bのその他の構成については、解析モデル60Aと同じである。
解析モデル60Bを用いた電界分布解析においては、第1マイクロ波及び第2マイクロ波の発振周波数及び位相差をパラメータとして、加熱室10を上から見た場合の電界分布を調べている。
解析モデル60Bを用いた電界分布解析の条件は、表2に示す通りである。
なお、表2中のPort1は第1給電部40a、Port2は第2給電部40bを示す。
図10は、解析モデル60Bを用いて2つのマイクロ波の発振周波数を変更した場合の電界分布解析の結果の一例であって、解析モデル60Bの負荷61直下の平面断面を示す。なお、図10は、加熱対象物61が水の場合の解析結果を示す。
図10に示すように、第1給電部40a及び第2給電部40bからそれぞれ供給される第1マイクロ波及び第2マイクロ波の発振周波数を変更することによって、加熱室10内において電界分布を変化させることができる。なお、第1マイクロ波と第2マイクロ波とは、同じ発振周波数である。
発振周波数が2400MHzである場合、加熱室10の中央に電界が集中して形成されている。また、加熱室10の側壁近傍においては、電界が形成されていない。即ち、マイクロ波が加熱室10の中央に集中して供給されている。よって、発振周波数を2400MHzに設定すると、加熱室10の中央に加熱領域を集中して形成することができる。
発振周波数が2440MHzである場合、加熱室10の中央に電界が集中して形成されると共に、左側領域及び右側領域においても電界が形成されている。即ち、マイクロ波が加熱室10のほぼ全体に供給されると共に、加熱室の中央の領域に集中して供給されている。よって、発振周波数を2440MHzに設定すると、加熱室10の全体に加熱領域を形成しつつ、加熱室10の中央の領域の加熱を他の領域の加熱に比べて強くすることができる。
発振周波数が2500MHzである場合、加熱室10の全体に電界が均一に形成されている。即ち、マイクロ波が加熱室10の全体に均一に供給されている。即ち、マイクロ波が加熱室10の全体に均一に供給されている。よって、発振周波数を2500MHzに設定すると、加熱室10の全体に加熱領域を形成し、加熱室10の全体を均一に加熱することができる。
このように、実施の形態2においても実施の形態1と同様に、加熱室10内に供給される2つのマイクロ波の発振周波数を制御することによって、加熱室10内に形成される加熱領域を変化させることができる。
図11は、解析モデル60Bを用いて2つのマイクロ波の位相差を変更した場合の電界分布解析の結果の一例であって、解析モデル60Bの負荷直下の平面断面を示す。なお、図11は、加熱対象物61が水の場合の解析結果を示す。
図11に示す電界分布解析は、第1給電部40aから出力される第1マイクロ波に対して、第2給電部40bから出力される第2マイクロ波の位相を調節することによって、第1マイクロ波と第2マイクロ波との位相差を設定している。
図11に示すように、第1給電部40a及び第2給電部40bからそれぞれ供給される第1マイクロ波と第2マイクロ波との位相差を変更することによって、加熱室10内において電界分布を変化させることができる。なお、第1マイクロ波と第2マイクロ波の発振周波数は、2500MHzとした。
位相差が0°である場合、加熱室10の全体に電界が均一に形成されている。即ち、マイクロ波が加熱室10の全体に均一に供給されている。即ち、マイクロ波が加熱室10の全体に均一に供給されている。よって、発振周波数を2500MHzに設定すると、加熱室10の全体に加熱領域を形成し、加熱室10の全体を均一に加熱することができる。
位相差が90°である場合、加熱室10の右側領域よりも左側領域に電界が集中して形成されている。即ち、マイクロ波が加熱室10の右側領域よりも左側領域に集中して供給されている。よって、位相差を90°に設定すると、加熱室10の右側領域に比べて左側領域に加熱領域を集中させて形成することができる。
位相差が180°である場合、加熱室10の全体に電界が均一に形成されている。即ち、マイクロ波が加熱室10の全体に均一に供給されている。よって、位相差を180°に設定すると、加熱室10の全体に加熱領域を形成し、加熱室10の全体を均一に加熱することができる。
実施の形態2では、第1給電部40aと第2給電部40bとは、解析モデル60Bを上から見た場合、互いに左右対称の位置に配置されている。このため、図11には図示していないが、位相差が270°である場合、電界分布は、位相差が90°である場合と左右逆になる。具体的には、位相差が270°である場合、加熱室10の左側領域よりも右側領域に電界が集中して形成される。即ち、マイクロ波が加熱室10の左側領域よりも右側領域に集中して供給される。よって、位相差を270°に設定すると、加熱室10の左側領域に比べて右側領域に加熱領域を集中させて形成することができる。
このように、加熱室10内に供給される2つのマイクロ波の位相差を制御することによって、加熱室10内に形成される加熱領域を変化させることができる。
なお、図10及び図11に示す解析結果は、加熱対象物61が水である例について示しているが、加熱対象物61が氷の例についても同様の解析結果が得られる。
上記したマイクロ波加熱装置1Bの加熱制御の解析結果は一例であって、周波数帯は、2400MHz以上2500MHz以下に限定されない。マイクロ波加熱装置1Bの加熱制御は、異なる周波数帯でも応用可能である。例えば、周波数帯は、10MHz以上10GHz以下の範囲で設定されてもよい。また、位相差についても、90°、180°、270°に限定されない。例えば、位相差は、0°以上360°以下の範囲で設定されてもよい。このような周波数帯及び/又は位相差に設定された場合であっても、マイクロ波加熱装置1Bは、加熱領域を制御することができる。
[効果]
実施の形態2のマイクロ波加熱装置1Bによれば、以下の効果を奏することができる。
マイクロ波加熱装置1Bは、マイクロ波発生部30から発生した2つのマイクロ波を2つの給電部40から導波管11内の周期構造体20に供給している。また、マイクロ波加熱装置1Bは、制御部50によって、マイクロ波発生部30から発生した2つのマイクロ波の周波数及び位相差を制御している。このような構成により、加熱室10内に供給される2つのマイクロ波の指向性を制御することができる。これにより、マイクロ波加熱装置1Bは、加熱対象物12を加熱する加熱領域をより詳細に制御することができる。
制御部50は、2つのマイクロ波の周波数及び位相差の組み合わせによって、様々な加熱パターンを制御することができる。例えば、制御部50は、加熱室10の左側、右側、中央、及び全体などの所望の領域を狙って加熱する複数の加熱パターンを容易に作り出すことができる。また、加熱領域を加熱する火力の強弱を容易に調節することもできる。
なお、実施の形態2では、制御部50は、2つのマイクロ波の周波数及び位相差を制御する例について説明したが、これに限定されない。例えば、制御部50は、2つのマイクロ波の周波数を制御せず、位相差を制御してもよい。この場合であっても、加熱室10内に供給されるマイクロ波の指向性を制御することができ、加熱領域を制御することができる。
実施の形態2では、マイクロ波加熱装置1Bは、2つのマイクロ波を発生させるマイクロ波発生部30a、2つの給電部40a、40bを備える例について説明したが、これに限定されない。例えば、マイクロ波発生部30aは、2つ以上のマイクロ波を発生させる構成を有していてもよい。また、2つ以上の給電部によって、加熱室10内に複2つ以上のマイクロ波を供給してもよい。
実施の形態2では、第1給電部40aと第2給電部40bは、第1方向(X方向)に配置される例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1方向と異なる第2方向(Y方向)に配置されてもよい。この場合、周期構造体20の複数の凸部21は、第2方向に周期的に配置されていてもよい。このような構成においても、加熱領域を制御することができる。
実施の形態2では、マイクロ波発生部30aは、1つの周波数制御部31を備える例について説明したが、これに限定されない。例えば、マイクロ波発生部30aは、複数の周波数制御部31を備えていてもよい。このような構成により、複数のマイクロ波のそれぞれの発振周波数を制御することができる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係るマイクロ波加熱装置について説明する。なお、実施の形態3では、主に実施の形態1及び2と異なる点について説明する。実施の形態3においては、実施の形態1及び2と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態3では、実施の形態1及び2と重複する記載は省略する。
図12は、本発明の実施の形態3に係るマイクロ波加熱装置1Cの一例を奥行き方向から見た場合の概略断面構成図を示す。図13は、マイクロ波加熱装置1Cの一例を幅方向から見た場合の概略断面構成図を示す。図14は、マイクロ波加熱装置1Cの4つの給電部40a、40b、40c、40dの位置関係を示す図である。図15は、マイクロ波加熱装置1Cの一例の制御ブロック図を示す。
図12~図15に示すように、実施の形態3では、4つの給電部40a、40b、40c、40dを有する点、マイクロ波発生部30bが4つのマイクロ波を発生させる点、周期構造体20cが第1方向(X方向)と第2方向(Y方向)に周期的に配置される複数の凸部21cで構成されている点、及び制御部50によって4つのマイクロ波の周波数及び位相差を制御する点が、実施の形態1及び2と異なる。
<給電部>
図12~図15に示すように、マイクロ波加熱装置1Cは、複数の給電部として、4つの給電部40a、40b、40c、40dを有する。図14に示すように、2つの給電部40a、40bは、互いに間隔を有して第1方向(X方向)に配置される。残り2つの給電部40c、40dは、互いに間隔を有して第1方向と異なる第2方向(Y方向)に配置される。
本明細書では、マイクロ波加熱装置1Cを高さ方向(Z方向)から見て、第1方向(X方向)において左側に配置される給電部40aを第1給電部40a、右側に配置される給電部40bを第2給電部40bと称する。また、第2方向(Y方向)において下側(正面側)に配置される給電部40cを第3給電部40c、上側(奥側)に配置される給電部40dを第4給電部40dと称する。
4つの給電部40a、40b、40c、40dは、加熱室10の底部に配置されている。具体的には、4つの給電部40a、40b、40c、40dは、加熱室10の底部に配置された周期構造体20cに配置されている。また、4つの給電部40a、40b、40c、40は、マイクロ波発生部30bと接続されている。実施の形態3では、4つの給電部40a、40b、40c、40dは、同じ形状を有する。
<周期構造体>
周期構造体20cは、第1方向(X方向)と、第1方向と異なる第2方向(Y方向)に周期的に配置される複数の凸部21cによって構成されている。具体的には、複数の凸部21cは、高さ方向(Z方向)に延びる円柱状の複数の凸部材が第1方向と第2方向とに周期的に配置されている。4つの給電部40a、40b、40c、40dは、複数の凸部21cの間に配置される。
<マイクロ波発生部>
マイクロ波発生部30bは、半導体素子を用いて構成され、且つ4つのマイクロ波を発生させる半導体発振器である。マイクロ波発生部30bは、4つの給電部40a、40b、40c、40dのそれぞれにマイクロ波を供給する。
本明細書では、第1給電部40a、第2給電部40b、第3給電部40c、及び第4給電部40dにそれぞれ供給されるマイクロ波を、第1マイクロ波、第2マイクロ波、第3マイクロ波、及び第4マイクロ波と称する。
図15に示すように、マイクロ波発生部30bは、周波数制御部31、3つの分配部33a、33b、33c、4つの位相制御部34a、34b、34c、34d、及び4つの増幅部32a、32b、32c、32dを備える。実施の形態2では、分配部33a、33b、33cは、それぞれ実施の形態2の分配部33と同じ構成を有する。4つの増幅部32a、32b、32c、32dは、それぞれ実施の形態1の増幅部32と同じ構成を有する。また、マイクロ波発生部30bを構成するこれらの要素は、制御部50によって制御される。
本明細書では、3つの分配部33a、33b、33cは、それぞれ、第1分配部33a、第2分配部33b、及び第3分配部33cと称する。4つの位相制御部34a、34b、34c、34dは、それぞれ、第1位相制御部34a、第2位相制御部34b、第3位相制御部34c、及び第4位相制御部34dと称する。4つの増幅部32a、32b、32c、32dは、それぞれ、第1増幅部32a、第2増幅部32b、第3増幅部32c、及び第4増幅部32dと称する。
周波数制御部31で発振されたマイクロ波は、3つの分配部33a、33b、33cによって4つのマイクロ波に分配される。具体的には、周波数制御部31で発振されたマイクロ波は、第1分配部33aによって、2つのマイクロ波に分配される。
第1分配部33aによって分配された一方のマイクロ波は、第2分配部33bに供給され、第2分配部33bによって第1マイクロ波と第2マイクロ波に分配される。第1分配部33aによって分配された他方のマイクロ波は、第3分配部33cに供給され、第3分配部33cによって第3マイクロ波と第4マイクロ波に分配される。
第1マイクロ波、第2マイクロ波、第3マイクロ波、及び第4マイクロ波は、それぞれ、第1位相制御部34a、第2位相制御部34b、第3位相制御部34c、及び第4位相制御部34dに供給される。なお、周波数制御部31で発生したマイクロ波を3つの分配部33a、33b、33cによって4つのマイクロ波に分配しているため、4つのマイクロ波の周波数は、同じである。
4つの位相制御部34a、34b、34c、34dは、それぞれ、供給されてきたマイクロ波の位相を制御する。具体的には、4つの位相制御部34a、34b、34c、34dは、制御部50によって制御される。制御部50は、4つの位相制御部34a、34b、34c、34dを制御し、4つのマイクロ波の位相差を設定する。
4つの位相制御部34a、34b、34c、34dによって位相を設定された4つのマイクロ波は、それぞれ、4つの増幅部32a、32b、32c、32dに供給される。4つのマイクロ波は、それぞれ、4つの増幅部32a、32b、32c、32dによって増幅された後、4つの給電部40a、40b、40c、40dから周期構造体20cへ供給される。
このように、実施の形態2では、マイクロ波発生部30bにおいて、4つのマイクロ波を発振し、且つ4つのマイクロ波の周波数及び位相差を制御している。
[実施の形態3における加熱制御の解析結果の一例]
マイクロ波加熱装置1Cの加熱制御の解析結果の一例について説明する。加熱制御の解析として、マイクロ波加熱装置1Cの解析モデルを用いて、電界分布解析を行った。なお、電界分布解析は、COMSOL Multiphysics(COMSOL AB社製)を用いて行った。
図16A及び図16Bは、それぞれ、電界分布解析に用いた解析モデル60Cを示す。図16Aは、解析モデル60Cを上から見た図を示す。図16Bは、解析モデル60Cを正面から見た図を示す。なお、図16A及び図16Bにおいて、加熱室10を上から見た場合、加熱室10の左側領域を第1領域R1、右側領域を第2領域R2、下側(正面側)領域を第3領域R3、上側(奥側)領域を第4領域R4と称する。
図16A及び図16Bに示すように、解析モデル60Cは、マイクロ波加熱装置1Cの構成要素を備えると共に、加熱室10内の載置第12の上に2つの加熱対象物61を載置している。解析モデル60Cは、実施の形態1の解析モデル60A(図4A及び図4B参照)及び実施の形態2の解析モデル60B(図9A及び図9B参照)と比べて、4つの給電部40a、40b、40c、40dを備える点が異なる。具体的には、解析モデル60Cにおいて、第1給電部40a、第2給電部40b、第3給電部40c、及び第4給電部40dは、それぞれ加熱室10の第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、及び第4領域R4に配置されている。実施の形態3では、第1給電部40aと第2給電部40bとは、解析モデル60Cを上から見た場合、加熱室10の左右方向の中心に対して互いに対称の位置に配置されている。また、第3給電部40cと第4給電部40dとは、解析モデル60Cを上から見た場合、加熱室10の奥行き方向の中心に対して互いに対称の位置に配置されている。
また、解析モデル60Cにおいては、周期構造体20cが第1方向(X方向)と第2方向(Y方向)とに周期的に配置される複数の凸部21cで構成されている点が、解析モデル60A及び解析モデル60Bと異なる。
解析モデル60Cのその他の構成については、解析モデル60A及び解析モデル60Bと同じである。
解析モデル60Cを用いた電界分布解析においては、4つのマイクロ波の発振周波数及び位相差をパラメータとして、加熱室10を上から見た場合の電界分布を調べた。
解析モデル60Cを用いた電界分布解析の条件は、表3に示す通りである。
なお、表3中のPort1は第1給電部40a、Port2は第2給電部40b、Port3は第3給電部40c、Port4は第4給電部40dを示す。
図17は、解析モデル60Cを用いて4つのマイクロ波の発振周波数及び位相差を変更した場合の電界分布解析の結果の一例であって、解析モデル60Cの負荷61直下の平面断面を示す。なお、図17は、加熱対象物61が水の場合の解析結果を示す。
図17に示す電界分布解析は、第1給電部40aから出力される第1マイクロ波に対して、第2給電部40b、第3給電部40c及び第4給電部40dからそれぞれ出力される第2マイクロ波、第3マイクロ波及び第4マイクロ波の位相を調節することによって、位相差を設定している。
図17に示す電界分布解析は、位相差の設定の一例として、第1マイクロ波と第2マイクロ波との位相差を90°に設定し、第1マイクロ波と第3マイクロ波との位相差を0°に設定し、第1マイクロ波と第4マイクロ波との位相差を90°に設定した。この設定条件を位相差条件1と称する。また、図17に示す電界分布解析は、位相差の設定の別例として、第1マイクロ波と第2マイクロ波との位相差を180°に設定し、第1マイクロ波と第3マイクロ波との位相差を0°に設定し、第1マイクロ波と第4マイクロ波との位相差を180°に設定した。この設定条件を位相差条件2と称する。
図17に示す電界分布解析では、位相差条件1及び2において、4つのマイクロ波の発振周波数を変化させて、加熱室10内の電界分布を解析している。なお、第1マイクロ波、第2マイクロ波、第3マイクロ波及び第4マイクロ波は、同じ発振周波数である。
図17に示すように、4つの給電部40a、40b、40c、40dからそれぞれ供給される第1マイクロ波、第2マイクロ波、第3マイクロ波及び第4マイクロ波の発振周波数及び位相差を変更することによって、加熱室10内において電界分布を変化させることができる。
位相差条件1において、発振周波数が2480MHz及び2490MHzである場合、加熱室10の右側領域に比べて、左側領域に電界が集中して形成されている。即ち、マイクロ波が加熱室10の左側領域に集中して供給されている。よって、位相差条件1において、発振周波数が2480MHz及び2490MHzに設定すると、加熱室10の左側領域に加熱領域を集中して形成することができる。また、加熱室10の左側領域の加熱を右側領域の加熱に比べて強くすることができる。
位相差条件2において、発振周波数が2400MHz、2410MHz及び2420MHzである場合、加熱室10の全体に電界が均一に形成されている。即ち、マイクロ波が加熱室10の全体に均一に供給されている。よって、位相差条件2において、発振周波数が2400MHz、2410MHz及び2420MHzに設定すると、加熱室10全体に加熱領域を形成し、加熱室10全体を均一に加熱することができる。
位相差条件2において、発振周波数が2440MHzである場合、加熱室10の中央領域に電界が集中して形成されている。即ち、マイクロ波が加熱室10の中央に集中して供給されている。よって、位相差条件2において、発振周波数が2440MHzに設定すると、加熱室10の中央に加熱領域を集中して形成することができる。また、加熱室10の中央領域の加熱を、他の領域の加熱に比べて強くすることができる。
実施の形態3では、第1給電部40aと第2給電部40bとは、解析モデル60Cを上から見た場合、加熱室10の左右方向の中心に対して互いに対称の位置に配置されている。また、第3給電部40cと第4給電部40dとは、解析モデル60Cを上から見た場合、加熱室10の奥行き方向の中心に対して互いに対称の位置に配置されている。このため、図17には図示していないが、位相差条件3として、第1マイクロ波と第2マイクロ波との位相差を270°に設定し、第1マイクロ波と第3マイクロ波との位相差を0°に設定し、第1マイクロ波と第4マイクロ波との位相差を270°に設定した場合、位相差条件3の電界分布は、位相差条件1の電界分布と逆の分布となる。具体的には、位相差条件3において、発振周波数が2480MHz及び2490MHzである場合、加熱室10の左側領域に比べて、右側領域に電界が集中して形成される。即ち、マイクロ波が加熱室10の右側領域に集中して供給される。よって、位相差条件3において、発振周波数が2480MHz及び2490MHzに設定すると、加熱室10の右側領域に加熱領域を集中して形成することができる。また、加熱室10の右側領域の加熱を左側領域の加熱に比べて強くすることができる。
このように、実施の形態3においても実施の形態1及び2と同様に、加熱室10内に供給される4つのマイクロ波の発振周波数及び位相差を制御することによって、加熱室10内に形成される加熱領域を制御することができる。なお、図17に示す解析結果は、加熱対象物61が水である例について示しているが、加熱対象物61が氷の例についても同様の解析結果が得られる。
なお、上記したマイクロ波加熱装置1Cの加熱制御の解析結果は一例であって、周波数帯は、2400Mz以上2500MHz以下に限定されない。マイクロ波加熱装置1Cの加熱制御は、異なる周波数帯でも応用可能である。例えば、周波数帯は、10MHz以上10GHz以下の範囲で設定されてもよい。また、位相差についても、90°、180°、270°に限定されない。例えば、位相差は、0°以上360°以下の範囲で設定されてもよい。このような周波数帯及び/又は位相差に設定された場合であっても、マイクロ波加熱装置1Cは、加熱領域を制御することができる。
[効果]
実施の形態3のマイクロ波加熱装置1Cによれば、以下の効果を奏することができる。
マイクロ波加熱装置1Cは、マイクロ波発生部30bから発生した4つのマイクロ波を4つの給電部40a、40b、40c、40dから周期構造体20cに供給している。また、マイクロ波加熱装置1Cは、制御部50によって、マイクロ波発生部30bから発生した4つのマイクロ波の周波数及び位相差を制御している。このような構成により、加熱室10内に供給される4つのマイクロ波の指向性を制御することができる。これにより、マイクロ波加熱装置1Cは、加熱対象物12を加熱する加熱領域をより詳細に制御することができる。
制御部50は、4つのマイクロ波の周波数及び位相差の組み合わせによって、様々な加熱パターンを制御することができる。例えば、制御部50は、加熱室10の左側、右側、中央、正面側、奥側、及び全体などを加熱する複数の加熱パターンを容易に作り出すことができる。また、加熱領域を加熱する火力の強弱を容易に調節することもできる。
周期構造体20cは、第1方向(X方向)と、第1方向(X方向)と異なる第2方向(Y方向)に周期的に配列される複数の凸部21cによって構成されている。このような構成により、4つの給電部40a、40b、40c、40dから周期構造体20cに供給される4つのマイクロ波の指向性を更に容易に制御することができる。
第1給電部40a及び第2給電部40bは、加熱室10の中央領域を間に挟んで、互いに間隔を有して第1方向(X方向)に配列されている。第3給電部40c及び第4給電部40dは、加熱室10の中央領域を間に挟んで、互いに間隔を有して第2方向(Y方向)に配列されている。このような構成により、第1給電部40a及び第2給電部40bから出力されるマイクロ波は第1方向に伝播しやすく、第3給電部40c及び第4給電部40dから出力されるマイクロ波は第2方向に伝播しやすい。これにより、マイクロ波を第1方向と第2方向とに向けて容易に出力することができ、加熱室10の左右方向(第1方向)と奥行き方向(第2方向)とに加熱領域を容易に形成することができる。
なお、実施の形態3では、周期構造体20cが加熱室10の底部に配置されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、周期構造体20cは、加熱室10の底部、上部、及び/又は側部に配置されていればよい。
図18は、変形例のマイクロ波加熱装置1Dの概略断面構成図を示す。図18に示すように、周期構造体20dを加熱室10の底部及び両側部に配置されていてもよい。具体的には、加熱室10の底部及び両側部に導波管11を配置する。周期構造体20dを構成する複数の凸部21dは、加熱室10の底部及び両側部に配置された導波管11内部に配置される。
また、図18に示すマイクロ波加熱装置1Dにおいては、加熱室10の側部に配置された周期構造体20dに、第5給電部40eと第6給電部40fとを配置している。このような構成により、加熱室10の側部からもマイクロ波を加熱室10内に供給することができる。これにより、加熱領域をより容易に制御することができる。また、加熱室10の下方からだけではなく、側方又は上方からもマイクロ波放射が可能となり、均一加熱性能の向上が可能となる。
実施の形態1~3では、周期構造体20、20c、20dは、複数の凸部21、21c、21dを周期的に配列した構成の例を説明したが、これに限定されない。図19は、変形例の周期構造体20eの概略構成を示す。図20は、図19の周期構造体20eをA-A線で切断した概略断面図を示す。
図19及び図20に示すように、周期構造体20eは、複数の共振導体22を第1方向(X方向)と、第1方向と異なる第2方向(Y方向)とに周期的に配列した構成を有していてもよい。図19に示す周期構造体20eは、複数の共振導体22が縦3列、横3行で配列されている。周期構造体20eの中央の共振導体22には、給電部40gが配置されている。
複数の共振導体22のそれぞれは、矩形状の平板と、平板の底面に設けられた棒状部材とを有する。複数の共振導体22は、例えば、金属などの導体によって形成されている。
複数の共振導体22の配置間隔がマイクロ波の1/4波長であるときが最も周期構造体20eを伝搬しやすい。また、4給電で同一周波数のマイクロ波を発振する場合、複数の共振導体22の配置間隔を異なる構成にすることで、それぞれの方向に伝送しやすい周波数を変えられるので、加熱パターンの制御性が高まる。
図21及び図22は、それぞれ、別の変形例の周期構造体20f、20gの概略構成を示す。図21及び図22に示すように、周期構造体20f、20gにおいて、複数の共振導体23は、円板状の平板と、平板の底面に設けられた棒状部材と、を有する。
図21に示す周期構造体20fでは、4つの共振導体23が縦2列、横2行に配列されている。周期構造体20fの中央、即ち、4つの共振導体23の間に形成されたスペースには、給電部40hが配置されている。
図22に示す周期構造体20gでは、9つの共振導体23が縦3列、横3行で配列されている。周期構造体20gの中央の共振導体23には、給電部40iが配置されている。
図21及び図22に示す周期構造体20f、20gのその他の構成は、図19に示す周期構造体20eと同じである。
このような構成においても、加熱領域を容易に制御することができる。更に、マイクロ波加熱装置の低背化を実現することができる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。