JP7203256B1 - 繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、特許文献1では、このような繊維強化複合体を製造するために、ポリアミド系樹脂発泡粒子の型内成形時に、発泡粒子の熱融着温度以下の水蒸気を供給して発泡粒子を予備的に加熱した後、発泡粒子の熱融着温度以上の水蒸気を供給して、発泡粒子を二次発泡させ、且つ熱融着させる、多段加熱法を採用しなければならなかった。そのため、型内成形可能な温度範囲が狭く、厚みが厚い成形体や複雑形状の成形体など、所望形状の発泡粒子成形体の型内成形が難しいものであった。
また、特許文献1で使用されるポリアミド系樹脂発泡粒子を前記多段加熱を行わずに型内成形を行い、得られた発泡粒子成形体を繊維強化複合体の芯材として使用する場合においては、繊維強化複合体を製造する際に耐熱性が不十分となりやすく、繊維強化複合体に変形が生じやすくなるという問題が生じた。
[1]気泡膜厚みが7μm以上80μm以下であり、X線回折法により測定される結晶子サイズが10nm超であることを特徴とする繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
[2]前記ポリアミド系樹脂発泡粒子のX線回折法により測定される結晶子サイズが13nm超である、前記1に記載の繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
[3]JIS K7122-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、前記ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱する際に測定される第1回加熱のDSC曲線の全融解熱量が40J/g以上140J/g以下である、前記1又は2に記載の繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
[4]下記の条件1にて得られる第2回加熱のDSC曲線のが185℃以上285℃以下である、前記1~3のいずれか一に記載の繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
条件1
JIS K7121-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、前記ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱し、その温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱する際に測定されるDSC曲線を第2回加熱のDSC曲線とする。
[5]前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度が0.01g/cm3以上0.3g/cm3以下である、前記1~4のいずれか一に記載の繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
[6]前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の独立気泡率が85%以上である、前記1~5のいずれか一に記載の繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
[7]前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径が200μm以上400μm以下である、前記1~6のいずれか一に記載の繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
該ポリアミド系樹脂発泡粒子(以下、単に発泡粒子ともいう。)は、ポリアミド系樹脂を基材樹脂とする。
該ポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアミド共重合体が挙げられ、ポリアミド共重合体が好ましい。
ポリアミド共重合体としては、例えば、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸(ナイロン6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム(ナイロン6/66/12)、及びカプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂は、これらのポリアミド及びポリアミド共重合体の1種単独であって用もよく、2種以上の混合物であってもよい。結晶子サイズが大きなポリアミド系樹脂発泡粒子が得られやすいという観点から、以上のポリアミド系樹脂の中でも、ナイロン6、ナイロン66、及びナイロン6/66から選択される1種または2種以上の混合物であることが好ましく、ナイロン6/66であることがより好ましい。
t=L×{(1-ρf/ρs)-1/3-1}・・・(1)
L:発泡粒子の平均気泡径[μm]
ρf:発泡粒子の見掛け密度[g/cm3]
ρs:発泡粒子を構成している樹脂の密度[g/cm3]
該結晶子サイズが前記範囲であることによって、耐熱性に優れた発泡粒子となり、型内成形においては、成形温度範囲が広くなる。また、本発明の発泡粒子、並びに得られる発泡粒子成形体は、前述した発泡粒子の気泡膜厚みが特定の値であることと相俟って、耐熱性が高くなり、圧縮強度に優れるものとなり、FRP芯材として好適に使用できるものである。耐熱性が向上し、さらに型内成形性が向上する理由は、結晶子サイズが大きいことにより、発泡粒子の耐熱性が向上し、型内成形時の高温下においても、高い圧縮応力を維持することができ、変形しにくいものとなるからである。従って、厚みが厚い成形体や複雑形状の成形体などであっても、安定して型内成形を行うことができる。
かかる理由により、該結晶子サイズは11nm以上であることが好ましく、12nm超であることがより好ましい。一方、上限に制限はないが、該結晶子サイズは30nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。
ポリアミド系樹脂発泡粒子のX線回折測定は、X線散乱装置による透過法により行う。X線回折測定により得られたX線回折プロフィールについて、ピーク形状としてガウス関数を仮定し、結晶由来の回折ピークと非晶由来の回折ピークとにピーク分離する。ピーク分離により得られたピークのうち、最も狭いピーク幅を有するピークの半値全幅β(rad)を計算し、該半値全幅βを用いて下記式(2)に従って、発泡粒子の結晶子サイズDを算出する。
具体的には、JIS K7122-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、該発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱する際に測定される第1回加熱のDSC曲線の全融解熱量が、40J/g以上であることが好ましい。
JIS K7121-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱し、その温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱する際に測定されるDSC曲線を第2回加熱のDSC曲線とする。
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、0.01g/cm3以上0.3g/cm3以下であることが好ましい。該見掛け密度が前記範囲であれば、得られた発泡粒子成形体が軽量であると共に、型内成形後に収縮しにくくなり、良好なFRP芯材となる。
かかる理由により、該見掛け密度は、0.03g/cm3以上であることがより好ましく、更に好ましくは0.05g/cm3以上であり、特に好ましくは0.08g/cm3以上である。一方、該見掛け密度は、0.25g/cm3以下であることがより好ましく、更に好ましくは0.20g/cm3以下であり、特に好ましくは0.150g/cm3以下である。
相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて24時間以上放置した嵩体積が約500cm3の発泡粒子の質量W1を測定し、温度23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、該質量W1の発泡粒子を、該メスシリンダー中に金網を使用して沈める。金網の体積を考慮して、水位上昇分より読みとられる発泡粒子の体積V1[cm3]を測定し、発泡粒子の質量W1[g]を体積V1で割り算する(W1/V1)ことにより、発泡粒子の見掛け密度[g/cm3]が求められる。
該平均気泡径がこの範囲内であれば、耐熱性により優れ、型内成形性により優れる発泡粒子となる。
該比[((Tm1-20℃)5%圧縮応力)/(23℃圧縮応力)]が高い発泡粒子は、常温時の圧縮応力に対して高温時の圧縮応力の低下が小さく、高温時においても高い圧縮応力を維持しており、耐熱性に優れるものであることを意味する。該比[((Tm1-20℃)5%圧縮応力)/(23℃5%圧縮応力)]の値が大きい発泡粒子及び該発泡粒子から得られた発泡粒子成形体は、繊維強化樹脂複合体の芯材(FRP芯材)などの用途に好適に用いることができる。かかる理由により、該比[((Tm1-20℃)5%圧縮応力)/(23℃5%圧縮応力)]は、より好ましくは0.15以上であり、さらに好ましくは、0.2以上である。また、上限は概ね1程度である。
なお、該発泡粒子の融点よりも20℃低い温度(Tm1-20℃)のでの圧縮応力を採用する理由は、発泡粒子の結晶が融解しない温度での圧縮物性を評価するためである。
該発泡粒子は、ポリアミド系樹脂粒子(以下、単に樹脂粒子ともいう。)を発泡することにより得ることができる。次に、該樹脂粒子の製造方法について説明する。
該樹脂粒子の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法により樹脂粒子を得ることができる。例えば、ポリアミド系樹脂と、必要に応じて添加される気泡調整剤、着色剤等の添加剤とを押出機にて混練して溶融混練物とし、押出機先端に付設されたダイの小孔からストランド状に溶融混練物を押し出し、押出されたストランドをペレタイザー等で所定の質量となるように切断するストランドカット法、前記溶融混練物を気相中に押出した直後に切断するホットカット法、前記溶融混練物を水中に押出した直後に切断するアンダーウォーターカット法(UWC法)等により、樹脂粒子を得ることができる。
前記の中でも結晶子サイズを大きくし易いことから、本発明の発泡粒子は、(2)樹脂粒子に水分を豊富に含有させると共に、発泡剤を含有させた樹脂粒子を加熱して、発泡させると共に結晶子を成長させ、結晶子サイズが大きい発泡粒子を得る方法が好ましい。
なお、該樹脂粒子または該発泡粒子を水中で加熱する場合には、水が十分に補給されるため、前記水分率を満足するものとみなすことができる。
具体的には、該樹脂粒子または該発泡粒子の表面の水を乾いた布でふき取った後、該樹脂粒子または該発泡粒子を秤量し、次いで加熱水分気化装置を用いて樹脂粒子または発泡粒子を加熱することにより、水分を気化させ、カールフィッシャー水分測定装置を用いて、カールフィッシャー滴定(電量滴定法)により水分率を測定する。
分散工程は、密閉容器内でポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させ、分散体を得る工程である。
該樹脂粒子を水中に分散させる方法は、特に限定されることはなく、公知の方法を用いることができる。例えば、撹拌機を使用して水を撹拌しながら、分散媒としての水に樹脂粒子を添加し、更に撹拌することによって、分散体を得ることができる。
また、必要に応じて分散液に、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ、タルク、スメクタイト等の無機物質等の分散剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤等の分散助剤を添加することが好ましい。樹脂粒子と分散剤との質量比(樹脂粒子/分散剤)は、好ましくは20以上2000以下であり、より好ましくは30以上1000以下である。また、分散剤と分散助剤との質量比(分散剤/分散助剤)は、好ましくは1以上500以下であり、より好ましくは1以上100以下である。
該樹脂粒子に十分に吸水させるためには、発泡温度までの分散体の昇温速度は、好ましくは10℃/分以下であり、より好ましくは7℃/分以下である。一方、ポリアミド系樹脂発泡粒子の生産性を向上させるためには、昇温速度は、好ましくは1℃/分以上であり、より好ましくは2℃/分以上である。
これらの発泡剤の中でも、環境への影響が少ないとともに可燃性がなく安全性に優れるという観点から、無機系物理発泡剤が好ましく、その中でも二酸化炭素又は窒素がより好ましく、二酸化炭素が更に好ましい。
分散体として用いる水により樹脂粒子を可塑化させ、前記範囲の温度で保持することで、所望の結晶子サイズを有する発泡粒子をより確実に得ることができる。
該樹脂粒子に水分を吸収させる方法としては、樹脂粒子を水に浸漬させる方法が挙げられる。浸漬方法は、ポリアミド系樹脂粒子に水分を充分に吸収さることができれば特に限定されるものではないが、例えば、容器内に樹脂粒子と水とを樹脂粒子が水で完全に浸漬させる方法が好ましい。この場合、以下の温度と時間で行うことが好ましい。
浸漬時の温度は、水を樹脂粒子に短時間で十分に含浸させるために、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上である。その上限は、好ましくは100℃、より好ましくは80℃である。浸漬時間は、好ましくは20分以上であり、より好ましくは40分以上である。製造時間を短くして生産性を向上させるためには、浸漬時間の上限は、概ね24時間程度である。なお、加圧下で該含水工程を行ってもよい。
ポリアミド系樹脂粒子を発泡させるための加熱方法は特に限定されるものではないが、たとえば、スチーム、高温空気、オイル等の熱媒体で、発泡剤を含む含水樹脂粒子を加熱して、発泡させることが好ましい。
型内成形法は、従来公知の方法を採用することできるが、加熱方法としてスチーム加熱方法を採用することが好ましい。スチーム加熱方法を採用することにより、発泡粒子を構成するポリアミド系樹脂が、吸水により可塑化する為、加熱温度を低くすることが可能となる。なお、得られた発泡粒子成形体を乾燥させれば、ポリアミド系樹脂本来の物性に戻るので、高い耐熱性を有する発泡粒子成形体となる。
該FRP芯材を構成する繊維強化樹脂は、熱硬化性樹脂からなるものと、熱可塑性樹脂からなるものがある。該FRP芯材においては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が補強のために、繊維を含有する。該繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、芳香族ポリアミド繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、チタン酸カリウム繊維、炭素ケイ素繊維、ボロン繊維などが挙げられる。繊維の状態は単繊維であってもよく、また、ヤーン、ストランド、ロービング、チョップストランド、織物、編物、不織布などであってもよい。該FRPの製造においては、ハンドレイアップ成形、スプレイアップ成形、レジントランスファー成形(RTM)、シートモールディングコンパウンド成形(SMC ) 、バルクモールディングコンパウンド成形(BMC)、レジンインジェクションモールディング成形等、従来公知の成形方法が使用可能である。
また、該発泡粒子に前記繊維と未硬化の熱硬化性樹脂等のベースレジンをコーティングし、コーティングされた発泡粒子を成形用金型内に収納し、加熱することによっても、発泡粒子を芯材とした繊維強化樹脂複合体(FRP複合体)を製造することができる。
製造例1
ポリアミド系樹脂(5033B、詳細は表1に示す。)、該樹脂100質量部に対して、気泡調整剤としての「タルカンパウダーPK-S」(林化成株式会社製)0.3質量部、表2に示す種類の末端封鎖剤1質量部の割合で配合した原料を押出機にて溶融混練し、得られた溶融混練物を押出機先端に取り付けた口金の細孔から断面円形状のストランド状に押出し、押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで質量が平均2mgとなるように切断し、これらを乾燥して樹脂粒子を得た。
ポリアミド系樹脂を、5033Bから、1030B(詳細は表1に示す。)に変更した以外は、製造例1と同様にして、樹脂粒子を得た。
ポリアミド系樹脂を、5033Bから、E2046(詳細は表1に示す。)に変更し、表2に示す種類、量の末端封鎖剤に変更した以外は、製造例1と同様にして、樹脂粒子を得た。
JIS K7121-1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定法により、ポリアミド系樹脂粒子の融点を測定した。窒素流入量30mL/分の条件下で、10℃/分の加熱速度で30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱(1回目の昇温)し、次いでその温度にて10分間保った後、10℃/分の冷却速度で30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分で融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱して得られる2回目のDSC曲線の融解ピークの融解ピーク温度を融点(Tm)とした。
なお、測定装置として、高感度型示差走査熱量計「EXSTAR DSC7020」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用した。なお、DSC曲線の測定には、測定試料として、温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上静置させたポリアミド系樹脂粒子を用いた。
ISO 1183-3に記載の方法に基づいて密度を求めた。
JIS K7171:2016に準拠して、ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率を測定した。具体的には、厚み4mm、幅10mm、長さ80mmの樹脂試験片を5個作製し、試験片を室温23℃、相対湿度50%の状態で72時間静置した後、各試験片を用いて、支点間距離64mm、圧子の半径15.0mm、支持台の半径25.0mm、試験速度2mm/min、室温23℃、相対湿度50%の条件で、オートグラフAGS-10kNG(島津製作所製)試験機により曲げ試験を行い、算出された値(5点)の平均値を曲げ弾性率として採用した。
実施例1
製造例1で得られた樹脂粒子1kgと、水3リットルとを、撹拌機を備えた5リットルのオートクレーブ内に仕込み、更に、樹脂粒子100質量部に対して、分散剤としてカオリン0.3質量部アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)0.004質量部を分散液に添加した。オートクレーブ内の内容物を撹拌しながら室温(23℃)から昇温し、オートクレーブ内の内容物の温度が137℃(含浸温度)に到達するまでの間に、該オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を、137℃におけるオートクレーブ内の圧力が4.0MPa(G)(含浸圧力)となるまで圧入した。室温(23℃)から含浸温度に到達するまでの昇温時間は40分であった。続いて、オートクレーブ内の内容物の温度を137℃(保持温度)、かつオートクレーブ内の圧力を4.0MPa(G)(保持圧力)とした状態で30分間保持した。
その後、オートクレーブ内の内容物を表2に示す発泡温度で大気圧(0.1MPa)下に放出した。内容物(分散体)を放出する直前の内容物の温度(発泡温度)は137℃、オートクレーブ内の圧力(発泡圧力)は4.0MPa(G)であった。得られた発泡粒子を60℃のオーブン内にて24時間養生し、その後徐冷することにより発泡粒子を得た。
製造例2で得られた樹脂粒子を用いた点、含浸温度、保持温度および発泡温度をそれぞれ158℃とした点以外は、実施例1と同様の方法により発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の諸物性を表2に示す。
製造例3で得られた樹脂粒子を用いた点、含浸温度、保持温度および発泡温度をそれぞれ176℃とした点以外は、実施例1と同様の方法により発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の諸物性を表2に示す。
含浸温度及び保持温度を139℃、発泡温度を133℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法により発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の諸物性を表2に示す。
製造例2で得られた樹脂粒子3kgをオートクレーブ内に仕込み、該オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を、オートクレーブ内の圧力が4.0MPa(G)(含浸圧力)となるまで圧入し、4.0MPa(G)の状態を3時間維持した。このときのオートクレーブ内の内容物の温度は10℃であった。
その後、発泡剤が含浸された樹脂粒子を発泡装置に移し、表2に示す温度(発泡温度)の空気を20秒間吹き込み、発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を60℃のオーブン内にて24時間養生し、その後徐冷することにより発泡粒子を得た。
得られた発泡粒子の諸物性を表2に示す。なお、発泡直前のポリアミド系樹脂粒子の水分率及び発泡直後の発泡粒子の水分率を測定したところ共に2.0質量%であった。
実施例1~3及び比較例1、2で得られた発泡粒子を縦300mm×横300mm×厚さ50mmの平板成形型に充填し、スチーム加熱による型内成形を行なって板状の発泡粒子成形体を得た。スチーム加熱方法として、両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行った後、表3に示す成形スチーム圧力より0.04MPa(G)低い圧力で一方加熱を行い、さらに表3に示す成形スチーム圧力より0.02MPa(G)低い圧力で逆方向から一方加熱を行った後、表3に示す成形スチーム圧力で、両面から本加熱を行う方法を採用した。加熱終了後、圧力を開放し、成形体の発泡力による表面圧力が0.02MPa(ゲージ圧)に低下するまで水冷したのち、型を開いて発泡粒子成形体を型から取り出した。型から取り出した発泡粒子成形体を80℃のオーブンにて12時間養生し、その後、室温まで徐冷することで、発泡粒子成形体を得た。各成形スチーム圧力で得られた発泡粒子成形体を用いて、実施例、比較例で得られた発泡粒子の成形性を評価し、成形体の物性についても測定した。結果を表3に示す。
なお、実施例においては、多段加熱を行うことなく、良好な発泡粒子成形体を得ることができた。
比較例2は、含水状態で樹脂粒子を加熱保持することなく発泡粒子を得た例であり、結晶子サイズが大きく成長しなかった結果、実施例2に比べると、全てのスチーム圧力において、得られた発泡粒子成形体は、回復性、融着性の悪いものであった。
発泡直後のポリアミド系樹脂発泡粒子を無作為に選択し、発泡粒子の表面の水分を乾いた布でふき取った後、発泡粒子約0.2gを秤量し、次いで加熱水分気化装置を用いて該発泡粒子を160℃まで加熱することにより、該発泡粒子の内部の水分を気化させ、カールフィッシャー水分測定装置(AQ-2200A、平沼産業株式会社製)を用いて、カールフィッシャー滴定(電量滴定法)により、水分率を測定した。
発泡粒子の結晶子サイズは以下の方法により求めた。得られた発泡粒子のX線回折(XRD)測定を、X線散乱装置「SmartLab SE」(リガク社製)を用いた反射法により、行った。検出器には半導体1次元検出器D/teX Ultra 250を用いた。測定試料として、無作為に選択した発泡粒子を重ならない範囲で可能な限り密に、24mm径の試料ホルダーに充填したものを用いた。空セル散乱補正も実施した。こうして得られた一次元X線回折プロフィールを、ソフトウェア(商品名:SmartLab Studio II)を用いて、ピーク形状としてガウス関数を仮定して、結晶由来の回折ピークと非晶由来の回折ピークとにピーク分離を行った。ピーク分離により得られたピークのうち、最も狭いピーク幅を有するピークの半値全幅β(rad)を計算し、該半値全幅βを用いて下記式(2)に従って、発泡粒子の結晶子サイズDを算出した。前記測定を10つの試験片について行い、それらの算術平均値を発泡粒子の結晶子サイズとした。
高感度型示差走査熱量計「EXSTAR DSC7020」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用した。
ポリアミド系樹脂発泡粒子を測定試料として用い、JIS K7122-1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定によって加熱速度10℃/分で30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱し、第1回加熱のDSC曲線を得た。
得られたDSC曲線において、DSC曲線上の150℃の点と、DSC曲線上の融解ピーク終了時の温度を示す点とを結ぶ直線を引き、この直線をベースラインとして、ベースラインと、ベースラインより吸熱側に存在するDSC曲線によって囲まれる部分の面積から算出される熱量を第1回加熱のDSC曲線の全融解熱量とした。
測定には、高感度型示差走査熱量計「EXSTAR DSC7020」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用した。
ポリアミド系樹脂発泡粒子を測定試料として用い、JIS K7121-1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定によって、窒素流入量30mL/分の条件下で、加熱速度10℃/分で30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱し、その温度にて10分間保った。
その後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分で30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱し、第2回加熱のDSC曲線を得た。
得られたDSC曲線において、DSC曲線上に現れた最大の融解ピーク(吸熱ピーク)の融解ピーク温度を第2回加熱のDSC曲線の融解ピークの融解ピーク温度とした。
ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、発泡粒子の真の体積(発泡粒子を構成する樹脂の体積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和)の値Vxを測定した。この真の体積Vxの測定には、東芝・ベックマン(株)製の空気比較式比重計「930」を用いた。次いで、下記の式(3)により独立気泡率を算出し、5回の測定結果の算術平均値を求め、独立気泡率とした。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(3)
Vx:前記方法で測定される発泡粒子の真の体積(cm3)
Va:発泡粒子の見掛けの体積(cm3)
W:発泡粒子測定用サンプルの質量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm3)
発泡粒子の耐熱性比を熱分析装置(TMA;株式会社日立ハイテクサイエンス製「TMA7100」)にて圧縮モード(圧縮プローブの先端の直径3.5mm)を用いて測定した。
具体的には、発泡粒子一粒を無作為に選び、発泡粒子の短径方向を圧縮プローブで10mNの荷重をかけて挟んだ後、所定の温度とした。その後、当該温度で等温保持を行いながら1mm/minのスピードで押し込み、プローブの荷重をモニタし、発泡粒子の厚さが、圧縮前の発泡粒子の厚さの95%となった時点での応力を記録した。前記操作を3回行い、それらの算術平均値を5%圧縮応力とした。
前記所定の温度は、樹脂発泡粒子を構成するポリアミド系樹脂発泡粒子の融点よりも20℃低い温度(Tm1-20℃)と、23℃である。
更に、前記測定により得られた測定値を用いて、耐熱性比(Tm1-20℃5%圧縮応力)/(23℃5%圧縮応力))における5%圧縮応力)を算出した。該操作を3個の発泡粒子について行い、それらの算術平均値を発泡粒子の耐熱性比(Tm1-20℃5%圧縮応力)/(23℃5%圧縮応力))における5%圧縮応力)とした。
(発泡粒子成形体の回復性)
型内成形で得られた発泡粒子成形体につき、端部(端より10mm内側)と中心部(縦方向、横方向とも2等分する部分)の厚みを計測した。次いで、発泡粒子成形体の厚み比(成形体中心部の厚み/成形体端部の厚み×100(%))を算出し、以下のように評価した。厚み比が大きいほど、回復性に優れ、成形性が良好である。
〇:厚み比が95%以上である。
×:厚み比が95%未満である。
発泡粒子成形体の表面性を、次の基準で評価した。発泡粒子成形体表面の発泡粒子間隙が埋まっているほど、発泡粒子の表面性に優れ、成形性が良好である。
〇:発泡粒子成形体表面の発泡粒子間隙が埋まっている。
×:発泡粒子成形体表面の発泡粒子間隙が埋まっていない。
成形体の融着率は、発泡粒子成形体を破断した際の破断面に露出した発泡粒子のうち、材料破壊した発泡粒子の数の割合に基づいて求めた。具体的には、まず、発泡粒子成形体から試験片(縦100mm×横100mm×厚み:成形体の厚み)を切り出し、カッターナイフで各試験片の厚み方向に約5mmの切り込みを入れた後、切り込み部から試験片を破断させた。次に、発泡粒子成形体の破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(n)の中で(b)が占める割合を百分率で表し、融着率とした。該融着率の値が大きいほど、発泡粒子の融着性に優れ、成形性が良好であることを意味する。該割合に基づいて、下記基準で融着性を評価した。
〇:融着率が90%以上であり、融着性が良好である。
×:融着率が90%未満であり、融着性が悪い。
回復性、表面性、融着性の評価に基づき、下記基準により、成形性の総合評価を行った。
〇:回復性、表面性、融着性の全てが良好である。
×:回復性、表面性、融着性のいずれかが不良である
発泡粒子成形体を温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置した後に、発泡粒子成形体の各種物性を測定した。
発泡粒子成形体からスキン面を除くサンプル(縦100mm×横100mm×厚み30mm)を切り出した。次に、サンプルの外形寸法からサンプルの見掛け体積を求め、サンプルの見掛け体積Hとし、サンプルの合計重量Wを該見掛け体積Hで割算する(W/H)ことにより、成形体密度[kg/m3]を求めた。
発泡粒子成形体からスキン面を除くサンプル(縦30mm×横30mm×厚み30mm)を5個切り出し、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、それぞれのサンプルの発泡粒子成形体の真の体積(発泡粒子成形体を構成する樹脂の体積と、発泡粒子成形体内の独立気泡部分の気泡全容積との和)の値Vxを測定した。この真の体積Vxの測定には、東芝・ベックマン(株)製の空気比較式比重計「930」を用いた。次いで、下記式(3)によりそれぞれのサンプルの独立気泡率を算出し、5回の測定結果の算術平均値を発泡粒子成形体の独立気泡率[%]とした。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(3)
Vx:前記方法で測定される発泡粒子成形体の真の体積(cm3)
Va:発泡粒子成形体の見掛けの体積(cm3)
W:発泡粒子成形体測定用サンプルの質量(g)
ρ:発泡粒子成形体を構成する樹脂の密度(g/cm3)
Claims (7)
- 気泡膜厚みが7μm以上80μm以下であり、X線回折法により測定される結晶子サイズが10nm超であることを特徴とする繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
- 前記ポリアミド系樹脂発泡粒子のX線回折法により測定される結晶子サイズが12nm超である、請求項1に記載の繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
- JIS K7122-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、前記ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱する際に測定される第1回加熱のDSC曲線の全融解熱量が40J/g以上140J/g以下である、請求項1又は2に記載の繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
- 下記の条件1にて得られる第2回加熱のDSC曲線の融解ピーク温度が185℃以上285℃以下である、請求項1~3のいずれか一に記載の繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
条件1
JIS K7121-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、前記ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱し、その温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱する際に測定されるDSC曲線を第2回加熱のDSC曲線とする。
- 前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度が0.01g/cm3以上0.3g/cm3以下である、請求項1~4のいずれか一に記載の繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
- 前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の独立気泡率が85%以上である、請求項1~5のいずれか一に記載の繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
- 前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径が200μm以上400μm以下である、請求項1~6のいずれか一に記載の繊維強化樹脂複合体の芯材用ポリアミド系樹脂発泡粒子。
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