JP7202788B2 - 窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵効率改善制御方法及び排気浄化装置 - Google Patents

窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵効率改善制御方法及び排気浄化装置 Download PDF

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Description

本発明は、窒素酸化物吸蔵触媒を有する排気浄化装置に係り、特に、吸蔵効率の向上等を図ったものに関する。
ディーゼルエンジンを用いた車両等にあっては、排気規制に適合した排気を行うため、窒素酸化物(NOx)を吸蔵するNOx吸蔵還元触媒(NSC)や、排気中の排気微粒子を捕集するディーセル微粒子捕集フィルタ(DPF)等を用いて構成された排気浄化装置が搭載されていることは良く知られている通りである。
車両の排気に対するNOx規制は、日本のみならず、欧州等においても年々強化されてきている。
特に、欧州においては、以前は、法規により定義された、ある特定の運転パターンでのNOx排出量規制値を満足することが求められていたが、現在は、Real Driving Emissionと称される実路下でのNOx排出量規制が施行され、幅広い運転領域・環境条件でNOxを低減することが求められている。
ところが、NOx吸蔵還元触媒の場合、ディーゼルエンジンの高負荷での運転状態にあっては、NOxの吸蔵作用の効率が低下してしまい、場合によっては、NOxの排出規制を満足できなくなる虞がある。
これは、ディーゼルエンジンが高負荷で運転されている状態にあっては、排気温度が高くなるが、NOx吸蔵還元触媒は、その温度が高くなるとNOxの吸蔵効率が低下する傾向にあることによるものである。
従来、このような不都合を解決する方策として、例えば、NOx吸蔵還元触媒に流入する排気温度を下げるために、排気再循環装置において、低圧の排気管をNOx吸蔵還元触媒の上流側へ分岐させて、比較的温度の低い排気をNOx吸蔵還元触媒へ流入させて温度上昇を防止する方法が提案されている。
また、NOx吸蔵還元触媒へ冷却風を送風するため、冷却水を流通させる冷却水循環用水路や冷却水を循環させるためのポンプ等からなる専用の冷却装置を設ける方策なども提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
特開2008-202528号公報
しかしながら、低圧側の排気管を分岐させてNOx吸蔵還元触媒の冷却を行う前者の方法にあっては、外気温が低い場合、排気管内の水蒸気が増加し、NOxと結合して金属部材の腐食を招くこととなるという問題がある。
また、専用の冷却装置を設ける後者の方法の場合、車両全体としての価格上昇を招くだけではなく、配設スペースの確保が難しいという問題がある。
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、環境条件に影響されることなく、極力簡易な構成で窒素酸化物吸蔵触媒の高い吸蔵効率を確実に維持可能とする窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵効率改善制御方法及び排気浄化装置を提供するものである。
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵効率改善制御方法は、
車両に搭載された内燃機関が排出する窒素酸化物を吸蔵する窒素酸化物吸蔵触媒を有してなる排気浄化装置における前記窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵効率改善制御方法であって、
前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側の温度が所定基準温度を上回る場合に、前記窒素酸化物吸蔵触媒の温度を目標温度に低下せしめるために必要とされる量の前記内燃機関に接続された吸気管を流通する空気を、前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に分流させ、
前記分流を、前記吸気管に設けられたインタークーラの下流側で行い、
前記窒素酸化物吸蔵触媒の温度を目標温度に低下せしめるために必要とされる前記インタークーラの下流側から前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に流入させるべき空気の量を、
前記インタークーラの下流で前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に分流せしめられた空気と、前記窒素酸化物吸蔵触媒に流入せしめられた前記内燃機関の排ガスの合計のエンタルピと、前記インタークーラの下流で前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に分流せしめられた空気と、前記窒素酸化物吸蔵触媒に流入せしめられた前記内燃機関の排ガスとが混合されて前記窒素酸化物吸蔵触媒が前記目標温度に達した状態におけるエンタルピとが等しいとするエネルギー保存の法則に基づく式を用いて算出するよう構成されてなるものである。
また、上記発明の目的を達成するため、本発明に係る排気浄化装置は、
車両に搭載された内燃機関に接続された排気管に設けられて前記内燃機関が排出する窒素酸化物を吸蔵する窒素酸化物吸蔵触媒と、前記内燃機関に接続された吸気管を流通する空気を前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側で前記排気管に分流するバイパス通路と、前記バイパス通路を開閉成するバイパスバルブとを有し、電子制御ユニットにより前記バイパスバルブの開閉成動作が制御可能に構成されてなる排気浄化装置であって、
前記バイパス通路の前記吸気管側の端部は前記吸気管に設けられたインタークーラの下流側で前記吸気管に接続され、
前記電子制御ユニットは、
前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側の温度が所定基準温度を上回る場合に、前記バイパスバルブを開成し、前記窒素酸化物吸蔵触媒の温度を目標温度に低下せしめるために必要とされる量の空気を、前記吸気管から前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側へ分流可能に構成されると共に、
前記窒素酸化物吸蔵触媒の温度を目標温度に低下せしめるために必要とされる前記インタークーラの下流側から前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に流入させるべき空気の量を、
前記インタークーラの下流で前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に分流せしめられた空気と、前記窒素酸化物吸蔵触媒に流入せしめられた前記内燃機関の排ガスの合計のエンタルピと、前記インタークーラの下流で前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に分流せしめられた空気と、前記窒素酸化物吸蔵触媒に流入せしめられた前記内燃機関の排ガスとが混合されて前記窒素酸化物吸蔵触媒が前記目標温度に達した状態におけるエンタルピとが等しいとするエネルギー保存の法則に基づく式を用いて算出するよう構成されてなるものである。
本発明によれば、環境条件に影響されることなく、比較的簡易な構成で窒素酸化物吸蔵触媒の窒素酸化物吸蔵効率を確実に高効率状態に維持することができ、従来に比してより排気浄化力の高い排気浄化装置を提供することができるという効果を奏するものである。
本発明の実施の形態における排気浄化装置が用いられる車両の排気系統の構成例を示す構成図である。 本発明の実施の形態における排気浄化装置によって実行される窒素酸化物吸蔵触媒吸蔵効率改善処理の手順を示すサブルーチンフローチャートである。 NSC温度変化に対する窒素酸化物吸蔵効率の変化特例例を示す特性線図である。 エンジン回転数とエンジントルクの変化に対してバイパスバルブの開成を可能とする領域を説明する模式図である。 バイパスバルブの開成制御における開度変化とバイパス流量の関係を模式的に示す模式図であって、図5(A)はバイパスバルブの開成制御開始時からの時間経過に対する開度変化例を模式的に示す模式図、図5(B)はバイパスバルブの開成制御開始時からの時間経過に対するバイパス流量の変化例を模式的に示す模式図である。 排気圧に対する要求トルクとバルブ開度との関係を説明する模式図であって、図6(A)は要求トルクの変化例を模式的に示す模式図、図6(B)は排気圧の変化例を模式的に示す模式図、図6(C)はバルブ開度の変化例を模式的に示す模試図である。 可変タービンの開口面積の変化に対する過給圧と排気圧の関係を説明する模式図であって、図7(A)は可変タービンの開口面積の変化例を模式的に示す模試図、図7(B)は可変タービンの開口面積の変化に対する過給圧の変化例を模式的に示す模試図、図7(C)は可変タービンの開口面積の変化に対する排気圧の変化例を模式的に示す模試図である。 トルク変化率に基づくバイパスバルブ開閉成制御を説明する模式図であって、図8(A)は要求トルクの変化例を模式的に示す模式図、図8(B)はトルク変化率の変化例を模式的に示す模式図、図8(C)はバイパスバルブの開度変化例を模式的に示す模式図である。 本発明の実施の形態における排気浄化装置におけるNSCの温度変化特性を説明する模式図であって、図9(A)は要求トルクの変化例を模式的に示す模試図、図9(B)はNSCの温度変化例を模式的に示す模試図、図9(C)はNSCにおける窒素酸化物の吸蔵量の変化例を模式的に示す模試図である。
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図9を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における排気浄化装置が適用される車両の配管系統の構成例について、図1を参照しつつ説明する。
まず、車両に搭載された内燃機関としてのディーゼルエンジン(以下「エンジン」と称する)1のインテークマニホールド11aには、燃料の燃焼のために必要な空気を取り入れる吸気管12が、また、エキゾーストマニホールド11bには、排気のための排気管13が、それぞれ接続されている。
そして、排気管13と吸気管12を連通する連通路14が、排気管13と吸気管12の適宜な位置に設けられると共に、この連通路14の途中には、排気の還流量を調整するためのEGRバルブ15が配設されている。
また、排気管13において連通路14より下流側に設けられた可変タービン17と、吸気管12において連通路14より上流側に設けられて可変タービン17の回転軸に連結されたコンプレッサ18とを主たる構成要素としてなる公知・周知の構成を有する過給装置16が設けられている。
可変タービン17は、排ガスの流れにより得られた回転力によりコンプレッサ18を回転せしめる一方、コンプレッサ18においては、吸入空気が圧縮されて、その圧縮空気がインテークマニホールド11aへ過給されるようになっている。
さらに、吸気管12には、先に述べた連通路14と過給装置16の間の適宜な位置において、吸入空気の冷却を行うインタークーラ19が設けられている。
そして、このインタークーラ19と連通路14との間には、吸入空気の量を調整するためのインテークスロットルバルブ20が設けられている。
また、吸気管12の上流側には、上流側から下流方向に向かってエアフィルタ21、吸入空気量を計測するエアフロセンサ22が設けられている。
さらに、吸気管12において、インテークスロットルバルブ20の下流側には、過給圧を検出する過給圧センサ23が設けられている。
一方、排気管13においては、可変タービン17の上流側の適宜な位置には、排気圧を検出する排気圧センサ31が設けられている。
さらに、可変タービン17の下流側においては、下流方向に向かって排気浄化のための窒素酸化物吸蔵還元触媒(NOx Storage Catalyst)24、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(Diesel Particulate Filter)25が設けられている。
ここで、窒素酸化物吸蔵還元触媒(以下「NSC」と称する)24は、車両が通常の運転状態にある場合に窒素酸化物(NOx)を吸蔵する。そして、エンジン1における燃料燃焼の状態が、排気中の酸素濃度を減少させる燃料過多の燃焼状態とされた場合に、吸蔵された窒素酸化物を無害な窒素と酸素に還元可能に構成されており、かかる構成は、従来のものと基本的に同一である。
また、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(以下「DPF」と称する)25は、例えば、セラミックス材料から構成されたハニカム構造のフィルタを用いて構成された従来と同様のものである。
さらに、排気管13においては、可変タービン17とNSC24との間に、排気管13の上流側から第1の排気温度センサ26、第1ラムダセンサ28が設けられている。
また、NSC24とDPF25の間には、第2排気温度センサ27、第2ラムダセンサ29が設けられると共に、DPF25には、差圧センサ30が設けられている。
また、本発明の実施の形態においては、排気管12のインタークーラ19とインテークスロットルバルブ20の間と、排気管13のNSC24と第1の排気温度センサ26及び第1ラムダセンサ28との間を連通するバイパス通路41が設けられている。
かかるバイパス通路41は、インタークーラ19の下流側とNSC24の上流側とを連通しており、その通路途中の適宜な位置には、管内を流れる空気の量を調整するためのバイパスバルブ42が設けられている。これによって、吸気管12のインタークーラ19の下流側を流通する空気を、排気管13のNSC24の上流側へ分流可能となっている。
上述のEGRバルブ15、可変タービン17、インテークスロットルバルブ20は、バイパスバルブ42などは、その動作が電子制御ユニット2により制御されるようになっている。
かかる電子制御ユニット2は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータを中心に、RAMやROM等の記憶素子(図示せず)を備えると共に、入出力インターフェイス回路(図示せず)を主たる構成要素として構成されてなるものである。
この電子制御ユニット2には、先のエアフロセンサ22、過給圧センサ23、第1及び第2排気温度センサ26,27、第1及び第2ラムダセンサ28,29、差圧センサ30、排気圧センサ31の各検出信号と共に、図示されないセンサ等により検出された車両の動作制御に必要な各種の信号、例えば、大気圧、エンジン回転数、アクセル開度、エンジン冷却水温等が入力されるようになっている。
上述のように電子制御ユニット2に入力された各種の検出信号は、燃料噴射弁(図示せず)の燃料噴射制御処理や、後述する本発明の実施の形態における酸化触媒再生処理等に供されるようになっている。
次に、電子制御ユニット2により実行される本発明の実施の形態における窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵効率改善制御処理について、図2乃至図9を参照しつつ説明する。
まず、本発明の実施の形態における電子制御ユニット2は、従来同様、エンジン1の動作制御や燃料噴射弁(図示せず)の燃料噴射制御、さらに、排気再循環制御等など実行可能に構成されたものであることを前提とする。
電子制御ユニット2による制御が開始されると、最初に、NSC24の上流側温度が所定基準温度TNSCを上回っているか否かが判定される(図2のステップS110参照)。
NSC24の上流側の温度としては、第1排気温度センサ26で検出された温度が用いられる。
ここで、所定基準温度TNSCは、次述するような観点から、個々のNSC24の具体的な仕様等を考慮して定められるべきものである。
まず、NSC24は、一般に、その周囲の温度が、高温域のある温度を超えるとNOxの吸蔵効率が極端に低下する傾向にある。この吸蔵効率の低下が生ずる温度は、NSC24の具体的な大きさ等によって異なる。
図3には、NSC24の温度変化に対する吸蔵効率の変化例を示す特性線が示されており、以下、同図について説明する。
同図において、二点鎖線の特性線は、NOxの蓄積量が零の場合におけるNSC24の温度変化に対する吸蔵効率の変化を、実線の特性線は、NOxの蓄積量が1gの場合におけるNSC24の温度変化に対する吸蔵効率の変化を、それぞれ表している。
NOxの蓄積量が零の場合は、NSC24の温度が大凡400℃を超えると吸蔵効率が急激に低下していることが確認できる。
また、NOxの蓄積量が1gの場合は、NSC24の温度が大凡330℃を超えると吸蔵効率が急激に低下していることが確認できる。
このように、NSC24のNOx吸蔵効率は、ある温度を超えると急激に低下するが、その温度は、既に吸蔵されているNOxの量によっても変化するものである。
したがって、所定基準温度TNSCは、NOxの吸蔵量なども考慮して、試験結果やシミュレーション結果等に基づいて適切な温度を設定するのが好適である。
しかして、ステップS110において、NSC24の上流側温度が所定基準温度TNSCを上回っていると判定された場合(YESの場合)には、ステップS120の処理へ進むこととなる。一方、NSC24の上流側温度が所定基準温度TNSCを上回っていないと判定された場合(NOの場合)には、このステップ以降の一連の処理を実行する必要は無いとして、処理は終了されることとなる。
ステップS120においては、バイパス条件が充足されているか否かが判定される。
すなわち、エンジン1の運転状態が、バイパスバルブ42を開成してインタークーラ19の下流側に流れる空気の一部をNSC24の上流側にバイパスさせるのに十分余裕のある状態か否かが判定される。
エンジン1の運転状態がバイパスバルブ42を開成するのに適した状態にあるか否かは、例えば、図4に示されたようなエンジン回転数とエンジントルクとの関係に基づいて判断される。
バイパスバルブ42を開成してインタークーラ19の下流側に流れる空気の一部をNSC24の上流側にバイパスさせることは、もともとのエンジン吸気量に加えてバイパスバルブ42の流路分の流量もコンプレッサ18で供給する必要があり、必要仕事が増大する。
ところが、排気エンタルピーが低い低回転・低負荷においては、そのようなコンプレッサ仕事の増大を達成できない可能性がある。
最大トルク出力(全負荷)近傍の出力状態にある場合には、バイパスバルブ42を開成して可変タービン17の制御によりコンプレッサ仕事を増大させようとすると、エンジン背圧限界、タービン回転数限界、チョーク限界などに到達し部品破損を招く虞がある。
なお、図4においては、二点鎖線により最大トルク出力状態となる箇所が示されている。
結局、バイパス条件が充足されているとされるのは、エンジン1の運転状態が、図4において実線で囲まれた領域(図4において「バイパス開成領域」と表記)にある場合となる。
エンジン1の運転状態が所定のバイパス開成領域(以下、説明の便宜上「所定バイパス許容範囲」と称する)にあると判定する場合の具体的な判断指標としては、図4に基づいてエンジン回転数、目標トルクを用いるのが好適である。なお、この判断指標は、これらエンジン回転数、目標トルクに限定される必要はなく、運転状態を判断するに適した他の物理量を加えて、より厳密に判定できるようにしても良い。例えば、過給圧やアクセル開度と、上述のエンジン回転数、目標トルクの4つをバイパス開成領域にあるか否かの判断指標としても好適である。
なお、目標トルクは、従来同様に別途実行される燃料噴射制御処理において演算算出されるもので、上述の判断指標として新たに演算する必要はなく、燃料噴射制御処理において算出された結果を流用すれば良いものである。
しかして、ステップS120においてバイパス条件が充足されていると判定された場合(YESの場合)、次述するステップS130の処理へ進む一方、バイパス条件は充足されていないと判定された場合(NOの場合)は、この一連の処理を実行するに適した状態ではないとして、一連の処理は終了されることとなる。
ステップS130においては、必要バイパス流量の演算が行われる。
すなわち、NSC24の温度を低下させるために、インタークーラ19の下流側からがNSC24の上流側に流入させるべき空気量の算出が行われる。
この必要バイパス流量は、下記する式1を前提として算出される。
(mEng×CpEG+mbyp×Cpair)×TDes=mEng×CpEG×TEG+mbyp×Cpair×TCAC・・・式1
ここで、”mEng”はエンジン1の単位時間当たりの排気流量、”CpEG”は排気の比熱、”mbyp”は必要バイパス流量、”Cpair”は空気の比熱、”TDes”はNSC24の目標温度、”TEG”は排気温度、”TCAC”はインタークーラ19の下流の空気温度である。
この式1は、エネルギー保存の法則に基づくものである。すなわち、式1は、インタークーラ19の下流で窒素酸化物吸蔵触媒24の上流側に分流せしめられた空気と、窒素酸化物吸蔵触媒24に流入せしめられた内燃機関としてのエンジン1の排ガスの合計のエンタルピと、インタークーラ19の下流で窒素酸化物吸蔵触媒24の上流側に分流せしめられた空気と、窒素酸化物吸蔵触媒24に流入せしめられたエンジン1の排ガスとが混合されて窒素酸化物吸蔵触媒24が目標温度に達した状態におけるエンタルピとが等しいことを意味するものである。
最終的には、式1を”mbyp”を算出する式に変換して必要バイパス流量が算出されることとなる。
なお、エンジン1の単位時間当たりの排気流量”mEng”は、エンジン1の具体的な仕様に応じて定まる値である。
また、”CpEG”は排気の比熱は、使用する燃料の特性に基づいて定まる値である。
さらに、排気温度”TEG”は、”第1排気温度センサ26の検出値が用いられる。
またさらに、インタークーラ19の下流の空気温度”TCAC”は、温度センサ(図示せず)の検出値が用いられる。
次いで、バイパスバルブ42の駆動(開度設定)が開始される(図2のステップS140参照)。
すなわち、バイパス通路41の空気の流量を、上述のようにして求められた必要バイパス流量とすべくバイパスバルブ42が所要の開度に設定される。
必要バイパス流量に対するバイパスバルブ42の開度は、バイパス通路41の具体的な寸法によって定まるものである。したがって、試験結果やシミュレーション結果に基づいて、必要バイパス流量とバイパスバルブ42の開度との相関関係を求めて、マップや変換表として定め、これを予め電子制御ユニット2の適宜な記憶領域に記憶しておき、バイパスバルブ42の開度設定に用いるようにするのが好適である。
バイパスバルブ42を所望する開度とするための駆動制御は、従来から知られているフィードバック制御とフィードフォワード制御を併用して行うのが好適である。
一般に、フィードフォワード制御でバイパスバルブ42の駆動を行った場合には、バイパスバルブ42の開度は、図5(A)において点線の特性線で示されたように、駆動開始からの時間経過と共にほぼ直線的に増大するものとなる。
一方、フィードバック制御とフィードフォワード制御を併用してバイパスバルブ42の駆動を行った場合、バイパスバルブ42の開度は、図5(A)において実線の特性線で示されたように、駆動開始からの時間経過と共に徐々に増大してゆくものとなる。同様にして、バイパス流量も目標流量に向かって徐々に増加してゆくものとなる(図5(B)参照)。
バイパスバルブ42の駆動が実行されている状態において、排気圧が所定基準圧Psを下回っているか否かが判定される(図2のステップS150参照)。
排気圧は、排気圧センサ31によって検出された値が用いられる。
排気圧は、通常、車両の運転者による運転によって生ずる要求トルクの増加と共に増加する傾向にある(図6(A)及び図6(B)参照)。
一方、高い排気圧に晒される各種の部品には、おのずと耐圧の限界があるため、排気圧を無制限とすることはできない。したがって、通常、排気圧は、装置の安全性を考慮して、部品の耐圧特性等から定まる限界圧(ハードウェアリミット)よりも、低めに設定された閾値を超えないように制限される(図6(B)参照)。
しかして、排気圧が所定基準圧Psを下回っていると判定された場合(YESの場合)には、次述するステップS160の処理へ進むこととなる。一方、排気圧が所定基準圧Psは、所定基準圧Psを下回っていないと判定された場合(NOの場合)、換言すれば、排気圧が所定基準圧Psを上回っている場合は、上述したようにバイパスバルブ42を開成する状態ではないとして、バイパスバルブ42の駆動停止とされ、一連の処理は終了されることとなる。
なお、所定基準圧Psは、エンジン1の具体的な仕様や排気系統の具体的な構成、規模等によって、その適切な値は異なるものであるので、その具体的な仕様等を考慮して試験結果やシミュレーション結果等に基づいて定めるのが好適である。
このように、バイパスバルブ42の駆動が停止された場合、排気圧はバイパスバルブ42の閉成と共に低下してゆき(図6(B)及び図6(C)参照)、装置の安全が確保されることとなる。
なお、排気圧は、可変タービン17の開口面積の変化に伴って増減することは従来から知られている通りである。
すなわち、例えば、図7に模式的に示されたように、可変タービン17の開口面積を小さくするにしたがって(図7(A)参照)、過給圧と排気圧は上昇する傾向を示す(図7(B)及び図7(C)参照)。
次に、ステップS160において、急加速の発生の有無が判定される。
急加速が発生した場合、エンジントルクを運転者の要求トルクに応じた大きさに増やす必要がある。そのためには、バイパスバルブ42を閉じて過給圧を大きくしなければならず、急加速の発生の有無の判定が必要とされる。
急加速が発生したか否かの判断には、例えば、単位時間当たりのトルクの変化の割合(以下、「トルク変化率」と称する)を用いるのが好適である。
図8には、トルク変化率を用いた場合の要求トルクとバイパスバルブ42の開度変化を模式的に示した模式図が示されており、以下、同図について説明する。
トルク変化率による急加速の発生の有無の判断においては、トルク変化率が予め定められた閾値を超えたか否かが判定される。すなわち、運転者の要求トルクが急に増大し(図8(A)参照)、トルク変化率が所定の閾値を超えたと判定されると(図8(B)参照)、バイパスバルブ42が閉成されることとなる(図8(C)参照)。
しかして、ステップS160において、急加速が発生したと判定された場合(YESの場合)、バイパスバルブ42を閉成する必要があるとして、バイパスバルブ42が閉成されて一連の処理は終了されることとなる。
一方、ステップS160において、急加速は発生していないと判定された場合(NOの場合)には、次述するステップS170の処理へ進むこととなる。
ステップS170においては、バイパスバルブ42の開度が目標バルブ開度に達したか否かが判定される。
バイパスバルブ42の開度が目標バルブ開度に達したと判定された場合(YESの場合)には、次述するステップS180の処理へ進むこととなる。一方、バイパスバルブ42の開度は目標バルブ開度に達していないと判定された場合(NOの場合)には、先のステップS140の処理へ戻り、バルブ駆動以降の一連の処理が繰り返されることとなる。
ステップS180においては、バイパスバルブ駆動の終了条件が充足されたか否かが判定される。
バイパスバルブ42の開度が目標開度に達した後に、バイパスバルブ42の駆動を終了する条件は、特定の条件に限定される必要な無く任意である。
例えば、バイパスバルブ42の開度が目標開度に達した後、一定時間経過後に駆動終了とする等の終了条件を採り得る。
しかして、ステップS180においてバイパスバルブ駆動の終了条件が充足されたと判定された場合(YESの場合)には、一連の処理は終了されることとなる。
一方、ステップS180においてバイパスバルブ駆動の終了条件は未だ充足されていないと判定された場合(YESの場合)には、先のステップS140の処理へ戻り、同ステップ以降の処理が繰り返されることとなる。
このように、排気浄化装置において吸蔵効率改善処理が実行されることにより、運転者の要求トルクの増大(図9(A)参照)に伴いNSC24の温度が上昇し(図9(B)参照)、所定基準温度を超えて排気中の窒素酸化物濃度が増大する状態となると(図8(C)参照)、バイパスバルブ42が開成されてNSC24の温度低下が図られることとなる。その結果、従来は、NSC24の温度が所定基準温度を超えて上昇を続けると共に(図9(B)の一点鎖線の特性線参照)、排気中の窒素酸化物濃度も増加していた(図9(C)の一点鎖線の特性線参照)のに対して、本願発明の実施の形態における排気浄化装置においては、バイパスバルブ42の開成後、NSC24の温度低下と共に(図9(B)参照)、排気中の窒素酸化物濃度も徐々に低下せしめられるものとなっている(図9(C)参照)。
環境条件に影響されることなく、極力簡易な構成で高いNOx吸蔵効率の維持が所望される車両に適用できる。
1…エンジン
2…電子制御ユニット
24…窒素酸化物吸蔵還元触媒
41…バイパス通路
42…バイパスバルブ

Claims (10)

  1. 車両に搭載された内燃機関が排出する窒素酸化物を吸蔵する窒素酸化物吸蔵触媒を有してなる排気浄化装置における前記窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵効率改善制御方法であって、
    前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側の温度が所定基準温度を上回る場合に、前記窒素酸化物吸蔵触媒の温度を目標温度に低下せしめるために必要とされる量の前記内燃機関に接続された吸気管を流通する空気を、前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に分流させ、
    前記分流を、前記吸気管に設けられたインタークーラの下流側で行い、
    前記窒素酸化物吸蔵触媒の温度を目標温度に低下せしめるために必要とされる前記インタークーラの下流側から前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に流入させるべき空気の量を、
    前記インタークーラの下流で前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に分流せしめられた空気と、前記窒素酸化物吸蔵触媒に流入せしめられた前記内燃機関の排ガスの合計のエンタルピと、前記インタークーラの下流で前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に分流せしめられた空気と、前記窒素酸化物吸蔵触媒に流入せしめられた前記内燃機関の排ガスとが混合されて前記窒素酸化物吸蔵触媒が前記目標温度に達した状態におけるエンタルピとが等しいとするエネルギー保存の法則に基づく式を用いて算出することを特徴とする窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵効率改善制御方法。
  2. 前記式は、
    (mEng×CpEG+mbyp×Cpair)×TDes=mEng×CpEG×TEG+mbyp×Cpair×TCACと表され、
    前記”mEng”はエンジンの単位時間当たりの排気流量、前記”CpEG”は排気の比熱、前記”mbyp”は必要バイパス流量、前記”Cpair”は空気の比熱、前記”TDes”は前記窒素酸化物吸蔵触媒の目標温度、前記”TEG”は排気温度、前記”TCAC”は前記インタークーラの下流の空気温度であることを特徴とする請求項1記載の窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵効率改善制御方法。
  3. 前記分流は、所定のバイパス条件が充足される場合に開始され、
    前記所定のバイパス条件は、少なくともエンジン回転数とエンジントルクが所定バイパス許容範囲にあることを特徴とする請求項2記載の窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵効率改善制御方法。
  4. 前記内燃機関の排気圧が所定基準圧を上回る場合には、前記分流を停止することを特徴とする請求項3記載の窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵効率改善制御方法。
  5. 前記内燃機関の急加速が生じた場合には、前記分流を停止することを特徴とする請求項4記載の窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵効率改善制御方法。
  6. 車両に搭載された内燃機関に接続された排気管に設けられて前記内燃機関が排出する窒素酸化物を吸蔵する窒素酸化物吸蔵触媒と、前記内燃機関に接続された吸気管を流通する空気を前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側で前記排気管に分流するバイパス通路と、前記バイパス通路を開閉成するバイパスバルブとを有し、電子制御ユニットにより前記バイパスバルブの開閉成動作が制御可能に構成されてなる排気浄化装置であって、
    前記バイパス通路の前記吸気管側の端部は前記吸気管に設けられたインタークーラの下流側で前記吸気管に接続され、
    前記電子制御ユニットは、
    前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側の温度が所定基準温度を上回る場合に、前記バイパスバルブを開成し、前記窒素酸化物吸蔵触媒の温度を目標温度に低下せしめるために必要とされる量の空気を、前記吸気管から前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側へ分流可能に構成されると共に、
    前記窒素酸化物吸蔵触媒の温度を目標温度に低下せしめるために必要とされる前記インタークーラの下流側から前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に流入させるべき空気の量を、
    前記インタークーラの下流で前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に分流せしめられた空気と、前記窒素酸化物吸蔵触媒に流入せしめられた前記内燃機関の排ガスの合計のエンタルピと、前記インタークーラの下流で前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側に分流せしめられた空気と、前記窒素酸化物吸蔵触媒に流入せしめられた前記内燃機関の排ガスとが混合されて前記窒素酸化物吸蔵触媒が前記目標温度に達した状態におけるエンタルピとが等しいとするエネルギー保存の法則に基づく式を用いて算出するよう構成されてなることを特徴とする排気浄化装置。
  7. 前記式は、
    (mEng×CpEG+mbyp×Cpair)×TDes=mEng×CpEG×TEG+mbyp×Cpair×TCACと表され、
    前記”mEng”はエンジンの単位時間当たりの排気流量、前記”CpEG”は排気の比熱、前記”mbyp”は必要バイパス流量、前記”Cpair”は空気の比熱、前記”TDes”は前記窒素酸化物吸蔵触媒の目標温度、前記”TEG”は排気温度、前記”TCAC”は前記インタークーラの下流の空気温度であることを特徴とする請求項6記載の排気浄化装置。
  8. 前記電子制御ユニットは、
    所定のバイパス条件が充足される場合に前記バイパスバルブの開成を開始し、
    前記所定のバイパス条件は、少なくともエンジン回転数とエンジントルクが所定バイパス許容範囲にあることを特徴とする請求項7記載の排気浄化装置。
  9. 前記電子制御ユニットは、
    前記内燃機関の排気圧が所定基準圧を上回る場合には、前記バイパスバルブの開成を停止することを特徴とする請求項8記載の排気浄化装置。
  10. 前記電子制御ユニットは、
    前記内燃機関の急加速が生じた場合には、前記バイパスバルブの開成を停止することを特徴とする請求項9記載の排気浄化装置。
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