以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、複数の電気設備を備える建物に、電気設備同士を接続する配線を配設する際の設計支援を行う配線設計支援装置について具体化している。以下では、その配線設計支援装置の説明を行うのに先立ち、まず配線設計支援装置による設計支援の対象となる建物の一例について説明する。また、建物としては、複数の建物ユニットが互いに組み合わされて構成されるユニット式建物を想定している。図1は、そのユニット式建物の間取りを示す平面図であり、図2は、ユニット式建物を構成する複数の建物ユニットの並びを示す平面図である。また、図3は、建物ユニットの構成を示す斜視図となっている。以下、これら図1~図3に基づいて、ユニット式建物の構成について説明する。なお、図2では、説明の便宜上、建物ユニットを簡略化して矩形枠で示している。
図1に示すように、建物40には、複数の屋内空間(部屋)が設けられている。屋内空間としては、玄関ホール41、居間42、和室43、台所44、食堂45、浴室46、洗面所47、トイレ48等が設けられている。それら各屋内空間41~48は間仕切壁49によって相互に仕切られている。
建物40は、図2に示すように、直方体状をなす複数の建物ユニット50により構成されるユニット式建物となっている。建物ユニット50は、図3に示すように、四隅に配設される4本の柱51と、各柱51の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁52及び床大梁53とを備える。そして、それら柱51、天井大梁52及び床大梁53により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱51は四角筒状の角形鋼よりなる。天井大梁52及び床大梁53は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。
建物ユニット50の長辺部の相対する天井大梁52の間には、所定間隔で複数の天井小梁55が架け渡されている。同じく建物ユニット50の長辺部の相対する床大梁53の間には、所定間隔で複数の床小梁56が架け渡されている。天井小梁55と床小梁56とはそれぞれ同間隔でかつ各々上下に対応する位置に設けられている。天井小梁55はリップ溝形鋼よりなり、床小梁56は角形鋼よりなる。
建物ユニット50は、その天井部に天井面材58を有し、その床部に床面材59を有している。天井面材58は、各天井小梁55により上方から支持され、床面材59は、各床小梁56により下方から支持されている。天井面材58の上方には、天井裏空間61が設けられている。天井裏空間61は、その周囲が各天井大梁52により囲まれた空間となっている。
天井裏空間61を囲む各天井大梁52には、そのウェブに梁貫通孔62が設けられている。梁貫通孔62は、天井大梁52の長手方向に所定の間隔で複数配置されている。
図2に示すように、建物40においては、各建物ユニット50ごとに天井裏空間61が設けられている。この場合、隣り合う建物ユニット50の天井裏空間61は、それら両建物ユニット50の天井大梁52により互いに仕切られており、詳しくは、両建物ユニット50において互いに隣接する各天井大梁52により仕切られている。また、これら隣接する各天井大梁52の梁貫通孔62は互いに位置合わせされることで連通状態にある。そして、これら連通された梁貫通孔62により梁孔部63が形成され、その梁孔部63により隣り合う天井裏空間61が互いに連通されている。
建物40には、太陽光発電システムが設けられている。太陽光発電システムは、太陽光が照射されることで発電を行うソーラパネル(図示略)と、そのソーラパネルにより発電された直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナー71,72と、ソーラパネルによる発電量を測定する電力量計73とを有する。パワーコンディショナー71,72は2台設けられ、建物40の屋外側に隣り合って設置されている。また、電力量計73も建物40の屋外側に設置されている。
建物40には、分電盤74が設けられている。分電盤74は、建物40内に設けられ、図示しない商用電源と接続されている。分電盤74には商用電源から商用電力(AC100V/200V)が供給され、その商用電力が分電盤74から建物40内の各種電気機器(例えば照明機器)へそれぞれ供給されるようになっている。
分電盤74はパワーコンディショナー71と電気配線75を介して接続され、パワーコンディショナー72と電気配線76を介して接続されている。この場合、ソーラパネルにより発電された直流電力はパワーコンディショナー71,72で交流電力に変換された後、電気配線75,76を介して分電盤74に供給される。したがって、分電盤74には、商用電源からの商用電力に加え、ソーラパネルによる発電電力が供給されるようになっており、さらには、その発電電力が分電盤74から各種電気機器へ供給されるようになっている。
また、分電盤74は、電力量計73と電気配線77,78を介して接続されている。電力量計73には、分電盤74から電気配線77,78を介して電力(商用電力や発電電力)が供給され、その供給された電力により電力量計73が作動する。なお、パワーコンディショナー71,72と電力量計73と分電盤74とがそれぞれ電気設備に相当する。
建物40には、電気配線75~78を配設可能な配線可能領域が設定されている。建物40では、配線可能領域として、天井裏空間61と間仕切壁49の壁内空間(図示略)とが設定されている。本建物40では、各天井裏空間61がそれぞれ配線可能領域として設定されており、以下では、これら各天井裏空間61を天井裏空間61A~61Fともいう。
各天井裏空間61A~61Fは、その仕様(空間仕様)がそれぞれ個別に設定されている。天井裏空間61には、天井小梁55が配設されている他、断熱材や吸音材といった各種部材(以下、天井裏部材という)が配設されている。この場合、その天井裏部材の配設態様によって天井裏空間61の広さ(体積)等、つまり天井裏空間61の仕様が決まる。したがって、天井裏空間61の仕様によって、その天井裏空間61への電気配線75~78の通しやすさも異なるものとなっている。なお、天井裏空間61には、壁内空間の上端部が通じている。
建物40には、さらに、配線可能領域として、隣り合う天井裏空間61を連通する梁孔部63が設定されている。建物40には、梁孔部63が複数配置されているが、いずれも同じ大きさ(孔径)を有している。この場合、梁孔部63の大きさが梁孔部63の仕様に相当し、その梁孔部63の仕様によって電気配線75~78の通しやすさが変わる。
建物40においては、パワーコンディショナー71,72の電気配線75,76が複数の天井裏空間61A~61Cと複数の梁孔部63(以下、63A,63Bとする)とを通じて配設されている。また、電力量計73の電気配線77,78は、複数の天井裏空間61A,61Cと梁孔部63Bとを通じて配設されている。なお、パワーコンディショナー71,72の電気配線75,76は1台につき1本であるのに対し、電力量計73の電気配線77,78は1台につき2本となっている。
ここで、上記のような建物40に電気配線75~77を配設するに際しては、配設に先立ち電気配線75~77をどのような経路で配設するかについての設計、すなわち配線設計を行う。本実施形態では、かかる配線設計の支援を配線設計支援装置10を用いて行うこととしており、以下においては、その配線設計支援装置10について説明する。図4は、配線設計支援装置10の概略構成を示す図である。なお、配線設計支援装置10は、例えば建物メーカに設けられ、同メーカの設計者(ユーザに相当)により用いられる。
図4に示すように、配線設計支援装置10は、パーソナルコンピュータにより構成され、配線設計を行うためのCADプログラムを有している。配線設計支援装置10は、制御部11と、操作部12と、表示部13と、記憶部14とを備える。制御部11は、配線設計に関する各種処理を行うものである。操作部12は、配線設計支援処理に必要な各種情報を入力するためのもので、キーボードやマウス等を備えて構成されている。表示部13は、配線設計支援処理に関する各種情報を表示するもので、ディスプレイからなる。記憶部14は、配線設計支援処理に必要な各種情報を記憶するものである。
次に、配線設計支援装置10により行われる配線設計支援の各種処理について説明する。
配線設計支援装置10は、建物内に配線可能領域を通じて電気配線を通す配線経路を作成する配線経路作成機能を有している。配線設計支援装置10は、予め設計された建物を対象として、その建物における配線経路を作成する。ここでは、上述した建物40について配線経路を作成する場合を想定しており、記憶部14には当該建物40の設計データ(CADデータ)があらかじめ記憶されているものとする。以下、配線経路作成処理について図5に基づいて説明する。なお、図5は、データベース構築処理の流れを示す機能ブロック図である。また、図5中の各機能ブロック21~27は制御部11により実現されている。
図5に示すように、建物情報取得部21は、記憶部14から建物40の設計データを読み出し、その読み出した設計データに基づいて建物40の建物情報を取得する。建物情報取得部21により取得される建物情報には、建物40の間取り情報と、電気設備71~74の配置に関する情報と、配線可能領域61,63に関する情報と、電気配線75~78に関する情報と、が含まれている。なお、建物情報取得部21が建物情報取得手段に相当する。
配線可能領域61,63に関する情報には、配線可能領域61,63の配置(位置)や仕様等の情報が含まれている。また、電気配線75~78に関する情報には、電気配線75~78の種別(種類)に関する種別情報に加え、電気配線75~78がどの電気設備71~74同士を接続する配線であるかに関する接続情報等が含まれている。なお、電気配線75~78は、その種別によって径(断面積)が異なるものとなっている。
配線経路作成部22は、建物情報取得部21により取得された建物40の建物情報に基づいて、建物40において配線可能領域を通じて電気配線75~78を通す配線経路K(詳しくは配線経路案)を作成する。この場合、配線経路作成部22は、各電気配線75~78を通す経路K1~K4をそれぞれ作成し、それら各経路K1~K4により配線経路Kが構成される。図6には、その作成された配線経路Kを例示する。
また、配線経路作成部22は、作成した配線経路Kを表示部13に表示させる。これにより、設計者は、作成された配線経路Kを確認することができる。なお、配線経路作成部22が配線経路作成手段に相当する。
ここで、設計者等は、作成された配線経路Kに沿って実際に電気配線75~78を通すことが可能か否か、つまり通線の可否を試作や実験等を行いながら確認していくことになる。具体的には、配線経路Kが通る各配線可能領域61,63ごとに、配線可能領域を通じて電気配線を通すことが可能か否か確認していくことになると考えられる。しかしながら、このような通線可否の確認を、建物ごとに、逐次行っていくのは大きな手間であると考えられる。
そこで、本配線設計支援装置10では、このような点に鑑み、設計者等が建物において通線可否の確認を行った場合に、その通線可否に関する情報(確認結果)を同装置10に入力できるようにし、そして、その入力に基づいて通線可否に関する情報を同装置10に記憶できるようにしている。つまり、本配線設計支援装置10では、複数の建物について、通線可否に関する情報を逐次記憶(蓄積)させることにより、通線可否に関するデータベースを構築することが可能となっている。そして、そのデータベースの構築後は、当該データベースを利用して建物における通線可否の判断を自動で行うこととしている。
以下においては、かかる本配線設計支援装置10による特徴的な処理について説明を行う。まず、通線可否に関するデータベースを構築する際の処理(データベース構築処理)について説明を行う。
データベース構築処理において、まず配線可能領域特定部23では、建物40内に設定された各配線可能領域61,63のうち、配線経路K(経路K1~K4)が通る配線可能領域61,63を特定する。図6の例では、各電気配線75,76の経路K1,K2が各天井裏空間61A~61Cと各梁孔部63A,63Bとを通る経路となっており、各電気配線77,78の経路K3,K4が各天井裏空間61A,61Cと梁孔部63Bとを通る経路となっている。したがって、配線可能領域特定部23では、配線経路Kが通る配線可能領域61,63として、各天井裏空間61A~61C及び各梁孔部63A,63Bを特定する。
領域配線特定部24は、配線可能領域特定部23により特定された各配線可能領域61A~61C,63A,63Bごとに、配線可能領域を通ることになるすべての電気配線を特定する。図6の例では、各配線可能領域61A~61C,63A,63Bのうち、天井裏空間61Aを各電気配線75~78が通り、天井裏空間61Bを各電気配線75,76が通り、天井裏空間61Cを各電気配線75~78が通り、梁孔部63Aを各電気配線75,76が通り、梁孔部63Bを各電気配線75~78が通るようになっている。したがって、領域配線特定部24では、天井裏空間61Aを通るすべての電気配線を電気配線75~78として特定し、天井裏空間61Bを通るすべての電気配線を電気配線75,76として特定し、天井裏空間61Cを通るすべての電気配線を電気配線75~78として特定し、梁孔部63Aを通るすべての電気配線を電気配線75,76として特定し、梁孔部63Bを通るすべての電気配線を電気配線75~78として特定する。なお、領域配線特定部24が領域配線特定手段に相当する。
通線可否入力画面表示部25は、配線可能領域特定部23により特定された各配線可能領域61A~61C,63A,63Bごとに、配線可能領域に実際に電気配線を通すことが可能か否かに関する領域通線可否情報を入力可能な入力画面Cを表示部13に表示させる。図7には、その入力画面Cが示されており、以下、この図7に基づいて入力画面Cについて説明する。なお、入力画面Cや操作部12によって領域通線可否情報入力手段が構成されている。
図7に示すように、入力画面Cには、各配線可能領域61A~61C,63A,63Bごとに、領域配線特定部24により特定された電気配線が表示されている。また、入力画面Cには、各配線可能領域61A~61C,63A,63Bごとに、配線可能領域に実際に電気配線を通すことが可能か否かに関する領域通線可否情報を入力するための入力欄81が設けられている。この入力欄81には、操作部12の操作により領域通線可否情報を入力可能となっている。本実施形態では、入力欄81に、電気配線を通すことが可能な場合(つまり通線OKの場合)に選択される「OK」選択部と、電気配線を通すことが不可能な場合(つまり通線NGの場合)に選択される「NG」選択部とが設けられている。そして、それら各選択部のうちいずれかが操作部12の操作により選択されると、通線OK(通線可能)又は通線NG(通線不可)の情報が領域通線可否情報として入力欄81に入力されるようになっている。
図7の例では、各天井裏空間61A~61C及び各梁孔部63A,63Bのそれぞれについて通線OKの情報が入力されている。したがって、図7の例では、各配線可能領域61A~61C,63A,63Bにおいてそれぞれ、実際に電気配線(詳しくは領域配線特定部24により特定されたすべての電気配線)を通すことが可能であったということであり、要するに、各電気配線75~78を配線経路Kに沿ってそれぞれ通すことが可能であったということになる。
領域通線可否情報取得部26は、入力画面C(詳しくは入力欄81)に入力された各配線可能領域61A~61C,63A,63Bの領域通線可否情報を取得する。ここでは、各配線可能領域61A~61C,63A,63Bの領域通線可否情報として通線可能の情報が取得される。
通線可否情報記憶部27は、領域通線可否情報取得部26により取得された各配線可能領域61A~61C,63A,63Bの領域通線可否情報を記憶部14に記憶する。この場合、通線可否情報記憶部27は、配線可能領域61A~61C,63A,63Bの領域通線可否情報を、当該配線可能領域に関する情報と、領域配線特定部24により当該配線可能領域を通ることになると特定されたすべての電気配線に関する情報とに対応付けて記憶する。より具体的には、配線可能領域61A~61C,63A,63Bの領域通線可否情報を、当該配線可能領域の仕様(仕様情報)と、上記すべての電気配線の種別(種別情報)とに対応付けて記憶する。
図8には、そのように対応付けて記憶された領域通線可否情報を表形式で示している。以下、この図8に基づいて記憶処理の内容についてさらに詳しく説明する。図8には、各配線可能領域61A~61C,63A,63Bごとに、配線可能領域の領域通線可否情報が示されている。例えば、各配線可能領域61A~61C,63A,63Bのうち、天井裏空間61Aの領域通線可否情報(通線OK)については、天井裏空間61Aの仕様である天井裏仕様Aと、天井裏空間61Aを通ることになると特定された各電気配線75~78の種別であるH1,H2,H5,H5とに対応付けて記憶されている。また、梁孔部63Aの領域通線可否情報(通線OK)については、梁孔部63Aの仕様である梁孔部仕様Aと、梁孔部63Aを通ることになると特定された各電気配線75,76の種別であるH1,H2とに対応付けて記憶されている。なお、各電気配線75~78のうち、電気配線75の種別がH1、電気配線76の種別がH2、各電気配線77,78の種別がH5となっている。
ここで、天井裏空間61の仕様と、梁孔部63の仕様とについて説明する。まず天井裏空間61の仕様について説明すると、本建物メーカでは、天井裏空間の仕様として、複数の仕様(例えば仕様A~K)があらかじめ用意されている。そして、天井裏空間を設計する際にはそれら複数の仕様の中からいずれかの仕様を選んで設計することになっている。これら各仕様は、互いに天井裏空間の広さ(体積)が相違しており、そのため、仕様が異なれば電気配線の通しやすさが互いに相違するものとなっている。
これと同様に、本建物メーカでは、梁孔部の仕様として、複数の仕様(例えば仕様A,B)があらかじめ用意されている。梁孔部を設計する際には、それら各仕様のうちいずれかを選んで設計することとなっている。これら各仕様は、互いに孔径(開口面積)が相違しており、そのため、仕様が異なれば電気配線の通しやすさが互いに相違するものとなっている。
次に、電気配線の種別について説明すると、本建物メーカでは、複数の種別(例えばH1~H10)の電気配線を取り扱っており、電気配線の配線設計を行う際には、それら各種別の電気配線のうちいずれかを用いることとしている。電気配線は、各種別ごとに、その径(断面積)が互いに相違しており、そのため、種別が異なれば配線可能領域に対する電気配線の通しやすさも異なるものとなっている。
上述したように、本配線設計支援装置10によれば、記憶部14に、建物40における各配線可能領域61A~61C,63A,63Bの領域通線可否情報が、当該配線可能領域の仕様と、当該配線可能領域を通ることになるすべての電気配線の種別とに対応付けて記憶(蓄積)される。また、本配線設計支援装置10では、建物40以外の建物についても、順次、同様の処理手順で、配線可能領域の領域通線可否情報を記憶部14に記憶(蓄積)していくことができる。そして、記憶部14に多数の領域通線可否情報を蓄積することで、当該記憶部14に領域通線可否情報のデータベース(以下、領域通線可否情報データベース31という)を構築することが可能となっている。そして、本配線設計支援装置10では、かかるデータベース31を構築後、そのデータベース31を用いて、建物に電気配線を通すことが可能か否かを判断する処理を行うこととしており、以下においては、その処理(データベース利用処理)の内容を図9に基づいて説明する。なお、図9は、データベース利用処理の流れを示す機能ブロック図である。また、図9中の各機能ブロック21~24,32~34は、制御部11により実現されるものとなっている。また、領域通線可否情報データベース31は記憶部14により構築されている。
ここでは、図10に示す建物80を対象に、その建物80(対象建物に相当)に電気配線を通すことが可能か否かをデータベース利用処理により判断することとしている。そこで、データベース利用処理の内容を説明する前にまず、建物80について簡単に説明する。図10に示すように、建物80は、上記建物40と同様、太陽光発電システムが設けられたユニット式建物となっている。建物80には、電気設備として、パワーコンディショナー86と、電力量計87と、分電盤88とが設けられている。分電盤88は、パワーコンディショナー86と電気配線91を介して接続され、また電力量計87と各電気配線92,93を介して接続されている。また、建物80には、配線可能領域として、天井裏空間83(83A~83F)と壁内空間(図示略)と梁孔部84とが設定されている。各電気配線91~93は天井裏空間83と梁孔部84とを通じて配設される。
続いて、図9に基づいてデータベース利用処理の流れについて説明する。
図9に示すように、データベース利用処理では、データベース構築処理と同様、まず建物情報取得部21による処理と、配線経路作成部22による処理とを行う。すなわち、データベース利用処理では、まず、建物情報取得部21が、記憶部14から建物80の建物情報を取得し、配線経路作成部22が、その取得した建物情報に基づき建物80において電気配線91~93を通す配線経路Kを作成する。図10には、その作成された配線経路Kが示されている。また、配線経路Kは、各電気配線91~93の経路K5~K7をそれぞれ含むものとなっている。
データベース利用処理では、配線経路Kの作成後、データベース構築処理と同様、配線可能領域特定部23による処理と、領域配線特定部24による処理とを行う。配線可能領域特定部23では、建物80内に設定された各配線可能領域83,84のうち、配線経路K(経路K5~K7)が通る配線可能領域83,84を特定する。この場合、配線可能領域特定部23は、配線経路K(経路K5~K7)が通る配線可能領域83,84として、各天井裏空間83B,83Dと梁孔部84Cとを特定する。
領域配線特定部24では、配線可能領域特定部23により特定された各配線可能領域83B,83D,84Cごとに、配線可能領域を通ることになるすべての電気配線を特定する。この場合、領域配線特定部24は、天井裏空間83Bを通るすべての電気配線を電気配線91~93として特定し、天井裏空間83Dを通るすべての電気配線を電気配線91~93として特定し、梁孔部84Cを通るすべての電気配線を電気配線91~93として特定する。
領域通線可否判断部32は、各配線可能領域83B,83D,84Cごとに、配線可能領域に領域配線特定部24により特定されたすべての電気配線を実際に通すことが可能か否かを判断する。この際、領域通線可否判断部32は、領域通線可否情報データベース31に記憶された領域通線可否情報に基づき、かかる判断を行う。具体的には、領域通線可否情報データベース31には、領域通線可否情報が、配線可能領域に関する情報と、当該配線可能領域を通ることになると特定されたすべての電気配線に関する情報とに対応付けて記憶されており、より具体的には、当該配線可能領域の仕様情報と当該すべての電気配線の種別情報とに対応付けて記憶されている。そして、領域通線可否判断部32では、そのように対応付けて記憶された領域通線可否情報に基づき、上記の判断を行う。なお、領域通線可否判断部32が領域通線可否判断手段に相当する。
ここで、領域通線可否判断部32による上記判断処理の内容について具体的に説明する。ここでは、領域通線可否判断部32により、配線可能領域83B(天井裏空間83B)に、上記特定されたすべての電気配線91~93を通すことができるか否か判断する場合を例に説明する。なお、天井裏空間83Bの仕様は天井裏仕様Bであり、各電気配線91~93の種別はH6,H8.H10となっている。
領域通線可否判断部32は、まず領域通線可否情報データベース31に記憶されている領域通線可否情報の中から、天井裏空間83Bと同じ仕様(天井裏仕様B)の天井裏空間に、各電気配線91~93とそれぞれ同じ種別(H6,H8,H10)からなる複数(3つ)の電気配線を通すことができたか否かに関する領域通線可否情報を取得する。この場合、領域通線可否情報データベース31には、かかる領域通線可否情報として、「通線NG」の情報が記憶されており(図8参照)、その情報を当該データベース31から読み出して取得する。
次に、領域通線可否判断部32は、その取得した領域通線可否情報に基づいて、天井裏空間83Bに各電気配線91~93を通すことができるか否かを判断する。この場合、上記取得した領域通線可否情報が「通線NG」の情報であるため、天井裏空間83Bに各電気配線91~93を通すことができないと判断する。
また、領域通線可否情報データベース31に、天井裏空間83Bと同じ仕様(天井裏仕様B)の天井裏空間に、各電気配線91~93とそれぞれ同じ種別(H6,H8,H10)からなる複数(3つ)の電気配線を通すことができたか否かに関する領域通線可否情報が記憶されていない場合には、次のように、処理することが考えられる。
すなわち、この場合、領域通線可否判断部32は、天井裏空間83Bと同じ仕様(天井裏仕様B)の天井裏空間に、各電気配線91~93と類似する種別(H5,H7,H9)からなる複数(3つ)の電気配線を通すことができたか否かに関する領域通線可否情報を領域通線可否情報データベース31から取得する。そして、その取得した領域通線可否情報に基づき、天井裏空間83Bに各電気配線91~93を通すことができるか否か判断する。なお、種別H5とH6は類似する関係にあり、種別H7とH8は類似する関係にあり、種別H9とH10は類似する関係にある。
また、次のように処理してもよい。すなわち、領域通線可否判断部32が、天井裏空間83Bと類似する仕様(天井裏仕様A)の天井裏空間に、各電気配線91~93と同じ種別(H6,H8,H10)からなる複数(3つ)の電気配線を通すことができたか否かに関する領域通線可否情報を領域通線可否情報データベース31から取得する。そして、その取得した領域通線可否情報に基づき、天井裏空間83Bに各電気配線91~93を通すことができるか否か判断する。なお、天井裏仕様Aは天井裏仕様Bと類似する仕様となっている。
通線可否判断部33は、領域通線可否判断部32の判断結果に基づいて、建物80において配線経路Kに沿って電気配線91~93を通すことができるか否かを判断する。この場合、領域通線可否判断部32により、各配線可能領域83B,83D,84Cのそれぞれで、配線可能領域に上記特定されたすべての電気配線91~93を通すことができると判断された場合には、通線可否判断部33は、配線経路Kに沿って電気配線91~93を通すことができると判断する(つまり通線OKと判断する)。一方、各配線可能領域83B,83D,84Cのうちいずれかで、配線可能領域に上記特定されたすべての電気配線91~93を通すことができないと判断された場合には、通線可否判断部33は、配線経路Kに沿って電気配線91~93を通すことができないと判断する(つまり通線NGと判断する)。なお、通線可否判断部33が通線可否判断手段に相当する。
判断結果表示部34は、通線可否判断部33の判断結果を表示部13に表示させる。これにより、設計者は、建物80において配線経路Kに沿って電気配線91~93を配設することができるか知ることができる。
また、判断結果表示部34は、通線可否判断部33により電気配線91~93を通すことができないと判断された場合には、その結果と併せて、各配線可能領域83B,83D,84Cのうち、どの配線可能領域で電気配線を通すことができなかったか、つまり通線NG箇所についても表示部13に表示させる。これにより、設計者等は、配線経路を見直す際、どこを見直せばよいか知ることができるため、見直しがし易い。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
建物40について取得された建物情報に基づいて配線経路Kが作成され、その作成された配線経路Kが通る配線可能領域61A~61C,63A,63Bごとに、配線可能領域を通ることになるすべての電気配線が特定される。そして、特定されたすべての電気配線を配線可能領域に実際に通すことが可能か否かが領域通線可否情報として設計者により入力され、その入力された領域通線可否情報が配線可能領域に関する情報と前記すべての電気配線に関する情報とに対応付けて記憶部14に記憶される。
この場合、ユーザが試作や実験等を行うことで確かめた領域通線可否情報をユーザの入力操作によって記憶部に記憶し蓄積することができる。したがって、建物における配線経路の作成を行う度に、その建物における領域通線可否情報を設計者が逐次入力し記憶部14に記憶していくことで、領域通線可否情報のデータベース31を構築することができる。これにより、データベース構築後は、データベース31に記憶された領域通線可否情報に基づき、配線可能領域に電気配線を通すことが可能か否か判断することが可能となる。そのため、建物内に電気配線を通すことが可能か否かの判断を容易に行うことが可能となる。
データベース構築後は、記憶部14に記憶された領域通線可否情報に基づき、建物80(対象建物)に電気配線を通すことが可能か否かを判断するデータベース利用処理が行われる。具体的には、取得された建物80の建物情報に基づき配線経路Kが作成され、その作成された配線経路Kが通る配線可能領域83B,83D,84Cごとに、配線可能領域を通ることになるすべての電気配線が特定される。そして、特定されたすべての電気配線(以下、すべての対象電気配線という)を配線可能領域(以下、対象配線可能領域という)に通すことが可能か否かが上記領域通線可否情報に基づいて判断される。
この場合、記憶部14(領域通線可否情報データベース31)に記憶されている多数の領域通線可否情報の中から、対象配線可能領域と同じ(又は類似する)仕様の配線可能領域に、すべての対象電気配線とそれぞれ同じ(又は類似する)種類(種別)からなる複数の電気配線を通すことができたか否かに関する領域通線可否情報を取得し、その取得した領域通線可否情報に基づいて、すべての対象電気配線を対象配線可能領域に通すことが可能か否かを判断する。
このような構成によれば、領域通線可否情報データベース31を用いて、対象配線可能領域にすべての対象電気配線を通すことが可能か否か自動で判断することができる。また、かかる判断結果に基づき、配線経路に沿って電気配線を通すことが可能か否かが判断されるため、建物80に電気配線を通すことが可能か否かの判断を容易に行うことが可能となる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
・上記実施形態では、建物情報取得部21が、記憶部14より建物40の設計データを取得し、その取得した設計データに基づき建物40の建物情報を取得したが、建物情報の取得の仕方は必ずしもこれに限らない。例えば、建物情報に含まれる各種情報(建物40の間取り情報、電気設備71~74の配置に関する情報、配線可能領域61,63に関する情報、電気配線75~78に関する情報)のうち、一部の情報については設計者による操作部12の入力操作に基づき取得するようにしてもよい。
・上記実施形態では、配線可能領域として、天井裏空間と、壁内空間と、梁孔部とを設定したが、それ以外の空間を配線可能領域として設定してもよい。例えば、床下空間を配線可能領域として設定してもよい。また、ユニット式建物では、隣り合う建物ユニットの隣接する柱の間に隙間(柱間隙間)が存在している。そのため、その柱間隙間を配線可能領域として設定してもよい。
・領域通線可否判断部32において、配線可能領域(以下、配線可能領域Xという)に領域配線特定部24により特定されたすべての電気配線(以下、すべての電気配線Yという)を実際に通すことが可能か否かを判断する際、例えば次のように判断してもよい。
まず、領域通線可否情報データベース31に記憶された領域通線可否情報を深層学習することで、上記配線可能領域Xに通すことが可能な電気配線に関する判断基準を作成する。具体的には、領域通線可否情報データベース31には、領域通線可否情報が、配線可能領域に関する情報(配線可能領域の仕様情報)と、当該配線可能領域を通ることになると特定されたすべての電気配線に関する情報(すべての電気配線の種別情報)とに対応付けて記憶されている。そのため、領域通線可否判断部32では、上記のように対応付けて記憶された領域通線可否情報を深層学習することで、上記判断基準を作成する。
具体的には、領域通線可否情報データベース31に記憶されている各領域通線可否情報のうち、配線可能領域Xと同じ又は類似する仕様の配線可能領域についての領域通線可否情報を深層学習することで、上記判断基準を作成する。かかる領域通線可否情報には、「通線OK」の情報と、「通線NG」の情報とが含まれている。そこで、「通線OK」の情報に対応する「すべての電気配線の種別情報」と、「通線NG」の情報に対応する「すべての電気配線の種別情報」とをそれぞれ特定する。この場合、すべての電気配線の種別情報からは、例えば当該すべての電気配線の総断面積を算出することができる。そのため、この場合、通線OKの場合にはすべての電気配線の総断面積がどれくらいであるか、通線NGの場合にはすべての電気配線の総断面積がどれくらいであるか、把握することができる。したがって、この場合、すべての電気配線の総断面積がどのくらいであれば通線OKとなるか通線NGとなるかについて、その判断基準(総断面積の閾値)を深層学習を用いて作成することが可能となる。
判断基準を作成した後は、上記判断基準(閾値)に基づき、配線可能領域Xにすべての電気配線Yを実際に通すことが可能か否か判断を行う。この場合、すべての電気配線Yの総断面積が閾値以下であれば通線OKと判断し、閾値を上回っている場合には通線NGと判断する。
このようにして、上記の例によれば、深層学習を用いることで、配線可能領域Xにすべての電気配線Yを通すことが可能か否か好適に判断することが可能となる。
・上記実施形態では、ユニット式の建物に電気配線を配設する場合に配線設計支援装置10を用いたが、鉄骨軸組工法により構築される建物等、他の建物に電気配線を配設する場合にも配線設計支援装置10を用いることができる。