JP7200905B2 - 化学反応装置 - Google Patents

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Description

本発明は、化学反応装置に関する。
容器内に還元反応用電極と酸化反応用電極とを離間させて対向させ、還元反応用電極と酸化反応用電極との間に電解液を流通させることで、電解液に含有される物質(反応基質)を化学反応させる化学反応装置が開示されている(特許文献1)。また、複数の光電気化学反応セルのユニットを直列及び並列に接続した構成が開示されている(特許文献2)。
特開2018-087074号公報 特開2017-048442号公報
ところで、化学反応セルの効率を高くするためには大きな電極面積が必要となる。その結果、化学反応装置が巨大化してしまうという問題がある。また、化学反応セルを直並列接続した場合、配管や配線が多くなるために装置全体が大きくなり、製造コストも増大するという問題がある。また、化学反応セルの各々に流れる電解液の流量にばらつきが生じ易くなる。
また、化学反応セルに太陽電池から電圧を印加する場合、太陽電池の最大効率動作点で動作させることができることが望ましい。
本発明の1つの態様は、容器内に液体を供給し、液体に含まれる物質を反応させる化学反応装置であって、1つの前記容器内に還元反応用電極と酸化反応用電極が離間して対向する位置に配置されており、前記容器内に複数組の前記還元反応用電極と前記酸化反応用電極が設けられ、前記還元反応用電極及び前記酸化反応用電極は、並列接続、直列接続又はそれらを組み合わせた直並列接続されていることを特徴とする化学反応装置である。
ここで、前記物質は、二酸化炭素(CO)であり、前記還元反応用電極において二酸化炭素(CO)が還元され、前記酸化反応用電極において酸素(O)が発生することが好適である。
また、前記容器外へ前記気体を排出するための排気口と、前記容器外へ前記液体を排出するための液体排出口と、が別々に設けられていることが好適である。
また、前記還元反応用電極と前記酸化反応用電極は太陽電池に接続されており、前記太陽電池の最大出力動作点Pmaxと、前記還元反応用電極と前記酸化反応用電極からなるセルの出力動作点Pworkと、が(出力動作点Pwork/最大出力動作点Pmax)≧0.8の条件を満たし、前記太陽電池の受光面積Ascと、前記還元反応用電極と前記酸化反応用電極の各々の反応領域面積Aと、が0.8≦(反応領域面積A/受光面積Asc)≦1.2の条件を満たすように前記還元反応用電極と前記酸化反応用電極の組の数が設定されていることが好適である。
また、前記還元反応用電極及び前記酸化反応用電極の少なくとも1つは、両面に触媒が担持された基板を含むことが好適である。
また、前記基板は、両面に透明導電層を有し、前記透明導電層上に前記触媒が担持されていることが好適である。
また、前記基板は、導電材料から構成され、前記導電材料上に前記触媒が担持されていることが好適である。
また、前記還元反応用電極及び前記酸化反応用電極を並列接続、直列接続又はそれらを組み合わせた直並列接続に切り換える接続切替手段を有することが好適である。
本発明によれば、反応効率を高めた化学反応装置を提供できる。
本発明の実施の形態における化学反応装置の構成を示す斜視図である。 本発明の実施の形態における化学反応装置の構成を示す断面模式図である。 本発明の実施の形態における化学反応装置の構成を示す断面模式図である。 本発明の実施の形態における還元反応用電極の構成を示す図である。 本発明の実施の形態における酸化反応用電極の構成を示す図である。 本発明の実施の形態における酸化反応用電極と還元反応用電極のスタック構成を示す図である。 本発明の実施の形態におけるバイアス電源の接続方法を説明する図である。 本発明の実施の形態におけるバイアス電源の作用を説明する図である。 本発明の実施の形態における越流口の例を示す図である。 本発明の実施の形態における越流口の設け方を示す図である。 本発明の実施の形態におけるオリフィス板の構成を示す模式図である。 本発明の実施の形態におけるオリフィス板の構成を示す拡大模式図である。 実施例1における化学反応装置の構成を示す模式図である。 実施例1において二酸化炭素の還元反応を繰り返したときの電流密度の経時変化を示す図である。 実施例2における電解液の流量分布のシミュレーション結果を示す図である。 実施例2において太陽電池に対して光を照射した状態と照射しない状態とを繰り返したときの電解液の圧力と流量の時間変化を示す図である。 比較例1における電解液の流量分布のシミュレーション結果を示す図である。 太陽電池に対して光を照射した状態と照射しない状態とを繰り返したときの電解液の圧力と流量の時間変化を示す図である。 比較例2における電解液の流量分布のシミュレーション結果を示す図である。 実施例7における電解液の流量分布のシミュレーション結果を示す図である。 実施例9における電解液の流量分布のシミュレーション結果を示す図である。 実施例7及び実施例9における各流路における電解液の流量を示す図である。 比較例3及び実施例3~実施例9における各流路を説明するための図である。 比較例3及び実施例3~実施例9における面内流量分布を示す図である。
本発明の実施の形態における化学反応装置100は、図1の斜視模式図及び図2,3の断面模式図に示すように、酸化反応用電極102、還元反応用電極104、セパレータ106、電解液108、容器110及びオリフィス板112を含んで構成される。
図2は、電解液108が供給されていない状態における化学反応装置100をY-Z平面で切断した断面図を示す。図3は、電解液108が供給されている状態における化学反応装置100をY-Z平面で切断した断面図を示す。
酸化反応用電極102及び還元反応用電極104は、それぞれX方向及びZ方向に拡がる板状の部材であり、Y方向に沿って互いに対向するように配置される。本実施の形態では、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104は、セパレータ106を挟んで互いの触媒が担持されたX-Z面方向に広がった反応面が対向するように配置されている。
また、本実施の形態では、図2,3の左側から酸化反応用電極102、セパレータ106及び還元反応用電極104がY方向に沿って配置され、次に還元反応用電極104、セパレータ106及び酸化反応用電極102がY方向に沿って配置され、次に酸化反応用電極102、セパレータ106及び還元反応用電極104がY方向に沿って配置され、次に還元反応用電極104、セパレータ106及び酸化反応用電極102がY方向に沿って配置され、次に酸化反応用電極102、セパレータ106及び還元反応用電極104がY方向に沿って配置されている。すなわち、酸化反応用電極102、セパレータ106及び還元反応用電極104からなる電極の組がY方向に沿って複数スタックされている。
還元反応用電極104は、還元反応によって物質を還元するために利用される電極である。還元反応用電極104は、図4の断面図に示すように、基板114上に形成される。還元反応用電極104は、導電層10及び還元触媒層12を含んで構成される。
基板114は、還元反応用電極104を構造的に支持する部材である。基板114は、特に材料が限定されるものではないが、例えば、ガラス基板等とされる。また、基板114は、例えば、金属又は半導体を含んでもよい。基板114として用いられる金属は、特に限定されるものではないが、チタン(Ti)、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)を含むことが好適である。基板114として用いられる半導体は、特に限定されるものではないが、酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)、シリコン(Si)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タンタル(Ta)等とすることが好適である。
基板114を絶縁体とした場合、基板114と還元触媒層12との間に導電層10が設けられる。導電層10は、還元反応用電極104の還元触媒層12に対して電圧を印加するために設けられる。導電層10は、特に限定されるものではないが、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電層とすることが好適である。特に、熱的及び化学的な安定性を考慮するとフッ素ドープ酸化錫(FTO)を用いることが好適である。
還元触媒層12は、還元触媒機能を有する材料から構成される。還元触媒層12は、錯体触媒を含むことが好適である。還元触媒層12は、例えば、ルテニウム錯体とすることが好適である。錯体触媒は、例えば、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)(MeCN)Cl]、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)Cl]、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)(CHCN)Cl]等とすることができる。
錯体触媒による修飾は、錯体をアセトニトリル(MeCN)溶液に溶解した液を導電層10の上に塗布することで作ることができる。また、錯体触媒による修飾は、電解重合法により行うこともできる。作用極として導電層10の電極、対極にフッ素含有酸化スズ(FTO)で被覆したガラス基板、参照電極にAg/Ag電極を用い、錯体触媒を含む電解液中においてAg/Ag電極に対して負電圧となるようにカソード電流を流した後、Ag/Ag電極に対して正電位となるようにアノード電流を流すことにより導電層10の表面上を錯体触媒で修飾することができる。電解質の溶液には、アセトニトリル(MeCN)、電解質には、Tetrabutylammoniumperchlorate(TBAP)を用いることができる。
また、還元触媒層12は、カーボン材料(C)を含む導電体を含んで構成することができる。カーボン材料の構造体の単体のサイズが1nm以上1μm以下であることが好適である。カーボン材料は、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン及びグラファイトの少なくとも1つを含むことが好適である。グラフェン及びグラファイトであればサイズが1nm以上1μm以下であることが好適である。カーボンナノチューブであれば直径が1nm以上40nm以下であることが好適である。導電体は、エタノール等の液体に混ぜ合わせたカーボン材料をスプレーで塗布し、加熱することによって形成することができる。スプレーの代わりに、スピンコートによって塗布してもよい。また、スピンコートを用いず、直接溶液を滴下して乾かして塗布してもよい。
還元触媒層12における還元触媒の担持方法は、例えば、金属錯体(触媒)をアセトニトリル(MeCN)溶液に溶解した液(例えば、Ru錯体ポリマー溶液)をカーボンペーパー、カーボンクロス等のカーボン系材料の上に塗布、乾燥することで作製することができる。また、還元触媒の担持は、電解重合法により行うこともできる。例えば、作用極としてカーボン系材料の電極、対極にフッ素含有酸化スズ(FTO)で被覆したガラス基板、参照電極にAg/Ag電極を用い、還元触媒を含む電解液中においてAg/Ag電極に対して負電圧となるようにカソード電流を流した後、Ag/Ag電極に対して正電位となるようにアノード電流を流すことによりカーボン系材料に還元触媒で担持することができる。電解質の溶液には、例えば、アセトニトリル(MeCN)、電解質には、例えば、Tetrabutylammoniumperchlorate(TBAP)を用いることができる。
なお、図4では、基板114の片方の面のみに導電層10及び還元触媒層12を形成した例を示したが、基板114の両方の面に導電層10及び還元触媒層12を形成してもよい。
酸化反応用電極102は、酸化反応によって物質を酸化するために利用される電極である。酸化反応用電極102は、図5の断面図に示すように、基板116上に形成される。酸化反応用電極102は、導電層14及び酸化触媒層16を含んで構成される。
基板116は、酸化反応用電極102を構造的に支持する部材である。基板116は、還元反応用電極104に用いられる基板114と同様の材料とすることができる。
導電層14は、酸化反応用電極102における集電を効果的にするために設けられる。導電層14は、特に限定されるものではないが、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)等とすることが好適である。特に、熱的及び化学的な安定性を考慮するとフッ素ドープ酸化錫(FTO)を用いることが好適である。
酸化触媒層16は、酸化触媒機能を有する材料を含んで構成される。酸化触媒機能を有する材料は、例えば、酸化イリジウム(IrOx)を含む材料とすることができる。酸化イリジウムは、ナノコロイド溶液として導電層14の表面上に担持することができる(T.Arai et.al, Energy Environ. Sci 8, 1998 (2015))。
例えば、酸化イリジウム(IrOx)のナノコロイドを合成する。先ず、2mMの塩化イリジウム酸(IV)カリウム(KIrCl)水溶液50mlに10wt%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を加えてpH13に調整した黄色溶液を、ホットスターラーを用いて90℃で20分加熱する。これによって得られた青色溶液を氷水で1時間冷却する。そして、冷やした溶液(20ml)に3M硝酸(HNO)を滴下してpH1に調整し、80分攪拌し、酸化イリジウム(IrOx)のナノコロイド水溶液を得る。さらに、この溶液に1.5wt%NaOH水溶液(1-2ml)を滴下してpH12に調整する。このようにして得られた酸化イリジウム(IrOx)のナノコロイド水溶液を、導電層14上にpH12に塗布し、乾燥炉内にて60℃で40分間保持して乾燥させる。乾燥後、析出した塩を超純水で洗浄し、酸化反応用電極102を形成することができる。なお、酸化イリジウム(IrOx)のナノコロイド水溶液の塗布及び乾燥を複数回繰り返してもよい。
なお、図5では、基板116の片方の面のみに導電層14及び酸化触媒層16を形成した例を示したが、基板116の両方の面に導電層14及び酸化触媒層16を形成してもよい。
セパレータ106は、酸化反応用電極102と還元反応用電極104の間を仕切る部材である。セパレータ106は、電解液108内においてプロトンを伝達することができる多孔体であるプロトン伝導フィルムによって構成することができる。あるいは、多孔性の親水性高分子材料又は表面に親水化処理が施された多孔性の高分子材料、例えば、レーヨン不織布、ビニロン不織布、親水化超高分子量ポリエチレン多孔体フィルム、親水化ポリプロピレンメッシュ、親水化超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムで構成することができる。
化学反応装置100は、還元反応用電極104と酸化反応用電極102の間に電解液108を導入することで機能する。すなわち、図1及び図3に示すように、還元反応用電極104と酸化反応用電極102を囲むように容器110を配置し、還元反応用電極104と酸化反応用電極102の表面に反応物が溶解された電解液108を供給する。
反応基質は、炭素化合物とすることができ、例えば、二酸化炭素(CO)とすることができる。また、電解液108は、リン酸緩衝水溶液やホウ酸緩衝水溶液とすることが好適である。具体的な構成例では、二酸化炭素(CO)飽和リン酸緩衝液のタンクを設け、ポンプによって当該液を電解液供給口から還元反応用電極104と酸化反応用電極102との表面に供給し、還元反応によって生じたギ酸(HCOOH)を越流口110eを経由して電解液排出口110bから外部の燃料タンクに回収すると同時に、酸化反応により生じた酸素(O)を排気口110cから排出する。
本実施の形態では、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104は、触媒が担持された反応面が鉛直方向(X-Z面内方向)となるように容器110内に配置される。また、本実施の形態では、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の組120がY方向に沿って複数スタックされた構成としている。
図6(a)~図6(d)は、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の組120を複数スタックした構成例を示す。図6(a)~図6(d)では、煩雑になることを避けるためにセパレータ106を省略して酸化反応用電極102、還元反応用電極104及び容器110のみをX-Y平面で切断した断面図を模式的に示している。
図6(a)に示すように、各組120がそれぞれ収納された容器110をスタックした構成とすることができる。また、図6(b)に示すように、隣り合う組120の酸化反応用電極102の裏面同士を貼り合わせ、還元反応用電極104の裏面同士を貼り合わせて、酸化反応用電極102、還元反応用電極104、還元反応用電極104、酸化反応用電極102・・・とスタックして1つの容器110に収納した構成とすることもできる。また、図6(c)及び図6(d)に示すように、隣り合う組120の酸化反応用電極102の基板116の両面に酸化触媒層16を形成し、還元反応用電極104の基板114の両面に還元触媒層12を形成し、酸化反応用電極102、還元反応用電極104、還元反応用電極104、酸化反応用電極102・・・とスタックして1つの容器110に収納した構成とすることもできる。なお、図6(c)は、基板114,116をガラス基板として両面に導電層10を形成した上で還元触媒層12,酸化触媒層16を担持させた構成である。ガラス基板は、例えば、機械的な強度等の観点から数mm程度の厚さとされる。また、図6(d)は、基板114,116を金属基板(例えば、チタン)として両面に還元触媒層12,酸化触媒層16を担持させた構成である。金属基板は、例えば、1mm程度の厚さとすることができる。
このように、図6(b)~(d)のように酸化反応用電極102及び還元反応用電極104をスタックして1つの容器に収納した構成にすることによって、図6(a)のように個々の酸化反応用電極102及び還元反応用電極104を収納した容器をスタックした場合に比べて化学反応装置100の体積当たりの酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の反応領域の面積を大きくすることができる。
また、還元反応用電極104と酸化反応用電極102との間を電気的に接続し、適切なバイアス電圧を印加した状態とすることが好適である。バイアス電圧を印加する手段は、特に限定されるものではなく、化学電池(一次電池、二次電池等を含む)、定電圧源、太陽電池等が挙げられる。このとき、酸化反応用電極102に正極が接続され、還元反応用電極104に負極が接続される。
バイアス電源として太陽電池を採用した場合、太陽電池は、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104に隣接して配置することができる。例えば、還元反応用電極104の背面に太陽電池セルを配置し、太陽電池セルの正極を酸化反応用電極102に接続し、負極を還元反応用電極104に接続すればよい。
二酸化炭素(CO)からギ酸(HCOOH)等を合成する場合、水(HO)は酸化されて二酸化炭素(CO)に電子とプロトンを供給する。pH7付近では水(HO)の酸化電位は0.82V、還元電位は-0.41V(何れもNHE)である。また、二酸化炭素(CO)から一酸化炭素(CO)、ギ酸(HCOOH)、メチルアルコール(CHOH)への還元電位はそれぞれ-0.53V,-0.61V,-0.38Vである。したがって、酸化電位と還元電位の電位差は1.20~1.43Vである。
図7(a)~図7(c)は、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の組をスタックした場合のバイアス電源の接続方法の一例を示す。図7(a)は、還元反応用電極104の裏面同士及び酸化反応用電極102の裏面同士を貼り合わせてスタックした構成においてバイアス電源を並列接続した例を示す。また、導電性のない基板114,116の表面に還元触媒層12,酸化触媒層16を形成してスタックした構成においても同様の構成とすることができる。図7(b)は、導電性を有する基板114,116の表面に還元触媒層12,酸化触媒層16を形成してスタックした構成においてバイアス電源を並列接続した例を示す。図7(c)は、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104を交互にスタックした構成が直列接続となるようにバイアス電源を接続した例を示す。
バイアス電源を太陽電池とした場合、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の組を単独で使用すると、図8に示すように太陽電池の効率が悪い動作点で使用されることになる。一方、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の複数の組を並列となるように接続した場合、図8に示すように太陽電池の効率が良い動作点で使用することが可能になる。
なお、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104に対するバイアス電源の接続構成はこれらの例に限定されるものではない。例えば、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の一部を直列、並列又は直並列に接続するようにしてもよい。さらに、接続を切り換えるスイッチを設けて酸化反応用電極102及び還元反応用電極104のバイアス電源への接続構成を変更できるようにしてもよい。
また、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の特性や反応領域面積は太陽電池の特性や受光面積との関係から設定することが好適である。太陽電池に照射される光(例えば太陽光)の強度が1kW/mのときの太陽電池の最大出力動作点Pmaxと、太陽電池と接続したときに定まる化学反応装置100の出力動作点Pworkの関係がPwork/Pmax≧0.8となるように設定することが好適である。さらに、太陽電池の受光面積Ascに対して酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の各々の反応領域面積Aが0.8≦A/Asc≦1.2となるように酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の組のスタック数を設定することが好適である。
/Asc>1.2の関係となる場合には太陽電池に対する酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の各々の反応領域面積が過大となり、太陽電池の動作能力不足となって化学反応装置100の能力を十分に発揮できない。また、この場合、化学反応装置100のサイズが不必要に大きくなってしまう。一方、0.8>A/Ascの関係となる場合には太陽電池に対する酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の各々の反応領域面積が過小となり、太陽電池の能力が有効に活用されない。
容器110は、酸化反応用電極102、還元反応用電極104及びセパレータ106を支持すると共に、電解液108が流れる流路を構成する部材である。容器110は、化学反応装置100をセルとして構成するために必要な機械的な強度を備える材料で構成される。例えば、容器110は、金属、プラスチック等によって構成することができる。
容器110には、容器110内に電解液108を供給するための電解液供給口110aが設けられる。また、容器110内から電解液108を排出するための電解液排出口110bが設けられる。すなわち、電解液供給口110aから反応させるための物質を含んだ電解液108を容器110内に供給し、酸化反応用電極102と還元反応用電極104の間の反応領域に電解液108を流通させた後、電解液排出口110bから電解液108を容器110の外へ排出する。
また、容器110には、化学反応装置100における反応によって生じた気体を容器110から排出させる排気口110cが設けられる。容器110において、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104が配置された反応領域よりも鉛直方向に沿って上方に排気口110cを配置することが好適である。
さらに、容器110には、電解液108を電解液排出口110bへ導くための越流口110eが設けられる。越流口110eは、容器110内に供給された電解液108が一定の量を超えると電解液108を溢れ出させるための構造をいう。容器110内において酸化反応用電極102及び還元反応用電極104が配置された領域と電解液排出口110bとを仕切る越流壁110dを設け、越流壁110dの鉛直方向(Z方向)の上端部が電解液108を電解液排出口110bへ越流させる開口を形成することで越流口110eを構成することができる。越流口110eは、鉛直方向(Z方向)に沿って排気口110cよりも低い位置に設ける。
このとき、越流壁110dの鉛直方向(Z方向)の上端部は、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の鉛直方向(Z方向)の上端部よりも高い位置とすることが好適である。これにより、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の全体が電解液108に浸された状態で越流口110eから電解液108を越流させることができる。
本実施の形態では、排気口110cとは別に電解液108を容器110から排出させる越流口110eを設けることによって、反応によって電解液108中で生じた気体を電解液108から分離して、当該気体は排気口110cから排出させ、電解液108は越流口110eを介して電解液排出口110bから排出させることができる。
越流口110eは、図9(a)に示すように、単一の矩形の長穴とすることができる。また、越流口110eは、図9(b)に示すように、複数の矩形の長穴を並べた構成としてもよい。また、越流口110eは、図9(c)に示すように、複数の円形穴を並べた構成としてもよい。ただし、越流口110eは、これらの構成例に限定されるものではない。
越流口110eは、図10のX-Z面部分拡大図に示すように、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104において気体を発生させる反応を生じさせる反応面Xと最短距離で結んだラインYと鉛直方向(Z方向)のラインZとのなす角θが30°以下となるように設けることが好適である。
このように越流口110eを配置することによって、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の反応面の全体に対して略均一に電解液108が供給されるようにすることができる。
さらに、化学反応装置100には、オリフィス板112が設けられる。オリフィス板112は、電解液供給口110aから容器110内へ導入される電解液108の流れを制限する貫通孔であるオリフィス孔112a,112bが設けられた板状部材である。オリフィス板112は、容器110において電解液供給口110aから酸化反応用電極102及び還元反応用電極104が設けられた領域に至る流路上に配置される。オリフィス板112は、必要な機械的な強度を備える材料で構成される。例えば、オリフィス板112は、金属、プラスチック等によって構成することができる。
図11は、オリフィス板112の構成を示す模式図である。図11は、化学反応装置100のX-Y面の主要部の断面をZ方向の上方から下方に向けてみた図である。図12は、図11の破線で囲んだ領域の部分拡大図である。
酸化反応用電極102、還元反応用電極104及びセパレータ106はX-Z面内に拡がり、酸化反応用電極102と還元反応用電極104との間にセパレータ106が配置されている。図11の例では、酸化反応用電極102、セパレータ106及び還元反応用電極104の組がY方向に沿って5組スタックされている。
化学反応装置100では、酸化反応用電極102とセパレータ106とによって形成される空間及び還元反応用電極104とセパレータ106とによって形成される空間が電解液108を流すための流路となる。オリフィス板112は、電解液供給口110aからこれらの流路との間に配置される。オリフィス板112には、酸化反応用電極102とセパレータ106とによって形成される流路と電解液供給口110aとの間を繋ぐオリフィス孔112aと、還元反応用電極104とセパレータ106とによって形成される流路と電解液供給口110aとの間を繋ぐオリフィス孔112bが設けられる。オリフィス孔112a,112bの径は例えば0.5mmとし、間隔は例えば10mmとすればよい。
したがって、電解液供給口110aから供給された電解液108は、電解液供給口110aからオリフィス板112までの空間に溜められた後、オリフィス孔112a,112bを介して酸化反応用電極102と還元反応用電極104との間の流路に噴出される。酸化反応用電極102と還元反応用電極104との間の流路に電解液108が流れ込むと当該流路が電解液108によって満たされる。さらに、電解液108が越流口110eの縁を超える量に達すると、電解液108は越流口110eから電解液排出口110bへ流れ込んで容器110から排出される。
ここで、電解液108が流れる流路における電解液108の流れ方向(ここではZ方向)に垂直な断面の面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合を0.3%以上9%以下とすることが好適である。さらに、電解液108が流れる流路における電解液108の流れ方向(ここではZ方向)に垂直な断面の面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合を1.4%以上3.6%以下とすることがより好適である。このように、オリフィス孔112a,112bの面積を流路面積に対して適切に絞ることによって、酸化反応用電極102と還元反応用電極104との間に形成された流路における電解液108の流れを均一にすることができる。
また、電解液108を供給するための電解液供給口110aの総面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合を20%以上126%以下とすることが好適である。さらに、電解液108を供給するための電解液供給口110aの総面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合を20%以上50%以下とすることがより好適である。これによって、酸化反応用電極102と還元反応用電極104との間に形成された流路における電解液108の流れをさらに均一にすることができる。
なお、電解液108が流れる流路における電解液108の流れ方向に垂直な面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合及び電解液供給口110aの総面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合の条件はいずれか一方を満たすことによって電解液108の流れをさらに均一にすることができる。ただし、両方の条件を同時に満たすことによって電解液108の流れをより均一にすることができる。
また、オリフィス孔112a,112bの孔径は、電解液供給口110aからの距離が大きくなるにつれて大きくすることが好適である。すなわち、オリフィス孔112a,112bの孔径を均一にした場合には電解液供給口110aから遠くなるにつれて電解液108の流量が少なくなる傾向があるので、電解液供給口110aからの距離が大きくなるにつれてオリフィス孔112a,112bの孔径を大きくすることで電解液108の流量の分布をより均一にすることができる。
例えば、電解液供給口110aからの距離に比例させてオリフィス孔112a,112bの孔径を大きくすることが好適である。また、例えば、電解液供給口110aからの距離の2乗に比例させてオリフィス孔112a,112bの孔径を大きくすることが好適である。
また、オリフィス孔112a,112bの間隔は、電解液供給口110aからの距離が大きくなるにつれて小さくすることが好適である。すなわち、オリフィス孔112a,112bの間隔を均一にした場合には電解液供給口110aから遠くなるにつれて電解液108の流量が少なくなる傾向があるので、電解液供給口110aからの距離が大きくなるにつれてオリフィス孔112a,112bの間隔を小さくすることで電解液108の流量の分布をより均一にすることができる。
例えば、電解液供給口110aからの距離に比例させてオリフィス孔112a,112bの間隔を小さくすることが好適である。また、例えば、電解液供給口110aからの距離の2乗に比例させてオリフィス孔112a,112bの間隔を小さくすることが好適である。
酸化反応用電極102の反応面では電解液108の水の酸化が行われるのに対して、還元反応用電極104の反応面では電解液108に含まれる物質の還元が行われる。そして、イオンがセパレータ106を介して交換される。したがって、酸化反応用電極102において行われる酸化反応に要する水は十分供給される。さらに、還元反応用電極104において行われる還元反応に要する物質も十分供給されることが好ましい。そこで、還元反応用電極104とセパレータ106とによって形成される流路に対して設けられたオリフィス孔112bの総面積は、酸化反応用電極102とセパレータ106とによって形成される流路に対して設けられたオリフィス孔112aの総面積より大きくすることが好適である。
例えば、電解液108に含有させる反応基質が二酸化炭素(CO)である場合、還元反応用電極104の反応面に供給される二酸化炭素(CO)の量を増加させることで還元の反応の効率を向上させることができる。
具体的には、オリフィス孔112bの総面積は、オリフィス孔112aの総面積の4倍以上9倍以下であることが好適である。オリフィス孔112aとオリフィス孔112bの総面積の比を当該範囲に設定することによって、還元の反応の効率をより向上させることができる。
なお、本実施の形態では、セパレータ106にはY方向に向けて突出させた整流板106aが設けられている。整流板106aは、電解液供給口110aから越流口110eへ向かう方向(ここではZ方向)に沿って延設されており、当該方向と交差する方向(ここではX方向)に沿った電解液108の流れを制限する。これによって、電解液供給口110aから越流口110eへ向かう方向(ここではZ方向)に電解液108の流れを整えることができる。
図11の例では、酸化反応用電極102、セパレータ106及び還元反応用電極104の組毎に整流板106aが6個ずつ設けられた例を示している。したがって、整流板106aによって、酸化反応用電極102とセパレータ106とによって形成される流路及び還元反応用電極104とセパレータ106とによって形成される流路が7つの領域に区画される。
このように、整流板106aを設けることによって電解液108の流れをより均一に保つことができる。特に、オリフィス孔112a,112bと整流板106aとを組み合わせることによって、電解液108の流れに交差する方向(ここではX方向)に沿った電解液108の流量の分布をより均一にすることができる。
<実施例1>
図13は、実施例1における化学反応装置100の構成例を示す模式図である。実施例1では、オリフィス板112の代わりに管状のマニホールド130を設けた。越流口110eは、1つの長方形状とし、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の反応面と最短距離で結んだラインと鉛直方向(Z方向)のラインとのなす角θは17.0°であった。
酸化反応用電極102にはIrOx(日進化成:アノデック100)を用いた。還元反応用電極104にはカーボンペーパー/マルチウォールカーボンナノチューブにRu錯体ポリマーを担持させてチタン基板にカーボン系接着剤を用いて貼り付けたものを用いた。酸化反応用電極102及び還元反応用電極104は、触媒を担持させた反応面を対向させて容器110内に一組配置した。酸化反応用電極102及び還元反応用電極104には直流電源を用いて電圧1.8Vを印加した。セパレータ106や整流板は設けなかった。電解液108は、別の容器にてバブリングによりCOを飽和溶解させた0.4Mリン酸緩衝液とし、ポンプを用いて円筒管状のマニホールド130から供給した。
本実施例では、電解液108の流れを制御するための整流板を設けなかったにもかかわらず、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の間の流路全体において生成された気体の気泡がマニホールド130から越流口110eに向かってX方向に沿って何れの箇所でも同じ速さで移動することが確認できた。すなわち、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の間の流路全体において電解液108の流速は一定であった。
図14は、実施例1において二酸化炭素の還元反応を繰り返したときの電流密度の経時変化を示す。ここでは、酸化反応用電極102と還元反応用電極104との間へ電圧(1.8V)を30分継続して印加し、30分毎に電圧印加を停止する処理を4回(#1~#4)繰り返した時の電流密度の経時的な変化を示した。図14において、4回の電流密度の経時的な変化が完全に重なっていることから、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の劣化がなかったことが理解される。
<実施例2>
図1~図3に示した化学反応装置100の構成例を実施例2とした。実施例2では、越流口110eは、1つの長方形状とし、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の反応面と最短距離で結んだラインと鉛直方向(Z方向)のラインとのなす角θは0とした。すなわち、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の反応面のX方向全体に越流口110eを形成した。
酸化反応用電極102にはSnO:F(FTO)が表面に形成されたガラス基板上にIrOxコロイドを担持したものを用いた。還元反応用電極104にはカーボンペーパー/マルチウォールカーボンナノチューブにRu錯体ポリマーを担持させたものを用いた。酸化反応用電極102及び還元反応用電極104のサイズは360mm角であった。電解液108は、別の容器にてバブリングによりCOを飽和溶解させた0.4Mリン酸緩衝液とし、電解液供給口110aからオリフィス板112を介して供給した。酸化反応用電極102及び還元反応用電極104は、図11の例に示したように触媒を担持させた反応面を対向させて容器110内に5組スタックして配置した。
セパレータ106や整流板106aも配置した。酸化反応用電極102とセパレータ106とによって形成される空間及び還元反応用電極104とセパレータ106とによって形成される空間を電解液108が流れるための流路とした。オリフィス板112は、酸化反応用電極102側のオリフィス孔112aを孔径φ=1mm、還元反応用電極104側のオリフィス孔112bを孔径φ=1.5mmとした。また、図11及び図13に示したように、整流板106aで区切られた各流路において酸化反応用電極102側のオリフィス孔112aを1つに対して還元反応用電極104側のオリフィス孔112bを4つ配置した。
酸化反応用電極102及び還元反応用電極104には直流電源として結晶系シリコン太陽電池を6つ直列接続して電圧を印加した。
図15は、流体解析ソフト(Solidworks)を用いて実施例2における電解液108の流量分布をシミュレーションした結果を示す。電解液108の流量は、容器110内の流路の何れの方向に対してもほぼ均一であり、その分布[(流量の最大値-流量の平均値)/(流量の平均値)]は6.14%であった。
図16は、実施例2における容器110の圧力及び電解液流量の変化を示す図である。すなわち、太陽電池に対して光を照射した状態(ON状態)と照射しない状態(OFF状態)とにしたときの容器110内の電解液108の圧力と流量の時間変化を示す。光を照射したときには、酸化反応用電極102にて水(HO)の酸化反応及び還元反応用電極104にて二酸化炭素(CO)の還元反応が生じるので、酸素(O)の気泡が発生する。しかし、実施例2では、発生した酸素(O)は排気口110cから、電解液108は越流口110eを経由して電解液排出口110bからそれぞれ排出されるので、容器110内の圧力は光を照射した状態と照射しない状態において変化はなかった。また、容器110内における電解液108の流量の変動もみられなかった。
<比較例1>
酸化反応用電極102及び還元反応用電極104は、触媒を担持させた反応面を対向させて容器110内に一組配置した。越流口110eを設ける代わりに容器110の上面に電解液及びガスに対する共通の排出口を2つ設けた構成を比較例1とした。すなわち、電解液108及び反応によって生じた気体はいずれも排出口から容器110外に排出される構成とした。なお、酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の反応面と排出口とを最短距離で結んだラインと鉛直方向(Z方向)のラインとのなす角θは33.0°であった。
また、比較例1では、オリフィス板112の代わりに実施例1と同様に円筒管状のマニホールド130を設けた。整流板106aは設けなかった。
図17は、流体解析ソフト(Solidworks)を用いて比較例1における電解液108の流量分布のシミュレーションした結果を示す。電解液108は、容器110内の各所において渦を巻いて流れた。図中に示した評価位置における電解液108の(流量の最大値)/(流量の最小値)はほぼ5倍であった。
<比較例2>
比較例1における構成に対して、整流板106aを設けた以外は同様の構成とした。酸化反応用電極102及び還元反応用電極104には直流電源として結晶系シリコン太陽電池を4つ直列接続して電圧を印加した。
図18は、太陽電池に対して光を照射した状態(ON状態)と照射しない状態(OFF状態)とを繰り返したときの容器110内の電解液108の圧力と流量の時間変化を示す。光を照射したときには、酸化反応用電極102にて水(HO)の酸化反応及び還元反応用電極104にて二酸化炭素(CO)の還元反応が生じる。これよって、酸化反応用電極102にて酸素(O)が発生するため、容器110内の電解液108の平均圧力が上昇し、電解液108の流量が変動した。このとき、容器110の上部左右の隅部では、気泡が上から下へ移動する様子が目視で観察された。すなわち、電解液108が通常の下から上への流れに逆らって上から下へと流れる領域が存在することが確認された。光の照射を停止すると電解液108の平均圧力は低下した。
光を照射した状態では、電解液108の圧力と流量の変動は一定ではなく、上下動を繰り返した。したがって、電解液108の供給量を一定にするようにポンプの出力をフィードバック制御しても十分に機能しなかった。
図19は、比較例2における電解液108の流量分布のシミュレーション結果を示す。比較例1に対して、整流板106aを設けたことによって、電解液108は容器110においておおよそ対称の分布を示した。しかしながら、図中に示した評価位置における電解液108の流量は排出口から遠ざかるにしたがって約1/3まで減少した。
<実施例3~9>
図1~図3に示した化学反応装置100の構成例において、電解液108が流れる流路における電解液108の流れ方向(ここではZ方向)に垂直な断面の面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合及び電解液108を供給するための電解液供給口110aの総面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合を変化させて実施例3~実施例9とした。なお、セパレータ106や整流板106aも配置した。
具体的には、表1に示すように、電解液108が流れる流路における電解液108の流れ方向(ここではZ方向)に垂直な断面の面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合を0.35%から8.98%まで変更し、電解液108を供給するための電解液供給口110aの総面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合を4.95%から125.28%まで変更してそれぞれ実施例3~実施例9とした。
Figure 0007200905000001
実施例3~実施例9について、流体解析ソフト(Solidworks)を用いて化学反応装置100内の電解液108の流れをシミュレーションした。電解液供給口110aにおける流量は2リットル/minに設定した。
<比較例3>
図1~図3に示した化学反応装置100の構成例において、電解液108が流れる流路における電解液108の流れ方向(ここではZ方向)に垂直な断面の面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合を0.09%及び電解液108を供給するための電解液供給口110aの総面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合を12.35%にした構成を比較例3とした。なお、セパレータ106や整流板106aも配置した。
<シミュレーション結果>
図20は、実施例7においてシミュレーションを行った結果を示す。また、図21は、実施例9においてシミュレーションを行った結果を示す。
図22は、実施例7及び実施例9における化学反応装置100の各流路における電解液108の流量を示す図である。図22は、図23に示すように、X方向に沿って整流板106aで区切られた1~7の列とY方向に沿ってセパレータ106と還元反応用電極104とで区切られた1~5(図中では、便宜上○をつけた数値で示す)の行の組み合わせで特定される還元反応用電極104における各流路での電解液108の流量をシミュレーションで算出した結果を示す。図22では、横軸はX方向に沿って整流板106aで区切られた流路の列番号(1~7)を示し、各ラインは実施例7(図中、0520と示す)及び実施例9(図中、0517と示す)におけるY方向に沿ってセパレータ106と還元反応用電極104とで区切られた流路の行番号(1~5)毎の流量を示す。
実施例7(図中、0520と示す)では、X方向に沿った行番号4の流路において最も流量の分布が大きくなり、面内流量分布の値は7.15%になった。実施例9(図中、0517と示す)では、X方向に沿った行番号3の流路において最も流量の分布が大きくなり、面内流量分布の値は12.62%になった。同様に比較例3及び実施例3~実施例9の各々についてシミュレーションにて算出した面内流量分布の値を表1に示す。
図24のグラフに示すように、流路面積に対するオリフィス孔112a,112bの面積の割合が小さすぎる構成及び大きすぎる構成のいずれにおいても面内流量分布が大きくなった。
すなわち、電解液108が流れる流路の面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合を0.3%以上9%以下とすることで電解液108の面内流量分布をより均一にすることができた。特に、1.4%以上3.6%以下とすることがより好適であることが分かった。また、電解液供給口110aの総面積に対するオリフィス孔112a,112bの総面積の割合を20%以上126%以下とすることで電解液108の面内流量分布をより均一にすることができた。特に、20%以上50%以下とすることがより好適であることが分かった。
以上のように、オリフィス孔112a,112bの面積を適正に設定することによって、化学反応装置100における電解液108の流量の分布をより均一にすることができる。これによって、化学反応装置100における酸化反応及び還元反応を酸化反応用電極102及び還元反応用電極104の全面においてより均等に進行させることができ、化学反応装置100の反応効率を向上させることができる。
10 導電層、12 還元触媒層、14 導電層、16 酸化触媒層、100 化学反応装置、102 酸化反応用電極、104 還元反応用電極、106 セパレータ、106a 整流板、108 電解液、110 容器、110a 電解液供給口、110b 電解液排出口、110c 排気口、110d 越流壁、110e 越流口、112(112a,112b) オリフィス板、114,116 基板、130 マニホールド。

Claims (7)

  1. 容器内に液体を供給し、液体に含まれる物質を反応させる化学反応装置であって、
    1つの前記容器内に還元反応用電極と酸化反応用電極が離間して対向する位置に配置されており、前記容器内に複数組の前記還元反応用電極と前記酸化反応用電極が設けられ、前記還元反応用電極及び前記酸化反応用電極は、並列接続、直列接続又はそれらを組み合わせた直並列接続されており、
    前記還元反応用電極と前記酸化反応用電極は太陽電池に接続されており、
    前記太陽電池の最大出力動作点P max と、前記還元反応用電極と前記酸化反応用電極からなるセルの出力動作点P work と、が(出力動作点P work /最大出力動作点P max )≧0.8の条件を満たし、
    前記太陽電池の受光面積A sc と、前記還元反応用電極と前記酸化反応用電極の各々の反応領域面積A と、が0.8≦(反応領域面積A /受光面積A sc )≦1.2の条件を満たすように前記還元反応用電極と前記酸化反応用電極の組の数が設定されていることを特徴とする化学反応装置。
  2. 請求項1に記載の化学反応装置であって、
    前記物質は、二酸化炭素(CO)であり、
    前記還元反応用電極において二酸化炭素(CO)が還元され、前記酸化反応用電極において酸素(O)が発生することを特徴とする化学反応装置。
  3. 請求項1又は2に記載の化学反応装置であって、
    前記容器外へ気体を排出するための排気口と、前記容器外へ前記液体を排出するための液体排出口と、が別々に設けられていることを特徴とする化学反応装置。
  4. 請求項1~のいずれか1項に記載の化学反応装置であって、
    前記還元反応用電極及び前記酸化反応用電極の少なくとも1つは、両面に触媒が担持された基板を含むことを特徴とする化学反応装置。
  5. 請求項に記載の化学反応装置であって、
    前記基板は、両面に透明導電層を有し、
    前記透明導電層上に前記触媒が担持されていることを特徴とする化学反応装置。
  6. 請求項に記載の化学反応装置であって、
    前記基板は、導電材料から構成され、
    前記導電材料上に前記触媒が担持されていることを特徴とする化学反応装置。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載の化学反応装置であって、
    前記還元反応用電極及び前記酸化反応用電極を並列接続、直列接続又はそれらを組み合わせた直並列接続に切り換える接続切替手段を有することを特徴とする化学反応装置。
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