JP7200041B2 - 分散盤、塩化炉、及び金属塩化物の製造方法 - Google Patents
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Description
以下の実施形態の説明や実施例では、金属酸化物原料をチタン鉱石とし、金属塩化物を四塩化チタンとして説明する場合がある。
以下、各実施形態について、図面を使用して説明する。
本発明に係る分散盤の一実施形態によれば、塩化炉に使用される断熱層の損傷度合いを把握できる。本発明に係る分散盤の一実施形態は、金属酸化物原料と、コークスと、塩素ガスとを反応させることで金属塩化物を生成するための塩化炉100に備わる分散盤10であって、図1に示すように、底板20と、断熱層30とを備える。そして、断熱層30には、厚さ方向に異なる位置において断熱層30の温度を計測するための複数の温度計50、60、70が設置されている。すなわち、各温度計50、60、70に備わる測温部51、61、71は、厚さ方向に異なる位置において断熱層30に設置されている。底板20と、断熱層30と、温度計50、60、70は公知のものを適宜使用可能である。ただし、温度計50、60、70については後述の要件を満たす必要がある。当該分散盤10の厚さは適宜設計可能であるが、例えば、底板20と断熱層30を併せて500~700mm程度とすることができる。なお、本明細書において、金属酸化物を酸化チタンとし、金属塩化物を四塩化チタンとして説明しているが、金属酸化物および金属塩化物はこれらに限定されるものではない。以下、各構成要素についてそれぞれ説明する。
底板20は、塩化炉100においてウインドボックス110の上方に位置し(図2参照)、塩素ガスが通過するように多数の通気孔(不図示)が形成されている。好ましくは、塩素ガスは通気孔に設けられたノズル21を介して断熱層30の上外側、すなわち流動層120に供給される。ノズル21の塩素ガス吹き出し口21aは断熱層30より高い位置とした方が好ましい場合もある。底板20の材質は、耐熱性という観点から、炭素鋼、ステンレス鋼、及びNiよりなる群から選択される1種以上であればよい。なお、底板20の厚さは適宜設計可能であるが、例えば40~80mmである。炭素鋼は炭素含有量が2質量%以下の鋼であって、いわゆる極低炭素鋼、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼等を含むものである。炭素鋼の具体例として、SS400等が挙げられる。ステンレス鋼は、耐熱性及び強度という観点から、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)等が添加された鋼である。ステンレス鋼の具体例として、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、二相ステンレス鋼等が挙げられる。
断熱層30は、底板20の上面22の上方UDに形成される。断熱層30は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。また、断熱層30を耐熱セラミックス製の充填物を充填して形成している場合、分散盤10を適切に軽量化しつつ塩化炉100内の塩素ガスの影響を低減可能である。上記耐熱セラミックス製の充填物としては、例えば窒化ケイ素製、溶融シリカ製、又はアルミナ製等の充填物が挙げられる。上記耐熱セラミックス製の充填物の形状は特に限定されるものではないが、球状や平板状等が挙げられる。中でも上記充填物の形状は、分散盤10の耐久性という観点から、平板状がよい。また、充填物は、原料の流動により流動層120に巻き込まれないような大きさであることが好ましい。なお、断熱層30の厚さは適宜設計可能であるが、例えば400~650mmである。
例えば、図1のように、一組の温度計40が3本の温度計50、60、70から構成される場合には、各温度計50、60、70の先端近傍に測温部51、61、71が存在するので、断熱層30の損傷度合いを精度良く把握するという観点から、第1の温度計50の先端50aが断熱層30の厚さ中央よりも底板20側に設置され、第2の温度計60の先端60aが断熱層30の厚さ中央付近に設置され、第3の温度計70が断熱層30の厚さ中央よりも流動層120(図2参照。)側に配置される。
第1の温度計50においては、断熱層30の厚さをHとし、厚さ方向における底板20の上面22から第1の温度計50の先端50aまでの距離をH1とした場合に、断熱層30の損傷度合いを把握するという観点から、H1/Hが0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。なお、上記H1/Hは下限側としては、典型的に0.0以上であり、より典型的に0.1以上である。本明細書において、上記H1/Hが0.0である場合は、H1が底板20の上面22に位置することを意味する。
また、第2の温度計60においては、断熱層30の厚さをHとし、厚さ方向における底板20の上面22から第2の温度計60の先端60aまでの距離をH2とした場合に、断熱層30の損傷度合いを把握するという観点から、H2/Hが0.75~0.25であることが好ましい。上記H2/Hは上限側として、0.75以下であることが好ましく、0.60以下であることがより好ましい。なお、上記H2/Hは下限側として、0.25以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましい。
また、第3の温度計70においては、断熱層30の厚さをHとし、厚さ方向における底板20の上面22から第3の温度計70の先端70aまでの距離をH3とした場合に、断熱層30の損傷度合いを把握するという観点から、H3/Hが0.5以上であることが好ましい。上記H3/Hは下限側として、0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。なお、上記H3/Hは上限側として、典型的に1.0以下であり、より典型的に0.8以下である。本明細書において、上記H3/Hが1.0である場合は、H3が断熱層30の上面31に位置することを意味する。
以上の説明により、厚さ方向における底板20の上面22から各温度計50、60、70の先端50a、60a、70aまでの距離について、H1、H2、及びH3は、H3>H2>H1との関係で示される。
また、本発明に係る分散盤10の一実施形態においては、中心軸に設置される一組の温度計40の他に、さらに複数の一組の温度計40が、底板20の上面22の中心を軸(以下、中心軸Xと称する。)にして円周方向に沿って位置され、それらの複数の一組の温度計40が上方UDに延在して断熱層30にそれぞれ設置されている。このとき、複数の一組の温度計40が、底板20の上面22に等間隔で断熱層30にそれぞれ位置されてもよい。すなわち、複数の一組の温度計40を底板20の上面22に位置する場合には、その一組の温度計40の数に応じて、一方の一組の温度計40と、他の一組の温度計40とを円周方向において所定の間隔で位置すればよい(図4~6参照)。以上のような複数の一組の温度計40の配置により、断熱層30の損傷度合いをより精度良く把握することができる場合がある。
このとき、中心軸Xから分散盤10の外周までの距離をRとし、中心軸Xから外周に向かって一組の温度計40の各温度計の中心までの離間距離rとした(図4参照。)場合、r/Rは、分散盤10各所の温度を適切に把握するという観点から、0.1~0.9であることが好ましい。上記r/Rは、下限側として0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.4以上であることが更に好ましい。また、上記r/Rは、上限側として0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.7以下であることが更に好ましい。
なお、本明細書の図4においては一組の温度計B~Dについてrの値が同じとなっているが、「円周方向に沿って」とは各rが同一である必要はない。例えば、各rの平均値をarとした場合、中心軸Xから外周に向かって一組の温度計B~Dの各温度計の中心までの離間距離を示す各r値がar±30%の範囲内となるように各一組の温度計B~Dを配置してもよい。なお、本明細書の図5、6も同様である。
本発明に係る塩化炉100は、図2に示すように、ウインドボックス110と、先述した分散盤10と、流動層120と、塩素ガス供給管130と、原料供給管140と、金属塩化物ガス回収管150とを備える。以下、各構成要素をそれぞれ説明する。
ウインドボックス110は、塩化炉100の底側に設けられる。先述した分散盤10は、ウインドボックス110に接続されている。ウインドボックス110の形状又は材質は公知のものを適宜採用可能である。塩素ガスはウインドボックス110および分散盤10を通過して流動層120に供給される。
流動層120は、分散盤10上に設けられている。該流動層120は、金属酸化物原料及びコークスで形成されている。金属酸化物原料及びコークスは、加熱中に塩素ガス供給管130から供給された塩素ガスと反応することで、金属塩化物ガスを生成する。金属酸化物原料は、酸化チタンを含有するチタン鉱石であってよい。
塩素ガス供給管130はウインドボックス110に接続される。
原料供給管140は、流動層120に金属酸化物原料及びコークスを供給するため、厚さ方向において分散盤10よりも高い位置に塩化炉100の側壁160に設けられている。原料供給管140の形状又は材質は公知のものを適宜採用可能である。なお、塩化炉100の施設においては、当該原料供給管140を、側壁160のレンガ間に挿通すればよい。
金属塩化物ガス回収管150は、塩化炉100内で生成された金属塩化物ガスを回収するために、塩化炉100の頂部に設けられている。このとき、金属塩化物ガスは四塩化チタンガスでよい。この回収された金属塩化物ガスが四塩化チタンガスである場合には、コンデンサーにおいて該四塩化チタンガスを四塩化チタンの沸点136℃以下に冷却することで、液体四塩化チタンを回収すればよい。また、金属塩化物ガス回収管150の形状又は材質は公知のものを適宜採用可能である。
本発明に係る金属塩化物の製造方法の一実施形態においては、先述した塩化炉100を使用して金属酸化物原料と、コークスと、塩素ガスとを反応させることで、金属塩化物を製造する製造工程を含む。このように製造された金属塩化物ガスは、気体となって塩化炉100内を上昇し、塩化炉100の頂部に接続された金属塩化物ガス回収管150を経て回収される。このとき、金属塩化物ガスは四塩化チタンガスでよい。
測定工程S11は、断熱層30の厚さ方向に異なる位置において断熱層30の温度を複数の温度計50、60、70により測定する。各温度計50、60、70に備わる測温部51、61、71で測定された温度から断熱層30の損傷度合いを把握することができる。
停止工程S21は、測定工程S11により測定された断熱層30の測定温度に基づき、塩化炉100の操業を停止する。
停止工程S21において操業を停止する判断基準は、分散盤10の構成や塩化炉100の操業条件に基づき設定可能である。例えば、断熱層30に窒化珪素製充填物を充填し、塩化炉100内の温度を1000~1100℃に調整している場合には、底板20に最も近くに設置された測温部51が400℃以上であるとき、断熱層30に損傷が生じていると把握することができるので、操業を一時停止する。一方、400℃未満である場合には、断熱層30に損耗が生じていないと把握することができるので、操業を続けることができる。また、断熱層30の厚さ方向に異なる位置において温度計が3本以上設置されている場合には、当該厚さ方向において断熱層30の上面31側から数えて予め規定した温度計(例えば2番目以降の温度計)が400℃以上であるとき、操業を一時停止してもよい。更に、断熱層30の厚さ方向に異なる位置に設置された各温度計50、60、70に備わる測温部51、61、71で測定された温度の温度差によって操業を停止してもよい。
図2に示した構成を備える塩化炉100を使用した。分散盤10の直径を2000mm(図4~6に示したR:1000mm)とし、分散盤10の厚さが650mmとなるように、底板20の厚さを50mmとし、断熱層30の厚さHが600mmとなるように平板状の窒化珪素片を充填した。次いで、温度計3本からなる一組の温度計40(複数の温度は、断熱層30の厚さ方向に垂直な方向から観察したときに0.04~0.16m2の面積内に設置されている。)を複数用意した。当該一組の温度計40を、図4に示すように、中心部(A地点)に1ヶ所設置し、さらに離間距離rが600mmとなるようにし、底板20の上面22にその上面22の中心を軸にして円周方向に沿って等間隔に3ヶ所(B地点、C地点、D地点)設置した。このとき、底板20の上面22から温度計50、60、70の先端50a、60a、70aまでの距離(図1参照。)が、H1:125mm(以下、第1の温度計50と称する。)、H2:250mm(以下、第2の温度計60と称する。)、H3:375mm(以下、第3の温度計70と称する。)となるようにそれぞれ設置した。上記温度計50、60、70の測温部51、61、71を熱電対とし、保護管52、62、72を窒化珪素製とし、ホルダー53、63、73をステンレス鋼製とし、底板20を炭素鋼製とした。更に、流動層120は、チタン鉱石(品種:合成ルチル、TiO2純度:96質量%)とコークス(石油系カルサインドコークス)により形成されていた。
一組の温度計40を、図5に示すように、中心部(E地点)に1ヶ所設置し、さらに離間距離rが600mmとなるようにし、底板20の上面22にその上面22中心を軸にして円周方向に沿って等間隔に4ヶ所(F地点、G地点、H地点、I地点)それぞれ位置するように、断熱層30に設置したこと以外、実施例1と同様に四塩化チタンを製造し、その製造後の分散盤10を評価した。
一組の温度計40を2本の温度計50、60(H1:200mm、H2:400mm)にし、その一組の温度計40を、図6に示すように、中心部(J地点)に1ヶ所設置し、さらに離間距離rが400mmとなるように底板20の上面22にその上面22の中心を軸にして円周方向に沿って等間隔に2ヶ所(K地点、L地点)それぞれ位置するように、断熱層30に設置したこと以外、実施例1と同様に四塩化チタンを製造し、その製造後の分散盤10を評価した。
一組の温度計40を使用せず、操業期間を8ヶ月としたこと以外、実施例1と同様に四塩化チタンを製造し、その製造後の分散盤10を評価した。
操業の結果、四塩化チタンの製造量42000tの時点で塩化炉100を停止し、分散盤10を塩化炉100から外した。
作業者が分散盤10の損傷を検証したところ、断熱層30の著しい減肉は確認されなかった。比較例1は分散盤10の損傷を適切に把握できず、塩化炉100の停止が早すぎたため、四塩化チタンの製造量が少なかった。なお、操業期間中は分散盤10からの塩素漏れは確認されなかった。
一組の温度計40を使用せず、操業期間を16ヶ月としたこと以外、実施例1と同様に四塩化チタンを製造し、その製造後の分散盤10を評価した。
操業の結果、製造量82000tの時点で分散盤10の底板20に穴が空き、炉内原料がウインドボックスに落下し、分散盤10からの塩素漏れが確認された。
作業者が分散盤10の損傷を検証したところ、断熱層30が損傷した箇所の底板20と塩素が反応し孔が形成されていた。
実施例1~3では、複数の一組の温度計40を分散盤10に分散設置したことで精度よく断熱層30の損傷度合いを把握することができた。その結果、塩化炉の操業に支障が出ない状態で四塩化チタンを多く製造することができた。
また、実施例1~3では、比較例1と異なり、操業停止後の底板20と断熱層30の合計の厚さが適切に少なかった。これは、分散盤の損傷状態を適切に把握し、効率良く四塩化チタンを製造することができたといえる。
一方、比較例1~2では、一組の温度計を分散盤に設置しなかったことで、断熱層の損傷を把握することができなかった。比較例1では塩化炉の操業停止が早すぎたため四塩化チタンの製造効率が低下した。比較例2では予期せぬタイミングで塩化炉の補修が必要となったため別工程との工程調整が必要となり、やはり四塩化チタン、特に精製四塩化チタンの製造効率が低下した。
20 底板
21 ノズル
21a 塩素ガス吹き出し口
22 上面
30 断熱層
31 上面
40 一組の温度計
50 第1の温度計
50a、60a、70a 先端
51、61、71 測温部
51a、61a、71a 導線
52、62、72 保護管
53、63、73 ホルダー
54、64、74 シール剤
55、65、75 シール部材
60 第2の温度計
70 第3の温度計
100 塩化炉
110 ウインドボックス
120 流動層
130 塩素ガス供給管
140 原料供給管
150 金属塩化物ガス回収管
160 側壁
S11 測定工程
S21 停止工程
UD 上方
Claims (13)
- 金属酸化物原料と、コークスと、塩素ガスとを反応させることで、金属塩化物を生成するための塩化炉に備わる分散盤であって、
底板と、
前記底板の上面に設けられた断熱層とを備え、
前記断熱層には、厚さ方向に異なる位置において前記断熱層の温度を計測するための複数の温度計が設置されている、分散盤。 - 前記複数の温度計で一組の温度計を構成する、請求項1に記載の分散盤。
- 前記一組の温度計が、前記底板の上面の中心部に位置されている、請求項2に記載の分散盤。
- 複数の前記一組の温度計が、前記底板の上面に位置されている、請求項2又は3に記載の分散盤。
- 複数の前記一組の温度計が、前記底板の上面にその上面の中心を軸にして円周方向に沿って位置されている、請求項2~4のいずれか一項に記載の分散盤。
- 前記底板は、炭素鋼、ステンレス鋼、及びNiよりなる群から選択される1種以上である金属で形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の分散盤。
- 前記断熱層は、耐熱セラミックスで形成された充填物が充填されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の分散盤。
- 前記温度計は、測温部と、前記測温部の外周を覆った保護管と、前記保護管を保持するホルダーとを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の分散盤。
- 前記保護管は、窒化珪素、炭化珪素、及びアルミナよりなる群から選択される1種以上で形成されている、請求項8に記載の分散盤。
- 請求項1~9のいずれか一項に記載の分散盤を備える、塩化炉。
- 前記厚さ方向に前記断熱層よりも高い位置に塩素ガス吹き出し口を更に備える、請求項10に記載の塩化炉。
- 請求項10又は11に記載の塩化炉を使用する金属塩化物の製造方法であって、
金属酸化物原料と、コークスと、塩素ガスとを反応させることで、金属塩化物を製造する製造工程を含む、金属塩化物の製造方法。 - 前記製造工程は、前記断熱層の厚さ方向に異なる位置において前記断熱層の温度を複数の温度計により測定する測定工程と、前記断熱層の測定温度に基づき、前記塩化炉の操業を停止する停止工程とを更に含む、請求項12に記載の金属塩化物の製造方法。
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