JP7199954B2 - 官能評価試料提供装置並びにそれを用いた調香方法、飲食品用香料組成物の製造方法及び飲食品の製造方法 - Google Patents

官能評価試料提供装置並びにそれを用いた調香方法、飲食品用香料組成物の製造方法及び飲食品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、飲食品の官能評価に使用する装置並びにそれを用いた調香方法、飲食品用香料組成物の製造方法及び飲食品の製造方法に関するものである。さらに詳述すると、本発明は、飲食品の官能評価の事前準備にかかる工数を削減するとともに、官能評価と温度などの外部影響の相互作用を測定するための装置である。
味覚の研究、特に嗜好性を重視する飲食品の評価には、人間の感覚を用いる官能評価が採用されている。この官能評価においても、機器分析による化学的、物理的測定と同じように、その結果の客観性を証明することは重要視されており、官能評価を実施する条件を厳密に設定することが求められている。そして、客観性の有る官能評価を実現する上で、評価試料を同一条件で提供することは重要であり、それにより再現性のある評価結果を導くことができる。
鼻が詰まって香りを感じない状態では味が感じなくなるなど、飲食品のおいしさ(嗜好性)を堪能するには、香りが重要な要因であることがよく知られている。このため、飲食品の官能評価では香りの影響を評価することは特に重要である。
飲食品を官能評価する場合には、評価試料を事前に作成し、評価時点まで試料を一定条件下で管理しなければならない。そのため、官能評価を行うためには、パネラーの数だけの試料が必要になり、官能評価では相当数の評価試料の事前準備が必要となり、迅速かつ簡便に精度の高い官能評価ができないのが現状である。また、香料のように一要素だけが異なる複数の試料を官能評価する場合には、さらに事前に準備する試料が必要となるため、精度の高い官能評価を実施するための事前準備の簡便化が求められている。
さらに、飲食品のおいしさには、香り以外の外部要因、例えば、温度、炭酸ガス圧、アルコール濃度などの関与も知られている。例えば、酸味と渋味が重要な指標となるワインでは、低温(5℃)と室温(20℃)で官能評価が行われる。また、日本酒では低温度域(5℃)から飛び切り燗(55℃付近)までの、より幅広い温度域での有機酸と呈味のバランスが各温度でのおいしさに影響を与えることが明らかになっている。具体的に、熱燗の方が乳酸やコハク酸の酸味が有意に強く感じられ、呈味全体がまろやかになることが知られている。発泡性ワインの低温度域(5℃)と室温(20℃)の官能評価では、糖の甘味は温度が高くなるほど甘さが増し、炭酸ガスはうすぼけた味になることが知られており、飲用温度の影響は多岐にわたることが知られている。
食品の香りと温度の影響に関しては、これまであまり検討されてこなかった。香気成分は一般的に分子量が300以下の低分子有機化合物で揮発性に富んでおり、食品の香りは数十~数百種類もの香気成分から構成されている。各香気成分が異なる揮発性を有するため、評価試料を事前に作成して保温(特に高温で)している間に飲食品中の香気成分のバランスは微妙に変化してしまい、食品の香りのキャラクターを一定に保つことが困難であるという問題があったからである。
さらに、正確な官能評価を行うためには、パネラーの疲労による評価精度の低下防止のため、1評価に要する時間や評価間隔を調整する必要がある。しかし、その間にも、評価試料の香気成分は、さらに変化してしまう可能性がある。
また、温度を要因とする官能評価においては、複数のパネラーに同一温度の評価試料を提供しなければならないために、飲食品の温度に厳密なコントロールが要求される。
しかし、これらの要求を満たす同一条件の評価試料を提供する装置は存在しなかった。つまり、食品の香りについての温度の影響に関する客観性が有る官能評価を行うに十分な質と量の評価試料を提供できないため、精度の高い官能評価を検討することができなかったというのが現状である。
そこで、本発明者らは、評価試料を呈味に寄与する飲料パート、香りに寄与する香料パートに分けて、それぞれを官能評価直前にブレンドすることで、事前準備を簡便化する方法を考えた。
このように、別々に調整された飲料パートと香料パートをブレンドして官能評価する技術はこれまでにもあった。たとえば、ガスクロマトグラフで香気成分を分画し、それを飲料にブレンドする揮発性成分の分取装置(特許文献1)や、別々に調整した呈味組成物と香気組成物を組み合わせた風味組成物を被験者に飲食させ、被験者の生体信号から呈味と香気の調和を図る方法(特許文献2)などである。
特開2007-163198号公報 特開2014-126485号公報
しかしながら、特許文献1の揮発性成分の分取装置は一定条件の液体試料に対して、ガスクロマトグラフで分離した気体成分を混合して評価することで液体中の香気成分の寄与を簡便に測定する方法であるが、分離された気体成分の濃度は成り行きで変動してしまうため正確な濃度コントロールが難しく、液体の温度コントロールは考慮されていない。
また、特許文献2は、呈味組成物に香気組成物を評価前に混合する作業が発生し、従来行われてきた官能評価と同様に、官能評価の試料準備のために多大な工数が必要となる。したがって、本願のように種々の官能評価を迅速に行うための工夫や、試料条件の調整などに配慮した、官能評価の精度および再現性を向上させることは考慮されていない。
本発明は、事前準備を簡便化しながら正確な官能評価を実現することが可能な評価試料を提示することができる官能評価試料提供装置並びにそれを用いた調香方法、飲食品用香料組成物の製造方法及び飲食品の製造方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するための官能評価試料提供装置は、飲料試料を貯留する恒温装置付きの複数のリザーバーと、複数のリザーバーから送液される飲料試料を任意の比率で混合する混合装置と、混合装置からパネラーの口まで飲料試料を一定速度で供給する液体流路と、液体流路を通過する飲料試料の温度を調整する少なくとも1つの熱交換器と、香気成分を貯留する複数の香気成分チャンバーと、香気成分チャンバーから香気成分を一定濃度・一定速度でパネラーの口まで通気する気体流路と、液体流路と気体流路とをパネラーの口中に含ませ吐出する飲料試料と香気成分とをパネラーに摂取させるためのマウスピースとを備えるようにしている。
また、本発明の官能評価方法は、上記記載の官能評価試料提供装置を用い、1回の測定時間が5から15秒間で、送液される液量が1.0から3.5ml、送気される香気含有気体が20から40mlになるように調整されることを特徴とする。
また、本発明の調香方法は、上記記載の官能評価試料提供装置を用いて下記のステップを行うことを特徴とする。
(1)対象の飲食品において強調したい香味のキャラクターを選択するステップ1、
(2)ステップ1で選択されたキャラクターを呈する香気成分を複数個選択するステップ2、
(3)飲料を調整するステップ3、
(4)ステップ2で選択された香気成分をステップ3で調整された飲料に添加して、常温での添加濃度を決定するステップ4、
(5)上記記載の官能評価試料提供装置をもちいて、ステップ4で決定された香気成分の添加濃度で常温時の嗜好性を官能評価により得られた評価点数P0とするステップ5、
(6)上記記載の官能評価試料提供装置をもちいて、ステップ5と同じ香気成分濃度で設定温度T1の嗜好性を官能評価により得られた評価点数P1とするステップ6、
(7)P1>P0となった香気成分を選択するステップ7、
(8)ステップ7で選択された香気成分を含むことを特徴とする調香ステップ8。
また、本発明の飲食品用香料組成物の製造方法は上記記載の調香方法で選択した香料成分を配合することを特徴とする。
また、本発明の飲食品の製造方法は、上記記載された製造方法で得られた飲食品用香料組成物を添加することを特徴とする。
上記記載の官能評価試料提供装置によれば、評価試料を呈味に寄与する飲料パートと香りに寄与する香料パートとに分けてそれぞれパネラーの口まで供給し、パネラーの口中で適性比になるようにブレンドしてから評価試料として提示し、官能評価を可能としている。しかも、飲料試料を恒温器付きリザーバーから液体流路を介して一定速度で飲食品をパネラーの口まで送液する間に、その途中の熱交換装置でごく短時間で所定の温度に調整することができる。これにより、香気成分の揮発(ロス)がない密閉状態での飲料試料の温度調整および温度維持が可能になる。他方、香気成分が香気成分チャンバーから気体流路を介して一定濃度・一定速度で送気される。そして、混合試料提供部を経て飲料試料と香気成分とをパネラーの口の中で合流させ、評価試料としてパネラーに摂取させることができる。したがって、評価試料の事前試料作成の手間を省き(つまり、評価試料の事前準備を簡便化でき)、かつ、評価試料の一定性を保つことで、官能評価の客観性をさらに向上させることができる。
また、本官能評価試料提供装置によれば、飲料試料に要求される温度コントロールのあとに、香気成分を合流させることで香気成分の変質を惹起することのない評価試料を提示することができる。これによって、厳密な温度コントロール下で、正確な官能評価を実現することができる。
さらに、複数のリザーバーを備える場合には、性状あるいは物性の異なる複数の飲料試料を準備して、それら飲料試料の混合比を変えることで内容成分(たとえばアルコール濃度や炭酸ガス圧)を任意の濃度に調整することができる。また、複数の香気成分チャンバーを備える場合には、同一香料で濃度違いや、香調の異なる香料を複数用いることができる。これによって、官能評価に必要な事前準備の作業を簡便化し、再現性の高い測定装置で、より精度の高い官能評価を実施することができる。
本発明にかかる官能評価試料提供装置の一実施形態を示す概略説明図である。 ラベルドアフェクティブマグネチュードスケールの説明図である。 マウスピースの一実施形態を示す説明図である。 ホット向けコーヒー香料の嗜好性を示すグラフである。
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1に、本発明の官能評価試料提供装置の実施形態の一例を示す。この実施形態にかかる官能評価試料提供装置は、呈味に寄与する飲料パート20と香りに寄与する香料パート30とからなり、飲料パート20から供給される任意温度の飲料試料と香料パート30から供給される香料成分とをパネラーの口中で適性比になるようにブレンドした評価試料として提示し官能評価を行うことを可能としたものである。
飲料パート20は、恒温装置付きの複数のリザーバー(以下、単にリザーバー1と呼ぶ)と、それぞれのリザーバー1から飲料を取り出し送液する送液ポンプ2と、複数のリザーバー1から供給される飲料試料を必要に応じて混合するミキサー4と、混合された飲料試料を所望の温度に即座に調整する熱交換器5,6と、混合試料提供部15まで供給する液体流路3とで構成されている。
リザーバー1は、本実施形態の場合、複数備えられている。そして、各リザーバー1には、同一飲料試料を収容するようにして大量の飲料試料提供に対応可能としても良いし、各リザーバー毎に性状あるいは物性の異なる複数の飲料試料例えばアルコール濃度の異なる飲料試料や炭酸ガス圧が異なる飲料試料などを保管することによって、各リザーバーから供給される飲料の混合割合をミキサー4で調整し混合することで、所定の濃度あるいはガス圧の飲料試料を調製し、送液可能としても良い。尚、リザーバー1は、単一の飲料試料しか必要としない場合には、1つでも良い。
ここで、リザーバー1の恒温機能は、飲料試料の品質安定のためのものであり、例えば定温貯蔵(飲料試料の貯蔵に適した一定温度に保持)とか、室温(25℃)に維持するためのものである。他方、熱交換器5,6は、液体流路3を通過する飲料試料をごく短時間で要求される温度に調整して、飲料試料の提示温度を精度よく温度管理するための熱源である。熱源としては、図示の熱媒循環方式の熱交換器に限られず、例えば電気ヒーター式熱源などの直接熱源を用いることも可能である。勿論、官能評価の条件によっては、リザーバー1から供給される温度条件で十分な場合には、熱交換器は必要とされないこともある。
本実施形態の熱交換器は、飲料試料を通過させる液体流路3を介して熱交換を行う隔板式熱交換器であり、飲料試料が通過する液体流路を貫通させるタンクと熱源との間で熱媒体を循環させるようにしている。タンク内では、熱媒体の中に浸された液体流路を介して熱交換が行われる。したがって、熱交換器の上流側の三方弁14aと下流側の三方弁14cの間の液体流路は伝熱性に富む金属製チューブであることが好ましい。他方、三方弁14cと混合試料提供部15との間の液体流路3は、可撓性に富む合成樹脂製チューブの使用が好ましい。勿論、全域が合成樹脂製チューブによって構成されていても良い。熱交換器5,6としては、特定の構造・熱交換方式に限られず、液体流路3を通過する飲食品の温度をごく短時間で所定の温度に調整することができるものであれば、例えばインキュベーター(恒温器)でも、加熱器でも、冷却器でも良い。つまり、加熱するばかりではなく、冷却する場合も含まれる。
飲料パート20は、恒温装置付きリザーバー1と少なくとも1つの熱交換器を備えていれば、少なくとも2つの提示温度条件をコントロールできるが、好ましくは高温側の熱交換器5と、低温側の熱交換器6とを備えることであり、必要に応じてさらに細かく加熱帯温度ゾーンを区分けした複数の熱効果器を備えるようにしても良い。例えば、ホット販売、コールド販売がされるコーヒー飲料などでは、それぞれの温度での評価のほかに、室温での官能評価も必要になる。勿論、日本酒の官能評価においては、より細やかな温度調整が必要とされる。
ミキサー4の下流の液体流路には、三方弁14aが配置されて熱交換器を備える流路21と、熱交換器を迂回して直接混合試料提供部15に繋がる流路22とに選択的に接続されるように設けられている。さらに、流路21は、三方弁14bによって、恒温側熱交換器5を備える流路23と低温側熱交換器6を備える流路24のいずれか一方に選択的に接続され、素早く所望の温度に加温されるように設けられている。したがって、室温あるいは定温貯蔵の飲料試料の提示が必要な場合には、三方弁14aの切替によって流路22に接続され、熱交換器5,6を迂回して直接混合試料提供部15に接続される。他方、温度管理された状態の飲料試料の提示が必要な場合には、三方弁14aの切替及び三方弁14bの切り替えによって流路23か流路24のいずれか一方に接続されて熱交換器5若しくは6を経由して混合試料提供部15に接続される。尚、熱交換器を備える流路21と熱交換器5,6を迂回する流路22とは三方弁14cによって選択的に混合試料提供部15と接続される。
液体流路3としては、少なくともパネラーの口に含まれる部分には可撓性のある素材例えば合成樹脂製チューブの使用が好ましく、より好ましくは内径2~4mmのチューブである。また、液体流路3によって供給される飲料の好ましい送液条件、即ち流量と提示時間は、例えば流量10ml/min~20ml/minにおいて、5~20秒であり、1度に摂取する液量が1.0から3.5ml、好ましくは1.5から3.0mlになることが望ましい。この場合、最小限の量でおいしさを官能評価できるように飲料パート20の送液量および送液時間を最適化することができる。
他方、香料パート30は、複数の香気成分チャンバー9を備え、それぞれの香気成分チャンバー9から取り出した香気成分を気体流路13を介して混合試料提供部15にまで供給するように設けられている。香気成分チャンバー9には、送気量コントローラ7において調整された流量のキャリアガスが図示していない活性炭を通して供給される。そして、このキャリアガスで香気成分チャンバー内の香料成分をバブリングさせることで、一定濃度の香気成分を一定速度で供給するように設けられている。キャリアガスとしては、例えば窒素ガスが用いられる。窒素は無味無臭のため、飲みにくさに影響しない量であれば、官能評価に与える影響はないと考えられる。尚、香気成分チャンバー9は、本実施形態の場合、恒温バス12に浸されて一定温度に保たれているが、その他の恒温手段を用いるようにしても良いし、場合によっては恒温手段そのものを必要としないこともある。
ここで、香料パート30の香気成分チャンバー9には、例えばプロピレングリコールなどの溶媒に希釈した香気成分や香料類があらかじめ一定量保管される。希釈液(即ち、香気成分を希釈した溶媒)や香料類は、香気成分チャンバー9に密封されており、外気が導入されない限り、内部の香気成分が外に漏れ出ることはない。本実施形態の場合、それぞれの香気成分チャンバー9には、マニホールド8で分配された窒素ガスが配管17を介して希釈液内に供給されバブリングに供される。バブリングによってプロピレングリコールなどの溶媒から放出された香気成分は、チャンバーの外に配管18を介して搬出され、流量計10及び三方弁14を経て出口側のマニホールド8から気体流路13に流出する。香気成分は、各チャンバー9毎に設置した流量計10で通気量を調整して、マニホールド8で合流させてから気体流路13並びに混合試料提供部15を介してパネラーの口中に一定濃度・一定速度で吐出される。尚、配管17は送気量コントローラ7に接続されると共に希釈液の液位よりも下で開口されている。また、配管18は一端が流量計10に接続されると共に、他端が香気成分チャンバー9の空間部位に挿入され、バブリングによって溶媒から放出される香気成分をチャンバーの外に搬送して流量計10に供給するように接続されている。
気体流路13としては、少なくともパネラーの口に含まれる部分には可撓性のある素材例えば合成樹脂製チューブの使用が好ましく、より好ましくは口に含むのに適切な外径で且つ2mm以上の内径のチューブである。チューブ内径は細すぎると口中に空気が入る際の風圧が強くなり嚥下がやや困難になる傾向がある。また、気体流路13によって供給される香気成分を含む気体の好ましい送気条件、即ち流量と提示時間は、例えば100ml/min~300ml/minにおいて、5~20秒の提示により摂取する通気総量が20から40ml、好ましくは、25から35mlになる通気条件を満たすものが望ましい。この場合、最小限の量でおいしさを官能評価できるように香料パート30の送気量および送気時間を最適化することができる。
この香料パート30においても、飲料パート20と同様に、香気成分チャンバー9を複数備えることにより、濃度が異なる同一香料や、香調の異なる複数の香料を準備することができる。これによって、濃度あるいは香調の異なる複数の香料試料を提供することができる。なお、各チャンバー9内の香気成分の揮発量を一定にするため窒素ガスは、官能評価中、通気し続けるため、評価に使用しない香気成分は三方弁14dを介して、官能評価に影響を与えないように系外(大気中に)11に排気される。
混合試料提供部(一般に、マウスピースと呼ばれる)15は、例えば図3に示すように、合成樹脂製の液体流路(以下、送液チューブ3と呼ぶ)と合成樹脂製の気体流路(以下、送気チューブ13と呼ぶ)とこれらを収めるスリーブ16とで構成されている。具体的には、本実施形態のマウスピース15は、例えば内径2mmの送気チューブ13と、内径2mmの飲料を提示する送液チューブ3と、これらを包み込む内径5~6mm程度のスリーブ16とで構成されている。このマウスピース15は、例えば送気チューブ13がスリーブ16の途中位置まで配置されると共に、送液チューブ3がスリーブ16を貫通してスリーブ16の外まで達する構造とされ、飲料試料が直接パネラーの口中に放出されるのに対し、香気成分がスリーブ16の外の空気を巻き込みながら口中へと放出される構造とされている。
以上のように構成された本実施形態の官能評価試料提供装置によれば、評価試料を呈味に寄与する飲料パートと香りに寄与する香料パートとに分けてパネラーの口まで供給し、パネラーの口中で適性比になるようにブレンドしてから評価試料として提示し、官能評価を可能としている。しかも、飲料試料を一定温度に保って貯留するリザーバーから液体流路を介して、一定速度で飲食品をパネラーの口まで送液する。その途中で熱交換装置で液体流路内の飲食品の温度をごく短時間で所定の温度に調整する。これにより、香気成分の揮発(ロス)がない密閉状態での飲料試料の温度調整および温度維持が可能になる。さらに、恒温装置付き香気成分チャンバーから気体流路を介して香料成分を一定濃度でかつ一定速度でパネラーの口まで供給する。そして、混合試料提供部を経て飲料試料と香気成分とをパネラーの口の中で合流させ、評価試料としてパネラーに摂取させることができる。したがって、評価試料の事前試料作成の手間を省き(つまり、評価試料の事前準備を簡便化でき)、かつ、評価試料の一定性を保つことで、官能評価の客観性をさらに向上させることができる。
また、本実施形態の官能評価試料提供装置によれば、飲料試料に要求される温度コントロールのあとに、香気成分を合流させることで香気成分の変質などを惹起することのない評価試料を提示することができる。これによって、飲料試料に要求される厳密な温度コントロールを満足しながら、評価試料を提示することができ、正確な官能評価を実現することができる。例えば、複数の熱交換器を備えていれば、1つのリザーバーと1つの香気成分チャンバーだけでも、ワインや日本酒の飲用温度毎の官能評価を適切に実施することができる。
さらに、リザーバーを複数備え、各リザーバー毎に性状または物性の異なる飲料試料例えばアルコール濃度の異なる試料または炭酸ガス圧が異なる試料を準備することができる。そして、各リザーバーから流れる試料が任意の割合になるように混合割合を調整することで、所定の濃度及びガス圧になるように飲料を調製し、送液することができる。例えば、第1のリザーバー1から冷えた炭酸水を、あわせて第2のリザーバー1から冷えたイオン交換水を任意の割合で供給することでガス圧を調整した試料(炭酸水)を提示することができる。同様に、香気成分チャンバーも複数備えることにより、濃度が異なる同一香料や、香調の異なる香料を複数準備することができる。これら複数の飲料試料と濃度や香調の異なる複数の香料試料との組み合わせにより、多種多様の評価試料を僅かな時間で簡単に提示することができる。これによって、官能評価に必要な事前準備の作業を簡便化し、再現性の高い測定装置で、より精度の高い官能評価を実施することができる。
さらに、本実施形態にかかる官能評価試料提供装置は、それぞれの飲料と香気成分を各々独立した経路で、一定量、一定時間、パネラーに提供することが可能であり、そのため、飲料の温度、甘味度、酸味度、炭酸ガス圧、アルコール濃度などを調製しながら、様々な香料との相互作用を簡単に検討することができる。これによって、おいしさに与える種々の要因の相互作用を評価するための評価試料を提供することができるうえ、精度が高く情報量の多い官能評価を簡単に行うことができる。例えば、飲料に適合する香料を選択するスクリーニングを簡単に行うことができる。
また、実際の飲用シーン(飲用温度や炭酸ガスの減少)を模した官能評価を実施できるため、飲料の商品開発に応用することができる。
さらには、これらの評価結果を用いて所定の飲用温度や諸条件に適した香気成分を選定し、選定された香気成分を用いたフレーバークリエーションを行うことができる。例えば、以下のステップで飲料に適合する香料を調香することができる。最初に、香料データーベースや文献等から検討したい香調を有する香気成分を選択する。次に、各香気成分を添加する際の上限濃度をきめ、2~10倍で数段階、例えば5倍希釈で複数段階、例えば4段階の希釈列を作製する。香気成分はプロピレングリコールなどの溶媒に希釈されてから香気成分チャンバー9にそれぞれ保管される。最初に、飲料試料を熱交換器を通さない常温の系(流路22)で通液させながら、香気成分を低濃度から高濃度まで、段階的に通気させ、それぞれの官能評価を行い、ラベルドアフェクティブマグネチュードスケールなど官能評価で一般的に用いられるスケールを用いて評価点数(P0)をつける。P0は各パネラーの常温での嗜好性の平均値である。その結果、評価点数が最も高くなる香気成分濃度(もっとも嗜好性の高い濃度)を、常温での最適香気成分濃度とする。
次に、50℃(ホット)に設定した熱交換器に飲料を通液し、先の最適香気成分濃度で通気した際の官能評価を、同様にラベルドアフェクティブマグネチュードスケールで評価点数(P1)をつける。P1は各パネラーのホットにおける嗜好性の平均値である。
ここで、P1>P0となる香気成分を、ホットで特においしさを引き立たせる香気成分と判断する。このような香気成分を組み込んだ飲料用の香料組成物も、ホットで特異的なおいしさに寄与することになる。
さらに、本実施形態にかかる官能評価試料提供装置を用いれば、官能評価をする際のパネラーの疲労軽減も考慮した官能評価を実施することができる。パネラーの疲労は、五感を使うことによる精神的な疲労とともに、試料を実際に摂取しなければならない肉体的な疲労に起因する。香りがおいしさに大きな影響を与えるのは、レトロネーザル香(食べ物を咀嚼している過程で喉越しからはく息に乗って鼻腔内に入り込む香)が、味覚と嗅覚を同時に刺激するためであり、それゆえ、おいしさを適性に評価するためには、実際に飲み込んでレトロネーザル香を評価する必要があるからである。
しかし、本実施形態にかかる官能評価試料提供装置によれば、食品の香りに対する温度の影響について官能評価を行う評価試料を官能評価時に提供できる。しかも、長時間間隔を空けて官能評価を実施する場合などには、窒素ガスの香気成分チャンバー9への供給を停止すると共に流量計10の先の三方弁14dを閉めることにより、香気成分の変質を抑制することができる。他方、官能評価再開までの時間が短時間の場合には、三方弁14dをベント側に切り替えて、香気成分を系外11に排出することにより、香気成分チャンバー9内の香気成分の濃度が変化しないようにすることができる。これによって、1評価に要する時間や評価間隔をパネラーの負担とならないように調整することが可能となるので、パネラーの疲労による評価精度の低下を防止して正確な官能評価を行うことができる。
さらに、本実施形態にかかる官能評価試料提供装置によれば、アルコールを含む飲料の官能評価を実施する際にも有効である。アルコールを含む飲料の評価では、パネラーが繰り返し試料を摂取すると、酔いが生じて正常な評価が出来なくなる可能性がある。しかし本実施形態にかかる官能評価試料提供装置を用いると、摂取量についても制御できるため、摂取量を最小限に抑えた状態で官能評価を行うことで、酔いが生じにくくなるような状況で複数の官能評価を行うことができる。
また、アルコールを含む飲料において、温度が香味に与える影響を検討する際にも有効である。日本酒やワインのように、至適飲用温度がある場合は、飲用温度に合わせた香味プロファイルを備えた製品が求められるが、複数の温度条件を調整しながら、各種要因(香気成分、呈味成分、アルコール度数)も同時に調整し、官能評価を実施することは困難である。
しかし、本実施形態にかかる官能評価試料提供装置を用いると、温度の制御が簡便になるだけでなく、同時に香味を調整する要因の制御も行うことができるため、香りと温度の双方の影響を勘案した官能評価を簡便に実施することができる。特に日本酒の飲用温度域である、花冷え(10℃)、人肌燗(37℃)、ぬる燗(40℃)、熱燗(50℃)の温度調整は難しいため、本装置を用いた温度制御を行った上での官能評価に好適である。
即ち、本発明は、香りと温度の双方の影響を勘案して飲食品のおいしさの評価を一元的に評価するために、評価試料を提示できる官能評価試料提供装置を実現することができる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態にかかる官能評価試料提供装置は、飲料試料を貯留する恒温器付きリザーバー1、送液ポンプ2、熱交換器及び香気成分チャンバー9をそれぞれ複数備え、性状あるいは物性の異なる複数の飲料試料と濃度あるいは香調の異なる複数の香料試料との(選択的な)多くの組み合わせから成る多数の評価試料の提示を可能として精度の高い官能評価を実施できるようにしているが、これはあくまで一例であり、これに特に限られるものではない。リザーバー等の数を増やしても減らしても本装置の本質的な効果は損なわれることはないが、リザーバー1や香気成分チャンバー並びに熱交換器の数が増えれば、当然より複雑な組み合わせを可能としてより多くの官能評価(換言すれば精度の高い官能評価)を行うことが可能となることは言うまでもない。
本発明にかかる官能評価試料提供装置は、少なくとも1つの恒温器付きリザーバー1を含む飲料パート20と、少なくとも1つの香気成分チャンバー9を含む香料パート30と備えていれば、それぞれ飲料試料と香気成分とを官能評価直前にブレンドすることで、官能評価を実施できることはいうまでもないし、さらに熱交換器を備えていれば、飲料試料に必要な温度コントロールを与えた上で香気成分と官能評価直前にブレンドしてから試料提示することができることはいうまでもない。本発明において、このような装置を排除しようとするものではないし、装置としての機能を絞ることを否定するものではない。例えば、常温と高温とでおいしさが異なる飲料、例えばホットでおいしさを引き出させるコーヒーを作り出すための香料の調香などでは、1種類の飲料試料に対して、複数の温度と複数の香気成分の提示が必要となるが、飲料試料を貯留する複数のリザーバーは必要ないかも知れない。また、炭酸飲料の官能評価では、ガス圧を調整した飲料試料(炭酸水)を供給するための複数のリザーバーを必要とするが、香気成分は1つあるいは場合によっては不要となるかも知れない。さらに、アルコール飲料の香気発現性、特に温度が香味に与える影響の官能評価では、複数の温度条件を実現する複数の熱交換器を必要とするが、リザーバー並びに香気成分チャンバーはそれぞれ1種類の試料を提供することだけが必要とされるかも知れない。
また、上述の実施形態では、レトロネーザル香を評価する例について主に説明したが、これに特に限られるものでは無く、オルソネーザル香を確認するために口の外、鼻の下に香気提示することがある。この場合には、送液チューブ3と送気チューブ13とが先端部分で分岐して別々に評価試料が提示される。
(実施例1) 官能評価のための送液条件の検討
パネラーにとって適切な送液条件を確認するための評価を行った。内径が1mm、2mm、4mm、6mmの各送液チューブ3を口にふくんだ状態で送液し、送液の流速、提示時間、およびそれらから算出される総量の関係から、最も適切な条件を確認した。その際、流量は5ml/minから30ml/min、評価時間は5秒間隔で5秒から20秒までを設定した。提示するサンプルとしてコーヒー抽出液を用いた。また鼻抜けの香りを感じやすくなるように、評価中に嚥下が可能な流量を選択した。その条件で、下記の5ポイント法で評価した。
1:評価しにくい
2:やや評価しにくい
3:どちらともいえない
4:やや評価しやすい
5:評価しやすい
送液チューブ3の内径毎の評点とコメントを表1から表4に示す。
Figure 0007199954000001
Figure 0007199954000002
Figure 0007199954000003
Figure 0007199954000004
その結果、流量が多いほど、一度に口中に入る液量が多いために嚥下に困難を伴うことが明らかとなった。一方、流量が少ない場合にも評価しにくいとされ、一度に口中に十分な総量が確保されないために嚥下に困難を伴うことが理由として挙げられた。また提示時間が長くなるほど評価がしにくいとされた。送液チューブ3の内径は、細すぎると液体が噴出し易く、太すぎると液体の流れが悪くなり嚥下が困難になり易いため、評価し易い適切な太さがあることが判明した。以上より送液チューブ3として使用するチューブの太さや流量と提示時間が適度であることが望ましく、最も適当な条件は、チューブ内径2~4mm、流量10ml/min~20ml/minにおいて、5~20秒の提示により、1度に摂取する液量が1.0から3.5ml、好ましくは1.5から3.0mlになる送液条件が望ましいと判明した。
(実施例2) 官能評価のための香気ガスの送気条件の検討
パネラーにとって適切な送気条件を確認するための評価を行った。内径が1mm、2mm、4mm、6mmの各送気チューブ13を口に含んだ状態で行い、送気の流量、提示時間、およびそれらから算出される総量の関係から、最も適切な条件を検証した。流速は50ml/minから300ml/min、提示時間は5秒間隔で5秒から20秒までを設定した。提示サンプルは酪酸エチル0.5%プロピレングリコール希釈品を(バブリングにより)揮発させた香気ガスを使用した。なお、今回はレトロネーザル香を測定するため、香気提示を口の中に行った。また鼻抜けの香りを感じやすくなるように、提示中に嚥下が可能な流量を選択するように、5ポイント法で評価した。
1:評価しにくい
2:やや評価しにくい
3:どちらともいえない
4:やや評価しやすい
5:評価しやすい
送気チューブ13の内径毎の評点とコメントを表5から表8に示す。
Figure 0007199954000005
Figure 0007199954000006
Figure 0007199954000007
Figure 0007199954000008
その結果、流量が多い場合は、口中に空気が入る際の風圧が強くなるため嚥下が困難であり、評価が困難であった。また流量が少ない場合も評価しにくいとされ、口中に十分な総量が確保されず香りを感じにくくなることが理由として挙げられた。提示時間が短い場合も同様の理由で香りを感じにくく、また提示時間が長くなるほど評価がしにくいとされた。送気チューブ13の内径は細すぎると口中に空気が入る際の風圧が強くなり嚥下がやや困難になる傾向がわかった。以上より、流量と提示時間が適度であることが望ましく、送気チューブ13として最も適当な条件は、口に含むのに適切な外径で且つ2mm以上のチューブ内径であり、100ml/min~300ml/minにおいて、5~20秒の提示により摂取する通気総量が20から40ml、好ましくは、25から35mlになる通気条件を満たすものが望ましいと判明した。
(実施例3) 試料提供装置を用いた評価時の飲料の温度による嗜好性評価
本発明の官能評価試料提供装置を使用して、設定した温度条件における香気成分を添加した試料(飲食品)の嗜好性と飲用温度の相互作用を検討した。本実施例では、コーヒー香料に用いられる香気成分(以下コーヒー香気成分とする)を対象として、ドリップコーヒーを常温またはホットで飲用する場合に、コーヒー香気成分を添加した際の、コーヒーの嗜好性を計測した。
まずコーヒー香気成分のうち、検討したいキャラクターとして、ナッティー、ローストを選択し、香気成分を、各キャラクターにつき複数種選定した。選定した成分の、許容しうる最大濃度を設定し、そこからプロピレングリコールで5倍ずつ希釈した4種の希釈列を準備した。表9に選定した成分と検討する濃度範囲を示した。
Figure 0007199954000009
次に試料提供装置を用いて、常温における香気成分を添加した際の嗜好性を評価した。試料は常温(約23℃)のドリップコーヒーを用いた。コーヒー香気成分を表9の濃度幅の4段階の希釈列をパネラーに摂取させ、各パネラーにとって最も嗜好の高い濃度を選択させた。さらに、20名のパネラーで、評価にはラベルドアフェクティブマグネチュードスケール(LAM,図2参照)を使用し、嗜好性を評価した。
続けて、本装置の高温側熱交換器によりドリップコーヒーをホット(約50℃)に加温して、常温で各パネラーが最も嗜好が高いと選択した濃度で、パネラーに摂取させ、その嗜好性を同様にLAMによって評価し、次いで、LAMのスケール幅(想像できる限り最も嫌い~想像できる最も好きまでの長さ)を100mmとした時の、想像できる限り最も嫌いを始点とし、各評価で指示した位置までの長さを測定し、評価を数値化した。表10のように、各パネラーの常温での嗜好性の平均値(P0)と、ホットにおける嗜好性の平均値(P1)を比較し、ホットで嗜好性が高かったコーヒー香気成分(P1>P0となったコーヒー香気成分)をホット用コーヒーに適した香気成分として、2,3―ジメチルピラジンとアセチルピラジンを選択した。
Figure 0007199954000010
(実施例4)
実施例3で選択したホット用コーヒーに適した香気成分を多く含む香料(表11)を試作し、ホット向けコーヒー香料とした。この香料を添加したブラックコーヒーを常温(約23℃)とホット(約50℃)で摂取した際の嗜好性を、パネラー7名によって5ポイント法で評価させた。
1:好ましくない
2:やや好ましくない
3:どちらでもない
4:やや好ましい
5:好ましい
その結果、図4に示すように、ホットで摂取した場合の方が、嗜好性が高いことが分かった。このように、本発明の装置を用いて、ある温度における嗜好性を、詳細かつ精確に測定することで、特定の温度で嗜好性の高い香料成分を選択して香料を開発することができた。
(ブラックコーヒーの試作方法)
L値22に焙煎したコーヒー豆60gを市販のコーヒーミルで粉砕し、90~95℃の熱水でドリップ抽出し、室温まで冷却して、コーヒー抽出液480gを得た。その抽出液に重曹を0.6gとイオン交換水を加え、ブラックコーヒー1000gを調製した。
(ホットコーヒー向け香料の配合処方)
Figure 0007199954000011
(実施例5) 本装置を用いての炭酸感の評価
本発明の試料提供装置を使用して、炭酸飲料の官能評価を実施した。
リザーバー1から冷えた炭酸水(ガスボリューム 3.0)を、あわせてリザーバー2から冷えたイオン交換水を任意の割合で供給することでガス圧を調整した試料(炭酸水)を提示し、炭酸感の強さをパネラーに評価させた。一定時間の経過後、再度評価を実施し、評価結果の再現性を確認した。また、一般的な官能評価方法であるカップテストでも同様の評価を実施した。知覚された炭酸感の強さを5ポイント法で評価した。設定されたガスボリューム、および知覚された炭酸感の強さを表12に示す。
1:炭酸感が弱い
2:炭酸感がやや弱い
3:炭酸感が強くも弱くもない
4:炭酸感がやや強い
5:炭酸感が強い
Figure 0007199954000012
カップテストでは、評価開始から10分後に再度同じ試料を用いて炭酸感を評価させたところ、評価開始直後に比べて、炭酸水中に含まれる炭酸ガスが抜け、炭酸感が弱く感じられた。一方、本装置を用いて評価したところ、炭酸感は時間経過でも変化がなかった。以上より、カップテストに比べて、本装置を用いた評価の方が、炭酸感を損なうことなく、常に同じ評価環境を提供できる点で優れていることが確認できた。
本実施形態にかかる官能評価試料提供装置を用いると、温度の制御が簡便になるだけでなく、他の香味に影響する要因の制御を行うことができるため、様々な官能評価を簡便に実施することが可能となる。
本発明は、飲料に与える香りの影響を官能により評価する際に、一定条件の試料を安定して提示するための装置であり、この装置を使うことで、官能評価結果の客観性を高めることができる。また、香り以外に影響を与える重要な因子である温度を正確にコントロールすることにより、飲料の商品開発に貢献することができる。
飲料試料と香気成分を各々独立した経路で、一定量、一定時間、パネラーに提供することが可能であり、そのため、飲料の温度、甘味度、酸味度、炭酸ガス圧、アルコール濃度などを調製しながら、様々な香料との相互作用を簡単に検討することができる。このため、本装置は、飲料に適合する香料を選択するスクリーニングに適している。さらに、実際の飲用シーン(飲用温度や炭酸ガスの減少)を模した官能評価を実施できるため、飲料の商品開発に応用することもできる。
1 恒温装置付きのリザーバー
2 送液ポンプ
3 液体流路
4 ミキサー
5 高温側熱交換器
6 低温側熱交換器
7 送気量コントローラ
8 マニホールド
9 香気成分チャンバー
10 流量計
11 香気排出口
12 恒温バス
13 送気チューブ(気体流路)
14a,14b,14c,14d 三方弁
15 混合試料提供部
16 スリーブ
20 飲料パート
30 香気パート

Claims (5)

  1. 飲料試料を貯留する恒温装置付きの複数のリザーバーと、前記複数のリザーバーからの前記飲料試料を任意の比率で混合する混合装置と、前記混合装置からパネラーの口まで前記飲料試料を一定速度で供給する液体流路と、前記液体流路を通過する前記飲料試料の温度を調整する少なくとも1つの熱交換器と、香気成分を貯留する複数の香気成分チャンバーと、前記香気成分チャンバーから前記香気成分を一定濃度・一定速度で前記パネラーの口まで通気する気体流路と、前記液体流路と前記気体流路とを前記パネラーの口中に含ませ吐出する飲料試料と香気成分とをパネラーに摂取させるためのマウスピースとを備えることを特徴とする官能評価試料提供装置。
  2. 請求項1記載の官能評価試料提供装置を用い、1回の測定時間が5から15秒間で、送液される液量が1.0から3.5ml、送気される香気含有気体が20から40mlになるように調整されることを特徴とする官能評価方法。
  3. 請求項1記載の官能評価試料提供装置を用いて下記のステップを行うことを特徴とする調香方法。
    (1)対象の飲食品において強調したい香味のキャラクターを選択するステップ1、
    (2)ステップ1で選択されたキャラクターを呈する香気成分を複数個選択するステップ2、
    (3)飲料を調整するステップ3、
    (4)ステップ2で選択された香気成分をステップ3で調整された飲料に添加して、常温での添加濃度を決定するステップ4、
    (5)請求項1記載の試料提供装置をもちいて、ステップ4で決定された香気成分の添加濃度で常温時の嗜好性を官能評価により得られた評価点数をP0とするステップ5
    (6)請求項1記載の試料提供装置をもちいて、ステップ5と同じ香気成分濃度で設定温度T1の嗜好性を官能評価により得られた評価点数をP1とするステップ6
    (7)P1>P0なった香気成分を選択するステップ7
    (8)ステップ7で選択された香気成分を含むことを特徴とする調香ステップ8
  4. 請求項3に記載された調香方法で選択した香料成分を配合する飲食品用香料組成物の製造方法
  5. 請求項4に記載された製造方法で得られた飲食品用香料組成物を添加する飲食品の製造方法
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