以下、本発明の一実施の形態に係る検査装置について図面を参照しながら説明する。
(1)検査装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る検査装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、検査装置300は、ヘッド部100、コントローラ部200、操作部310および表示部320を備える。コントローラ部200は、プログラマブルロジックコントローラ等の外部機器400に接続される。
図1に太い矢印で示すように、複数の測定対象物Sが、ヘッド部100の下方の空間を通過するようにベルトコンベア301により順次搬送される。各測定対象物Sがヘッド部100の下方の空間を通過する際には、当該測定対象物Sがヘッド部100の下方の所定の位置で一時的に静止するように、ベルトコンベア301が一定時間停止する。
ヘッド部100は、例えば投受光一体の撮像デバイスであり、照明部110、撮像部120および演算部130がヘッドケーシング100c内に収容された構成を有する。照明部110は、赤色、青色、緑色または白色の光であって、かつ、任意のパターンを有する光とパターンを有しない一様な光とを、選択的に斜め上方から測定対象物Sに照射可能に構成される。以下、任意のパターンを有する光を構造化光と呼び、一様な光を一様光と呼ぶ。照明部110の構成については後述する。
撮像部120は、撮像素子121および受光レンズ122,123を備える。受光レンズ122,123のうち少なくとも受光レンズ122は、テレセントリックレンズである。測定対象物Sにより上方に反射された構造化光または一様光は、撮像部120の受光レンズ122,123により集光および結像された後、撮像素子121により受光される。撮像素子121は、例えばモノクロCCD(電荷結合素子)であり、各画素から受光量に対応するアナログの電気信号を出力することにより画像データを生成する。撮像素子121は、CMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサ等の他の撮像素子であってもよい。
本実施の形態においては、構造化光が測定対象物Sに照射されたときの測定対象物Sの画像を示す画像データをパターン画像データと呼ぶ。これに対し、赤色、青色または緑色のいずれかの波長を有する一様光が測定対象物Sに照射されたときの測定対象物Sの画像を示す画像データをテクスチャ画像データと呼ぶ。
演算部130は、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)により実現され、撮像処理部131、演算処理部132、記憶部133および出力処理部134を含む。本実施の形態においては、演算部130はFPGAにより実現されるが、本発明はこれに限定されない。演算部130は、CPU(中央演算処理装置)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)により実現されてもよいし、マイクロコンピュータにより実現されてもよい。
撮像処理部131は、照明部110および撮像部120の動作を制御する。演算処理部132は、複数のパターン画像データに基づいて測定対象物Sの高さ画像を示す高さデータを生成する。また、演算処理部132は、赤色、青色および緑色の一様光により生成された赤色、青色および緑色のテクスチャ画像データを合成することにより、測定対象物Sのカラー画像を示すカラーテクスチャ画像データを生成する。記憶部133は、撮像部120により生成された複数のパターン画像データおよびテクスチャ画像データを一時的に記憶する。また、記憶部133は、演算処理部132により生成された高さデータおよびカラーテクスチャ画像データを一時的に記憶する。出力処理部134は、記憶部133に記憶された高さデータまたはカラーテクスチャ画像データを出力する。演算部130の詳細については後述する。
コントローラ部200は、ヘッド制御部210、画像メモリ220および検査部230を含む。ヘッド制御部210は、外部機器400により与えられる指令に基づいて、ヘッド部100の動作を制御する。画像メモリ220は、演算部130により出力された高さデータまたはカラーテクスチャ画像データを記憶する。
検査部230は、使用者により指定された検査内容に基づいて、画像メモリ220に記憶された高さデータまたはカラーテクスチャ画像データについてエッジ検出または寸法計測等の処理を実行する。また、検査部230は、計測値を所定のしきい値と比較することにより、測定対象物Sの良否を判定し、判定結果を外部機器400に与える。
コントローラ部200には、操作部310および表示部320が接続される。操作部310は、キーボード、ポインティングデバイスまたは専用のコンソールを含む。ポインティングデバイスとしては、マウスまたはジョイスティック等が用いられる。使用者は、操作部310を操作することにより、コントローラ部200に所望の検査内容を指定することができる。
表示部320は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)パネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成される。表示部320は、画像メモリ220に記憶された高さデータに基づく高さ画像を表示する。また、表示部320は、画像メモリ220に記憶されたカラーテクスチャ画像データに基づく測定対象物Sのカラー画像を表示する。さらに、表示部320は、検査部230による測定対象物Sの判定結果を表示する。
(2)ヘッド部100の基本的な内部構成
図2は、図1のヘッド部100内部の基本構成を説明するための模式図である。図2に示すように、撮像部120は、図1に示される構成要素に加えて受光ベース120aを備える。受光ベース120aは、例えば鏡筒を含み、ヘッドケーシング100cの内部で受光レンズ122,123および撮像素子121を支持する。ヘッドケーシング100cの内部において、受光レンズ122,123は、共通の光軸ax0が上下方向に延びるように固定されている。撮像素子121は、受光レンズ122,123の共通の光軸ax0上で下方から上方に進行する光を受けるように、受光レンズ122,123の上方に固定されている。また、本例では、演算部130は、基板に実装された状態で撮像部120の上方に位置するように、ヘッドケーシング100c内に固定されている。
ヘッドケーシング100c内では、水平方向において撮像部120に隣り合うように照明部110が設けられている。照明部110は、光源111,112,113、ダイクロイックミラー114,115、照明レンズ116、ミラー117、光生成素子118、投光レンズ119、光源ベース110aおよび投光ベース110bを備える。
光源ベース110aは、光源111,112,113、ダイクロイックミラー114,115および照明レンズ116を支持する。投光ベース110bは、ミラー117、光生成素子118および投光レンズ119を支持する。光源ベース110aは、投光ベース110bの上方に位置するように投光ベース110bに接続される。互いに接続された光源ベース110aおよび投光ベース110bは、連結部材JTを介して撮像部120の受光ベース120aに接続されている。光源ベース110a、投光ベース110b、受光ベース120aおよび連結部材JTは、共通の金属材料(本例ではアルミニウム(Al))により形成されている。予め定められた基準温度(例えば25℃)において、照明部110および撮像部120の複数の構成要素は予め定められた位置関係で保持される。
光源111,112,113は、例えばLED(発光ダイオード)であり、緑色光、青色光および赤色光をそれぞれ出射する。各光源111~113はLED以外の他の光源であってもよい。
ダイクロイックミラー114は、光源111により出射された緑色光と光源112により出射された青色光とが重ね合わせ可能となるように光源ベース110aにより支持される。ダイクロイックミラー115は、ダイクロイックミラー114により重ね合わされた光と光源113により出射された赤色光とが重ね合わせ可能となるように光源ベース110aにより支持される。これにより、光源111~113から緑色光、青色光および赤色光が同時に出射される際には、それらの光が共通の光路上で重ね合わされ、白色光が生成される。
また、本実施の形態において、光源111~113およびダイクロイックミラー114,115は、光源111~113によりそれぞれ出射される複数の光が上方から下方に向かう共通の光路を進行するように、光源ベース110aにより支持される。
照明レンズ116は、ダイクロイックミラー115の下方の位置で、ダイクロイックミラー115を通過または反射した光を集光するように、光源ベース110aにより支持される。ヘッドケーシング100c内において、照明レンズ116により集光される光はさらに上方から下方に向かって進行する。
ミラー117は、照明レンズ116を通過した光を撮像部120の光軸ax0から遠ざかる方向を向いて斜め上方へ反射するように投光ベース110bにより支持される。光生成素子118は、ミラー117により反射される光を受けるように、投光ベース110bにより支持される。本実施の形態においては、光生成素子118は、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)である。光生成素子118は、受けた光の少なくとも一部を撮像部120の光軸ax0に近づくように斜め下方に反射することにより構造化光および一様光を選択的に生成する光生成面を有する。光生成素子118は、LCDまたはLCOS(反射型液晶素子)であってもよい。投光ベース110bにおける光生成素子118の支持状態の詳細については後述する。
投光レンズ119は、投光レンズ119の光軸ax1が投光レンズ119から撮像部120の光軸ax0を向いて斜め下方に延びるように投光ベース110bにより支持される。本実施の形態においては、投光レンズ119は、光生成素子118からの光を拡大しつつ図1の測定対象物Sに照射する。なお、投光レンズ119は、複数のレンズで構成されてもよい。この場合、投光レンズ119は、テレセントリック光学系を含んでもよく、光生成素子118からの構造化光または一様光を拡大するとともに平行化して測定対象物Sに照射可能に設けられてもよい。
上記の構成によれば、光源111,112,113から出射される複数の光に共通の光路が折り返されて測定対象物Sに照射される。それにより、光源ベース110aにより支持される各光学系が、投光レンズ119の光軸ax1上に並ばない。したがって、測定対象物Sに構造化光および一様光を照射するための構成が、その照射方向に大型化することが抑制されている。
また、上記の構成によれば、撮像部120の光軸ax0に直交する方向において、光源ベース110aにより支持される複数の光学系の少なくとも一部は、光生成素子118と撮像部120の光軸ax0との間に位置する。それにより、撮像部120の光軸ax0に直交する方向における光生成素子118と撮像部120の光軸ax0との間の空間を有効利用することができる。
これらの結果、ヘッドケーシング100c内で照明部110および撮像部120がコンパクトに配置されるので、ヘッド部100の小型化が実現されるとともにヘッド部100のレイアウトの自由度が向上する。さらに、ヘッド部100の設置スペースが低減されるとともに、ヘッド部100の設置時の取り扱いが容易になる。
図1の演算部130の撮像処理部131は、後述する検査処理のフローに従って、光源111~113による光の出射を個別に制御する。また、照明部110から出射される光に所望のパターンが付与されるように光生成素子118を制御する。これにより、照明部110は、白色でかつ所定のパターンを有する構造化光と、緑色、青色または赤色の一様光とを選択的に出射する。さらに、撮像処理部131は、後述する検査処理のフローに従って、照明部110における構造化光または一様光の出射に同期して測定対象物Sを撮像するように撮像部120を制御する。
(3)高さデータの生成
検査装置300においては、ヘッド部100に固有の三次元座標系(以下、装置座標系と呼ぶ。)が定義される。本例の装置座標系は、原点と互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸とを含む。以下の説明では、装置座標系のX軸に平行な方向をX方向と呼び、Y軸に平行な方向をY方向と呼び、Z軸に平行な方向をZ方向と呼ぶ。X方向およびY方向は、ベルトコンベア301の上面に平行な面内で互いに直交する。Z方向は、ベルトコンベア301の上面に対して直交する。
ヘッド部100においては、三角測距方式により測定対象物Sの高さ画像を示す高さデータが生成される。三角測距方式による測定対象物の高さ測定においては、撮像素子121に対して予め定められた位置に基準面が設定される。本例では、ベルトコンベア301の上面が基準面として設定されるものとする。
図3は、三角測距方式の原理を説明するための図である。図3には、X方向、Y方向およびZ方向がそれぞれ矢印で示される。ここで、検査装置300のヘッド部100内部の温度は基準温度であるものとする。
図3に示すように、照明部110の光学系(図2の投光レンズ119)の光軸ax1と撮像部120の光学系(図2の受光レンズ122,123)の光軸ax0との間の角度αが予め設定される。角度αは、0度よりも大きく90度よりも小さい。
ヘッド部100の下方に測定対象物Sが存在しない場合、照明部110から出射される光は、基準面Rの点Oにより反射され、撮像部120に入射する。一方、ヘッド部100の下方に測定対象物Sが存在する場合、照明部110から出射される光は、測定対象物Sの表面の点Aにより反射され、撮像部120に入射する。これにより、測定対象物Sが撮像され、測定対象物Sの画像を示す画像データが生成される。
点Oと点Aとの間のX方向における距離をdとすると、基準面Rに対する測定対象物Sの点Aの高さhは、h=d÷tan(α)により与えられる。演算部130は、撮像部120により生成される画像データに基づいて、距離dを算出する。また、演算部130は、算出された距離dに基づいて、測定対象物Sの表面の点Aの高さhを算出する。測定対象物Sの表面の全ての点の高さを算出することにより、光が照射された全ての点について装置座標系で表される座標を特定することができる。それにより、測定対象物Sの高さデータが生成される。
測定対象物Sの表面の全ての点に光を照射するために、照明部110から種々の構造化光が出射される。本実施の形態においては、Y方向に平行でかつX方向に並ぶような直線状の断面を有する縞状の構造化光(以下、縞状光と呼ぶ。)が、その空間位相が変化されつつ照明部110から複数回出射される。また、Y方向に平行な直線状の断面を有しかつ明部分と暗部分とがX方向に並ぶコード状の構造化光(以下、コード状光と呼ぶ。)が、その明部分および暗部分がグレイコード状に変化されつつ照明部110から複数回出射される。
(4)検査処理
図4は、図1の検査装置300により実行される検査処理の一例を示すフローチャートである。以下、図1に示される検査装置300の各構成要素および図4のフローチャートを用いて検査処理を説明する。まず、ヘッド部100において、撮像処理部131は、所定のパターンを有する白色の構造化光を出射するように照明部110を制御する(ステップS1)。また、撮像処理部131は、ステップS1における構造化光の出射と同期して測定対象物Sを撮像するように撮像部120を制御する(ステップS2)。これにより、測定対象物Sのパターン画像データが撮像部120により生成される。
次に、撮像処理部131は、直前のステップS2で生成されたパターン画像データを記憶部133に記憶させる(ステップS3)。また、撮像処理部131は、所定の回数撮像が実行されたか否かを判定する(ステップS4)。所定の回数撮像が実行されていない場合、撮像処理部131は、構造化光のパターンを変更するように図2の光生成素子118を制御し(ステップS5)、ステップS1に戻る。ここで、構造化光のパターンを変更することには、構造化光のパターンの位相をシフトさせることが含まれる。所定の回数撮像が実行されるまで、ステップS1~S5が繰り返される。これにより、パターンが変化されつつ縞状光およびコード状光が測定対象物Sに順次照射されたときの複数のパターン画像データが記憶部133に記憶される。なお、縞状光とコード状光とは、いずれが先に出射されてもよい。
ステップS4で、所定の回数撮像が実行された場合、演算処理部132は、記憶部133に記憶された複数のパターン画像データについて演算を行うことにより、高さデータを生成する(ステップS6)。その後、出力処理部134は、ステップS6で生成された高さデータをコントローラ部200に出力する(ステップS7)。これにより、コントローラ部200の画像メモリ220に高さデータが蓄積される。
次に、撮像処理部131は、図2の複数の光源111,112,113のうち一の光源を選択するとともに選択された一の光源に対応する色の一様光を出射するように照明部110を制御する(ステップS8)。また、撮像処理部131は、ステップS8における一様光の出射と同期して測定対象物Sを撮像するように撮像部120を制御する(ステップS9)。これにより、一の光源に対応する色のテクスチャ画像データが撮像部120により生成される。
続いて、撮像処理部131は、直前のステップS9で生成されたテクスチャ画像データを記憶部133に記憶させる(ステップS10)。また、撮像処理部131は、全光源111~113を用いた撮像が実行されたか否かを判定する(ステップS11)。全光源111~113を用いた撮像が実行されていない場合、撮像処理部131は、直前のステップS7の処理後で光が出射されていない1または複数の光源から光を出射する光源を決定し(ステップS12)、ステップS8に戻る。全光源111~113を用いた撮像が実行されるまで、ステップS8~S12が繰り返される。これにより、測定対象物Sに照射される光の色が変化されつつ一様光が測定対象物Sに順次照射されたときの複数のテクスチャ画像データが記憶部133に記憶される。
ステップS11で、全光源111~113を用いた撮像が実行された場合、演算処理部132は、記憶部133に記憶された複数のテクスチャ画像データを合成することにより、カラーテクスチャ画像データを生成する(ステップS13)。その後、出力処理部134は、ステップS13で生成されたカラーテクスチャ画像データをコントローラ部200に出力する(ステップS14)。これにより、コントローラ部200の画像メモリ220にカラーテクスチャ画像データが蓄積される。
次に、コントローラ部200において、検査部230は、ステップS7,S14で画像メモリ220に蓄積された高さデータおよびカラーテクスチャ画像データに画像処理を実行する(ステップS15)。これにより、使用者により予め指定された検査内容に基づいて、高さデータまたはカラーテクスチャ画像データにおける所定部分の計測が実行される。具体的には、高さ方向(Z方向)に関する計測は高さデータを用いて行われ、X方向またはY方向に関する計測はカラーテクスチャ画像データを用いて行われる。
続いて、検査部230は、ステップS15で得られた計測値を所定のしきい値と比較することにより測定対象物Sの良否を判定し(ステップS16)、計測処理を終了する。
ここで、検査部230は、ステップS16における判定結果を表示部320に表示してもよいし、外部機器400に与えてもよい。また、検査部230は、ステップS6の処理で生成される高さデータに基づく高さ画像を表示部320に表示させることができる。さらに、表示部320は、ステップS13で生成されるカラーテクスチャ画像データに基づく測定対象物Sのカラー画像を表示部320に表示させることができる。
上記の検査処理においては、ステップS1~S7が実行された後にステップS8~S14が実行されるが、本発明はこれに限定されない。ステップS8~S14が実行された後にステップS1~S7が実行されてもよい。また、ステップS7,S14は、計測が実行される前におけるいずれの時点で実行されてもよく、他の処理と並列的に実行されてもよい。
(5)ヘッド部100における光生成素子118の支持状態
図5は投光ベース110bにおける光生成素子118の支持状態を説明するための分解斜視図である。投光ベース110bは、撮像部120(図2)に対して予め定められた姿勢(以下、基準姿勢と呼ぶ。)が維持されるようにヘッドケーシング100c(図2)内に固定される。
図5に示すように、投光ベース110bは、最外部11、上面部12および素子支持部13を有する。最外部11は、投光ベース110bが基準姿勢にある状態で撮像部120の逆方向(撮像部120から遠ざかる方向)を向く部分であり、投光ベース110bのうち撮像部120から最も遠い位置に配置される部分である。上面部12は、投光ベース110bが基準姿勢にある状態で上方を向く面である。最外部11の上端部と上面部12とは離間している。
投光ベース110bの内部には、上面部12の下方にミラー117および投光レンズ119が設けられる。ミラー117および投光レンズ119は、投光ベース110bの予め定められた部分に固定されている。また、投光ベース110bの内部には、光源111,112,113から出射された光および光生成素子118により生成された構造化光または一様光が進行するための空間が形成されている。上面部12には、照明レンズ116(図2)を通って下方に進行する光をミラー117へ導くための開口12oが形成されている。
素子支持部13は、最外部11の上端部と上面部12との間に位置し、支持面14および支持壁15を有する。支持面14は、投光ベース110bが基準姿勢にある状態で撮像部120の逆方向(撮像部120から遠ざかる方向)かつ斜め上方を向くように平坦に形成されている。支持面14の中央部には、投光ベース110b内でミラー117により反射される光を光生成素子118に導くための開口14oが形成されている。
支持壁15は、略U字形状を有し、支持面14を取り囲むようにかつ支持面14に直交する斜め上方に突出するように形成されている。支持壁15は、素子支持部13の中心を向く3つの内側面を有する。3つの内側面のうち一の内側面は支持面14に直交するとともに撮像部120の方向(撮像部120に近づく方向)を向きかつ斜め上方を向く。他の2つの内側面は、支持面14および当接面15aに直交するとともに互いに対向する。以下の説明では、少なくとも撮像部120を向く支持壁15の一の内側面を当接面15aと呼ぶ。また、支持壁15の他の2つの内側面をそれぞれ内側面15b,15cと呼ぶ。支持壁15には、さらに長尺状の板ばね16が設けられている。板ばね16は、支持壁15の一端部から所定の方向に一定距離延びるように設けられている。
光生成素子118は、構造化光を生成するための複数の電気部品と、複数の電気部品が実装された基板と、複数の電気部品および基板の少なくとも一部を収容するパッケージとを含む。光生成素子118のパッケージは、投光ベース110bよりも線膨張係数が小さい材料で形成される。上記のように、投光ベース110bがアルミニウムで形成される場合、パッケージは例えば酸化アルミニウム(Al2O3)で形成される。なお、アルミニウムの線膨張係数は23(×10-6/℃)程度であり、酸化アルミニウムの線膨張係数は7(×10-6/℃)程度である。また、本例のパッケージは扁平な直方体形状を有する。
光生成素子118は、2つの保持具20,30を用いて投光ベース110bの素子支持部13に取り付けられる。保持具20,30は、投光ベース110bと同じ金属材料で形成されている。なお、保持具20,30は、光生成素子118のパッケージと同じ材料で形成されてもよい。
一方の保持具20は、略長方形の板状部材であり、支持面14上に載置可能かつスライド可能に形成されている。具体的には、保持具20は、互いに逆方向を向く上面28および下面29を有する。上面28上には、L字形状を有する保持壁21が形成されている。保持壁21は、保持具20の一長辺から一短辺に沿って延びるように形成されている。保持壁21は、保持具20の中心を向いて互いに直交する2つの内側面を有する。
保持具20の上面28上に光生成素子118を載置する。この状態で、光生成素子118を保持壁21の2つの内側面に接触させる。それにより、光生成素子118を保持具20に対して予め定められた姿勢で位置決めすることができる。保持具20の中央部には、光生成素子118の光生成面を保持具20の下方に露出させるための開口が形成されている。
他方の保持具30は、略長方形の板状部材であり、光生成素子118が保持された保持具20上に載置可能かつスライド可能に形成されている。具体的には、保持具30は、互いに逆方向を向く上面38および下面39を有する。下面39上には、L字形状を有する保持壁31が形成されている。保持壁31は、保持具30の中心を向いて互いに直交する2つの内側面を有する。
保持具30の保持壁31の厚み(下面39からの突出量)は、保持具20の保持壁21の厚み(上面28からの突出量)に等しい。保持具20上に光生成素子118が位置決めされた状態で、下面39が保持具20を向くように保持具30を配置する。また、保持具20の上面28のうち光生成素子118が存在しない領域に保持具30の保持壁31が重なるように、保持具20上に保持具30を載置する。さらに、光生成素子118を保持壁31の2つの内側面に接触させる。
それにより、光生成素子118を保持具30に対して予め定められた姿勢で位置決めすることができる。保持具30の中央部には、光生成素子118の放熱用の開口が形成されている。保持具30の4つの隅部のうち保持壁31の角が位置する隅部には、隣り合う2つの辺に対して傾斜する傾斜面32が形成されている。
図6は投光ベース110bにおける光生成素子118の支持状態を説明するための外観斜視図であり、図7は図6の白抜きの矢印Qの方向に見た素子支持部13の拡大図である。図7においては、光生成素子118の支持状態の理解を容易にするために、図5の保持具30が太い点線で示される。また、図5の支持壁15、保持具20および光生成素子118に互いに異なるハッチングまたはドットパターンが付されている。
光生成素子118が2つの保持具20,30により挟みこまれた状態で、保持具30の傾斜面32が上面部12の近傍に位置するように保持具20を支持面14上に載置する。この状態で、板ばね16は、その先端部が傾斜面32に当接するようにかつ傾斜面32を支持壁15の当接面15aおよび内側面15bに向かう方向に付勢するように設けられている。図7では、板ばね16により傾斜面32が付勢される向きが白抜きの矢印で示される。
これにより、光生成素子118は、素子支持部13に支持された状態で、板ばね16の弾性力により保持具20,30の保持壁21,31を挟んで支持壁15の当接面15aおよび内側面15bを向く方向に付勢され、固定される。
投光ベース110bに光生成素子118が支持された状態で、複数の光源111,112,113のいずれかから出射された光が開口12oに進入する。この場合、開口12oに進入した光は、上記のように、ミラー117により反射されて光生成素子118の光生成面に導かれる。また、光生成面に導かれた光の少なくとも一部が構造化光または一様光として反射され、投光レンズ119を通して測定対象物Sに照射される。図6では、投光ベース110b内を進行する光の光路が二点鎖線の矢印で示される。
(6)温度変化に伴う光生成素子118の支持状態の変化
以下の説明では、撮像部120の光軸ax0から離間した任意の位置において、光軸ax0を向く方向(光軸ax0に近づく方向)を内方と呼び、その逆方向(光軸ax0から遠ざかる方向)を外方と呼ぶ。
図8は、温度変化に伴う光生成素子118の支持状態の変化を説明するための図である。図8(a)に基準温度における光生成素子118の支持状態が撮像部120の光軸ax0とともに模式的側面図で示される。図8(a)に示すように、光生成素子118は、基準温度において保持具20,30により保持されつつ素子支持部13の支持面14上に支持される。このとき、図8(a)に白抜きの矢印に示すように、保持具30の傾斜面32が少なくとも当接面15aに向かう方向に付勢される。それにより、光生成素子118は、光生成素子118の中心(光生成面の中心)が投光レンズ119の光軸ax1上に位置するように位置決めされる。
ヘッド部100の温度が基準温度から上昇すると、投光ベース110bの線膨張係数に応じて投光ベース110bが膨張する。また、光生成素子118の線膨張係数に応じて光生成素子118が膨張する。図8(b)に温度上昇時における光生成素子118の支持状態が撮像部120の光軸ax0とともに模式的側面図で示される。投光ベース110bは、撮像部120に接続されている。そのため、ヘッド部100の温度が基準温度から上昇すると、素子支持部13の当接面15aおよび投光レンズ119は、基準温度にある場合に比べて外方へ移動する。すなわち、素子支持部13の当接面15aおよび投光レンズ119は投光ベース110bの膨張に伴って光軸ax0から遠ざかる。
一方、光生成素子118の線膨張係数は、投光ベース110bの線膨張係数よりも小さいので、光生成素子118の膨張の程度は投光ベース110bの膨張の程度よりも小さい。そのため、光生成素子118は、図8(b)に示すように、光生成素子118の中心が投光レンズ119の光軸ax1よりも外方に位置するように投光ベース110bに対して相対的に移動する。この投光ベース110bに対する光生成素子118の相対的な移動は、温度上昇に起因する高さデータの精度低下を抑制する。この理由について説明する。
図9は、ヘッド部100の温度変化に伴う構造化光の光路の変化を説明するための図である。図9(a)に、基準温度における光生成素子118、投光レンズ119および撮像部120の位置関係が示される。図9(b)に、基準温度よりも高い温度における光生成素子118、投光レンズ119および撮像部120の位置関係が示される。
上記のように、ヘッド部100が基準温度にある状態で、光生成素子118の中心は投光レンズ119の光軸ax1上に位置する。そのため、図9(a)に太い実線の矢印で示すように、光生成素子118の中心から出射される光は、撮像部120の光軸ax1上を進行し、2つの光軸ax0,ax1の交点cp0に到達する。この場合、測定対象物Sの高さを算出するための基準面Rは、例えば図9(a)の交点cp0を含むように設定される。
ヘッド部100の温度が基準温度よりも上昇すると、投光レンズ119は投光ベース110bの膨張に伴って撮像部120の光軸ax0から遠ざかる。それにより、2つの光軸ax0,ax1の交点cp0の位置は撮像部120から遠ざかる方向(本例では下方)に変化し、交点cp0と撮像部120との間の距離が増加する。それにより、図9(b)に示すように、交点cp0の位置は、基準面Rよりも下方に移動することになる。そのため、光生成素子118の中心から出射される光が仮に光軸ax1上を進行すると、その光は基準面R上の光軸ax0からずれた位置に照射される。したがって、基準温度時と同様の演算方法では正確な高さデータを得ることができない。
これに対して、本実施の形態に係る検査装置300においては、ヘッド部100の温度上昇時に光生成素子118の中心が投光レンズ119の光軸ax1に対して撮像部120の外方(撮像部120から遠ざかる方向)に移動する。この場合、図9(b)に太い実線の矢印で示すように、光生成素子118の中心から出射される光は、光軸ax1を基準として投光レンズ119によって反転されつつ進行する。それにより、光生成素子118の中心から出射される光は、光軸ax0上で交点cp0よりも撮像部120に近い点cp1に到達する。
この場合、点cp1は、基準面R上に存在するかまたは交点cp0よりも基準面Rに近い位置に存在することになる。本例では、点cp1は基準面R上に存在する。したがって、温度変化の前後で、光生成素子118の中心から基準面Rを経由して撮像素子121に入射する光の光路長の変化量が0に近づく。また、光生成素子118の中心から基準面Rを経由して撮像素子121に入射する光の撮像素子121上の入射位置が基準温度時における入射位置に近づく。光生成素子118の中心以外の部分から基準面Rを経由して撮像素子121に入射する他の光についても、光生成素子118の中心から基準面Rを経由して撮像素子121に入射する上記の光と同様のことがいえる。それにより、ヘッド部100の温度上昇時に、基準温度時と同様の演算方法を用いる場合であっても、温度上昇に起因する高さデータの精度低下が抑制される。
(7)実施の形態の効果
(a)上記のように、ヘッド部100においては、光生成素子118が、板ばね16により撮像部120の光軸ax0から遠ざかるように投光ベース110bの当接面15aに向かう方向に付勢される。
それにより、ヘッド部100の温度上昇時に線膨張係数が小さい光生成素子118が線膨張係数の大きい投光ベース110bに支持された投光レンズ119の光軸ax1に対して外方に相対的に移動する。この場合、光生成素子118から基準面Rを経由して撮像素子121に至る構造化光の光路長の変化量が0に近づく。また、光生成素子118の任意の部分から基準面Rを経由して撮像素子121に入射する光の撮像素子121上の入射位置が温度上昇前における入射位置に近づく。
したがって、ヘッド部100の温度上昇が測定対象物Sの高さ測定に及ぼす影響が、投光ベース110bに対する光生成素子118の相対的な移動により相殺される。その結果、ヘッド部100の温度が上昇する場合においても煩雑な演算処理を要することなく高精度の高さデータを生成することが可能になる。
(b)上記のヘッド部100においては、本実施の形態においては、光生成素子118は、DMDである。この場合、光源111,112,113から出射される光の少なくとも一部がDMDにより反射されることにより構造化光が生成される。また、構造化光のパターンを容易かつ自由に設定することが可能になる。
(c)投光ベース110bの素子支持部13は、保持具20,30を支持可能な支持面14を有する。保持具20は、素子支持部13上に支持された状態で当接面15aに当接可能に形成された保持壁21を有する。板ばね16は、保持壁21の一部分が当接面15aに当接した状態で、保持具20により保持された光生成素子118を当接面15aに向かう方向に付勢する。このように、光生成素子118は、保持具20,30により保持された状態で投光ベース110bの素子支持部13に設けられる。それにより、投光ベース110bへの取り付け時における光生成素子118の取り扱いが容易になる。
(d)素子支持部13は、支持面14に交差しかつ当接面15aから撮像部120を向く方向に少なくとも延びる内側面15bを有する。板ばね16は、保持具20の保持壁21の一部分が当接面15aに当接しかつ保持壁21の他の部分が内側面15bに当接した状態で、保持具20,30を内側面15bに向かってさらに付勢する。この場合、投光ベース110bに対する保持具20,30の相対的な移動が内側面15bの延びる方向、すなわち当接面15aから撮像部120を向く方向に規制される。したがって、ヘッド部100の温度が上昇することにより、投光ベース110bが膨張する際に、光生成素子118を撮像部120から遠ざかる方向へ正確に移動させることができる。
(e)上記のヘッド部100においては、高さデータおよびカラーテクスチャ画像データを生成するための複数の投受光系が、ヘッドケーシング100c内にコンパクトに収容される。したがって、ヘッド部100の小型化が可能となり、ヘッド部100の設置スペースを低減することができる。さらに、ヘッド部100の設置等の取り扱いが容易になる。
(8)変形例
ヘッド部100は1個の照明部110および1個の撮像部120を含むが、本発明はこれに限定されない。図10は、変形例に係る検査装置300の構成を示すブロック図である。図10に示すように、変形例におけるヘッド部100は、4個の照明部110を含む。なお、図10においては、演算部130の図示が省略されている。
以下の説明では、4個の照明部110を区別する場合は、4個の照明部110をそれぞれ照明部110A~110Dと呼ぶ。照明部110A~110Dは、互いに同一の構造を有し、90度間隔で撮像部120を取り囲むように設けられる。具体的には、照明部110Aと照明部110Bとは、撮像部120を挟んで対向するように配置される。また、照明部110Cと照明部110Dとは、撮像部120を挟んで対向するように配置される。さらに、4個の照明部110A~110Dおよび撮像部120は、演算部130とともにヘッドケーシング100c内に収容されている。
この構成においては、4個の照明部110A~110Dにより測定対象物Sに対して互いに異なる4つの方向から光を出射することができる。それにより、いずれかの照明部110から出射される光により測定不可能な部分がある場合でも、その測定不可能な部分の形状を他の照明部110から出射される光を用いて測定することができる。そこで、4個の照明部110A~110Dにそれぞれ対応して生成された高さデータを合成することにより、測定不可能な部分がより低減された合成高さデータを生成することができる。また、4個の照明部110A~110Dにそれぞれ対応して生成されたカラーテクスチャ画像データを合成することにより、測定不可能な部分がより低減されたカラーテクスチャ画像データを生成することができる。
(9)他の実施の形態
(a)上記実施の形態においては、投光ベース110bはアルミニウムにより形成され、光生成素子118のパッケージは酸化アルミニウムにより形成されるが、本発明はこれに限定されない。
投光ベース110bを形成する金属材料は、光生成素子118のパッケージを形成する材料よりも大きい線膨張係数を有しているのであれば、アルミニウム以外の金属材料(例えば、銅、鉄、ステンレス等)であってもよい。また、光生成素子118のパッケージを形成する材料は、投光ベース110bを形成する金属材料よりも小さい線膨張係数を有しているのであれば、酸化アルミニウム以外の材料(例えば、窒化アルミニウム等)であってもよい。
(b)上記実施の形態においては、光生成素子118は、保持具20,30により保持された状態で投光ベース110bに取り付けられるが、本発明はこれに限定されない。光生成素子118は、保持具20,30を用いることなく直接投光ベース110bの素子支持部13に取り付けられてもよい。この場合、板ばね16は、光生成素子118を当接面15aに向かう方向に直接付勢する。
(c)上記実施の形態においては、撮像部120から遠ざかる方向に付勢される光生成素子118および保持具20,30を受けるように素子支持部13に当接面15aが設けられるが、本発明はこれに限定されない。素子支持部13には、当接面15aに代えて光生成素子118および保持具20,30を受ける1または複数の突起部等が形成されてもよい。
(d)上記実施の形態においては、光生成素子118を当接面15aに向かう方向に付勢し、光生成素子118を投光ベース110bに固定するための構成として板ばね16が用いられるが、本発明はこれに限定されない。光生成素子118を当接面15aに向かう方向に付勢するための構成として、板ばね16に代えて、コイルばねまたはゴム等の他の弾性体が用いられてもよい。
(e)上記実施の形態においては、光源ベース110aおよび投光ベース110bと受光ベース120aとが連結部材JTを介して接続されるが、光源ベース110aおよび投光ベース110bと受光ベース120aとは互いに直接接続されてもよい。
(f)投光ベース110bの素子支持部13には、光生成素子118を放熱する放熱板が設けられてもよい。
(10)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明する。上記実施の形態においては、測定対象物Sが測定対象物の例であり、光源111,112,113が光源の例であり、光生成素子118が光生成素子の例であり、光軸ax1が第1の光軸の例であり、投光レンズ119が投光レンズおよび投光光学系の例であり、投光ベース110bが投光ベースの例である。
また、光軸ax0が第2の光軸の例であり、受光レンズ122,123が受光レンズおよび受光光学系の例であり、撮像素子121が撮像素子の例であり、板ばね16が固定部材の例であり、素子支持部13の当接面15aが当接部の例であり、検査装置300が検査装置の例である。
また、保持具20,30が保持具の例であり、支持面14が支持面の例であり、保持具20の短辺に沿う保持壁21の部分が被当接部の例であり、素子支持部13の内側面15bが案内面の例であり、保持具20の長辺に沿う保持壁21の他の部分が被案内部の例であり、受光ベース120aが受光ベースの例であり、光源ベース110aが光源ベースの例であり、ミラー117が反射部材の例であり、ヘッドケーシング100cがケーシングの例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。